シナリオ詳細
<Rw Nw Prt M Hrw>ドラゴニックラプソディ
オープニング
●理不尽
それは人智の及ぶ存在ではない。
それは人の営みに害し得る、或いは人の営みで抗し得る存在ではない。
それは酷く気まぐれで、それは大抵何時でも無軌道であった。
多くの事に頓着せず、そうと生まれついたから絶対的である。
道を行く時、人が路傍の石を気にしないのと同じように。或いはもう少しマシにしたって――人が生きる為に家畜や他の動物に自己と等しい興味を示さないのと同じ事だ。
欠伸の一つで村を焼き、寝返り一つで国を滅ぼす――そんな風に謳われた竜種(れんちゅう)は問答無用の真理として唯、偉大であったに違いない。
『いい悪いではなく、それは常にそういうものなのだ』!
●傷をつけられたなら、それを覚えているべきだ
「……まあ、アレで終わるとは思っちゃいねえよ」
『赤犬』ディルク・レイス・エッフェンベルグ(p3n000071)は走る武装馬車――『赤犬戦車隊(レッドチャリオッツ)』の先頭車両のうえで、顔をしかめて上向いた。
大空を、煌めく竜が……否。『竜を摸した怪物』が飛んでいた。
およそ一ヶ月ほど前のこと。
ラサの首都ネフェルストへ大鴉盗賊団が一斉襲撃をかけた日。
その切り札として宝石竜ライノファイザ、水晶亜竜ギガグラス、水晶亜竜トルメンタが投入され猛威を振るった。
これに対しラサ傭商連合の三大傭兵団ディルクの『赤犬の群れ』、ハウザーの『凶』、イルナスの『レナヴィスカ』が迎撃にあたり、その重要な戦力としてローレット・イレギュラーズたちも共に戦うこととなった。
ギガグラスとトルメンタを過酷な戦いの末撃破したものの、一方でライノファイザの撃滅はかなわなかった。勇敢なる『クラブ・ガンビーノ』のホープによって起こされた奇跡的反撃によってなんとかライノファイザを退かせ、町を守ることが出来たのである。
だがもちろん、それで終わるはずはなかったのだ。
馬を駆る『砂漠の幻想種』イルナス・フィンナ(p3n000169)。大狼の背にまたがる『凶頭』ハウザー・ヤーク(p3n000093)。彼らがディルクたちと共に目指すのはラサに発見された遺跡群ファルベライズ。
その地表が崩壊し、再起動したライノファイザが天空へ飛び出したという報告を受けたがゆえである。
「前回は都市の前で迎撃するのが精一杯でしたが、今度ばかりはそうは行きません」
「『退いたなら、また来る』。当然の理屈だぜ。
備えて、動いて、叩き潰しゃあいい。……ま、思ったよりもだいぶ早かったがな」
強く舌打ちするハウザーに、イルナスは肩をすくめることで同意を示した。
倒せなかったとはいえ相当なダメージを与えた筈。再び動き出すにはまだまだ時間がかかるだろうというのが、彼らの見立てだったのだ。
しかしそうした予想を悪い意味で裏切って、竜はああして空を舞っている。
どころか、倒したはずの水晶亜竜ギガグラス、トルメンタまでもを伴って。
「倒した水晶亜竜が復活するなどということがありえるんでしょうか……」
「バッカ、ンなわけねえだろ。パチモンだパチモン。おおかた、あのライノファイザもテキトーな錬金モンスターを融合させて無理矢理動くようにしたスクラッチビルドだぜ」
「なるほど、言われてみれば……」
イルナスはその超人的な視力諸々でもって竜もどきたちを観察してみた。
ライノファイザは損傷したであろう箇所を鋼の装甲で塞ぐなどして修復され、部位に至っては全く別のモンスターの部位が融合してしまっている。
ギガグラスやトルメンタに至っては、シルエットこそ似ていたがイチから錬金術によって建造したフルスクラッチビルドのようだ。
「あんなものを、わざわざなぜ……」
「『見せびらかしたい』のですよ」
疑問に答えたのはファレン・アル・パレストだった。
十全な飛行を可能にする魔術装置を纏い、鋼の翼でイルナスたちの頭上へと並んだ。
顔をへんなふうに歪めるハウザー。
「珍しいな? お前が戦場に出てくるなんざ」
「まさか。戦場を確認したらすぐに後衛テントへ戻らせていただきます。今回は資金提供も兼ねているのでね」
知的に笑うファレンに、ハウザーはケッと声をあげてそっぽをむく。
「偵察部隊からの情報が入りました。『グレートホール』からは無数の亜竜を摸したモンスターが出現している模様です。このまま行けばぶつかることになるでしょう」
「構わねえよ。そのために備えてきた。万全とは、言いがたいが……そこは『お嬢ちゃん』たちがいれば十全だ」
追いつかれる形で話に加わってくるディルク。
彼。もとい彼を中心とした三桁規模の大部隊が、巨大なひとつの獣の如く偽竜とその軍隊めがけて突進していく。
「ファルベライズの探索はローレットに任せた仕事だ。傭兵がよそのナワバリを荒らすってのはいただけねえ。
……が、連中の義に報いねえってのも『オトコ』じゃねえよな。地面から飛びでた連中は俺らで迎え撃つ」
笑う歯が、獰猛に。
傭兵という巨大な『怪物』が突き進む。
「行こうぜローレット。ラサ(おれ)との共同作業で、もう一度昔の忘れ物を取りに行くとしようじゃないか――」
- <Rw Nw Prt M Hrw>ドラゴニックラプソディ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別決戦
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年02月24日 22時15分
- 参加人数191/∞人
- 相談6日
- 参加費50RC
参加者 : 191 人
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参加者一覧(191人)
リプレイ
●マガツ&斬込大隊
天空をまわる竜。否、水晶偽竜。
ファルベライズ遺跡地下深くより開いたグレートホールを抜けて現れたライノファイザを筆頭にして無数の水晶偽竜が地上へと進軍。
彼らはいつかのようにラサの首都ネフェルストへの侵攻をはじめようというのだろうか。
だがこちらとて伊達に竜を追い返していない。整えた大部隊でもって、現れたばかりの水晶偽竜軍への迎撃作戦を開始した。
「突撃ィ! 全員残らず食い潰せ!」
狼のように遠吠えを放ち走り出すハウザーと、同じように叫びながら走り出す凶の傭兵達。彼らと共に編成された『マガツ&斬込大隊』のローレット・イレギュラーズたちもまたあふれかえる敵の群れへと突撃していく。
中でも先陣を切って飛び込んだのが
『深き森の冒険者』ミスティ、『特異運命座標』饗世 日澄、『トリヤデさんと一緒』ミストの三人組であった。
「わっふー!よくわかんないけど大きい戦いなんだよね!
僕も力いっぱい頑張るよ!あんまり戦ったことないけど!
ミスティ、日澄ちゃん、一緒に頑張ろうね☆」
「トリヤデ」
「ああ! ミスト様、非力な我を護ってくれぬかえ? ……いやいや流石に冗談ですよ、笑えない類のね!」
「トリヤデ?」
(ミスト、随分張り切ってるみたいだけど本当に大丈夫かな? いつの間にか友達増えてるみたいだし……)
「うん、まあ頑張ろう。日澄さんもよろしく」
「ん、ご心配ありがとう、お優しいミスティ様」
「トリヤデ!」
三人が真っ先に相手取ったのは全長3mほどの水晶偽竜であった。こちらへ向けて炎のブレスを吹き付けるが、三人がバッと三方向に散ることでこれを回避。
ミスティは翼を広げやや高所から両手持ちしたサブマシンガンを撃ちまくり、日澄がその隙にグローブから飛ばしたワイヤーを水晶偽竜の身体へ搦めて動きを無理矢理鈍らせていく。
「ミスト様、今!」
「了解! ひっさつ――!」
手に掴んだトリヤデさんに魔力をこめると、ボッと激しく燃え上がった。
「ふぇにっくすふぁいなりてぃ!」
「トリヤデー!?」
ゴッと叩きつけられた拳(?)によって水晶偽竜が崩壊していく。
「なんじゃ…えらいことになっておるのぅ…わしの思ってたのと違うんじゃが……」
「観光ついでにちぃとばかり遊ぼうと思っとっただけじゃのに…じゃが、これも乗りかかった船よな」
そこへ『白蛇』神倉 五十琴姫と『黒蛇』物部 支佐手が更に攻撃をたたき込んでいく。
「琴、先に帰っといてええぞ。後はわしがやっとく」
「バカモノ! そなただけにしておけるか! わしも手伝うに決まっておろう!」
「ああもう、好きにしんさい。怪我ァしても知らんからの!」
「ふん! それはこっちの台詞じゃ! 怪我したら癒してやるから任せておれ! あんじょうやりんさいよ!」
「丹の女神に祈願い奉る……琴、今じゃ!」
「――世を照らす太陽の神よ…わしらの犯した罪、穢を祓い清め給え。銅鏡巫術奥伝『陽光』!」
真紅の沼に人型偽竜たちが足止めされた所へ、槍に込めて放たれたエネルギーが人型偽竜を貫いていく。
そうして破壊した水晶偽竜の上を飛び越えて、『噛みカワ★ママギノ』ミラーカ・マギノと『とっておきの弾丸』アウロラ・マギノのマギノ姉妹がさらなる群れへと飛び込んでいく。
「お姉ちゃんの威厳を見せてあげるわ! いくわよアウロラ!」
「はい! ――姉さんだけでなく私だって、やたらめったら力任せだけではありません!」
『転生ヴァンピレス』によって覚醒させた力をもって、赤き稲妻を暴れさせるミラーカ。
一方のアウロラもまた、手にした杖から同種の雷を発射。群がる水晶偽竜たちの出鼻をくじくインパクトを打ち込んでいく。
そんな姉妹を取り囲もうと立ち上がり、水晶の爪をブレード状に変形させて襲いかかる人型水晶偽竜たち。
どこからでもかかってきなさいとばかりに構えるマギノ姉妹を助けるべく、『麗金のエンフォーサー』ロスヴァイセとエステルが突入してきた。
(ラサでは大事になっていたのね。色宝と盗賊と、色宝を使う博士なる人物の思惑と……随分複雑な事情のようね。
ラサの芸術はエキゾチックで刺激的よ。錬金術師の戯れで失うのは惜しいわ)
ロスヴァイセは輝く剣に刻み込まれた芸術的な彫刻から力を引き出し、次々と水晶偽竜を切り倒す。一体とつばぜり合いになったが、輝きを増すことで無理矢理地面になぎ倒した。
「錬金術師の玩具程度に、負ける道理なし、ね」
「アサルトブーケ、ジェノサイドモード起動……!」
それを横目にエステルもまた変形したアサルトブーケから魔術光線を発射。
自ら突入するラインを確保すると、こんどは近接格闘形態をとって水晶偽竜へ殴りかかる。敵を中心に激しい電撃が走った。
(ラサも大変ですね。しかしドラゴン……記憶のない私でも今が歪なのだと理解します。ドラゴンは、操られて良いように使われる存在ではない。彼らは彼らの使命と心で動いているはずなのたから)
戦いが数で決まるなら、数を揃えた方が勝つ。
数が拮抗したのなら、勢いのある方が勝つ。
「色宝争奪戦も大詰め、ここに来てドラゴン襲来ですか。どのようにして再現したのか興味がありますが……それは他の話ですね?」
「はぁ……今回はあのバカ竜はいないのね。それなら、久しぶりに気楽にやらせてもらおうかしら」
「人手が必要と聞いて助っ人参上ってね! さて、今回はとにかく突っ込んで敵の足並みを乱せればいいんだね?」
「大規模な決戦ですね。大恩あるローレットの皆さんのために、私も最前線で戦いましょう!」
「ここがーふんばりどころーやなーとりあえずーぜんぶどかーんといっとこかー」
「目標……敵歩兵部隊の撃滅。水晶偽竜への道を開くよ
ウルリカ、『鳳凰』アニー・ルアン、『助っ人部員』相川 操、『恩に報いる為に』ノエミ・ルネ・ルサージュ、『山神様』山神・ゆたか、『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハートといった面々が凶と共に一斉に突入。
『BRAID・CROSS』から発生した光の刃が、すべてを焼き付くさんばかりの獰猛な炎が、更には跳び蹴りやシールドバッシュ、山の神ぱんちやマジカルアハトアハトが混じり合い、水晶偽竜兵たちをなぎ払っていく。
「もうじき、一層めを削り切れそうだね」
『言霊使い』ロゼット=テイは『混血蝕翼』をにょきっとさせ水晶偽竜へ牽制射撃を打ち込むと、凶の咆哮に感化されたかのように水晶偽竜たちへと飛び込んでいく。
まるで戦うために生まれた獣のように、もしくはキラーマシンのように正確に暴れ、敵兵の胸へとナイフを突き立てた。
(……こんなに、たくさんの兵士が……。こんなのが……街に攻めて来たりしたら……大変だよね。だから……ここで止めないと……!)
そこへ加わる『内気な探究心』アム・ハーバーランド(p3p009564)。
調達してきた強力な武器をよいしょと担ぎ上げ、ロゼットと格闘中の水晶偽竜兵へとたたき込んでいく。
上手に隙を突いた形になったのか、相手の腕を無理矢理に破し切り落とした。
反射的に払われたブレードで頬を切るが、アムはぐっと痛みをこらえた。
「前線に立つ以上……簡単に膝をつくわけには、いかない……!」
「ふうむ、もう一息かのう」
そこへ現れる『夢想の魔王』ニル=ヴァレンタイン。
「では妾は、魔王らしく正面から参ろうかのう?
お主らに恨みは無いのじゃが……まぁ、この世界ではイレギュラーズゆえ、のう?」
『魔導狙撃銃BH壱式』を取り出し、零距離射撃で次々に水晶偽竜兵を破壊していく。
敵集団のただなかにあるというのに踊るように四方八方へ射撃し、かつ敵の斬撃を紙一重のところで回避していた。
「連中の層は大きく分けて二つ。歩兵で構成される第一層。中型の偽竜で構成される第二層じゃ」
「それを食い破ったら私らの勝ちですねアネキ!」
『大冒険に出発進行!』ピウス・ロセウス・クニークルスがビッと親指を立てて笑うと、立ち塞がろうとした水晶偽竜兵の腰に掴みかかり豪快なバックドロップを繰り出した。
そこへ残りの水晶偽竜兵たちが斬りかかるが、ニルをはじめ先輩ローレット・イレギュラーズたちが割り込んでガード。
更にヌッと姿を見せたハウザーが水晶偽竜にアイアンクローをかけながら振り返った。
「おう、骨のあるウサギじゃねえか。ほれぶちかませ!」
ぽいっと放り投げてきた水晶偽竜兵のボディ。
ピウスは一瞬慌てたもののすぐに目を光らせ、カウンターハイキックによって水晶偽竜兵を粉砕した。
「さんきゅーですアニキ!」
凶と連携したローレット・イレギュラーズ斬り込み部隊。
彼らの勢いのいい活躍によって水晶偽竜軍前衛部隊第一層を食い破り、その後ろに控えていた中型の水晶偽竜たちへと挑みかかることになった。
(あははっ!可哀想なナナ!
