シナリオ詳細
<Gear Basilica>Good morning girl, Good bye lady
オープニング
●
寝て、醒めて――目を明けて。絶望するのだ。
今日も、私は『私だった』――
毎日は単調だ。
一人きりで食事をして、神に祈る。生きている事に落胆し、街をうろついた。
石を投げられる。
不幸の魔女、不幸の魔女、不幸の魔女!
謗られ、詰られ、腫れ物に触るように皆は遠巻きに私を見ている。
逃れるように走り、人気のない場所で膝を抱えた。
見たいわけじゃない。
見たいわけじゃない。
見たって、何もできないのだから――
……けれど、今は違うのでしょう? 変わる未来(あした)で目を覚ますことができるのでしょう。
ねえ、『可能性』。ねえ、『イレギュラーズ』。
どうか、私の見た未来(あした)を幸福にして。
●
ごうん、ごうんと。轟轟と音は近づく。大地を揺るがし、脈動するかのように地が泣いた。
歯車の軋む音と共に機械の擦れた音がする。廃油の香りが染みついては離れないそれに混じる血潮の香は鼻先に痛い。目を擦りたくなるような登る蒸気の奥に確かにその姿があった。
――歯車大聖堂(ギアバジリカ)――
ゼシュテル鉄帝国首都スチールグラード近郊。
巨大にして強大なる古代兵器は制御なく村を焼いた。蹂躙した。そして、呑み喰らった。
全てを糧にして、歯車大聖堂は成長を続けていく。
荒野を走り、音を立て、足元の『塵』など気にせず潰して取り込み喰らいつくして。
暴食の限りを尽くした歯車大聖堂は更なる食事を求めて進む。
食事の世話をする狂気の気配の強き兵団『スネグラーチカ』は『塵』になど気を配らない。
「助けて! この子だけは、この子だけは――!」
命乞いをする女の声など聞こえない。
「辞めろォ! ヒッ――」
怯えた男の声など聞こえない。
「助けてェ! おかあさぁん!」
泣き叫んだ子供の声など聞こえない。
巨大なるその姿の前に、塵の言葉を聞く必要があろうか!
●
頭を抱え、ラウラは涙を浮かべた。いやだいやだ、と首を振る。
このままでは飲み込まれてしまうと懼れる声は救済のためにと走り去ったイヴァンの背を追いかける。
「誰か、」
愛しい人が死んでしまうのが恐ろしい。
不幸の魔女と謗られた彼女にだれも手を差し伸べないことくらいわかっていた。
「誰か、」
それでも――ただの一人なのだ。
生きていたい、と思わせてくれたのは。
「誰かッ―――、」
貴方が、私のすべてだった。
貴方が、私を作っている。
貴方が、私の生きる道となる。
走る少女に手を差し伸べるのは彼女にとっての救世主。
イレギュラーズなら、きっと助けてくれるはずだと彼女は声を震わせた。
誰も指を咥えてみてはいなかった。『未来が視える』ならば回避できると不幸の魔女の声を聴いたのはスラムの民であり、闘技場のファイターであり、村人たち、そして――クラースナヤ・ズヴェズダーと軍人たちだった。
「ラウラちゃん、状況は? パルスちゃんも手伝っちゃうんだから!」
埃被った場所は嫌いだという彼女の友人(ビッツ)は海洋の遠征より帰還したばかりだ。その分、頑張るとパルスは笑う。
「……ん。協力する。けど、どうすればいい?」
「マイケルは何て言ってる?」
「とりあえず、避難誘導……」
瞬き首を傾げるウォロクの足元でウォンバット、マイケルがたしたしとラウラを叩く。
俯き涙を浮かべた少女の背後に立っていたイヴァンは「ラウラ」と呼んだ。
「……俺たちがあのデカブツの被害を最小限に留める。いいな? お前は安全な場所まで逃げろ」
「私も……私も一緒に行く! だから、連れてって!」
イヴァンは首を振り、ラウラをウォロクとマイケルに押しやった。
求められるのは周辺の避難誘導、そして狂気に染まったスネグラーチカへの対処だ。
茫と歯車大聖堂を見つめていたフェリクスに気づきイヴァンは「おい」と静かに声をかけた。
「此の儘放置しておけばお前があった不幸よりもより大きな災いが降り注ぐぞ」
「……分かっている」
「なら、指を咥えて見ているな。わかっているな!? お前がアナスタシアを追い詰めた。糾弾することは、お前の自己満足でしかならず……時に不幸を齎すこと位、分かっていただろう!」
「分かっている! だから、来た……。もう、誰も同じ目には合ってほしくない」
眼前に迫るは歯車大聖堂。その下にいるかつての同胞たちは狂気に触れ続けてしまった。
ああ、もしかすれば『あそこにいたのは自分だった』かもしれない。
フェリクスは奥歯に力を籠め、走り出す。
「ウォロク、ラウラをよろしく頼む」
フェリクスを追いかけて走るイヴァンの背にラウラは叫んだ。
神様は残酷だ、こんな時に彼を止める言葉が浮かべばいいのに。
神様は残酷だ。
神様は――祈るのは、もうやめた。
震える声でラウラは叫んだ。
「助けて、助けて、イレギュラーズ!
もう、失いたくないの。何も、何も。
ずっと我慢したわ、だから、あの人を――みんなを救って!」
- <Gear Basilica>Good morning girl, Good bye lady完了
- GM名夏あかね
- 種別決戦
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年03月03日 22時10分
- 参加人数140/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 140 人
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参加者一覧(140人)
リプレイ
●
朝起きて、絶望するの――
今日も不幸な私の一日が始まる。
毎日は単調だ。決まって同じリズムを奏でるように迫害される。
だから目を閉じた。眠れば何も怖いことなんてないのだから。
おやすみなさい、世界。おやすみなさい、皆。
けれど、起きて、その目で世界を見て手を伸ばしていいと教えてくれた人が居る。
「私は、『明日』に夢を見ても、いいの……?」
少女は喉奥から零れ落ちた希望を余す事無く飲み干すように言った。
「私は、生きていても、いいの……?」
希う。
希う。
「このジュリア・クロフォードには意地がある!
ラウラを明るい未来で目覚めさせてやる。そう、約束しただろう?」
その言葉に、ラウラは双眸が熱くなる感覚がした。唇を噛む。今はまだ、泣いてはいけないのだ。
ラウラは言った。助けて、イレギュラーズ。どうか、救ってください。
「ラウラちゃんにとっての聖女サマ――アナスタシアちゃんってどんな人だった?」
サンディにラウラは穏やかに、そして囁くように言った。
「とっても素敵な人で、私たちを護ろうとしてくれたわ。……ねえ、私が『視れば』聖女様の護りたかった物も護れるの?」
ラウラの頭をポン、と撫でてからサンディは笑った。当たり前のことを乞う甘え下手な少女に飛び切りの愛情を与えるように笑って。
「当たり前だろ? 不幸の魔女は『おやすみなさい』だ。
ラウラちゃんとして朝(あした)、目覚めるために。アナスタシアちゃんの護りたかったものを護ろう」
●
「今日よりもずっと良い、明日を迎えるため、に……わたしも、できる限りの事を、します……!」
フェリシアは調和の呪杖をぎゅ、と握り締めた。『運』という不確定な要素無くより佳き未来を勝ち取ることを乞う様に、味方へと力を授ける。
フェリシアの鼓舞を受け、前線へと飛び出したチャロロは機煌重盾を手に声を張り上げる。
眼前より迫るは歯車大聖堂。その周辺に位置する村々を救うが為、尽力せねばならないのだ。
「……このやろう、なんてタチの悪い兵器だよ、みんなの命も大切なものも奪わせてたまるか!」
唇を噛み締めた。チャロロの元へと飛び込むはスネグラーチカ。まるでひとつの部品のように自己の意思なく狂った兵士たちが武器を手にイレギュラーズへと襲い掛かる。
「わたし、まだまだ弱っちいけど……それでも、こんなの見過ごせない。だから、わたしも戦うねぇ」
最大限の出力を。そして、最高の威力を持って。シルキィは一直線に兵士を穿つ。白き翅を揺らし、一歩後退した彼女の眼前へ飛び込むは黒き猫。
戦闘能力有する猫がその尾を撓らせ、直線的に兵士を退ければカロンの唇が釣りあがる。
「くふふふ、何が聖女サマよ。何があろうと呼び声なんかに呼応した時点でタダのニンゲンだったって事ね、悲劇だわ! どんな劇にも幕は下りるの! ご退場願わないといけないワ!
