シナリオ詳細
<ヴィーグリーズ会戦>ブラックダウン 古代怪獣大進撃!
オープニング
●古代大怪獣、出現
天を突かんばかりの巨大な黒卵がひび割れ、その殻を破壊し立ち上がる。
その姿は黒き巨人のそれであり、翼をそなえた鳥人のそれに見えた。
鴉の首と翼をもち、天を突かんばかりの巨体を備えた古代大怪獣――ノワールクロウ。
「ついに」
翼を広げ、腕を広げ、黒き雷が周囲をなぎ払う。ローレット側の大軍勢が一斉に地面ごと吹き飛ばされ、黒き暴風にさらわれていく。
「ついに取り戻したぞ、神の力を!」
空に大笑響かせて、割れんばかりの嵐を起こす。
「今こそ名乗ろう。我が名は真なるノワールクロウ! 天空の覇者である! 矮小なる勇者の子らよ、平伏し滅び去るがいい!」
「お待ちなさい!」
さらなる暴風を起こそうとした矢先、白き翼が舞い降りた。
吹き飛ばされたローレット側の兵たちを優しい風が受け止め、黒雷を白き閃光が阻んでいく。
全長たったの3m。シンプルで可愛らしい顔をした雛鳥が、ローレット・イレギュラーズたちに守られながらノワールクロウの前へと立ちはだかる。
「フン。この私に力を奪われきったその姿で、今更何ができる」
だが力の差は歴然。鼻を鳴らすノワールクロウに、しかし雛鳥は――神翼獣ハイペリオンは大きく吼えた。
「私は神翼獣ハイペリオン、太陽の翼! 大地の子らを守るのは我が使命! 今こそローレットの皆さんが集め蓄えた力を、使う時!」
空を抜け、大量の白い羽根が集まった。それは幻想各地でこれまでローレットたちが倒してきた古代獣から落ちた力の欠片達。そのすべてがハイペリオンへと集中し、巨大な、巨大な、ノワールクロウに匹敵するほど巨大な――雛鳥へと変化した。
翼をY字に広げ片足をあげるハイペリオン。
「今こそ真の力(アルティメットフォーム)で――おや?」
神々しい白鳥ではなく雛鳥の格好のまま巨大化したことに小首をかしげる、が……。
「良いでしょう。これもまた大地の子らが望んだ姿。力を合わせるのです。大地の子らを苦しめるノワールクロウ、あなたを倒すために!」
――こうして巻き起こった大怪獣対決。そこへ至るまでの物語を、まずは語らねばなるまい。
●beginning-bird go
吹き抜ける風とそよぐ草花のなかで、『ハンマーマン』ハロルド(p3p004465)は自分の右手を見つめていた。
これまで多くを掴み、手放し、壊し、救い、繋いできた手。その手が温かく白い光に包まれて、巨大な存在と自らの魂が融合した瞬間を思い出す。
拳を握りしめ、顔を上げる。
ここ神翼庭園ウィツィロは伝説のすまう大地だ。勇者王のパーティーメンバーであったハンマー使いポジトリ・ウィツィロの代から治められたこの土地は、現代当主サニーサイド・ウィツィロの代にしてついにその伝説が目を覚ましたのだった。
「神翼獣ハイペリオン――」
爽やかな、そして聖なる風と共に、羽ばたく翼の音。空を見上げれば、白くうつくしい巨大鳥の姿があった。
かつて勇者王の見た、『太陽の翼』。彼らを背に乗せ大空を飛び、大陸中を旅したという伝説のかみさまである。
ゆっくりと羽ばたき、目の前へと着陸する。
その姿は伝説にある巨大な白鳥……ではなく、全長3mほどの可愛らしい雛鳥であった。
永き眠りの中で悪しき存在を封印し続ける途中、力を奪われ続けていたのだ。すべて奪われきるまえにスランロゥに施されたイミル族の封印と連動する形で解かれたことは、不幸中の幸いといえるだろう。
「おはよう御座いました」
「周りを見てきたよ」
着陸したハイペリオンの背から、『神翼の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)がすとんと下りる。
「幻想のあちこちに出現した『黒卵』が、一斉に移動してる。周辺地域に被害は出てないけど、爆発の危険があるから撃墜はしないでって伝えておいた」
「やはりか……」
黒卵が空へと浮かび上がり、ある場所を目指して一斉に移動を始めたというニュースは幻想各地を騒がせた。
ミートルンド一派がレガリアをちらつかせたことで幻想貴族各位が動きを一斉に鈍らせたというニュースと共にして。
「アーサランド鉱山の事件でも、ノワールクロウはミートルンド一派と繋がっていた。無関係とは思えないわ」
声に振り返ると、愛馬ラムレイに跨がった『騎戦の勇者』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が馬を止めハイペリオンたちを見ていた。紫の髪が、風に大きくなびく。
そこで、ふと、風の質が変わった。どろりとした生ぬるい、どこか不吉な風が吹いた。
「情報は『揃った』のか、司書?」
「ええ……もう招集はかけてあるわ」
イーリンが、ハロルドが、ジェックが、そしてハイペリオンが、その場に居合わせた者たちが皆一様に振り返る。
そこにあったのは、巨大すぎる卵だった。
ウィツィロにある日突如として現れた巨大な卵。規模感からいえばギアバジリカのそれに近い。卵である以上何かが……そして間違いなく悪しきものが生まれるだろうと厳戒態勢を敷いていたハロルドたちだったが、イーリンの情報によって謎に対する最後のピースが埋まった形となった。
「真ノワールクロウが復活を早めようとしているわ。フレイスやミートルンドが死のエネルギーを必死にかき集めていたその横で、エネルギーをかすめ取っていたのね」
通りで足りない足りないとわめいていたわけだわ、とイーリンは首を振り、そして馬を走らせる。
まるでそうなることが予想できていたかのように、巨大な黒卵は空へと浮かび上がり、そしてある場所を目指して移動し始めた。
「行くわよ、奴らの集合地点は――『ヴィーグリーズの丘』!」
大慌てで動き出す軍勢。その中で、ハロルドたちも動き出していた。
「領地が吹き飛ぶ覚悟で構えていたが、わざわざ場所を移すか。いいだろう、どこまでも追い詰めてやる。ローレット・イレギュラーズに招集をかけろ! その領地にもだ! 貴族が動けないなら俺たちが動くまで……!」
剣を抜き、わくわくウィツィロくんカートへと飛び乗るハロルド。
「いいか! 大人も貴族も先生も、いつでも自分を守っちゃあくれない。どうしても守りたいものができたなら、己が拳を固めて殴れ! 俺たちがやらねば、誰がやる!」
一方で、ジェックもハイペリオンの背に乗って大空へと飛び上がっていた。
「私達も現地へ向かいます。真ノワールクロウが復活したのなら、大勢の被害が出てしまう。その力を中和し対抗するには、私の……そして私達の力が要るはずです!」
「うん……」
背に乗り、風となって、白き髪をなびかせるジェック。
かつて黒卵から出現した強大な敵に、同じく巨大化したハイペリオンと融合することで対抗した思い出が蘇る。夜を払う太陽の翼、ハイペリオン。それは人々の意志と希望が合わさってこそ、本当の力を発揮するのだ。
「たどり着くまでに、多くの邪魔が入るでしょう。ミートルンド連合軍も展開を始める筈です」
「大丈夫」
ハイペリオンの頭にそっと手を触れてから、ジェックはガスマスクを装着した。
背負っていたライフルをまわし、手に握る。
「守ってあげる。一緒に戦おう、ハイペリオン」
●ミートルンド連合軍VSローレット連合軍
ヴィーグリーズの丘にて、二つの勢力がにらみ合っていた。
レガリアの存在にも臆せず軍を動かせた蛮勇ある貴族軍……は僅かなもの。
味方の大部分を成していたのは、ローレット・イレギュラーズと彼らの領地から選抜された大軍勢であった。
ミートルンドの兵士や巨人、古代獣たちが迎え撃つ丘に向け、馬上から旗を掲げるイーリンと彼女率いる騎兵隊。
幻想の勇者のひとりとして、『騎戦の勇者』として、彼女には全軍突撃の号令を任されていた。
「いくわよ――」
戦いの幕が、上がる。
- <ヴィーグリーズ会戦>ブラックダウン 古代怪獣大進撃!完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別決戦
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年07月07日 22時08分
- 参加人数142/∞人
- 相談6日
- 参加費50RC
参加者 : 142 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(142人)