『自分でも何か出来るなら…』と来たのに
”1番出来る事”を受け入れる事が出来なかった貴女!
えぇ! 敵にはこんな貴女を此処へ連れ出した報いを受けさせましょう!)
全長3mほどの標準的なドラゴンフォルムをした中型水晶偽竜へ向け、『自分を失った精霊種』ナナが猛烈な斬撃を浴びせていく。
「えぇ、えぇ! 当たれば問題ないのよ! 私の攻撃は…かすり傷でも致命傷となるでしょう?」
そこへ『頑張るお姉ちゃん』アイリス・ラピスラズリが参戦。
「お姉ちゃんも元は傭兵だったのよ。
そんなに大規模な仕事をしていた訳じゃないけれど……。
こういうの、ちょっと思い出して、暴れたくなっちゃうの。
ふふっ。はしたないかも知れないけど、気にしないでね?」
ついついテンションの上がってしまった豪快な連続斬撃によって水晶偽竜の鱗を破壊していった。
「お姉ちゃんの本気、いっぱい見て貰っちゃうわ!
ほらほら、ぼーっとしてると、吹っ飛ばしちゃうわよぉ!!」
そこへ、腕まくりをして現れる『白髪の老婆』寿 鶴。
「こっちに連れてこられてから何かと戦うっちゅうのは初めてやで腕がなるわ。
いや、あっちで戦っとった訳やないけど」
削った鱗の穴を突くようにして突撃。反撃にと放たれた雷のブレスを盾でしのぐと、至近距離まで迫って剣をずぶりと突き刺した。
「なんや。勢いはええけど大した相手やないな。ちょっと耐えときゃ何とかなるわ」
トドメさしとき、と手招きされたのは『マグロ漁』桐野 浩美。
「狩りの時間っす。狩られる前に狩ってやるっすよ!」
水晶偽竜めがけて助走をつけて跳躍すると、素早く離れた鶴と入れ替わるように跳び蹴りをたたき込んだ。それも、突き刺した剣を更に深く打ち込むように柄頭を蹴りつけて。
「月の光は心持たぬ者にも効くと身をもって知るがいいっす」
それによって崩壊した水晶偽竜。砕けてキラキラと光る水晶片のなかをスライディングして、浩美はぴっと指を立てた。
「まずは一体」
予告である。
なぜならば。
「はっはー!あっちもこっちも大盛り上がりだなあ! ってーわけで俺も混ぜろよ!」
バングがサングラスをきらりと反射させながら陣後方より急速に接近。
土埃をあげるほどの勢いで地を踏み跳躍すると、その巨漢をフルに活かしたシンプルかベストのパンチをたたき込んだ。
パンチとは主に拳を叩きつけることを指すが、広義には圧迫ないし貫通し穴を開けることをさす。
限界までダメージを蓄積した水晶偽竜の頭部を上から打ち付けるその動きは、今まさにその固いカラダを『パンチ』した。
頭部を破壊され、それでも無理矢理身体を動かそうとする水晶偽竜。
しかしそれがかなうことはなかった。
『嘘に塗れた花』ライアー=L=フィサリスが片目を覆った包帯に指を引っかけた次の瞬間――。
「まあ、気概だけは十分ですこと」
突如として見えない呪力が水晶偽竜の肉体に三つの穴を開けた。
「諦めて、三途の川をお渡りなさいな」
そう語った時には既に、包帯はきっぱりと片目を隠している。
もうこれ以上相手をする必要も無い、とでもいうように水晶偽竜の横をゆうゆうと歩いて通り過ぎる。
と同時に、地面から伸びた無数のツタが水晶偽竜へ絡みつき、そのボディをへし折っていった。
(よし、これが僕の初仕事だ。敵に真正面から突っ込んで、出来るだけ長く戦って……出来れば生き残る。……徴兵か、志願か。その違いかな。ハハ)
『期待の新人』アローズ・タルボットはごく一般的な剣を抜き、取り立てて特別でもない盾を握った。
これが彼の始まりのスタイル。北部戦線に徴兵され兵士となった……いや、兵士だった彼による再出発のスタイルである。
「ようしやるぞ! 突撃! 突撃ーっ!
皆と一緒に突撃して、目の前の敵と戦うぞ!」
対するは宙を泳ぐ大蛇のような水晶偽竜。アローズの姿をみとめると嵐と氷のブレスを放った。
「今までも生き残ってきたんだ! 今回だって死なない! 僕は死なないぞ! 死んでたまるかーっ!」
盾をかざしこらえるアローズ――を上手に壁にして、『ぬくぬくしてたい』リュリューが魔法の杖をアローズの肩越しに突きつけた。
「わあ~~! たくさん、いっぱい来る! すごい!
って言ってる場合じゃないね! よし、やるぞー!!」
リュリューは杖を通してこの世界で順応した魔術を行使。水晶偽竜を中心に発生した毒の霧が相手の身体を蝕み地面へと墜落させる。
が、それを察知した他の水晶偽竜たちが殺到。アローズとリュリューめがけて雹のブレスを集中させてきた。
「あーもう! しんどいー! けどっ、踏ん張らないとねっ!」
歯を食いしばってこらえるリュリュー。そこへアムル・ウル・アラムと『ヒーロー見習い』羽田 アオイが到着。二人と入れ替わるようにして反撃に出た。
(色宝……願い……。
願うことが許されるなら、やり直したいこと、取り戻したいこと…ある、けれど。
僕がそれを願うのは、公平ではないと…思う…)
すこしだけ悲しい目をして、アムルは空中の水晶偽竜へと飛びつきナイフを突き立てると、相手の身体を蹴った第二のジャンプで別の個体の首を切りつけた。
吹き上がる鮮血。アオイはその中を軍馬にのって駆け抜けると、馬上より中華槍を振り回した。
「決戦だね! 初めてできんちょーするケド、戦うからには絶対に勝つ! 正義の寄る辺は勝利にアリ、ってね! みんな、いっくぞ~!」
水晶偽竜を打ち払い、突撃の際にでたけが人を庇うように馬をターンさせる。
「まだまだ行けるよね、皆! ヒーローになるのはボクたちだ!」
「すごい竜の数……でも負ける訳には行かないもんね!
気迫で負けてたらダメだよね、よし頑張ろう!」
仲間の勢いに押される形で自らも水晶偽竜の群れへ飛び込んでいく『ちびっ子鬼門守』鬼ヶ城 金剛。
「鬼だって、竜に負けないんだ! そのことを証明するよ!」
走る勢いをそのままに、剣を大上段に振り上げて跳躍。
噛みつこうと迫る水晶偽竜の頭部を剣で強烈に打撃……否、その勢いのまま強引に切断していった。
そこへさらなる攻撃が迫るが、金剛は率先して前へ出ることで味方の道を切り開いた。
守られたことで安全に水晶偽竜への接近を果たした『ヴァンガード』グリゼルダ=ロッジェロ。
(ふむ、戦場の匂い…心地良いな。此度の戦も、心ゆくまで楽しみたいものだ)
腰に下げた鞘からすらりと抜刀すると、仲間がたたき落とした水晶偽竜の頭を踏み台にして更に跳躍自らの身体をロールさせることで回転のこぎりのごとく水晶偽竜のボディを切り裂いていく。
鱗を打ち砕き肉を裂き、吹き上げる黒い血を背にしながらスタンと着地したグリゼルダ。
「勢いには勢いだ。このまま敵の出鼻をくじく」
『声なき傭兵』白鷺 奏(p3p008740)はその言葉に応じて『ガンブレード・アイギス』を構え、『ヴァリアントレイジ』を発動。迫る水晶偽竜たちの攻撃に対して防御を固める。
敵の攻撃は激しかったが、奏は非常に我慢強くダメージをこらえ、仲間達が攻撃するための隙をこじあけていく。
そしてここぞというタイミングで『リジェネレート・カートリッジ』を使用。敵に魔法弾を撃ち込んでいった。
「味方が…哀れな怪物を救ってくれると信じて、私は味方を守る盾になりましょう!
私の愛しい影……一緒に来てくれますか?」
そこへ加わる第二の盾こと『愛しき影と共に』カスミ・スリーシックス(p3p008029)。
影に宿った獣へ優しく微笑むと、カスミは仲間の攻撃によって崩れかけた水晶偽竜めがけて豪快に剣を叩きつけた。
「継ぎ接ぎの怪物! 幾ら数が勝ろうとも、弱い貴方達では勝ち目などありませんよ!」
既にダメージが蓄積していたのだろう。固い鱗が砕け、その勢いのまま水晶偽竜の肉体を切り裂いていく。
(実はちょっとだけ怖い……。
けれど、此処には敵よりも強い攻撃を繰り出せる味方が居ます。
後ろには致命傷手前の傷すら癒やしてくれる味方が居ます。
私はその人達を信じれる。その人達の力に、少しでもなりたいです。
だから敵がどれだけ私を傷つけようが、大丈夫です…!)
巨大な甲羅を背負った亀形水晶偽竜が甲羅より大砲めいた器官をはやし生体爆弾を発射。
酸による爆発が次々とおこり、第一層の食い破りを成功させた第一斬込部隊に大きな被害を出していた。
そんな彼らを『サンクチュアリ』の聖域化術式によって守りつつ、『特異運命座標』ルリ・メイフィールドは救護班たちに任せて前線へと進行。
「もう一押しで敵の二層目を引っ張り出せます。もうひとがんばりなのです」
ぐっと拳を握り込むと、立ち塞がる人型水晶偽竜を殴り倒し、偶然マッチアップしたローレット・イレギュラーズたち共に進軍を開始した。
(お腹空いたなぁ……一口食べてみたいけど今のわたしじゃまだ竜には届かない。
だけど貴方達なら、わたしの牙でも噛み砕けるよ? だから貴方の■■を頂戴?)
その中で前衛をつとめていたのが『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・Dであった。
獰猛な獣のように襲いかかり、倒した水晶偽竜へとのしかかる。
「敵陣も乱れたかなぁ。ハウザーさん、もう食事してきても良いよね?」
「まだだ、後で肉でもなんでも奢ってやるからもう一仕事してこい!」
「わぁい」
ハウザーに言われ、Я・E・Dはさらなる敵へと襲いかかる。
(前回ご一緒したミルヴィさんやエルスさんのほうも心配ですが、それよりもこの数の軍勢を止めないと……)
「突撃は勢いが大事ニャ。敵とのぶつかり合いはびびった方が負けニャ。盾を前面に押し出し、全力でぶつかって行くニャ」
そこへ加勢に入る『レディ・ガーネット』海紅玉 彼方と『放浪の騎士』ニャンジェリカ・ステュアート。
彼方は『ロベリアの花』を先んじて打ち込むことで亀形水晶偽竜の砲台を攻撃。呪力によって砲撃がやんだところへ、ニャンジェリカが勢いよく剣で斬りかかっていく。
水晶偽竜が抵抗のためにニャンジェリカを振り回し地面に叩きつけるが、そうしてできた隙こそが命取り。
混じっていたアヴニール・ベニ・アルシュの射撃によって水晶偽竜の甲羅が破壊され、さらなる仲間の集中砲火によって内部に蓄積されていた酸が爆発し周囲に水晶の鱗を散らかしていった。
アヴニールはその様子に頷くと、超視力・聴力・嗅覚で周囲の状態を確かめながら進軍を継続。あとに続く仲間達の支援になるように援護射撃によって道を開いた。
そこへ立ち塞がる三体の中型水晶偽竜。
背から猛毒の花を咲かせたカエル型、炎をはき宙を舞う翼竜型、そして先ほど倒したのと同型の亀形水晶偽竜である。
「正直何が何だか分からないけれど、敵を殴って倒せば良いんでしょ!
って本当は大丈夫かなーとか思っちゃったりもするけど!
まぁ他のイレギュラーズもいるし、きっと大丈夫よね!」
『特異運命座標』セチア・リリー・スノードロップはそんな敵たちにも怯むこと無く真正面から突撃。鞭をジュバッと打ち鳴らすと、音を越える速度でカエル型水晶偽竜の放つ毒ツボミを次々に打ち払い、鋭い踏み込みによって相手の顔面を切りつける。
そこへさらなる追撃をかける『お前も愛を知らせてやろうか!』ナズナサス。
愛(物理)の力で真っ先にカエル型水晶偽竜を殴りつける。
「水晶偽竜軍…なんて哀れな存在なんでしょう。
きっと、誰かの愛があったからこそ生まれたに違いないですが……。
えぇ、えぇ…せめて愛を持って貴方方を倒させて貰います……!」
攻撃が集中した、その時。
「離れて」
『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流の声と共に荒ぶる桜吹雪がカエル型水晶偽竜をっつうみこみ、周囲を固めようと集まってきた人型水晶偽竜兵たちをも吹き飛ばしていった。
「すごい勢いで突っ込んでくる敵軍と真っ向勝負なんだよね、それならば僕も精一杯やらせてもらおう。
何事も最初が肝心、正面からしっかり敵を抑え込めれば第二部隊の人達も十全に動けるだろうし、水晶偽竜との戦いも優位に立てるだろうから」
さらに『アンラッキーハッピーガール』リズ・リィリーが駆けつけ、反撃に出る翼竜型と亀形へと挑みかかった。
「らぶりー ちぇんじー らずべりー
すちーるはーと あんぶれいくっ
不運に負けずにキラメキシャイニー!