略奪虐殺銃殺刺殺、あぁ血なまぐさい! 私そういうお話は嫌いなの!」
血腥い気配に頭をふるりと振った。魔女の傍で仕込み杖を手にしたアルヴァが目を伏せる。水色の髪は目深に影で被さった。
「少し、虚しい気分なんだ。相手になってくれないかな」
囁く声音と共に毒瓶が周囲へと投げかけられる。理解し難いは狂気を孕んだ兵士たち。魔種に操られているとは言えど罪のない住民を虐殺するなどは言語道断。
「……感情に身を任せるなんてらしくないですが、早くくたばってください」
「うん。鉄帝の街がこんなひどいことになるなんてアタイ悲しいぞ……こんなことするやつらはアタイがぶっとばす!」
その両腕には絶対的な力を込めて。モモカは自身の生まれ育った鉄帝国を護るがために敵へと肉薄する。この国は決して美しいわけではない。厳寒に晒されて、日々を慎ましやかに生きる人々に何の罪があるか。
罪など無いのだ。魔術を語るはまほろばの夢。フォルテシアはその翼を揺らし不吉を囁き続ける。
「これ以上の虐殺、略奪などさせません。止めさせていただきます」
――それが、より佳き未来(あした)へ繋がっているはずだから。
書は謳う。猛き暴風を指先ひとつ、呼び出して。ドラマの紅の瞳がそっと細められた。
「歯車大聖堂……中々異様な絡繰ですねぇ。設計図等残っているのであれば、見てみたいトコロではありますが……」
その姿は歪にして、異様。書に語られる古代の存在があったならば、それが聖女を磔にするなど戯曲にも無いとビブリオフィリアは風を手繰る。
聖なるかな。聖女と呼ばれたその人は人を救うが為に全てを飲み込んだ。その在り方はダーク=アイの指名では許容できるものではないと蠢く歯車を見詰めた。
「光あれば影は消えぬ。死なぬ。足掻くな、既に勝敗は決している」
セリアが抱きしめるは雄弁なる代弁者。放たれる不可視の悪意が歯車兵たちを喰らい尽くさんと広がっていく。
鉄帝国軽騎兵隊軍帽を被ってロゼットは戦場を見回した。月光めいた青白き光は降り注ぎ全てを飲み込んでいく。ロゼットの尾はゆるりと揺れて、避難を担当するイレギュラーズ達を支援するように兵士たちを退けた。
「死にたくないなら、ここに残ってちゃいけない。早ク、ここから立ち去りナ」
ロゼットの月光の下、大地はそう声をかけた。怯え、竦む住民を庇う様に立ちはだかる彼の手には黒羽のペン。
敵の首を確実に刈り取るが為『首切り兎』の物語を言紡ぐ。敵兵に『戦場とは思えぬ好感』を抱いて飛び込んだ絵里がくすりと笑う。
「チャンスだから、お友達をたくさん作るよ! たくさん斬って斬って斬って、いっぱいいーっぱい! あはー」
ねえ、あなた。見て見てと手招いて吐き出されたはビーム一閃。『お友達』はきっと喜んでくれると心を躍らせゆったりと笑み零す。
「一人じゃないから安心してくれるよね? 迎えに来てくれた時に、びっくりしてくれるよね?」
「ええ、きっと。そうね?」
フィーゼは静かにそう返した。虐殺される人がいる。望まぬ蹂躙をされる人がいて黙ってみていられるほどに愚かではないのだと進むフィーゼの傍らで『Tricky・Stars』は白紙の魔導書に物語を綴った。
「では役者諸君、存分に力を振るってくれたまえ」
稔が言えば、虚が返す。過酷な運命を行くイレギュラーズが為にその手腕を振るい続ける。信託者の杖を手にモルテは翼を揺らした。
「流石に見境がナイのは少々いただけナイ。
魂ニハ送るべき時トそうでない時ガあるカラな。今はまだ大量ニ送るトキではナイ」
ティリーはため息を混じらせる。力こそパワーであると考えるこの国での危機と言われても一大イベントに思えるから緊張感がどこか薄い。
「だから鉄帝は嫌いなのよ。……でも、大っ嫌いな鉄帝の人間でも殺されるのを黙って見てるなんて出来るわけないでしょ!」
だから、助けるのだとティリーは敵を屠る鉄の魔物をそっと握りしめた。
イレギュラーズとして、いや、貴族として。責務を胸に進むのだ。
友人を救いたいと願う鉄帝軍人ロルフの前で幻は口を開いた。
狂ってしまった者も、襲われる者もそうなるまでの業は無かったはずであり、醜い過去が凄惨なこの現状に繋がるべきではないと――エゴでもそう思う。
「歯車兵士から戻るにはアナスタシア様が止まる以外に方法は御座いません。
魔種を倒せるのはイレギュラーズのみ。貴方様が今すべきことは僕らに事を託すしかないのです」
「それでも奴が戻ってくる証左はあるか? テオが『聖女』と同じタイミングでその心の臓を杭で貫かれぬという確実な答えなどどこにもないではないか!」
その声を否定するように幻の眼前へと飛び上がったロルフを受け止めたのはジェイク。彼女の周りにあるべきは平和な世界だ。悲しみの無い穏やかな凪など存在せず人々が塵芥が如く飲み込まれる様子を地獄と呼ばず何とするか!
「何も知らない子供達にまで手を出しやがって、こんなのが許されるわけがねえよな!
来いよ有象無象共が! 地獄に叩き込んでやる!」
ジェイクが声を張り上げれば、彼へ向う全てを受け止めるようにムーがまな板を手に声高に言葉を紡ぐ。
「遠からんものは音に聞け! 近くば寄って目にも見よ! 我が名はムー・シュルフ!
