シナリオ詳細
竜域踏破
完了
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
オープニング
●ネクスト patch2.0『遥かな東と竜の脅威』
イベント《Genius Game Next》 クリア評価値がA(最大S+)――
update:2.0 エリアデータをRapid Origin Onlineにインストールします。
――――『『竜の領域』がインストールされました』
混沌大陸において南方の山脈地帯は安易なる立入りを禁止されている。
渇いた大地を潤す恵みの雨も怖れるように雲を割く、覆い被さる黒き影は何人をも竦ませた。
天を裂いた慟哭。地をも包み込む闇。それが1つの生命体による物であるなどと、誰が考えるだろうか。
否、此れまで幾重もの戦いを越えて来た勇者は識っているはずだ。
――《竜種》
それは絶望の海で廃滅の呼気を吐きながらイレギュラーズを圧倒したリヴァイアサンのような。
それは熱砂吹き荒れた麗しのオアシスを襲い来た水晶の骸、ライノファイザのような。
小さき定命の人の子をせせら嗤う脅威。
それらは混沌大陸でも早々お目に掛れやしない。
その伝説を目にしたくば死をも覚悟せねばならない覇竜の領域デザストルの奥地へ行かねばならない。
だが、ネクストは易々と。
イレギュラーズ達に『ご褒美』を与えるようなつもりでその場所を『実装』して見せたのだ。
険しい岩山に、入り組んだ渓谷、全てを覆い隠す森……。
MAPに描かれた情報を見るだけでもその道が過酷である事に気付かされる。
……だが、MAPは未だ立入りが禁止されている。
――クエストが発生しました。地点《伝承 王宮》 クエスト依頼人《フォルデルマン二世》
どうやらクエストの受注を以て開放が為されるのだ。そうした所までも如何にも《ゲーム》らしい!
●覇竜観測所
ネクストにもその場所は存在して居た。フォルデルマン二世の親書を手にしたあなたの向かう先には古びた屋敷が存在して居た。
その周辺には研究棟が連なり、竜の領域の至近にまで観測塔が存在して居る。防波堤や堤防を思わせる高い塀を有したその場所は大陸各国の寄付を受けて運営が成されているのだろう。様々な国家の特色が入り混じった不可思議な空間であった。
――砂嵐をも撃破することの出来た勇者達よ。未踏領域へと踏み入る事が可能となったらしい。
彼の地は《竜の領域》、竜種と呼ばれる者共の巣窟である。伝説、伝承、それらに触れてみる気はないか――
伝承・国王陛下からの直々のクエストである。
彼からのクエストが発生した時点でエリアマップは広がり、立ち入ることが出来なかったこの場所まで進むことが出来るようになっていたという訳である。
……今までも此の地まで近付くことは出来たが固く鎖された屋敷の門はさながら国境を隔てる塀のようであった。
「わ、もう到着してる!? ラ、ラナさん、どうして言って下さらなかったんですか! お待たせしちゃった……」
「声は掛けたが望遠鏡を話さなかったのは誰だ? 国王陛下さえ待たせるお前が勇者を待たせるくらい如何という事でも無いだろうに」
その場所を――《覇竜観測所》を眺めて居たイレギュラーズの元へと走り寄ってきたのは柔らかな白銅色の髪を持った少女であった。
幼さを滲ませるが彼女は成人した立派な女性である。フォルデルマン二世は『クエスト受注の際』に言っていた。
――伝承王国の貴族の娘が覇竜観測所の所長を務めている。エルヴァスティン家の才媛だ。力になってくれるだろう――
「申し遅れました。私は伝承貴族エルヴァスティン子爵家が三女、ティーナです。宜しくお願い致します。
覇竜研究所にようこそ。皆さんの訪問を所員一同歓迎致します! ……あまりおもてなしも出来ないような場所ですが」
「ティーナ、違うだろう。無謀な挑戦者達だ。もてなすのは私達では無く竜種、そうだろう?」
所長ティーナの背後に立っていたのは観測所の警備を担う幻想種ラナ・グロッシュラーである。
「そんな。竜種のもてなしなど恐ろしい事ではありませんか。……いえ、けれど、彼等を間近で見られるのは素晴らしいことでしょうね!」
瞳をきらりと輝かせた研究員レーン・クレプスキュルもラナと同じ幻想種である。翡翠の奥深くに『引き籠もっている』筈の彼女達も参入しているのは何とも不可思議な様子にも思えた。それだけ竜種という存在は人を惹きつけるとでも言うのだろうか……。
「そのデータを私達に齎してくれるというならば実に興味深い。キミはどう思う? ミロン」
「……少しばかりモンスターの動きが活発になっているようだがね。危険は承知の上なら、進入も構わないだろう」
ルーク・ドリーマーの問い掛けに観測塔より通信を介してミロン・メレフの言葉が届けられる。
「国王陛下からのご依頼だって言うなら、ミロンさんとて、そりゃあ断ることはできないでしょうに。意地が悪いですよ、ルークさん」
「そういうローリンは彼等が此方に圧倒されている間に国王陛下からの依頼内容を把握しているとは……」
ルークの溜息に笑顔を返したのは『ラインの黄金』とも称される商人ローリン・ヒルデヴォルクである。
フォルデルマン二世は政治的見地からこのクエストを出したのでは無い。勇者達に冒険を与えようと提案してくれたのだろう。つまり――真なる『勇者であれば冒険してこそ』なのである。
「こほん!」
咳払いで場を整えるティーナは「アウラさん、竜種及び亜竜種の行動予測を頂けますか?」と通信機を介して屋敷内部の研究棟へと伝達を飛ばしていた。
「はいっ、領域内から亜竜達は出てくる予測は無いけれど、内部で……ヴァンジャンス岩山でモンスターが活発化してるのはミロンの言う通りだよ。
第一の関門はその辺りかな……。ピュニシオンの森にまで辿り着けたらそこにサクラメントを設置して貰えばいいかも?」
「そうですね。拠点を幾つか設置しながら進んで貰う事になるかと思います。
逐一私達は《行動予測》《観測情報》を皆さんのマップに展開しますが……私達が思う以上に竜は知能を有している」
「……ただのモンスターって訳じゃないって事さ。怖じ気着いたならクエストを破棄しても構わない」
ラナさん、とティーナは非難の視線を向ける。彼女は伝承貴族の一員、救国の勇者達に対する期待は人一倍強いのだろう。
「こほん! 竜の領域は危険です。竜だけでは無く存在するモンスターも全て格上です。
此れより先は『未知の領域』です。踏み入れるならば死を御覚悟下さい。……どうかお気を付けて」
――イベント情報が更新されました。
patch2.0『遥かな東と竜の脅威』
クエスト名 《竜域踏破》 クエスト内容 《竜の領域を踏破せよ――》
- 竜域踏破完了
- GM名夏あかね
- 種別ラリー
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2021年08月27日 17時00分
- 章数4章
- 総採用数620人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
――ヴァンジャンス岩山。
此の地こそが竜の領域の入り口に当たる。草木は茂ること無く、荒廃した岩山が連なっている。
岩陰などには隠れる事ができるだろうか……。だが、モンスターによっては此方を感知する方法が異なっているだろう。
何にせよ、行動してみなければ解る事も少なそうだ。
《行動予測》
・当地域ではモンスターが活発に動き回っている。
・マンイーターやヒポグリフの活動域である。
・アウルベア及びロック鳥に注意されたし。
・ワイバーンの影が確認されている。注意されたし。
・竜種が出現しない区域であろうと推測される。その為か、モンスター及び亜竜の行動が活発となっている。
・人が立ち入ることで飢えたモンスターが多く集まる可能性もある。隠れる事、非戦闘スキルの使用や工夫も念頭に入れて欲しい。
《観測情報》
・ワイバーンの影視認済み。騒ぎを聞きつけ現われる可能性がある。
・アウルベアの存在視認済み。避けては通れない。
・ロック鳥の存在視認済み。避けては通れない。
・岩山中腹付近にサイクロプスの住処を視認済み。避けては通れない。
『――以上、観測所からの情報です。
サクラメントでのリスポーンを行いながら、進軍して下さい。ご健闘をお祈りしています!』
第1章 第2節
「やっぱりこういうのは一番に足を踏み入れるのが醍醐味ってものだよね」
踏み入れるは『竜の領域』。御伽噺や伝説にしか語られず踏み入る事さえ易くないその場所には人の影1つ無い。
誰も居ないところに一番乗りを目指して飛び込む事こそが浪漫であるとスイッチは識っていた。
物音を立てず翼型のセンサーで周囲を隈無く確認しながら安定した飛行を心がける。踏み込んだのはスイッチが初めて。
双眸に映り込んだのは荒廃した岩山と、各地に点在する瓦礫の数々。人々が踏破を目指し踏み入れる度に破壊された獣の巣窟。
アウルベア、ロック鳥、そしてワイバーン……確認された敵勢対象でだけも飛べる敵が多そうではあるが。
「上か。アリかも知れないな?」
リアナルは空を行くスイッチを眺めた。彼女もスイッチも此度は同じ目標を抱いて居る。
『行けるところまで行ってみる』である。入江・星に言わせればこうしたことはトライアンドエラーが大切だ。
「死に戻り前提。つまるところ1回でどれだけ情報を持ち帰れるかってことが肝要やろう。
現実でも踏み入れることが出来へん魔境、気合い入れて探ってこようか」
「モンスターとの接敵まで、進むね」
星は気をつけてとスイッチに手を振った。モンスターデータを可能な限り持ち帰るためには一撃加えてから可能な限り逃げ回らなくては成らない。
星が狙うのは格上だらけの中でも『逃げ回れる程度』の比較的弱そうに見えるモンスターであり、対照的にイルミナは――
「っし……まずはどんなもんか試してみねーとな! 正面突破してみようぜ!
オラオライルミナ様のお通りだぞ、っと! ――大物相手は任しとけよな!」
一直線に走ってゆく。モンスターがどの様にして襲ってくるかを見極める彼女の背に隠れるように付いていくリアナルはイルミナがぴたりと足を止めたことに気付いた。
「モンスターが目で見て襲ってくるか、匂いか、耳か、その辺りも――と思ったが、アレは簡単に目だ!」
勢いよく走り寄ってくるのは飢えを感じさせる狼だ。遠目に見れば森で出会う物を思わせるが近付けばその認識が間違いであったと知る。
「で、でかい――」
にゃー!? と肩を竦めたろおもこね・こみおは自然知識(物理)を活かして安全そうな物陰へと隠れる。荒廃した大地に草等は無いが地形はある意味で分かりやすい全体がモンスターの根城なのだ。
(……こここ怖いモンスターがいっぱいですにゃー!?)
R.O.Oだったら死ぬだけ。そうは言えども恐ろしい物は恐ろしいのだ。マッピングをして行動エリアを広げなくてはと顔をそっと出したみーおの前で狼を剣で受け止めていたイルミナが弾き飛ばされてくる。
「ザコ敵かと思ったら強いな」
呟いたリアナルの髪の毛が毛先から桃色に染まってゆく。イルミナが振り下ろしたザンバー・ブレードを弾いた狼の喉を目掛けて灯火送人は『配達物』を届け続ける。
こみおはイルミナに小さく頷いた。彼が隠れている横穴は隠れる事に適している。相手が匂いを探るならば、近くに居ては成らないかと走り出し――リアナルもそれに倣うように前を目指した。
「成程、狼一匹でも『ココで生抜いている』以上は強い……やけど、数人でなら安定して狩れそうな相手やな。
ココに出てきてるって事は巣穴が近くにあるってことや――マッピングするなら『そっち』を確認して記録、死んで戻ってから狼を皆で倒して大型の餌にするってのが定石やけど」
さて、どうするかと星は空を行くスイッチを見上げた。スイッチは兎に角真っ直ぐ飛ぶ事を目的としていた――が。
「そうだよね、空は無防備だ」
眼前に現われたのはヒポグリフだ。活動域であるとは言われていたが、果たして逃げ切れるか。機動力勝負となるかと考えたがヒポグリフは速い。
一撃目は何とか避けれた。だが、傷はその身体をじわじわと蝕んでいる。地上に降り立つことも出来ない。血の匂いに誘われたマンイーターがスイッチを眺めて居るからだ。
丁度、下を走る星が見えた。狼の塒を目指してのことだろう。先へと逃げるイルミナやリアナル、こみおは荒野部をモンスターに追われながら進んでいる。
(けど、一度壁が来る――上から見ればよく分かるけど、岩山は登り切れば終了じゃなさそうだ。……険しいな)
スイッチの身体が掻き消える。復帰ポイントであるサクラメントへの帰還メッセージが表示される刹那に見たのは、背には岩山を背負って狼に追い詰められた仲間達の姿だ。
「……あっちの道は狼(ハンター)を倒してから落ち着いて昇らな様子見も難しい、と。なら、こっちはどうやろな?)
一先ずは『マッピング』優先か。星は狼が駆け出してきた方向に向かっては知りだした。入り口付近の地形は荒野から始まり、徐々に岩山に入っていくという『導入』に他ならない。まだまだ小高い山に登ることは叶わないがモンスターの生態を上手く把握すれば躱して越えて行くことが出来るそうだという期待も胸に過る。
それにしても追いかけてくる狼たちだが、入り口付近に根城を持っていると云うのはこの奥には棲むことが叶わないという事か。
そうであるならば……「恐ろしいところやで」と星は小さく呟いて頬を掻いた。数分の後、辿り着いた狼たちに襲い掛かられるまでは彼の想定内なのだ。
成否
成功
状態異常
第1章 第3節
「おお!ㅤここが竜の根城!!ㅤ凄い!ㅤよくわかんない!! はっ!ㅤ草1本も生えてない!
これは私が緑を増やしに行かないと!! 上手く行けばここをフィールドセルの楽園に出来る!!」
そんな風に意気込んだのはきうりんであった。菜種(フィールドセル)と呼ばれる種として翡翠の森を楽園にしたいと考えていたが、竜の領域も中々見所があると心を躍らせる。
でぇ根に言わせれば気をつけろ……なのだが。
「うんうん、とりあえず森に行けば勝ちなんだね!ㅤあ、森あるんだ。まぁいいや。まず突っ込んでみよう!ㅤ囮にでもなれば上々だよね!!
うおおおお!ㅤできれば一番乗りいいいい!! それで駄目でもあのラインを越えれば私が一番乗りいいいいい!!!!!!」
――勢いだけで飛び込んでいくきうりんを眺めて居たのはルージュだ。
「気持ちが大事! ㅤ病は気からって言うしね! って何か来た! あっちょっまっ」
「ねーちゃんが勢いよくヒポグリフに攫われていった……」
地上を走っているだけでも上空から餌を求めて何かがやってくるというのは自然界で生抜く難しさを感じさせる。
「んじゃ、できるだけ情報を取って死んでくるぜ!!」
出来るだけ高度を高めて一気に突き抜ければ良い。先程、ルージュの目の前で餌を持って行ったヒポグリフだけでも危険だが――竜種はこの周囲には観測されていないのは幸運か。
「ここが竜の居る領域なんだなー。うーん、さすがに一人で勝つのは無理そうだしな」
先程、スイッチが飛んでいた場所を越えて、現時点の最大距離を稼ぐために行く。幸いにヒポグリフはきうりんを運んでいった。少しは進めそうだ。
だが、脅威はソレだけでは無いだろうか。ヒポグリフが過ぎても岩山を登り出す部分踏み込めば新たなモンスターが出現する。
「エイラぁ敢えて浮いて囮になってもいいけどぉ。この数と相手だとぉ即落とされちゃいそうだよねぇ。
大人しくぅ隠れ進みたいとこだけどぉ。見つけられちゃいそうだよねぇ。うんー。エイラはぁ囮になるのはぁ変わらないかなぁ」
んーと、首を捻ったのはエイラ。少しでも誰かを進めるために目指すは岩山の中腹、サイクロプスの住処である。
だが、ルージュとエイラの目の前に存在するのはワームである。砂嵐の砂漠地帯でも見られるような巨大なミミズが口をばかりと開いて食事を求めて襲い掛かってくるか。
「わ~。前にいってねぇ。すこしでも、引受けるからぁ」
金色の魔眼を以てワームを引受ける。だが、一人では長くは持たないか。愛の力を回復モードに切り替えたルージュのサポートが合っても中々に耐えきるのは難しい。
「はっ! あっちじゃあ前人未到の大秘境へひと足お先に潜り込めるなんてなァ。
右も左もわからねぇ大魔境、一体何から手を付けたもんか分からねェが! ――アタシに出来ることはたかが知れてらぁな。この身一つしか無ェンなら、それをぶつけるしかねぇだろ!」
ワームの頭の上に勢いよく叩き付けられたのは神器ネアンデルタールである。渋い声が「アッ」と響いた。……どうやらデルさんも予想していなかった突然の攻撃だったのだろう。
トモコ・ザ・バーバリアンは「こいつは倒せる敵か!」と小さく笑う。きうりんを攫っていったヒポグリフは「避けておきたい敵」である。
「おお……? やっと色々操作慣れて来たと思ったらなんか面白そうなことやってるじゃん?
勿論参加する! わーい! アタシ危ないとこ大好き! 狼を追いかけるのも楽しそうだったけど、散歩も良いよね! ――ってわけで行くよ! サーモン!」
呼び掛けられたのはアトランティスサーモンであった。竜の領域がドラゴンをぶつけてくるならばリゼは アトランティスサーモンをぶつけていた。
ホバー移動するアトランティスサーモンに乗って突如として現われるキラーベア。ワームはどうやら振動及び気配に反応して姿を現しているようである。目が存在しないために他の感覚器が発達したのだろうか。
「どうするの?」
「取り敢えずアイツをぶん殴る!」
――ワームならば倒せそうだ。だが、群れを成して餌を探している狼共とその司令官に思わしきライカンスロープはすこぶる頭が切れそうなのが困りものだが……。
トモコはそれでも十分な情報量だと満足していた。そう、『一度死んで、情報を入手して戻れば良い!』――此程単純なことは無い。ワームは三人がかりならば倒せる。狼共はある一定区域まで逃げ果せれば追ってくることも無い。それだけでも十分なのだ。
成否
成功
状態異常
第1章 第4節
「現実で覇竜領域に行けるかわからないから、ROOでの探索は少しでも役に立ちたい……頑張るよー☆」
ふんわりと微笑んだナハトスター・ウィッシュ・ねこ。隠れられる場所が少ないことを考えれば、出来るだけ邁進するのが吉だろう。
「にゃーっはっはっは! 竜の領域! よき難易度じゃ。不足なしじゃのう! 良いぞ!