リプレイ
●ミーミルンド連合軍VSローレット連合軍
ヴィーグリーズの丘にて、二つの勢力がにらみ合っていた。
レガリアの存在にも臆せず軍を動かせた蛮勇ある貴族軍……は僅かなもの。
味方の大部分を成していたのは、ローレット・イレギュラーズと彼らの領地から選抜された大軍勢であった。
ミーミルンドの兵士や巨人、古代獣たちが迎え撃つ丘に向け、馬上から旗を掲げるイーリンと彼女率いる騎兵隊。
幻想の勇者のひとりとして、『騎戦の勇者』として、彼女には全軍突撃の号令を任されていた。
――その一方であるミーミルンド連合軍前線指揮官パクツィロ・ケインリヒは鋼のように固く持ち上がった口ひげを鋼の指で撫で、鋭い視線をはためく敵軍(つまりはイーリン)の旗に睨めつけていた。
翼を羽ばたかせ、軽くホバリングをかけながら隣へと着地する兵士。
「報告致します。ただいま観測班より騎兵隊の観測結果が――」
「王都であれだけ集まったのだ。15といった所か? 数百規模の精鋭が揃ったギルド・ローレットといえど連携規模はおよそ10が限度。それ以上の連携をこの短期間でとれるはずもない。前線の戦いは奴らさえ潰してしまえば……」
「いえ」
兵は額から頬にかけて流れた汗を乱暴に拭い、『申し上げます』と続けた。
「ローレット前線部隊こと『騎兵隊』――総勢41! 密に連携有り!」
「我々は嘗て英雄王が未来を託した地に生きる。然らば未来を次代に託すのは、我々だ!彼らではない!」
愛馬ラムレイの馬上にて、はためく印は紫光の――。
『騎戦の勇者』イーリン・ジョーンズ。
過去最大規模の騎兵隊を文字通りに率いて、ローレット連合軍最前線にて。
「征こう『神がそれを望まれる』!」
「「『神がそれを望まれる』!」」
彼女の号令に応じて、数百という兵のうち、約30人ほどの斬り込み担当『騎兵隊・地上部隊』が一斉に突撃を開始した。
数を見誤った敵軍パクツィロは慌てて対応部隊に突撃命令。加えて中央部隊から無理矢理分離させた二個小隊を突撃させた。
「『最序盤で部下に無理を強いた』わね? 負けよ、あなたの」
うっすらと笑うイーリン。その左右に真っ赤な馬赫塊、ならびに黒い鎧を纏った白馬がそれぞれ並んだ。
「ココロ、アト! 作戦通りに!」
「任せて――!」
『医術士』ココロ=Bliss=Solitudeは馬上で魔道書を展開。タンザナイトの輝きが青と紫の光をたたえ、混ざり合う螺旋の魔力をくみ上げていく。
掲げた指にそれは集まり、指し示す敵を討ち滅ぼすのだ。
数の差、そして馬に乗るというそのスピードとサイズによる迫力はミーミルンド最前衛部隊を怯えさせた。その怯えが、ココロの魔道爆発によって加速する。
「突撃点は……ここだね。
天主我に力を帯びさせ……指に技を、腕に力を……さあ、行くとしよう!」
自らに自己再生魔法を付与すると、『観光客』アト・サインは拳銃を馬上から構えた。
彼の乱射に合わせる形で馬の速度をあげる『ママーゴラ』フラーゴラ・トラモント。
「お師匠先生名指しでご指名の騎兵隊……。
大戦果もぎ取りたいねえ? ワタシの心燃えてるよ」
アトと共に馬を加速させる。
陣形はちょうどイーリンの前方をカバーする形だ。
そこにもう一つ並んで盾となったのが、『騎兵隊一番槍』レイリー=シュタイン。
「騎兵隊、レイリー=シュタイン! 一番槍よ!
さぁ、誰でもいくらでもかかってきなさい! ここは通させないわ!」
レイリーの跨がる歴戦の愛馬ムーンリットナイト。栗毛の毛並みを踊らせて、怯える敵陣めがけてまっすぐに突っ込んでいく。
敵部隊が思わずよける軌道をとったせいだろう。レイリーはまるでボーリングのピンをはじくかのように敵を蹴散らし、敵陣中央へと突っ込んでいく。
まさか突然中央まで攻め込まれると思っていなかった敵部隊は慌てて槍をとり迎撃――しようとするが、そのすべてを馬上から跳躍したフラーゴラが矛先を蹴りつけてジグザグに跳ね回ることで制してしまった。
「お師匠先生! 今!」
瞬間、迸る紫の魔術閃光。
光はおよそゆっくりと回転し敵部隊を巨人の剣のごとくなぎ払っていく。
連携、統率。たった二文字ずつのこの言葉は要するデータバイト数ほど易くはない。
所属するすべてのメンバーの能力を読み取り、理解し、希望や性格を察し、配置し連携に要する行動を支持する。
兵が知性深き人間であるがゆえその行為は難しく、まず集まってくれること自体が稀である。更に言うことをそのまま聞いてくれることも、まして互いの理解が結ばれていることもまた稀なのだ。かつて国々の危機を救ったギルド・ローレットも、こと連携に関していえば10人でのチームアップがおよそ限度であった。
そんな中で40人規模の連携を実現してしまった騎兵隊――もといその代表であるイーリンを、ミーミルンド連合軍は天才やギフテッドと考えた。人望厚く命令ができるギフトだと。
だがそんなものはない。あるのは時折の閃きと積み重ねに重ねた知識と、なにより数多に結んだ絆と友情であった。
『ただの人間』が『ただの人間』のままで常識を圧倒した瞬間である。
「へばるでないぞ。我がついておるからな。
さあ――鬨の声を上げよ!」
籠手に波濤魔術円盤(WD)を装填した『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ。歌の魔術を展開すると、素早く離脱したイーリンたちとほぼ連動した形で敵陣めがけて魔術をたたき込む。
ただタイミングが合ったわけではない。
空からはレイヴンが、潜入チームからはエマが、それぞれの通信連絡を『リトルの皆は友達!』リトル・リリーが行い、その情報をクレマァダへと伝達していた。
秒単位でのコンビネーションが行えたのはこの情報連携があったから……のみならず、彼女たちの強い信頼ゆえだろう。
「まさか、騎兵隊直接指名とは思わなかったよっ。リリーももっと頑張らなきゃ」
ファミリアー三枠体制によって複雑化を極めたリリーだが、それでも残った思考の余裕でもってDFCA47Wolfstal改を連射。小さな小さな銃口から放たれた弾丸が、激しい呪いの蓄積という形でミーミルンド兵たちを打ち倒していく。
こうして大打撃を与えたミーミルンド部隊。ようやく本体との合流を果たしたが、その頃には――。
「この身、この砲は先輩の望みを叶えるために。与一、敵を撃ち砕きます!」
「同じく……」
『はですこあ』那須 与一と『Enigma』エマ・ウィートラントが突撃。
馬上から構えた機関銃が猛烈な弾幕を張り始め、首輪ウヌス・ヒュアキントゥスから紫の宝石がきらりと光った。
「しかし……サーカスの時からご一緒させていただいてますが、騎兵隊にいると飽きませんね」
更にエマによる『黒狼・マーナガルム』の召喚。月の犬を意味する名を持つ黒い狼の妖精が敵兵へと食らいつく。
そこから、騎兵隊による覆い込みが始まった。
右翼側へと馬を走らせる『肉壁バトラー』彼者誰。
「ダンスフロアは塵ひとつ無い、美しい無地であるべきです。
さて、死にたい方からいらっしゃい。可愛いチャチャとサンバのダンスでお相手してあげますよ」
彼者誰は包囲を抜けようと慌てて走る敵兵めがけ、ライフルによるヘッドショットを次々ときめていった。
花開く敵部隊。その脇を固めるかたちで馬をとめる『洋服屋』ファニアス(p3p009405)。
「フィリーネちゃん、今回はファニー達をよろしくね! 便りにしてるのだわん♪」
「ありがとうございます。――APは攻略の要ですわ、何があっても絶対死守いたします」
一方で『百合花の騎士』フィリーネ=ヴァレンティーヌ(p3p009867)は礼をいって部隊に合流――せずに、ある人物を庇うようにして敵陣の更に中央へと突入していく。
「戦いたいのであればわたくしが相手になりますわ!」
腕に巻いていたワイヤーを展開すると、フィリーネは飛来する矢を次々に打ち落とし、更に加速。最前衛部隊の殲滅が目的と思われた騎兵隊の不自然な動きに敵指揮官パクツィロは困惑したが、対応している余裕はない。
「さあ、ばんばーんと攻撃しちゃってね◎ ファニー達が回復するんよ♭」
ファニアスのテンションに押される形で右翼側からの攻撃に参加する『血吸い蜥蜴』クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)。
「ひゃっほう!新鮮な血肉を確保するチャンスだ!