一介のバーテンダー! されど、その心は熱く煮えたぎるホットバタードラム! ゴキブリのように駆除してみせん!」
何処までも、何処までも。全てを受容れるために演技を交えた彼へと襲い来る歯車兵士たちは唯、虐殺の手を止め続ける。
「同情はするけれど……オイタはメッ、よ? ダメよ、此処で朽ちなさい!」
白いフリルを揺らす。美しい笑みを浮かべ、茨を伸ばしたヴァイス。美しい花には棘がある――惨いその事象を止めるが為に淑女は攻撃の手を休めることは無い。
「酷い状況だな……だけどショックで足を止めてる暇はない。1人でも多くの住民を助け出さねぇと……!」
ハルラは敵を足止めしながら、うかうかはしていられないなと振り向いた。眼前ではロルフ達が応戦を繰り広げている。
「もつですよ。どんな所以か判りませんが私のやる事は突撃のみですね。
ぶっ放しますよ。生命絶えれば皆おにく。だったら私もおにくと成りますよ!」
もつは保存食(おにく)を手に走った。ベーコンへの愛情をこめて、ベーコンべコンでベッコベコにする為に兵士を相手取るもつの傍らで頭がくらくらするとマリリンは首を振った。
「ごめんね、兵士さん! 水神マリリン様の前でそんな事させないんだから!」
逃げ遅れた人々を救うがためにマリリンは手を開く。ロルフたち歯車兵の手より、避難民を救うべく、コルウィンはキラード・バグを手にして背後から兵士たちを打ち抜いていく。
「ふむ……あちらで避難誘導を行っている。歩けるなら行くと良い」
●
パカダクラが馬車を引く。駱駝車を操縦しながらオーカーはその耳を頼りに逃げ送れた人々を探した。
誰かを護るが為、走るオーカーの視線の先に、頭を抱え泣き叫ぶ子供の姿が存在する。
「首を撥ねられる覚悟は出来てるかい?」
巨大剣を振り上げてシキはじつと歯車兵士を見遣る。狂気、錯乱、混乱。どれもが都合のいい言い訳のような世界でシキは背後で震える女へとそっと笑顔を水を差し出した。
「だーいじょうぶだよ。あんたの物語を脅かすもの全部、私が切ってあげるさ」
だから、此処は任せろと、ゆっくりと剣を確かめるように握る。魔術と格闘、そのどちらも織り交ぜて、シキは跳ねた。
「ええ、戦う力を持たない人々を助けるのも大切なことですよね。
私の手の届く範囲は狭いですが。目の届く限りは癒すこともしましょう。そのために得た力なのですから……」
四音の背の腕が緩やかに動く。左手の聖痕に魔力を込めて調和を賦活へと変化させた幼き少女は首を傾いだ。
「もし、邪魔する方が居たら? えーと、普通に拳でぶっとばしますけど何か?」
救いを求める人の声を聴いて、シャロンは周囲を見回した。穏やかに、そして落ち着き払った調子で自身をサポートする鼎を見遣ってはシャロンのかんばせには苦い笑みが浮かぶ。
「さぁ……ひと仕事と行こうか。……って、相変わらず落ち着いてるな、鼎は」
「ふふ、シャロンの医者としての腕は信頼しているからね? ちゃんと救える人は救えるとね」
そう言われれば喜ばしい。尽力しようと走るシャロンを支えながら鼎は静かに言った。
医者が倒れては意味が無い。だから、一息つけるときに一度落ち着いてくれ、と。滴る汗があせりを滲ませる。ああ、けれど――君と一緒なら、何処までも走れる気がするのだ。
「私さぁ……各国渡り歩く商売人なわけ。こーゆーことされたら販路も滅茶苦茶、困るなぁ。
商売したくたって、買う人がいなければダメじゃんね!」
オロディエンは宝石弾のスリングショットを手に避難誘導が為に言葉巧みに声を掛け続ける。
全員を戦場外へ逃がすには時間が掛かりすぎる。オロディエンの指示を聞きながらローズが作成したのは彼らを保護する場所だった。
「強きものに弱きものは食われるのが世の常だけど、弱きものが強きものに逆転する逆転モノもいいよね!
どこのコミケでも必要なのは救護室! それを作っちゃうよ!」
下克上だって萌えの宝庫だ。しかし、萌えとオタ趣味は健康であったこそだと彼女は良く知っている。
「レオンの好きな人を近づけない空気がいい! ディルクは俺様系なのがいい! 掛け算したくなっちゃうよね!?」
ついでに言えば天真爛漫な月原に、頼りきりな山田も居る上に、イジられイケメンギルオスだって居る。カップリングの話ならば此方に来いと『濃い名乗り』でローズは翻弄し続ける。
「フハハハ! 確かに人は小さく弱きもの! 塵あくたも同然よ! だが塵も積もれば山となる!
故に守る価値がある! 貴様らの言う塵の一片まで、完璧に守ってみせようぞ!」
胸を張ったグェルド。戦士とし、粘り強く耐えるがこそだと彼は堂々と声を張る。
グェルドの声を聞きハルアは静かに目を伏せた。重なり縺れた想いで誰が悪くて誰が正しいか、其れさえも分からない。だから――
「でもボクのやることは一つ。今からの悲しみを0にする!」
――自分を信じる他に無いのだと、ハルアは自身の身体を突き動かした。
その医療技術を用いてミシャは応急処置を続け続ける。白き衣を纏い、誰かの支えになるべく尽力するミシャはゆっくりと顔を上げた。
「大切なもの、大切な命……これ以上奪わせるわけにはいかないわ」
迫り来る。迫り来る。眼前の歯車大聖堂の囂々とした音が耳に痛い。
「歯車大聖堂! 絶対に蹂躙阻止するゼヨ」
鈴音はびしりと指差した。囂々、囂々。全てを飲み喰らう暴食の獣の如く、人々の希望を歪めた磔の聖女の『本来の願い』が為に救いの手を差し伸べる。
「みんなー助けに来たヨー」
「まさかここまでのことになるなんて思ってなかったのよさ……とにかく救える命は救うまでだわさ」
リルカは痛みだけでも和らげなければと癒しを与えながら人々の保護へと走る。涙を浮かべた幼い子供へとそっと差し伸べた掌は白く、そして暖かい。甘いキャンディを舐めたならば少しでも心を落ち着かせられるはずと、彼女はそう、穏やかに息を吐く。
「全てが終わった後、お葬式とかしないといけませんからね。空の棺桶は寂しい物です」
乞う様にねねこはそう言った。人の命が潰えたならば、その最後までを見届けるのが死を読み取る者の責務である。出来る限り美しいその死化粧を施した。
利一は唇を噛む。それでもまだ、生きている誰かを救うが為、彼は声を張った。
「私より強いイレギュラーズがみんなを守るために動いているから安心してくれ。
避難所まで行けば安全だ。あそこまで頑張って走るんだ!」
走って、動いて、その心の臓を弾ませて。何度も何度も、声を張り上げた。
「皆さんどうぞこちらへ! 後は私達に任せてください!」
パーシャは迫りくる兵士を見て唇を噛んだ。人を傷つける事なんて、できなくて。
首を振ったパーシャの前へとみるくが飛び込んだ。秋の夕暮れが疾く落ちる如くその一撃が
「月輪の力──思い知らせてあげる。押し返すわよ! 付いて来なさい!」
「パパの群れがめっちゃ怒ってる。いま襲われてる市民のみんなは、いわしと同じなんだ……」
みるくに続き、アンジュが手を差し伸べる。折れないこころを胸にアンジュは傍らの『パパ』の憤りを代弁した。
「外敵に襲われて、追い詰められて、食べられて――アンジュといわしの目が黒い内に、そんなの許されると思った? いわしは一匹一匹は弱いけど、みんな集まればサメだってマグロだっていわしのおやつになるんだよ!」
これが魔種の狂気に侵された兵なのだとそれを見やりながら目を伏せる。実に面白くないのだ――何もかもが、面白くない。
「暴れまわるのにも何の感情も見せない、機械みたいに殺しまわる―それじゃ張り合いも、楽しさもないわね。
その点、あなたはどうかしらね? 理性を保っているのでしょう――“ロルフ”様?」
02はロルフと相対し続ける。仲間たちと足並み合わせ、攻撃を重ね続ける。
「そっか、みんなおかしくなってるんだ。
