PandoraPartyProject

シナリオ詳細

深海にて、輝ける都へ

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●竜宮救援
 竜宮幣(ドラグチップ)、集まる――。
 先のサマーフェスティバルと連動した大捜索作戦。ローレットの活躍によって、各地に散らばった竜宮幣は、その大半の回収に成功していた。
「これだけあれば、深怪魔(ディープ・テラーズ)の封印を強化できるはず!」
 マール・ディーネーはそう語る。神器である玉匣(たまくしげ)の力の欠片である竜宮幣が集まれば、玉匣はその力を取り戻し、深怪魔の再封印が可能であると目されていた。
「となると、オレ達の暮らしも多少はマシになるのか」
 そういうのは、海賊、漁火海軍の頭領である漁牙である。ローレットとの『喧嘩』に負けた漁牙は、『やむなく、力に従わされて』という建前の下、ローレット、そしてマールに協力していた。ローレットのの人間には、海賊としての活動を止められ、今はマールの護衛部遺体のような役割を果たしている。
「そうだね! シレンツィオの商人たちのことは、あたしの管轄外だからごめんなんだけど……。
 深怪魔がでなくなれば、もう少し漁もしやすくなると思うんだ!
 それに、約束通り、豊漁の加護も、メーアにお願いするからね!」
 そう言って、マールは笑う。メーア、とはマールの妹であり、竜宮城の乙姫である。竜宮の加護を司る乙姫なら、多少の豊漁は約束してくれるだろう。
「で、竜宮に行くには、この『べっ甲の宝玉』が必要だったな」
 漁牙が差し出した小さな宝玉。美しく、見るものが見れば何らかの加護を感じられるだろうそれが、竜宮に向かうための道しるべとなるパスポートのようなものだった。漁牙以外にも、持っているものはいるだろう。マールも本来は持って出なければならなかったが、緊急事態故に、持ち出しを忘れていたらしい。
「うん! それを持って念じれば、竜宮の加護を察知できるの。そこが、『道』。地上で生きる人でも海底で呼吸できるようになってるから、ゆっくりついてきてね!」
 マールは、漁火海軍たち、そしてローレットのイレギュラーズ達にそういう。漁牙はマールの護衛故にともかく、イレギュラーズ達もいるのは、漁牙が不安を感じ取ったからだ。
 曰く、「何かあったらオレ達だけでは対処できんかもしれん。念のため、ついてきてほしい」との事だったが――。
 いずれにしても、深怪魔に、竜宮、そしてマールが狙われていたのは事実だ。となれば、警戒しすぎるという事はないだろう。
「じゃあ、いこっか!」
 そんな、戦う者たちの不安を知ってか知らずか、マールはこれで万事なんとかなる、と信じている様だ。マールに、自分たちの実力を信じてもらっているのは嬉しいものだが、かといって油断はできない。
 漁火村から、しばらく船で進み、ダガヌ海域と豊穣の海の境目ほどへ。マールが宝玉を掲げて念じると、一筋の光が海底に届き、まるで光る路のように、海底を指示した。
「ついてきて! 泳げないひとも、この光の中では泳げるし、呼吸もできるの!」
 そう言って、マールが飛び込む。少し不安に感じながらも、一行は光の道の中へと身を沈めた。すると、どうだろう。まるでふわふわとしたような感覚は、さながら泳いでいるというより自由気ままに浮いているという感覚だ。自分の周りには、新鮮な空気の幕ができてるように、呼吸が可能。なんとも不思議な感覚の中、先を行くマール、そして漁牙の後について、一行は進んでいく――。

●海乱鬼衆
「漁火海軍の奴ら、妙におかしいと思ったら」
 そういうのは、襤褸の和装に身を包んだ、剣呑な雰囲気をまとった男達である。近場の岩礁に船を隠し、イレギュラーズ一行を追っていた、複数の影。海乱鬼衆。豊穣海賊である。海賊と言っても、漁火海軍のような気持のよい男たちもいるが、しかし彼らは真逆。心底の悪党であり、先の豊穣の騒乱に乗じて覇権を得ようと画策し、敗北から海へと逃げた、悪党どもの残党である。
「成程、海の底のお宝か」
 頭領らしき男が、下卑た笑いを浮かべる。
「奴らはどうも、海乱鬼衆を裏切ったらしいなぁ」
「どうしやす? 濁羅(ダグラ)の親方」
 頭領――濁羅、と呼ばれた男は頷く。
「おう、裏切り者は始末しねぇと。それに、お宝があるってなら、それは俺たちのもんよ。
 海は、俺たちの領域だ。そこにあるものは、全部、俺たち海乱鬼衆の財産だ!」
 その言葉に、配下の海賊たちが、応、と叫んだ。
「行くぞ、あの光の道に突っ込め! 行った先で全部浚うぞ!」

●二正面作戦
「あった、あの光が竜宮だよ!」
 マールが指さす先には、何とも『明るい』都があった。暗い海底にありながら、輝くピンクだのの光は、再現性東京で言う所のネオンサインに似ている。その醸し出す雰囲気も、どこか再現性東京で言う『繁華街』のような雰囲気を見せた。
「なんだかビカビカしてんなぁ。もっと神秘的じゃねぇのか?」
 漁牙が呆れたように言うのへ、マールは小首をかしげた。
「そう? 明るくていいと思うけど……」
「ま、嬢ちゃんがそれでいいならいいけどよ。
 兎に角、妹ちゃんの所に帰ってやんな。心配してんだろ?」
 漁牙がそういうのへ、マールは頷く。そして一行がさらに竜宮城に近づいたときに――異変に気付いた。竜宮の周辺では、悍ましい怪物たち――例えば、ぐずぐずにとけたようなクラーケンのような怪物や、スケルトンのような怪物、サハギンのような怪物たちだ――が群れを成し、竜宮を突破せんと攻撃を繰り広げている!
「これ以上、深怪魔たちを中に入れないで!」
「だ、だめ! 右手側の子達が怪我が酷くて……!」
「ケガをした子は下がるんだ! ドラゴンズドリームが避難所になっている……だめだ、このままじゃ押し切られる……!」
 見目麗しい竜宮の民たちが、そこで血を流しながら決死の攻防を繰り広げていた。
「そんな……! どうして? 深怪魔に攻撃を受けてるなんて……!」
「おい、ヤベェんじゃねぇのか!?」
 漁牙が叫ぶ。それからすぐに、イレギュラーズ達に向き直った。
「迷ってる暇はねぇぞ! すぐに助けに行く! オヌシらも手伝え!」
 もちろんだ! イレギュラーズ達は頷き――しかし、後方から迫る影に気が付いた!
「いたな、漁牙ァ!」
 下卑た雄叫びをあげるのは、和装の海賊たちだ! 頭領、濁羅を先頭に、数十の海賊たちが、海を泳いで迫りくる!
「くそ、海乱鬼衆だ! あの濁羅って奴は相当の悪党だぞ! あ奴を竜宮に近づければ……!」
 おそらくは、深怪魔の襲撃に乗じ、略奪の限りを尽くすのだろう。それだけは止めなければ!
「神使様方よ! 忙しいが、両方に対処しなきゃならん!
 オレ達は海賊を抑える! 濁羅を倒すのに、何名か手を貸してくれ!
 残った面子で竜宮に救援! 怪物どもを追い払ってやってくれ!」
「わわ、あたしは――!?」
「お嬢ちゃんは、竜宮を救う神使様方と行動! 頼むぞ、そのおてんば嬢ちゃんを守ってやってくれ!」
 あなたに、漁牙はそう告げる。あなたは頷くと、武器を抜き放った。
 竜宮に到達するための前哨戦。まずは、この二正面作戦を突破せよ!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 竜宮に到着した皆さん。ですが、状況は剣呑なものでした。

●最終成功条件
 竜宮城の救援成功

●特殊失敗条件
 各パートにおける成功条件の未達成

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●状況
 竜宮幣を集め、竜宮へと向かった皆さん。漁火海軍の頭領、漁牙の力も借りて、竜宮に到着することには成功しましたが、そこに広がっていたのは、深怪魔たちの襲撃を受ける竜宮城の姿でした。
 すぐに救援に……と思ったのもつかの間、此方をつけてきた海乱鬼衆、濁悪(だあく)海軍の頭領、濁羅(ダグラ)に後方から襲撃を受けてしまいます。
 前門の虎後門の狼。濁羅達を倒さねば竜宮に進行されかねず、かといって今まさに竜宮に迫る深怪魔たちをほうっておくわけにもいきません。状況を見れば、どうやら竜宮内に深怪魔は侵入している様子。もはや一刻の猶予もないのです。
 皆さんは、この危機的な状況を突破する必要があるのです!

●第一パート
 第一パートでは、迫る濁悪(だあく)海軍と、深怪魔を排除してもらいます。

 作戦目標としては、以下の通り
  濁悪(だあく)海軍の頭領、濁羅(ダグラ)を撤退させる。
  竜宮周辺に存在する深怪魔を可能な限り掃討し、竜宮の防衛部隊の損害を抑える。

 となります。

 深怪魔たちはそれぞれ特徴があり、

  ウーズタイプ=蹴散らしやすい雑魚。数は多いですが、性能は低め
  スケルトンタイプ=人間敵に相当。様々な剣技を使いますが、まだ雑魚の類。
  サハギンタイプ=人間敵に相当。スケルトンより知能が高く、連携の取れた行動を行う。
  クラーケンタイプ=中ボスに相当。数は少ないが、倒せばそれだけ敵の戦力を大きく減衰できる。

 となっています。

 濁悪海軍は、

  海賊=人間敵。イレギュラーズ達には及ばないが、サハギンタイプ程度には強い。
     また、濁羅(ダグラ)を守る傾向にある。
     漁火海軍が増援で戦ってくれるので、ある程度は無視可能。
  濁羅=人間ボス敵。現シナリオでは最も強いが、撤退に追い込めればよい。
     漁牙が増援で戦ってくれる。彼をうまく使って、大打撃を打ち込んでやりましょう。

 となっています。

●第一パートプレイング受付期間について
 シナリオ公開から三日後、8月11日午前零時を最終締め切りとします。
 それまでに送られたプレイングは、タイミングに応じてリプレイとして反映されます。

●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネーの力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
 投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
 ※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります

 それでは、皆様のご武運を、お祈りいたします!

