PandoraPartyProject

シナリオ詳細

竜域踏破

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ネクスト patch2.0『遥かな東と竜の脅威』
 イベント《Genius Game Next》 クリア評価値がA(最大S+)――

 update:2.0 エリアデータをRapid Origin Onlineにインストールします。

 ――――『『竜の領域』がインストールされました』

 混沌大陸において南方の山脈地帯は安易なる立入りを禁止されている。
 渇いた大地を潤す恵みの雨も怖れるように雲を割く、覆い被さる黒き影は何人をも竦ませた。
 天を裂いた慟哭。地をも包み込む闇。それが1つの生命体による物であるなどと、誰が考えるだろうか。
 否、此れまで幾重もの戦いを越えて来た勇者は識っているはずだ。

 ――《竜種》

 それは絶望の海で廃滅の呼気を吐きながらイレギュラーズを圧倒したリヴァイアサンのような。
 それは熱砂吹き荒れた麗しのオアシスを襲い来た水晶の骸、ライノファイザのような。
 小さき定命の人の子をせせら嗤う脅威。
 それらは混沌大陸でも早々お目に掛れやしない。
 その伝説を目にしたくば死をも覚悟せねばならない覇竜の領域デザストルの奥地へ行かねばならない。

 だが、ネクストは易々と。
 イレギュラーズ達に『ご褒美』を与えるようなつもりでその場所を『実装』して見せたのだ。
 険しい岩山に、入り組んだ渓谷、全てを覆い隠す森……。
 MAPに描かれた情報を見るだけでもその道が過酷である事に気付かされる。
 ……だが、MAPは未だ立入りが禁止されている。

 ――クエストが発生しました。地点《伝承 王宮》 クエスト依頼人《フォルデルマン二世》

 どうやらクエストの受注を以て開放が為されるのだ。そうした所までも如何にも《ゲーム》らしい!

●覇竜観測所
 ネクストにもその場所は存在して居た。フォルデルマン二世の親書を手にしたあなたの向かう先には古びた屋敷が存在して居た。
 その周辺には研究棟が連なり、竜の領域の至近にまで観測塔が存在して居る。防波堤や堤防を思わせる高い塀を有したその場所は大陸各国の寄付を受けて運営が成されているのだろう。様々な国家の特色が入り混じった不可思議な空間であった。

 ――砂嵐をも撃破することの出来た勇者達よ。未踏領域へと踏み入る事が可能となったらしい。
 彼の地は《竜の領域》、竜種と呼ばれる者共の巣窟である。伝説、伝承、それらに触れてみる気はないか――

 伝承・国王陛下からの直々のクエストである。
 彼からのクエストが発生した時点でエリアマップは広がり、立ち入ることが出来なかったこの場所まで進むことが出来るようになっていたという訳である。
 ……今までも此の地まで近付くことは出来たが固く鎖された屋敷の門はさながら国境を隔てる塀のようであった。

「わ、もう到着してる!? ラ、ラナさん、どうして言って下さらなかったんですか! お待たせしちゃった……」
「声は掛けたが望遠鏡を話さなかったのは誰だ? 国王陛下さえ待たせるお前が勇者を待たせるくらい如何という事でも無いだろうに」

 その場所を――《覇竜観測所》を眺めて居たイレギュラーズの元へと走り寄ってきたのは柔らかな白銅色の髪を持った少女であった。
 幼さを滲ませるが彼女は成人した立派な女性である。フォルデルマン二世は『クエスト受注の際』に言っていた。

 ――伝承王国の貴族の娘が覇竜観測所の所長を務めている。エルヴァスティン家の才媛だ。力になってくれるだろう――

「申し遅れました。私は伝承貴族エルヴァスティン子爵家が三女、ティーナです。宜しくお願い致します。
 覇竜研究所にようこそ。皆さんの訪問を所員一同歓迎致します! ……あまりおもてなしも出来ないような場所ですが」
「ティーナ、違うだろう。無謀な挑戦者達だ。もてなすのは私達では無く竜種、そうだろう?」
 所長ティーナの背後に立っていたのは観測所の警備を担う幻想種ラナ・グロッシュラーである。
「そんな。竜種のもてなしなど恐ろしい事ではありませんか。……いえ、けれど、彼等を間近で見られるのは素晴らしいことでしょうね!」
 瞳をきらりと輝かせた研究員レーン・クレプスキュルもラナと同じ幻想種である。翡翠の奥深くに『引き籠もっている』筈の彼女達も参入しているのは何とも不可思議な様子にも思えた。それだけ竜種という存在は人を惹きつけるとでも言うのだろうか……。
「そのデータを私達に齎してくれるというならば実に興味深い。キミはどう思う? ミロン」
「……少しばかりモンスターの動きが活発になっているようだがね。危険は承知の上なら、進入も構わないだろう」
 ルーク・ドリーマーの問い掛けに観測塔より通信を介してミロン・メレフの言葉が届けられる。
「国王陛下からのご依頼だって言うなら、ミロンさんとて、そりゃあ断ることはできないでしょうに。意地が悪いですよ、ルークさん」
「そういうローリンは彼等が此方に圧倒されている間に国王陛下からの依頼内容を把握しているとは……」
 ルークの溜息に笑顔を返したのは『ラインの黄金』とも称される商人ローリン・ヒルデヴォルクである。
 フォルデルマン二世は政治的見地からこのクエストを出したのでは無い。勇者達に冒険を与えようと提案してくれたのだろう。つまり――真なる『勇者であれば冒険してこそ』なのである。
「こほん!」
 咳払いで場を整えるティーナは「アウラさん、竜種及び亜竜種の行動予測を頂けますか?」と通信機を介して屋敷内部の研究棟へと伝達を飛ばしていた。
「はいっ、領域内から亜竜達は出てくる予測は無いけれど、内部で……ヴァンジャンス岩山でモンスターが活発化してるのはミロンの言う通りだよ。
 第一の関門はその辺りかな……。ピュニシオンの森にまで辿り着けたらそこにサクラメントを設置して貰えばいいかも?」
「そうですね。拠点を幾つか設置しながら進んで貰う事になるかと思います。
 逐一私達は《行動予測》《観測情報》を皆さんのマップに展開しますが……私達が思う以上に竜は知能を有している」
「……ただのモンスターって訳じゃないって事さ。怖じ気着いたならクエストを破棄しても構わない」
 ラナさん、とティーナは非難の視線を向ける。彼女は伝承貴族の一員、救国の勇者達に対する期待は人一倍強いのだろう。
「こほん! 竜の領域は危険です。竜だけでは無く存在するモンスターも全て格上です。
 此れより先は『未知の領域』です。踏み入れるならば死を御覚悟下さい。……どうかお気を付けて」

 ――イベント情報が更新されました。
 patch2.0『遥かな東と竜の脅威』
 クエスト名 《竜域踏破》 クエスト内容 《竜の領域を踏破せよ――》

GMコメント

●目的
『竜の領域』クエストクリア
 ・『竜の領域』クエストクリア場所までの到達
 ・『竜の領域』にて『****』『***』との謁見を行う事

 フォルデルマン二世からの紹介状(クエスト)で訪れることが可能となった領域です。
 現実世界では踏み入れていない『覇竜領域デザストル』をネクスト風に変化させた領域である事が推定されます。
 伝承王国としての政治的な意味合いは絡みません。あくまでも『冒険』エリアが拡張されたと捉えて下さい。

●当シナリオは
『サクラメントでのリスポーン前提』のラリーシナリオとなります。
 ネクスト2.0パッチを受けて冠題にもされたパッチメインストーリー『竜の領域』の踏破を目指します。
 皆さんは当ラリーの終了まで何度でも参加する事が可能です。本ラリーに限っては『危険領域』である事からある程度のリスポーン・リトライを推奨します。

 ・ある一定数の情報、もしくは『各エリア』クリアフラグ達成で章が変更されます。
 ・クエストクリアまで、のんびりと進行してゆきますので当たって砕けろの精神で様々な行動を行ってみて下さい。
 ・前述通り『簡単に死にます』。竜種だけではなく亜竜、モンスターも他域の数倍強敵です。心して挑んで下さい。

 ・参加時の注意事項
 『同行者』が居る場合は【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をプレイング冒頭にご記載下さい。
 ソロ参加の場合は指定はなくて大丈夫です。同行者の指定記載がなされない場合は単独参加であると判断されます。
  ※チーム人数については迷子対策です。必ずチーム人数確定後にご参加下さい。
  ※ラリー相談掲示板も適宜ご利用下さい。
  ※やむを得ずプレイングが失効してしまった場合は再度のプレイングを歓迎しております。

●情報精度
 このシナリオの情報精度は『未定義』です。
 覇竜観測所より随時送信される《行動予測》《観測情報》は皆さんに随時(章変更ごとに冒頭に)『ある程度の予測』を与え行動の指針を齎します。
 ですが、彼女たちは観測しているだけです。無いよりマシと捉えて下さい。

●重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
 当シナリオに置いては『リスポーンを前提に探索を行う』事を念頭に置いて下さい。

●フィールド『竜の領域』
 現実世界では覇竜領域デザストルに該当する区域です。混沌大陸南方の山脈に拠点を置く竜種の領域です。
 情報は少なく、観測情報は余り多くありません。幾つか覇竜観測所による観測地域があります。

 ・ヴァンジャンス岩山
 入り口に当たる険しい岩山ですです。岩肌を曝け出した険しい山が続いています。
 草木は茂らず、ラサの砂漠地帯よりも荒廃とした雰囲気が感じられます。
 亜竜種やモンスターが多く存在します。竜種で無いからと甘く見てはいけません。モンスターそのものも脅威です。
 詳細不明。

 ・デポトワール渓谷
 モンスターの死骸が落ちている渓谷です。ミロン曰く此の地は観測上、凶暴なモンスターが多いとされています。
 詳細不明。

 ・ピュニシオンの森
 ヴァンジャンス及びデポとワールを抜けた先に存在して居ると思われる森です。モンスターの根城となっており上空より偵察可能な岩山よりも危険な領域となります。
 全方位に注意して下さい。この地点に到着した時点で『拠点用サクラメント』が設置されます。
 詳細不明。

 ・???
 詳細不明。
 ピュニシオンの森の奥地に存在するエリアです。現在はマップにも開示されていません――

●覇竜観測所
 覇竜及び竜種を研究するために覇竜領域付近に建てられた研究所です。大陸各国の連名で設立され、多額の補助金が出ています。
 立場は中立であり、竜種を観測(めったに姿を見せない)するという職務上、閑職気味の場所であると認識されています。
 所長ティーナ・エルヴァスティンを中心に、竜種に関しての観測を行っています。
 所員『アウラ・グレーシス』による行動予測と『ミロン・メレフ』の観測情報が都度皆さんのマップに表示されます。

  • 竜域踏破完了
  • GM名夏あかね
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年08月27日 17時00分
  • 章数4章
  • 総採用数620人
  • 参加費50RC

