シナリオ詳細
ローレット・トレーニングIX<豊穣>
オープニング
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燦々と降り注いだ赤日は肌をちりりと灼いた。木陰に涼むもまた一興か。季節移ろい、実り豊かなこの地は豊穣郷と渾名されている。
静寂に凪ぐ海に隔てられた遠き異国はイレギュラーズを神使と呼び、親しみ尊び世を移ろわせる。動乱の日を越えて、彼等と過ごす二度目の夏を霞帝は「天晴れ」と堂々と評価した。
神威神楽(カムイグラ)の二度目の夏を此の地で過ごす事となる神使達に彼が齎したのは『ローレット』によるある知らせ。
「俺も神使の一人、あの空中庭園に辿り着いた事がある。故に、この日を貴殿等の雇い主より聞き馳せ直ぐに理解は出来た。
神使たる貴殿等が『ローレット』に大量召喚されたことを起因する運命が流転した切っ掛け――それが今日なのであろう?」
朗らかに笑う霞帝の後方でうずうずと身を揺らしたのは彼に加護を与える四柱の主柱となる黄龍。「誠か」と問うた声音は弾み、神力を纏うその身に好奇たる色を乗せている。
「ああ。そう聞き及んでいる。貴殿等にとっても記念すべき日……詰まりは宴であろう?」
「霞帝」
肩を竦めた『中務卿』建葉 晴明の額にくっきりと刻み込まれた皺に霞帝はくつくつと喉を鳴らして笑った。彼の傍らで首を傾いだ紫苑の双りの娘。一方は肩を驚き竦め、もう一方はつんとそっぽを向いている。
「そそぎ、宴は好まぬか? 無理強いは為ぬ。『此岸ノ辺』でのんびりと過ごすのもまた一興だろう」
「別に、好まないわけじゃ無いけど」
「……賀澄、その、そそぎは緊張してるんだとおもう」
つんとして居た少女――そそぎは、己の双子の姉妹にあたるつづりの言に「ちょっと!」と噛み付くように熟れた林檎のようにかんばせを染め上げた。
彼女等も神使の影響を受けた者である。
引っ込み事案で、晴明の後方で何時も静かに過ごしていたつづりと、つづりさえ居れば世界の何も必要ないとさえ感じていたそそぎ。彼女等は神使と過ごす二度目の『夏』を心待ちにしていたのだろう。
決して褪せる事なき美しき曼珠沙華の傍らで過ごす『けがれ』の巫女は淡い藤色をその身に纏い、「楽しみ」と微笑んだ。
「ぱーーーりぃーーーー!!!!!」
その声音を高天京内に響かせる四神『玄武』に『黄龍』は「相変わらず爺は喧しいのう」と肩を竦める。
「まあ、けれど記念すべき宴の日なのでしょう? 逸る気持ちは分からなくはありません。
ねえ、白虎、朱雀。鍛錬の日でもあるそうですが……わたしたちも何か協力してやりませんか?」
微笑んだ黄泉津たるこの大地の守護神霊『黄泉津瑞神』。小さな稚児の掌をぎゅうと握った『白虎』は「勿論!」と大きく頷いた。
「何をする? がおーっと追いかけっこ? それとも、手合わせかい?
なんだって楽しそうだよね、ねえ、瑞は何が良いと思う? 朱雀……朱雀、おーい」
「むにゃ……」
眠たげに眼を擦る『朱雀』に「擦ってはなりませんよ」と瑞神は柔らかに告げる。小さな少女達の戯れを見守る如く、厳かに立っていたのは『青龍』。
大樹の若葉を夏風に揺らした彼も瑞神の提案には賛成なのだろう。
御所の庭園にて行われる神霊たちの戯れを眺めて居た霞帝へと晴明は「霞帝、客人です」と静々と声を掛ける。振り仰げば、天香家を継ぎ、重責を担った天香 遮那が緊張した面立ちで立っていた。
「天子よ、この度は――」
「良い良い、遮那。此度の謁見は俺が呼んだもの。気易く賀澄と呼んでくれ。その様に畏まる場ではあるまい」
「お気遣いに感謝を。霞帝よ。此度は……神使らとの謁見とお聞きしたのだが」
天色の少年は神使には好意的だ。特に、彼等との手合わせは心躍るものがあった。冒険にも共にと願う気持ちはあるのだろうが――立場がそうは許さぬのだろう。
「ああ、此度は無礼講だ。遮那も彼等と手合わせや食事を行いたいだろう?
それが天香当主の執務で許せぬと言うならば、これは俺からの命だ。それ以上に優先する事があるか?」
「いえ――」
此の地での最高権力者は天子たる『霞帝』だ。天よりの命に叛くなど許されたことではない。天香は一度叛き、彼の厚意でその地位を預かり得ているだけなのだと遮那はその背をぴんと伸ばした。
「ふむ、遮那。背丈が伸びたな。晴明と並べばよく分かる」
「……いきなり何なのですか、霞帝」
「いいや。何もない」
まるでこの成長を喜ぶように微笑んだ霞帝に晴明と遮那は顔を見合わせて居心地の悪いような、何とも言えない表情を見せ合った。
神使達に伝令をと霞帝は告げる。頷く月ヶ瀬 庚の符が文の小鳥へと変化し軽やかに宙へと踊り出す。
――神使よ。
貴殿等の記念すべき日に高天御所では盛大なる宴を開こう。
ああ、俺が無礼講であると宣言すると、晴明の表情が苦しげに歪んだのだ。愉快であろう?