  • 深海にて、輝ける都へ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月22日 12時40分
  • 章数3章
  • 総採用数220人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

●竜宮城決戦
「モガミさん、すみません。
 あなたを巻き込んでしまって……」
 少女――乙姫、メーア・ディーネーがそういう。ここは竜宮城、地下の儀式の間『玉匣の間』である。傍には、竜宮の玉座と呼ばれる、代々乙姫に受け継がれし生物、ニューディがおり、心配げにその場にいるメーア、そしてモガミ、と呼ばれた女性に視線を移している。
「いいえ、長らくの逗留を許してくださったご恩は忘れてはおりません。
 むしろ、ここまで信頼し、この場まで同行を許してくださったことに感謝いたします」
 モガミが一礼する。付近の歯乙姫の直掩護衛部隊もおり、此処に至るまでの場内にも、護衛部隊たちが展開しているはずだ。
「……外の様子は分かりますか?」
 モガミが尋ねるのへ、メーアは頷いた。
「はい。お姉ちゃ……マールが戻ってきたようです。ローレットという味方と共に……」
「ローレット、ですか」
 モガミがわずかに口を紡ぐ。だが、すぐに何事もなかったかのように表情を和らげると、
「では、ひとまず安心ですね。この場所は、万が一にも敵にはバレない――」
「と、思ったー?」
 間延びしたような声が、響いた――同時! 強烈な砲撃音と衝撃が鳴り響き、玉匣の間の天井が消し飛んだ!
「あっれー、びっくり。そんな強力な結界が貼ってあったんだ。
 めんどくさ。今ので一撃で壊れてれば楽だったのに」
 天井をぶち壊して現れたのは、緑髪の少女だ。その身体に艤装されしは、まるで船の砲塔のようなフォルムをしている……!
「……魔種、ですね」
 モガミが言った。
「魔種……あれが……!?」
 メーアがそういうのへ、僅かに頭に走る痛みに、顔をしかめた。
「下がってください。あれは呼び声を発します。聞いてはいけません」
「ああ、そう言えばそんなのもあるね。でも、今回は反転させに来たわけじゃなくてね」
 じろり、と緑髪の少女は、ニューディを見た。
「その変な生き物。殺すか捕まえるかさせてもらうよ」
「ニューディを……どうして……?」
 尋ねるメーアに、
「さぁて、我は知らない。とって来るか殺せ、って言われただけだから。
 めんどくさいから今のでまとめて殺そうと思ったけど、めんどくさい結界があってできなかった……めんどくさい」
「魔種。わたしが相手をするわ」
 モガミがそういうのへ、少女はめんどくさそうな顔をした。
「へー、ふーん。やだ、めんどくさい……」
 そういうと、ゆっくりと片手をあげる。破壊された床から、次々とサハギン、アトミックシザー、そして黒い人影のような悍ましい怪物たちが這い上がり、玉匣の間へと迫る!
「勝手にやってて。我は寝る」
「そうはさせない……!」
 モガミが構える! 一触即発の状況……このままでは、如何に強いとされるモガミと言えど、物量からニューディ、そして乙姫に危害が加えらえるのは確実――だが、その時だ!
「メーア! 来たよ!」
 百合子に肩車をされて、マールが大声をあげた。その後ろには、多くのイレギュラーズ達が武器を構え、魔種を、敵群を、睨みつけている!
「……来ちゃったのか、イレギュラーズ」
 すぅ、と緑髪の少女が目を細めた。
「めんどくさいけど……邪魔なら相手をしないと。
 我は【エルフレームTypeLeviathan】ディアスポラ=エルフレーム=リアルト。
 いちいち理由は話さないけど、とりあえず死んで」
 その言葉と共に、強烈な殺意が巻き起こる! 相手は魔種だ! 決して油断できる相手ではない!
 さあ、武器をとれ! 竜宮を守るための、最後の戦いに身を投じろ!

――GMコメント――
此方は第三章となります。
状況としては、以下の通りです。

 ついに竜宮城に到達した皆さん。しかし、そこには謎の深怪魔を率いる謎の魔種【エルフレームTypeLeviathan】ディアスポラ=エルフレーム=リアルトと、無数の深怪魔の部隊がいました。
 このままでは乙姫に危害が加えられ、深怪魔の封印は失敗してしまう事でしょう。
 ここが決戦の場です。乙姫を、そしてニューディを守り、ディアスポラを迎撃、残る深怪魔たちを撃破してください!
 
作戦目標としては、以下の通り
 メーア・ディーネー、およびニューディを守り切る。
 ディアスポラ=エルフレーム=リアルトを撤退に追い込む。
となります。

エネミーデータ
 サハギン
  第一章でも遭遇したサハギンたちです。連携をとって攻撃してきます。

 アトミックシザー
  大ヤドカリ風の深海魔たちです。鋭い爪は、必殺や出血系列を付与してくるでしょう。
  装甲も厚めですが、隙間を狙う事で、大幅なダメージ増を狙えます。命中率に自信があるならば、狙ってみてもよいでしょう。

 ナイトゴーント
  黒い影のような人型の怪物です。高位の魔術を駆使する、上級魔術師タイプの敵です。
  様々なBSを付与し、また受けたものを短時間の狂気状態に陥らせる奇妙な魔術を使用してきます。この狂気状態は通常のスキルで回復できますが、狂気状態に陥った対象は、あらゆる能力が少々ダウンするという状態になるでしょう。
  ボスタイプなので、数自体はあまり多くはないです。その分タフで厄介なので、うまい事連携して倒してください。

 ディアスポラ=エルフレーム=リアルト
  ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)さんの関係者にして魔種。どうも深怪魔たちに協力しているようですが、その詳細は不明です。
  非常に強力な艦砲射撃を使用する、強力な砲撃タイプのユニット。
  半面、近接攻撃は不得手です。倒す場合は、なるべく接近した方がいいかもしれません……接近する前に黒焦げにされる可能性はありますが。
  斃す必要はなく、撤退に追い込めばOKです。シナリオ難易度がノーマルなのは、倒す必要がないからです。

●味方NPC
 【指輪の悪魔:陽】モガミ
   美咲・マクスウェル(p3p005192)さんの関係者で、竜宮に逗留していた為、事件に巻き込まれました。
   強力なキャラクターで、ディアスポラと戦ってくれます。至近~中距離レンジを得意とする神秘攻撃の使い手で、様々な魔術を行使する魔です。
   とはいえ、単独で戦局をひっくり返せる運命力はありません。
   この物語の主役は、あくまでみなさんです。うまく協力して戦ってください。

●第2パートプレイング受付期間について
 シナリオ公開から3日後、8月21日午前8時を最終締め切りとして予定しています。
 それまでに送られたプレイングは、タイミングに応じてリプレイとして反映されます。

●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネーの力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
 投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
 ※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります

 それでは、皆様のご武運を、お祈りいたします!


第3章 第2節

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)
約束の果てへ
ビスコッティ=CON=MOS(p3p010556)
メカモスカ
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女
桐生 雄(p3p010750)
流浪鬼

