シナリオ詳細
<琥珀薫風>光溢れるこの日々に
オープニング
●
暗雲立籠める嵐の中。吹き荒ぶ風が黒衣をはためかせる。
背には黒く艶やかな翼。そして、不気味に光る琥珀の瞳。
手に滑るは蘇芳の色を映した赤。
死人に口無シ。
嵐に朱が流れ往く――
「近頃、巷で噂されている殺人鬼を知っているかい。吉野」
よく通る少年の声が障子に反射して部屋の中に響く。
食卓の上に置いてある饅頭を一口食んで、浅香灯理は友人である柊吉野へと視線を向けた。
「知ってるぜ。何でも黒い翼と琥珀の瞳を持ったヤツ何だろ?」
灯理に習って桜饅頭を頬張る吉野は眉を寄せて「うーん」と唸る。
「俺も聞いた事があるな。商人を殺しまくってるんだろ」
吉野の隣に座る御狩明将が手を広げてみせた。
少年三人が顔を突き合せて『星の社』の客間に集まっているのには訳がある。
本来であればここに居る筈の天香遮那の姿が無いこと。
それが、この集まりの主題だ。
――黒い翼と琥珀の瞳をした殺人鬼。
「似すぎて無いか? その殺人鬼の容姿」
「明将もそう思うか……だってこの辺でその見た目って言ったら」
「待てよ! アイツはそんな事しねぇだろ!」
灯理と明将の言葉に吉野が眉を吊り上げて首を振った。
獄人である吉野は八百万の貴族達から云われ無き中傷を受けることがある。それはこのカムイグラという国の膿とも言えるのだろう。
自分が誹りを受けた時、気にも止めない強さがある――と自分では思っている――吉野ではあるが、主君である遮那への侮辱を看過出来る程、大人では無い。
今にも隣の明将へ掴みかかろうとする吉野を灯理が諫める。
「分かってるよ、吉野。遮那はそんな事はしない」
「だったら……なんで疑うような事を言うんだよ」
「疑われてるのが問題なんだよ」
問題は。殺人鬼の容姿が友人である『天香遮那』に似ているということ。
それが天香邸ではなく星の社に集まった理由。
「吉野は獄人であり貴族ではないからね。この感覚は少し分かりづらいかもしれない」
灯理の言葉に明将もこくりと頷いた。
「どういう事だよ?」
「黒い翼と琥珀の瞳をした殺人鬼。それだけ見た目が似ている人物が殺しをしている事実。『天香遮那』が当主である事を疎ましく思って居る輩には打って付けの餌だ」
灯理は優しい眼差しの中に強い意思を宿した少年である。
少年らしからぬ落ち着いた言動は彼が『貴族』として育てられた事を意味していた。
浅香という苗字が表す通り、天香の分家筋に当たる少年だ。
「もし僕が当主候補としての心持ちで居たならば、かなりの狙い目だね。内側だけじゃない。外の貴族達もこぞってつついてくるだろうね」
「え……灯理って当主候補なのか? 遮那を蹴落とすのか?」
吉野がじっと灯理を見つめる。彼は天香の分家筋。当主の座を狙う可能性は十分ある。
友人を疑いたくはないが、主君の為なら此処で牽制の一つでも送るべきかと吉野は考えた。
「実は、僕ってこう見えても、天香次期当主筆頭だったんだよ。
長胤様にお子が生まれぬまま、身罷られた時に当主となるべく育てられた。そういうのは何人も居るよ。
でも僕は遮那の親友だからね。彼が天香の当主になったのならば、全力で応援し支えるつもりだよ」
親友という灯理の言葉に吉野は安堵の表情を浮かべる。
「安心してんじゃねぇよ。問題はその殺人鬼だ」
吉野の肩をつついた明将は桜饅頭を囓りながら溜息を吐いた。
「おい、灯理。何か調べられねぇのか? そういうのお抱えのお庭番みたいなの持ってるだろ? 俺の家は居なかったけどよ」
明将は所謂『没落貴族』だ。先の大戦の折、長胤派だった御狩家は討ち死に、明将だけが焼け出された。
遮那との確執、吉野との一悶着を乗り越えて明将は此処に友人として座っている。
「うん。調べさせてるよ」
灯理の家臣には黒影隆元という忍が存在した。忍び然とした裏方の仕事を担っているらしい。
天香家にも猿飛段蔵率いる『宗羅』と御庭番衆の『冥』達が居る。
「でも、決定打は難しいね。分かっていることは襲撃があった時に『不思議な歌声』が聞こえて眠くなるらしいんだ。あと、遮那に似た容姿だね」
「幻術のようなものか……厄介だな」
顎に手を当て考え込む明将。追い詰めて戦いに持ち込んだとしても眠らされてしまえば、取り逃がす可能性が高いだろう。
「あとねその殺人鬼は商人でも、所謂『奴隷商人』を殺して回っているみたいなんだ。だから、ある程度の目星は付く。こっちには頼もしい役者もいるしね」
灯理はにっこりと吉野に微笑んでみせた。
「おい、待てよ。また俺に奴隷になって来いってのか?」
「大丈夫。その殺人鬼は子供達には手を出さないから」
「へっ、義賊気取りか。でも、そいつが殺せば殺す程、珍しい奴隷の希少価値は高くなるし、もっと欲しがる奴らが出てくる。何も解決しねぇんだよ」
短絡的に奴隷商人を殺しても現状は変わらないのだ。豊穣の地で獄人と八百万の確執を和らげようと、帝や長胤、晴明がどれ程苦心したか想像に難くないだろう。奴隷商人の活動を根絶する事は難しい。それを、縮小させるには大きな圧力と律された社会への変化が必要だ。
奴隷を大陸に流していると悪評を流された事のある遮那は、その流通を把握するために吉野を使い大陸へと送ったことがある。少しずつ変えていく。その変化は目に見えて分かるものではないだろう。されど、一歩進まなければ状況は改善しない。
「だからさ、僕らがすることはその遮那に似た殺人鬼を捕まえて法の下に捌くことだよ。今までの犯行から見てかなり奴隷商人に固執しているみたいだから、考慮すべき点があるかもしれない。まだ次の動きまで時間があるから念入りに調べさせるよ」
「時間があるのは幸いだ。まあ俺達だけじゃ、どうにも出来ないだろうからな。ここは、御庭番や神使に頼るしか無い」
耳を澄ませば、廊下の板が軋む音がする。
「明将、入りますよ」
障子を開けて顔を覗かせた小金井・正純(p3p008000)に、少年達は希望の眼差しを向ける。
きっと、彼女達神使の力を借りれば、正しい道筋に進める。そう思えてならないのだ。
●
「ところで、そろそろ遮那の誕生日なんだが……」
少し照れたように視線を上げる吉野は明将と灯理、それに正純を見遣る。
「あら、そういえばそうだったわね」
正純の隣には先程、星の社を訪れたタイム(p3p007854)が座っていた。
桜餅をぱくりと頬張ったタイムは、照れている吉野の次句を待つ。
「その、贈り物をしたいと思っているんだ」
「どんなのを送るの?」
微笑ましく思い、問いかけるタイム。
「すごいものとか……」
「凄いものって何だよ?」
具体的な物ではない吉野の言葉に思わず突っ込みをいれてしまう明将。