殺して、奪って、殺して、奪って……そうやって、何もかも、ゼロにするんだね……」
唇を噛めば、アクアの身より溢れ出した漆黒の焔が強く、強くなっていく。蝕むその焔を受け止めて、ロルフは一歩後退した。
戦線維持のため舞妃蓮は『チェシャ猫』の様に唇をつい、と吊り上げ癒しを仲間たちへと与え続ける。
「私はかよわいアリスではあるが……などと嘯いている場合でも、どうやらなさそうだな」
正気を保っているならば、狂っていないならば――依狐は流れ弾が一般人へ飛ばないようにと手を伸ばす。
「皆生きてる、生きたいから抗う。だから依狐、頑張る!」
竜の呪いをその身に宿し、依狐が走る。傷つかないように、庇って、そして、すべてを救う為にと依狐は前を向き続ける。
「私は何とだって戦います、それがこの国に住む人を脅かすものならば、魔種だろうと、歯車大聖堂だろうと」
指揮官を止めれば、すべてが終わる可能性があるのだと佐里は分かっていた。赤く彩られた片手剣を手にした復讐者は赤き一閃を放つ。避けると踏んだ先へ。未来へ。
清音はくすりと唇を震わせ笑う。星狩りの大弓を爪弾いては『宗教勧誘』は必要ないと首を振る。
「仰山雁首揃えて、仲のよろしいとこ申し訳ないんけど、早々にお引き取り願いましょか」
清音の言葉に合わせ、アイゼルネが奇襲をかける。巡る狂気を感じ取りつつ、その狂気は『イーゼラー様』への冒涜であるとアンゼリカはゆっくりと顔を上げた。
「あらあらもう限界でございますか?楽しいパーティはまだまだこれからでございますよ?」
カンナは悪の集団だと、その地獄を見遣った。無辜なる民であろうとも悪に堕ちたというならば、それは神敵に他ならない。無辜の民を害される前に神の御許に送る事こそ異端審問官の役目であると自認する。
「さあ、略奪を繰り返す暴徒達よ、祈りなさい。神の名の下に貴方達を神の許に送り届けましょう」
カンナのその言葉を聞きながらイナリは巨人の槌を振り上げる。自身がまだまだ駆け出しであることを分かっている。だからこそ、少しでも力になりたいと出来る限りを尽くし続ける。
「……傭兵だった私の言えたことじゃないが、略奪なんてろくなもんじゃないからね。見てて気分が良くないもの」
フリーリカはその両手に情念の刃を握りしめる。ロルフへ向けてその拳を振り下ろす。正気の儘だというならば『戻して』やる為に余念はない。
「ああ――よくはない」
首を振る。イヴァンが踏み込んだそれを庇う様にバトバヤルは滑り込む。
イヴァンが顔を上げ、どうして、とバトバヤルを見遣るが彼は首を振った。
「なァに、素敵な騎士様に恋い焦がれるお嬢ちゃんのためだ。この程度、軽いもんさ。
……帰る場所がなくなるってのは、辛いもんだからな。守れるんなら、守ったほうが良い」
「―――」
誰の事かなんて、分かっている。イヴァンの前でマントをはためかせて剣斗は片割れの刃を握りしめた。
「フハハハ! 略奪? 大いに結構! 我が祖国『鬼楽』では当たり前の事であったわ。
所詮、この世は弱肉強食……強き者が弱き者を糧にするのは自然の摂理。故に略奪自体は非難しないさ……俺が許せんのはな……その略奪に『信念』がないことだ」
剣斗の言葉にンクルスはその右手とその左手を組み合わせて祈る様に声を震わせた。
「信仰というのは人それぞれ。そっちにも理と信念があるのだろうけど……だけど私も自身の信仰の為に引けないかな。祈りは皆の為に。力は人々の為に。私はそう思ってるんだよ!」
ドヴェーリ・ヴィ・ライの主人公の真似をして。ンクルスの傍で拓哉は難しいことは分からないけれど正気に戻す為ならば何度でも殴り続けるのだ。
「応、この空気は懐かしいな、同志よ。いいもんだとは言わねえがやはり、戦しか能がないなァ俺は」
栄龍はゆったりと笑みを浮かべて笑った。文人は栄龍の言葉を聞きながら、血が沸き立つ感覚にここが『故郷(せんじょう)』であることを実感した。
「我が家訓を胸に……鋼の如く強く……刃のごとく鋭くあれ! 刃金文人……参る!!」
「さぁ、同志諸君。この戦場に我等鳳国の旗を掲げようではないか!」
雷華は己の中に沸き立つ闘志を胸に、司祭クレーメンスへと向かい進んでいく。
――我が身は嚆矢。続く波濤こそが本命よ――
堂々たるその言葉に栄龍に寿彰は戦場に存在するという心地のよさに高揚する気持ちを抑えきれぬと唇を震わせる。自分が生きているという意味を、そして意義を感じることができるのが戦場だ。
「全ては祖国の為に! この戦いが終わったらタコがふんだんに入ったカレーを腹いっぱい食べたいでありますね!!」
「ええ。ならば、ここは支援をお任せください。どうぞ、ご武運を」
確かめる様に藍はそう言った。クレーメンスへ向けて突撃かけた『鳳圏』の、その勢いたるや留まる所は知らない。
華綾は傍らに、文人がいることを確かめて。自身の力になるのだと彼女は災厄を身に纏いて、前進する。
「我は決して折れぬ華。茅野華綾……いざ、参りまする!」
――幾千幾万の屍を超えてきた我らの刃を受け、愚昧な逆徒よ! 徒花と散れ!
ロルフは呻いた。我が級友が為ならば、この手を汚すことは厭わぬと。
彼の視線の先にいるテオは――どこまでも、実直に、剣を振るうことだろう。
膝をついた彼へと断罪と声高に叫んだクレーメンスの体が揺らぐ。その背後、雷華は目を伏せた。
「さあ、全てが終わったら聞いてみましょう。
誰を救うと言ったのかしら――その赤に塗れた手で?」
02の言葉は遠くに見えた聖堂へとは届かない。ああ、轟轟と聞こえたその音は。
●
民を集め、出来る限りの被害軽減を狙うのはフィオナであった。誰もが、不安を抱えている。だからこそ――出来る限りを尽くしたいのだ。
神那は瓦礫の下を探索した。家屋が斃れ、人々が呻くその地獄の中で、ひとつでも毀れぬ様にと手を伸ばす。命に貴賤はなく、手を差し伸べることは決して悪いことではないのだ。
「住むところ壊されるの、すごく大変。
海に機械はいなかったから、びっくりするしちょっとこわいけど。がんばる。えいえいおー」
慣れない世界だという様にぱちりと瞬いたルルゥ。英雄を謳うことこそ、ルルゥの仕事。
Софияはルルゥが言った『海に機械は居ない』。しかし、聖堂に足が生えたナンセンスな姿は彼女にとっても許容できない。
「虐殺と略奪などと。信仰の形は違えど神に身を捧げるものとして、このようなことはあってはなりませんの」
指先を組み合わせ、Софияは首を振った。そう、リリーの脳内ではそれこそ『カニ』に似ていた。
「カニコピるとか……サイアクじゃん……」
海の生物、カニを想像しては小さく呟き続ける。カニ。つまりはそう言うことだ。最悪なのだ。
「カニ賊死すべし……カニから逃げたいよね……分かる……」
デボレアは時間稼ぎを行い続ける。無論、それが良き未来につながると信じての行いだ。
逃げ遅れた人を助けに行くのだとメイは走った。
「おい戦犯、手伝え。お前だよフェリクス」
胡乱にそう言った史之はため息を混じらせた。神様が理不尽であること位、皆、分かっていただろうに。
家族の死も聖女の反転も、略奪も、そしてこの現状だって――『有り得ないことではないのだ」
「聖女がこうなったのは、お、俺……?」
「そうだ。お前のせいだ。けど自分で決めたんだろ。神と共に歩むと。
なら腹くくって顔上げて一緒に行こう――お手をどうぞ聖者様」
差し伸べた掌に意を決したフェリクスが頷いた。その手を取って、彼は史之と共に伝令を務める。
遠くに見えたギア・バジリカ。怪物だといわれようが、あそこには聖女が乗っている。――憧れた彼女が居る。
「アナスタシアは、救えるだろうか」
零されたその言葉に史之はさあ、としか言えなかった。
「くそっ、人がいっぱい死んじまう! 敵を倒してる間に、人がどんどん死んでいく!
