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シナリオ詳細

深海にて、輝ける都へ

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●竜宮救援
 竜宮幣(ドラグチップ)、集まる――。
 先のサマーフェスティバルと連動した大捜索作戦。ローレットの活躍によって、各地に散らばった竜宮幣は、その大半の回収に成功していた。
「これだけあれば、深怪魔(ディープ・テラーズ)の封印を強化できるはず!」
 マール・ディーネーはそう語る。神器である玉匣(たまくしげ)の力の欠片である竜宮幣が集まれば、玉匣はその力を取り戻し、深怪魔の再封印が可能であると目されていた。
「となると、オレ達の暮らしも多少はマシになるのか」
 そういうのは、海賊、漁火海軍の頭領である漁牙である。ローレットとの『喧嘩』に負けた漁牙は、『やむなく、力に従わされて』という建前の下、ローレット、そしてマールに協力していた。ローレットのの人間には、海賊としての活動を止められ、今はマールの護衛部遺体のような役割を果たしている。
「そうだね! シレンツィオの商人たちのことは、あたしの管轄外だからごめんなんだけど……。
 深怪魔がでなくなれば、もう少し漁もしやすくなると思うんだ!
 それに、約束通り、豊漁の加護も、メーアにお願いするからね!」
 そう言って、マールは笑う。メーア、とはマールの妹であり、竜宮城の乙姫である。竜宮の加護を司る乙姫なら、多少の豊漁は約束してくれるだろう。
「で、竜宮に行くには、この『べっ甲の宝玉』が必要だったな」
 漁牙が差し出した小さな宝玉。美しく、見るものが見れば何らかの加護を感じられるだろうそれが、竜宮に向かうための道しるべとなるパスポートのようなものだった。漁牙以外にも、持っているものはいるだろう。マールも本来は持って出なければならなかったが、緊急事態故に、持ち出しを忘れていたらしい。
「うん! それを持って念じれば、竜宮の加護を察知できるの。そこが、『道』。地上で生きる人でも海底で呼吸できるようになってるから、ゆっくりついてきてね!」
 マールは、漁火海軍たち、そしてローレットのイレギュラーズ達にそういう。漁牙はマールの護衛故にともかく、イレギュラーズ達もいるのは、漁牙が不安を感じ取ったからだ。
 曰く、「何かあったらオレ達だけでは対処できんかもしれん。念のため、ついてきてほしい」との事だったが――。
 いずれにしても、深怪魔に、竜宮、そしてマールが狙われていたのは事実だ。となれば、警戒しすぎるという事はないだろう。
「じゃあ、いこっか!」
 そんな、戦う者たちの不安を知ってか知らずか、マールはこれで万事なんとかなる、と信じている様だ。マールに、自分たちの実力を信じてもらっているのは嬉しいものだが、かといって油断はできない。
 漁火村から、しばらく船で進み、ダガヌ海域と豊穣の海の境目ほどへ。マールが宝玉を掲げて念じると、一筋の光が海底に届き、まるで光る路のように、海底を指示した。
「ついてきて! 泳げないひとも、この光の中では泳げるし、呼吸もできるの!」
 そう言って、マールが飛び込む。少し不安に感じながらも、一行は光の道の中へと身を沈めた。すると、どうだろう。まるでふわふわとしたような感覚は、さながら泳いでいるというより自由気ままに浮いているという感覚だ。自分の周りには、新鮮な空気の幕ができてるように、呼吸が可能。なんとも不思議な感覚の中、先を行くマール、そして漁牙の後について、一行は進んでいく――。

●海乱鬼衆
「漁火海軍の奴ら、妙におかしいと思ったら」
 そういうのは、襤褸の和装に身を包んだ、剣呑な雰囲気をまとった男達である。近場の岩礁に船を隠し、イレギュラーズ一行を追っていた、複数の影。海乱鬼衆。豊穣海賊である。海賊と言っても、漁火海軍のような気持のよい男たちもいるが、しかし彼らは真逆。心底の悪党であり、先の豊穣の騒乱に乗じて覇権を得ようと画策し、敗北から海へと逃げた、悪党どもの残党である。
「成程、海の底のお宝か」
 頭領らしき男が、下卑た笑いを浮かべる。
「奴らはどうも、海乱鬼衆を裏切ったらしいなぁ」
「どうしやす? 濁羅(ダグラ)の親方」
 頭領――濁羅、と呼ばれた男は頷く。
「おう、裏切り者は始末しねぇと。それに、お宝があるってなら、それは俺たちのもんよ。
 海は、俺たちの領域だ。そこにあるものは、全部、俺たち海乱鬼衆の財産だ!」
 その言葉に、配下の海賊たちが、応、と叫んだ。
「行くぞ、あの光の道に突っ込め! 行った先で全部浚うぞ!」

●二正面作戦
「あった、あの光が竜宮だよ!」
 マールが指さす先には、何とも『明るい』都があった。暗い海底にありながら、輝くピンクだのの光は、再現性東京で言う所のネオンサインに似ている。その醸し出す雰囲気も、どこか再現性東京で言う『繁華街』のような雰囲気を見せた。
「なんだかビカビカしてんなぁ。もっと神秘的じゃねぇのか?」
 漁牙が呆れたように言うのへ、マールは小首をかしげた。
「そう? 明るくていいと思うけど……」
「ま、嬢ちゃんがそれでいいならいいけどよ。
 兎に角、妹ちゃんの所に帰ってやんな。心配してんだろ?」
 漁牙がそういうのへ、マールは頷く。そして一行がさらに竜宮城に近づいたときに――異変に気付いた。竜宮の周辺では、悍ましい怪物たち――例えば、ぐずぐずにとけたようなクラーケンのような怪物や、スケルトンのような怪物、サハギンのような怪物たちだ――が群れを成し、竜宮を突破せんと攻撃を繰り広げている!
「これ以上、深怪魔たちを中に入れないで!」
「だ、だめ! 右手側の子達が怪我が酷くて……!」
「ケガをした子は下がるんだ! ドラゴンズドリームが避難所になっている……だめだ、このままじゃ押し切られる……!」
 見目麗しい竜宮の民たちが、そこで血を流しながら決死の攻防を繰り広げていた。
「そんな……! どうして? 深怪魔に攻撃を受けてるなんて……!」
「おい、ヤベェんじゃねぇのか!?」
 漁牙が叫ぶ。それからすぐに、イレギュラーズ達に向き直った。
「迷ってる暇はねぇぞ! すぐに助けに行く! オヌシらも手伝え!」
 もちろんだ! イレギュラーズ達は頷き――しかし、後方から迫る影に気が付いた!
「いたな、漁牙ァ!」
 下卑た雄叫びをあげるのは、和装の海賊たちだ! 頭領、濁羅を先頭に、数十の海賊たちが、海を泳いで迫りくる!
「くそ、海乱鬼衆だ! あの濁羅って奴は相当の悪党だぞ! あ奴を竜宮に近づければ……!」
 おそらくは、深怪魔の襲撃に乗じ、略奪の限りを尽くすのだろう。それだけは止めなければ!
「神使様方よ! 忙しいが、両方に対処しなきゃならん!
 オレ達は海賊を抑える! 濁羅を倒すのに、何名か手を貸してくれ!
 残った面子で竜宮に救援! 怪物どもを追い払ってやってくれ!」
「わわ、あたしは――!?」
「お嬢ちゃんは、竜宮を救う神使様方と行動! 頼むぞ、そのおてんば嬢ちゃんを守ってやってくれ!」
 あなたに、漁牙はそう告げる。あなたは頷くと、武器を抜き放った。
 竜宮に到達するための前哨戦。まずは、この二正面作戦を突破せよ!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 竜宮に到着した皆さん。ですが、状況は剣呑なものでした。

●最終成功条件
 竜宮城の救援成功

●特殊失敗条件
 各パートにおける成功条件の未達成

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●状況
 竜宮幣を集め、竜宮へと向かった皆さん。漁火海軍の頭領、漁牙の力も借りて、竜宮に到着することには成功しましたが、そこに広がっていたのは、深怪魔たちの襲撃を受ける竜宮城の姿でした。
 すぐに救援に……と思ったのもつかの間、此方をつけてきた海乱鬼衆、濁悪(だあく)海軍の頭領、濁羅(ダグラ)に後方から襲撃を受けてしまいます。
 前門の虎後門の狼。濁羅達を倒さねば竜宮に進行されかねず、かといって今まさに竜宮に迫る深怪魔たちをほうっておくわけにもいきません。状況を見れば、どうやら竜宮内に深怪魔は侵入している様子。もはや一刻の猶予もないのです。
 皆さんは、この危機的な状況を突破する必要があるのです!