「だって、いつも仕事で疲れてるし前みたいに遊んでくれなくなったから。いや、でもそれは仕事をしてるから仕方ないって分かってるんだけど、こう、何かいっぱい笑って喜んでくれるようなものを贈りたいって思ってたんだ」
最後の方は少し小声になっていく吉野の頭をそっと撫でるタイム。
「そういえば、この星の社の一つ山を越えた所に緑神沢という場所があるそうです。そこにはお宝が眠っているとかなんとか。まあ、眉唾物なので、真相は定かではありませんが」
「俺も聞いた事があるぞ。何でも伝説のお宝だとか。金銀財宝に伝説の妖刀、天狗の宝とか色々聞いたぞ」
正純と明将の言葉に目を輝かせる吉野。
「でも、そういった所は大抵怖い神様が居るものだよ。大丈夫かい?」
くすりと笑った灯理は立ち上がらんとしていた吉野に問いかけた。
「大丈夫だろ! 神使が居るし、遮那も喜んでくれる!」
希望に満ちた吉野の眼差しに仕方が無いと立ち上がる仲間たち。
――――
――
「おい、どうなってんだ!?」
緑が覆う山肌で明将の怒気を孕んだ声が聞こえる。
滝のような大雨が、明将だけに降り注いだのだ。
ぼたぼたと落ちる水滴と前髪から覗く苛立ちの表情。
真正面には笑いを堪える吉野の姿があった。
「明将……何してんだ」
「こっちが聞きてぇよ!?」
明将の怒号に、灯理がハッと閃いたように口を開く。
「これは、あれじゃない? 神の怒りってやつ。無闇に山に入り込んだから神様が怒ってるんだよ。多分」
『我は……山の神……、人の子よ。我らが住処に何用か』
大きな岩の上に白い妖が現れた。それは小さな木霊の形から人間の造形へと変化する。
「山に入ってしまって申し訳ございません。友人への贈り物を探しに来たのです」
灯理が恭しく頭を垂れるが、同じように首を傾げた山の神は少年の頭を撫でた。
『あー、あれだな。遊んで欲しいのだな? そうか、それならば仕方ない存分に遊んでやろう』
「え?」
微笑みを浮かべた山の神は、木の蔦で灯理の足首を掴み、逆さまにつるし上げた。
「うわぁぁあ!?」
『ははは! 楽しかろう、楽しかろう。我は森の神であるが、人間が楽しげにしているのが好きである。存分に愉しむが良いぞ。この山は人が来る事も少ないからのう。遊んで行くといい。土産もな持たせてやるからのう。うむうむ。そうか、そうか。楽しいのだな! もっと、楽しませてやろうではないか』
大凡、会話というものが成立しない山の神に、びしょ濡れの明将、逆さまになっている灯理。
吉野は――小さな木霊たちに追いかけられていた。
「ぎゃ!? くすぐったい!」
ぴょんと肩に乗ってきた木霊が耳を優しく撫でたのだ。
「これは、山の神が満足するまで帰してくれないやつでは?」
少年達がドタバタと目の前を通り過ぎるのを見守りながら、正純が隣のタイムに問いかける。
「そうねぇ。でも、お土産もくれるっていうし。一日遊んであげたら満足するのかな?」
「まあ怪我をさせようとしている訳では無いようですし、歓迎されてますよね。おそらく」
幼い子供ぐらいの大きさの橙色のまあるい頭をした木霊がタイムの手を引いた。
不思議な森へ誘われるように。タイム達はゆっくりと一歩を踏み出した。
- <琥珀薫風>光溢れるこの日々に完了
- GM名もみじ
- 種別長編
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年04月30日 22時05分
- 参加人数20/20人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 20 人
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参加者一覧(20人)
リプレイ
●光溢れるこの日々に
森の息吹が深く広がる緑神沢。
神々と精霊達が棲まう自然豊かな山の名だ。
悪戯好きの神は人々と戯れるのが大好きで、時々山に入って来た者を『歓迎』するのだという。
「あああああ!」
少年達の悲鳴が目の前を通り過ぎる。その向こうには山の神が楽しげに笑みを零していた。
「伝説のお宝がそう簡単に手に入る訳ないよね……」
頭を抱えた『揺れずの聖域』タイム(p3p007854)は、叫び声を上げながら走り回っている柊吉野を見つめる。普段は何処か張り詰めた表情をしている吉野が、友人の為にお宝探しをしたいと言い出したのだ。
「ふふ……」
頬を緩めたタイムに吉野が「何だよ」と言葉を投げる。少年の頬は少し赤く染まっていた。
「別に恥ずかしがらなくてもいいのに。友達思いで素敵よ?」
友人でもあり主君でもある『琥珀薫風』天香・遮那(p3n000179)の誕生日の贈り物のため、吉野達はこの緑神沢に宝探しにきたのだ。
「そういえば吾もまだ遮那殿へのお誕生日の贈り物を用意してなかったのである!」
『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は森の神への挑戦とわざと踏み抜いた罠を、力任せに突破しようとして。蔦が巻き付いている。
「……何たる失態……!」
木霊達が百合子の周りでくすくすと笑い出した。
百合子はその双眸を持ち上げコデマリの枝を摘まみ上げる。
「これは……見事に花をつけているな。これと吾の庭の花を組み合わせて特別な生け花を作ろうぞ」
『真意の選択』隠岐奈 朝顔(p3p008750)は遮那への好感度を上げるチャンスだと百合子と同じように罠へと突進した。踏み抜いては声を上げ、山の神や木霊達も大きな笑い声を上げる。
「くるみなの。遊びに来たの。宝探しと聞いて。光り物も好きなの。ブリキ缶の中にピカピカのとか、拾った珍しそうな石とかメダルとか入れてたりするの」
『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)は森の中をてこてこと歩いて行く。
胡桃の周りを小さな木霊達が円を描くように囲んでいた。
「景色も綺麗で、ここは穴場スポットかもしれないの……コャ~~~~!?」
辺りの自然豊かな景色に見とれていた胡桃を木霊がじゃれつくように押し倒した。
木霊を散らすため胡桃は小さな炎を一瞬だけ燃やす。
「ひゃ!?」
一斉に飛び退いた木霊に「大丈夫なの~!」とにんまり歯を見せる胡桃。その様子を見守る森の神にも手を振って楽しげに胡桃は駆け回った。
「なるほど、これはあんまり人が来なくて神様も寂しかったやつかな?」
『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)はこてりと首を傾げた。
それに習い木霊も同じように首を左右に振った。
「一緒に遊ぶのが楽しみなだけで、怖い神様や悪い神様でもないみたいだし。プレゼントに出来そうな宝物を探しながら、満足するまでいっぱい遊んじゃおう!」