死に直面してこそ、より刺激的な旅になるというもの! 刮目して見よ! 緋衝の幻影いざ参る!」
覇竜観測所から『冒険』に出掛ける際に玲は堂々と宣言していた。荒野を越えるくらいなら用意だと思っていたが――目の前に聳え立つのは。
「ぬー、登山かー。妾、体力勝負はそこまで好まぬのじゃが」
だが、上空を行く仲間達がヒポグリフにやられていることは確かだ。入り口付近の狼の群れは飢えているのかライカンスロープ主導の下、餌を求めているらしい。塒とは逆方向に進めば『山登り』が始まるが、更に遠回りする事でワームの棲む岩場に到達できるという。
「情報収集は重畳ですね。慎重に、テクニカルに物事を進めましょう。
一先ずルートとして選ぶのは『ワーム』の存在する岩場でしょうか。ライカンスロープを一方が引き付けていれば進みやすそうに思えますが……」
「む、何の匂いじゃ?」
玲の問い掛けにラピスラズリは「狼の排泄物を模した匂いです」とさらりと言った。鎧を汚し、場に於ける異物になるのを避ければ鼻を活かして獲物を探す奴等から逃れるならばソレが一番だ。
「現実側では危なくて行けない場所も、R.O.Oだと安全というかリスポーンしながらいけるんだね。……ニャ。梨尾の思いを汲んで、ここの踏破をがんばるニャ!」
やる気を漲らせるエクシルに梨尾は「正直、この身体でデスカウントを増やしたくはないですが、この前みたいなイベントがどこで起こるか分かりませんし」と肩を竦めた。何処でどんなイベントが起こるかは分からない。政治的な介入が無いとは言え、見過すことは恐ろしい。
「だか、頑張ります!」
耳と鼻を活かすのは此方も同じだ。梨尾は抜き足差し足と静かに動き、エクシルは動体視力を活かしてまじまじと周囲を確認する。
どうやら、ラピスラズリの纏った匂いがライカンスロープ等をやり過ごすことに適していたのだろう。
「狼たちは逆方向だろうか」
「多分、そうにゃ。……あれ? 猫!」
エクシルの傍らでにゃあと鳴いたのはナハトスターの猫だ。猫を召喚し、偵察に放ったナハトスターは「此の儘ワーム側に進むの?」と囁く。
「その予定です。……と、言っても許してはくれなさそうですが! 来ます、ヒポグリフです!」
げ、と玲は小さく呟いた。「群れとか聞いておらんのじゃが??」と首を捻った玲の前を先ずはナハトスターの猫が走って行く。
「システムとはいえ猫が死ぬのも心苦しいけど……これも竜の領域踏破の為……!」
ヒポグリフの視線を誘う。だが、その猫も直ぐに霧散した。ナハトスターは背後の仲間達に小さく頷く。
「ここはボクに任せて先に行けー☆ ……ってことでー!」
「上空から来るとは卑怯なー! じゃが、妾達を倒さずに帰れると思うな!」
ナハトスターと玲が『大げさなほどに大きな音』を立てる。ラピスラズリはヒポグリフが偵察し、群れを成して飛来してきたことから都度、存在する岩陰に隠れた方が良いかと小さく呟いた。
「このまま走るか!?」
「そ、そうにゃ。せめて、次の場所の情報を少しでも……」
「お二人とも、彼方の物陰は見えますか? 人が一人だけ通れそうな……」
ラピスラズリに頷いたエクシルは「進めるかにゃ!?」と梨尾を振り返る。音はしない、匂いもマシだ。
「偵察に行ってくるにゃ!」
「ああ。あの道を越えた情報は持ち帰る――!」
二人は走った――岩陰をぐるりと潜行してワームの住処となっている岩山の『下』に滑り込む。ワームを倒しきればヒポグリフを避けて安全に山の中腹を目指すことが出来そうだ。……と、言っても、険しい山昇りはまだまだ始まったばかり、なのだが。
成否
成功
状態異常
第1章 第5節
「こんな機会が与えられるなんて、冒険者として望外の幸運ですよね。張り切らずにはいられませんね。少しでも成果を上げてみせましょう!」
レリックインベントリ―に詰め込んでいた迷彩マントを身に纏ってカノンは潜行する。冒険者として彼女が最初に行ったのは発見されるリスクを抑えるためのソロでの行軍だ。
ロック鳥にワイバーンの襲来。そうした事を念頭に置くならば空の警戒は怠れ無い。探索技能に冒険技能、スペシャリストとしての矜持を胸にじりじりと行動し続ける。
先程までの情報に寄ればヒポグリフの襲来を避けて、ワームの住処を通れば山道へと出ることが出来るらしい。最初にワームに『遭遇』したチームが倒されたその場所にワームが出入りに使った『穴』が空いているからだ。
(一先ずはその穴の上からロープを張れるように何方かに任せた方が良いかもしれませんね。地上から向かい、ワームを一斉で攻撃してから山道へと合流する。最も人数を運べる方法かも)
カノンが進む一方――ペアを組んで行動すると決めていたイズルは一翼の蛇の囁きにて死の囁きを探していた。
「死に戻り前提の強行調査……『現実』でないからこそできる事だけれど。現実でなくとも《死》に慣れるのはあまり宜しくないけれど、ね」
「危険という言葉に心踊らされる者はそう少なくありません。入口にあたるこの場所ならきっと、踏み入ってしまったうっかりさんの霊もいる事でしょう」
「そうか、『プレイヤー』はMMOゲームとの認識だからリスポーンするけれど、ゲームNPCは留まっている場合もあるんだね」
プレイヤーならば『リスポーンできる』。その言葉に九重ツルギは眉を寄せた。イズルが納得した様子だが、それは何度も死に戻れるからと楽観する自分たちとは違った存在が無数に死んでいるだろうという事だ。
「何度も別の依頼で死に戻った私では頼りないかもしれませんが、せめて目的を果たすまで……イズルさんを守り抜いて差し上げます」
マンイーター対策に用意した河童のミイラ。霊達に調査を行う為に地面に似たカラーリングのマントに身を包み息を潜める。
覇竜観測所が『送り出した』怖い物知らず達は此の地でオオカミに蹂躙され、マンイーターに捕食されて死んでいったのか。そんな彼等から得られる情報は何に殺されたか、だけでもある。
「『羽の生えたワーム』? それはもうドラゴンじゃ……」
「いるんですか? そんなのが……」
「居るみたい。まあ、そうだよね。そいつを倒せば中腹への道が開ける、か」
イズルの呟きにツルギは更に渋い表情を見せたのだった。
「一人で行くのが怖いなんて女性(princess)に言われたら、守ってやるのが男(night)じゃねーの!」
にんまりと笑った崎守ナイトにスキャット・セプテットは「そう」とさらりと返した。隠しきれない美術センスを駆使してカモフラージュを。芸術家は極彩聴覚で『音を見た』
可愛らしく一人で行くのは怖いの、とは言わなかったがナイトがそのつもりならそれに任せておけば良い。
「目的地はサイクロプスの住処だ。避けて通れないなら、仲間のために次につながる手がかりを得ておかないと。
寝床の調査は生き物の生態系を知る上でとても大切なものだ。たとえば、普段は何を食べているのだとか、知能レベルがどれ程だとか……」
「ああ。けど女性(princess)? そこに行くにはワームの寝床を通り抜けなくちゃ成らないみたいだぜ」
にいと笑ったナイトにスキャットは「ならばそっちの調査からだ」と囁いた。先ずはナイトがワームを誘い出す。その間にスキャットがその場に居たカノンと共に先行し、ワームについての調査を行う算段だ。
「こいよ! ワーム共! 無理も無茶もとっくに承知! 道理すらも俺の肉体でブッ潰す! くらえ、社長舞踏戦術!」
叫んだナイトに向けてワーム達が集まっていく。大きさは其れ其れだ。だが、小さめの蚯蚓らしき者が存在するのを見れば――「子供か」とスキャットは納得した。
巣の最奥に巨大なワーム――それは蛇と呼ぶ事が相応しい程の翼の生えた蚯蚓――が息を潜めて待っているのが見て取れた。
「第一の関門」
呟いたスキャットはそれは『上空から偵察する観測所』からは発見できない重要なデータであると小さく笑みを零して。
成否
成功
状態異常
第1章 第6節
「竜の領域……混沌の方では行けないかもだけど。こっちでは、行ってみたい。みゃー」
呟いたのはねこ・もふもふ・ぎふと。淡い白雪の白子猫は尾をゆらゆらと揺らしている。『けもの』であるねこにとって頼りにしてみたいのは『けもの』の導きであった。駄目元でもよいからモンスターの出現を理解出来れば……。だが、モンスター達はR.O.OのNPCだ。サーチする事は叶わないのだろう。
――ミッション開始します。
ねこの傍らで『バーチャイレギュラーズ』として行動を開始するスクエア。カクカクとした動きを繰り返すポリゴンの幻影をデコイとして進む。
出来るだけ『Easyなmode』で進み敵の商才を認識しておきたいが――
「何か来ました。みゃー」
ねこの声にスクエアは「敵勢反応デス」と顔を上げた。宙に浮かぶ小さな■がぐるぐると円を描いている。
姿を現したのはライカンスロープか。塒からまたも餌を探しに来たか。撃退するか、逃げ切らねばならない。ワームの住処に入り込めば彼等も追ってこないが――さて。
スクエアは動くのが早かった。デコイである幻影をライカンスロープに嗾ける。だが、それは所詮は幻影だ。その奥に存在していた無数の■に対してライカンスロープの爪が突き刺さった。
―――ティウン。
効果音と共にスクエアが霧散した。ねこは「みゃ、みゃー?」と首を捻った。あれは、仲間……だった筈だ。
耳を揺らした白子猫を抱き上げる。ねこ達が目指すのはワームの寝床である。待ち受けている巨大なワーム『リンノルム』を撃退するためである。
「本当に本物の覇竜そっくり? どやって情報集めて作ったんだろ?
でも何でもいいんだ、まずは行ってみよ。怖いけど楽しそうだもん!」
今日は『ラダ』はお留守番であるとすあまは周囲の色味の似た外套を身に纏い狩猟本能で隠れながら進んでいく。小さければおやつにされてしまう可能性があるために猫になるのは今回は中止なのだ。
「空も地面も気にしながら進むの大変だーいつもの倍疲れる!」
「ほ、本当です。みゃー」
溜息を吐いたすあまにねこも小さく頷いた。岩と同じ色のフード付きマンとをすっぽりとかぶっていたセララは「ライカンスロープは行ったみたい」と顔を出す。
透視能力とその耳を活かして敵を回避するセララの姿を見つけて同行を申し出たすあまは「それじゃあワームの所にいざー!」とやる気を溢れさせる。
「リトライが可能とはいえ、『ゴール』がある以上、可能な限りのロスは避けるべきか。戦闘はチームで動く者に任せ、まず岩山の情報収集・突破を目指してみよう」
トワイライトシーカーを耳に揺らして真読・流雨は索敵を行っていた。雲のように罠を張る敵、そして『敵意』に引っかからない存在も多く居るはずだ。足跡や糞にも注意を配り、闇のけものは静かに進んで行く。
「……羽音が聞こえる!」
セララの言葉に顔を上げた流雨は「ヒポグリフか」と呟いた。どうやら餌場として認識されている。セララは勢いよくマントを脱ぎ捨てて「こっちだよ!」とライカンスロープが去って行った方向へと全力で走り出す。
不意を突かれたヒポグリフが少し遅れたか。その背中を追いかけ始め、後方より流雨はヒポグリフに対して大跳躍からの大暴れを見せた。
竹槍を投げ、ヒポグリフが僅かに怯む。だが、セララの狙いはそれだけではない。
「MMOの伝統のトレインアタックだー! 喰らえ、ライカンスロープ!」
ライカンスロープと狼の群れに対してヒポグリフの群れをぶつけたのだ。何方も餌を求める者同士。一度の死は仕方が無いが、これで道中が安全になると思えばお安い物だ。
これで道中に突如として狼たちに襲われることもヒポグリフに上空から攫われることも無い。序盤は安心できそうである。
問題はねことすあまに気付き逸れたヒポグリフを倒しきらねばならない。流雨は「避けては通れないか」と呟いた。
流雨に小さく頷いたねこは「僕が相手する……デスカウント増やしてでも……!」と構え、ほわほわの光をその身に纏う。
「ああ、ここで倒してワームの巣を目指そう。倒すべき相手は一先ず定まった」
流雨に応えるように真白い猫が「にゃあ」と鳴く。
「食べるのはソッチだけじゃ無いんだから! 倒して、リンノルムに会いに行くんだからね!」
飛び付いたすあまはにいと笑った。相打ち覚悟――目指すのは『ワームの巣』である。
《システム》
――『横穴』に進入を成功したプレイヤーによって新規ルートが開拓されました。
――エネミーデータが更新されました。
『リンノルム』 脅威度:A
リンノルムを撃破し、ワームの巣出口を利用してヴァンジャンス岩山の山登りを開始して下さい。
ヴァンジャンス岩山にはマンイーター、アウルベアが棲んでいることが推測されます。サイクロプスの住処も避けては通れないでしょう。
成否
成功
状態異常
第1章 第7節
狙いは定まった。さて、その場所まで辿り着く為に準備を続けなくてはならない。ヴァリフィルドは思い悩んだ。
彼は真竜である。自身の姿は竜域でどの様な扱いを受けるのか――竜種にとってのヴァリフィルドは『領域に踏み込んだ部外者』であるのは確かだろう。
周辺の死骸を喰らうて、それを模したアバターを作成するが其れ等が戦闘に使えるわけでは無い。悪食たるヴァリフィルドは動き回る其れ等がモンスターの餌になっているうちに出来る限りの情報を入手したいと考えていた。
眷属はデコイにしかならないが、動くだけでもモンスターの目を引いている。今でも、マンイーター等が動く存在を視認して追いかけ回して居るではないか。
其れ等が目を引いているうちに、フィーネは植物の採取を行っていた。奥まで行く必要は無く、可能な限り目立たぬように心がける。つまり、安全第一である。
「……植物を調べれば、周辺の生態系の詳細を知る事ができそうですし。草も少ない場所ですけれど、今後、得てることで役に立つかも知れませんしね」
フィーネは擦れ違う冒険者達には惜しみなく『目に良いポーション』や『ポーション(オリジナル調合)』で支援をすると決めて居た。奥へと向かわぬ分、自身の調査に協力して囮となる彼等を支援しようと決めていたのだ。
「情報収集するんだよね? じゃあ私はデコイになるね。丁度自爆スイッチもあるし、そっちに敵が行く前にショートカットボタンを連打するから!」
フィーネに協力を申し出たのは三月うさぎてゃんであった。スカートを揺らがせた偶像(アイドル)はモンスターの視線を集めてるのはお手の物だとシルバーパラッシュをぎゅうと握りしめる。
――因みに、彼女はどれだけ物理的な怪我を負ったとしても笑顔のままである。死ぬまで偶像は偶像たれとでも言うようにフィーネの前をうろうろと過ぎてゆくヒポグリフを引き付ける。
手負いのヒポグリフを前に、道中の道を開くヴァリフィルドとて同じであった。
竜、と聞いたがまだ竜は見えないか。コーダは竜と聞けば行かない訳にはいかないだろうと心を躍らせた。今の実力では足りないだろうが足りなければ得れば良い、それだけである。
「さて、俺と遊ぼうか!」
コーダは我先にと前に出た。フィーネが毒草が生えている地点を探し、それに対する耐性を持つモンスターを示唆したその場所を目指したのだ。広々としたオープンフィールド。耐久戦を行うとしても『竜の領域のモンスター』は竜種や亜竜でなくとも相応に強い。
ゲームだからこそ死ぬ恐怖を持たぬまま死ねるのだと笑顔を浮かべるコーダの周りには紅と蒼の光が舞い、蝙蝠の翼が揺れる。
「やれやれ、俺も雑魚(こんなの)と戦わなくっちゃ為らないらしい」
餌を待つように、岩場に潜んでいた麻痺毒を持ったオチュー。伸び上がってくる蔦から逃れながらのコーダの耐久戦の開始である。
「どの地にも強大な捕食者というのは居るものだけど……この地にはどんな子がいるのか、実に愉しみだね」
ぺろりと舌を見せたパルフェタムールは慈愛と悪意の白翼を揺らした。同様に揺れるのは慈悲と独善である。
彼女は隠れて進むことが出来ないならば悠々と、堂々と開き直って進むと決めていた。見慣れぬ景色と言えども一面の岩山は寂れて居るようにも感じさせる。殺風景と言うほどでもないがモンスターが潜んでいる散歩は中々にデンジャラスだ。
相手取り戦うコーダとは対照的にパルフェタムールは出来る限り逃げようと考えていた。捕食者である存在を仲間達から引き離すように走り続ける。
無論、フィーネの植物採取の一助になるのは確かだ。それと同様に死ぬまでの間に様々なモンスターを目に焼き付けておきたいと考えたのだろう。
狼たちに、マンイーター、飛来するヒポグリフに岩の間に隠れ潜んだオチュー。観測されたワイバーンがいなくともモンスターはオンパレードである。
勿論、パルフェタムールは『美味しそうな匂い』がして居た。蜂蜜やバニラのような甘い匂い――だが、その匂いは救い無き死を与えることなどモンスターは知る由も無い。
三月うさぎてゃんはワームの巣を目指す仲間達を先へと進めるために盾を買って出た。手には勿論自爆装置だ。死なば諸共、アイドルオンステージである。
「先に行ってよ、私の大好きなアリス(ファン)たち、大切な仲間たち。
仲間を救う光はここに在り! IDOL舐めないで。……聖なる存在が殺傷をするな? 天使や神が殺した人数知らないの?」
成否
成功
状態異常
第1章 第8節
レイティシア・グローリーは走っていた。竜種と言えばリヴァイアサンがイレギュラーズの中ではよく知られているが彼女は未だ会ったことはない。
故に、興味深い存在であった。地道にやっていくしかないか、と呟くが直ぐに首を振った。『ロールプレイ』は忘れるべからずである。
「ティーナさん、それでは行ってきますね」
拠点より出発するときにレイティシアが使用したのは『探し人is何処?』と名付けられたアクセスファンタズムであった。漠然と何方にティーナがいるのかを把握することが出来る能力――つまりは、拠点の方角を把握していられるという事だ。
拠点である覇竜観測所の方角から何方の方向に、というのがしっかりと把握できる。モンスターを引き付ける仲間達の間を掻い潜り、レイティシアは走り抜けた。
「いやはや、死に戻りが許されるのは助かるよね、そんじゃあ行こうか。――好奇心、心の行くまま。最奥の『誰か』に会いに行こう」
アクアマリンの角を持ったSikiにとって興味深かったのは『クエスト目的』に『****』『***』との謁見を行う事と記載されていたことだ。
最奥に誰が潜んでいるかは分からないが入り口付近のエネミーを確認しながら、ゆっくりと進んでゆきたい。そして目指すはワームの住処である。
活用できるスキルを有するわけではないとダブル・ノットは考えていた。故に、ヒーラーである彼は死に覚え前提のチャレンジとして囮行動を取る事にしていた。
つまり、辻ヒーラーをしながらモンスターの囮になり、逃走するという戦闘スタイルだ。ダブル・ノットはSikiにパッチワークを施し「頑張れよ」と手を振る。神聖な場を作り上げて、索敵や先を目指す仲間達を強烈に支援すると決めていた。
「...…竜か。この世界で唯一俺が意味を見いだせるとすればここしかあるまい。
さて、混沌で観測できていないというのに此の仮想が果たしてどれだけ現実に近しい者なのかは甚だ疑問が残るがな」
そう呟いたCyberGhost――だが、彼の求める竜がリヴァイアサンなどに似通っていたならば、勿論『この場に居るのはその類似品』である。
実力が何処まで似通っているかは定かではないが、さて。ダブル・ノットの支援を受けて進むCyberGhost、その傍らにはかぐやの姿も見える。
レイティシアのように走り抜ける訳ではないがかぐやも身ほどの黒筆を抱え上げ、フィールドに直接ヒントコメントを残すと決めていた。
「ソロでの踏破がほぼ不可能。いかに皇族に情報を与えるかが肝というわけですわね。
フィールドの難易度が上がってくる要因の一つは殺風景なこと。何処から敵が姿を現すかも分かりませ者ね!」
モンスター種であればデメリットは無いだろうと様々な情報を書き示す。例えば、レイティシアが補足しているティーナの居場所、つまりは『観測所』の位置関係。次にモンスターの群れの位置や出没スポットを書き加えていく。
モンスターから姿を隠しては、山を目指す。横道に逸れず狙うのはワイバーンの出没情報だ。
CyberGhostはワイバーンを目指し「悪いな」と呟いてからダブル・ノットと入れ違う。ダブル・ノットが『鬼ごっこ』をする相手はマンイーターだ。
逃げる前にパッチワークでかぐやとCyberGhostを出来るだけ前に進ませる準備は完了。SIkiはそろそろワームの住処である横穴についた頃だろうか……?
前哨戦でヒポグリフと狼の交戦が起こったことで幾分と進みやすくなったが、騒ぎを聞きつけて飛来するものは多く見える。そう、例えば――CyberGhostが熱望したワイバーンの影だ。
ワイバーンの影あり。
そう絶壁に書き示したかぐやがあっと息を飲む。CyberGhostもそれは同様だ。ワイバーンは亜竜だ。波のモンスターとは違った攻撃が彼女等へと降注いだのであった。
成否
成功
状態異常
第1章 第9節
――かみだよ。いつも見ているよ。そう正に今この瞬間も。
そう言ったのは神様である。神の威風はその身を自由自在に躍らせる。その目は遠方を見通すことが出来る。
「準備には程良いだろう」
そう宣言する神様が索敵を務めるのは黒狼隊である。若干名誰か分からない存在も混ざっているというのはマークの談だが、ソレを抜けば現実と大差は無い。
「せ」
「ミルフィーユ」
「……トルテさんと一緒に、黒狼に参加して調査に行くのです!」
本名禁止だと首を振ったトルテはそわそわとした様子であった。竜の領域に緊張していると言うよりもアバターを見せることに途惑っていると行った調子だ。
「俺この姿で黒狼の皆に会うのすげー恥ずかしいんだよな……」
「……? 前に一度会ってるから、大丈夫なのですよ!」
ミルフィーユの自信満々な頬をむにむにと弄ってからトルテは溜息を吐いた。その外見は雇い主+飼い犬だ。尾がモフモフしていることを喜ぶミルフィーユは頬をむにむにした後に何事も無かったように仲間に追従してゆくトルテに「い、今のは何だったのです!?」と慌ただしく手をぶんぶんと振ったのだった。
一見して穏やかな行軍。だが、この場所が竜の領域である事には違いは無い。
「それなりに大所帯となったが心強い仲間が共に来てくれて嬉しい、今日は頑張ろう」
そう告げたのはポメラニアン――ではなく、ベネディクト・ファブニルである。リュカ・ファブニルはと言えばデザストルを模したエリアであることに心を躍らせて周囲を物珍しそうに見回っている。物見遊山が出来る程安息の地では無いが、この大人数ならば入り口付近のモンスターはクリアできそうである。
「やはり兄上は思う所があるか?」
「そりゃあそうだぜベネディクト! 覇竜領域はガキの頃からの憧れだからな!」
リュカにとっては夢の地だ。彼の子供のような瞳の輝きにベネディクトは良かったなと大きく頷いたのであった。
「行くぜ! 憧れの竜目指して進軍だ!」
神様が上空より索敵を行い、地上では仲間達が迎撃の準備を行っている。相対することになるのは先程、狼たちの元にトレインされて『痛い目を受けていた』ヒポグリフの群れか。
「数で優れば兎も角……」
上空から攻められるのも中々に困りものだ。マークはと言えば死に戻りを前提としてもリスクとリターンを天秤に掛けるならば、どんな小さなメリットでアレ、そのためにリスクをとるという重要な指針を仲間達へと伝達していた。
マークの予習は先行した仲間達の情報である。マップ確認では未踏の地であるために奥は分からないが仲間達が進んだ場所を俯瞰することは出来そうである。
「ん。竜、楽しみ。ジェック。盾、頑張る。よろしくね。……見たことある人も。もしかして、そのまま?」
首を傾いだジェックに「俺のことか?」と微笑んだのはダテ・チヒロ。ポリゴン調の彼にぱちりと瞬いてジェックは「ん……?」ともう一度首を傾いだのだった。
「死に戻り前提。なら、守るより……前に出た方が良い?」
「そうだな」
トルテがひめにゃこの肩をぽんと叩く。
「新MAPですか! テンション上がりますね! 是非とも最初に踏破して名を刻んで行きたいです!
