そこにある違和感
「誰かから奪って何かを得ようとするから、そんなにドロドロしてるんじゃないっ？」
捕食に怯えるフリーパレット達の感情に触れたからか。
ダガヌチを前にして震えぬよう、自身を鼓舞するためか。
叫んだ言葉は確かに黒いバケモノの気を引き、そして何かを『喰らわれた』。
その筈だけれど——あれ、特に何ともない？
記憶だって、感情だってちゃんとある。
大切な人を大切な人だと感じる心も、ある。 
「なんかよくわからないけど……っ、これでお終いだよ！」

まだ、気付かない。
失った瞬間は、気付かないものなのだ。

気付くのは、もう少し先の、何時の日か。
そう、たとえば——誰かと平和や幸せを分かち合う、聖なる夜が近づく頃に。

そこにない感情
恋心や家族愛から派生した一部分。
抱き始めていた、細やかな願いのようなもの。
『大切な人のために何か自分の手で作ってあげたい』

昨年マグカップを贈った彼に、今年は幸運の虹色珊瑚で何か作ろうと思っていた。
それは今、自身の耳を飾るピアスとなった。