……こほん、久しぶりの騎乗してのでかい戦闘なんでつい興奮してしまった。
流石に戦闘中に食事始めたりはしないからな!
……終わってからならいくつか持ち帰ってもいいだろうか」
クリムはぺろりと舌なめずりをすると、鮮血の如く赤い馬型生物グラニに背から刀を振り、魔力による斬撃を次々と飛ばしていく。
敵兵の頭や腕がぽんぽんと切り離されていく中、怪物のような騎乗生物ティンダロスにのった『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が、黒き鎖を生成して突入。
「あれだけ暴れてりゃご指名も、ってモンか……。ま、今まで通り気楽にやらせて貰おう」
マカライトの振り回す鎖が敵兵を次々となぎ倒していく。
ただ大きく暴れているわけではない。先ほどすり抜けていったフィリーネや、この後で効力を発揮する『ある部隊』の支援のため、動きの大きさで注意を引きつけているのだ。
そんな彼らを空から支援するのが『騎兵隊・航空部隊』である。
『竜の力を求めて』レイヴン・ミスト・ポルードイはその中でも最前に立ち――いや、飛び、敵陣の真上から戦場を見回していた。
「騎兵隊を直接ご指名とは。高名になったものよ――騎兵隊一番翼、参る」
視界とおる上空から状況を察し味方を有利に動かす。この考えは当然敵軍にもあり、敵前線指揮官パクツィロもまた航空観察班を飛ばしていた。
今まさにぶつかる騎兵隊・地上部隊とほぼ同時。空の上でもレイヴンたちは戦っていたのだ。
異形の多頭海蛇『ハイドロイド』を召喚し放つレイヴン。
それに伴い『上級大尉』赤羽 旭日(p3p008879)と『至槍の雷』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)がライフルを構える敵飛行種部隊へ攻撃を仕掛けていた。
「臆病者(おれ)を立ち上がらせる指揮官がついてんだ! 根性の見せ所だろ!」
旭日は正式採用ライフルである『スコルピウス』を構え、敵の射撃をかみひとえで回避。
バレルロール機動をかけると敵の腹を至近距離から打ち抜き、そのまま通り抜けていった。
「我導くは勝利への道筋、戦場の八咫烏、参る!」
それによってバランスを崩した敵兵に、すかさず飛びつくエレンシア。
白い鞘から抜き放った太刀が、敵兵を翼ごと切り裂いて墜落させていく。
「よし……こいつらは敵側の『目』だ。打ち落とせば場を掌握できるぞ」
さあどうする? と呼びかけるエレンシア。
魔女の箒を巧みに操る『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)が戦闘機のような高速機動で宝石魔法を乱射しながら振り返った。
「おっほー、なんとまあすごいもんじゃなあ。この光景を独り占めできるのは楽しそうじゃ。指示はどうじゃ?」
レイヴンはリリーのファミリアー通信を介し、『やれ』のハンドサインを出した。
オッケーサインで返すクラウジア。
「が、ジャイアントキリングが騎兵隊の本領でのう、いっちょ始めるとするかの」
手をかざすと仮想宝石が大量に生成され、振り込む動作に応じて次々に敵兵へと飛んでいった。
着弾と同時に魔力臨海を起こし爆発する宝石たち。次々と墜落していく敵兵を前に、クラウジアは大きく笑った。
「……任務了解。交戦、開始!」
『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)はすさまじい高機動で敵飛行種を8の字に翻弄すると、複数角度から次々に射撃を浴びせていく。
敵が逃げようと翼を広げた瞬間にワイヤーフックをひっかけて拘束。周回軌道を高速でぐるぐるまわりながらミサイルポッドを山ほど打ち込んだ。
(……司書には私も、主……アレックスも世話になっているからな。
……ならば、力を貸すのは当然という物だ)
爆発を背に眼下をみれば、丁度『天罰』アレックス=E=フォルカス(p3p002810)が敵最前線部隊の中央へと飛び込み敵を引きつけている所だった。
地上へと狙いを定めて支援爆撃を始めるルクト。
一方でアレックスは肉体を魔獣化させ、群がる敵を次々になぎ倒し、掴み上げ、叩きつけ、そして『夜天の牙』を握り豪快に振り回す。
(我が友イーリンがこの国の勇者として立ち上がるのであればそれを助けずして何が友であろうか。我が天罰領の民への顔向けも出来ぬ――)
「故に私は誓おう、勝利を!」
「ルシアは空からみなさんをお助けするスタンスでして! だから空から相手にずどーん! って攻撃して手伝うのですよ!」
そこへ、ルクトと一緒になって爆撃支援を始める『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)。
白き翼を広げると、大地めがけてスナイパーライフルを発射。アイリス七つの武器がひとつアイリスバレットである。スナイパーライフルという割に放たれた虹色のビームラインが地上につきささり、まるでホットケーキをナイフで切り裂くかのように敵陣を破壊していく。
『大空の支配者』メリッカ・ヘクセス(p3p006565)はそうして開かれたラインへと低空飛行で滑り込むと――。
「お呼びとあらば……ってヤツさ、まぁいつものだね。そして今回も勝利を飾らせて貰おうか、それこそ"いつもの"ようにさ」
右目のかわりにはめ込まれた宝石義眼。眼帯をはずしてパチンとウィンクをしてみせれば、黄金の光を放って敵陣をかき乱す。
騎兵隊の鋭い連携と高い士気は、追い詰められ寄せ集められたミーミルンド連合軍を圧倒するものだった。
だが一方的に丸め込めるほどに圧倒したのは、それだけの理由ではない。
イーリン、もとい騎兵隊の面々が連結された集合知によっていくつもの『仕掛け』が施されていたのだ。
それを紐解くべく、少しばかり時を遡ろう。
「チュレンコフ・レニンスカヤ・ウサビッチ――さんじょぉう!」
四頭立ての黒き改造チャリオットが、まるでキャノンボールのごとく敵陣中央へと突っ込んでいく。
『恩義のために』レニンスカヤ・チュレンコフ・ウサビッチ(p3p006499)のあやつる馬車だ。
最前線部隊を突き抜けて、そのまま後方の本隊……厳密には騎兵隊対応部隊に無理矢理合流させた本隊からの二個小隊ぶんのスキマに突っ込んだ形である。
「へへ、恩ちゃんに安心安全貰ったんだぁ」
「ウサギのおぜうさんや、ウチの背中で良かったら頼っておくれなぁ」
そんな彼女を先導スル形で騎獣をかる『柳暗花明の鬼』形守・恩(p3p009484)。
「くふふ。攻撃手として出るつもりじゃったが、守り手も勉強したくての」
盾をかざし、武装した敵兵たちへとあえて飛び込み注意を引きつける恩。
猛烈な打撃や斬撃が盾ごしの衝撃や振動として伝わるも、恩は引き下がりはしなかった。
なぜなら連なる仲間達が次々と敵陣へと突入していったからである。
『神馬』グランドルに跨がる形となった『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー。
「某は馬だけに騎兵としての戦いには一日の長がありますので……。頑張りますぞ!」
鼻息荒く黒きたてがみをなびかせる。猛烈な突進は槍を構えた兵すらも蹴り倒す勢いだ。
その背にまたがるヴァイオレットもまた、グランドルの背にしがみつき自らを影のような触手で覆い始める。
(貴族同士の争いになど興味はありませんが……。
イーリン様の掲げる未来には興味があります。
ワタクシなりのやり方で……支えさせて頂きましょう)
が、激しい激突ゆえだろうか。ヴァイオレットはその背から転げ落ちてしまった。
そのままどこへとも分からなくなってしまった。敵に踏みつけられやられてしまったのだろうか……?
否。
ヴァイオレット同様、チャリオットによって敵陣に突っ込んだ数人の仲間達はそのまま姿をくらませ、一切の戦闘行為はもちろん殺気すら出すことなく敵本隊をすり抜ける形で前線指揮官パクツィロのもとまでたどり着いていた。そして何をするのかといえば……。
「側面部隊が暗殺された! 敵を見失っていたんだ!」
「向こうで敵部隊が突破してこっちに来る聞いたぞ。空の偵察隊はやられたのか!?」
「フロンティエール広場でローレットに勝利したらしいぞ! 騎兵をいますぐ送れ!」
「本当デスか!? こんなところで戦ってる場合じゃありマセン!」
「今の情報は嘘です。だまされてはなりませんよ。この場所を死守するんです」
パクツィロの周りで防御を固めていた兵士達がざわついて止まらない。
誰が発したかわからないような情報が交錯し、伝令係によれば他部隊には矛盾した指示や情報が交差して指揮系統は破壊されたという。
兵達は不安にかられ、パクツィロが裏切り者だというデマまで流れ目の届かない範囲では兵が脱走を始めたという。
「おのれ……バグを放ちおったか!」
「なんとパクツィロ殿、本当ですか!」
「どう対処したらよいのです? 混乱が収まりませんよ?」
「逃亡者は今すぐ銃殺刑にするべきデス!」
「えひひ……所で……」
パクツィロはハッとした。
今自分が喋っている臨時副官は、誰だ。
寄せ集め部隊だからと激しく入れ替わり、ついさっき交代したという彼女は?