「まあまあ」と宥めた庚に晴明が頷いた様子をそそぎが小さく笑っていた。彼女等にとっても貴殿等との出会いは良き経験であった。
つづりやそそぎと此岸ノ辺で過ごすのも、市中での買い物も良い。勿論宴に連れてきてくれても構わない。
遮那や四神も貴殿等との鍛錬を楽しみにしていた。彼等にも宴に顔を出すように声を掛けてある。自由に過ごすと良いぞ。
ああ、最後になったが、里帰りでも、何でも構いやしない。
俺は貴殿等がこの豊穣で心穏やかに過ごせる日々を喜ばしく思って居るのだから。
『霞帝』今園 賀澄――
- ローレット・トレーニングIX<豊穣>完了
- GM名日下部あやめ
- 種別イベント
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2021年08月19日 23時13分
- 参加人数136/∞人
- 相談9日
- 参加費50RC
参加者 : 136 人
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参加者一覧(136人)
リプレイ
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流るる雲は平穏を伝える。燦々と降る太陽の光を浴びて、夏を謳歌するイレギュラーズは神威神楽での鍛錬へと赴いた。遙かな航海を経た、異国の地は神使と呼び慕い、ローレットを歓迎してくれる。
「……あァ、随分と活気が戻ったモンだ」
外套を目深にかぶった日向寺 三毒(p3p008777)はそう呟いた。国を包み込んだ大事。神逐を成した神使いとして、国家の復興に力を貸せたことは僥倖だ。
声掛けるゴリョウ・クートン(p3p002081)の姿に復興作業と雑煮の味を思い出し、豊穣の食事に舌鼓を打つ。そう、此度はトレーニングという名前の祭りの時間だ。保津用で無数の食材を集めて調理する。ならば、具材が必要だと亘理 義弘(p3p000398)は水中に勢いよく飛び込んだ。貝殻などは浅瀬や素潜りで得られる。早朝から糸を垂らした結果も十分な成果だろう。
「ぶははははははっ! 俺ぁ高天御所でライブクッキングだ!
寿司を握ったり、鉄板焼きで焼き立てを提供したりするぜ! 豊穣の食材だけじゃなくて、鉄帝の肉、天義の清水、ラサのスパイス、深緑の野菜、海洋の魚介類といった各地の食材を仕入れて振舞いてぇところだな。色んな国の色んな品を絡めりゃもっと美味くなるだろうよ!」
何だって調理してみせると腹をぽんと叩いてアピールをするゴリョウに彼の料理ならば只管に食べ続けることに注力したいと風巻・威降(p3p004719)は力強くそう言った。
「肉も魚も野菜も何でも食べます! 和食ばんざーい!」
「ええ、そうね。美味しいものは正義よ」
大きく頷いたのはアレクシエル(p3p004938)。母として皆の面倒を見ることに気を配る。その視線の先――豊穣特有の食事方法に困っている声が響く。
「んー……アル君の前に置くなんかおっきい器にしてたっくさん盛ってもらおう! むむ、このお箸、がなかなか難しいぞ。こ、こうか?」
上手に食べられないと頬を膨らませたソロア・ズヌシェカ(p3p008060)の傍らで首を傾いだアルペストゥス(p3p000029)が「ぐぁう」と鳴いた。
棒で食べるのを諦めたソロアの傍で茶碗に顔面から飛び込んでいくアルペストゥスのかんばせは米粒が大量に引っ付いている。
「ゴリョウのご飯、ぜーーーったい美味しそうじゃん? 食わなきゃ損じゃん?
めーーーっちゃ食うじゃん! やっべーってリヴ、マジやっばいよこれ、超美味いから! 食ってみ!?」
眸を煌めかせるマリネ(p3p000221)の言葉にオリヴァー(p3p000222)は頷いた。
「……食べ過ぎない様に、気を付けないと……? ……我慢、できるかな……」
ぱちり、と瞬いたオリヴァーにマリネは心を躍らせて手料理を満喫しているその嬉嬉とした柘榴色の瞳にストップを掛けることも出来なくて。
枢木 華鈴(p3p003336)は「宴なのじゃ!」と眸を煌めかせた。「結乃は何か食べたいものはあるかのぅ?」と問えば、傍らの桜坂 結乃(p3p004256)はぱちりと瞬いて。
「んーと、おねーちゃんが食べたいものを一緒にたべたいかな。あ、でも。ご飯の後はあまいものたべたいな」
「ふむ……なら、色々見ながら食べる物を決めて、ご飯の後はデザートじゃな!」
手を取って、結乃をゴリョウ特製料理の前へと引き連れれば二人揃ってその豪華絢爛さに顔を見合わせる。屹度、華鈴がとびきりの料理を選んでくれるだろう。豪徳寺・芹奈(p3p008798)はゴリョウに感謝せねばと大きく頷いた。
「聞いた通り、こいつはうめぇや……足を運んで良かった!」
浴衣姿で料理を楽しむ烏丸 織(p3p005115)。林檎飴を片手に豊穣グルメに舌鼓。目尻が下がり、幸福に心が躍れば食事は人を幸せにするのだと再確認出来た気さえする。
タイム(p3p007854)は「ゴリョウさんのお料理だーいすき!」とその瞳を煌めかせた。思わず唸ってしまうような料理の数々。美味しい食事は『胃袋キャッチ』の機会なのだという。
「料理の腕を上げて気になる人に手料理振舞って胃袋を鷲掴み! なーんていうのも悪くないわよね~。んー……あるのは美味しく食べる才能だけ……」
もぐもぐと食べ続けるタイムの視線の先では鍛錬に往く遮那や、晋 飛(p3p008588)に誘われてやって来た霞帝の姿が見える。
「帝さんよ、アンタも息抜きに食べ歩きでもしないかい? シメはうちの人間が最高の飯を用意してるらしいから豊穣の美味い飯と食べ比べよ」
「ああ、構わぬ。食事ならば我が国も素晴らしいものが多い。勿論、ゴリョウ殿の料理は負けず劣らずであろうが!」