第4章

第4章 第1節

「倒した――!」
 その興奮は冷めやらない。堂々と宣言した白銀の騎士ストームナイト(p3x005012) は唇を震わせ、歓喜に打ち震えている。
 鱗を手にした アカネ(p3x007217)は早速、と。琉珂のもとへと向かってきた。
「ふふ、結構早かったのね。もう少しオルドネウムに悪戯されちゃうのかと思っていたわ。
 ようこそ、『わたし達の新しき友人』イレギュラーズさん! 改めて、私は『亜竜姫』……名を珱・琉珂と言うわ」
 にんまりと微笑んだ桃色の髪の少女。その背に見えた巨大な竜の遺骸は街の入り口であろうか。
 大口を開いた竜を眼窩に見下ろして、琉珂は「あの中にわたしの棲まう領域(くに)があるの」と笑みを零す。
「――亜竜集落『フリアノン』
 それがわたしの領域(くに)の名前。わたしはイレギュラーズさんを招くことが出来て嬉しいわ。生まれてから初めての外(よそ)からの来訪者よ」
 前人未踏。未知の領域。その場所に踏み入れたのだと実感し、アレクシア(p3x004630)は息を飲んだ。
「ここが……覇竜領域の奥地、亜竜種の集落。ティーナさんたちが憧れた場所……」
「パなくない? やべーじゃん! スティるん、ご挨拶のスペシャルはどうすん?」
 肩を叩くエイル・サカヅキ(p3x004400) にスティア(p3x001034) は「どうしよう!?」と慌てたように振り返る。彼女の『大盛り料理(スティアスペシャル)』を食い止めんとするシラス(p3x004421) は「好き嫌いを聞いてからにしようぜ?」とそっと問い掛けた。
「それでいいのかしら? ……ええと、それで。琉珂さんは私達を此処に招いてくれたのよね?」
 吹雪(p3x004727) の問い掛けに琉珂は頷いた。此の地――『前人未踏の集落』にまで辿り着くに到ったイレギュラーズ。竜種オルドネウムの撃退のテストは友人の実力を試した者だったのだろう。真読・流雨(p3x007296) は「面白くはあったが、そのテストを考案したのは?」と首を捻る。
「……聞いちゃう?」
「ああ。聞かせて貰うぜ。オマエが考案したんじゃない。クエストデータにだって『データにない存在』との謁見が求められてんだ」
 リュカ・ファブニル(p3x007268) に「そういえばそうだった!」と尾を揺らして驚いて見せたのはルフラン・アントルメ(p3x006816) 。
「それは琉珂、君が言っていた『オジサマ』によるものだったのか。……そのオジサマについて聞かせて貰っても?
 こちらも謁見というならば其れなりの対応をした方が良いだろう。あまり、粗相をしないように。もしも、彼との出会いこそがサプライズであったならば申し訳ない」
 ベネディクト・ファブニル(p3x008160) の『粗相』という言葉にぐるりと勢いよく首をひめにゃこ(p3x008456) へと向けたリュティス(p3x007926) の視線は厳しい。
「ひめは粗相しませんよ」
「そうか?」
「トルテさんひどいのです」
 笑うミルフィーユ(p3x007527) を小突いたトルテ(p3x007127) は肩を竦める。シャスティア(p3x000397) は「オジサマと言う方はどの様なお立場ですか?」と問う。
「竜王って言えば良いかな。この領域の王様。わたしのお父様じゃあないわ。わたしのお父様は早くに竜種に殺されているから」
「王様ってこと……?」
「そう。王様っていいにくければベルゼーって名前があるのよ」
 ベルゼーと呟いた現場・ネイコ(p3x008689) に「王との謁見、成程。確かにそれはビックイベントです」とねこ神さま(p3x008666) は返した。
「その王様が僕達にオルドネウムとの『テスト』を? ……どうやら、弱者は領域に入れたくないように思えるけど」
 マーク(p3x001309)の言葉に琉珂は首を振った。
「ううん、オジサマは優しいから。弱いままこの領域を知ったら皆はもう一度を求めてしまう。
 わたしは友達が死ぬところは見たくないわ。だって、この場所(りゅういき)は命乞いなんて出来ない場所だもの」
「ははー、リュカちゃんは友達って認識してくれてんだ? 嬉しいね」
 神様(p3x000808) のウィンクに琉珂はにんまりと微笑んだ。タイム(p3x007854)は「お友達ね」と微笑みを浮かべ琉珂の手を握りしめる。
「じゃあよ、さっさと代表者(キング)にご挨拶に行ってやろーじゃねーの! 安心しろって伝えなくっちゃな」
「余り見くびられても困るのは確かだ」
 崎守ナイト(p3x008218) の言葉を続けたスキャット・セプテット(p3x002941) がそっぽを向く。グレイガーデン(p3x005196)はこれ以上闘わなくて良いのかとほっと胸を撫で下ろし、竜との闘争に身を焦がしていた九重ツルギ(p3x007105)は新たな登場人物を期待するように『竜の骨』を見下ろした。
「琉珂さん、あの骨は『皆さんが集落にした』のですか?」
「どうかしら。遠い昔の話だろうけれど」
「フリアノンというのは、もしかして――竜の名前、だろうか」
 イズル(p3x008599) の問い掛けに琉珂はそう頷いた。スイッチ(p3x008566)は「進もうか」と提案をする。
「あ! 琉珂ねー、オルにーの寝床直すの手伝ってよ」
 ルージュ(p3x009532) へと「友人を派遣するわね」と琉珂は頷いた。
 縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)を始め、エイラ(p3x008595) 達『美食屋』はオルドネウムの『おやつ』を分けて貰って居るところだろうか。
 イルミナ(p3x001475)が振り返ればすあま(p3x000271)とハルツフィーネ(p3x001701) が手を振っている。
「ほら、お呼びのようだけど」
 そうΛ(p3x008609)が声を掛けた先には『謎のアバター』も立っている。
 一先ずは戦闘は落ち着いたのだろうか。
「往きましょう」
 ゆくりと『フリアノン』へと向かう琉珂の後ろ姿に手を伸ばす。
「ねえ、琉珂さん。やっと貴女に名前を呼んで貰えるね。私達は『オトモダチ』になれた?」
 三月うさぎてゃん(p3x008551) がそう手を差し伸べれば、亜竜種の娘はにんまりと微笑んだ。
「ええ。三月うさぎてゃん。わたしとあなたはおともだち。
 ――『屹度、直ぐに会いに行く道が出来る筈』……あれ、なんだろう。こんなこというつもり無かったのに?」
 琉珂が首を捻る。その言葉の意味が何処に繋がっているかは分からない。
 さて、クエストをクリアするために亜竜の領域(くに)『フリアノン』へと踏み入れよう。


●マスターより
 竜域踏破第四章では『珱・琉珂』と『竜王』を始めとした亜竜種との交流が行えます。
 当ラリーは四章(この章)で終了します。

 ・フィールド名『亜竜集落 フリアノン』
 巨大な竜種の骨を利用して作成された亜竜種の集落です。内部は洞窟となっており、亜竜種たちが過ごしているようです。
 琉珂の案内で大広間へと向かうことが出来ます。探索を行う事も可能です。
 琉珂曰く「好きに過ごして頂戴ね?」とのことです。大広間には琉珂が料理を用意して謁見の用意をしてくれているようです。

 ・珱・琉珂(おう・りゅか)
 亜竜種の少女。現実でもイレギュラーズとエンカウントしたことがあります。
 亜竜姫と呼ばれており此の地の責任者であるそうです。イレギュラーズに好意的であり、彼女からは色々と聞き出せそうです。

 ・『竜王』
 琉珂にオジサマやベルゼーと呼ばれている男性です。No Data……。


第4章 第2節

リリィ(p3x000955)
リトル・リリーのアバター
ファン・ドルド(p3x005073)
仮想ファンドマネージャ
三月うさぎてゃん(p3x008551)
友に捧げた護曲
純恋(p3x009412)
もう一人のわたし
澄恋(p3x009752)
もう一人の私

「微睡竜との戦闘が、終了したようですね」
『フリアノン』の入り口に立っていたファン・ドルドは謎のアバターへと向き在って笑みを零す。先程相対した『彼』は無事にワイバーンを撃退してきたのだろう。
「改めて共闘に感謝を。私は…こちらでは『ファン・ドルド』を名乗っていますわ……キール・エイラットと呼んで、よろしくて?」
「おっと。謎のアバターと呼んでくれ。
 俺様は『まだ』名乗ってないだろ? オマエ達みたいなのに名乗るなら、時と場合を選びたいタイプなんだ」
「成程」
 頷いたファン・ドルドはR.O.Oの現状の共有を行い、彼に探索を申し入れた。クエストの乱入者であったジェーン・ドゥを探してのことなのだろう。
「我々イレギュラーズは、クエストにて今回のように強敵との戦闘機会も多数ある状況です。
 フリアノンへ向かわず、ジェーンらを追って進むのは如何でしょうか? 彼らを追い詰めれば、『次』が出てくるかもしれませんよ?」
「いいや、興味ねぇな。俺様はオマエ達の味方じゃない。あくまで俺様のしたい事をしただけだ。
 確かに強敵は居るだろうが、レベリングは一人でやったほうがいい。それに、あの口ぶりじゃ『俺様がメイン活動』している場所で会えるだろうさ」
「メイン、ですか?」
「ああ。俺様は鋼鉄でレベリングしてる。ま――あの国も厄介そうな事だらけだけどな」
 それは鋼鉄でのイベント『フルメタル・バトルロア』を指しているのだろう。どうやら彼との同道は叶いそうにない。
 だが――ここは『新規エリア』である。
 リリィはほうと息を吐いた。「おお、ここが……いや、凄いね。それしか言葉が出ないよ」と感嘆の息を漏らしてゆっくりと進み往く。
「ここが『亜竜集落 フリアノン』……! ようやく来れた!」
 三月うさぎてゃんにとっては最初に思い、宣言したとおりの『琉珂達に歌を捧げたい』と考えていた。そうすることで何かを果たせる可能性があるからだ。
「さあ、皆いらっしゃい。先ずはオジサマとの謁見よ」
 にこりと微笑んだ琉珂に純恋は「ベルゼーと仰るのですか?」と問い掛けた。ベルゼーという名前には聞き覚えがある。混沌世界での大罪、その一角である暴食の冠位。それがベルゼーと呼ばれる存在であるというのは端で耳にしたことがあったのだ。
(名前もそうですし、目撃情報からも角と翼に尾……竜王と呼ばれているベルゼー様は冠位魔種そのものなのでは……?)
 純恋の問い掛けに琉珂は「そうよ」と何気なく返す。澄恋にとっては『ベルゼー』が何者かには興味は無い。だが、何処か慎重な姿勢である純恋を気にする仕草は見せていた。
「オジサマとの謁見は何時でも出来るし、好きに動いて貰っても構わないけど、どうする?」
「亜竜種の皆さんと少しばかり会話してから向かわせて頂いても?」
「あ、そうですね。琉珂様が生誕してからの初めての来訪者なら、皆さんにも挨拶しておきたいです。
 生誕してから初の来訪者なら、亜竜種でない我々の姿は珍しいものでしょうか? ただの食べ物としてならよく見かけたり?
 それとも琉珂様が生まれる前にここへ来たことある人とかっているんですかねー?」
 知的好奇心を抱いた澄恋にリリィも自身も亜竜種達との会話をと琉珂達とは一度進行方向を分かった。

「初めまして、ベルゼー様。三月うさぎてゃんと申します。お2人に歌を捧げたくこちらへと参りました。聞いていただけますか?」
「ああ、外の者ですかな。これはこれは……よくぞサボり竜を倒してこられました」
 気易く挨拶を返してくれるベルゼーに三月うさぎてゃんはほっと胸を撫で下ろした。「ただいま、オジサマ!」と微笑んでベルゼーの腕に駆け込んでゆく琉珂は懐いた猫のようである。
「歌でしたかな? 是非、外の文化は興味深いものでしてな。琉珂もいいだろう?」
「ええ、オジサマ。わたしも三月うさぎてゃんの歌を聴いてみたかったの。ねえ、何を聞かせてくえるのかしら?」
 捧げるのはいつものアイドルソングではない、落ち着いた曲だった。うれしさを、いまの気持ちを込めて――ファンになって欲しいわけじゃない。
 友達でもあり、部下のようでもいい――私が唯この2人に、ずっと歌を捧げてることが許される存在でありたいんだ。

 歌声が聞こえる。そんな中をリリィは琉珂と同じ種族特徴を――角に翼、尾をもった亜竜種を目にしていた。
 中にはリザードマンを思わす背格好の者も存在して居る。
「こんにちは、色々聞いてもいいかい? 何食べてるとかどんな事してるとか……何だろう、日常について聞いてみたい。……勿論、興味さ」
 崖とかに住んでると思っていて、と頬を掻いたリリィに亜竜種は可笑しそうにからからと笑う。
「僕等は普通の人だよ。そりゃ、こんな場所に住んではいるけれどね。自然と共存してるだけだ」
「なるほどなるほど? 此処はフリアノン様の骨で作られているんですか?」
「そうだよ、外の人。フリアノンの遺骸が亜竜種の集落になったんだ」
「ははあ……ちなみに亜竜種様たち、臨床治験に興味はありますか?
 つよつよな竜を素材にしたら理想の旦那様が作れると思うんですよね。鱗だけ……鱗一枚だけでいいから……!」
 懇願する澄恋にたじろいだ亜竜種を見遣ってから純恋は「お困りではないですか」と肩を竦めた。
「それで、その。亜竜種の皆さんから見た竜王とはどの様な存在ですか?
 この竜域の王様なら話を聞くだけで面白いですし。何か、謁見の前に聞かせて頂ければ……」
 ――側に置いて可愛がって居る琉珂によからぬ悪事を働かせる可能性だって、と。純恋が警戒する様子とは他所に、亜竜種達は可笑しそうに笑った。
 素晴らしい王だと。
 彼のお陰で『外へと容易に出られる道がある』のだと。
「外?」
 首を捻った純恋に亜竜種達は「琉珂に聞いてごらんなさい」と可笑しそうに笑うだけだった。

成否

成功


第4章 第3節

リュカ・ファブニル(p3x007268)
運命砕
イルシア(p3x008209)
再現性母
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録
フィーネ(p3x009867)
ヒーラー

「なぁ、オルにー。そういえば、オルにーから見て『竜王』って呼ばれてる人はどんな人なんだ?」
 フリアノンにはまだ向かわず、オルドネウムの治療を行いながら友人として雑談を行っていたルージュは時間を掛けてでもその体を完治させることを願っていた。
 亜竜種とは誰かが話すと踏んでいる。今はオルドネウムという竜シュから見た情報が欲しい。
 そも、竜種と亜竜種がどういう共存状態なのかも分からない。ベルゼーの名が混沌の冠位魔種であるという事だけは知っている。
「せっかくだからオルにーもフリアノンに行こうぜ? なんなら向こうで一緒に昼寝しても良いしなー。
 寝床も作り直さなきゃだろ? オルにーがいやじゃなければだけどさ」
『……ベルゼーに叱られてしまうではないか』
「竜種なのに亜竜種の王様に怒られるのが怖えーのか?」
『奴は特別なのだ。強いだろう。ああ、あの拳骨は……!』
 ――オルドネウムが『幼い』が故に人なる小さき者に怯えているだけかも知れないが。