元凶を止めなきゃだけど、でも……くそっ!」
歯を食いしばる風牙。誰もを救うがために手を伸ばしたいのだとそう口にした彼に頷いたリンディスは人の未来と叡智たる本を守るが為、その両脚を動かした。
「見つけた! ……風牙さん!!!」
手を伸ばせば、届くはずと信じている。リンディスと風牙が前線へと飛び出し、兵士を留めるその間にそっと手を差し伸べたアカツキは項垂れた住民の頬に着いた塵を拭う
「もう大丈夫じゃぞ。ほれ、あっちへ駆けるとよい。妾が炎を飛ばした方向じゃな」
エーオースの焔はちりりと揺れる。三人寄れば文殊の知恵。少女の物語を支援すべくアカツキはにいと笑った。
「妾達に任せよ! さあ、風ちゃん、リンちゃん! 行くぞ!」
星官僚のタクトを手にして、イージアは人々の避難を続けていく。死者を減らすことも神官戦士の務めなのだ。
「神官戦士として民が戦に巻き込まれるのを黙っている訳にはいかない」
P・P・Pは神秘媒体を手に目を伏せた。この惨状を地獄と呼ばずに何と呼ぶか!
「神とは何処にいるのでしょうか。このような惨劇を前に神は何をしているのでしょうか。
世界の崩壊の前に、一つの国の崩壊などは些事にすぎないというのでしょうか。私にはわかりません」
首を振る。進まねばならないのだ。だから、手を伸ばす――すべての為に。
「避難の流れを作るよ。そして流れを守ろう」
ラースは避難民たちを救う為に簡易案内看板を作成し、できる限りの避難の流れを形成し続ける。
「せめて助けられる命はきちんと助けましょう、そのために私達がここに来たんですから」
指先に灯したは希望。初季の上空を飛ぶ鴉が情報を伝え続ける。進む足を止める事無く――乙女は盾として自身の身を投じる。
「兵団とか名のっとるけど、やっとる事山賊やろ。こないな悪行、止めなあかんよな!」
人手が必要だろうと言ったリルへと初季は頷いた。いくら正当化したとしても弱者を虐げる悪逆非道は許せない。
――だから、奪った。
あの清廉なる聖女の昏き過去が、フェリクスの告発と後悔が。
史之の言う通り『この現状に責任を感じている』とするならば、これ以上の略奪を許してはならないのだ。
――だから、願った。
「狂気に触れたといえ、守るべき民を切り捨てるようになるとは……嘆かわしいものです。
貴方は人を守るがために、軍閥となったのではないのですか?」
リュティスは目を伏せる。ひもじくも苦しい生活を送ったスラムの民を救うが為、彼女が見据えた先には『失うものも何もないと捨て身に特攻する』男一人。
彼の為と剣を振るう人がいることを、きっと――テオは知らぬのだ。
「こそこそする方が性に合ってるんだが、今日は特別だぜ? 見惚れて逃げ遅れんなよ!」
キドーはにたりと笑った。琥珀の大塊より切り出されたナイフを振り上げて、ぬらりくらりとテオを狙う。
鉄帝国でも有力な将校であるという彼は『避難誘導を優先した場合勝機がないのは確定的』だ。――しかし、それを交わしてしまえばテオを狂気より戻すことが出来る可能性だってある。
「テオを生かしたいのは別に情けなんかじゃねえせいぜい気張ってみせろよ。軍人なんだろ!」
「――」
言葉は無い。しかし、汰磨羈はそれでも容赦はしないと矜持を乗せた煌輝を握りこんだ。
勝ちを求める。どれだけ勝てないとしても一発逆転を狙えることをイレギュラーズは経験してきた。冠位との戦いは巨悪であり強大なのだ。
「これ以上の狼藉は許さんよ。絶対にな。貴様は、この場で釘付けにする!」
厄狩闘流『旺霊圏』。霊力で自己を強化し汰磨羈はテオの眼前へと躍り出た。
「軍人さんが守るべき人を虐殺してどうするであるか……!」
惨いとボルカノは言った。青白く揺れたは妖刀。人々の救いの声を聴きながらボルカノはテオがこれ以上億へ進まぬようにとその身を投じる。
「愛国心があるという方ではないですが……故郷の危機とあれば参戦せざるを得ないですね。
――ラド・バウの闘士、片白・蘇芳、参ります!」
暗黒の星は煌いた。小さなビスク・ドールは踊るように無数の糸を張り巡らせる。
蘇芳が踏み入れた一歩の先、そこを飛んだは魔力の弾丸。クリスティーネは目を細めた。
「狂ったとは言え、元は精強たる鉄帝国軍人。油断するつもりはさらさらないよ」
助けてやりたい、そう願う。狂ってしまったのであれば、その手が血に染まる他無いことはクリスティーネとて知っていた。
「楽にしてあげるのが最善の道――許してくれ。君が自分自身で元に戻る道がある事を願っている」
「カナがなんとかするから! 逃げて、はやく!」
迫りくるテオを抑えるキドー達の背後でカナメは叫んだ。これ以上、失われていい物なんてない。
どうして、と聞けば。どうしても、と答える人がいた。
儘ならぬ実情に、儘ならぬ返答を返すのだ。
人間とはそんなもので――何処まで行っても『終わらない』問答を繰り返す。
あの聖女だってそうだった。聖女だって、生きるためには『仕方がなかった』のだ。
「けれど、失われていいものなんて、ないんだよっ」
カナメは言う。奪うものが居れば抗うものだって存在しているのだから。
「人が沢山、壊すもの、逃げるもの、ファルムはこれを本で見たことがある。
主が読んでくれた話では、ひーろーというものが助けに来ていた。……ファルムも、もしかしてひーろーなのだろうか」
首を傾げる。ヒーローという存在がいたのならば、きっとすべてを収めるのだろう。
誰かにとって、その手を差し伸べる素晴らしき存在になれるのだとすれば。
救いを求める人に手を差し伸べたロロンはきっと、イレギュラーズはヒーローなのだと感じていた。誰かにとっての希望で、繋ぐための未来がそこには存在している。
「オーホッホッホ! 私の前で無辜なる民に危害を加えるなど言語道断!
騎士を目指す者として民には指一本触れさせてなるものですか!」
ルリムは正義の名を関する剣を振りかざす。ヒーローは誰にだって手を差し伸べる。
テオと歯車兵士の声がした。邪魔をするなと苦々しくも、忌々しく。その声音に小さく笑ったルシオは目を伏せる。
「追い詰めた? 違うよ。君達を誘い込んだんだよ」
振り向いて、ルシオは言った。――ここから先には暗い未来は存在しない。
粘り続けたその時間にテオの元へとたどり着いたロルフは彼へと良き未来(あした)を求めるべく、ただ、ただ、叫んだ。
「もう奪うことは許しません……! これ程の大事、何も思わぬわけもないでしょう……?」
ミィの不安げなその声音に、ロルフは肩で息して頷いた。
「やる事はStraight!単純さ! 避難している人を背負って安全地帯まで運ぶ!
