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あの日の笑顔を忘れない
登場人物一覧
- タイムの関係者
→ イラスト
名前:柊 吉野
種族:獄人
性別:男性
年齢:14歳
一人称:俺
二人称:アンタ、お前、呼び捨て、遮那様(目上には~様、~殿などを使う事も)
口調:基本『だ、だろ、だよな、なのか?』稀に『おらぬ、かもしれんな』等が混ざる。
(目上には少しぎこちない敬語を使うこともある)
特徴:顔に傷のある獄人の少年。遮那の側仕えという名目で召し抱えられる。遮那の代わりに各国へ赴くこともある。
設定:
以前、村で烏天狗が暴れていた時に、救って貰った恩義がある。村の名前を春日村という。
村の人達が怪我をしたり、家屋が壊れてしまった憤りを、慰労の為に訪れた遮那に対してぶつけてしまう。
丁度、烏天狗に右目を返す名目も兼ねての事だった。
「申し訳なかった。私達がもう少し早く訪れていれば」
「……何なんだよ、お前! 簡単に頭を下げんじゃねえよ!」
吉野の知っている八百万という人々は高慢で、決して頭など下げない、いけ好かない者ばかりだった。
だからこそ、余計に腹立たしく思った。何が腹立たしいのか吉野には一瞬理解出来なかったが。
心の中に問いただしてみれば『悔しい』という感情が在るのだと気付く。
以前、烏天狗と戦っていた時の、生き生きとした『同じ年頃の少年』は居なくなってしまったから。
吉野は心の奥底で、遮那からの反論を望んでいたのだ。
それで言い争って喧嘩でもして打ち負かしてやれば気分も晴れるのだと思っていた。
けれど、一足先に大人になってしまった遮那からの謝罪で、自分の小ささに打ちひしがれた。
同時に。遮那を足早に大人にさせてしまった環境に憐憫を覚える。
そして興味が湧いた。
何があったのだろう。もしかしたら、自分と同じく儘ならない問題を抱えているのではないだろうか。
あの生き生きとした表情は、もう見られないのだろうか。
腹立たしい。そんなのは腹立たしい。
だって、自分と同じ『子供』なのに! そんなのは誰かが押しつけてる理不尽だ!
「おいお前、良い所の坊ちゃんなんだろ。だったら、俺を雇え! 遊び相手ぐらいにはなってやる!」
「……え? ど、どういう事なのだ?」
目を白黒させる遮那の両手を掴んで、吉野は無理矢理自分の角を握らせる。
「これで、お前は俺の主だ! 角を触らせるのは特別だからな!」
「何だかよく分からんが……其方面白い奴だのう」
その時の笑顔は、あの日見た風の八百万の少年と同じ顔をしていた。