「オルドネウムのおやつを分けてくれるのよね? 竜種にも料理ってあるのね!
 てっきり『料理など食材を加工せねば食えぬ惰弱な種族のものよ』って感じだとばかり思っていたわ……。
 でも、存在するからには、超越種たる竜種だもの、きっと私達のものと比べると途方もない芸術に進化させているのでしょうね」
『我の食事は亜竜種の者達が用意してくれている。仔竜の頃からそうであった』
 はて、とイルシアは首を傾げた――が、琉珂が『ワイバーンに乗りたいなら子供の頃から育てれば良い』と口にしていたことを思い出す。
 つまりこの竜種は亜竜種達が育て上げていると言っても構わないのか。故に、人に近く、人の文化にも理解がある。
 滅海竜と比べれば随分と気易い理由であろうか。
「今回は沢山殺されてしまったし、苦労した報酬として、その至高の芸術を心ゆくまで味わわせて貰う事にするわ!
 勿論……エルシアちゃんも立役者の一人よ! 沢山あーんしてあげるから、覚悟しててね!」
『その娘は、何だ?』
「あら、ふふ。エルシアちゃんは私の最愛で自慢の娘だわ!」
 オルドネウムまでも『引いている』がイルシアは気にしない。亜竜種達の料理でもてなして貰えると言うならば早速の腹ごしらえだとリュカ・ファブニルは集落の琉珂が指定した広間へと向かった。
 並んだ料理は目に見て具材などの判別はつかないが『外』の者とは大差が無い。
「よぉ、琉珂。俺はリュカ・ファブニルだ。同じ名前だな? ややこしかったらルカって呼んでも構わねえぜ」
「じゃあ。ルカ。よろしくね?」
 微笑んだ琉珂にリュカは頷く。混沌世界ではディルクとも既知であっただろう琉珂。此方とは色々と違っているだろうが、それでも話に聞くことが出来れば嬉しいとリュカは身を乗り出して。
「琉珂はレオンとかディルクって知ってっか?」
「んー……? ディルクって砂嵐のディルクでしょう。知ってるわ。だってわたし私、砂嵐には遊びに行くもの。怖いところだけど」
 旅人のように認識されているのよと琉珂は微笑んだ。リュカはレオンとディルクがこの領域に踏み込んで出会った訳ではなく琉珂が自ら会いに行っているのだろうと頷いた。
「竜王……ベルゼーってのは亜竜種なのか? それとも竜種が人型とってんのか?」
「亜竜種よ。オジサマはこの集落の王様なの。竜種も倒しちゃうような凄い人だったって皆から聞いたことはあるわ! わたしは、その……見せては貰ったことは無いけれど」
 へえと頷いたリュカの傍らで「琉珂ちゃん!」と手を振ったのはフィーネ。「フィーネ」と呼び手を振り替えしてくれる彼女はしっかりと自身を認識してくれていたようだ。
「今度はお友達になれるでしょうか?」
「ええ、もちろん。此処まで来てくれたのならオジサマも許してくれるわ!」
 にんまりと微笑んだ琉珂にフィーネはほっと胸を撫で下ろす。好きな食べ物は辛いものがブーム、今まではオルドネウムを育てて遊んでいたと琉珂は雑談に応じてくれる。
「それとここは、亜竜種の集落のようですけれど……定期的に通ったり住んだりしても大丈夫なのでしょうか」
「勿論! と、言いたいけどオジサマがお許し下さったら『秘密の道』を教えてあげるわね」
 にんまりと微笑んだ琉珂にフィーネはぱちりと瞬いた。彼女の家で遊ぶ約束は王との謁見後だろうか。
「そうだ、ついでに私の非戦スキル『優しさ』で優しさを付与していいですか? 特に何も起こないんですけど」
「ふふ、いいわよ。オトモダチのしるしでしょう?」
 気易い亜竜種の姫に手を翳して『優しさ』を付与したフィーネは喜びに笑みを零すのだった。

成否

成功


第4章 第4節

蕭条(p3x001262)
叩いて直せ!
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

「亜竜領域フリアノン。これでフォルデルマンさまからのクエストクリアです?」
 そう呟いて周囲を見回した蕭条。
 到達した亜竜領域フリアノン――巨大な竜骨と洞窟からなる亜竜の集落は壮大なる者であった。
「死んだり突撃したり必死で、見つかったあとのことは考えておりませんでした。うかつ。
 に、しても。竜、亜竜種ですかー……現実世界でもお会いできるかも、なーんて考えるとロマンを感じますねぇ」
 そう、この世界は仮想空間ではあるがリアルをベースにして作成された電脳空間だ。
 此度であった彼女等とも諸々の違いはあれども出会える可能性とてある。文が見上げた巨大な骨、古龍フリアノンにさえも出会える可能性はあるのだ。
「おっと、観光客気分丸出しにしている場合じゃなかった。王様やお姫様あいてに失礼な態度はとれませんものね、しゃきっとしましょう。
 ……あ、いえ、わすれてました。
 フリアノンに入る前にオルドネウムさんの寝台を直すお手伝いをしませんと。
 自分の憩いの場所を壊されたり汚されたら、悲しいですもんね。おかたづけ、おかたづけのね、しゃきっとしましょう」
 声を掛けられたオルドネウムの背中にはルージュがごろごろと転がっていた。戦いを経て『仲良く』なったのだろう。二人の距離は近い。何せルージュは『妹』なのだから。
「なぁ、オルにー。竜種ってこの辺りから出かける事は無いのか? 具体的に言うと他の国に遊びに行こうぜ!!」
『王が許せば』
「ベルゼーの許可が必要なのか? んー……小さくなったり人型になったりすればたぶん騒がれずに済むぜー」
 思えば竜種は滅海竜やライノファイザを抜きにすればそれ程目にすることはない。この領域とて竜種の観測区域として『覇竜領域』と名付けられているのだから。
『我は人のような姿にも小型にもなれんよ。その様な異能を持つ龍は居るかも知れぬが、我にはない』
「ふうん、これでお別れするのは寂しいしなー。また、来れたら遊びに来るけどさー。なー、なー」
 ルージュが頬を膨らませる傍らでハルツフィーネもその通りだと頷いた。オルドネウムはクマさんを可愛いと言った。それは中々見所がある存在だという事だ。
「こっちのちっちゃいクマさんが良いですか? それともこっちの私サイズのクマさんが良いですか? 今度特大サイズを特注して持ってきても、良いですよ」
 ぐいぐいとクマさんを差し出すハルツフィーネは「色は水色が良いですか? 氷ですものね。クールです」とオルドネウムへとクマさんをアピールし続ける。
『我の寝床にクマさんとやらは眠るか?』
「勿論です。特注を用意して、しっかりクマさんの寝床も作りましょう。
 そういえばオルドネウムさん、ここからもっと西のことはご存知ですか?」
 ハルツフィーネの問い掛けにオルドネウムは首を振った。一先ずは彼女の持っていたクマさんと戯れている竜種は琉珂達亜竜種が卵より孵して育てたらしい。何も知らぬのだというオルドネウムにとってベルゼーも父代わりなのだろう。
(……魔種がいなくても私達がこの世界でもイレギュラーズである以上、そちらに使命がありそうですよね。
 いえ、そもそも、この世界は何が起こっているのでしょう。ジェーン・ドゥ達の企みもありますが――……)
 ちらとハルツフィーネが視線を向ければオルドネウムはクマさんを懐に抱え込んで首を捻っていた。

成否

成功


第4章 第5節

ベネディクト・ファブニル(p3x008160)
災禍の竜血
三月うさぎてゃん(p3x008551)
友に捧げた護曲
Λ(p3x008609)
希望の穿光
純恋(p3x009412)
もう一人のわたし
澄恋(p3x009752)
もう一人の私

「―――♪
 聞いていただきありがとうございました。いかがでしたか?」
 三月うさぎてゃんにとっては、その歌は琉珂だけではない。ベルゼー、そしてフリアノンへと捧げた歌であった。
 無事にここまで辿り着けたことで自身のやりたいことが見つかったのだと安堵する。
「素晴らしいですな。良い歌でした。ねえ? 琉珂」
「ええ、オジサマ。ふふ、わたしのオトモダチってとってもステキでしょう?」
 胸を張る琉珂に引き連れられてやって来たベネディクト・ファブニルは困惑していた。祖国であれば易々と王との謁見は出来ないものであった。だが、こんなのも気軽に王座の前へと連れ出されたのだ。
「俺はベネディクト・ファブニル。拝謁許可、感謝します。竜王、ベルゼー陛下」
 慌て頭を下げるベネディクトに琉珂と三月うさぎてゃんは顔を見合わせて笑う。ベルゼーを伺い見る『王』こそがこのクエストが発生した意味を知っているのではないかと期待を胸に抱いて。
「我々がこの領域で活動する事に対して便宜を図ってくれたと琉珂から伺っております。
 ……やはり、理由があっての事でしょうか。この領域はこれまで人の侵入を良しとはしなかったのでは?」
「我々亜竜種は『人』でありながらこの領域で生まれ落ちた命でしてな。人語を有する竜種達の庇護下で亜竜種は生きてきたのですよ。
 そうして脈々と続いてきた。ですが、『外の人』というのはこの領域を越えては来れないでしょうな
『侵入を許していたとしても、正しい道を知らねば我らの元には辿り着けなかった』」
 正しき道、とベネディクトは顔を上げた。その言葉を接ぐように純恋は「お話に横槍を入れても宜しいでしょうか」と申し出る。
「純恋?」
「ああ、いえ。気になったことがありました。それもベルゼー様のご許可が必要ならば……この場で聞いてしまった方が宜しいでしょう?」
 驚愕した澄恋に純恋は穏やかに声を掛ける。『七罪』と数えられる彼を現実世界の姿で警戒していたが、この場では余りにも気易い。
 絶対王政よろしく民主を組み敷いたりもしない。嫉妬の冠位魔種さえバーのママであった。そもそも『冠位魔種』なる存在がこの世界では昨日していないのではないか――ならば、問うてみたかった。
「ベルゼー様のお陰で外へと容易に出られる道を琉珂様は有している。過酷な竜域へスムーズに行き来できる道……とかでしょうか」
「琉珂」
 ベルゼーの非難がましい声に琉珂は「でも教える気でしょう?」とベネディクトの背後に隠れた。
「まあ……そうですな。竜域と砂嵐を容易に行き来することの出来る道を我々、フリアノンの亜竜種は持っておりましてな。
 琉珂には社会勉強として――此の地を治めるべき亜竜種の一人として社会勉強に出す事が良くあるのです」
 ベルゼーの言葉にΛは成程、と頷いた。『秘密の道』とやらが現実世界にあるならば。それを亜竜種――口ぶりからは普通の少女である――琉珂一人が辿っていけるならばイレギュラーズもこの道を辿ることができるのでは?
(……いや、でも障害はどのような物かは分からない。今はちょっと難しいかなあ……?
 あっでも仮想世界とはいえボクたちが此処を認識したから豊穣の此岸ノ辺みたく空中庭園に認識されるのかな?
 ん~でも認識されても活動拠点としてはここは超絶ハードすぎるかぁ……命がいくらあっても足りないよね~)
 悩ましいことは山ほどに。Λが静観する傍で三月うさぎてゃんは「ベルゼー様」とその名を呼んだ。
「もしも、もしもその『道』が本当にあるのならば……。
 定期的にここへ歌を捧げに来てもよろしいでしょうか。私は『外の者』です。それでも、ここの歌い手であっても――」
「勿論よ、ねえ、オジサマ! 皆には『道』を教えてあげましょう? 折角の私のオトモダチなのよ」
 微笑んだ琉珂は三月うさぎてゃんの手をぎゅうと握った。落ち着きなく勝気な瞳の少女は言う。
「『竜骨の道』さえ知れば何時だってわたし達と会える。ううん、それどころか、わたし達だって、皆の仲間に――!」
「琉珂」
 ぴしゃり、と叱り付けるようなベルゼーの声に琉珂は「はしゃぎすぎたわね」と俯いた。屹度、フリアノンの歌い手であることは許されている。ベルゼーが琉珂を叱ったのは彼女が皆と冒険の旅に出たいと望んだからなのだろう。
(王でありながら亜竜種の方には勿論、よそ者であるわたしたちにも会ってくださるなんて優しい方。
 琉珂様の育ちが良いのも竜王のおかげでしょう。
 ……直接聞きはしませんが、お父様が亡くなられていてお母様らしき人も見えないということは、親子のような関係なのでしょう)
 澄恋は「琉珂様、結論を急いではなりませんよ」と微笑んだ。
「それにしてもご飯まで用意していただけてとても良くしていただけて、何かお返しできることがあれば良いのですけれど……食材適性のあるわたしの角とか食べます? わたしたちにできることならなんなりと仰ってくださいね」
「ははは、旨いのであれば齧って見たいものですな」
 からからと笑ったベルゼーは「暫くはフリアノンでのんびりとして行くと宜しい。謁見といえど、気易く話しかけてくれれば構いませんぞ」とベネディクトを一瞥してから澄恋へと微笑んだのだった。

成否

成功


第4章 第6節

玲(p3x006862)
雪風
沙月(p3x007273)
月下美人
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス

「成程のう」
 一部始終を耳にしていた玲は『共に冒険をする』事が許されなかったと肩を落した琉珂の補助をつんつんと突いていた。

 ――それも少し時を遡る。ジェーン・ドゥとはそのうちまた相見えるだろう。竜王ベルゼーは此方では魔種ではないがその分、何らかの情報を得ることが出来るだろう。
「琉珂殿へは、砂嵐には遊びに行っているということは――
 ちょっとくらいええじゃろーう? おいしーの食べれるとことか教えてあげるからーのう? 友達じゃろう? 遊びに行きたいのじゃあ」
 玲はおねだりをしておいた。異常事態が続いているこの状況だ。琉珂の事も気になるが亜竜種の力を借りることが出来たならば百人力だからだ。
「ここがフリアノンの骨でできた集落とは……骨の一部とかもらえない? お土産とか……」
「お守りならつくってあげるけど、うん。聞いてみるわ! わたしだって、みんなと遊びたいもの」

 と、言うわけであった。しょんぼりと肩を落した琉珂に「滞在を許されたのですから」と沙月は穏やかに笑みを浮かべた。
「それにしても、このような集落があるとは……外からは見えにくくなっているのでしょうか?
 それとも竜の遺骸を怖がって近づいてこなかったりするのでしょうか? どのような仕組みで街が残っているか、興味は尽きませんね」
「御伽噺だけど、昔はフリアノン様が本当にここを護ってくれていたらしいの。
 みんなが闘ったオルドネウムもその末裔。わたし達は竜種と共存して生きていく。だから奉仕種族と言われているそうよ?」
 信奉するべき竜種が存在するからこそ、こんな場所でも生きていける。外を護る竜種達はワイバーン等に負けるほどに脆弱ではない。
 この集落は規模は規模は大きいが、此処から少し離れた洞穴などにも集落はぽつぽつと存在するらしい。フリアノンを護る竜種達は亜竜種達に世話をされ、日々を穏やかに過ごしているそうだ。
「成程。武術なんかは残っているのですか?」
「そうね。オジサマなら知ってるかも? オジサマって独特な戦い方をするし!」
 本当に『オジサマ』が好きなのだろう。微笑んだ琉珂に現場・ネイコは「困難、竜種もなんのその! やって来ました、フリアノン!」と瞳を輝かせる。
「ねえ、琉珂さん先ずは集落の探索がしたいかな!
 って言っても私一人じゃ迷子になっちゃうかもだし、ココは一つ集落に住んでる琉珂さんに案内をしてもらいたいんだけど……どうかな?」
「ええ、ネイコ。勿論よ! えーと、まずは外の皆って何が見たいんだっけ? あ、サクラメント?」
「それ!!」
 慌てた様子のネイコに琉珂はオジサマには許可を取っているのとネイコの手を引いて走り出す。
 彼女とは良き友人になれそうだ。そう思わせるほどに琉珂は気易く――そして楽しげにイレギュラーズを歓迎している。

