シナリオ詳細
<鉄と血と>人民のための大地
完了
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オープニング
●作戦名「人民のための大地」
古代遺跡を利用して作られた地下鉄道を、何台にも及ぶ列車が走り抜けていく。
それらはゆっくりと停車し、各々の扉がガタリと開く。
スライドする扉たち。先頭の車両からまず姿を見せたのは革命派の精鋭イレギュラーズたちである。
「ついに、この時が来ましたわね」
「ええ、先輩」
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)とアミナは二人並び、メイスと小銃を構えて顔を見合わせる。
もう怖いものなんてない。そんな顔で笑い合うと、ホームへと歩み出た。
「皆さんも、一緒に来てくれてありがとうございます!」
どこか強気に笑うアミナに、リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)が首を振る。
「友達だからね。派閥なんて関係ない。一緒に戦うよ」
「僕はヴァリューシャのためだけどね!」
「何のためでもいいさ。それがこの国の未来を救う」
「先輩。やりましょう!」
彼女たちの左右に広がるように姿を見せるのはマリア・レイシス(p3p006685)、シラス(p3p004421)、ブランシュ=エルフレーム=リアルト――といった錚々たる面々だ。後に革命派の同志たちも集まり、それは巨大な力となって地下道を進んでいく。
ルブラット・メルクライン(p3p009557)、楊枝 茄子子(p3p008356)、イロン=マ=イデン(p3p008964)……数えればきりがないほどの精鋭たちの中で、茄子子が代表してマップを広げた。
「歩きながら聞いて下さい。私たちは首都を軍事的に支配してるグロース師団を倒すため、その参謀本部を目指して侵攻します。
そのために、私たちは派閥の垣根を越えて手を取り合います」
「派閥を越えて、か。もはや革命派だけの問題ではなくなったということだな」
「グロース師団と敵対しているのは、ワタシたちだけではないのです」
ルブラットとイロンが振り向けば。茄子子も頷いて振り向く。
「北辰連合、南部軍、アーカーシュ、帝政派、ラドバウ独立区。全ての勢力から援軍が駆けつけてるわ」
「勿論、ローレットからも」
言われてまず車両から進み出たのはイアソン・マリー・ステイオーン。
独立複合民族アルゴノーツの族長であり、精鋭のラピテースやエリンたちも古代兵器を手に左右に続く。
彼女たちを仲介したのは善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)、ルナ・ファ・ディール(p3p009526)たちだ。
「グロース師団のハウグリン一家には随分手を焼かされたからの。決着を付けるには丁度良い舞台じゃ」
「その通り。これもまた天命というべきでしょう」
更にフランセス・D・ナウクラテーと、その友となったシャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)。
そこへ北辰連合からの援軍たちが続くが、特にギラギラとその存在感を見せつけたのは鳳自治区と呼ばれる地方から集まった癖の強すぎる精鋭たちだ。
通称、鳳圏勢。
榛名 慶一を初めとする鳳圏軍服に身を包んだ兵たちが強敵相手の戦いに飢えた目をして突き進む。
仲介役兼領主としてその先頭を歩かされる加賀・栄龍(p3p007422)がガチガチだ
「グロース師団。そしてその支援を受けていた『黒百合の夜明け団』を捨て置くわけにはいかない。そうだね?」
「いかにも」
咲花・百合子(p3p001385)が獰猛かつ清楚な笑みでそれに応える。
続いては独立島アーカーシュより、戦闘用ゴーレムや戦闘精霊、そしてアーカーシュから駆けつけたローレットイレギュラーズたちが車両からホームへと降り立った。
彼らが天空から直接降りれば目立ってしまう。秘密裏に地下道へ運び込んだのは九頭竜 友哉率いる九頭竜商会の流通網を利用したものだ。
「チッ、損の多い取引になっちまった。代金は払えるんだろうな?」
「えっ!? ちょっとそのお金は……」
「なら、また『仕事』だな」
「そんなあ」
雑賀 千代(p3p010694)を小突き、そしてククッと安堵したように笑う友哉。
エル・エ・ルーエ(p3p008216)もそれに続き、ふとこの先にいるであろうメリナという魔種のことを想う。
悲しい演目。誰かに伝えようとして潰えた想い。ちゃんと、聞いてあげなくちゃ。
続いてこちらは帝政派。
車両から降り堂々と先頭を歩くのは鉄帝の政治家として名高いアントーニオ・ロッセリーノ。
「グロース師団との因縁もこれにて決着、となればよいのだが。今回も働いて貰うぞ、アーティストたち」
それに苦笑を返すのはベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)、イズマ・トーティス(p3p009471)たちだ。
優れたアーティストは優れたトラブルシューターになるというアントーニオの思想はそのままローレットへの敬意となり、対グロース師団連合という計画に帝政派からいち早く賛同し手勢を送り込んだのだった。
故に、帝政派に属する兵士たちもここには大勢つめかけている。
更に南部戦線ザーバ派。
ディートリヒ・フォン・ツェッペリンとダヴィート・ドラガノフを先頭とした南部軍の面々が揃い、グレン・ロジャース(p3p005709)とディートリヒは深く頷き合った。
「この前はうまく使っちまったからな。これで貸し借りはナシにしたい所だ」
「どうだかな」
シラスと視線を交わし合うダヴィート。
「軍事力を濫用して村から略奪をしかけるなんて許せませんわ! グロース師団、ぶっ飛ばしてやりますわ!」
ギベオン・ハートが拳を掲げてやる気をみなぎらせている。ですわよね! と振り返られ、オニキス・ハート(p3p008639)が肩をちょっとだけすくめて見せた。
そしてラドバウ独立区。
グロース将軍からインガ・アイゼンナハトが供給を受け、ラドバウからドロップアウトした闇闘士たちを抱え込んでいるという噂はいくらかの闘士たちをこの作戦に動員するきっかけを作った。
夜式・十七号(p3p008363)が進み出て、彼らと共に前を向く。
中でも異彩を放っていたのは、鎖を取り出し拳に巻き付け殺気をむきむきに出しているウサミ・ラビットイヤーである。
「うおー! やったるぴょん! 地下ファイター(アイドル)の底地からみせたるぴょん!」
「がんばろうねウサミちゃん!」
「やる気!? てことは今度こそユニット――」
「KUMANAI!」
先んじてアイドルユニット化をブロックする炎堂 焔(p3p004727)。
そんな人々の中で、清水 洸汰(p3p000845)がふと一緒に歩くカルネ(p3n000010)へと目を向けた。
「あのおかーさん、やっぱりこの先にいるのかな」
「多分ね。あの人は絶対に諦めない」
「けど、向き合うためには……」
三國・誠司(p3p008563)、イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)がそう続いて、カルネは少しだけ寂しそうに笑った。
「僕も、ホントは怖いよ。これから一生関わらずに、逃げていきることだってできると思う。けど、向き合おうって決めたんだ。皆がいたから……決められたんだ」
だから、一緒に来てくれる? カルネは手を差し出してそう言った。
そんな中で、レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)がグッと拳を天に向けて掲げる。
「グロース師団にはいろんな人が苦しめられたっす! キャトルさんたちだけじゃない、みんなっす! みんなで、その暴挙を止めるっすよ!」
「他派閥と協力体制を……とは言ったけど、全派閥から来るとはね」
リア・クォーツ(p3p004937)が感心したようにヴァルフォロメイを見る。ヴァルフォロメイはどこか居心地が悪そうだ。
代わりにというべきか、『オリーブのしずく』のクラウディア・フィーニーが微笑みかけた。
「グロース将軍に困らされていたのは、何も私達だけではありませんからね」
「『共通の敵』ってやつは、結束するにゃ充分なネタってわけだな」
ブラトン・スレンコヴァがニッと笑う。
長月・イナリ(p3p008096)、ンクルス・クー(p3p007660)、フラーゴラ・トラモント(p3p008825)たちがその様子に表情を緩めた。
「『人民軍』はまだ後方に待機させてるよ。あるべきときにこそ、切り札を使わないとね」
「私達が戦うことで、みんなに被害が及ぶことを防げるってわけだね!」
「いい考えだわ。けど、敵の戦力も把握してるだけとは限らない。油断は禁物よ」
一丸となり、『対グロース師団連合軍』と化した皆は地下道を通り、地上を目指す。
作戦名は、『人民のための大地』。
●作戦名『衝撃と畏怖』
グロース・フォン・マントイフェル将軍は憎々しげに参謀本部のテーブルを叩いた。
会議室の重厚なテーブルについているのは、アレイスター・クロユリー、メリナ・バルカロッタ、インガ・アイゼンナハトといった常軌を逸した者たちだ。
それに加えヘルマン大佐をはじめとする強力な将校たちが席に着き、グロースの言葉を待っていた。
「どうやら、我々は最後の決戦を強いられているらしい。喜ばしいだろう鉄帝国のウォーモンガーたちよ。血湧き肉躍るというやつだ。まあ中には、本当に血を沸騰させて死んだ者もいるようだが?」
ブラックなユーモアを交えて語り出せば、グロースはその調子を取り戻す。
「東西南北、大規模派閥の連合軍によって囲まれている。中央部からはラドバウ独立区の連中が立ち上がり、地下道からは革命派を中核とした連合軍が侵攻を図っている。逃げ場などもはやなく、袋のネズミだ。
つまり――我々こそが戦場の華!」
立ち上がり、凶悪な笑みを浮かべるグロース。
「命令だ。地下道へと攻撃をしかけ、地上部へ広がらんとする連合軍を食い殺せ!
