PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

革命の凱歌

 幾度もの爆発がおきた。
 参謀本部周辺の建物が次々に崩壊し、またひとつが砕け散ったところで、その瓦礫の中から『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)がよろよろと起き上がる。
「あと、どのくらい……スか? まあ、わたしは、あと1ヶ月ぐらいは余裕スねぇ……!」
 強がった態度とは裏腹に、彼女の義手からはばちばちと嫌な火花が散り頭からは血と汗が混ざって流れ落ちている。
「ふふ…! まだまだ元気いっぱいさ!
 皆もそうだろう?
 それに…君と一緒にいる私は無敵だからね!」
 『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)も荒く息を整え、空中でなんとか姿勢を維持している。イスカはいつのまにかどこかへと居なくなっていた。照れくささなのか、立場があるのか、それとも単に面倒くさくなってしまったのかは謎だ。
「正直、そろそろ厳しいですわね……」
 二人の様子に、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が深く息をつく。
 けれど、言わねばなるまい。
「もう少しだけ、付き合ってもらっても良いかしら」
「「勿論」」
 二人の返答に、混じるものがある。
 『血の色に意味をもて』ルブラット・メルクライン(p3p009557)『後光の乙女』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)である。
 これまで革命派と共に歩んできた仲間たちのひとり。彼らはグロースとの決着をつけるべく、ここまで戦ってきた。
「……やはり、私の心は民が前線で戦う事実を素直に喜べないようだ。
 だが、だからこそ、此処で悲劇を終わらせよう。
 今を生き抜く彼女達の願いを――そして此処に至るまでに積み重ねられていった『死』を無意味にしないが為に!」
 強く握った拳が、ルブラットの仮面の奥で燃え上がる意志の炎と呼応する。
 それはブランシュも同じだ。
「長かった。私達は争い続けた。
 この状況を見て、貴方が鉄帝の総意を語れますかグロース?
 弱者が生きるために起き上がった、必死の抵抗を。民衆の望む世界を。
 どうかこれを唱える事も最後になりますように。
 ――クラースナヤ・ズヴェズダーの足音を聞け。
 我ら全ての民の幸福を願う者なり。
 どうかご照覧あれ。その為の殲滅を良しとし、全ての障害を取り除かん」

 対して、グロース・フォン・マントイフェル将軍もまた。
 崩れた建物の壁にぺたりと背をつけ、両腕をだらりと下げている。
 頭からは血が流れ、息も荒い。
 だが表情には……深い笑みがあった。
「『弱者どもが』と……もはや、言えんな。ふ、ははは、はは」
 血に濡れた手で自らの顔を撫でる。
「強くなければ、生きていくことはできぬ。弱者は、死ななければならない。だがどうだ、ここにいるのは?」
 グロースはゆらりと壁から背を離し、ヴァレーリヤやブランシュたちへと一歩、踏み込む。
「皆強者だ。どうだろう、私と共に帝国の未来を築かないか。貴様等民が強者だというのは、もはや認めざるを得ない。ならば弱者となる他国の民らを喰らい、今こそ彼らが裕福に生きる未来を掴もうではないか」
「そんなことを、『後光の乙女』である私達が許すとでも!」
 ブランシュが叫ぶ。その気持ちは、もはや五人とも……いや、この場で戦う誰でも同じだっただろう。
「だろうな」
 グロースははあと深くため息をつき、そして首をこきりとならした。
「ならば意地だ。勝った方があの民を従えることになろう。私が勝ったら、あの民等を他国に突撃させ略奪の限りを尽くさせる。豊かな土地と未来を手にするのだ!」
「そうはさせん――」
 走り出したのはルブラットだ。
 両手の袖から暗器を滑り出し、グロースへと斬りかかる。
 対するグロースはコンバットナイフを抜いてルブラットと互角に斬り合った。
 グロースが背負っているのは、自らの狂気。
 ルブラットが背負ったのは、誰かの夢。
 勝敗は、紙一重で――。
「――!」
 グロースの頬を赤い線が走り、数歩後じさる。
 構えた拳と同時に周囲に魔方陣が生まれ、集合した兵器が無数の大砲を作り出す。
「闘争が鉄帝人の性! 卑怯者仲間として最期にアンタの闘争に付き合ってやりまスよ!」
 そこへ飛び込んできたのはまさかの美咲だった。
 繰り出したグロースの拳に自らの故障寸前の義手を叩きつけ、そして肩から先が吹き飛んでいく。
 グロースとて無事ではなかった。グロースの腕がおかしな方向へまがり、よろめく。
「ヴァリューシャの前なんだ。多少格好いい所をみせておかないとね!」
 マリアがそこへ雷を纏い豪速で飛びかかると、グロースの腹にキックを叩き込んだ。
 空中に放り出されるグロース。
 ヴァレーリヤが、そしてブランシュが走る。
「いきなさい、フローズヴィトニル!」
 ブランシュがフローズヴィトニルと共に飛び出し、グロースへと猛攻を叩き込んだ。
 『性急な砂時計』を起動させ更に。
 グロースはせめてもの抵抗として大砲をすべてぶっ放したが、ブランシュとフローズヴィトニルを飛ばすことだけしかできなかった。
 彼女たちの猛攻をまともに受け、グロースの力は殆ど失われている。
 それでもと拳を握り、背後に大量の戦車や装甲車、戦闘機やそれに伴う様々な兵器を寄せ集めた『ギア・タンク』とでも呼ぶべきものを作り出した。
「『ヴァレーリヤ』」
 未だかつて無いその呼び方は、しかし聞き慣れた友の声。
 ヴァレーリヤの横に立ったのは、メイスを手にしたアミナだった。
 ――この戦いに勝てば、全て終わる
 ――この戦いに勝てば、私達の『幸せ』が戻ってくる
 ――冬を越せなかった人達の犠牲も報われる
 微笑むアミナの表情は、ヴァレーリヤの内心と同じものを語っていた。
「「『主よ、天の王よ』」」
 唱える聖句が重なった。しかし、少しだけ違う。
「『この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を』」
「『この雷をもて我らの罪を罰し、かの魂に安寧を』」
 燃え上がるヴァレーリヤのメイスの炎。
 燃え上がる、アミナのメイスの雷。
 二人はグロースが兵器を解き放つと同時に、同じ言葉で聖句を締めた。
「「『どうか我らを憐れみ給え』!」」