成否

成功


第4章 第7節

リュート(p3x000684)
竜は誓約を違えず
リリィ(p3x000955)
リトル・リリーのアバター
イルミナ(p3x001475)
冒険者
ひめにゃこ(p3x008456)
勧善懲悪超絶美少女姫天使

 竜骨の道――琉珂は確かにそう言っていたリリィは「すまない、琉珂」と彼女を呼び止める。
「いやさっき、他の亜竜種から『外へと容易に出られる道がある』って話を聞いてね。しかも、『琉珂に聞いてごらんなさい』って言われてるの聞いて・
 それで、あの竜王の言葉と『竜骨の道』だろ? ……ちょっと気になったから、その事について聞きたいのだけど。
 や、聞いてごらんって言われたら……なんだか聞きたくなるじゃないか。こんなの」
 其れだけではなく琉珂の事も聞いてみたいというリリィに琉珂はにんまりと微笑んだ。
「そうですね、竜の姫さまとやら! ここはゴール。そして! 勿論ここまで頑張ってきたからには何かご褒美があるんですよね!?
 ひめが何度死んだと思ってるんですか! ひめにも分かりやすく、簡潔にどんなものくれるか教えて下さい! なるべく形に残るものをひめはご所望ですよ!」
「竜骨の道の話とかは?」
 ひめにゃこは「それですか!?」とショックを受けたように琉珂をまじまじと見遣った。
「嘘よ、オジサマにも相談しておくわね」
「はい! さて、竜王とやらに会う前に竜姫と姫バトルです! いや力比べとかはひめ瞬殺されちゃうんで!」
「そんなことないわ。わたしって『亜竜種』ってだけでとても強いと思ってるかもしれないけど、普通のニンゲンよ?」
 くすくす笑う琉珂はじゃあどうするのと問うた。その時、ひめにゃこは天啓を承けた。
「ダンス勝負とか……どっちが可愛いかで勝負……みたいな? えー! いいじゃないですか! ひめとズンドコズンドコしましょうよー!」
 ズンドコズンドコする琉珂とひめにゃこを想像してイルミナは思わず噴き出した。琉珂ならやってくれそうなのが一番に面白い。
「……って、琉珂。見た目はさ、アタシらとそんなに変わらないよなー。力は強くねぇのか?」
「え? ええ。だって、私達は竜種に、フリアノンとその血族に護られているだけだもの。『ひめ』さんと力比べして負けるかも知れないし……」
 ひめにゃこが『ひめ』と名乗ることで琉珂は彼女をひめと認識したのだろう。イルミナは「そうか」と小さく呟いた。
「亜竜種って存在も未知そのものだ。ほー、ここがゴールって訳だ。いやー……楽しかったな、うん!
 未知の道を既知に変えてく感覚ってのはこう……ワクワクする! ……このフリアノンも色々見たくなるけど、好き勝手歩いて大丈夫かね」
「勿論よ。好きに歩き回ってね」
 イルミナが頷くと同時にリュートは「やったー!」と万歳をした。
「ドラゴンさんがいっぱいッスから、リュートに合うご飯もある気がするッス!」
「ええ。けど、わたしたちは亜竜種だから……竜種達の食事を用意した方が良いのかしら」
 琉珂の問い掛けにリュートはぴたっと止った。確かに強いドラゴンになりたいのならば琉珂ではなく竜種達を学ぶべきだろうか。
「ドラゴンさんってちょっと強くて気儘でおっきだけッスよね!?」
「そうねえ……オルドネウムと一緒に遊ぶのが一番かも?」
 つんつんと突いてくる琉珂に「成程ッス!」とリュートは頷いた。
 人間用の食事は宴会場のように琉珂が揃えてくれたらしい。何せ、彼女にとっては生まれて初めての『オトモダチ』との出会いなのだから。

成否

成功


第4章 第8節

神様(p3x000808)
R.O.Oの
ルフラン・アントルメ(p3x006816)
決死の優花
トルテ(p3x007127)
聲を求め
ミルフィーユ(p3x007527)
黒鴉
タイム(p3x007854)
希望の穿光

「はぁホントしんどかった。竜種とかマジ永遠に会いたくない。
 でもリュカちゃんみたいな子と出会えるならソレも悪くないだろう乾杯」
 宴会場で神様は琉珂へとグラスを掲げた。琉珂もそれに倣って「乾杯!」と笑みを零す。
「コレ終わった後急ぎの用事ある? 僕と子でも作ってさ 世界平和目指そ」
「それで世界平和が目指せるの? んー……」

「つ、疲れたぁ~! ログアウトしてご飯食べたいけど、ここまで来たら観光しよータイムさん!」
「やっと倒せたー! もうへとへと!!」
 ルフラン・アントルメに手を引かれてタイムはにんまりと微笑んだ。
「死にまくっちゃったけど少しは前衛での立ち回り上手くやれるようになった気がするっ」とタイムが確かめるように自身の拳を見遣れば、ルフランは尾を揺らして大きく頷く。
「すごかったよタイムさんのぱんち! しゅってしてぐわってしてどーん! ってことで折角だし宴にお邪魔しよっか!」
「ルフランさんもお疲れ様っ。回復とっても助かった~! おなかぺこぺこ! 今ならいくらでも食べられる気がするわ」
 そんな二人の視線の先には夏子が立っている。「あれ?」とルフランとタイムは顔を見合わせた。ユーザーネームを表示してみれば『神様』である。
「黒狼隊の中に随分ぼんやりした感じの人がいるなって思ってたけど、あれ、夏子さんだったの!?
 さっき急に普通に喋り出してびっくりしちゃった。ど、どうしてそんなキャラを……?」
「そういえば確かに最後さっきまでの神様がいなくなってて……そういうことー!?」
 二人揃って『おめめグルグル』状態である。しかも夏子は琉珂の手をそっと握って居る。にこやかな琉珂は「ねえ、神様。誰か来たみたいよ?」と首を傾げ――
「むむ、オフで会うとかいつも会ってるしナンパだめ! 通報するよ! えーとなんだっけあかばん! いけないんだー!」
「ふぅ~~~ん? オフ会でナンパする人ってデアイチューっていうんでしょ? ネットマナーの本で見たよ。
 そういうの良くないんだ~ ね、琉珂さん! あんまり酷いとツーホーされちゃうよ~」
 ずんずんと迫りくるルフランとタイムに夏子は何時も通りの笑顔で「あ~らら僕の可愛子ちゃん達」と微笑んだ。
「こんなトコであうなんてコレまた運命としか言えないね」
「んー、確かに。わたしと神様はまだ知り合ったばかりだし、子作りは早そうだわ」
 揶揄うように笑った琉珂の手をぎゅうと握りしめてルフランはずんずんと引っ張る。夏子は彼女等の質問に一つ一つ答えた。
「どうして神に……? いや世界を救おうと。
 そんな事より皆で薄暗いトコにでも行……デアイチュー?
 いや直結って言っ……やめとこ、おっかしぃなぁ? ROOの方が自由にヤレると思ったけど全然色々やりづらいぞ?」
「当たり前でしょー! むー、でもサイクロプスの時は助けてくれたし……ありがと神様、これは御礼のタイムさん」
「えっ!?」
 夏子のもとへとぐいぐいと押されて飛び出したタイム。「ヤッタぁこっちでも柔らかいね」と受け止めた神様の様子を見て琉珂はぴんと来たように「ねえ、どうぞ!」とルフランに両手を広げたのだった――別に外の世界の『ハグ』は挨拶で有るわけではないのだけれど。

「わわっ、見た事も無い料理がいっぱい並んでるのですよ! 折角だから、美味しいのが食べたいのです!
 此方は穏やかな黒狼隊の二名。ミルフィーユがぴょんと跳ねれば、げっそりとしたトルテは「さんざっぱら疲れたし、あれこれ食いてーな」と呟いた。
「えっと……琉珂さーん? お勧めの料理を知りたいのです!」
「ええ。そうね……例えば、このお肉は、」
 丁寧な説明を受けるミルフィーユの様子を眺め、食事のことになると人が変わると笑っていたトルテ。嬉しそうに駆け寄ってきたミルフィーユは「トルテさん! なんか、この料理がお勧めらしいのです!」とお肉を乗せるが――
「何の料理だこれ。肉か?」
「よくわかんなかったのです!」
 ――聞いてくるってなんだろう。トルテが茫然とするが、ミルフィーユは楽しげだ。
「とりあえず、美味しいらしいのですよ! ……美味しいのです!」
 一先ずミルフィーユの口に毒味の気分で放り込んだが、彼女は嬉しそうににんまりと笑っている。
 毒味気分であったのに――彼女が笑っているだけで、気が抜けた。美味しそうな顔をして食事をして居る姿が好きだとは口が裂けても言えないけれど。

成否

成功


第4章 第9節

CyberGhost(p3x000066)
残滓
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
タイム(p3x007854)
希望の穿光
三月うさぎてゃん(p3x008551)
友に捧げた護曲
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

「あ、いたいた。オルドネウムさん。さっきはごめんね。
 テストっていうからも~めちゃくちゃ全力で戦ったけど怪我なんかは大丈夫?」
 優しく問い掛けるタイムにオルドネウムはのんびりとした様子で頷いた。ルージュやハルツフィーネとの対話の間に体力が回復したのだろうか。
 そう思えば竜種と人の差を思い知らされる気がしてタイムは「はあー」と感嘆の息を吐いた。
「わたしなんて沢山やられちゃった。すっごく強いのねあなた!
 黒狼隊のみんなも凄かったでしょう? わたしあの人達と一緒に戦えてよかった。一人ではとてもじゃないけど無理だもの」
『……別に、貴様も小さき人の子にしては強いではないか』
「本当?」
 眸を煌めかせるタイムにオルドネウムはこくりと小さく頷いた。
「ふふ、うれしい。えっとじゃあ、拳で殴り合った仲ってことで……改めて、わたしもお友達になってもらっていいかしら?
 わたしはタイム。よろしくね!」
 拳を突き出せばオルドネウムがちょいと爪先を前にやる。大きさの違いから少しばかり不格好なフィスト・バンプ。
 それでもタイムは喜ばしいと微笑んで。
「そうだ、竜骨の道って聞いたことはない?」
『我は分からぬな……』
「なあ、そこって『琉珂達が行ってる外の道』だろ? わかったぜ!! じゃあ、ベルゼーさんからオルにーが国外に出ても良い許可を貰ってくるな!!」
 走り出すルージュに釣られ、ハルツフィーネも「ベルゼーさんに謁見してきます」とその場を後にする。顔を見合わせたタイムとオルドネウムは思わず笑みを漏らすのだった。

「――許、された?」
 驚いた様に瞬いた三月うさぎてゃんは震えていた。フリアノンの歌い手であることを許されたのか。亜竜姫の友人と認められて。
「あぁ! 嬉しい! 正直もう断られること覚悟だったのに! いまならいつも透明化しているこの飛べぬ羽根で飛び立ててしまいそう!
 ありがとうございます。ベルゼー様、琉珂さん! 私、この国のために沢山沢山頑張ります!
 もちろん他の方のリクエストにも答えますが、聞いてみたい歌のジャンルとかあれば教えてくださいませ!」
 あなたの為の歌声だから。友達で、仕える相手だから。三月うさぎてゃんが興奮した調子で告げればベルゼーは「楽しみにしてますぞ」と頷いた。
「ねえ、三月うさぎてゃんはお歌は作れるの? わたしの歌を作って。わたしよ? 琉珂だけのうた」
 微笑んだ琉珂に三月うさぎてゃんは目を細めて微笑んだ。
「竜王ベルゼー。古き亜竜、幾ばくかの質問を。竜とは、この混沌に"いつから"ある? 最も古き記憶、竜、或いは亜竜の出発点とは何処也や? 竜の原点とは何処に在る?」
「そう焦りなさるな。幻想種の巫女が知らぬように、種の始まりや世界の在り方を私はしりませんぞ」
 宥めるようなベルゼーにCyberGhostは「ならば」と問うた。
「真なる竜種は..."魔種に堕ちる"のか?」
「分かりませんな。そうなった者を我々は見て居ない。見て居ないならばなるかならないかも判別も付かぬと言うもの」
 そう静かに告げたベルゼーの言葉を遮るように「たのもー!」とルージュは叫んだ。
「なぁ、ベルゼーさん。オルにー……オルドネウムと国外に遊びに行っちゃダメか?
 一人で出すのが不安だったら、例えば琉珂ねーと一緒に来てもらうとかさー。もしダメなら、どうしたらOKが出るか教えて欲しいんだ」
「琉珂を出す事なら出来ましょうが、オルドネウム……あれは竜種ですからなあ……」
 僅かな逡巡の後、ベルゼーはルージュへとそう告げた。琉珂は「そうね、竜の子を外に出すとなれば安全も必要よね。なにせ、竜は伝承の生き物だもの」と呟いた。
「ルージュさんがオルドネウムを連れ出せる場所を探してくれた方が、いいかもしれないわ?」
「そっか……うん、オルにーが出ても安全な場所を探すぜ!」
「はい、では提案をこちらからも」
 ハルツフィーネがぴしっと挙手をする。オルドネウムにウケがとれたクマさんについてだ。
「クマさんを、竜域に布教しても良いでしょうか。竜の皆さんにもクマさんの可愛らしさを知ってもらいましょう。これは平和な世界への偉大なる第一歩です」
「ああ、構いません」
 ベルゼーに要求ばかりではなんだ。ハルツフィーネはぴんと背筋を伸ばして。
「私達をわざわざテストしてまで招いてくれたのです。何かクマの手も借りたいお困りごとでも?
 何やら噂では影の国なるものもあると聞きましたし。私達と竜さんは友人と言っても過言ではないので、何でも言ってください、ね」
「それは有り難い。また何かあれば……そうですな、『竜骨の道』を辿り琉珂と友人になって下さるだけで今は喜ばしい」
 竜骨の道、とハルツフィーネは呟いた。成程――その道を辿りラサに至れば今後も彼女との時間が過ごせるのか。