●第一パート
 第一パートでは、迫る濁悪(だあく)海軍と、深怪魔を排除してもらいます。

 作戦目標としては、以下の通り
  濁悪(だあく)海軍の頭領、濁羅(ダグラ)を撤退させる。
  竜宮周辺に存在する深怪魔を可能な限り掃討し、竜宮の防衛部隊の損害を抑える。

 となります。

 深怪魔たちはそれぞれ特徴があり、

  ウーズタイプ=蹴散らしやすい雑魚。数は多いですが、性能は低め
  スケルトンタイプ=人間敵に相当。様々な剣技を使いますが、まだ雑魚の類。
  サハギンタイプ=人間敵に相当。スケルトンより知能が高く、連携の取れた行動を行う。
  クラーケンタイプ=中ボスに相当。数は少ないが、倒せばそれだけ敵の戦力を大きく減衰できる。

 となっています。

 濁悪海軍は、

  海賊=人間敵。イレギュラーズ達には及ばないが、サハギンタイプ程度には強い。
     また、濁羅(ダグラ)を守る傾向にある。
     漁火海軍が増援で戦ってくれるので、ある程度は無視可能。
  濁羅=人間ボス敵。現シナリオでは最も強いが、撤退に追い込めればよい。
     漁牙が増援で戦ってくれる。彼をうまく使って、大打撃を打ち込んでやりましょう。

 となっています。

●第一パートプレイング受付期間について
 シナリオ公開から三日後、8月11日午前零時を最終締め切りとします。
 それまでに送られたプレイングは、タイミングに応じてリプレイとして反映されます。

●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネーの力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
 投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
 ※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります

 それでは、皆様のご武運を、お祈りいたします!

  • 深海にて、輝ける都へ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月22日 12時40分
  • 章数3章
  • 総採用数220人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

●次なる戦場へ
「ありがとうございます、ローレットの方なんですよね……?」
 そう尋ねる竜宮の少女に、あなたは頷いた。
「助けてくれてありがとうございます。でも、既に敵は内部に侵入しているんです。
 敵はおそらく、城……乙姫の下に。それと、戦えない子達や、怪我した人を、カジノ……ドラゴンズ・ドリームに避難させているんです」
「成程、敵はそっちも狙っているだろうな……」
 漁牙が言うのへ、少女は頷く。
「どうしよう、このままじゃ、メーアも皆も危ないんだ……」
 マールが困惑するように言いつつ、しかし、すぐに頭を振った。
「ううん、悩んじゃダメ……こんな時は」
 マールはあなたたちに視線を移すと、こう言った。
「ドラゴンズ・ドリームに向かおう! お城の方は、強い子達とか、強い結界があるから、まだ耐えられるはず!
 でも、ドラゴンズ・ドリームの子達は、もしかしたら、殺されちゃうかもしれないから……!」
 妹であるメーアが心配だ。だが、それ以上に、民を守ることも必要なのだ。その葛藤があなたにも感じられたから、あなたは何も言わずに頷いた。
「おう、オレたちは外で濁悪海軍が戻ってこないか、他の深怪魔がいないか、警戒する」
 漁牙がそういうのへ、あなたは頷く。
「気をつけろよ。あの包囲を突破した敵だ。たぶん、外にいた奴らより強いはずだ」
 漁牙の言葉に、あなたは頷いた。あなたは仲間と共に、マールを伴いドラゴンズ・ドリームへと向かう。そこにいたのは、カジノの前で防衛を続ける幾人もの竜宮の民と、それを食い破らんとするサハギンたち、そして巨大なヤドカリのような怪物たちだった! ヤドカリのような怪物はその鋭い爪でドラゴンズ・ドリームの外壁や、竜宮の民を切り裂いている! そして、そのヤドカリのような怪物を、次々と体内から排出しているのは、巨大なダイオウグソクムシのような怪物だった。
「何あれ! もしかして、あのでっかいのを倒さないと、何匹もヤドカリみたいなのが出てくるの……?」
 おそらく、マールの言葉通りに違いあるまい。あなたはマールに待機を促すと、武器を抜き放った。
 ドラゴンズ・ドリームを守り、そして巨大なダイオウグソクムシを破壊するのだ! 


――GMコメント――
此方は第二章となります。
状況としては、以下の通りです。

カジノ、ドラゴンズ・ドリームには、非戦闘員と負傷者が集まり、避難所となっています。
しかし、戦線を突破した深怪魔たちが、ドラゴンズ・ドリームへとその魔の手を伸ばしています。
敵となるのは、サハギンたち。そして、中型のヤドカリのような深怪魔と、その母艦であるダイオウグソクムシのような巨大な深怪魔です。
一刻の猶予もありません。ドラゴンズ・ドリームを守りながら、ダイオウグソクムシを破壊し、この侵攻を止めてください。

作戦目標としては、以下の通り
 ドラゴンズ・ドリームの損傷を、70%以下に抑える。
 アイアン・メイルの完全破壊。
となります。

エネミーデータ
 サハギン
  第一章でも遭遇したサハギンたちです。連携をとって攻撃してきます。

 アトミックシザー
  大ヤドカリ風の深海魔たちです。鋭い爪は、必殺や出血系列を付与してくるでしょう。
  装甲も厚めですが、隙間を狙う事で、大幅なダメージ増を狙えます。命中率に自信があるならば、狙ってみてもよいでしょう。
  また、数ターンごとに、下記のアイアン・メイルから数体が生成されます。

 アイアン・メイル
  ダイオウグソクムシのような巨大母艦です。体中に生えた鞭のような機関や、砲台のような穴から魔術砲撃を行います。
  装甲も厚く、波の攻撃では沈まないでしょう。火力に自信のあるメンバーで、一気に破壊してください。

●第2パートプレイング受付期間について
 シナリオ公開から三日後、8月15日午前8時を最終締め切りとして予定しています。
 それまでに送られたプレイングは、タイミングに応じてリプレイとして反映されます。

●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネーの力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
 投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
 ※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります

 それでは、皆様のご武運を、お祈りいたします!


第2章 第2節

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
防戦巧者
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
流星と並び立つ赤き備
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
Meer=See=Februar(p3p007819)
おはようの祝福
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす
フーガ・リリオ(p3p010595)
君を護る黄金百合
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺
桐生 雄(p3p010750)
流浪鬼
シェンリー・アリーアル(p3p010784)
戦勝の指し手

