シナリオ詳細
<Scheinen Nacht2023>雪降る君に、祝福を
オープニング
●Scheinen Nacht
――輝かんばかりの、この夜に!
混沌世界を覆う白雪は、平和を象徴するかのようにはらはらと降り積もる。
誰も彼もが戦う事を止めた12月24日の夜。聖女の御伽噺(フェアリーテイル)は誰もが知る物語だ。
祝祭の如く、祝われた『シャイネンナハト』の過ごし方は人それぞれ。
ある者は家族とともに。
ある者は想いを伝えるために。
ある者は、今宵だけの僅かな平穏を楽しむために。
……まだ、『今』は。
●
「月原さん、月原さん」
慌てた様子で駆け寄ってきたリリファ・ローレンツに「どしたー?」と亮は声を掛けた。
「見付けましたよ、あの、前に期間限定だったチップス!」
「お、マジで!? 買っとこ。後何買う。ジュース?」
「良いですねえ。ケーキとかも買っちゃいます?」
「ホールは止めよう」
「まあ、残りますしね……」
軽口を交し合うのは月原・亮とリリファの常だ。斯うして過ごすようになってからかなりの年月が経った。
今年も特に示し合わせたわけではなく、何となく一緒に過ごす事が前提で話が進んでいたのだ。
「月原さんは他に何か食べたいモノあります?」
「チキンかなあ。あ、ローストチキン安売りしてる」
再現性東京20XX街、通称を希望ヶ浜と呼ばれるその地で亮は何となく一人暮らしなんてモノを嗜んでみた。
だからこそ、今晩はその部屋で一緒にゲーム大会の予定なのだ。だから、って程ではないのだけれど――正直、それが当たり前になって居たから大して考えて無かったのが本音である。
(まあ、普通はこの年齢で男女二人きりってダメなんだよなあ)
そんなことを考え倦ねて亮はちら、とリリファを見た。スーパーマーケットで安売りされているローストビーフと睨めっこするリリファを眺めてから息を吐く。
「何ですか?」
「何考えてんのかって」
――俺のことどう思う? なんて聞くような間柄でもない。何か積み重ねてきてしまったから、もうどうしようもないというのが本音の所だ。
「ローストチキンとローストビーフどっちがいいか、ですかねえ」
「牛」
「言うと思ってました」
買う物もある意味、何が良いか何て聞かずに分かるようになるだけの年月を一緒に過ごした。
今夜もどうせ、一緒にレースゲームをして、何となく過ごすのだ。何気ない平穏が続くならそれで良い。
そうやって一緒に居て、何時か――そう、何時か。
(俺も、リリファも旅人だしなあ)
帰るのか、なんて話が出て来たときに傷が浅い方が良い。
そんなことを考えて居る時点で相当なのだ。そう、相当、好きなのだ。
●
――御伽噺は知っていますか?
「輝かんばかりの、この夜に!」
それは、少なくとも今では無い――遥かな昔の『実話』であると言われています。
冷たい北風が吹き荒ぶ、暗い冬の出来事でした。
長い戦争状態にあった人々は、飢え、苦しみ、死に絶え、それでも殺し合いを辞める事は無く……
ただただ、泥沼の悲劇を演じるばかりであったと言われています。
最早人々の誰もがそれを望まず、兵士も、市民も、権力者さえそれに飽き。
理由の全てを失っても、それでも振り上げた拳を降ろす術を持たず。
誰もが、悪戯に意味のない犠牲を積み上げていました。
暗い夜の出来事でした。
何処にも救いは無い――暗澹たる世界に光が差したのは。
『聖女』と呼ばれた少女は、流麗な『悪魔』と長い話をしました。
「どうしたら、この争いを止める事が出来るでしょう?」
「何故止める。人間の業というものだろう? だから、彼等は――君達は人間らしい」
「沢山の人が犠牲になりました。もう戦いを望む者はいないのです」
悪魔は鼻で笑います。
「ならば、止めればいい。少なくとも僕は――人間がそう信じ、そう決めた道を肯定しよう。
何よりそれは人間らしく――同じく『要らないもの』である僕としては否定し難い。
……第一、君はどうして僕にそれを言う。解せないな、僕は不倶戴天の『悪魔』だろう?」
「貴方ならば、これを止める力さえ持つから」
「僕に戦争を止めろって? 面白い冗談を言うね。
七罪を統べ、狂気の声で混沌に混沌を呼ぶこの僕に?
要らないものとして切り離され、誰にも憎まれるこの僕に!」
「でも、貴方は私の友人です」
全く馬鹿げた事に――人々の心の支えとなる『聖女』と世界の敵たる『悪魔』は友人同士でした。
切っ掛けが何であったかは伝わっておらず、また大した意味も無いでしょう。
唯二人は、雪の降り積もる夜――淡い月光の照らす聖堂で、こんなやり取りをする仲でした。
「力を貸して貰えませんか?」
「……言葉の意味、分かってる? 『聖女』が反転して――どうするのさ」
『悪魔』の声に耳を貸せば、大きな力が得られます。
人の欲望を、人の狂気を――人の業を煽り、すがる者を破滅せんとす『反転』。
それは、この混沌の禁忌であり、冒涜そのものです。原初の『悪魔』に際して尚、その声を意にも介さなかった『聖女』は全く、最もそれに遠い人物に他ならなかったのに。
「君は友人らしいから忠告するけれど――『反転』は都合のいいものじゃない。
『君のような人間なら』間違いなく大きな力を得る。ああ、君は戦争を止める力を持つだろう。
だが、君の願いは正しい形では叶うまい。決してそういうものじゃない。過剰な力で皆死ぬ。
……まさかとは思うけど、それを望んでいるとでも?」
「いいえ」
小さく首を振った『聖女』はこう続けました。
「簡単な事です。力を貸して欲しいと言ったでしょう?」
「言ったね」
「簡単な事だわ。願いが叶ったら」
「……」
「『私の』願いが叶ったら、貴方が私を――」
「言うと思った」と溜息を吐いた『悪魔』は苦笑いのままに言いました。
「悪魔に何て役を押し付ける」
「貴方に向ける私の『祈り』、よ」
「成る程、上手な嫌味だ。今後の参考にしよう」
『悪魔』は肩を竦めて諦めたように独白します。
「君の願いを叶えよう。やはり僕は、余りに人間らしい人間が好ましい。
それに、君はどうしようもなく――放っておけない。きっと、全然妹に似ていないからだろうけど」
暗い夜は輝かんばかりの夜になりました。
その時起きた奇跡が如何ようなものだったかは不明です。
しかし、暗い闇を切り裂いたその光は余りにも鮮烈で、人々は『聖女』が身を賭して争いを終わらせた事を知りました。
……『悪魔』の名は伝わっていません。しかし彼にとっては恐らく迷惑な事に……彼の事が伝承に伝わったのは、『聖女』がそれを遺文に残したからです。『聖女』からすればお礼だったのか、意地悪だったのか……答えは何処にもありませんが。
毎年12月24~25日は混沌において戦いの禁じられる日です。
幻想の勇者王も、鉄帝の皇帝も、厳粛たる天義の王も剣を置いたとされます。深緑に住まうとある魔女はヤドリギの木に祈りを込め、平和への願いの成就を祈り、輝かんばかりの夜に思いを馳せたと言われます。
平和への祈りは、満願への成就にも通じました。
やがて長い時が経る中で、輝かんばかりのこの夜は、願いを捧ぐ夜へと姿を変えました。ある者は己が冒険の成功を祈り、ある者は恋の成就を祈り、ある者はこんな夜(クリスマス)爆発しろと祈り――当時のままの魔女はヤドリギへと願い祈りし者たちの願いを捧げ続けました。
さぁ、その願いが叶ったのかは分かりませんが魔女は言うのです。
「――願い祈りし者たちに祝福を与え、今日という日を幸福に満ち溢れさせるのです。
きっと彼女が望んだのは――そんな優しい夜だから」
その夜には祝福の星が煌き落ち続けます。旅人はその流星を雪のようだと称しました。
――御伽噺はこれでおしまい。
折角ですから、皆様も混沌の聖夜を楽しんでみては如何です?
- <Scheinen Nacht2023>雪降る君に、祝福を完了
- GM名夏あかね
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2024年01月11日 22時06分
- 参加人数106/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 106 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(106人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
●幻想I
派手なパーティーは余り好まないとベークはローレットにやってきていた。手作りパーティーを行なうギルド内はいつもの通りの気配がする。
「海洋も……派手ですし、竜宮も苦手ではありませんがなんか僕が場違いな感じもありますので」
なんだか竜宮では捕まって余興のたい焼きショーをさせられそうな気がしてしまうのだ。偶にはのんびりと過ごすのも、屹度悪くはないだろうか。
今年も忙しなかった。鉄帝国に覇竜に、天義に。幻想でも事が動いたと聞いている。バクルドはグラスを手に深く息を吐いた。
物事には山と谷があるがいうが、本当に世界は佳境を迎えたのだろうか。世情が変わりゆくと共にバクルドにも変化はあった。
「義娘ができて一緒に放浪して成長を楽しみにして――孤独が本質の放浪者が方なしだな、後悔なんて一切ないがな。
俺の後を継ぐ必要なんざ何一つないが俺自身何をしてきたかを遺したかったんだろうな」
黄昏れる季節にもなってしまったが、口直しに酒を飲まなくては勿体ない。豪勢な飯だってシャイネンナハトにかこつけて楽しめる。
「今楽しめるならとことん楽しまなきゃ損だ! 輝かんばかりのこの飯と酒と夜に! 乾杯だ!」
楽しげな声音を耳に為ながらエステットは祝いのムードを満喫していた。
わらわだと、こうやってみる、なんて飾り付けをまじまじと見詰め、ローレットを後にする。向かうは王城だ。
楽しげなパーティーには美しく豪奢な仕掛があるだろう。そうしたものを見付けたら記憶に残すのも屹度楽しい筈だ。
「聞き惚れてしまうデス」
流れるオーケストラ。優美なる調べを耳に為ながら、軽食を摘まみ食いして。
「ライゼ、こっちこっち」
ヨゾラに呼ばれてライゼンデは慌てた様にその背中を追掛ける。楽しげな友人は朗らかに笑みを浮かべて手を振るのだ――王様に。
ぎょっとするライゼンデを置き去りに「王様ー! ハッピーシャイネンナハトー!」と声を掛ける。
「ッ、国王陛下……輝かんばかりのこの夜に」
「ああ、輝かんばかりのこの夜に」
楽しげに微笑んだ三世陛下。何事も亡く受け入れられたことに胸を撫で下ろしたライゼンデの傍でヨゾラは「この後予定があるからご挨拶だけ」と笑った。
パーティーを思い切り楽しんで、それから――
「楽しいね、ライゼ。こうやって来年も過ごせたらいいなぁ。
再来年も、その先も、ずっと……僕に何があっても…親友達には幸せであってほしい。この後、別の親友に……こほん。
ううん、兎に角。今年も色々ありがとう…来年もよろしくね、ライゼ!」
「ああ、こちらこそ」
ライゼンデはああ、ついに、ヨゾラは彼女に告白をするのだとどこかくすぐったい気持ちになってから微笑んだ。
「世間ではめでたい時にこんな酒を飲むのもどうかと思ったんだがな」
「まぁ~ こんな時だから ってのもあるね」
足元のポメ太郎を抱き上げてからここには二人と一匹だけだとベネディクトは言った。それが彼の気遣いだと気付いて夏子はぐい、と盃を傾ける。
貴族入りをして、勇者になって、それでも謙虚な彼は「遠慮せず飲め」と笑うのだ。
夏子と、自分と、そして『居なくなって仕舞った』二人分のグラスに酒を注いだベネディクトに夏子は「献杯」と言った。
「あぁ、献杯……何か言いたい事があるなら聞くが、あるか?」
「おしゃべりな俺にソレを~? 言っちゃいますぅ~? あるさぁ そりゃあ山程ある でもま、」
静寂を護る屋形でも、前までは賑やかだったのだ。夏子はぐい、とグラスを空にしてから思い出す。
そんなの味方をすれば彼女が怒るのだ。その後ろで「斯う言う飲み方はどうだろう」と提案する軍師様もいる。
いつの間にか眠ってしまったポメ太郎を撫でながら、大きな茶太郎が歩み寄ってきて夏子の傍に座ったことを確かめてから「楽しかったな」とベネディクトは言った。
「まあね。切った張った獲った獲られたが当たり前な渡世だし 理解るんだけどさぁ
――理解るんだけどさ。う…ん ダメだな まだ整理がついちゃいねーのよ どうしよね 笑い草」
「俺もさ。だが、そんなものじゃないのか」
これから何時だって彼等を思い出す。揺らぐカーテンの気配に、扉の開く音に、それから、曲がり角を曲がった先で笑っているのでは亡いかと。
そうあれれば良い。忘れるばかりが人じゃない。ベネディクトは勢い良くグラスを煽ってから静かにそう言った。
「輝かんばかりの、この夜に!」
楽しげな挨拶を告げる飛呂にユリーカも「わーい!」と手を挙げて応じた。何時もより楽しげな彼女は可愛らしい。
「チキン好きだからあると嬉しいな。あとやっぱケーキだよな、色んな種類あるし……ユリーカさんはどれ食べる?」
「そう、飛呂さんがお好きな気がしたので用意したですよ。ボクはこれで!」
じゃーんとケーキを手にしたユリーカに飛呂は「やった」と笑った。共に料理を食べるのは楽しくて、ついつい浮かれた気にもなる。
「あ、そうだ。風花のクッキー缶。シャイネンナハト限定商品だって。
聖夜は今夜で終わっちゃうけどさ、これある間は少しだけ聖夜が続く感じするかなって。
聖夜は楽しかったなーとか、思い出してさ……まあ、ついでに俺のことも思い出してくれたら嬉しいけど」
「ふふ、一緒に食べるのはどうですか?」
それなら、屹度楽しいですよとユリーカは悪戯っこのように微笑んだ。
●幻想II
雪降る街を歩む。愛おしいその人を招いたのはジルーシャの店舗兼自宅だった。腕の中には食べ物やワインボトル。
空いた片手は宙ぶらりんになどせずに、プルーの細い指先を捕まえた。「笑っているわ」と揶揄われても、気にもしない。
「フフ、だってシャイネンナハトに、プルーちゃんを独り占めできるんだもの。浮かれるなって方が無理よ♪」
「あら、それは素敵な言葉だわ?」
冗談ばっかり、いつだって揶揄うようなその人が愛おしくて堪らない。いつか招待したかった『大好き』を詰め込んだその場所を彼女はどう思うだろうか。
おもてなしをする方法だって考えて居るだけで楽しかった。準備をしたその場所に向かうだけでも心は弾む。
「それでね、アルバムを作ってみたの。一緒に見ながら、おいしいもの食べましょ♪」
「楽しみだわ。どんなおもてなしが待っているかしら?」
「ナイショ」
手を握り行く。その温もりとずっと共に進めるようにと。
ケーキとシャンパンの用意はばっちり。それからお肉は――と考えて居たちぐさへとショウが買ってくると告げたのだ。
オーブンを使って料理をするというショウにちぐさは「楽しみにゃ!」と微笑んだ。
さて、準備の時間だ。ちぐさはるんるん気分で向き直る。
「もっとささやかでもショウと一緒ならしあわせだけど今年は色々……うん……色々あったからこそ戦いのないシャイネンの時くらいパーッと楽しむのにゃ!