『ダメ人間に見える』佐藤 美咲の毒針が、『影』バルガル・ミフィスト(p3p007978)の固い親指がそれぞれパクツィロの首に押しつけられる。
更に背後から囁いた『こそどろ』エマ(p3p000257)がナイフをまわし、『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)が頭にそっと指を押しつける。
伝令係の一人がかぶっていたかぶとを外し、彼女――ヴァイオレットが『ばぁ』と舌を出した。
血を吹いて崩れおちるパクツィロ。
と同時に慌てて振り返った近くの兵士の顔面をバルガルが鷲掴みにした。
「気付いてからでは遅いのです。予防と対策は日頃からこまめにしましょう。教訓になりましたね?」
ばきんと顔面が砕けた兵士。わんことエマが飛び出し兵士を次々殴り倒し喉笛を切り裂いていき、ヴァイオレットの影に足をつかまれた兵士の喉に美咲がボールペンを突き刺しノックボタンを押し込んだ。
「これで皆さんは烏合の衆。どうします? 逃げますか? 銃殺刑って噂ですけど?」
騎兵隊の『仕掛け』は飛行部隊による制空権の確保や潜入部隊による指揮系統の破壊だけではもちろんない。
サイバーなモンスター的三輪バイクに跨がる『こむ☆すめ』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)をトップとした三角形を描き、ヨモツヒラサカ型軍馬に跨がる『ネクロフィリア』物部・ねねこ(p3p007217)、自慢の練達式戦闘車椅子壱型を走らせた『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)が敵本隊へ向け侵攻していく。
「部隊が合流する今が正念場だ。『無限陣』機動!」
術式を最適化したエネルギー供給魔術を発動させるマニエラ。ねねこも大量に在庫をかごにつっこんだスターライトボムを次々と投げ始める。
シャルロッテもまたクェーサーアナライズを発動させ、その術式を省略して消費エネルギーを提言させていく。
「範囲型エネルギー供給能力をもった三名互いの影響下に置きたがいにクェーサーアナライズによるエネルギー供給効果をもたらす。能率化したクェーサーアナライズは二人以上の同効果をうけることで消費量を回復量が上回る。つまり、残存APを気にすることなく無限に供給し続けることができる。
その供給効率は最大で450。BS回復効果もきわめて高い。
どれだけ大技を連発しようと、連携さえ破壊されなければ継続できるというわけだ。
例え一人二人が倒されても同じスキルを使える人間はまだまだいる。多様性を武器にした騎兵隊らしい戦法だな」
ふふ、と薄く笑うシャルロッテ。
「騎兵隊が全体号令を任されるとは何か凄いですね!
まぁでもイーリンさんですしね。似合うとは思うのです♪
とはいえ私のやる事はいつも通り!
誰も死なないように何時までも戦い続けられるように戦線維持って奴ですね」
笑うねねこ。マニエラもつられたように顔半分で笑うと、バイクのアクセルを開いた。
「そういうわけだ。皆頑張れ!」
そんな無限陣へと低空飛行状態を使って加わっていく『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)と『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)。
平面的な三角形が立体的な形をとりはじめる。
ゼフィラはゴーグルを目元に装着してニッと笑う。
「敵の指示系統は崩壊したようだ。引き続きデマを流して敵陣の攪乱をしているようだが……連中も馬鹿じゃあない。混乱が収まるのも時間の問題かな?」
(羨ましい…妬ましい…皆、私なんかには無い力を沢山持っている。
付いて行く為に…置いて行かれない為に…私の力が少しでも皆の役に立ちますように…)
華蓮は胸に手を当て、『それは舞い降りる天使の様に』と題した異能を発動させる。仲間を強化するための力だが、この無限陣ではまた別の効果をもつ。
つまり、彼女たちの形成した無限陣の『中央』にあるものは最大のAP回復効果BS回復効果ならびに各種ステータス補正を受ける。
『ヒーラー』という立場の戦術的重要性と強力さが目立つなかで、『バファー(たまにバッファーと呼ばれる)』に寄ったビルド構成の力はこうした集団戦でこそ発揮される。
無限陣はそれを濃厚に凝縮した作戦なのだ。
こうした力に支えられる形で、騎兵隊最後の一手が打ち込まれる。
チェスも将棋もいつもそう。
駒をもち、盤上に叩きつけるのだ。
「これぞ正しく騎馬戦だね、ボクも血が滾るというものさ――さぁ、行こう!」
『放浪の騎士』フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)の白き鎧によく似合う、金と白の馬鎧を纏った軍馬が駆け抜ける。
豪快な両手剣を握りしめる、白銀の籠手。
「この中なら、撃ち放題だ!」
彼のもてる最大威力の技を、リソースを無視して連発する。
混乱し闇雲に突っ込んでくる敵をその剣で一刀両断、また一刀両断。更に両断。
『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)は笑ってバイクのアクセルを握りこむと、ボディに接続したガトリング福音砲『Call:N/Aria』を唸らせる。半秒ほどのうなりの後に秒間何十発という『祈りと弾丸』が消費される。
それ以上の供給が彼女の肉体にはなされているのだ。
「張り切ってんねぇ。ま、貰うもん貰ってるしやるだけやりましょ」
かつて無いほどの無限砲台ぶり。何分だろうが撃ち続けられ、砲身がオーバーヒートすることもない。目の前に広がる軍勢はいまから血煙に消える的に過ぎない。耕される前の土に過ぎない。
「久々の戦闘です、今日は主様が居なくて寂しいですが……」
『オールレンジ委員長』氷室 沙月(p3p006113)もまた、とっておきの付与能力を惜しげも無く使い、馬上から幻影の刃を次々とうちはなつ。
握った刀をかちりとならし、眼鏡の端でレンズを光らせる。
「戻ったら褒めてもらえるように頑張ります!」
彼女の斬撃のあまりの勢いと鋭さ、そして正確さに恐れを成して逃げ出すミーミルンド連合軍。指揮官を、そして空のハイテレパス伝令係をも失ったことで混乱した彼らには、もはや逃げるかやぶれかぶれに突っ込むか、もしくは自分の顎に銃口をあてて引き金をひくかしかない。
「相変わらず人使いが荒いで御座るな。まぁ、それくらい余裕で出来るで御座るが」
仲間の馬に相乗りさせてもらっていた『傷跡を分かつ』咲々宮 幻介(p3p001387)はぴょんと飛び降り、そして部分的にとはいえ馬より早い速度で駆け出した。
消耗が激しく想定戦闘時間の非常に短い幻介は、無限陣というフォローによってある意味無撃の強さ……言ってしまえばチートを得た。
「裏咲々宮一刀流、参之型――神断・鎖連」
抜刀と同時にジグザグに駆け回る幻介。次々にバラバラにされていく敵兵たち。敵にとっての地獄のような時間はしかし、いつまでも終わることなく続くのである。
「先輩ーーーーーーーーーーーー!!!!」
そんな速度にひとりで素のままついて行く『先駆ける狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)。
敵の凶弾にあたり倒れかかった幻介を両腕でしっかり抱え、抱えたまま走る。
「補佐は任せるっす!」
ニカッと笑うと、ウルズはさらなる加速を開始。幻介を抱えたまま敵兵の悉くを蹴り倒し、炎を纏った蹴りでなぎ払った。
「はっはー! 折角の機動戦! どんどん動いてぶっ放すっすよー!」
飛び退くウルズと入れ替わりに現れる『ザ・ハンマーの弟子』リサ・ディーラング(p3p008016)。
激しく蒸気を吹き上げる魔道三輪バイク。激しく組み合わさった歯車が動き、リサのもちうるすべての、ありとあらゆる火砲を一斉に展開した。
ガトリング砲から火炎放射器からミサイルランチャーから回転のこぎりを大量に発射する装置まで、そのすべてを一斉に発射。
「エネルギー供給はばっちりっす! 残弾を気にせず打ちまくるっすよー!」
●勇者伝説
「ふふーん! 古代獣すら恐れをなして襲われなかった、魔女住まうマギノの森! その精鋭兵の力を見せる時が来たわ!」
「姉さん、それはただ見つからなかっただけでは……」
「田舎だから攻められなかっただけとか言わないの!」
「そこまでは言ってないです!」
『噛みカワ★ママギノ』ミラーカ・マギノ(p3p005124)と『紅雷姉妹』アウロラ・マギノ(p3p007420)ぁらまりマギノ姉妹によって組織された『マギノ魔女隊』は女性魔法使いのみで構成された魔術砲撃部隊である。
「姉さん、作戦は?」
「一騎当千ならずとも、数は力! 基本に忠実に戦線構築よ!」
「とにかく撃てということですね!」
アウロラは敵陣めがけて先陣切って魔術砲撃。ホーミングして敵だけにぶつかっていく小型の魔術爆弾がが味方の砲撃とあわさり七色の爆発を起こした。
騎兵隊によって完全に優位をとったローレット連合軍。
友好的な貴族達が送り込んできたわずかな部隊はあるものの、主力となるのはやっぱりローレット・イレギュラーズの管理する領地の精鋭たちであった。
「この会戦でもし負けると幻想の人達に甚大な被害が出る。それを看過するわけにはいかないよね。
私達の部隊の仕事は地上で圧力をかけてミーミルンド連合軍にスムーズな作戦を行わせないこと。そして私からみんなに一番優先して欲しいのは目標を達成しつつ全員で生き残ることだよ!