●決戦・開始
 乙姫メーア護衛部隊も、此処に来るまでにいくつかの戦いを経験し、疲労を積み重ねていたことは事実だった。彼女たちは、確かに強い。だが、竜宮とはこれまで平和な場所であり、これほどの大規模な戦いなどは経験したことがないのである。つまり『戦争』の経験がない。それは、彼女たち竜宮の民にとっては大きなハンデと言えた。如何に個人の武猛き者達であろうと、戦とはすなわち群の戦い。そして群という点において、無尽蔵とも思えるほどに沸いた深怪魔たちは竜宮のそれを大きく上回っていた。
 必然、追い詰められるは自明の理。壊滅は免れても、いつ終わるかもわからぬ戦いに、次第に疲弊していったのである。
「このままじゃ……」
 うさ耳をしょんぼりとさせたように、護衛部隊の女性が言う。強力な魔種という怪物。無数の深怪魔たち。それは、彼女たちの心をおるのに十分な脅威である。
「だめだ、諦めるな」
 そう言ったのは、一人の妖精鎌。
「護衛部隊なら、最後まで、諦めるな。
 大丈夫だ。道は俺たちがひらくよ」
 そういう言葉には、確かな自身があった。道を切り開くという、信じてくれという重みがあった。
「皆は、乙姫って子の護衛を続けて。アイツらは、俺たちで何とかする」
 妖精鎌――サイズはそういうと、水中を飛ぶように泳いだ。迫りくるサハギン、アトミックシザーたちと交戦を開始する。
「……やりましょう」
 護衛の少女が声をあげた。
「最後まで、乙姫様を守りましょう……!」
 その言葉に、皆の心は再び立ち上がる。
「うむ、がんばれがんばれなのじゃ」
 ビスコッティがそう言った。ざん、と敵の前に立ち。邪悪の群を前にして、モスカは一歩も退かぬ。
「よいか、竜宮の民よ。形は違えど、海に生きるものよ。
 モスカは貴様を見捨てないと誓おう。
 我はモスカ。CON=MOS。
 これから生まれゆく勇気に従属する多目的戦術システム。
 ゼッカイケンは、モスカはこんなところで誰かが死ぬことを是とせぬ。
 みんなで笑って帰る。じゃろう?」
 そう言って、無表情のままダブルピースするビスコッティ。
「どうじゃ、いまのかっちょよかったじゃろ」
 ぴーすぴーす。その言葉に、
「はい、とても」
 答えたのは、歌姫――メーアだった。
「遠い海のモスカ、形は違えど、海に生きる貴女。
 私たちも、貴女たちと共に生きる事を誓います。
 だから――お願いします。今は、力を貸してください」
「承知」
 ビスコッティは頷く。
「じゃが――此処にはモスカ以外の者もおる。
 彼らもまた、力を貸してくれるじゃろう」
「そうです」
 そう言ったは、ルーキスだった。
「貴方が、メーア様、ですね」
 静かに一礼するルーキスに、メーアは慌ててペコリ、とおじぎを返す。
「マールさんよりお話は伺っています。此処は我々が引き受けますので、後方へ!」
 そういうのへ、メーアはルーキスに近寄った。
「マール……! お姉ちゃんを知ってるんですね!?
 ……ああ、あなたから、確かにお姉ちゃんの匂いがします……!」
 すんすん、と鼻を近づけるメーアに、ルーキスは困ったような顔をした。
「え、ええと……やはりマールさんのご家族、距離感がおかしい……!」
「ラッキー何とかじゃな?」
 ビスコッティが無表情で頷く。
「おうおう、見せつけてくれるねぇ」
 けらけらと雄が笑った。
「アンタが乙姫様か。少し若いが、なるほど、いい女だ。マールの妹ってのも頷ける。
 乙姫様よ、力を貸すぜ……ってのはもう皆言ってるか。じゃ、そういうわけだからよ、終わった後の宴会の用意を頼むぜ!
 タイやヒラメの舞い踊りって奴か? それ以外の奴もな!」
 にぃ、と笑う雄が、ルーキスの肩を叩く。
「いつまでも固まってなさんな、色男。行こうぜ」
「い、色……!? え、ええ、竜宮を守りましょう!」
 ルーキスがコホンと咳払い、武器を抜き放つ。
「皆さん、お気をつけて……!」
 メーアがそういうのへ、二人は笑った。そして、無数に展開した敵の群れの中へと飛び込んでいく!
「……やる気かぁ……」
 戦闘を開始したイレギュラーズ達を見ながら、魔種、ディアスポラは鬱陶しそうにあくびをした。
「じゃあ、本気を出すかぁ。出したくないけど……その方がもっとめんどくさそうだもんね。
 システム、戦闘モードに移行。各砲塔異常なし。ディアスポラ、抜錨」
 すぅ、とその目が細められる。怠惰な空気は消し飛び、現れたのは、見敵必滅の殲滅艦隊の提督。異界の第戦艦の力を宿した、それはただ一人の艦隊。
「これより始まるは無慈悲なる虐殺だ。砲弾の雨に溺れろ」
 口調すら変わったディアスポラの、それが戦闘モードだ! 苛烈なる砲撃が、竜宮城を吹き飛ばさんばかりの爆撃を引き起こす!
「あ、あれが魔種……!」
 セレナが僅かに、手を握りしめた。強力無比な存在。人類の敵。イレギュラーズの宿敵――その、倒すべき強敵が、此処にいる。
「分かってる、悔しいけど、わたしが直接相対するには実力不足だって……!」
 セレナがそう言いながら、だけど、と呟く。
「私にだってやれることはあるわ! あの魔種につながる路を作り出す……!
 あの黒い人影! あれがとんでもない魔力を讃えていることは分かる。だったら……!」
 セレナが飛ぶ!
「貴方から仕留める!」
 凶悪な人影、ナイトゴーントへ向けて、セレナは飛翔! 同時、地をかけるセチアが手甲を構えて続く!
「手伝うわ! あんな化け物、収監するまでもない!
 消滅させましょう!」
 駆けるセチアが、ナイトゴーントへと殴り掛かる! 手甲に伝わる衝撃が、奇妙な反動となってセチアの身体を震わせた。
「外された……!」
 叫んだ刹那、ナイトゴーントの体から黒い闇のようなものが吹きあがる! 人を狂気に陥れるそれを、セチアは頭痛に苦しめられつつも、耐えて見せた!
「私に狂気を与えらえるものならやってみなさい? 看守として全力で抵抗してあげるわ!」
 にぃ、と笑うセチア、続くセレナが格闘結界を手に殴りかかる!
「こっち!」
 放たれた拳が、ナイトゴーントの身体を穿った。ダメージ! だが致命打には遠い。ナイトゴーントはゆらり、と揺れるように動きながら、その手を鞭のように振るわせて反撃! 振るわれるそれを、しかし受け止めたのはオラボナだ!
「深きものに夜鬼、機械仕掛けが混在するとは『雑な展開』だ」
 僅かに、口元に力を込めてるように。
「同一奇譚――いいや、枝分かれした何かにすぎぬのだろう。
 それとも……大元が何かを記憶したが故の、それなのか。
 嗚呼――そうか、ならばこう言おう。面を見せぬお前が、私は少し、気に入らない――」
 オラボナの闇がナイトゴーントを叩く。ナイトゴーントは僅かにおびえた様子を見せた。より深き闇。
「深きを騙るものよ、これこそが深淵故に」
 オラボナの深淵が、ナイトゴーントを貫く! ナイトゴーントが怯み、後方へと跳躍した刹那、現れたのはトウカだ!
「先輩方! このまま抑える!」
「わかってるっきゅ!」
 レーゲンが奏でる歌が、躍るカスタネットが、魔力を生じた双曲となってナイトゴーント、そしてあたりの深怪魔たちに襲い掛かる! 魔力を込めた歌声が、深海を優しく揺らし、魔を蹴散らす波動となる!
「レーゲン、そのまま頼むぞ!」
 ウェールが飛び込む。断つ・風。己の速度を生かした風は、例え深海であろうとも激しく吹き荒れる烈風となる! ウェールの突撃に、ナイトゴーントは反応ができない! 多くのイレギュラーズ達の攻撃を受け、そしてウェールの突撃を受けたナイトゴーントは、ばしゃり、と泥になって消えていく。
「よし……いいぞ!」
 ウェールが頷き、空(うみ)を見上げた。上空には、未だ激しく砲撃を行う魔種の姿が見える。その攻撃は苛烈であり、竜宮城のあちこちは崩壊の兆しを見せていた。
「めんどくさいめんどくさいって、ほんとムカつくっきゅ!」
 レーゲンが言うのへ、トウカが頷いた。
「ああ、既に被害が出ている……もしかしたら、死人が出ているかもしれないのに……」
 トウカの言葉に、ウェールが頷いた。
「ああ。魔種を許すことはできない。だが……」
 ウェールがあたりを見回す。深怪魔たちは未だ竜宮城を徘徊し、乙姫メーアを護る護衛部隊、そしてイレギュラーズ達と激しい戦闘を繰り広げていた。
「今は、乙姫を守ることを優先しよう。
 深怪魔たちを追い払うんだ」
「しかたないっきゅ、魔種は皆に任せるっきゅよ!」
 レーゲンが言う。役割の分担だ。今は、メーア、そしてニューディという生物を護ることが、敵の狙いをくじくことにもなる。
「しかし、泥……か」
 トウカが呟く。深怪魔たちを構成していたと思わしき『泥』。それは深怪魔たちが滅びるとともに、まるで地に染みるように、大地に溶けて消えていく。
 それは、何か不吉な種のようにも思えた。だが、今何かをできるものではないだろう。
「さぁ、いくっきゅよ!」
 レーゲンの言葉に、トウカは頷く。かくして戦いの幕はここにあがったのである。

成否

成功


第3章 第3節

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
レッド(p3p000395)
赤々靴
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
イサベル・セペダ(p3p007374)
朗らかな狂犬
星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー
ガイアドニス(p3p010327)
小さな命に大きな愛