クロユリー、メリナ、インガ、ヘルマン。貴様等も全員出動だ」
「貴様はどうする?」
クロユリーの問いかける口ぶりに、グロースは小さく肩をすくめた。
「せいぜい奥の手でも用意しておくとする。師団を率いる将軍として先陣を切れないのは残念きわまるがね」
将軍こそが先陣を切るという風習は、皇帝ヴェルスが先陣を切って戦争をしかけた頃にもあった鉄帝らしさの一つだ。グロース将軍もその例に漏れず何度か前線に飛び込んでは暴れていたものだが、どうやら今回はそれができない状況であるらしい。
「では、此度の先陣は私が務めましょう」
ヘルマン大佐が立ち上がり、会議室から出て行く。
その表情は、堅く険しいものだった。
「ローレット……この戦いに勝利した側こそが、国の未来を決めることになるだろう。
バルナバス陛下の支配を認めるか、全てを壊し作り直すか。いずれにせよ、破壊と戦いは免れぬ」
かくして火蓋は切って落とされる。
グロース師団との、壮絶な戦い火蓋が。
- <鉄と血と>人民のための大地Lv:20以上完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別ラリー
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年03月28日 14時30分
- 章数3章
- 総採用数241人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
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※システムアナウンス
●章解説:第一章
地下道の守備を固めたグロース師団の大部隊を食い破るべく、地下鉄古代遺跡とその周辺を舞台に戦いを挑みます。
敵はいくつかの部隊にわかれており、パートタグによって挑む先を決めることができます。
敵の主力部隊はヘルマン連隊、コルキス連隊、エステバン連隊の三つになります。
残る部隊は主力をサポートするために投入された外部戦力で構成されています。
これらの部隊を撃破することで、参謀本部への道が開け突入が可能になるでしょう。
●パートタグ
【ヘルマン連隊】
『ヘルマン大佐』率いるグロース師団の部隊へ戦いを挑みます。
敵の主力はヘルマン大佐。一般兵と共に武装を拡張されたEX天衝種たちが展開しています。
味方にはクラウディア・フィーニー、ブラトン・スレンコヴァ、アミナがいます
【コルキス連隊】
『コルキス・ハウグリン中佐』率いるEX天衝種たちの部隊に戦いを挑みます。
味方にはイアソンはじめ独立複合民族アルゴノーツ、フランセス・D・ナウクラテーがいます。
【エステバン連隊】
温存されていた特に強力な天衝種たちが解き放たれており、これらに戦いを挑みます。
エステバン中佐は特に天衝種の扱いに優れており、呪術や魔法によって特殊強化されたこれらを倒すのは一苦労になるでしょう。
味方にはディートリヒ・フォン・ツェッペリン、ギベオン・ハート、ダヴィート・ドラガノフアントーニオ・ロッセリーノがいます。
【黒百合】
『アレイスター・クロユリー』が率いる黒百合の夜明け団に戦いを挑みます。
味方には鳳圏勢のドリームチームがそろい踏みです。
【メリナ】
魔種メリナ・バルカロッタに直接戦いを挑みます。
味方には九頭竜 友哉がいます。
【インガ】
『インガ・アイゼンナハト』率いる闇闘士たちに戦いを挑みます。
味方にはウサミ・ラビットイヤーがいます。
【ブランディーヌ】
『ブランディーヌ・シャノワール』率いる特殊訓練連隊に戦いを挑みます。
味方にはカルネがいます
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第1章 第2節
地下通路を進み、もうすぐ地上だというところで戦闘は起きた。
「エネミーサーチ反応、構えろ!」
クラースナヤ・ズヴェズダーの僧侶が叫ぶと、真っ先に飛び出したのは『嘘つきな少女』楊枝 茄子子(p3p008356)とアミナだった。
「さて、さてさて。
大決算ですね。弱者と強者、ついに私の知りたかった答えが知れそうでわくわくしちゃいますね」
「同志茄子子――いいえ、茄子子さん」
アミナが優しく呟いた。
歌うように。あるいは嘯くように。
「あなたが嘘吐きだって、今では分かります。冷淡で、残酷で、けど、私の側にいてくれた。あなたは優しい嘘吐きです。嘘自体は、優しくないけれど」
「……ふふ」
なんのことでしょう。とばかりに嘘偽りの、あるいは真実と紙一重の笑顔を浮かべ赦免の言霊を続けざまに紡ぎ上げる。彼女を覆った二重の障壁は、真っ先に飛んできたガトリングガンの砲撃を無力化した。
両肩と両腕にガトリングガンを装着するという冗談みたいなパワードスーツ型天衝種『EXラースドール』による砲撃だ。
その後ろから剣と盾を構えこちらを睨んでいるのは――。
「ヘルマン様。お久しぶりですね。
申し訳ありませんが、今回も負けられないんですよ。
まずは引きこもりの強者を引きずり出さないとですね」
「負けてやれぬのはこちらも同じだ。ブレイク攻撃、急げ!」
ヘルマンの的確な指揮によってヒートクローを装備したEXギルバディアが突進。
茄子子の障壁を破壊するつもり――だが、させない。
『陽だまりの白』シルキィ(p3p008115)が『天紡星』の術を高速で完成させた。
ヒュンと編み上がった魔法の糸が流星へと変わり、EXギルバディアへと直撃。
白き祝福の閃光が走り、ヒグマを更に巨大化させたようなギルバディアの異様が軽くだか吹き飛ぶ。
「この服に袖を通したなら、わたしも帝政派の者。
ここで戦う義務も、意思も、覚悟もある。負ける訳には、行かないんだから……!」
手をかざすシルキィの襟には帝政派の所属を示す紋章が煌めいていた。
「気圧される訳にはいかない……こっちだって、みんなの力が合わさってるんだから! 全力でいくよぉ!」
帝政派から駆けつけたシルキィ。そう、この軍団はもはや革命派という枠に収まるものではない。未来のために戦う全ての派閥が合わさった、人民の軍勢なのだ。
それには『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)と『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)の姿もある。
「アミナさん…本当に良かった…。君が窮地の時に間に合わなくて、駆けつけられなくてごめんせめて…今この時に力になる!」
『煌めく星空の願望器』を唱えたヨゾラは即座に自らの防御を固めると、なんとか体勢を立て直そうとしたギルバディアめがけ『星の破撃』で殴りかかった。
「天衝種だろうが一般兵だろうが容赦はしない…吹き飛べー!」
直撃。こんどこそ吹き飛んだギルバディアが後続にあるライオットシールドを構えたEXヘイトクルーの隊列にぶつかり大きく列を歪ませる。
祝音は『シムーンケイジ』を素早く唱え、集まった彼らの足止めを敢行した。
「僕もアミナさんが大変な時にかけつけられなくて…ごめんね。
でもその分、今戦うよ…力になれたら嬉しいな。みゃー」
そんなヨゾラたちを邪魔に思ったのだろう。先ほどのEXラースドールがガトリングガンの砲撃を集中させてくる。
対抗したのは祝音である。『穢サレシ天使ノ口ヅケ』の力を行使すると、ぶつけられた弾丸と同じだけの治癒力によるカウンターヒールをしかけたのだ。
(僕自身、天使って言葉は好きじゃない…多分、元世界で何かあったんだ…。
けど、今は皆を癒す為にどんな力でも使う!)
着実に押し返している。ならば――。
「遂に決戦の時か。というわけでだ。開戦にふさわしい一言を頼むよ、アミナ君。きっと君が声を掛ければ皆の士気も上がるだろう」
『革命の医師』ルブラット・メルクライン(p3p009557)はアミナに小さく顔を向けると、そのままラースドールへと急接近をかけた。
パワードスーツの間に棒状の暗器を通し、そこから魔術を流し込む。
装甲を突破して打ち込まれた衝撃に、ラースドールがびくんとけいれんするような動きを見せたのちがくりと片膝をついた。
「ルブラットさん――皆さん!」
アミナはライフルを構えラースドールへと打ちまくる。
僧侶たちの集中砲火が浴びせられラースドールが転倒。小爆発を起こした。
「私達は弱い! 愚かで、惨めで、泣きたくなるくらい手札は少ない。けれどそれがどうしたというのでしょうか。
愚かでよかった! 惨めでよかった! 手札はいまここに在る。
弱くても夢をみていい。目標があっていい。そのためにきる手札が、ここにあるのです!
みんなを笑顔にするために――私は、引き金をひくのです!」
勇ましく叫ぶアミナの声を、ルブラットは背中越しに聞いていた。
(よく言えるようになった。私も手を引くと言った手前、そして民の代わりに血を流すと決めた手前、情けない姿は見せられまい――!)
成否
成功
第1章 第3節
軍勢に参加するイレギュラーズは数多く、派閥を越えた多くの者たちが参加している。
アーカーシュから派遣されたゴーレム部隊もそのひとつだ。
「さて……ちょっと様子見に来たつもりだったけど」
熱光線の射撃とヘイトクルーによる射撃が交差する戦場のど真ん中。
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は皮肉げに微笑む。
(地下道から出てくる私達の一点読みとは、死所をわきまえた兵士というのは如何にも厄介だわ。ま、だからこそね……)
イーリンはヘイトクルーの軍勢めがけ、『波濤魔術(偽)・母鴉』を発動させた。
結界の中で浴びた波を再現したその魔術は、ヘイトクルーたちをたちまちの内になぎ払う。
「遊ばせてもらうわよ。こちとら伊達に何ヶ月も地下網を巡ってたわけじゃないんだから!」
そこへ勢いよく斬り込んでいく『輝きを目指して』ダリル(p3p009658)。
「なんじゃ今回はまた数をそろえてきた敵がいると聞いてきたが……なるほど。良き良き。我が全て糧にしてくれようぞ!
敵は多数。ならばそれを打ち砕く火力で仕留めようぞ! もっと威力高い味方がいる?そ、それはそれでこれはこれなんじゃ!」
ダリルは傷付いた天使の姿から一転、箱に詰められた怪物(天使)の姿へと変化した。
はるか古来、天使とは元来醜く異様なものであったという。偶像を描き続けたがため美しく清らかな姿で伝わったが、元来その性質は凶悪なのだ。
堕天使となれば、なおのこと。
「貴様らの居場所は、我が奪っていくぞ!」
カッと見開いた瞳から放たれた白き雷光が敵陣を切り裂く。
『群鱗』只野・黒子(p3p008597)はその様子を確認すると、後衛に控えていた仲間たちに呼びかける。
各派閥から集まったこの部隊はドリームチームであると同時にシャッフルチーム。連携能力においては訓練されきったヘルマン連隊に劣るところがあるだろう。
そんな中、黒子は間を埋めるような的確な『助言』を行うことで連携力を補っていた。
当然、戦闘にも参加する。
黒子は式符を何枚か引き抜いて放り投げると、自らをもしたブラックアバターを複数出現させた。その全てが敵陣へと飛びかかり、掴みかかって拘束する。目的は停滞と弱体。トドメにはならないが、しかし味方を支援するにはこれ以上無い攻撃手段といえるだろう。実に黒子らしく賢い取捨選択である。
そんな黒子から突撃指示をうけた『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)と『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)。
「さあいくよ! 人には不殺、モンスターはやっつける! これでいいよね!」
「iinnjane!」
アクセルがひゅるるんと『雲海鯨の歌』を振りかざし架空のオーケストラによる演奏が巻き起こる。
それは青き衝撃となって盾を構えたヘイトクルーを吹き飛ばし、その後方から機関銃射撃をおこなっていたヘイトクルーを向きだしにする。
アクセルは続けて指揮棒を振り抜き、鋭く爆発した音楽の閃光がヘイトクルーたちを包んでいった。
閃光の中を駆け抜ける秋奈。
まるで全てが見えていたかのようにヘイトクルーたちを切り裂くと、その先に待ち構えていた六本腕のラースドールへと斬りかかった。全ての腕がブレードを展開し、秋奈の剣が受け止められる。周囲には敵。剣はおさえられ窮地と言わざるを得ない。
「フフ…何も知らないから、私ちゃんが戦いに専念できるおぜん立てをしてくれて正解だったみたいだな。
わっはっはっはっは!上等だコノヤロー!