それがハロゥ達のやる事さ! なら、君は? friendsの為に何をするんだい?」
ハロゥはただ、そう言った。ウィンクをひとつ。愛らしく笑ったハロゥの視線はイレギュラーズ達と相対し続けるテオに向けられる。
「もう――、やめよう。テオ。これ以上は……何も得られないんだ」
協力したって軍の上部にいけるわけでもない。その掌には何も残らぬと涙を零したロルフをこの場所へ送り込んだイレギュラーズ達は一縷の希望に縋った。
「……ああ、やめよう……」
――彼が、級友と共にいられる未来を。目指したのだ。
●
項から飛端に至るまでの真紅。赫塊と共にココロは走る。ぬいぐるみを抱きしめて、ココロは大切なものを護るが為にと周囲を見回した。
「さあ、往きましょう。護るため、救うために――神が其れを望まれる」
死ぬのだけは死んでもごめん。だからこそイーリンは漆黒の牝馬を駆り『大切なもの』を護るが為にルートを告げる。
その瞳で感知した色彩に、聴覚を交え効率と実利を兼ねたルートを進む。歯車大聖堂の糧になどするものか。
「その人達が手放すに持っている何か、それが、大切なもの……!」
「ええ、そうよ。護りましょう」
イーリンの言葉を聴いてから、ウィズィは未来が為に踏み出した。誓いと覚悟が、彼女を前へ前へと進ませる。
「もう大丈夫! 助けに来たよ!」
救いの指先は、大切な『者』にだって伸ばされる。その思いを護るが為に、掻き抱いた可能性を離さぬように。そうして人々の大切な『もの』を護ろうとするイレギュラーズへと一刀投じる兵士たちは誰もが狂気という苛立ちに駆られ続ける。
シャッファはその身に打ち付けられた神秘の気配に歯を噛み締める。ここで挫けては何かに繋がる可能性だって潰えてしまう。可能性(パンドラ)の蒐集者、特異運命座標、人を救うが為に力を与えられた混沌世界の希望。
「『聖女』が守りたかったはずのものすら壊して根絶やしにして。
誰が希うた未来なんだ。こんな。くだらねぇ。誰得。ほんと――」
サンディが吼えた。運命の鎖が絡み合ったとしても、未来が為なら壊してみせる。
「さあ、毒麦を刈れと天主が望んだとさ、総員抜刀ッ!」
眼前迫った兵士へと。護るが為ならば剣を引き抜き戦って見せるとアトは声を張り上げた。
年老いた影の国の馬を駆り、その戦略眼はその先に見据えるべき場所がある事を認識していた。
アトに鼓舞され前線が兵士を惹きつける間に、後方での救護と支援を行うバルガルはオフロード車を走らせる。駆動するエンジン音と共に怯えた避難民たちへと彼は穏やかに声をかけた。
「どうぞ慌てずに。レニンスカヤさんの方も乗れますのでパニックを起こさないように」
「バルガルさぁん! 大事な人たちをお願いなんだねー!!」
ぴょこりと耳を揺らして。死神は髑髏を求め演劇のように蹄鉄を鳴らし続ける。レニンスカヤは小さく笑った。
「うさねぇ、思うんだよ。大事なものをとられたら悲しいって。
だからうさはね、絶対とりかえすんだ。怖くても頑張るんだね!」
レニンスカヤの前へと飛び込んだ兵士。両手を広げたレニンスカヤの眼前へとミーナが躍り出る。希望を束ねた剣の切っ先は不吉を告げた兵士へと落とされる。
「なんだっていい、今日の私は機嫌最悪だ。……敵は全部、ぶっ倒す」
苛立ちを、力に変えて。光を飲む闇の領域に惧れ怯え、喰われろと兵士たちを飲み込んでゆく。
ずん、と砂塵が立ち上る。巨大な猫の手は兵士へと降り注ぎニャーが「ふにふにの肉球をお見舞いだにゃ!」とやる気を見せる。
「人の物も命も奪うなんて酷いにゃ。少しでも明日の笑顔が増えるよう頑張るにゃ!」
「……怖いけど。少しでも悲しみが減るよう。アスも先輩さん達と一緒に頑張りますにゃ!」
蒲公英の朗らかな身体の狼はアステールを乗せて戦場を駆る。ニャーにあわせて放った赤き衝撃が周辺へと衝撃波を放つ。
二人の背を見守ってからウェールは傍らのレーゲンとグリュックへと視線を送る。
「……大切な物か。とりあえずレーゲン。
このメダル三枚は俺にお前とグリュックで三人分の大切なものだが」
「大丈夫っきゅ。保護者のウェールさんが持ってるメダルは保護者さん。
レーさん、グリュックの三人分の思い出が詰まった大切なものっきゅ。気持ちが大事っきゅ」
胸を張ったレーゲンをそっと抱きしめたグリュック。物の価値ではない思いこそが糧なのだとそういうように立ち回るレーゲンにウェールはゆっくりと頷いた。
(戦うのは怖いし、痛いのは嫌だ……でも、明日周りの誰かの笑顔が曇るのはもっと嫌だから、私は中二病の仮面で、我になるのだ!)
パーフェクト・サーヴァントはなり切るようにそう言った。追従させるファミリアーの鳥はラウラの傍へ。
彼女の声は『不幸』を予知する。それを使用すれば、未来の可能性を防ぐ事だって出来るのだ。
「大切なものを奪おうとする、相手の思う通りにはさせねえぜ!」
堂々と、リックはそう言い放つ。誰にだって大切なものはある。それを壊す非道な行いを許してはならないというその言葉にパーフェクト・サーヴァントは頷いて癒しを持って仲間を勇気付けた。
アンファングは思考する。全ての情報を持って最善を掴み取るが為に――
(俺は記憶喪失で、大切な物も思い出せないが……この世界でできた大切な人達が頑張ってるんだ。だから俺も全力を出す)
アンファングが顔を上げ、最高率のルートを搾り出せば、ウェールは大きく頷いた。
「あはは……ねぇねぇ、なぁに、してるのかなぁ?
なぁにさがしてるのかなぁ? え? だいじなもの? お兄ちゃんの? それを持って行くの?」
イ・モウトにとって全部が全部お兄ちゃん。『妹』は『あの女』の指示なんだねとじろりと兵士を見遣った。
「ダメだよ? あの女の言うことなんて聞いちゃ。だって、あの女は悪い人なんだもの。お兄ちゃんの事を害するあの女の言うことだよ……? あはは!! あははははははは……!!」
誰かの想いを糧にして。希望と夢を喰らうて動くゲテモノに惑は「趣味が悪い」と小さく言った。
「物に籠められた気持ちの重さに気付けるっちゅうのは尊い事やけど、それを踏みにじる行為は気に入らんわぁ」
惑が『間接的』に邪魔をすると宣言したそれに頷くはリズリー。
「奪って価値を落とすどころか、画一的な建材にしちまうなんて、聖女が許してもあたしが許さねえ! ぶち転びな!」
聖女様は何を願ったのだろうか。こうして誰かから奪うことなど、願ってはいなかっただろうに。
世界を変えるのに犠牲が必要だというが――その犠牲は、許容できるものなのだろうか?
●
「人の大切なものをそのように扱うなど、許せません! 奪ったものは返してもらいますよ!」
白雪の翼で空を翔る。飛翔したノースポールに続き、サンティールが上空より降り立った。
「させないよ! ねがいも、想いも、そのひとだけのものなんだから」
司祭ザシャを眼前に捉え、二人の少女は標的となるべく声をかける。ザシャがアナスタシアに思いを馳せる様に、この場所には誰かの希いが存在しているのだから。
「誰かの大切なものがこんな形で踏み躙られるのを、黙って見てるのは嫌なんだ」
イーハトーヴがその両腕に抱いたのは愛しのオフィーリア。おしゃまなうさぎの女の子はきっとこの状況に気丈に立ち向かい、惧れを口にしないのだろう。
「危険な目に遭わせてごめんね……絶対に君を守るから」
「ああ。護ろう! 嫁殿は世界でたった一人の愛する人なのだ」
嫁殿をそっと腕に抱き鬼灯はそう言った。歯車鶏の声が響く。戦うことは怖くないとサンティールの指先がノースポールから離れる。
鬼灯は嫁殿を護るように眼前より迫る敵を鋭き眼光で睨み付けた。あの美しき白雪の頬に悪漢の指一本たりとも触れさせてなるものか。
「大丈夫、きっと取り戻せるよ――大切なものは手元にないと悲しいものね」
そっと抱きしめて、その両の腕の中にきちんと持って置きたいと文は祈る。柱時計の長針は進む。止まる事無く、まっすぐに。
「大丈夫、古代の機械より未来のロボットのほうが凄いんスからね!」
イルミナは民を庇い続ける。傷がつかぬように、大切に。彼女の視線の先、不安げに眉を寄せ『未来を視た』ラウラが立っている。
「どうして――……」
イレギュラーズだって傷だらけになるのに。けれど、イルミナへとフランシスが送る癒しは鼓舞の意味も込められる。
「僕は知識だけしかありませんが、今を生きています。共に生きている、生きようとしている方々を助けましょう!」
「生きる?」
死にたいと、願った今があった。不幸しか見えない自分は、誰かに助けてもらうしかない自分は、酷く役立たずに思えたから。
「フランさん、いくっスよ!」
ラウラは二人を見詰めてから唇を噛んだ。
私だって、生きて。私だって、救って。私だって、誰かの役に立ちたい――!