快活に笑った霞帝と共に通りに並んだ店舗や料理を眺め、〆にゴリョウの手料理を頂く三段だ。ならば、と立ち上がったのはカムイグラの料理番たち。
「さあ、皆で宴を盛り上げていくぞ! 神逐の時から進化した僕の姿、よく目に焼き付けてくれよ!」
折角ならばカムイグラの現地の皆とも協力したいシューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)は伴野忠房を呼び出し、ゴリョウの料理に負けるなと応援するように指揮を執る。
「ふふっ、相変わらずゴリョウちゃんは美味しそうな食事のイベントを企画してくれるわね。ならママも少しは協力してあげなきゃね」
ママとして、豪徳寺・美鬼帝(p3p008725)は『おふくろの味』こと肉じゃがなどを提供することに決めていた。母の味は胃袋を掴み、離さない。
「あ、あっちは、牛の肉と大根の甘辛煮かな……鳥肉と大根の照り煮かな……? 焼いた肉でもいいけど……『ぶりすけっと』と言う物も食べてみたい……」
鍛錬をして居た筈なのに、美味しそうな料理に誘われてしまったと鈴鳴 詩音(p3p008729)はぱちりと瞬いた。美鬼帝はそのリクエストに応えると微笑みを浮かべる。
「え、今日はお腹いっぱい食べていいんですか! やっタッー!」
ごふ、と音を立てて吐血をした鏖ヶ塚 孤屠(p3p008743)は血潮を拭う。
「……ふふ、この吐血で荒れに荒れまくった胃にどれだけ美味しい料理を詰められるか。身震いしてきましたよ……」
胃に優しい料理とは何だろうか。そう考えながらもルーキス・ファウン(p3p008870)は世話になっているゴリョウ達にお礼をしたいと手巻き寿司を用意していた。中の具材は幻想の野菜や鉄帝の肉類、海洋の海鮮など各国の食材を中心に豊穣の米を使った酢飯と海苔を並べて『バイキング形式』で。
「是非、色々な国の食材を味わってみて下さい。海苔を自分で巻いてみるのも楽しいですよ。
勿論、初めての方にはお手伝いします。以外な組み合わせの具材が合うかもしれないので試してみて下さいね」
「ハハア。健康なカラダ作るは良い食事カラ言うアルヨ。ツマリはこれも功夫を積むて事ネ。マァー、ワタシ死んでるカラ、も関係無いケドネ! アハハハ!」
楽しげに笑ったレイファ・リー(p3p008901)。屍であった体も、この世界に来てからは腹が減るというもので。
豊穣の食材が調理されていく様子に柊 沙夜(p3p009052)は「まあ」とぱちりと瞬いた。
「んふふ、美味しいものやって。うちは豊穣出身やけど、やっぱり地元のご飯食べるのはほっとするし、西の食べ物も新鮮で好きよお。
ばぐ召喚でこっち来た人たちが多少は西の料理も広めてくれとったけど、やっぱり素材が入ってくると違うみたいねえ」
これが食事の幅を広げてくれていると思えば喜ばしい。美味しい食事があれば、美味しい酒だ。コレならば水のように行けるのだとトキノエ(p3p009181)は豊穣の地酒をテーブルへと置いた。勿論、酒類は清酒だけでは亡き。缶ビールや幻想のエール、ワイン。様々な酒を提供し、料理を楽しもうではないか。
「ほうほう! 豊穣を代表するグルメがここに集結すると……何と良きかな良きかな! 拙者みたいな腹ペコには堪らなく嬉しい催し物でござるな!」
茨木 蝶華(p3p009349)に頷いて、ゴリョウの傍らで料理のいろはを学んでいる形守・恩(p3p009484)は野菜スティックを作ると意気込んだ。
「……もうちっと練習せんと、好いた旦那には出せんなぁ…………。くふふ、精進あるのみだのぅ」
料理は奥が深い――それでも、豊穣の『鍛錬』と食は切っても切り離せないと賑わいを増して往く。
●
「皆と手合わせをするぞ。訓練だ。最近は執務に追われ、手合わせをする時間も取れなかったからな。今日は存分に剣を交えよう」
天香・遮那(p3n000179)に大きく頷いた隠岐奈 朝顔(p3p008750)はやる気を漲らせたかんばせを真っ直ぐに彼に向ける。
「きっと去年と比べて、遮那君も強くなってるはず! けれどそれは私もですよ!
――君と共に戦う為に――君を絶対守る為に――手に入れた力……ジークフリートの初陣です!」
女の子は負けるくらいがかわいげがあるのかもしれない。だが、遮那に侍る者が弱くては笑い飛ばされる。夢見 ルル家(p3p000016)は体躯を屈め飛び込む姿勢を見せる。
――長胤殿のように、杏奈殿のように、忠継殿のように! いいえ、遮那くんの何もかもを取りこぼさないようにするのであれば、それ以上に!
可愛い女の子では居られない。強くならなくてはならないと鹿ノ子(p3p007279)は走る。
守るだけではなく、守られるだけでもなく、貴方と肩を並べて生きていきたいから。
琥珀の甘い笑みに溶かされてしまわぬように。鹿ノ子は距離を詰めた。靱やかに多段の攻撃を重ねれば、少年は――昨年よりも幾分か伸びた――背丈を縮め、回避行動を取る。
「っと、今のは危なかったぞ。やるのう! とても楽しいぞ。それもこれも皆が居てくれるから、感謝せねばならぬな」
この高みに手を伸ばせることを喜ぶように。遮那の手合わせは続く。
「執務ばかりとか言ってる割にはしっかりとうごけるじゃないか、さてはたまに抜け出したりしてるんじゃないか?」
揶揄うように不動 狂歌(p3p008820)は遮那の肩をぐんと引き寄せた。本命は誰なんだ、と『ボーイズトーク』を口にすれば背中から冷たい気配。
「まだ選ばないのだ」
あっけらかんと笑った彼の様子に手を叩いて笑ったのは寝首を『刈り取られない』ようにと模擬戦を眺めて居た赤羽・大地(p3p004151)。
「さて一戦頼もうか」
男児同士ならば油断も、手加減も必要ない。遮那は「参る!」とするりと剣を抜いた。
「ローレットのが修行をすると。ふむ面白い。個人的にも落ち着く神威神楽じゃ。