光って目立つから見失わないように! 怪我は私が治すから守ってもらえると嬉しいな!」
最後はばっちり上目遣いでヴェルーリア領のあらくれソルジャーたちをヒャッホーさせる『テント設営師』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)。
『ゴールデンラバール』矢都花 リリー(p3p006541)はやべーくらい銀行だらけの本スラム謎領地からバールソルジャーを召喚。
「はいギルティ…。
古代怪獣とか覇者とかイキりすぎっしょ…。
今卵から出たばっかのイキリベビーカラスがホラ吹いても無駄だよぉ…。
歴史の授業でも聞いたこと無いしねぇ…。
勿論そんなの甘やかしてる敵兵たちも全員共同正犯だから…。
全員終わるまで帰れない再教育の刑だよぉ…。
覚悟…」
目ぇかっぴらいて掲げた黄金バールに、ソルジャーたちが一斉にバールをかかげる。
「いいかい皆、僕たちの国が危機にさらされている。ここで陛下の軍やハイペリオン様が敗北したら、僕たちの国はめちゃくちゃになるだろう。
そうなったら皆も今までのように平和には暮らせない。ガブリエル閣下の庇護も受けられなくなるだろう」
『黒狐はただ住まう』生方・創(p3p000068)は工房『きつねの樹』とその周辺地域を日夜守っていた衛兵たちを集め、演説をしていた。
「僕たちの暮らしを守るため、ガブリエル閣下の権力を守るため。頑張っていこう! 行くぞー!」
敵陣へと攻撃をしかける創の部隊。
一方『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)も敵陣めがけて指をつきつける。
「あなたたちのこと今までずっと放置してきたし、これからも放置するつもりだし、あなたたちがどうなろうと一切責任取る気ないけど、命令にだけは従ってね。
わたし以外の全員――突撃!」
優位を保ったローレット・イレギュラーズの部隊はミーミルンド連合軍を大きく圧倒しつつある。
「豊穣から村のとーちゃんかーちゃん近所のおっちゃん達鬼人種の皆を連れてきてよかったなー。
今年は豊作だったから旅行も兼ねて……って思ったけどまーどーにかしねーとな!
見てろよ皆、オレが強くなったとこ!」
突撃する味方にがっつり加わる『つよいおにだぞ』砧 琥太郎(p3p008773)。
観光なのか戦い目的なのか遠戸はるばる地元の豊穣(それも山)からやってきた琥太郎ファミリーが一斉に鬼金棒を振り上げる。
「オレの村は自給自足! 農作業と狩りで培ったタフさを舐めんじゃねーぞ! いっけーーー!!」
おそろいの鬼棍棒をぶん回す隣んちのおっさん(よく大根くれる)やいとこのにーちゃん(畳の下にエロ本隠してる)たちが獅子奮迅の大活躍。
『神は許さなくても私が許す』白夜 希(p3p009099)も負けじと飛び込んでいく。
『魔女の楽団』からこの領地へ野戦病院スタッフとして派遣されていたナイチンゲールズを厳選して招集。自慢の『メサイア・ミトパレ』に一部を載せ残りを病院の馬車で併走させると、複雑かつ重厚に組み合わさった治癒の結界を形勢していく。
「貴君らは良い兵士だ。依頼されて来た身といえど自分達の様な外様に、良いように使われると言うのはあまり心地の良いものではないだろう。
しかし、同じ戦場に立つ同志、同胞として貴君らを無駄に散らせることなどは断じて無い!」
同じく馬車で飛び込む『不完不死』伊佐波 コウ(p3p007521)。その先頭にたって『火雷』を構える。
「自分のやり方は本来貴君らの得意とするところではないかもしれん。
しかしそれでも自分の指揮に従ってくれると言うのならば、自分は貴君らに勝利を約束しよう。必ずや逆賊を討ち。あの化け物どもを蹴散らすのだ!!」
一斉砲撃! 突撃!
号令に応じて、兵達はその身を弾丸と化すのだ。
ローレット・イレギュラーズ、そしてローレット関連領地の兵達がミーミルンド連合軍に斬り込んでいく中で、ひときわ鋭く輝いていたのがやはり自由に戦うイレギュラーズたちであった。
「だ、大丈夫……僕だってやれば出来るもん……」
『双糸双合の黒砦』ノクス=アラーネア(p3p009518)はぱちぱちと瞬きをすると、集まった三人の仲間達と意識をリンクさせはじめた。
まるでそのためにデザインされた電波アンテナのごとくピッタリとリンクした三人の蜘蛛娘たち『満身総愛の狂姫』フェーヤ・プライズライチニ(p3p009721)、『双糸双合の白虚』ニクス=アラーネア(p3p009517)、『百火繚乱の戦闘姫』スピッド・エンピティ・アールエイト(p3p009464)。
「わー! 大っきい鳥さんだー」
フェーヤは背から伸びた蜘蛛脚をまるで手のように額にかざすとつま先をたてた。
遠く見えるのは徐々に大きく集合していく黒い怪物の集団。古代獣ノワールクロウが芯の力を取り戻そうとしているのだ。
「ほら、ニクスの陣地に戻って!」
「こっちデス!」
大量に持ち込んだ木材やらなにやらをスパイダーワイヤーでまとめた簡易塹壕。その中からニクスとスピッドが手を振った。
見れば、ミーミルンド連合軍がほぼ壊滅しているのを見た古代獣軍団が増援を送り込んできた所だった。
「はーい、いまいく! フィーもね? いっぱい強くなって、いっぱいわるい てきをやっつけるんだもん!」
フェーヤは塹壕の内側へと飛び込むと、迫る巨大な獅子型古代獣めがけて蜘蛛糸ボールを投擲。
「スピットさん!」
「OK! ウチの射線からは逃げられませんヨ?」
蜘蛛脚型マニピュレーターを振る展開したスピットはゴーグルに特徴的なスパイダーフェイスマークを表示すると、ありったけの武装を打ちまくった。
フェーヤの投げ込んだ蜘蛛糸ボールもとい爆弾が爆発し七色の煙をまき散らし、ニクスとノクスが蜘蛛脚を構えて飛び込んでいく。
「ニクスは僕が守る!」
「ボクだって戦えるんだから……!」
展開した四本蜘蛛脚の先端から糸型の弾を撃ちまくるニクスと、古代獣へ飛びかかり鋭い蜘蛛足を突き立てるノクス。
そこへ、首から上を獅子や蛇にかえた黒い巨人達が参入。毒の霧や鞭状の闇を繰り出してくる。連携抜群の蜘蛛娘たちとはいえ支えるには限界か――と思われたその時。
「うおー、スゲー数の敵だな! こんだけ数がいるならどこに撃っても当て放題だぜ!」
ジェット噴射で飛行するアザラシがガトリングガンを乱射しながら突っ込んできた。『マスコットのワモ口』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)である。
「うおー! うてー! うてー! 敵の数が多い箇所めがけてうちまくれー!」
更に『石柱の魔女』オーガスト・ステラ・シャーリー(p3p004716)がひっそりと塹壕のかげから現れ『ペリドットの祝福』を発動。エメラルドグリーンの色をした小さな球体をよびだすと、ダメージを受けていた仲間達の回復支援を始めた。
まるで導かれたかのように集まってくる仲間達。『―――』『―――』(p3p009789)もまた白い風のように駆け抜け、一定の波長だけを声にして古代獣たちを切り裂いていく。
「―――」
(今の自分に出来る事。大きな敵を倒す力も大空を掛ける能力もない。ならば自分は地を往こう)
ぴょんと塹壕前へと宙返りをして着地する『抜刀意思』春夏秋冬 明日(p3p002871)。
手にした大太刀を舞うような動きで抜刀すると、長い前髪で隠れた目の片方だけをちらりと一瞬のぞかせた。
「わ、私めの技量がどこまで通用するか分かりませんが…び、微力ながら手伝わせていただきます。無音の抜刀術、とくとご覧下さいまし……!」
抜刀、からの超高速の斬撃。
目の前に迫ったからという理由で捕まえようとてをのばした蛇型巨人の手が八つに切り裂かれ、流れるような閃きが首を切り落としていく。
「斬り捨て御免、にございます……」
仲間達の合流は止まらない。