●魔たるもの、前
 ――識別コードLeviathan、確認。
 レーダー探知完了。
 脳裏に描かれるは無数のコーション・アラート。この感覚は、この間の時も、ずっとずっと昔の時も変わらない。
 本来なら、友を現すためのメッセージ。
 今は、敵を現すための警告。
 敵、エルフレーム。ディアスポラです。
 そう、頭の中で頭脳が囁く。敵、敵、敵と!
「ディアスポラ……!」
 睨むように視線を向ける、ブランシュ。交差する。視線。ディアスポラ。エルフレームの魔種。
「いたな、ブランシュ。あの時と同じように、邪魔をするか」
 そこには、先ほどまでの怠惰さは感じられない。口調すら、攻撃的なものに変わっている。バトル・オペレーションに切り替えたディアスポラに慈悲はない。見敵殲滅。それが『戦艦』として生まれた彼女の役割(ロール)だ。
「近づけると思うな、ブランシュ。我の砲撃、汝は幾度もその身に受けたはずだ――」
 放たれる砲撃が、無差別に大地を抉った。狙わずに放たれたそれが、流星のごとく竜宮城を撃ち貫く。
「むぅ、まずいであるな! マール殿、ひとまず肩車は中止である!
 ほら、おりておりて!」
「う、うん!」
 百合子の言葉に、マールはぴょん、と肩から降りる。
「あ奴は魔種。人類の敵である。恐ろしい奴に狙われているが、安心せよ。
 吾らが必ず、皆を守ろう。マール殿も、メーア殿も、他の竜宮の皆も、だ!」
「うん! 百合子さん、お願い!」
 ぎゅ、とマールは百合子に抱き着いた。お互いの熱を伝えるその行為は、竜宮でも信頼を伝えるための上位の仕草だ。
「信じてる……皆のこと!」
「無論だ。メーア殿の所へ行って、応援を頼む! 吾らが一発敵にいれるたびに、シャンパンを入れていいぞ!」
「うん! すっごいの用意するからね!」
 ぴょん、と飛び跳ねるマールに、百合子は頷いた。
「さて、ブランシュ殿。ワケ有りのようであるが、気持ちは切り換えよ」
「わかってるですよ。魔に堕ちた姉妹たちは、強い。
 ブランシュだけじゃ……勝てねーです」
 かつて遭遇した、姉妹機の事を思い出す。2対10。それでもなお、こちらを相手取り余裕をもって撤退までした、あの事件の事を。
「力を借りたいです」
「おまかせだよ」
 鈴音が、頷いた。
「ま、元よりわたしは、寄らば癒すの辻癒し。手を出すなと言われたところで、寄って癒すがわたしのしごと。
 それに……ほら、なんか今回は、写真撮りたい人もいるし?」
 と、視線を送ると、何やらパシャパシャ写真を撮っている者がいた。岩倉詩音である。小型の撮影端末を片手に、ぴーすぴーすと自撮りをしつつ、魔種やら戦闘風景やらを撮影ているだけで、害はないようだが。
「というわけで、あんまりかっこ悪い所は、まぁ、それなりに残したくないので!
 勝ちましょ。勝って凱旋と行くぞー!」
 その言葉に、仲間達は頷いた。砲撃は続き、魔は大地に蔓延る。
 それでも――瞳に意志は消えず。手の力は萎えず。脚はしっかりと、大地を踏みしめる。
「やるぞ!」
 飛び込んだ! イレギュラーズ達が咆哮と共に、ディアスポラへと向かう! あたりの怪物たちを、別の仲間達の援護に任せながら、先へ、先へ!
「うん、このタイプは無理をしないとみたよ。
 大幅なダメージを与えれば嫌がって撤退すると思う。
 だから、全力全開で叩けばそれで良いよね!!」
 Я・E・Dが声をあげるのへ、仲間達は頷いた。おおむね同意見。敵の様子を踏まえれば、恐らくは自らの命をとしてまでの攻撃は行うまい。ならば――。
「まずはとにかく突破しよう!
 相手の得手は、砲撃……もちろん、近接ができないわけじゃないだろうけど、あれだけの大型だ! 懐に潜り込めば、小回りはきかないはずだよ!」
「万能兵装を持っていないわけはないだろうが――」
 ラダが言う。
「だが、手を潰せるのは確かだ。私は遠距離でつついてみよう」
「お願いね、ラダさん」
「ああ、突撃の方は頼んだ……よ!」
 狙いをつけると同時に、ラダが引き金を引く。放たれた銃弾は、ディアスポラの砲塔に直撃する。かん、という音と共に、砲塔がわずかにブレた。
 精密射撃とは、言葉通りにあらゆる行動に精密さを要求する。観測・照準・そして撃ち方。ディアスポラの砲撃は強力であるが、強力であるが故に当てるのであれば、『精密すぎるほどに精密』である。故に、僅か――それが、巨砲に対して小石が跳ねたほどのものであったとしても。着弾点では大きなブレが生じる。外れる、のだ。
「……腕のいいスナイパーがいるな……?」
 ディアスポラがしぃ、と視線を移す。最小の衝撃で、大きく軸をぶらせるウィークポイントを狙った射撃。ディアスポラとて、射を司る存在である。その在り様が異なれど、狙う、という事のむずかしさを痛く知っていた。
「その大層な装備、御自慢の砲身のようだな。
 砲弾に比べりゃライフル弾は豆鉄砲にしか見えんだろう、が砲身が曲がれば撃てないのは同じ。
 宣言するよ。執拗に狙い、豆鉄砲を当て続け――点滴石を穿つを体現してみせよう。
 それともまさか、射撃勝負を申し込まれているのに無視するつもりで?」
 ふ、と笑うラダが再び引き金を引く。がぁん、とディアスポラの装甲に、弾丸がめり込む。一撃でその装甲を破壊することはもちろんできない。だが、一打、二打と続ければどうか。いや、百だろうが千だろうが撃ち続けてやろう。此方はスナイパーだ。耐え忍ぶことには慣れている。
「いいだろう、スナイパー。戦艦(ゾウ)に対して人間(アリ)が無力であること、教えてやろう」
 砲塔が此方を向く。同時、放たれた砲撃が、ラダの隠れていたガレキを吹き飛ばした。破片に身体を打たれながら、ラダは奔る。
「つっこめ!」
 ラダの言葉に、仲間達は頷いた。飛翔するように、突撃する。その中で、美咲はモガミに声をかけていた。
「……立つ位置と向き、この場は信用していいのかしら?」
 静かにそういう美咲に、モガミは頷いた。
「ええ。あなたに対して思う所はあれど、今はわたしは一人の旅人として、一宿一飯の恩義を返しているところだもの。
 ……いえ、だいぶ長い事、逗留してしまっていたのだけれど」
 美咲は眉をひそめた。確かに、これは自身を縛っていた『魔』がうちの一つである。だが、どうにも……他のそれらに比べて、攻撃的というか、過度の敵対心が感じられない。
 もちろん、美咲に対しての憎悪をもっていることは確かなのだろう。だが、なんというか……まだ話せる、というか。
「個人の用件は後日、竜宮を巻き込まない場で。OK?」
「ええ、それで」
「むー! 美咲さん! こっちこっち!」
 ヒィロがぷぅ、と頬を膨らませながら言った。
「ボクがサポートするから、オフェンスお願い! 美咲さん、あと、美咲さんと似たような雰囲気の人!」
 そういうヒィロに、モガミは笑った。
「モガミ、と言います。よろしくお願いね?」
「モガミさん! 了解! さ、美咲さん! 行こう!」
 引っ張られるように、美咲が跳ぶ。ディアスポラは激しい砲撃を繰り返していたが、三人は仲間のサポートもあり、上手く攻撃を回避し続けていた。
「では、わたしが中衛ね」
 モガミがその手を振り下ろすと、右手の五指から閃光がはじけ飛び、ディアスポラを撃った。ヒィロの降ろした聖鎧、そのオーラに身を包む美咲が、モガミの閃光の合間を縫うように直進。
(……こちらを巻き込むつもりもない。今この場は信頼してよさそうだけど……奇妙な感じだね)
 内心で呟きつつ、手にした包丁を振り下ろす! ディアスポラが砲塔を振るい、その刃を受け止めた。『切る』事に特化したその刃、その概念すら弾き飛ばすような極厚装甲! 魔術的な何かもあるのだろう。流石の美咲も舌を巻く。
「近寄れば勝てるとでも思っていたのか?」
 短距離機関砲が火を噴く。美咲とモガミは魔術障壁を展開して、それを受け止めた。同時、ディアスポラの後方から迫る、朝顔の姿!
(まさか此処に魔種が居るなんて……!
 そして此処は豊穣に近い場所というのなら……)
「どんな理由があるとしても……全力で排除する、以外の理由なんて無いでしょう?!」
 朝顔が神刀を振るう。ディアスポラは、砲塔を旋回させて、その斬撃を受け止める。
「知らん。我に質問するな」
 ディアスポラが砲塔を力強く回転させた。朝顔が刀を振り払われると同時、水中を蹴って回転。それを追うように放たれた機関銃が宙を切る。
「やっぱり、接近戦は苦手のようですね。少し、鈍いですよ。
 近接が苦手……。
 奇遇ですね! 私、近接しか攻撃手段無いんですよ!」