ケーキは大きいのだと多すぎるから小さいの2つにするにゃ。ケーキに合う紅茶も忘れずに、にゃ。
シャンパンは依頼の報酬を貯金してたから、ちょっとフンパツしちゃうのにゃ!」
テーブルにもクロスを敷いて――そんなことをして居ればノックの音と彼の声がする。
「ショウ、輝かんばかりのこの夜に、にゃ!」
「やあ、ちぐさ」
にこりと微笑んだショウにちぐさは頬を緩めた。ああ、やっっぱり彼と一緒だと嬉しくて。ずっと一緒とはならないだろうけれど――
「ちぐさ?」
一緒。そうだ。戦わなくっちゃショウを護れない。此れからこの先に戦いで死んじゃったら――
「ちぐさ」
「にゃ!? ごめんにゃ、ちょっと考え事してたのにゃ! 大したことじゃないのにゃ。
でも……ショウ、ぎゅーってしていい? あと、ショウになでなでされたいのにゃ」
「どうしたんだい? 甘えん坊だね」
優しく撫でてくれるショウに「今更なのにゃ」とちぐさは揶揄うように笑った。
白に身を包んだトールはゆっくりと顔を上げた。真白のドレスに身を包んだ姫君がやってきたからだ。
「……プレゼントしたガラスの靴、履いてきてくれたんですね。ありがとう、とってもお似合いです」
「ずいぶんと裾の長いドレス……どうですか、似合ってますか?」
「その身を包むプリンセスドレスも負けないくらい美しい。僕にとってシンデレラの名はココロちゃんに捧げるためにあるんです」
「それにしてもシンデレラ、とは恥ずかしいですね。でも、あなたとなら」
くすりと笑った心にトールは頷いた。胸にそっと手を当てて、穏やかに微笑みを浮かべる。
「ずっと生まれてきた意味を探してました。僕は貴女と――ココロちゃんと出会う為に生まれたきた。貴女と、貴女の幸せを守るために。
今だけはシンデレラを護る騎士じゃなくて、ココロちゃんに恋するトールとして……貴女を抱きしめて、独り占めしたい」
指先が重なり震える。その言葉だけで嬉しくて――つい、脚が縺れたような振りをしてその胸へと飛び込んだ。
「ねえ、トール君。やっぱり、この靴歩きにくいですよ」
なんて、それは言い訳だけれど。
聖夜は喧噪。ただ、素音垢を行くアルテミアは「ウィリアムさん」と呼んだ。
去年はこの世の終わりの気分だった。ウィリアムは共に過ごす事が出来ただけでも嬉しくて。ぎゅっと握る掌の温もりが愛おしい。
「こっちへ」
呼ぶアルテミアにウィリアムは頷いた。指先を絡め、強く握っていた掌は逸れることはなかったけれど。
その握る手の力強さに頬が赤く染まっていく。鎖す必要のなくなった思いが、溢れてしまいそう。
(……ああ、そうだ。……そういえば衝撃ですっかり頭から抜け落ちていたけど、僕はアルテミアに告白する予定だったんだよね。
双竜宝冠騒動の時に心は通じたけれど……やっぱりちゃんと言葉にしなければ)
ウィリアムの思いを知ってか知らずか、ツリーの元に歩んでいくアルテミアは「綺麗ね」と振り返り、はたと止まった。
「アルテミア。君に伝えたい事があるんだ」
その美しい瞳が真っ直ぐに見ている。鼓動が高まって、全てを察してしまったとアルテミアは唇を閉ざす。
「アルテミア、僕は君が好きだ。
戦う時の美しい姿も、魅力的な笑顔も、ときどき見せるお茶目なところも、どれもとても愛おしい。
危険な所でも突っ込む事だけはちょっと心臓に悪いけど、そういう熱くて真っ直ぐなところも可愛いと思う。
きっと君はこれからも真っ直ぐに進んでいく。今まではそれを後ろから眺めているだけだったけど、今度は一緒に歩んでいきたい。君の隣で、いつまでも――僕の恋人になってくれますか、アルテミア」
その言葉に涙が浮かんだ。逃げること何てしない、心のままに、彼と向き合うのだ。
別れを告げたあの時に、心が張り裂けるかと思った。己の責務が、担うべき全てが雁字搦めになったアルテミアを離してくれなかったのだ。
なのに、彼はずっと愛してくれていた。傷付きながらも手を伸ばしてくれた。想いに蓋なんて、出来るわけもなかった。
あなたが、手を伸ばしてくれるなら。私だって。
「……私も、貴方が隣にいてほしい。いつまでも、共に歩んでほしい。だから、私の心も、受け取ってください――ウィリアム」
ぎゅうと抱き着けば、優しく抱き留めてくれる。ゆっくりと顔を上げたアルテミアの唇に、重なったのは――
――初めて出会ったのは、路地裏だった。
あの日の事はハリエットにとって忘れられない。世界に色が付いた日の事を。
「貴方が私を見つけてくれたから、私は今の私になれた。本当に感謝してる」
「そんな事はない。君は、君自身の意志で、この世界に立てているんだから」
「ふふっ。ギルオスさんなら、きっとそう言うと思ってた」
でも、と。ハリエットはギルオスの瞳をまっすぐに捉えながら。
言の葉を、紡ごうか。喉の奥が渇きそうになるような熱を感じながら。
「で、ね」
それでも。
「今日お話したかったのはね」
絞り出そう。
「私は貴方の隣にいたい、んだ」
――己の想いを。
出会いがあり、恩義がある。でも、そう言う事だけじゃなくて。
人として男性として。一人の異性として。
「好きになったから。好き――だから」
「――――」
「同じ気持ちなら嬉しい、な」
ハリエットは微笑みながら、紡ごうか。
……この場で答えは求めない。考えてくれるだけでもいいのだ。
だって彼が、人と一定の距離を取っていることも、その理由も朧気ながらわかるから。
だけど『いつ何があるかわからない』
確信が心の中にあるから……伝えなくてはならなかった。
「今日は楽しかったね、ギルオスさん」
「――ハリエット」
「ん?」
「少しだけ、待ってね」
君に、抱いている『僕の気持ち』を伝える日は。
「きっとそう遠くないから」
君と出会えて本当に良かった。
ギルオスも微笑みながら彼女と視線交わそうか。
指先絡め。手を握りしめながら、歩き出そう……
「お嬢様、輝かんばかりのこの夜に」
グラスを傾けてレジーナは穏やかな笑みを浮かべた。優雅なディナーを楽しめば、彼女と共に庭園へと向かうのだ。
何時だってその人は手を引けば応じてくれる。気高き薔薇を手折ることを夢に見て、雪降る夜に彼女の傍にやってきたのだ。
「様々ありましたが、こうして2人でシャイネンナハトを迎えることが出来て嬉しく思います。
ねぇお嬢様……我、お嬢様にプレゼントをねだっても宜しいでしょうか。今夜は帰りたくありませんので」
「あら、何時ものことでは?」
「ま、まぁそうなんですが、そうじゃないんです!」
うぐ、と息を呑んだレジーナにリーゼロッテがくすりと笑った。
「こ、今夜という今夜は! 我も引きません。お嬢様、いいえ――リズの気持ちをハッキリと確かめるのです。
リズ、我は五年前から貴女にお慕い申しあげていることを、好きだと言って参りました。勿論今でも変わりません。リズは、どうですか。
我はまだ、青薔薇迷宮に迷い込んだ哀れな獲物ですか、或いは……」
首を振ったレジーナがそっとリーゼロッテに覆い被さるように手を伸ばした。この特別な夜に、青薔薇に乱れ間違いを犯したって許して呉れるだろうか。
その唇も、いいや、それ以外だって。貴女の全てが欲しいのに――貴女は、いつだって、美しく微笑んで目を逸らしてしまうのだもの。
●鉄帝I
「今年の冬は去年に比べると生温いな。安心したよ……クリスマスだな、今日は」
ルブラットは昨年の激しい寒波よりも和らいだ雪の気配にそっと天を仰いだ。
「……。天にまします我らの父よ、私の声が届いておりますか? ずっと、私はあなたの愛を信じていました。
どれ程の災厄が降りかかり、喪われる命があろうとも、この世界の美しさがあなたの愛を示していると。
遠い未来に正しき者は救われるから、今の悲劇は決して神の愛の否定にはならないのだと――それだけを、信じていました。
けれど、私はあの春に、私たちの願いがあなたに届いたのを見ました。主の意思を推し量るなんて過ぎた真似だとは分かっています。
それでも――あなたが現世での救いを授けてくださると、信じていいのでしょうか」
己は罪深い。いずれは世界が滅亡するならば、応えはやってくるだろうか。ああ、しかし――ルブラットは自嘲する。己にも変化はあるのだな、と。
「ヴァイス☆ドラッヘ只今参上! 今夜はパルスちゃんには負けないよ!」
バトル形式のライブを盛り上げる。ラド・バウ闘士のパルスと向き合えば、楽しげに声が弾むのだ。
「みんなー! 今日はボク達を見ていってね!」
手を振るパルスと共にレイリーは謳った。鮮やかな紅色を纏うパルスと対照的に、竜をモチーフに白を纏ったレイリーが踊り、そして戦い続ける。
勝つことだって大事だけれど、それ以上に観客を喜ばせるように動くのだ。パルスはスピードファイターだ。積み重ねるタイプでもある。
その戦い方と、そして慣れたステージ技術は目を瞠るものがある。嗚呼、彼女がアイドル闘士と名乗るのは伊達ではない。
(本当に、凄い――魅せ方を分かってる。なら……!)