「イタズラをしてくれる上にお土産まで貰えるの? どんな物が貰えるんだろ、楽しみだね!」
その場でトンとステップを踏んだ『毒亜竜脅し』カナメ(p3p007960)は辺りを見渡した。
「遮那っちにはみんな贈り物考えてるだろうしー……そうだ、お姉ちゃんに何を贈るか考えよっと! お姉ちゃん喜んでくれるかなー♪」
横を通り過ぎる木霊をカナメはつついてみる。
「カナは山の神の遊びとか、イタズラに付き合うよ。ゆっくり自然を見るのもいいけど、どうせなら刺激があった方が楽しいからね」
ここで縁を結んでおけば、何か助けになるかもしれない。仲良くして損は無いとカナメは大きな落とし穴に気付かないフリをして飛び込んだ。
「あ~れ~!!!!」
「ひゃあ!? カナメちゃん大丈夫!?」
目の前で穴に落ちたカナメを焔が心配そうに見つめる。穴の縁には興味津々な木霊が集まっていた。
「えへへ……大丈夫だよ、いつもはもっと痛い目に遭ってる(自ら進んで――)から、イタズラくらいならいくらでも平気だよ☆」
楽しげに笑ってみせるカナメに焔が安堵の笑みを浮かべれば、木霊たちも喜んで踊り出す。
「でも、これ以上深く掘ったらダメだよ☆ 怪我しちゃうからね」
カナメはひょいと飛び上がって木霊たちの頭を撫でた。それを見た別の木霊が今度は焔のふさふさの耳を触り出す。
「な、ひゃうっ! だ、だめだよ! 耳は、耳は弱いからやめてぇ!」
ころんと転がった焔に木霊が子犬のようにじゃれついた。
「ボクもお返しだよ! こしょこしょこしょ!」
「あ、いいな。カナももっとイタズラしてほしい☆」
ご希望に応えんと、カナメへと大量の木霊が群がる。
それはふさふさの子犬のポメラニアンに、飛びつかれるみたいにころころしていて、二人は楽しそうな声を森の中に響かせていた。
「遮那くんももう誕生日か。これで16歳だったっけ。おめでとうは当日にとっておきつつ……
さあて、とことんやろうか!」
『北辰の道標』伏見 行人(p3p000858)は精霊たちが出てくるのであれば己が居ると便利だと振り返った。
山の神や木霊も遊ぶ気配を見せている今、それを覆す方が怒りを買うだろう。
「さぞかし名のある神とお見受けするが、尊名を賜りたく。遊び合うんだ、互いの名前を知らなければ次に来る時に困るだろう?」
「緑神沢の『柏』と」
神の宿る木の精が、森への信仰と共に『成』ったのだと愛想良く山の神は笑った。
「楽しいっていうのは、雰囲気だけでも伝わるけれども、意思が届くともっと伝わるんだぜ?」
行人は仲間の声を木霊達に伝える役を担う。彼らは敏感に人間の機微を察知するものだから。
それに友人への土産話にも丁度良いと行人は口の端を上げた。
「みんなはしゃいでますねぇ」
タイムの隣、『燻る微熱』小金井・正純(p3p008000)が目を細め少年達を見守る。
「宝探しとは楽しそうだと思ってついてきてみたけれど、本格的に愉快なことになってきたね。精霊たちも神様も悪いものではないようだし存分に相手をしてあげよう」
正純の声に『桜舞の暉剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)が笑みを零した。
「体が動くままに楽しいのを表現すればいいんだろう? 任せてよ。ほら、灯理殿たちも」
普段より少年じみた動きでヴェルグリーズもはしゃいで回る。きっとこうすれば木霊達も喜ぶから。
「吉野さんも灯理さんも明将も、ああやってみると年相応にみえます。ふふ」
「宝探しとか子供の頃以来でしょうか。たまにはこういうのも良いです、ね……?」
尻尾をふるりと揺らした『介錯人』すずな(p3p005307)は目の前に広がる参上に首を傾げた。
「宝探し……私の認識がおかしいのでしょうか。これ、めちゃくちゃに振り回されてるだけのような。あぁー……既視感があると思えば。このめちゃくちゃっぷり、VDMランドだこれ!」
白いトラがマスコットの某ランドが脳裏に過るすずな。
「とはいえ、あまり無理して怪我をしては大変ですからしっかり監督せねば。タイムさんやすずなさんもいますし、大丈夫だとは思います、が……」
傍で見守ろうと近寄った正純の手を、山の神が満面の笑みで引いた。
「其方も遊ぶか!」
「ちょっ!? 山の神!? あまり無茶はだめですからね!?」
上から降り注ぐ滝のような水柱に、溺れそうになる正純。その後ではすずなが蔦に足を取られ逆さまになっている。
「――びゃああああ! たすけ、たすけてタイムさん! まさずみさん! はやくおろして!!」
二人とも濡れそぼった袴の裾から、白い太腿が見え隠れしていた。
「……もう! 程々にしてくださいな」
正純の大声に山の神はくつくつと笑い出す。歓迎されているのだろうとタイムも胸を撫で下ろし、その双眸を上げれば木々の間から自分達と同じ姿をした木霊が近づいて来るのが見えた。
「くしゅっ。一応手ぬぐいを準備してきてよかったです。ほら、明将、あなたも使いなさい。風邪をひきますよ」
「あ、ああ。すまねぇ」
御狩明将は素直に手ぬぐいを受け取り、正純とよく似た木霊を見つめる。
「似てたり似てなかったりいろんな子がいておもしろ~い! ねえ、こっちは正純さん。えーっとこの子はすずなさん……かな?」
タイムは自分に似た木霊を見つけ、びしょぬれのすずなへ、くるりと振り返った。
「確かにこの木霊くんは狼耳っぽいのついてる! タイムさんのは耳が長い! つんつんしたい……」
耳の長い木霊に触れて見るすずな。代わりに頭の上のけも耳をぎゅっと掴まれる。
「って私の耳はつんつんしなく良い――ひええええ><」
「ん、どこか連れて行ってくれるの?」
すずなの叫ぶ声を聞きながら、木霊はタイムの手を引いて滝の奥の洞窟の中へ歩き出した。
「滝の奥の洞窟もいいけど、滝行かぁ……今度機会があったら、やってみようかな」
後から着いて来たカナメと焔が洞窟の中を覗き込む。
「天然の洞窟、ですか。綺麗な緑色の石やら鱗やらが沢山。自然豊かな証拠ですね」
正純は入口で薄く光る石を見つめ息を漏らした。
噂のお宝があるのだろうと高揚していたタイムは、洞窟の暗さに背筋を震わせる。
隣にいる吉野の袖を小さく握れば気遣うように手が伸びてきた。
「こんな時はしっかり頼れる顔するのね……ふふ」
彼らを見守るようにヴェルグリーズは洞窟の中で光る石を拾い上げる。
「別に一つしかダメなんてこともないだろう?」
ヴェルグリーズの言葉に木霊はこくこくと頷いた。童心というものはヴェルグリーズにはよく分からないけれど、楽しい気持ちが心を満たす。
「あ、何か光ってる! 石?」
タイムは薄緑に光る石を一粒拾い上げた。蓄光を宿す石を掌にころんと転がす。
同じように掌を広げたすずなの手には三つの石が入っていた。