「―――――」
天空へと翼を揺らしてナハトラーベは碧空へと一気に黒翼で穴を穿つ。目指すは上空だ。歯車兵たちが狙う『大切なもの』を奪われぬ様にとその両手にしっかりと抱きしめる。
安全地帯へのエレベーター。自身をそう、表現した少女より、ひらりと一枚の羽根が落ちたその下でラウラはその両脚を震わせた。
眼前に迫る歯車兵。迫る、迫る。それが死を直面させたようで。
「――!」
「不幸限定でも予知は予知。戦略的に見たら貴女の情報はかなり有力よ。明るい未来のために、貴女は守るわ」
受け止めたリカナは魔銃ザミエルより弾丸の雨を降り注がせる。破壊と略奪を繰り返す聖堂は『狂った吸血鬼』のようだと皮肉を告げてシャルロッテは蝙蝠の翼で空を舞う。
「防御陣形! 強敵来るわ! 急いで!」
永生者として磨き上げられた剣術で繰り出されたは紅の流れ。それに合わせてティエルはジョーカーを繰る。
「なぁごなぁご! ――予知はなさそう?
じゃあこの戦いが終わったあとの、我儘でも考えておいて……アイス三段の食べたいとかでもいい」
莫迦みたいに大きな建物はすべてを飲み喰らい轟轟と動き続ける。ああ、その音は何処までも異質に響いているのだから。
「アイス……?」
「あんまりそういう経験ない? じゃ、アイスはとりあえず未来(あした)の約束ね」
大切なものには命が宿る。だからこそ、誰かの力になりたいと『迫害された少女』は願ったのだろうか。
「俺の故郷では、そして、いつか、神様になるって、そう言われてる。
そんな魂の片割れを失ったら、たとえ体に傷一つなくても身を引き裂かれる思いだと思ったり」
「大切なものはちゃあんと、大事にしなきゃあ。炉にくべてええ思い出の品なんてのは黒歴史ノートだけよね。俺も持ってくればよかった、なんてね」
付喪神。そういうものもいるのだといった角灯にブーケは頷いた。炉にくべて暖かな焚火をするなど命を燃やすのと同義だ。
救うが為、走り出す。瓦礫の下に埋もれた思い出を探し当てる様にレナードは手を差し伸べた。
「聞こえるぜ。子を思う母の声が。未来を奪われた子供たちの嘆きが。明日を願う人々の祈りが!
分からねぇのか、テメェらが『塵』と吐き捨てたモノがどれほど尊いモノだったか!」
唇を噛み締め、略取に訪れた兵士たちを退ける。レナードに合わせ、士郎はウロボロスの烙印介し魔術を巡らせる。魔術回路より放出された魔力弾は兵士のその横面にぶち当たり宙を躍らせる。
(ワシには事情は分からぬ。しかし助けを求める声はワシにも聞こえた。
忌まわしき魔術師でも力になれるというのであれば、喜んで手を貸そうではないか!)
華を抱き上げてエルは走る。自身の家にだって、大切なものは眠っている――けれど、それは『どこに保管されている』のかをエルは分からない。ひとまず守れるだろうという認識の元、略奪を繰り替えす兵士の脳天を打ち抜いていく。
「例え――神が許したってワタシが許さないんだから! 大切なものは奪わせない!」
芽衣は叫んだ。その誰かを傷つける攻撃は全て受け止めると手を伸ばす。鶏の声なんて気にしない。羽を毟ってやると芽衣が首を振る。
「もっとも、私にできる事なんて、誰かの『大切なもの』を横取りして、安全な場所まで持ってゆくことくらいしかないのですが……」
アンジェラはそう言った。有機家具。彼女が得た世界からの贈り物は彼女自身の存在を希薄に感じさせることもあるだろう。敵兵との認識を得ている働き人は『救援要請フェロモン感覚』を感じながら救うがために足を進める。
「あんな物を動かすために、命ばかりでなく大切な物を奪い、炉にくべるなんて許せません……」
見上げた先の歯車は歪に噛み合い動き続ける。アウロラは牙を見せ、走る、走る。
「大切な思いのこもった物を奪う……。コンセプトは面白い機械だな!
その物品の大切さを判断する基準も含めて! だがな、物に宿らずとも、大切な心はある!」
ジュリアは堂々と声を張り上げた。ラウラの為に、明るい未来を捧げるために。
「誰かの、大切な品、奪う……許さない」
修行中のみであれどグランディアは走った。許せぬことを、見過ごすわけにはいかなくて。
ラウラの予知を聞きながら、避難誘導と誰かの大切なものを守るためのイレギュラーズの戦いは進んでいる。
「……やるしかないよね。いざ、罪に抗すべし――!」
「無理を、無理をしないで」
誰も失いたくないと首を振ったラウラにウサーシャはにこりと笑った。少しでも力になれるなら立ち上がるのは間違いではないはずだと、柔らかなその笑みに俯くラウラは唇を震わせる。
「あっちで――怖い事が起こるわ」
「分かった。あっち――それは、返して! あんたらの物じゃないでしょ?」
魁真はラウラの『予知』に従い走る。彼女の見た不幸を全て壊すため。きっと、彼女は『誰かを救う可能性』を与えてくれたのだ。
「記憶なき私に大切な物はありませんが、銀槍はかつての誰かの大切な物だったといいます」
自身こそ、囮になって見せると無機質なかんばせに長髪の色を載せたエステル。ラウラは「ダメよ」と首を振った。
「あなたが囮になる必要はないわ。私が、私が――」
「大丈夫。イレギュラーズを信じろ。……怯え続ける必要はないんだ」
ジュリアのその言葉に、ラウラは唇を噛んだ。ラウラの予知を聞き走ったシルヴェストルにドゥーも合わせて動いた。
「ラウラさん。予知を」
「……え、ええ」
「情報は多い方がいい。それに、誰かにとって大事なものを奪って虐殺の道具に使う、許せる事じゃない、だから全力」
ドゥーは聞いた。ラウラは違うのかと。
違うわけなんて、なかった。大切な人を、大切な誰かを救いたかった。
自身は孤児で。そんな自身に優しくしてくれた『聖女』様。
この現状が彼女を贄とした不幸な未来だとラウラは『視』た。
後悔がいつだって付きまとう。断片的な未来だけでは何も――何も救えないのに。
「大丈夫。教えて」
ああ、それでも、勇気づけてくれて、『可能性』と『希望』を与えてくれるのだ。
神様がその力を与えたのだといっていた。
イレギュラーズ。
――私の、不幸の闇を払ってくれる希望。
「ねえ、もし……私が『不幸な未来』を見たとして。
それを払う力を手に入れたいと願ったなら――おかしいかしら?」
朝香はきょとりとしてから笑った。可笑しなことを彼女が言ったように。
「皆はアタシよりも強いから、不幸なことなんて全部、吹き飛ばしてくれるんだ!