 再度振るわれる朝顔の刃が、ディアスポラの肉体に迫る。手甲を持って受け止めたディアスポラが、衝撃にわずかに顔をしかめた。
「……!」
 振り払うように、ディアスポラは砲撃を放った。空間・アンカーによる魔術的な位置制御を意図的に放棄し、砲撃のベクトルのまま後方へと飛ぶ。
「こういう使い方もできる」
 ディアスポラは後方へ飛びずさる――が、不意に『壁』にぶち当たった。存在するはずのない壁。突如現れたそれは、魔力結界の一つ。
「アルテミア!」
 乙姫護衛部隊が一人、メルル・メリーナが声をあげる。結界術の使い手たる彼女は、結界、障壁、拘束の、防の術を得意とする。攻撃には向かぬ性質と謳われるメルルだが、しかし小部屋結界には、こういった攻の使い方も存在するのだ。そしてそれを扱えるが故に、メルルは乙姫護衛部隊の一人を司っているのである。
「ありがとう、メルルさん!」
 アルテミアがディアスポラに斬りかかる。同時、メルルはディアスポラの脚を『拘束』した。魔術のリングがディアスポラを捉え、動きを鈍らせる。
「……!」
「乙姫様はやらせないし!」
 メルルの言葉に、アルテミアは頷いた。
「はぁぁぁっ!」
 振るわれる、斬撃! それが、ディアスポラの和装のような服を裂いた。間、一髪。僅かに身をひねったディアスポラが、その斬撃の致命打を避けて見せた。
「ぐ、うっ!」
 奔る痛みに呻きつつ、ディアスポラは再度砲撃を開始。ずどん、ずどん、と強烈は報恩が響き、脚に走る拘束の鎖がビキビキと音をたてる。衝撃を殺し、拘束を続けるメルルに、その痛みはフィードバックとして走った。無理をしている。それは間違いない。
「アルテミア! やっちゃって!」
「けど……! いいえ、だめ! 拘束を解いて!」
 これ以上はメルルの身体が持たない。判断したアルテミアが、ディアスポラの拘束を切り裂いた。同時、メルルが痛みに気を失う。可能性持たざる人の身で、魔種を繋ぎとめた負担は大きい。命に別状はないが、しかしこの戦闘中に意識を取り戻すことはないだろう。
「くっ……よくも……!」
 ディアスポラがメルルに向けて砲塔を動かした。
「レッドさん!」
 アルテミアが叫ぶ。
「了解っす!」
 砲撃の雨の中、飛び込むレッドがその銃を構えた。
「ジャックポットは一度だけ……コインの裏か表か。
 いいや! コインが裏か表かなんてのは、自分で決める!
 それが! イレギュラーズっす!」
 放たれた魂の一撃が、ディアスポラの砲撃にぶち当たった! 相殺する二つの衝撃が、爆裂するように深海を震わせる! アルテミアはその隙をついて、メルルを抱き留めて跳躍。その顔を見て、呼吸をしていることに安どのため息をつく。
「アルテミア、やっちゃえって言ったのに」
「私は、誰かを失いたくないの」
 笑うアルテミアに、メルルは「チョろ……でもそういう所すきだよ」と笑って、再び意識を失った。
 さて、強烈な爆発に意識をとられたディアスポラが、僅かにいら立ちの表情を見せた。
「面倒だな……だから面倒ごとは嫌いなんだ……」
「だったら、おかえりいただきたい、ですの……!」
 ノリアがそういう。つるんとしたしっぽを揺らしながら、その小さな体を精一杯アピールして、敵意を引き付ける。
「まぁまぁ、愛らしい子一人に無理なんてさせられないわ!」
 隣には、ガイアドニスの姿もあった。
「あなたがおねーさんに似てると言われた子なのね!
 初めまして、おねーさんでーっす!」
「……? 汝はエルフレームシリーズではない様だが……?」
「ええ、そうでっす! でもおねーさんはおねーさんですので!」
「わけがわからん……そっちののれそれもそうだ。何がしたい……!」
「ここで、あなたを、とめますの!」
 ノリアが胸を張って、つるんとした尻尾を振るった。ノリア、そしてガイアドニス。二人の盾に立ちはだかれたディアスポラは、しかし、鬱陶しそうに声をあげた。
「……面倒だな。我は面倒は嫌いなんだ」
 放たれる、近接機関銃。飛び交う銃弾に、しかしノリアは悠然と泳ぎ続け、ガイアドニスはその傘を掲げて受けてめて見せた。ノリアに直撃した銃弾が、魔力的な棘の弾となって、ディアスポラへと突き刺さる!
「……! ますます面倒な奴だが……!」
 ノリアへと、ディアスポラが砲塔を構える。
「死してしまえば、そこまでだ」
「やってみると、いいですの……! わたしは、倒れませんの……!」
「おっと、そこまでだ!」
 史之が乱入する! 振るう刃が、事件を殺す衝撃波となって、ディアスポラの砲塔を切り裂いた。先端が切り裂かれた砲塔が、激しく爆発する!
「モガミさん、サポートをお願い!」
「ええ、任せて」
 モガミが魔力衝撃波を展開。ディアスポラを打ち落とした。ぐん、と深海にわずかに落ちたディアスポラを、史之が次元破断の刃で再度追撃! しかしディアスポラは、身をひねって直撃を回避した。受け止めた装甲の先端が切れ飛ぶ。
「……艤装を破壊するつもりか!」
 ディアスポラが吠え、砲撃! 史之は水を蹴って回避しつつ、
「おまえのその兵器ごと、心折らせてもらうよ」
 再度の斬撃! ぶぅん、というようなとと共に次元が死ぬ。切り裂かれた次元が再度、ディアスポラの装甲を破断した。
「……ドッグ入りせねばならんようだが。まだ損耗率は低い」
「あらあらあらあら、では、私のお相手を、是非」
 イサベルだ! その拳を握り、力強く殴りかかる! これまでの攻撃で消耗していたディアスポラに、それは直撃した。衝撃に、艤装が大きくへこむ!
「ち――い!」
 ディアスポラが舌打ちしつつ、艤装を振り払った。イサベルはその直撃を受けながらも、満面の笑みを浮かべる。
「ああ、素敵。とても素敵ですね。さぁ、いっぱい死んだり死なせたりしましょう?
 『死にたいというこの渇望』を、うふふ、お恥ずかしながら、私、まったく制御できないもので」
「戦闘狂いか。面倒だな」
 ディアスポラが近接機関銃を放つ。弾丸がばらまかれる中、背後から迫る。竜宮護衛部隊ポーリィ・シーンズが、その巨大斧を振りかざして突撃!
「外の連中ばかりに活躍させてやる気はないんだよ!」
 ポーリィの斧が、ディアスポラの背後兵装を殴りつけた! がおん、と強烈な音が響き、装甲がへこむ。
「痛てぇっ! なんて硬さだ!」
「そこのうさ耳の人! だめだよ、下がって!」
 ヨゾラが声をあげるのへ、ポーリィは笑った。
「大丈夫だ! それより、オマエも殴れるならこっちにこい! 兎に角こいつを黙らせないとどうにもならない!」
 ポーリィの言う通りだ。だが、ポーリィをいつまでも魔種と戦わせるわけにもいくまい。ヨゾラは頷きつつ、
「じゃあ、一斉に攻撃しよう! それでいったん離脱! 乙姫様を守ってあげて!」
 そういうヨゾラに、「お、おう! それで!」とポーリィが頷く。
「いくよ、スター・ブラスター!」
「じゃあ、こっちも必殺……!」
 ヨゾラの身体が光を放つ。同時、放たれた魔力衝撃波が、ディアスポラの艤装を撃ち抜いた。続くポーリィの斬撃が、ディアスポラの艤装を殴りつける。衝撃が走るまま、ディアスポラは態勢を整える。が、同時に放たれたリリーの銃弾が、呪いとなって体中を駆け巡った。
「やっぱりいたんだね、魔種!」
 リリーが、きっ、と視線を向ける。
「魔種が絡んでるって言うなら……なおさら、気に入らないっ!
 平和な所を攻撃して、何がしたいの!」
 再度撃ち込まれる銃弾を、ディアスポラは艤装で振り払った。
「我も面倒だが、今の協力者の指金でな……」
 ディアスポラが再度、砲撃を開始する。リリーが身構える中、灰色のサッカーボールが砲弾のように飛ぶ! それが砲塔に直撃し、発射されたばかりの砲弾とぶつかり合い激しい爆音を鳴らした!
「悪ぃがアンタの出る幕じゃねぇっス、さっさとこっから退場しな!」
 葵だ! 再度サッカーボールを打ち込む! それは、侵略。圧倒的な威力による、侵略という攻撃! 葵の一撃が、ディアスポラの装甲を撃つ! 強烈な衝撃が、ディアスポラの身体を駆け巡る!
「逃げてもいいが、生半可な足で逃げられると思うな?」
 葵の言葉に、ディアスポラは薄い笑みを浮かべた。
「逃げる? 甘いな。我が艦隊は不退転。
 教えてやろう。我が艤装に込められた『怨念』を」
 そう言った刹那、その体にまるでオーラのような何かが立ち上る。
「……まだ本気じゃなかった、って事だね」
 リリーが言うのへ、葵が頷いた。
「でも、ダメージは蓄積されてるっスよ。このまま押し切るっス!」
 葵の言う通りだ。これ以上は、突き進むしかない!
 イレギュラーズ達は、再度の攻撃を実行するのだった。