皆さん今日はひめの為にお集まり頂きありがとうございます! ひめの尊い命を守りながらガンガン前進しましょう! よろしくお願いします!
――あ、ちょっと前に押し出すのやめて貰って……いや装備は硬いですけどひめですよ!? くそ、ヤメロォ!!」
ずるずると前線に押し出されていくひめにゃこ。纏う装備の名前は『ゴールデンプレミアムラグジュアリーアーマー』
実に高貴で、実に高価そうな防具である。ちなみに、その謳い文句は『時価数億ゲーカの超高級アーマー! 弱点は誰も買ってくれないこと!』
「ひめの高級アーマーが傷付いたらどうするつもりですか!? ちょっとー!?
ひれ伏してくださいよ! ひめですよ!? はぁー! やっぱクソゲー!!!!!!」
叫ぶひめにゃこが誰なのか分かったようにジェックはこくんと頷いた。前に出てヒポグリフを引き付ける。
リラグレーテはタントが引き付けるヒポグリフ達の前へと飛び出して『絶対貫通』の空想弾を放った。不屈の闘志は『メメント・モリ』の心を忘れることは無い。
「空想は鍵となり、仮想覇竜領域を拓くまでに至った……と。ふふっ、先輩もそりゃあワクワクしちゃいますよね?」
にまりと微笑んだリラグレーテ。当座の目的は踏破と情報収集だ。取り敢えずは心躍るままに進む為にはモンスターの前に躍り出るのだって悪くはない。
――未知を開拓するのはいつだって、欲望を胸に歩むヒトの探究心なのですから!
リラグレーテが関知するのは欲望だ。此の地で生きる以上には過酷な生存競争。なればこそ、高らかに示された『それ』は何処から来るか。
「敵は、なんだか普通? 見慣れた感じなのね? 混沌では立ち入れない地域だと聞いたけど……ほわぁ……これはヒポグリフ?」
不思議そうに首を傾いだタイムは探索中の仲間を護る為に挑発し、すごいぱんちを放つ。
「あ、今日初めましてのみんなはよろしくー! 折角だしフレいいですか?
片っ端からフレンド登録申し込んでるから誰が誰だかイマイチ把握できてないけど、まいっか」
ふふ、と笑ったタイムは手負いのヒポグリフにぱんちを連打しながら連携する仲間達が誰であるかの判断に困っていると肩を竦めた。
「マークさんやルフランさんみたいなアバターならすぐ覚えられるのになぁ~。チヒロさんも分かるんだけど何か…なんだろ、違うハードからinしてます?」
「よくぞ聞いた! 『とんでもないレベルのフィットネスができそうだね!』
おっと、自己紹介がまだだったね。俺はダテ・チヒロ、孤高のフィットネスマンさ。よろしく!」
「あ、はい」
――孤高のフィットネスマンと言うことは、なんだか違うハードなのかも知れない。只管にフィットネスを行うチヒロ。
空気砲をぼこぼこと打ちながら、走ってゆく彼はジェックの元へと集まっていたヒポグリフに対して強力な腹筋ガード。
「うおおおおおお! 持ってくれよ俺の身体! これがインターバル無しのマウンテンクライマーだああああああ!」
「す、すごい……」
呟いた現場・ネイコは仮初めの世界だとしても未だ踏み入ったことの無いこの場所でもフィットネスを行い続けるチヒロの強かさに驚愕していた。
「ううん、今はフィットネスに驚いている場合じゃ――」
「どうだい皆! 俺の華麗なフィットネス、ちゃんと記録してくれよ!」
「――ないよね! いつかの現実での予行演習って事で、気合を入れて頑張ってこー!」
ネイコは『記録』してくれない!
ルフラン・アントルメは「ひゃー! ここが覇竜!」と尾をふわふわと揺らしていた。小さな栗鼠になって横道を探索するルフランはタイムが「ストームナイトさんは誰かな~?」と見詰める視線に同じように「誰だろー?」と首を傾げた。
「黒狼隊。そしてそれを率いるベネディクト・レベンディス・マナガルム卿。お噂はかねがね。高名な諸君らと共に戦えること、名誉に思う。その名を汚さぬよう、力を尽くそう!」
「誰かな~?」
「誰だろう~?」
二人の視線を物ともせずに前進する白銀の騎士ストームナイト。その傍らで自己紹介か、と倒れたヒポグリフを見詰めていたねこ神さまは立ち上がる。
「ねこです。よろしくおねがいします。ROO内で会うのは初めてですね。
判りやすい人、判り難い人、判らない人、色々いますね。ねこはどうです? かわいいでしょう?」
「ええ、愛らしいです」
『明らかに外見が同じ』側であるリュティスにねこ神さまは満足げに頷いた。
「新マップを探検です。探検、好きです。散歩も好きですよリアルより先に行けるというのは面白いですね」
「現実とは違うとはいえ、興味はありますね。御主人様の邪魔するモノを排除しながら進むと致しましょう」
リュティスも興味があるのか、と頷いたベネディクト。リュティスは音や気配を頼りに周囲を探る。進むべきはルフランが『道』を探す支援にも為るだろう。
「ルフラン様、そちらの横穴は気をつけてください。何かの気配がします」
「ヒェッ」
びくんと肩を跳ねさせたルフラン。穴の中にはモンスターが潜んでいる可能性が高いのだ。一行が目指すべきはワームの巣穴だ。其方へのショートカットを探していたルフランは「此処から一気にワームの巣穴とか……無理かなあ?」と呟いて、地面が盛り上がったことに気付く。
「ひえ」
突如として足下が盛り上がる。慌てたルフランを抱え上げたネイコが構え、リュカが前線へと踊り出す。
地中より顔を出したのは物音を聞きつけた蜥蜴である。大蜥蜴の舌がしゅるりと伸びて小さなルフランを掴もうとするが、リュカは勢いよく電撃を走らせた鈍器を叩き付ける。
「こいつぁたまらねえな! 入り口付近でこの強さかよ!」
神様は直ぐに降り立ちネイコとルフランを庇う様に立ちはだかった。
「やはりコレばかりは……どうも見逃せないようだ」
盾となるマークが構え、飛び込んできた大蜥蜴を受け止める。肌にびりびりとした気配が走る。――毒か。ルフランの回復が施されるが、それまで『数の力でぼこぼこ』していたジェックにも疲労の色が見え始める。
「耐える」
「ああ、頑張ろう! フィットネス!」
走るチヒロの空気砲を喰らうように大口開けて大蜥蜴が飛び込んでくる。尾がびたん、と音を立て勢いよくひめにゃこ目掛けてスピンした。
「ぎにゃー!?」
「なっ……中々知性があるな……だが、この白銀の騎士ストームナイトを倒せると思うな! 喰らえ――ゴッドストームクラッシュ!」
轟雷剣『ストルムガング』より放たれた一撃に大蜥蜴が怯む。情報を集めて、仲間達が全員閲覧できるように『覇竜Wiki』の作成を狙っているストームナイトは大蜥蜴の情報も必要であろうかと考える。
屹度ルフランを餌であると誤認して襲い掛かってきたのだろう。狙いが彼女にばかり向いて居るのはサイズ感か。
「ルフラン、食べられてくれるなよ!」
「ひぃ……」
ベネディクトの呼び掛けにルフランの肩が竦められる。リュティスは「如何なさいますか」と静かな声音で問い掛けた。
「リスポーン前提の戦いとは言え、最初から死ぬ気で戦う心算は無い! ――行ける所まで皆で進むのみだ!」
「ご主人様がそう仰るならば」
地を蹴ったリュティスが果敢に攻め立てる。ねこ神様は影ねこと、黒ねこ、シマねこ、白ねこたちに他の敵を索敵させながら、只管にスキル連打を続けていた。
「範囲攻撃に注意し殴りまくりですよ。ふんす」
「ク、クソゲー!!!!」
「生きたデコイさん、行かないで下さい」
「だれがデコイさんですか、こんな所、居られるか、ひめはさっさと、ひぎゃー!?」
べちん。
轢かれていったひめにゃこを一瞥してからリュティスが地を蹴った。数を活かして別ルートを開拓しながらワームの巣穴に向かっているが、道のモンスターは数多い。
其れ等の前に躍り出て、不吉な蝶々を指先侍らせるリュティスに合わせて、ネイコが放ったのはヒロインの得意技である。
「――喰らえ! プリンセスストライク」
殴りつけたネイコに「今ね!」とタイムは飛び出した。
「敵を纏めて引き付けt ……ああああちょ、やば、多すぎ! まって! タイム! ひとまず全力移動で逃げてる間に誰か倒してえええ!!!」
大蜥蜴に合わせて、残っていたヒポグリフまでもがタイムを狙う。「まあ」と呟いたリラグレーテの虚なる光が貫き、「死に戻りなー。ゲームでは経験あるが、自身が喰らうことになるとか思わねーだろ?」と呟くトルテが支援する。
「……敵がめっちゃ強いのです!? ROOじゃ無かったら大変な事になってるのです!
あのトカゲ、目潰しできそうなのです! さっき、慌てて砂を掛けたら怯んだのです!」
叫んだミルフィーユに良くやった、とリュカは闘志を漲らせて唇を釣り上げ――
「だがな! こんなところで止まってられねえんだよ!」
大蜥蜴を沈黙させた。
荒野を進む黒狼隊は出来る限り前へと進むことを心がけた。何度かの戦闘。その一つ一つが過酷ではあるが、楽しみでもある。
彼等がワームの巣穴に辿り着いた時、確立された『別ルート』は数の暴力による安全性がある程度確保されたと言えるだろう。
成否
成功
状態異常
第1章 第10節
「実質的には威力偵察ですね。出来るだけ情報を落として死ねるようにしましょう」
ファン・ドルドが行うのは凄腕だったり悪名高かったり、色々と曰く付きなチャット仲間達とのコネクションを使用した情報伝達である。
地形のマッピングは集まったデータを元に蒐集。レーダーマップで可能な限りの脅威情報をスタート位置から把握し続ける。
その傍らで不遜な表情をしていたルチアナは「私達のいた世界にも竜がいたわね、そういえば」と呟いた。
グレイシアにとって、ルチアナの言う『りゅう』はモンスターである。竜と言えば『前の世界』では見ることが叶わなかった存在であると彼はぽつりと呟いた。
「生物としての龍は吾輩も遭遇した事は無いが…モンスターとしての竜なら、配下に居たはずだ」
その言葉にルチアナは顰め面を見せる。『その世界』ではルチアナ自身は『ルアナ』に融けて勇者の力を与えるだけであった――だと、言うのにどうしてこんな事になったのだろうか。
「残念ながら、召喚前の『ルアナ』の力じゃアナタ配下の竜は倒せなかったわね。
……さて。見えたわよ。『魔王様』のお手並み拝見と行きましょ?」
「仮想世界で、魔王も何もあるまい……が、少しは成果を持ち帰るようにするとしよう」
彼等が向かったのはファン・ドルドが『安全な通路ではあるがワームの巣穴に向かうならば通り抜けなくては為らない』としたエリアである。
待ち受けていた手負いの狼を相手取るルチアナ、グレイシア、そしてファン・ドルド。
「私達が相手にするわ。あなたは情報収集に行っていらっしゃい」
「ええ、そうさせて頂きましょう。丁度、仲間が追い付いたようですしね」
ファン・ドルドが物陰でやり過ごすことを選択する傍らに二人の『花嫁』がやってくる。
「怪物らを人体錬成の材料にしたらどうなるのでしょう。めちゃくちゃ強い旦那様が作れるのでは? 材料サンプリングの為にも注意して進みましょう!
ほら、純恋、丁度良い『材料』がありますよ。皆さんと一緒に倒しましょうか。か弱い乙女ゆえ、協力できるのは嬉しい事です」
「進めど餓死でサクラメントに戻されるなど笑止。
復活前提とはいえ食料確保もしたく……そういえば現実のワームは食べられますね。プロ花嫁として彼奴を料理してやります! ワームの元へと向かう前に前哨戦ですね!」
純恋と澄恋。互いに『すみれ』の二人は狼を聖女&魔王パーティと共に悠々と破る――が、次に待ち受けるは逸れたワームか。
「さあ、調理しましょう、澄恋!」
「構いませんよ、純恋」
囮の『わたし』と呼ばれた澄恋の元にずんずんと迫ってゆくワーム。菫蘭之交が存在すれば、自身らの生死は把握できていると、攻撃の手も緩むことは無い。
「向こうのわたしが死ぬと現実のわたしが死ぬみたいでちょっと怖いですね……ですが、ワームを調理するのはプロ花嫁の仕事!」
マシュマロみたいにならないかと告げる純恋。そしてワームを受け止め続ける澄恋は一時的にリアルの姿を見せてから、受け止め続ける。
共に攻撃を重ねるルチアナはグレイシアの背後から攻撃を重ねていたが『全てを受け止める花嫁』のお陰で戦いやすかったのだろう。
「さっきの彼は何処に行ったのかしら……?」
ルチアナの問い掛けに、『片方のわたし』が死んだばかりの純恋は「マッピングと仰っていましたが」と首を傾いだ。
三人は巣穴前へと辿り着く。もう一人の澄恋は情報を共有すれば戦線に復帰できるだろう。さて、穴の中に潜入を待つ仲間達と合流だ。
――一方、ファン・ドルドは巣穴ではなく蕭条の選んだ山道を進んでいた。先の道を確認するのも必要な事である。
「こんにちはー。ここは竜さん、モンスターさんのお宅ですね。おじゃましても良いですかー? ……ダメそう。
すにーく、すにーく。もはや虚無の心。隠れながら進みます……すにーく、すにーく」
息を潜めて岩山突破のためのヒントを集める蕭条。ファン・ドルドの索敵能力があれば出来るだけ山を登っていくことは出来そうだが、山を進むほどに身を隠せる位置が無くなっていくのだ。
「あ、見て下さい。洞窟発見とは良い感じ。かくれるにはもってこい。では、れっつごー。ふっふっふ、死にとうない」
「いいえ、ですが中は敵が居そうですよ? そして隠れるところの無い現状、後方から急接近する敵影があります」
「ええ……」
しょんぼりとした蕭条はそれでも人には進まねばならぬ時があるのだと「しにとうない」と呟きながら後方を振り向いて――「ワイバーン」と呟いたのだった。
成否
成功
状態異常
第1章 第11節
「まさかこっちで先に覇竜の奥深くに入ることになるなんて! 楽しみだなあ! どんなとこかな?
すごい宝物があったりするのかな? 竜とお話とかできたりしちゃうのかな!? それを確かめるためにも、まずお邪魔虫さんにどいてもらわないとね!」
やる気を漲らせたのはアレクシア。長く伸ばした髪がふんわりと揺れている。心を躍らせた彼女とは対照的にエイル・サカヅキは「マジで?」と問い掛けた。
「マジ覇竜行くの? うーわ。まーあの赤蒼コンビの因縁の場所らしーし、ちょっくらカチコミ行ったろ!
おーいそこの4人、アタシも混ぜて!」
「うん、よろしく! じゃなくて、良いわよ。一緒に行きましょう」
微笑んだ吹雪を一瞥、そしてアレクシアとスティアを眺めてから――エイルはシラスの事は外見からシラスだと認識しなかったが、二人ばかり其の儘であることから――「……あ、やべオール知り合いの雰囲気」と聞こえないように呟いたのだった。
「未知の領域デザストル……一体どんなことが待ち受けているのかな?
この目で確かめる為にも頑張らないとね。絶対に踏破するぞー!」
えいえいおー! と拳を振り上げたスティアに吹雪は「現実でもよくわかってない場所なんだよね」と淡い青色の瞳をきらりと輝かせる。
「そんな場所を冒険出来るなんてなんだかワクワクして来ちゃうね! どんなものが待ってるのかな……。
はっ、こほんこほん。その為にもまずはリンノルムを倒さなくてはいけないわね。かなりの強敵のようだし、油断せず行きましょう」
ロールプレイをついつい忘れがちな吹雪なのであった。
「水神様みたいな竜と会えたらいいな」
そう告げたのは『カッコイイアバター』を作成したシラスである。頼まれなくても竜域踏破を目指すと意気込んだ彼等が辿り着いたのはリンノルムの巣穴だ。此れまで、仲間達が開いた道で容易に辿り着く事ができたが、さて――
「リンノルム、あれか」
翼の生えた蚯蚓と言うしか無い。シラスが指し示したソレをスティアは「倒そう!」と精霊達に声を掛け、戦闘に備える。
一面の銀世界の中で、吹雪は鮮やかなる白を身に纏う。エイルは「サブイボなんですけど……」とリンノルムを見据えて呟いた。
「そんじゃまー! 行きますか! MK5(マジで・キレる・5秒前)なんですけどー!?」
勢いよく殴りつける。接近するエイルと同じく前線へと飛び込んだスティアは散華を一気に引き抜いた。
「いくよ、月下氷刃――叔母様から学んだ必殺技を受けてみよ!」
だが、敵はリンノルムだけではない。最奥で潜んでいたリンノルムは敵襲に備えワーム達をイレギュラーズの元へと向かわせるか。
其れ等に向けてアレクシアが打ち込んだのは荘重たる雲を纏わせる如き一撃。出来る限りリンノルムに狙いを定めたパーティーは反撃を怖れることは無い。
五人揃っての攻撃、そしてリスタートを心がければリンノルムは恐ろしい存在では無いのだ。
「ぶよぶよしていて嫌ね……」
呟いた吹雪にエイルは小さく頷く。効いてなさそうに見える己の攻撃は連携のためにあるのだと手をぶらぶらと振って。
「一発が軽い? あーねわかってないなー、アタシが殴りまくればその後の攻撃がスマヒってやつ!
それにこっちは死んでも削り続けるけど、そっちはAP切れとやらあるっしょ? ならこっちのもんだわ!」
「――そうだよ!」
地を蹴った。SSA(スティア・スペシャル・アタック)を弾き飛ばすようにリンノルムの咆哮が響く。
びりびりと身体を支配するそれがスティアの身体を壁へと叩き付けた。
「ワームがなんだ、俺はドラゴンだぞ!」
シラスがリンノルムの口の中へと特攻していく――『ごくん』
「あ」とアレクシアが小さく漏らした。少しずつで良い。リンノルムを消耗させればいい、が、仲間が『食べられる現場』は中々お目にかかれない。
シラスは腹の中から焼いてやる、と決死の思いで獄炎をリンノルムへと放ったのだった。
それに倣ってスティアとエイルが飛び込む。吹雪は「体勢を立て直すよ!」とアレクシアに声を掛けた。
成否
成功
状態異常
第1章 第12節
「リンノルム……。
ううん、僕、こう言う手合いは先に予習してから攻略するタイプなんだけど……ま、折角のフルダイブ、情報無しで当たってみるのも面白いよね!」
そんな気分でやって来た指差・ヨシカは可愛らしくキャラメイクした美少女フェイスを歪めていた。
「――なんて思っては居たのだけれど……」
いざ目の前に立ったのはでかい蚯蚓である。しかもファンシーに翼付きだ。キモい! と思わず叫んだヨシカの声に桜がつい笑みを零した。
「覇竜領域を模した未知の領域の踏破……なんだかワクワクしちゃうね!
それにしても……この巣穴はワームだらけ。抜けてリンノウムにっていっても囲まれちゃいそうだね」
大丈夫かと問うた桜にヨシカは首を振った。五感がフルに反映されているから最早ゲームと言うより『リアル』である。リアルすぎて蚯蚓が地面を引き摺るように進む音さえ感じられる。
「けど、怖がってるだけじゃゲームは楽しめない。何より早くバグを取り除いてなじ……ごほん、皆安心して遊べるようにしないとだしさ!」
ワーム達へと向けて、調査を兼ねてヨシカは攻撃を重ねる。ワームを相手取り、リンノルムへの攻略方法を見出そうとしたのだ。
「今日もご安全に……無理じゃない!? これ!! キ、キモい!」
■■■■■――リデルは「はいどうも!【P-Tuber】のアリス、もとい今はリデルでやって行こうと思いますにゃ!」と叫んだ。
「今回は皆の竜域踏破を実況します! 位置取りは状況を把握出来て危険すぎない程度な、サクラメントからやや戦場寄りにゃ。
魔法少女がキモち悪いと叫びながら蚯蚓を切り刻んでますにゃ。あんまり騒ぐと蚯蚓が来そうな気がするし……位置取りは慎重にいきますにゃ!」
リデルの実況は観測所へと届けられていた。
その様子を頼りにエイラは情報を得るのを重視してヨシカを手伝いワームの弱点を探る。ぶよぶよとしたその肉体は誰かがリスポーンしてもダメージは其の儘である。つまりは、何度も攻撃を重ねていればリンノウムとて倒せない存在では無いのだ。
「戦闘終わったらぁその時点でリンノルム全快とかぁ、自動回復やぁ回復スキルあるかもだからぁ……。
けどぉ、なさそうでよかったねぇ。ワームにも、バッドステータスは全部残ってるみたいだしぃ……」
首を傾げたエイラが纏ったのはちくりと傷む海月の毒である。風に乗って彷徨うように、くらげ型の火が当たったワーム達はエイラを狙い飛び込んでくる。
道中を退けるべく、スイッチは夜闇の梟で先行しながら、ターゲットスコープを起動。目標確定、そして放ったのはブースト奪取。
スラスター起動。空中を躍り出るように飛び出す。
剣を振り下ろせばワームが驚いた様に身を捻った。桜が直ぐさまに距離を詰める。ワームを睨め付けた羅刹眼。
その先に待ち受けたリンノウムまで一直線だ。だが――「か、固い!?」
「まだ序盤なのにこんなに強い敵が出てくるって間違ってると思うんだけどー!」
叫ぶ桜の声に反応したように、リンノルムが向いた。まずは、聴力で感知か。
そして――物音を立てずに行動していたスイッチにはリンノルムは気付かない。
(暗闇で生きてるから眼が必要ないんだ。ということは、音……それから大きな気配!
