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シナリオ詳細

<鉄と血と>人民のための大地

完了

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オープニング

●作戦名「人民のための大地」
 古代遺跡を利用して作られた地下鉄道を、何台にも及ぶ列車が走り抜けていく。
 それらはゆっくりと停車し、各々の扉がガタリと開く。
 スライドする扉たち。先頭の車両からまず姿を見せたのは革命派の精鋭イレギュラーズたちである。
「ついに、この時が来ましたわね」
「ええ、先輩」
 ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)とアミナは二人並び、メイスと小銃を構えて顔を見合わせる。
 もう怖いものなんてない。そんな顔で笑い合うと、ホームへと歩み出た。
「皆さんも、一緒に来てくれてありがとうございます!」
 どこか強気に笑うアミナに、リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)が首を振る。
「友達だからね。派閥なんて関係ない。一緒に戦うよ」
「僕はヴァリューシャのためだけどね!」
「何のためでもいいさ。それがこの国の未来を救う」
「先輩。やりましょう!」
 彼女たちの左右に広がるように姿を見せるのはマリア・レイシス(p3p006685)、シラス(p3p004421)、ブランシュ=エルフレーム=リアルト――といった錚々たる面々だ。後に革命派の同志たちも集まり、それは巨大な力となって地下道を進んでいく。
 ルブラット・メルクライン(p3p009557)、楊枝 茄子子(p3p008356)、イロン=マ=イデン(p3p008964)……数えればきりがないほどの精鋭たちの中で、茄子子が代表してマップを広げた。
「歩きながら聞いて下さい。私たちは首都を軍事的に支配してるグロース師団を倒すため、その参謀本部を目指して侵攻します。
 そのために、私たちは派閥の垣根を越えて手を取り合います」
「派閥を越えて、か。もはや革命派だけの問題ではなくなったということだな」
「グロース師団と敵対しているのは、ワタシたちだけではないのです」
 ルブラットとイロンが振り向けば。茄子子も頷いて振り向く。
「北辰連合、南部軍、アーカーシュ、帝政派、ラドバウ独立区。全ての勢力から援軍が駆けつけてるわ」
「勿論、ローレットからも」

 言われてまず車両から進み出たのはイアソン・マリー・ステイオーン。
 独立複合民族アルゴノーツの族長であり、精鋭のラピテースやエリンたちも古代兵器を手に左右に続く。
 彼女たちを仲介したのは善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)、ルナ・ファ・ディール(p3p009526)たちだ。
「グロース師団のハウグリン一家には随分手を焼かされたからの。決着を付けるには丁度良い舞台じゃ」
「その通り。これもまた天命というべきでしょう」
 更にフランセス・D・ナウクラテーと、その友となったシャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)。
 そこへ北辰連合からの援軍たちが続くが、特にギラギラとその存在感を見せつけたのは鳳自治区と呼ばれる地方から集まった癖の強すぎる精鋭たちだ。
 通称、鳳圏勢。
 榛名 慶一を初めとする鳳圏軍服に身を包んだ兵たちが強敵相手の戦いに飢えた目をして突き進む。
 仲介役兼領主としてその先頭を歩かされる加賀・栄龍(p3p007422)がガチガチだ
「グロース師団。そしてその支援を受けていた『黒百合の夜明け団』を捨て置くわけにはいかない。そうだね?」
「いかにも」
 咲花・百合子(p3p001385)が獰猛かつ清楚な笑みでそれに応える。

 続いては独立島アーカーシュより、戦闘用ゴーレムや戦闘精霊、そしてアーカーシュから駆けつけたローレットイレギュラーズたちが車両からホームへと降り立った。
 彼らが天空から直接降りれば目立ってしまう。秘密裏に地下道へ運び込んだのは九頭竜 友哉率いる九頭竜商会の流通網を利用したものだ。
「チッ、損の多い取引になっちまった。代金は払えるんだろうな?」
「えっ!? ちょっとそのお金は……」
「なら、また『仕事』だな」
「そんなあ」
 雑賀 千代(p3p010694)を小突き、そしてククッと安堵したように笑う友哉。
 エル・エ・ルーエ(p3p008216)もそれに続き、ふとこの先にいるであろうメリナという魔種のことを想う。
 悲しい演目。誰かに伝えようとして潰えた想い。ちゃんと、聞いてあげなくちゃ。

 続いてこちらは帝政派。
 車両から降り堂々と先頭を歩くのは鉄帝の政治家として名高いアントーニオ・ロッセリーノ。
「グロース師団との因縁もこれにて決着、となればよいのだが。今回も働いて貰うぞ、アーティストたち」
 それに苦笑を返すのはベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)、イズマ・トーティス(p3p009471)たちだ。
 優れたアーティストは優れたトラブルシューターになるというアントーニオの思想はそのままローレットへの敬意となり、対グロース師団連合という計画に帝政派からいち早く賛同し手勢を送り込んだのだった。
 故に、帝政派に属する兵士たちもここには大勢つめかけている。

 更に南部戦線ザーバ派。
 ディートリヒ・フォン・ツェッペリンとダヴィート・ドラガノフを先頭とした南部軍の面々が揃い、グレン・ロジャース(p3p005709)とディートリヒは深く頷き合った。
「この前はうまく使っちまったからな。これで貸し借りはナシにしたい所だ」
「どうだかな」
 シラスと視線を交わし合うダヴィート。
「軍事力を濫用して村から略奪をしかけるなんて許せませんわ! グロース師団、ぶっ飛ばしてやりますわ!」
 ギベオン・ハートが拳を掲げてやる気をみなぎらせている。ですわよね! と振り返られ、オニキス・ハート(p3p008639)が肩をちょっとだけすくめて見せた。

 そしてラドバウ独立区。
 グロース将軍からインガ・アイゼンナハトが供給を受け、ラドバウからドロップアウトした闇闘士たちを抱え込んでいるという噂はいくらかの闘士たちをこの作戦に動員するきっかけを作った。
 夜式・十七号(p3p008363)が進み出て、彼らと共に前を向く。
 中でも異彩を放っていたのは、鎖を取り出し拳に巻き付け殺気をむきむきに出しているウサミ・ラビットイヤーである。
「うおー! やったるぴょん! 地下ファイター(アイドル)の底地からみせたるぴょん!」
「がんばろうねウサミちゃん!」
「やる気!? てことは今度こそユニット――」
「KUMANAI!」
 先んじてアイドルユニット化をブロックする炎堂 焔(p3p004727)。
 そんな人々の中で、清水 洸汰(p3p000845)がふと一緒に歩くカルネ(p3n000010)へと目を向けた。
「あのおかーさん、やっぱりこの先にいるのかな」
「多分ね。あの人は絶対に諦めない」
「けど、向き合うためには……」
 三國・誠司(p3p008563)、イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)がそう続いて、カルネは少しだけ寂しそうに笑った。
「僕も、ホントは怖いよ。これから一生関わらずに、逃げていきることだってできると思う。けど、向き合おうって決めたんだ。皆がいたから……決められたんだ」
 だから、一緒に来てくれる? カルネは手を差し出してそう言った。
 そんな中で、レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)がグッと拳を天に向けて掲げる。
「グロース師団にはいろんな人が苦しめられたっす! キャトルさんたちだけじゃない、みんなっす! みんなで、その暴挙を止めるっすよ!」

「他派閥と協力体制を……とは言ったけど、全派閥から来るとはね」
 リア・クォーツ(p3p004937)が感心したようにヴァルフォロメイを見る。ヴァルフォロメイはどこか居心地が悪そうだ。
 代わりにというべきか、『オリーブのしずく』のクラウディア・フィーニーが微笑みかけた。
「グロース将軍に困らされていたのは、何も私達だけではありませんからね」
「『共通の敵』ってやつは、結束するにゃ充分なネタってわけだな」
 ブラトン・スレンコヴァがニッと笑う。
 長月・イナリ(p3p008096)、ンクルス・クー(p3p007660)、フラーゴラ・トラモント(p3p008825)たちがその様子に表情を緩めた。
「『人民軍』はまだ後方に待機させてるよ。あるべきときにこそ、切り札を使わないとね」
「私達が戦うことで、みんなに被害が及ぶことを防げるってわけだね!」
「いい考えだわ。けど、敵の戦力も把握してるだけとは限らない。油断は禁物よ」
 一丸となり、『対グロース師団連合軍』と化した皆は地下道を通り、地上を目指す。
 作戦名は、『人民のための大地』。

●作戦名『衝撃と畏怖』
 グロース・フォン・マントイフェル将軍は憎々しげに参謀本部のテーブルを叩いた。
 会議室の重厚なテーブルについているのは、アレイスター・クロユリー、メリナ・バルカロッタ、インガ・アイゼンナハトといった常軌を逸した者たちだ。
 それに加えヘルマン大佐をはじめとする強力な将校たちが席に着き、グロースの言葉を待っていた。
「どうやら、我々は最後の決戦を強いられているらしい。喜ばしいだろう鉄帝国のウォーモンガーたちよ。血湧き肉躍るというやつだ。まあ中には、本当に血を沸騰させて死んだ者もいるようだが?」
 ブラックなユーモアを交えて語り出せば、グロースはその調子を取り戻す。
「東西南北、大規模派閥の連合軍によって囲まれている。中央部からはラドバウ独立区の連中が立ち上がり、地下道からは革命派を中核とした連合軍が侵攻を図っている。逃げ場などもはやなく、袋のネズミだ。
 つまり――我々こそが戦場の華!」
 立ち上がり、凶悪な笑みを浮かべるグロース。
「命令だ。地下道へと攻撃をしかけ、地上部へ広がらんとする連合軍を食い殺せ!
 クロユリー、メリナ、インガ、ヘルマン。貴様等も全員出動だ」
「貴様はどうする?」
 クロユリーの問いかける口ぶりに、グロースは小さく肩をすくめた。
「せいぜい奥の手でも用意しておくとする。師団を率いる将軍として先陣を切れないのは残念きわまるがね」
 将軍こそが先陣を切るという風習は、皇帝ヴェルスが先陣を切って戦争をしかけた頃にもあった鉄帝らしさの一つだ。グロース将軍もその例に漏れず何度か前線に飛び込んでは暴れていたものだが、どうやら今回はそれができない状況であるらしい。
「では、此度の先陣は私が務めましょう」
 ヘルマン大佐が立ち上がり、会議室から出て行く。
 その表情は、堅く険しいものだった。
「ローレット……この戦いに勝利した側こそが、国の未来を決めることになるだろう。
 バルナバス陛下の支配を認めるか、全てを壊し作り直すか。いずれにせよ、破壊と戦いは免れぬ」

 かくして火蓋は切って落とされる。
 グロース師団との、壮絶な戦い火蓋が。

GMコメント

※このシナリオはラリーシナリオです。仕様についてはマニュアルをご覧ください。
https://rev1.reversion.jp/page/scenariorule#menu13

●これまでのあらすじ
 新皇帝派のネームド、グロース・フォン・マントイフェル将軍率いるグロース師団との決着を付けるべく、首都への侵攻を開始しました。
 味方の軍勢は革命派を中核とした全派閥連合。対グロース師団という目的の一致から手を組んだ全派閥をまたいだドリームチームです。
 戦いの状況は【パートタグ】によって異なりますが、主に地下道から首都へ侵攻し参謀本部基地を陥落させるまでが作戦の全容となります。

■■■プレイング書式■■■
 混雑防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
一行目:【パートタグ】
二行目:【グループタグ】
三行目:実際のプレイング内容
 書式が守られていないとお友達とはぐれたりすることがありますのでくれぐれもご注意ください。

