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鍛冶小屋スカーレット
――
(カットされた勢いに無理に逆らわず逆に回る。
前掃腿、後掃腿……どうせ避けられるだろうという顔で低空をくるくる回る。間合いを作ったところで再び両手を前に構えた。拳と剣は拳ひとつ分ほどの距離を開けて切っ先をお互いの喉元に向けあっている)
ちっ。いっそ反応しない盆暗ならそのまま蹴り折ってやったのに。
それにしても、今のは……いえ。
それが何であれ、世界は私にとって理不尽の塊だ。
さあ、次は何が出てくる? 銃か? 魔術か?
全て出せ。全て受け切ってやる。
(そして己もここでようやく悟った。
相手はやはり才能の塊で、己が今持っている少しばかりの余力で“それらしく”振舞ったところでこういうホンモノ相手には容易く剥げるメッキなのだ。
ならば己はやはり己らしく行こう。
錬鉄徹甲拳は弱者の武術。
彼女は笑わない。今も尚、一縷の勝ち筋を必死に探っているから)
(カットされた勢いに無理に逆らわず逆に回る。
前掃腿、後掃腿……どうせ避けられるだろうという顔で低空をくるくる回る。間合いを作ったところで再び両手を前に構えた。拳と剣は拳ひとつ分ほどの距離を開けて切っ先をお互いの喉元に向けあっている)
ちっ。いっそ反応しない盆暗ならそのまま蹴り折ってやったのに。
それにしても、今のは……いえ。
それが何であれ、世界は私にとって理不尽の塊だ。
さあ、次は何が出てくる? 銃か? 魔術か?
全て出せ。全て受け切ってやる。
(そして己もここでようやく悟った。
相手はやはり才能の塊で、己が今持っている少しばかりの余力で“それらしく”振舞ったところでこういうホンモノ相手には容易く剥げるメッキなのだ。
ならば己はやはり己らしく行こう。
錬鉄徹甲拳は弱者の武術。
彼女は笑わない。今も尚、一縷の勝ち筋を必死に探っているから)
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鍛冶小屋からは鎚の音がする
海の向こうで起きた戦いも終幕し、穏やかだが騒がしい日々が返ってきた
しかし小屋の主は少々浮かない顔をしている
その悩みを忘れるためなのかここ数日響き渡る音はいつにも増して大きい
……しかし出来上がるのは鉄くずの山ばかりで心の靄は一切晴れない
「ああ、そう言えば今日は人が来るんだったか……」
研磨の手をひとまず止め、鍛冶を切り上げ母屋へと向かいこれまでに掻いた汗を流す
「酒の貯蔵は何があった……シードルでいいか?」