――やり合う気は無いが、一つ冷やかしてやる事にしておくか」
そう口にする死牡丹・梅泉(p3n000087)の背後には紫乃宮 たては(p3n000190)の姿が見える。
特異運命座標の稽古を冷やかすつもりであった梅泉にたてはの昏色の瞳が期待を孕む。
「ムカつく泥棒猫をぶっ殺しに来たと思いましたら……最高にロマンチックな話を聞きましたの。
そしてやって来ましたこの恋ヶ浜! 想い合う男女が特別な時間を過ごすにはピッタリやない! もっと頂戴、下さいな。そういうの! そういうの!」
彼女の身に纏う黒いビキニは嫌いではないが、彼女には興味が無い。そんな梅泉らの様子を問う撒きに流れているのは長月・イナリ(p3p008096)。
(あの要注意かつ物騒な人達の情報はあまり仕入れてなかったわね。せっかくの機会だから、観察させてもらいましょう……)
遠巻きに浜へと向かう女性陣がイナリの覗き込んだ双眼鏡と一眼レフに収まり始める。
「梅泉さん、前に会った時と同じで、今日も特に戦う気分じゃないみたい。平和(?)だねえ。お酒飲んでいるし。
あっ、それじゃ今回は僕がご相伴に預かろうかな? あんまり強くはないけどお酒は好きだよ。うふふ」
にんまりと微笑んだ鳶島 津々流(p3p000141)へ梅泉が盃を掲げ――久住・舞花(p3p005056)は首を捻った。
「……何してるんです? こんな所に来て」
「あ、アンタ!」
立ち上がるたてはにすずな(p3p005307)は「たてはさん?」と驚愕に目を丸くした。
「……え、ここ浜ですよね? 水着って事は泳ぎに来たんですかたてはさん。
あ、待って下さい。まずは小夜さん、日焼け止めです。フィーネさんも手伝って下さい! 小夜さんお肌白いから、しっかり塗らなきゃ……!」
「あら、日焼け止めを塗ってくれるの? あっ、脇腹は弱いからあんまり……」
白薊 小夜(p3p006668)にフィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)はくすくすと笑って悪戯を。憂いの色の瞳は今は喜色に溢れている。
(なるほど。あの二人が、例の。口にはしませんが。梅泉さんが少しばかり妬ま……羨ましい、なんて)
フィーネの羨望が向けられていることに梅泉は気付かない。
「それで……どうでしょう? この装いは」
彼岸会 無量(p3p007169)は『黒いビキニ』がトレンドと聞いたとその姿を梅泉に見せ、慌てたようにたてはが飛び込んだ。「お揃いでうれしゅうございます」という声には河豚のように彼女は膨れ面をするばかり。
「初めまして、たては様。お噂はかかねがね伺っております。なるほど美しい方だ。
しなやかなお身体を引き立てるシンプルな黒ビキニに、色打掛をショールに代えて和のテイストを取り込んだ、素晴らしい水着かと」
新田 寛治(p3p005073)はビジネスチャンスを逃しやしない。ちら、と梅泉をたてはが見遣ったのは『旦那はん、ええの? 他の男と話してるで?』という意味なのだろう。射干玉の髪が風で揺らぐ。たてはの視界に寛治は入っては居ない。
「たてはちゃんっ」
鏡(p3p008705)は噂で耳にしたときから彼女にずぅっと会いたかった。居合を行う彼女とお近づきになりたかったのだ。
「握手してください握手ぅ。噂通り綺麗な子ですねぇ。愛しの梅泉くんとの出会いは? 小さい頃? 一目ぼれですか?
初めて人を斬ったのは? どう思いました? 残念です、こんな格好ではお近づきに一太刀も結べません」
それでも、殺されなかっただけマシだろうか。
「たてはちゃん! 今日こそ梅泉さんと良い感じになるんですよ! お姉さんも協力します!」
勢いよくたてはへと走り寄ったのは紅迅 斬華(p3p008460)。「なんやの! 殺す!」と鳴らずぐっと堪えて、ONOFFの切り替えを――それが出来れば『面倒くさい女』なんて呼ばれない。
「……貴方も大変ね」
傍らに茶を置いた舞花にたてはに続き、小夜がそっと傍らに腰掛ける。
「あんまり手持ち無沙汰なのも何だから按摩でもどうかしら。
普段はお金を取るけれど今日は特別ね歳を言いたくないから言わないけれど按摩師歴300年くらいだし、自分で言うのもなんだけれど上手いのよ?」
堪えきれずにその声音を響かせた。「なんやの――――!」
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女子四人と男性一人で姦しく。鬼城・桜華(p3p007211)にとっての拠点の一つ、九天楼での無礼講は酒に食事と大騒ぎ。
「……うぉぉぉ! 俺は何だか悲しい! なんでこんなに悲しいのか! 酒! 飲まずにはいられない!!」
泣き上戸の雷電(p3p008871)の涙が滴り落ちる。妙香良 比丘尼(p3p008782)はその様子をちらと見遣ってから直ぐに笑みを零した。
「タダ酒……なんて素晴らしい響き♪ これも仏様のお導きでしょう」
そうは思いながらも桜華は何かに思い悩み、娘の片割れも何かを思い詰めていて――その悩み事ばかりに囚われていてはならないと二人へと助言を与える。
隠して居ても母娘。それを感じ取ったのか笑みを零した禍津日 那美(p3p008759)の背後から桜華がずいと前へと飛び出して。
「まあ、私の場合は羅刹十鬼衆の事とか『餓鬼道』我流魔に本当に勝てるのかとか……もっともっと精進しなきゃね。そうと決まればさあもっと飲むわよ!」
笑みを零した桜華がちらりと傍らを見遣れば酒に『飲まれた』糸杉・秋葉(p3p008533)が手頃なオークを紹介してくれないかと涎を垂らして横たわって居たのだった。その美貌も残念になるほどの泥酔っぷりで五人の飲み会の時は過ぎゆく――
「ひゃっほう宴だぁ! つまり合法的に飲酒しても許される場所だー!!