■■■グループタグ■■■
 誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの二行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
 大きなグループの中で更に小グループを作りたい時は【大チーム名】【小チーム名】といった具合に二つタグを作って並べて記載ください。
※タグによってサーチするので、キャラIDや名前のみを書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
例:【ナントカチーム】3名

●特殊ドロップ『闘争の誉れ』
 当シナリオでは参加者(プレイング採用者)全員にアイテム『闘争の誉れ』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <鉄と血と>人民のための大地Lv:20以上完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別ラリー
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年03月28日 14時30分
  • 章数3章
  • 総採用数241人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

 フラーゴラ・トラモント(p3p008825)の号令によって集まった難民部隊、通称『人民軍』はなんと一個師団規模にまで膨れ上がっていた。
「皆、これは生きるための戦い。決して命を投げ捨てたりしないで。
 勝って、生きて、皆で明日を勝ち取ろう!」

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※システムアナウンス

●Danger!
 第三章ではパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●章解説:第三章(最終フェーズ)
 革命派、北辰連合、南部戦線、アーカーシュ、ラドバウ、帝政派と六派閥から代表者と兵たちが合流したことで完成したいわば連合軍とでも言うべき味方の軍勢に、ついに革命派の難民部隊『一個師団規模』が加わりました。
 無尽蔵かのごとく投入され続けるグロース師団の兵力を押さえ込んだことで道が切り開かれ、ついにグロース将軍との決着を付けることができます。

・グロース・フォン・マントイフェル将軍(融合体)
 古代兵器と融合した魔種グロースは、かつてないほど強大な力を奮っています。
 戦闘力は未知数。もてる力を全て叩き込み、この戦いに終止符を打ちましょう。

●パートタグ
【アタッカー】
 グロースへの攻撃を主体とするパートです。
 仲間に防御と回復を任せ、とにかく攻撃に集中します。
 このパートの活躍によって、グロースを撃破するまでの時間を短縮することができます。

【ディフェンダー】
 グロースからの圧倒的な攻撃を引き受けるパートです。
 敵があまりに強力なため一人二人ではしのぎ切ることが出来ません。
 防衛力(防御や治癒など防衛全般をさす)に自信のある精鋭たちで交代しながら猛攻を凌ぎましょう。
 このパートの活躍によって、全体の戦闘不能率が低下します。

【ヒーラー】
 後方にて簡易拠点を作り、ダメージを受けた他パートの仲間を治療し、戦線に復帰させます。
 また、戦闘不能者となった味方(難民部隊を含む)を収容し治療する役割も担っています。
 このパートの活躍によって、他パート及び難民部隊の重傷率、死亡率が低下します。

【クラッシャー】
 別名戦端クラッシャー。難民部隊や各派閥の支援部隊と共に天衝種だらけの戦場を切り拓きます。
 グロースとは戦いませんが、その代わり難民たちを守ることができます。
 このパートの活躍によって、難民部隊及び支援部隊の戦闘不能率、重傷率、死亡率が大幅に低下します。

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第3章 第2節

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫
秦・鈴花(p3p010358)
未来を背負う者

 グロース師団の軍勢と、蜂起した難民たちの軍勢。その違いがあるとすれば、つまりは心である。
「ひゃー、すっごい増援。
 世の中こんなにたくさん人がいるなんて、フリアノンに居た頃は思いもしなかったわ。これだけ味方が居れば百人力!」
 『秦の倉庫守』秦・鈴花(p3p010358)は両手のガントレットをがつんと拳にして打ち合わせると、隣で銃を抜いたカルネと顔を見合わせる。
「行くわよ! 舌を噛まないでね」
「舌を? うわ!?」
 後ろから飛んできたワイバーンに飛び乗る鈴花。爪で掴まれるカルネ。
 一度急上昇しぶつかり合う軍勢を見下ろす位置をとると、鈴花はワイバーンと共に低空をかするような機動で突入した。
 当然けずられるように放り出されるカルネ。
「うわー!?」
「天衝種たちめ! カルネになんてことを!」
 鈴花はワイバーンから飛び降り並み居る天衝種たちをボコボコに殴りつける。
 一方のカルネはというと、『オフィーリアの祝福』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)が開いたケースから飛び出すメアリの糸によって軽やかにキャッチされていた。
「アミナ、カルネくん、凄いね。
 こんなにも多くの人が、戦場に立つことを決めたんだ……」
 イーハトーヴは天衝種に銃を撃ちまくるカルネと共に、指輪の魔法を解き放った。
 ――戦場にいる人間は、それが諦念にしろ、死ぬ覚悟を持っている
 その言葉を思い出し、けれど……。
「それでも俺は、この人達に死んでほしくないよ、コウ」
 呟きは願いとなり、願いは力となる。
「行くよ! メアリ、オフィーリア!」
 守ると決めたものの為に。
 悲しみにも悔恨にも、もう足を掴ませない。
 『ちゃんと悲しむ』のは終わった後でだ。

「勝利とは生存、生き残ること。やってみせます、必ずや」
「守るためにならいくらでも戦えるよ、これ以上悲鳴は聞きたくない。
 なにより、人民軍をこの戦いで損耗させたりしない。
 生きて帰るんだ。
 いこう、カンちゃん」
 今のところ、天衝種に個体戦力でこそ劣るものの難民部隊の中から重傷者や死傷者が出てはいない。それも、『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)や『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)たちが率先して戦い、怪我をした味方をすぐに後ろへ下がらせる余裕を作っているためだ。
「勝ちましょう、生き残りましょう、そのためのすべての力をこれへ。しーちゃん」
 睦月の展開する治癒の力に守られながら、史之は敵陣へと突入する。
 太刀『衛府』を抜刀し、秘技『秋霖』にて切り拓くその様は勇猛果敢。
(僕の夫さん、僕の刃、僕の盾。信じてるよ。生きて帰ろうね、みんなでさ。そこにはしーちゃんも、含まれてるんだからね?)
 そんな祈りを背に受けて、史之は巨大なギルバディアを真っ二つに切り裂いた。
「もうこの国は、明日は待ってるだけじゃこないんだ。
 だから立ち上がったんだ、そうだろ?
 なら運命の加護を受けた俺たちイレギュラーズが立たないのも、変な話じゃないか。
 負けるもんか!」
 そんな二人の間を駆け抜け、『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)もまた魔術を天衝種たちへとぶつけていた。
「僕だって、小さいけど…皆と一緒に戦えるから。
 誰も、死なせない……皆と一緒に皆を守って戦う……!」
 『シムーンケイジ』の魔法で砂嵐を引き起こすと、竜巻となったそれを刀をもったヘイトクルーの群れめがけて解き放つ。
「熱砂の嵐、敵達に吹き荒れて…皆は、やらせない!」
 返す刀ならぬ返しの魔法で治癒魔法の『穢サレシ天使ノ口ヅケ』を唱えると、負傷した難民兵を治癒。立ち上がった彼に下がるようにジェスチャーする。
「死なせない、皆を生かす……その為に僕は癒します。みゃー」

成否

成功


第3章 第3節

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼

「遅れてごめんなさい。弟子が大法螺を吹いた作戦は了解したわ。それじゃあ……クラッシャーで行かせてもらいましょうか」
 『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が「これが言いたかった」という顔で振り返ると、何を言われたのかわからない難民兵たちがAK片手に沈黙していた。
 咳払い。
「シスターよ! フォークロアを知ってる者たちも此処に居ると聞いて参じたわ! シスターであれば、やることは一つ。私が皆を守るから、皆はもっと多くの皆を助けて!」
 イーリンが魂へ響くような声で兵たちを激励すると、兵たちはそれならわかるとばかりにAKを掲げ、そして敵軍へと突撃していく。
 馬上で掲げる旗は、迷いを少しでも減らすため。
 戦場で迷わずに済む。彼らにとって、これ以上の福音は無い。
 そう、戦場で生き残る人間は三通りいる。遠く離れた場所で怯えて縮こまるヤツか、迷わず突撃できるヤツだ。
 残った三通り目は……『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)のように純粋に強い者だ。
「駆けよ黒豹! 民の、我らの敵を屠れ!」
 モカの繰り出す必殺技のひとつ、『黒豹疾駆撃』。褐色黒肌の彼女が戦場を縦横無尽に駆け抜ける様は、確かに黒豹のたとえに相応しい。
 それも野生の黒豹ではない。大地の精霊として信仰される黒豹だ。
「私はまだ戦い続ける!
 私は主役って柄じゃない。助演……いや、踏み台で構わない!
 私たちを踏み台にして、必ず民衆の敵を倒してくれ!」
 その勇猛さに心をうたれた兵たちが、勇敢に天衝種を撃つ。
「ここが運命の分岐点。
 皆の望む未来の為に、皆の勇気に応える為に、俺は俺にできることを。
 邪魔するなら押し通るまで、絶対に思い通りにはさせないよ」
 駆け回るモカと勇敢に撃ちまくる兵たち。その中へと飛び込み、『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)は自らの血を無数のスローイングダガーへと変化させる。それらを両手にしっかりと握り込むと、一斉に投擲。
 兵たちが削った天衝種たちに突き刺さり、その全てを打ち倒す。
 そして素早く自らの気配を消すと、群衆の中に自らを紛れ込ませた。
 雲雀のアンブッシュスタイルは乱戦でこそ効果を発揮する。今こそがその好例だ。
 あちこちでぶつかり合う兵と兵。その剣戟に、あるいは銃声に足音を潜ませ、突進する兵と吹き上がる血に身を潜ませる。
 そして――。
「『そして運命は流転する』」
 いつの間にかダガーが首に突き刺さったヘイトクルーたちをはるか後方に残し、雲雀はパチンと指を鳴らした。血でできたダガーが一斉に破裂し、ヘイトクルーたちがばたばたと倒れていく。
「こりゃあなかなかだな……」
「わたしもまだまだ頑張らないとねぇ、もうひと踏ん張りだよぉ!」
 『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)と『陽だまりの白』シルキィ(p3p008115)が腕まくりをして周りを見回す。
 ベルナルドはニッと不敵に笑い、彼の横にアントーニオが並び剣を構えた。
「やれるな? トラブルシューター(アーティスト)」
「ああ。大多数の敵の目を引けってんなら、そいつは芸術家の得意分野だ。
 さぁ、刮目してみよ、『七色Alex』の弟子が演出する最ッ高のドリームシアター!」
 ベルナルドが絵筆を振りかざし『世界』に描いて見せたのは極彩色の幻である。
 戦場に突如現れたそれに、敵兵たちはつい注目した。それこそが純粋にして確実。古来から人類に受け継がれた色の魔法である。
 その間に駆け抜けたアントーニオが、その剣で敵兵を切り裂いて回った。
「クリエイターと支援者の絆、見せてやろうじゃねぇかアントーニオ!」
「全く、パトロンがいのあるヤツだ」
 一方で、シルキィは自らの糸を強大なギルバディアやオートンリブスたちへと飛ばし自らと接続させると、白い魔法の電撃を流し込む。
 糸など引きちぎってやろうと握ったギルバディアがその意外な強度に苦戦し、そして流された電撃にびくんとはねて地面に転がる。
「さあ。わたしたち皆で、勝利を掴むんだよぉ」
 その上を難民部隊の人民軍たちが乗り越え、アサルトライフルによる乱射をしかけるのだ。
 今やシルキィと人民軍の心はひとつだ。
 魔法の糸によって紡がれた弾丸が、ガトリングガンを両手に装備した巨大パワードスーツを貫いていく。
「皆の思いがひとつになったこの戦場、心の弾丸はきっとより輝く……!」