全身を針葉と固い樹皮鎧で覆った有翼獅子が針を機関銃のように放つも、『禁忌の双盾』阿瀬比 瑠璃(p3p009038)と『禁忌の双盾』阿瀬比 彗星(p3p009037)が飛び出しがっちりと指を手を握りあうと、組んだ手を突き出すようにして魔術衝撃を展開した。
「差別とかしてる癖に表上は平和ですって、堂々と言うような国って豊穣だけだと思ってたけど。国って何処もドロドロしてるのね。
…まぁ、良いわ。私達は私達の出来る事をしましょう、ねぇ彗星?」
「…そうだね、瑠璃。何処の国も一見平和で理想的だとしても、裏側は以前の豊穣と変わらないかもしれない。
だけど…それでも僕達に出来る事があるなら、やるだけだよ」
握り合う手のように組み合わさった二重障壁が獅子の砲撃をはねのける。
「私の目の前で、私の1番大切な人を倒させるつもりは無いわよ?」
「僕は倒れない、瑠璃も倒させない…! それだけは、絶対にさせる訳にはいかないんだ…!」
その隙に駆け抜ける『死と共に歩く者』辰巳・紫苑(p3p000764)と『イエスマスター』リンドウ(p3p002222)。
「まぁ、敵を殺して良いのなら思いっきりやりましょう?ねぇ、リンドウ」
「イエス、マスター。人形は命令を承りました」
二人は横並びになり金と銀の二丁拳銃をそれぞれ構え、ターゲット。
「敵が何処に、どれだけいようと、マスターの命令ですので倒させて貰います」
「さぁ沢山死んで、私を楽しませて頂戴な?」
残弾あますところなく撃ちまくった。
穴だらけになった獅子や周辺の鴉型古代獣たちが次々と墜落していくなか、さらなる侵攻を見せる『月光』桐野 浩美(p3p001062)。
「これがノワールクロウの軍勢っすか。勇者と幻想を呪う心と、世界の破滅を呪う心。どちらがより『強い』っすかねぇ?」
握ったワンド。交差した両腕。湧き上がる赤黒いオーラ。血色の月が顕現。ワンドを握った拳を叩きつけるような動作に合わせ、迫る巨人や古代獣たちへ血色の月が直接たたき込まれていく。
魔術爆発に乗じて飛び込んでいく『希望の星』黒野 鶫(p3p008734)。
「凄まじい戦いじゃのぅ……やはり何処も彼処も魔境よなと。
それでも、負ける訳にはいかないからのぅ。儂もこの幻想にて民草を養っている身
抗わずにはいられない、という事じゃな!」
着地と同時に鉈を振りかざし、その背を角にしゃらんとすべらせる。
その音にうっかり気を取られた巨人の足もといすねに鉈をたたき込むと、ニッと笑った。
「巨人、古代獣何するものぞ。こちらは勇者、いれぎゅらあずじゃ!」
「――然様」
後ろから浮きあがる大きな黒い月。否、『おおめだま』ダーク=アイ(p3p001358)。
「またしてもこの幻想の地が戦場になるか。
ヒトの命が無為に消費されるべきではない。
邪悪を打ち滅ぼし人々に勝利を齎す事、これもまた救済である」
カッと球体からひらいた一ツ目からは漆黒の魔術砲撃。
鶫へ掴みかかろうとした巨人の腕と胸を貫いて空へと伸びる。
「今は私もこの地に住まう一人、そのように暴れられては困ります。
まあ生きながらえたいなら他の国に行けばいいだけの話ですが、家で犬が待っているのですよ」
ポケットからとりだしたロケットペンダント。開くと『花吐かせ』シャオ・ハナ・ハカセ(p3p009730)と愛犬が並んでうつる写真があった。
「引っ越しは、犬の負担になるのでね」
冗談めかして笑うと、大空を埋め尽くさんばかりに広がる鴉の群れめがけて腕をふった。
途端空に咲き、散り乱れる無数の百合花弁。連鎖する魔力爆発によって鴉の群れが大量に墜落し、そして白い羽根にかわって消えていく。
降り注ぐ羽根のなかを、牛の角をもった巨人がこちらへと突進してくる。フレイス・ネフィラ直下の、古代イミル族の魂をこめた肉の人形たち。記憶も感情もそげ落ち、現代人への憎しみだけで動く悲しき怪物たち。
『Sweeper』マルカ(p3p008353)はアサルトライフルを撃ちまくりながら突進。とみせかけて横へ逸れ、巨人の蹴りを回避する。
「ういうい、お掃除案件っスね。任せるっスよ。
敵が多くても少なくてもすることは変わらずシンプルっス。撃ちまくるだけっスからね」
撃ちながら側面を回り込み、撃ち尽くしたところでマガジンを捨て、シルバーコート弾をつめたマガジンを装填。銃身側面にオプションした小型EMPジェネレータを起動すると、更に下部にオプションしたグレネードランチャーを用いてスモークグレネードを発射。
動きの鈍った巨人の足下へと滑り込むと銀の弾丸を撃ちまくる。
なんとか彼女を蹴りつけようと暴れる巨人……だが、飛び込んだアヴニール・ベニ・アルシュ(p3p009417)が防御を固め、幻翼を丸めるようにして衝撃を吸収、散らしていく。
(戦い。好むわけではない、ですけど。
『勝ちたい』という願いを注がれ。
『負けたくない』という欲望を浴び。
『守りたい』という祈りを捧げられ。
『生きたかった』という後悔を見送り。
僕は、生ジまシた。
だから…それは人ノ想い。生ノかたち。あるべき願望)
直後、気を取られていた巨人のすぐ眼前に『声なき傭兵』白鷺 奏(p3p008740)が出現。 たいたスモークをぬけて姿を見せた奏は『ガンブレード・アイギス』のトリガーをひき自らに治癒魔法を発動させるとすさまじい連撃を巨人へと浴びせていく。
咄嗟に反撃にでる巨人だが。巨人の拳では奏にろくな傷を残すことはできない。
(幻想貴族同士の戦い…詳しい事情は解らないけれど、戦争で多くの血が流れるのを黙ってる訳にはいかない。私に出来る全力で、少しでも早く戦いを終わらせないと)
そこへ繰り出される剣。そして銃撃。
顔面を破壊スルマスケット銃による弾丸と、首元をざっくりと切り取る禍々しいほどの剣。
ブラッディニンジャフォームとなったブラム・ヴィンセント(p3p009278)が着地し、その背後で巨人が崩れ落ちる。
「うへえ…また面倒そうな相手で。
オートミール連合軍……いや違うな、なんだっけ似たような響きの……北欧神話に似てるんだな」
「北欧? 知らん神話だな」
マスケット銃をリロードし、横に並ぶ『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)。
彼らの頭上を、ハイペリオンが飛んでいく。
そのまま饅頭にしたら売れそうなくらいまんまるとした白い雛鳥。顔はそれこそ饅頭にいますぐ出来そうなくらいシンプルだ。
「……ゆるいなー。
いや、破滅的でないならなんでもいいのだが、こう、シリアスな戦場の雰囲気と比して、ゆるい」
そして、二人はすぐさま構え直した。
眼前には巨人の集団。
本隊後方に控えていたフレイス・ネフィラの手下たちがついに投入されたのである。
「やることはシンプルだ。とにかく前に出て撃ち、敵の数を減らす。
頭からっぽでも働けるのもたまには悪くない」
「だな。俺が敵を引きつける。連携頼んだぜ。単独で行けば死ぬパターンだしな、これ!」
「ハイペリオン様かっこかわいい!」
空を飛ぶハイペリオンを地上から激写しながら走る『新米P-Tuber』天雷 紅璃(p3p008467)。
カメラというかスマホをスッと前方へ向けると、巨人の群れが樹木をそのまま引っこ抜いてきたかのような棍棒をかざして突進してくるのが見えた。
一旦パシャってからアプリを起動。周りの仲間達の支援プログラムを発動させる。
「こちとら勇者総進撃だからね! みんながんばれー!」
「おうおう、ここは凄ぇ人だな。
敵も味方もいっぱいだ。……燃えるねぇ。
俺も微力ながらこの大戦に参加させて貰うぜ」
それに応えて駆けつけたのは『撃劍・素戔嗚』幻夢桜・獅門(p3p009000)。そして『鋼鉄の冒険者』ココア・テッジ(p3p008442)である。
「幻想を巡る波乱に……魔種が首を突っ込んで引っ掻き回したって感じなのです?