成否

成功


第4章 第10節

マーク(p3x001309)
データの旅人
真読・流雨(p3x007296)
飢餓する
ジュリエット(p3x008823)
天体観測者
ハンモちゃん(p3x008917)
金枝 繁茂のアバター
ロンロン(p3x009884)
成龍のアバター

「此処が… …亜竜領域フリアノン。皆さん友好的ですね。初めまして、琉珂さん。仲良くして頂けたら嬉しいです」
 おだやかに笑みを浮かべたジュリエットに琉珂はよろしくね、と微笑んだ。
 ベルゼーが琉珂に友人を、と求めた事で話題に上っている竜骨の道が彼女は気になったのだという。
「いつでも皆さんと会える、と言うのは大変魅力的ですものね。
 出来るなら、外でも琉珂さんと気軽に会いたいですし色んな物を見てもらいたいです。
 閉じ籠もった世界がいかに狭いかを、私は身を持って知っているから……あ、暗いお話をしてしまい、すみません」
「ううん。そう、そうなの。わたしだけじゃない、亜竜種も普通に冒険を楽しみたい。そう思ってるのよ」
「ふふ、その道を辿ればお会いできるのなら、屹度その日も直ぐです。
 あ、琉珂さんと手紙のやり取りは出来ますでしょうか? 出来ればこれからも交流を持ちたいです」
 ジュリエットの提案に琉珂は勿論と微笑んだ。その様子を一瞥していたロンロンは大きく頷く。
「わかりますぞ。拙者も人好きですからなあ。ですがこの地域に他国の種族はいなかったのでは?
 何かきっかけがあったのでしょうか。年頃のように見えるのですが……失礼ですがおいくつで?」
「わたし? 16になったわ。オジサマが外への道を見つけて、外へと出て……竜骨の道の先に居た『竜信仰』の砂の民と出会ったの。
 それが嬉しかった。だから、おそとにでたいのよ。ミンナと出会えてとっても嬉しい。アナタ達がわたしのオトモダチ第一号だもの」
 微笑んだ琉珂にロンロンは大きく頷く。交流大使であろう琉珂は気易く、そして年若いからこそ柔軟にイレギュラーズの応対をして居るのだろう。
 ロンロンはふと、盃を掲げベルゼーに「一献如何ですかな」と声を掛けた。
「拙者、元の世界ではどっちかって言うと蛇なのですが、竜になりたくありまして。その伝説、その勇姿、その気高さ。かっこいいでしょう?」
「竜。そうだな。竜は不思議な生き物だ」
 真読・流雨が頷く。ベルゼーの周りには彼との謁見――そして、彼に挨拶をするイレギュラーズが集っていた。
 ハンモちゃんの目的はオジサマである。もしかすれば運命の人になってくれるかも知れないそんなトキメキを禁じ得ぬハンモちゃんはベルゼーの前へと進み出る。
「ハンモ自体は試練をまったく受けておりませんが竜王様に謁見するには分不相応でしょうか?
 もしお許し頂けるのであれば会話を通じて竜王様の事を知りたいです。ハンモの事も知っていただけるととても嬉しいです」
「どうぞ、何から話しましょうな」
 彼等は亜竜種だ。それ故に価値観の違いなども気にはなるが、どうやら最初の『出会い』はクリアできたようである。
「ああ、王よ。おねむは、まだ子供だし良くやったと思う。あまり寝すぎても怒らないでほしい。
 子供は寝るのが仕事ゆえに。きっと良く育つだろう。さて、これでおねむとの約束は果たしたな」
「善処しましょう」
「僕の興味は王の強さだ。この竜域で竜種を従え集落をなす。やはり個の強さか。謙遜もあるだろうが、亜竜種はヒトと変わらぬという話もある。
 ……まぁ、回りくどい話を抜きにすると、ちょいと戦ってみたい。
 試練の続きというわけでもないが、少々物足りないと思っていたところだ。ラスボスが控えているなら戦わぬ理由もなかろ?」
「ほう……」
 流雨に続きマークは「それから、厚かましいお願いで恐縮なのですが……僕に、少しだけでも良いので『稽古』をつけていただけませんか? ベルゼ―様は『竜種も倒しちゃうような凄い人』だと、琉珂さんから伺っています」とそう言った。
 彼が手土産に選んだのはジェーン・ドゥ等の三人組だ。この領域には居ないはずの存在ではあるが――さて、ベルゼーは「不思議な存在ですな」と首を捻るだけだ。
「できれば、本気で。詳しくは僕も説明できないのですが、一撃くらいなら『死ぬような攻撃』でも耐えられるので」
「成程……? それも良いですが、いやはや、もう老体でお答えできるかもわかりませんな」
 ――はぐらかされたか、とマークは感じた。彼自身が自分の実力を見せたがらないのは王としての矜持か、それとも隠し球を持っているが故なのかは分からない。
「『また』」
 そう意味深に笑ったベルゼーに一先ずは頷くしかないだろう。

成否

成功


第4章 第11節

Siki(p3x000229)
また、いつか
セララ(p3x000273)
妖精勇者
神谷マリア(p3x001254)
夢見リカ家
神谷アクア(p3x003529)
ねこの妹
白銀の騎士ストームナイト(p3x005012)
闇祓う一陣の風
ベネディクト・ファブニル(p3x008160)
災禍の竜血

「怪盗はずぶといにゃ。具体的にはずっと後ろで安全地帯でついていったにゃ。ずりぃにゃ」
 ふふんと胸を張った神谷マリアの背後で神谷アクアは「闘うつもりはなかったですもんね」と囁いた。
 ――ちなみにアクアはマリアのその更に後ろからこっそり付いてきている。この姉妹、隠密行動が得意すぎなのである。
「お姉様が何か極端にあぶなっかしいことに首を突っ込んでたら引き摺ってでも撤退させるつもりだったのですが、杞憂で済んでなによりなのです」
 そんな二人が訪れたのはベルゼーの元だった。
 マリアは新しい種族との交流はしておきたいと『怪盗の勘』が駆り立てたのだという。
「戦って死ぬのははごめんだけどもし安全にお話しできるならしておきたいにゃ。はじめましてにゃ、何か盗んでもいいお宝はありますにゃ?」
「姉がご迷惑をおかけして申し訳ありません、ところで外界のお宝として私のぱんつとかいかがです?」
 ぱんつってお宝なの? と問うた琉珂にベルゼーが首を振った。神谷姉妹に翻弄されている様子を見れば実に気さくな竜王である。
(気さくな人らしいけど、やっぱ緊張するなあ……いいや、気圧されるなストームナイト! 胸を張って、堂々と!)
 前座がぱんつならば何でもOKな気がして白銀の騎士ストームナイトは堂々と何時も通りの挨拶+大仰な礼でベルゼーの前へと歩み出た。
「竜王ベルゼー殿、お初にお目にかかる! 我が名はストームナイト、人呼んで白銀の騎士! こうしてお目にかかれること、誠に恐悦至極であります!」
「竜の王様。初めまして、私はSikiというよ。無事にここまで来れて、貴方に会えて嬉しい。うん、私は嬉しいんだ」
 おだやかに微笑んだ、そして続くのはセララである。沢山の献上品(おやつ)は準備済み。領域内のお店では無いような、買えないようなシュークリームやドーナツ、ケーキを準備して。
「竜王様、良かったらボクと友達になろうよ。色々お話してみたいの」
「ああ、是非によろしく頼みますな」
 微笑んだ彼に気さくで、フレンドリーでよかったあとセララは笑みを零した。折角持ち込んだお菓子にはベルゼーよりも琉珂が先に飛び付いたか。
 そんな様子を眺めるだけで、Sikiは竜との謁見を喜んだ。竜という存在は自身達の憧れで。『朋』とはまた種別は違うのだろうが――それでも、その姿はあの黄金の神霊にも似ていた。強く彼等に関わってみたい。もっと彼等のことが知りたい。
「よかったらさ、竜の世界の話を教えてくれると嬉しいな。
 普段どんな生活をしてるのかとか、そんな貴方たちにとってきっと当たり前の色々なことを。
 私たちのことも話すからさ。たくさんお互いのことを知って、理解し合って、仲良くなりたいんだ」
「わたしも、お菓子を聞きたいわ!」
 セララの頬をつんつんと突く琉珂がSikiへと微笑む。だが――ストームナイトは硬い表情の儘ベルゼーに問い掛けた。
「色々と歓談したいところではありますが、一点だけ聞いておきたいことがあります。
 ここ最近、何か変わったこと……『異変』というべきことはありませんでしたか?
 現在、この世界のあちこちで様々な異常が起きています。この地域でも、何か起きているのではないかと、そう思った次第で。どんな些細なことでもいい、何かありませぬか?」
「我々にとっては来訪者がいただけで異変ですからなあ」
 飄々としたベルゼーにストームナイトは確かに、と呟いた。彼等にとっては『外から誰かがやってくる』事こそが異変なのか。
「はは、そうだな」
 小さく笑ったベネディクト・ファブニルは伊達や酔狂でここまで導く者ではないだろうと竜王を眺めて居た。
 そもそも、だ。このクエストの発端は『伝承王国』である。得るものは無いだろうが、踏破するだけでも勲章だと――そう、口にされていたではないか。
 彼等にとっては自身らの訪れこそが新たなる変化であったのだろう。突如とした来訪者をオルドネウムと闘わせたのは其れ等を導いて良いか、人となりの確認をしたのだろうとベネディクトは感じている。今は彼等の言うとおりフリアノンの文化を学ぶのもありか。
「ちなみに、この土地の食文化を知りたいのですが竜王や琉珂のお勧めなどをお伺いしても?」
「わたしは、この地域で採れる闘牛のお肉も好きだし、森の草を煮詰めたスープとかも好きよ。広間にみんなが準備してくれてたし!」
「なるほど。ではそれを食べられそうなら早速探しにいってみようかな。他にも知りたい事はたくさんあるし、興味は尽きないよ」
 ベネディクトは現実でもこの様に彼等と逢瀬の時が得れたならば――竜骨の道を探し当てられれば其れは叶うのだろうかと、楽しげに笑う琉珂に手を引かれ広間へ向かいながらそう考えた。

成否

成功


第4章 第12節

アイ(p3x000277)
屋上の約束
ザミエラ(p3x000787)
おそろいねこちゃん
じぇい君(p3x001103)
オオカミ少年
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)
不明なエラーを検出しました
デイジー・ベル(p3x008384)
Error Lady
ろおもこね・こみお(p3x009481)
ねこ小隊