成否

成功


第3章 第4節

結月 沙耶(p3p009126)
少女融解
佐藤・非正規雇用(p3p009377)
異世界転生非正規雇用
ノア=サス=ネクリム(p3p009625)
春色の砲撃
水天宮 妙見子(p3p010644)
ともに最期まで
トール=アシェンプテル(p3p010816)
ココロズ・プリンス

「いよいよ大詰めか……みんな、命を大事に。死ぬ気で生きるぞ!!」
 咆哮をあげ、青銅ゴーレム型の天衝種を殴り倒す『九歩必殺』佐藤・非正規雇用(p3p009377)。
 『北辰より来たる母神』水天宮 妙見子(p3p010644)は鉄扇を広げると、再び皆に狐バフを展開した。
「佐藤様の言う通り、ここで私たちが倒れるわけにはいきませんね!」
 うむ! と佐藤は頷き剣を握りしめる。
「結月さん、来てくれて心強い。その戦い方、参考にさせてもらうぜ。
 ノアさんの火力も期待してるぞっ!
 妙見子さんは毎朝俺に味噌汁作って欲しい!」
 言葉を向けられ、『雪花の燐光』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)と『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)がいやいや、と謙遜したような顔をし……かけて、『おや?』と停止した。
「最後になんて言いました?」
 『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)が問いかけると、意味を察した全員が妙見子を注目する。
「あら、佐藤様? うふふ」
 意味がわかっているのかいないのかイマイチわからない答えを返し、ぱたぱたと扇を振る。
 それを受け、トールは早速敵陣へと突撃した。
「沙耶は私と一緒に敵の誘導を! 後ろは任せます、妙見子さん! 佐藤さん!」
「任されちゃったので頑張りましょうね! ふぁいと♡」
「えっ? う、うむ!」
 妙見子が蒼き炎を放ち、非正規雇用が剣で斬りかかる。
 その一方でトールは輝剣『プリンセス・シンデレラ』を横一文字に振り抜いた。
 巨大にブーストされたオーロラ状の刀身が細く長く延長され、眼前の天衝種たちを風景もろともスパンと切断した。
 それらの後ろから、巨大な魔術砲台を継いだオートンリブス戦車が砲撃を開始。
「魔砲が来ます! 射線上から退避を! ノアさん、お願いします!!」
「祭りの場所はここかしらぁ!! どかないと跳ね飛ばしちゃうわよ!」
 ノアはここぞとばかりに背部の『禁断ノ奇跡』の力を解放。『メタル・カオス・ワイバーン』との合体状態のまま高く飛行し射線を確保すると――。
「撃ちます!! 射線上に入ると巻き込まれるわよ!!」」
 あわせた両手を突き出しピンク色の魔術光線を解き放った。
 砲撃を浴び、爆発炎上するオートンリブス戦車。
「アミナは――あの様子ならとりあえずは大丈夫そうだな。
 となれば……なじみの顔ぶれと共に露払いといくか!」
 そこへトールの指示で突撃しダガーを突き立てた沙耶……は、ふと肝心なことを思い出した。
「トール、今私を呼び捨てに……?」
 ぷるぷると首を振り、『怪盗リンネ』の予告状カードを四方八方に投擲する。
 意識を誘引されたヘイトクルーたちが密集するのを確認すると、仲間全員に一斉砲撃の合図を出す。
「露払いは私達が行う!
 グロースは任せたぞ!」
 沙耶は叫びと共に効果範囲から高速離脱。トールのオーロラ、佐藤の太陽剣、ノアのピンクビーム、妙見子の青い炎。全員の攻撃が光となって収束し、天衝種たちへ叩き込まれ爆発する。その光のすさまじさに、沙耶は小さく口元をほころばせたのだった。

成否

成功


第3章 第5節

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りの守護者
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ

「此処の連中は死ぬのが怖いのは当然として、その先の『みんなで笑う為に』集まってんだ。
 なら眉間の血管ブチっとしそうになってる奴の末路は簡単、だろ?」
 『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)はにやりと笑うと氷戒凍葬『浄護白雨』を発動だせた。
 神聖さすら感じさせる優しき白雨が降り注いだかと思うと、カイトはすぐさま氷戒凍葬『黒顎逆雨』を発動。
 ほぼ同時に白雨が地面から吹き上がるように降るという異常状態が天衝種たちを包み込んでいく。
「――躙った分、笑えなくしてやる。今だ、やれ!」
 カイトの号令に伴い、後方でアサルトライフルを構えていた難民兵たちが一斉射撃。
 中でもスマートライフルのスコープを広げた兵が、天衝種の頭を撃ち抜いた。
 ピッと親指を立て、感謝を示す兵。カイトはそれに親指を立てて応えた。
 『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)は『是空』こと隠密機動装甲を纏いボロボロになった敵陣へと侵入。ど真ん中で魔導機刃『無明世界』を抜いた。
「難民部隊ねぇ……うん、大した熱量だね。思わずお仕事抜きで全力をもって助太刀してあげようなんて思うぐらいにはね? それじゃあ、推し通る道開いて征こうか」
 ラムダが刀を振り回せば、黒い刃の跡が空中に幾度も生まれ敵が次々に切り裂かれていく。
「さて、もう一太刀」
 対軍殲滅術式『無尽無辺無限光』。これまで幾度も猛威をふるってきたラムダの剣が、巨大な戦車型天衝種とパワードスーツの集団に着弾、広域にわたって灼滅の光が広がる。
 当然反撃は起こるものだが、『ちいさな決意』メイメイ・ルー(p3p004460)が発動させた治癒の力が降り注ぐ砲弾からの被害を軽減していた。
「様々な想いを背負って、あるいは胸に宿して……この戦場に立つ人たちと共に。
 誰も、これ以上何も喪わないように。
 『明日』を、夢見るだけじゃなくて……その手で、掴みに。
 なんて、勇気なのでしょう……わたしも、強くあることが出来そう、です。
 さあ、行きましょう……!」
 大空をハイペリオンが飛んでいくのを見上げつつ、メイメイはタクトを高らかに掲げた。
 メイメイに守られた難民部隊が更に突進。グロース師団の天衝種たちを切り拓いていく。
 そんなメイメイを落とそうと空から大鷲型の天衝種が急降下し襲いかかる――が、その直前でズドンというライフル弾の銃声が響き、その頃には天衝種の身体が撃ち抜かれていた。
「生きるためにやってきた者達をむざと死地へ送るわけにはいかない。お膳立てなら任せておけ」
 『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)がライフルをリロード。空薬莢を放り出すと、敵の中でも特に強力な個体や大型の敵の影に隠れ狙撃使用鵜としている個体を狙って撃ちまくる。
 が、それだけではない。
「総員、準備はいいか」
 ラダがハンドサインを出すと、難民部隊の中でも狙撃を得意とする猟師たちで編成された部隊が一斉に身を乗り出し、構え、そして発砲した。
 一人一人の狙撃はやわらかいものだが、集まれば凄まじい威力となる。
「孤立はするな。群で戦い、負傷者を下げることで損耗を下げ、増援によって循環させろ」
「ニルは、まもりたいのです。おだやかなじかんを、おいしいごはんを。だから、がんばります」
 『あたたかな声』ニル(p3p009185)はそんな風に一つの群れとして戦う難民部隊の中核に入るようにして、『天上のエンテレケイア』を発動。
 魔術の砲弾が次々に撃ち込まれる中を突進すると、反撃とばかりに『ケイオスタイド』の魔術を解き放った。運命を塗り替える黒き魔術が、敵陣を包み込んでいく。

成否

成功


第3章 第6節

赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
クロエ・ブランシェット(p3p008486)
奉唱のウィスプ
アルフィンレーヌ(p3p008672)
みんなの?お母ちゃん
ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)
ラッキージュート
秋霖・水愛(p3p010393)
雨に舞う
アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)
ライブキッチン
フーガ・リリオ(p3p010595)
青薔薇救護隊
佐倉・望乃(p3p010720)
貴方を護る紅薔薇
灰燼 火群(p3p010778)
歩く禍焔
常田・円(p3p010798)
青薔薇救護隊
玄野 壱和(p3p010806)
ねこ

 一方こちらは後衛拠点。
 人民軍に重傷者や死者は出ていないと述べた理由が、ここにある。
「人民達の心音が途絶えない為に、そしてこれ以上人民達が犠牲にならない為にも、特異点座標が、『青薔薇隊』がいるんだ!」
 『青薔薇救護隊』フーガ・リリオ(p3p010595)の一声によって集まったのは、かつて『青薔薇救護隊』と呼ばれた栄えある面々である。
 彼らはこの戦場でも救護隊としてその力を奮っていたのだ。
 そう、アーカーシュで鉄帝の兵たちを治療して回った、あのときと同じように。
 フーガの口ずさむ歌は人々の希望を思い出させ、生きることを思わせる。それはフーガが戦いの中で見いだした、『死傷者を減らす』という強さだ。
 そしてそれは、彼だけの強さではない。
「友人が頑張っているのに、黙ってみているなんてできない。手を貸すよ、フーガ。
 この赤羽様と大地クンを存分に使い倒すといイ」
 保護結界によってテントを守った『彼岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)は、早速運ばれてきた人民軍の負傷者を治癒魔法によって治療する。
「たとえ戦火が降ろうと、人命を繋ぐこの場所だけは守ってみせる!
 気ィ抜くなよお前等、戦いはまだ終わっちゃいねェ!」
 腹に銃弾をくらったらしい兵士が青い顔をして担ぎ込まれてくるが、その傷口に手を当て、魔法によって傷口を縫合した。
「それにしても、現在の鉄帝では医者は引く手数多と聞いていたが。ここまでとはな……」
「戦争なんだから。どれだけ手があっても……」
 『雨に舞う』秋霖・水愛(p3p010393)も同じく担ぎ込まれた兵士を治療用の簡易ベッドへと寝かせる。獣に腕を食いちぎられそうになったようで、痛ましい傷にアルコールをふりかけ素早く消毒した。痛みに呻く相手を、強く……しかし優しく押さえる。
「だーいじょうぶ、みんな治してみせるよ」
 薄めをあけた男はただの農夫だ。だが、彼は水愛の優しい微笑みを見て『天使』と呟いた。きっと、彼はなんとか生き延びて水愛にまた会いに来たいと思うことだろう。
「ラッキーボーイ&ラッキーガール、待たせたな!
 この強運の亜竜種が来たからには、屍累々とは言わせねぇ。一人でも多くを救うんだ!」
 『幸運の女神を探せ』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)が怪我人を抱きかかえるようにしてテントへと飛び込んでくる。彼の抱えていたのは銃を抱えた少女だ。こんな少女まで戦う現状を嘆くべきなのか、そうさせる新皇帝派の悪逆こそを憎むべきなのか。
 だがジュートはあくまで、今この瞬間を愛した。
「大丈夫。怪我を治そうな。そうしたら、好きなことを好きなだけやらせてやる」
 ジュートはウィンクをしてドラネコを少女に抱かせると、『夢みるフルール・ネージュ』クロエ・ブランシェット(p3p008486)に治療を任せた。
「あとは頼む。次行ってくるわ」
 手をかざし、外へと飛び出すジュート。クロエは頷き、少女の傷口に手をかざした。
「負傷者も多くなっているけれど、生きるためにこの国の人も戦っているんだよね……。
 それなら尚のこと死なせるわけにはいきません」
 『人民軍』とまで呼ばれた難民部隊の戦力はなにも銃を持った農夫たちばかりではない。
 医者や看護師、あるいはその手伝いができる女性たちがこの救護テントには集まっている。
 クロエの医療知識はそんな彼女たちに伝播し、治療をひとまず終えて休憩する負傷者たちのケアを任せるにたる状態であった。
『そっちは大丈夫?』
『ああ……けど薬が底を突きそうダ。配達部隊はそろそろ到着するから、受け入れの準備を』
 『青薔薇救護隊』玄野 壱和(p3p010806)にファミリアーで通信を入れると、同じくファミリアーや式神を使って周囲の状況を把握していたらしく答えてくれる。
「なるべく鉄帝のゴタゴタには関わらねぇようにはしてたガ……まぁ、青薔薇隊として呼ばれたからにはやってやるサ」
 フッと苦笑し、壱和は周りをあらためて見た。
 女子供が水やタオルや薬を手に駆け回り、ここもまた一つの戦場なのだと思わされる。
 そしてなにより彼らは、ただの市民だ。
 壱和にはそれが、『鉄帝のゴタゴタ』には見えなかった。目の前の誰かを救う、ただそれだけに見えた。
 そしてそれこそが……。
「ほれ、生きる為に戦ってんだロ?だったらこんなとこで倒れんナ。
 ったく、さっきからキリがないネェ…。
 前線は余程激戦区とみえル。ほい次ィ」

