PandoraPartyProject

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夢の牢獄

 ファルカウを覆った竜種の影、進軍し幻想種を救いファルカウ奪還を目指すイレギュラーズ。
 ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)怠惰の獅子王を相手に健闘した。
 サイズ(p3p000319)妖精達の為に言葉を費やした
 クロバ・フユツキ(p3p000145)は猛吹雪の中で襲い来るワイバーンを睨め付ける。
 本来ならば存在しないワイバーン達は『冠位魔種・怠惰』が連れてきたものだ。
 浮舟 帳(p3p010344)は里に現れた魔種グリムとの激戦を制した。
 魔種トリーシャとの激戦を経て桜咲 珠緒(p3p004426)は――夢の牢獄に囚われたらしい。

 ――兄さん、私はね『可能性』を信じてたんだ

 一人の少女がいた。生の歩みはこれから長く、出会った人々と別れを体験することも多くあるだろう。
 それでも、出会いの一つ一つに感謝をし、魔種であろうとも共存できる未来を望んだ者が居た。
 それがアレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)だった。
 幾人かのイレギュラーズは、その淡い光の花弁を見ただろうか。
 揺らぐ生命の脈動。奇跡と呼ぶしかないその光。

「アレクシア!」
 シラス(p3p004421)は、彼女の名を呼んだ。
「アレクシアさま!」
 置いていかないでと散々・未散(p3p008200)は彼女に手を伸ばした。
 眩い光の中で、新道 風牙(p3p005012)クエル・チア・レテートを護るように立っていた。

「私、沢山の人と出会ったんだ。沢山の友達と仲間が出来て……みんなに支えられて此処まで来たんだよ」
 手を伸ばした。
 幼い頃、花畑が見たいと乞うたアレクシアを抱き上げて少しだけだよと揶揄ってくれたときのように。
 ライアムの軀をぎゅうと抱き締める。呼気が、鼓動が、ぬくもりがある。まだ、生きている。
「可能性が僅かでも、いつまで続くかわからなくたって……ここで躊躇うなんてことはあり得ない!
 どれだけ小さくとも、どれだけか細くとも、必ず掴んでみせる!
 それが停滞に抗うということ!兄さんやこれまでの旅から学んだ、勇気を持つということ! だから!」
 肉体に、血が巡り、貴方が生きていたいと願ってくれるなら。
 笑い合う未来を望んでも許してくれるなら。
 貴方が、私を『アレクシア』と呼んで共に進む未来を望んでくれるなら。

「――だから! 兄さん……迎えに来たよ!」

 貴方の一筋の光になりたい。
 死した軀に命は戻らない。知っている。
 反転した魂は元には戻らない。それは、本当に?

 滅びのアークの戒めを、少しだけ打ち払う。『奇跡』は彼女に問うた――お前の信念は何処に。
 揺るぎない信念をその胸に抱いていたからこそ、アレクシアはその夢を見た。

 ――――――――――
 ――――――

「……これは、どういう……?」
 クエルを庇っていたクラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)は目を瞠る。
 武器を構え、何が起こっても良いようにと警戒を巡らせていたブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)はだらりとその腕を下げた。
「……眠っているのか?」
 だらりと腕を下ろした儘、深い眠りに着いたアレクシアをライアム・レッドモンドが――『魔種であった筈の青年』が抱き締めている。
「ちょ、ちょちょちょちょちょ、どういうこと?
 私ちゃん、良く分からないんだけどさ、アレクシアちゃんの『お兄ちゃん』は魔種で……それで……?」
 茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)は慌てて駆け寄って、察した。
 魔種ライアム。怠惰の魔種の配下であった青年にその気配はない。
「魔種、じゃ、ない……?」
 秋奈の呟きに握りしめていたメイスを指先から毀れ落ちさせたのはヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)であった。
「ア、アレクシアは……!?」
「ライアム、アレクシアを渡して貰おうか」
 強い語調で告げる仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)にライアムは首を振った。「安心してくれ。眠っているだけだよ」と柔らかな声音で告げる。
「魔種と相成った者は別離のみ――そう理解していたが、驚いた。
 アレクシア君はその身を掛けて君を元に戻したとでも言うのか」
 恋屍・愛無(p3p007296)は見たままを告げた。だが、そんなことが有り得るのか。
 愕然としたようにヴァレーリヤはライアムと深い眠りに落ちているアレクシアを見比べる。
「……本当に?」
「いいや、不完全だよ。僕の『滅びのアーク』は僅かな時間のみ、その流れが断ちきられただけだった。
 僕はそれをこの体に感じているよ。時間が少ない……僕は、また魔種に戻ってしまうはずだ。
 けれど、アレクシアがくれたチャンスだ。君達と話したい」
 ライアムはそう言った。
 アレクシアが起こした奇跡は不出来なものだったのだろう。
 だが、彼女は手繰り寄せた奇跡に再度、決意をした。全てを懸けてでも良い、と。
 本来ならば到底起こり得ないような事だった。