●竜宮の夢を救え
 ドラゴンズ・ドリーム。竜宮でも1,2を争うと言われるほどの大きなカジノだ。いつも人でごった返すその建物は、今は人ならざる者たちが押し寄せ、陥落の危機に陥っている。
「戦えない子と、重傷者を奥に運んで! 少しでも動ける子は、ごめん、戦ってほしい!」
 カジノのバニーがそう叫ぶ。非戦闘員の住民が、カジノのスタッフルームの方へと駆けていく。
「内部にまで押し込まれそうなら、オーナー権限で金庫を解放するわ。金庫のドアなら、敵の攻撃でもそうそうは破れないはずだもの。そこに皆を避難させれば……」
 その言葉に、従業員たちは頷いた。今最も最優先させるべきは、住民たちの命だ。
 ――だが、最悪に陥るような事態は発生しない!
「ボクが道を切り開くよ! 一気に突撃しよう!」
 カジノの外、焔が声をあげ、その身の内の炎をたぎらせた! 身体を包む強烈な炎! それは水中であろうと激しく燃え上がり、悪しきを燃やし尽くす正しき炎だ!
「いくよ! 続いて!」
 焔が、その手を振り下ろした。同時、強烈な炎は斬撃のように宙を走り、地を埋め尽くすサハギンたちを一気に炎の内に飲み込む! 同時、イレギュラーズ達は、焔がこじ開けた道を駆け抜けた。ドラゴンズ・ドリームを背に、一気に反転、攻撃に転ずる!
「中にいる人たちに伝えて。いまからちょっと揺れるけれど、俺達がいるから心配ないよ。だけどそうだね、外には出ないようにね。それから、光ってるところには近づかないこと」
 史之はドラゴンズ・ドリームの入り口にいたバニーに、そう伝える。
「大丈夫。必ず守る。俺たちを信じて欲しい」
 史之の言葉に、バニーたちは頷いた。あらためて前を見れば、巨大な母艦、戦車、歩兵、一通りの戦力を、敵はそろえている様だ。
「やれやれ……敵は厄介。でも、護るために戦うシチュって、燃えるんだよね!」
 史之は笑う。そして、仲間達とともに船上へと突き進む!
「もーっ、なんでカジノに敵がいるの!? っていうか、こんなにおっきな穴開けてる!」
 ロロミアが、ぎゃー、と叫ぶ。カジノには大穴が開いていて、そこには防御結界を得意とするロロミアの同僚たちが、必死の防衛線を築いている。
「うう、あのヤドカリみたいな奴がそんなに強かったなんて……!」
 嘆くロロミアに、防衛線のバニーが、苦笑交じりで叫んだ。
「違うわよ、ロロミア! この間あなたがあけた穴!」
「……あっ」
「ロロミアちゃん、穴あけたんですか……?」
 ルシアが呆れた顔でそういうのへ、ロロミアが「えへへ」と笑う。
「さておき! 穴が開いてるなら近づけなければいいだけでして!」
 ルシアが放つ魔砲が、サハギン、アトミックシザーたちを薙ぎ払う! サハギンは消滅するも、アトミックシザーはその硬い殻で身を守っていた。むぅ、とルシアが頬を膨らませる。
「かったいです!」
「問題ないわ」
 イーリンが声をあげ、突撃する! 手にした戦旗を、見事にアトミックシザーの装甲の隙間にねじ込む! そのまま内部を切り裂けば、ぎゅお、と悲鳴を上げてアトミックシザーが泥に溶けて消える!
「戦車だって、内部をつけばこんなもの。
 ルシア、あなたは魔砲をバンバン撃って!
 さぁ、レイリー、リーダーとして名乗りを頼むわよ!」
 イーリンが言うのへ、レイリーが頷く。
「さぁ、みんな! ここは絶対護るわよ!
 私の名はヴァイスドラッヘ! さぁ、ここは迂回禁止よ!」
 高らかに宣言する、レイリー! 仲間達はその白鎧を見、そして竜宮の民も、その気高き白の鎧を目に焼き付ける。
「サハギンは分断して! あのヤドカリは隙をついて確実に!
 あの……何あれ! 奥のでっかいの!」
「ダイオウグソクムシっぽいスね」
 美咲が声をあげる。敵の母艦と思わしきダイオウグソクムシ、アイアン・メイルは、強烈な砲撃と共に、定期的にアトミックシザーを生み出している様だ。
「あれが母艦……倒すのも時間がかかりそうっス。別動隊に任せて、こっちは防御に専念するっスよ」
「そうね! お願い、みんな!」
 レイリーの言葉に、仲間達は頷いた。
「しかし……爆死の話したあとに、まさかカジノに来ることになるとは。
 神様って奴も嫌味な奴っスね。
 まぁ、まぁ、カジノを守れば運が付くかもしれませんし……!」
「せやな、ま、前向きに行こうや?」
 彩陽がそう言いながら、大弓を構える。一気に引き絞り、解き放てば、放たれた矢が、次々とサハギンを打ち貫いていく。
「しかし、ぎょうさんやってくるもんやな……!
 加減っちゅうもんをしらんのやろか!」
 サハギンたちの数も多く、同時に母艦から戦車たるアトミックシザーが生み出されている。彩陽が放った矢が、アトミックシザーの装甲の隙間を貫き、泥に返す。
「ああ、しつけー奴等だな。いい加減諦めて帰りやがれってんだ」
 エレンシアがそういうのへ、
「ま、誰かの大切な場所なら、護ってやらないとな……!」
 ふ、と笑みを浮かべつつ、矢を打ち放つ彩陽。
「それはそうだな……! よし、援護頼む! 守りは性に合わねー、あたしは突撃する!」
 エレンシアが飛び出す。大太刀を振りまわし、敵を引き付けるメンバーから外れた敵を狩りとるエレンシア。
「ゴリョウ! 憂炎! 防衛頼む!」
「おう、任せな!」
 ぶははははっ、と笑うゴリョウ。その両手を高らかに構え、にぃ、と笑ってみせる。
「大丈夫さ、僕には生ハムの原木があるからね」
 憂炎もくすりと笑って、生ハムの原木を掲げた。
「ぶはははッ! こっから先は通行止めだ!
 通りたきゃこの豚を沈めな! 出来るもんならな!」
「ねえ、あと100ラウンドやるかい? 僕は構わない。生ハムの原木があるかぎりね」
 二人の盾が、いや、偉大なる城砦が立ちはだかる! サハギンたちは決死の攻撃を繰り広げるが、この二人を抜くことはできまい! もたついている間に、イレギュラーズ、そして竜宮の防衛部隊の攻撃を受け、次々とその身を泥に返していく!
「ん? どうした? 来ねぇのか? 水中の豚一匹仕留められねぇたぁ随分とヌルい生き方してるねぇ!」
 にやりと笑うゴリョウに、サハギンたちはぎっ、ぎっ、と怒る様子を見せた。だが、実際に攻めあぐねているようでは、無駄な怒りの発露というもの。
「防衛は任せて! 遊撃をお願い!」
 憂炎が、仲間達へと叫ぶ。
「援護は任せろ、最高の演奏を聞かせてやる!」
「避難所を狙うなんて許せませんからね! 皆さん、頑張りましょう!」
 フーガ、そして涼花が声をあげた。高らかに鳴り響くトランペット。そして静かに響く歌声が、戦場を行く戦士たちの背中を押す。
「すごい……戦う力があふれてくるなんて」
 竜宮の防衛部隊の少女が、驚いたように声をあげる。
「あのね、無理だけはしないでほしいんだけど……。
 でも、もし僕らと一緒にもう1度立ち上がろうとする手があるなら。
 見て! 引っ張り上げてあげられるだけの力がここには集まってるんだ!」
 そう言ったのは、Meerだ。竜宮の警備隊、そしてまだ戦えるだけの力を残しているひとへのお願い。もちろん、無理はしないでほしい。それでも、もう一度戦えるのだとしたら、決して孤独ではなく、共に戦おうという意思を、Meerは告げている。
「イレギュラーズさん……分かったよ!」
「護られてばっかりじゃだめだよね……あたし達も精一杯がんばろう!」
 少女の言葉に、防衛部隊のメンバーが頷く。二人の演奏が、歌声が、そしてMeerの言葉が。この時確かに、多くのものを勇気づけ、もう一度立ち上がらせる力となったのだ。
「おうよ姉ちゃん、頑張れよ! 
 俺もローレットだぜ、新顔だがな!
 なぁにあんな化け物どもすぐやっつけてやるからよ、終わったら持て成してくれよな」
 そう言って笑う雄に、バニーたちが頷いた。
「うん! 終わったら、遊びに来て!」
 そう言って手を振るバニーに、雄はにぃ、と笑う。
「さぁて、じゃあかっこ悪いとこ魅せられねぇよなぁ!」
 抜き放った刀を翻すと、サハギンが三枚におろされて消えていく。泥ととけたサハギンが散り、すぐさま別のサハギンに襲い掛かる刃が、その首を落とす。