レイリーはパルスの攻撃を引き寄せて、敢て攻撃を食らってカウンターを放った。
地を蹴って飛び上がる。歌声と共に剣が弾かれる。パルスの唇が吊り上がった。
「さあ、ここからがクライマックス!」
「ええ! いくわよ! 私が倒れない限り聖夜は、夢は終わらせないから――!」
響く歌声と共にレイリーが駆けて行く。
紅が舞い、白と交わった。ただ、その刹那だけでも心を震わせて。
「チャリティーライブか。うん、ええと……バトルライブ? 流石、鉄帝国らしいスタイルだな。よし、では演奏もバトルも気合い入れてやるとするか!」
楽しげに笑ったイズマは戦闘音も音色を変えて、激しく楽しげなものにしようと心掛けた。ステージを盛り上げる演奏は低音を重視し続ける。
足元で楽しそうに尻を振るウォンバットは奇妙な存在だがそれはそれで愉快その物。見ているだけでも心は躍るというものだ。
そして、そのリズムに合わせて尾をぶんぶんと振っているのはオディールだった。オデットは「オディール」と呼び掛ける。
マイケルと共に楽しげに走り回るオディールは其の儘雪へと突進していく。ラド・バウアニマルと一緒ならば心配は無いだろうか。
(……楽しそう。この一年いろんなことがあったし、この後も続くのだろうけど、オディールには知らないものたくさん見せられたらよかった。
春も夏も秋も、もちろん冬も、オディールが好んでくれて愛してくれるのならきっとフローズヴィトニルにも届いてくれるんだって信じてる。
フローズヴィトニルも今は幸せに眠っているのかしら?
貴方から分たれた欠片たちは元気に探してるわって伝わらなかったとしても声をかけたいわね
……いつか貴方と欠片の仔狼たちにエリスが一緒にいられる姿を見られたら、いいな)
屹度彼女は嬉しそうに笑うのだ。それを思い浮かべるだけで、何よりも嬉しくなる。
「色んな歌や演奏が聞こえてきて、わくわくしちゃうわ。
ねえ、ジェラルドさん連れてきてくれてありがとう! 私、お歌も音楽も好きだからとっても楽しいわ!」
にっこりと笑ったアルエットにジェラルドは頷いた。その嬉しそうな顔を見ているだけで喜ばしくもなるのだ。
「銘打ってるだけあっていろんなアーティストが居るんだなー。演奏やら歌やらダンスやら楽しそうだ。
しっかし鉄帝は毎年雪が積もって大変そうだな 初めてこっちに来た時は雪なんざ大層驚いたもんだ、覇竜じゃまぁまぁ無縁だからよ。
アンタはちゃんと着込んでるかい? 風邪なんて引いちまってもアンタは友人が多いだろうし、看病には困らなさそうだがな」
「寒くないようにきちんと着込んでいるわ。ジェラルドさんは覇竜出身だから寒いのが苦手なのよね。
大丈夫? 寒くないかしら? アルエットの手袋は……入らないわね。じゃあ手を繋いで回りましょ。迷子にもならないし温かいわ」
ふかふかの手袋に包まれた手を差し伸べるアルエットにジェラルドは一度瞬いてから頷いた。ちくり、と胸が痛む。
「まあ、風邪を引いたら……俺も心配するがよ。男が女の部屋に入るのは無粋だろ? 俺はアンタを撫でる係で充分さ」
「ジェラルドさんはお兄ちゃんみたいで優しいから怖く無いの」
大丈夫よと笑ったアルエットにジェラルドは唇を引き結んだ。踏み込み方は、分からない。彼女を怖がらせてしまったから。
(『お兄ちゃん枠』――か。自分らしくない。
頭を撫でる友の関係でだって満足してみせると、理性的なフリをしてるだけ。それは――)
彼女と向き合うには、ジェラルドにはまだ難しく感じていた。
●鉄帝II
「エリス様! シャイネンナハトの飾りとか保存性のある食べ物をもってきましたー!」
「まあ、ありがとう」
嬉しそうに笑ったエリスの傍に駆け寄ってリックは「どうぞ」と手渡した。シャイネンナハトを楽しむ銀の森は何時も通り穏やかで温かだ。
「これで倒した冠位魔種は強欲、嫉妬、怠惰、憤怒、暴食、傲慢の6人…七つの大罪になぞらえるならあとひとりだぜ!
争いのない日ってのが、外の世界だと同族同士のもあったんだろうけど、今は魔種との戦いのためにみんな一致団結してるんだよな!
……おれっちたち精霊種はイレギュラーたちと一緒に戦ってきたけど、この戦いが終わったらどうなっていくんだ?
精霊仲間の幻想郷アルヴィオンと親交つくるとかしながら、人間たちとも関わっていったりとかか?」
「それもよいですね。皆の意見を聞きたいのです。微睡みの雪が解けた後にでも」
そうして人と関わって行く事がどれ程に幸せであるかを、翌々理解出来るはずだから。
「マリィ、マリィ! そちらの準備は如何ですこと? もし終わっていたら手伝って欲しいのだけれど」
「うおー!!! こっちもはなんとか準備完了だよ! すぐに手伝いに行くね!」
ぱたぱたと走り回るヴァレーリヤにマリアが答えた。そんな楽しげな歩調の彼女は準備も楽しんで居るようである。
「ありがとう! それじゃあ、こちらをお願いしますわねっ! 焼き上がったばかりだから、火傷しないように気をつけてね」
まかせておくれと笑うマリアに「これで準備完了ですわー!」とヴァレーリアはグラスを手に意気揚々とダイニングへとやってくる。
「「それでは、輝かんばかりのこの夜に!」」
グラスを打ち合わす。それから、二人揃って一気に天を仰いだ。飲み干し、口を勢い良く拭う。
「ぷはーーっ、生き返りますわ〜〜〜! マリィも遠慮なく食べて下さいまし! このガチョウとピロシキ、我ながら自信作ですのよ!」
「はぁーーっ! 最っ高だね! 勿論そう言われなくてもヴァリューシャの手料理はたくさん食べるさ!」
口元に運ばれてくる料理にマリアは「美味しい!」と頬を緩ませた。見た目も、それから、あーんも、本当に美味しくて嬉しくなる。
「ふふふ、酔っ払って良い気分ですの。ねえマリィ、来年もこうして一緒にパーティーしましょうね!」
「こんな日くらい思う存分酔うといいよ! 私がいくらでも介抱してあげる!
うん! 来年と言わず再来年もその次の年もずーっと一緒にお祝いしようね!
そうだ! 君にプレゼントがあるんだ! 手編みの手袋とマフラー!初めてだからあまり見栄えはよくないかもだけど、使ってくれたら嬉しいな!」
そっとソファーに隠してあったプレゼントを取り出すマリアにヴァレーリヤはぱちくりと瞬いてから微笑んだ。
「マリィが編んでくれましたの? ありがとう、とっても嬉しいですわー! 大切に使わせて頂きますわね。
実は私からもプレゼントがありますの……受け取って頂けますこと?」
「わあ、有り難う!」
「それから、ねえマリィ、この後ちょっとお出かけしませんこと? このマフラーと手袋、早速使ってみたいんですの」
それは名案だと酒でほてった頬を緩めてからマリアは「何処に行こうか」と問い掛けた。
「カイト! 炊き出しだ! 沢山人が集まるからな、いっぱい作らないといけないぞ!」
「去年の今頃に比べたら全然食料の心配とかする必要ないんだけどさ。
結局こういう活動は地道ながらに必要なんだよな。……闘士が炊き出ししてるだけでも印象違うだろうし、そういう意図もあんだが」
やはり、闘士がこうして活動して居るという事が印象に残ればより勇気や元気を与えられるはずだろう。そう考えていたが――
「しかし、動いていると暑くなってくるな。よし、このコートを脱げばいいんだな!」
「おい」
カイトは手を伸ばした。なんで脱いだ。なんで脱いだんだ。
「なあに寒くないぞ! ほら、俺の筋肉を見れば、元気も湧いてくるだろう!
うんうん! ははは! 元気な子供達だ! この美味しいシチューを食べるといい。熱いからふーふーして食べるんだぞ。お兄さんとの約束だ」
「待て」
「なんだ、カイト! 寒そうだから服を着ろだと?
ええい、俺はいま子供達に炊き出しを配っているんだ。動き回っていると暑いだろう。だから脱いでいるんだ。筋肉を見せたいからじゃあないぞ」
「……いやさ、確かに熱源の近くに居てくれとも言ったけど。
動き回るからって暑くて脱ぐのは本末転倒じゃねぇか!?!? むしろ熱い汁物扱ってるのに脱いだらまずいんだってば!!!」
やけどが危ないだろうと叫ぶカイトに「やけど!? 肌に試練か!!!」と明後日の方向を向いてアンドリューは堂々と答えたのだった。
ヘイムズデリーの自宅で、窓辺に手を遣ったジュリエットは「冬の雪もすごいのですね」と瞬いた。
「それでも、驚きました。この寒さでも、意外にも小鳥が飛び回っているのですね」
「ああ、そうだね」
ギルバートは「君にとって新鮮かな」と笑った。本当は、ギルバートにとっても特別な夜なのだ。何せ、夫婦になって初めての聖夜であるからだ。
「あ、思い付きました。あの小鳥さんをモチーフにケーキを一緒に作りましょう?
比較的に簡単なブッシュドノエルにしましょうか。イチゴも入れますので、まずは一緒にイチゴのヘタを取りましょう。どうでしょう?」
「ああ、そうだね。生クリームは混ぜるのが大変だろう?」
「お手伝いをお願いしても?」
可愛い妻に「勿論」と告げてからギルバートは一生懸命にケーキを作る彼女の横顔を眺めて居た。
「さあ、焼き上がった生地を巻いて、デコレーションしましょう。ふふ、イチゴの帽子を被った小鳥さん達です。お顔をチョコペンで描き込めば完成ですよ」
「可愛らしいね」
上手だと笑ったギルバートにジュリエットは嬉しそうに笑って――
「おや、ジュリエット美味しそうになっているよ?」
「……私の顔に何か? え? 頬にクリーム――」
ジュリエットが拭う前に、ギルバートはその手首をそっと掴んでから頬に口付けた。クリームを唇で拭い去り、笑みを零す。
「柔らかくて甘くて美味しいよ」
かあと頬に昇った熱に、ギルバートはくすりと笑った。嗚呼、本当に。その顔は可愛らしくて、愛おしいのだ。
●天義
戦いが終ったばかりでは流石に騎士達も忙しなく動き回っているだろうか。サクラは詰め所の中を歩いていて、たまたまリンツァトルテを見かけた。
「あ、リンツくん。お疲れ様。やっぱり聖剣発動出来てたね! 格好良かったよ!」
「いや、俺一人ではどうにもならなかったから。やっぱりサクラたちは凄い」
「ふふ、そうかなあ。じゃあ凄い私からいいかな? ほら、ところで? 今日はシャイネンナハトなんだけど~? 今日のご予定は?」
にんまりと笑ったサクラにリンツァトルテがぎこちない顔をした。決戦の後に話す暇は無かっただろう。けれど――
「……言われなくとも、一応」
「ちゃんと会う予定はあるんだ! ほほう。良いねぇ~青春だね~。ふふふ、じゃあ楽しんで来てね!」
お邪魔になりますから、なんて揶揄うように笑ったサクラにリンツァトルテは「おい」と呟いてから頭を抱えた。
本当に向き合うときが来てしまったとリンツァトルテは小さく息を吐いてゆっくりと歩き出した。
「輝かんばかりの、この夜に! って事でちょっとしたパーティーだよ!