心行くまでマンハントじゃあーい!
ゼシュテルスタイルでバイブスぶち上げていってみようぜー? うぇーい!」
が、秋奈は相手が誰であろうとどういう状況であろうとコンディションとモチベーションが変わる女では無かった。
さっぱりと剣から手を離すと、サブアームの剣を抜いてラースドールのコアを一撃で貫いた。
成否
成功
第1章 第4節
とはいえヘルマン連隊もさるもので、素早く隊列を後退させ消耗を防ぎ、こちらの浸透をはねのける。
「戦術単位(S)3一斉砲撃、後にS4、S5突進し敵精鋭を押し返せ! この通路を突破されれば終わりだぞ!」
対して、こちらも味方の損耗をおとすべくゴーレムや僧兵、南部軍から派遣された兵たちを一度さげ、『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)と『魔法騎士』セララ(p3p000273)が豪快に前へと出た。
「縁も恨みもないと言えばないが…ま、戦場だ。悪く思うなよ」
戦況を的確に理解したミーナは、こちらの精鋭を押し返す役目を負っていたギガレックスと呼ばれるレックス型天衝種へ狙いを定めた。
抜いた剣ががつりとぶつかり、それを支援するようにミーナについてきたゴーレム部隊が熱光線を集中させる。
セララが狙ったのはそのタイミングだ。
「輝く魔法とみんなの笑顔! 魔法騎士セララ、参上!
バルナバスを放置したら鉄帝の国民が全滅しちゃうよ。
そんなの絶対許さないんだから!」
抜いたカードはセラフィムカード。聖剣ラグナロクの柄にきらめく宝石にカードを翳すと、続けて雷光の描かれたカードを翳した。
「セラフインストール――ギガセララブレイク」
広がる白き翼と白き雷光。セララはギガレックスめがけて突進し、突き出す剣が巨大な雷光の剣となった。
「聖雷白光・セラフ・ギガセララブレイク!」
「紅――ミーナブレイク」
直後、ミーナは赤き雷光の剣を生み出しギガレックスの胴体を同時に貫いた。
仲間の技をコピーしたのである。
中でもセララをコピーするのは勝ちの定石みたいなものである。
『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)はぐらりと傾きつつも二人へ反撃をしかけようとしたギガレックスの鋭い牙と口を、ライフルのスコープ越しに見た。
「一手遅いな」
食らいつこうと吠えるギガレックスの口内へ見事に弾丸を撃ち込み、それは口腔を抜けて後頭部を破壊。脳をかきまぜられたギガレックスがその巨体をずずんと地面に倒した。
「少し前に見かけた時はどこか不安定な印象だったが、すっかり一皮むけたようだな。アミナは」
素早く次弾を装填し射撃にうつるラダ。
「アナスタシアと顔を合わせたことも数えるほどだが、彼女も安心していることだろうよ。
その祝いと言うにもアレだが、しっかり勝利をもぎ取ろうじゃないか」
スッと狙いをアミナまわりへとうつし、アミナへ今まさに殴りかかろうとしていた斧持ちヘイトクルーの頭を撃ち抜いた。
ヘルマン連隊の層は厚く、未だに底は見えてこない。
だが着実に削っているという実感はあった。
「S1攻撃、食い止めろ!」
ヘルマンの号令に従って三つ首の獣が吠える。獅子と狼と山羊という三つの首がそれぞれ酸や炎、雷を吐き出す。
真っ向から対抗したのは『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)である。
「革命派もとい人民軍の皆様のお手伝いで来たのだけれども、
オールスター感謝祭みたいな感じだったの。再現性赤坂5丁目。
アミナさんが元気そうでよかったの。わたしも頑張るのよ」
そんな冗談を言いながら腕をぐるぐると回し、蒼き狐型の炎を腕に纏わせる。
吹き付けられた炎をものともせずに突っ切ると、炎をはく獅子の首を殴りつけた。
狼の口が食らいつこうとしたところで、胡桃は相手を突き飛ばすようにしてその場から離脱。素早く攻撃を回避する。
かわりにワンテンポずらして攻撃をしかけたのは『雷虎』ソア(p3p007025)だった。
自らの肉体の一部、つまりは虎の爪をギラリと光らせ本能を解放させたソアが、空振りしたばかりの狼の首へ斬りかかったのである。
「さあ、通してもらうからね」
顔面を引き裂かれ悲鳴をあげる狼。それでも止まらないソアの連打が山羊と獅子の顔面を引き裂き、その間に側面へ回り込んだ胡桃のふぁいやーぼでぃーぶろーが叩き込まれる。
「どうしたの? こんなのじゃあ全然足りないよ」
ずずんと倒れる怪物を前に、構え直すソア。
ヘルマンはあまりにも強力なイレギュラーズの猛攻に、焦りの色を見せ始めていた。
成否
成功
第1章 第5節
「ヘルマンのやつめ、連中に情でも移ったか? 理性的なのも考え物だな」
新皇帝派のネームド、エステバン中佐はくわえた葉巻をそのままに煙を吐くと、南部&帝政派部隊に対し攻撃命令を下した。
重火器を備えた鋼のサイや巨大な甲虫めいた天衝種たちが一斉に突撃を開始。
対するは『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)たち帝政派の精鋭部隊だ。
「帝政派と連合を組んでいる南部戦線の方が多い戦場です。やりやすいですね。
単独行動をしても仕方ないので、帝政派兵士の方々と共に動きましょう」
ロングソードを抜いたオリーブは片手で構えたクロスボウによって射撃をしかけると、そのまま接近し剣で思い切り斬りかかった。凄まじい衝撃が甲虫型天衝種オートンリブスの堅い装甲をたたき割る。
そこへ追撃をしかけたのは『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)であった。
「はあ~寒い寒い!
鉄帝の冬はこんなにも厳しいのですねえ。
背筋の縮こまりか弱さに磨きがかかってしまってますので……。
準備運動、しましょうか!」
ぴょんとか弱き乙女跳躍によってオリーブの頭上を越えた澄恋は宙返りをかけか弱き乙女力を拳に集める。
オートンリブスの背めがけて叩き込まれた拳が放射状のヒビを作り、今度こそ装甲を破壊した。
そこへ凄まじい砲撃と突進。サイ型天衝種ゲシュペンストによるものだ。
「まあ! あなたたち、お強いのですねえ。
それではこちらも一芸披露。
わたしはか弱いので…ちょっと本気出しちゃいますね!」
澄恋は血を流しながらもゲシュペンストの更なる突進を両手でがしりと押さえてとめた。
「イマデス!」
叫びに応じて飛び出したのはザーバ派の精鋭、『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)。
「宇宙保安官! ムサシ・セルブライト見参っ! ――ブレイ・ブレイザー!」
マフラーを引き抜き炎の剣へと変えると、装甲の無くなったオートンリブスの核となる部分へと突き立てた。
更に跳躍し、ゲシュペンストめがけきりかかる。
「輝勇閃光…ブライト・エグゼクションッ!」
激しく発光したブレイ・ブレイザーがゲシュペンストの砲撃を掻い潜りながら迫り、大砲の一つを切り落とす。
そのタイミングを、『後光の乙女』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)は狙い澄ました。
「ま……いずれにせよ将軍ともこれでお別れですかね。
長かったような、短かかったような。向こうは向こうで上手くやってくれてる事でしょうから、ブランシュはやるべきことをしましょうか。
旗を振るえ。
後光の乙女の名の下に、同胞よいざ進まん」
発動した『ヘルメスの鳥』がゲシュペンストたちの間で爆発。
事前に察知した仲間たちが素早く飛び退いた後、白き閃光があたりを包み込んだ。
『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)がその様子にふうと行きをつく。
「総力戦、ね。よくもまああれだけ強力な天衝種を揃えたものだと感心するけれど…。
それてもきっと、私達の方が強いわ。それを証明しにいきましょう」
アンナはフォローのために流し込まれた大量の斧持ちヘイトクルーたちを相手に、くるりと華麗に舞って見せた。
人の目を、心を惑わし引きつけるアンナの美しい曲線と脚線。つい引き寄せられたヘイトクルーたちが己の斧を繰り出すも、アンナは踊るように……いや踊りながらそれらを全て回避してしまった。
「こちらに来なさい。自由に動かせはしないわ」
ちょいっと指を立て、仲間へと合図を出す。
今のうちに全て倒してしまいなさい、と。
ブランシュはそんな中で、自らの中に凍てつく力が湧き上がっていくのに気付いていた。
「今ならわかります。これが、フローズヴィトニルの力の使い方……やっと馴染んだ、といったところでしょうか」
駆けるは戦場、賭けるは命。勝利の鍵は、いまこの手に握られている。
成否
成功
第1章 第6節
エステバンが次に繰り出してきたのはゼルスという触手をもつモンスターだった。
触手といってもその腕は樹木のように硬く、先端部にはのこぎり状の刃が備わっている。
そんな触手が大量に伸び、僧兵たちを切り裂いて行くのだ。
が、一方的とも思われたその勝負は、すぐさま覆されることになる。
「ようやくここまで来たでござるな。散々煮え湯を飲まされた分をここで返してくれるでござる。新皇帝派よ、民の力を見誤った事を後悔するがよい!」
ザーバ派の精鋭『太陽を識る者』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)の登場である。
咲耶は絡繰手甲・妙法鴉羽『宿儺』を変形させると、襲いかかる大量の触手を次々にブレードによって切り落としていく。
「――迦楼羅焔舞」
体中の気を超回転させつつ繰り出す咲耶の忍術である。放たれた巨大手裏剣はゼルスの幹部分に突き刺さり、緑色の血を吹き出させる。
「肉体の強さのみが人の力ではござらぬ。人々が紡ぐ絆の力をその身でしかと受け止めよ!」
そんな猛攻を弾こうと、ゼルスは触手から次々に酸液を発射。
同じくザーバ派の精鋭『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は翳した火焔盾『炎蕪焚』によって酸液を防御した。
「中佐殿の言いなりか。そいつぁ楽だが……隙だらけだぜ!」
ゴリョウの発した『招惹誘導』。ゴリョウに注目してしまったゼルスは、その全ての触手の攻撃をゴリョウへと集中させる。
さしものゴリョウですら手を焼く猛攻であったが、耐えきれないほどではない。
なにより……。
「俺ばっかり攻撃してていいのか? もう到着してるぜ、こっちの応援部隊がよ。ぶははははッ!」
豪快に笑うのもさもありなん。ゴリョウの左右と頭上に展開したのはザーバ派精鋭『悪縁斬り』観音打 至東(p3p008495)、アーカーシュの精鋭『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)、そして強力すぎる助っ人大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)たちであった。
「私を呼んだか!! この、戦艦武蔵を!!」
ギベオンたちとの戦いの中で芽生えた絆を大砲に詰め込んで、武蔵は九四式四六糎三連装砲改をゼルスへと向けた。
「鉄帝国の興廃この一戦にあり、武蔵が出撃せぬわけにもいくまい。武蔵の底力、見せてくれる!!」
露払いは任せろとばかりにどっしりと構えた武蔵はその砲身から次々に砲撃をしかけた。
ゼルスの巨体に次々と命中する砲弾が爆発を起こし、その姿勢を崩していく。
加えて、『箒星』に跨がり頭上をとったセレナは祈願結界『vis noctis』を展開させた。
「まだ地下の戦いだからいいけど、地上に出れば航空戦力も投入してくるはずよ。皆、油断しないで!」
セレナが展開した結界がそれぞれ個別に分裂し、ビットのようにセレナの周囲をくるくると回り始める。それらが互い違いに月光の矢を放ち、ゼルスへ空からの連射を叩き込んでいった。
ここでようやく、ゴリョウばかりを狙っていては負けると我に返ったゼルスがセレナに狙いを定める。
ヒュンと音を立てて伸びた触手は結界に阻まれ、対抗して集合させたビット結界が極太の月光ビームを発射する。
焼き尽くされる数本の触手。
残った触手が攻撃に転じるが――。
「結局のところ!