「一つは加工して遮那さんへ。残りは小夜さんとフィーネさんに、かな……」
嬉しそうにすずなは石を胸へ抱く。その隣では朝顔が透き通る青色の石を二つ掲げていた。
「ふふ、遮那君と片方ずつ!」
「遮那さんには個人的にプレゼントを用意してありますし、お土産として貰っていくに留めましょう」
「そうだね。遮那殿にはここであった神様や精霊達との出来事も。土産話としてぜーんぶまとめてプレゼントにしてしまおう。遮那殿が忙しいのは承知の上だけど、折角の誕生日なんだ。ゆっくりとお茶でも飲みながら、ね」
正純はヴェルグリーズの言葉に目を細める。
「金銀財宝が無かったのは残念だけどこの石ならきっと喜んでくれるわ。水の竜神様の剥がれ落ちた鱗だったりして」
タイムの言葉はこれでいいのかと悩んでいる少年達に希望の光を灯した。
「ふふ、三人ともあまり真剣に悩みすぎると良くないですよ。相手のことを想い、贈り物を用意すればあの方ならきっと喜んでくださいますから。ね?」
正純にも諭され、皆でお揃いの石を選んだ。遮那がよく着ている浅葱の狩衣の色。
そういえばと橙色の双眸を上げた胡桃は『御狩』の生き残りである明将へと向けられる。
大戦の最中、彼の兄である定頼を斬ったのは自分であった。
同じイレギュラーズの正純の元で暮らしているというのは風の噂で聞いていたけれど、会うのはこれが初めてだった。
「あの、明将君……」
言おうかどうか正直迷っていた。けれど、胡桃は伝えなければならない。
定頼の最期を。その意思を。
「あなたの兄君、定頼さんを斬ったのはわたしなの。正々堂々戦い潔く散って行ったわ。もし、明将君が望むなら御狩家の再興を手伝いたいの」
「そうか。兄上は名も無き兵士としてではなく、貴方と戦い、武士として誇りを持って戦場で死ねたのだな。伝えてくれて感謝する。しかし、あいにくだが御狩の再興は望んでいないんだ。もう、俺しか残っていないから。何も次へ残すものが無い」
胡桃は明将の表情を見つめる。そこには悲しみも苦しみも全て乗り越えた少年の顔があった。
きっと彼は、今の暮らしを気に入っているのだろう。
「そっか。じゃあ、何か手伝える事があれば言ってね。力になりたいから」
「ありがとう。んじゃ、友達からってことで、名前から教えてくれる?」
胡桃は橙色の瞳を細め大きく頷いた。
「石はカナとお姉ちゃんの分で少しだけ貰っていくよ。他のお土産も持てる量で十分かな。
よく言うでしょ? 大切なのは気持ちだって!」
カナメは小さな金色に光る石を拾い上げた。姉の瞳によく似た色。
「そうだね。遮那くんのお誕生日プレゼントはこの光る石でいいかな。どこかで加工とかしてもらえばプレゼントに丁度いい感じにならないかな、神様がくれたものだからお守りみたいになりそう」
「うぇへへ……推しへの貢物、推しへの貢物……♪」
嬉しそうにお土産を握りしめるカナメの隣で、焔は薄らと赤く光る石を手に取り透かして見せる。
その石の向こう側。赤き双眸に映り込む小さな祠。
「あれ? 祠?」
洞窟の奥には小さな祠があった。
焔は少し寂れてしまった祠を綺麗に掃除して、手を合わせる。
「あんまり人も来ないみたいだし、やっぱりこういうのがお手入れされてないと気になっちゃうしね」
「おう、すまぬな。赤き少女よ」
「へへ~、なんだかんだで楽しかったし、お土産ももらっちゃったから……また遊びにくるね。お礼のお供えとかも持って来るよ!」
焔は山の神と次の約束をして、手を振って山を下りていった。
●夜の闇に紛れて
暗雲立籠める嵐の中。吹き荒ぶ風が黒衣をはためかせる。
背には黒く艶やかな翼。そして、不気味に光る琥珀の瞳。
手に滑るは蘇芳の色を映した赤。死人に口無シ。嵐に朱が流れ往く――
夜の帳が下りる頃、奴隷商人の屋敷には篝火が焚かれ、灯籠の明りが灯った。
「ふーむここが」
百合子の双眸は屋敷を見渡すようにゆっくりと動く。
「一見普通に見えるがいかにしてここを探り当てたのか……」
天香にも腕の良い御庭番がいるのだろう。
百合子の隣には行人が警戒を強めていた。
「人手が足りないと感じた時は助けに入るが、基本的にここに控えている」
「うむ。状況を俯瞰した所から見てくれる司令塔が居るのは戦場の基本だからな」
広域俯瞰と暗視によって、行人の視界は盤上のように見渡せるのだろう。
「俺は『見る』ことに専念するよ。当事者からは見えていないところで何かがあるかもしれないからね。いざとなれば奴隷商人も庇いに入るから安心してくれ」
「あい、分かった」
「遮那くんへの嫌疑がかかっているものを見過ごすわけにはいきません。しかし解せませんね……」
眉を寄せた『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)は考え込むように顎に手を置いた。
「ええ、放置できない問題ですね」
ルル家の言葉に正純が頷く。珍しく少年達に頼られたのだ。何より。
「下手な醜聞を建てらるのは宜しくない。気合いを入れなければ」
「そこですよ。遮那くんに疑いをかけて失脚を狙うのであればもっとわかりやすい悪事をした方が効果的。正しいとは言えないにしても、義賊的な事をするというのは腑に落ちません」
目的は遮那に疑いを掛ける事ではない、のだろうか。不明瞭な殺人鬼の動機に思い馳せるも、ルル家は頭を掻いて分からないと口走る。
「いずれにしても捕縛すればわかること! しっかりやっていきますよ!」
この場に遮那を呼ぶのはあまり気が進まなかったけれど。ルル家はちらりと遮那へと視線を送る。
守られるだけの存在ではいたくないだろう。
「明将は遮那さんの傍についていてください。吉野さんが心配な気持ちも分かりますが、貴方にもやるべきことはあるでしょう。気張りなさい」
「まあ、あいつも心配だが、己の領分ぐらい分かってるよ。遮那には指一本触れさせねぇ」
明将は灯理、遮那と共に屋敷の傍に潜伏する。
「遮那くん、気をつけて下さいね……」
「ああ、大丈夫だぞルル家。明将も灯理も望も居るしな」
「遮那くんの実力は知ってます。それでも心配は心配です」
ありがとうと伝う遮那に、後ろ髪を引かれながらルル家は蔵へと向かう。
どうか。彼が傷付きませんようにと願いながら。
『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は忍装束を身に纏い「豊穣の暦では数え年じゃなく誕生日で年を重ねていくのですね」と小さく呟いた。また一つ豊穣の風習を知る事ができた。
「生まれた事を祝う席を前にして、似ていると噂の殺人鬼が出ていては楽しめようはずもありませんね。最良は殺人鬼の捕縛、次点で犯行の回避ですが、さてどこまで出来るでしょうか」
目を細め瑠璃は此度の戦場を的確に分析する。