 ドレイクチャリオッツには次々と負傷者が担ぎ込まれていく。
「皆さん無理はしないで! 怪我をした方は馬車に乗ってください! 援護はこちらで行います!」
 『ふもふも』佐倉・望乃(p3p010720)が手を振り、そしてよたよたと歩いてくる負傷者に肩を貸しては馬車へ誘導していく。
 そんな負傷者を卑劣にも襲おうと迫るヘイトクルーの集団。
 空から投下された彼らは着陸装置を使ってふわりと地面におりたつと、赤い憤怒の手斧を振りかざし走り出した。
 が、望乃がそれを許すはずがない。なにせ愛する夫から頼まれたのだ。仮にそうでなくても、この場は――!
 望乃の放つ光の翼がヘイトクルーへと叩きつけられ、更には炎の蹴りが叩き込まれる。
 『歩く禍焔』灰燼 火群(p3p010778)が間に割り込み、彼女たちをかばったのだ。
「先にいけ、ここは俺らがなんとかする」
「……ありがとうございます!」
 ご無事で! と望乃が馬車を走らせるのを背中で感じつつ、火群はザンッと足を踏みならした。地面が焦げるのではと思うほどの美しい炎が舞い上がる。
「ま、フーガに頼まれちゃあな。放置して死傷者でまくるってのもマズイし?」
 飄々と構えるが、しかし敵に囲まれた状況なのは変わらない。
 火群は苦笑し、自らの負った役目の重さを再確認する。
「倒れるな。退くな。ついでに戦い続けろ……か。ひでえオーダーだけど、やりがいってヤツはあるよな!」

 馬車が到着し、『青薔薇救護隊』アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)と『みんなの?お母ちゃん』アルフィンレーヌ(p3p008672)は怪我人を丁寧に運び出していく。
「アルフィンレーヌ!」
「任せて。その人はこっちに」
 二人は力をあわせながら怪我人をそれぞれ重さに応じて振り分け、適切なスタッフへと受け渡していく。
 すぐに治療が必要なら、医療知識と治癒魔法がそれぞれ使える仲間へ。そうでないなら治療魔法が使える仲間へ。治療が簡単な軽い傷や疲労なら看護スタッフへ。
 そんな中、青い顔をして両手をあげ、こちらを見つめる男がいた。
「あら、あなたは?」
 アルフィオーネの問いかけに、男は自らの軍服の胸についたバッジを示す。
「帝国陸軍グロース師団第七連隊所属、ベルデル准尉……です」
 はっきりと敵だ。
 軍人でも敵と味方に分かれて戦っていただけに、これまで誰も気付かなかったようだ。
 周りの人々がざわつき、中には殺気すら放つものもあったが……しかしアルフィンレーヌはそんな彼との間に入って手をかざす。ここは任せてというシグナルだ。
「ここは『怪我をした帝国市民』を受け入れる場所よ。あなたはだあれ? 帝国市民? それとも市民を襲う敵?」
 男は力なく肩をおとし、そして泣きそうな顔でうつむいた。
「家族が……師団の宿舎で暮らしてるんだ。抵抗すれば処刑される。けど、娘と同じくらいの若いやつらに銃を向けろと命令されて……それで……」
 アルフィオーネがゆっくりと歩み寄り、ブランケットを肩にかけてやる。
「あなたも『市民』よ。泣き止んだら、こっちへきて手伝ってくれる?」
 アルフィオーネの微笑みに、男は泣きながら胸のバッジをむしり取った。

「僕はもう医者のタマゴじゃない。タマゴのままじゃいけないんです」
 重傷を負った患者が運ばれてくる。『青薔薇救護隊』常田・円(p3p010798)はその状態を見極め、簡易ベッドに寝かせて治療薬の瓶をとる。
 傷口の消毒。そして魔法の薬による再生治療。元いた世界ではありえなかったような治療法が、この世界には溢れている。そしてもとした環境では直面しなかったような死と隣り合わせの時間が、ここにはあった。
「動ける人はこちらに! 重傷者は無理に動かさないでください!」
 立ち止まっていたら、目の前で人が死ぬ。手を動かせば、人を生かすことが出来る。
 円は必死に薬を混ぜ、投与し、そして看護スタッフへ患者をパスしていく。
 それは例えば敵の群れへと刀一本で飛び込み切り結びながら突き進むさまに、どこか似ていた。
 その勇敢さこそ……。
「必ず助けます! だから、生きることを諦めないで!」

成否

成功


第3章 第7節

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘
観音打 至東(p3p008495)
劉・紫琳(p3p010462)
未来を背負う者
大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)

 グロースの暴力的な『爆発』から逃れた建物軍では、今も敵味方がぶつかり合っている。
 建物内の戦闘ゆえ天衝種は主に人型。ヘイトクルーによる質より量の兵力が主であった。
 そんな連中に対抗するのは『劉の書架守』劉・紫琳(p3p010462)。
 対物ライフルをリロードすると、カバーに使っていた装甲車両の脇から身を乗り出し発砲。
 紫晶重力弾(アメイズ・グラヴィティ・ヴァレット)が接近していたドローン戦闘機型天衝種に着弾し、激しい重力爆発を起こす。墜落し爆発したことでサブマシンガンを連射していたヘイトクルーたちも吹き飛び、紫琳はそれを眼鏡の奥の瞳で確認して素早くカバーに戻った。
 フウ、と小さく息をつく。
「今です!」
「よっしゃ! 野郎共いくぜ!」
 『社長!』キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)は集まっていたごろつき共改めルンペルシュティルツ社員たちが爆撃の危険が無くなった野外へと飛び出していく。
「ここが俺らの名の売り所だ。だから盛り下げるような真似は絶対にするんじゃあねェぞ。
 死んだら葬式は祝勝会と纏めてやる!片手間に弔われたくなかったら全力で戦いやがれ!」
 釘バットでヘイトクルーを殴り倒し、なんとも言えない声をあげるスタッフたちを眺め、キドーはククリナイフを別の天衝種に突き立てた。
「こいつらが俺の群れだ。群れたゴブリンの恐ろしさを教えてやるぜ」
 ゲラゲラと笑うキドーの背後からはワイルドハント狩猟団が飛び出していく。どちらが敵かわからないような光景に、『破竜一番槍』観音打 至東(p3p008495)は小さく苦笑した。
 そして、刀を手に滑るように別の屋内へと突入。扉を蹴りあけ中で待ち構えていたヘイトクルーの首を一刀のもとに切断する。
「――さよですか。では皆様、私が、お先に参りますゆえ――」
 口に出すのは敵への怒り(ヘイト)ではなく、死ではなく命を覚悟する者たちへの敬意。そして、自らがその先をゆくという覚悟。
「対するは彼らの敵。あれらはわれの敵ならずして、しかしなればこそ、これはわれを擲つに足る戦。
 即ち、誰かのために。懐かしい感覚ですネ」
 建物内を駆け回り、アサルトライフルによる集中砲火を浴びせようとするヘイトクルーをモノともせずに斬り伏せる。いや、当然のように傷だらけなのだが……それでもだ。
「勝算があります! タンク役には及ばずとも、素人さんよりは避けられるし耐えられます!
 それに――私はこういう戦さをすると、私を知る者はみな、よく知っておりますゆえ。
 全ては勝って還る為! わかったら進軍! 我に続けーーッ!」

「お前ら! 俺らが守ったやつらに後れを取るヤツがいたら、ハニーへのラブレター朗読の刑だ!」
 ブラトンが部下たちに怒号を飛ばし、自らも率先し敵へと突っ込んでいく。
 『革命の用心棒』ンクルス・クー(p3p007660)はそんな様子を穏やかに、しかし勇敢に笑った。
「こんなに沢山の人が!
 一人は皆の為に! 皆は一人の為に!
 なら私も皆の為に全力を尽くすよ!
 皆に創造神様の加護がありますように!!」
 人民軍を統率し、自分もまた先陣を切って突っ込んでいくンクルス。
 この規模で動かす今こそ戦略眼が活きるときだ。自らを戦略的に活用し、自軍の損耗を押さえつつ敵陣を引き裂きナポレオン時代からお決まりの各個撃破で潰していく。
 そして潰すに当たって頼りになるのが、大火力の味方。
 誰在ろう、大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)である。
「ここが一つの正念場。
 民を守り、戦に勝利すべく、武蔵が征くぞ」
 大砲の脇からスライドして現れた格納式の鞘から柄が飛び出し、抜くとそれはふたふりの剣であった天叢雲剣、天羽々斬。大砲の狙いをつけつつ、武蔵はその両刀を大上段に振りかざすと嵐を纏って振り抜いた。
 着弾したエリアが纏めて吹き飛び、ヘイトクルーたちがポップコーンのごとく弾けていく。
 そして、開いた敵陣へ突っ込むように自らの全艤装に呼びかけた。
「全砲門、開け! 目標、敵天衝種群! 一斉射!」
 戦場に、炎の華が咲き乱れる。

成否

成功


第3章 第8節

長月・イナリ(p3p008096)
狐です
星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す
ガイアドニス(p3p010327)
小さな命に大きな愛
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女