行き着くところは屍山血河! 踏み越え向かうは唯の明日!
ぬかるみとて乾けばよい畑になりましょう!
観音打至東、とりあえず前方を斬り伏せます!」
至東が疾風の如く駆け抜け、触手を次々に切り落としていった。
楠切訃墨村正『塵仆』『眩偃』。大小二振りの妖刀を交差するように構えると、その後ろでばらばらと触手が落ちる。
「さあ、お見せしましょう――乙女算段!」
ギュン、と加速した至東の剣がゼルスの幹を斬り付け、そこから続けざまに繰り出された連撃が幹をがりがりと削っていく。
最後には緑色の血を吹き上げ、ゼルスの幹は途中で切断されその場にずずんと崩れたのだった。
成否
成功
第1章 第7節
「さすがは新皇帝派のネームド、やりますわね……」
ギベオン・ハートは得意のドリルアタックで突進したが、それをエステバン中佐は巨大な拳で受け止めていた。
巨人の腕と見まがうばかりのそれは、鉄帝で発掘された古代兵器のひとつ。名をブラザールという。
「これでも実力でのし上がったクチでね。最後の守りはこの私というわけだ!」
葉巻をくわえたままギベオンを殴りつけるエステバン。展開したエネルギーシールドにヒビが入り、衝撃で吹き飛ばされたギベオンが床を転がる。
そんな彼女を支援すべく立ち塞がったのは『ファーブラ』プエリーリス(p3p010932)、『Stargazer』ファニー(p3p010255)、『ライカンスロープ』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)の三人であった。
「まるで夢のようです。
こんな日がもう一度くるだなんて。
いまの私に攻撃手段はありませんが、貴女のお役に立てるならばなんだって構いません。陛下」
「って、懐かしんでる場合じゃないんだよな、ここは戦場だ。だろ?」
感無量といった様子のミザリィとファニーの間で、プエリーリスは堂々としている。
「さぁ行きましょうか。人間であろうと、天衝種であろうと、そんなことは関係ないわ――」
手をかざし、まるで女王のように宣言する。
「みんな、私がママよ。ママのもとへおかえり」
プエリーリスの放つ七色の魔性の力に吸い寄せられ、エステバンはつい彼女めがけて殴りかかる。
「慈悲などいらないわ。我らの眼前に敵の屍を積みなさい。いいわね、愛しい我が子たち」
翳すは『創造礼装』クイーンオブハート。七色の力のうち『創造礼装』イエローウィンが展開し、殴りかかるエステバンへと襲いかかった。
無論、それだけではない。
「「Yes Ma'am.」」
ミザリィの唱えた治癒の物語がプエリーリスを包み込む。そこはまるでおかしなティーパーティーの会場にみえた。
七色が混ざり白く霞む物語の世界。世界は常識を食い破り、エステバンが殴りつけた事実そのものが削り取られる。およそ完璧な『治癒』であった。
その間に襲いかかるのがファニーのつとめ。
片目にボウッと蒼き炎を燃え上がらせると、『指先の一番星』を解き放つ。
突き出した指から放たれた物語の流れ星がエステバンの胸や腹へと突き刺さり、それぞれが決意をもって爆発した。
「チイッ――」
自分が翻弄されていたことに気付いたエステバンがガード姿勢をとって飛び退く。
ファニーもミザリィも、しかしそれ以上の深追いはしなかった。
なぜなら、この時点で勝利を確信できたから。
「ギベオン、皆。よくやったわ。時間を稼いでくれてありがとう」
『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)はアンカーチェーンを四方に打ち込み体勢を固定させると、八十八式マジカルジェネレーターとマジカル☆アハトアハトを連結。
「クアドラプルバースト、シーケンス開始。砲身4基展開。ジェネレーター接続。魔力回路全基同調。バレル固定。超高圧縮魔力充填完了――」
「しまった、誰か私の盾に――!」
エステバンが叫ぶも、盾になれる天衝種はもういない。
左右をせわしなく見てから、両目を見開き歯を食いしばった。
「ひっ!」
「マジカル☆アハトアハト・クアドラプルバースト―――発射(フォイア)!」
オニキスの放った全力の砲撃が、必死にガードしたエステバンの古代兵器ブラザールを破壊する。そのまま彼の肉体を破壊し、文字通りに吹き飛ばした。
「エステバン連隊、撃破確認」
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※システムアナウンス
エステバン連隊を撃破しました。パートタグ【エステバン連隊】は終了します。
ディートリヒ・フォン・ツェッペリン、ギベオン・ハート、ダヴィート・ドラガノフ、加えてアントーニオ・ロッセリーノは次章にて引き続き別のパートタグへ参戦します。
================================
成否
成功
第1章 第8節
早くもエステバン連隊が壊滅したことで、連合軍は徐々に地上へとその侵攻を進めつつあった。
対する新皇帝派グロース師団は友軍として機能させていたブランディーヌ隊をその迎撃へと割り当てた。
ブランディーヌ・シャノワール率いるブランディーヌ隊は特殊な訓練を受け連携能力に特化した部隊だ。まるで巨大なアメーバのごとく密に連携したその攻防は、いよいよ地上へと出ようとしつつあった連合軍の兵力を少数精鋭によって押し返している。
こんなとき、精鋭には精鋭をぶつけるのがローレット式だ。
「アントーニオさんに応えたい、カルネさんやアミナさんを支えたい……忙しいが、全ては戦って勝つ事に集約される! さぁ、突破するぞ!」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は鋼の拳をぐるりと回し、ブランディーヌ隊へと突撃する。
自らの能力を高める魔術、その名も『響奏術・羅』。イズマは鋼の拳を細剣で撫でることで高らかに音色を奏でると、彼を期待したアントーニオのことを考えた。
優れた芸術家は優れたトラブルシューターとなる。その思想によって派遣されたのが、このイズマなのだ。
剣を抜き一斉に斬りかかるブランディーヌ隊。こちらの防御を即座に破壊し弱体化させ討ち取ろうとする巧みな連携だが、それをイズマは細剣の切り払いによって強引に突破した。
そこへ更に突進をはかる『秦の倉庫守』秦・鈴花(p3p010358)。
「ふーん、カルネの母親、ねぇ。
事情がどうとか、アタシには正直全然わからないけど。でも最初に会った時のキレーなお人形さんより、なんか今の方がイイと思うわよ。
さって、親子喧嘩でもしにいきましょ!」
ダンッ、と地面を踏むその勢いのままに、鈴花の突き出した拳が空のドラゴンロアによって嵐の渦を作る。連携されたブランディーヌ隊を穿つように撃ち込まれた渦によって突破口を作り出した鈴花は、そのままの勢いで敵陣へと突っ込み己の拳を叩きつけた。
空いた穴を塞ごうと滑りこんだ隊員の顔面をとらえたそれは、相手をきりもみ回転させて吹き飛ばす。
無論、それだけではない。
跳び箱のように彼女の上を飛び越えた『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)の、股を開いた幅広い蹴りが両サイドからおさえこもうとする隊員の顔面を突き飛ばす。
(あの仕事(カルネとガラスケースチャイルド)、行けなかったが興味はあった。
ミッションレポートと誠司くんの話で結果は知れたが。
彼女のように子供を所有物扱いする親を『毒親』と呼んでいたな、私がいた世界では。
子は親離れできたが、母の方も子離れさせてやらねばな)
着地し、ついっと片膝をあげて蹴りの姿勢をとってみせるモカ。
穿たれた隊列のむこうから、ブランディーヌの素顔が見える。
「いい加減にして! カルネはこんな乱暴なことをする子じゃないの! うちの子を勝手に連れ回さないで!」
「勝手なのはそちらのほうだ。カルネくんは親離れできた。いい加減、あなたも子離れしろ!」
「やぁ久しぶりだねブランディーヌさん。君は私を知らないけれど私は君を知っているよ」
そこへ加わったのは『乱れ裂く退魔の刃』問夜・蜜葉(p3p008210)だった。
「なぁにカルネ君には巣立ちの時期が来たってだけさ。安心して見送るといいよ」
「家庭の問題よ。よその人間は口を出さないで」
「個人の問題だよ。他人は口を出さないでもらえるかな」
まるで合気道の投げ技のごとくそっくりの意趣返しに、ブランディーヌは憤怒を顔に浮かべた。その目尻には、心なしか涙が浮かんでいるように見える。
夢幻珊瑚と碧玉雪華をそれぞれ抜いて、斬りかかる蜜葉。
間に割り込もうとしたブランディーヌ隊を、蜜葉は手玉にとるように斬り伏せていった。
いかな訓練を積んだ精鋭といっても、ローレットのような世界に通じるレベルの精鋭にはやはり劣る。そういった意味で、蜜葉は北辰連合の精鋭といって充分な実力であった。
「母さん」
隊員たちがローレットとぶつかる中、カルネはゆっくりと歩み出る。
手にした銃は、ブランディーヌに向いていた。
「ちょっと、カルネ!」
言い放つブランディーヌの口調は、敵でも味方でも、まして他人に向けるものではない。自らの子を大声で叱りつける親のそれだった。
「実の母になんてものを向けてるの! あなたいつもそうよ、新しい玩具をあげたら危ない使い方をして。だから私がいつも見てあげてたんじゃない。産まれてからずっとこんなに苦労して、その気持ちも知らずにしまいには銃を向けるつもり!? 親子なのよ!?」
ずきり――と、カルネの胸に痛みがはしった。まるでナイフを深く刺されたみたいに、冷たくて痛くて、怖くて寂しくて。
わんわん泣いて、ごめんなさいって言えればどんなに楽?