魔法少女(強調)ラブリー☆ラズベリー
ピカッと参上! ヨロシクねっ♪」
変身バンクつきでマジカルステッキならぬマジカルダガーを構えると、天に向けて振り上げた。
「アンラック☆デアボリカ!」
契約したゴツゴウゴブリンや服だけ溶かす触手やスライム先生たちが、今からまさに砲撃を行おうとしていた亀形水晶偽竜へと殺到。追い払おうと大砲を発射するも、詰まったスライムのせいでたちまち自爆した。
「フッ、私の不幸に耐えられなかったようね」
「いいのかなそれで」
「残るは翼竜型か。まわりの連中が邪魔かな」
『青混じる氷狼』グレイル・テンペスタは炎のブレスをぶつけてくる翼竜型水晶偽竜を見上げると、投影魔術を行使した。
犬型の手影絵を組むと、数十メートルをこえた距離で巨大な狼が出現。空中の翼竜型へと食らいついた。
「…色宝による騒動があることは…前に聞いていたけど…ここまでの規模の戦いになるとはね…
…ここで向こうに余裕を持たせると…ラサが大変なことになるかもしれない…この戦いで最後にしないと…こっちも持たないかもしれないからね…
…対多数と長期戦は…少し自信があるんだよね…後ろは任せてよ…」
墜落した翼竜型へと攻撃を仕掛ける『貴族騎士』シューヴェルト・シェヴァリエ。
鋭い踏み込みから厄刀『魔応』を抜くと、貴族式格闘術『蒼脚』によって距離を一気に埋めて斬り付ける。
「強敵喰らいか。やってやろうじゃないか」
翼竜型は逃れようと翼を暴れさせ、自らを中心に炎をまき散らす。
シューヴェルトは直撃をさけようと飛び退き、入れ替わるように『特異運命座標』ゲンゾウが火炎瓶を投げ込んでいく。
「ウィ~っく…っとおうおう何だ竜っぽいのがいっぱいいるじゃねぇか!
ちっと飲みすぎたかぁ? ピンクのゾウじゃなくて竜が。
あんだけの竜を倒しゃボーナスもたんまり出るってもんだよなぁ?
倒しまくってやるぜぇ! ヒャッハー!」
「そうです! 富! 栄誉! あとごちそうです!」
彼らを焚き付けているのは『木漏れ日の魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト。
第一層と激しくぶつかり戦力が大きく低下したた、残った戦力を集め戦歌をうたうことで勢いをつけていた。
「皆さんは強い! けど油断せず周りをよく見て戦ってください。共に戦って、無事に帰りましょう!」
もう一押しの場面で勢いを取り戻した斬込隊はついに最後の一撃へと繋がる。
つまりは、『放浪の剣士?』蓮杖 綾姫の一太刀である。
「魔剣――解放! 咲き誇りなさい、黒蓮!」
鋼華機剣『黒蓮』のリミッターを解除し、天空ごと切り裂かんばかりの斬撃で翼竜型の翼を切断。
今度こそ転落した翼竜型めがけ距離を詰め、剣に黒い輝きを溢れさせた。
「群れる剣塵よ、貪り喰らえ!」
綾姫の剣が翼竜型水晶偽竜の身体を真っ二つに切り裂いていく。
●レナヴィスカ&側面強襲大隊
斬込大隊の活躍によって水晶偽竜兵の最前線が食い破られ、それを押し返すように後衛部隊が前進を開始。
ファルベライズ遺跡群のなかでも特に建造物の多いエリアに混じることで直接的な襲撃をさけていた彼らだが、側面からレナヴィスカ及びローレット・イレギュラーズ側面強襲大隊が密かに忍び寄っていたことに気付かなかった。
「大群相手に個人で奇襲をかけたところで初撃以降は囲まれてボコられるのがオチだぜ。
そういうヒロイックなのも嫌いじゃないが自分でやろうとは思わねえな。
纏まって忍び寄る奴らがいるなら、そりゃ合理的だ」
剣と盾でしっかりと装備を固めた『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)が、物陰から水晶偽竜兵たちの様子をのぞき見た。
おそらく最前衛の部隊に後から加えることで高い戦術的効果のある兵達なのだろう。火力が高く脆い。
「……はい、ラサの皆様よく聞いて。
魔王様の奇襲講座を始めます。よく聞かないと死にます。
巨大な部隊は超怖いけど、全然怖くない。
何を言ってるか分からないと思うが。
重装で突撃してくるとか超怖い、でもこーいう森をスルーする
雑魚は全然怖くない。調子よく凸ってますが、雑兵以下。
半端な練度で大隊率いるとか、私も前世でえらい目にあいました」
そんな中で、『廻世紅皇・唯我の一刀』皇 刺幻は影から弓を構えるレナヴィスカの傭兵達へスッと手を上げた。
「はい、撃って」
一斉射撃――の中でも先陣を切ったのが『強欲の慈雨・愛に燃ゆる水龍』ソーマ=アステリカ=リヴァイアサンと『特異運命座標』月待 真那。
建物の上から身を乗り出し、味方と共に射撃を開始した。
「……さぁ、天命正統は我らにあり、なのじゃ!!!!」
「CQBはあんま得意じゃないんやけどな…っ!!!」
先制攻撃として真那が『マーナガルム・ロアー』重機関銃モードで進行中の水晶偽竜兵を斜め後方より射撃。
防御面で弱い水晶偽竜兵たちが次々と倒れる中、このままではやられ損だとして水晶の弓矢による反撃を仕掛けてきた。
「さて、久しぶりに神様するかのぅ!」
そんな攻撃を治癒能力によってカバーするリヴァイアサン。ブライアンが物陰から飛び出し奇襲を開始し、ダメージを負った敵を真那がすかさずハンドガンで撃ち殺す。
そして刺幻が――。
「【魔砲】認証、詠唱受諾。『婆娑羅』よ、蔓延する偽りを。
魔王の下に討滅せよ。【魔刀・婆娑羅】、放て!!」
砲撃によって開かれた道へ飛び込む『鉄華繚乱の風切り刃』メテオラ・ビバーチェ・ルナライト。
(ラサの者達を死なせる訳にはいかねえ、俺が守る。
あの赤髪クズは最悪……くそ、まだくたばらせる訳には!!)
本気のオーラを剣にのせ、水晶偽竜を切り倒す。
「かかってこいや……俺が、死神殺しのメテオラだ!!!!」
水晶偽竜兵の前衛と後衛が分離したことで、側面攻撃大隊の作戦は想定以上に成果を出した。
「すっごいぞ! 竜 !かっこよいぞ! 竜! あんなのと戦える、すこし、わくわく、するね」
早速ぶつかりはじめた軍を観察し、『新たな可能性』カルウェット コーラスと『木漏れ日の先』ヴァイオレット・ホロウウォーカーは独自に孤立した部隊への奇襲を仕掛けることにした。
竜と聞けば、絶望の青を阻んだリヴァイアサンとの私闘が思い出されるだろう。一国の全勢力とローレットの全勢力以上をぶつけ更には何人もの犠牲と奇跡によってようやく『退いて貰う』ことに成功したあの戦いである。
規模もかかったものも違いすぎるので比較するのは適切ではないが……。
「ここを食い止めねば、ラサ存亡の危機も現実のものとなりましょう。
彼らを守りますよ、カルウェット様。これは放置して良い事態ではありますまい。背中は、任せました」
「うん、わかってる。危険なの。だから、真剣勝負。守る、しよう。ヴァイオレット」
カルウェットは建物の影から飛び出すと、こちらに背を向けていた水晶偽竜兵めがけてまずは突進。注意を引きつけたところでヴァイオレットが『夢眼・黄金の奈落』を発動。
開いた第三の目が鮮烈なる金色の光を幻視させ、錯覚した衝撃が水晶偽竜兵を吹き飛ばしていく。
「ふおおおおお!? 怖い敵がいちにい……たくさん!
で、でも、俺だってつよーいオオカミなんだぞ、負けないんだぞ!
境、後ろとかは頼んだぞー!!」
「まったく、似せるにしてももう少しマシにならなかったのか。
こんな分かりやすい不幸はゴメンなんだ―――せいぜいすぐにくたばってくれよ。手早く頼むぜ、ロス」
そこへ加勢に入ったのは『団体の一匹狼』ケル=ルベロ=ロスと視万斗 境。
境はバイザーを外すと、別部隊に集中している水晶偽竜兵を横から襲撃し始めた。
その連携はまさに狼のそれ。二人合わせて巨大な狼のように、水晶偽竜兵を狩っていく。
数発入った所で飛び込み、大暴れするケル。
「アンタら不幸すぎだ。ここで清算してやるよ」
「泣く子も黙るこわーいオオカミだぞ! アオーーーーン!!」
鉄は熱いうちにうてという。
孤立した部隊を潰すには今が好機とみたのか、『一歩ずつ』ザハール・ウィッカ・イグニスフィアが槍を回転させながら敵集団へと突撃。
「いい具合に暴れるぜ! 正面突破――じゃなかったけ? 正々堂々側面突破ァ!」
敵陣の中央に割り込んで槍をぶん回すザハール。
『特異運命座標』白ノ雪 此花はその背後を狙う敵を鋭く斬り捨て、フウとため息をついた。
「右側から叩こうと言いましたのに」
「右の右は左だろ?」
「裏の裏みたいに言わないでください。……なんだか介護をしているような気持ちになってきましたよ」
やれやれと言いながら、腕を剣に変えて斬りかかってくる水晶偽竜兵の攻撃を剣で打ち払うことで防御する。
「またこの面子なの」
「大丈夫、いつもの事ですよ」
『グレイガーデン』カティア・ルーデ・サスティンと『蛇霊暴食』セレステ・グラス・オルテンシアが追加参戦。
セレステがクイッと指をあげると太古より染みついた怨霊や呪力が顕現し、ねじれて矢へと変化していく。
「強そうな個体やリーダー格にぶちこむのがよろしいでしょうねえ」
「好きにしていいよ。僕は様子を見て対象指定したり、進行方向を指示したり、回復したりするから。
くれぐれも! 一人ですっとんで回復範囲から外れないように!」
カティアは翼を広げて魔力を受けると、羽ばたきによって友軍への治癒を開始。
と同時にセレステの矢が水晶偽竜兵たちへと突き刺さっていく。
「うん、わかってる。そろそろ認める。
俺の特技変装と言うより奇襲だよね。毎回やってる気がするもんねこれ。
ま、お金くれるんなら死なない程度に頑張ろっか」
「ふむふむ。水晶の竜兵……兵器としては中々魅力的のようですが、これ以上好きにはさせないのです。
レガシーゼロとしては思うところはありますがここから先は通行止め、なのです」
一方こちらは『影殺し』霧裂 魁真と『鋼鉄の冒険者』ココア・テッジ。
ドーム型の小さな遺跡内に身を隠して敵の隙をうかがっていた。
気配と足音を消して幽霊のように忍び寄り、そしていつのまにか魁真は相手の背後に立っていた。
「俺死にたくないからさぁ…! お前がッ! 死ねぇっ!!」
一瞬にして首をはねる。と同時にココアが遺跡内から銃口をだし、存在に気付いた水晶偽竜兵たちの脳天を狙い撃ちにしていく。
「全く、クリスタルの無駄遣いなのですね」
頭が砕け次々と倒れる水晶偽竜兵たち。
『死と共に歩く者』辰巳・紫苑と『イエスマスター』リンドウはその好機を決して逃さなかった。
「はぁ…別に私、安っぽい正義感とか無いのだけど。
…死人とか継ぎ接ぎの怪物って美味しそうには感じないのよね…」
「マスターが美味しそうじゃないと言うのは、珍しいですね。
…それでも、貴女は食べようと、暴食を止める事ないけれど」
「まぁ、暇潰しとかおつまみには丁度いいのかもね。ねぇ、リンドウ?」
「イエス、マスター。人形は命令を受託しました」
柱の陰に身を潜めていた紫苑はここぞとばかりに身を乗り出し『ブラックドッグ』を発動。
邪精が水晶偽竜兵のひとりへ噛みついたところで。残る兵達が彼女の存在に気付き反撃を開始――した所で側面へ回り込んでいたリンドウが行動を開始した。
「あら? 敵が私1人だけと思って? …こっちには視力の良い使用人がいるのよ?」
「…人形が、己のマスターと敵を見間違うと思ったのですか?」
二丁拳銃を抜いて水晶偽竜兵たちを撃ちまくるリンドウ。
弾幕に晒したところで今度は『禁忌の双盾』阿瀬比 瑠璃と『禁忌の双盾』阿瀬比 彗星のコンビが突撃した。
「はぁ~…何が水晶偽竜よ。水晶とか宝石はその煌きだけで価値があるというのに。下手に色々つけたら余計でしょう。
さて、行きましょう彗星。私達が生きる世界に”アレら”は必要ないわ」
「そうだね、瑠璃。彼らがどんな理由で生まれたのか、僕達は知らないけれど…。
僕達が生きる世界が、あんな龍とか継ぎ接ぎが跋扈する世界なんて嫌だ。
…所で、綺麗だからって死体を狙っちゃ駄目だからね? 瑠璃」
二人の作戦は実にシンプルだ。まず瑠璃が守りを固めて彗星を庇いつつ。彗星は敵中へと浸透、兵達の注意を集める。連係プレイにおいて有効な戦術の一つである。
「醜悪な怪物、こっちに来い! 僕がいる限り、僕の姫は傷つけさせない。絶対に守ってみせる!」
「あらあら? 私がいる限り、私の王子様を倒させると思わないでね?」
水晶偽竜兵たちの攻撃が集中するも、二人はそれをギリギリまで耐えてさらなる増援を待った。
そこへ駆けつけた増援が『腹黒フォックス』久世・清音、『妹を救えなかった』ジュディス・バルヒェット、『新たな可能性』アンケル・ユルドゥズ、『星影の双子』隠岐奈 夜顔の四人である。
「木に隠れるも柱に隠れるもおんなじことやよって……」
古くは何かの神殿だったのだろうか。太い石の柱に身を隠していた清音は弓を構えると水晶偽竜兵のひとりを狙った。
「――そやけどあんまり派手なことはしたくないなぁ」
目を細め、矢を放つ。
放たれた矢は狐の幻影を一瞬だけ纏うと水晶偽竜兵の胸を貫き更に宙を奔って別の兵士数人の身体を貫いていった。
好機。ジュディスはアンケルと夜顔を自らの強化効果範囲内に収めたまま走り出した。
(……戦う理由など、もう考えたくはない。
それを考えてしまったら、私はもう戦えないだろうから……だから、例え現実逃避と分かっていても、私は何も考えずに戦う)
走りながら簡単な魔術機構の施されたライフルを構え、威嚇のために乱射しながら距離を詰めていく。
倒す必要も当てる必要も無い。すべては味方の攻撃を通すため。
(……解ってんだよ、オレは本当だったらローレットに討伐が依頼される側だった。
こっち側に回ってんのも、ポーカーで運命的なカードを引いた位の奇跡だ
大した理念もプライドもねぇ、住む場所と着る服と冷めてないメシが食える、それだけでオレはここに居る。
でもそれでいいんだろ?それだって、世界を救うとか言う何かが溜まるんだろ?