おらー飲むぞー! 何時も飲んでるー? 知りません!」 そこの二人? 捕まえた」
がしり、と七々扇・雪乃(p3p007507)は途往く二人を掴む。掴まったと驚きに振り返ったのは緑青・槐(p3p009104)と白妙(p3p008936)である。
あれよあれよと掴まって、其の儘酒盛りへと引き込まれる白妙に雨乃宮・飛鳥(p3p007515)は肩を竦めた。
言い出したら聞かないのだと困り顔の飛鳥に白妙は元から『不健康なトレーニング』に勤しむ予定であったと頷く。
「そうそう。ちゃんとトレーニングだよぉ、主に内臓のねぇ。あとアルコールに慣れましょう的なあれこれ」
自己紹介もなあなあに槐は酒を煽る狐組の酒の度数が高いと盃から唇を離す。白妙が取り分けたのは酒もあんまりな槐用の料理。
「槐は酒いけないんだっけ、適当に食っとけほれほれ」
そんな二人の前で、酒に飲まれたか飛鳥の尾を枕に転がった雪乃は上機嫌で笑みを零していた。
「……ここにいる面子って召喚されて故郷は異世界にある旅人と故郷の場所が分からない純種なんですねー。ある意味では全員里帰りが出来ない仲間と」
そう呟いた新妻 始希(p3p009609)が行動を共にするメンバーは名付けて『里帰り先がどこにあるのか分からない件について』である。
「お家がどこにあるのか分からないのは不安ですにゃー……」
蔵音 アステール(p3p007937)のお家は『どっかの山か田舎の方にある』としかしらない。それでも、このカムイグラが故郷であるはずの節樹 トウカ(p3p008730)の不安は計り知れない。
「……本当にうちどこにあるんだろうな? 海が近くないのは覚えてるんだが……20年も寝てたし。箱入り息子だったから集落の外にあんまり出た事ないんだよな……」
渋い顔をしたトウカはサバイバル技術を活かし、たき火を準備する。アステールが狩猟に往く準備をし乍ら尾を揺らしたのは初めてのたき火と、『焼きマシュマロ』への期待を込めて。
「マシュマロはないですが、食べられる野草、山菜、果実などを探しますね。
特に夏の山菜は春に出るそれよりも種類的には少ないですがその分美味しくて……」
説明を行う始希にウェール=ナイトボート(p3p000561)は「それはにおい消しに良い」と頷いた。キャンプは息子と途も言ったことのないウェール。皆を満足させるサバイバル料理を担当し、『最高のお父さん』になるべく気を配る。
「うきゅあー……今年もトウカ君の故郷は見つからなかったきゅね。
まあくよくよしすぎてもしょうがないっきゅ! レッツサバイバルキャンプっきゅ!!」
狩りのサポート役となったレーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)は夜にはテントで寝ずの番を行うと宣言していた。狩り係に『獲物』の一を囁けばアンファング=ティガークロス(p3p002957)の鳩は始希に付き従って。
「……この人数だと小さい子が多くてもテントに全員は無理だろうし。とりあえずテントは(精神的な面で)子供を優先する感じでいいよな?」
「成程……くっくっく……父なる大地によって育まれた自然の中で過ごすキャンプ。この我も初めてだが……執事として完璧にお仕事を遂行してみせる」
忍び足で、準備が終わったならば食事の獲物の調達も。それこそが執事に獲っての人様なことだとパーフェクト・サーヴァント(p3p006389)は忍び足で進み往く。狩りだって執事にとっては必要事項なのである。
●
神威神楽の神霊。其れ等は此の地を守護し、民を愛する者達だ。彼等とのえにしを辿り、シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は嘗ての場所で堂々と聲を発した。
「黄龍ー! 手合わせしておくれよ! 私ね、少しは強くなったと思うんだ。あの日に君の試練を受けてから。だからね、よかったら君に手合わせで確かめて欲しいんだよ」
構えたのは彼の友人が授けてくれた瑞刀。愛おしいと思えた此の豊穣を彼等と護る為。神霊に及ばずとも、共に歩む証が欲しい。
「玄武爺ちゃんと久々に手合わせしようかな。そもそも前は妨害が目的の単なるちょっかいだったし、まともに手合わせにするのはこれが初めてか。
パリピな時が印象に残りがちだけど真面目な時もかっこよくて好きだよ。もちろんパリピの時も大好きさ!」
「ほっほ、嬉しいのぅ。良いじゃろ、良いじゃろ? 黄龍!」
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)へと微笑んだ玄武。黄龍は「無論」と厳かに頷いた。強大な力を持つ彼等との手合わせは一筋縄ではいかないだろう。
「青龍さま、もし良ければ手合わせをお願いします」
無でありながら、大木たる青龍は人姿を借りアルテミア・フィルティス(p3p001981)に頷いた。カムイグラは自身の弱さを如実に感じる地であった。『あの子』に手が届かなかったからこそ――苦難の時を過ごした場所でもある。もう一度を繰り返さぬ為にアルテミアは細剣には青き焔を。短剣には赤き焔を。『あの子』と共にと願う如く。
「四神? 凄いじゃない、滅多にお目にかかれないもの。こういう機を逃すわけにはいかないわ」
スタイリッシュに闘いたいのと宣言する久留見 みるく(p3p007631)に滅多に無い機会だとカイン・レジスト(p3p008357)も大きく頷いた。
「こんな機会は滅多にないからね。僕達の実力、しかと見て貰おうじゃないか!」
直接の加護を賜った訳でなくとも、彼等の守護であるこの豊穣に恵みをもたらされているのは事実。故に、元気いっぱいに鍛錬へと挑む。
青龍との戦いを望んだ天目 錬(p3p008364)は青龍の祝福を受けた材木で作った呪符とかも試してみたいと考えていた。カインやくるみの声に応えた黄龍は「ちと待っておれよ」と弾む声音で鍛錬を了承する。
「白虎ー! 追いかけっこしよーぜ!」
「いいね!」
此方は可愛らしい鍛錬を求める砧 琥太郎(p3p008773)。白虎は「楽しそうだよね!」と嬉しそうに笑みを零して少女の姿の儘で『じゃんけん』に興じている。眠気眼を擦っている朱雀にリュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)は「たんれんをみんなでしようよ!」と声を掛けた。
「んむ~……鍛錬? ふわぁ……」
「そう。おにごっこするんだって。朱雀もたんれんしよう?」