ひとりぼっちじゃ、絶対に立っていられない。
けれど――。
「カルネくん、俺は君の友達だ」
そばに、『オフィーリアの祝福』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)が立っていてくれた。
「ヘヘっ、アンタが纏めてた人形には、オレ達何度も手ぇ焼いたかんなー。だからこれはお返しだぜ、ブランディーヌ!」
ここまでパカパカーに乗せてくれた『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)が、味方を指揮してブランディーヌ隊を遠ざけてくれた。
そして、『一般人』三國・誠司(p3p008563)が悠然とその場に立っていて暮れた。
「 お 義 母 さ ん 」
「誠司?」
「ROOでカルネくんの水着とかイベントコスみれてないんだ。下がれるかよ」
「誠司?」
疑問符を背中に浴びせられながら、誠司はゆっくりと御國式大筒『星堕』を肩にかつぐ。
「確かに半分はカルネ君が選んだ。けど、あんたも手放したじゃん。
新皇帝の寄越す地位とその部下を捨てられなかった。
お義母さんにできるの?そいつら捨てて、自分だけでカルネくんに手を伸ばす事がさ」
ヒュ……とブランディーヌの喉から音がしたきがした。
涙を流す母を、想像できるだろうか。
二十代になって間もない頃に、自らの母が大きく目を見開いて、泣きながら怒るさまが。
カルネが胸を締め付けられるような顔をしていたので、誠司代わりにこう言った。
「─本当に一番大事なのは、自分なんじゃないか?」
「五月蝿い!」
ブランディーヌは黒い鞭を引き抜くと誠司めがけて解き放つ。
誠司はほぼ同時に砲撃をしかけ、ブランディーヌの憤怒に呼応するように襲いかかったブランディーヌ隊へとイーハトーヴがザッとターンをかけ、『木漏れ日の指輪』をした手をかざした。
光りが溢れ、ほとばしり、隊員たちを衝撃をもって押し返す。
光りに包まれたその中で、洸汰とカルネが同時にブランディーヌへと飛びかかった。
洸汰のバットとカルネの銃がブランディーヌへ直接叩きつけられ、コンバットスーツ越しにはしった衝撃は彼女の強靱な身体ですら破壊する。助けなしに立ち上がれない程度には。
石の柱に叩きつけられ、転がるブランディーヌ。
「カルネくん」
イーハトーヴが、銃を握りしめるカルネの手に自らの手を重ねた。
白く冷えた手だ。
震えた手だ。
「自分のことを、伝えよう」
「大丈夫。そのくらいの時間はかせぐぜー」
洸汰が歯を見せてにっこりと笑い、カルネは三人を……そして一緒に戦ってくれた仲間たちを見た。
「はは……だめだね。こんなに手伝ってもらえなくちゃ、気持ちひとつ伝えられないなんて」
カルネは涙のこぼれそうになった片目を袖で乱暴に拭うと、ブランディーヌへと向き直った。
「ねえ母さん」
「――」
血を吐き、言葉を出せない母。
それを、カルネは痛みをこらえるみたいに、目を細めて見つめた。
「僕は、母さんが好きだよ」
「――」
「僕はね。母さんの教えることが、正しいのか間違ってるのか、僕は自分で考えなきゃいけないと思ったんだ。
もし間違ってても、母さんのせいにしないように、自分の力をつけようと思ったんだ。
それが、自由になるってことなんじゃないかな」
胸をおさえ、そして血のついた手をのばすブランディーヌ。
言葉は出ない。
けれど誰にでもわかった。
『行かないで』と、言っていた。
「僕は自由になるよ、母さん。世界中を見て、僕の考えが決まったら……また会いに来るね」
それじゃあ。
カルネは小さく別れの挨拶をして、先へと進んでいく。
その背中を、ブランディーヌはただ見つめていた。
我が子が遠ざかっていく。
光りさす地上へ。遠いどこかへ。
ああ、世界はこんなにも危険なのに。
守って上げようと思ったのに。
もう手はとどかない。
けれど。
ああ。
こんなにも、頼もしい背中。
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※システムアナウンス
ブランディーヌ隊の撃破に成功しました。
パートタグ【ブランディーヌ】は終了しました。
カルネは友達と一緒に別パートへと自由に移動します。
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成否
成功
第1章 第9節
「先鋒、ウサミ&ホムラいきまーす!」
「あれ!? ユニット扱いになってる!?」
頭の上で鎖をぐるぐる回すウサミ・ラビットイヤーを、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)がびくりと振り返った。
対抗して現れたのは大柄な道化師メイクの男。彼は両手に炎の灯ったナイフを持ち、器用にくるくると回している。
「あ、いきなりヤバイ。地下闘技場で暴れすぎて賭けの倍率が死んでるハマライト・ジョーカーだ」
「強いの?」
「ていうか、厄介? 弱体化と嫌がらせが得意でネチネチしてる」
「そっか……じゃあ、かなぎちゃんの所に行かせちゃだめだね」
焔はかつての世界から共に戦ってきた相棒、カグツチ天火にぽっと炎を灯すとハマライトめがけて豪快に突きを放った。回避しようとするハマライトを鎖で繋ぎ、焔と二人がかりで釘付けにする。
このハマライトのように、インガ・アイゼンナハトの動員した戦力はラド・バウでも鼻つまみ者として排斥されていた闇闘士たちだ。ルールから外れ、非道な方法で賭け試合をする彼らは明るくさっぱりしたラドバウのイメージからかけ離れている。
そんな場のひとつを支配し、今では実質的な支配者となっていたのがインガだ。
「インガ、俺らの仕事はこいつらをぶち殺すことだったよな?」
ごきりと首をならし、鋼となったアンバランスなほど巨大な両腕で地面を殴って見せる闇闘士。
対してインガはフッと鼻で笑った。
「殺すなりへし折るなり好きにすれば良い。所詮私の目的は火事場泥棒……そう、私の可愛い娘を『手に入れる』ことでしかない」
突き放した物言いに、闇闘士は苦笑する。強ければ誰でもいいというのがルールだが、それにしてもついて行く人間が大雑把すぎる。
まあいい、所詮彼らも戦闘狂。戦って殺せれば、それでいい。
「魔種インガは元より闇闘士たちもラドバウ出と考えると放って置ける連中ではないな。
ここで纏めて撃破させてもらうぜ。ギルドマスターへのお節介も兼ねてるがな!」
そんな彼らへ襲いかかったのは『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)だった。
得意の『式符・殻繰』で絡繰兵士を鍛造すると、手数を増やして攻撃に移る。
「潰れな!」
殴りかかってくる巨大な拳。
対抗するのは『式符・陰陽鏡』。
錬の瞬間鍛造したのは、陰る太陽を写す魔鏡である。映し出された漆黒は相手の身体を半分まで喰らい、対する錬の身体を吹き飛ばす。
「チッ、流石にここまで連れてくるだけのことはあるか。精鋭だな」
石の柱にぶつかり、折れた骨を『治癒符』によって回復させる錬。
トドメとばかりに闇闘士が殴りかかったその時、『老いぼれ』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)のライフルが火を噴いた。
「放浪者なりに、ドロップアウトしても尚しがみつく半端者ぐらい相手にしてやらァな」
繰り出した拳の軌道が無理矢理変えられたことで、闇闘士は射撃を行ったバクルドのほうをぎろりと睨む。
反撃に出ようと身をひねるが、バクルドの攻撃はまだ終わっていない。
『ガウス・インパクト』と呼ばれる義腕機構により、闇闘士の鋼の腕がぐいっと引っ張られたのだ。凄まじい磁力によってバクルドの腕とがちりとくっついた次の瞬間、磁力を反転させバクルドは相手を思いきり吹き飛ばした。
「情けないわね。よその闇闘士どもを切り捨ててまでついてきたのにこのザマとは」
あーやれやれ、と言いながら赤いショートヘアの刀使いが剣を抜く。顔の半分に大きな火傷痕を残した彼女の視線は、睨むだけで人を殺しそうだった。
対抗したのは『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)。
「ラドバウには何かと行く機会があったのです……。
闇闘士らの事情は知りませんが、どうであれこちらやラドバウの方々を害すことが許されるわけもない。
……端的にいえば少々不快です」
「不快ならどうしてくれるって?」
女の繰り出す剣を、舞うように払う雨紅。
「あなた方は、こういう形で挑まなければ勝つ自信がないのですか?」
挑発をしかけながら、雨紅は手にした槍で息をつかさぬ連続攻撃を繰り出した。
戦いは互角。回避に優れた雨紅でさえ避けきれないような凄まじい剣と、その間を縫うように繰り出す雨紅の槍。
均衡が崩れたのは、『弱さゆえの強さ』ラビット(p3p010404)と『レディ・ガーネット』海紅玉 彼方(p3p008804)の参戦ゆえだろう。
「ここからは練達のアイドルである彼方ちゃんも参戦だー!」
「少しずつではありますが、それでも後々で大きなダメージになっていきますよ」
なんとなくウサミに共感(?)したラビットの乱入。それもぴこっと動かしたうさみみに連動して出現したウサギ型の魔術エネルギー体を発射するという形だ。
「弱いからと言って舐めてかかってはいけません。私だって、竜ですから」
「みんな、元気出していこーよ!」
彼女とコンビの形で参戦したのは彼方。
ラドバウで行われたアイドルコンサートでも楽しんだ彼女としては、ここで引くという選択肢は勿論ないのだ。
「それに、ラド・バウ独立区には私も所属しているしね!」
ラビットの放ったエネルギー体に重ねるように、可愛いフォームで指鉄砲をばきゅんとやる彼方。星型のスカイブルーが衝撃を伴い女へと激突し、それは雨紅との均衡をものの見事に破壊した。
「チッ! タイマンならこんなことには――」
「そういう戦いじゃないんです!」
「先に『ルール無用』にしたのはそっちだからね!」
圧倒的なラッシュが、精鋭である闇闘士たちを潰していく。
そして、『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)とインガが向かい合うというこの状況が完成したのだった。
「……」
何を言うべきか、まだ十七号は決めていない。この戦場が、インガとの『最後の邂逅』になるように思えてならなかった。
「まずは、よくたどり着いたと言っておこう――『私の可愛い愛娘』」
剣を抜き、突きつけるインガ。
十七号もまた蒼き刀『海燕』を抜く。防御するように翳した『吼龍』が、今はなぜだか熱い。
はるか過去から紡がれた因縁に、今こそケリをつけろと吠えているようだった。
数々の達人が。そして父が。今は十七号の背を押している。
「わざわざ戦う必要はない。膝を屈し、『私のもの』になれ。そうすれば、手を引いてやってもいいぞ?」
今でこそ押しているが、この言い方からするにインガにはまだ保険があるらしい。
「……」
未だ沈黙する十七号に、インガはフッと笑った。
「答えを出したら追ってこい」
そう言い残し、インガは後方……地上へと退いていく。
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※システムアナウンス
インガの闇闘士部隊は地上へと退きました。
第二章にて引き続き【インガ】パートが継続されます。
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成否
成功
第1章 第10節
地上を前にした連合軍を決定的に阻んだもの。
それは薔薇によって作られた巨大な舞台であった。
地上へ続く古代遺跡。その間を埋めるように薔薇が敷き詰められ、ステージの中央で一輪の薔薇が立っている。
その名も、メリナ・バルカロッタ。新皇帝派のネームドとして知られる魔種である。
「咲き続けられるならば…こんな所があなたの舞台だと、そうおっしゃるのですね。
ならばその盤上、二度と上がれないように壊して見せます!」
そんなメリナへ挑むのは『北辰より来たる母神』水天宮 妙見子(p3p010644)と彼女が連れてきた二人の戦士。
『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)と『九歩必殺』佐藤・非正規雇用(p3p009377)である。
「えっ、妙見子さんが俺の力を借りたいって!?
任せてください!やっぱり男は頼られると弱いぜ」
休憩がてらチョコパイをむしゃむしゃやっていた佐藤。取り出したクシで鬣をすいっと整える。
「トール君もいるし、両手に花(?)ってやつだな」
「えっ(トール)」
「佐藤様は黙っててくださいね」
「えっ(佐藤)」
妙見子はバッと扇子を広げてみせると、それに伴い佐藤非正規雇用は剣を、トールは輝剣『プリンセス・シンデレラ』をそれぞれ抜いて構える。
妙見子はそんな二人に自らに宿す権能を分け与えると、相手の攻撃を待つ。
くるりとこちらを向いたメリナが、薔薇の嵐を解き放った。
「今です! お二人とも!」
「トール君! 呼吸を合わせていくぞっ!!」
まず飛び出したのは非正規雇用。
薔薇を切り裂き突き進む。身体を切り裂く花弁の群れに力尽きそうになるが、そのすぐ後ろを続いていたトールはメリナへの接近を叶えた。
「この戦いは貴女が主役。終わりがあるから今を精一杯輝ける。ならばせめて幕引きは有終の美で――これにて終演です……!」
鋭く突き出したオーロラの刀身がメリナの身体を貫く。
成否
成功
第1章 第11節
身体を貫かれたメリナがふらりと身体を揺らした。
それは摘み取られた花を思わせ、散った花弁を思わせる。
――薔薇になりたかった
くずおれる身体は、枯れゆく花を思わせる。
地におちた手は、枯葉の行く末を思わせる。
――薔薇に。
それは死のようで。
終わりのようで。
しかしどこか、ぬくもりを捨てられず。
命がそこにはまだあった。
――私の舞台の、ために。
突然。
時間がまき戻ったかのように全ての花弁が逆方向に渦巻いて飛び倒れたはずのメリナは逆再生映像を見ているかのように直立姿勢へと戻りまるで間違った舞台をやり直そうとするかのように彼女は。
彼女は。
「メリナさん、あなたは……」
『小さな願い』エル・エ・ルーエ(p3p008216)はかつてメリナと心を交わしたとき、深い深い悲しみを覗き見ていた。
言葉にできない悲しみを。
言葉がいらない苦しみを。
人間だからいらないものを。
「メリナさん。あなたは本当に薔薇になりたかったのですね」
世界で一番美しいものになりたかった。
人間が世界で一番醜かった。
人間を形容する全てのものが、邪魔だった。
例えば腕が。
例えば脚が。
例えばそう――心が。
メリナの頭を覆っていた花弁がゆっくりと開き、凍り付いたような表情の美女が顔を覗かせる。
「私は薔薇に、なりきれなかった」
目から薔薇の花弁でできた涙を流しながら、メリナはエルを見やる。
「今度こそ、なれたはずだったのに」
花弁と一緒にぱらぱらと落ちたのは、台本の一ページ。真っ黒に塗りつぶされたそれは、文字などない『薔薇のための台本』だ。
「嗚呼」
薔薇になれなかった悲しみが、完璧に美しいものになりきれなかった苦しさが。
花弁にのって宙を埋める。
窒息しそうな世界の中で……『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)は踏み込んだ。
「死ネバミンナ星。ミンナ花。ミンナ命。
サレド メリナ 死ヌコト無ク 花トナッタカ。
ヒトノママ演ジルコトデ薔薇ニナルカラコソ 芸術デアッタロウニ。
薔薇ハ薔薇ダカラコソ薔薇ヲ演ジラレナイ。
演技 命賭ケタ者トシテ 今ノ在リ方 嘆キデアロウ。
我 フリック。我 墓守。死 護ル者」
ふわりと灯った両目の光。
人間と薔薇の共通点など数少ない。いつか死ぬその命だけだ。
命以外を全て捨てようというのなら。
「君ニ死ヲ返ソウ。
花ヲ手向ケヨウ。
カーテンコールヲ。
花ニ花ハ贈ラレナイ。
花ハ女優ニコソ贈ラレルノダ」
フリークライの灯した治癒の光。その中を、『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)たちは駆け抜ける。
「……さて、此処は女優をお招きしての『舞台』だ。
女優に女優を全うさせてカーテンコールへと導く為の、な」
舞台はいつも嘘吐きだ。
嘘はいつか終わるものだ。
それはほぼ全ての場合、命より先に終わってしまう。
メリナはきっと、その嘘が許せなかったのだろう。
「――『舞台』は、終わるもんだよ。降りて、アンタもタダの人間に戻るべきなのさ」
嘘をつききれなかった女へ、手向けるようにカイトはその『舞台』に立った。
一緒に嘘をついてやると言わんばかりに。
舞い上がる黒い雨が、あべこべに歪んだ世界の条理がメリナの薔薇に満ちた嘘とぶつかり合う。
「舞台には観客が必要だろう?
遠慮するなよ。この俺がたんと呼んでやる
ただし、邪妖精どもだがな!」
そんな舞台に花を添えたのは他ならぬ『社長!』キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)だった。
邪妖精たちを呼び出して薔薇と嘘に満ちた世界の中を駆け抜ける。
視界の端でチカチカと灯る光があった。
それはなぜだか、胸に下げた色宝『アズライト』の光に似ていた。
嘘の中で古のものたちを愛した、わるい嘘吐き精霊を思わせた。
ククリナイフを手に握り、キドーはハッと笑い飛ばす。
ならば付き合ってやろうじゃないか。俺は嘘吐きは大好きだぜ。悪い嘘ならなおのこと!
「舞台は役者だけで成り立つか? カーテンコールは拍手喝采で迎えるモンだろ?
だから、俺がその役を全力で引き受けて見届けてやろうじゃあねェか!」
キドーの切り裂く刃が偽りの花弁を吹き上げさせる。
『ぬくもり』ボディ・ダクレ(p3p008384)が踏み込み、繰り出した回し蹴りが偽りの茎をへし折った。
「エル様、今――」
触れた瞬間に伝わる嘘が。
偽りの舞台が。
世界を満たす、まぼろしが。
ボディの心に偽りの棘をさす。
嘘をついたのは誰だ。嘘をついたことはあるか。
薔薇は何も言わぬと口を閉ざし、薔薇は何も思わぬと心を閉ざし、薔薇は肉をもたぬと己の器すら辞めた理由は――?
ボディは知っている。彼女を知らないはずなのに、ずっとずっと昔から知っていたように、心にささった棘が抜けない。
がくりと胸を押さえ、偽りの花弁を散らしながら膝を突く。
けれど、ちゃんと追いついた。
エルの手が、メリナのむき出しの頬へと触れていた。
冬のように冷たく、優しく、静かな手が。
「終わらない冬も、終わらない舞台も、ありません。
次の冬と、次の舞台が、始まるからです。
だから――」
「もうフィナーレですよ」
言葉は、嘘を終わらせた。
そこには一輪の薔薇が落ちていた。
花は散り、それだけだった。
メリナ・バルカロッタは、もういない。
彼女は薔薇になったのだ。
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※システムアナウンス
メリナ・バルカロッタを撃破しました。
【メリナ】パートは終了し、九頭竜 友哉は第二章にて別パートへ移動します。
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成否
成功
第1章 第12節
鳳圏あがりの猛者たちが突撃するその異様。鬼楽や伎庸から駆けつけた兵たちも戦う有様に、『鳳の英雄』加賀・栄龍(p3p007422)は思わず身震いした。
その最先鋒が自分であり、上官が自分であるという事実に身体が慣れないのである。
「加賀君」
優しく、しかし重い声音で榛名が肩を叩いた。
「はっ! わ、わかっています」
慣れない口調で返すと、栄龍はしかし『いつも通り』に突撃銃を手に取った。
上だ下だというのは分かりづらい。けれどコレはシンプルだ。生きるか死ぬか。殺すか殺されるかだ。
「征くぞ――敵は黒百合。我等は同胞! 我が祖国のために!」
突撃!
その号令と共に、栄龍を先頭にした全軍が黒百合の夜明け団に属する色使いや屍兵たちに突進していった。
「これからグロース師団を攻略しようっていうのに、横槍を入れられたらたまったもんじゃないよね。
それに、売られた喧嘩はきっちり買って倍返しにしてあげなくちゃね」
『老兵は死せず』時任 零時(p3p007579)もまた共に走り、鞘から刀を抜き放つ。
「僕に続け。総員抜刀」
まるで若返ったかのような、戦場の空気を浴びて取り戻した勘に従って、零時は己の部隊員と共に斬りかかる。
彼にとってこれは決定打ではない。決定打に繋ぐための布石を、いくつもいくつも撃ち込んでいるのだ。
(負ける戦いを仕掛ける必要なんてない。やれることが少ないならば、そのやれることで勝てる状況を作ればいいんだからね)
そこへ『亜竜祓い』レオナ(p3p010430)の豪快な拳が炸裂。まさに『決定打』となって色使いたちを吹き飛ばしていく。
「仮にも名誉美少女扱いされたかもしれない身として、此処で引き下がるという事はないな。
まぁ戦闘である以上しっかり参加するつもりではあったが。
――さて、いざ尋常に」
レオナは構え直し、そして剣を抜いた。
盾と剣による堅実なスタイルはしかし、バターに熱したナイフを下ろしたかの如く容易く敵陣を破壊し食い込んでいく。
そんな彼女を多くの敵が取り囲むが、レオナはそれをむしろ望んでいた。
「これが私一人の戦場であったなら、窮地と言うべきなのだろう。だがしかし」
その冷静な表情に、どこか楽しむような薄い笑みが浮かぶ。
そう、レオナの前に躍り出た我等の最終兵器にして『裏技』。
――『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)が大量の銃剣に突き刺されて見せたのだ。
「やあ」
世にも美しいセレマの笑みは、たとえ全身をぐちゃぐちゃに破壊されても穢れない。そういう生き物であり、そういう存在であると固定されているからだ。
ボロボロのままにも関わらず、味方の兵の突撃銃一斉発砲によって『自分もろとも』敵集団を吹き飛ばさせると、落ちた帽子を拾い優雅に被り直す。
「冠位如き恐るるに足らず! この冬を共に終わらせるぞ!」
味方を鼓舞する言葉に、皆は強く殺気をみなぎらせる。
その一方で、セレマはどこまでも冷静だった。
(ボクとクロユリーは性質も手法も似ている。
だからこそわかるがあいつは極端に死を恐れている。
どの邂逅でも周到な闘争を構えながら逃走を重視したことが根拠だ。
きっと今も術を弄し、安全圏に籠り戦場に触れている……そうはさせん)
敵の中で指揮官として行動している者は? それもこちらから隠れて、見えない手で傀儡を操る者は?
レーダーを用い、そしてセレマは。
「みつけた」
必殺の銃弾で身体を撃ち抜かれながら、セレマはピッと敵後衛の兵士を指さした。
「立ち上がれ鳳圏の民よ! 貴殿等の粘り強さ見せてやるのである!」
敵兵の頭蓋を清楚に掴み、清らかなる絹のごとき手で握りつぶす。
その手を掲げ、『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は清楚に吠えた。
続く兵等は鳳圏兵。そしてこの騒ぎを聞きつけて駆けつけたメタリカ女学園の級友たちだ。
「みつけた」
そんな中で、セレマの指さす兵をぎろりと見やる。
乙女走りによって敵陣をすり抜けるように、そして瞬きの間に距離を詰めると百合子は白百合清楚殺戮拳がひとつ『星見』を繰り出した。
相手の頭蓋を下顎から脳にかけて破壊するアッパーカットだが、それを紙一重で『それ』はかわす。
はずみで落ちた軍帽を掴み、それは……アレイスター・クロユリーは黒い唇でフッと笑った。
「流石に、そちらの『美少年』を甘く見たか。しかし、『生徒会長』が他人を頼るなど――」
「吾も混沌に召喚されて人を使う事を覚えたということよ」
交わされる幾度もの連打。
その全てが相殺され、クロユリーは飛び退く。
「けれど、ここは我等が決着する舞台にはまだ一段低い。ついてくるが良い、その気があるならば、より多くの仲間と共に」
号令によって周囲から堕落した乙女たちを『肉の盾』として大勢呼び寄せると、百合子の攻撃をうけさせ自分は後方へと逃げ去っていく。
「……よかろう。次こそ、決着の舞台というわけか」
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※システムアナウンス
アレイスター・クロユリーは地上へと撤退しました。
パートタグ【黒百合】は二章目にも継続しますが、その内容が変化します。継続参加の際はご注意ください。
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成否
成功
第1章 第13節
コルキス・ハウグリンは新皇帝派の中でも重鎮と言われる軍人である。
「よもや、このような事態になろうとはな」
ライフルを手に、部下たちへと号令をかけるコルキス。
それに応じて青銅の巨像が次々と立ち上がり、地上侵攻をめざす連合軍めがけ大砲や巨大な剣による攻撃を開始する。
『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)はそんな中を駆け抜け、物陰に身を隠し砲撃をやりすごしている兵のもとへと滑り込む。
「僅かなれども何もしないよりは遥かに……!」
そう言いながら取り出したのは店でも出している軽食だった。癒やしの力が込められたサンドイッチを掴んで囓ると、驚くべきことに兵士の怪我がみるみる治癒されていく。
「ありがとう、生き返った気分だ……こいつは凄いな。あんたが作ったのか?」
北辰連合から合流した兵士がサンドイッチを翳すと、テルルはニッコリと笑って頷く。
「今度店に行かせて貰うよ。とりあえず今は、この状況をなんとかしないとだけどな」
兵士が困った様子で青銅の巨像、もとい天衝種タロスを睨んだ。
「出番、来た?」
言い切りの独特な口調で『無垢なる兵器』ラピテースが言うと、彼女を下ろした『探す月影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)が己のライフルを手に取る。
「だな。あいつの弱点は首元で操縦してる魔術師だ。あいつを倒せばあとは適当に暴れるだけの巨人になるぜ。大砲も使えなくなるだろう」
「そうなれば、接近して倒せる」
『桜舞の暉剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)が剣をとり、同じく物陰でやり過ごしていた『花に願いを』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)とフランセス・D・ナウクラテーを見やった。
「俺はコルキスを相手にしておきたいな。相性が良さそうだ」
「ならば私達はタロスを、ですね。シャルティエさん、お付き合い戴けますか?」
片眉を上げて微笑むフランセスに、シャルティエは薄笑みで応えた。
「ああ勿論。一緒に行こうフランセス。この国を救う為に!」
「決まりだな!」
「後衛からの回復は任せてください」
ルナとテルルが言うや、ルナは素早く物陰から飛び出して見せた。
大砲の次の狙いがつくより早く、構えたライフルとエピテースの砲撃が同時に魔術師へと突き刺さる。
「事が片付きゃ、どの部族も満身創痍だ。戦える連中は死んで残ったのはガキばかり、なんてのもあり得る。アルゴノーツみてぇなのは必要だ。欠けねぇように、ちったぁ働いてやるよ……!」
ぐらりと傾くタロス。シャルティエとフランセスは同時に走り出すと、闇雲に繰り出された巨大な剣をそれぞれ左右に飛ぶことで回避した。
「シャルティエさん!」
「ああ!」
下ろした剣を足場にして駆け上がり、当惑した様子のタロスの顔面めがけシャルティエの剣とフランセスのスカートブレードが繰り出された。
ばこんと破壊されるタロスの頭。
ついで北辰連合による一斉砲撃が始まり、牽制が効いているなかをヴェルグリーズが走り出す。
「こうして戦場を共に出来て光栄だよ、アルゴノーツ」
ヴェルグリーズはフッと笑いながらコルキスの放つ銃弾を回避。蒼い煌めきを身体に纏うと、跳躍からの飛行状態となってジグザグに駆け抜けた。
三発の銃撃をすべてかわし、ついにはヴェルグリーズの剣がコルキスの胸を貫く。
「やはり、強い……な。ローレット」
「ごめんね。けれど、俺たちはこの先に行かなくちゃいけないんだ」
「わかっている。皆、前に進まねばな。……あとは頼む、キルケ」
縋るように呟いた最後の言葉に、ヴェルグリーズは目を細める。
「……キルケ?」
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※システムアナウンス
コルキス・ハウグリンの部隊を撃破しました。
パートタグ【コルキス】は終了しました。
しかしハウグリン一族には最後のひとりが残っているようです……。
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成否
成功
第1章 第14節
「行こう、クラウディアさん!」
「ブラトンさん、それでは一緒に――『皆に創造神様の加護がありますように!』」
『時には花を』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)と『山吹の孫娘』ンクルス・クー(p3p007660)は、それぞれ『オリーブのしずく』とブラトン隊を伴って激しい戦場の中を走っていた。
古代遺跡を抜け、ついには光さす空が見えてくる。
「地上だ! このまま参謀本部へ――」
「させん!」
対抗したのはヘルマン大佐であった。
獅子の描かれた盾と剣を装備し、豪快な横薙ぎによってブラトン隊を吹き飛ばす。
そこへカスタムされたEXギルバディアが纏めて数体。
治癒の魔法をすぐに唱え戦線の立て直しをはかるクラウディアたちに支援を任せ、フラーゴラとンクルスは前へ出る。
「銃は二人に一丁だ!的な雰囲気を期待したけど、そこまで悲壮感がありそうな状況ではないわねー」
そこへ加わったのは『狐です』長月・イナリ(p3p008096)だった。
ラドバウ独立区からの合流という形だが、革命派の戦いにはそれなりに深く関わってきたつもりである。
「そんなことにはさせないよ。まだ突撃命令も出してないんだ。あの人たちは最後の切り札だからね」
フラーゴラは『まだココは最後じゃない』と手をかざす。グロースとの戦いが始まるまでは、まだ。
そして、『百花号令』の術式を発動させ始める。
「前線の回復は任せて。ヘルマン大佐はかなり攻撃力が高いみたいだから……」
「ダメージ覚悟で突っ込む、ね。了解よ」
一方イナリは『フェイク・ザ・パンドラ』の術式を発動。自らを強化すると、ダンッと地面を踏んで『晩秋風』を発動させた。
常人ではありえない速度でヘルマンまで突っ込み、強烈な蹴りを繰り出す。着地地点を中心に紅葉が舞うこのエフェクトは晩秋風特有のものだ。