「殺人鬼に殺す手を止めさせるなら、殺さなくてもいいと思うだけの状況にする必要があります」
奴隷商人に気取られぬよう屋敷へと潜入を試みる瑠璃。逮捕するのに十分な証拠を用意するためだ。
「彼らがどんな伝手を使っても言い逃れできないだけの罪状が必要ですが、天香の家臣や関係者やらを攫ってきた形になるわけですので、これ殺されなくてもかなり危ないやつでは」
明るみになれば事は大きくなる。それを大きくするか消してしまうかは瑠璃が判断出来るものではないだろう。だが、優位になる証拠は掴んでおくに越した事は無い。
「殺人鬼に関しては……あまり有益なものはありませんね」
目撃者も眠らされてしまうのだから無理も無いだろう。
『報恩の絡繰師』黒影 鬼灯(p3p007949)は先程聞いた殺人鬼の特徴を頭に思い描く。
「琥珀の瞳と黒翼の殺人鬼……確かに遮那殿に特徴は似ているが。似ているだけの別人、とはいくまい」
鬼灯は紫瞳を『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)へ向けた。少女はどこか険しい顔をしてじっと屋敷をみつめている。
――琥珀の瞳と黒い翼。何処からともなく聞こえる歌。
どうしてだろうと鹿ノ子は唇を噛みしめる。
何故、それが夢に出て来た歌声の主なのではないかと、思ってしまうのだろう。
自分の記憶の中には残っていないはずの面影。
けれど、失念していたもの。その人が死んでいる可能性。
そして、いまもまだどこかで生きている可能性かもしれないこと。
鬼灯は視線を戻す。この豊穣の地では遮那の天香当主の立場を狙う者も居るだろう。
人は愚かで残酷だ。理由をつけて遮那を陥れようとするかもしれない。
権威は失墜したといえど、遮那は豊穣にとって必要不可欠な存在だと鬼灯は思っている。
「そして俺が護ると決めている方だ。殺人の真偽はともかく、まずは『彼』と話をしよう」
「お話してくださるかしら?」
腕の中の章姫がくるりと振り返った。
「わからない。だが、話さねば何も始まらない」
だから。今宵は序章なのだ。
物語の――
「さぁ、空繰舞台の幕を上げようか」
――――
――
薄暗い蔵の中には月の明りが差し込んでいた。
蔵に鍵を掛けた奴隷商人達は見張りも付けず屋敷の中へ消えてしまった。
「あとで遮那くんにこの格好を見られるのは少々気になりますが……これもお仕事です!」
小汚い格好をしたルル家の隣にはすずながぷるぷると震えている。
「お友達がお世話になっている御方の為です、微力ながら力になりましょう。……とは言いましたけど。なんでこんな格好してるんでしょうね? ねえ、タイムさん??????」
頭の上で垂れ下がるケモ耳とふさふさの尻尾、手枷と首輪――とてもよく似合っている――で何処からどう見ても奴隷にしか見えないすずなは、おどおどと気弱そうにタイムを見つめる。
「すずなさんも少しだけ辛抱してね」
熟れている雰囲気があるすずなの頭を撫でてから、タイムは吉野の傍に座った。
「前の奴隷流出事件の時に初めて吉野さんと出会ったんだっけ。こんな役割に縁なんて無い方がいいんだけどね。遮那さんなら大丈夫よ、明将さん灯理さんが付いてるし」
吉野の不安な気持ちを察したタイムは優しく声を掛ける。冷静を装っていても心配しているのがすぐ分かってしまうのだ。
「歌声で寝そうになったらひっぱたいてでも起こしてね。勿論、誰かが寝そうになったらわたしも叩いて起こすわ」
「わかったが、まあ。顔以外でな。女の顔を叩くのは、あまり」
「まさか、おしり?」
「おい……っ」
タイムの軽口に吉野の肩の力も抜けた。
「殺人鬼は奴隷商を殺すだけが目的か。奴隷の解放が目的か。それが分かるだけでも重要よね」
「そうですね」
タイムの言葉に頷いたのは『神威雲雀』金枝 繁茂(p3p008917)だ。
「奴隷商から獄人を救っていると聞けば耳障りはいいですが、本当の所はどうなのでしょうか。悪名を着せたいが為に獄人の同胞を出汁に使っているのなら腹立たしい事この上ありません。分からないことが多いですが最期に救いを望む者として責務を果たします」
繁茂の強い意思を聞いて『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3p009000)も同意するように口を開く。
「天香の若当主にそっくりの殺人鬼だっけ? それはまた迷惑な話だよな。黒い翼に琥珀の瞳も他にまったくいないわけじゃねえと思うけど。お偉い方々ってやつはそういうところから、変な言いがかりとかつけてくるのかね」
獅門の奥に居た『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)は赤き双眸を僅か伏せた。
「誰かの姿を騙り、殺人を犯すなど許せるはずもありませんね。今回は御主人様は留守ですし、私が代わりに協力を致しましょう。必ずや犯人を突き止めてみせましょう」
彼女のスカートの中には武器が仕込まれている。抵抗もしない大人しそうなリュティスを、奴隷商人は甘く見ていたのだろう。
見張りも居なくなった今、縛られている必要も無いとリュティスは自分の縄を切り裂き、仲間や他の奴隷の子供達の分も切ってまわる。
『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)は手の中から氷の刀――氷蓮華を顕現させ、リュティスと同じように縄を切り解いていく。
「ありがとよ」
獅門はリュティスに礼を言ってから、ファミリアーで呼び出した梟を蔵の窓から解き放った。
「これで何かあればすぐ気付くだろ。殺人鬼にもな。夜目も利くようにしてあるし」
「奴隷商人殺し……確かに奴隷を扱い人を軽んじて利益を得る輩である彼等は、許せないであります……いつか法の裁きを受けるべきと自分も考えるであります。それでも。だからといって私人が殺しては単なる私刑であります……! 必ず止めねば……!」
拳を握りしめた『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)は、もどかしい思いを抱える。
人を殺す事は、どんな大義名分があったとしても、安易に行っていいことではないのだと、ムサシは憤りを見せた。
「脱出した方が、奴隷商人の所在も把握できるでしょうか。可能であれば捕えて拘束し、この辺りに転がしておけば『護り』易いかもしれません」
冬佳は鍵が掛かっている蔵の、戸の強度を確かめる為に少し押した。この重さであればイレギュラーズ数人が一斉に押せば蝶番が弾けるだろう。問題無い。
繁茂は同じように掴まった奴隷の子供達の様子を伺う。
奴隷商からは後で情報を収集できるだろう。ならば、今はこの子供達から話しを聞くのが得策。
きっと彼らの不安も少しは紛れると繁茂は子供達に話しかける。