眠たげな朱雀の頭をそっと撫でた瑞鬼(p3p008720)は「朱雀もちょっとどうじゃ?」と問い掛けた。四神も楽しげで善き哉と、それだけでは終わりはしない。団子を食べるかと差し出せば眠たげな朱雀の瞼は僅かに動いた。
「あの、もしよろしければ一緒に訓練……お願いしますっ!」
鬼ヶ城 金剛(p3p008733)は魔種も居るし、まだまだ強くならねばと『怖くなさそうな』白虎に声を掛ける――うんと返したその刹那、『おに』となった白虎が突如として虎の姿に変貌した。虎との鬼ごっこか、と笑った篠崎 升麻(p3p008630)は「その次は鍛錬に付き合ってくれよ、白虎」と琥太郎を追い回す巨大な虎へと声を掛ける。
「うん! 一緒に鍛錬しよう!」
楽しげな声音は、何時だって弾んでいて。神使との穏やかな鍛錬を喜ぶように、カムイグラの空は燦々と煌めく日差しを齎していた。
そんな彼等に休息を伝えたのはトリーネ=セイントバード(p3p000957)の響く鳴き声。鶏は縁起が良いからこそ、『こけこっこー!』と響かせる。
神威神楽っぽい和の鳴き声を訓練しなくてはならないと究極の鳴き声を目指し声を張り上げる。
「せーの、こけこっこぉー!! こきゃこっこー!!! こけこけこきゃこおおお!!! ……何か違う気がしてきたわ!」
その声を遮るのは囂々と降注いだ滝。桐野 浩美(p3p001062)は滝に打たれて鋼のメンタルを鍛えるのだと心を無にし続ける。
餅は餅屋。滝行は修行僧に。日帰りできるその場所はお手軽な修行スポットとして心地良い。豊穣の景色を眺めて居れば昔を思い出すと浩美は囂々たる滝の中でそう息を吐いた。
「珍しいで御座るな、お主の方から修練したい等と声を掛けてくるのは。
まぁ、剣と徒手の違いはあれど素早さを主体にした戦法の拙者達ならば、得るものは何かしらありそうでは御座るか」
咲々宮 幻介(p3p001387)の視線の先にはウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)。オッドアイの恋する乙女は「今日はここで二人きりのマンツーマン……つまりデートっすよ!」と胸を高鳴らす。
「逢い引きではござらんな?」
「こうして先輩と一緒にいられるのが楽しみで、床もぴかぴかに磨いておいたんすよ、ほらこんなにツルツル!」
話を聞きやしない、そんな彼女はいざ尋常にと手合わせ前に勢いよく滑り戸の外へ。逢い引き時間は短くも――素晴らしい速度であったという。
何かが通り過ぎてゆく。横面を掠るように勢いよく滑っていくウルズをちらりと見遣ってから美音部 絵里(p3p004291)は首を捻った。
『けんぶん』と知的な響きをするその行いに今日も絵里は夢中。その眸は虚空を見遣り細められて。
「お友達もたくさん増やしてーって、ああ増やしてはいけないんでしたっけ?
そうだったかな? 皆が言うならそうだったかも。じゃあ、やめます。頼りになるお友達が居て私は嬉しいのです。わはー」
カナメ(p3p007960)にとってこの国は大切な『お姉ちゃん』が幸せそうに笑ってくれる場所だった。
「ちょうど複数の村の強い人が集まって、敵の進行を抑える防衛戦やるのかな? ……ん? この進むルート……お姉ちゃんたちの所に行かない!?」
慌てたようにカナメは戦闘準備。お姉ちゃんのためならばとえんやこら。
「いかんせん神威神楽の蹴鞠文化はまだまだ未熟……このままではワールド蹴鞠カップの優勝など、夢のまた夢よ。
世界に名を馳せる蹴鞠ストライカーを輩出するにはやはり!」
一条 夢心地(p3p008344)自身がエースとなって、皆の見本となり蹴鞠人口を増やすしかないといざ参らん。
●
「帝さんのところに行きたいのだわ! 遊んでもらうの!」
黒影 鬼灯(p3p007949)はその気持ちはよく分かると頷いた。絵本はだめだと手より奪えばむうと唇を尖らせる。
「ごきげんよう、忙しいところすまないが章殿が貴殿に逢いたがっていたのでな」
「帝さんと晴明さんはいつものお洋服なの? 今度一緒に選んであげるのだわ!」
浴衣を選んであげると嬉しそうな彼女に霞帝は「其れは喜ばしい」と微笑んだ。彼付きの女房が用意したのは赤い宝石――鮮やかな林檎飴だった。
ハルア・フィーン(p3p007983)は「今日もお招きありがとう」と浴衣に似合う雰囲気でしゃなりと礼をして、ああ、けれど何時もの顔を。
「賀澄、ボク、ここの最強おうちドリンクに出会ったんだよ」
冷たい麦茶に蜂蜜梅干しを入れた梅麦茶。香ばしくて爽やかで、そう告げれば「俺も頂こうか」と楽しげに彼が微笑んで。麦茶がからりと音立てる。
今年も夏がやって来た。彼の隣に『友人だったあの人』は居ないけれど。――長胤、ボクも賀澄も頑張って生きているよ。
「ご機嫌麗しゅう、霞帝陛下。私の名はヨシツネ。以後宜しくお願い致します」
折角ならば謁見したいとヨシツネ・アズマスク(p3p004091)が声を掛ければ霞帝は「ああ。ヨシツネ、よろしく頼もう」と笑みを零した。
気さくな彼とに囲碁を誘えば、其れも鍛錬かと霞帝は女房達に囲碁の用意を指示をして。
(……いやはや、こうやって対局すればわかる。気さくな人柄、穏やかな雰囲気、その奥に秘められた確かな熱。霞帝は『強い』)
その実感がヨシツネの負けず嫌いに火を付けて。
「うぅむ、まさか今生でこのような場所に呼ばれる日が来るとは思わなんだ。恐るべし、神使。……今はわしもか」
伝承に触れ白妙姫(p3p009627)が訪れたのは高天御所。この場所に来るとは夢にも思わない。
そんな彼女を見詰めながら星芒 玉兎(p3p009838)は右往左往していた。神使としてまだ何も、と思えば帰郷する足も竦んで。
さて、これからどうしたものか――時任 零時(p3p007579)はこうした祝い事には全力で乗っかりたいと並んだ食事をまじまじと見遣った。
「美味しいものを思いっきり食べられるなんて幸せだなぁ。残しちゃうなんて勿体無いからバンバン食べちゃわないとね」
そんな零時の傍らで茶を啜ったのは紅楼夢・紫月(p3p007611)。これもまた鍛錬である。
「おや、また高天御所で宴っすか。あそこは料理も勿論ですが、庭もまた良かった。この機会にまた見学に行かせてもらいますかね」
瑞神の再誕後に見た庭園と、今はどう変わっているだろうか。相も変わらず手入れの整った日本庭園を八重 慧(p3p008813)は眺めてちびりと酒を一口喉へと流し込む――意識がふわりと浮遊するような感覚に、折角の庭を眺めて居られなくなりそうだと小さくぼやいて。
「……神使が豊穣に来たのは去年のこの辺り。豊穣の大きな戦いが終わったのは、もう少し短いから。