……それで充分じゃねぇか)
強化効果を、もとい威嚇射撃による隙を受け、アンケルは被っていた砂漠迷彩を払って飛び出した。黒い短剣が交差し、水晶偽竜兵の首をはねていく。
「水晶偽竜兵……1つだけ言う。お前らが生きて良い世界じゃないんだよ」
同じように身を隠していた夜顔もまた姿を現し、水平に構えた拳銃を連射。
狙い違わず水晶偽竜兵三体の頭を次々に打ち抜いていった。
「誰かが望んだとしても……生き返ってくるなよ」
「お、動いてく動いてく。敵さんも古代遺跡のオブジェになるのはお嫌らしいね」
手のひらを額にかざすようにして高所より観察していた耀 英司。立っていた柱から宙返りをかけてスタンと着地すると、フルフェイスの仮面の下で目を光らせた。
「錬金術だかでビルドされた連中だけに、知らないのかねぇ。……こういうとき、怖じ気づいたら死ぬんだよ」
「さぁ、狩りの時間だ」
伏せた姿勢でライフルを構えていた『砂識る山人』幌向・呼人が、アイアンサイト越しに狙いをつけた。動きの中心。つまりは部隊の指揮官にあたる水晶偽竜兵をだ。
英司が観察し見つけ出した固体である。
「それにしても奴らは殺しても可食部が少なそうだ」
少し残念そうにつぶやき、そして冷静に引き金を引いた。
音より早く、爆ぜる頭。
指揮官が破壊されたことで指揮下にあった部隊は混乱を始める。
『Sweeper』マルカと『ここが安地』観月 四音はここぞとばかりに混乱した敵部隊へ射撃を開始した。
「ういうい、掃除のお仕事っスね。こういうの慣れてるんでお任せっス」
マルカは高性能アサルトライフルによる美しいオーケストラ演奏のごときバースト射撃で、やぶれかぶれに迫ろうとする水晶偽竜兵たちの脚を打っていく。更にスモークグレネードやEMP発生器を駆使して彼らの動きを鈍らせる。
「てか、EMPの効くドラゴンってなんすかね。ドローンじゃあるまいし」
「深く気にしてもしょうが無いのでは? これが混沌ルールってやつなんでしょう」
四音は杖の先端に魔法のボールを作り出すと、そーれと言って敵めがけてぶん投げた。
(うわぁ……色んな意味ですっごい大変な事ですねこれは……っ。
見てる分には綺麗な水晶の竜……持ち帰れたら大金で売れそうとか考えてないですよ?
近付かないで済めば良いんですけどっ)
「イレギュラーズには故郷が世話になった。
受けた恩は返さねばならぬ、喜んで力添えさせて頂こう。
某も未だ修行中の身、一人では大勢に影響は及ぼすことは叶わぬでしょう。
しかし、僅かでも傷つく者を減らせるのであればそれで構いませぬ」
こうして足止めした兵達に攻撃を仕掛けるのが壬生 京次郎たちの役目である。
目を閉じたまま急接近をかけ、ジャストのタイミングで抜刀。敵の反撃より先んじて腕を切り落としていく。
『蠱惑可憐な捕食者』リーラ ツヴァング、『都市伝説“プリズム男”』アイザックはそこへ乗じる係だ。
「さてさてさーてぇ? お仕事と参りましょうかぁ?
リーラの放った影色の糸が絡みつき、打ち込まれた蜘蛛脚が水晶偽竜兵のボディを貫いていく。
いつ打ち込まれたのかも分からないと言った様子で反撃の手を伸ばすも、リーラはサッと退いて笑うばかり。
「フヒヒ、アタシの姿、捉えられますかぁ? 無理ですよねぇ?」
「それに、よそ見は命取りだと知るべきだね」
タイミングを待っていたアイザックが頭のキューブからプリズムを放って水晶偽竜兵を焼き、更にフィンガースナップで呼び出した無数のプリズムキューブを発射して敵を穴あきチーズに変えていった。
「もう一押しよ、援護して」
『特異運命座標』ヴィエラ・オルスタンツが剣をとって走り出し、『特異運命座標』ジョシュア・セス・セルウィンはリボルバー拳銃を構えて頷いた。
「一人でも力が欲しい時だって聞いたわ、私で良ければ力になる。
有利な状況を作り上げる為にも、鎧袖一触の気合を込めて行くわよ!」
踊るように飛びかかるオルスタンツの斬撃が、混乱している水晶偽竜兵の頭を破壊。
横から掴みかかろうとする大柄な水晶偽竜兵があったが、ジョシュアの射撃によって大きくよろめいた。
いや、それだけではない。
深く集中したジョシュアはラスト一発の弾丸を水晶偽竜兵の脳天を貫く形で撃ち込んだ。
おおきくぐらつき、崩れ落ちる水晶偽竜兵。
一方、ブラム・ヴィンセントはなんとか側面攻撃を逃れようと動く別部隊を押さえ込むために動いていた。
「色宝ねえ。願って…とんでもない願いが叶ったら、逆に怖くないか?
追加料金とか言われても払えるわけないし」
ある意味で自分の身にも起きたようなことを考えるブラム。
大砲を備えた高火力な水晶偽竜兵が次々と砲撃を仕掛ける中、最大展開した特殊装甲でゆっくりと前進していく。
『ローゼニアの騎士』イルリカ・アルマ・ローゼニアと『夜に這う』久遠・N・鶫はそんな彼を盾にしつつ敵部隊へと攻撃。
「安全第一でいこう」
「気合いを入れて、ね」
幻影を使って敵の不意をついたイルリカは瞬間的にリミッターを解除。強烈な打撃によって水晶偽竜兵を大砲ごと破壊。
更に鶫は特殊なリボルバー拳銃でもって彼らのコアにあたる部分を的確に破壊していった。
コア。ここまで『脳天を破壊』や『首を落とす』といった方法で破壊してきた水晶偽竜兵たちだが彼らも色宝から作り出されたいわば土人形。水晶の装甲や高い火力を持とうともそれは変わらない。そして――。
「弱点もまた、同じです」
『正剣』セレーネ=フォン=シルヴァラントはあえて仲間達の攻撃に混じる形で水晶偽竜兵へと距離を詰めると、敵の切り払いをくぐり抜けるようにしてこちらの斬撃を打ち込んだ。
「敵があちらに気を取られている今が好機。勢いのままに敵の側面を叩くだけでも相手は混乱しましょう。そしてその隙を、的確に突くのです」
背後をとり、そして頭部へと剣を打ち込む。
パキンという音が内部で聞こえ、水晶偽竜兵はその場に崩れ落ちた。
なるほどね、と頷く『陽の宝物』星影 昼顔。
(生きている誰かを死なせる事。
絆を断ち切らせる事を、僕は許す訳にはいかない。
『昼顔』の花言葉に願いを込めてくれた母さんの為にも……)
スキャンした敵の弱点。それは錬金生物『ホルスの子供達』同様、体内のコアとして存在している色宝を破壊することで死滅するというものだった。
個体ごとに異なるその位置を把握するのは難しいが、同系統の敵にアタリをつけることはできる。
「風よ、吹いて! 決戦に挑む皆に力を貸して!」
『黎明恵風』の力を借り、仲間達の追い風となる昼顔。
『黒狐はただ住まう』生方・創と『金色の煙霞』アウレウスはここぞとばかりに飛び込み、報告されたコアの位置を的確に抜いていった。
「竜種……いや、『竜もどき』か。
悪趣味だねぇ。芸術性の欠片もあったもんじゃない。かと言って真正面からぶつかれるほど僕は強くないし。
ま、かき回せるだけかき回してやろうかな」
敵の間を駆け抜け、コア部分を最小限に破壊していく創。
その一方で、アウレウスは弓矢で一体一体のコアを的確に打ち抜いていく。
「偽物とはいえ竜種とご対面する日が来るとは。
いやーイレギュラーズこえーっすわー。
ふぅ。ともあれ、奇襲攻撃とあらば狙撃手にお任せっすよ!」
何発かの矢を打ち込んだところで、目を細める。
そしていっぺんに数本の矢をとると、それを高速で連射した。
矢は黄金色のオーラを纏い、敵兵を次々と打ち抜いていく。
敵の中枢、というべきなのだろうか。
後衛部隊の中でも主力となる中型水晶偽竜たちにイルナス率いるレナヴィスカが猛攻を仕掛けていた。
「所属して早々に派手なことだね、ネヴァン。
こちらはまるで力も足りてないってのに……けどそういう間の悪さも人生か」
そんな中へと投入されたのがリト。自分の出るべきタイミングをしっかりと見極め、待ち、そして飛び出す。
肩にのっていた鴉のネヴァンが飛び上がり、リトの拳が人型水晶偽竜の顔面をとらえた。
否、それだけではない。
「さぁ、氷の狼の遠吠えを聞くがいい」
超人的な聴力と視力によってそのタイミングを計っていた『氷の狼』リーディア・ノイ・ヴォルクが、建物の上からライフルの狙いをつけ、射撃。
三発撃った弾そのすべてが水晶偽竜のコアがある場所をとらえ、装甲によって防御された二発を更に押し切る形で破壊した。
「凍てつく氷の冷たさをその身に刻め」
残るは水晶の鱗に身を包んだ人型の水晶偽竜。
イルナスたちの集中砲火もものともしない頑丈な固体である。
そんな敵に立ち向かったのが……。
「わたしですの!」
物質中親和能力によって壁をすり抜け、背後へと現れる『半透明の人魚』ノリア・ソーリア。
素早く振り返って殴りつける水晶偽竜の動きにほぼ対応できずに直撃をくらったが、しかし同時にノリアの発した『水の棘』が水晶偽竜の装甲を浸透し内部へと刺さっていく。
ノリアは尾びれで空中をけるような動きで泳ぎ、先ほど透過した壁のむこうへと退避。
それ追いかけさらなるパンチによって壁ごと破壊していく水晶偽竜。
壁事吹き飛ばされることになったノリアは近くの柱に叩きつけられ、掴みかかった水晶偽竜によるラッシュパンチを受けることになる……が、それはノリアにとっても好都合だった。
「……?」
ノリアを一方的に殴り続けていたと思った水晶偽竜の腕がぼろぼろと崩壊していく。
先ほどから浸透していた水の棘がついにコアへと浸透し始めたのだ。
「元より死と隣り合わせではあるが、ラサもよくよく危機に見舞われる地だな。
腕を鍛え、名を上げる機会が多いというのは悪くはないが……偽物とはいえ竜種と踊ってみたかったものだな」
そこへ現れたのは『可能性の壁』アルトゥライネル。
「さて、やるべきをこなそうか。数で押すには特異運命座標は手強いぞ?」
踊るように斬りかかる。
防御しようとした腕は脆くも崩れ去り、アルトゥライネルのナイフは的確に水晶偽竜の胸を裂いた。
露出されたコアへ手を押し当て、小さく笑う。
「さらばだ」
激しい爆発。炎がコアを巻き込み燃え上がっていく。
●特殊航空迎撃部隊
水晶偽竜トルメンタについて説明せねばなるまい。
数ヶ月前ネフェルストを襲った超大型錬金生物。水晶亜竜『トルメンタ』。竜の死体をもとに製造されたそれは巨大な翼と水晶のように透き通った身体をもち、大空を飛行しながら無数の飛行水晶亜竜を率いて首都を襲った。
対して傭兵団『レナヴィスカ』及びローレット・イレギュラーズチームはこれを迎撃。負傷者を多くだしつつも、見事竜を撃退せしめたのである。
そして今回。無数の錬金モンスターを掛け合わせたスクラッチビルドによって水晶偽竜『トルメンタEX』が完成。無数の飛行水晶偽竜を引き連れ軍へと加わっていた。
彼らの役目は高高度からの回り込みと爆撃。斬込大隊の引きつけと側面攻撃大隊による追い打ちによってほぼ壊滅状態にある水晶偽竜軍において、強烈な反撃が可能な部隊である。
彼らにとって『生き残ること』にたいした価値はない。いずれ修復可能な物体にすぎない彼らにとって、仲間の死は怪我の延長にしかないのだ。
よって今まさに反撃を開始したトルメンタ率いる飛行偽竜部隊。
これを迎撃するのが――。
「空はこちらの領域……と自惚れる訳ではありませんけれど、それでも他の者達よりは自由に動けるであろうと自負しております。
そう、いくらかの敵を引き付けて飛び回る程度には」
『アイオンの瞳第四席』クラサフカ・ミハイロヴナ・コロリョワは蝶のような羽をはばたかせ、接近する無数の翼竜たちを目視。
(撃破そのものは他の方にお願いする必要がありますけれど、時間稼ぎとダメージコントロールでも十分貢献ができる事、実証して差し上げましょう)
『Царь-пламя』の毒を空中に散布し、翼竜の注意を自らに引きつけるとジグザグな飛行で反撃を回避。
そこへ『探偵軍大佐』ネイルバイトと『グレイト・マザー』アレクシエルが加勢に入る。
「ハッハァ! オレは飛べるんだぜェ! なんたって探偵だからなァ!
盗賊団が相手と聞いてこりゃ探偵軍たるオレの出番かと思ったらまさかのドラゴン!
ジャンルが違うぜェ、冗談キッツいってェの。
ただ、オレは探偵だぜェ! テメェらみてェにこっすい動きをしようとした怪しい奴らを取り締まるのがオレの仕事ってわけだァ。
おっと偽竜兵共、探偵らしくテメェらが思ってること当ててやろうかァ?