「オラオラ、テメェらはおよびじゃねぇんだ!」
 次々と切り裂かれるサハギン。一方、戦車たるアトミックシザーは中々の強敵だ。的確に装甲の隙間を狙えば、確かに簡単に倒せる。が、言うは易く行うは難し、ともいえる。
 が、それをやってのけて見せるのが、可能性の申し子たるイレギュラーズというものか。
 正純は静かに息を吸い込むと、冷たくも冷静な瞳でアトミックシザーを見やる。狙うは装甲の隙間。一撃で狙い撃ち、落とす。ふ、と息を吐きながら矢を解き放てば、その屋は寸分たがわずアトミックシザーの装甲の隙間に突き刺さり、内部の組織をずたずたに裂いた。そのままアトミックシザーが泥へととけていくのへ、正純は一瞥。
「本当に不気味な怪物たち。何を求めて竜宮城へ攻め寄せるのか、理由はわかりませんが、非戦闘員は守らねばなりません」
 お願い、皆を助けて、と言ったマールの顔を思い出す……まだであったばかりとは言え、あの笑顔を曇らせてしまうのは忍びない。今も戦場の何処かで、自分にできることはないかと走り回っているはずだ。
「お転婆な要人を護るのも楽ではないですね。どこも同じなのでしょうか?」
 苦笑しつつ、しかしその矢の冴えは決して鈍らない。正純のやが次々とアトミックシザーを粉砕していく。その一方で、押し迫る敵を抑え込んでいるのは、オラボナとベーク。二人の壁役だ。
「人々の娯楽を蹂躙すると謂うのか。
 連中は物語性の真意を理解出来ぬ。
 獣よりも醜い台無しと謂うワケか。
 ならば、果ての絶壁としての己を存分に揮うとしよう」
 バニーなオラボナに、隣に立つベークがむむ、と唸る。
「敵の狙いは確かによくわかりませんし、勢いも衰えない……厄介ですね。
 ですが、今は耐えるのみ、です」
 汚れた槍を構えて突撃してくるサハギンを、ベークはその手で受け止め、受け流した。ぢっ、と砂地を抉る槍に一瞬目を移しつつ、ベークは手にしてた戦旗を以てサハギンに打撃を喰らわせる。
「よっ、と」
 そのまま振るえば、サハギンがフッ飛ばされて、地にたたきつけられる。オラボナの迎撃結界が叩きつけられ、どのまま泥へと還っていく。
「Nyahahaha――温い。臓物のように」
「凄い例えですね? でも、サハギンくらいなら何とか捌けそうなのは事実です!」
 サハギンたちは歩兵、数は多い分、性能は一段下がるようだ。これくらいなら、まだまだ相手にしても余力を残せそうである。
「そうですね。それに、此方も援護を厚くします。
 誰一人、倒れさせはしません」
 そういうグリーフの姿は、バニーさんである。
「バニー ドウシテ?」
 フリークライが小首をかしげる。グリーフは頷いた。
「竜宮の皆さんを勇気づけるためです。
 それから、敵も誤認して狙ってくれればよいかと」
「…… 一理 アル?」
 フリークライが小首をかしげた。そのままごそごそと懐を探ると、頭にうさ耳をつけてみた。
「フリック モ 誤認 サセル」
「よいですね」
 グリーフが頷く。
「フリック 皆 傷ツケル サセナイ
 グリーフ モ 頑張ル フリック モ 頑張ル」
「ええ、共に頑張りましょう。此処が正念場――全てを、私たちの手で、護りましょう」
 グリーフの言葉に、フリークライは頷いた。かくして二人の術式が仲間達の背中を押し、傷を癒した。誤認効果があったかどうかはわからないが、バニーさん達には非常に好評かだったことは告げておく。
「残った部材や、壊れた壁なんかでバリケードを作るんだ」
 サイズが言う。今現在できる技術で作り上げた足跡のバリケードの内側に竜宮の護衛部隊たちを隠して、
「此処から援護を頼むよ……無理はしなくていい!
 こんな戦いで、誰かが死ぬなんて許せない……皆、生きて帰るんだ!」
 サイズの言葉に、護衛部隊たちが嬉しそうに頷いた。
「サイズさん、無事に戦いが終わったら、遊びに来てくださいね!
 歓迎します!」
 そういうのへ、サイズは少しだけ頬を赤らめた。
「いや、俺には妖精たちがいるから……」
 とかちょっともごもご、こほんと咳払いをしつつ、
「兎に角! 俺たちを信じて、力を貸してくれ!」
 そう言って飛び出すサイズは、自身の力を利用して、サハギンたちを薙ぎ払う。サハギンを倒すたびに黄色い歓声が上がるが、サイズはとりあえず聞かなかったことにした。
 ルチアと鏡禍、ふたりもまた、戦場のただ中で激しい戦いを、華麗なるコンビネーションを見せつつ戦っていた。
「ありがとう。
 ルチアさんが一緒にいてくれるから頑張れそうです。
 だから絶対に僕から離れないでくださいね?」
「貴方が征くっていうならどこまでもお供するわ。
 できる限り支えるから、倒れるんじゃないわよ?」
 言葉を交わし、跳ぶ。鏡禍が腕を振るえば、紫の霧は刃のように水中をかけ、サハギンを打ち倒す。
「そんなところを狙うより、もっと戦いがいのある相手がいますよ。倒せるものなら倒してみてください」
 挑発するように言う鏡禍に、サハギンたちが殺到する。汚れた槍を振り下ろす攻撃に、鏡禍は飛びずさってみせた。追うように、紫の霧が軌跡を描く。霧は時に盾のように密集して、それを受け止める。霧は妖力の衣。それが力を発揮し、目視できるようになった状態だ。
「傷付けられるものならやってみなさい。私が全部癒してみせるから」
 ルチアの福音が、鏡禍の傷を瞬く間に癒す。その背に信頼の翼を借りて、鏡禍は再び戦場をかける。ルチアがあたりを見回す。すでに戦いは激しさを増しているが、しかし決定打にかけるのは、敵母艦……アイアン・メイルを撃破できていないからだろう。
「……戦況は膠着状態ね。出来れば、速やかに突破したいものだけれど……」
「あの大型母艦が倒れない限り、敵はほぼ無尽蔵に戦車(アトミックシザー)を生み出すわ」
 イーリンが言う。となれば、打ち倒すべきは彼の母艦。だが、此方の防衛の手を緩めるわけにはいかない。
「アイアン・メイル討伐部隊を信じるしかないスね」
 美咲が言う。とは言え、その表情は比較的に楽観的と言える。もちろん、アイアン・メイル攻撃部隊が、それを成し遂げる事を信用しているからだ。故に、美咲も防衛の仕事を請け負っているわけである。
「なら、あれをやっつけるまで、何度も撃つだけでして!」
 ルシアが言う。
「そうね! アタシも全開よ!」
 ルシアの隣には、竜宮のロロミアもいる。普段出せない全力を出し切ることができるまたとない機会だろう。
「なんにしても、今は耐える時って奴か。
 性に合わねーが、ま、やってやる」
 エレンシアの言葉に、仲間達も頷いた。
「数は多いですが、くじけず突破しましょう。サハギンたちも有限ではなく、アトミックシザーも、アイアン・メイルさえ何とかすれば、増産も出来なくなる」
 正純の言う事に、皆も頷く。母艦さえ破戒できれば、敵の増援はなくなる。こればっかりは、攻撃メンバーを信じるしかないだろう。そしてそれは、決して希望を祈るような信頼ではないはずだ。
「引き続き、此処で仲間を癒しましょう。
 どうか皆様、ご武運を」
 グリーフがそういう。フリークライやルチア、フーガや涼花にMeerといった面々が、全力を以って仲間達を支えている。その働きに報いぬわけにはいかない。
 そして、イレギュラーズの背後には、共に力を合わせ、そして守るべき存在でもある竜宮の民たちがいるのだ。彼女、或いは彼らに力をみせ、安心してもらうためにも……泣き言などは言っていられない!
「生ハムの原木がある限り、僕たちに敵はいないよ!」
 憂炎は生ハムの原木を掲げながら、高らかに告げる!
「よし、皆行くわよ!
 この鎧の下に集いしものも、そうでないものも。
 今ひとたび力を合わせ、無辜の民を守りましょう!」
 レイリーの号令に、イレギュラーズ達は頷いた。
「よーし! どんどん道は開くよ! ボクに続いて! 全力全開だよ!」
 焔が叫び、その身に焔をたぎらせる! 強烈な炎は、深海を照らす正義の炎のようにも見えた。
「さて、守り抜くよ。此処は今、僕が守るべき場所になった」
 史之が決意と共に言葉を紡ぐ。防衛と、突撃。二つの戦線は今まさに開かれ、苛烈な火花を散らし始めていた。