けど、人程度の大きさならリンノルムは小さすぎて気付かない……なら!)
桜は「コッチだよ!」と叫んだ。リンノルムが勢いよく桜に向けて飛び込んでゆく。びたん、と音を立てた肢体が地を打った。
だが、がら空きになった身体へとスイッチが勢いよく剣を振り下ろす。先ずは一撃。
ぶよぶよとしていて固いが、確かにダメージに繋がった。
「ボス戦はゲームの醍醐味だからね、俺にも一枚かませてほしいな。ここはまだまだ通過点。楽しんでいこう」
成否
成功
状態異常
第1章 第13節
「ただ進むだけでいいのなら、私はそれなりに行けるとは思うんだがね。まあ、そういう意味での力試しさ」
呟いたのはミーナ・シルバー。気配消失のスキルは可能な限り己の気配を消し去ることが出来る。そのデメリットは『ゆっくりと歩く事』だ。
その分、足下に気をつけて進めば良い。木の枝を踏み締めることが無きように。一歩一歩。小石の一つでも気をつけて。
物陰に隠れることも忘れない。一度、モンスターをやり過ごすがソレだけでは難しいか。
「っつーても……よっぽどやべーやつらばっかりなんだろうけどな」
死神の瞳は生命力を『大凡』見ることが叶ったが――成程、危険であるのは確かなようだ。
先行していたWYA7371は隠密行動を行っている。彼女の目的はこれまでに得られた敵勢対象の情報収集だ。
ヴァンジャンス岩山では竜種の影は無いがその代わりに亜竜の飛行が幾重も無く確認されている。
(亜竜の封殺は……いえ、愚問ですね。それよりも強い竜種の事が気がかりですが――)
WYA7371は亜竜狩りを目的としていたチームを振り返る。『山を正直に登ろうとすると飛来するワイバーン』――それはこの道を通さぬとでも言うかのように。
「少しでも前へ、前へ。さあ皆様、Step on it」
囮役として飛び出したWYA7371の背中に浮かぶ砲装群。前方を薙ぎ払う、点火まで残り3、2、1――Fire!
猛禽の如くエネルギーバレットが打ち出されていく。白い煙が揺らぐ。
その様子を視認してから天狐は『絶対幸運領域(ここ)だ』と言う場所から飛び出した。リヤカーうどん屋台『麺狐亭』が鋭い勢いでワイバーンへと飛び込んでゆく。
「山を登ろうとすると上空からワイバーンが飛来する。ソレを避けるならば横穴を進み山の中腹へ、成程のう!」
放つせつなさみだれうち。ご丁寧に一発一発バグった連撃(一撃しか入らない)にワイバーンの喉がぐるりと鳴った。
「ここをライブ会場とする!!」
堂々たる宣言を行ったのはトリス・ラクトアイス。赤い髪をふわりと揺らしにんまりと浮かべた笑顔は明るくて。
竜域の情報は餌だ。値千金の価値があるこの場所に踏み入れた自分たちは――……餌になりかけていた。
四肢爆裂、囮を務めたWYA7371が炸裂するその背後で目立ったアイドルとしてライブを行うトリスは危惧していた。目立ちすぎるかも知れない。
地が響く。地中より飛び出した大蜥蜴。それも『竜』ぽさは感じさせた。
「リュートも竜ッス! 負けないッス!」
トリスのステージから高く飛び上がって「ぎゃうー!」と鳴いてみる。ワイバーンの奇怪な鳴き声は耳を痛め付けるかのように。
ぴょこんぴょこんと跳ね上がる。色とりどりのブレスを放つ、だが、かすり傷しか付かないか。
お返しだというようにワイバーンが放った攻撃がリュートを掠めるだけで肌が勢いよく焼けた。強い。だが、トリスは直ぐさまにヒーラーとして大一番。
「いくッス!」
「ワイバーン、うどんにしたら『ローリンさん』が喜んでくれるかも知れませんから……頑張りましょうね?」
くすりと笑ったアカネは白のワンピースを揺らし、空を踊る。アカネの有する危機感知(他)のスキルが大蜥蜴による不意打ちを告げている。
「リュートさん気をつけて下さい!」
「ぎゃうっ!?」
地中よりぼこりと飛び出した。直ぐさまに展開するのは茜傘。ワイバーン――強すぎるのだ、それは。
現実世界でも見つかる度に苦戦を強いられた。四人はが与えたダメージで、ワイバーンは引くよりも先に此方を排除することを選んだのだろう。
少しでもダメージが蓄積しているのを喜ぶべきか、明確な敵だと認識されたことを悔むべきか。
匂いと衝撃に反応する大蜥蜴を視認していたミーナは「ワイバーンはヤバすぎるぞ!」と亜竜を狩りに来た四人に声を掛ける。
「うどんにはできるかの?」
「うどんになる前に此方が餌になりそうですね? うふふ」
アカネがゆったりと笑うが――ワイバーンより放たれた旋風は勢いよく全員を巻き込むのだった。
成否
成功
状態異常
第1章 第14節
「覇竜領域デザストル。現実では誰も足を踏み入れていない領域ということですが……その先に一体何があるというのでしょう?」
まだ見ぬ文明か、それとも只の更地が広がっているかさえ。
人々はまだ、見ることが出来てはいない。沙月は興味は尽きませんが、とヴァンジャンス岩山を越えるが為に進んでいた。
「あー! もう! 死に戻りラグさぁ!! もうちょい何とかならない?! ならないねOK!
アリスたちは生きてる!? 道は開けた? え? 何が邪魔? ワイバーン!? それともワーム? うさてゃんが惹きつけてあげる」
拗ねたように頬を膨らませる三月うさぎてゃんは『二度目』。沙月(アリス)が向かうならば横穴にだってちょこっと飛び込むのだって有りなのだ。
スクエアはくるくるくると宙に浮き上がり、
――ニューゲームを開始します。
高らかに宣言した。ワームの元へと進むべく、4ビットカラーの描写力で身体をくねくねと変化させて地面を進んでいる。
スクエアの様子をちら、と見てから「ワイバーンよりワームを倒すのね? アリス、道中の囮は任せて頂戴」と三月うさぎてゃんは宣言する。
「ワイバーン。さて……」
目的は山の踏破よりもワイバーンであったCyberGhostは思い悩んでいた。他人を囮として進む回避プレイを狙っているが、さて。
「これはゲームなのだろう? つまるところ、死にゲーとは覚えゲーの側面があるからな」
だが、他人はプレイヤーだ。モンスターの動きも彼等の動きによって変化するだろう。CyberGhostはワイバーンを回避してじりじりと進むと決定していた。
「さぁて、リスポーン! ハッハー! 死に覚えゲーは高難度が基本だが、死んでも与えたダメージとかの結果が残るなら寧ろイージーだぜ!
リビルドが容易いのも温情だな! 時間さえ掛けりゃ突破でき……るかな? できるはず!
とりあえずは早期戦線復帰のための機動力特化だ! 行くぜ!」
例えば、地をにょろにょろ動くスクエアの上を走り抜けてゆくダブル・ノットのように、三月うさぎてゃんと共に横穴を目指す沙月と共に。
ワーム達の元へと進めば良い。それでも『未知』を追いかける気持ちは隠すことは出来ず。イデアは周囲をきょろりと見回してから何処へ向かうべきかと考えた。
「ふむ……未知の領域ですか。こういったところは年甲斐もなくわくわくしてしまいますね。
ええ、難しく考えて仕方ないでしょうしここはサクッと突っ込んでみましょう」
足音を殺して進むイデアのメイド技能はメイド長に怒られない程度である。CyberGhostはイデアの背後に付いていた。
イデアが狙っていたのはワイバーンだ。CyberGhostが息を潜め、その様子を眺めていれば彼女は勢いよくワイバーンに糸を引っかけて「レッツロデオです」と一気に引き摺り上げられる。
だが、相手は何かに絡まったと気付き、彼女の身体を直ぐに地へと叩き付けた。
その様子を遠巻きにでも見て居たCyberGhostはそろりと撤退する。ワイバーンを御するのは難しそうなのである。
「フッ、色々見ててだいたい仕様は掴めたぜ。
強敵相手に一撃で伸されるのも、それはそれで敵の一手損出来るから仕事だ……だが! 与えたダメージが残るなら、もう一手の仕事が出来る!」
ダブル・ノットは横穴の入り口付近に佇んでいるワームに対して必殺の悪因悪果、大地を叩き付ける。ヒーラーとは何だったのか!
「あー! 機動の対価で物攻死んでる! エフェクトにダメージ見合ってなさすぎるぅー!!」
「お任せを」
ひらりと前線へと飛び出して往く沙月に続き「てゃんにも任せてよ!」と三月うさぎてゃんがワームを受け止める。アイドルと蚯蚓、余り似合わない光景だ。
「受け取れ! パッチワークver2! これで俺も含めて、一手の仕事がプラスできるぜ!」
「有難うございます。穴を潜りましょう」
沙月にうさぎてゃんはにんまりと笑ってからくるりと後方を見詰めた。
「――さぁ、Lost/childのアンコールは如何?」
背後からまだ、ワームが現われるか。行ってねと微笑んだ三月うさぎてゃんは『アリス』を進ませるためならその身を張る。
足下をスクエアがすーっと通り過ぎていった。それでいい。誰の死に顔も見たくはない。
スクエアがぴたりと立ち上がり突如として穴の入り口に『バーチャイレギュラーズ』にてポリゴン状のドラゴンを想起させた。
ソレを盾とし、ダブル・ノットの支援を受けてワームを退けた面々が辿り着いたのは仲間達が応戦を繰り広げるリンノルムの巣穴であった。
成否
成功
状態異常
第1章 第15節
「ちぇー、狼なんぞに弾かれるとはなぁ! 自信なくすぜコンチクショウ!
……へへ、なんてな! 俄然燃えてきたぜ、このイルミナ様を舐めるんじゃないっての! 何回でも何百回でも倒しに行ってやるから覚悟しろよな!」
にいと唇を吊り上げたイルミナは探索結果のお陰で得られる『情報』がある事に喜んでいた。
自身らが狼と相対したことで狼達を斃すことが出来た。それらを通り抜けた先に存在するのは『でっけぇミミズ』である。
「んで! でっけぇ敵といえばこのアタシ! 頭っから真っ二つに裂いてやんよ!」
イルミナの傍らからひょっこりと顔を出してにんまり笑顔なのはすあまである。
「見ーつけた! こいつ倒せば先に進めるんだよね。頑張るぞー! ところで脅威度Aってほんと? まだここ序盤だよね? まじかー」
「けどよ、見つけたヤツは片っ端から吹っ飛ばしてやんぜ……! そのままそこで寝てな!」
その通りだとでも言うようにすあまは猫爪でぶよぶよとしたワームを傷付ける。あんまり美味しそうではないけれど『贅沢言いません、勝つまでは!』である。
「ほうほう、先人により探索がなされたと……ならば、行ってみるしかねぇデショウ。虎穴に入らずんばなんとやらよ、相手は虎じゃないデスガ! ……まぁ、無事じゃすまんだろうなぁ」
うるふはうーんと悩ましげにアバターを見て居た。敵には研究員のアバターは存在して居なさそうだ。それは一安心である。
逆に言えば『これがクエストならばこのクエストをクリアすることで何かトロフィーが得られる』可能性は十分あるのだ。
「さて、リンノルムにいきまショウ!」
うるふが地を蹴った。息を潜めて巣穴の地形をチェックしていたAdamは黒き星々の先読みを以て天啓を得る。
「ハイドレンジャー参上〜っす。未知の領域に竜の群れ……やば、超アツいなぁ!」
罠はつまようじで突いて。エンカウントするワーム達には無音の一突きを。Adamは巣穴の中の横穴をチェックしていた。何処かにリンノルムへの最短の抜け道が――と思ったが巣穴にぎゅっと詰っていたワームの量が凄まじすぎる。
「お邪魔しました?」
首を傾げる。この道は駄目、という事で。他のルートにあたってみるのもいいだろう――
至近距離まで近付いたうるふのA-ブラスターが舞うように連続攻撃を放つ。ぶよぶよとした肉に食い込んでゆく弾丸。
「どの道片道切符よ、少しでも奴を弱らせる為には守りを考えていられん!」
くるりと身を反転させる。身体を吹き飛ばすような翼による旋風。其れ等をワームを捕食してやり過ごしたすあまは再度地を蹴った。
「ラダ、飛んで!」
――嫌そうな顔した。
そんなすあまを小さく笑ってからイルミナは「こっちが食われようが潰されようが、いっぺん倒しちまえばそれで勝ちだぜ! 突っ込め突っ込めー!」と叫んだ。
振り下ろした剣がリンノルムへと突き立てられ、抜けないと慌てた時には竜の激昂の如き叫声が耳を劈いた。
成否
成功
状態異常
第1章 第16節
「は? 翼のある蛇みたいな蚯蚓? キレそう……おっと」
思わず本音が出そうになったイズルは首を振る。リンノルム一点を狙うだけでは雑魚とも言えるワーム達の大量の支援がうざったい。
ならば、雑魚ワームを掃討する任を担う物も必要だろう。
「横穴に巨大蚯蚓……先が思いやられますね。私潔癖症なもので」
ぶるりと肩をふるわせた九重ツルギは明確に『困った』顔をしていた。対照的なのは崎守ナイトである。
「巨大な蚯蚓……か。乾燥させたら犬がめちゃくちゃ喜びそうじゃねーの」
犬の餌のように考えるナイトに「さあ、進むか」とスキャット・セプテットが号令を掛ける。
可愛らしいお姫様(princess)と思いきや、一行の司令塔(manager)となるのだから恐れ入った様子である。
「燃やし尽くせ情熱の赤! すべて灰燼に還すがいい!」
スキャットの号令にナイトはリンノルムに向けて全力の社長舞踏戦術を放った。リンノルムを担当するナイトとスキャットを狙う敵をツルギとイズルが相手取る戦法だ。
「踊り狂え! 暗い穴ん中でも輝き続ける社長(President)――それこそが俺(ORE)! 崎守ナイトだ!」
ナイトが叫ぶ。スキャットはミミズは100%皮膚呼吸の生き物だと告げた。「炎獄で身体の湿り気が乾けば呼吸も止まって苦しいはず」という戦法は確かに効いていたのだろう。のた打つリンノルム。――だが、その動きが『予想以上』に激しすぎた。
(あれだけ暴れられると全員巻き込まれかねませんね)
ツルギはイズルの支援を受けながら、ワームを集める。雑魚のワームを集め、乾燥を狙っての攻撃を放てばこちらもぐねぐねと暴れ出した。
「……蚯蚓が踊ってるみたいだな」
「ええ。もう先が思いやられています」
ツルギは遠い目を見せる。ワームの一匹がばたんと倒れるが、まだまだ余力があるワームが勢いよくツルギへと飛び込んだ。潔癖症には手酷い応酬だ。
「ツルギさん!」
振り向いたイズルの上に突如として落ちてきたのはのたうち回りながら翼で勢いよく旋風を放ったリンノルムの余波である。
「ッ――こいつら……!」
スキャットが呻いた。全力攻撃を放つ。一度で倒せるわけではないが、幾度かのトライでクリアできる可能性も高まってくる。
「社長(President)をナメるなよ―――!」
全力で飛び込んだナイトの『danceing president night』は90年代のダンスミュージックとミラーボールの輝きの下でリンノルムへとはなたれ、キレッキレのダンスと共にリンノルムの反撃に打ち払われた。『火』による攻撃は十分な効果があった。もう一度ダンスをお見舞いしてやらねばならないか。
成否
成功
状態異常
第1章 第17節
「竜の領域の探索、か。現実世界だと一切が不明な領域だったよな、確か。
……が、細かいことを考えるのは、まぁ得意な方ではなくてな。だもんで、俺達は派手な花火をぶち上げる事に集中する」
そう告げた君塚ゲンムの言葉に、『火と言えば』イルシアはにんまりと微笑んだ。晴れやかな微笑みである。
「ええ、解ったわ君塚さん、兎に角大暴れして陽動役になればいいのね!」
詰る所、彼女たちは囮役を買って出る。ワームに焔が聞くのであれば火の幻想種であるイルシアにとっては喜ばしい事だろう。
「竜の領域、噂には聞いていたが凄まじい場所だ。果たして混沌でもこんな無茶なのか?」
「どうでしょうね~……」
唇を尖らせる壱狐にΛは悩ましげに呟いた。敵の個体――ワームがうようよとしており、リンノルムへ向かう道を塞ぎ続けているのは問題だ。
「……ともあれ今はイレギュラーズとしての調査最優先だな。職人らしく一仕事行こうか」
「……ここが、竜の領域。現実のわたし達が踏み込めない、未知の領域。決死の覚悟で臨むよぉ。皆、頑張ろうねぇ!」
護るからねぇとイルシアに微笑んだホワイティ。文字通り、『命尽きる』イルシアを守り抜いてみせる心算だ。
ホワイトが手にしたグレイミラージュは鏡像の如く一糸乱れぬ連携を可能とする。イルシアに合わせて移動するホワイティにイルシアは「遠慮は不要よね?」と微笑んだ。
「任せて。可愛いエルシアちゃんと一緒に、亜竜も、その他も、みんな燃やしてあげる……。
一応は味方は燃やさないようにとは思ってるけど、万が一いる事に気付かずに巻き込んでしまったらご免なさいね!」
――可愛いエルシアちゃん(8)は燃やさないで下さい!
イルシアの微笑みを背に、ゲンムはサイコロジカルガトリング砲を構える。制圧射撃は広範囲に魔弾を広げワーム達へとダメージを蓄積させた。
壱狐と言えば匠の智慧を駆使して巣穴の中でΛの陣地構築を支援する。リンノルムと戦う陣を早急に整えることで攻略を容易にする狙いだ。
「如何に竜域に棲まう魔物が凄まじいとはいえ、この地の素材を使えば多少は持つでしょう!」
「これで多少は時間は稼げるはずだよ~残念ながらどこまで持つかはわからないけどね~?」
困ったような顔をしているΛは戦闘工兵技術を駆使して障害物を設置していた。
前線でワーム全てを受け止めるホワイティの表情が僅かに歪むが、イルシアの力を活かすことが自身の役目だと引くことはない。
Λと壱狐が簡易的な人知を作成し、あくまでデコイであると自身らの元へとワームを惹きつける。惹きつけられるワーム等に弾丸を放つゲンムが一歩後退した。
夥しい数のワームが殺到してゆく。サイズを考えれば蚯蚓に食べられる餌にでもなったような気分だ。だが、『道』は拓いた。此の儘、リンノルムに仲間達が突き進んでくれるはずだ。
「ホワイティ! ――先に逝く、ではまた後程」
「だ、大丈夫だよぉ……! また後でね!」
引き付ける敵の数が多ければ多いほどにダメージが蓄積する。護られていたイルシアは『エルシア』がやられてしまったら何も出来ないのだと困ったような顔をしていた。自分で燃やすかも知れないと行っていたが、敵を掻き集められたことだけは僥倖か。
願わくば、この群れに『轢かれて』死にたくは無いけれど――あ、エルシアちゃんは轢かれたのでした。
成否
成功
状態異常
第1章 第18節
「竜域。現実でも未だ切り開かれていない地……だからこそ、挑むことに価値はあります。
ヨハンナ様、プロメッサ様。未知を切り開き、往くべき道を貫き通しましょう」
「ああ。現実では未開の地を、しかも本当の死の危険なく挑めるとあれば参加しない手はないな」
カメリアにプロメッサは大きく頷いた。死んでも情報を持ち帰るのだと心に決めたヨハンナは横穴を潜る。
リンノルム達と戦っている方向とは別に進む道――例えば、Adamが先程探したような『別ルート』を鷲の目を使用して探す。
レイチェルの傍から蝙蝠が先行し、先の地形を確認し、暗闇をも見通す瞳は狂いはない。
「さて、精霊などはが存在するのかも分からないが流石に『横穴』は巣穴なだけあって以内だろうか」
呟いたプロメッサにカメリアは「他の場所ならばいるかもしれませんね?」と囁く。
空狐の直感で此方側に何か存在するのでは、予感をさせているが、後方ではリンノルムとの激闘が繰り広げられている最中だ。
「最短ルートは確かにリンノルムを倒すことなのでしょう。ですが、此方は……?」
「待った」
ヨハンナの言葉にカメリアがぴたりと足を止める。先行する蝙蝠が撃破された。奥からは僅かな光が差している。――何かの巣穴だろうか。
「……どうしますか?」
「戻ることはできない。何がいるのかを確認してから、だ」
プロメッサにカメリアとヨハンナは頷いた。光が差し込んだ横穴は何者かの巣穴になっている。
ずんずんと進んでゆけば影が蠢き――アウルベアが勢いよく突進を仕掛けてきた。
横穴はワームによって縦横無尽に岩山の中に拓き、様々なモンスターの住処となっているのだろう。注意を促されたモンスターの登場だ。
ヨハンナが構える。超重力フィールドを展開し、攻撃を仕掛け――続けざまにカメリアの放った氷のラッシュ。ばちん、と音を立てて振り払われる。大ぶりな攻撃、プロメッサが地を蹴り、細かく攻撃を仕掛けんとするが、直ぐさまにその姿が霧散した。
「そして次こそは――」
「ハッ、おもしれえ! マジのリアルでドラゴンとやりあうなんざ冗談じゃねえが、こっちなら問題ねえやな!