『そこをどけ』だろォ? やなこった!」
ネイルバイトは冴え渡る脳を回転させ、『Man X Age』を発動。翼竜が雷のブレスを発動させようとした所へ封印魔術を打ち込んだ。
攻撃を遮られた翼竜への追撃はアレクシエルの役目である。
その巨体を直接叩きつけるように――
「厳密には違うんだけど~、ドラゴンと言われたからには行かない訳にはいかないわよねえ。
という訳で、『グレイト・マザー』アレクシエル、出るわ!」
異界の竜としての本領を発揮し、翼竜の翼を破壊。転落していくさまを見下ろした。
「さすが高高度での戦闘、って所だな。体力が余ってても派手にくらえば墜落するか」
『非戦闘員』赤羽 旭日は水晶偽竜の攻撃をうけて墜落しかけた仲間をキャッチしては安全高度で解放するといった行動を繰り返していた。高い機動力と運搬能力の有効な使い処である。
そんな彼らを追い抜く形で前線へ飛び出す『早食いの天使』ナハトラーベと『新たな可能性』シャノ・アラ・シタシディ。
「――」
ナハトラーベは次なる翼竜へ接近しながら『ベフライエン』を発動。勢いを増すと、『ヴァイエン』によって翼竜の翼を凍り付かせる。
そこへ黒い翼を羽ばたかせ弓を構えるシャノ。
「絶対、不通。空、墜」
(訳:絶対に通さないよ。空から墜ちていけ)
しっかりと狙った矢が翼竜の翼を貫いていく。対して雷のブレスがシャノを襲い強いしびれから翼の自由が効かなくなるが、すぐさまハナトラーベにキャッチされる形で飛行状態へと復帰した。
「大丈夫! 背中にあるのはキミ達の可能性だよ! 飛べると思ったら誰だって飛べるんだから!」
そんな中仲間をつれて水晶偽竜『トルメンタEX』へと迫る『羽衣教会会長』楊枝 茄子子の姿があった。
『被吸血鬼』ヲルト・アドバライト、『蒼穹の翼』青燕、『運び屋』シエル・アントレポ、『希望の星』黒野 鶫、『働き人』アンジェラによる特設部隊である。元々飛行能力を持たなかった面々が茄子子の羽衣賛歌『蓮の胞子』を受けることによって一時的に飛行能力を獲得。人手不足ぎみだった航空部隊へ組み込むという作戦である。
「よし、みんな、飛ぼう!! 大空はみんなのものだ!」
「これが翼……いやにしっくりくるな。
そういう術ってんならまぁ、そうなんだろうな。
……おし、腹も括ったし、行くぞ!」
ヲルトは一時的に付与されたつかの間の翼を羽ばたかせると、あえてトルメンタへと突進。中距離からソーンバインドの術を発動させた。
反撃として放たれる風の刃が身を削るが、むしろ傷ついてからがヲルトの本番である。
「ふふ。これは良い、これは良いのぅ!
まるで儂が小天狗の様じゃ。これ程の事を貰ったならば常以上の仕事をせねば罰が当たると言う物じゃな!」
鶫もまた鍔さえ得て参戦。トルメンタめがけ強烈なキックを浴びせると、こっちを見ろといわんばかりにパンチのラッシュを打ち込んでいく。
「豆粒が如しと侮って貰いたくないのう、果てるまで付き合って貰うのじゃよ!」
一方でアンジェラは身を挺して茄子子を庇う。
(常に飛行を付与して下さる楊枝様が狙われてしまっては、一大事です。
幾ら楊枝様が多少の攻撃で斃れるような方ではないとはいえ、ピンポイントなタイミングで落下ダメージで他の方と引き離されてしまったり、BSで行動不能になったりしてしまってはいけません)
風の刃が彼女の身体を激しく切り裂いていくが、それはすなわち仲間達の攻撃する時間をそれだけ稼いでいるということだ。
(まさか俺がこんなでかい戦いに参加することになるとはなぁ……。
でも少しでも役に立てるなら俺は行くぜ。
それに、空がそこにあるなら。俺はどこへだって飛べる)
「空は、俺の味方だ」
青燕はギラリと笑って大きな翼を広げると、腰から抜いた二丁のサブマシンガンでもってトルメンタの顔面を打ちまくった。
「撃ち落とせるもんなら撃ち落としてみろよ! 俺は、空に愛された燕だ!」
「その通り。でもって、アンタは空を裏切った」
そこへ加わるシエルの手刀。常識外れの機動力でトルメンタの周囲をジグザグに飛び回ると、透き通った水晶の翼を重点的に破壊していく。
「オレより上を飛んでるやつは許せねぇ。
オレより速く飛ぶやつなんていねぇ。
空は――オレの戦場だ」
破壊されたことで力を失い、たちまち転落を始めるトルメンタ。
航空部隊はここぞとばかりに集中攻撃をしかけるが、それをトルメンタは周囲に無数の雷や真空の刃を作り出すことで迎撃。
一気に突き放された……かに見えたが。
『幻耀双撃』ティスル ティルと『空歌う翼』アクセル・ソート・エクシルが急速接近。
「相手の奇襲を防ぐためにも、飛べるヒトたちで止めないとね!
竜種のかたちをしていても偽物、負けずにやっつけるよ!」
大空を自由自在に飛び回るアクセルは、『雲海鯨の歌』によって空に美しいラインを描いていく。
ラインはそのまま魔力となり、激しい力がトルメンタのボディを貫いていった。
「ラサで竜みたいなのが出たって噂は聞いてたけど、こんなに早く二回目が来るなんてね。
さあ、海洋の雀が助太刀いたしましょう!」
そこへティスルの『雷花一輪』が炸裂。回転するティスルそのものが弾丸となり、トルメンタのボディを破壊し貫いていった。
●対竜医療部隊
航空部隊が次々と転落し、斬込大隊の負傷者が水晶偽竜による脅威にさらされる。
戦えなくなり動けなくなったところをすぐさま殺されるなんていうケースは、今回の戦いでは充分に起こりうる。
よって――。
「戦場に舞い散る純白とは程遠い羽……そう、ワタクシこそ平和の象徴こと駅前広場の常連客、ハトでございます」
彼らが絶対に必要になる。
「今日も戦場を平和色に染めるべくこの羽を血に染めてでも皆様のお力になりますぞ!
このワタクシが馳せ参じたからにはこの地の平和は約束されたも同然!
この戦いが終わった暁にはここに噴水とベンチのある長閑な広場を建設し、鳩々…もとい人々がサンドウィッチを楽しめる場所としましょう!」
くるっぽーと言いながら負傷者たちに治癒の豆鉄砲をぶつけていく『鳩』ポポポーポ・ポーポポ。
『淡き白糖のシュネーバル』祝音・猫乃見・来探と『知らないこといっぱい』ニゼル=プラウも駆けつけ、血塗れで倒れる傭兵を抱えて後衛テントへと歩き出した。
「怪我してる人…沢山…は、だめ」
(僕は、癒す。皆を…は、まだ無理だけど…少しでも、癒す。…そう決めたんだ)
祝音は殆ど動けなくなった相手に寄り添うと、白い子猫の精霊を召喚して癒やしのオーラを分け与えていった。
「白子猫さんがすりすりごろごろしたら、傷は癒えるよ。だから」
「治療します。痛いのもうちょっとだけ我慢してくださいね。……痛み、どうですか?」
連れ込んだテントでは早速ニゼルが治療にあたっていた。
戦闘時によく使う治癒魔法などによる治癒と、重傷状態を数日かけて復旧する医療行為は似て非なるものだ。
非なるがやはり似ているので、ニゼルのように戦闘不能になるまでは治癒魔術によって支え、戦闘不能になったら本番の医療行為によって重傷化や死亡のリスクを回避するといった動きをすることがある。
「お水持ってきました。他にもお水飲みたい方いらっしゃいますか」
同じように後衛テントで治療にあたる傭兵達も多いなか、『孤独のニーヴ』ニーヴ・ニーヴ、『医者の献身』松元 聖霊、『記憶が沈殿した獣』新妻 始希たちもそれに加わって負傷者の手当を行っていた。
(敵も味方も凄い数、元の世界だと見ることの出来なかった光景だ……。
面白くはあるけれど、味方が死ぬのは宜しくないかな。出来る限りの手伝いをしよう)
包帯や薬を迅速に運び、気が動転している者をみつければ適切に語りかけて気を落ち着かせるニーヴ。
(こんな風に全力で身体を動かすのも初めての体験かな……大変だけど、楽しいよ)
「俺が治療してんだ、安心しろ。ただしお前が諦めれば死ぬ。だから諦めんな!」
一方で聖霊は『生命への希望』をもって負傷者たちの活力を引き上げ、痛み止めをうつなどして負傷者のケアをすすめていった。
(くそ、怪我人が続出するのは必至だな。だからこそ俺ら医療班がいる訳だがよ。
俺がいる限り誰も死なせやしねぇよ、それが医者ってもんだからな!)
それは始希も同じだった。
水晶偽竜兵によってつけられた傷がひどく汚れ、水晶の欠片が肉体に残ることがある。それを魔術による吸着と水による洗浄、そしてアルコールによる消毒とてきぱきと対処していく。
この辺りは治癒魔術と医療の根本的な違いだ。戦闘不能にさせないことがヒーラーのつとめなら、死なせないことがドクターのつとめとなる。
そしてもちろん、後衛テントに負傷者が自力でたどり着けることは稀なので、なんとかたどり着いたときに敵に襲われないようテントを強化ないしは防衛する役目も必要になる。
『恋揺れる天華』アニー・メルヴィルと『モルフェウス』アザー・T・S・ドリフト、そして『新たな可能性』フォルトゥナリア・ヴェルーリアたちがマッチアップしてこれにあたっていた。
「ふぇぇ~どこも激戦ですねえ!
遠くに見えるあのキラキラしたものが宝石竜でしょうか
綺麗ですけど竜というからにはすごく強いんでしょうねぇ怖い怖い!」
(偽物とは言え、竜の群れなんて滅茶苦茶ですよー!? 凄く、すっごく大変な事ですよ……!
でも……だからこそ、あれと戦う人達は放っておけないですよね。私は放っておけないですっ。
勇気を奮い立たせるのですよ私、正念場です!)
「入り口や入り口周辺を広げて沢山の人が一度にこれるようにしよう。ロバにも手伝って貰うよ!」
ヴェルーリアは元々あった遺跡の一部を利用して後衛医療テントを設営し、防衛に適したトーチカや柱による妨害を配置するなどして陣地を固めていた。
そうしてできあがったテント(というよりもはや砦)の上にモニュメントのごとく設置されているのがドリフトであった。
あの頭上のなんていう名前なのかわかんない器官からぺかーっと光を発し、テント全体に保護結界を展開していく。
直接襲われるならともかく、流れ弾やたまたま飛んできた石や柱で壊されることはなくなるだろう。
「回収して向かうは後衛テント! さあ急ぎましょう~!」
そんなテントへ馬車で乗り付けるアニー。道中水晶偽竜兵に襲われたものの上手に馬を操りながら追い払い、馬車に詰め込んだ負傷者を守っていた。
『死神小鬼』アヤメ・フリージアと『迅きこと矢の如く』ミズキ・フリージアも同じである。
「大丈夫です! 今すぐ、アヤメの所へ連れていきます! もう少し持ちこたえて下さい!」
負傷者を抱えたミズキが今まさに激戦が行われている戦場を駆け抜け、アヤメのもとへと急ぐ。
(ずっと聞こえてきた今回の事
死者を冒涜するなんて許せません…!
それ以前に、生きている人を死なせたくないのです…っ!
だから、私は全力で出来る事を…!)
敵の追撃をふりきってきたミズキから負傷者を受け取ったアヤメはすぐに応急処置を開始。
「生きる事を諦めないで下さい! 生きようとして下さい! 絶対に生かしてみせますから…ッ!」
そこへ駆けつける医療スタッフ。『謎めいた牧師』ナイジェル=シン、『癒やしの魔法人形』シェリオ・アデラ、『意志の火』日月 火輪、『カードデュエラー』明星・砂織たちが負傷者の治療にあたった。
(さて、今回も中々に大規模な戦いとなっているようだな。
私はしがない牧師故に、できるのは祈りと治療程度……ならば、それに専念するとしよう)
「紅茶出したいとこだけど、治療中は水な! 終わったらおれが美味しい紅茶いれるからな!」
「ひそかに双子の片割れより経験を積んで立派になっちゃうぞー!」
「今式神召喚したんで、残りの負傷者を運ばせマス」
また一方で、負傷した部隊が敵陣で孤立したという連絡をうけた医療部隊。
矢もつき剣も折れ、まわりは水晶偽竜兵だらけ。もはや死ぬしかないという状況で――。
「戦場のアホウドリとはくーちゃんの事っすよ!
あれ、コウノトリだっけ? 伝書鳩? まあ何でもいっす!」
鋭い滑空から負傷者のひとりをがしりとつかみ、水晶偽竜兵の頭上を飛び越えていく『お気楽極楽羽鳥天』クォリエル・クォンタイズ・クィジナート。
更に『お前のようなアリスがいるか』蟻巣虻 舞妃蓮と『月夜に吠える』ルナ・ファ・ディールが包囲の中へと突入。残る負傷者を抱えて走り出す。
「故郷の危機ということで駆け付けたはいいが、いかんせん私はか弱いアリス(アリスじゃないしよわくない)。
あまり大規模な会戦は得意でないが……それでも回復の手が必要なら承るぞ?」
負傷者のひとりを肩にかつぎ、思い切り走り抜ける。
ルナはといえばケンタウロスタイプのボディを活かして馬車と自分を接続し、負傷者を馬車に詰め込んで走り出す。馬車をひきながらではろくなスピードがでないと思われがちだが、常人の倍はあろうかという機動力とルナ自身の馬力もあってすさまじい走りを見せた。
包囲した水晶偽竜兵を『撥ねる』ほどである。
「おぅ、こんなとこで野垂れ死んでんじゃねぇぞ。まだまだ働いてもらわねぇとな」
「私は後衛にて皆さまのご支援にまわりましょう。
一人でも多くの方に手を差し伸べられますように。
一人でも多くの方が無事に帰ってこれますように。
……尽力します」
『おもひでを抱く』コユキア ボタンはそんな馬車にのり、豪快な光翼乱破を繰り出すことで包囲を振り払った。
「大丈夫です。どんなケガもきっと治します。――まっさらの雪のように、キレイに」
そうして運び込まれたテントで負傷者たちを受け取る『特異運命座標』グレイ・クレセント、そして『特異運命座標』ヴァールウェルとスミ・オキシマ。
「激しい戦いになっていると思うんだけれども、倒れると心配する人がいるだろうから無理はしないようにして欲しいものだね。
――そうとばかりも言っていられないんだろうけども。」
グレイは運び込まれた負傷者に治癒魔術をかけながら、出血を抑える包帯や骨折への添え木をあてることで戦闘不能者の重傷化リスクを減らしていった。
こうした大規模戦闘の場合は『治したらすぐに戦える者』と『今踏ん張らないと死亡する者』がいる。厳密にはもっと細かく分かれるが、グレイが最も救う事に貢献したのは後者だ。
「治療始めますね。お話は出来そうですか?どこが痛いか分かりますか?」
ヴァールウェルもまた同じ。元々治癒魔法に優れてはいたが、それと同時に医療技術や精霊術にも秀でていた。
妖精の粉薬を調合し、今まさに生死の境にある負傷者へと投与していく。
「術が使える以外にもやれることはたくさんありますからね……。
そんな話を聞きながらスミは『なるほど』と頷いて治療の手伝いにあたっていた。
(このような戦いは初めてですが……暗い顔をしていてはいけませんね!)