成否

成功


第3章 第4節

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
防戦巧者
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
古木・文(p3p001262)
文具屋
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
恋屍・愛無(p3p007296)
神喰い
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
Meer=See=Februar(p3p007819)
おはようの祝福
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
雨紅(p3p008287)
愛星
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
八重 慧(p3p008813)
歪角ノ夜叉
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫
アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)
不死呪
囲 飛呂(p3p010030)
きみのために
イチゴ(p3p010687)
一護一会

●深怪魔迎撃線・終
「さぁて、魔種と戦っている皆の邪魔はさせないよ……?」
 ぺろり、と唇を舐めつつ、そういうアイリス。その手に持った銃にして刃。構えて穿つは敵の身体。
「あの魔種に砲撃を搔い潜って斬りこむにしても、深怪魔群をどうにかしないといけないか~そうか~。
 ふぅ……それじゃあ、ボクも本気でいかないとね~?」
 囁くように言うその言葉は、海の泡に溶けて消える。刹那、消え失せたからだが再び現れたのは、ぎゃ、と騒ぐサハギンの目の前。その刃をサハギンの腹に突き刺し、躊躇なく引いた引き金、放たれた銃弾はサハギンを粉砕し、泥へと還す。引き続き、アイリスは跳んだ。手近に居たアトミックシザー、その装甲は厚かろうと、無理矢理にでも隙間に一発ぶち込まれたならば。
「ははっ……ハードラックと踊ってろ?」
 躍る刃が、アトミックシザーを解体する。俊敏・瞬殺。跳ぶは刃、ラムダ・アイリス!
 各地点で、苛烈な戦いが繰り広げられていた。イレギュラーズ達は、乙姫とその護衛部隊を守る様に、或いは力を借りながら、深怪魔たちと壮絶な総力戦を繰り広げている。
「敵の誘導を行います。護衛対象には近づけさせません」
 ベークが声をあげると同時に、『甘い香り』が立ち上がる。水中でも、決して鈍ることなく漂う、甘い香り。それは深怪魔たちの興味を引き、その敵意を引き寄せた。
「さて――ここは通せませんし、あなた達はここで倒れてもらいます」
 静かにそういう、ベーク。その手にはためくは、海洋の旗。まだ倒れぬものがいる、そう告げる、勇気の旗。その旗を振るい、近寄るサハギンを打ち倒す。ぎゃ、と泥に消えるサハギンを尻目に、再度の攻撃を振り払えば、別のサハギンが打ち倒される。
「此処が最後の戦場です。此処を切り抜ければ、ひとまずの終わりが見えるはず」
「そのとおりデスネ。
 ええ、ええ、ようやく、この長い一日にも終わりが見えてきマシタ」
 アオゾラが、朱の旗を翻して、そういう。翻る旗が、サハギンをなぎ倒し、突き出したそれがアトミックシザーの体内にめり込んだ。ごり、と音を立てて内部を抉れば、アトミックシザーがぐしゃりととけて泥へと還る。
「貴方達の狙っているのはワタシでショウ?」
 囁くようにいうその言葉が、海にとける。誘われた怪物たちが、アオゾラの元へと殺到する。
「さて、さて。付き合ってもらいマスヨ。
 不死者は不死(しなず)。根競べとまいりマショウ?」
 そう言って笑ってみせるアオゾラ。その背には、多くの護るべきもの達がいるのだ。
 その先には、秋奈の姿があった。その背にメーア、そしてニューディを守りながら、わはは、と笑う。
「ねぇねぇ、なんか乙姫さまってホント?
 どんな人なのかきになっちゃってさ!
 で、私ちゃんのほうから会いに来たってわけ!」
「えっと、そうです、はい。乙姫、です……?」
 なんだか自分からそういうのも気恥しいのか、メーアが苦笑する。
「なるほどねー、へっへ! 私ちゃんは茶屋ヶ坂 戦神 秋奈だぜ!
 秋奈ちゃん、って呼んでも可!」
「は、はい、秋奈ちゃん……!」
 そういうメーアに、秋奈は笑った。
「素直じゃん……こりゃ悪い虫がつかないようにしないとね! 具体的に言うと深怪魔!」
「ン。 フリック ワルイムシ カラ メーア 護ル。
 ナイトゴーント 危険。
 速ヤカナ 対処 求ム」
 フリークライがそういうのへ、泥のような濁った気配が訪れる。黒い人影の魔、ナイトゴーント。狂気の大魔術師は、数こそ少ないものの、確かな脅威となってイレギュラーズ達に襲い掛かっていた。
「フリック 皆 護ル。
 メーア 後ロ 護ラレル シテホシイ。
 フリック 信ジル シテホシイ」
「はい、フリック、さん……?」
「フリック フリークライ。
 デモ フリック デモ イイ」
「はい、フリックさん!」
 メーアが頷いた。フリークライも頷く。
「話はオッケーかな!?」
 秋奈が声をあげた。
「じゃあ、突っ込んでくるぜい! 後よろしく!」
 秋奈が敵陣へとつっこみ、激しい剣戟を鳴り響かせる。あちこちで響く戦いの音は、今や竜宮城を埋め尽くさんばかりに響いている。
「メーアさん、だよね? 僕はMeerって言うんだ!」
 Meerは、乙姫メーアに声をかける。目を丸くしたように、メーアは頷いた。
「あ、同じ、名前ですね……!」
「うん! マールちゃんから聞いてた時にね、おんなじ名前だ、って思ったの。
 会ってみたかったんだ!」
 その言葉に、メーアは笑った。
「ふふ、そうですね。わたしもお姉ちゃんから聞いたら、きっと会いたいって思います」
「やったね! それじゃ、メーアさんは後ろに下がっていて! 僕も皆を、護るから!」
 そう言って、Meerは息を吸い込むと、
『乙姫の加護、誘われた僕らなら♪
 竜宮の玉座、招かれざる客なら♪
 狂気を打ち払って、打ち消して♪
 恐怖を打ち破って、打ち勝って♪
 さあさ歌え、歓迎の宴のために♪』
 高らかに、歌った。祝福の歌を。海底に響くそれが、仲間達の背中を押す祝福となる!
「やれやれ、魔術師様という割にはタフなものだな……!」
 ジョージはナイトゴーントと対峙しつつ、不敵に笑ってみせた。強力な魔術を使う怪物は、しかしその生命力も軟ではない。吹き出す闇の霧は狂気をもたらせる害悪の闇だったが、しかしジョージにはそのようなもので心を乱されることはない。
「そんなもので……!」
 ジョージは黒い霧を突破すると、その拳でナイトゴーントに殴りかかった。ゴムのような感触と反動が、その手に感じる。ジョージはそのまま態勢を変えると、鋭いケリの一撃を見舞う! ナイトゴーントが倒れ込み、しかし何事かを唱えると、水流が発動して無理矢理に自らを起き上がらせた。ゴムのような腕が近接戦闘用に振るわれ、鞭のような打撃が襲い掛かる――それを、慧が受け止めた。
「……バニーがどうの、という話も気になるっすけど、今はこっちの問題っすよね……」
 慧が攻撃を受け止めたまま、呪符を展開する。舞う呪血のそれが、ナイトゴーントを取り囲み、呪を注ぎ込んでの攻撃を行う! ぎゃ、と悲鳴を上げたナイトゴーントが闇を吹き出す――慧はそれを受け止めながら、
「そんなんしても無駄っすよ」
 そう言ってみせる。逃げようとするナイトゴーントを、呪血の符で拘束しつつ、
「攻撃を」
 そう仲間達に告げる。
「おっと、了解だ」
 縁が涼やかに頷くと、一歩を踏み込んだ。静から動へ。一瞬のその動きが、刹那の間に強烈な力を生む。一瞬の空白の間に握られていた刀が、ナイトゴーントを切り裂いた。突然の緩急の変更に、慣れぬ生き物はその動きを認識できない。これはそういう性質の攻撃である。無力さを装いながら、その懐に強力な牙を隠して。それこそが処世術か。
「華やかな場所に、お前さん方のような連中は似合わねぇよ。悪いな」
 縁がそう言って刀をしまい込んだ刹那、ナイトゴーントは泥へと変わる。
「こいつは……部隊長型だろうな。確かに強いが、数は少ないと見た」
「うむ。その通り、そのゴム人形の総数は少ない」
 愛無が応える。
「だが、それでも厄介ではあるが。やはり精神攻撃は、慣れぬものには辛い」
「慣れたくない攻撃だけどねぇ?」
 縁が言うのへ、
「おっしゃる通りではありますね。いやはや、狂気、とは」
 バルガルが頷いた。
「状況は?」
 愛無が尋ねるのへ、
「ええ、此方の優勢、と言ってもいいでしょう。魔種の討滅には、些か時間がかかりそうですが……その間に、此方も片付くとみていい」
 ふむ、とバルガルが頷いた。
「乙姫の護衛部隊の方も、頑張ってくれています……良いですね、頑張るバニーさん。素敵ですね」
「ふむ」
 愛無が頷いた。
「素敵か……素敵なのだろうか。ふむ。僕にはまだわからない感覚だが、素敵だというのなら素敵なのだろう。覚えておこう」
「さておき」
 バルガルが言う。
「引き続き最善を尽くしましょう。竜宮の奪還まで、あと少しのはずです」
 その言葉に、仲間達は頷いた。戦闘はまだ続いていたが、あれほどいた深怪魔たちも、着実に圧し返されている。
「はい! このペースで行けば、被害は少なく終わりそうです……!」
 ナイトゴーントを切り倒したシフォリィが声をあげる。その鋭き剣閃の冴えに、如何に狂気の魔と言えども太刀打ちはできまい。
「竜宮の皆さん、どうかもう少しだけ、耐えてください。
 皆さんを、これ以上傷つけさせたりはしません。必ず、護りますから」