全く、面倒な事ばかりする奴らなのです。
ともあれ、決戦となれば撃ち放題なのです。誤射だけ気を付けて撃てば何かには当たるでしょうし頑張るのですよー」
左手のコアをスッとなで、黒い石を光らせる。
「60秒で片付けるのです」
「オーケーオーケー! 了解だ。暴れるのは得意だぜ!」
無骨な大太刀を抜くと、真正面から突撃していく獅門。
ココアがビームガンを撃ちまくって弾幕をはる中で、棍棒を振り込んでくる巨人と剣をぶつけ合う。
剣は棍棒を切り裂き、強引に巨人の胸をも切り裂いていく。
ひらいた傷に打ち込まれる光線。転倒した巨人はその後方の巨人にぶつかり陣形の崩れたところに『鏡越しの世界』水月・鏡禍(p3p008354)が割り込んでいった。
銀の水鏡をキラリとやれば、巨人達の意識がわずかに引っ張られる。
「攻撃は苦手……ですが、こんな僕だからこそできる貢献があるはずなんです。
何度だって立ち上がって一人でも多くの足止めを、それが僕の決意です」
振り込まれた棍棒をかざした腕で受け止める。衝撃をころしきれずに吹き飛ばされるも、空中を回転し足からザッと着地した。
そこへぬらりと現れる、我らが初代レイドボスこと『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)。
「重戦車(タンク)が如くに行進だ。我が身は全(ひとつ)のパレードで在り肉壁は蠢くと知れ」
あまりにも強大なタフネス。そしてそのタフネスを乗せた異常な腕力で、巨人達へと殴りかかる。
一度に大量に増幅された腕のような闇のような悪夢のような何かが巨人へと襲いかかり、そして巨人たちを一度大きく後退させた。
「連中、どっかの川に毒を流そうとしたらしいな。そういう居心地悪くされるような真似、お前らも気に食わねェだろ?」
ぽーん、と放り投げたボトル。中に入った水の邪妖精たちが暴れ、ボトルを破裂させ水の槍となって巨人へと突き刺さる。
「俺ぁ幻想に、特にこの辺りの土地に思い入れがある訳でもねェけどよお!
このゴタゴタが波及して、馴染みの店の仕入れにでも影響したら困るんだわ。好き勝手されて損害を受けた分、その後始末に人とモノが引っ張られるワケじゃん?」
『最期に映した男』キドーはにたりと笑うと、おねーちゃんとお酒飲みながらなんかできる店の無料招待チケットをスッと取り出し……『間違えたわ』といってククリナイフを取り出しなおした。
「つー訳で、イケゴブのキドー様が参戦だオラァ!」
「まって今出したチケット何俺にも見せて触らせて!」
駆け出そうとしてヒューンってターンする『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)。
直後巨人のキックが偶然にもクリーンヒットし、グワーと言いながら吹っ飛んでいく。
「千尋ぉーーーーーーー!?」
「キドーさん……俺、巨人もダメだわ」
案外ピンピンしてた千尋がバイクに跨がって戻ってくると、キドーをその後ろにのせた。
「突撃すんだろ突撃ぃ!」
「はい! 自分! 勢いのある突撃をしたくて攻撃部隊に志願しました!
つーわけで俺についてきやがれ! 行くぞテメーらァ!」
猛烈なバイク突撃が、巨人を襲う。
謎のクリティカルで巨人がバイクに轢かれるという奇妙な光景を目にした『靡く白スーツ』コルウィン・ロンミィ(p3p007390)。
「ふむ……それにしても敵が多い。主戦場なら当然か」
コルウィンは対戦車ライフルを担ぐと、巨人の一体めがけて発砲。
轟音と共に巨人の足下が吹き飛び、派手に転倒する。
手を突き起き上がろうとした巨人だが、すかさず飛び込んできた『ちびっ子鬼門守』鬼ヶ城 金剛(p3p008733)の蹴りによって横っ面を殴られる事になる。
そんな金剛の頭上をハイペリオンが飛び越えていく。丁度空の古代獣たちと仲間が戦っているところだ。
「ハイペリオン様すごい……僕も頑張らないと。
将軍同士の戦いがどんなに激しくても歩兵が不要になることはない……よし、行くぞぉー!」
気合いで巨人を殴りまくって注意を引く金剛。
その一方で『必殺の銃弾』隠岐奈 夜顔(p3p008998)が倒した巨人を遮蔽物にしてたくみに移動。
(豊穣とはだいぶ違うこの国も、豊穣と対して変わらない裏を持ってるんだなって感じた。
血が重要な国に味方するのは嫌だけど、それでも今回の敵は倒さないと駄目なのは俺も分かってる)
物陰から身体をわずかに出すと、スナイパーライフルの狙いを付ける。
「どんな敵だろうが、俺の攻撃を確実に当ててやる……!」
一発で打ち抜く巨人の心臓部。胸を押さえよろめく巨人へのトドメに、『自分を失った精霊種』ナナ(p3p009497)が豪快に跳躍した。
(アハハッ! 勇者に興味はないけど、敵は思いっきり倒していいのね!?
ナナは、勇者になりたかったのかしら? でもあの子には無理だったもの)
「可哀想なナナ! 貴女の為に、さっさと終わらせてしまいましょう?」
大きく笑って繰り出した剣が、巨人の目へと突き刺さる。
「逃げても無駄よ? 全部全部壊してあげる!」
「やーっぱ戦場は派手に限るぜ! 最近は鬱屈した仕事が多かったからよ……派手にやるか!」
AG(アームドギア)を呼び出した『倫理コード違反』晋 飛(p3p008588)が参戦。
まだまだ追加される巨人や古代獣、ミーミルンド派の兵達が集まる中で暴れ回す。
「最高だな! どこを撃っても殴っても敵に当たるときてるぜ!」
そんな現場に颯爽と現れる『お前も愛を知らせてやろうか!』ナズナサス(p3p001053)。
「勇者とか楽しい噂や愛する人を失った人が此度の事件を起こしたという悲しい話などを聞きましたが……えぇ、それならば尚更私が何とかしなければいけませんね」
迫る巨人のパンチを、かざした手と繰り出す拳によって打ち返す。
「私は、此度の首謀者のような人の為に嘆いた主の声を聞いたのですから」
よろめいた巨人へと跳躍すると、その鼻っ面に『愛』の拳をめり込ませた。
「せめて、最期に愛する者に出会うよう……一撃を贈りましょう」
●死なせないための戦い
ミーミルンド連合軍を相手にする中で最も警戒すべきなのが『味方の死』である。
そうそう死なないことで有名なイレギュラーズでも、これだけ規模の大きな戦いとも成れば命を落とすこともある。
あまつさえそうだというのに、この戦いに参戦した一部の貴族連合やローレット系領兵たちの命は強く危ぶまれていた。
だが、結論から言っておこう。
この主戦場での死亡者数は、『ゼロ』である。
そらとぶいわし、エンジェルいわし。
包帯を巻いたけが人を抱え、『召剣士』パーシャ・トラフキン(p3p006384)が救護テントへと走る。
(また多くの人たちの命が脅かされてる。こんなとき、私も戦場に立って、皆の盾になれればと歯がゆい思いもしてるけれど──今はやれることをひとつひとつ。できることはそう多くない。だけど……)
「お願い、二人とも。この国を守るために、一人でも多くの人たちを助けるために。どうか力を貸してね」
「まったく、貴族連中ったら。何をまごついてるのかしら!
まあ、そんな国でもね──友達の故郷ってだけで、救う価値はあるわ。
アンジュ、パーシャ。あなた達には羽虫一匹たりとも近寄らせないから!」
運ぶけが人を取り返し少しでも『死』のエネルギーを確保しようと迫る巨人の腕を、『月輪』久留見 みるく(p3p007631)はすぱっと刀で切り落とした。
「救護班の人員も戦闘員に割かなきゃいけないくらい、相手も大軍ってことだね。
パシャ姉とアンジュは怪我人の看病に専念するね。近づいてくるやつはみるくちゃんがぶった切ってくれるし安心だね!」
『いわしプリンセス』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)もいわしのうたを歌いながら、抱えたけが人を魔法で治療しながら救護テントへと走って行く。
「みんな負けるな! いわしたちがついてるからね!」
エンジェルいわしエルキュールやウォランスたちがきゅーとないた。
彼女たちがかけこむ救護テント。
そこでは『医者の献身』松元 聖霊(p3p008208)たちがテキパキと応急手当を進めていた。
「毎回毎回!! わりとでけえ戦場に呼ばれてる気がするな!?