対して大きく変わって居ない気がして……俺は素直に楽しめるか分からないからちょっと観光がてら、色々見て回りたいかなって思う」
双子の姉の様子を眺めなくとも隠岐奈 夜顔(p3p008998)はそっと御所を後にして。復興途中の街を見て回ろう。神使の力を求める者はまだまだ多いだろうから。
神宮寺 塚都守 紗那(p3p008623)にとって鍛錬は一番に厭う事だった。弟である兵部卿・雑賀に頼み兵部省の鍛錬を行おうか。
「まぁ! 雑賀の幼い頃の話を聞きたいのですか!」
――彼女が弟に叱られるまで後少し。その様子を眺めていたBinah(p3p008677)は兵部省の鍛錬へと誘われて。
弓の使い方を教わる久泉 清鷹(p3p008726)も流鏑馬の訓練場へと赴いた。いつかは霞帝の前で演じるのも悪くはない。
「よっ! つづり、そそぎ、楽しんでっか? 人が多くて萎縮してたりしてないか? ははっ」
ひらりと手を振って。ゴリョウの食事を双子巫女の前へと運んだ新道 風牙(p3p005012)は去年の夏祭りに、そして新年の炊き出しでも食事を提供してくれていた彼を憶えて居るかと問い掛けた。
「……覚えてる」
「美味しかったわよ、割と」
そんな二人に「パエリアってのはどーだ?」と風牙は料理の紹介を。彼女等が物珍しそうに見遣り、口にして微笑むならば。その笑顔を護る為にも強くならねばならないのだ。
神使になって一年。阿瀬比 彗星(p3p009037)と阿瀬比 瑠璃(p3p009038)は人目を憚り静かに宴を楽しんでいる。
「……双子で獄人でも堂々と愛せる国があれば良いのにね……難しい?」
「……獄人は兎も角、双子は何処の国も難しいと思うよ。瑠璃」
忙しなく動き回る中務卿の様子を眺めてから彗星は瑠璃の手をそっと掴んだ。世界一なんて陳腐な言葉が似合ってしまう程、それ以上を求めている、二人の恋はほんもので。世界へと手を引き合って逃げられるこんなチープな運命が、何よりも愛おしい。だから、今日を祝おう。この『境遇』が幸福だから。
故郷にも似た此の地は大神・達哉(p3p007400)にとっては過ごしやすい。滝行で精神を鍛え、日々を過ごすのも良いだろう。
ジバ・フォージャー(p3p007689)は花房 てまり(p3p007748)を豊穣の茶屋へと誘った。
「おぉ……これが和菓子ですか。さっそく心太をいただきましょうかね。ではいただきます……ごほっごほっ! これは甘くないのですね……」
「ジバはん? それは酢醤油がかかっとって、あーむせてもうて大丈夫かいなー? 甘くあらへん? うちの黒蜜の方ひとくちあげるさかい」
種類が色々とあるのだと学ぶ事も鍛錬のように感じられててまりとジバは顔を見合わせて小さく笑った。
「お抹茶おいしいー!」
「なーあ、一応鍛錬の集まりなんだよな? なんでアタシ達、茶屋で飯食ってんだミエル?」
のんびりと食事を楽しんでいるミエル・プラリネ(p3p007431)へとアデル・マルブランシュ(p3p009130)は違和感を隠しきれずに首を傾いだ。
「はぇ……? アデル様、身体作りも立派なトレーニングですよー!」
体作りは大事だから。そういうが食い意地を張っているようにしか見えないとアデルは小さく呟いて。料理を楽しむのだって立派な鍛錬なのである。
「おう、懐かしい我が故郷。何も無ぇ南部のド田舎!
皆は……よしよし死んでねぇな。健康で何よりだ。んじゃ、久しぶりに森でお世話になるかなー」
故郷へと向かい、幻夢桜・獅門(p3p009000)は他の剣士達との様子を眺める。今の剣術は未だ未だしっくりこない。今は兎に角鍛錬だ。
新しい動きに早く馴染めるようにと努力を重ねねばならない。
竹林にて自主訓練を行う河鳲 響子(p3p006543)は本能のままに剣を振るう。軍隊を相手にしてからも調子が狂いっぱなしなのだ。
本当にそれでいいのか、それが国の求める『平和』なのか――そう考える響子の心の靄が晴れたわけでもないけれど。誰かの未来を奪わないために、鍛錬を続けよう。
「競泳水着だから塗りづらいかもしれないけど丁寧にお願いしますね」
柔らかに声を掛けた氷室 沙月(p3p006113)に三國・誠司(p3p008563)は頷いた。これはちょっとした『儲け物』だ。少しドキドキしながら真面目なトレーニングを開始する。
「直ぐにヘタれたら駄目ですよ? 直ぐにヘタれたら三國さんに好きな方が出来た時に守れないですからね」
その言葉に、ふと。誰か守りたい人って出来るかなぁと誠司は考えた。
何時かそんな日が来るのかな――それはまだ、分からないけれど。
●
遙々とやって来た八寒 嗢鉢羅(p3p008747)にとっては里帰り。優雅な日々を過ごすのも悪くはない。
只野・黒子(p3p008597)の受領した領地での実りは黄泉津瑞神ら六柱へと献じ、豊作祈願を。
霞帝にも書状と反物を添え、これまでの戦歴を書き連ねた。きっとかの賢帝は救民の為にと立ち上がるのだろう。
「折角、神威神楽に来たンだ。領地の様子でも見に行こうか。……ま、意外だろうけど、俺の領地、豊穣にあるからなァ」
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は『飛縁魔の隠れ里』へと踏み入れた。偶には面で顔を隠さずにのぞきに行くのも悪くはない。素顔を知っているのも執政官くらいだ。バレることないだろうと高を括って――「……って、なんで居るの!? さぼってねーし! ちゃんと領主やってるもん! ぎゃー、怒らないで!」
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)と共に豊穣にある自身の領地『橋場領』を散策する橋場・ステラ(p3p008617)はふと思いついたように彼女を見遣る。
「そうそう、その内ですが領内に薬草園みたいな所を作りたいと、考えていまして……実験的に領主館の庭に、小さな畑を作ってみようかと。
もし宜しければ、ウィズィお姉ちゃんも何か植えたりしてみませんか?」
「薬草園? へえ、いいじゃん!」
ハーブの類いならば詳しいと。喫茶店で培った知識を活かすというウィズィに「……ま、まぁまずは土を耕す所からのスタートになりますが!」とステラは囁いた。ならば、善は急げと走り出す。手を繋ぎ走るだけでも心は躍り楽しくて。
鬼灯 ハヅキ(p3p008869)にとって豊穣の空気は落ち着く。良く憶えて居なくても体は憶えて居るから、この空気の中で鍛錬を楽しもう。
「き、支佐よ! 鍛錬も良いがたまにはゆっくりせぬか?