 光と光がぶつかり合い、そして爆ぜた。
 最後に残ったのは、ぼろぼろになったヴァレーリヤたちの姿だった。
 この国を想った将軍の姿は、もうない。

「……やりましたのね」
 血塗れで倒れたグロースへと歩み寄るヴァレーリヤ。
「私は、ただ……戦争を……無くしたかった。強者の、国が、できれば……」
 その考えは間違っている。
 そう吐き捨てることができれば楽だったかもしれない。
 けれど、どうだろう。それは鉄帝国の目指した理想のひとつではあったのだ。
 やり方を……あるいは存在のあり方を誤っただけで。
 血に濡れたグロースの手を見つめ、はたと振り返る。
 アミナはその姿を見つめ、そして足早にグロースへと歩み寄った。
「グロース・フォン・マントイフェル将軍」
 アミナは彼女……あるいは彼だったものの名を呼んで、血塗れの手を握りしめた。
「あなたを殺して勝ち取った未来は、きっと幸せなものにしてみせます」
「アミナ……」
 短剣を握りしめ震えていた彼女は、もういない。
 彼女が縋るべき理想も、もういらない。
 勝利の先に、彼女は犠牲を呑み込んだ。


「敵が退いていく……グロースを倒したのか!」
 ギアバジリカによる支援砲撃を指揮していたシラス(p3p004421)は、撤退するグロース師団の様子に周りの反応を伺った。
「深追いする必要はないよ」
「うん。難民部隊の皆を損耗させるようなことはことはしたくないな」
 イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)祝音・猫乃見・来探(p3p009413)がそれぞれ頷きを返す。
「クリエイターと支援者の絆を見せつけたな」
 アントーニオを軽くハイタッチを交わすベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)と、味方の損耗具合を確かめる刻見 雲雀(p3p010272)
「けど、まだ油断はできないよ。戦場はここだけじゃない」
「この太陽剣を振るう場はまだあるということだな! うおおおお!」
 佐藤・非正規雇用(p3p009377)が雄叫びをあげ、結月 沙耶(p3p009126)がくすりと笑う。
「残るはフギン=ムニンたちの戦場と、バルナバスの戦場……か」
「『明日』を、夢見るだけじゃなくて…その手で、掴む。人民軍の皆さんも、一緒にいくのですね」
「それなら、ニルも皆さんをもっとまもりたいです」
 メイメイ・ルー(p3p004460)ニル(p3p009185)がこくんと頷いた。

「皆無事、だね」
 フーガ・リリオ(p3p010595)が玉の汗をぬぐって息をつく。
 熾烈を極めたグロース師団との戦いで多くの負傷者が出たが、死者を出すことなくくぐり抜けたのは彼らヒーラーチームとそれに従事した難民部隊救護班のおかげだ。
「社長ォーこれボーナスモンじゃね?」
「黙ってろバンピー」
 キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)が煙草を吸いながら仲間に目をやる。
 すると劉・紫琳(p3p010462)がライフルをリロードしつつ眼鏡の奥で鋭く目を光らせた。
「人民軍の戦意は今だ落ちていない。ってことは、それに私達も付き合わないとね」
「やっぱそうなるかあ」
「まだまだ調べたいこともあるけど……もうちょっとだけ後回し、かしらね」
「馬車繋いでくれ馬車! 戦場までひとっ走りできるぜ!」
 一方で長月・イナリ(p3p008096)ルナ・ファ・ディール(p3p009526)が賑やかに動き回っている。
「一人ひとりの力は小さくても、みんなが集まれば大きな力に。そしてまた次の海へ。まさにいわしだね」
「? まあたしかに、大きな力になったね。驚くほどに」
 アンジュ・サルディーネ(p3p006960)の言葉に少々疑問符を浮かべつつも時任 零時(p3p007579)も微笑んだ。