「シフォリィさん……!」
 その言葉に、メーアが嬉しそうに頷く。信頼を寄せた、瞳。とことこと歩いてくるメーアは、そのままシフォリィへと抱き着いた。
「ありがとうございます。心よりの感謝を……!」
「いえ、ありがとうございますが、危ないので! 色々と!
 やっぱりここの人達距離感おかしくないですか!?」
 距離感はおかしいが、戦局はおかしいことなく、イレギュラーズ達に傾いていった。
「さて、厄介な敵もあと少し、ですか」
 正純が、ふ、と息を吐いて、矢を撃ち抜く。矢は次々とサハギンに命中し、命中した先から泥へと返していく。アトミックシザーもまた、その装甲の隙間に撃ち込まれた矢が、絶命の一撃となってその生命を終わらせた。
「ふふ、打ち放題、ですか。ストレス解消にはちょうどいい」
 終わりは視えてきたとはいえ、それでも数多い敵に気おされぬよう、敢えて調子づくように自分を鼓舞した。
「正純さん、大丈夫そう?」
 マールが尋ねるのへ、正純は頷く。
「はい。乙姫様の方は?」
「メーアは無事だよ! 正純さん達のおかげ!」
 にっこりと笑うマールに、正純は頷く。
「ええ……思えば、あの船から。長いような短いような時間でしたね」
「うん。
 でもね、不謹慎だけど、正純さん達と会えて、とっても楽しかったよ」
「おや。楽しい時間はこれからも続きますよ。私たちが、竜宮を守るのですから」
 そういう正純に、マールは笑った。
「そうだね。思い出、いっぱい作りたいなぁ」
「そうですね、マール様。良き思い出をおつくりなられるとよいでしょう」
 雨紅が言うのへ、マールは頷く。
「うん! 雨紅さんとも一緒にね!
 あたし、豊穣にも行ってみたいし、シレンツィオもまだ全部見て回ってないから!
 海洋って所にもいってみたいし、練達って言う所も気になる!
 それから……」
「ふふ、いいですね。ですが、今は」
 しーっ、と雨紅は微笑んだ。
「後にしましょう。ですが、約束いたしますよ。必ず、皆で思い出を作りましょうと」
「うん! ……気をつけてね、雨紅さん! 正純さんも!」
 マールがそう言って、メーアの下にかけていく。その背に護るべき人たちを感じながら、雨紅は舞うのだ。
「……ソーリス殿、無事か」
「うん、ありがとう、アーマデル」
 アーマデルの言葉に、ソーリスは笑う。二人で、幾多の敵を突破してきた。急ごしらえのコンビと言えたが、しかしその意気は奇妙なほどにあっていた。
「ソーリス殿、今だ。
 行くぞ、俺が合わせる」
 その言葉に、ソーリスは踏み出した。目の前にいた、サハギン。ソーリスの剣が、サハギンの汚い槍を弾き飛ばした。武器を失い慌てるサハギンの首を、アーマデルの刃が切り離す。ぼとり、と泥となってきていくサハギン。確かな手ごたえ。
「ふふ。不思議だね、アーマデル。
 まるで、僕らは昔から共に戦っていたかのような気分になる。
 運命の友……と、言っていいのかもしれない」
「客商売という奴か。誰にでも言っているのだろう」
 苦笑するアーマデルに、ソーリスは首を振った。
「本心さ。オレはキミに好意を持っているよ。もちろん、キミの大切な人の二番目にね」
 そう言って、茶目っ気たっぷりにソーリスは笑ってみせた。
「そう、オレたちは、不思議な縁でつながっているといってもいいと思う。
 ……そんなオレだから、キミにお願いするよ。
 バニーを」
「着ないからな?」
 アーマデルが一言で話を断ち切った。まぁ、着るらしいですよ、アーマデルさん。バニーを。
 さておき、戦線は順調に、イレギュラーズ達が圧し返している。ナイトゴーントと戦う飛呂とイリスは、苛烈な魔術攻撃を避けながら、狂気の術士と大立ち回りを演じていた。
「厄介ね、伊達に隊長級じゃないって事かしら……!」
 イリスが言うのへ、飛呂が声をあげる。
「イリスさん、いったん下がって、援護に専念を!」
「大丈夫……盾役もこなせるから!」
 イリスは一歩踏み込み、釵で攻撃を仕掛ける。
「飛呂さん、後衛、お願い!」
「了解!」
 飛呂の持つ狙撃銃から、銃弾が撃ち放たれる。それがナイトゴーントの真っ黒な顔面に突き刺さる。ナイトゴーントが、ぎゅあ、と悲鳴を上げた。口があるかもわからない、何処かからか放たれたそれは、しかしナイトゴーントにダメージを与えたことの証左でもある。
「ここっ!」
 イリスが釵を突き刺す。胸を貫かれたナイトゴーントが、ぎゅる、ぎゅる、と泥に溶けて消えていく。ふぅ、とイリスが息を吐いた。
「ナイトゴーントはあらかた片付いた……?」
「うん、どうやら敵の隊長格は全滅みたいだ」
 文が言う。確かにあたりを見て見れば、ナイトゴーントは姿を消し、後は三々五々にサハギンやアトミックシザーが攻撃を仕掛けるばかりだ。相変わらず、魔種からの流れ弾が戦場を爆破しているが、それはそれとして、多くの敵を撃破できたことに変わりはない。
「もうすぐ、この戦いも終わるはずだよ」
「そ、そうなんですね……」
 と、少しだけ疲れた様子でやってきたのは、イチゴだ。
「大丈夫かい? 君も最前線で頑張ってくれていたからね」
 イチゴは最前線で、盾役として活躍していたものだ。多くの攻撃を引き付けながら、しかし何とか健在のまま、戦いはおわろうとしている。
「だ、大丈夫です! あたし、EXF100(がんじょう)なので!
 ……こう言うと、その、不謹慎かもしれませんけど」
 イチゴが言った。
「……皆をちゃんと守れたまま終われそうで、嬉しいです。
 大きな戦いでしたけど、傷ついた人はいましたけど……でも、救うべき人は救えたって」
「そうだね。
 あと、少しだ。それできっと、竜宮は守れるはずだよ」
 文がそういうのへ、イチゴが頷く。うん、と大きく声をあげて、
「もう少しだけ、頑張ってきます! あと少し、皆を守ってきます!」
 その言葉に、文も頷いた。
「僕たちも、もう少しだけ頑張ろう。
 大丈夫……勝ちの目は、見えているから」
 そういう文のいう通り……確実に、敵はその数を減じているのだ。
「ルチアさん、僕の後ろから離れないでください!」
 残るサハギンと激闘を繰り広げながら、鏡禍は声をあげる。その後ろにいるのは、ルチア。鏡禍にとって、護るべきものの一つだった。
「貴方と離れて倒れられたりしたら後悔するに決まってるじゃない。
 後ろで支えてあげるからきちんと守って頂戴ね」
 絶対にはなれないと、ルチアは言う。絶対に護ると、鏡禍は誓う。鏡禍の妖力が、サハギンたちを引き付ける。見れば引き寄せられずにはいられない、魔の誘因。集まったサハギンたちを、しかしルチアの強烈な大海嘯が薙ぎ払う。海底に走る、波。それがサハギンたちを、まるで流すべき穢れのように吹き飛ばし、その身体を構成していた泥ごと何処かへと運び去っていった。
「ありがとう、ルチアさん!」
「いいえ、当然のことだから。
 貴方が傷つくのは、私だって嫌だもの」
 ルチアの言葉に、僅かに鏡禍の頬に朱が指す。好意の言葉が嬉しかった。この戦場において、暖かなものがあるとしたら、間違いなくその言葉だった。
 そして、その暖かなものがあるから、戦える。
「ルチアさん、もう少しで敵もいなくなります。そうしたら、少しだけ一緒に……海の底を楽しみましょうね」
「ええ、もちろん。終わったら。楽しみね」
 そういう鏡禍に、ルチアは笑ってみせる。イレギュラーズ達の間に余裕が見えるほどに、戦局は優勢に傾いていた。そして、二人が最後の敵をせん滅するまで、もう少しの時間もかからなかったのだ。
「これで、最後ーっ!」
 別の場所では、オデットが強烈な魔力の奔流へ、アトミックシザーへと叩きつけていた。硬い外装もろとも粉砕する一撃が、アトミックシザーをバラバラにして、泥へと還す。
「これで終わり……かな?
 サイズ……ううん、魔種組はまだ戦っているみたいだけど……」
 心配げに声をあげるオデットに、頷いたのは祝音だ。
「うん……でも、この勢いならもうすぐ……!」
 その言葉は、もう少しで現実のものとなる。だが、此処はひとまず、視点を海底、竜宮城へと固定しよう。
「そうだ、メーアさんと、ニューディさんは……!」
 祝音の言葉に、オデットは頷いた。奥の方を見れば、メーア、そしてニューディと共にある、グリーフの姿が見えた。
「無事です……まだ油断はなりませんが」
 グリーフが言うのへ、二人は頷く。メーアは申し訳なさそうに、頭を下げた。
「ごめんなさい。せっかく来ていただいたのに、こんな事になるなんて……」
「いいのですよ。元より、深怪魔の被害は、私たちも被っていますから。
 そちらのウミウシ? のようなものは……ニューディ、というのですね。マールさんからお話は聞いています」
「でも、ニューディさんのことは、よくわからないってマールさんも言ってて……ねぇ、ニューディさんって、どうして敵に狙われているの?」
 祝音の言葉に、メーアは頷いた。
「ニューディは、欲望を食らい、昇華する力があります。
 詳しくは後で話しますが、この力が、邪神ダガヌにとっては忌むべき力なのです」
「邪神ダガン、って言うのが、深怪魔を操っている敵って事?」
 オデットの言葉に、メーアは頷く。
「はい。ダガンは私たち竜宮の一族が封印していたのですが、ある時を境に、封印が弱まってしまったようなのです。何とか抑え込んでいたのですが、ここ数年は抑えきれず……」
「そう、だったんだね……」
 祝音が頷いた。
「でも、もう一度封印ができるんだよね?」
 その言葉に、メーアが頷く。
「はい。玉匣が修復されれば、必ず……!」
「ならば、なおさら竜宮は守らなければなりません」
 グリーフがいうのへ、皆は頷いた。
「このまま、後ろに下がっていて。あの魔種も、きっともうすぐ……!」
 オデットの言葉に、メーアは頷いた。
 そして、魔種との闘いも、既に佳境へと突入していたのだった。