せっかくの夜だし、2人と楽しみたいなって思って、美味しい物もいっぱい用意したし、可愛い衣装だってあるから楽しんでいってね」
ヴァークライト邸でスティアはうきうきとした様子でイルとカロルを呼び出していた。
「なんなら着せ替え人形にしちゃうし、ダンスもしちゃう?
カードゲームでも良いし、普通にガールズトークをしちゃってもいいしね。今日は皆で楽しく過ごせることが重要だしね!」
「楽しそうね、スティア。いつもこう?」
「そうだぞ」
カロルは菓子を摘まみながら「ふうん、おまえは飽きなさそう」と笑っている。
「でもでも、実はね今日はメインイベントがあるんだよ」
スティアの笑みにカロルが察したようにイルの肩を抱いた。「な?」と圧を掛けている様は聖女等しからぬ雰囲気だ。
「結局どうなったのかなーって気になって。ルルちゃんも気になるよね。
根掘り葉掘り聞いちゃうぞー! 夜は長いんだし、覚悟ー! 素敵な恋の応援もしたいしね」
ひいと呟いたイルは少しだけ抜け出してリンツァトルテと会うと言った。スティアとカロルは「着いていくか」とほくそ笑む。
「あ、そういえばルルちゃん。結局、ちゃんとした回答貰ってなかったけど……
私の顔ってルストに勝ってたのかな!? えへへ、なんだか気になっちゃって。負けてるならもっと頑張らないといけないでしょ?」
「唐突じゃないの」
「ずっと恋を引きずってる姿は見たくないしね。いつか私が忘れさせてあげるよ。
まだまだ先は長いし、色んな人との出会いを繰り返して少しずつでも進んでいこうね」
「ヒュー」
カロルは揶揄うように言ってから「いい顔。イケメン顔しときなさいな、顔は良いんだから」と小突く。
「どう言う意味かな?」
「そう言う意味よ」
「もう! って その前に叔母様に結婚して貰わないとダメかなぁ? ずっと苦労してきたもんね!」
カロルは「じゃあ、イルのイベントの前にオバサンの恋路を見守りに行きましょうか」とウキウキとした様子で歩き出した。
●ラサ
「いつもあなたに合わせて酒盛りとか選んでましたけど、今年は私に合わせてデートして下さいませねっ?」
じいと見詰めるエルスに「はいはい」とディルクは返した。恋する乙女は欲張りになって行くのだ。
「食べ歩きとか、ショッピングとか普通のデートを楽しむのもまた『いつもと違う』私達だと思うのです。
だってこう言うデートはあなたは好きじゃないかなと思ってましたから? 私もわかり易くはありましたけどね、私もお酒は好きでしたし」
「……いいや?」
性急な手を求めがちなお嬢ちゃんが何を云うかと揶揄うように手を伸ばすディルクにエルスは膨れ面を見せる。
「だって、いっつも酒癖の悪さは指摘されてましたから? 今年はお酒は抜きにしようかなと思いました次第ですよ。
シラフでだってあなたと過ごす時間が愛しいのは変わらないんですから……なんて……少し、らしくない事言っちゃいましたかね?」
酔っているのかと揶揄うディルクに「違います」とエルスは拗ねた。
「あなたに合わせていた方が楽だと思っていたんです。そしたらあなたは機嫌がいいし、嫌われる事だって考えなくたっていいって。
でもあなたに合わせたつもりが空回りばかりだったりして。結局怒らせてしまう事もあったから……。
でもこれからは自分の気持ちを大事にしていきますとも、あなたが嫌がったってこれはあなたの責任ですよ?」
彼が変えたのだ。エルスのことを凄く重たくって面倒な女にしたのだと、彼女は揶揄うように囁く。めんどくさがり屋さん。そろそろ、こっちを向いて?
「僕、ラサもあんまり来たことないんだけど、クリスマスバザールもあんまり来たことなくて。どんな物があるか楽しみだね」
微笑むアレンにクロエは「私もラサには余り来た事がありません」と不思議そうに周囲を見回した。露店が建ち並んだ砂漠の夜、その煌びやかな雰囲気は何処か荘厳にも思えてならない。
「なんとなくなイメージですが、スパイスを使った物が多いのでしょうか?
スパイスの香りでお腹が空いて来ましたし、何か歩きながらでも食べられる物とか温かい飲み物を買いましょうか」
「確かに、スパイスがよく使われてそうだよね。スパイスって身体を温めるらしいから、香辛料が使われてる食べ物でも買おうかなあ。
寒いし。クロエは何にする?」
どうしようかなあと悩むクロエに「チャイはどうかな」とアレンは優しく問い掛けた。白い息を吐いて呑む温かさは心をもほっと落ち着かせる。
「あ、後、お土産も見つけなきゃですね! ランチョンマットとかあったら見ていきたくて。
ほら、シャイネンナハトのご馳走を置くのにもあったら素敵だと思いません?」
「そうだね、お土産も見つけたいねえ。うん、ランチョンマットがあったら素敵だ。華やかになると思うよ。
僕は、そうだなあ。ティーカップのセットを探したいな」
露店を回ろうかと微笑んだアレンに「アレンさん、アレンさん」とクロエは声を弾ませ指差した。
「あれはなんでしょう?」
「ほんとだ、あれ何だろう。見てみようか。……あとあそこも寄ってもいい?」
「いいですね、見ていきましょう!」
これから何を見付けようか。そう思うだけで心が踊った。
●海洋
競泳水着をおそろいで着用して居たェクセレリァスはにこりと笑う。
「人外だって新婚旅行とかしてもいいじゃない」――とイチャイチャするためにやってきた。
そんなェクセレリァスは「周囲に仲の良さを見せつけるつもりだけど…でもイチャイチャって具体的にはどうするんだろ」と首を傾げる。
「1億年は生きてきたけどこういう経験はなかったからよくわかんないや……
よし、こういうときは……任せたぞ我が伴侶。頼りにしてるから!」
キラーパスを受けた観測端末――こと、ェクアリゥム。まずは腕を組んでビーチを散歩しようと歩き出す。
「ェクセレリァス、もう少し体を預けて下さい。見せつけるのでしたら、密着度が足りませんよ?」
「成程」
「散歩したらパラソルの下で、少し休みましょうか。ェクセレリァスに私の胡坐の上に座って貰って、後ろハグでホールドです」
「イチャイチャだ」
頷くェクセレリァスにェクアリゥムは「それからじゃれあってキスをするのです」と言った。
リクエストに応えるためのプランニングだがやり過ぎだろうかと考えたェクアリゥムに「食事に行こうか」と声を掛けた。
「はい。折角の新婚旅行です、何時もの外食より贅沢をしましょうか。
そうですね……三番街のニュー・キャピテーヌストリートで良さそうなお店を探しますね。どのお店が良いか、迷いながら選び歩くのもきっと楽しいですよ?」
「じゃあ、そうしよう」
ドレスに着替えたェクセレリァスにェクアリゥムは何処か楽しげに頷いた。
食事をとりながらふと、向き合った。その人実に自分が映っている。ェクアリゥムを見てェクセレリァスは笑みを零した。
「大好きだよ、ェクアリゥム。愛してる。決して離さないからね」
「ェクセレリアスと食事をしながら、私は思うのです。
貴女と出逢って、貴方と結ばれて……その発生理由がどうあろうと、私は命として生まれて来て良かったと」
漣を聞きながら「寒くねぇかい? 嬢ちゃん」と縁は問うた。砂を踏む足音が柔らかに響く。雲のない星空の下、ゆっくりと蜻蛉は振り返った。
「手袋とマフラーがとってもあったかいから、平気よ」
真白の息を纏わせて蜻蛉は微笑んだ。シャイネンナハトの贈り物は何時もよりも暖かい。けれど、冬の海の風は特別冷たいから。
冷気を遮るように彼が動く。言葉で聞かずとも、遮られた風で分かる。何時だって、この人はこういう人だから。
「縁さんは、寒いことないの?」
「魚は猫よりは寒さに強いんだぜ。……それに、俺にもこいつがあるんでな」
揶揄う声音に蜻蛉は小さく笑った。ただ、当たり前の日常に、言葉を添えるだけ。
「こんな日は熱燗と鍋に限るねぇ」
「帰ったら、お酒とあったかい鍋にしましょ」
「おっ、そいつはいいな。最高の贅沢だ」
――変わった事がある。夫婦になってから、思うこと。帰る場所が同じ事、冷えた指先がじんわりと熱を帯びていくこと。それから、いつだって触れてくれること。
歩を止めて、そっと頬を包み込む彼に「まぁ、どないしたん?」と問うた。
「鼻が赤いぜ」
「お顔は、いつも見とるでしょ。縁さんも赤いよ、お鼻」
「……おっと、俺もか。凍えちまう前に、そろそろ戻るとしようかね」
手袋を外して握り締めた。指先を絡ませれば、じわりと温かさが伝わってくる。ああ、なんて、暖かいのだろう――
●練達I
「今年も独りのシャイネンナハトかあ……練達のカフェでケーキでも食べようかな。やっぱりイチゴのショートケーキがいいかな」
「ちゃろ子さま……練達にいらしたのですね。わたくし特製のハーブティーをどうぞ」
「このハーブティーもおいしいね……ってパフさん!? わざわざ鉄帝から練達まで追ってきたの!?」
こてんと首を傾げたもふもふなパフ。メタリカ女学園に所属する彼女は穏やかな笑みを浮かべていた。
チャロロはケーキを手にぴたりと固まったままパフを見ている。
「それに、せっかくのシャイネンナハトですからこれを着て頂きたいですわ。お美しいちゃろ子さまですから、きっと似合うと思います……」
「ミニスカサンタ服……って着ないよ! オイラは男だよ! 身体は機械でもいちおう生体部分の染色体はXYだし性自認は男だもん!」
「男の子ですって? むしろそれがいいのですわ……ああ、お待ちください! どうして逃げるのですか!」
「……いつも……この時期になると……ここの雰囲気は一気に変わるよね……とても綺麗な……今だけの景色……今夜はどう過ごそうかな……?
……イルミネーションを見ながら散歩も……たまには悪くないかな…?
……いつも聴いてる曲も悪くないけど……こういう時に合った曲を流して歩いたほうが……それっぽい雰囲気出るかな……?
……いい曲あるかな……探してみるか……」
音楽ポータブルプレイヤーを確認しながらグレイルはクリスマスマーケットへと向かう。途中で音楽CDショップに向かおうと決めた足取りは軽い。
「すまない。待たせたか? それにしても……もう世間はすっかりクリスマスムードだな。寒し、早く店に入っちまうか」
「ええ」
天川は水夜子や龍成に婚約報告を兼ねてクリスマスパーティーを予定していた。忙しさから、二人へのクリスマスプレゼントを買う時間が無かったからと、早く合流し二人でデートがてらにプレゼントを物色しにやってきたのだ。
「あの年齢の男女ってのは何を貰ったら喜ぶんだ? 全く分からん……。
息子が生きてりゃこんな風に悩むこともあったんだろうな。晴陽は何か案はあるのか?」
ブサカワキャラを眺めて居た晴陽は「水夜子は案外変な物を渡しても笑ってくれますよ」と握り締めればブェーと泣く謎のぬいぐるみを手にしていた。
「……それは晴陽が欲しいんだろう?」
「はい。この子色々とグッズがあります」
「ふふ。その辺は後でゆっくり一緒に見よう。勿論買って帰ってもいいぜ。
個人的には二人共実用性のある小物とかが良いんじゃねぇかと思ってるんだが、どうだろう?
