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鍛冶小屋スカーレット
(脳天に額を食らってしまった。
的確に己の強いところを相手の弱いところに当てた自分の靠に対して、相手の頭突きはといえば何とも大雑把な……いや、自分の方が低いのだからこうなるのは必然で、そういうものも含めて戦術を練っているのに、効かされてしまう。
ぐらぐらと視界が揺さぶられて、尻もちを着きそうになる。そんな自分がまた許せなくて、己の頬を張り飛ばして気合いを入れた)
Scheiße……クソ、クソ。
(下から睨みつける昏い瞳はずっと見ている。
焼き焦げ付きかねないほどに彼女の顔を見ている。
それは渇望だった。
昏い顔なのに、しかし、卑屈さや諦めを感じさせなかった。
だから)
クソ……才能というのは、これだから。
(そんな、彼女を傷つけかねない言葉も、まるで違って聴こえただろう。
思えば“私”の人生は、すべてが己より優れた者との闘いであった。
ならば才能などというのは、多寡の違いさえあっても同じものだった。
“そんなもの”、腐るほど見慣れている。
そういうものを叩きのめして、叩き潰して、時には助けたりして……そうして今の己がある。
……そうであっても、今目の前にいる女は極めつけだ。
これほどの技を、ああもつまらなそうに振るうにはきっと今までいくらでも失望してきたに違いない。
それは己の怒りと似ている。
“そうすればいいのに、なぜそうしない”。
それが肉体の強さに依るものであれ、精神の強さに依るものであれ、同じように思って来たに違いない。
違うとすれば、私は沢山失敗をすることが“できた”ということだ。
沢山の失敗は、己に多くの経験をくれた。
失敗は最良の教師とはよく言ったものだ。
きっと彼女は“成功し続けてしまった”に違いない。
なら己が……彼女の失敗になってやる。
孤高を気取るなど間違いだと教えてやる。
よく見てみろ。
世界は貴様の知らないもので溢れているぞ。)
……っふうぅ……
(連打の間止めていた息を大きく吸う。
腕部吸気口、排熱口を閉じてまた両腕を構えた)
闘えるだと。
……当たり前だ、馬鹿者。
貴様が強いから、私は勝ちたいんだ。
的確に己の強いところを相手の弱いところに当てた自分の靠に対して、相手の頭突きはといえば何とも大雑把な……いや、自分の方が低いのだからこうなるのは必然で、そういうものも含めて戦術を練っているのに、効かされてしまう。
ぐらぐらと視界が揺さぶられて、尻もちを着きそうになる。そんな自分がまた許せなくて、己の頬を張り飛ばして気合いを入れた)
Scheiße……クソ、クソ。
(下から睨みつける昏い瞳はずっと見ている。
焼き焦げ付きかねないほどに彼女の顔を見ている。
それは渇望だった。
昏い顔なのに、しかし、卑屈さや諦めを感じさせなかった。
だから)
クソ……才能というのは、これだから。
(そんな、彼女を傷つけかねない言葉も、まるで違って聴こえただろう。
思えば“私”の人生は、すべてが己より優れた者との闘いであった。
ならば才能などというのは、多寡の違いさえあっても同じものだった。
“そんなもの”、腐るほど見慣れている。
そういうものを叩きのめして、叩き潰して、時には助けたりして……そうして今の己がある。
……そうであっても、今目の前にいる女は極めつけだ。
これほどの技を、ああもつまらなそうに振るうにはきっと今までいくらでも失望してきたに違いない。
それは己の怒りと似ている。
“そうすればいいのに、なぜそうしない”。
それが肉体の強さに依るものであれ、精神の強さに依るものであれ、同じように思って来たに違いない。
違うとすれば、私は沢山失敗をすることが“できた”ということだ。
沢山の失敗は、己に多くの経験をくれた。
失敗は最良の教師とはよく言ったものだ。
きっと彼女は“成功し続けてしまった”に違いない。
なら己が……彼女の失敗になってやる。
孤高を気取るなど間違いだと教えてやる。
よく見てみろ。
世界は貴様の知らないもので溢れているぞ。)
……っふうぅ……
(連打の間止めていた息を大きく吸う。
腕部吸気口、排熱口を閉じてまた両腕を構えた)
闘えるだと。
……当たり前だ、馬鹿者。
貴様が強いから、私は勝ちたいんだ。
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鍛冶小屋からは鎚の音がする
海の向こうで起きた戦いも終幕し、穏やかだが騒がしい日々が返ってきた
しかし小屋の主は少々浮かない顔をしている
その悩みを忘れるためなのかここ数日響き渡る音はいつにも増して大きい
……しかし出来上がるのは鉄くずの山ばかりで心の靄は一切晴れない
「ああ、そう言えば今日は人が来るんだったか……」
研磨の手をひとまず止め、鍛冶を切り上げ母屋へと向かいこれまでに掻いた汗を流す
「酒の貯蔵は何があった……シードルでいいか?」