あれじゃ! わしに子細は分からぬが高天京にも、大陸の文化が浸透して来ていると聞く」
「そうは言うがな琴、わしには宮様のお役に立つという大事な使命が……」
神倉 五十琴姫(p3p009466)がねだれば物部 支佐手(p3p009422)は渋い顔をした後、舶来の文化があるとその手を引いた。
勿論解説は『五十琴姫の作戦のうち』。チョロい支佐手は彼女の言葉に乗せられて得意げに説明を繰り返すのだ。
Nil・Astrum・Fine(p3p008413)はのんびりと風景を楽しんだ。観音打 至東(p3p008495)にとっての主食は他人の恋バナである。
「しかしいいですよねえ恋。一方通行も趣があってイイし多方向全力も爽やかーでイイ。一途もご飯が進みますし双方向も心が晴れ渡るようで以下略」
シガー・アッシュグレイ(p3p008560)が向き在ったのは希紗良(p3p008628)。
「力量的には問題無さそうだけど、うっかり怪我でもしたら縁起が悪いからねぇ」
真剣ではなく、竹刀でそれは希紗良にとっては少し残念だけれど――勝負アリ。
「……やはり、お強いでありますな」
「いやいや、希紗良ちゃんも充分強いからね。特に、初動の動きが良い。良かったら、この後甘味でも食べに行くとしようか」
小鳥遊 新空(p3p010019)は鍛錬の繰り返し。地球のマンガの真似を為てランニングに拳闘と蹴撃を。
山ごもりも良いが、海も良い。フィノアーシェ・M・ミラージュ(p3p010036)は黒ビキニを身に纏い「何故」と小さな声音で呟いた。
「こ、この状態でどうトレーニングを行えと……」
途惑うのはフィノアーシェだけではない。有栖川・瑠依(p3p010047)は召喚されて5分で『鍛錬』に見舞われた。手ぶらでもしょうが無いとランニングを行って、剣術使い達の鍛錬でも覗きに行こうか。
本来ならば縁の無い場所だった豊穣は冰宮 椿(p3p009245)の肌に良く合う。
刃に籠もった雑念を振り払うように、静かに何度も刃を振り下ろして――太刀筋は、己を映し出す鏡。曇ったままでは、戦えないのだから。
方や宴、方や鍛錬。賑やかな人人を遠くに眺めつつ何処にいるかと云えば、畳。遠くに聞こえる歓声と、蝉の声。そしてい草の薫り。
その平穏にごろりと転がったヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)の傍で散々・未散(p3p008200)はちら、と見遣る。
「ねーえ、ヴィクトールさま?」
だらりと腕と垂らして「よく分かりますよ」とヴィクトールは『定位置』に収まった青い小鳥を眺め見た。からりと鳴った氷の音が遠ざかり――目を覚ませば夜の気配が傍らで揶揄うように笑っていた。
仲間達の鍛錬の様子を撮影した天津・狗子(p3p007074)は日常風景を眺め見る。皆の笑顔は煌めいて。
陰陽 秘巫(p3p008761)は喧騒眺めて目を細めて。
――天高き 宮に咲き交う 地の花よ 夢の跡地に 今を見るかな。
「いつまでもこの御代が続かんことを……もし脅威が及ぶならば、再び妾達が取り除きましょう」
成否
大成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
この度はご参加有難うございました。
ローレットトレーニング、豊穣でした。
一夏の鍛錬を楽しんでいただけましたらば、幸いです。
GMコメント
Re:versionです。四周年ありがとうございます!
今回は昨年同様、特別企画で各国に分かれてのイベントシナリオとなります。
●重要:『ローレット・トレーニングIXは1本しか参加できません』
『ローレット・トレーニングIX<国家名>』は1本しか参加することが出来ません。
参加後の移動も行うことが出来ませんので、参加シナリオ間違いなどにご注意下さい。
●成功度について
難易度Easyの経験値・ゴールド獲得は保証されます。
一定のルールの中で参加人数に応じて獲得経験値が増加します。
それとは別に700人を超えた場合、大成功します。(余録です)
まかり間違って1000人を超えた場合、更に何か起きます。(想定外です)
万が一もっとすごかったらまた色々考えます。
尚、プレイング素敵だった場合『全体に』別枠加算される場合があります。
又、称号が付与される場合があります。
●プレイングについて
下記ルールを守り、内容は基本的にお好きにどうぞ。
【ペア・グループ参加】
どなたかとペアで参加する場合は相手の名前とIDを記載してください。できればフルネーム+IDがあるとマッチングがスムーズになります。
『レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)』くらいまでなら読み取れますが、それ以上略されてしまうと最悪迷子になるのでご注意ください。
三人以上のお楽しみの場合は(できればお名前もあって欲しいですが)【アランズブートキャンプ】みたいなグループ名でもOKとします。これも表記ゆれがあったりすると迷子になりかねないのでくれぐれもご注意くださいませ。
●重要な注意
このシナリオは『日下部あやめGM』が執筆担当いたします。
このシナリオで行われるのはスポット的なリプレイ描写となります。
通常のイベントシナリオのような描写密度は基本的にありません。
また全員描写も原則行いません(本当に)
代わりにリソース獲得効率を通常のイベントシナリオの三倍以上としています。
●任務達成条件
・真面目(?)に面白く(?)健やかに、トレーニングしましょう。
・楽しく過ごしましょう
・豊穣(カムイグラ)をのんびりと旅しましょう
●GMより
日下部あやめです。昨年同様、本年も豊穣を担当させて頂きます。
お好きなように過ごしていただければ(観光、訓練、里帰りなどなど)と思います。
霞帝が宴を開く他、四神達とも鍛錬を楽しむことが出来ます。
どうぞ、宜しくお願い致します。
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