「貴方達はどこから連れてこられたのですか?」
「えっと、もっとずっと山奥の村に住んでたよ」
「ぼくは貧乏だったから美味しいご飯食べられるって引っ張ってこられた」
泣きそうになる子供達を抱きしめた繁茂。大丈夫だと言い聞かせるようにそっと背を撫でる。
●それは子守歌のように
――ラララ、ララ、ララ。
歌声が鹿ノ子の耳に届く。
どうしたって、忘れられない。旋律の――
優しく物悲しい青年の声だ。
ゆらりと影が揺らめき、屋敷の周りを泥が覆った。
「毛玉よ、あれはお前の友か?」
百合子は肩に乗った毛玉に話しかける。ふるりと全身を振った毛玉。
「友でないなら遠慮する必要はないな!」
塀の上に登った百合子は何処からともなく聞こえてくる歌声に耳をすます。何か手がかりがあるかもしれないと思うから。
「変身――ッ!」
蔵の中からムサシの元気な声が聞こえ、重い戸が内側から破られる。
奴隷に扮したイレギュラーズが一斉に蔵の中から飛び出して戦陣が切られた。
リュティスは赤い瞳で戦場を見守っているであろう行人へと視線を送る。
群青の泥は屋敷を囲み、奴隷商人を捜し回っているようだった。
「とらなちゃん! 預けておいた刀をもってきてください!」
すずなの声に刀とお水を投げるとらな。
「……や、お水はいりませんからね!?」
刀と水を受け取ったすずなはとりあえず、お水を地面に置いて泥の前に姿を晒す。
繁茂は辛うじて動きそうな蔵の戸を閉めて、奴隷の子供達に万が一の被害が及ばぬように、じっとしているように言い聞かせた。
「奴隷商は屋敷の中ですかね」
視線を上げた繁茂は奴隷商人を捕まえに屋敷の中へ侵入する。彼らを殺しに来たのであれば、纏めて一箇所に集めた方が守り易い。同じ考えであろうヴェルグリーズと共に繁茂は屋敷の中の奴隷商人を探す。
先に潜入していた瑠璃がひとまとめに捕縛していた所へ突入したヴェルグリーズと繁茂。彼らを抱え上げて三人は蔵へと舞い戻った。
「ここから出ないように。君達も見たと思うけど、外は泥の妖怪でいっぱいだ。命が惜しければ絶対に出てはいけない。護りきれなくなるよ」
「下手に動かれると邪魔ですし私の士気が下がるので。もし、逃げようなどと思うなら、こうして気絶してもらいます」
ヴェルグリーズの言葉と繁茂が意識を落す手刀の真似をすると、奴隷商人たちは身体を震わせ頷いた。
「命長らえた暁には吾達の調査に協力するのであるよ。ご禁制に手を付けて居れば逮捕はするが……すべては命あっての物種であろう?」
百合子の追い打ちに小さく悲鳴を上げた奴隷商人。
「わ、分かった」
情報を吐かせて罪を裁くまで殺すのは後にしてあげると繁茂は心の中で呟く。奴隷商人の罪状を鑑みれば今すぐこの場で息の根を止めてやりたい所だが、それでは殺人鬼と同じになってしまう。
鹿ノ子は使い魔の望に蔵の警護を任せる。
「あとでお役人に引き渡すッスから、逃がしちゃだめッスよ! ちょっとくらい噛み付いたって構わないので!」
「わかったよ! まかせて!」
望の声が戦場に響き、泥が屋敷を完全に覆った。
「ガキの頃に戻ったみたいで懐かしいな……泥を相手にするのは初めてだけどな!」
獅門はその辺にあった槍を手に群青の泥と対峙する。
すずなは澱み無き清流の刀身を月明りに走らせ、妖を切り裂いた。
ぐにゃりと歪んだ泥は元の形へと戻る。すずなは眉を寄せ持久戦になるであろう事を覚悟した。
「妖怪共は吾の白百合清楚殺戮拳で蹴散らしてくれよう!」
百合子の白いセーラー服がひらめいて群青の泥が飛び散る。
「安奈殿、あの屋根に居る人物をどう見る?」
百合子は姫菱安奈へと双眸を向けた。
「長年遮那殿を見て来た貴女であれば真贋もつくと思うが……もしや天香所縁のものやもしれぬし、長年天香に仕えた安奈殿であればこそわかる事もあろう」
特に武人である安奈の目には、所作や太刀筋で誰か分かろうというもの。
「遮那殿の未来に影を落とさぬよう共に殺人鬼の正体を探っていくのである」
「そうだな。剣を使う者ではないだろうな」
「武人ではないと?」
百合子の呟きに安奈は大きく頷いた。
「天香君と似た容姿を持つ殺人鬼。『偽物』ならば、もっと積極的に主張しそうではある故に」
歯の模様が入ったマスク越しに『決別を識る』恋屍・愛無(p3p007296)は首を傾げた。
「彼、目立つだろ? 髪とか。現状は似ている者を周囲が利用しているだけの可能性も高そうだが」
不可解な点が多いのだと愛無は紫瞳で夜空を仰ぐ。
殺人鬼の動機として考えられるのは。
「天香・遮那という個人や、その近しい者に対して何らかの執着がある。天香という家や豊穣という国に対して何らかの執着がある。あるいは両方である。てな所だろうか」
いずれにしても、と愛無は眼前の泥を見遣る。
「れだけの妖怪を従えるならば、恐らく魔種だろう」
過去の執着か事件が引き金となっているのかもしれない。
遮那の偽物に成る事が目的ではないのだとしたら、今回の場合は『奴隷』が鍵なのだろう。
「本人や近しい者が奴隷だったか。奴隷商に襲われたか。子供は襲わぬという事は幼い頃のトラウマか」
群青の泥へと相対する頃には愛無の姿は、獣と化している。
「この世界は奴隷など珍しくない上に、豊穣の場合「神隠し」がある分面倒だな」
噛みついて引きちぎり、美味しくも無い泥を吐き捨てた。
歌声がルル家の鼓膜を揺さぶる。途端に視界が揺らぎ、眠気が前進を覆った。
「遮那くん! 歌声に気をつけて下さい! これはなんだか……マズいやつです!」
「ああ、頭が重い……」
ルル家は遮那の背後に回り込み、近づいてきた泥を打ち払う。
仲間を巻き込まぬよう慎重に。そして、出来る事なら屋根の上に佇む黒衣の男の能力に探りを入れたい。
「高みの見物ですか……」
すずなは屋根の上の男を見上げ、眉を寄せる。ここで捕えたい所だが、この泥を掻い潜っている間に逃げられてしまうだろう。
「姿の確認に留め、妖に専念しましょう……! しかし、この歌本当に眠くなりますね……」
うつらと瞼が降りてくる。そして同時にタイムの手が飛んで来た。
「痛っ、加減してくださいよ!? って、今度はタイムさんが!? 寝たら死にます、起きて!」
お互いの頬を張りながら、タイムとすずなは眠気に対抗する。
すずな達を援護するように獅門は槍を穿った。
「奴隷商人は一応守るけどよ。子供達も居るしな……しっかし、この歌どうにかなんねーのか」
殺人鬼が放つ歌声に獅門は頭を振る。高い所から見下ろすだけで、此方には攻撃を仕掛けてこないあたり、相手側も此方を伺っているということだ。
声を掛けはしないが、何かあれば直ぐにでも対応できるように獅門は神経を張り巡らせる。