みゃーこなら帽子とかも良さげか? 龍成はジャケットなんかどうだ?」
晴陽は何かを考えてからaPhoneを取り出した。「雛菊さんに弟の衣服のサイズを聞きます」と『義妹(予定)』を頼っている様子である。
ペットとして連れてこられていたむぎがふごふごと鳴いてから晴陽は「そうですね、そうしましょう」と通じ合っているかのように頷いた。
頭の上の謎の触覚をみょんみょんと揺らすむぎが寒くないようにとサンタクロースの服を着せた晴陽は「サイズが分かりました。水夜子には帽子も探しに行きましょうか」と意気揚々と歩き出すのであった。
サンタクロースの服を身に纏って、散策にやってきた。望乃はにこりと笑ってから「フーガ、こっちへ」と呼んだ。
「寒いね」と笑うフーガは、それでも寒さなんてへっちゃらだった。フーガの編んだ桜色のマフラーも望乃の編んだセーターもどちらも温かさを与えてくれるから。
「フーガ、見て下さい、キラキラしています」
「本当にキラキラとした光景だ! ホットワインも美味しそう! 望乃、飲んでみるかい?」
「ホットワイン、ですか? 是非! ……酔っ払わないように少しだけ」
ほろ酔いしている彼女も見て見たいけれど。フーガは我慢、我慢と言い聞かせてにこりと笑う。
「そうだ。お家クリスマス用のワイン等のお買い物も忘れずに。お部屋に飾るのは……ぁ、このシマエナガのオーナメント、可愛いです!」
「二匹飼ってみようぜ、おしどり夫婦になるぞ」
笑うフーガに「わあ」と望乃が微笑んだ。ワインボトルやシュトーレン、林檎に葡萄と買いそろえるフーガに望乃は頬を緩める。
買い物を終え、二人イルミネーションの下を歩きながらフーガはふと言った。
「今年も一緒に光の海を見られてよかった。そして、望乃の輝く笑顔も、暖かくて幸せな日が末永く続きますように」
「今年もあなたと、この日を過ごせて嬉しいです。明日も、その先も、ずっと。暖かくて穏やかな日々を、あなたと笑顔で過ごせますように」
手を繋ぎ、向かい合う。「輝かんばかりの、この夜に」と告げた彼女の頬に手を当ててフーガは微笑んだ。
「愛しているよ、望乃」
「……わたしも。愛しています、フーガ」
「クリスマス……実は楽しんだことあまりないので少しワクワクしてます」
クリスマスマーケットや食べ歩きをすることだって星乃叶にとっては初めての経験だった。
「どんなのが売ってるんですかね?」
「うーん、クリスマスか~、ケーキとかイルミネーションで飾ったツリーとかイメージしちゃうね」
再現性東京には何があるんだろうかとシャーロットは悩ましげに考えながら歩き出す。
「でも、私は二人とこうやって、一緒に行けるだけで嬉しいって思うよ」
「ああ、そうだな。何か美味しそうな物があったら購入しようか」
藍に「そうしよう!」とシャーロットは微笑んだ。不思議そうな顔をする星乃叶を連れて三人で街を散策する。
煌びやかなイルミネーションは何処か、慣れない景色で心が躍った。
星乃叶はシャーロットや藍にならってホットココアを購入し「あ、美味しいですね……」と呟いた。
「クリスマスといえばみたいな食べ物とかってあるのです?」
「ケーキ?」
ぱちくりと瞬くシャーロットに「どうだろう。何か探してみようか」と藍は微笑んだ。
「可愛いものあったら買おうかなあ。……あの人がいるなら送ってあげたいよねとは思うし。こっちなら……幸せになるだろうから、さ」
「……かわいいもの!」
シャーロットは「お揃いのアクセサリーとか、共通のものをもつっていいよね~」と微笑む。
きらりと輝くアクセサリーは、星くずを想わせるネックレスだった。飾る石はそれぞれの髪色を想わせる。
お揃いの品があれば、これからの日常だって、もっと楽しいものとなるはずだから。
●練達II
「いい機会だ。あれやこれやと足りないものを買っていくとしよう。
出来れば、あざみと一緒に回ってみたかったものだが。……ああ、いや。逆に考えよう。これは、あざみへのサプライズプレゼントを買うチャンスだ」
きらりと目を輝かせた汰磨羈。猫鬼、こと、あざみに似合うプレゼントを選ぶのが目的だ。
「さて、買うなら何がいいだろうか。この寒い時期に、猫が貰って嬉しいもの……うむ、やはり炬燵か?
電気毛布やオイルヒーターなんかもアリか。猫の姿をしている時と違って、人の姿をしている時は毛皮を纏っていないものな。
服を着込む事は出来るものの、やはり良い暖房器具はあった方がいい」
なじみが学生寮に入ったと聞いている。あざみはなじみの傍に居るが時々は深美の元に戻っているそうだ。
それを思えば、暖房器具と、それからコートでも良いのかもしれない。彼女に似合う服を選んで遣って正月デートというのも――
そんなことを考えてから汰磨羈の唇が緩んだ。
「ふふ、待っていろよあざみ。イイ物を買っていって驚かせてやるからな」
「これがクリスマスマーケットですか。見慣れない物も多いですね」
気になるものがあったら購入して行こうと鏡禍は提案した。
手を繋ぎ歩くルチアは「これ」と指差した。その先にはマトリョーシカが置いてある。
「マトリョーシカ、という入れ子の人形がとても気になったのよね。この情けない顔が鏡禍にそっくりで」
「えぇー?」
僕と似ている、と呟いてから見つめ合うマトリョーシカの鏡禍。困惑した鏡禍はルチアが気に入ったのならば買うけれどと眉を顰めた。
「それにしたって、此れってどう言う意味が」
「家内安全と子孫繁栄という意味があるよ」
店員に言われてから鏡禍は思わず声を荒げた。
「家内安全……子孫繁栄!? それは、こう、ちょっと照れますね。そうなったらいいなぁとは思いますけど、ね? ルチアさん」
「ええ、そうね」
「……ルチアさんは全然動じないですね。今のままでもいいのなら家内安全でいいことだとは思いますけど」
少し心を揺らがせて、平静を保とうとする鏡禍に「将来的には必要かもね」とルチアはなんとなしに返してから商品をまじまじと見詰めていた。
再現性東京にやってきた雨紅はじいと商品を眺めるフェイツイの横顔を見詰めた。
「おや、フェイツイ様はお酒がお好きなのですか?」
「お酒には目がないのよ。だって、美味しいじゃない。ホットワインというのがあるのね。あなたも一緒に飲んでみる?」
「私は普段あまり飲みませんね。でも折角ですし、ホットワイン飲んでみたいです」
頷く雨紅に「そうしましょ」とフェイツイは返してから「二つくださる?」と店員に声を掛けた。
礼にと誘われて遣ってきた雨紅はどこか不思議そうにホットワインを眺めて居る。
「ん、美味しいわねえ」
嬉しそうに笑うフェイツイを眺めて居たら、ふと、彼は世話になった礼だとブローチを差し出した。
「これならどんな服にも使えるかと思って」
「そんなに、お気になさらずとも。ありがとうございます。なら、私からはこれを。
私もお誘い嬉しかったので。それに、お互いに楽しめた方がずっと良いでしょう?」
「ありがとう。大事にするわね」
差し出されたマグカップを受け取ってからフェイツイはふと笑う。ああ、本当ニ良い日になった。
「ところで、相談なのだけれど、今日は楽しかったから是非お友達になってくれると嬉しいんだけど……どう、かしら?」
「あら、勿論ですよ」
「いつか皆で来れると良いですね。今日は大人二人の特権……ということに、しておきましょう」
シャイネンナハトのディナーは夜景の見える席で。星穹の囁きにヴェルグリーズは「そうだね」と笑った。
店を後にして、少しばかりほろ酔い気分の星穹の手をぎゅうと握り締め、ゆっくりと歩く。
「お酒もお料理も、とっても美味しかったですね。
予約を取ってくれていたと聞いたときは驚きましたが……たまには、こういうサプライズも悪くはないものですね」
「はは。食事に関して細かな品評は出来ないけれどとても美味しかったね。
特にメインの肉の柔らかさときたら。ソースもとても合っていたしね」
頷くヴェルグリーズに「本当に、美味しかったです」と彼女はどこか子供っぽく言った。
その様子が愛らしくてヴェルグリーズは「そうだね」と少しだけ距離を詰める。握る腕が少しぶつかって、星穹はゆっくりと顔を上げた。
「戦わずともいい日、ですし。こうやって貴方とのんびり手を繋いで歩くにはうってつけの日ですもの。
それにほら。酔っていたって、貴方がこうして手をひいてくれますからつい甘えてしまいます……また来年もこうして、共に過ごせますように」
「常々シャイネンナハトはいい日だなと思っていたんだ。
平和の約束された日、大事な人と大事な時間を過ごす日。こうして今年もキミとその時間を共に出来たことを嬉しく思うよ」
そのまま、向かい合えば、彼女の眸に映っている。きらりと、ヴェルグリーズは眸が輝いた気がして覗き込むように唇を近づけた。
「普段も目いっぱい伝えているつもりではいるけれど、改めて――愛しているよ星穹、キミは俺にとっての唯一だ」
「ふふ。私も愛していますよ、ヴェルグリーズ」
重ねた唇に星穹がうっとりと笑う。
「……あら、貴方の唇。あのワインの味がしますわ。甘くて……少し、香り高いの」
そう言ってから、もう一度その唇は重なった。
クリスマスマーケットにやってきた。ボディは龍成の横顔をちらりと見遣る。
手を繋げば冷たいボディの指先が温かくなる。龍成の体温だと笑うその横顔を眺めて居た。
「色々とありますね。アレを飲みませんか。ホットココアです」
「ああ。一つ買おうか」
龍成は頷いた。ココアを一口飲んだボディが「甘くて美味しいですね」と頷く。その顔を見れば、龍成は嬉しくなるのだ。
同じ味を共有できるのは食事が出来る雛菊の姿を得たからだ。一つずつ、ボディが覚えていくのが嬉しいのだ。
間接キスだって慣れたのだろうボディが一息吐いてから考える。龍成とシャイネンナハトを過ごすのは三年目。此処までの幸福が続くのはきっと恵まれているからなのだ。
「龍成、来年も一緒にいさせてくださいね。貴方は大切な人ですから」
「来年? いいよ。来年もその先も、お前が居たいならずっと一緒だ。俺達親友だもんな」
――親友。そう、それには違いは無い。大切な人。それでも、その関係性がボディには無性に嫌だったのだ。
「……龍成、ちょっとだけ屈んでください。あと目塞いでください」
「ん?」
屈んだ龍成の唇に、ボディは不意に口付けた。真っ正面からその熱が伝わるように。重ね合わせる。
流石に動揺する龍成は意味を分かっているのか、親友はキスしないぞ、と言い掛けてから――屹度、彼なりに考えたのだとそう受け入れる事にした。
(まだ、この人に言葉で想いを告げてすらいないけど、せめて、せめてどう考えているのかは、1bit程度は伝わってほしくて。
私は、このエラーに最後まで付き合うって決めましたから)
そう考えたボディに龍成はもう一度屈んでお返しとばかりにその唇に吸い付いた。驚いたのはボディの側。
「甘い」
ただその一言だけで――もう、どうにかなってしまいそうだった。
●練達III
「色々、見て回ろうぜ、アニー!」
指先を絡め合わせて手を繋ぐ。嬉しそうに微笑む零を見ればアニーの頬も緩んだ。
「賑やかな場所は久しぶりね!」
楽しそうな彼女を見ているだけで零は幸せだけれども。
「コーヒーカップの速さの限界ってそういやどれくらいなんだろ。そうだな、試してみるのも……」
「コーヒーカップの速さの限界? それは試してみるしか! ふふふ、それ~!」
「って待って、早い、早いよアニー~~!? アニー大丈夫?」