『おやつ おやつ! 食べよ』
 覇竜寝蚯蚓のスープを実食する縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の隣でじぇい君は「オルドネウム、強かったし大変だったねえ」と草臥れたように背を伸ばした。
 美味しいものを貰えただけでも満足だけれど、それでも腹が満たされない。琉珂の用意した料理を旅に行きたいとはしゃぐじぇい君にアイは「どんな味だっタ?」と問うた。
「んー、美味しいかと言えば、微妙だったかも? 琉珂ちゃんのお料理の方が美味しそう!」
「ハハ、オルドネウムのおやつは大人の味だったカ。
 いやぁ無事倒せてよかっタ。何度死んだ事カ……それじゃア、琉珂君やオジサマ……いや、ベルゼーかナ? 彼らとも仲良くしたいネェ」
 行こうかと進むアイの背後でザミエラは不思議そうに周囲を見回した。
「フリアノン……此処が本当の竜の領域ってわけね! 美味しいものいっぱいあるといいなぁ……おやつは琉珂を誘ったら首を振ってたから予感はしてたけど、オルドネウム用って味だったわね!」
 しかも、オルドネウムは善意で分けてくれている訳で。文句は言えないのである。
「フリアノンではリュカみたいな亜竜種がたくさんいるのよね?
 おすすめの食べ物とか教えてもらえるかしら……竜王様だとやっぱりすごい豪華なしょくじだったり?」
「いいや、皆と同じ者を『鱈腹』『たんまり』『驚くくらい』に食べておりますぞ」
「わっ!?」
 ザミエラの呟きの背後に立っていたベルゼーは謁見の間よりホールへと足を運んでいたのだろう。冠言葉が強すぎる程に食事を楽しんでいるベルゼーにアイは「美味しいかイ?」と問うた。
「ここの食事はそれなりに美味で有ると思いますぞ。まあ、外の料理みたいに種類はありませんがね」
「へえ……。ああ、そうだ。ベルゼー達に聞きたい事が実はあっテネ。
 僕って実は『イデア』や『エイス』といった存在を探していてネ。もし知ってたなら教えて欲しいかナっテ」
 アイの言葉にベルゼーは首を振った。どうやら彼女の探している存在は竜域では観測されていないようだ。
『求ム 美味しい 情報 竜王 グルメ?』
「ええ、食事に関しては拘りがありますな」
 縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧はキャッキャと喜んだ。どうにもこの竜の王とは話が合いそうである。じぇい君は「ほんと?」と瞳を輝かせて。
「僕はじぇい君。みんなとお友達になりたいな。
 それはそうと、この辺にも食べられる美味しい動物がいるのかな? 居るのなら教えてほしいな」
「ああ、集落の外にも居ますし……中でも育てている獣が食用でしてな。よければ琉珂に案内させましょう」
 じぇい君がやったーと手を上げれば琉珂は「どんなお味が好きなの?」と楽しげに問い掛ける。
 ホール内に並んだ料理をじいと見詰めて居たデイジー・ベルは食事はぱっと見れば肉類が多く見えるが其れなりに調理の技術は培われているのだと認識した。
「……それにしても料理に使われる食材たちはどうやって調達しているのでしょう?
 フリアノンに行くまでの道中で森などがありましたが、そこで確保をしたのでしょうか?
 危険なモンスターが大量でしたので難易度は高いと思いますが。砂嵐と取引をして確保しているのなら、一体何を対価としてるのでしょう」
「そうね。此処で育ててたり、少し外でモンスターを狩る位はあるわ。あと、調味料はオジサマが砂嵐への道を得ているからマーケットで……。
 料理も砂嵐のものを学んだのよ。道の外には『竜信仰の砂の民』が居て、彼等と出会ってから亜竜種は人らしい生活になったのだとか!」
「成程」
 こくりと頷いたデイジーは確かに味付けは砂嵐や現実世界のラサに近似しているなと認識して居た。
「にゃあ……料理、おいしそうですにゃー」
「あなたも美味しそうな匂い……」
「パンですかにゃ?」
 首を傾いだろおもこね・こみおに琉珂はこくりと頷いた。スクショの撮影も可能だ。食事も好きに食べて良いらしい。
 こみおはパン屋さんであることから、料理は気になって仕方ない。少しピリッとする料理が多いのは匂いや臭みを消すためだろうか。
「こみお、亜竜さんと会うの初めてですにゃ。会えて嬉しいですにゃー。ここにはどんな亜竜さんがいるのですにゃ?」
「そうねえ。フリアノンの血族は其れなりの数が居るかも?」
「サクラメントが設置されるならまた来れますにゃ? 亜竜さん達も他の地域に遊びに来れたら嬉しいですにゃ」
 こみおの問い掛けにサクラメントはオジサマが稼働させてくれたから、観測所からなら訪れることが出来ると思うと微笑んだ。
 そんな彼女にじぇい君はぴん、と背筋を正して手を差し伸べて。
「もし、琉珂ちゃんや竜王様に困っている事があれば言ってほしい。僕達も出来る限り力を貸すよ。だってお友達でしょ?」
 ――オトモダチ、その言葉だけで琉珂は「ええ!」と嬉しそうに笑うのだった。

成否

成功


第4章 第13節

スティア(p3x001034)
天真爛漫
エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター
シラス(p3x004421)
竜空
アレクシア(p3x004630)
蒼を穿つ
吹雪(p3x004727)
氷神

「わーい、クリアだ!」
 眸をきらきらと輝かせたスティアにアレクシアは「ついに辿り着いたんだね!」と目を細める。街と呼ぶべき場所も凄いが、それ以上に色々とした発見がありそうな場所である。
「竜の遺骸の中に街があるんてなんだか不思議だね。珍しい物とかいっぱいあるのかな? 隅々まで探索しちゃうよ」
 きょろきょろと見回すスティアに「マジでボーナスイベじゃん! いつメンの5人でここまで頑張って来たし、ここに来れなかった観測所のメンバーにもお土産情報……って思うけど、まーそれはともかく激レア隠しエリア満喫しよ!」と微笑んだのはエイル・サカヅキ。
 クエスト目的はマスクされていたが、琉珂とベルゼーのことで問題はなさそうだとシラスはもう一度クエスト内容を確認した。
「よーし! リュカちゃんといっぱいお喋りしにいこー! ……こほんこほん」
 思わず素の出てしまった吹雪に「おーやおやおや?」と揶揄うように笑みを零すエイル。RPを徹底するエイルと、RPが外れがちな吹雪は対照的だ。
 琉珂も突如として素の吹雪がお目見えしたことに不思議そうに首を傾いでいる。
「こほん! せっかくこうして知り合えたのだもの、アナタの事をもっと教えてちょうだい?」
「琉珂たちのこと教えてよ、本当に何にも知らないんだ」
 シラスと吹雪へ琉珂は大きく頷いた。食卓を囲めば、スティアがそわそわと身を揺らしている――少しの嫌な予感。
「お待たせリュカるん、これ手土産のタピオカミルクティーとティラミスとナタデココとババロア!
 ……多分その内スティるんのパないスペシャル来るからがんばれマジ」
「スペシャル?」
「んー? スティアスペシャルが気になってるのかな? 披露した方が良いのかな?
 皆もいるから大丈夫だと思うし、どうかな? どうかな? 甘いのでもしょっぱいのでもなんでもお任せあれ! 逃げようとする人は笑顔で逃さない構えだ!」
 にんまりと微笑んだスティアにアレクシアは「と、取り敢えずお招きして貰ってるし-」と慌てたように言葉を重ねて。
「まずはお約束のお土産! 翡翠で採れたりんごで作ったアップルパイ! お口に合うと嬉しいな!」
「ふふ、有難う。ふたりのお土産美味しく頂くわね!」
 何から話す? と首を傾いだ琉珂へとシラスがまず問い掛ける。
「歓迎してくれるのはどうしてだ、逆に俺達に聞きたいことはないの?」
 そもそも、こんな危ないところに過ごしている彼女のことも気になった。竜種の守護を得ていると言うが、亜竜種には『竜神信仰』などでもあるのだろうか。
「オジサマはわたしにオトモダチが欲しかったみたいだけど……」
 首を傾いだ琉珂にシラスは忘れてはいけない『現実の問題』を思い出す。これは仮想空間だ。システムがたまたま気紛れに、竜域への道を示しただけなのかもしれない。……それを現実で活かせる可能性はあるのだろうけれど。
「ねーねーリュカるんイケてる服着てるじゃん? そゆの何処で買うん? いやただの興味」
「これはこの領域内で作っている人が居るの。領域の人々も外の影響を受けたりはしているのよ」
「へえ。あとさ、外に出る道あるって言ってたじゃん? 其れを使って?」
「そうそう」
 その道はベルゼーが使用を許可してくれている。あとで逆に『外』まで辿ってみても良いかもしれない。
「私は普段の生活が気になるかな? どういう物を食べたり、水とかどこから調達場所とか……場所が場所だし、襲われたりすることもあるだろうから、そういう時の対策とかどうしてるのかなーっていうのが気になって!」
「オルドネウム達がこの領域を護ってくれているの。寝過ぎて罰でテストに使われていたけれど。領域内で家畜も買ってるわ」
 成程、案外こじんまりとしたこの領域で快適に過ごしているのだろう。アレクシアは眸を煌めかせる。
「琉珂君たちに伝わってるお伽噺とか、そういうのがあれば読んだり聞いたりしてみたいなあって!
 私達の国だと竜がお伽噺のように伝わってるけれど、ここだとむしろ身近なものじゃない? 本屋さんってある?」
「紙はあまり……けれど、石版に刻まれた物語を得ることは出来るわ。紙って、砂嵐から貰ってくるから、ほら、高価じゃない?」
 もっと道を使用できればと呟いた琉珂にアレクシアはそっかと呟いた。やはり、不便はあるのだろうか。
「一番知りたいのはリュカさんのことかしらね。まずはお友達の好きなものなんかを知りたいと思うのは当然でしょ?
 私は食べ物なら辛い物が好きで、動物なら猫さんかしら……そういえばこの辺りにもそういう普通の動物っているのかしら?」
「わたしも辛いものはすきよ。普通の動物? は、んー、牛はいるけれど猫はあまりみないかも?」
 和やかな質疑応答が続いていく――

成否

成功


第4章 第14節

ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)
叫ぶ流星
ルフラン・アントルメ(p3x006816)
決死の優花
スイッチ(p3x008566)
機翼疾駆
ファントム・クォーツ(p3x008825)
センスオブワンダー
フィーネ(p3x009867)
ヒーラー
フィノア・ミラ(p3x010036)
幻想謳歌

 琉珂にとってはあまり馴染みの無い猫――それがナハトスター・ウィッシュ・ねこが連れていた動物であった。
「あれって、猫?」
 立ち上がって琉珂は眸を煌めかせ、ナハトスターの動きを目で追っている。
 ナハトスターはと言えば、フリアノンの探索を楽しんでいた。遊び場やお店も様々に存在して居る。お土産となるものも多少は手に入れられるだろう。あくまでR.O,Oのアイテムとして、だが。
「あーそっちはだめっぽい! 戻って戻ってー☆」
 外に出ようとする猫に声を掛けるナハトスターは慌てた様子で召喚した猫を手招いた。気儘な猫が首を傾げる。抱き抱えればそれは甘えたようににあと鳴いた。
「さーて、どこにいこうかなー☆」

 猫と呟く琉珂にルフラン・アントルメは勢いよくダイブした。挨拶じゃない気がするけれど、『いちゃついてる二人』は一先ず置いておいて、こちらも仲良くしておくのだ。ちみっこい栗鼠ならどうだと胸を張ったルフランに「かわいい」と琉珂はその頭を撫でる。
「琉珂さんの事を教えて! だってここケーキ屋さんとか本屋さんとかないから、いつも何してるんだろって気になるもん!
 ……って言っても、あたしも昔は森の中の村から出たことなかったんだけどね。
 秘密の道ないかなーとか探して怒られたっけ。うへぇ。は! リュカさんも実はそゆのあるでしょ!
 ヒント! ヒントちょーだい! そしたらあたしも遊びにこれるもん!」
「フリアノンの、奥へとずぅっと進むのよ。そしたら竜の祭壇があって……そこからフリアノンの骨を通っていく竜骨の道があるの」
 行ってみてねと微笑んだ琉珂の言葉を聞きながらスイッチは「成程」と頷いた。竜の骨の内部は亜竜種たちの街。
 彼女に「ワイバーンは子供のころから育てればとか言っていたけど」と問い掛ければ直ぐにワイバーンの卵を孵化させている施設へと誘ってくれる。
「撫でても良い?」
「ええ。やさしくね」
 小さな生まれたてのワイバーンはまるで鳥のようだ。不可思議な経験をし乍らも、大広間での料理は案外『骨(まち)』の中で育てられた動物や野菜などを使用しているためにモンスター料理と言えども忌避感はなかった。
「ああ、琉珂さん。フィーネさんから好みを聞いてね。これを作ってたのよ。ピリ辛煮卵よ」
 どうかしら、とファントム・クォーツは微笑んだ。その後ろからひょこっと顔を出したフィーネは「また遊びに来ました!」と駆け寄る。
「折角なので私もなにか作ってみました。……甘いものなのですが、お口に合うでしょうか?」
「わあ、ぷるぷる! ありがとう!」
 にんまりと微笑む琉珂にファントムは「美味しく食べてね」と微笑んだ。思い人のお腹を満たす参考になるかも知れない。モンスター料理もあるが、砂嵐での知識で混沌――ネクストの料理は琉珂自身も理解しているのだろう。
「琉珂さんのお友達の話とか家族の話も聞きたいわね。仲のいい子、面白い子、尊敬してる子とかね?」
「わたしはこの領域のみんなが大切よ。いつか、みんなの仲間になれるなら……その子達も紹介してあげたいの」
 皆が家族だと思っていると微笑んだ琉珂にフィーネは「待ってます!」と張り切った。
「じゃあ、秘密の道と、琉珂ちゃんと遊ぶ許可を貰いにベルゼーさんに謁見しに行ってきます。
 琉珂ちゃんは一緒に遊べるようにオジサマに言っといてもらえると嬉しいです!」
「ええ!」
 行ってらっしゃいと手を振る琉珂を見て、ファントムはフィーネと琉珂がすっかり仲良しになっているのだと小さく微笑んだ。
 辿り着いたら最早フリアノンだった、とフィノア・ミラは不思議そうに周囲を見回して。
(皆がすごくてクエスト殆ど終わっている……だと……? 少しでも役立てるように何か探索を……)
 そんなフィノアは琉珂を見かけてぺこりと頭を下げる。
「……あっ、初めまして! わたしはフィノア、フィノア・ミラ! ここには初めて来たのよ!
 亜竜集落『フリアノン』……素敵な所ね! のんびり散歩してみたいわ」
「いらっしゃい! 楽しんでいってね、私の領域(くに)!」
 嬉しそうな琉珂をまじまじと見て、彼女の衣服はとても愛らしいことに気付く。亜竜種たちはここで作られた服を纏っているらしいが、交易の商人達が多い砂嵐の知識をフルに活用していることが見て取れる。
「散歩道とかあるのかしら? 行ってみたいなっておもったの!」
「ええ。竜骨の道を辿れば砂嵐に……けどね、あの地域の人ってとぉっても怖くて危険なのよ!」
 揶揄うように笑った琉珂にフィノアは気をつけなければ、と頷いた。

成否

成功


第4章 第15節

君塚ゲンム(p3x000021)
胡蝶の夢見人
すあま(p3x000271)
きうりキラー
アカネ(p3x007217)
エンバーミング・ドール
リュカ・ファブニル(p3x007268)
運命砕
ハンモちゃん(p3x008917)
金枝 繁茂のアバター
アズハ(p3x009471)
青き調和