今まさに互いのHPを削り合っている人々には高威力の治癒魔法が必要だろう。炎や毒といったBSで苦しむ人々には治癒を助ける魔法が要るはずだ。
だがその一方で、空から墜落し敵に切り裂かれ踏み潰され戦闘不能となった負傷者たちが、この先『生きていけるかどうか』は医療班の手にかかっていると言っても過言ではない。
そしてここで取り乱せば、目の前で血を吐いている人間がそのまま死ぬことになる。
「私にもできることが」
平常心でいることは、幸い得意だ。スミは医療スタッフの指示どおりに負傷者を手当しながら、彼らの命を救っていった。
●赤犬戦車隊(レッドチャリオッツ)
斬込、側面、航空それぞれの部隊は勇猛に戦い、医療班の活躍もあってラサ&ローレット側は有利に戦闘を進めていた。
が、ここから先は分からない。ディルクとローレットの精鋭たちが手を組んでも『退かせる』ことしかできなかったライノファイザが、そのスクラッチビルドとはいえ相手になるのだ。
一気にひっくり返されないとも限らない。
得に、強化されたであろうその装甲を抜くのは相当骨が折れるはずだ。
「ひゃー、よりによってこんな場面にでくわすとは、っす」
魔導蒸気機関によって走る自動車にレールガンを二丁据え付けた自作の戦車を走らせ、『ザ・ハンマーの弟子』リサ・ディーラングは興奮気味にハンドルを握っていた。
「けど、任されたからにはやってやるっす! ふぁいあ!」
ハンドル脇のレバーをひくと、車両がひっくりかえりそうになるほどの衝撃がはしった。
見上げるほどの巨大な水晶偽竜ライノファイザの巨体にドッと煙があがり、『幻想ギャル』アデル・マルブランシュと『新たなるレシピを求めて』ミエル・プラリネによるテクニカルカーがそれに続いた。
「このアデル様に力貸せって頼みやがるから来てやったらなんだこれ!?」
ハンドルを握ってギアを操作するアデル。
後部座席もとい荷台に載ったミエルは運転席をばんばん叩いた。
「テクニカルカーですね! すごいですっ! 何となく使い方は掴めた気がします!」
「なんとなくで使っていいのかな!? アタシ見ての通りJKなんだけどォ!?」
「ラサに道路交通法はないですぅ! ごーごー!」
機関銃のレバーを握りしめ、ライノファイザめがけてGAU-8アヴェンジャー機関砲を撃ちまくるミエル。アデルは――。
「こうなりゃヤケだ、アクセル全開! ぶちかます!
しゃおらぁっ! アデル様舐めんなよ! 軽トラ舐めんなよ! このまま全弾ぶちかましてやる!」
……とこんな具合に撃ちまくっていた彼女たち――のもとへ、さらなる巨体が襲来した。
全長十メートルを超える巨大な翼なき竜。
『水晶亜竜』ギガグラスサーペントを元にスクラッチビルドされた水晶偽流ギガグラスEXである。
「はぁ!? もう一体とか聞いてねえぞ!」
ぎゃーといいながらトラックがひっくり返され、そのまま砂漠を転がっていく。
対抗するのは『バレスティ流剣士』シエラ・バレスティたちのチームだ。『ツンデレモドキ』リナ・ヘルキャット、『感情あるモノ』イヴ・ヴァレンタイン、『守護者の末裔』シエラ・クリスフォード、『普通のソードマスター』プラウラ・ブラウニー、『あくきつね』綺羅々 殺、『特異運命座標』シェリル・クリスフォードがそれぞれ重火器を積んだ馬車や自動車を操ってギガグラスEXへと砲撃を開始する。
「えーと……なんだか誘われたので乗ってみたのですが、この戦車には近接武器がついていないのでしょうか」
「このおもちゃを使って敵を轢き殺せばいいのね! まっかせなさぁい!」
「この手のメカの操作なら任せるのです。大砲発射です! 水晶偽竜のオオボスの腹に風穴を開けてやるのです!」
「これが戦車…不思議な鉄の塊ですね。中はこうなってるのですか、ふむふむ。
一通りの操作は覚えました……さぁ、水晶偽竜さんを腹パンしにいきましょう!」
「取扱説明書からですね、、ふむふむ、なるほど……では説明書どおりに敵を殲滅していきましょう! そして腹パンです」
「セツにこの様なカラクリモノを操れと? ふむ……どうも仕様がわからぬな。鬼火で火薬を爆発させれば良いのか?」
「戦車か…こいつはいい、男心を擽る……いや、なんでもない」
こういう意味でいえば本職のイヴを合図にして、ギガグラスへ砲撃が集中。
『期怠の新人』灰羽 裕里はそんなギガグラスを観察しつつ、軽トラの荷台からガトリングガンの狙いをつけた。
「さて、これは、また
面倒な、数、の、敵だ、ね
倒して、行くには
俺だと、手に、余る、かな
取り敢え、ず
みんな、が、進める、道を、空けようか」
独特のリズムで語り、そしてギガグラスの顔面にちょうど当たるように乱射。
『特異運命座標』レミファ=ソラージットはその横を走る普通の馬車に乗り、その幌の上でパチンと指を鳴らした。
2振の剣型デバイス『Dimention Driver』によって描かれた魔方陣から巨大な火砲を出現させ、ニヤリと笑った。
「やっぱり砲撃はデカイ的に当ててこそデスよ。ロマンデスよ。レミーにもわかるのデスよ。そしてレミーには……」
これがある。とばかりに自前の大砲を発射。
「ヒャッハー! &Fire!!」
ギガグラスは砲撃を受けて大きくよろめき、それ以上の攻撃をさけるべく爪による打撃を繰り出した。
もちろんただの打撃ではない。大地がふるえ砂が波打ち戦車がまとめてひっくり返るような『災害』であった。
水晶偽竜ギガグラスEXによるスタンピングはまさに災害であった。
対ライノファイザに向けて投入された複数の部隊がこれによって即座に壊滅。
医療チーム及び救急救護チームのいくつかも遺跡の瓦礫にうもれる事態となり、前線で戦っていた面々もこれの救助と戦線維持を両立させるべく進行を止めざるをえない状態にあった。
影響はもちろん戦車部隊にも及び。数十人で構成されていた部隊のうち7割ほどが壊滅。戦車の致命的な破損や隊員の負傷によって撤退を余儀なくされた。
だが、それで戦車部隊が攻撃をやめたわけではない。
「俺みたいなロクでもねえ奴がイレギュラーズになるなんてのは、趣味の悪い冗談だと思ってたが……」
ひっくりかえった装甲車の中で足を組み、ザッパはくわえた煙草からゆっくりと煙をすう。
そして指でつまむことで火を消すと、逆さの運転席から這い出して隣の車両へと移った。
ネチェシタのロゴが入った装甲車両だが、誰も乗っていない。先ほどのスタンピングで負傷し、救護チームによって後衛テントへ回収されたのだろう。
「まあいい、どっちにしろラサがぶっ壊れりゃ困るのは一緒だ。世界規模のハナシはピンとこねえが、こっちならまだしっくりくるぜ」
ぎろりとギガグラスがザッパとその車両を睨むように目をうごかした。
対して、ザッパは発射レバーを操作。装甲車に備え付けたミサイルポットから無数のミサイルをギガグラスへと発射した。
それにのっかる形で集中砲火を浴びせにかかる『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル、『マジ卍やばい』晋 飛、『夜に這う』主・役の三車両。
「一回戦車乗ってみたかったの。
チャリオッツじゃなくてタンクの方の戦車ね。
元の世界の軍隊が使ってたのと似たようなやつだわ!」
メリーの練達製九十九式自走戦車が火を噴く。
「混沌なら個人が素手で戦車を破壊することもあるかもしれないけど、元の世界ではそんなことはありえなかったわ。
そう、このわたしでも単純な武力では戦車一台の足元にも及ばなかったのよ。
自分の魔法の力の遥か上を行く、その強さを忌々しく思うと同時に一種の憬れも抱いたものだったわ。だから……」
一方の飛は彼の代名詞ともいえるアームドギアに搭乗。今回限定で換装させた巨大ドーザーブレードでギガグラスへと突撃する。
「はっはァ! デカブツ相手なら俺の出番だろ! ライノファイザと纏めて轢き殺してやるぜ!」
スラスターによる跳躍でとびかかり、ギガグラスの次なる攻撃をブレードの斬撃によって強制てきに封じていく。
そこへ攻撃を加えたのが役の亥勢海老『Kutsche』であった。
ぱっとみすげーでかい海老だし実際すげーでかい海老で間違いないのだが、その背にまたがった役が頭をぽちんとたたくと謎のジェットによって急加速。
「いいぞ海老! 撃ちまくれ海老!」
更にあたまをぱこぱこ叩くと両手のハサミを開いて内側から露出した二門のガトリング砲を乱射。
「ヒャッハー!」
ギガグラスもここまでの砲撃をうけて無事では済まなかったようだ。
『実証・実験』フィーア=U=ツヴァンツィヒと『雉白こねこ』もこねこ みーおが連携をとり、残った戦車部隊をかき集めさせた。
「研究心は良いものだけど人に迷惑をかけちゃいけないよね!
ここはまかせろ先にいけー!ってやつだね」
馬にひかせたチャリオットから大砲を操作し、ギガグラスの胸めがけて現実改変弾を発射。
「ねこ戦車ですにゃー! ねこ大砲! ねこ大砲ー! どかんどかんどかーんですにゃー!」
みーおはそこに乗じるかたちで香箱座りする猫みたいな戦車ことねこ戦車から魔法の大砲を撃ちまくった。
猫耳のついた爆弾が放物線を描いて飛んでいき、ギガグラスの胸部で爆発。
そこはフィーアたちの発見したコアのある箇所であった。
前述したとおりギガグラスもまた『ホルスの子供達』同様色宝を核にして作られた人形。弱点となるコアが存在するのだ。
コアを破壊されたギガグラスはもちろん、断末魔のような叫びをあげて崩壊していく。
そして――その更に先に控えていた水晶偽竜ライノファイザEX(エクス)へと改めて攻撃が開始される。
ここで先陣を切ったのは『新米P-Tuber』天雷 紅璃、『ハートキャッチ』澄恋、『煤闇衣』リースヒースの部隊であった。
「いやーテンション上がるね。ともあれ、武装を貸してくれた人たちの期待にも応えるために頑張るよー!
しかし相手はドラゴンの群れ、流石に戦車の外には出れないね。よーく狙っていこう!」
馬車に大砲をこれでもかと積みまくった紅璃特製チャリオットが機関銃を乱射。
弾はライノファイザの頑強な水晶装甲によって弾かれるものの、どこを撃たれれば困るのかが分かってくる。
「人を支えるプロである花嫁、推参!
か弱き乙女は素手喧嘩不得意ゆえ大砲の力を借りますが……」
澄恋はそこへ乗じる形で大砲の角度を調節。
馬車の上からビッと砲撃箇所を指さした。
「圧倒的火力、美しき曲線、硝煙の香り、体に響く重低音……あ゛ッははァ!
これ癖になりますねぇ!」
砲撃は見事ライノファイザの胸に命中。
更にリースヒースは……。
「先を行く者らの道を拓くが我らが役目なれば、それを全うするのみ。そして彼らに迫る 雑魚があれば、それを倒し続けるのみ。
我が影の剣は空を飛び敵を屠り続ける自律の魔剣。故に――」
己の馬車の幌へと登り、煤色の影でできたような巨大な剣を生成した。
掲げた両手を突き出すようなフォームから影を操り、いしゆみの原理で剣を発射。ライノファイザの胸へと突き立てる。
「戦車というのは気持ちの良いものだな!」
そこへさらなる攻撃を加えるのが、『さまようこひつじ』メイメイ・ルー、『ジュリエット』江野 樹里、『在りし日の片鱗』ジュリエット・ラヴェニューの役目である。
「戦車…初めて、乗ります、が…す、すごいです、ね、これ…。
あわわわ…揺れる…!」
深呼吸で気持ちをおちつけ、ひつじさん戦車の上からぽこっと顔を出すメイメイ。
戦車といっても寒冷地に住む精霊種たちが移動に使う巨大なひつじさんにこれまた巨大な魔法の杖をしばってくっつけたものである。
「偽物の、竜…ここで、止めなくては…!」
狙いは胸部。ひび割れた水晶装甲。
いまです! と指さした動きと共に魔法の光が放たれ、ライノファイザの胸へ直撃した。
「戦車はロマン、です。
そしてロマン砲を自称している私は……つまり戦車なのでは?
どう思いますかジュリエットさん」
真横をはしっていた樹里がジュリエットへと急に振り返ったもんだから、ジュリエットはハッとして振り返った。
ラサの傭兵団から調達してきた装甲馬車の上。御者には揺らめく炎と砂によってできたゴーレムが座し、馬にむちをうっていた。
「バリスタを撃ちまくれるのはそうない機会ね。そろそろトドメ……いくわよ」
そして樹里の質問をスルーした。
樹里もなんか分かってた風に親指をたて、装甲車両のうえに立って自らの杖を専用の穴へと突き立てた。
と同時に大砲に光が走り、魔法の力が流れていく。
「今日は私とあなたでダブルジュリエットです。一緒に行きましょう」
「え? ああ、いいわよ」
ずんと脚でバリスタを抑えレバーを握る。
巨大な矢に炎の魔力が伝わり、ライノファイザの胸部めがけて樹里の魔力砲弾と共に発射された。
●赤犬の群れ&特選攻撃大隊
時間をやや遡る。
戦車部隊がギガグラスEXと戦う間、彼らに戦闘を任せ迂回するようにライノファイザへと攻撃をしかける部隊があった。
特選攻撃大隊。その中でも一番槍でライノファイザへ突撃することに成功した部隊である。
しかもメンバーは『死を齎す黒刃』シュバルツ=リッケンハルト、『(((´・ω・`)))シ ミゞ』矢都花 リリー、『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス。
ローレットでも歴戦の猛者たちである。
(前回、別の水晶亜竜との戦いでは勝ちはしたがズタボロにされちまったからな。
その分含めてライノファイザ・エクスにぶつけてやるぜ)
黒刃『夜光』を握りしめ、残像を無数に作り出しながらギガグラスによるスタンピング波動を回避。ライノファイザへ急接近すると、足首のパーツめがけて超連続斬撃をたたき込んでいった。
「水晶偽竜がなんだろうが、俺らの道を妨げるって言うんなら、全力で切り伏せる迄だ!」
「はぁ…錬金だか竜だかなんだか知らないけどぉ…。
ボディにあんなゴテゴテ色々付けちゃってさぁ…。
成金趣味にもほどがあるよねぇ…。
そんなお金あるんならあたいらに配るべきじゃん…?