「……はわぁ~目がぐるぐるするよぉ~」
「はは、流石に俺も目が回る……」
二人と揃って眩む視界に笑い合う。ジェットコースターに行こうかと誘った零は「ほら、これ」と指差して――
「すごい構造のコースター! 怖いのわかっていてもなぜか乗っちゃうよね……ひ、ひぁぁ~~!」
「……色々耐性ついたとはいえ、怖いもんはやっぱ怖いなぁ ぉあ~~!?」
互いに同じ所で叫んだのはきっと『似たもの夫婦』なのだ。やっぱり楽しいと顔を見合わせ笑い合う。
本当に何だって楽しいと手を引きやってきたのは観覧車。輝くイルミネーションを双眸に映しながらアニーはこつんとその頭を零の肩に預けた。
「……聖夜に、君とこの景色が見れてよかった。また時間創って来ようぜ。こんな思い出を、此れから色々創っていきたいから」
「うん、また来ようね、来年もその先もずっと……同じ景色を一緒に見ていきたいもの」
観覧車の頂上で、そっと零はアニーに口付けた。「愛してるよ、アニー」と、その囁きだけで蕩けてしまいそう。
「零くん大好き……愛してます」
「うむ、プレゼント配りは武蔵に突き合せてしまったしな」
武蔵は傍に居るレイテが「遊園地デートだぁ!」と嬉しそうに笑う横顔を眺めて居た。武蔵としては友人と遊びに行く感覚だろうが、それはそれで構わない。
「えっと武蔵が興味があるのは観覧車、ナイトパレード、人気アトラクションの長蛇の列に並ぶだね。
前二つはともかく、最後は並んでみる事そのものを体験したいのかな?」
「そうだな、一応前もって調べたりもしたが、どういうのが良いのかがイマイチわからなくてな。
やはりこういう機会は古来より人気の所から攻めておくのが定石であろう。
それに、こういうのは行列に並ぶ所から定番イベントと聞いた。ヒトの多い所は割と好きだし、そういう体験をしてみたいというのはあるな」
成程なあ、とレイテは頷く。武蔵の柄ではないとは彼女は言うが、守護者という目線だけでは得る事の出来ない知識だろう。それは良い傾向だ。
ナイトパレードは手を引いて武蔵を人並みに誘おう。彼女にとって屹度初めての経験になる筈だからだ。
アトラクションの長蛇の列だって、寒くないようにと翼で包み風よけだと笑いかけてやれば良い。
最後の観覧車にやってきて――その隣にそっと腰掛けた。彼女は何を思っているのだろう。レイテはそっとその横顔を盗み見る。
(厚意に甘えている自覚はあるぞ私……。正直武蔵に対して何かを施す事自体が目的というのなら、何を返せばいいのか困惑している面はある)
困惑した武蔵は「どうすればいい?」と問うた。レイテは「今、何考えて居る? この景色を見て、どうかな」と問うた。
「そうだな、この街の景色は平和でいいと思うし、その平和が続いてほしいと願っている。それはきっと、変わる事のない願いだ」
「うん。良い事だね。輝かんばかりのこの夜に、何か祈るとすれば――守護者じゃない武蔵の日常が、こんな風にもっと増えていきます様に」
「そうだな、悪くはなかった。貴様が思うより恐らくずっと、それは重い”祈り”だ。
"武蔵"が担う"祈り(もの)"と相反するものだ。だが、だからこそ、真摯に受け止めたいと、私は思う」
武蔵は目を伏せてから空へと進むゴンドラにゆらゆらと揺られていた。
「ピリア」
青年の姿をしたマリオンは優しくその手を差し伸べる。うきうきと、軽やかなステップを踏むようにやってきたピリアは「ゆうえんち! なの!」と瞳を輝かせる。
「ピリアしってるの! 来たことはなかったけど、たのしいがいっぱいのばしょなの♪ マリオンさんはどれがすき?」
「うーん。気取って言うわけじゃないけれど、マリオンさん的にはピリアの笑顔と楽しそうな姿が一番のアトラクションだからね」
「……ピリアがわらってるとアトラクションになるの? じゃあ、マリオンさんとあそんでるとマリオンさんはいつもワクワク?
すごいの! ピリアといっしょなの~♪」
嬉しそうな彼女を見ていれば、マリオンの心は躍るのだ。それでもピリアは『おすすめ』が知りたいというから。
「じゃあ、……うん、マリオンさんは観覧車を選ぶかな。あはは。選んだ理由はアトラクションの中だと、「一番、空に近い」って言うだけ何だけどね?
マリオンさんは青空が具象化した精霊種だから、やっぱり、空に近いと落ち着くしね」
「わあ……あんな高いところ、すごいの! マリオンさんといるとはじめてがいっぱいなの♪」
嬉しそうに手を引くピリアに連れられて乗った観覧車。
超常に差し掛かりマリオンは「輝かんばかりのこの夜に、ピリアの笑顔が誰よりも輝いています様に」と囁いて――
外を見詰めていたピリアがくるりと振り向き手を伸ばす。その手には可愛らしいプレゼンボックスがあった。
「いっぱいうれしいをくれるマリオンさんに、今日はピリアからプレゼント! いつも、ありがとうね、マリオンさん! だいすきなの♪」
二人の思い出を、それから、あなたが幸せになるように想いを込めたスノードーム。白い鯨の尾に幸運を乗せて届くように。
一番に落ち着くというこの場所で、あなたがその大好きに『わたし』をいれてくれると嬉しいと、そう願いながら。
「クリスマスに遊園地って、実は初めてなの。だから、今日はとても楽しみにしてるわ。エスコートしてもらえて少しドキドキなのよ」
どこかうきうきとしたミレイにレオは手をそっと差し出してから「クリスマス時期は初めてなのか?普段の賑やかだけどこの時期はさらに賑やかになるぞ」と告げた。逸れないようにと握り締めた手に、心が弾む。
「どこか見て見たい場所はないか?
「ジェットコースターに乗ってみたいわ」
ジェットコースターは恐くなかっただろうか。うきうきとするミレイを連れて、メリーゴーランドに、コーヒーカップにと楽しむ。
最後に辿り着いた観覧車では、レオは「どうだった?」と問うた。
「今日一番楽しかったのはコーヒーカップね。くるくると楽しかったわ」
そう告げてから下を覗き込む。イルミネーションがキラキラと光を帯びて美しい。
「園内の灯りを上から見下ろすのも楽しいな。ミレイ、一枚写真を撮らせてくれ」
「写真を一緒に撮るの ?ええ、ぜひ! いい思い出が増えたわ」
微笑むミレイをカメラに収めてからレオは「綺麗だ」と頷いた。
「ミレイの時間が許すなら、下に降りたらまた一緒に回らないか?」
「えぇ、勿論。まだ離れるには早いでしょう?」
(……混沌に来てから最初に来たのはここだった、かな)
祝音は混沌に最初に来た時と同じように観覧車に乗ってみた。ゴンドラが徐々に登っていく。然うして見える再現性東京の景色は煌びやかだ。
大切な人達が、大切な猫たちが居るこの景色は祝音にとって護らねばならない場所だ。
「……やっぱり、綺麗だね。みゃー」
――来年もまた、乗れるかな。再来年も、その先も、ずっとずっと。
その度に、僕はきっと混沌に来た日を、色んな事があった日々を思い出すんだ。
この先に僕が消えても、いなくなっても、僕がいた日々は消えないから。
仲間が出来た。それから、友達が増えた。そう思えば、思い出を大切に抱え、進まねばと思わせられる。
「……また、乗りに来るね。みゃ」
●練達IV
「テアドールの研究所でクリスマスパーティー! のために、買い出しなのです」
うきうきとしたニルはクリスマスマーケットで探すのは部屋の飾り付けやひとりひとりへの贈り物とおいしいものだと決めて居た。
同じ管理AIで存在するシリーズ機体のひとりひとりにプレゼントを用意してくれるニルは優しいとテアドールも笑顔を浮かべる。
「どうしましょうか。オーナメントにキャンドルホルダー、レープクーヘンにスノードーム、ぬいぐるみやおもちゃも……むむむ。悩みます、ね」
そんなニルをミルだけでテアドールの胸はぽかぽかとする。嬉しくなるのだ。
「お外に行けないシリーズのみなさまにも、楽しんでもらいたいですものね」
手を繋ぎ心をぽかぽかあったかくするニルにテアドールは「どうしましょうか」と問うた。
「あとで予約したケーキも取りに行かなくちゃ、みんなで食べるケーキはぜったいぜったい「おいしい」のです! 楽しみですね、テアドール!」
「楽しみですね」
「あ、それから、あのね、あのね……ニルは、マフラーの編み方を教わったのです」
ふわりとテアドールの首にマフラーを掛けてニルはにこりと笑う。
「輝かんばかりのこの夜に……メリークリスマス!
冬はまだまだ寒いけど、あったかくなるようにって、たくさんたくさんおまじないも込めたのです どうですか? ちゃんとぽかぽかしますか……?」
「とってもあたたかくて、ニルのぽかぽかがもっと感じられます。ニルはいつも僕に良くしてくれます」
テアドールはあたたかいですと笑った。マフラーも、シリーズへのプレゼントも『ぽかぽか』するのだ。
「ふたりのときに、渡したかったのです。ニルのとってもとってもだいすきなベスビアナイトに」
テアドールはニルをじっと見詰めてからそっと抱き締めた。
「こうすることでより仲良くなれると教わりました。どうですかニル? あたたかいですか?
僕はとってもぽかぽかで、嬉しい気持ちです。きっとニルもそうでしょう?」
「はい、とっても」
暖かいですとニルは笑った。ぽかぽかして、大好きが溢れるのだ。
(距離感が解らない。元来対人関係において、そつのない彼女ではあるし、その距離感の掴めなさは彼女の魅力の一つであり、僕が好ましく思う点の一つではあるのだが。この点の一つというのは当然、彼女は他の魅力にも溢れてるという事であるが。はー水夜子君好き。詰まる所、彼女は好きな子が居たりするのだろうか)
そんなことを考える愛無。水夜子は何ら気にする事も無く「こんにちは」と笑うのだ。そういう所も鳥渡好ましい。
「今年も水族館に行かないか。水夜子君。今の時期なら何か特別な企画展示もあるかもしれないし。
何は無くとも、あの独特な空間は落ち着くし。大きな事件が起きた後で、手軽に非日常を楽しむのにはいいのではないだろうか?」
「ええ、構いませんよ」
「ならば、是非。えすこーとさせてくれると嬉しい」
その手を握り締めればすいすいと水夜子は行く。横顔を見詰めているだけでも、どうにも嬉しくなるのだ。
それでも、行き着く先が分からなくて。
(彼女が恋してるのは「怪異」であって「怪物」で無いのだろうが。僕としては彼女の幸せを願うばかりだ。
その中に僕が居れば、尚更、いいのだが。何にせよ、僕は彼女の日常を。非日常を守るだけだ)
愛無はそっと、水夜子に声を掛けた。
「ねぇ。水夜子君。改めて君に伝えておきたい事があるんだけど。僕はやっぱり、君に恋しているようだよ。
選ばれない事にはなれている。それでも伝えておきたいと思ってね。心の片隅にでも置いて置いてくれればうれしいな」
水夜子は目を細めてから「寂しいことばかりを言う人」と揶揄った。まだ、彼女だって分かりやしない心中に、傍に居られたらとそう願うように愛無は寄り添った。
「……寒いので手は繋いでくださいね? お願いです」
「いいけど」
ほら、と手を差し伸べるムラデンに妙見子は僅かな緊張をしながらぎゅうとその掌を握り込んだ。
昔はそうしたのを見れば何も思う事は無かった。ライトアップされた木を見て感慨を抱くことも、リア充爆発しろなんて言葉も。
「こういうのって中々一人で見に行くには勇気がいるじゃないですか? せっかくのデートですから、ちょっとだけ恋人らしいことをね?