「いくら奴隷商人相手とはいえ……殺人は許される行為ではないであります……! 殺人鬼! お前はこの宇宙保安官ムサシ・セルブライトが必ず止めるでありますッ!」
獅門の背に迫る泥をムサシが叩き潰し、屋根の上の男に叫んだ。
「少しずつではありますが、数は減っているであります! この調子でいきましょう!」
「ああ! そっちは任せたぜ!」
「ハイパーレーザーソード……ッ! でああっ!!」
ムサシは獅門と連携し泥を打ち払う。
「遮那さんのおわすこの豊穣に、乱あるを許さず」
鹿ノ子の凜とした声が戦場へと響き渡った。手首に光る琥珀色のブレスレットからじんわりと温かさがあふれるようで、絶対に守ってみせると双眸を上げる。己の心を落ち着けるため、鼓舞するため近いを乗せる。
「鹿ノ子――抜刀!」
電光石火の如く大仰な所作で剣を抜いた鹿ノ子へ、泥の敵意が集まった。
それらを引き連れて、なるべく蔵から離れる鹿ノ子。
リュティスは自分の周りに集まった泥へ向けて光の翼を広げる。
戦場に白き閃光が瞬き、泥が灼けて蒸発した。
――――
――
「あの屋根の上にいるのが、例の殺人鬼ですか。暗視を持ってきておいてよかった。確かに、瞳と羽根だけをみると彼に似ているのかも」
「黒翼に琥珀の瞳、背格好。成程、確かに天香遮那さんによく似ている」
正純と冬佳は冷静に群青の泥へ対処しながら、屋根の上の男へと視線を上げた。
星の多い夜は正純の身体を痛みが蝕む。それが今夜は祝福とさえ思えた。降りかかる眠気を押しとどめてくれるから。
「泥が全滅したら逃げるでしょうか」
「その前に掴まえられればいいのですけど」
聴く限り知る限りの為人からは、遮那自身がこのような行いをするようには冬佳には思えない。
されど、最悪も含め、あらゆる可能性は想定しておくべきなのだ。
可能性の話しをするのであれば、遮那と瓜二つの容姿を持った肉腫が発生する事も有り得ない訳ではないだろう。『不思議な歌声』も、見方次第では呼び声に似ていると冬佳は考えを巡らせる。
「或いは、本当に瓜二つの別人……例えば生き別れの兄弟」
「その可能性もあるでしょう。もしくは見た目を変える幻術という可能性も」
憶測は広がり、闇の中へと霧散した。
瑠璃は用意した奴隷商人達の罪状や証拠を屋根の上の黒衣の男へと読み上げる。
「奴隷として連れてこられた人達をもとの所に帰したり、関係者を捕まえたりするのにもうしばらく生かしておく必要がある」
だからこの場で殺す事は避けなければならないと。瑠璃の言葉へ僅かに視線を向ける殺人鬼。
「奴隷商人ばかりを狙うのは何か意味あってのことなのかな?」
聞く耳を持たないというわけではないのだろう。ヴェルグリーズは男へ向かって問うた。
義賊にしては目的の真意が見えなさすぎる。ただの殺人鬼にしては目的が明確過ぎる。
情報が不足しているのだとヴェルグリーズは考えを巡らせた。
何か一つでも足がかりとなるピースが欲しいのだと。
「罪滅ぼし気取りかね? 君が幾ら奴隷商を殺そうが。奴隷を保護しようが。君が過去に置いてきた連中は、今も奴隷として苦しんでるだろうにね」
愛無は当てずっぽうの挑発を唇に乗せる。ラサの奴隷商とでも名乗れば相手の感情が動くだろうか。
「置いてきた……」
初めて黒衣の男が口を開いた。
その声は良く通る美しい声。されど遮那の声ではないと近しいものでは分かるだろう。
「奴隷商人が許せないのは理解できますが、何故、他人の姿を借りて殺人を犯しているのでしょうか? 役人に突き出すという手もあると思うのですが……」
「他人の姿? 何の話しだ」
「噂の殺人鬼……在り方が全く違うのに遮那君に似てるって失礼な!」
朝顔は屋根の上の男へ向かって吠える。
「遮那君への脅威は全部潰します!」
殺人鬼を捕まえただけでは遮那への疑いは晴れないかもしれない。
朝顔はその疑いを晴らす為に殺人鬼が奴隷商人を襲う所を撮れないかと考えた。
それは作戦において結果的に叶わなかったけれど、遠目から殺人鬼の姿を捉える事には成功した。
「狙いが奴隷商人のみなら、動機は復讐や正義で、眠りの歌は優しさかもしれない。でも私は遮那君を貶めるなら許せません。私は遮那君と共に起きて、2人で思い出を積み重ねたい。彼の大切な人になる為に」
自分にはここで眠っている暇などないのだと、歌声をはね除ける朝顔。
「眠りの歌を打ち消す為、遮那君への想いを歌う! スピーカーボムで、全員この歌しか聞こえないぐらい響け!」
遮那が近くにいるだけで、心臓の音は鳴り響き。思いは溢れて止まらない。彼の全部が大好きで、他の子を想ってる事も、誰にも何にも勝てない自分の醜さも知ってるけど諦められない。
「遮那君の何者にもなれない私だけど、君の最愛になりたいの。私だけ見て、私だけ想って。他の子と結ばれないで」
嫉妬渦巻くこの心も全部。歌に乗せて。
「絶対に負けません、遮那君を害する貴方の歌(おもい)に!」
「大人しく投降するであります! もし、抵抗するのであれば、実力を行使するでありますよ……!」
朝顔とムサシの前に立った鬼灯は少し時間をくれと二人に視線を送った。
「ごきげんよう、琥珀の瞳と黒翼の殺人鬼とは貴殿のことだな?」
戦闘の意思は無いようだが、敵意を見せるようならすぐ応えられるようにと準備は怠らない鬼灯。
「人殺し自体を咎める刺客は無い。俺も貴殿と同じく人を殺すことがある。暦は依頼内容を選ばないからな、なんなら貴殿より残忍な事も散々してきたさ。その上で――貴殿の行動の意味を知りたい」
何故奴隷商人達を殺害するのか。彼らの持つ金か、奴隷を扱う商人を粛清する正義感からか。
それとも別の何かなのか鬼灯は琥珀の瞳を見据え問いかける。
「貴方は何者です。何を目的にこんなことを」
正純が殺人鬼へと言葉を投げた。
人を殺めるには強い感情が付随するものだとタイムは青き双眸を上げる。
「遮那さんに何か恨みがあるの? それとも訳があるの?」
強い憎悪は――『奴隷商人』に向けられているのが分かった。遮那への憎悪ではない。
「話せばわかる事あると思うし、理由があるならお話してほしいな」
ただの殺人鬼とは思えないから。タイムは声を張り上げる。
黒衣の男から感じるものは、怒りや憎しみいった負の感情。その中に寂しさが一欠片灯っている。
「あなた達八百万は自分勝手にやってさも良い事をした顔をしますよね、腹が立つ。奴隷商を殺して回っているようですが、解放された獄人はどうなっているのでしょうか。解放したらはい終わり? それは助けたと言わず放り投げたと言うんですよ、勉強になりましたね」
繁茂の言葉に黒衣の男が明らかな敵意を向ける。それは、きっと彼自身が思っていた事なのだろう。
この義賊的な行為の意味と、その後の奴隷達の行く末全てを面倒見切れる筈もなく。
「分かって、いる」
悔しげに揺れた瞳。