「さて、大回天事業の残骸の回収と解析は後回しにして戦況を良い方向に進ませましょうか」
 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は腕まくりをし、医療拠点から前線の様子をファミリアー越しに観察していた。
 ズンと胸に刺さるようなショックの後、ファミリアーの接続がきれる。おそらく敵航空戦力によって撃ち落とされたのだろう。わざわざ手間のかかることをよくするな、と思いつつも運ばれてきた味方の兵への受け入れを進める。
 外へ出ると、敵と味方の航空戦力が格好な距離で戦闘を繰り広げているのが見えた。
「あれは……」
 見覚えのあるイレギュラーズだ。そう、『人類の盾』セレナ・夜月(p3p010688)である。
「こんなにも沢山の民が戦うために立ち上がって……。
 他ならぬわたし達が奮起しない訳にはいかないわね。
 さあ、切り開くわよ!」
 箒に跨がり敵パワードスーツの肩から放たれるガトリングガンの砲撃をバレルロール機動で回避。すれ違いざまに月の魔術を解き放つ。
 一方、空を飛ぶ複数の砲台型天衝種たちがガチガチと合体し、巨大な砲台を形成する。狙いは後衛拠点だ。
「祈りと願いはこの地にも。これは全ての人々の希望となる流れ星――vis noctis。彼らを護って!」
 祈願結界『vis noctis』が展開。凄まじい規模に巨大化したセレナの結界が後衛拠点を包み込むバリアへと変化する。
「野暮な真似してんじゃねえぞ天衝種!」
 『探す月影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)は空へとライフルで撃ちまくり無理な砲撃でショートした砲台型天衝種を撃墜すると、馬に跨がり走るアミナと共に前線へと飛び出していった。
「よう。ちったぁいい顔つきになったじゃねぇか。一度は手を伸ばして焚き付けたんだ。少しくらいは手伝ってやるよ」
「あのとき以来、ですね。なんだか大昔のことみたいに思えます」
 苦笑するアミナに苦笑を返し、そして二人してライフルの狙いを敵へとつける。
「本人が望む望まないに関わらず、今このとき、アミナは旗印だ。
 目立つほどに士気を高め、自らの死期を近づける。一度狙われてるんだ。頭の切れる指揮官様がほっとくとも思えねぇ。
 この戦の間くれぇは守ってやるよ。
 共に死にたいっつー願いは、悪いが聞けねぇな。
 俺ァ別に全てを背負えとはいわねぇ。ただ、生きろ。それだけだ」
 生きろ。あのときかけた言葉もそうだった。逃げたいなら逃げても良い。戦いたいなら――。
 そんな中飛び出していく『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)。
「ふふ、ふふふ!
 すごいのだわー!
 ニンゲンさん達!
 小さな小さなニンゲンさん達!
 おねーさんが護ってあげなくちゃなニンゲンさん達が!
 空も大地も揺るがさんばかりなのだわー!
 小さいのに。儚いのに。か弱いのに。
 なんて、なんて、大きいのかしら!
 おねーさんの両手にも収まらないわね!」
 守るべきニンゲンさんたちを前に、ガイアドニスのテンションは高まる一方だ。敵を自らに引きつけ、集まってきた敵を攻撃させる。
「今よ! やっちゃいなさいなー!」
 シンプルだが有効な作戦だ。おかげで味方の損耗は非常に小さい。
 少なからず出る損耗は、駆けつけた『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)によって防がれる。
「回復おねがい!」
「任せて」
 ガイアドニスの呼びかけにこたえ治癒の魔法を展開する昼顔。
 状況を魔性の直感で完璧に理解し、周囲の味方へと放つ火風。その名も『暁風神火』。
 吹き抜けた風が敵の凶弾によって倒れ駆けた難民部隊の兵たちのスタミナを回復し、続けて放たれた治癒の力が傷を回復する。。
 それも、通常の治癒能力を大きく上回る力でだ。
(強者だけが生きれる国なんてゴメンだ。
 誰より強いから誰かの痛みが理解できない奴より。
 弱いからこそ誰かの痛みが分かる方がきっと尊いんだ。
 もう此れ以上、誰かが死ぬのはゴメンだ。
 だって僕は絆の花言葉が名前の、誰かが死ぬのを見るのが嫌な奴なんだ)
 抱いた想いは、叫びとなって放たれる。
「もう誰も死なせるもんか! さぁ僕も誰も死なない未来を掴みに行こう!」

成否

成功


第3章 第9節

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
ウォリア(p3p001789)
生命に焦がれて
パーシャ・トラフキン(p3p006384)
召剣士
アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
海軍士官候補生
時任 零時(p3p007579)
老兵は死せず
久留見 みるく(p3p007631)
月輪

 この戦場で戦う命、その塵一つ分だって奴らにくれてやるものか。
 『老兵は死せず』時任 零時(p3p007579)はその一心で戦場を走り、刀をふるう。
 退役した老兵として戦場を遠くに見るのはもうずっと前にやめた。
 そして今、彼に触発されたように老人たちが銃を持ち戦場に集まっていた。
 退役した元鳳圏陸軍兵も、その中に混じっている。実際の所、彼らは零時そのものに触発されたクチだ。
「若いモンが命はって、この先も生きるために戦うってんだ。俺らが戦わなくてどうするよ」
「そうだね。けれど……」
 零時の『分かっているよね?』という目に、突撃銃を構えた老人が煙草をくわえたまま笑った。
「安心しな、『老い先短い命から』なんて言やあしねえさ。あんただって、そんな考えしちゃあいないんだろ?」
 こくりと頷き、零時たちは走り出す。統率された群は軍となり、敵陣に決定的な穴を穿つ。
「ゲハハハ、窮鼠猫を噛むってえやつだね。
 こうでなきゃいけねえや。やられっぱなしは──面白くねえからなあ!」
 そこへ飛び込んだのは『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)。
 彼の目には、はるか過去が映っていた。
 失ったものは二度と戻らない。
 この戦いに勝ったとて、彼らの大切なものは返ってこない。
 だが、今、戦うのは。私と同じく『もう二度と奪われない為』だ。
(私と違うのは、きっと彼らのその目が明日を向くからだ。ならば、私がするべき事は──)
 目の色をかえ、今を見つめる。
 その表情は世界で一番有名(?)な山賊だ。
「手ェ貸してやるよ。この最強の山賊、グドルフさまがな!」
 大上段から叩き込んだ斧が、戦車をぶった切り爆発させる。
 その爆風を突き破るように突入するのは『海軍士官候補生』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)たち仲良し三人娘である。
「一人ひとりの力は小さくても、みんなが集まれば大きな力に。いわしと同じだね」
「いわしと同じかしら? あ、今回ばかりはそうかも」
 召喚したいわしの群れの幻影が煌めき、ミサイルとなって敵兵団へと殺到していく。
 かつて誰かの願いだったもの。かつて誰かが願った未来。その残滓であり、幻だ。
 『いわし』は過去でありながら、未来なのである。
「これが……いわしの力だーっ!!」
 砲撃によってボロボロになったのは、天衝種の中でもひときわ大きな青銅巨人タロスだった。
 巨大な剣を大上段に構え、叩きつけるタロス。
 しかし『月輪』を上段でブロックした『月輪』久留見 みるく(p3p007631)一人によって、その斬撃は受け止められる。
 普段ではまずやらないようなパワープレイは、きっと『彼ら』に触発されてだろうか。
「今の貴方達──本当にカッコいいわ。
 クールとか、スタイリッシュとか……そういう事じゃなくて。
 あたしは……貴方達の心に寄り添う事が出来ないかもしれないけど……でも、力を貸すことはできる。
 きっと、貴方達を生きて帰すことができる!」
 側面から回り込んだ『召剣士』パーシャ・トラフキン(p3p006384)が、『サモナーズ・タクト』を振り抜く。召喚するのは当然『双星剣・ウルサ・マヨル』。
「こんな大群…逃げたくなるくらい怖いけれど……。
 でも、きっと、ここで逃げてしまったら──自分が許せなくなってしまうから!
 お願い、ウルサ・マヨル……皆を守って!」
 いわしの群れと共に空を泳ぎ、タロスの胸へと直撃する。
 群れは力。軍は強さ。そこへ難民部隊の人々が一斉に射撃をしかけ、タロスの胸に巨大な穴を穿った。
「このまま行くよ、皆!」
「勝つわよ!」
「私達は、負けません!」
 グロース師団は今や真っ二つだ。
 中央を穿つように切り拓かれた戦端を、グロースと戦うべく集まった仲間たちを通すために左右に展開し耐え凌ぐ。
「戦場を破壊する――心がなんとも躍る響きだ
 将軍の命は譲っておこう
 やるべき事は十全に天衝種を迎え撃ち、討滅する事のみ
 斬れ、進め、斬れ、進め――さぁ――オレと戦え!」
 そんな戦場で壁のように立ち塞がるのが、『戮神・第四席』ウォリア(p3p001789)であった。
 敵兵の放つ無数の銃弾が彼の鎧の上ではねるが、それだけだ。強固な装甲は革命派が組み立てた聖なる力を宿したパワードスーツ。その内側から魂の炎を燃え上がらせたウォリアは、白と金、そして鮮烈な赤いロザリオによって彩られた鎧で吠える。
「ここは通さぬ。押し通るならば、死を与えよう!」

成否

成功


第3章 第10節

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に

 師団規模の難民部隊と30名あまりによる精鋭イレギュラーズの奮闘によって、グロース・フォン・マントイフェル将軍とその師団はほぼきっぱりと分断される形となった。
 今『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)と『舞将』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)の眼前にあるのは、完全武装のグロースとそれによって焼け野原となった参謀本部跡地のみである。
「さすが鉄帝の民、と言えばいいのかしら。私達がかすみそうなくらい頼もしいわね。
 勿論負けてはいられない。イレギュラーズとしての責務を果たしましょう」
「だなー! ここに来た皆はやる気だ。それなのに、オレが折れる訳にはいかねーじゃん?」
 バットを構える洸汰と、水晶剣を構えるアンナ。
 それを、グロースはサディスティックな笑みで見下ろしている。
「二人だけでこの私を抑え込めるとでも?」
「無理でしょうね。けど、『二人だけ』だと思ってるなら油断が過ぎるわ」
 直後、グロースの融合した古代兵器から光線が放たれた。シンプルだがあまりに強力なそれは、地面を右から左に薙ぐように放たれた直後に大爆発を引き起こす。
「うおっ!」
 仲間にダメージがいかないようにカバーにはいった洸汰がそれを受け、吹き飛んでいく。
 空中をぐるぐる回転し、バウンドまでする破壊力だ。消し飛ばなかっただけ洸汰の頑丈さが知れる。
 そしてなにより頑丈なのは……。
「へへっ、まだまだオレは元気だぞ、グロース! そっちはどうだ、まだやれんのか!?
 オレの頭を割ったって、オレの腕を折ったって、皆の心までは砕けねーだろ?」
 次の瞬間、速報から回り込み剣を繰り出すアンナ。グロースは砲台を一つそちらへ向けると、拡散したビームを発射。
 アンナは走りながらビームを次々回避すると、常人ではまず回避不能な集合ビームを跳躍と宙返りによって無理矢理回避。最後の一発を剣で受け――そして吹き飛ばされる。
「全て受けきるか。二人とも、少々侮っていたようだなならばここで確実に――」
 全ての砲台を解放しようとしたその時、『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)と『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)が左右双方から襲いかかった。先ほどの爆発やアンナの華麗な回避の影に隠れ接近を果たしていたのである。
「個にして軍…か。そこに『民』は、大切な人はないんだね。
 貴様のいくらでも生み出せる雑魚敵より、革命派の……『人民軍』の皆の方がよっぽど強いよ、心も願いもね!」
「その古代兵器。最後の手段って訳か。だけど知ってるか? 巨大化は、敗北フラグだってことを、よ!」
 ヨゾラの拳が星の輝きを爆発させる。
「『夜の星の破撃(ナハトスターブラスター)』!」
「紅――」
 一方でミーナのオリジナルスキルが炸裂。紅蓮のオーラが巨大な鎌となってグロースへと襲いかかる。
 直撃する――その一瞬。まるで糸を通すような精密さでサッカーボールがグロースのブロックを抜ける。
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)の込めた紅蓮のオーラが回転を速め、通常ではあり得ない蛇行機動によってグロースの顔面を直撃した。
「おっと……騒ぎを聞いて駆け付けたら何スかアレは。
 いかにもラスボスって雰囲気っスね、アイツをぶっ潰せばゲームセットって訳か。
 事情なら後で追えるし、来たからには仕事してかねぇとな!」
 跳ね返ったボールをトラップし、葵はにやりと笑う。