……まぁ私達友人ですけども、こう! 雰囲気ですよ!」
「妙見子はデートで、恋人だって思ってたんだ?」
「もう、違いますって!」
唇を尖らせる妙見子にムラデンは笑った。イルミネーションを見詰める横顔を盗み見れば「何?」と彼の視線が揺るぎ、目があった。
「綺麗ですね、ムラデン」
今、とても幸せなのだ。妙見子はそっと手を離してからムラデンへと向き合った。
「こうやって貴方と練達に出かけるのも何度目になるんでしょうか。
あの戦いが終わって、夕焼けの中に貴方との友情を見て……こうして共に在れることを想うと胸がいっぱいになるのです」
友人だって思っていたけれど――それでいいと、思って居たけど。共にあれればそれで嬉しいと思ってしまったから。
10cm分を埋める様に。背を伸ばす。ぐ、と爪先に力を込めてその頬に口づけを。
「あ」とムラデンがぽかんと口を開けた。呆けた彼が愉快に見えて。
「……今はこれで。ムラデン、唇には貴方からしてくださいね?」
「輝かんばかりのこの夜に!」
冬毛でもふもふとしていたウシュはきらきらと瞳を輝かせた。挨拶をした明煌は周囲を見回した。
街の灯は煌びやかでも、明煌の気持ちは沈んでいる。不安な気持ちが顔に出ていたのだろうか、ウシュが「明煌君」と呼んだ。
「えへへ、明煌君。いろいろと大変だけどさ、今だけは俺の事と楽しい事だけ考えててね?」
にんまりと笑ったウシュ。その元気な様子には気持ちが浮上する。手を繋ぐことや、ふれあうことを苦手とした明煌との距離は、彼が心を護る為のものにも思えた。
「ねえ、シャイネンデートと言えばイルミネーションの下でイチャラブって本にも書いてあったよ。
イルミネーションの下で写真撮って皆にも見せつけようね。チキンとかケーキも買って帰ろうか」
「ああ。写真はあんまり得意やないけど、ええよ」
ウシュがそうしたいならと告げる明煌と写真フレームに納まって「明煌君、明煌君。俺、明煌君の事だぁいすき♡♡」とウシュは笑う。
――その言葉に、明煌は「ありがとう」と返した。想いに返せるのはそれだけでも、ただ、応えがないのは違うだろうと思っていたから。
「ボス」
ハインの呼び掛けにイーリンは「ええ」と頷いた。ハインの家にやってきて、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。
「僕は、将来何かに変わってしまうかもしれないボスの、今の情報を記録しておきたいと思ったんだ」
「……いいのかしら?」
「いいんだ。コアに触れてほしい」
遺伝子情報を焼き付けて欲しいと願うハインにイーリンは「ハイン」と呼び掛ける。
「ハインが前にコアが自分にとってどれだけ重要で、そして敏感な部位であるかを教えてくれたこと、はっきり覚えているわ。
そして、私のことを忘れないというのが……ハインなりの愛の表現ということ。
どこかに私の足跡が残ればいいって、ずっと思っていた。貴方がそれを残してくれるというのなら……。僥倖だわ」
そっと、コアに触れた。ん、と小さな声を漏したハインの体が揺らぐ。
「ハンドルされていない例外を確認。書き込み中にアクセス違反が発生しました。このエラーを無視し、続行しますか?...[Y]」
じいと見詰めて例外処理を眺めて居た。色んなものを握りつぶしてきた手が、コアを包み込んでいる。
刻みつけていくのだ。全てを。イーリンは刻まれてきたものを認めている。だから、これを受け入れるかはハインの選択だ。
ゆっくりと目を開けたハインに「ありがとう」とイーリンは笑った。
「もう、消せないよ。僕自身にも」
「ええ。それで構わないわ。……ね、一緒に過ごしましょ」
「しゅぺるちゃんの塔に行きます。だって今日はね、シャイネンナハトなの。
扉ちゃんにも、一年ありがとねと挨拶します。今日は扉はあくのよ シャイネンナハトだもの」
勢い良く扉を殴ったメリーノにシュペルは「やめろ!」と叫んだ。開いてくれると思っていた。彼は其処まで冷たくないから。
「しゅぺるちゃん! ハッピーシャイネンナハト! これはお土産! ケーキ! あ、コーヒーがいいわあ! わたし」
「喧しい! 触るな!」
手を伸ばしかけたメリーノを咎めるシュペルは「やめろ!」と叫ぶ。つんと唇を尖らせて拗ねた様子でメリーノが「えー」と呟く。
「いいじゃない、別に壊したりしないわぁ わたしなんかが触ったって壊れるようには作ってないでしょ? しゅぺるちゃんだもの
そんなに叱らなくったっていいじゃない……壊してないのに……ああそうだ、これを伝えなくっちゃ。
はじめまして、しゅぺるちゃん。ダンスをしにきたの! ダンスくらいできるでしょかみさまだもの」
もの凄くげんなりとしたシュペルにメリーノはにんまりと微笑んだ。
「ふふふ! そんな嫌そうなお顔もすごくかわいい! やっと会えたわぁ うれしい ありがとうね、しゅぺるちゃん。
ああ、それと、みんなを助けてくれて、ありがと。
ねえねえしゅぺるちゃん、わたしお家がない可哀想な子なの。だから、ここにいるね。そしたらしゅぺるちゃんも寂しくないわ」
にこにことするメリーノにシュペルがもの凄い顔をしたのは、きっと彼女しか知らないのである。
●豊穣
「賀澄様、お誕生日おめでとうございます!
豊穣にもシャイネンナハトの文化がだいぶ広がってきましたね。また一緒にお祝いをすることができて嬉しいです」
「俺の生誕祭という事でな」
軽やかに笑う霞帝にルーキスはこくこくと頷いた。大陸製の葡萄酒はルーキスの用意した祝いの品だ。
「どうでしょうか? 豊穣ではあまり見ない品だと思ったので……呑みましょう! 俺も成人したのでご一緒出来ます!
ずっとこうして賀澄様と一緒にお酒を呑みたいと思っていたんです。夢が遂に叶いました」
「はは、師でなくて構わなかったのか? ああ、いや。あれも呼べば良い。共に酒を傾けるのも一興だろう」
楽しげな賀澄の声音に父たる師への気遣いが嬉しくて、ルーキスは「賀澄様」と呼び掛けた。
「俺は特異運命座標となって、貴方に出会えて本当に良かった。
豊穣の未来を共に歩めることが何よりも嬉しいのです――どうかこの先もずっと、こうしてお誕生日をお祝いさせて下さいね」
「勿論だ」
楽しげな賀澄は朗らかに酒を呷り、料理を楽しみ、常の通りの様子であった。
「霞帝、今日がお誕生日だったんすね。おめでとうございますっす」
穏やかに笑った慧は贈り物は何にしようかと考えて少し値の張った手拭いと花を添え、差し出した。
「大したもんは用意できませんでしたが、ご迷惑にならなければ。花はギフトのなんで一日で消えちゃいますが……」
「花を出せるのか。慧、素晴らしいな」
日々、違う花で目を癒やす事が出来るとはと嬉しそうに告げる賀澄は正しくこの国の王たる器量なのだろう。
彼にはまだまだ踏ん張って貰わねばなrなあい。重責があったとて手放せない護りたい『日常』を大切にして貰いたいのだ。慧なりの励ましでもある。
「じゃあ、そろそろ。シャイネンの夜は、故郷の主さんと過ごすって決めてるんすよ」
「ああ、主にも宜しく頼む」
「今晩は、星も月も……綺麗です、から」
賀澄は楽しそうだった。メイメイもそのパーティーに参加してから晴明とこっそりと縁側へと抜け出した。
ちらつく雪と、美しい冬の気配を感じながら白い息を吐く。宴は全て終ったが二次会ともなれば疲弊もするものだ。
温かな飲み物を手にメイメイは「お疲れ様、です」と微笑む。
(今は、お仕事を詰め込んで、いつも通りなように見えるけれど、……心の何処かでは薄雪さまの事で、疵を抱えたままなのかもしれない。
彼が折れてしまいそうな、その時は……わたしが支えに、なってあげたい)
大丈夫ですか、とは問えなかった。この人はそうした言葉には屹度「大丈夫だ」と嘘を吐くから。
「……晴さま。貴方の傍らには…わたしが、居ます、から……忘れないで下さい」
見上げ、そして微笑むメイメイに晴明は「有り難う」とか細く返した。どこか、弱々しいときがあるのだ。だから、放ってやおけない。
(晴さまに抱く気持ちが変わり始めたのも、去年の今頃……でした)
恋心は確かな熱を帯びて、そして燻った。時々ズキりと痛んで苦しくもなる。メイメイは「晴さま」と呼んだ。
「プレゼント、です。巻いて、あげましょう」
マフラーを巻くために屈んで欲しいと告げれば彼は少し身を屈めた。背伸びしたって届かない、あなた。だから、これはすこしの悪戯。
「晴さまに祝福がありますよう、に」
頬に口付ければ、晴は目を見開いた。「メイメイ」と呼ばれてからぱちりと瞬く。
「は、晴さまにだけの特別、です。他の誰にだって、こんな事はしません、から。……今少し、ほっとしました?」
彼は驚いた顔をした後に「贈り物にどう、返せば良いのか。また迷わねばならないな」と肩を竦めた。
何時ものように、天香邸にやってきて、鹿ノ子は「遮那さん」と呼んだ。
「今年は暖冬と聞いていましたが、それでも寒いものは寒いですね……」
爆ぜる火鉢を確認してから遮那は「火を焚けども、真冬の寒さに体は凍えるものな」と頷き彼女の体を毛布で包み込む。
「こうすればあたたかいからの」
「ふふ。……こうして共に過ごすのも、もう何年目でしょうか」
どれだけ繰返しても飽きることはない。想いは雪のように積もり、溶けることはない。どれ程に熱く帯びても、焔は揺らぐ。
(あの夏の日の口付けが、忘れられない、なんて――ふふ、僕も随分と強欲になったものですね)
ゆっくりと顔を上げた鹿ノ子を後ろから包み込んでいた遮那ははたと思い出したように「すまない」と言った。
「そういえば、聖なる夜は贈り物をするのだったか。申し訳ない、執務が立て込んでおってのう。何も用意していないのだ」
「……遮那さん、プレゼントは要りません。ですから代わりに……口付けを、くれませんか?」
ゆっくりと、鹿ノ子と向き合った。遮那の頬に朱が昇り、同様に心臓が脈打った。執務で忙しいと意識をして居なかった――恋心。
その形を確認したように遮那はごくりと息を呑む。
(……ああ、きっと。それは私が鹿ノ子のことを好いているからなのだろう。
出会ったあの日から積み重ねた日々が脳裏に過る。傍で守りたいと思うし、笑顔を見たいと思う)
遮那はそっと鹿ノ子の頬に触れた。
鹿ノ子はゆっくりと目を伏せる。本当は、一番欲しいのは薬指、何も似のも変えられぬ高価な物だ、そこまでは今は強請らないから。
その体をぎゅうと抱き締めながら遮那は口づけをその唇へと落とした。
●世界の何処かで
深緑にやってきたクロバは「リュミエ」と呼んだ。壁越しに何時も通りに語りかけるその時間がやってきた。
「今日は穏やかで何よりだ。この輝かんばかりの夜はいつだって平和だ」
「お身体は?」
「……無理はしていないさ。ほら、花、もらっただろ。世話するのに身体を壊してはな」
クロバの声音は弾む。リュミエは何かを惑うように「そうですか」と返した。
こうして、顔を見ずに過ごす。何を話すべきかも悩ましく思うのだ。不意にこの夜に気持ちを伝えたならば――?