「勝ったー!」
 清水 洸汰(p3p000845)が両手をグーにして空に突き上げている。
 身体はボロボロだが、やりきった様子が見て取れた。
「流石にグロース相手に無傷とはいかなかったか……強敵だったな」
 天之空・ミーナ(p3p005003)がぽつりともらすと、ダリル(p3p009658)がこくこくと納得したように頷いて見せた。
「これまで新皇帝派の軍部を率いていただけのことはある! が、その信念も強さも――」
「オイラたちが勝った、ってことだよね」
 チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)の言葉にイズマ・トーティス(p3p009471)がサムズアップで答えてくれた。同じく陰房・一嘉(p3p010848)もサムズアップを向ける。
「しかし、グロース将軍……もとは戦争をなくすために政治に尽力した男だったんだな」
「見た目は完全に幼女だったが。反転して大きく変わってしまったようだ。外見も、そしてその行動も」
「反転とは恐ろしいものなのね……願いを歪め、そしてその身も滅びの力そのものになってしまう」
 プエリーリス(p3p010932)が沈痛そうに目を瞑ると、炎堂 焔(p3p004727)がすこしだけ優しい目をした。
「けど、それを止めて上げられるのもボクたちだよ」
「誰かが間違えたら止めてあげる……そうして世界が回るのですね」
 テルル・ウェイレット(p3p008374)の呟きは、ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)の心にも深く染みこんだ。
「そう、か……僕たちは、間違えた誰かを正したんですね。国を掬うとか、世界を守るとか、そういうのとは、別に」
「勿論世界は救ったと思いますよなにせ放置しておけば滅びのアークは蓄積するでしょうし、この世界も滅ぼされたでしょう」
 綾辻・愛奈(p3p010320)がそう言うと、レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)がグッと握りこぶしを作ってみせる。
「これからの軍部や鉄帝国がどうなるのかはわからないっす。けど、少なくとも良い方向には進むはずっす。スクラップ&ビルドっす!」
「ぶははっ! 違いねえ! それじゃ、飯食って力をつけたらもうひと頑張りだ!」
 ゴリョウ・クートン(p3p002081)が大きな腹をポンと叩いてみせる。
 一方で善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)はアルゴノーツの面々と握手を交わしていた。
「グロースとの因縁はこれで決着した。かのキルケは……残念じゃったな。出会い方が違えば、殺し合うこともなかったろうに」
「そうかもしれないわね。けど……」
「ワタシたちは出会ってしまった。敵と味方として。だよね?」
 フラーゴラ・トラモント(p3p008825)の言葉に、リア・クォーツ(p3p004937)が腰に手を当てて苦笑した。
「アミナ、ほら!」
 リアは手にしていたロザリオをアミナにパスした。アミナはそれを察して預かっていたロザリオをパスする。
 互いにそれをキャッチすると。
「一発、約束通りぶちかましてやったわよ」
「はい。……って、私もぶちかましちゃったんですけどね」
「やるじゃない」
「そう、アミナはやれば出来る子ですわ!」
 ヴァレーリヤの横で、リアがアミナの頭をくしゃくしゃと撫でてやった。
 ブランシュがそんなアミナに問いかける。
「それで、これからどうするのですか?」
 問いでありながら、しかし答えはわかっていた。
 アミナは持ち替えたアサルトライフルを天に掲げ、そして吠えるように叫ぶ。
「難民部隊の皆さん! 戦いは佳境を迎えました! 他の皆を助けに行きましょう!」

 応じる声は並のように、天を突き人民の咆哮となった。
 支配と戦い、打ち破り、いま市民たちは歩き出す。
 聖女に憧れた少女はまさに『みんなの聖女』となり、革命を成したのだった。
 そう、みんなで。
 
 
 ※グロース師団に勝利しました!
 『Im Namen eines Heiligen(聖女の名において)』が発動しました!!
 他の戦場へ援軍として駆けつけます!


 All You Need Is Power(鉄帝国のテーマ) 作曲:町田カンスケ


 ※<鉄と血と>の決戦シナリオで戦勝報告が挙がっています!
 『フローズヴィトニル』の封印を開始するようです。


 王城リッテラムの戦況が変化しました!
 最後の切り札『人民軍』が発動しました。グロース将軍との戦いは最終フェーズへと突入します!
 独立島アーカーシュより、勝利の報が届いています!


 イレギュラーズの手に入れている切り札が大いなる力を纏っています!
 スチールグラード帝都決戦が始まりました!!
 ※領地RAIDイベント『アグニの息吹』が始まりました!!
 ※帝政派、ザーバ派は連合軍を結成している為、勢力アイテムが『帝国軍徽章』へと変更されました!


 ※ラサでは『月の王国』への作戦行動が遂行されています!

鉄帝動乱編派閥ギルド

これまでの鉄帝編ラサ(紅血晶)編シビュラの託宣(天義編)

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM