PandoraPartyProject

ギルドスレッド

鍛冶小屋スカーレット

【RP】ある日の鍛冶小屋。鉄腕の客人

何でもない今日。いつもと変わらない日常
鍛冶小屋からは鎚の音がする

海の向こうで起きた戦いも終幕し、穏やかだが騒がしい日々が返ってきた
しかし小屋の主は少々浮かない顔をしている
その悩みを忘れるためなのかここ数日響き渡る音はいつにも増して大きい

……しかし出来上がるのは鉄くずの山ばかりで心の靄は一切晴れない

「ああ、そう言えば今日は人が来るんだったか……」

研磨の手をひとまず止め、鍛冶を切り上げ母屋へと向かいこれまでに掻いた汗を流す

「酒の貯蔵は何があった……シードルでいいか?」

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憚りながら、自分は鉄騎種としては出来損いもいいところなのであります。
優れた身体能力も無く、身体の拡張性もさほど高くなく……
幸いにして多少傷は付きにくい身体でありましたが、それもまた貧弱な筋力には吊り合わず、身体に振り回される。

鉄帝という国で“そう”であるというのは……それなりに厭なことばかりなのであります。
(余りそう多くは知らないが鉄帝では強さが優先されることくらいは知っている。例え外様とはいえ何が言いたいかわからないほど無知ではない)

……だろうな。とは言え自分のことではない以上想像でしかないがそういうことが起こりそうな国だとは聞いたことがある
ええ。
……自分はまだ良い。貴族として、それなりの生活は保障されていた。
しかし出来損いの生きる道の先など見えているであります。
政治の道具という生き方も結構。しかし嫁ぎ先で冷遇されるのもまた明白。
力なくては物も言えぬのはどこも同じでありますな?

幸いだったのは、錬鉄徹甲拳という家伝の武術が、自分の性にひどく合っていたことでしょう。ひどくゆっくりと時間をかけて……そう、12か3でやっと自分は、己が軽んじられない環境を作り上げたのであります。

武術、というのは……
人類の中に幾人かいる天才と呼ばれるもの達の動きを分解し、解析し、模倣する為のものであります。
非才なればこそ、自分は……そう、武術に救われたのであります。

才あることを卑怯と仰るのもわかる。
しかし武とは才から取り出した燿きの結晶であります。

……自分の言いたいことがわかるでありますか?
(ここで『わかる』ということは簡単だ。ただ口にすればいい。
だがそれは口先だけの言葉でしかない。
自身にとって武術はできるからしていることでしかなく、他人との違いを見せつけてくるものでしかなかった。武とは自身の歪さを映し出す鏡だった)

エッダ殿が武に救われたということは分かった。だが私にわかるのはそれだけだ。それ以上はわからない

(わからない。わからないからこそ自分は自分でしかないのだろう)
結構。正直は美徳であります。
ええ、自分としても、些か持って回った伝え方をしてしまった。
それは礼儀正しくあれど誠実ではない。
であります故、誠実にするであります。
(行った動作はとてもシンプルだ。
 “ぬるり”と彼女はテーブルに手を付いて、身を乗り出し、ブレンダに目と目がくっつきそうな距離に近づいただけだ。だけなのだ。
貴女は反応したかも知れない。仕切れなかったかもしれない。ただ気圧されたのかも知れない)

強いな。お前。
ひしひしと伝わって来るぞ。強さが。
なのに――だから――勿体ない。

何か…………勿体ないな。
(敵意がないのはわかる。ただの挑発だと言うこともわかる。自らの実力に疑いも無い。
そもそもこの距離ならば拳を振われたところで反応できる。
だが、それでも―――なぜだろう。とてもムカついた)

……は?何が言いたいのだ?エッダ殿は。貴女に関係はないだろう?

(睨み返すが女は己の苛立ちの理由にもまだ気づかない)
関係ならある。
“私”は武に救われた。だと云うのに、武の申し子のようなものがそんなに己のことを詰まらなそうに語るのは……とても勿体なくて見ておれない。

その溢れる才能を……嫌っているでもないのに……ズルだと?
己の才を自覚するのは良いことだ。
だが、それを貴様は好いていない。

(睨み返されて、尚額を近づけて話す。
 敵意がないのはわかる。ただの挑発だと言うこともわかる。自らの実力に疑いも無い。そもそもこの距離ならば拳を振われたところで反応できる。
少しだけ違うのは、その苛立ちについて自覚的であったか否か。
どうして自分が求めてやまなかったものを持っているこの人はこんなにつまらなそうに己のことを話すのか……それはひどく寂しく思えた。)
好くも何もないだろう。私にとってこれは当たり前だ。
歩けること、息を吸えることを誇る者はいないだろう。私はそういうモノなのだ。

(初めからそうあるべくしてあったモノができることをしていたに過ぎない。
己が求めて進んでいない道はひどくあやふやで不確かだった。
だが、いつからだっただろうか。こんな風に思うようになってしまったのは。
師に追いつこうとしていた時はただ剣を振るうのが楽しかった。身体を動かすのが愉しかった。毎日が輝いていた。

しかし気づいてしまった。駆け抜けた先は誰もおらずそこにいたのはたった独りだった。そして……それは今も。
数多くの特異運命座標たちと出会い自らの特異性が高くはないと識ってもそれは変わらない)

出来ることをする。それは皆がやっていることだ。私はこれからもこの力をちゃんと使うさ。

(―――苛立ちは未だ治らない)
…………
それが、歩くこと、息を吸うことと同じだと思っているのか。

……フラウ・ブレンダ。
ここは、人のこない場所でありますな?
……なら、多少派手にしても、問題ありますまい。

(そう云うと、くるりと身をひるがえして扉を開けた。
敵意たっぷりというわけではないが、穏やかというわけでもない。
自分が、自分が何者なのか、見せてやる。
そういう決意が背中に書かれていた)

それほどまでに優れているというなら、是非拝見したく――
一手、所望するであります。
いいだろう。裏にいつも使っている修練場所がある
そこならば多少派手に使っても問題ない

(いつものことだ。ここまではこの世界に来るまでもよくある流れ。
―――そして戦ったあとに態度が変わるところまでがいつもと同じ流れだ。

あとから扉を潜り外へと回る)

こっちだ
(辿り着いた場所はそこそこ広い公園程度の広さ
そこにあるのは数多の傷がついた木々の数々

極一部の地面は抉れ、陥没している。

二人がやってきたのはそんな場所だった)
(腰に携えた二本の長剣を引き抜くと相対する様に剣を構える)

好きなタイミングで来るといい。私はいつでも構わんぞ
おや、剣は抜くのでありますか。
意外であります。そこまで侮られてはいないようで。
だが先手を取らせるとは……
(とことこと近付き、両手をすっと上げる。
別に剣の搆えをこじ開けようとかそういうのではなく、ぴたりと両手の甲を彼女の剣の腹にくっつけた。それだけで、既に)

――舐めるなよ。
貴女はもう、これで何もできない。
……チッ

(存外相手は冷静だった。すぐにでもその拳を叩き込んでくると思っていた。
確かにこの位置は拙い。剣を振るうのは難しい)

―――ほう? 面白い事を言う。

(剣が使えなければ使わなければいいだけ。使えない物に意味など無い。
二本の剣が使えなくともまだ己には脚がある。今必要なのは威力よりも速さ。狙いは仕切り直し。
右足で大地を蹴り、そのまま振り上げる―――)
(物事には、前兆がある。
 全ての事には予兆がある。
 どれほど消しても、消せないものがある。
 剣に触れた理由は、剣を封じる為ではない。
 聴く為だ。剣は彼女の身体へ通じている。全て聴こえる。
 彼女の動作は完璧だった。視線から狙いは読み取れない。
 打撃へと至るプロセスは1秒にも満たない。
 威力ではなく速さを重んじた分、上体のブレも少ない。
 だから聴いた。
 僅かな剣と手甲の擦れを。彼女の重心のほんの少しの動きを。
 自分に与えられる力感を。向けられた攻撃の意志を。
 結果。

 ブレンダの蹴り脚を、エッダは一歩横にずれて躱し――
 そのまま思い切り、“蹴った足を、上に蹴り上げた”。

 ――その間もまだ、剣から手は離れない。
 彼女がへたと尻餅をついたところでその手を放し、振り向いて、5歩程下がった。
 丁度、剣の間合い。
 そこに至って立ち止まり、背中で話しかける)

――失礼をば。
大変恐縮でありますが、これは遊びであります。
遊びに奇襲で勝っても仕様がない。
貴女には是非、自分が何者であるか知って貰わねばならない。

……改めて。
名乗りを上げても良うございますか?
……

(やられた。
負けるのはもちろん初めてではない。むしろ生涯で言えば負けた数の方が多いだろう。しかしそれは己が真面目に戦っての結果。
ここ数年、師匠が去って独りになってから久しく味わっていなかった敗北の味。地面の感触。
命のやり取りであればまだやり様も奥の手もある。だがこの『遊び』で負けたという事実は覆らない)

……いいだろう。

(ゆらりと立ち上がりスカートについた汚れなど意にも介さず再び剣を構え直す。否、右足を半歩下げ半身になり剣を持つ手に力を籠める。先ほどとは違う本来の構え。そこに意思が伝わり刀身に焔と疾風が宿る。
剣の力を使うまでもないという驕りは捨てた。負けたところで自分の実力が落ちるわけでもない。
それでも―――)

だがその前に私が名乗らせてもらう。
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル。貴女を斬る女の名だ。

(負けたくない。そう思った。
この内から湧き上がる感情の名前は未だ知らない)
(この身の裡に燃え盛る感情の名前を、彼女はもう知っている。
 それは羨望であり、それは嫉妬であり、それは憧憬であり、それは……
 そう、怒りだ。汲めど尽きぬ怒りの泉だ。
 その感情を炉に燒べ、発動機に火を付け、内燃機関をぶん回す。
 各種装甲が展開し、生存に必要な最低限の諸器官を保護していく――
 己を護る為というより、相手に加減をさせない為に。
 高まった圧力は腕部へ集められ、装甲の隙間から放出された。
 バシュン、と高圧の蒸気が腕部装甲から吐き出されるのが止まないうちに、スカートを翻して振り向き、彼女は搆えを取った。
 こちらも右脚を下げ、両腕を目の高さに。
 右手は胸の前に、左手は視線の高さに。重心は踵に。
 放熱で揺らめく陽炎を眼前に据え、彼女は拳を握る)

 エッダ――
 否。
 雷神フロールリジの末裔にして、シグムンド・フロールリジが総領娘。
 エーデルガルト・フロールリジ。
 尋常に、立ち会わせて頂きます。
(名乗りが終わればもうなにも待つ必要はない。この程度の距離ならば一足で詰められる。
先程は舐め過ぎた。だからもう油断はしない。先の動きと構えでわかる。少しは本気を出してもよさそうだ)

 ――シィッ!

(燃え盛る炎が纏う風に操られ、螺旋となりて突き出された二剣を覆う。踏み込みと共にその切っ先が狙うのは喉元。
様子見はいらない。目の前の相手に見せつけてやるとしよう。この剣の煌きを


嗚呼、なんなのだこの湧き上がる激情は。誰か私にこの感情の名を教えてくれ)
(嗚呼、何と無駄のない、と思った。確かに二刀の突き。自分への初手としては最適のうちひとつだ。点の攻撃は序盤に良く効く。前手の一撃を、前に出した奥の手甲で滑らせて弾くが、間もなく迫る二撃目は己の右腕と左腕の丁度真ん中を潜り抜け喉へ向かって来た。
堅牢たる搆えとて絶対はない。先ほどのように容易く聴勁を使わせても、最早貰えまい。
だから、まずは一歩踏み出すところから。

不可避に見えた二段目に向かって、更に奥に一歩踏み込む。
終着点が変わったことでその突きは頬に一条の傷を付けながら顔の横を通り過ぎる。
引き換えに到達した懐。
しかし拳どころか、近づきすぎて小さい自分の頭が彼女の胸の下に潜り込むほどの距離。相手からの攻撃も届かないが、己からの攻撃も届かない。
普通ならば)

……フッ!!

(密着した頭。普通なら威力など出ようものもない。普通なら。
だが自分は練り上げた力を頭部へ集め、零距離の打撃を行う。

錬鉄徹甲拳。
エッダの身体は凡ゆる場所が拳であり、打撃を放てる作用点なのだ。
――勘の良い彼女になら、きっと気付かれ避けられるかも知れないと思いながら)
(避けられるのは想定内。お互いに近接戦闘《クロスレンジ》を得意とする以上懐に潜り込まれるのも想定していた。彼女の身体の小ささを活かすのであれば今の位置取りは最高に近い)

――ふむ

(密着した個所から感じる違和感。自らの身体が死角となり彼女の姿を見ることは敵わないがこのままでは拙い。
そう己の勘が告げている。
彼女の頭部が己が身に衝撃を伝える前にブレンダの脚がトンっ、と軽やかに大地を蹴る。

それは先程の意趣返し。
此度は投げられるのではなく自らの意志で宙を舞う。伝わる衝撃を殺しながら蝶のように


そのまま縦に回転し、音もなく着地をすればお互いの位置は背中合わせ。
本当の勝負はここから始まる。)

ハァァァッ!!!

(振り向きざまに放たれる右回りの燃える一閃が背後に立つ彼女の首を狙う。
――きっと彼女は防ぐだろう。その先を見据えて身体が動く)
……いやいや。縦に回って後ろ取るとか。
(しかも今の靠に合わせて?
 そう思いながら、左後方から来る熱気を感じる。
 単に受けては不味い。
 己は弱者であり、楽に受けて良い攻撃など一つとてない。
 故に受けはしない。

 首筋直前まで刃が迫った。
 瞬間。一歩下がって刃の間合いのふところに再び入りながらエッダは回る。
 剣閃のタイミングに合わせて、背中合わせにブレンダと同じ速さで回る。
 なぜ身体能力に於いて劣る彼女が同じ速さを保てるかと言えば、彼女は小狡く小指をブレンダの袖に引っ掛けていたからだ。
 合わせるのは無理だが、己が回転の中心になれば話は別だ。
 そうして剣撃の流れを己の流れに同調させ、そのまま引っ掛けていた小指を逆方向に返す。ブレンダの回転しての一撃の威力を、全て彼女の肘と肩の関節に返しながら投げる形。
 普通なら開放骨折は免れないところだ。普通なら)
なに、これが私の“普通”だ

(しかしここまで投げの上手い相手と戦った記憶はほとんどない。執拗に狙われるのは中々に面倒だ。距離を開けて戦えばもう少し戦いやすいだろう。
だがそれはプライドが許さない。

投げのタイミングにぴったりと合わせ再び身体が回転する。
それを為せるだけの勘の良さ、身体操作技術、そしてなにより思い切りの良さがある。)

やれやれ……私は駒ではないのだがな……

(今回は回転で少しばかり距離があいてしまった。右腕が少し痛むが許容範囲。折られるよりはだいぶましだ。
――こうして数歩分開いた距離を挟んで再び対峙する)
独楽などと。
(回転に合わせての投げの余韻は、ふわりと回ってすとんと落ちるスカートに現れていた。己も独楽のように回っていたのにも関わらず、佇まいは楚々として乱れない)

自分に出来ることはただ一つ、一所懸命それのみであります。
まだまだ、共に踊って頂くでありますよ。

(そう言うと、構えず踏み込む。己の間合いではなく、剣の間合いで一旦止まると、左手でブレンダの右手の剣を叩いた。
さすがに取り落としはしないが、柔らかく持っているはずの剣が大きく泳ぐ。何より今しがたの痛みが響くだろう。
それに合わせて右脚は蹴り脚として前に出る。低空を滑る足はブレンダの足首近くの脛を蹴りつけるそぶりを見せ、すっと引き戻された。
一旦独立歩の体勢になり、上げた脚は更にブレンダから見て右側に大きく回り込む。
小さい身体を更に小さく。坐盤式を取って更に小さく。身体を縮める勢いを重たい腕の落下と併せて更に加速。回転しながら下から上に打ち上げられる打撃。
狙うところは太腿の、筋肉と筋肉の継ぎ目、皮の下がすぐ骨になっている部位だ)
ああ、まだまだ終わらせるには早いからな

(距離を詰められるのはわかり切っていたこと。右腕を狙うのも知っていた。自分も同じ立場ならそうしただろう。
だがその手段が小賢しい。こちらの嫌がることを的確にやって来る。
脛蹴りのフェイントも生半可なレベルでは気づきすらしない些細なもの。
しかし生来の眼と勘の良さがここではよくない方に作用する。反応してしまった身体をすぐに止めるがもう遅い。

エッダの打撃はもう避けられない。できるのはほんの少しインパクトの場所をずらすことだけ。

――しかしそれは常人の話。出し惜しみはしないと決めている。

ブレンダはここで閉じていた左眼を開けた。金色に輝く光が前髪の隙間から漏れる。
その眼が持つ力は『自らのモノを自由に操る』という呪い。それは自身の身体も例外ではない。

有り得ない反応速度で無理矢理自らの脚を動かし打撃に蹴りを合わせていく――――)

……ふっ

(無理に動かしているのだから当然痛みはある。
だがその瞬間、なぜかブレンダの口角は上がっていた)
――
(カットされた勢いに無理に逆らわず逆に回る。
 前掃腿、後掃腿……どうせ避けられるだろうという顔で低空をくるくる回る。間合いを作ったところで再び両手を前に構えた。拳と剣は拳ひとつ分ほどの距離を開けて切っ先をお互いの喉元に向けあっている)

ちっ。いっそ反応しない盆暗ならそのまま蹴り折ってやったのに。
それにしても、今のは……いえ。
それが何であれ、世界は私にとって理不尽の塊だ。
さあ、次は何が出てくる? 銃か? 魔術か?
全て出せ。全て受け切ってやる。

(そして己もここでようやく悟った。
 相手はやはり才能の塊で、己が今持っている少しばかりの余力で“それらしく”振舞ったところでこういうホンモノ相手には容易く剥げるメッキなのだ。
 ならば己はやはり己らしく行こう。
 錬鉄徹甲拳は弱者の武術。
 彼女は笑わない。今も尚、一縷の勝ち筋を必死に探っているから)
本気を出す。そう言っただろう?
魅せてやるさ、総てをな。ただこの力は私も使い始めたばかりなのでな

(左眼を開け、開けた視界で再び眼前の相手と相対する)

――仕事だ、シーカ

(主の呼びかけに従い、鎧に仕込まれていた4本の緋色の小剣たちが動き出す。
その動きは決して疾くはない。だが主の意思に従い浮遊し動く。三本は背後を浮遊し、その内の一本がブレンダの足元へ)

巧く捌けよ?

(左眼を解放したことにより、小剣の操作に加え今まで半ば無意識で行っていた身体制御を意識的に行うことができる。生まれ持った身体操作能力に加え左眼による補助。それがブレンダの動きをさらに上へと引き上げる。

今のブレンダに力の溜めは存在しない。どんなタイミングでも無駄な力がなく最適最速の挙動を行うことができる。
それは挙動の一歩目を格段に疾くする。突如として動き出す身体は相手の反応の一歩先を行く。

足元の小剣を相手の顔面目掛け蹴り飛ばしながら一歩踏み出し
両の剣を交差させる形で斬りかかる。
それは舞の始まりの合図。型など存在せずただ相手を狙う剣撃の嵐が降り注ぐ)
(3点同時の攻撃。
……下がろうか。いや後退は塞がれている。
やはり前進だ、前進しかない。
交差してくる刃の内側に飛び込む。顔に迫る短剣は、頭を下げて…
額を守る兜を短剣がちゅんと音を立てて通り過ぎた。
ここで打ちかかるのがいつもの戦型であるが、やにわ頭を下げて姿勢を比較した。
後ろ髪を少しだけ、背後から飛来した短剣が切り取った。
編み上げていた髪がばらりと顔にかかる)
(蹴り飛ばし間合いから出た小剣は勢いのまま数m先の木に突き刺さる。この距離では眼の力も及ばない。
懐に入られれば小回りの利く無手に比べ剣を握るこちらの方が不利)

――まだ終わらんよ

(振りぬいた剣から手を放す。本来であれば立ち合いの最中に得物から手を放すなどあり得ない。
だが今はあり得ざる力が存在する。
手から放れた剣は重力に従うことなく遣い手の意思に従い宙に制止する。
その柄を逆手に握り、懐に潜り込んだエッダ目掛けかち上げる様に降りぬいた)
(避けるか?
 無理だ。のけぞったところで顎に当たる。
 そうしたらここで仕舞いだ。
 それは厭だ。
 だったら――だったら、傷の方が良い。

 だから、自分は、硬い柄頭に逆に頭を付き込んだ。
 殆ど目の傍。額の上。兜で守られているが、衝撃は頭を揺らす。
 揺らすが懐は護る。
 護るが確かに思い切り揺さぶられた脳は追撃を行えぬまま辛うじて懐に居るに過ぎない)
(巧く当てられた。このまま無理にでも斬り抜くこともできるがそれは兜ごと頭部を斬り捨てることになる。
命の取り合いをしているわけではない以上それは必要ない。
逆手に持った剣から手を離すと身体を半回転させ後ろ回し蹴りを炸裂させる。

――狙いはガラ空きの腹部)
(蹴りは腹部に当たった。
 至近距離であり、また彼我の体格差も含めれば当てにくいどころか悪手に近いはずなのに、彼女は上手くひっかけるように蹴りつけて来た。
 衝撃に後退し、兜の隙間からぬるりと赤い血が垂れてくる。
 矮躯の鉄騎種は未だ食い下がることしか出来ていない。
 そもそも未だに自慢の拳は一撃も届いていない)

 ――な。

(なのに目は死んでいなかった。
 腕がばしゅんと排熱を行う。しゅん、しゅん、と蒸気を断続的に吐き出す)

 ――加減を、したな?

(ばしんばしんと叩きつけるような音が腕部から響き続ける。それは断続的なものから連続したものに代わり、排熱の時だけ開いていた鱗状の装甲は開いたままとじようとせずもうもうと蒸気を吐き出す。唸るような音と共に腕がスパークし、アーク放電は可視化されている。人形のようなストレートの金髪の電荷は偏り、獅子のように逆立つ。
 それはまるで怒りそのものが立って話しているような声色だった。
 加減をした彼女への怒りだった。 
 彼女に加減をさせてしまった己への怒りだった。
 受け切って見せると言ったのに加減をした彼女への怒りだった。
 受け切って見せると信じさせられなかった己への怒りだった。
 煌々と輝く溶鉱炉のような怒りだった。
 声を荒げないのが逆に恐ろしくなるほどの怒りだった)

 チャンバー圧力オーバーロード。
 リミッターカット。
 ――雷神拳、始動。

(だから彼女は、稲光りと共に駆け出した)
――ッ

(雰囲気が変わった。などというレベルではない。これはまさしく別人だ。
宙に浮かせていた剣を改めて握り、構える。これは気が抜けない。

加減をした? そんな自覚はないがそう取られてしまったのならば仕方がない。
自覚をしていないことが問題なのだが自覚をしていないのだからわかり様がない。

だが、目の前にいるのなら倒すだけだ。元よりこれはそういう戦い。)

さぁ、来い

(順手に二剣を握り、こちらもまた風と炎を纏い駆けだした)
 何が来い!

(真っ直ぐの突撃。間合いに入らんとする一瞬前に小さく跳ぶ。
 着地しながら身体を小さく畳んだ。
 身体を大きく開くながら前に跳躍。
 到達するタイミングをずらしての踏み込み。
 先ほどまでとはしかし、踏み込む速さが全く違った。
 そして拳の迅さも。
 一呼吸の間に先ほどを遥かに上回る手数がブレンダを襲う。)

 挑戦をさせてやっているつもりかぁ!!

(上下上上下下、止まらない。拳が止まらない。
 そう言う彼女こそ先ほどまでは手を抜いていたのか?
 その疑問には軋む駆動音と、剥離していく腕部装甲が答える。)

 貴様はいつまでそうして遠い目をしている!!
 誰を見ている!!

(きっとこの駆動を続ければ自壊する。
 ただの試合であればここまではしない――
 だが命の取り合いではないが、これは魂の取り合いなのだ。
 ならここまでだってどこまでだってする。
 そしてそうだからこそ、ことここに至り己一人が滑稽にも足掻いている様に怒る。
 そうしないと対等に戦えない己に怒る。
 ここまでしているのに平然としている相手に怒る。)

 貴様の瞳の先に“居た”奴らなど知るか!!!
 私の“武”を見ろ!!!!
 今の“私”を見ろ!!!!

(きっとその黄金の瞳には、その連打がいずこかに触れる度、魔力や気力、あるいは体力と言った類のものが喰い散らかされていくのも見えただろう。)

  わっ、たっ、しっをぉお!!!

(両手で同時に上下を撃つ。
 防いだ剣を更にこじ開けて中に入り込み、肩を掴んで跳んだ。
 そのままのけぞって――)

 見ろぉぉぉぉ!!!!!

(兜を脱ぎ棄てると、その額を、ブレンダの鼻面に叩きつけた。
 先ほどのかち上げで割れていた額は更に傷口が広がり、目の上の傷から血がぱっと舞う)
(投げかけられる言葉の一つ一つがその心に突き刺さりながらも身体は勝手に拳を防ぎ続ける。

――挑戦させてやっているつもり?
だってそうしないとすぐに終わってしまうだろう。

――誰を見ている?
誰もいないからずっと誰かを探していた)

しまっ――

(反射的に行われていた防御を力づくでこじ開けられる。
この連打が命を削るモノだと左眼がずっと訴えている。それほどまでに私を打倒したい者が今ここにいる。

それはエッダ・フロールリジ。泥臭く、とても綺麗な拳を振るうヒト。
弛まぬ努力と諦めない心でここまで上り詰めたであろうヒト。

私とは全然違うヒト。

そんな彼女の顔が今眼前に迫る。この瞬間、初めて私は“エッダ”の顔を見た)

――ガハッ!

(額のめり込んだ鼻は嫌な音を響かせ砕け散った。絶え間なく流れる鼻血のせいで呼吸が少し苦しい。
血が止まらない。私はいつからこうだっただろう?
血が止まらない。追う背中が無くなってからはずっと独りだった。
血が止まらない。どれだけ頑張っても才能の言葉で片付けられるならそんなモノはいらなかった。
血が止まらない。天才、特別、そんなモノは望んでいない。
血が止まらない。私が欲しかったのは共に在る者(ともだち)だった。

――それは今、目の前にいる彼女の様に自分を視てくれるヒト。

                                血が、止まった)
ハハッ!

(なにがズルだ。なにが当たり前だ。なにが天才だ。なにが特別だ。思い上がるな。調子に乗るな。

私などただほんの少しばかり恵まれていたに過ぎない。
だがそれでも今ここまで闘えるのは私自身が努力したからだ。誰になんと言われようと私は歩み続けた。
できることをやっていただけ?それの何が悪い。当たり前は皆違うのだ。)

私は!こうして!闘える!!!

(私は私だ。ブレンダ・スカーレット・アレクサンデルだ。
それを、その強さを目の前にいる彼女に見せつけてやろう。

勿体ないと言ってくれた彼女に全力を見せつけてやろう。
私はここまで強いんだ、と。それが私を視てくれたことに対する最高のお返しだ。


こちらも大きく身体をのけぞらせ、勢いをそのままに額をエッダの頭部に叩き込む)
(脳天に額を食らってしまった。
 的確に己の強いところを相手の弱いところに当てた自分の靠に対して、相手の頭突きはといえば何とも大雑把な……いや、自分の方が低いのだからこうなるのは必然で、そういうものも含めて戦術を練っているのに、効かされてしまう。
 ぐらぐらと視界が揺さぶられて、尻もちを着きそうになる。そんな自分がまた許せなくて、己の頬を張り飛ばして気合いを入れた)

Scheiße……クソ、クソ。

(下から睨みつける昏い瞳はずっと見ている。
 焼き焦げ付きかねないほどに彼女の顔を見ている。
 それは渇望だった。
 昏い顔なのに、しかし、卑屈さや諦めを感じさせなかった。
 だから)

 クソ……才能というのは、これだから。

(そんな、彼女を傷つけかねない言葉も、まるで違って聴こえただろう。
 思えば“私”の人生は、すべてが己より優れた者との闘いであった。
 ならば才能などというのは、多寡の違いさえあっても同じものだった。
 “そんなもの”、腐るほど見慣れている。
 そういうものを叩きのめして、叩き潰して、時には助けたりして……そうして今の己がある。
 ……そうであっても、今目の前にいる女は極めつけだ。
 これほどの技を、ああもつまらなそうに振るうにはきっと今までいくらでも失望してきたに違いない。
 それは己の怒りと似ている。

 “そうすればいいのに、なぜそうしない”。
 それが肉体の強さに依るものであれ、精神の強さに依るものであれ、同じように思って来たに違いない。
 違うとすれば、私は沢山失敗をすることが“できた”ということだ。
 沢山の失敗は、己に多くの経験をくれた。
 失敗は最良の教師とはよく言ったものだ。
 きっと彼女は“成功し続けてしまった”に違いない。
 なら己が……彼女の失敗になってやる。
 孤高を気取るなど間違いだと教えてやる。
 よく見てみろ。
 世界は貴様の知らないもので溢れているぞ。)

……っふうぅ……

(連打の間止めていた息を大きく吸う。
 腕部吸気口、排熱口を閉じてまた両腕を構えた)

 闘えるだと。
 ……当たり前だ、馬鹿者。
 貴様が強いから、私は勝ちたいんだ。
そうだ!これが私の才能(すべて)だ!!!

(嗚呼、鼻はまだズキズキと痛むけれど身体はとても軽い。
こんな気持ちはいつぶりだろう。何も悩むことなくただ剣を振るう。

私が望んだ普通は手に入らなかった。だがその代わりにイマがある。掴み取った強さがある。
それを観せてやろう。魅せつけてやろう。
勝ち続けた者だけが知っている世界があると。

私を視てくれるのなら。視続けてくれるのなら。私はもう止まらない。
たった独りの失望はもう終わり。貴女が追ってくれるのなら私はどこまでだっていける。
だから……もう思い上がった手加減なんてしない。

その決意で左眼の輝きが増す。それに伴い左右の焔と疾風もまた勢いを増す)

エッダ、貴女が私に勝ちたいように私は貴女に負けたくない。

だから――往く。

(もう待つなんてことはしない。私の最高を魅せつける。
軽やかな足取りで駆け抜けて、振るう刃は舞の様に。単調には決してせず、音楽を奏でるように拍子を操る。
防がれるのならまた次を。狙いは総て各急所。そこを休むことなく斬り続ける。

二剣による協奏曲。その一節が今始まる)
(急所を狙う攻撃は、実はとても読みやすい。
当然だ、そこが傷ついたら終わりなのだと赤子でも知っているからだ。
頭、喉、そのほか諸々。人は己の弱いところを知っていて、だからこそ弱いところを狙われたらたちどころに勘付く。

なのに防ぎづらい。
交差の一瞬を狙おうにも戻りが速い。

望んでいた連撃はやはり、望んでいた通りの精度と活力に満ちていて……

左の肩関節に剣先が差し込まれた。
左腕が途端に上がらなくなる)

……

(なのにその目は、未だに勝ち筋を探っていた)
(連撃は加速し続ける。瞳は輝きを増し続ける。
主の意思に従いこれまでの限界を超えさらにその先に。

――左腕の動きを止めた。故に右の手数を増やす。
こちらの左は自由な右腕を封じるように。
これまでであれば相手に遠慮をして狙うのをやめていただろうが今はもうしない。全力で倒すと決めたのだから。

エッダの目が死んでいないということも理解している。だから攻撃の手は休めない。
どんな策を弄してこようがそれを食い破り勝ちをもぎ取ってみせる)

――――ッ!

(さぁ、何を魅せてくれるんだ。期待に高鳴る鼓動がさらに動きを加速させる)
(さて。
――策など無い。

諦めてはいないが、片腕は上がらなくなった。
弱者はやはり弱者。このまま苛烈に攻められてはあと数手で敢え無く終わりだ。
だから、防ぎ方を変えた。
手甲ではもはや受けない。

――最初の数手は、目測の誤りか偶然だと思うだろう。
"手応え"がない。
彼女は全ての攻撃を受ける。但し、押された分だけ押される最小限の防御で。
回避ではなく、防御でもない。ただ受け入れるという概念。

イン=ヤン=ドクトリン。その戦術を忠実に行えば。

但しそうであっても実力差は大きい。
その場に居ながら突きを無傷に近い形で受けつつも、それだけで受け切れるほど甘い相手ではない。

結果、足元の覚束無い身体は、ふらふらと動かない左腕側から、ブレンダに近づいていく)
(いなされている? いや、これは違う。
当たってはいるが決定打になっていないのだ。こちらの攻撃に合わされている。

――ならば合わせられない攻撃をすれば良い。

剣の纏う力を解放し、近づいてくるエッダへ向けて放たれる炎の壁。
この程度が脅威になるとは思っていない。両者を分かつ様に立ち昇るそれで一瞬でも視界を奪えればいい。

その一瞬で剣を手放し宙に制止させ、自身の背後に浮遊する小剣を掴むとエッダへ向けて音を殺し投げ放つ)
(視界が塞がれても、見える者がある。
炎、それ自体の揺らぎを僅かに目に捉えたエッダは、しかしそれを捉える力に対して完璧に避ける身体を持っていない。
であれば、出来ることはただ愚直に前に進むことだけだ。
ただ、短剣の軌道に左の鉄腕を差し出すくらいのこと。
常であれば盤石の守りであるその防盾も、火花を放つままに前に進めば隙間に剣が挟まることまでは止められず……
それでもまだ、前に進んだ)

……あと、3歩。
――チッ

(炎でこちらの視界も奪われているが投擲の結果は音で分かる。足は今だ止まらずに前へと進んでいる。
小剣もあと3本。このまま投げ続けても意味はないだろう。この程度の小細工で終わらぬことをほんの少し心の内で喜んだ。

このまま距離をとるという手もある。むしろこの状況では得策だと自らの勘が言っている。
一度距離をとって体勢を立て直せばこちらに分がある)

だがそれではつまらんだろう?

(ただ勝てばいいだけではない。この戦いは私(ブレンダ)を魅せつけるためのモノ。
だからこそここで退くという選択は選ばないし選ばない。ここで選ぶ選択肢はただ一つ。


炎の壁へ、こちらもまた一歩近づいた)
あと、一歩。

(二歩目を飛ばして数えた。
炎の壁を目前に、先程の牽制を躱されたことを察知すれば、距離を取る。
あるいは様子を見るために足を止める。
それ故三歩とカウントした。

それをあっさり崩す意味はただ一つ、想定以上の成長それのみ。
きっとこの壁の向こうに彼女は――そう思いながら、エッダは拳を振り上げた)
これで――0だ

(双方から近づけばその分衝突は早くなる。これでもう壁を挟んで間合いの中にいる。
彼女ならきっともう攻撃の構えをとっているはず。ならばこちらもそれに応えなければならない。

――そう思いながらブレンダは二剣を振り上げた)
(右の拳を、下から捻り上げるように打つ。
炎の壁が、渦を巻いて吹き散らされた。
その拳は、きっとブレンダの目には、ひどく凡庸に見えたはずだ。
別段速くもない。
別段強くも見えない。

ただ、その拳が、丁度二振の剣が交叉したところに、まるで偶然のように飛び込んで来たこと以外は)
(こと武芸においてラッキーという言葉をブレンダは信じていない。
全ては積み重ねとその場のひらめきだけ。このエッダの拳はおそらく前者だろう。

型とは元来そういうもの。どんな時でも解を出せる先人からの歴史。
ブレンダにはなくエッダにあるもの)

――ッチィ!

(拳は剣で弾いた。だがそのせいでこちらの攻撃も一手遅れる。
再び剣を振り上げ狙うのは袈裟の斬り下ろし――)
(拳の弾き方が、実に絶妙だった。
 そのままであれば体勢は大きく崩されたであろう。
 そこからヨーイドンの勝負に出来たはずの、そしてそうであればスピードと威力に優れた一撃が先に届いたはずのブレンダの妙手。
 だが、弾かれ宙に流れた拳は渦を巻いて急激に手元に引き戻された。
 軸足を浮かせて生まれた落下の力で強引に引き戻した拳。足を浮かせることで生まれたロスを打ち消すための震脚――腹に抱えるように溜めた拳を、両方とも同時に突き出す。

振り下ろされたブレンダの左剣はエッダの右腕が滑るように受け止めた。
突き出されたエッダの左腕は、ブレンダの顎に触れている。
では、エッダの勝ちか?

……その答えを出すには、エッダの喉元に突き付けられたブレンダの右の剣が拳より先に届いたかどうかを論じなければならないだろう。
明確な決着は命でしか払えない以上は)

――これまででありますね。
自分の負けであります。

(この戦いがどういう意味を持っていたか。
 その答えとは、その嘆息をどう捉えるのかによるだろう)
はぁ? 私の負――
(続く言葉を紡ごうとして……やめた。『私の負けだ。本気を出して相打ちなのだから』、そんな言葉はただの傲慢でしかない。相手を舐めているにも程がある。

今回の勝負は対等な戦い。その上で相手が負けを認めているのだからここで言うべき言葉は一つしかない)

いや、今回は私の勝ちということにしておこう。これで一勝一敗、だな
……まぁ、次も私が勝つが

(両の剣を鞘へと納め、やや曲がってしまった鼻を戻す。この程度なら傷が残る心配もない。
戦いが終わってこんな気分になったのはいつぶりだろう。とてもすっきりとしている。
本来の武とはこうであるべきだろう。

嗚呼――懐かしい)

とはいえ今日はもう少し疲れた。この辺りにしておこう
……まぁ私はまだまだ余裕だが

(いつもは余裕の溢れる言動を心掛けているのだが最後にぽろっと強がりが出てしまった。
それは一つの親しみ、なのだろう)

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