オラオラ、おれさまがお通りだ! カス共、道を開けな……と思ったか? さすがのおれさまも一人で突っ込んでも意味が無えってわかってるぜ。」
そう笑ったのはグドルフである。三人が聞いていたリンノルムとの闘争の様子であった。
「おい、報酬は山分けだぞ! キッカリ5割いただくからな! 死ぬんじゃねェ〜ぞ!」
にいっと笑ったグドルフへとルージュがにんまりと笑う。
「死んだーーー。よし、もう一回行くぜ!! レッツゴー!」
メインスキルはリンノルム用に変更させた。最悪でも数十回マラソンすれば何とかなる。
観測所からの助けは得られなかったが、敵の知覚能力を『麻痺』させて、その間に近付けば良い。
焔も効くというデータがあった。ルージュは「行くぜ、にーちゃん!」とグドルフに笑いかけ、地を蹴った。
一方のグドルフは、ルージュの元に集まろうとしたワームを引き付ける。
「幸い死んでもどうとでもなる。おら、掛かってきやがれ! アッこれ敵さん無限湧きするんすか? マジ?」
「にーちゃん! それ、幼体(こども)だ!」
ワームの巣穴だからこそ、ワームの子供達が多いのだと叫んだルージュにグドルフは「マジかよ」と溜息を吐いた。
損な役回りではあるが報酬は『山分け』だ。それならば、仲間を進ませる一助になるくらい、お安い物なのだ。
成否
成功
状態異常
第1章 第19節
「ふむふむ……ワームの巣にいるならワーム、と言いたいですけど羽の生えたワームの情報が出てるそうですし、亜竜とかなんでしょうね……」
梨尾の呟きにエクシルとフェアレイン=グリュックはこくりと頷いた。リンノルム、出来れば倒されていて欲しかったが――「いないか~」と呟いた。
探索に向いて居ないから、お留守番していた分はバンバンと撃ちまくると決定したフェアレイン達の眼前でリンノルムが翼をはためかせている。
暗がりにもその眼は適する。梨尾は錨火の火を揺らし、勢いよくリンノルムの元へと飛び込んだ。懐中時計の針の音がかちりと音を立てる。
鮮やかな光を纏って光源となった梨尾の後方から飛び込んだのはエクシル。キャットウォークで岩場の角を蹴り飛ばし、攪乱するべく飛び込むが――
リンノルムは翼をばさりばさりと動かした。『眼』が存在しないリンノルムは気配を感じ取って攻撃を繰り返す。
防御の合間を縫うように、鋭くトランプが突き刺さった。
フェアレインは夜閃と名付けた夜属性の魔力を弓へと生成し、放つ。「うきゅ!」と叫んだ聖獣。グリュッグと撃つときは調子が良いのだとしっかりと構え――
「ぶち抜けッ!」
梨尾を巻き込みたくは無いけれど、それでも途惑わずに撃つのだとフェアレインは小さく笑った。
「……さようなら、戦友。ヴァルハラで会おうぜ。……まあ死んでないが、ちょっと言いたい台詞だろ」
「はは。必殺が無ければ死なないので! まだ死んでませんよ!」
リンノルムが蠢いた。粘液がばしゃりばしゃりと落ち続ける。その気配を感じながら梨尾は危ないとその身を捻った。
纏わり付いた炎がリンノルムを捕まえては離さない。梨尾が構え、エクシルは此れだというようにその身を投じ――
「分かりやすい弱点とかあれば良いんだけれどね。練達で聞いた感じだとMMOのこの手のボスってDPS? 上げて削り切るタイプの可能性もあるってさ」
Ignatは笑った。『炎』の弱点を活かし、そして、視線を掻い潜れば良い。気配に聡いそのモンスターは光学迷彩をも越えてIgnatを探し求める。
主砲より放ったのは閃光。直線上に伸びてゆくソレがリンノウムの右翼を貫いた。幾重もの攻撃の結果だ。
「死に戻り前提のバトルなんて現実じゃあり得ないからね! 楽しんで行こう! FIRE IN THE HOLE! ――吹っ飛べッ!!!」
死に戻り前提、それでも敵のダメージは蓄積し続けるのだ。Ignatは心躍らせる。楽しくて楽しくて堪らない。ボス戦となれば、どうしてこうも楽しいのか!
スイッチは更なる追撃を行うべく、リンノルムへと飛び込んだ。ブーストダッシュ展開、物音を立てず、気配に聡いリンノルムが頼りにする『音』や『気配』を可能な限り控えさせて――
「情報だけ引き出せればあとは後続の人達が何とかしてくれるはず。
トドメが差せれば最高だけど、そこはこだわるところじゃない。俺達は一人じゃない、全員協力してここを抜けてみせるよ」
スイッチが危惧したのはリンノルムに攻撃が重なって、ダメージにとって挙動を変化させる可能性だ。
そう、例えば。
リンノルムがぶるぶると震える。無差別な攻撃を繰り返すソレに桜が僅かに眉を寄せた。
「負けっぱなしじゃ梅泉センセーに合わせる顔がないからね!」
地を蹴った。序盤でこの強さの敵だ。竜とはどんな存在なのかと考えずには居られない。例えば――フルパワーのリヴァイアサン。
海洋王国で戦ったリヴァイアサンはある程度の制約が存在して居た。リンノルムは音と気配に反応することが分かっているからこそ桜は梨尾に頼んだ。
大きな声を出して引き付けて欲しい、と。
全員で連携を取りしに戻れば『勝てる』可能性は大いにある。まだ、やれる。スイッチを巻き込むように大暴れを始めたリンノルムはぐぱりと口を広げてもげた右翼を気にするように一気にのたうち回った。周囲のワームなどお構いなしの動きである。
「ッ――これが『特殊な行動』か!」
耳を劈く叫び声にスイッチが構える。桜は優れた跳躍能力を駆使して、重ねるように防御力を削り続けた。
「……雨垂れ石を穿つってね!」
それでいい。少しずつにでも『削れれば』リンノルムを越える可能性に繋がっていくのだから――!
成否
成功
状態異常
第1章 第20節
「敵はリンノルム!」
3mまで一気に飛び上がったセララは何処からともなくドーナツを取り出してぱくりと口の中に放り込んだ。
聖剣チョコソードに乗せられたのは天雷の気配。雷光を纏う斬撃は雷のエンチャントを発動させる。
抉り取られた右翼のその場所へ――
セララは『幸運』を手繰り寄せるように一気に叩き付けた。
翼の織られたリンノルムが大仰な叫び声を上げてのたうち回る。耳を劈くその気配に、セララは一度後退し――入れ替わるように、スパロウが飛び込んだ。
「むう。現実の前にROOで覇竜……じゃなかった。竜域に来るとは。
死に戻り前提なんて不思議な状況を活かして、少し挑戦してみますか!」
スパロウは『野良の盾役』としてセララを襲い往くリンノルムを受け止める。手にしているものがピコハンであろうとも、3mの鎧に合わせたサイズならば脅威になるはずだと飛び込んだ。
「さあ、どこまで戦えるか……!」
大槌の鎧騎士と怪物の戦い。それだけでも『絵』になる光景であろうとピコハンを叩き付ける。
情報量が少ないのは観測所の目が届かぬ場所に棲まうからか。当たって砕けろ――といえど砕けてばかりでは居られない。
Sikiはセララとタイミングを合わせる。宙を飛び、視覚に頼ることないリンノルムへと放ったのはドラゴンブレス、竜の息吹。
焼き尽くす蒼き炎はあまねくいのちを塵へと変えてゆく。
「――進むんだ、道を開けてもらうよ!」
死に戻れても時間が惜しい。出来る限り、攻撃を避けたいと願うSikiをサポートするのはスパロウ。炎獄の牢に鎖されたリンノルムへとセララの雷が再度叩き付けられた。
「此の儘、倒れてよね! 必殺・ギガセララブレイク!」
苛烈なる一撃は『亜竜』相応だとデイジー・ベルは感じていた。その姿こそは蚯蚓で間抜けではあるが、翼が生えている以上それを普通のワームとは呼べないだろうと。
「難所だというならば、全力で越えましょう」
展開したのは超重力フィールド。これ以上『死に戻った』ロスは必要ない。だが、仲間達の攻撃を届けるためならば『無い命のいっぺん』が燃えるまでぶん殴り続けるべきだ。前のめりであろうとも、障害となるならば迅速に壊せば良い。
そうだ。真読・流雨は戦闘が避けられないならば戦えば良いと思っていた。流雨は戦う事は嫌いでは無い。
速度を活かし、飛び込んだ。竹槍をぷすりと投げて、映えるグラフィックを有する短剣を突き立てる。幾重もの攻撃で防御力の下がったリンノルムの叫び声が轟いた。
「もう少しのようだが」
「このまま、押し切ろうか……!」
スパロウ、そしてデイジー・ベルが前のめりにもリンノルムを受け止める。
流雨は一気に抜けば魂散る氷の刃をぎらりと輝かせて一気に突き立てた。地をける。闇のけものの気配をリンノルムは感じ取れない。
目が無い事で、至近に迫れど希薄な空気感では彼女を『感じる』事は出来ないのだ。
「受け止めます!」
スパロウに流雨は頷いた。声を出さなければ、音を出さなければ、気配が気迫であれば――攻撃を与える事は用意だ。
ダメージの蓄積でランダムで広がっていく広範囲の攻撃さえ受けなければ、リンノルムは敵ではない。
情報を活かしSikiは焔を吹き出した。焼き尽くせ、と声高に。死に戻る事さえ惜しいと彼女は華麗なる装束のスカートを揺らし顔を上げた。
「――任せて!」
天井のほど近い位置から、雷撃が叩き付けられる。ばちり、音を立てたそれにリンノルムの左翼が震え、傾いだ。
成否
成功
状態異常
第1章 第21節
「食べられると聞いて! なーんじゃ、ひたすら戦うだけと聞いておったから、ちょっと飽きてきておったぞ!」
玲の瞳がきらりと輝いた。戦うよりも、食事イベントがあった方が華も在ると言うものだ。
『ワーム んー 食べる びみょ?
どちしろ 倒す 進めない がばろ』
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は首をこてんと傾げる。発生はほにゃほにゃと不明瞭ではないが、意思疎通を行う『譛?菴朱剞縺ョ諢乗?晉鮪騾』に玲は「うむうむ」と頷いた。
じぇい君は「竜と言えば、以前背後さんは宝石竜やリヴァイアサンとやりあったっけ。あの時の竜はおっかなかったけど、R.O.Oの竜はどうなんだろ?」と首を傾ぐ。
「おっかないのじゃよ」
「成程ー? とはいえ、まずはリンノルムを退治しないとね。さて、お肉はどんな味がするのかな」
八名の目の前にはワームが存在して居る。玲は「イモムシはちょっとのうー、なんかこう……地味? 絵が」と小さく唸った。
じぇい君は「でも翼が生えてたからアレも亜竜なのかも」と呟く。
『亜竜?』
ほにゃほにゃと繰り返した縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧にアイはそれでも現実では体験できないものだと瞳をきらりと輝かせた。
「現実じゃ危ないガ……仮想現実ならでハ! といった所……かナ? 美味しい物! 探しに行こうカ!」
黄色の瞳孔が踊った黒い目玉はぎょろり、と動く。叡智のの魔眼(偽)が見通すことを願うのは分かった情報の共有だ。
「弱点は炎、視覚よりも聴覚と気配を探知する。あと可食部はなにかナ?」
「可食部……なるほど、確かにただ探索するというよりは、旨い食材という目的があった方が身が入ろうというもの。
妾も同行しよう。まずは図体の無駄に大きなミミズであるな」
モノクルスコープを覗き込んで居たフー・タオは遠慮無く蒼火を放った。燃やしてみても食用には丁度良いだろうか?
NegativeBlazeの火の中でキサラギは不思議そうにその様子を眺める。
「竜の領域か。ハッ、そこかしこにヤベェやつらがわんさか居やがるぜ。
んじゃ、よろしくな。前はオレに任せろこの辺の魔獣が食えるのかは知らねぇケド、面白そうだし協力するぜ。……えーっと、誰だ?
人の5倍くらい手足あるやつの名前見えねぇんだが……」
悩ましげなキサラギは「蛇か蜥蜴か蚯蚓かよくわかんねェのがでて来やがったなァ。羽まで生えてるぜ」とリンノルムを指さす。
手当たり次第に切ってやるとその四つ耳をぴんと立て、キサラギが飛び込んだ。
放つは修羅の一刀。継いで、流麗なる氷の刃が突き刺さる。氷像へと変化したそれが届き、前線で戦うキサラギの刃に灼熱の気配が纏わり付いた。
「オラオラァ! 羽か牙か尾か知らねェが片っ端から刻んでやるよ!」
フー・タオの支援を受け、キサラギが飛び込む。ヴァリフィルドはリンノルムに接近するためにその身を小さくした。
音に敏感であるならば、己の声を響かせてやれば良い。だが、竜をもした彼でも気になることはあった。
「リンノルムは……喰えるのであろうか」
確かに――ミミズだからだ。大きな、翼の生えた蛇なのかミミズなのかあまり区別の付かないような存在。
キサラギが操作したそれはワームの親玉と言うには強かった。ヴァリフィルドはリフレクティア:ジェミニを展開し、方向を響かせる。
恐怖に憤怒、そして畏敬にも程近いその響き。
ヴァリフィルドのその声が響く中を走るザミエラはにんまりと微笑んだ。
「つよーいドラゴンがいっぱいで迂闊に入れないんだよね?
でも出ていこうと思えばそれも誰も止められないのに、此処にいるってことで……つまりずっと居たくなるほど美味しいものがあるってことね!!
そうと決まれば、まずはジビエの王様(かもしれない)くまさんよ! 他にも美味しそうな植物とか小動物とか虫とかも探すけどね?」
ジビエの王様の元に行くために、リンノルムを倒したい。
座見え羅は躍る様にぴょんと跳ね上がり、リンノルムを受け止めた。初めて舞踏会にでも飛び出すようなそんな気持ち。
『おもしれー女』とも褒められる彼女は王子様の前では一流のプリンセスだ。耐えるだけ耐えきれば良い。
『がばろ』
ホニャホニャと呟いた縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の背後から玲は一気に飛び出した。
「食べられるのじゃろう! なんか薬草とか食べられる草とかあるらしいが妾わからんし……妾子供じゃし……食べる班じゃし……」
ザミエラに全てを任せる玲は華麗な技で留めてやると美食家達の剣となる。
一方で盾となるのはじぇい君だった。
「お前の相手はこの僕だ!」
美食家の盾の意地として。超重力フィールドを展開し、敵の位置を確認しながら耐え続ける。
少年義賊は幾度も幾度も、リンノルムを受け止めた。美食屋達はジビエの王様こと『くまさん』を食べるためにこの羽の生えて美味しそうではないミミズを倒さなくてはならない。そして、山を登って『くまさん』を全員で倒し調理する。ソレこそが目的だ。ミミズとて美味しく食べてしまえば良いだろう。
「さァ、畳み掛けよう。死に別れても『後で食事』で合流サ!」
アイの言葉に頷いてじぇい君は再度リンノルムを受け止める。ザミエラと共に縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は大蚯蚓に攻撃を重ね続けた。
ヴァリフィルドが口をばくりと開けて、リンノルムに喰らい付く。びたん、と音を立てて一気に身体を打ち付ける巨体の舌を掻い潜るようにキサラギは鋭い一太刀を放った。
成否
成功
状態異常
第1章 第22節
「リンノルム…闇雲な突撃を繰り返すだけじゃ、ただデスカウントが増えるだけですね。折角『死ねる』のであれば、それを有効的に使いましょう!」
微笑んだ空梅雨に桜陽炎は「姫の仰せの通りに……」と恭しく頭を下げる。
「ええ、誰かが往く道を。庭園にはつきものの、歩道を作ると致しましょう」
「ま、桃花チャン的にも勤勉に何度も死んで何度も挑んでなんつーメンドクセー事はしたくねえシ?
情報あつめリャ他の誰かがヤってくれんだろーシ、ヒメの方針に異論はねーゼ!」
にんまりと笑った桃花は言葉こそ『意地悪』ではあるが、戦略は決まっているのだと携帯式超小型火炎放射炉を構える。
「さぁ野郎共! 桃花チャンの為に頑張って働ケー!
なんか音とか気配に反応するからカゲチーは騒いでしっかり引きつけてくれよな」
「ああ、もう! わかっています、言うからには貴女もきちんと糸口を見つけなさい!」
桜陽炎は桜吹雪を発生させる。その中で舞踊るように放った一瞬の隙を付く切り込みに桃花はぴょんぴょんと楽しげに跳ねる。
「弾除けの本領発揮だゼ! 頑張れカゲチー! 桃花チャンの安全を保証しろカゲチー!
じゃあ解析はヒメに任せて桃花チャンは昼寝でも……駄目? 駄目カー……」
「駄目ですよ!」
ヒメと呼ばれた空梅雨は唇を尖らせた。『ロストガーデン』が把握するのはリンノルムの攻撃挙動の癖だ。
HPが減ることでランダムで起こる攻撃。その動きの前に必ず『翼の付け根』が震えているのだ。折れた翼。ソレを震わせて旋風を起こせぬ代わりにばたんばたんとのたうち回る。その広範囲の攻撃は重みもあり強力ではあるが分かってしまえば簡単だ。
「っ……ここまでです! モモ、残りの時間は頼みましたよ!」
引き寄せ続ける桜陽炎の様子を見詰めている空梅雨に全ての攻撃解析を頼む青年は苦しげに息を吐いた。桜剣・壱、その斬撃が確かに届けたダメージを引き継ぐように桃花は大声で叫んだ。
「ヘーイ虫野郎! こっち見ろ! 出来れば見るナ!」
――どっちだ、と空梅雨は小さく笑った。
「姫、貴女に希望を―委ねます!」
「ええ!」
空梅雨は気付く。リンノルムの叫声は放たれる瞬間に僅かに仰け反るのだと。
「っしゃあ! 生き残ってちょっと進めたな!
目下の障害、リンノルム……図体もデカいし恐ろしいほどタフだが……ダメージが入ってるなら、倒せない存在ではないはずだな!」
彼はハイテンションにリンノルムに挑んでいた。ビルドを組み直したダブル・ノット。自身を苛むものを『退ける』魔的な能力はラウンドシールドを手にしたその身を前へと送り出す。
「やはり固定値……固定値は全てを解決する……!」
辻ヒーラーをしてはいられない。ダブル・ノットの前に表示されたノーティス・モニターではリンノルムのHPは減り続けている。
押し切れる存在だ、とそう認識した。ダブル・ノットは声を上げて告知する。その声よりも大声を貼るのは桃花だ。
「んーー皆の話を聞いた感じだと。ワームやリンノルムってBS系統に結構弱いのか?」
ルージュは『攻撃方法』をリメイクした。麻痺に呪縛、火炎を豊富に取り揃え、戦闘方法も大きく変更を。
試してみるのも大切だ。ダブル・ノットの情報に寄れば火でこのまま押し切れば良いのだ。
「失敗しても、その時はその時だぜ!! 諦めなきゃ、最後は何とかなるんだかんな」
地を蹴って、ルージュは前へと飛び出した。リンノルムの周囲を灼く炎。その間から飛び出したルージュはバカみたいな体力を削り取るべく火炎を駆使した攻撃を心がけてみた。
Λは掲げる。目標を。『ワーム巣穴ルート開拓~『リンノルム』攻略』――
「さて、今度は全力全壊で行くとしようか。ん? 全開じゃないのかって? 行けばわかると思うけど……。
アレに全力でぶつかったらボクが壊れるって意味だから間違ってはないと思う」
Λは『全力全壊』で努力するのだと決めていた。アクティブソナーで接敵を確認する。目指す、リンノルムへと向けて放ったのは魔導砲。
空気中に漂う魔力素が魔力を結合し、発動体へ収斂し威力を増大。
貫通するその光がリンノルムの左翼を弾き飛ばした。Λは其の儘攻込んでゆく。近づき、ロケットランチャーは呪印を施した弾子をまき散らし続ける。
魔哭剣に改良を加えたからこそ、生成する虚無の剣は細切れにするようにリンノルムを攻め立てた。
一撃、そして二撃。
「リスポーンにも大分慣れてきた! リンノルムが音を頼りに索敵してるのは分かったわ。なら私はそれを利用して敵を撹乱する!」
指差・ヨシカは仲間達を助ける正義の魔法少女として飛び出した。ユウドーブレードは蒼く輝く誘導棒を降り続ける。
「現場は一人で成り立っているんじゃない……多くの作業員で一つのものを作り上げていくのよ!!