成否

成功


第3章 第5節

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
流星と並び立つ赤き備
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)
名無しの
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
綾辻・愛奈(p3p010320)
綺羅星の守護者
フーガ・リリオ(p3p010595)
君を護る黄金百合
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺
シェンリー・アリーアル(p3p010784)
戦勝の指し手

●魔たるもの、後
 何をしている……!
 胸中で、ディアスポラは歯噛みをしていた。
 眼下に広がる光景は、自身の脳内のレーダーに、敵味方勢力図として敵だけが記されている。
 あまりにも軟弱な味方……いや、敵が強かった、とみるべきか。
 そもそも、完全に孤立したはずの竜宮に、救援者が現れたという点がすでに想定外(めんどくさい)のだ。それを相手どらないといけないのにもすでに厄介(めんどくさい)のに、ましてや相手はイレギュラーズ(めんどくさいやつら)だ。
 ああ、めんどくさい。めんどくさい。めんどくさい。
「だから面倒は嫌いなんだ」
 舌打ち一つ、全力の砲撃をぶちかます。もはや足元の竜宮(めんどう)なども消えてなくなってしまえばすっきりとする。だが、その砲撃を切り飛ばしながら突入してくる、黒き風――。
「めんどくさい? 奇遇だな俺もちまちましたのは苦手なんだ。
 だから一気にケリつけようぜ、魔種!!」
 クロバだ! その黒風は爆風を薙ぎ払い、突撃! 強烈な斬撃を、ディアスポラへと叩きつける!
「わからん……汝に、こんな所を守って何の益がある……!?」
「約束したんでな、護る、って」
 マールの姿を思い浮かべながら、クロバはいう。振るわれた斬撃を、ディアスポラは砲塔で叩き落とした。既にあまたの攻撃を受けた砲塔は、その攻撃力を減じていたが、しかし魔種としての力はまだ健在であり、敵の命をとるまではいかないであろうことは、クロバも感じている。
「よし、ここで思いっきり気合を込めて! しゃおらー!!」
 アリアの放つ混沌の泥が、ディアスポラを包み込む。混沌の泥が艤装を侵食し、その動きを阻害する。
「めんどくさいめんどくさいって言うのなら、おかえり願いたい所だよ!」
「出来るならそうしている!」
 ディアスポラが吠えた。砲撃が泥を吹き飛ばす! アリアは慌てず、その砲弾を蹴っ飛ばして接近!
「いっくよ!」
 振るわれる、拳! そこか放たれる魔力衝撃波が叩きつけられる! 強烈な一撃が、ディアスポラの身体を穿った。
「ち、ぃ……!」
 ディアスポラが舌打ち。同時に下面に艦砲射撃をぶちかまして強制的に浮上する。
「一斉射、撃ち方!」
 生き残った砲塔が、一斉にイレギュラーズ達の方を向く。ずどん! 強烈な砲撃音は、追い詰められてなお戦い続けた異界の戦艦の怨念を現したものか。いまだ健在のその威力が、イレギュラーズ達を穿ち、その体力を奪い取る!
「それが、どうした!」
 強烈な一撃を受けてなお、憂炎は立ち上がる。負けない。くじけない。おれない。何故なら生ハムの原木があるから。
「我が名はイルナークが解・憂炎! 押し通らせてもらう!」
 叫びと共に、憂炎が武器を叩きつけた。衝撃に、ディアスポラの艤装が揺れる。同時に展開した近接防御機関銃が、憂炎を狙う。咄嗟に受け止めつつ、ふきとばされた憂炎が離脱――。
「大丈夫、すぐに助けるから!」
 ココロが声をあげて、その手をかざした。深海似て燃え盛る炎が、憂炎を包み込む。炎、不死鳥のように。描く軌跡、それが身体の細胞を活性化し、治癒力を以て傷を急速に癒していく。
「そのまま頼むわ! 皆、一気に攻め立てるのよ!」
 レイリーが叫んだ。その白亜の鎧は既に無数の傷にさらされていた。多くを守り、多く傷ついた。しかしその傷も痛みも、今この瞬間! 護るべきものを、護るために!
「行くわよ! わたしとともに来てくれたものも! そうでない、今であった仲間も!
 今は一つの言葉の下に集って!
 我が名はヴァイスドラッヘ! 貴方たちと共に行くものよ!」
「さぁて、壮大な勇者の登場には、壮大な音楽が必要ってものだ」
 フーガが笑う。
「奏でようか、英雄のための音楽を。音楽しかないのは、おいらも同じだ。
 奏でようぜ、涼花。皆を守るための音楽を」
「……はい」
 涼花が力強く頷いた。息を吸い込む。海の底で息を吸い込むなんて変な話だった。海の底で歌が響くなんて、変な話だった。でも。今はできる。呼吸ができて、歌声が届く。こんな暗い海の底で、わたしたちの歌が届くのならば――。
「歌わないわけ、ないじゃない」
 響く。詩。歌。唄。唱。傷ついたすべての英雄へ、傷ついたすべての人々へ、竜宮を包む、音楽!
 二人の奏でる音楽が、竜宮に鳴り響いた! 深海に響く、優しい歌。勇敢な声。高らかになるトランペット。
「……! 士気が向上している……!」
 その異変にディアスポラは気づいた。確かに、戦局はあちらの方が有利だ。だが、魔種の強大な力は、それでも振り払えないはずだ! なのに! 奴らは決してあきらめない……!
 めんどくさい!
「何なんだ、汝らは……!」
 ディアスポラが砲撃を撃ち放つ! 音楽よきえろ、歌よきえろ、勇者(めんどうくさいもの)たちよ、きえろ!
「やらせへんわ、間抜けっ!」
 彩陽が放つ一矢が、ディアスポラの砲塔に突き刺さった! 爆発音が鳴り響く! 発射寸前のそれが、砲塔の直前で爆発したのである! 強烈な噴煙が、あたりに巻き起こる。水の中の煙が、視界を歪めさせる。
「おおおおおおおっ!!」
 ムサシが吠えた!
「ブレイジング……マグナァァァァァァァムッ!!!!」
 火炎を纏う刃が、ディアスポラを狙う! 直撃する――ディアスポラは思考する。僅かな時間。命を繋ぐ刹那。ディアスポラは一撃を避ける事を最優先とした。右舷艤装を切り離し、ムサシへ叩きつける。ムサシの刃が、右舷艤装を切り裂き、爆発させた!
「再構築――」
 右舷艤装のあたりに、ホログラムのような線が奔る、魔術的・科学的両アプローチから、艤装を再生させる。
「まだ、そんな手を――!」
 ムサシが吠える。ディアスポラは反転、距離をとるべく上昇――そこに、エーレンと咲良が飛び込む!
『逃がさないッ!』
 上空より振り下ろされる、刃と脚。跳び蹴りと、大上段からの斬撃! 二人の一撃が、ディアスポラの背部艤装に突き刺さる!
「ぐ、うっ!」
 衝撃に、ディアスポラが吠える。
「オリオスの敗退を知っているか? 安心しろ、お前もすぐに同じ道を辿る」
「オリオス――!?」
 ディアスポラが身体をひねる。全身を凶器のように古い、強烈な弾撃! 振り払われたエーレンと咲良が飛びずさる。
「何の為にこんなことしてるか知らないけど、竜宮城の人たちや乙姫様をそういう危険から守るのも正義の味方ってわけ! そうでしょ?」
「なるほど、オリオスが見逃してやったのは、汝らか」
 嘲笑するように笑うディアスポラが、近接機関砲をうち放つ。水を蹴って回避するエーレンと咲良。
 一方、マシンガンの弾幕を大剣で斬り払いながら、セララが飛び込む!
「まったく、海の底まで着て大暴れ、なんて夏の劇場版じゃないんだから!」
 セララがそういうと、大剣を振るった。横なぎの斬撃が、ディアスポラの艤装に叩き込まれる。再生されたばかりの右舷艤装は、まだまだ十分な耐久力を誇っているようだった。
「そういうのずるいよね! 魔種って!」
「しらん!」
 零距離からの砲撃――セララはそれを器用に身体をひねらせて避けた。そのまま大剣を振り上げ、
「全力全壊! ギガセララブレイク!」
 振るわれる雷撃の斬撃! セララの必殺攻撃が、上段から叩き込まれる。ディアスポラは一瞬、逡巡し、すぐに両舷の艤装パーツをパージした。そのままけりつけると、距離をとる。セララの斬撃は両艤装パーツを破砕し、爆発!
「再生させちゃダメ!」
 セララが叫ぶ! 放っておけばパーツを再生され、また砲撃が始まる! 大打撃を与えるなら、このタイミングだ! イーリンが跳んだ。追うように、愛奈がその手を掲げる。放たれた術式が、ディアスポラの身体をからめとった。身体を駆け巡る、呪。
「いま、です!」
 愛奈が叫ぶ! イーリンが加速! ミーナと共に跳躍――。
「お初にお目にかかるわね。騎兵隊の司書よ。覚えておいて頂戴」
 その瞳に、黒き炎が燃え上がる。邪を見に纏い、邪を撃つ。月閃。その模倣。されどその力は現実のものである!
「そこっ!」
 イーリンが、戦旗を突き出した。先端が、鋭く、槍のように、鋭く。
 放たれた突撃。ちぃ、とディアスポラが舌打ち。身をよじる。突き刺さるは背部艤装。がしゃん、と背部艤装の全てが、イーリンへと向く。無防備。直撃。即ち死。
「死ね」
 放たれる。砲弾! 死へと直進する、その砲撃を――受け止めたのは、ゴリョウだった。
「ぶははははっ! 悪いな! こいつはまだ死なせねぇんだわ!」
 立ちはだかる、黒い影。ゴリョウ。その身体に、砲撃が突き刺さる。爆発! 吹き飛ばされる、ゴリョウと、それを抱き留めるような、イーリン! それと入れ替わる様に突撃してきたのは、ミーナとエレンシアだ!
「よう。お前だな、こんな面倒事引き起こしてくれたのは」
「お前が大将首か! 叩き切るぜ!」
 続く、猛攻! 突き出した両手が、魔力衝撃波を生み出す。強烈な、打撃! 振り下ろされるは、エレンシアの刃! 続くは斬撃! 打ち出される波が、輝く剣の閃が、ディアスポラを叩き・斬る! ディアスポラは、不完全な艤装を、目の前に再生させた。咄嗟のシールド。直撃を防ぐ、苦肉の策。完全再生できなかった艤装は、ただの鉄板に過ぎない。だが、それでも直撃するよりはましである。この防御再生により、艤装の再生はさらに10秒遅れた。10秒。それで十分。だが。
「悪いな、勝負は賭け時ってのがあって――今がその時だ。俺は全ベットさせてもらう」
 ニコラスの斬撃が、ディアスポラの背部艤装を切り裂いた! 瞬間的に、パージする! 背部艤装でニコラスを吹き飛ばしながら、ディアスポラは跳躍!
 しのいだ! イレギュラーズの攻撃を! このまま10秒後に艤装の再生シーケンスに入る! 両艤装、背部艤装を再生させ、全力を以ってこの地を焼き払う! それで終わり! それで終わりだ!
 だが、ディアスポラは視た。壊れた艤装に巻き込まれて落下するニコラスが笑っていたことを。
「言ったろ? 今がその時だ。俺は全部ベットした。お前は降りた。だから負ける」
 ごう、と。
 ディアスポラの身体を、何かが貫いた。衝撃。強烈な、衝撃。それは、自身の砲撃とも違うが、しかしそれに迫る様な、強烈な一撃だった。
 視線を向ける。
 目の前に、天使がいた。
 不格好な狙撃銃を構えた、物騒な天使だった。
 その狙撃銃の先端から、硝煙が昇る。
 強烈な魔力の残滓。
 拭きあがる、紫煙。
 ああ、
 アイツが撃ったのか。
 そう気づいた瞬間に、激痛が走った。これまで経験したことのないような痛みだった。
「騎兵隊の砲撃担当でして! そのご自慢の艤装をぶち壊しに来たのですよ!」
 天使が言った。
 ボロボロだった。いや、そのダメージすらも織り込んで、此処に立っていたのだろう。

「あの、光は」
 ロロミアが言った。メーアもそれを見た。
 海底に走る、流れ星だった。
 海底に走る流れ星は、空に向かって落ちるらしい。
 あこがれるような光だった。
 食らい海底に光をもたらす、そんな希望の流れ星が。
 空へ。

「あ、ああ……!」
 ディアスポラは吠えた。頭の中はアラートを告げている。迎撃はできる。反撃はできる。まだたてる。まだたてる。だが、それ以上の衝撃が、身体を駆け巡っている。
 また負けるのか、と聞こえたような気がした。異界の技術をとり癒えれた不安定な要素が、自らの電子回路を凌辱するような気配すらした。陸奥よ、また我々は負けるのか。誰かがいうような気がした。異界から手に入れた艤装が、そこに込められた怨念が、ディアスポラの心を侵食するような気がした。
「めんどくさ」
 はぁ、と息を吐いた。違う。まだその時ではない。まだ。
「もういいよ。好きにしなよ」
 ディアスポラは、身体を焼いた砲撃の主を見た。ルシア・アイリス・アップルトン。魔砲の天使よ。
「次は……いや、こう言うの柄じゃないよ。会いたくない」
 そういうと、ディアスポラは転進する。
「ディアスポラ!」
 ブランシュが吠えた。
「あなたの目的は何なのです! 裏にいるのは、Tiamat――」
「ブランシュ」
 ディアスポラが声をあげた。
「あの男の妄執に取らわれ、未だに戦う汝にはわからない」
「何を――」
「人の幸せとは何だろうな、ブランシュ。我にはわからない。だから今、調べている」
 それだけ言うと、ディアスポラは去っていった。途端に、波がひいたように、あたりが静かになった。
 煙が、あちこちから立ち上っている。
 壊された竜宮城は、無残な姿をさらしている。
 奇跡が起きたとするならば、死者は一人も、いなかったことだ。
 ――いや、それを奇跡と呼ぶのは、イレギュラーズ達の行いにとって失礼だろう。
 これは、イレギュラーズ達の勝ち取った、間違いのない、人の力による結果だ。
 長い、長い、一日が終わろうとしていた。
 深海に、日は昇らないが、煩いくらいのネオンサインが、太陽の代わりにあたりを照らしていた。
 これから夜になるのに、まるで朝みたいに、竜宮はキラキラしていた。
「クロバさん!」
 クロバが降り立ってくると、マールが飛び込んで、思いっきり抱き着いた。
「お、おい!?」
「えへへ、お疲れ様! クロバさん、ずっと一緒にいてくれたものね……!
 それから、百合子さんも、正純さんも、ルーキスさんも、えと、それから……皆!」
 マールが屈託なく笑った。或いは、竜宮に登る太陽とは、彼女のような、竜宮の少女たちの屈託のない笑みなのかもしれない。
「ありがとうございます、皆さん」
 メーアがそう言って、一礼をした。些か幼さの残る少女だった。メーア・ディーネー。竜宮の乙姫が、彼女だった。
「えっと、乙姫さん、なんだよね?」 
 セララがそういうのへ、頷いた。
「はい。この度は、竜宮の民の不始末により、深き魔……皆さんは、深怪魔と呼んでいるのでしたね。それをよみがえらせてしまったこと。そして、この様な窮地に巻き込んでしまったこと……本当に申し訳ございません」
「それは、まぁ、気にすんなよ」
 ゴリョウが笑った。ボロボロの身体を支えるのは、タタキという海種の男だった。
「いや、ゴリョウ殿は無茶をし過ぎと言いますか……私も急に呼び出されまして、大層びっくりしておる所でして!」
 そういう叩きに、ゴリョウは「すまんすまん」と笑った。
「ひとまず、竜宮城では人心地付けないでしょう。
 クラブ竜宮があります。そこなら、皆さんをもてなすのには充分です。
 どうか、御足労願えますか?」
 そう言って、メーアは笑った。
 かくして、竜宮の危機はここに去った。
 イレギュラーズ達は、敵の目論見に思考を巡らせつつ、ひとまずはこの戦いの疲れをいやすのであった――。

成否

成功

PAGETOPPAGEBOTTOM