成否

成功


第2章 第3節

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
セララ(p3p000273)
魔法騎士
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
アベリア・クォーツ・バルツァーレク(p3p004937)
願いの先
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)
名無しの
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
囲 飛呂(p3p010030)
君の為に
ファニー(p3p010255)
綾辻・愛奈(p3p010320)
綺羅星の守護者
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女

●鉄の母艦
 さて、ドラゴンズ・ドリーム戦線。最前線を越えて進めば、巨大なダイオウグソクムシ風の外見をした、異形の生物が存在するのが分かるだろう。顔面と思わしき場所や、それ以外の所からは生えている触手のような器官は、近づくものを切り裂く強力な近接兵装であり、あちこちにあいた穴のような器官は、強烈な魔力砲撃を打ち放つ砲塔の役割をはたしている。そして何より驚異的なのは、時折装甲がめくれ上がり、巨大なヤドカリ……アトミックシザーが生み出されることだろう。つまり、これは敵の母艦にあたるのだ。次々と体内で戦車(アトミックシザー)を生産し、戦線に投入する。そしてこれ自体が強力な戦艦でもあるこれは、この場において、最優先で処理すべき怪物であるに間違いなかった。
「ふん……とんでもない怪物、って所だな」
 クロバが勇敢に笑ってみせた。敵は恐ろしい。だが、それでも怯むわけがない。
「クロバさん、無理しないで!」
 マールがそういうのへ、クロバは頷いて見せる。
「大丈夫だ。
 それより、君も無理をするなよ」
「ありがとう。クロバさん、優しいね」
 にっこりと笑うマールに、クロバは少しだけ驚いたように目をそらして見せた。
「妹を心配するのは兄や姉として当たり前の感情だろ……なら、俺も同じ気持ちを持つ者として全力で手伝うだけさ。
 さ、下がってな。此処は危ない」
 クロバの言葉に従って、マールがドラゴンズ・ドリームの方へと去っていく。何度もクロバに、この場に残るイレギュラーズ達に「気をつけて」と声をかけながら。
「気を付けるさ……みんな生きて帰ってくる」
 クロバの言葉に、イレギュラーズ達は頷く。もちろんだ、こんな所で死ぬつもりなどは毛頭ない。皆を助け、竜宮の民を助け、生きて帰る。これまでもそうしてきた。当然だ。そしてこれからも。
「やるぞ、皆!」
 クロバが叫び、飛び込む! うち放たれる砲弾を切り裂きながら、生み出されたばかりのアトミックシザーを両断!
「燃費も安定性も最悪の一言、だけど当たりさえすれば装甲のひとつも凹むでしょう、よっ!」
 叫び、放たれるのはセレナの魔力弾撃だ! 一発放つたびに、体内の残存魔力が次々と減っていくのが分かる。それでも!
「空っぽになるまで撃ち抜いてあげる! わたし一人で、アンタの装甲一枚でも落とせれば充分なトレードだわ!
 それに――」
 何度も、何度も。自分の力のすべてを賭けて放つ、魔力弾撃。それが一発ごとにばぎり、ばぎり、と敵の装甲をへこませる。
「きっと、なんとかなるわよ!
 だってそれがわたし達、特異運命座標なんだって。なんとなく、分かってきたからね!」
「そうだよ! それが、私たちだ!」
 マリアが吠える! 水中を奔る、紅の雷! ばぢばぢと爆ぜるそれがアイアン・メイルの装甲を焼いた。痛覚でもあるのか、怒りに震えるように、触手を振り和ますアイアン・メイル。マリアは微動だにせず、それを己の身体の周囲に巻き起こる紅雷で弾いて見せた。
「ふふ、その程度の攻撃なら、避けるまでもないね!
 君の攻撃が、私の紅雷の結界を突破はできない!」
 ず、と一歩足を踏みしめて進む。アトミックシザーたちが迫りくるのを、マリアは不敵に笑ってみせた。
「ヒーローは遅れてやってくる、ってね。少し遅れた分、今の私は全力全開だよ!
 私は非力だが、非力なりに巨大な敵を倒す方法は知っているさ!
 ずっとそうやって戦ってきたのだからね!」
 マリアが、雷と化して駆ける! 放たれた雷は、敵の力をそぎ落とす、減力の雷! おお、おお、とアトミックシザーたちが、アイアン・メイルが吠えた。その隙をついたアイリスが、突撃! 手にした砲を構え、アイアン・メイルの砲塔むけて、一斉射! 放たれた強烈な砲撃が、アイアン・メイルの砲塔に突き刺さり、次々と爆発! 爆炎をあげる!
「グロテスクというかなんというか……深海魔達は結構な趣味をお持ちなようで……」
 アイリスが、にやりと笑う。
「さてと、ドラゴンズ・ドリームの被害がこれ以上増えるのも厄介だし……まずは砲台とかヤドカリをばら撒いてるハッチらしきものの破壊からがセオリーかな?」
 続いて構えると、再度一気に砲撃を放った。砲弾は次々と着弾し、強烈な爆発を巻き起こす。身をよじる様に、アイアン・メイルがうねる。
「こっちは砲撃を続けるよ。タイミングを見て突撃!」
「オッケー秋奈ちゃんたちにお任せだい!
 おうおうおう!
 ウチのお頭……じゃなかった、ちょっタンマタンマ! 今のナシ!
 ウチの姉貴のお通りでい! 神妙にお縄につけぇい!」
「何かしら?
 良く聞こえなかったのだけど、もう一度言ってもらえるかしら、秋奈?」
 表情は静かに、されど言葉は重く。リアがそういうのへ、秋奈は視線をそらせた。リアはふぅ、とため息一つ。
「ま、今はアンタの戯言に付き合っている暇もないしね。
 ほら、さっさと行くわよ!」
「おっけー、流石お頭……姉貴だぜ!」
「アンタ、ほんと後で覚えときなさいよ!」
 駆ける、ふたり! きゃっほーい、と秋奈が先に突撃するや、その両手に刃を構える。
「アゲてけぇーっ! か弱い乙女ーっ!」
 刃が閃光を走るたびに、射出されたばかりのアトミックシザーがその鋏を切り離されていく。その後を追うリアが、手に宿らせた聖なる光をまといし細剣を振るう! 急所を突かれたアトミックシザーが活動を停止して泥へと還るまま、二人はアイアン・メイルへと突撃。
「でっかいわね! どこを殴る!?」
「私ちゃんが斬った所に特攻(ぶっこみ)だ!」
「言い方!!」
 秋奈がその両手の刀をクロスさせる。斬撃に装甲がめくれ上がった所に、リアの強烈なドロップキック! その衝撃に、アイアン・メイルがまさかの横転をした。
「マジかよ頭」
 秋奈ちゃんもびっくり。とは言え、アイアン・メイルもただ転がったわけではない。脚部は強烈な槍でもある。まるで驟雨のように、あちこちに脚部の槍の雨を降らせる!
「ハッハ、どっちも滅茶苦茶だなおい」
 キドーが笑いつつ、その槍の中を駆け巡る。盗賊ゴブリンを、その槍がとらえられることはない。いや、いずれは当たるとしても、此方の渾身の一撃が使えるまでの間、当たらなければいい。
「悪いねぇ、俺は出し惜しみはしないタイプだからさ。寝転がったまま死んでくれや!」
 キドーのククリが、アイアン・メイルの脚部を根元から斬り飛ばす。ぎゅうぃ、と悲鳴を上げるアイアン・メイル。やはり生物でもあるのだろう。深怪魔は奇妙な生態だが――今の所、キドーが興味あるのは、そんなものではない。
「へいへい、俺の勇姿をしっかりと目に焼き付けてくれよな、バニーちゃんたち!