――喰らいなさい! プリンセスパイルハンマー!」
叫ぶヨシカは巨大な杭を魔法陣から召喚させる。周囲を一帯を吹き飛ばす必殺技。大口を開けたリンノルムに気付きヨシカはああんカーを打ち込んだ。
外が固くっても中は柔らかい。それは死に戻りを最大に活かした最大の一撃である。
己の身体を蝕むように叫声が響く。仰け反ったソレ、ついで、ぱたぱたと翼の付け根を揺らしたリンノルムが一気にのたうち回った。Λは壊れても良いと捨て身の攻撃を仕掛ける。
その一撃に、ダブル・ノットはリンノルムは後少しで倒せるという『実感』を感じ「もう少しだ!」と叫び――ルージュは一気に愛の力で『何だか分からないけれど愛は最強だ』と攻撃を叩き付けたのだった。
――だから、もう一度。ヨシカはプリンセスチャージで武装し、もう一度武器を構える。
「貴方の心に安全確認っ! 今日も、明日も、安全ヨシッ! ご安全に! プリティ☆プリンセス!」
成否
成功
状態異常
第1章 第23節
「そう簡単にはいかないとは思っていたけれど、思っていた以上に大変な相手のようね。
何度死んでも大丈夫とはいえ、正面から挑み続けていたら倒せるのがいつになるのかわからないし、ここは少し戦い方も考えていかなくてはいけなさそうね」
吹雪の言葉にアレクシアは頷いた。「見た目はそんなに強そうじゃなかったけど、さすがは覇竜に生息してるモンスターって感じだね!」とアレクシアは心を躍らせる。未知に触れる事を喜ぶアレクシアに吹雪はなるべく派手に動くわね、と頷いた。
「流石に一筋縄じゃいかなかったー! 正直に正面からいったのは間違いだったかな? 次は反省を活かしてこっそりと近寄らないと……」
こっそりと息を潜めるスティア。その傍らでシラスは悔しげに地団駄を踏んだ。
「くっそー、強いな!」
竜域もまだまだ入り口。それも抜け道の魔物がこの強さなのだ。ならば『普通に遣ったら奥に』なんて難しい。それでもネクストならば何度でも試せるのだ。
何度でも試せる――と言えども、シラスが『ぱっくり』といかれたのはエイル・サカヅキにとっては衝撃映像であった。
「いやーさっきは世界ビックリ映像だったわ。しらぽよだいじょぶだったかな……ってまー死んだけど! アタシも!
でもま、まださっきのリンノルム生きてるみたいだし? リベンジってやつ! やったろ!」
「ああ」
頷くシラスはスティアと共に忍び寄ると決めていた。吹雪はなるべくは出に動いて相手の目を此方に向けさせる事を目指していた。
『手筈』通りに動くことが目的だ。半端に攻撃しても弾かれる。ならば、一点突破だ!
「正面切ってどうにかなるわけじゃなさそうだし、どーも攻略記録見るに意識が向いてない時のがダメージ入りそうだし? ピチピチギャルのアタシらが引き付けてあげまっしょい!」
にいと笑ったエイルは「アレクシアちんとふぶまる~! うぇ~い!」とテンアゲモードでとりまビールを飲んで騒ぎ続ける。まじやばたにな状況ではあるが、エグめなヒールで蹴りをかます。リンノルムの雌雄は分からないがMK(マジで・キルする)為にエイルは手を尽す。
「こんな事をしていたらすぐに食べられてしまうでしょうけれど、その時は食べられながらでも顔の辺りを狙って銀世界で攻撃しておきましょうか」
吹雪の周囲に踊る銀の世界。雪と氷の世界の中で『氷雪の神』として、吹雪は全てを凍らせ全てを砕くべくリンノルムを相手取った。
吹雪、エイル――そして、アレクシアはしらすとスティアのために敵を引き付ける。
暴れて暴れて暴れ回る。『音』と気配を求めるならば誰かの気配よりもより暴れて引き付ければ良いのだ。
「こっちだよ!」
アレクシアは思いっきり前に出て叫んだ。ミラーキューブ・メソッドを使用し、スティアとシラスに目配せする。
シラスは大きく頷いた。「あ、ヤバ、死ぬ!」と叫ぶエイルに吹雪が「大丈夫、このまま畳み掛けられるわ」と鼓舞する。
騒ぎ続けた三人を見ているリンノルムは隙だらけだ。ここだ、とシラスは走った。アレクシアが「任せるよ!」と告げる言葉にシラスは応えるように飛び込む。
リンノルムへと渾身の体当たり。竜の身体を駆使したその一撃に巨体が傾いで倒れる。腹を丸出しにしたリンノルムが立ち上がるためにくねくねと立ち上がる。
「今だ、やっちまえ!」
「――いくよ!」
スティアは走った。
月天散華。その切っ先は、狂うことは無い。自爆スイッチだって用意した。最期の『保険』も手にしている。
皆の作ったチャンスに放つのは『SSA』! スティアによるスペシャルなアタックだ。
リリィは突破するためにファミリアーを飛ばして先を見、リンノルムが倒れると通常攻撃を叩き付けた。
「……とにかくやられても良いんだよね? ……やられても諦めず何度もアタックしてみようか?」
そう、何度だってやり直せるからこそゲーム。リリィはリンノルムの横を摺り抜けられないが魂を誘う短剣をリンノルムの原へと突き立てた。
のた打つ、その体を目を移しすあまは死に戻りうーんと小さく唸ってからラダと共に飛び出した。
「うええ、うじゃうじゃいて全然近づけないー。けど減ってきてるよね? じゃないと困るんだけどね!」
狩猟本能を使い、一気にリンノルムを補佐しようと集まるワーム達を集め続ける。
「匂いはどう? お菓子の甘い匂い、死体や血の匂い。どれが好きでどれが嫌い? 温度や湿度はどうなんだろう? やっぱりじめじめ好きかな?」
横穴に引き寄せる。すあまは猫爪と捕食でワームを喰らい続けた。その間に倒せば良い。誰かが倒してくれれば構わないのだ。
リリィが横を摺り抜けられるように意識をし、リンノルムへの道を繋いだすあまは「もう少しだよね!?」と問い掛ける。
自身の足止めの間にリンノルムを倒してくれと願いながら可愛らしい『猫』は獣の本領を発揮して、地を蹴って飛びかかったのだった。
成否
成功
状態異常
第1章 第24節
「……知ってる? 僕さ、クエストを除けばこれが初めての冒険なんだけど? ちょっとスパルタ過ぎない……?!」
グレイガーデンは叫んだ。初めての冒険が『竜の領域』であるというスパルタに表情を歪めていた。
「惜しかったな。もうひと押しなら――我にKISAKUあり!! という訳で純粋に増援だ。勿論助けてくれるよな、グレイ?」
笑った崎守ナイトにグレイガーデンは「まあ」と小さく頷いた。その様子にスキャット・セプテットは慌てる。
「本当に大丈夫なのかグレイさん。無理してないか?ナイトに脅されてたりしないよな? ……とはいえ非常に心強い。リンノルムを倒すには、手数が必用なようだから」
微笑んだスキャットに九重ツルギはううんと小さく唸った。
「あのリンノルムとかいう化け物、かなりの回数叩きに行かないと行けない様ですね。
タンクだからというのはありますが、巨大蚯蚓とエンドレス無理心中は勘弁願いたい……まあ、イズルのためなら何でもこなして見せますが!」
イズルは頷いた。ワームを掃討するチームに敬意を放ち、リンノルムへと最終決戦を挑む。
複数のチームによる攻撃が重なり続ける。イズルはヒット&アウェイを狙い、ツルギの背後で攻撃をギリギリまで重ね続けた。
焔の気配、そして、のたうつ『動作』も分かっている。
「燃やされれば再びのたうち回るでしょうが、凌ぎきってみせますよ! イズルの回復力を信じていますからね」
「任された」
頷くイズルにツルギにはリンノルムを受け止め、腕に力を込めた。
スキャットが叫ぶ。「もう少しだ!」と。リンノルムののたうち回る力が少なくなって往く。
「退路は考えるな! 弾薬をありったけ……燃え尽きるまで撃ち込み続けろッ!!」
ナイトは頷いた。ツルギのHPが少なくなれば自身がターゲットを取れば良い。グレイガーデンは仲間達に倣って攻撃を重ねた。
炎の攻撃が重なれば、焼き払える。だが、それで暴れるならば、出来れば足を止めさせなくてはならない。
グレイガーデンの『支援』はリンノルムを縛り付ける。迷う時間は無い。イズルは直ぐさまに一撃をと願った。
「進化した全力の社長舞踏戦術! 連がついてより多段に!
EXAもガン上がりして手数も多く! 攻撃集中でより華やか(gorgeous)に舞ってやるぜぇ!」
ツルギをイズルに任せ、ナイトは飛び込んだ。放つ一撃は重く、そして各チームの攻撃を集約させる。
底に飛び込んだのは一人の少女であった。きうりんはやれやれと汗を拭う。
「ふぅ……ヒポグリフくんと空の旅を楽しんできたぜ。死ぬかと思ったよ。死んだよ。……よし、じゃあ真面目にやろうか!!」
きうりんは気を取り直し、気付いた。リンノルム君はそろそろ瀕死である。乗り遅れたと思ったがオオトリをゲットなのだ。
「おりゃ!ㅤミミズ肉になりたいやつはこっちおいで!ㅤ一緒に食べてもらおうぜ! お外は危険がいっぱいなんだよ!」
きうりんは背後から羽音を聞いた。走ってきて――そして、『飛び込んだ』影こそがきうりんの狙いである。
現われたのは外で周回するヒポグリフである。翼をばさりと広げ、きうりんを狙うヒポグリフにぶんぶんと手を振り続ける。
「あ、ヒポグリフくんお久!ㅤ餌を持って来たよ!ㅤミミズと私!ㅤやったねおなかいっぱいだ!」
仲間達の攻撃で腹を見せて倒れたリンノルム。システムメッセージが更新されたことに気付いてから、きうりんはにんまりと微笑んだ。
「ヒポグリフくんがおなかいっぱいで私も嬉しいよ!ㅤもうマブダチだね!ㅤへへ……!」
――食べられること目的である。瀕死のリンノルムと腹を空かせたきうりんのマブダチことヒポグリフ君。
……押し切ったイレギュラーズ達が目の当たりにしたのはどうしてか餌扱いされる一人と一匹なのであった。
《システム》
――モンスター:リンノルムが撃破されました。
――プレイヤーは『横穴』より山頂を目指す活動域が広がりました。
ワームの巣出口を利用することでヴァンジャンス岩山中腹へと踏み入ることが可能となります。
ヴァンジャンス岩山中腹にはマンイーター、アウルベアが棲んでいることが推測されます。サイクロプスの住処も避けては通れないでしょう。
ワイバーンも襲来しますが、登り切ることで『デポトワール渓谷』を見下ろす地点まで進むことが可能となります。
成否
成功
第1章 第25節
「初依頼でボス相手に生還なんて、やるなぁグレイ!!
俺も負けてられな……え? マンイーターとワイバーンに気づかれるから静かにって?」
肩を竦めた崎守ナイト。一行はリンノルムを撃破して、山登りを開始していた。途方もない道のりではあるが、登り切ってしまえば次のエリアであるデポトワール渓谷を眼窩に望む事ができるだろう。
「……死ぬかと思った、死に戻り前提とかろくなもんじゃないよねほんと!」
運が良かったんだよ、と唇を尖らすグレイガーデンは僅かな危機感を憶えて居た。此処はまだ『前半』だ。それも初めての相手でもある。
「……この先はあれ級が雑魚として出てくる、なんてことないよね?」
「HAHAHAHAHA!!!!!」
快活に笑ったナイトを一瞥して「それにしても社長が社長すぎる……」と呟くのだった。
「はっはっは。グレイさんはフラグを立てるのがお上手ですね」
思わず泣き出しそうになる九重ツルギ。グレイガーデンは「え?」と傍らを見るが、イズルがワームの幼虫を輝かせていた。
ツルギに言わせれば『ゲーミングワーム』だ。ポーションファウンテンの効果で躯がカラフルに光り続けるワームを餌にする予定なのだ。
「この辺りではワイバーンを頂点として、ほぼ肉食動物で食物連鎖が構成されているように見える。
では小型の弱いものの食料はといえば……いるだろう、おあつらえ向きのものが――ワームの幼生だ」
だから輝いているのだろうか。大型はリンノルムそして数匹程度。時折姿を見せては地中より襲い来るワーム達以外はここで『育てられていた』に違いないのだ。
「つまり……ワームの巣出口付近は、中腹の生物の餌場。早く離れよう」
その言葉に頷いてからスキャット・セプテットは「スケッチをする時間も無いのが残念だな」と小さくぼやいた。隠しきれない美術センスを駆使して岩肌に合わせたカムフラージュを施しておく。血の香りはアルコールの匂いで隠して出来るだけ慎重に進むことを心がけた。
光り続けるワームを放置して、イレギュラーズが大半巣穴から抜けた頃――上空より飛来したのはロック鳥である。
「――、」
あんぐりと口を開いたツルギ。今のうちに先を目指したいが……ワームに惹かれて来たのだろうか姿を現したのはアウルベアであった。
音を立てないように気をつけていたグレイガーデンはしまった、と顔を上げる。この場所では血の匂いを消すだけでは無く、香水やアルコールの香りさえも異質であったか。
「……どうする?」
「逃げたい――が、逃げ道も無いな。山道だ。相手を叩くしかない」
スキャットは『死に戻れば』何とかなるはずだと振り向いた。梟と熊の合体。その姿を双眸に映してからスキャットは「行くぞ!」と叫ぶ。
無音を心がけるようにと言伝えられたナイトは「踊りが全然しまらねぇじゃねーの!」と文句を言うが仕方があるまい。
「さて、初めてのお相手ならば告げるべきでしょうね。貴方の本性(なかみ)……ブチ撒けて差し上げますよ!」
ツルギが構え、継ぐようにイズルが前線へと飛び込んだ。アイアトロマンサーは輝くワームが餌だと指し示しながら仲間の支援を心がける。
「ッ、正気をなくさせて逃げられない!?」
グレイガーデンは叫んだ。死に戻り前提なんて碌なもんじゃ無い。アウルベアは『先読み』を得意とするらしいが短気故に猪突猛進だ。獰猛なる熊が唸りを上げて勢いよくナイトを叩き付けた。
直ぐさまにイズルが戦線維持を心がける。スキャットは取り敢えず言った。「死んでもなんとかなる」と。
成否
成功
状態異常
第1章 第26節
「かァ~、見事に死に戻ったなァオイ! さすがに前人未到、そこらの野良ですらボス級につえーつえー!
こりゃ喧嘩売ってるだけじゃあ進まねぇな。前情報でわかっちゃあいたが骨身に染みたぜ」
トモコ・ザ・バーバリアンはどうするかとうんと伸びをする。折角だ。原始の直感で危機を察知して安全なルートを模索するしか無い。
山道と言えども、少し逸れる道などは存在して居た。大っぴらに山を登る道では無く、物陰をセレクトしていくのも良いだろう。
にゃこらすは尾を揺らし、猫を先行させて確認を行い続ける。Teth=Steinerと言えば、横穴から顔を出し見下ろすことが出来た拠点――覇竜観測所をまじまじと眺めて居た。
「ちとで遅れちまったな。にしても……いやぁ、マジでヤベーなコイツは。
死んでも平気っちゃ平気だが、流石にハイペースで死に過ぎるってのは非効率だ」
死にすぎるというのもタイムロスが多い。だが、死んででも進む一助になり可能性を繋ぐというならば悪くはない。
トモコの直感とTethのドローンでの俯瞰。そして地を歩くにゃこらすの猫と分担しての山道は険しい道であればあるほどにモンスターの影は消えた。
「不自然なくらいにモンスターもいないな」
Tethの呟きににゃこらすは「そういうときだからこそ何かが居る可能性はあるな」と警戒心を露わにし――「ぎゃ」
「「ぎゃ?」」
トモコとTethは顔を見合わせた。それはにゃこらすの『鳴き声』か。
にゃこらすの声を聞きTethはぎょっと目を見開いた。険しい山道――道には危険は無いが翼を持つワイバーンは自由自在に此方を餌にしに来るとでも言う訳か。
「ありかよ」
呟くTethにトモコは「来ちまったならしょうがねぇ! こっちの地図はある程度完成だろ。行くぞ!」と叫んだ。
ワイバーンは亜竜に相応する。三人で倒せるわけも無いが少しでも手傷を負わせておけばソレで構いやしない。連れ去られたにゃこらすの行方を考えるよりも先にトモコは勢いよくデルさんを叩き付けたのだった。
成否
成功
状態異常
第1章 第27節
「よーやく倒せたんだな。いや、マジで大変だったぜ……これがいわゆるレイドボスって奴だったんだな」
どっと疲れたとルージュが肩を竦める。巣穴から出たときに感じた陽の明るさは心地よい。レイドボス級の存在と出会った後は山を登るだけだとシステムメッセージで表示はされていたが――
「っていうか、まだこれでようやく中腹なんだな。先は長いぜ」
山をぐんぐん登ってモンスターを処理すれば一先ずは『頂上』には辿り着けるらしい。
「死ぬ気でいかなきゃ駄目っぽいにゃぁ……分かっちゃいるけど死ぬのは辛い、うーむ、うーむ……。
……よっし、ぐちぐち言ってても仕方ないし、出来るだけ行ってみようかな。死んだら死んだ時に考えたら良いのさー、にゃっはっは!」
そう言うのはみゃーこ。岩山に小さな躯を隠しながら猫のスキルを駆使して進み往くのである。
みゃーこはそうは言えども何時までも隠れては居られないだろうとこそこそと進んでいた。前を進むのはルージュと真読・流雨、そして『二人』の花嫁である。
「死に戻りからの菫蘭之交で向こうのわたし─純恋の元へ推参すれば、亜竜対処ですか。
一撃でも喰らえばか弱いわたしは死んでしまいます……え、それは皆同じ?」
「ええ。誰だって、驚くほどに一撃で。
……わたしのコピー……澄恋となど協力したくないのですが、人手不足ゆえ致し方なし」
溜息を吐いた純恋に澄恋は明るい笑顔を浮かべて見せた。旦那様錬成のためには『必要不可欠』な事ばかりなのだ。
「ワイバーン、異物排除として我々を襲うのもそうですけど、お腹が空いているから我々(ごはん)を狙うということはないのでしょうか」
「……」
純恋がフラグが立った気配を感じている。だが、気にすること無く澄恋は「ほら、あそこにワイバーン」と指さしてから微笑んだ。
「沢山食べたら満足して帰ったり、お腹が重くなって動きが鈍くなったり眠ったり……」
「はあ」
「と、言うわけで。サクラメントがあるこの世界、復活前提の行動を取るべき。沢山死ねて沢山検証できる……人体錬成のデータ採取環境にぴったりですね?
先刻はわたしが死んだので――今度は『か弱いわたし』を護ってくださいね、純恋?」
何を言っているのだというように純恋は自ら死にに往くのは嫌だが、ワイバーンを見つけて仕舞ったならば仕方が無いかと振り仰ぐ。
「……『つよいわたし』ですから護られる必要もないでしょうに……ええ、けれど、時間稼ぎはできましょう」
「ねーちゃん、手伝うぜ!」
純恋とルージュ、そして流雨は背後に隠れた猫に「猫君はお静かに」と揶揄うように笑う。
「ああ、どれも強力な相手には違いないのだろうが。群れで行動するモノがいると面倒だな。
飛行能力と高い戦闘能力を持つワイバーンも面倒だが。あれは専門に狙う者も多そうではあるし……迂回ルートを頼れども空からは防ぎようが無いか」
流雨はアウルベアと接敵している情報を聞きながら、大跳躍。飛び上がったままに大暴れを見せる。開幕の混乱の渦に合わせ、ルージュはワイバーンの足止めの為に愛を放った。
愛の力は気合いと友に光を放つ。最強の力は愛なのだ。
「とりあえず、デポトワール渓谷が見える位置までダッシュだぜ!! その為には一回痺れててくれよ!!」
叫んだルージュの言葉を受けたようにみゃーこと澄恋はそそくさと後退してゆく。総てを受け止めるのは今回は純恋の番なのだという。
「さて、ルージュ君。前を見てきて貰っても構わないかな?」
「OK、そっちは?」
「ぢこくぱんだは戦う事は嫌いでは無くってね。それに花嫁がエスコートされる様子は最後まで見ておかなくては勿体ないだろう」
笑った流雨は「たべられるのはやだなあ」と呟いた純恋の背後でルージュに「山頂では記念撮影をしてくれ」と軽やかに返すのだった。
成否
成功
状態異常
第1章 第28節
「そんじゃ、引き続き大掃除といきますか!」
リュカ・ファブニルは山を登る中でも『ルートの確保』は必要だろうと『弟』に振り向いた。ベネディクト・ファブニルは「今回でルートを確保をするのを目標として動こうか。皆、無理せずに」と穏やかに微笑む。リスポーンをしながらでは在るが大序対での行動で『それなり』に生存率は高い。
「やはり高い位置からの方が状況は確認し易いか。神様、頼めるか?」
「かみだから見続けているよ。先の交叉で我彼も 要領を得たと言って過分ではあるまい」
そう答えたのは神様で或る。威風で堂々と自在に泳ぎ、宙で確認を続ける。現時点のベネディクトのアバターはポメラニアンだ。饅頭のようだと神様が神託(?)を告げる声を聞きながらルフラン・アントルメは尾をふるふると揺らしていた。
「ルート開拓やったー! ここを黒狼隊通りと名付ける! 続けて行くぞー!」
「道さえ切り拓いて中継地点を作ることが出来ればどうとでもなるからね、張り切ってれっつご〜。
ブラックウルフ・ストリート……ううん、センスはどっちもどっちだった!」
リラグレーテはくすくすと笑う。ワームの巣穴は暗いが、そこから抜ければ直ぐに明るくなる。残ったワームをケチらせながら、進む道は険しくも愉快そのものだ。
山道を進むルフランは「……なんかさっき食べられかけたから、不本意だけど! すごいやだけど! 進んだ先でも囮! うわーん!」と小さく震えている。
「見て」
「どうしたの?」
「……ワーム、光ってる」
ジェックが指さしたのは先行部隊が何故か光らせていったワームの幼虫だった。危うきに近付くべからず。デスカウントは怖くなくとも虫の餌にはなりたくはない。
「怖がってたら進まない。から、ガンガン行く。方針は、命惜しまず」
「うんうんっ、け、けど、みんなちゃんとあたしの分も頑張ってね! 助けてね!?」
「ん」
こくりと頷いたジェックにルフランは安心しているのか、して居ないのか曖昧な表情を浮かべた。
「ねこです。よろしくおねがいします」
ポメラニアンが居て、神様がいるならばねこ神さまも居るのが黒狼隊なのである。山道は険しいが、今の所は少し勾配のキツいピクニックである。
「敵が強くて遅々と前進するが精々ですね。流石は竜の領域です……景色を楽しむ余裕もないのが苦しい所ですね。
無駄な敵の接敵を減らし有利な遭遇が重要ですね。そこで、なんと、ねこは新たなる力を手に入れたのですよ!」
ねこ神さまは猫の幻体を生み出すことが可能となったのだ。猫を放ち、安全確認に使用するねこ神さま。前を往く猫を眺めて居たミルフィーユは「かわいいのです」とぱちりと瞬いた。
「猫さんと一緒に今回も、しっかり敵の動きを見ていくのですよ!」
「ルート確保が今回の命題らしい。まぁ前回同様頑張りますか。探索続くなら、装備とか見直さねーとな。
……さておき。おまえこの前死に戻ってたし、気をつけろよ? あそこら辺のデコイを上手く使うんだ」
デコイと首を傾げたミルフィーユに対してトルテはひめにゃこを指している。デコイが天職とまで揶揄われるひめにゃこはふふんと胸を張っている。
「必殺ゾンビアタック!リアルではできないですけど、ゲームだからこそ許されるこの攻略!