「不審者だけど楽しい人だね、ランタンくん。
 面白い事探しに来たのかな? 王様に会いに来たのかな? 竜域のもっと奥まで行くのかな?」
 問うたすあまに『ランタン』くんは「俺様は俺様の気の向くまま面白れェものを探してるだけだ」と彼はそう言った。
 竜種に勝てちゃう王様――そんな風に琉珂が称したベルゼーは『ねぼすけ君』よりも随分と小さい。
「琉珂、王様ってご飯は何が好きだろ?」
「えーと……何でも……」
「何でも?」
「そうなの。何でも……」
「そっか……っていっても、挨拶の品とかあれば良かったんだけどお土産話くらいしかないなー……。
 砂嵐の向こうの翡翠や伝承の話は好きかな。こないだの戦いの事とか!」
 屹度好きだと思うと微笑んだ琉珂にすあまはそれならお話ししてみようとスキップをしながらベルゼーの元へと近付いて。
「ん~と何からお話しようかな~お互いの好きな食べ物とか!」
「何でも好きですな」
 時を同じくしてハンモちゃんの問い掛けにベルゼーは琉珂と同じ言葉を返していた。ハンモちゃんはめざとくベルゼーの左薬指をチェック。何も付いていない――が、実質的には琉珂が娘のポジションだ。ある意味で子持ち。さて、ハンモチェックはどうだろうか。
「こほん。ご高配いただき感謝いたします。それではお互いの好きな食べ物の話から。
 ハンモは豊穣……神咒曙光出身ですので和風菓子の饅頭・みたらし団子・羊羹等甘くて好んでおります。
 竜王様はフリアノンに砂嵐の調味料を持ち込まれておられますしそちら関係の食べ物がお好みですか? もし和風菓子にご興味いただけましたら次の機会に持参いたしますね」
「それはそれは。是非お頼みしたいものですなあ」
 腹をぐうと大きな音で鳴らしたベルゼーにリュカ・ファブニルはふ、と笑みを零した。竜と戦える位に強いと言われる亜竜種の王様。特別強いわけでもないのに、そうなっていた存在――冠位魔種アルバニア。
 リュカはベルゼーを危険視していた。現実のベルゼーがアルバニアと『同じ存在』だとするならば。何時か戦う事になる。
「アンタがベルゼーか? 俺はリュカだ。
 話をしようぜ。くだらねえ話でいいんだ。好きな食い物や酒とか、趣味とか。好みの女の話だっていい」
「好みの――」
 ハンモちゃんが耳を欹てればベルゼーは「何だって食べられるものは好きですなあ。何分、食いしん坊の部類でして」とからからと笑う。
 自分が闘う相手のことを知らなければ良い。奪うものが何かを理解すれば足が竦む可能性だってある。
「リュカ……同じ名前ですが琉珂は一等大切ですな。ええ、それは娘みたいなものですから」
 リュカは、その言葉に理解する。現実での彼が琉珂と同じ関係性ならば――ベルゼーから奪うものよりも、琉珂から奪うものが大きいのだ。
 乾杯の為に持ち込んだジョッキは気付けば空になっていた。

 骨を拳でこんと叩いて。アズハは不思議そうにフリアノンの中を見回した。この集落は竜種の骨そのものらしい。
 そうともあれば自身らがいかに小さいのかを理解させられる。
「ところで、亜竜種の種族特徴にはどんなのがあるんだろう?
 見た目は翼や角、か。変化するのかな。他には何か得意なことがある?
 耐性や飛行、あるいは寿命とか。
 例えば俺の身体が金属でできているように、何か亜竜種たる特徴があるんじゃないかと気になってな」
「わたしは、見ての通り角と、翼と尾があるわ。他はなんだろう? んー……今まで『亜竜種』と竜ばかり見てきたから……。
 みんなを見て違いを学べれば良いかもしれないわね?」
 そう微笑んだ琉珂へとアズハはなるほど、と頷いた。
 君塚ゲンムも不思議そうに周囲を見回している。その傍らのアカネはフリアノンの骨を突いたり、叩いてみたり。
「しかし、ここが亜竜達の集落か。随分と面白い構造をしているものなのだな」
「ええ、骨ですものね!」
 ――死骸であることを喜ぶアカネは其の儘、亜竜種の質問をするアズハの隣に収まった。気分は新しい種族、新しい死体、である。
「欲を言えば葬式……墓とか……特に詳しくですね♪ これは新しい種族との交流の為に文化を知る行為! だからセーフです♪」
 文化を知らずにはいけないとアカネは琉珂に力説する。死体の処理に関してはしっかりと行っているらしいが、時々、獣が取りに来るからと琉珂が自然の厳しさを語った。
「――って、これ宴会の席ではだめね」
「構わない」
 食事を楽しみゲンムは勝利に貢献した報酬を受け取った心地であった。亜竜種はこんなにも友好的ではあるが現実では得体の知れない存在だ。
「何故、彼ら彼女らはこのように親しげに接してくれるのか。それが疑問なんだが」
「そうね、みんなにとって私達は異形よね。でも、大丈夫。
 きっと、『わたしがあなたともう一度出会っても、この関係は崩れない』……そう言う予感がするの」
 成程――警戒すべき破滅はまだ、ここにはないようだ。

成否

成功


第4章 第16節

スキャット・セプテット(p3x002941)
切れぬ絆と拭えぬ声音
グレイガーデン(p3x005196)
灰色模様
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
崎守ナイト(p3x008218)
(二代目)正義の社長
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影

「大々的に新しい仕事(business)だ! 何かは勿論決まってる。『ホストクラブ・シャーマナイト』フリアノン支店、開店じゃねーの!
 オーナーは勿論、俺(ORE)! シャンパンの代わりにイズルの力を借りて作ったゲーミングドリンクでおもてなしだぜ!」
 そう叫んだ崎守ナイトを一瞥してから九重ツルギはナイトがそう簡単に休息を取るわけないと理解していたと肩を竦める。
 イズルはと言えば植物採集も戦闘も一段落してしまった。何をするかを迷っている最中のことであった。
「現実とROOの境界が、練達の一連の事件であやふやになりはじめてる様に見える。
 つまり将来的に、ROOでの俺達のアクションが現実へ、今以上に濃く影響する可能性もあるって事だ。
 どちらの世界でも通用する、"特異運命座標に会える店"の記録を刻みつけんのは後に有益と見たって訳だ。
 ――って訳で今宵も叫ぶぜ、シャンパンコールならぬ、ゲーミングコールッ!!」
 堂々と叫んだナイトにグレイガーデンは驚愕したように彼を眺める。
「社長がまたなにか変な概念を杭打ちしようとしてる……?! え、ホストクラブ? ま、まあそれなら普通かな……?」
 普通……?
「ただでさえ女性のRPが難しくて悩んでいるのに、女性アバターで男装の麗人ホストをやる日が来るなんて……っ!」
 このメンバーの良心であろうスキャット・セプテットは其れでも何をするか決まらないなら手伝おうとフリアノンの地図を書いた後合流することに決めていた。
 ツルギはと言えば桃と生ハムのマスカルポーネ、オリーブのレモンコンフィ漬け、自家製白レバーのパテを準備している。
 ドリンクやおつまみは竜域では珍しいものも多いだろうか。屹度、亜竜種たちは気に入ってくれるだろう。
「もしこれが現実に影響を与えて、現実の竜域にホストクラブができたら……?
 どちらが一号店かで連載三ヶ月くらいバトルになるんじゃない? ――冗談はおいといて!
 僕も接客の手伝いかな、それなりに慣れてるし、できればその前に、飲食店とかあった一食たべて、この辺りでの『普通の料理』を知っておきたいけど」
 そんなグレイガーデンに様子を見に来ていた琉珂が「お料理教える?」と問い掛けた。NGについては知っておきたいと考えていたため、その申し出は喜ばしい。
「ねえ、グレイ。あのね、ナイトは光るの?」
「……うん、知ってた。社長のプランが普通のハズないって。ねえ、なんで光るの!?」
 おちおちと教わっていられないとグレイガーデンは叫ぶ。
「それにしても、いいのかナイト。お前の原理でいくと、お前の知らんうちに現実の竜域にホストクラブがぶっ建つ可能性もあるんだぞ? シュールすぎないか?」
 スキャットにナイトはそれも面白いとでも言うかのようにゲーミングにオーラを輝かせていた。
「飲み物はロシアンルーレットカラフルドリンクのみか。……待て、このロシアン、というのは何だ? ――っ!?」
 スキャットが悶絶する傍らで、ツルギは亜竜種の分化を聞き、まじまじとイズルを見た。
 耳掃除を承っているというイズルは「適切に耳垢を取り除いて衛生を保ち、同時にリラックスしていただくというわけさ。なんならカウンセリングもできるよ?」と提案するが亜竜種達は少し心配そうな顔である。
「……仕方がないね、サクラを用意しよう。ツルギさん、ここが空いているよ?」
 お膝に誘われたツルギはどさくさにイズルへと抱きついて。お触りはセクハラでは、と揶揄うイズルにツルギは小さく笑った。
 突如として始まったホストクラブは盛況だ。外の文化に触れられるのは亜竜種達にとっても又とない機会だろう。

成否

成功


第4章 第17節

アクセル(p3x007325)
クリムゾン・ドラゴニア
三月うさぎてゃん(p3x008551)
友に捧げた護曲
ねこ・もふもふ・ぎふと(p3x009413)
しろねこぎふと
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録
みけるん(p3x010041)
彷徨 みけるのアバター

「初ROOー! 重要イベント……の最後の部分かな?」
 そう首傾いだみけるんは「わぁーすっごい、大きい龍の骨だ、洞窟だー! せっかくだから探検するよー! やったー!」と歩き出す。
 それはアクセルも同じだったのだろう。
「他の特異運命座標が切り開いたところに踏み込む形になっちまったが……まぁ……そこは有難く思いつつ情報収集と行こうじゃねぇか」
 そう呟きながらもふと――考える。
 よくよく考えれば竜の領域。『憧れのあの人』さえ辿り着けなかった覇竜。混沌では到底到達出来そうにない領域である。
 ROOと混沌とではまた違うかもしれないが、その情報は現実でも役に立つはずである。
 竜の領域の地形は成程、山あり谷あり難関有りであった。竜種に会えば何とかしたいが、其れ等との『文明』等の違いは計り知れない。
(ゲームの中……もとい、練達のサーバーの中? だし、死んでも戻ってこれるのかな?)
 死んでもサクラメントの復活が出来る。みけるんは「今度こそ異世界転生……じゃない! けど結構死ぬのは痛いよね……」と困ったようにぼやいた。
 重要拠点ではあるが、マッピングスキルが存在すればなんとかできそうではあった。スクリーンショットも許容されていそうだ。
 それに、アクセルが探しているとおり『竜骨の道』さえ通る事が出来ればネクストではこの場所への出入りは容易に行えそうである。
「ねこです。よろしく……みゃー」
 ねこ・もふもふ・ぎふとは竜と闘った仲間達に称賛を。亜竜達は竜種との共存をして居るらしい。スクリーンショットをとれば集落内の様子が鮮やかに思い出として残された。
「子猫さん達、僕についてきてね。みゃー」
 子猫たちと歩き回りながら、ほわほわの光を伴い、のんびりと進む。『けもの』の導きで最奥へと向かう道を見つけた際に亜竜種達は「外に出るの?」とねこへと問い掛けた。
「外?」
「そう。そこから、砂嵐への道があるんだ。でも、一人だと危ないかも」
 竜種にねこはこてんと首を傾げて。
「なぁ、琉珂ねー、琉珂ねー。今、琉珂ねーは外に出て良いって許可を貰えたよな?
 なら、一緒にオルにーが出ても大丈夫な場所を探して貰えねーかな?」
 ルージュは琉珂をゆさゆさ。琉珂は「ええ、頑張って探しましょうね」と微笑んだ。琉珂は外に出れるならば一緒に冒険すればいい。
 と、言えどもオルドネウムを外に連れ出すなら竜骨の道から『出た直ぐ傍付近』だろうが。
「ベルゼーさん。外とここを行き来する竜骨の道ってのがあるんだよな?
 オルにーと琉珂ねーと外に出る時に使いたいから、使わせて貰えねーか? もちろん、代わりにここに何かあったら一番に駆けつけるぜ!!」
「どうぞ。最奥から、抜けて行けばフリアノンの尾が続く道があります。
 ですが出入り口は竜信仰の一族の洞窟に繋がっておりましてな。余り目立たぬように彼等もひっそりとしておるので、道を見失わないように気をつけて」
 そう声を掛けるベルゼーにルージュは分かったと大きく頷いて。
「琉珂さん。琉珂さんの歌……えぇ! 必ず!
 あなたにだけ捧げましょう。他ならぬあなたのおねがいですもの!」
 三月うさぎてゃんはそっと琉珂の手を握りしめた。寝ている人も、食べている人もお話をしている人も沢山居る。
 此処に集えた奇跡に乾杯を――
「歌うわ。琉珂さん。聞いてね?
 最後にふさわしい、壮大で楽しくて明るくて、でもちょっと寂しくなるような曲を歌いましょ」
 終わって欲しくない――まだ、歌っていた。そんな気持ちをぎゅうぎゅうと詰め込んで。
 三月うさぎてゃんは歌い上げる。

 ――これから先の不安や色々起きている問題もあるけれど、音楽には無限の可能性があると信じてる

 そう、だって、私はフリアノンの『うたうたい』
 さぁ! この世界に、この場所に、この機会に、栄光あれ!