だから、ラウラも強くなろう。信頼して、絶対にラウラの事は守るし、もう怖い事なんてないよ」
「ええ。……ええ」
掌に、力を入れて、ラウラは言った。
「ねえ。今は『視』えないの。もう――」
ならば、目を閉じて。
変わる未来(あした)で目を覚ますことができるのでしょう。
ねえ、『可能性』。ねえ、『イレギュラーズ』。
どうか、私の見た未来(あした)を幸福にして。
「さあ、より良い明日への第一歩だ」
シルヴェストルは遠目に見え得た歯車の『怪物』の駆動音が止まったことに気づく。
「勝った、の?」
シルヴェストルは頷く。勝利を何と宣言するかは人によって違うが、少なくとも守るというその行いは勝利の上にある。
聖女様。私に優しく微笑んでくれた、貴女。
――ラウラ、大丈夫だ。
――ラウラ、前を向け。
ああ、けれど、私は嬉しいのです。誰かの役に立てたことが、貴女の死と言う悍ましい世界がそこにあるのに。
変わった未来(あした)に居るのだと、愚かにも喜んでいる自分がいる。
聖女様と項垂れたフェリクスは、彼女が『歩みたかった道』を歩むのだと聖堂を眺める。
「不幸な未来(あした)など……我々が、壊せばよかったのに。
単調な毎日に慣れてしまったのだ。糾弾し、世界を変えた瞬間にこれ程までにあっけなく日常が変わってしまうのに」
気づかなかった自身が愚かだと項垂れる彼は首を振る。ラウラは『簡単に世界が変わる』事を知った。
「私も、貴方も……これからを歩んでいかなくちゃならないの」
だから、前を向いて。
●
神様は残酷だ。
神様は――それでも、私に期待を与えた。
「……ラウラ?」
イレギュラーズ達に誘われ、イヴァンが、そこに立っていた。
「イヴァン……」
「生きて、いたか」
貴方が、私のすべてだった。
貴方が、私を作っている。
貴方が、私の生きる道となる。
「世界が、変わったの。もう怖くないわ。……もう、誰も死なないの」
ねえ、そうでしょう? ――イレギュラーズ。
悪い未来を見たの。本当よ?
それは、街が蹂躙されていく未来だ。人々が飲み喰らわれてすべてが失われていく。
嫌だと声を張り上げても、何もできずに項垂れるしかない。
不幸の魔女。
不幸だった――けれど、手を引いてくれる人がいた。
だから、前を向ける。
だから、口にできる。
「助けて」
その言葉に応えてくれたのは『あなた』だったのよ。イレギュラーズ。
私、泣いてるみたい。
『彼』へ伝えることのできる未来(あした)に居られる自分に。
何かが変わったと思える、この世界(あした)に期待しているの。
馬鹿みたいに、子供みたいに。
けれど、この悪い夢はもう冷めたのね。
未来で昏き夢から目が覚めたら真っ先に伝えよう。
――おはよう、それから、ずっと、あなたの事が――
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ!
皆さんのおかげで格段に救える命の数があがりました。
大きな成果です!
それでは、おやすみなさい不幸の魔女。それから、おはよう。未来を生きる貴女へ。
GMコメント
夏あかねです。同時参加制限ありますので注意してくださいね。
どうか、明るい未来(あした)で目覚めさせてください。
●同時参加につきまして
決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(通常全体とは同時参加出来ます)
どちらか一つの参加となりますのでご注意下さい。
●成功条件
周辺の被害軽減
●ご注意
グループで参加される場合は【グループタグ】を、お仲間で参加の場合はIDをご記載ください。
また、どの戦場に行くかの指定を冒頭にお願いします。
==例==
【A】
リヴィエール(p3n000038)
なぐるよ!
======
●行動
戦場は広大です。村々には家屋や倒壊したがれきなどが存在し、逃げ遅れた人々が大多数存在しています。
彼らは戦闘能力がない女子供や老人も多く、放置していれば歯車大聖堂の餌となってしまいます。
【A】狂化した兵士及びスネグラーチカ歯車兵団の対処
魔種アナスタシアの狂気に触れ、狂化している兵士たちです。
進軍ルートの村々に対しての攻撃を行っています。
彼らは魔種の影響を受けて狂気に染まっており、略奪や虐殺に対して全く抵抗がありません。
一歩も引かず、周辺の住民たちを『歯車大聖堂』の餌にすべく立ち回ります。
・強力なユニット:司祭クレーメンス
元クラースナヤ・ズヴェズダーの司祭であり、狂気に触れたことでスネグラーチカの一員となっています。
アナスタシアに従順であり、彼女の糧とすべく虐殺と略奪を繰り返します。
・強力なユニット:鉄帝軍人ロルフ
ショッケン派軍人であり、周辺住民の虐殺をしています。彼自身は幼き頃からの級友テオが歯車兵士となったことで彼を救うべく協力しているようです。
・【味方】イヴァン
クラースナヤ・ズヴェズダーに怪しい動きがないかを探る鉄帝国のスパイ。
面目で職務に忠実。鉄帝国の皇帝に忠誠を誓っている為に、此度は国を救うたびに尽力しています。
スパイであることをラウラに言い当てられた事で彼女に注目していますが、彼女から感じる好意は彼にとって決して嫌なものではないようです。
・【味方】パルス・パッション
ラド・バウ闘士。可憐なアイドルファイター。此度は皆を笑顔にするために尽力します。
【B】避難誘導
歯車大聖堂の進軍ルートである村々やその周辺で略奪を行われる村々の住民たちの救出、支援、避難誘導です。
兵を斃すことだけが戦いではなく、こちらも重要な仕事です。
こちらにも略奪や虐殺を繰り返す兵は居ます。
・強力な敵ユニット:テオ
元鉄帝国軍人。狂気に触れて歯車大聖堂のために略奪や虐殺を繰り返します。
勝機はあまり感じられません。
・【味方ユニット】フェリクス
アナスタシアやショッケンが略奪を行った村の出身。家族が飢え死んだことでアナスタシアを糾弾しました。
騙されていた、と感じました。愛しい母を失った悲しみは埋められません。
しかし、それ以上にあの聖女様がこれ以上罪を重ねてほしくはないのです。
【C】大切なものの探索、および敵からの奪取
モンスター(歯車兵器)や兵士たちが略奪する大切なものを探索し、保護します。
歯車大聖堂の燃料は『誰かが大切にしたもの』であればあるほど良く、それを炉に溶かすことでエネルギーとします。
結婚指輪、アルバム、大切なアクセサリー、思い出の品。
そうしたものをモンスターたち所有者を殺し兵たちが奪い続けます。
・強力なユニット:歯車鶏
巨大な鶏です。その声で周辺を『麻痺』させることができるようです。
・強力なユニット:司祭ザシャ
アナスタシアを信仰する歯車兵。スネグラーチカ。
戦闘能力はアナスタシアへの思いで格段に強くなっています。
・【味方】月原・亮
ローレット所属の冒険者。前衛タイプです。指示には従います。
・【味方】ラウラ
不幸の魔女と称された少女。『不幸の信託』というギフトで不幸な未来を見ることができます。
彼女の未来予知は5ターンに1度。不幸を防ぐために参考にすることができます。
・【味方】ウォロク・ウォンバット&マイケル
ラド・バウ戦士のウォロクとマイケルです。ラウラの護衛にあたっています。
たくさんの人が戦場には取り残されています。
どうぞ、救ってください。
よろしくお願いします。
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