成否

成功


第3章 第11節

茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
ダリル(p3p009658)
勇猛なる狩人

「話は聞かせてもらったぁー!
 私ちゃん! 1名師団参陣! ってな?
 ちゃんアミナマジさんきゅ! 後でいっぱいかまってあげよう。
 うんうん、強いぞーかっこいいぞー! そしてかわいい」
 言いたい放題叫びながら突っ込んでいく『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)。初弾として飛び込んだ仲間たちが損耗をさけるべく下がる動きと交代するように、自らをまるで一発の弾丸とするかのようにグロースめがけ突っ込んでいく。
 振りかざされた巨大な『脚』と秋奈の剣が激突する。
「貴女も戦いの中に生きる者? むしろ、そういうことなら話が早い。
 先輩兵器から言わせてもらうけど、ろくなことになんないぜ?
 ま、それでもっていうのなら……見せてもらうぜ貴女の力を」
 ガギギッと火花をちらし、そのまま勢いで押し込みにかかる。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
 当然、一発の弾丸に気を取られれば別の攻撃から気が逸れる。
「ほうほうほう。何じゃできるではないか! して堕ちたな。ならば遠慮はいらん。全力で鉄槌を下すのみよ!」
 『輝きを目指して』ダリル(p3p009658)が傷だらけの翼を広げ、赤黒い魔術の砲撃を解き放った。
「くっ――!」
 苦しげに振り返り、砲撃によって相殺を狙うグロース。
「堂々と現れた敵は下すのみ。勝てぬとも少しでも破壊し、尽くすが我が堕天で選んだ行為よ。
 終結はもうすぐであるからな! 諦めてたまるか!」
 ダリルとグロースの砲撃は相殺され――たかに見えたが、潜ませるようにして放ったもう一発の魔術弾がグロースの兵器に命中。
 『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が地面にドンと足踏みをすることで追撃にかかる。
「兵器をその身に宿す、実に結構な発想だ。
 だが武器なんてもんはなんでもかんでも増やせばいいってもんじゃない。
 デッドウェイト、可動域、接合部の強度……拠点防衛特化なら機動力や旋回性能はどうかな? 魔種の身体の時のままか?
 弱点やリスクもきちんと考慮しないと立派に戦術兵器として利用出来てるとは言えないな!」
 瞬間鍛造した『相克斧』を握りしめ、殴りかかる錬。
 ついにグロースの古代兵器の脚の一本が、びきりとヒビを入れ始める。
「鬱陶しい連中だ、貴様等は! 本当に!」
 グロースは叫び、そして口の端で思わず笑っていた。
「認めるしかないようだな。貴様もまた強者であると……!」
 ガチンと二つの砲台が合わさる。その様子にダリルと錬が同時に危機感をあらわにした。
「まずい! 防御を――」
「「まかせて!」ください!」
 青い妖力と赤い魔力が左右からがちんと合わさり、『君の盾』水月・鏡禍(p3p008354)と『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)が防御の構えをとる。
「さて、攻勢を耐え抜く我慢のしどころというわけね。やってやろうじゃないの。鏡禍を落とすような無様を晒すつもりもないわよ」
「困難そうな相手ですが何とか耐えきってみせましょう。少なくともルチアさんより先に倒れるわけにはいきませんから」
 二人が互いを支え合うかのように、巨大な鏡の障壁を呼び出す鏡禍。
 ルチアもまた障壁を作り出し、それらを何重にも連ねていく。
 並の攻撃などものともしないだけの障壁と治癒能力を獲得した二人に、グロースの砲撃が叩き込まれた。
 魔術式の実弾として撃ち込まれたそれは障壁を何枚も破壊し二人に命中。
 が、二人は互いを支え合うような姿勢で攻撃に耐えきった。

成否

成功


第3章 第12節

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
雨紅(p3p008287)
愛星
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
陰房・一嘉(p3p010848)
特異運命座標

「グロース師団の兵力が押さえ込まれていても、なおこれだけの暴威。
 師団を保つのに兵力は不要であり、グロースただ1人があれば良いのでしょう。
 ……だから、お前を倒す!」
 『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)はカバーにしていた壁から身を出すと、ボウガンによる射撃を浴びせ始めた。
 極めて的確かつ強力な一撃が、グロースの脚の一本に突き刺さる。あれだけ堅い装甲を抜く一撃は、必ず次へと繋がるのだ。
 つまりは――。
「遅くなっちゃってごめん! いくよ!」
 『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)の燃え上がる『機煌宝剣・二式』が食い込んだ矢を更に撃ち込むかのように叩きつけられた。
「古代兵器との融合…こんなことができるなんて。
 でもなんかおぞましいような……まあ、サイボーグのオイラが言えたことじゃないんだけどね。
 とにかくこれ以上の暴虐は許さないよ!」
「許さぬならどうするというのだ? この私を止められもしないで!」
 脚を強引にふり、チャロロを振り払うグロース。
 だがチャロロは地面を転がってもその闘志の炎を消すことはなかった。
「オイラはタフなのが取り柄なんだ、ギリギリまで耐えてやる!」
「――そうらしいな!」
 更なる一撃がチャロロへと突き込まれた。巨人の踏みつけのごとく鋭い脚が繰り出され、チャロロはそれを腕で受ける。ばきんと片腕が破壊された――が、その瞬間。
 『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)の繰り出す槍がグロースの脚を撃ち弾いた。
(戦というものは、物も人も心もボロボロになって、終わってからも続くもの。
 それでも、その戦後を乗り越える皆様を守り、心を奮い立たせる為に――)
 ぐるんと槍を回し、構えてみせる雨紅。
「良い結末の為、幕引きの為、この槍と共に舞いましょう。これ以上、踏みにじらせはしません!」
 雨紅の舞うような槍さばきとグロースの脚による連撃が正面からぶつかり合う。
 そんな中、後方から迫ったのは『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)の鋭い突きであった。
 メロディア・コンダクターと呼ばれるイズマの細剣は、まるでオーケストラのような美しい音楽を作り出しながらグロースの融合された古代兵器の後方を襲う。
「鉄帝国を壊した元凶を許しはしない。
 悪意はない? ふざけるなよ。
 悪気がなかろうがやった事が全てだ。
 その報いを受けろ!!」
 咄嗟に翳した脚とぶつかり、グロースが挟み込まれることをさけて飛び退く。
 イズマはそれを追いかけ、強力な斬撃によって脚の一本を切り払った。
「なっ――!」
 驚きに目を見開くグロース。
 砲台が外れドローン化してイズマへ砲撃が放たれる。が、それらに割り込みをかけたのは『特異運命座標』陰房・一嘉(p3p010848)だった。
「此処に至って、何とは語るまい。望む結果に向かって、己が為すべき事を、ただ為すのみだ」
 自らの肉体によって攻撃を受け止める一嘉。
「グロース将軍。この国は、強者が全て、弱者は不要と言っていたな。
 ではオレ達に敗れる程度の、弱者の貴女は、この国に不要と言う事だ」
「既に勝ったつもりか!」
 砲撃をもう一つ重ね、一嘉へと放つ。二発分は流石に受けきれなかったとはいえ、一嘉はしかし殺されてはいない。
「少なくとも……オレたちを殺すことはできていない」
「くっ」
 グロースが歯噛みする。状況の劣勢を、グロース自身が何より分かっているのだ。

成否

成功


第3章 第13節

セララ(p3p000273)
魔法騎士
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)
レ・ミゼラブル
ファニー(p3p010255)
ラグナロク(p3p010841)
剣の精霊
プエリーリス(p3p010932)

「これだけたくさんの人々が一緒に戦ってくれてるんだ。
 なら、負けられないよね。
 人々の期待を、希望を、祈りを背負い。力に変えて悪を討つ!」
「妾も力を貸そう。セララよ! 聖剣の力を引き出し、悪を討つのじゃ!」
 『風精の祝福』を与え『魔法騎士』セララ(p3p000273)と共に空へ飛び上がる『剣の精霊』ラグナロク(p3p010841)。
「ありがとう、一緒に行くよ! セララブレイク!」
 セララの強力な斬撃がグロース本体へと向かう――が、その途中でドローン化した砲台が阻み、激突。至近距離から放たれそうになった爆発はしかし――咄嗟に突き飛ばした『ファーブラ』プエリーリス(p3p010932)によって阻まれた。
「大丈夫よ、ママが守ってあげるわ。
 だから貴方たちは遠慮なく攻撃を続けなさいな」
 至近距離から砲撃を受けたことでかなりのダメージを負っていたが、七色の力がまだかろうじてプエリーリスを覆っている。
 そして、残った力の全てを使って色の障壁を拡大。
 なぜなら、グロースが全ての砲台を周囲の仲間たちへと向けたのだ。
「みんな! 危険だからママのもとへ集まって!」
 グロースから放たれた砲撃から逃れるようにセララやラグナロクたちが障壁内へと転がり込む。
 全ての攻撃をうけきったプエリーリスは、がくりと地面に膝を突いた。
「あいつ、みんなのママになにするぴょん!」
「みんなのママだったの!?」
 壊れた障壁の中から姿を見せるウサミと『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。
「アレを倒せばここでの戦いも終わるんだよね? ウサミちゃん!」
「間違いなくそうぴょん、将軍を倒せば軍は瓦解するぴょん!」
「それなら最後にもうひと頑張りしようか!
 ここで活躍すれば知名度も上がって人気者になれるよ!(アイドルとしてじゃなくて闘士としてかもだけど)」
「本当ぴょん!?」
 おっしゃーといってウサミが鎖を放ち、グロースの脚の一本へと巻き付ける。そこへラグナロクによる反応支援を受けたセララが超高速で迫った。
 斬撃がもう一本の足に深いヒビをいれ、更に焔の槍が突き刺さりヒビを大きくさせていく。
(前線の維持を。勇敢に戦う者たちのすぐ傍で支援を行うことこそ、私の癒し手としての役目です――)
 『ライカンスロープ』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)が素早く前に出ると、焔たちを撃ち払おうとぶつけた砲撃にカウンターヒールを叩き込んだ。
 砲撃と治癒の力が拮抗し、最終的に砲撃が勝る――が、それだけ稼いだ時間こそが最大の勝機。
「おまえにBAD ENDをくれてやるよ!!」
 二人の影から飛び出した『Stargazer』ファニー(p3p010255)が足を駆け上がり、セララたちのつけた決定的なヒビめがけてその拳を叩きつけた。
 爆発するように燃え上がる青い炎が、ついにグロースの脚をへし折る。
「BAD ENDか……そうかもしれん。だが、貴様等も道連れだ!」
 四つあったうちの二つを失ったグロース。彼女は残るふたつもパージしホバリング状態となると、ドローン化した砲台の全てを合体させファニーたちへと向けた。
 直後、ラグナロクの回復支援を受けつつプエリーリスを限界まで回復させたミザリィが彼女の背に手を当てる形で構える。
「もう一発だけ、耐えさせて」
 これまで何度も唱えた了解の言葉をファニーとミザリィは頷きとともに返すと、仲間たちをかばって前へ出る。
 砲撃が、三人を包み込んだ。
 希望の未来を、掴むための一ターンを稼ぐべく。

成否

成功

状態異常
プエリーリス(p3p010932)[重傷]

第3章 第14節

バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
老練老獪
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
テルル・ウェイレット(p3p008374)
料理人
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
闇と月光の祝福
セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)
約束の果てへ
綾辻・愛奈(p3p010320)
綺羅星の守護者
レオナ(p3p010430)
不退転