さぁTAKE2も数の暴力で切り開いて行きますよ! あ、今度はちゃんと姫扱いしてくださいよ!? お願いしますよほんと!!」
ひめにゃこの言葉をまるで聞いていないリュティスは気配を探りながらも「お気を付けて」と主人を見上げる。神様に抱き抱えられているベネディクトは危険そのものだ。
「このリュティス、御主人様の期待に答えられるように死力を尽くしましょう。
それに……こちらには優秀なデコイもいることですしね。いざとなれば敵の攻撃を引きつけて頂きましょう」
主人を慮ってひめにゃこを慮らずである。
「誰がデコイですかこのバーチャル冷酷無比メイド!!」
しれっと無視するリュティスに「聞いてますか!? おーい!? おいおい!!!」と姫アタックを繰り返すひめにゃこを見ながらあれだけ叫んでいればデコイなのだとトルテとミルフィーユは再確認するのであった。
「そのムーブで姫扱いは無理だろ……」
「今なんて!?」
何もとリュティスは首を振る。ワームの巣穴を越えた仲間達と同様に、山を登ることとなる黒狼隊は別ルートを模索していた。トモコが先程探した安全ルートとは別の道で山頂を目指している。
「いやー死んだ死んだ! すっげえ死んでる! ここまでバンバン死にまくると、かえって笑えてくるぜ! あはははは!」
楽しげに笑った白銀の騎士ストームナイトは此方を見詰めるタイムに気付き、ぎこちなく微笑んだ後イケメンオーラを溢れさせた。
「……ゥオッホン。人の命のなんと儚きものよ……だが、それがゆえに私は護るのだ。この剣に誓って! ちなみに私に中の人などいない。私は謎の正義の騎士なのだ。いいね?」
「謎なのね?」
「ああ、謎だ」
そういうことにしておこう。その傍らを颯爽と走ってくるのはダテ・チヒロである。星煌剣アステリウスピエタと言う名前のコントローラーを握りしめてから栄養満点スムージーをごくごくと飲み干した。勿論スムージーもコントローラーでぎゅっと絞った後である。
「はい! というわけでコンティニュー! こういう所がゲームの便利な所だよね!
皆のために、護らなくちゃ……しかも今回はただの腹筋ガードじゃない……腰を落としてスクワットをして安定度を増した『スーパー腹筋ガード』だ!!!」
任せろと微笑んだチヒロに「頼りにしているよ」とマークは笑みを零す。
「これだけの人数がいれば、安定的に地域を制圧できるね。この調子で道を切り拓いて行こう」
マップに詳細地図を書き込みながら、スキル:マップ確認で共有化していく。必殺が無ければ倒れない事が取り柄なのだと前線をずんずん進むマークにねこ神さまが「何か居るみたいだよ?」と声を掛けた。
「ああ、確かに……。あれは――アウルベアか」
梟の頭に熊の体。まだ此方には気付いていないだろうか。
「さっきはちょーっと油断してただけだから! 次は死なないもん。本当よ!
えー防具? アクセサリ? 拾ったの装備してるだけだから強さとかわかんなぁい。そういうの気にしないとだめかなやっぱ?」
「あ、それひめにゃこの役目ですよ!?」
姫ムーブじゃ無いよと微笑んだタイムにひめにゃこがむきいと鳴いた。楽しげに語り合う仲間達にマークはあれくらいなら倒せるだろうかと戦力を確認する。
「前回の出発には間に合いませんでしたので、今回からは私も参加させていただきます。
覇竜領域の探索等と、実際にまともにやれるものでもないでしょうから良い機会なのは事実ですが……しかし、まるで誘っているかのような開放ですね
如何にも探索してみせよと言わんばかり。探索を進めて得られる情報は恐らく非常に役に立つものとなるでしょうけれど」
本来のルートなのでしょうかと不思議そうに呟くシャスティアに現場・ネイコは「どうだろうね」と呟いた。
「でも、ま! このまま皆と行けるとこまでイケイケドンドーンっ!
強敵モンスターだってなんのその! 黒狼隊の皆が集まれば大抵のことは何とかなるなる!」
君の名前は希望。『ご安全に!プリティ★プリンセス』は何時だって、『君のハートを舗装しちゃうぞ!』と意気込むのだ。
「ネイコさん」
「はいはい! あの敵だよね。注意確認、ヨシ! それはそれとして、ひめにゃこさん! 役目だよ?」
「え? 何ですか? ネイコさん、ってなんでひめを盾にするんです? 可笑しくないですか? ひめの盾になることを光栄に思って下さいよ!」
ねえ、と神様を呼び込むが神様は「神様だよ」と穏やかに存在して居るだけである。
「ああああ、ひめにゃこは世界一カワイイイィィーーー……!」
叫ぶとものすごい勢いで注目を浴びるひめにゃこ。走る彼女を追いかけるように進むアウルベアを追いかけて、ベネディクトは「行くぞ!」と叫んだ。
「かよわいぞー美味しそうだぞーって歩いてー……んぎゃあああ!!」
びくんと跳ね上がったルフランは突如として空中から飛来するロック鳥に気付いてびくっと肩を跳ねさせた。此の儘では鳥の餌だ。
「うううやだー! ぱっくんちょやだー! リュカさんベネディクトさんみんなたすけてー!」
「神様! ――一気に引き裂く!」
神様の手からぱっと離れるベネディクトが勢いよくロック鳥の脳天目掛けて飛び込んだ。八割は生き残るんだから、何とかなるはずだと言う勢いだ。
「ご主人様」
リュティスは直ぐさまにその体を滑り込ませ、ベネディクトを受け止める。鳥が叫び声を上げてリュティスに向けて突進してくるが、ジェックは表情を変えずにするりと滑り込んだ。
「……こっち見て」
構えたのはゴーストシステム。勢いよくどっかーん! として ばっこーん! して行く。純一無雑、少女の桃色の眸は揺らぎ首を傾げた。
「がんばる。ここでコイツを倒せば、山も簡単」
「そうだね。ねこです。がんばろう」
ねこ神様は黒猫にいってらっしゃいと声を掛けた。ずんずんと進む黒き猫。アウルベアと鬼ごっこをしているひめにゃこは一先ず置いておいて、ロック鳥に向けてネイコが放つ必殺技。派手なエフェクトが舞い散り、翼がばさりと音を立てた。
「って、無茶するなぁ。まあ僕……私も飛び込んじゃうけど! ベネディクトさん待って、えーいっ!」
真似る様にリラグレーテは空を踊り、ブレイブハートアサルトカスタムに「行くよ」と囁く。周囲に展開された致死毒。
続き、リラグレーテは求める結末を刻みつけるが為に空想弾を放った。
シャスティアはと言えば「あちらは放置でも構わないのですね。ふむ」と呟いていた。妖精眼を以て確認を行い続ける。深淵の生物であるのは確かだ。
魔術神の槍の再現を。秘めた力を再現し、相手を穿てば翼が大仰に揺らぐ。巨体だ。だが、数の暴力でならばたたみ込める可能性もある。
マークは「此の儘押し切ろう」と声を掛ける。此の儘何とかなるはずだと意気込むミルフィーユに「無理するなよ!」とトルテは声を掛けた。
挑発していたタイムは動きの鈍くなったロック鳥へと飛び付いて――
「あ……? ちょっと? 避けないからって巻き付くのはずるいよぉ! やぁだ! 死にたくないー! ぐぎゅ」
タイムを見てからチヒロは「ここは任せろ!」と飛び出した。神様の庇うことも間に合わない。だが、これ以上は護ってみせるとスクワットをしながら腹筋に力を込める。
「さぁーーー来いモンスターたち! この俺のシックスパック、破れるものなら破ってみるがいい!!! ふんぬううううううう!!!!!!! うあああああああああああ!!!!」
ぐきゅっとされたタイムの仇討ちだと叫ぶチヒロ。リラグレーテやミルフィーユを庇う神様は「大丈夫か」と問い掛けた。
「はいなのです! デコイさんは……どうなったか分かりませんけれど……」
「まあ、デコイだし……」
呟いたトルテの声を聞き、マークは小さく笑った。強敵だと言われていたが17人も集まればさながらレイドなのである。
「僕ごとで良い。皆、抑えている間にロック鳥を畳み掛けてくれ!」
「OK!」
――因みに、トルテは女子が危なければ庇うつもりではあったがリュティスやひめにゃこなら大丈夫なのだと考えていた。神様は単純にポメラニアンを抱いて居た都合で間に合わなかっただけではあるが。
それでも此の儘たたみ込める。リュカが一気に鈍器を叩き付ける。リュティスは躍る様に主人を庇い、攻撃を重ね続けた。
「おっしゃあ!」
素が出てしまったがストームナイトは倒せたと確かな実感に満ちあふれる。
ストームナイトはロック鳥を倒せた高揚感を感じながら未だに逃げ回っているひめにゃこに気付いたのだった。
ベネディクトは「凄いな」と呟き、リュカは「ある意味尊敬できる」とぼやいた。ロック鳥を相手にしている間、只管逃げ回っていて呉れたのだ。
「おっ、姫にゃこがまた襲われている!? すぐに助け……いやちょっと待て。よし、いいぞ、そのまま食いついて……今だ! ゴッドストームクラッシュ!!」
「ぎゃあああああ!?」
ストームナイトにより無事にアウルベアが一帯撃破されたが、ついでのように撃破されたプリンセスがいたことは――忘れては為らない。
成否
成功
状態異常
第1章 第29節
「んー……なぁなぁ。腹とかは減らねぇけど、やっぱ休憩ポイントってのは必要だよな。
『ピュニシオンの森』とやらに着けばそこがチェックポイントになるらしいけど、先がどんだけキツいかわからねぇし……ここらで一旦キャンプ設営といこうぜ! とりあえず身体を休められる程度に……へへ、こういうのも楽しいよなぁ」
にんまりと笑ったイルミナに清鷹は「ふむ」と小さく呟いた。
「前人未到の地か。覇竜領域……とな。竜、と言うものは物語り絵巻の空想と思っていたのだが、いざ目の当たりにするとなるほど……でかいな……」
「ああ。あんなデカブツ、直ぐには倒せねーしな」
イルミナの提案に清鷹は操舵と頷いた。なるべくワイバーンに遭遇しないルート且つ、休息所を開いたイルミナに協力好いたのはファン・ドルド。的確に情報収集と山頂へのルートを探る彼の情報を頼れば、此処を休息地点と出来たわけである。
「私は行ける限り前に進みますが、皆さんは此処に陣を展開されますか?」
「そうだな。ま、後から来る奴にとっても良い場所だろ。軽い拠点だ」
「分かりました。此処までのルートは確立していますからリスポーン後も通りやすいでしょうしね」
ファン・ドルドは「お気を付けて」と告げて一人、前へと進み往く。イルミナはと言えば早速拠点設営に精を出した。
「なにか使えるものはあるかなーっと! やっぱモンスターから素材入手かね! 皮とか骨とか! 屋根とベッドぐらいは作りてぇなー!」
「ところで、何処からか良い匂いがする。あれは、あの竜からか? 自身の尻尾を口に……?」
巨大な亜竜がどっしりと座っている。薄桃色の体躯に自身の尾をしゃぶりつづけるモンスターはどこか可愛らしい。
「それにしても、竜……と言うには間の抜けた顔をしている。こちらには気づいてないようだが……しかしこの匂い、尻尾からか?」
あの亜竜は美食家にとっては眼に浸けられてしまう突飛も無い存在ではあるが、さて、近付いてみるだけ良いだろうと清鷹は寄ってみて――突然立ち上がった亜竜が口を開いて清鷹をべろべろと嘗め回したのだった。
一部始終を見詰めていたのは指差・ヨシカである。気を取り直して、と何も見ない振りをしてからにんまりと笑う。
「結構大規模な行軍をしたと思っていたけど、まだ岩山の中腹!? なんて噛み応えのあるクエストだ。
リンノルムは何とか他の人が倒してくれたから良かったけれど……えーと何々、中腹ではサイクロプスの住処があります……。
いいねえ! 僕MMOとかRPGでは好きなんだよね、サイクロプス。単眼の巨人! カッコいいよね。ん? 巨人……?」
ヨシカの言葉にどうしたのと首を傾いだのはスイッチだ。
「あそこにどうみてもでかい巣穴っぽいのがありますね」
「あ、そうだね。うん、高度を上げてみてもあの穴は気になったよ」
「何かでかいのがいますねえ!!!!?」
「そうだね」
スイッチは宙より眺めて居た。アウルベアは飛ばなかったが、サイクロプスの攻撃はここまで届くのだろうか――ちょっとした知的好奇心だ。
ヨシカはすうと息を吸ってから「先手必勝!! 心臓を掲げよ!!」と叫んだ。
カッコイイ。けど怖い。だが、確かに一撃飛び込んだか。サイクロプスが突然振り向いて叫ぶ。
スイッチはと言えば後方からの支援になると攻撃を放ちヨシカの手助けをする――だが。
「動きが早い……踏みつぶされる!?」
「あ」と呟いたがもう遅いか。スイッチは派手に飛び回りイルミナが設置する拠点からサイクロプスを出来る限り話し続ける。
ワイバーンが来る可能性もあるが、出来るだけ距離をとっておけばそれでいい。そう、空を飛び回るという事はソレだけ危険が在ると言うことなのだ。
「あ――!?」
成否
成功
状態異常
第1章 第30節
――これよりミッションを実行します。
そう宣言したアンジェラは新素材で或るグリフ鋼を使用して製造した黒き装甲を身に纏って居た。可能な限り敵を介意し、拡張:視界を以て索敵を担当する。
「竜種の卵とか竜種の百合とかあるといいわね! ……竜種の百合って何かしら?」
そう呟いたのはファントム・クォーツ。彼女たちはフィーネを体調として植物研究を課した調査やルート、拠点の開拓を行うと決めていた。
ファントムが行うのは『音』を奪う事である。それは静寂を齎す隠密の行動――ではあるが、音を頼りに出来ないという事は自身らもヒントを失う事となる。フィーネが耳を頼りに動く時にはその空間を打ち消すこととして六人は山を登っていた。
「あまり植物はないんですよね。ですが、安全性を重視すればゆっくりと進んでいけるはずです」
「さてさて、新規ルートの開拓並びに調査に拠点の設置とは中々に楽しそうであり忙しそうではあるのう。
しかし、未知の場所の捜索故、危険は付き物。余り血気にはやる事無く冷静に進んで行くとしようか」
岩山の植物は少ない。斥候となったユアンは周辺の警戒を怠る事無くそろそろと進み往く。ジャスティーナは戦闘は任せてくれと堂々と微笑んだ。
「私達はあくまでも『調査』をするのが目的であって、今回は戦闘がメインではないからな。
強敵を避けられるのであれば、そのルートを模索しつつ、無事に帰還することを目標としたい。
ただ、私は非戦向きとは言えない身故、最悪の場合は私が皆の盾となろう。警戒を怠らず、地上にて徒歩で移動する。戦闘になれば私が主軸で攻撃を行おう。……私はむしろ、その方が得意だからな」
「頼りにしておるよ」
ユアンにジャスティーナはにんまりと微笑んだ。二人が進む後方でリアナルはバイクに跨がりながらのんびりと進んでいた。
仮拠点を作るべきは山頂近くで或る。そこまで現状ならば隠密行動で進んでいけるだろうというのが彼女たちの算段だ。
何処もかしこも戦闘が起こっているがその地点を避けてワイバーンや空を自在に進むモンスターを避ければ山頂近くに拠点の設立が可能となる。
「サイクロプスとの戦闘はあちら、ロック鳥は一匹は撃破が完了。ワイバーンは空を自在に進んでるから注意すれば良いわね」
ファントムにアンジェラは「了解」と返した。リアナルは『マギラニアR』に跨がったままふわりと浮かんでいるが何時敵影が現われるかと気も抜けない状況で或る。
「仮拠点の荷物を乗せたままワイバーンに攫われるなんてシャレにもならない」
呟いたリアナルに「そうなったら如何しましょうか」とフィーネは小さく笑った。隠密行動に重きを置き、仲間達が陽動やルート開拓を行っている現状、後発はワイバーンにだけ注意しておけば比較的安全だ。
職分を出来る限り探しておきたいが、岩山を登れば登るほどに数が減るのはそれだけ荒廃とした土地だという事か。
「さて……モンスターは――」
ジャスティーナが振り仰いだとき、ユアンは「見えたぞ!」と叫んだ。眼前より迫り来るのはワイバーンだ。
仲間の生存を優先する。先ずは飛び出したのはジャスティーナとユアンだ。続きアンジェラが飛び出した。
ワイバーンは強敵だが、仲間を出来るだけ前に進ませられれば良い。囮役となるファントムはするりとワイバーンの下へと飛び込んで、惑わす星の輝きを纏った。
ネイルから飛び出した弾丸、そして「皆、進んで!」と叫んでからウマに跨がり別方向へと走り出す。
「さあ、こっちにいらっしゃいな。鬼ごっこはお嫌いかしら?」
大人びた笑みを浮かべたファントムは勢いを付けて坂を下る。囮役となった彼女の背が遠ざかるのを確認してからリアナルはユアンを一瞥した。
進むべきは『上』だ。ならば――「進もう! 今のうちに!」
リアナルにフィーナは大きく頷いた。三人で留め、ファントムが引き付ける。その間に山頂を目指してファントム以外の全員が進むのだ。
索敵を行うユアン、そしてアンジェラとジャスティーナを護衛にリアナルとフィーナは仮拠点の設立を急ぐ。
ワイバーンが同じ地点に戻ってくる可能性があるならばできるだけ早くこの場所を離れねばならないからだ。
成否
成功
状態異常
第1章 第31節
「よっし、まずは第一関門突破!」
ダブル・ノットは足場の割る和素考慮して背に聖晶の翼を展開していた。目指すは仲間達が設置した仮拠点だ。
仲間達へとパッチワークでの飛行支援を行うダブル・ノットは不意を打たれぬように特殊なバフスキルを施していた。
色の付いた残像のエフェクトが体から滲む。ソレを確かめた桜はぐーっと背筋を伸ばした。眼に眩しい陽の光。リンノルムと闘った横穴は地下であった。こうも眩しいものなのかと妙な気分になるというものだ。
「リンノルムは倒せたけどまだまだ先は長い! 頑張って進んでいかないとね!