既に群青の泥は全て駆逐され、此処で奴隷商人達を殺す事は叶わないと悟っているだろう。
「あなたの目的はなんッスか! 世直しをしたいなら、他にも方法があるんじゃないッスか!」
鹿ノ子は殺人鬼へと言葉を投げる。同時に彼へと干渉を試みる。少しでも多くの情報を得るために。
されど、その思考を読み取った鹿ノ子は一歩後ずさり、首を緩く振った。
「なんで……」
――ラララ、ララ、ララ。
歌声が鹿ノ子の耳に届く。
どうしたって、忘れられない。旋律の――
優しく物悲しい『夢の中』と同じ声だ。
「鹿ノ子、どうしたのだ、鹿ノ子!?」
遮那が駆け寄り鹿ノ子の肩を抱いた途端、少女は悲鳴を上げる。
「嫌……! やだ……っ! いやぁ!!!!」
耳を押さえ、腕を振り払うようにむずがる鹿ノ子を遮那は強く抱きしめた。
「……鹿ノ子?」
屋根の上で小さく呟かれた殺人鬼の言葉を瑠璃は聞き逃さなかった。
踵を返す黒衣の男に向かってムサシが吠える。
「……貴様は必ず、この宇宙保安官が止める……! 今度は逃がさないであります……!」
戦場に響き渡るムサシの声を聞きながら鬼灯は息を吐いた。
「豊穣にまたも影が差すことになるとはな。影を制すは影、また暦を駆り出さねばなるまいか」
今回の殺人鬼の事は彼らにも調査させようと鬼灯は蔵に向かって歩みを進める。
「そうそう尻尾を掴ませてくれるとは思わんが巡り廻る暦からは逃れられまいよ。念の為殺害された奴隷商人の事も調べておくか」
「ねぇねぇ、鬼灯くん」
腕の中から章姫が呼ぶ。少し怖がったような表情を見せる彼女にどうしたと視線を向けた。
「なんだい章殿?」
「今誰かこっちを見てなかった? なんだか見られてる気がしたのだわ?」
木々の影から視線を感じたが直ぐにそれも消える。
「彼ら奴隷の子供達はどうなってしまうのでしょう? 解放する手はありますか?」
このまま売られてしまうのを見過ごしたくないとリュティスは遮那の元へやってくる。
「ああ、それも何か手を打とう。問題無いぞ」
されど、と。遮那は腕の中で気を失った鹿ノ子を見つめる。
黒衣の男の思考を読み取ったあと、叫び声を上げた鹿ノ子。
何があったのだろうと、遮那は鹿ノ子のやつれた頬を撫でた。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
琥珀薫風第一話。お楽しみ頂けたら幸いです。
MVPは機転を利かせて立ち回った方へ。
GMコメント
もみじです。『琥珀薫風』シリーズ第一話。
16歳の誕生日から始まる物語です。
遮那に似た殺人鬼の噂と、誕生日の贈り物を用意するお話です。
●はじめに
長編はリプレイ公開時プレイングが非表示になります。
なので、思う存分のびのびと物語を楽しんでいきましょう!
●パート
後述のパートごとに分れています。
・1つだけでも、2つ選んでもOK。
・行動は絞った方がその場の描写は多くなります。
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【1】遮那の誕生日プレゼントを手に入れる(イベント)
●目的
・山の神や精霊、木霊達と遊ぶ
・お土産を貰う
●ロケーション
豊穣の星の社から山一つ向こうにある『緑神沢』です。
青々とした木々に覆われた山です。
滝や川が流れ、のどかな風景があったり、花畑があったりします。
整備された道はありませんが、精霊や木霊達が案内してくれます。
●出来る事
○花見やお散歩
・戦闘は無し。ゆっくりイベントを楽しみたい人向け。
精霊や、妖怪、木霊達と一緒に、ゆったりと散歩をします。
山桜が咲いていたり、水仙や山吹、扇葛や春竜胆が楽しめます。
菜の花の花畑にはそよ風が吹いています。
○宝探し
山の神と遊んでお土産を貰いましょう。
神様や精霊たちは人にちょっとした悪戯をするのが大好きです。
彼らが満足するように、罠に引っかかってみたり、大仰にはしゃいでみたりしましょう。
緑神沢と呼ばれる場所には滝があり、その奥には洞窟が続いています。
洞窟の中には薄い緑に光る鱗のような石が落ちています。
山の神からのお土産はその薄緑の石だったり、山の中で落ちている綺麗なものであるでしょう。
●関係者
・柊吉野(ひいらぎよしの。遮那の家臣です。やんちゃ盛りの獄人)
・御狩明将(みかりあきまさ。遮那の友人です。吉野とは口げんかをよくする悪友)
・浅香灯理(あさかとうり。遮那の友人です。八百万で遮那と同じ貴族です)
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【2】遮那に似た殺人鬼の噂を調査(戦闘あり)
●目的
・妖怪を退治する
・殺人鬼の噂を調査
●ロケーション
豊穣の地。夜間です。奴隷商人が潜伏しているとみられる屋敷です。
奴隷に扮した柊吉野やイレギュラーズと共に殺人鬼を待ち伏せます。
奴隷達は蔵に入れられています。
現れた殺人鬼は妖怪を連れています。
屋敷の中庭での戦闘となるでしょう。
●出来る事
・奴隷に扮する事ができます。蔵に入れられています。イレギュラーズなら鍵や縄は簡単に壊せます。
・奴隷の時は武器を持っていない事になります。(判定には影響しないフレーバーです)
・屋敷の隅に潜んで機会をうかがう事も出来ます。
・妖怪を連れて遮那に似た殺人鬼が現れます。
・殺人鬼の目的は奴隷商人を殺す事です。奴隷には危害を加えません。
●敵
○『琥珀の瞳と黒翼の殺人鬼』
遮那に容姿が似ているとされる人物です。妖怪を従えています。
奴隷商人を殺して回っているようです。
彼が現れると、歌声が聞こえ眠たくなると言われています。
戦闘に直接参加はせず、屋根の上などで様子を伺っているようです。
声を掛ける事は可能です。
○『群青の泥』×30
屋敷を覆う様に群青色の妖怪が現れます。
泥は身体を硬質化させ鋭利な刃物となった部分でで奴隷商人を狙います。
それを邪魔するイレギュラーズも攻撃します。
●NPC、関係者
・『琥珀薫風』天香・遮那(p3n000179)
・柊吉野(ひいらぎよしの。遮那の家臣です。やんちゃ盛りの獄人)
・御狩明将(みかりあきまさ。遮那の友人です。吉野とは口げんかをよくする悪友)
・浅香灯理(あさかとうり。遮那の友人です。八百万で遮那と同じ貴族です)
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●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●琥珀薫風の特設ページ
https://rev1.reversion.jp/page/kohakukunpu
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