 稼いだ時間は命の時間だ。
 『変わる切欠』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)はそれを、一瞬たりとも逃さない。
「僕に愛国心と呼べるものがあるのか初めはわかりませんでしたが、
 祖国を乱されるとどうにも落ち着かなかったもので……。
 そんな日々はもう終わらせたいのですよ」
 祈りのように呟いて、ジョシュアは水仙の毒を作り出す。
 民が立ち上がったのは国家のためじゃない。あるいは国家は自分達を押しつぶし、時には迫害までしたかもしれない。だがそんな彼らは普通の日常をこそ愛し、そのために銃をとった。
 それは、ジョシュアも同じなのだ。
「負け戦の責任を取るのが仕事ではないですかね、将軍殿?」
 ジョシュアの毒にあわせ、『本と珈琲』綾辻・愛奈(p3p010320)が飛びかかる。
 至近距離で浴びせた『桜花破天』の術がグロースの砲台からエネルギーを徐々に奪っていく。
 次の一撃を繰り出す時間を送らせるほどに。
 愛奈は美しく微笑み、そしてグロースから大きく飛び退く。
 逃げるためでは、勿論ない。
 腕の仕掛けを解き放ちここぞとばかりに一撃を放とうとした『老兵の咆哮』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)と、鞭を放つ『秩序の警守』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)の攻撃に繋げるためだ。
(誰も彼もが生きるために戦う。
 武器を取るのが初めてなやつも。
 何よりも前を向いて生きるために)
「こりゃいい、これこそが自由ってもんだ!生きて勝って笑うぞ野郎ども!」
 バクルドの砲撃が直撃し、セチアが砲台に鞭を絡める。
 引っ張る力と砲台ドローンが反発する力はほぼ同じだが――。
「グロース・フォン・マントイフェル。看守としては生きて更生しろと言いたいけど、もうお前は救われない。
 そしてもうお前以外の死は要らない!
 私はセチア・リリー・スノードロップ! 鉄帝の看守として貴女の死刑を執行しましょう!」
 セチアが刑務所五訓を吠えるように唱えると、逃げようとするドローンが僅かにずつ引っ張られていく。
「オーケー、今だ!」
「手足を徐々に切り落とす。ということですね」
 バクルドと愛奈が砲台へと飛びかかる。
 狙うのはグロースの枯渇。それも完璧に枯渇させることは難しいだろうが、とれる手段を徐々に減らしていくことはできる。
 愛奈は手にした槍を砲台に突っ込み、バクルドがライフルを撃ちまくる。
 すると砲台は爆発を起こし、残る一体だけがグロースのもとへと戻っていった。
「チッ――!」
 グロースは舌打ちしつつ、砲台に残ったエネルギーの全てを費やして砲撃。
「そんな気はしてたが、古代兵器と融合するとはな……デカくなれば強くなったと思ってるなら、それは大間違いだぜ?」
 アルヴァはそれを、自らのボディで受け流しにかかった。
 アルヴァほどの卓越した防衛力をもってしても耐えきれないほどの砲撃が、彼の身体を徐々に蝕んでいく。これが常人であればゆうに十回以上は死んでいたことだろうに。
「前線の支持に回る。こんなバケモノ、何としてでも食い止めねばな。こっちは任せろ。怪我人は下がって回復してくれ」
「ン。グロース バルナバス 目指シテイル。
 強者 生キ残ル世界 実行シテイル。
 自身 強者 思ッテイル。
 ソウカ。
 君 太陽相手デモ死ヌ気無シ。
 君 命カケテイナイ。
 グロース。君ハ 死 恐レテル。
 弱者ナル 恐レテイル」
 このための回復要員として後方から駆けつけたのは『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)だった。
「死 弱サノ証等デハ無イ」
 傷付いた仲間たちに治癒の力を放射するフリークライ。
 直後。グロースの融合していたパーツがナノ単位で分離、変形しはじめ、彼女を包み込むパワードスーツへと替わっていく。
 急接近し、剣の形に変えた腕がフリークライへと迫る。ばきんとボディを貫き破壊する剣――はしかし、更に後方から治癒の魔法を唱える『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)によって抵抗された。
(本来であれば後衛陣地で支援するのが定石でしょう。
 ですが、目の前で重症や死亡するのを見過ごすのは許し難いです。
 例え僅かな力でしかないとしても、諦める理由にはなりません。
 皆様の冒険と共に。私は、望んで此処に来たのですから!)
 みるみる回復していくフリークライのボディ。
 グロースは飛び退き、そして息を整えようと呼吸をした。
 ぜえぜえと肩で荒く息をする彼女は、これまでの全てを見下したような態度にはほど遠い。
「最終兵器の割には、随分と脆かったな?」
 30人ほどの戦力を叩きつけてやっと破壊できたというのは、脆いとは言えないが、アルヴァはあえて挑発のためにそう告げた。
 フリークライとテルルも健在だ。こちらの戦力は見るからに優位。
 だが一方で、『約束の瓊剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)と『亜竜祓い』レオナ(p3p010430)は仲間たち同様油断していなかった。
「グロース将軍がこの段階で投入する古代兵器……それも防衛作戦に投入するような戦術兵器だ。ただの強いビームを撃つだけの機械とは思えん。何か心当たりはあるか」
「心当たり? うーん……」
 レオナに問われて、ヴェルグリーズは鉄帝国に関する色々な記録を頭のなかでよぎらせた。
 その中でピンときたのは、鉄帝国の地下に埋まっていた古代兵器を利用し実験を握るというギアバジリカ事件の裏にあった軍部の計画である。
 当時の将校ショッケン・ハイドリヒが計画したというそれは、多くの命を犠牲に何かを目覚めさせるというもの。
 結果としてそれはギアバジリカとなったが、あれは聖女の反転によってくみ上げられたものであって、意図したものではなかったと言える。
 ならば本来意図したものは……?
 そこまで考えたところで、グロースがパッと天空に手をかざした。
 近くに放置されていた戦車が突然分解・再構成され、グロースの腕に大砲となって備わったのだ。
「あれは――!」
「下がれ!」
「守ル」
 アルヴァとフリークライが飛び出した所に、通常ではあり得ないような戦車砲が叩きつけられた。
「全ての兵器を我が物とする兵器――つまりは『歯車の神』!」
 ヴェルグリーズとレオナはそれぞれ剣をとり、仲間が作ってくれた隙をついてグロースへと襲いかかる。
(これまで多くのものたちをその力で虐げてきたんだろう。
 ならばそのキミが数という力でねじ伏せられるのも因果というものだよ。
 キミの残酷な行いの結果がこれだけの人々の団結を生んだんだ。
 人は生きる為に戦う、俺を振るってきた主達はみんなそうだった。
 その中でも生きたいという願いは一際強いものだった)
 ヴェルグリーズの剣に力が宿り、グロースの戦車砲をたたき壊す。
「キミは皆を追い詰めすぎたんだよ、自身の行いの報いを今ここで受けるといい」
 更に叩きつけたレオナの剣が、今度こそ戦車とグロースを分離させた。
「巨躯を超える存在感。だからこそ打ち倒すには丁度良く。
 正々堂々と挑むには困難、故にその経験も糧にさせてもらう。
 いざ尋常に!」
 二人の剣が、グロースへと交差斬撃をあたえ、パワードスーツをバラバラに破壊し吹き飛ばした。

成否

成功


第3章 第15節

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
レッド(p3p000395)
赤々靴
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
オニキス・ハート(p3p008639)
八十八式重火砲型機動魔法少女

「ここまで……ここまでの力を得たというのに、貴様等は追いすがるか」
 瓦礫と化したパーツを放り捨て、グロースは周囲にとまった戦車や飛行戦闘ドローンを召喚。分解し自らのパーツに作り替えると、全方位に砲台を向けた。
「後ろに隠れな!」
 砲撃を察知した『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が叫ぶと、仲間たちがその後ろに隠れる。
「ぶはははッ!随分と『らしい』姿じゃねぇか!上等だ!砕けるもんなら砕いてみな、この豚をなぁ!」
 盾を展開し防御構えをとるゴリョウ。撃ち込まれた砲弾の雨は彼の盾を一度吹き飛ばし、それでも頑強に防御の姿勢をとったゴリョウに激突する。
「ぶはははッ! もっとだ!」
 もう一発を見事耐えきり、ゴリョウは口の端から血を流した。
 その隙に『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)が『救世と慈悲の詩』、そして治癒の魔術によってゴリョウの体力を回復し始める。
(鉄帝は強者が生き残る国。
 生きるに優しいとは言えない厳しい環境で戦時中なのに、此処の民はそれでも気丈に生きていく。
 隣人同士手を取り合い生きていく。
 抗ってでも生きていく。
 生きるのに強い人達が沢山いる……憧れの国と民達)
 レッドたちの後ろには、今を生きる人々がいる。
 今を生きるために戦った人々がいる。
 グロースへの道を切り開くため、彼らの銃は使われた。
 ならば。
「グロース個人の力が絶対強者じゃないってとこ見せてやろうっす」
「はい! 死ぬ気で行きます。援護をお願い」
 走り出す『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)。
 ジェイビーとホランド、そしてカルネがそれぞれ援護射撃と防御を行い、リュカシスはただまっすぐ走ることにだけ全てを費やした。
「この戦いで楽しい事なんてひとつもなかった。ボク達の普通の日、返していただきます」
 煙をふいて崩れた戦車の残骸を腕に装着し、巨大な腕へと作り替えたリュカシスのパンチがグロースへと直撃した。
「ぐうう……!」
 大砲や戦車走行を集めた盾によってガードするグロースだが、その盾が無理矢理に破壊される。
(コャー、すごいの。強者こそを正義とする新皇帝派に対して、これ以上ない援護なの
 彼らの勇気に応えるべく、わたしもがんばるのよ)
 『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)がそうして開かれた僅かなスペースを滑るように抜け、グロースへと急接近を果たした。
 盾を装着していたパーツごとパージし、素手で防御の姿勢を取るグロース。胡桃は容赦なく、あるいは当然のように至近距離からの収束火炎輻射術式(Blazing Blaster)をぶちかました。
「わたしは炎なれば。その憤怒も何もかも、燃やし尽くすの。
 それしかできぬけれども、そなたを倒して、みんなでご飯を食べる明日を作ることくらいなら、きっとできるの」
 衝撃――からの、もう一撃!
「ぶれいじんぐ・あふた~・ぶらすた~!(収束火炎輻射術式・後詰――Blazing After Blaster)」
 全てのパーツが砕け、吹き飛ぶグロース。
 しかし、グロースは呼び出したドローン戦車を分解、再合体させライフルと大砲を合体。――向ける。
 と同時に『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)も呼び出したドローン戦車を分解、再合体させライフルと大砲を合体――向ける!
 両者大砲が向かい合うその位置で。
「確かにお前は強い。でも一人だけ。国を作ってるのはお前が『弱い』と切り捨てた人たち。だから私たちはそれを守るために戦う。それを傷つける敵を打ち砕く……!」
「できるものならやってみろォ!」
 両者砲撃。砲弾、交差。しかしてオニキスに迫ったそれは、割り込んだギベオンのシールドとそのボディそのものによって防がれた。直撃したのはグロースのみだ。
「これで最後だよ、グロース・フォン・マントイフェル……!」

成否

成功

状態異常
ゴリョウ・クートン(p3p002081)[重傷]
黒豚系オーク

第3章 第16節

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
マリオン・エイム(p3p010866)
晴夜の魔法(砲)戦士