ゲーム的に各エリアにはあぁいうボスがいるのかな? だとしたら道中の敵を積極的に倒してボスに辿りつくまでの消耗を抑える基盤を整えるのがよさそうだね」
デイジー・ベルはこくんと頷いた。いのちをだいじに。そう言って進むが桜の言うとおり各エリアにはああした存在が居るだろう。
今回が中腹で出会ったと言うのもあるのだろうが、デポトワール渓谷に辿り着けば何かが存在して居ないとは限らない。
「姿勢は低くして陰に潜めて。モンスターの死骸でも転がっていましたら臭い隠しのために体に塗り付けますね。時間稼ぎには為るでしょう」
デイジーがそろそろと進む背中へとダブル・ノットは支援を施した。
「敵を全滅させる勢いで……ってのは無茶な話だが、あのリンノルムが倒せるなら、多少でも他のモンスターとかも間引きしておけば後続が楽になるだろうしな。何より死んだ後の復帰がしやすくなるはず!」
にんまりと笑った彼。デイジーはこくりと頷いた。生存執着で粘り続ける事を意識したいデイジーはマンイーターならばこれで避けられる可能性を考えていた。
「なに、ここは私に任せて先に行け、というやつです」
デイジー、ダブル・ノット、そして桜が進むその傍らでヨハンナはふと、考える。
「さっき横穴にアウルベア居たよな。奴が中腹目指す面子の所に行ったらヤバイ気がする。
んー、俺らで奴を引き付けるか? ……それに、やられたらやり返さなきゃな?」
問い掛けたヨハンナを覗き込んで悪戯めいて微笑んだカメリアは蒼き焔を纏ったガントレットに包まれた拳を打ち合わせた。
「道が切り開かれたとはいえ、後詰めは必要でしょう。後顧の憂いを断つために、先へ進む方々の礎となるために。
……それはそれとして、先程のリベンジのために! 負けっぱなしは悔しいではないですか。勝つまで、やるだけです」
二人が目指すのはアウルベアの元である。梟の頭を持った短慮なその生き物は堂々と舞っている。
アウルベアを発見したと同時にカメリアは地を蹴った。アフターバーナー。猛る焔、凍て付く冰――混ざることなきその二つを吹き上げる。
勢いづけて飛び込んだ。放つのは冰焔撃・蒼紅。紅と蒼。相対する色で放つラッシュに続き、ヨハンナが不意を突くように紅蓮の炎を纏った火槍を放つ。
「居たな、アウルベア!! 此処で会ったが百年目だ!」
月下に咲き誇る儚い花の香りを身に纏う。生き血を喰らう不死ノ王(ノスフェラトゥ)は攻撃を重ね――「うおー!」
桜が勢いよく飛び込んだ。
「さぁ、どんどんいくよー! 目指せ頂上! こんな奴倒しちゃえ!」
「はい。任せて下さい」
デイジーがこくりと頷けばヨハンナとカメリアは小さく笑った。支えてみせると意気込むダブル・ノットに「背中は任せた!」と桜は地を蹴る。
猿飛と、そう呼ばれた跳躍能力を生かして一気に刀を叩き付ける。一歩後退、そして体を捻ってアウルベアの攻撃を避ける。飛ぶ力はダブル・ノットから。
デイジーの握るパライバトルマリンの海を讃えた聖なる杖より潮騒の気配が漂った。
「終わりです、アウルベア」
成否
成功
第1章 第32節
『熊 避ける 無理
熊の手 熊鍋 ヨシ』
――と言うのは縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の言である。アウルベアならば食べられる筈だというその意気込みに同意するのはじぇい君だ。
「僕がこのチームに参加したのは、美味しいお肉をいっぱい食べたいってのが動機なんだ。
リンノルムも仕留めたし、次なる獲物はアウルベア。此奴はどんな味がするのかな?」
取り敢えずリンノルムも食べてみようとヒポグリフに食い散らかされたワームを縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は湯引きや焼きで食べることを提案する。それでアウルベアを誘い出してついでに実食するという作戦だ。
「腹が減っては戦も出来ぬ! あ、そうだ。アウルベアって事は顔がフクロウで体が熊だよね?
体は大きいだろうし、足跡もあるんじゃないかな。フクロウも熊も肉食だから、アウルベアも当然肉食だよね。もしかしたら、此奴の食い残しや糞があるかもね?」
リンノルムの事も食べるかもと微笑んだじぇい君に縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧はほにゃほにゃと同意を告げる。
「さて、アウルベアの方に取り掛かるとしよう。リンノルムは……、果たして食べられるのかどうか……」
フー・タオの不安を受けてアイは「一番おいしく食べれる調理法魔眼で分かったりしないだろうカ?」と首を傾げる。
「いや……美味しい物を探す上で大事な事は先入観を無くす事ダ……
もしかしたら珍味だってあるやもしれなイ! 唸れ僕のアクセスファンタズム!!!」
喩え目の前に存在するのが翼の生えていた蚯蚓でも、だ。僅かに忌避感を感じさせるアイとは対照的にヴァリフィルドは取り敢えず食べてみようかと考えていた。
「アウルベアも煮るなり焼くなり――我の場合は焼くことしかできぬが、好きにすればいいな。
ついでに付け合わせになりそうな食材ならぬモンスターも探しておかねばな」
「付け合わせか……美味しいのは居るのかナ。ワイバーンも食べてみたいけれどネ」
まだ倒しきれないかと呟くアイは湯引きされているリンノルムをまじまじと見詰めていた。
「妾はその、食道楽ではあるのだが、ゲテモノ喰いではなくてな……ふむ、流石にこれは……蚯蚓だな……」
フー・タオの感じた忌避感は仕方があるまい。何処からどう見ても蚯蚓である。泥臭い気配はどうにも拭えなかった。世界は広い、食用の蚯蚓だって居るのだと告げるヴァリフィルドに「此れがそうであるかは分からないが……」とフー・タオはまじまじと見詰めた。
「まあ、泥臭いだろうネ……」
アイは何処かのメンバーが倒したアウルベアを分けて貰って調理するのが手っ取り早いだろうねと調理が進んで保存食にも加工されていくリンノルムの様子を眺めていた。
「アウルベアは屹度美味しいだろうけど、挑戦してみるね。いざ――!」
リンノルムの実食なのである。
『蚯蚓 旨い 可能性』
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の言葉にアイは「まあ、泥っぽいケド美味しいカナ」と呟く。こうした場所では食糧の確保も必要だ。
自身らがアバターで食事を必要としていない事が幸いだが現実では――もしかしたらこうして蚯蚓を食べる機会がやってくるのかも知れないとフー・タオは浮かない表情をしたのだった。
「まぁ、まともに殴り合っても分が悪いであろうし、モンスターを見つけたら崖下まで誘おうと思う。
リンノルムを喰らったら出発だ。皆、山頂は行けるか? 其処まで辿り着けば次のエリアだ」
ヴァリフィルドにじぇい君は「次はどんな美味しいものが待ってるんだろうね!」と眸をきらりと輝かせたのだった。
成否
成功
第1章 第33節
「さてさて、まだまだおかわりというか。流石に竜域っていうだけのことはあるよねー」
にんまりと微笑んだのはトリス・ラクトアイス。「さてリベンジマッチと行きましょうか!」とやる気を漲らせたのはアカネである。
「ダメージを与えられているのならいつか勝てるはずじゃ! こうなったら意地でも奴を倒して具にしてやらねばならぬ、お覚悟を!」
意地でもうどんにしたい天狐は悔しげに岩山の中腹でワイバーンを待ち受けていた。
「今度こそ倒すッス! ……でも情報をまずは集めるッス」
リュートはと言えば対照的に逃げ込める場所を探していた。横穴などであればワイバーンは入ってこれない可能性があるからだ。
「あ!」
「わっ」
リュートが潜り込んだ横穴から出てきたのはセララである。運を味方に付けた小さな少女は隙を見つけて突破してきたのだそうだ。
別の敵に敵をなすりつけるMMO伝統のトレインアタックを繰り返して無事にここまでやって来たという事なのだろう。
「何をしてるの?」
「ワイバーン待ちだぞい! 奴をうどんの具にしてやるのじゃ!」
ふんすと胸を張った天狐。白い尾がふわふわと揺れている。
「ワイバーン……流石に厳しいかも知れません。いえ、勿論倒す気で行きますけど囮も兼ねる訳ですね! 今度こそお土産を持って帰ります!」
――姿を現した、と。アカネが構える傘と翼を大きく展開して守りの姿勢となりながら茜傘を開いた。
相手を指さして、冤罪をなすりつけワイバーンの意識を向ける。
「アンコールにお答えして!!」
叫んだのはトリスは仲間が先に進めるようにと囮役を兼ねて集中狙いを受けることになったアカネへと支援を送る。
「――我々は果たしてワイバーンうどんを入手して打ち上げパーティーが出来るのか、乞うご期待!」
声援の中、じりじりとヘイトを集めるアカネ。そして、横面から飛び付いた天狐によるうどん大砲が環境に優しく攻撃を放った。
「うどんにしてやるのじゃ!」
ふんすとお怒りモードの天狐。セララはドーナツをかじってからチョコレートの甘き聖剣を握りしめ一気に跳躍する。
呼び寄せた天雷が勢いよくワイバーンを撃った。雷の気配を孕んだ妖精勇者は地を蹴って後退する。
ワイバーンが勢いよく羽ばたき、現われた旋風にリュートは『どーんっ!』と色とりどりのブレスを持って対抗する。
だが、ワイバーンは流石に亜竜。強力な敵だ。それでも氏に戻りがあるのだからチャレンジは何度もしやすい。
今はアカネが総てを引き付けてくれている。その間に少しでもダメージを重ね続けてワイバーンを弱らせておけば良い。
(この一体だけって事は無いんだろうけど、ワイバーンうどんの為に覚悟して貰うからね!)
トリスのオンステージの傍らでアカネは只管に引き付けては居たが、そろそろ限界か。セララはハッと顔を上げ「構えて!」と叫んだ。
ワイバーンが勢いを付けて飛び込んでくる。攻撃が重なった事への苛立ちによる体当たりか。
旋風が吹き荒れる。体勢を崩したリュートが横穴へと勢いよく転がると同時に、セララの体が浮き上がった。
「――あっ!?」
幸運が味方をしたか。セララは勢いよくワイバーンの背中に張り付いた。直ぐにでも振り落とされるだろうが暫くは空の旅だ。
視界が一気に変容する。地獄往き片道切符でも構わない。中々に感じられぬ素晴らしい経験なのだから!
ぐん、と急上昇した視界で見詰めたのは山頂と――その下に見えたデポトワール渓谷であった。
成否
成功
状態異常
第1章 第34節
「リンノルムをやっつけられたんだね! やったー!
……ではなく、これで先に進めるみたいね、早速行きましょうか。この辺りについてはまだよくわかっていないのよね?
此の儘登り切ってしまえば、デポトワール渓谷だそうだけれど、下り道も危険があるかも知れないもの」
微笑んだ吹雪を凝視したのはエイル・サカヅキである。
「おつー。こっからまた新しいとこっぽいし、酒飲んで気合入れてこー!
……いやふぶまるなんだろ。なんか中の人出てるけどいーの?」
「えっ!? き、気のせいよ」
絶対気のせいじゃないと言う顔をするがそれはそれである。「頑張っていこー!」とスティアは意気込みサメちゃんと友にずんずんと進み往く。
「きっと見たことがない生き物がいっぱいいるんだろうな。余裕があったらサメちゃんを使って行動パターンとか調べてみよう。
ワイバーンとかに食べられたくないからね。私は美味しくないぞー!」
「ふふ、そんなこと言うと食べられちゃうよ? 思った以上に手こずったけど、これでやっと先に進める!
さあ、お楽しみの探検だ、わくわくするね! 張り切っていこうー!」
リンノルムを倒せたことに高揚感を感じながらアレクシアは鼠を召喚して人間が踏み入れられない場所も散策するように心がけた。
「んーっ、穴ん中よりも空が見えた方が気持ちが良いぜ」
シラスはサイクロプスの住処も避けては通れないが、戦闘が起こっており仲間達が交戦していることを耳にしている。それならば、避けられなくとも、痛手を負ったサイクロプスは住処に引き籠もる可能性も――
「山登るぞ登るぞ!! 私は植物だからね!ㅤ足場の悪い道だって根ざせばおちゃのこさいさいだよ!!
……ただでさえ足が遅いのに悪路で更に遅い! しゃらくせぇ!ㅤ飛ぼう!」
シラスの傍らを通り過ぎていったのはきうりんだった。ばっさー! と叫んで蔓の翼を得たきうりん。
「しらぽよ、あれなに?」
「し、しらぽよ?! 偉大なドラゴンにそれはないぜ」
ぎょっとしたシラスにエイルはほら、あれ、ときうりんを指さした。
「いやー! これで地上の敵はスキップ出来るね!ㅤ多分! あとはヒポグリフくんとかロック鳥とかワイバーンでも居ない限り問題は無い!ㅤいや多いね! あっ、ヒポグリフくんだ、お久! ちがう、私は食べ物じゃ!? は、あれはサイクロプス!! 飛ぶんじゃなくて落ちるなら速いでしょ!ㅤ うおおおお私が前菜でお前がメインディッシュだあああ!!」
勢いよく視界から消えていくきうりん。
エイルは「サイクロプスっち居たって」と『しらぽよ』へと呟いた。
「あ、ああ、居たみたい。じゃ、じゃあ、俺いってくる」
見てくるよと飛び上がったシラスに「しらぽよ頼んだ~」とエイルはバリ3を生かして相互念話での索敵を行う。
どうやらサイクロプスはきうりんの落下の衝撃によりヒポグリフくんとの激闘を繰り広げているらしい。
「なら、その辺りはヒポグリフに任せて通り過ぎちゃいましょうか」
ワイバーンが飛んできても叩き落とされてしまいそうだけれど、と。アルトラスカイで生み出した空を飛ぶ氷に腰掛けて吹雪はゆっくりと進み往く。
神の使いたる氷の鳥がシラスを追いかけ、道を進むスティアとアレクシアに情報を共有し続ける。
「うわー、サメ飛んでるー」
「サメちゃんは精霊だからね! サイクロプスとヒポグリフときうりんさんが乱闘してるみたいだから私達はそろそろっと進んじゃおっか!」
エイルに微笑んだスティアは息を潜めてそろそろと進むと決めていた。戦闘は避けられるだけ避けて山頂を目指すが吉である。
「あれ?」
アレクシアは首を傾いだ。小さな鼠たち程度の生き物であれば『山の向こう側』に出られたのだろう。
人間が通れないのは残念だが、人が通れるサイズにまで為ればモンスターが潜んだ横穴に出てしまう事は十分に理解出来る。
「此の儘、山を登り切って目指すは次のエリア、デポトワール渓谷! やっぱり凶悪なモンスターが凄く多いみたいだから気をつけていかないとね」
覇竜観測所のデータに寄ればその地は屍が落ちているそうだ。此れまで肉食のモンスターには追いかけ回されている状況だ。
「餌場だったり」
そう呟いたアレクシアにスティアはぎこちない笑顔を浮かべてから「私、美味しくないよ?」と微笑んだのだった……。
成否
成功
状態異常
第1章 第35節
「気楽に死にながら探索、ですか……どうにも慣れないですが、参加しないわけにもいかないですね。やるだけやります」
そう呟いたハルツフィーネは魔法人形であるクマに索敵を任せていた。そろそろ山頂にも近い。沙月は全力を持って進んでいた。
先程通りすがったサイクロプスの巣穴は大騒ぎの状況ではあった。それ故に、動乱に乗じてここまでやってこれたのだが……。
物陰に隠れて進んできたSikiはワイバーンの数が増えていることに気付いた。
これ以上は隠れては居られないだろうか。ぴょこんと飛び出したすあまは『竜っぽい』存在に眸をきらりと輝かせる。
「いーっぱい来たね!」
トレイン作戦をするにはあまりにも『強敵』だ。行く先に当たるサイクロプスもお取り込み中である。
ならば、此処で引き付けて仲間達を先に通した方が良いだろうか。
「次の景色をさ、見に行くんだ。通してもらうよぉ」
Sikiはちらりと後方を確認する。山頂付近にワイバーンでは入れないような穴があったからだ。すあまと視線が交錯し合う。あの場所まで進めば良い。
死に戻りは極力抑えたいと言うのがSikiの作戦であった。すあまもそろそろ山頂からの景色を確認したく考えていた。
「死ぬのは怖くない。でもね、無駄に死んでいいとも思えないのさ」
「そうだね! それじゃ、一発お見舞いしたら穴に逃げるよ、いっくよー!」
勢いを付けてワイバーンへと攻撃を重ねる。同じく、全力攻撃を放った沙月は「此方です」と声を張り上げた。
Λによる先制攻撃である魔導砲がワイバーンの姿勢を僅かに揺らがせる。
其の儘勢い付けて穴へと転がり込めば、ワイバーンの吐いた焔の息が内部にまで漂った。
「ッ――」
中で息を潜めて居たハルツフィーネは意を決したようにクマさんでワイバーンへと攻撃を行った。
意識は向けることが出来た。ならば、『クマさん=エンジェル』で飛ばしワイバーンを誘い込む。
亜竜であるワイバーンの翼が広がりクマさんを狙って飛んで行く。決死の逃走劇の開始である。
ドールズマスターであるハルツフィーネはクマさんと命を一にしている。故に、クマさんが破壊されればハルツフィーネも戦闘不能になるのだ。
「ワイバーンが多いみたいです。……山を下る際に、脅威になるかも知れませんね」
亜竜が相手ならば逃げ切ることは諦める。だが、仲間達が先に進む手助けにはなる筈だと情報を託しハルツフィーネはクマの操縦に全力を注いだ。
「この間に上へと進みましょう」
沙月の提案に頷きΛは山頂へと進む。
「野生の生物だから油断ならないと思ったけれど……此程までとはなぁ……けれど、登り切れば――!」
其処に広がっているのは広大な景色だ。覇竜観測所から岩山までの景色では無い。其処から更に広がった『竜の領域』の風景。
「わあ」とすあまは小さな声で呟いた。ここまで長い冒険をしてきたようで――それでもまだ少しにも満たないような。
『新しい景色』が其処には広がっている。亜竜種達の骨や竜の遺骸が転がったその地は正しく『覇竜の王国』のようであった。
「ここが、山上……」
息を飲んだSikiは活動を開始したIJ0854の声を聞いた。
「当機の行動プランは、死体がなぜ放置されているかの調査です。
例示しましょう、当機は近場のモンスターの死体を剥ぎ取り、それを当機のフレームに纏います。死体のパッチワーク体です。
故に、この山を下りきらねばなりません。即ち『この渓谷を突破するために偽装を行う際、適切な高度、偽装方法の捜索』です。
これにより、後続の皆さんの健康を守ることにつながるでしょう」
ダメージを受けると爆発四散する。それでも自身の体を生かして、敵の種類を観察することは必要だ。死体の腐食や肉、骨の量などを確認し、デポトワール渓谷の攻略をより容易にするが為に。
ワイバーンの鳴き声が響く。この山より下りきり渓谷を抜けることが次のミッションか――
成否
成功
GMコメント
●目的
『竜の領域』クエストクリア
・『竜の領域』クエストクリア場所までの到達
・『竜の領域』にて『****』『***』との謁見を行う事
フォルデルマン二世からの紹介状(クエスト)で訪れることが可能となった領域です。
現実世界では踏み入れていない『覇竜領域デザストル』をネクスト風に変化させた領域である事が推定されます。
伝承王国としての政治的な意味合いは絡みません。あくまでも『冒険』エリアが拡張されたと捉えて下さい。
●当シナリオは
『サクラメントでのリスポーン前提』のラリーシナリオとなります。
ネクスト2.0パッチを受けて冠題にもされたパッチメインストーリー『竜の領域』の踏破を目指します。
皆さんは当ラリーの終了まで何度でも参加する事が可能です。本ラリーに限っては『危険領域』である事からある程度のリスポーン・リトライを推奨します。
・ある一定数の情報、もしくは『各エリア』クリアフラグ達成で章が変更されます。
・クエストクリアまで、のんびりと進行してゆきますので当たって砕けろの精神で様々な行動を行ってみて下さい。
・前述通り『簡単に死にます』。竜種だけではなく亜竜、モンスターも他域の数倍強敵です。心して挑んで下さい。
・参加時の注意事項
『同行者』が居る場合は【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をプレイング冒頭にご記載下さい。
ソロ参加の場合は指定はなくて大丈夫です。同行者の指定記載がなされない場合は単独参加であると判断されます。
※チーム人数については迷子対策です。必ずチーム人数確定後にご参加下さい。
※ラリー相談掲示板も適宜ご利用下さい。
※やむを得ずプレイングが失効してしまった場合は再度のプレイングを歓迎しております。
●情報精度
このシナリオの情報精度は『未定義』です。
覇竜観測所より随時送信される《行動予測》《観測情報》は皆さんに随時(章変更ごとに冒頭に)『ある程度の予測』を与え行動の指針を齎します。
ですが、彼女たちは観測しているだけです。無いよりマシと捉えて下さい。
●重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
当シナリオに置いては『リスポーンを前提に探索を行う』事を念頭に置いて下さい。
●フィールド『竜の領域』
現実世界では覇竜領域デザストルに該当する区域です。混沌大陸南方の山脈に拠点を置く竜種の領域です。
情報は少なく、観測情報は余り多くありません。幾つか覇竜観測所による観測地域があります。
・ヴァンジャンス岩山
入り口に当たる険しい岩山ですです。岩肌を曝け出した険しい山が続いています。
草木は茂らず、ラサの砂漠地帯よりも荒廃とした雰囲気が感じられます。
亜竜種やモンスターが多く存在します。竜種で無いからと甘く見てはいけません。モンスターそのものも脅威です。
詳細不明。
・デポトワール渓谷
モンスターの死骸が落ちている渓谷です。ミロン曰く此の地は観測上、凶暴なモンスターが多いとされています。
詳細不明。
・ピュニシオンの森
ヴァンジャンス及びデポとワールを抜けた先に存在して居ると思われる森です。モンスターの根城となっており上空より偵察可能な岩山よりも危険な領域となります。
全方位に注意して下さい。この地点に到着した時点で『拠点用サクラメント』が設置されます。
詳細不明。
・???
詳細不明。
ピュニシオンの森の奥地に存在するエリアです。現在はマップにも開示されていません――
●覇竜観測所
覇竜及び竜種を研究するために覇竜領域付近に建てられた研究所です。大陸各国の連名で設立され、多額の補助金が出ています。
立場は中立であり、竜種を観測(めったに姿を見せない)するという職務上、閑職気味の場所であると認識されています。
所長ティーナ・エルヴァスティンを中心に、竜種に関しての観測を行っています。
所員『アウラ・グレーシス』による行動予測と『ミロン・メレフ』の観測情報が都度皆さんのマップに表示されます。
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