 ――『魔種を人に戻す』
 そんな出鱈目を遣り通した彼女には代償が現れることだろう。
 全てを懸けた奇跡の結末は彼女の『記憶』をも蝕むことだろう。

「……聞いてくれ。魔種だった僕の言葉は信じられないかも知れない、けれど。
 けれど、アレクシアが僕にくれたチャンスなんだ! 知っていることを全て伝える!」
 ライアムは叫んだ。
 冠位魔種カロン・アロンテーラ。それはオールドセブンの『怠惰』を司る。
 彼は様々な権能を有するが、それらを全て操ることを面倒だと行う事は無い。
 故に――『権能を部下に分け与える』力を有していた。
 パンドラの奇跡に乞うて、ベアトリーチェやアルバニアの権能を『キャンセル』してきた。
 だが、カロンは『権能を部下に分け与え作動させる』という絶対権限を持つ代わりに、その部下が倒された間は『自身のコントロール下に戻すまで』に少しの時間を有するらしい。
「僕にもカロンから一つの権能が分けられている。それが……『夢の牢獄』だ」

 夢の牢獄。
 それこそが、イレギュラーズが各地で突如として眠りに落ちた現象への打開策だった。
 カロンの権能の一つである『夢檻』に囚われた者は、夢の牢獄を抜け出す事でその眠りから解き放たれる。
 ライアムは『夢の牢獄』へと入り込む一部権能を有し、夢の世界を構築することが出来るのだそうだ。
「僕が作る『夢の世界』を夢に囚われた者が訪れれば、その夢から解き放ってやれる筈だ。
 それに……カロンの『夢の牢獄』の権能にも打撃を与えられるはずなんだ。
 それは君達の助けになる。だから――だから、信用してくれ」
 アレクシアを救うために、正気である内に牢獄の門を開くとライアムは言った。
「信用、しろと?」
 汰磨羈の問いかけにライアムは唇を噛む。秋奈は「魔種だったしねえ」と悩ましげに首を捻り、愛無は無言でライアムを睨め付ける。
「ッ、頼む……」
 その言葉しか、発することが出来ないのだろう。
 ヴァレーリヤは「もう一度、宜しいかしら。その世界を攻略すれば、カロンの権能を抑えられ、皆も眠りから醒めるのは本当ですね?」と再度の確認を行った。
 頷くライアムにヴァレーリヤは嘆息する。
 その表情に、その仕草に『嘘ではない』と感じてしまったからだ。
「……信用致しましょう。ライアムは嘘を吐いては居ないはずです。夢の牢獄を攻略し、カロンの権能を一つ抑えるのです。
 それから……風牙さん、ブレンダさんにお願いがあります。私を母の――リュミエの元に送り届けてはくれませんか」
 遂に、と風牙は息を呑んだ。ブレンダは承知したと頷く。

 ――霊樹の力を束ねれば、僅かな奇跡は起こせましょう。

 それは、『ファルカウの巫女』リュミエ・フル・フォーレが囚われる夢はライアムの得ている権能のみ助けられないという意味合いであった。
 ファルカウと深く繋がって居るリュミエを救う為に、霊樹の力を束ね、大樹の嘆きの悲しみを打ち払いながらファルカウを浄化する。
 不完全であろうとも、リュミエが目覚めれば禁書庫で見付けた『嘆きの書』が大樹の嘆き達を解放してくれるはずだから。
 その為にはクエル・チア・レテートと霊樹レテートの命を懸けなくてはならなかった。
「……お願い致します」
 命を懸けても、この森を――この愛しき共同体を護りたいのだ。

 ※ライアム・レッドモンドが『夢の牢獄』の門を開きました――
 ※夢の中に囚われた者達は『夢檻の世界』にいるようです……
 ※【夢檻】から抜け出す特殊ラリーシナリオと、冠位魔種の権能効果を減少させる特殊ラリーシナリオが公開されました。

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