帝都動乱

　伝説の浮遊島、アーカーシュでの戦いは終わった。
　一人の特務派大佐の暴走と狂気はイレギュラーズ達によって阻まれたのである。
　アーカーシュでは戦勝の祝いが行われ、今後始まるであろう開拓計画の未来に喜んでいた……

　しかし。イレギュラーズ達の目が天空に向いている間に――帝都では驚天動地の事態が生じていた。

　『煉獄編第三冠"憤怒"』バルナバス・スティージレッドと『麗帝』ヴェルス・ヴェルグ・ヴェンゲルズが決闘を行っていたのである。今まで挑まれた帝位挑戦に対する全防衛記録を持つ最強のヴェルスと、魔種という次元すら超越している冠位七罪たるバルナバスの戦いは一日以上にも及んだ――
　それでも最強たるヴェルスの勝利を、大半の鉄帝国の民は疑いもしていなかった。
　玉座の扉を開けるのはヴェルスなのだと――しかし。

　激しき死闘の果てに玉座に君臨していたのは、バルナバスであった。

　あまりの衝撃。誰もが夢にすら見なかった政変の勃発。
　更に立て続けに、新皇帝の地位に就いたバルナバスは勅令を下した――

　――新皇帝のバルナバス・スティージレッドだ。
　　　諸々はこれからやっていくとして、俺の治世（ルール）は簡単だ。
　　　この国の警察機構を全て解体する。奪おうと、殺そうと、これからはてめぇ等の自由だぜ。
　　　強ぇ奴は勝手に生きろ。弱い奴は勝手に死ね。
　　　だが、忘れるなよ。誰かより弱けりゃ常に死ぬのはお前の番だ。
　　　どうした？　『元々そういう国だろう？』

　それは一言でいうならば『弱肉強食』――弱者の完全なる斬り捨てであった。
　強き者は強きの儘に振舞い。弱者は只の肉と成れ。
　社会インフラの維持など一切考えない。ただただ蹂躙せよ、と……そしてそれを合法とする発布。

　……それは鉄帝国の各地に瞬く間に広がり、当然として大混乱が巻き起こる。
　勅令あるのだからと略奪なり暴力を働く者多数。我が世の時代が来たとばかりに不逞の輩が暴走する気配も各地にて。
　更には――この混乱を好機と見た北方の連合国、ノーザンキングスは自らの勢力を拡大せんと行動を開始。
　南部戦線の長たるザーバは周囲に担ぎ上げられつつも慎重に状況を見据え、一方で帝都では鉄帝国宰相たるバイルが独自に対応に動かんとしていた。
　そう。鉄帝国は未曽有の事態に対し、群雄割拠の気配を見せんとしていたのである……

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　まさか鉄帝の皇帝陛下殿が負けるなんてな。
　……つっても相手は七罪冠位の一人って話ではあるみたいだが。
　全く。冠位が直接乗り込むなんざ、一体何が起こってんのかね。

　と、ととととにかく鉄帝がピンチなのです！！
　新皇帝は拘留されていた犯罪者を解放したり略奪やらなにやらを全部OKにする勅令を出したとか！　このままじゃ鉄帝はとんでもない事になるのです！！

　この事態に対して鉄帝各地では、いろんな勢力が生まれつつあるみたいだね――
　新皇帝派に従う連中。反発する連中。混乱の最中に一旗挙げんとする連中……
　情報を纏めてるから皆には後で目を通してもらいたい。
　いずれにしてもローレットに依頼も舞い込んできそうだ――その勢力達から、ね。

　鉄帝の情勢やら、行方不明のヴェルスの事が気になる奴もいるだろうが――
　ひとまずローレットとしちゃあいつも通りだ。
　依頼があるならオーダーに沿うだけ。
　まぁ、今の不安定な情勢を見るに手助けした勢力に何かしら影響はありそうだが……

　頼んだぜ、イレギュラーズ。