 この怪物どもをキッチリ片付けた暁には、お店の割引なりなんなり効かせてくれたっていいんだぜ!
 ついでにスロットの確率の操作なんかも……それは駄目? やってない?」
 ハハハ、と笑いつつ、苛烈な斬撃がアイアン・メイルの脚部を切り裂く。これ以上は致命打かと悟ったアイアン・メイルは、脚部から泥のようなものを周囲に吐き出した。キドーがたまらず退却。煙幕、或いはジェット噴射のように吹き出した泥を利用し、アイアン・メイルは身体を地面に着地、態勢を整える。
「おや、ボーナスタイムは終わりかな」
 ひゅう、とЯ・E・Dが言う。
「このまま寝転がっててくれれれば、ヤドカリ君も出てこなくて楽だったんだけどね――そこまで優しくはないか!」
 Я・E・Dが突っ込む。戦線のふりを取り返すように、アイアン・メイルはアトミックシザーを生み出して迎撃に当たらせる。Я・E・Dはふぅん、と鼻を鳴らすと、
「ルーキス、頼める?」
「任せてください!」
 ルーキスが突撃!
「アイアン・メイルだろうと、アトミックシザーだろうと――この一撃【防無】で装甲ごと吹き飛ばす!」
 その言葉通り! 強烈な斬撃が、アトミックシザーの装甲ごと、内部の重要な期間を断裂させた! ぎゅうい、と悲鳴を上げたアトミックシザーが泥に還る。
「この泥が、アトミックシザーを生み出す原料……? 或いは、慣れの果てでしょうか……!?」
 あたりを見て見れば、此処にいる深怪魔たちは、泥のような何かから生まれ、消えているように感じられた。もちろん、此処だけの話かもしれないが、或いは実態なく生まれた泥人形のようなものなのだとすれば、それを想像した何者かが存在するのかもしれない。或いはそれが、深怪魔が崇める邪神、竜宮の民が封じた『海の悪魔』か。
「いや、考えるのは後ですね……今は、此処を突破します!」
 ルーキスがその剛烈な斬撃で敵を駆逐するのへ、Я・E・Dが先を走った。
「無茶するから! 気絶したら拾って!」
 Я・E・Dが叫び、アイアン・メイルの開かれた装甲、アトミックシザーが今まさに生まれようとしている部位に接近! そのまま零距離で苛烈な砲撃を打ち放つ! 光が爆砕し、アイアン・メイル、Я・E・Dの双方を吹き飛ばした! 半ばから千切れるように分裂するアイアン・メイル。しかし千切れとんだ後方がぐちゃぐちゃと泥を吐き出すと、すぐに連結して繋がりを戻す。
「うわわわ、なんだあれ! めっちゃくちゃじゃない!」
 辻癒しを自称していた鈴音、吹っ飛ばされたЯ・E・Dを受け止めて、すぐに治療にあたる。
「でも、大ダメージは与えられたはず……!」
 リリーの言葉は、鈴音も頷くところである。とは言え、だいぶ無茶したことに変わりはないが。
「このまま押していけば、やっつけられるよ!
 リリーも頑張って!」
 鈴音の言葉に、リリーは頷く。
「うん! 装甲が厚いなら、それに適した戦い方があるって事、教えてあげる!」
 リリーが放つ銃弾が、装甲の隙間から内部に入り込む。同時、呪は弾けてさく裂する。内部にて、さく裂する呪は、アイアン・メイルのその身の内を激しく蝕んだ。僅かに動きが鈍り、その体の内側にて激痛がさく裂する。呪殺の一撃である。
「よし、じゃあこのまま砲撃を続けるとするか」
 ファニーがへへ、と笑う。
「俺様はこのまま固定砲台をやらせてもらうよ。
 その方が全力を発揮できるからな」
「……もしかして、移動するのがめんどくさいとか?」
 鈴音が小首をかしげるのへ、ファニーは肩をすくませて、笑ってみせた。
「heh、バレたか。まぁ報酬分は働くから勘弁してくれよ」
 ウインク一つ。動くのが面倒、とは言うものの、しかしその砲撃の力は決して手を抜いたようなものではない。強烈な魔力ブラスターは、回避困難な光の帯となってアイアン・メイルへと迫る。じゅう、と装甲を焼く魔力の砲撃に、アイアン・メイルが再び身をよじらせる。反撃とばかりに放たれたアイアン・メイルの砲撃が、ファニーへと着弾する前に、あっさりと避けて見せた。
「あ? 避けないとは言ってないぜ? アイアン・なんとかよ」
 笑ってみせるファニーに、
「とにかく、無理はしないでね!」
 鈴音がそう言った。
 とにもかくにも、イレギュラーズ達とアイアン・メイルの死闘は続いていく。イレギュラーズ達は決死の猛攻によりダメージを蓄積させ、アイアン・メイルは生み出したアトミックシザーと砲撃、槍のような足と斬撃のような触手で、イレギュラーズ達を苦しめる。
 一進一退の攻防――されど、護るべきものがある故の強さか。イレギュラーズ達は確実に、アイアン・メイルを追い込みつつあった。
「さて、装甲が厚いなら……!」
 愛奈の放つ狙撃銃の弾丸。それは装甲の隙間を縫って、的確に敵の『弱い所』を貫く。人体で例えれば、腱が切れたようなものか。がくん、とその巨体が、揺れた。倒れ込むようなそれに、愛奈は再びの銃撃をくわえる。
「その内側より、行動を阻害すればいいというものです。
 こう言った搦め手は想定していなかったようですね」
 愛奈の言葉に応じるかのように、アイアン・メイルはその身体を震わせた。
「その上で――砲を潰せれば、手数も減るはずだ」
 そういうのは、同様にスナイパー――ラダだ。静かな銃声が鳴り響くや、その銃弾が射出寸前の砲塔に突き刺さる。同時、発射されるはずだった魔力は銃弾によって衝突、激しく爆発し、その砲塔の一つをひしゃげさせた。しかし、それも一つを潰しただけだ。まだまだ砲塔は残っている。だが、ラダ、そしてイレギュラーズ達の懸命なる攻撃は、アイアン・メイルのその本来の攻撃能力をことごとく潰していったことは事実だ。
「よし、着実に、敵の攻撃能力は低下しているはずだ」
 ラダの言う通りなのは、前述の通り。ラダは再度銃を構えると、再び砲塔を粉砕すべく射撃、爆発が巻き起こり、アイアン・メイルの身体が揺れるのへ、イズマが追撃を見舞う!
「あのヤドカリを生み出す部分を破戒できれば……!」
 再び開いたアトミックシザーの生成口。イズマはそれへ向けて、己の持つ剣を掲げた。同時、自身に卸した魔神、その力の一端が吹き荒れ、剣の先から強烈な閃光となって、アトミックシザーの生成口に突き刺さる! 強烈な破砕音。爆裂が鳴り響き、その射出口が一つつぶれたのが分かる。ぐちゃぐちゃになったそのハッチのような場所から、泥が血液のようにしみだしていた。
「いいペースだ。
 こいつらの目的はまだわからないけれど……でも、何とかなりそうだね」
 イズマの言葉に、頷いたのは飛呂だ。
「そうだな……さっきの濁羅って奴よりはしつこくない……と思ったけど、アイツとは別の種類のめんどくささだ……」
「確かに、濁羅はしつこかった……けど、こっちはひたすらに、倒しづらいって印象だ」
 イズマの言葉に、飛呂は同意の言葉を返した。
「方向性は違えど、厄介な奴には変わりない、か……けど、もうひと踏ん張りだ。
 アイツは確かに、ダメージを蓄積されてる……!」
 飛呂の言葉は、まさにその通りだった。アイアン・メイルのダメージはかなり蓄積されており、その体のあちこちに、イレギュラーズ達が与えたダメージが、大きな傷となって遺されている。
 あと、もう少し――あともう少しで、この防衛線も終わりを迎えるはずだ。
「果たして船に、混乱なんて効くのやら……と思っていたが」
 ミーナが、ふむ、と声をあげる。どうやら奇妙な動きをしているのは間違いないようだ。生物よりの物体なのだろう――と言っても、深怪魔の生態などは、まだまだ分からないのだが。
「奇妙だ。あまりにも。気に入らないな」
「ええ、まったく。せっかくバニーさんと色々お話しできると思っていたのに、何故自分はダイオウグソクムシと戦っているのか」
 バルガルがそういうのへ、ニーナは目を細めた。
「……そっち?」
「重要でしょう。人間、やる気というものは重要です。色々と」
「んー、まぁ、確かにそうだが」
 ふむ、とニーナは唸った。どのような理由であれ、士気が上がっていた方が戦いに有利なのは事実だ。それがバニー愛であれ。
「もちろん、別に自分にやる気がないわけではありません。むしろ十分。これは、バニーを邪魔された怒り」
「怒りかぁ……」
 ニーナがぼやいた。まぁ、怒りは時にやる気を引き出す。それは間違っていない。
「まぁ、やる気があるのは良い事だ。敵の生命力もう少しと見える。
 さっさと片付けて、バニーさんとやらとお話してこい」
 ニーナが言うのへ、バルガルが頷いた。割といい笑顔で。
 さておき。イレギュラーズ戦いも佳境へと突入していた。
「一息つくのはもうちょっと先になっちゃうけど、竜宮城の人たちのために踏ん張ろう!」
 咲良の言葉に、エーレンは頷く。
「もちろんだ、咲良。イレギュラーズの、そして俺達の力を不遜な海産物たちに見せつけてやろう!」
 飛び込むエーレン、その刃が海底の星のように煌く。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。その馬鹿でかい図体、三枚に下ろしてくれよう」
 振り下ろす刃が、斬鉄のごとく装甲を切り払う。傷がつく装甲に、しかし致命打にはまだ遠い。
「硬いな……そして分厚い。弱点を狙いたい!」
「任せて! エーレンくん!」
 咲良が頷いた。そして、その目で、敵をスキャンする――何か、攻撃の通づる場所。例えば、切り落とされた脚部、その接続部――!
「弱点! たぶん脚のあたり! そこを突けば、ダンゴムシだから固いかもしれないけど早くと片付けられるかも!」
「でかした咲良、弱点をとびきり広げてやるぞ! あとそいつダンゴムシじゃなくてダイオウグソクムシな!」
 エーレンの声に、咲良が頷いた。そのままふたり、突撃!
「……行くよ! さっきと同じように、呼吸を合わせて!
 突破口開くよっ! エーレンくん、合わせて追撃よろしく!」
 言葉と共に、加速――その神速を乗せた一撃が、切り離されていた脚部、その付け根を叩く!
「今!」
「応!」
 続くエーレンの攻撃が、追撃のように突き刺さる。すくい上げるように放たれた斬撃が、再びアイアン・メイルの身体をほうり上げ、横転させた。
「皆、頼む!」
 エーレンの言葉に、飛び込んできたのはアリアだ!
「まかせて、準備完了!
 じゃあ! これまでより更に威力を上げたフルルーンブラスターで思いっきりぶん殴ってあげる!」
 跳躍するアリアの、その手に魔力が凝縮される! 破滅的な魔力の奔流! 一撃必殺の剛拳!
「一発っ!」
 その手が振り下ろされるや、強烈な魔力衝撃が、アイアン・メイルの腹を抉った! ぎゅおおおお! アイアン・メイルが悲鳴を上げる!
「いっぱい集めたお日様の光よ。とっても痛いんだから!」
 続いたのは、オデットだ! つきき出された掌が、さらなる衝撃波(フルルーン・ブラスター)をぶち込んだ! ぎゅあ、と悲鳴を上げたアイアン・メイル、先ほど引きちぎられた半身が、その溶接を引き裂いて再び千切れとんだ。今度は再びつながるようなことはない。下半身は完全に吹き飛ばされ、ぐちゃぐちゃと泥へと消えていく。
「やった……ううん!?」
 アリアが叫ぶ。
「まだだ、意外としつこいようだな」
 愛無が声をあげた。残る上半身が身をよじり、先ほどよりも短くなったとはいえ、いまだ健在だとアピールするように吠えた! ぐちゃり、と下半身から、無理矢理泥を吹き出して、アトミックシザーを生み出す。身を削るようなそれは、最後の抵抗のようにも見えた。
「無駄な抵抗だ。悪いが、まとめて喰らわせてもらう――」
 愛無が吠える。その『爪』がアトミックシザーの爪を切り裂き、ばぎり、と咀嚼するように握りつぶした。
「不味い。星食いよりマシだが」
 ふむん、と鼻を鳴らす愛無。その爪がアトミックシザーを刻む。悲鳴を上げるように蠢くアトミックシザーへ、オデットとアリアの衝撃波が撃ち込まれ、大地を抉る様に叩きつけられる!
「こっちは任せて!」
 オデットが叫んだ。
「アイアン・メイル、任せるよ!」
 アリアが叫ぶ――同時、ニコラスの大剣が、アイアン・メイルの装甲を破砕した!!
「水滴ですら石を穿つんだぜ? ならダメージが通らねぇ物質なんざあるわけねぇんだよ!」
 その言葉通り――果敢なる攻撃はアイアン・メイルの装甲を確実に弱化せしめ、そしてついに完全に破砕せしめた。
「俺はギャンブラーだが――一発デカイ賭けをするためには、周到な準備が必要なんだ。
 考えなしにベットしてると思ってたか? その程度でカジノにこようなんざ、調子に乗り過ぎだぜ、深海野郎」
 ニコラスが笑う。そういえるだけの偉業を、ニコラスはイレギュラーズ達は、行い、耐え忍び、そして実行したのだ。その硬い殻の内に潜んだ柔らかい肉を見よ。虚栄と言う名の装甲に護られ、弱き者を蹂躙する事しかできぬ愚かな蟲よ。
 ぎゅおおお、とアイアン・メイルが吠えた。がしゃがしゃと脚を動かし、移動を開始する。逃げるのか。そうであり、そうではなかった。アイアン・メイルが向かうのは、ドラゴンズ・ドリーム――。
「やけくその突撃か!」
 ニコラスが叫ぶのへ、しかしその前に縁が立ちはだかる!
「おっと、悪いがあっちはもう定員オーバーだ。
 綺麗な嬢ちゃん方の代わりと言っちゃなんだが、おっさんの相手をしてくれや」
 交差する! 縁と、アイアン・メイル! その刹那! 斜めに横転したのは、アイアン・メイルの方であった。
 如何に巨体と言えど、重心というものがあり、重心を崩すための点というものが存在する。
 その点を穿てば、眼前に迫る超獣とて引き倒すことは可能!
 縁の業は、それを可能にする。
「おっと、酔客か? それじゃあますます、近寄らせられないねぇ」
 にぃ、と笑う。横転しながら、サハギンたちを引き飛ばし、転がる、アイアン・メイル!
「よーし、とどめだよ!」 
 セララが声をあげる! シューヴェルトがそれに続いた。
「この一撃なら厚い装甲も無意味なはず!
 こいつで決める! 蒼脚・堕天!」
「ギガ・セララ・ブレイクだぁぁぁぁっ!」
 二人の攻撃が、交差する。
 片や、地から跳ね上げる、強烈な蹴の一撃。
 片や、空より振り下ろされる、強烈な斬の一撃。
 撃ちあがる、巨体が! アイアン・メイル、その身体!
 打ち落とされる、巨体が! アイアン・メイル、その腹に!
 撃ち込まれるは、止めの連撃!
 打ち上げられたアイアン・メイル、は、既に半壊のその腹を、空へと向けていた。そこへ叩き込まれる、セララの強烈な一撃が、今度こそアイアン・メイル、を粉々に粉砕してみせたのだ!
 どろり、と空中で泥へととけて、海へととけていくアイアン・メイル。
 セララはくるり、と空中で回転し、海底にずざざあ、と着地!
「勝利~!」
 と、ブイサインを決める。
「よし、皆、怪我はないか!?」
 シューヴェルトが言う。皆相応に怪我はおっていたが、しかし完全に脱落したものはいない。
「母艦はつぶした……このまま残りの敵を掃討するぞ!」
 シューヴェルトの言葉に、仲間達は頷いた。一つの激戦は此処に終わりをつげ、戦局を大きく傾かせることに成功していた――。