「やあ、グロース将軍。ようやく相まみえられたかな。
 とは言っても、お互いかわす言葉も要らないよね。
 青空の精霊種、双影の魔法(砲)戦士マリオンさん。グロース将軍!ここで君を討つ!」
 男性モードとなった『双影の魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)はグロースへと迫り、各東洋セイバーを抜いた。
 手近な戦車走行を一瞬で削り上げ、剣を作り出すグロース。
 真正面から激突した剣と剣。
「この曇り空を終わらせる!」
 勝利したのは、マリオンの剣であった。
 装甲剣をそのままぶった切り、グロースの片腕を吹き飛ばす。
 そこへ迫ったのは『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)だった。
「近づくな――ッ!」
 グロースは戦場に転がったものをかき集めて巨大な爆発物を作るとセレマへと叩きつける。
 どんな相手でも一撃で吹き飛ばせると思えるほどの爆発がおきた――が、その中をセレマは悠然と歩いて行く。
「しまった!」
 何が起きたのか、グロースは理解できる。推察できる。しかし出来たときにはもう遅いのが、セレマの戦術であった。
「『初見殺し殺し』だ、将軍」
 セレマと契約した悪魔たちがグロースへと一斉に襲いかかる。
(それにしても、こっちに移ってからこんなことばかりだ。
 贖いとして、お前も実績になり果ててもらおうか)
 『もう遅い』と述べたのは、なにもセレマの反撃ひとつで済ますつもりではない。
「総員、一斉攻撃!」
「死中に活あり。ビビった方が負けって奴!」
 『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)とアルゴノーツの戦士たちが一斉に攻撃を集中させたのである。
(我(わたし)に出来ることなんて限られているのだわ。
 ならばここまで血路を切り開いた多くの人々の為にも。
 なによりも。
 お嬢様とまた平穏な日々を取り戻すため。
 ここで災いはその一切を刈り取ってしまいましょう)
 集中した砲撃の中を駆け抜けるレジーナ。その紅蓮の剣が、グロースへと直撃する。
「ある意味感謝なのかしらね。
 鉄帝が纏まる機会ができたんだもの。
 それがたとえ共通の敵を討つという刹那的な目的だとしても、この歴史は無くならない」
 いや、無くなってほしくないのかしらね。そうレジーナが呟くと更に『時には花を』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)が追撃を放つ。
 というのも、クラウディア率いる『オリーブのしずく』とアミナたち僧兵部隊による一斉砲撃&一斉治癒である。
「クラウディアさん、アミナさん、任せたよ!」
「ええ、お任せを」
「一緒に戦いましょう、フラーゴラさん」
 グロースが地面をがつんと殴った途端、飛び上がる無数の戦闘ドローン。全てが砲撃を放つが、それはフラーゴラを中心とした治癒のフィールドが押し返していく。
「ワタシも仲間も人民軍も生きて帰ろう……!
 立って、その脚で大地を踏み締めて守るんだ……!」
 ライオットシールドで弾丸を弾き、フラーゴラは勇ましく叫ぶ。
 驚くべきことに、ここまでの死者はなし!
「如何かしら、グロース閣下?」
 『鉄血乙女』リア・クォーツ(p3p004937)がこきりと拳を鳴らし、地を叩いたグロースを見下ろしていた。
「アンタが弱者と切り捨てた人達に追い詰められる気分は?
 バスナバスに従うしかなかったアンタの方が、よっぽど弱者だったって事よね!」
「く……」
 グロースは血を吐き捨て、よろりと立ち上がった。
「こんなことをしても、所詮弱者が蔓延りまた冬に飢える日々が戻るだけだ。
 スラム街を見ろ。金もないのに野放図に子供を作り法を逸脱しギャング集団に搾取される構図を自ら作り出す帝国の黴だ!
 革命派どもを見ろ。死すべき弱者どもに限界まで薄くした粥を配り『皆揃って一等賞』を最底辺で続ける帝国の癌だ!
 強者だけが生き残る世界がどれほど豊かでどれほど安全かわかるだろう。これは、それまでの自浄作用にすぎ――」
「いちいち喧しい!」
 リアの強烈なキックが、グロースの頬へ直撃した。吹き飛び転がり、そして驚きと共に起き上がるグロース。
「強者が生き残るなら、アミナも難民たちも生き残ってしかるべきよ。
 あの子たちは強い。いいえ、強くなった。弱者はあなただけよグロース。自分の弱さから目を背け、魔種になんて下ったあなただけ!」
 握りしめるのは赤いロザリオ。リアはアミナの想いを拳に込めて、グロースの顔面にそれを叩き込んだのだった。
「っていうか、今までよくまぁウチのアミナを虐めてくれたわね!」

成否

成功


第3章 第17節

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー

 幾度もの爆発がおきた。
 参謀本部周辺の建物が次々に崩壊し、またひとつが砕け散ったところで、その瓦礫の中から『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)がよろよろと起き上がる。
「あと、どのくらい……スか? まあ、わたしは、あと1ヶ月ぐらいは余裕スねぇ……!」
 強がった態度とは裏腹に、彼女の義手からはばちばちと嫌な火花が散り頭からは血と汗が混ざって流れ落ちている。
「ふふ…! まだまだ元気いっぱいさ!
 皆もそうだろう?
 それに…君と一緒にいる私は無敵だからね!」
 『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)も荒く息を整え、空中でなんとか姿勢を維持している。イスカはいつのまにかどこかへと居なくなっていた。照れくささなのか、立場があるのか、それとも単に面倒くさくなってしまったのかは謎だ。
「正直、そろそろ厳しいですわね……」
 二人の様子に、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が深く息をつく。
 けれど、言わねばなるまい。
「もう少しだけ、付き合ってもらっても良いかしら」
「「勿論」」
 二人の返答に、混じるものがある。
 『血の色に意味をもて』ルブラット・メルクライン(p3p009557)と『後光の乙女』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)である。
 これまで革命派と共に歩んできた仲間たちのひとり。彼らはグロースとの決着をつけるべく、ここまで戦ってきた。
「……やはり、私の心は民が前線で戦う事実を素直に喜べないようだ。
 だが、だからこそ、此処で悲劇を終わらせよう。
 今を生き抜く彼女達の願いを――そして此処に至るまでに積み重ねられていった『死』を無意味にしないが為に!」
 強く握った拳が、ルブラットの仮面の奥で燃え上がる意志の炎と呼応する。
 それはブランシュも同じだ。
「長かった。私達は争い続けた。
 この状況を見て、貴方が鉄帝の総意を語れますかグロース?
 弱者が生きるために起き上がった、必死の抵抗を。民衆の望む世界を。
 どうかこれを唱える事も最後になりますように。
 ――クラースナヤ・ズヴェズダーの足音を聞け。
 我ら全ての民の幸福を願う者なり。
 どうかご照覧あれ。その為の殲滅を良しとし、全ての障害を取り除かん」

 対して、グロース・フォン・マントイフェル将軍もまた。
 崩れた建物の壁にぺたりと背をつけ、両腕をだらりと下げている。
 頭からは血が流れ、息も荒い。
 だが表情には……深い笑みがあった。
「『弱者どもが』と……もはや、言えんな。ふ、ははは、はは」
 血に濡れた手で自らの顔を撫でる。
「強くなければ、生きていくことはできぬ。弱者は、死ななければならない。だがどうだ、ここにいるのは?」
 グロースはゆらりと壁から背を離し、ヴァレーリヤやブランシュたちへと一歩、踏み込む。
「皆強者だ。どうだろう、私と共に帝国の未来を築かないか。貴様等民が強者だというのは、もはや認めざるを得ない。ならば弱者となる他国の民らを喰らい、今こそ彼らが裕福に生きる未来を掴もうではないか」
「そんなことを、『後光の乙女』である私達が許すとでも!」
 ブランシュが叫ぶ。その気持ちは、もはや五人とも……いや、この場で戦う誰でも同じだっただろう。
「だろうな」
 グロースははあと深くため息をつき、そして首をこきりとならした。
「ならば意地だ。勝った方があの民を従えることになろう。私が勝ったら、あの民等を他国に突撃させ略奪の限りを尽くさせる。豊かな土地と未来を手にするのだ!」
「そうはさせん――」
 走り出したのはルブラットだ。
 両手の袖から暗器を滑り出し、グロースへと斬りかかる。
 対するグロースはコンバットナイフを抜いてルブラットと互角に斬り合った。
 グロースが背負っているのは、自らの狂気。
 ルブラットが背負ったのは、誰かの夢。
 勝敗は、紙一重で――。
「――!」
 グロースの頬を赤い線が走り、数歩後じさる。
 構えた拳と同時に周囲に魔方陣が生まれ、集合した兵器が無数の大砲を作り出す。
「闘争が鉄帝人の性! 卑怯者仲間として最期にアンタの闘争に付き合ってやりまスよ!」
 そこへ飛び込んできたのはまさかの美咲だった。
 繰り出したグロースの拳に自らの故障寸前の義手を叩きつけ、そして肩から先が吹き飛んでいく。
 グロースとて無事ではなかった。グロースの腕がおかしな方向へまがり、よろめく。
「ヴァリューシャの前なんだ。多少格好いい所をみせておかないとね!」
 マリアがそこへ雷を纏い豪速で飛びかかると、グロースの腹にキックを叩き込んだ。
 空中に放り出されるグロース。
 ヴァレーリヤが、そしてブランシュが走る。
「いきなさい、フローズヴィトニル!」
 ブランシュがフローズヴィトニルと共に飛び出し、グロースへと猛攻を叩き込んだ。
 『性急な砂時計』を起動させ更に。
 グロースはせめてもの抵抗として大砲をすべてぶっ放したが、ブランシュとフローズヴィトニルを飛ばすことだけしかできなかった。
 彼女たちの猛攻をまともに受け、グロースの力は殆ど失われている。
 それでもと拳を握り、背後に大量の戦車や装甲車、戦闘機やそれに伴う様々な兵器を寄せ集めた『ギア・タンク』とでも呼ぶべきものを作り出した。
「『ヴァレーリヤ』」
 未だかつて無いその呼び方は、しかし聞き慣れた友の声。
 ヴァレーリヤの横に立ったのは、メイスを手にしたアミナだった。
 ――この戦いに勝てば、全て終わる
 ――この戦いに勝てば、私達の『幸せ』が戻ってくる
 ――冬を越せなかった人達の犠牲も報われる
 微笑むアミナの表情は、ヴァレーリヤの内心と同じものを語っていた。
「「『主よ、天の王よ』」」
 唱える聖句が重なった。しかし、少しだけ違う。
「『この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を』」
「『この雷をもて我らの罪を罰し、かの魂に安寧を』」
 燃え上がるヴァレーリヤのメイスの炎。
 燃え上がる、アミナのメイスの雷。
 二人はグロースが兵器を解き放つと同時に、同じ言葉で聖句を締めた。
「「『どうか我らを憐れみ給え』!」」

 光と光がぶつかり合い、そして爆ぜた。
 最後に残ったのは、ぼろぼろになったヴァレーリヤたちの姿だった。
 この国を想った将軍の姿は、もうない。


「……やりましたのね」
 血塗れで倒れたグロースへと歩み寄るヴァレーリヤ。
「私は、ただ……戦争を……無くしたかった。強者の、国が、できれば……」
 その考えは間違っている。
 そう吐き捨てることができれば楽だったかもしれない。
 けれど、どうだろう。それは鉄帝国の目指した理想のひとつではあったのだ。
 やり方を……あるいは存在のあり方を誤っただけで。
 血に濡れたグロースの手を見つめ、はたと振り返る。
 アミナはその姿を見つめ、そして足早にグロースへと歩み寄った。
「グロース・フォン・マントイフェル将軍」
 アミナは彼女……あるいは彼だったものの名を呼んで、血塗れの手を握りしめた。
「あなたを殺して勝ち取った未来は、きっと幸せなものにしてみせます」
「アミナ……」
 短剣を握りしめ震えていた彼女は、もういない。
 彼女が縋るべき理想も、もういらない。
 勝利の先に、彼女は犠牲を呑み込んだ。

成否

成功

状態異常
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)[重傷]
願いの星
佐藤 美咲(p3p009818)[重傷]
無職
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)[重傷]
タナトス・ディーラー

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