「わたしも、歌えるようになりたいわ。あなたの歌、覚えたい」
 琉珂は嬉しそうに目を細めて――後少しだけ。クエストが『終わってしまう』もう少しだけ。
 その歌声に酔い痴れていよう。

成否

成功


第4章 第18節

スキャット・セプテット(p3x002941)
切れぬ絆と拭えぬ声音
ヴィルヘルミナ・ツェペシュ(p3x008547)
†夜の闇を統べる女王†
ファントム・クォーツ(p3x008825)
センスオブワンダー
ハンモちゃん(p3x008917)
金枝 繁茂のアバター
フィーネ(p3x009867)
ヒーラー

(――何だって食べられるものは好き!? つまりハンモもってこと!?
 いやいや、あの言い方は食べ物だったらって事で好みのタイプってことじゃあないでしょ!
 素面で好きだなんて聞き慣れてないから動揺しちゃったじゃん!
 てか何でも食えるからって理由で選ばれてもなーハンモ的にはもっとロマンチックなものをだなーそれに琉珂さんもいる事だし手を出すか出さないかん~、保留!!)
 ――以上がハンモちゃんの乙女モードなのであった。
 飄々としているベルゼーが何でも食べられると述べた言葉の真意が何であるかは解らないが少なくともロマンチックではなさそうだ。
 ヴィルヘルミナ・ツェペシュはベルゼーの前に立った。
 どうせ、現実じゃないくせに。何が竜種。何が竜王。
 そう思ってしまうほどに竜という者に夢想していた。我(カタラァナ)が命を引き換え無くてはならないほどの強大な。故に、『贋作』としてベルゼーを見詰める。
「……ふぅん。すごいね、竜。それでもやっぱり、ホンモノには遠く及ばないかな」
 誰ともなしに呟いてからヴィルヘルミナは微笑んだ。
「ねえ。リヴァイアサン、って知ってる? 我はそれを、見たことがあるの。
 あの竜とアナタ。どうしても、比べちゃう。だから、ねえ……貴方のすごいところ、知りたいな。荒海を呑み込む大権能に、貴方は勝てるの?」
 傲慢がちらりと覗く。だがベルゼーは笑うだけだった。「どうでしょうなあ」と返される曖昧さに僅かに眉を顰めて。
 スキャット・セプテットはゆっくりと頭を下げた。
「竜王様に無理を承知で願い申し上げます。どうぞ私を宮廷画家として召し抱えて戴けないでしょうか」
 彼が王であり、自身が画家。ならば最適な距離感はそれだとスキャットは琉課の絵を描いた。
 ベルゼーに断られる前に、画家は言葉でなく作品で語らねばならない。響かせなくては――彼を識る距離には近づけまい。
「より良い作品を描くには、描く対象への理解力が必用だ。培うために、貴方がたと共に過ごす時間を深く長く持ちたいのです!」
「構いませんぞ。ええ、琉珂にも絵心を教えてやって欲しいほど」
 ほ、とスキャットは胸を撫で下ろした。「私がどうしたの?」と顔を覗かせる琉珂の背後ではフィーネとファントム・クォーツが笑っている。
「秘密の道の利用許可とその場所を教えてほしいです」
「最奥に向かいなさい」
「ありがとうございます! それと、可能であればここで住んでも良いでしょうか」
 琉珂と友達になった。一緒に遊びたいと告げるフィーネの言葉にファントムは「ワオ」と驚いた様に肩を竦めた。
「ワオ、フィーネさん住むの? 大胆ねえ。ワタシは思い人を探したいから定住は難しいけど……そうねイレギュラーズの拠点を作っていいかしら?
 困ったことがあればワタシ達を頼ってもいい。本や知識や食料嗜好品などの取り引きもしましょう?」
 荷運びだって手伝えると行ったファントムにコレばかりはベルゼーはふむと唸った。
「どうかしら?」
「我々亜竜種は日々の営みが死と隣り合わせでしてな……棲まう場所を増やすとなればフリアノンの外へと人が溢れ出す」
「成程……」
 彼等は一度限りの命だ。ファントムやフィーネのようにデスカウント1つで蘇るわけではない。故に、ソレが齎す影響を危惧したのだろう。
「なら、遊びに来るだけならばいいですよね? 住むまで行かずとも」
「ええ。宿泊程度なら構いませんな」
 フィーネははい、と笑みを浮かべた。琉珂と冒険の話や別の国の話をたっぷりと聞かせてやるのである。

成否

成功


第4章 第19節

スティア(p3x001034)
天真爛漫
エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター
シラス(p3x004421)
竜空
アレクシア(p3x004630)
蒼を穿つ
吹雪(p3x004727)
氷神

「さてと、長居は悪いしぼちぼち帰ろかー。
 ホントはお泊りでパジャマパーティー、スッピン見せてマブダチに! っていきたいけどそれは次に! その時はふわもこのオソロのパジャマ着よーねリュカるん!」
「ホント? パジャマ、持ってきてね!」
 わたし、可愛いのが良いわと燥ぐ琉珂にエイル・サカヅキは頷いて。
「そういえばリュカさん。ここで見聞きしたことを覇竜観測所……外から覇竜領域の様子を観測している施設があるのだけれど、そこの人達に伝えたりしても大丈夫かしら? ここまで来るのにもお世話になったから、可能なら色々と教えてあげたいのだけれど」
「構わないわ。信じて貰えるか解らないけど」
 此処に普通の集落があったと言うのは外にとっては信じられないでしょうからと琉珂は笑った。吹雪はくすりと笑う。
 牛さんは居るけど猫さんはいないとメモをすれば琉珂も可笑しそうに笑うのだ。
「やべーお客さんが行かないように見張ってくれてるし、えーとアレよセキュリティ? 的な人ら!
 悪いようにはしない、それはアタシ達が保証する。
 隠したいことがあれば隠していいし、逆に外とのパイプが欲しければうまいこと繋ぐし。メル友に……はここ電波ないか。また遊びに来るし、色々遊ぼ!」
「その人達って、オトモダチになってくれる人? わたしたちを実験動物にしない?」
 エイルは思わず噴き出し「えーとねえ」と呟いたが、シラスは「なってくれる」と力強くそう言った。
「オトモダチが欲しいならさ、俺らの他も歓迎してもらえる?
 もう一度あのオルドネウムを倒せなんて言わないで欲しいんだ、頼む」
 シラスは覇竜観測所の人々との交流を持って欲しいと願った。クエストクリア後に彼等が此処に訪れることを望む可能性とてある。
 ここでは紙は貴重だという。猫がいなかったり――他にも色々と不便はあるはずだ。
「土産物も用意するから」
「おじさまが言っていって居たから『竜骨の道』を辿ってみれば良いと思うけど……」
 何をくれるの、としげしげと問うた琉珂にシラスはふと提案を1つ。
「そうだ、海の食い物だって殆ど知らないだろ?」
「知らない!」
 海が無いものと眸を煌めかせる琉珂に「そういうのも持ってきてあげないとね」とアレクシアは笑った。
「もしよかったら物語の刻まれた石版って持って返ったりできないかな? できれば、でいいのだけど! 私も読んでみたいし、観測所の人も喜ぶと思うし! どうかな?」
「じゃあ、アレクシア。本と交換して? わたしも外の本読んで見たい!」
 約束しようとアレクシアは頷いた。ふんふんと、琉珂が気になること、考えていることをメモに取っていたスティアはにんまりと笑みを零す。
「なるほど、なるほど。教えてくれてありがとー!
 あ、そういえば特産品みたいなのはあったりするのかな? 良かったら私の持ってる物と交換とかして貰えないかな? 本以外もあるよ!」
「うん。喜んで。特産品……ええと……ワイバーンの温泉卵……?」
 なんてことを、と吹雪は言いかけた。スティアは「えーすごい!」と笑う。
 スティアが行っていたのはモンスター情報だ。未観測地域に居たモンスターは未知であり、観測所にとって貴重なデータだ。
「ハイドラ、これまで倒してモンスター、友好的なオルドネウムのこととか!
 オルドネウムは集落の門番みたいなこともしているんだよ。寝坊助さんだからうまいこといかない時もあるみたいだけど……こういった内容を綺麗にまとめてレーンさんに教えてあげるんだ!」
「あーいいじゃんスティるん。じゃあ、あーしのもこれメモって」
 そうやって楽しげに笑い情報を集める仲間達を眺めてから、アレクシアは「お別れだね」と琉珂に向き在った。
「みんな、帰っちゃうもんね」
「うん……。そうだ、琉珂君がまた外に出ることがあれば、観測所にも遊びにいけるようにお話しておくよ!
 何かお話したくなったり……或いは困ったことがあれば、いつでも伝えてね! きっと私達も、すぐ駆けつけるから!」
 アレクシアが手を差し伸べれば琉珂はありがとうとぎゅうとその手を握りしめた。

成否

成功


第4章 第20節

グレイガーデン(p3x005196)
灰色模様
崎守ナイト(p3x008218)
(二代目)正義の社長
コスモ(p3x008396)
aMaTERAs(p3x009817)
引導ノ燈

「私たちの召喚された混沌で今なお未開の地、訪れたい場所が沢山あります。それと、現地の方々とのお話も……楽しみです」
 コスモは周囲を見回して。大きな竜の骨を集落都市、その『尾』を道としているのだそうだ。
 それが集落となるとは考えては居なかった。竜骨の都。それはどれ程に素晴らしいものであろうか。
「初めまして、琉珂様。私はコスモ、と申します。もしよろしければ、あなたのお話を聞かせて欲しい、です。
 会って間もないにもかかわらず不躾なお願いかもしれませんが、私にとって初めて会うあなたが何に喜び、何を憂うのかを、どうか知りたいのです」
「わたしは、あなたが逢いに来てくれたことがうれしい。あなたたちとの別れがさみしいわ」
 クエストが終わればイレギュラーズは帰ってしまう。『ネットゲーム』の中の存在である彼女の憂いをaMaTERAsは眺めて居た。
 混沌世界では観測されていないものを再現してみせる。バグではなく、既に誰かが観測していたか『大地』のデータをサルベージシタか。
 竜王と呼ばれたそれ。途中相見えた他勢力だってそうだ。何を考えているかもaMaTERAsには検討は付かない。
 ――特異運命座標が現実世界で覇竜領域を踏破する事が彼等の目的か。それとも。
 竜を倒してその向こうへ。リヴァイアサンを越えたあの日の再現では面白みもないかとaMaTERAsは集落を眺め見遣る。
「旅の締めくくりには――お土産購入(shopping)じゃねーの!」
 その目の前で崎守ナイトが叫んだ。
「……と言っても、俺(ORE)の分じゃねぇけどな。
 まずは仕事ほっぽり出して竜域に踏み込んでも、文句言わずに帰りを待ってくれてる秘書のティアン。
 この集落で女性に渡すモンでポピュラーなものを聞いて、買って帰るとするぜ!」
 琉珂が草で髪飾りを編もうかと大慌てするのを眺めながら、覇竜観測所のメンバーにも土産を用意しておきたいと考えた。
「ぱぁっと散財だぜ!」
 社長の声が聞こえた気がした――グレイガーデンはそんな彼を遠目に見ながらどうしようかと頭を抱えている。
 攻略が終了して自在に歩き回って良いと言われても、突然の『オフ』に如何すれば良いのか想像も付かない。
「そうだ、ここの郷土料理とかお茶とか、調べに行こう。ここにあるものはきっと、同じものか似たものが現実にもある。
 目星をつけておけば、現実で行き来ができるようになった時、仕入れの算段も付けやすいはず……市場はあるかな?」
「お店?」
 琉珂にやっぱりとグレイガーデンは呟いた。集落である以上店舗固定の店が連なるだけだ。
「ワイバーンの温泉卵食べる? あ、あとね、この草、わたしが育てたの」
 お店にも置いているのよと笑う彼女に自給自足生活の強い竜域の研究は一回では済まないのだとグレイガーデンは感じたのだった。

成否

成功


第4章 第21節

九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

「調査も一段落、たまにはフリーということで……ツルギさん、何か希望はあるかな?
 無茶振りは叶えてあげられないけれど。そうだね……友人同士で叶えられる事なら」
 イズルの言葉に九重ツルギは頷いた。商店街でヒトの営みを見ながら過ごすのも良いだろうと二人で歩いていても、ツルギはどうしても『ピクセル』を探してしまうのだった。
「珍しい、或いは特殊な食材が扱われているかもしれないよ。ツルギさんは料理がお得意だから興味あるんじゃ? ……それ、どうするつもり?」
 ソレばかりではいけないと取り繕ったツルギはドラゴン用のおむつを手にしていた。
「……どうしましょうね、これ。とりあえず洗濯しましょうか」
 そうして和やかな時を過ごすツルギにとっては気になることは多かった。
 あの『ピクセル』は――その存在を気にしてしまうばかりのツルギは心配そうに見上げるイズルへと笑みを零して。
「竜域を踏破するために、俺は9度イズルの前で死にました。回復の役割を担う貴方には色々な面で負担をかけた事でしょう。
 今後も俺は死を繰り返し、一歩でも前へ進もうとします。どうかこれからも、俺を信じてついて来てくれますか?」
「癒し手としては思う所もあるが、全力を尽くす者を誹りはしないさ、むしろ私の方にキミが必要なのだけれどね?」
 そうして、何度も、死を超えた。
 それがこの竜域の在り方だった。

「ベルゼーさん、ありがとうだぜ!! 琉珂ねーも『今』はこれで終わりかもしんねーけど絶対にまた会えるぜ!!」
 ルージュはそう笑った。また何時か、琉珂とオルドネウムと一緒に外へと出られれば――
 にんまりと笑ってから琉珂を抱き締める。「行ってきます」と宣言し、ルージュは走った。
 竜骨の道はフリアノンの尾が地中深くへと突き刺さったものらしい。カンテラが揺れている。危険がないのはそうした理由なのだろうか。
 走り抜ける。
 砂嵐側の出口へ向けて。足を止めること無く、淀みなく。
「これはこれは、『あちらから』」
 そう微笑んだ竜信仰の一族の巫女にルージュは「砂嵐か?」と問うた。
「如何にも。ここは砂嵐の隠里です」

「――竜の領域、完全踏破だぜ!!」

 ガッツポーズする。世界(システム)へ、管理者(かみさま)に向けて宣言しよう。
 この隠里を現実で見つけられたならば。屹度――その希望を胸に彼女はクエスト終了の高らかなファンファーレを聞いていた。

成否

成功

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