同じく突っ込んだンクルスはすぐさま防御姿勢。ヘルマン大佐の剣がンクルスへ、盾がイナリへぶつかりそれぞれを撥ね飛ばそうとするが、ンクルスはその瞬間に相手の剣を『掴んで』引き寄せた。
強引すぎる掴みかかりに、ヘルマンはすぐに対応できない。
「みらくるじゃっじめんと! つー!」
ンクルスはその怪力によってヘルマンをはるか上空へと放り投げてしまった。
成否
成功
第1章 第15節
「ここで、負けるわけには……!」
上空に放り出されたヘルマン大佐は咆哮をあげた。
百獣の王が吠えるそれを思わせる、威圧に満ちた叫びだった。
ビリッとした空気が広がっていき、常人であれば卒倒したかもしれないような心理的圧力すら伴って。
しかもそれだけではない。ヘルマンは大地に着地し、その獅子の盾を前面に突き出したのだ。
カッと目を輝かせた獅子の顔から、熱光線が発射される。
「チッ――!」
『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)が前に飛び出し、両腕でガード姿勢をとることで光線を防御。頑強さと火力を併せ持った彼女であってさえ耐えきれないほどの衝撃に、エッダは大きく後退させられる。彼女の踵によって並行な二本線が地面に描かれた。
「前進するぞ。下らない企みも下衆な思惑も全て踏みつぶしてくれる。
我々を敵に回したことを、後悔させてやる」
エッダがガード下から見せるその圧力に、ヘルマンはぐっと奥歯をかみしめる。
「皇帝が変わったのだ、国も変わる。その情勢に乗ることは、家族や部下を救うことでもある!」
言い訳じみてはいるが、しかし一笑に付すことはできない。
エッダとて、立場が違えばそうしたかもしれないのだ。
わかるのだ。
わかるからこそ。
「その未来、潰させて貰う」
美咲の名を鋭く叫ぶと、『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)がジャケットを脱ぎ捨てて走り出した。
鋼の義手の内側で、ドルンとエンジンがかかったような音がした。激しく加熱した腕で握りこぶしを作ると、EXギルバディアの一体を殴り飛ばす。
その直後、ライフルをまっすぐに構えたアミナがギルバディアめがけ連続発砲。
「後ろは任せて。前へ!」
鋭く叫ぶ彼女の声に、もはや迷いはない。等身大で、しかし自立したひとりの少女だ。
「アミナ氏持ち直しましたか。
危ういとこがありましたから心配はしてました。
人間、私らぐらい図太くても許されるんスけどねー。
それじゃヴァレ氏、先輩らしいとこ見せに行きましょーか」
呼びかけられて、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が肩をすくめる。
「長い……戦いでした」
ヴァレーリヤの呟きの意図するところを、しかし知る人間は少ない。
(家は焼かれ、食べる物もなく、暖を取る事もできず、多くの人が命を落としました。
この戦いに勝っても、全てを取り戻せるわけではありません。
懐かしい故郷で、私達が友人や家族と過ごしたあの温かな時間は、もう戻って来る事はないのです)
失った。
先に、失った。
土にこぼしてしまったミルクのように、戻ることはもうない。
けれど、これ以上失わせないことならできる。
「この戦いに勝てば、やり直す事ができるのです。
祈りましょう。きっと主は、私達に手を差し伸べて下さいます――!」
「うん。ヴァリューシャ! 任せたよ!」
『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)はふわりと宙に浮かび上がり、『アミナ君は強く成長したようだね』と優しい目をして振り返る。
「ヘルマン、閉所なら私達を止められると? それは甘い考えだったね!」
リニアドライブによって高速で迫るマリア。自らを弾丸としたその攻撃に、ヘルマンは盾で頑強に受け止める……が、それはヘルマンの敗北を意味していた。
マリアの流し込む連打によって、ヘルマンの黄金の輝きが徐々に失われていくのだ。
更には、美咲の仕掛けた爆弾によってあちこちでギルバディアが吹き飛ばされていく。
「『主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え』――」
聖句が聞こえた時には、もう遅い。ヴァレーリヤの解き放つ炎が、ヘルマンやギルバディアを飲み込んで行く。
そんな中で、マリアはハッと顔をあげた。
こちらへと迫る、複数の戦車の姿。随伴するパワードスーツたちの姿。
乗り込んだ兵士たちは憤怒のオーラに包まれ、それがラースドールのような天衝種との共生体であると知る。
「まずい――みんな、伏せて!」
いち早く気付いたマリアが呼びかけると同時に、砲撃は始まった。
成否
成功
第1章 第16節
「アミナ!」
走った『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)は、目を見開くアミナを抱くようにキャッチするとその場に押し倒した。
頭上を砲弾が抜けていき、あちこちで爆発が起こる。
二人の胸でぶつかったロザリオが、なぜだかかちんと聖櫃なおとをたてた。
「無事?」
「……リアさんこそ!」
かばわれたのだと知って慌てて起き上がるアミナ。そんな彼女の首筋に手を伸ばし、ロザリオをさげる紐をゆびでなぞる。
「ねえアミナ。ロザリオ、今だけ交換しましょ。あなたの代わりに、私が想いをぶつけてあげる」
こうやってね、と拳を握って見せるリア。
アミナは『なんですかそれ』と笑うと、自らのロザリオを外してリアにかけてやった。
「私はもう、自分で自分の想いをぶつけられます。そうすると決めましたから。
けど……一緒にやりたいっていうなら、やってあげてもいいんですよぉ?」
リアからロザリオを借りて、自分にかけてみせるアミナ。
もう彼女に、危うさも弱さもない。
いや……人並みの危うさと、人並みの弱さを取り戻したのだ。
(本当はアミナを傍で護ってあげたいけど……それは彼女にとっては余計なお世話なのよね)
だから、リアがいま胸に抱いているのは願いだ。
護りたいという願い。この少女を。戦うと決断できた、その意志を。
「護らなくてはいけないモノ……でも、信じなくてはいけないモノ。
それをあたしに教えてくれたアミナの為にも、負ける訳にはいかない!」
胸の内を吠えるように叫び、リアは砲弾の中を走り出す。
聖女の嘆きを再現するというその旋律が、炎となって燃え上がる。
一方、『竜剣』シラス(p3p004421)は手にしていた鍵をケースから取り出していた。
宝石のはまった、簡素な形の鍵だ。
使い方は、なぜだか手にした瞬間に理解できた。
奪い取ろうと考えてかせまるギルバディアをキック一発で沈める。
「『竜剣』のシラス……まだ我々に立ち向かうか」
そんな彼に、ぼろぼろになったヘルマンが呼びかけた。
「考えてみろ。我々は弱い。バルナバス陛下がただ腕を振るだけで、我々も、その家族も命を落とすことになる。決起した難民たちを見ろ。彼らをバルナバス陛下や、グロース閣下が襲えばどうなる。
だが恭順し、忠誠を誓えばどうだ。グロース閣下も身内には寛大だ。冬を越す蓄えもくれる。バルナバス陛下にいたってはまるで手を付ける様子すらない。強者に従うことは、弱者が生きるすべなのだ」
熱心に語りかけるヘルマン。シラスは彼が人格者といわれるゆえんを知ったような気がした。
彼は、弱者のために戦っていたのだ。これでも。
「なあヘルマン。あんたの言ってることは……なるほど正しいのかもな」
シラスは鍵を天に掲げて見せた。
そして、まるで銃口をむけるかのように、ヘルマンたちやその後方から迫る大部隊へと突きつける。
「けどどうだ? お前たちに立ち向かう難民たちこそ、『強者』だ。難民たちも、俺たちも、あのアミナでさえ。もうここに弱者はいない。
頭を垂れて殺さないでくださいと祈ることしかできない『弱者』は……お前たちだけだ」
シラスからのオーダーは、遠く離れたギアバジリカの中央聖堂へと伝えられた。
元は動力路として無垢なる生贄や反転した聖女がおさめられたその場所は、綺麗に整えられ厳かな聖堂へと変わっている。
集まった人々は手を合わせ、そしてこう祈った。
「僕たちは戦う」
銃をとり引き金をひくばかりではない。
子供を育て。
野菜を育て。
水をくみ、魚をさばき。
時に笑い合い、語り合い、明日に夢を見る。
生きることは、戦うことだ。
生き抜くことは、戦い抜くことだ。
シラスもまた、そうであったように。
「祈りなんかに期待するのは初めてだぜ」
神様に人格はない。確かアミナはそんなことを言ったんだったか。
その上でこの世界に神という現象があるなら、祈りとはすなわち……。
「『俺たちは戦う』」
シラスの『祈り』が、砲撃となる。
ギアバジリカから放たれた光線が空に大きなラインを描き、ヘルマンとその部隊へと直撃した。
まるで弱き堕落を、すべて焼き払うかのように。
成否
成功
GMコメント
※このシナリオはラリーシナリオです。仕様についてはマニュアルをご覧ください。
https://rev1.reversion.jp/page/scenariorule#menu13
●これまでのあらすじ
新皇帝派のネームド、グロース・フォン・マントイフェル将軍率いるグロース師団との決着を付けるべく、首都への侵攻を開始しました。
味方の軍勢は革命派を中核とした全派閥連合。対グロース師団という目的の一致から手を組んだ全派閥をまたいだドリームチームです。
戦いの状況は【パートタグ】によって異なりますが、主に地下道から首都へ侵攻し参謀本部基地を陥落させるまでが作戦の全容となります。
■■■プレイング書式■■■
混雑防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
一行目:【パートタグ】
二行目:【グループタグ】
三行目:実際のプレイング内容
書式が守られていないとお友達とはぐれたりすることがありますのでくれぐれもご注意ください。
■■■グループタグ■■■
誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの二行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
大きなグループの中で更に小グループを作りたい時は【大チーム名】【小チーム名】といった具合に二つタグを作って並べて記載ください。
※タグによってサーチするので、キャラIDや名前のみを書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
例:【ナントカチーム】3名
●特殊ドロップ『闘争の誉れ』
当シナリオでは参加者(プレイング採用者)全員にアイテム『闘争の誉れ』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
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