ノブレスオブリュージュだよぉ…」
攻撃に乗じて黄金のバールを投擲。鍛え上げられた一撃必殺のバールが、ライノファイザの脚パーツへと直撃した。
予め戦車部隊の砲撃によって水晶装甲にヒビが入っていたために、それをしっかりと打ち砕くことに成功したよううだ。
対するライノファイザは脚側面に融合した固形銀スライムのパーツを解放。鋼のように硬化した無数の槍が生まれ、リリーへと放たれる。
「相手が竜の模倣と言うならば、我が身は神話の写しと報せるべきだ。奴の首元に死を刻むのは主人公どもの在り方よ。私肉を越えよ――Nyahaha!」
それを庇う形で割り込んだのが我らがオラボナ。
常人であれば数度殺せるほど何本もの槍が肉体を貫通していくが……一人だけHPがラスボスみたいになったオラボナはその攻撃をしっかりと受けきった。受けきった上で、まだ充分に立っていられた。
反撃のチャンスである。
『観察者』アポフィライト・Az*h**、『お嬢様に会いに』紫月・灰人、『白鬼村の娘』鈴鳴 詩音は一斉に脚パーツめがけて集中。
「コイツも被害者なのかもしれんが打倒させてもらうぜ!
俺はそんなに器用じゃねぇからさ、真っすぐ行って全力でぶん殴るしかできねぇんだ。
だから、そいつを全力でやるだけだ!」
灰人は感情を拳に込め、砕けた装甲のその奥めがけて殴りかかる。
そこへ更に詩音の放つ紅蓮の刀が打ち込まれ、斜めに大きな傷を作った。
豹変して笑いながら斬り付ける詩音。
「まぁ、なんて哀しい生き物でございましょう。
継ぎ接ぎだらけではいきづらいでありましょう?
……こちらが砕かれる前に、今度こそガラス細工のように砕いてしまいましょうね」
その動きに乗じる形で蹴りをたたき込むアポフィライト。そして『貴族の儀礼』ユリウス=フォン=モルゲンレーテもまた斬撃をたたき込んでいく。
(弱体化しているとはいえ、偽竜とはいえ、竜は竜だ、我ら人間にとって脅威であることに依然変わりはない。
全力を賭けて討ち果たす。
……ファルベライズ遺跡の戦いの事は心配してはいない。ローレットの皆ならばきっと勝てると信じている。
私はここで民を守るために戦う。皆の帰る場所を守るために、私の信念に従うためにも)
彼らによって刻まれたX字の傷はライノファイザに少なからずダメージを与えたらしかった。
攻撃を一度逃れるためか、翼をはばたかせ空へと浮きあがり始める。
『鋼の拳』オリヴィア・ローゼンタールと『咎人狩り』ラムダ・アイリスがすかさずさらなる追撃。
(水晶偽竜……要するに偽物ですか。しかし強敵であることに変わりはありません。
ならば、竜種を相手取る前の練習試合といきましょう)
『命の刻印の魔晶石』の力を引き出し、身を切り裂くような暴風を駆け抜けて脚パーツへと鋭いキックをたたき込む。
「まだだ、まだまだまだまだ――この程度を砕けないようでは、竜種に届かない!」
ラムダはここぞとばかりに肉体をブースト。
剣禅一如『不惑』――つまりは無我の境地より繰り出す必殺の刃をもって、修復されかかっている装甲ごと脚パーツへ刀を打ち込んでいく。
これが決定打となったのか、ライノファイザの右足パーツは切り裂かれ地面へと落下。
ライノファイザは空へと舞い上がっていく。
「さあて、復讐に帰ってきたぞ宝石竜。
お前はここから逃しはしない。
負けっぱなしだとむかっ腹が立つからなあ、司書」
そんな光景を離れたところから観察する『観光客』アト・サイン。
馬の背にて手綱を握り、不敵に笑った。
その横についたのは『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ。
大一番では必ずといっていいほど『騎兵隊』のために現れる優秀なる軍師である。
騎兵隊という言葉は広義にあるが、ローレット・イレギュラーズにおける『騎兵隊』といえばアトやシャルロッテたちの組織する一大チームをさす……といっても良いだろう。それだけ長く、そして大きく活躍してきた彼らだ。
(少しだけ間が開いたが……軍師としての勘が鈍っていないと良いのだが)
シャルロッテは現在、車椅子でアトのよこにつけそれまでにまとめた情報をアトとすりあわせている所だった。
「前回戦った時よりだいぶ変わってる。固形化するスライムとかなかったしね」
「確かに。スクラッチビルドとは聞いていたけど……うん、『よせあつめ』と油断すると一瞬で騎兵隊全員を奪われかねないね。あのオラボナが半壊していた。ボクだったらあの一瞬で三回は死んでいたね」
「倒すには弱点をつくしかない……けど、見ただけで弱点が分かるほど雑な作りはしてなさそうだ。作り手の悪趣味さを感じるなあ」
こういうときは数を試すに限る。
騎兵隊射撃部隊を呼び出し、空へと舞い上がったライノファイザへと一斉射撃を命じた。
『柳暗花明の鬼』形守・恩、『リトルの皆は友達!』リトル・リリー、『破滅を滅ぼす者』R.R.、『はですこあ』那須 与一。これまた頼れる面々だ。
(まさか初陣が西洋竜とは、なんとも荒療治な実践勉強じゃな。
恐ろしくあるが、なに……死なせはせんと言われた故に、信じる)
「さあ、然りと勤めさせて貰いますじゃ!」
恩は特殊な火縄銃を構え、ライノファイザの尾めがけてスナイプ。
「盛者必衰、実者必虚……もうそろそろ、眠ったらどうじゃね?」
「……リリーが見た竜は、こんなんじゃない。もっと、かっこよくて、強くて!
こんな偽物、すぐに倒しちゃうもん!」
一方でリリーはセカンド・カースド・バレット、カースド・バレットを用いて左足パーツを射撃。
与一はそんな仲間達の動きを読んで胸部を狙って弓をひき、軍馬の上から鋭い射撃を放った。
そしてR.R.もまたライノファイザの腹部分を狙って『夢幻滅法』の魔弾を打ちまくっていく。
「成程、偽りとはいえ巨竜!流石に破滅のざわめきが強いな!
だが、だからこそ滅ぼし甲斐があるというものだ!」
四人の射撃はライノファイザにそれぞれ命中。各パーツに備えられた錬金生物が解放されていく。
炎の鳥が無数に生まれる腕、睨むだけでこちらを石化させる目をもった大蛇の尾。特に胸部は硬い装甲に覆われていたが、その一部が開放されると同時に小型の水晶偽竜が大量に生成され、射撃部隊へと降下。次々に自爆攻撃を開始した。
一方騎兵隊もその反応を見逃してはいない。
「攻撃されたくないのは胸、か」
確認はできた。が、この攻撃を凌ぐのは難しい。
『恩義のために』レニンスカヤ・チュレンコフ・ウサビッチ、『肉壁バトラー』彼者誰が自爆攻撃によって生じた負傷者を回収しに走った。
「うーーーーーーーじゃす!!
どうして!
ドラゴンの!
相手を!
あ、怪我人の救助だけでいいの。それなら……よくないよぉー!」
馬車を猛烈に走らせ、負傷者たちのもとへと迫る。攻撃でも防御でもなく、彼らを通り過ぎざまに素早く回収するためだ。
彼者誰はその動きにあわせて負傷者を抱えては馬車に放り込んでいく。
「さあお嬢様! いつものと参りましょう!」
僅かに残った水晶偽竜兵が馬車をとめようと立ち塞がるが、彼者誰の抜いた拳銃による猛烈な乱射によって強引に道を開いた。
こうして回収した負傷者の回復は『洋服屋』ファニアス、『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀、『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー、そして『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラたちの役目だ。
一網打尽にされないよう、なおかつ回復効率を上げるようある程度ばらけてチームを組んでいた騎兵隊治療班のうちのひとつである。
「まさか、ドラゴン相手なんて!
でも任せて。きっと大丈夫だもん♪
ファニーの初陣、怖いけれどがんばります♪」
素早く治癒魔法を展開するファニアス。
(一歩…また一歩…少しずつ少しずつ前に進むのだわ。
強くて賢くて…仲間皆が妬ましいけれど、この感情はきっと消える事は無いのだろうけれど。
嫉妬してしまうくらいの仲間達と一緒に居る事を、少しずつ自信に変えて…)
華蓮もまた白き翼による低空飛行状態を維持しながら治癒の術を展開。
クラウジアがそこへ更に重ねる形で『天使の歌』フィールドを形成した。
「ドラゴンか!
古来より竜種討伐は英雄の登竜門的なサムシングじゃな
ま、今はそんなこと言ってられぬゆえ、軍勢で叩き潰すだけじゃがな!
あと、司書殿のリベンジじゃっけか……」
握りしめたウィッチーズブルームに力を込め、宝石の光が半球系のフィールドを作り滑り込んだ負傷者たちの傷を急速に治癒していく。
「しかし負傷が酷いのう」
「あのライノファイザだからな」
ゼフィラは前回の戦いを思い出していた。ライノファイザほどではないが、強力な亜竜と戦った。ライノファイザは奇跡の力によって大きな傷をつけたものの、退かせるのがやっとだったと聞く。
「しかし、弱点は胸……前回つけた傷の影響、だろうか」
ゼフィラはそんな風に考えながらも、仲間達と意識を同期させさらなる迅速な治癒を続けた。
「り物というのは残念だが、ドラゴンとの戦いとは心躍るね。
これぞ冒険、命をかけるだけの価値があるとも。
さぁ、挑ませてもらうよ!」
戦車部隊がギガグラスの殲滅に成功したのはおよそこのくらいの頃だ。
「さあて、リベンジマッチといこうじゃないか」
ギラギラと獣のように笑うディルク。そして傭兵団『赤犬の群れ』。
彼らの猛攻は空から爆撃を行うライノファイザEXを引きずり下ろすに足るものだが、しかし充分ではない。
そのためのローレット・イレギュラーズ。そのための騎兵隊魔道射撃部隊である。
「今回の仕事は司書たちのリベンジマッチ、それも大物叩きとはね……。
ドラゴン狩りとはファンタジーの王道だな。いざ!」
『雪中花蝶』斉賀・京司はバイクを走らせ空飛ぶライノファイザと併走する位置をとると、『悠久のアナセマ』による呪術を行使。
「手前みたいなデカブツにはな、結局は最大火力が一番なのだよ……!」
『血吸い蜥蜴』クリム・T・マスクヴェール、『金色のいとし子』エクスマリア=カリブルヌス、『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカも併走状態に入ってそれに続いた。
グラニの背より魔道拳銃のセーフティーを解除するクリム。
「楽しい楽しい戦闘の時間ですね! 血の味とかも気になりますしね!
……こほん、それっぽい要素があるだけだとしてもドラゴンなら殺す、取り逃がしたりしないように気を付けたいですね。……死体の一部、貰って帰っちゃダメかな?」
断章『緋眼・■■■■』――もとい邪視能力によってライノファイザを攻撃。
エクスマリアはその後ろにのって、『ティタノマキアの閃光』を発動させた。
(この世界では、関係ないこと、だが。
ライノファイザ・エクス……その名は、『エクス』は、亡骸に冠して良いものでは、ない。
そして、『竜』としても、その無様さは、捨て置けん。
宝石も、水晶も、その名も。全て砕き、かつて真に竜として在った貴様への、手向けとしよう)
練り上げた『轟く迅雷』。通常のそれよりもはるかに強力な雷撃球が放たれ、ライノファイザのボディへとたたき込まれていく。
さしものライノファイザもここまでの攻撃を浴びせられればバッドステータスから逃れるのも難しい。強制治癒能力があるとはいえ、それも完全ではないだろう。
「哀れな姿じゃ。終わらせてやろうぞ」
クレマァダはイーリンから授かった白馬アンヴァルの背にて、波濤魔術を刻んだ円盤を籠手に装填。ギュンと回転させるとわだつみの歌を出力した。
「今こそ――」
『夢見る呼び声』。つまりはライノファイザに刻み込んだ無数のバッドステータスをそのままダメージに変える強力な言祝である。
と同時に、クレマァダたちの頭上へ水晶の破片が大量に降り注いだ。
飛行中のライノファイザの翼がめきりと音をたて壊れていったための破片である。
「好機! 畳みかけろ!」
『竜の力を求めて』レイヴン・ミスト・ポルードイ、『Enigma』ウィートラント・エマ、『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロスはライノファイザを挟んで反対側を走っていた。仲間の合図をうけ、攻撃を開始する。
("偽竜"……ハ。
さて本物『リヴァイアサン』にどこまで迫れたものか。
形は違えど竜の力を求めた解、見せてもらう。
覇竜の導きの元に)
レイヴンの放つ『召喚:"断頭台"-竜閃爪-』。自身に投影召喚したかつての姿が大鎌をもちライノファイザの翼を襲った。
「ティンダロス、思いっきり駆けろ」
マカライトはそのチャンスを活かすべくストライクチェーンを発動。
放たれた苦無とそれに引っ張られる形で伸びる鎖。それらがライノファイザの翼へと絡みつき、強制的に地面へと引っ張り始める。
ウィートラントはここぞとばかりに『黒狼・マーナガルム』を発動。
黒い狼の妖精が召喚されライノファイザの翼を食いちぎり始めた。
「ふむ、水晶偽竜ライノファイザ・エクスでごぜーますか。
話には聞いておりんしたが、融合によりその姿はすっかり変質しているようで。
まるで合成魔獣…キメラでありんすな」
そしてそれだけに、翼も脆い。
ウィートラントの囁きを証明するかのように、翼を引き裂かれたライノファイザは地面へと墜落。頭から大きな遺跡へと突っ込んだ。
『ネクロフィリア』物部・ねねこと『医術士』ココロ=Bliss=Solitudeは騎兵隊第二治癒班。ヨモツヒラサカに乗ったねねこと赫塊にまたがったココロ。
二人は墜落した遺跡から砲撃を行っていた味方の傭兵部隊を治癒すべく急行していた。
「竜を倒した後に皆笑っていられるよう、誰も倒れぬようにし続けるのがわたしの役目。わたしが背中を支えます!みんな頑張って!!」
「竜いいですよね! 混じり物が多いのは残念ですが……解剖で綺麗にならないかな」
駆けつけたねねこは早速スターライトボムを投擲。爆発による音波と香りで、ライノファイザが突っ込んだことで負傷した傭兵たちを治癒していく。
そしてココロもまた、『Emmanuel』の術によって急速な回復を行った。
回復した傭兵達は攻撃を再開……するかと思いきや、ココロたちをつれてその場から急速に撤退した。
「離れろ、奴が立ち上がる!」
予告通り、ライノファイザは接続された蜘蛛脚パーツを展開して立ち上がり、咆哮ひとつで周囲の建造物を破壊していった。
と同時に、ライノファイザ胸部めがけて魔法のビームと巨大な炎の矢が直撃。
頑強な胸部装甲が砕け、弱点が露わになった。
「チャーンス……!」
『こむ☆すめ』マニエラ・マギサ・メーヴィンはバイクのアクセルをひねり加速。後部座席に『立ち乗り』している『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子が、腕を組んで微笑んだ。
「クハッ! ドラゴンもどきとはいえ相手にとって不足は無し!