成否

成功


第2章 第4節

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
イサベル・セペダ(p3p007374)
朗らかな狂犬
雨紅(p3p008287)
愛星
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花
八重 慧(p3p008813)
歪角ノ夜叉
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫
アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)
不死呪
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼
ガイアドニス(p3p010327)
小さな命に大きな愛

●防衛戦線・決着
 さて、アイアン・メイルが爆散したその時、ドラゴンズ・ドリーム防衛戦線も決着の時を迎えようとしていた。防衛線に参加したメンバーの懸命な活躍により、防衛線は後退することなく維持され、イレギュラーズ達の手によって怪我を治療された竜宮の住民たちも迎撃に復帰。
 バニーさん部隊を再結成し、イレギュラーズ達の後方より援護攻撃を開始したのである。
 この結果、イレギュラーズ達とバニーさん達の協働により、防衛線はさらに強固なものとなる。
 そして、深怪魔たちも旗艦たるアイアン・メイルを破壊されたことにより戦力の追加を止められ、とりわけメインウエポンたるアトミックシザーの逐次投入が制限されてしまったことによる攻撃減退が大きかった。
 ……端的に言えば、イレギュラーズ達の快進撃により、深怪魔たちは思いっきり追い詰められていた、という事だ。
「やった、アイアン・メイルを撃破できたんだね……!」
 ヨゾラが声をあげる。ヨゾラ自身はアイアン・メイルへの攻撃には参加こそしなかったが、ヨゾラが切り開いた道が、アイアン・メイル討伐部隊を戦線に投入する道となった。ヨゾラもアイアン・メイル撃破の功労者と言って間違いないだろう。
「うん! すごい! すごいよ皆! かっこいい!」
 ぴょんぴょんと傍で飛び跳ねるマールに、ヨゾラは笑いかけた。
「でしょ? だから、安心して。絶対に、僕たちは負けないから……!」
 そういうヨゾラに、キラキラした瞳でマールは頷く。絶対的な信頼が、そこにはある。
「マール様、カジノの方に戻ってくださいね」
 雨紅が言った。
「妹でもある乙姫様が心配でしょうに、状況を適切に判断し、最も危険に侵されている民を守ろうとしたこと、立派に思います。
 その想いに、私たちも答えましょう。竜宮の民も、乙姫も、全て守ると誓います。
 その中には、もちろんマール様、貴女のことも含まれているのです」
 雨紅の言葉に、マールは目を潤ませて、「ありがと……!」と、そう言った。
「いいのです。それでは、此処の敵を掃討してしまいましょう」
 雨紅の言葉に、仲間達は頷いた。残る敵はわずかだ。後は掃討戦と言ってもいいだろう。だが、此処で油断し、一匹でもドラゴンズ・ドリームへと侵入させてしまえば、いらぬ被害を発生させてしまう事になる。最後まで油断は禁物だ。
「シフォリィさん、手伝って! 一気に蹴散らしましょう!」
 アルテミアの言葉に、
「はい! 任せてください!」
 シフォリィが頷く。二人の戦乙女、白銀と銀青。その二つの清廉なる刃が、邪悪なる悪しき混沌の間を切り裂く!
 シフォリィの剣が光り、サハギンが散るたびに、アルテミアの斬撃がアトミックシザーの刃を薙いだ。シフォリィが還す刃でアルテミアを狙っていたアトミックシザーを斬り飛ばすたびに、アルテミアはシフォリィの背後に迫るサハギンを切り飛ばす。
 舞うがごとく。躍るがごとく。この時、海底の剣舞のダンスホールにて、二人の戦乙女が刃を打ち鳴らす。
「うわ、やば、かっこいい」
 マールが思わす声をあげるのへ、アルテミアとシフォリィがくすりと笑う。一方で、そんなマールに声をかけているのが、真那伽だ。
「マール! ボケっとしてないで戻って! アナタがやられちゃったら何の意味もないじゃない!」
 近づくサハギンを蹴り飛ばしながら、真那伽がそういう。
「あ、そうだった! ごめんね、真那伽!」
 すれ違いざまにぎゅ、と抱きしめると、真那伽が、もう、と声をあげた。
「戦闘中~!」
「そだね! ごめん!」
 マールが後方へ下がるのを確認しながら、真那伽が敵を蹴り飛ばす。そこに現れた慧が、呪血の符を投げつけ、敵を消滅させた。
「大丈夫っすか。もう少しっす。ご協力を」
 そう告げる慧に、真那伽は目を丸くした。慧の背後に、キラキラしたエフェクトが見えるような気がする。これは……。
「めっちゃバニー似合いそうな人……着せたい……」
 恋する乙女みたいな表情で、真那伽が変な事を言っていた。
「なるほど、此処からは実質掃討戦! いや、元からそうであったか。
 攻め込み過ぎて逃げ遅れた敵を撃ち滅ぼすのであるからな!
 竜宮の民と挟み撃ちしてここを奴らの死地にしてくれる!」
 百合子ががその拳を、アトミックシザーへとぶちこむ。細かく狙うのが苦手なら、当たるまで殴ればいいのである。女子力の高い行動に、アトミックシザーたちも次々と粉砕されていく。
「百合子さんナイス! また肩車してね!」
 掩体から声をかけるマールに、百合子は呵々大笑した。
「任せるが良い! それより、ちゃんと頭を引っ込めておかねば怪我をするぞ!」
 ぴょん、と頭を下げるマール。掩体からうさ耳がピコピコ揺れていたので、百合子は再び呵々大笑した。
「しかし、このヤドカリ、ダンゴムシ……はともかく、魚は知能が多少はありそうデス。
 誰に言われてきたんデスかね?」
 アオゾラが言うのへ、イリスが頷く。
「そうね……これだけの組織だった行動、間違いなく裏に誰かがいるはず。
 でも、入り口にも、此処にも、指揮官は見受けられない……」
 戦場を俯瞰しながら、イリスは考える。指揮の意図は感じる。だが、この場に指揮官がいないなら……。
「竜宮城の方に向かっている可能性がある?
 もしかして、ある意味これも囮なの……?」
「そうであってもそうでなくても、護らなければならなないデスネ」
 アオゾラの言葉に、イリスは頷く。
「邪神、だったわね。
 ……何が目的なのかしら。ううん、竜宮が封印を司っているならば、その封印を解除するのが目的なのは分かる。その先。邪神がそもそもの目的としたものって、何なの……?」
 イリスが呟いた。邪神。そうでなくても、今シレンツィオの周囲には複数の脅威の芽が見えるのだ。これを覗くことができなければ、フェデリアもアクエリアにも、何らかの被害が出かねない。
「でも! 今は兎に角、対処するしかないのでっす!」
 ガイアドニスがそう言って、胸を張った。
「愛らしい子達はおねーさんが護るから、安心してほしいの。
 でも、今は護ることに集中しましょ!
 考えるのは、後でもできるわ!」
 ガイアドニスの言葉に、イリス、そしてアオゾラが頷く。
「そうデスネ。敵の数もあと少しデスカラ、速く倒して皆を護るのデス」
「そう! か弱い人たちのために、おねーさんは一生懸命壁を直したりしたわ!
 しばらくはこれで何とかなるはず。
 それより、残りの敵を倒してしまいましょう!」
 ガイアドニスの言葉に、皆は頷いた。敵の目的が何であれ、今は討伐するしかないのだ。
「楽しい楽しい、祭りの時間だ!
 掛け金は互いの命、さあ俺を仕留められるならやってみやがれ!」
 カイトがきわどい黒ビキニなどを着こみつつ、戦場にて躍る。サハギンたちを打ち砕くは、三叉の槍。
「お前たちも同じ武器を持ってるみたいだけど、俺の槍には勝てないぜ!」
 カイトが吠え、その槍を突き出す。サハギンが身体を貫かれ、ぎゃ、と悲鳴を上げて泥へと還る。その隣には雲雀がいて仲間達へのサポートに徹しているようだった。
「さて、今のところは順調だね」
 放つ聖なる光。海底を照らす聖光が、サハギンたち悪しき魔たちを次々と消滅させていく。
「此方の余裕もかなり出てきたみたいだ……このままのペースなら、敵の全滅も時間の問題と言った所だね」
 雲雀の言葉に、トウカが頷く。
「ああ。実際に、敵の隊列も崩れている。それでも撤退しないのは見上げた根性だが……」
「うーん、なんだか意地でもこっちで戦えって命令されてるようにも感じるっきゅね!」
 レーゲンが言うのへ、トウカが頷く。
「それは感じていた。確かに、妙と言えば妙……だが、脅威であることに違いはない」
 手近に居たサハギンを斬り飛ばし、トウカが、ふむ、と唸った。
「なんにしても、此処が踏ん張りどころっきゅ! 速く倒せれば、それだけ竜宮城へ行くのは速くなるっきゅよ!」
「そうだね。このまま一気に、片付けてしまおう」
 雲雀の言葉に、仲間達は頷いた。護衛部隊を背後に残し、イレギュラーズ達は一気に戦線を拡大する。既にアイアン・メイルを失った敵部隊には下がる余地も意味もなく、此処でかっこに潰されるのを待つ形となっていた。それでも抵抗をつづけたのは、やはり何らかの意思が介在してのことだろう。それは多くのイレギュラーズ達が感づいていたが、レーゲンも言った通り、此処で敵の掃討を止めることはできない。背後にはけが人や戦えないものが多く居るのだ。そしてマールも、まずは彼らを守ることを優先してほしいと願った。ならば、それをかなえてやるのが、ローレットのイレギュラーズとしてやるべきことだろう。
「あらかた片付いたようだが……」
 アーマデルが、蛇剣を振るいながらそう言った。その刃がサハギンを切り飛ばした時、残る敵たちはほとんど存在しないようなものになっていた。
「ソーリス殿、助かった」
 アーマデルがそういうのへ、ソーリスが頷く。
「ううん、いいよ、アーマデル。
 礼を言うべきなのはこちらだ。
 でもどうしてもというのなら、バニー服を」
「着ないが?」
 アーマデルが小首をかしげた。
「冗談はさておき」
 ソーリスが言う。
「此方はあらかた片付いたといってもいいだろうね。残る敵も、恐らくは竜宮城……乙姫の所に向かったと見える」
「ソーリス、アナタも戻ってきたのね」
 真那伽が声をあげるのへ、ソーリスが頷く。
「やぁ、真那伽。その目、いい逸材を見つけたんだろう?」
 そういうのへ、真那伽はアーマデルへと視線を移し、
「……アナタもみたいね」
 そう言って笑う。
『何の話?』
 アーマデルと慧が異口同音。君たちは早くバニーを着なさい。
「ねぇ、イレギュラーズの皆に集まってもらって。
 多分、此処はもう大丈夫のはずだから」
「ああ、先ほど敵の掃討は完了した」
 ウェール、そして祝音がやってきた。
「これでここは大丈夫のはず、みゃー。
 所で、猫さん、いる? 気配が……」
 祝音が言うのへ、真那伽が頷いた。
「確かにいるけど……ひとまずそれは後にして。
 兎に角、残る敵は竜宮城の方に向かったのに違いないわ」
「あらあら、まだ敵が残っているのですか?」
 にっこりと笑うのは、イサベルだ。
「なら結構。ええ、ええ。まだまだ殴り倒せるところでした。
 早速向かうべきでしょうねぇ?」
「ええ。ただ、ちょっと待って頂戴。
 マール! メーア……乙姫がいる場所に心当たりってあるの?」
「うん、竜宮城の地下の方に、儀式の間があって、そこに玉匣(たまくしげ)が安置されてるの。あたしが竜宮幣(ドラグチップ)を持って帰ってくるのを待ってるなら、多分そこで儀式の準備をしてるはず!」
「なるほどだねぇ。ちなみにマール、それって機密事項だから、ここ以外できかれても言っちゃだめだよ?」
 ソーリスが言うのへ、マールが「あ」と言った。
「非常時だから、しょうがないよね。
 敵も居なくなったから、大丈夫」
 祝音が言う。
「そ、そうだよね! 後結界に護られてるから、仮にバレてもなかなか入れないはず」
「それも機密よ、マール」
 真那伽の言葉に、マールが『><。』みたいな顔をした
「それより……敵の攻撃が組織立っているのが気になる」
 ウェールが言った。
「もしかして、此処には指揮官のようなものがいたのではないか?」
「そうよ。多分、外の人間だと思う」
「外の?」
 イサベルが小首をかしげた。
「ええ、見たことない感じだったもの。ああ、雰囲気なら、ガイアドニスさんに似てる感じ」
「という事は、秘宝種、でっす?」
 ガイアドニスが言うのへ、
「れがしーぜろ、って名前ははじめて聞いたけど、多分そうだと思う。旅人(ウォーカー)じゃなかったわ。
 竜宮にも一人、モガミっていう旅人(ウォーカー)の人が滞在してて、色々手伝っててもらってたからわかるの。
 あの人、相当強いから、多分乙姫の直掩に駆り出さてるはずだわ」
「そのモガミって人は信用できるっすか」
 慧が尋ねるのへ、真那伽が頷く。
「うん。結構長い間、色々手伝ってくれたから……少なくとも『アタシたちの敵』じゃない……アナタたちにとってどうなるかはわからないけど」
「旅人なら、魔種ではないだろう。狂気に陥っている可能性は否定できないが……」
 ウェールが言う。
「秘宝種の方が、もしかしたら……魔種かもしれない、よね」
 祝音が頷く。
「ねぇ、その、秘宝種の人にあった時、こう、呼ばれる感じがしなかった……?」
 祝音の言葉に、真那伽は申し訳なさそうに目を伏せた。
「ごめん、わからない……遠めに見ただけだから。多分、皆もわからないと思う……」
「ううん、ありがとう。
 どっちにしても、敵だと思う。
 だから、僕たちも竜宮城へ向かうね」
 祝音の言葉に、イサベルが頷いた。
「まぁまぁ、じゃあ次は魔種と戦うのですねぇ。
 ふふ、少しドキドキしてきてしまいましたぁ」
「そうだね、ドキドキしてきた」
 イサベルとは違う意味で、マールが言う。
「お願い、多分、これで最後のはずだから。
 最後のお願い。メーアを、乙姫を、助けて!」
 マールの言葉に、皆は頷いた。
 かくして一行は、竜宮城へと向かう――!

成否

成功

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