レイドイベント『鉄と血と『アグニの息吹』』

オープニング

　鉄帝国。北方の大国たるその地は、帝都決戦の最中にあった。

　先帝ヴェルスの治世に戻さんとする帝政派。
　南部戦線の英雄ザーバ将軍率いるザーバ派（南部戦線方面軍）。
　我関せずと政治不干渉を貫くラド・バウ独立区。
　ギア・バシリカを中心に民の救済を願う革命派。
　ノーザンキングスに抗する戦力を持つポラリス・ユニオン（北辰連合）。
　空浮かぶアーカーシュに拠点を持つ、独立島アーカーシュ。

　それぞれが軍備を整え、それぞれが切り札を得て――かくて、決戦を望む号砲は轟く。

　しかし曲がりなりにも鉄帝に君臨する新皇帝バルナバスに挑まんとすれば、その配下もまた動き出すものだ。
　奴を打ち砕かんとする意志を、阻む為に。
「天衝種だ！　相当な数だぞ……！　帝都のどこにこんなに潜んでいたんだ！！」
「地下の方面にも出ているという報告が来ている――！　クソッ、とにかく迎撃するんだ！」
　帝都スチールグラードへ到達した反・新皇帝の軍勢が目撃したのは、己らを阻まんとする様に大量に現れた魔物であった。
　天衝種。内に、人を憎悪しているが如き『憤怒』の感情を秘めている存在である。バルナバスが皇帝の座へと至った時期から鉄帝各地に出現する様になった者達でもあり……恐らく七罪冠位の影響によって生まれた新種、と言った所だろうか。
　まぁその辺りの真偽はどうでもいい――問題は事ここに至って想像以上に大規模な数が出現した事。
　敵の抵抗はあるだろうとは踏んでいたが、しかし。左を見ても右を見ても天衝種だらけ。
　帝都に踏み込んだ者達は、天衝種らへの対応に戦力を割かねばならなくなった。

　西より至る帝政派も、南より攻め込んだ南部戦線も。
　東より勢力を展開する北辰連合も、北部に回り込んだ独立島アーカーシュも。
　地下の革命派も、帝都中央のラド・バウも――余計な手を割かれている！

　おのれ。誰かが舌打ちする様に言葉を零す。
　本命は敵陣中枢だ。天衝種などに時間を取られている暇は……！
　そう思っていれ――ば。
「むっ！？　なんだ……援軍か！？　どこの部隊だ！！？」
「――イレギュラーズだ！　イレギュラーズの領地から援軍が来たみたいだぞ！！」
　刹那。帝都へと至る新たな戦力の影があった。
　それはイレギュラーズが有する領地より派遣された部隊。騎士や魔術師、傭兵に海兵に自警団……
　混合にして宝石だらけ。そう、この一大場面にと捻出された援軍である――！
　魔物が多い？　知った事か。ならばこちらも数で打ち倒せばいいのだ。
　必要なものは全てを捻じ伏せる大規模な軍事力。
　それらを運用する為の労働力が次ぎ、武器を調達する為に鉄材や木材も必要であろうか。
　――ここが正念場。鉄帝という一つの国が存続するか、滅びるかの間際。
　そして、天に浮かぶ『二つの太陽』がバルナバスの権能であるという話も出回っているのだ。
　こんな所で魔物程度に阻まれている暇はない――ッ！　即刻退いてもらおうか！

　あぁ軍靴の音が鳴り響く。いざや進めよ帝都へと！　バルナバスを座から――引き摺り下ろせ！

リプレイ

　押しのける。憤怒の嵐を。憤怒の因子を。
　天衝種らは執拗に人間共を追い詰めんとする、が。
　それでも――祖国を、そして人々を護らんとする輝かしい意志が全てを上回る。

「よし――！　ここはもう大丈夫だイレギュラーズ！　先に進んでくれ！！」
「お前達は新皇帝を……！　奴を必ず、倒してくれ！！」

　然らば武を感じえた鉄帝の民は士気が更に高揚するものだ。
　ああやはりこの国は『そう』なのだ。武こそが正義。武こそが我々の魂を焦がす。
　イレギュラーズという英雄が魅せてくれたのならば、我々も負けてはいられない……！

　開かれる王城への道。敵陣中枢はすぐそこだ。
　さぁ進もう、かの地へと。憤怒の箱を潰す時は――今こそ来たのだから！

参加者

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