(本当は隣で話していたいさ。だが俺は……いや、そもそも俺は彼女の隣にいてもいいのだろうか。
そう迷っているのだ。駄目だ。これは呪いにもなろうもの。言うわけには行かないのだ)
クロバは手紙の便箋に勿忘草の栞を挟んでから「なぁ、リュミエ。俺はお前のことを――」と言い掛けてから「助けようと思う」と誤魔化した。
「手紙を置いておく。便利に使ってくれ、しおりを挟んだんだ」
「……有り難うございます」
「花のお返しだよ」
花言葉に仕込んだ本当の想いは。忘れないでほしい――イレギュラーズの俺としてではなく、君を想う一人の人間として。
(そうだな、俺のことを――だが、それを口にする資格はないのかもしれない)
それでも、思わずには居られない。思ってしまうから、どうか、愛しテルを伝えられない代わりに、持っていて欲しい。
シャイネンナハトの前から『先輩』たちに絡み続けるのはウルズだった。様々な国家を廻って、そうして此処までやってきた。
「ここで飲んでても多分ざんげには怒られないっすよね? よし、居座ろ
ざんげに絡むのも楽しそうっすね……や、ここにいても用意したお酒が尽きるだけか。
誰か捕まえて酒場に連れ込まないとアルコールが足りなくて死ぬぜ!っす。
だれにしようかな、かみさまの、いうとおり……よし、せんぱーい!」
手をブンブンと振るウルズが見付けたのは亮と、それからリリファだった。
「そこの兄ちゃんと姉ちゃん、一人ならあたしと一緒に飲みいかねっすか?
へへへ、一人飲みに飽きてたところなんすよ。どこいくんすか? ついてくっすよ」
「酒!」
「酒ですって!」
「飲もう、ウルズさん。酒飲んでみたい」
「そうですよ、成人したのに中々ありつけなくって!」
やばいコンビニ腕を掴まれたウルズは「あわわわ」と声を漏しながらずるずると引き摺られていった。
そんな様子を眺めて居たのはセレナだった。
「今年のわたしは魔女のサンタクロース! ……サンタさんの概念って混沌でもあるのかしら?」
それにしたって、プレゼントをせびられてなんとか回避した月原&リリファペアが新たな標的を見付けていったのだ。
「凄いことになってるわ……」
誰も彼もが浮かれ騒いで田のシゲなのだ。時間の許す限り空を飛んでプレゼントを配ろうと改めて考えてから――
「そう言えば、マリエッタはどこに行ったんだろう……? 今年は色々あったし、一緒に過ごしたいと思ってたのに、もう!」
そんなマリエッタは一人。ふらりと様々な場所を歩んでいた。
輝きすぎるその言葉を口にするのはどこか面映ゆい。聖夜という成り立ちに興味があってマリエッタは廻る。
「パウルさんの時と似ているかもしれませんね。
どこかから感じるとてつもない悪意。その悪意に惹かれたのでしょう。今の聖女と友達になってみたい…と。その果てに争いがあるとしても。
という事で各地を巡りましょう
元より当てはありません。例え遭遇出来なかったとしても…それはそれで魔女の聖夜には相応しい。
逢えたら軽くお酒でも交わしながら……これから始まる素敵な日々を愉しみにしてます……とでも伝えましょうか」
そんなことを思いながら行く。聖女。伝承の娘。彼女は今、何処で何をしているのだろう。
――プーレルジールにて。
「しゃいねんなはと? をお祝いするの。
アルム、誘ってくれてありがとう。わたし、シャイネンナハトって初めて。どんなことをするのかしら……エスコート、よろしくね」
「うん。俺もプーレルジールのクリスマスは初めてだから、しっかり楽しむよ!」
にこりと笑ったアルムにステラがこくりと頷いた。お祝いムードの街並みは、再現性東京の様子にも似ていただろうか。
クリスマスならではの軽食やホットドリンクはあるが、それ程盛大とは言えないようだ。
「嗚呼、ステラ。聖なる夜のオーナメントを買ってきたんだ。
マーケットでクリスマスツリーを買って、これと一緒にステラの家に飾ろう! 来年もクリスマスを祝えるように。
それからね、コーヒーと合うかなと思って……混沌のシャイネンも味わってほしくて持ってきたんだ」
「クッキー缶! ありがとう。一緒に食べましょう。コーヒーを淹れてくるわね。
初めてのことがこんなに沢山、今日は本当に楽しいわ。ありがとう、アルム」
嬉しそうに笑ったステラにアルムは「よかった」と笑った。それから――そっと、彼女を見詰める。
「……混沌にもステラと同じ存在、『滅びを見守る端末』がいるんだね。
君からの頼みでもあるし……必ず会いに行って、止めるよ。
でも俺が仲良くなったのは、プーレルジールにいる君だ。君との時間を大切にしたいし、君の幸せを願ってる」
ああ、これは屹度、アルムは分かって居る。彼女に惹かれているのだろう。
「シャイネンナハトか。懐かしいと感じるのは今年はかーさんがいねえからかな」
牡丹はあの『巨体』が「サンタさんでーっす!」と天井から降ってきたその日を思い出す。あの様子には驚いたものだ。
「ステラ誘おうと思ったんだが、アルムに先、こされちまったなあ! やるじゃねえか。
ステラも嬉しそうにしてたし、あいつが楽しいシャイネンを過ごせそうでなによりだぜ!」
くつくつと笑った牡丹はサンタさんらしく夜中にこっそりとプレゼントでも届けるかと準備を行って居た。
(……敵だとは分かっちゃいるが。もう一人のステラとやらも寂しくないといいな。輝かんばかりのこの夜に、だ)
●覇竜
「シャイネンナハトにご馳走が出るんだって! とても楽しみだよ! 琉珂は料理するの?また何か動くのかな?」
にこやかな玲樹に受け入れてはなりませんよと紫琳が注意する。楽しげな琉珂は「任せてよ」と微笑んだ。
「不思議だよね、俺は何度がチャレンジしたけど全然動かないんだよね〜。うーん」
「普通は動かないのですよ。普通は。誰かがついて止めるなり軌道修正する必要がありますね……。今回は恐らく私だけ……責任重大です」
メイド服姿の紫琳はすうと息を吐いた。
「いえ、ポジティブに考えましょう。準備の間琉珂様と一緒。……そう考えるとなんだか悪くない気がしてきましたね。ふふふ」
「私も一緒で嬉しいわ!」
「ねえ、紫琳。もう動いているよ?」
「ッ――」
ほら、と指差す玲樹はローストチキンの摘まみ食いをして居た。
「琉珂様、それはだめです」
慌てる紫琳に琉珂がきょとんとしている。重大な任務を抱えていた紫琳は琉珂の大騒ぎ状態に気付かなかったのだ。
『琉珂様がサンタさんに何をお願いするか』――それを聞かねばいけないのだ。サンタさんとして夢を守る為に。
「琉珂はもう大丈夫? 色々と大変だったからさ。今日は琉珂はちゃんと笑顔だったから、ほっとしたんだ。
おじさまほどじゃ無いけど、ちゃんと頑張ってるの俺も見てるよ。偉いね、琉珂」
「うふふ、ありがとう。玲樹」
頭を撫でられ嬉しそうに笑った琉珂に玲樹は「うんうん」と頷いてから莓をフォークに突き刺した。
「ほら、今日はいっぱい食べよ。デザートにイチゴのケーキがあるよ」
「あーん」
さあ、紫琳、聞かねば。どきどきとする紫琳と比べれば飄々とした態度でやってきたヴィルメイズは「おや、里長様!」と声を掛ける。
「もしや里長様もサンタ出待ち勢でございますか?
なんと奇遇な! 私も今年一年大変良い子でございましたので、プレゼントを受け取りに来たのですよ。
里長様はどんなプレゼントをお望みで? 私は先日再現性東京で見かけた新色ネイルをですね〜。もし頂いたら里長様にも塗って差し上げますねぇ」
「わあ、嬉しいわ。あのね、ネイルで指先をきらきらにしてみたいの」
――紫琳は聞き逃さない。ヴィルメイズにも用意しておかねばならないか。
「私はね、大きな熊のぬいぐるみが欲しいのよ。オジサマのコートを着せてあげようと思って」
「おお、いいですねえ!」
――紫琳は聞き逃さない。ベルゼーに似たモノが必要か。
「ねえ、ヴィルメイズさん、何か疲れているの? 顔色が悪いわ」
「私が少し疲れているように見える? ……実はウェスタのほうで色々あったので、少し考え事をしておりました。
悩める私も美しいのですが、悩みすぎるのも肌に良くありませんし、今日は面倒なことを忘れて楽しむことにいたします。
なのでどうぞ、ご心配なさらず。ただ寝不足でしたので少し眠いです……ねぇ〜……」
「あら、寝て良いのよ」
どうぞどうぞ、と琉珂は座敷を指差した。サンタクロース出待ち勢として寝るところも完璧だったのだろう。
「よいせっと」と美しすぎるかけ声で転がったお休み三秒ヴィルメイズ。その暫くの後――
『……珱の娘か。この里の者は誰もが皆、汝(みまし)に対して親愛の情を抱いているのだな。吾とは雲泥万里よ……フフ……。
まあ良い。この男に少しでも縁があるというなら、今生の別れを済ましておくが良かろう。ハハッ!』
「えっ!? 良く知らないけど私が貴女を好きになれば良いの!? 誰!?」
熟々、シリアスと懸け離れた里長は慌てた様子で声を荒げ――その声音にはっとヴィルメイズが瞼を押し上げた。
「……おっと失礼しました里長様!ウトウトして今一瞬眠ってしまっておりましたねぇ。
眠気覚ましに珈琲でも淹れてもらうことにしますよ〜、里長様も一杯いかがですか?」
「え、ええ、貰おうかしら。ずーりんに貰う?」
ぱちくりと瞬いて琉珂は「何かしら」と呟いた。
――様々な思惑が交差する夜。美しい聖夜。静寂とさいわいは崩れ去るときが近い。
それでも、今は祈っていよう。どうか、さいあいあれかしと。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
善き夜を。
皆様が、幸せでありますように。
(※名声は一律してローレットのある【幻想】へと付与させていただいております。ご了承くださいませ)
GMコメント
夏あかねです。普通に全国的なシャイネンナハト(24日・25日)をお送りしています。
●シャイネンナハト
ご存じのクリスマス。御伽噺は特設ページをご覧下さい。
混沌世界では聖女の逸話による祝福の日や戦闘が起こらない日であると認識されています。
天義の動乱が終ったばかりですが、それはそれとして。シャイネンナハトが参りましたね。
各国何処へでも行くことが出来ますし『NPCに参加提案』を行なう事でお誘い頂く事も可能です。
が、書式と場所はしっかりとチェックしてくださいませ。迷子になるかも知れません。
●プレイング書式
一行目:【場所】
二行目:【グループ】or同行者(ID) ※なしの場合は空行
三行目:自由記入
例:
【ギルド】
リリファ・ローレンツ(p3n000042)
国家指定
向かいたい国家をセレクトして下さい。
(ご自宅やギルドなどを選ばれる場合もここかな?という国家をセレクトしてください)
※説明はあくまでの例文なので、お好みの過ごし方が出来ます!
※参考にして頂け増すと幸いです。
【1】幻想&ローレット
何時もの如く王様がパーティーをしています。
聖夜をとっても楽しんでくれているようですね。
ローレットではユリーカがちょっぴりとパーティーをしてくれています。
【2】鉄帝国
チャリティーライブや炊き出しをしています。
何かに備えている感じもしますね!雪どっさりです。大変だ。
【3】天義
今年はちょっぴり静かなようですが、それでも厳かなミサが行なわれています。
(※天義編の『祝勝会』はまた別のシナリオで執り行われます)
【4】ラサ
砂漠の冬はとても寒いですが、クリスマスバザールを楽しむ事が出来ますよ。
【5】海洋
何時も通りの海洋でのパーティーや、竜宮で過ごす一晩は如何でしょうか?
【6】練達
再現性東京ではクリスマスマーケットを楽しめますよ!遊園地なんかやイルミネ―ションも綺麗です。
セフィロトでの忘年会by佐伯操もございます。
【7】深緑
ファルカウでの静かなパーティーを楽しめます。
リュミエ達幻想種は平和を愛していますから、のんびりと過ごしているようですね。
【8】豊穣
霞帝は実はお誕生日様です。そのお祝いが行なわれているようですね。
のんびりとお過ごし頂けますし、雪もちらついれいます。
【9】覇竜
亜竜集落フリアノンやその周辺集落の冬です。
琉珂が「サンタさんってくるの!?」と騒いでいたようですが……?
【10】その他
その他此処だというのがありましたら。
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