美少女の妙技、見せてくれようぞ!」
「思い出すなあこの組み合わせ。どれ、揺れるぞ」
倒れた壁をジャンプ台にして、マニエラはバイクで豪快にジャンプ。そして百合子はバイクそのものを踏み台にして更にジャンプした。
「あ、ずるいです私も!」
馬を走らせていた『ジョーンシトロンの一閃』橋場・ステラは馬に命じて斜面をかけあがり跳躍。蔵をけって大きな剣を振り上げた。
「――白百合百裂拳・睦咲!」
通常ではものすごい勢いで消費しきってしまう百合子とステラのスタミナだが、マニエラの展開したフィールドや術が彼女たちのスタミナを急速に回復。
BSを確率回復し自動治癒もするライノファイザ相手に、ハイダメージハイカロリーな技を連発するのは良手。しかも急速AP回復によって超連打するのは更に良手である。いわばマニエラの役目は、百合子やステラという強烈な爆弾を最高の状態で配達することなのだ。
そこへ、ヨモツヒラサカにまたがった『闇之雲』武器商人と『戦場のヴァイオリニスト』ヨタカ・アストラルノヴァが出現。
「ヒヒヒ……」
武器商人は反撃に繰り出されるであろう咆哮攻撃に備えてシールドを展開。直後浴びせられる咆哮にシールドが破られ、武器商人の身体もまた吹き飛ばされるが、それによって庇われたヨタカを攻撃可能距離まで届けることにはしっかりと成功した。
(継ぎはぎだらけの身体でまだ足掻く憐れな姿…まるで昔の俺をみているようだ……今、楽にしてやろう)
『鬼哭』の呪術を発動させ、ライノファイザへ強烈な弱体状態に引っ張り込む。
「緩やかに、優しい痛みでおやすみ」
すべてはさらけ出した弱点へ、刺すべき刃を刺すために。
ライノファイザもそれを理解してか、ゴールドゴーレムと同種の腕を巨大なハンマーに変えて周囲を地面ごとなぎ払った。
砕け散る建造物。吹き飛んでいく足場。
宙に浮かぶ無数の岩ブロックをジグザグに飛んで、『恋する探険家』フラーゴラ・トラモント、『裏咲々宮一刀流 皆伝』咲々宮 幻介が急接近した。
「お師匠先生とアトさんのリベンジだね。
かっこいいとこ見せなきゃ。
幻介さん力を貸して!」
「隊長殿も人使いが荒いで御座るなぁ。
しかし、継ぎ接ぎ蜥蜴程度で拙者達を止めよう等と、片腹痛い。
我等を舐めた事、死ぬほど後悔させてやるで御座るかね!」
黒閃。
白閃。
二重交差。
ライノファイザの両脇を抜けていく二人。刻み込まれた深い傷。
素体となったライノファイザそのもののボディには、前回の戦いでつけられた疵痕が残り、それを更に押し広げるかたちで二人は斬撃をねじ込んでいったのだ。
トドメを刺すため。
ではない。
「私がイーリンから託されたのは、『好機に全力を叩き込む』事だ。ならば、それに応えよう!」
霊力噴射によって急加速し、ライノファイザ胸部へと迫る『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈。
そしてこれまで絶好のチャンスを待ち、満を持してラムレイの背より『紅い依代の剣・果薙』を振りかざす『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ。
「負け続けは嫌よ、さあ私達(竜)波濤を聴きなさい『神がそれを望まれる』」
解き放たれる『カリブルヌス・改』。
「目には目を、色宝には色宝だ」
汰磨羈は握りしめた色宝片を輝かせ、強烈な光に包まれた。
「見せてやる。これが、限界を超えるという事だ――!!」
常識をはるかに上回る、まるで奇跡のような力がライノファイザEXの肉体を貫きかき乱していく。
轟音。
倒れた首へ、『煌希の拳』郷田 貴道、『砂食む想い』エルス・ティーネ、そしてディルクが歩み寄る。
「終わり方が、まさかこんな形とはな」
苦し紛れに放たれたライノファイザの咆哮衝撃波はしかし、ディルクの剣による斬撃ひとつで相殺された。
「勝たせてやるなんて、こないだは大見得切っちまったからな。
嘘のままじゃあ終わらせねえ……こいつをここで倒して、真にする!
こいつは前の続きだ、まだ何も終わっちゃいねえんだよ!」
敵が攻撃したタイミングは最大のチャンス。貴道は機敏なフットワークでライノファイザの顎へ迫ると強烈なパンチをたたき込んだ。
「本音を言えば、万全のてめぇとケリをつけたかったな」
ここまで弱った状態で貴道の拳をくらいタダですむわけはない。
なんとかその状態から復旧し逃げ出すためにか、ライノファイザは自らの翼を高速で修復しはじめた。
が、しかし。
「ディルク様……」
エルスは第一の踏み込みから即座に加速し、『ティタノマキアの閃光』を発動。
(私、まだラサの為に何も出来てないんです。だから、あらゆる物を使ってでも……)
ライノファイザの首を、エルスの大鎌がすぱんと切り裂いていった。
一度は持ち上がった首が地面へと落下。その音に、姿に、誰もが確信した。
そう、勝利を。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――作戦終了
――水晶偽竜ライノファイザ・エクスおよび水晶偽竜軍の撃滅に成功しました。
GMコメント
●決戦シナリオの注意
当シナリオは『決戦シナリオ』です。
<Rw Nw Prt M Hrw>の決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(通常全体とは同時参加出来ます)
どれか一つの参加となりますのでご注意下さい。
■これまでのあらすじ
ラサにて発見されたファルベライズ遺跡に眠る『願いを叶える秘宝』、色宝(ファルグメント)。これを巡った戦いはついに最終局面を迎えた。
遺跡最奥大精霊の祠では、大精霊ファルベリヒトと精神を融合させた『博士』が待ち構えていたのだ。
狂気に侵され暴走しているファルベリヒト鎮めなければ、その力がラサ全域に広がりかねない。
ラサよりファルベライズ攻略を任されていたギルド・ローレットは最後戦いへと身を投じていく。
その一方、ファルベライズ遺跡群地表部ではかつて首都より退けた宝石竜ライノファイザを無数のモンスターと融合修復させた『水晶偽竜ライノファイザ・エクス』が出現。
それによって生まれたグレートホールより、無数の水晶偽竜兵が続き軍を編成していた。
放置すれば再びの首都侵攻もありうる。前回の迎撃によって消耗した中再び大規模襲撃を受ければただでは済まないだろう。
いまここに、ラサ傭兵軍&ローレットによる水晶偽竜軍撃滅作戦が発足したのだった。
■作戦概要
この作戦は数百人規模で行われ、第一から第三、加えて特殊部隊三種による部隊分けが行われます。
各部隊の詳細は『パートタグ』の項目をご覧戴くとして、まずは作戦内容を説明します。
まずはハウザーを筆頭とする第一部隊『マガツ&斬込大隊』が真正面から突撃。敵軍の前衛部隊である偽竜軍歩兵部隊と思い切りぶつかります。
こうして敵部隊を引っ張り出した所で、イルナス率いる第二部隊『レナヴィスカ&側面強襲大隊』が敵部隊側面より攻撃。前衛部隊を押さえ込み他部隊の進軍ルートを開きます。
その間にディルク率いる第三部隊『赤犬の群れ&特選攻撃大隊』が戦車を用いた『赤犬戦車隊(レッドチャリオッツ)』による砲撃支援を受けつつ最も脅威となるライノファイザ・エクスを撃滅します。
それぞれの部隊にはラサの傭兵団が配置されていますが、それだけではこの戦いには勝てません。
それぞれの部隊にローレット・イレギュラーズである皆さんの力が加わることで彼らは戦い、そして勝利することができるのです。
※ここで登場するモンスターはすべて錬金術によって作られた偽物の竜です。そのため『水晶偽竜』と総称されます。
■■■プレイング書式■■■
迷子防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
・一行目:パートタグ
・二行目:グループタグ(または空白行)
・三行目:実際のプレイング内容
書式が守られていない場合はお友達とはぐれたり、やろうとしたことをやり損ねたりすることがあります。くれぐれもご注意ください。
■■■パートタグ■■■
以下のいずれかのパートタグを【】ごとコピペし、プレイング冒頭一行目に記載してください。
【斬込】
・こんな方にオススメ:「勢いのある突撃をしたい」「範囲攻撃を打ちまくりたい」「ハウザーが大好き」
ハウザーを筆頭とする第一部隊『マガツ&斬込大隊』です。
水晶偽竜軍歩兵部隊と真っ向からぶつかることになります。
敵兵はリザードマン風の武装した歩兵が主で、個々人の戦闘能力はあまり高くありませんが高い結束力と戦闘に対する獰猛さから凄い勢いで突っ込んでくるものと思われます。
敵味方がそこまで混じり合わない段階でぶっ放せるので、範囲攻撃が得意な方は有利にぶっ放せるでしょう。
【側面】
・オススメ:「奇襲が得意」「突撃よりは横から殴るほうが好き」「狙撃が好き」「イルナス大好き」
イルナス率いる第二部隊『レナヴィスカ&側面強襲大隊』です。
ハウザーたちが正面から敵軍を引っ張りだした所へこっそり回り込み、側面から攻撃を仕掛けます。
フィールドは主に遺跡群跡地になります。崩壊した石造りの建物や沢山の柱があり、身を隠すには向いています。
そのため隠れるためのスキルがなくても奇襲を行うことが可能です。もちろん壁を抜けたり気配を消したり、物陰から狙撃したりといった技を使って巧みに近づき敵兵を狩っていくのも有効です。
敵兵はバリエーション豊かなので予測がたちません。主にその場のアドリブで戦うことになるでしょう。
【最終】
・オススメ:「最終決戦のボス戦に加わりたい」「ディルクが大好き」
ディルク率いる第三部隊『赤犬の群れ&特選攻撃大隊』です。
水晶偽竜ライノファイザ・エクスとの戦いになります。
後述する戦車部隊によって装甲を破壊されたライノファイザを全力全開で撃ち倒します。
ここでの戦闘はあらゆる意味で厳しく、練度の高いメンバーで集まるのがよいでしょう。
『水晶偽竜ライノファイザ・エクス』は負傷した宝石竜ライノファイザに様々なモンスターを融合させることで無理矢理ダメージを修復、再起動させたものです。外見はもちろん能力も大きく変わっています。
調査によると、『ブロックを受け付けない』『回避はしないが回避減衰を受けない』『極めて高いEXA』『毎ターン全BSを75%確率で除去』『高い自己再生能力』を素体から引き継いでいるようです。
一方で攻撃手段は多様化し、噛み砕きによる即死攻撃が無くなっています。
ライノファイザとの因縁が気になる方は過去のシナリオ(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4719)をご覧ください。
【航空】
・オススメ:「空を飛んで戦いたい」
水晶偽竜兵の中で、はるか高高度を抜けてバックアタック仕掛けようとする動きを察知しました。
そのためファレンの資金的人脈的支援により航空戦闘特殊部隊が組織されています。
この部隊に入る条件は『飛行』『飛翔』などの戦闘可能な飛行スキルを有していることです。(簡易飛行や媒体飛行では戦闘できないのでご注意ください)
部隊規模はそこそこありますが、牽制の意味が大きいので少人数でもOKです。
【戦車】
・オススメ:「戦車に乗りたい」
今回のために急造された『赤犬戦車隊(レッドチャリオッツ)』です。出資者はファレンですが強さにあやかって赤犬の名を借りています。
宝石竜迎撃作戦時に配備されたバリスタを馬車に積んで戦車化したものを中心に、機関砲を据え付けた軽トラやキャタピラついた戦車に至るまで大量に寄せ集めた混合戦車部隊です。(馬車も装甲車両も『不在証明』ルールの前では同価値同戦力なのでみな一緒の扱いになります)
部隊の目的は『水晶偽竜ライノファイザ・エクス』へ徹底的な砲撃を行い防御をくじき超再生能力を阻むこと。加えて、それに至るまでの道を阻む水晶偽竜たちを打ち払うことです。
この部隊に入ると戦車に乗ってバリスタや機関銃や大砲なんかを撃ちまくれます。当人の戦闘レベルは多少影響しますが、あまり深く考えずにヒーハーして戴けると皆ハッピーになれます。
また、自前の馬車(もしくは馬車相当のアイテム)をもっているならそれに乗って参加でき、今回に限り大砲等を増設できます。パンツァーフォー。
【医療】
・オススメ:「医療スタッフになりたい」「負傷者を減らしたい」「機動ヒーラーの腕をみせたい」
戦場での負傷者を素早く回収し後衛テントで治癒する部隊です。出資者はファレン。
この部隊が活躍すればするほど味方の重傷者が減ります。これはローレット・イレギュラーズにも、本作戦に参加しているラサの傭兵部隊にも適用されます。
■■■グループタグ■■■
(※ 膨大なプレイングを【】タグで一旦自動整理していますので、今回同行者の名前とIDだけを指定していた場合、かえってはぐれやすくなります。できるだけグループタグをご利用ください)
一緒に行動するPCがひとりでもいる場合は【仲良しちーむ】といった具合に二行目にグループタグをつけて共有してください。
この際他のタグと被らないように、相談掲示板で「【○○】というグループで行動します」とコールしておくとよいでしょう。
また特定の作戦を連携して行うためのグループタグとしても機能できます。
うっかり被った場合は……恐らく判定時に気づくとは思うのですが、できるだけ被らないようにしてください。
また、グループタグを複数またぐ形での描写は難しいので、どこか一つだけにしましょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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