まあ怪我人が多いからなんだけどよ!!
俺の目の前で誰も死なせやしねぇよ、絶対に助けてやる。」
戦闘不能を回避するヒーラーが戦術的に重要なように、死を回避する医者も戦争では重要だ。特に今回の戦争においてはなおのこと。
「生きたいと言え! 帰りたいと願え! 絶対に叶えてやるから諦めるんじゃねぇぞ!」
「てっきりまた奇襲担当で呼ばれるもんだと思ってたんだけど。
まさか医療者として呼ばれるとはね。俺、お医者さんじゃないんだけど…。ま、いっか」
『影殺し』霧裂 魁真(p3p008124)は暗殺のプロとして、どうすれば効率的に人が死ぬのかを知っていた。逆に、殺さないことも難しくない。
「何?麻酔は無いのかって? どうせ今痛くて一緒でしょ、我慢して。というかしろ、殺すよ。あと勝手に死んでも殺すから」
死毒や呪いによって傷ついた箇所を外科的に切除していく魁真。
次々と運び込まれる重傷者たちを処置していく彼ら。もちろん人手はかれら二人だけではない。
「まさか古代から蘇るモノがいるなんて…っ
でもでも、あの世へ居るべきモノが生きている人を殺すなんて絶対に許せません…っ!
少しでも死者を減らせるように、微力ながら私が出来る事をやらせて貰いますっ!」
『死神小鬼』アヤメ・フリージア(p3p008574)が賢明な応急手当と治癒魔法を使ってけが人の治療を進める中、『迅きこと矢の如く』ミズキ・フリージア(p3p008540)がけが人を変なロバに積み込むかたちで運び込んでくる。
「勇者になった人、凄いな~って見てたら、何かトンデモナイ事になってましたね…?
とはいえ、アヤメの言う通りです。死者を減らす為、私達が出来る事をしましょう!
アヤメ、治療者を運んできました! 治療お願いします!」
ミズキは持ち前の足の速さや持ち運ぶ際の足腰の強さをフルに活かして、何人もいっぺんに運んできたようだ。
「大丈夫です。大丈夫ですよ、皆死なせません…っ!絶対に助けてみせますから…どうか私達を信じて下さい…っ」
『黒翼演舞』ナハトラーベ(p3p001615)が黒く美しい翼をはばたかせ、抱えた重傷者をテントへと運び込んでいく。
いつかの戦争でも使った保護結界で後衛救護テントを補強していた、『モルフェウス』アザー・T・S・ドリフト(p3p008499)が、くるりと振り返って重傷者を受け取った。
「こんな大規模な戦いは私でも初めてかもしれませんね……でも、だからと言って犠牲を増やす訳には行きませんよね。私も出来る限りの事はさせてもらいますっ」
「兵士さん! まだ生きてますか? 生きてますね! だったら大丈夫です!」
同じく重傷者を抱えて走ってくる『死ななきゃ幸運』フィナ=フォルトゥナ(p3p008257)。
素早くその場の救護担当にパスすると、うっすらと目をあけてうめく兵士に声をかける。
「行方不明になった、帰ってこないって、皆さん探してたんですよね!
でも運よく見つけることができました!
実は私も昔はよく野犬の群れに襲われて倒れてたので、こういうのは何となくわかるんですよね!」
ヴィーグリーズの丘で決戦が行われると幻想貴族各位へ通達された折、多くの貴族たちが人員派遣を含む出資を行おうとしたが、ミーミルンドの手にレガリアがあると知った途端その動きを鈍らせた。
権威によって平和が護られる一方、権威の象徴であるレガリアを掲げた者に対して弱いのだ。ある意味、幻想王国に対する特攻アイテムである。
こうした背景によって、ガワだけは建設されていた後衛テントは、そのガワだけをのこして放置されるに至った。
大量の木材と巨大につなぎ合わせた革によって作られた高校体育館程度はあろうかというスペースに戦闘不能レベルの負傷者が運び込まれるたび、彼らは医療従事者の不在に顔を青ざめさせることになる。
が、そうはさせないのがローレット。これまで様々な現場で培った『自由な連携』の果てに、彼らは医療テントを誰が指揮するでもなくひとりで稼働状態にできるというギルドスキルを完成させていたのだ。
「この様な戦場であれば私の出る幕は戦いの方かと思っていたんだが、確かにこちらの仕事も大事だね。
おっと軽傷者はまとめて回復が出来るようあちらに集めるように」
『識りたがり』チェルカ・トーレ(p3p008654)は魔法のこもった手袋をはめると、けが人への診察を始めた。眼鏡をかけ直し、傷の具合を確かめる。
「オォ…何と言う夥しい数の軍勢か。
此処で屈する事あれば、多くの人々の命が脅かされるだろう。そのような事は絶対に避けねばならない。
嗚呼、イレギュラーズとは、真なる勇気を併せ持つ英雄達。
私もそうであれと願うが──今はただ、前へ。
この醜い汚泥如きでも、人々の命を守る事は出来る筈。必ずや押し留めてみせる!」
けが人を抱えてテントへと逃げ込んでくる兵士達。
彼らとすれ違う形で、『汚れた手』ビジュ(p3p007497)は追っ手となる古代獣めがけてぶわりとその身体を広げた。眼球の沢山ついた黒いゲル状のボディが威嚇の格好を示し、つい食らいついてしまった古代獣に鋭くした指型部位を突き立てる。
「助かったぜ! そのまま押さえててくれ、応援をよこす!」
『救い手』ヨシト・エイツ(p3p006813)は足を負傷した若い兵士を背中にしょって、その横を駆け抜けていった。
背中でほそい声をあげる兵士。
「すみません……僕が、足手まといに……」
「馬鹿いうなよ、この戦場に足手まといなんかいねえ」
「だったら……」
「いるのは『戦友』だけだ。気合入れろよ戦友!」
テントへたどり着いた所で、同じく搬送を終えた『異界の神の守護騎士志望』エリシル・ルクレツィア・クラッド(p3p001810)が出てくる。
「他に負傷者は」
「後ろから何人かついてきてる。手が足りてねえ、搬送頼む!」
エリシルは頷き、ずっと後方をなんとか歩いている負傷兵たちへと駆け寄った。
(分かってはいたが、このような大規模戦闘ともなるとけが人の数が尋常ではないな!
これでも回復魔法は使えるんだ、しっかり働かせてもらおう)
足を引きずって進む兵士に肩を貸し、治癒魔法を唱えながらテントへと急ぐ。
「しっかりしろ、お前はまだ大丈夫だ! すぐに治してやる!
……全く、働けるのはいいことだが、救護がここまで忙しいのは逆に問題ではないだろうか!」
そこへ、別のエリアから駆けつけた医療チームが合流。
『雨の獣』ラニット(p3p007386)は残る負傷兵を背負い、テントへと走り出した。
「同胞(精霊)達が騒がしいと思えば、大きな戦か。
人は何度でも剣を取り、血を流し。学んだかと思えば繰り返すのだな。
私は笑い合う人が好きだ。怒りに、悲しみに染まる人は見ていられない。
……此度は手を貸すとしようか」
たどり着いた所で、骨のペストマスクめいたものをかぶった人物が手招きをした。
「確かに。幻想の一件には関わらないつもりでいたが――しかし、ここまで大規模の争いを静観するだけというのも気が引ける。私も僅かながら力になろう。
大丈夫だ。軍医の経験は少ないが、縫合も焼灼も完璧にこなしてみせるさ……」
『夜に這う』ルブラット・メルクライン(p3p009557)はその恐ろしい外見とは裏腹に、低く優しい声でテントへと受け入れる。
「どうやら、『針』を伸ばす必要もなさそうだ。この場合、使わないにこしたことはないのだろうな……」
救護班の活躍は、テントの安全や医術の効率化のみに限らない。
丘の中腹。戦場で負傷した兵が必死に古代獣から逃れようとするところへ――魔術の光が走り、古代獣の顔面へと炸裂。
「私達にも馴染み深い幻想でこれ程の大戦が起きるなんて……いいえ、予想はされてた事、ですよね。
私にできる事はそんなにありませんが、微力ながらお手伝いしますっ」
片手で魔術射撃の構えをとった『ここが安地』観月 四音(p3p008415)が、こっちですとジェスチャーする。
「俺だけじゃないんだ、あっちに仲間がまだ――」
「それなら任せるでござる!」
『跳躍する星』糸巻 パティリア(p3p007389)が近くの岩場に海星綱をひっかける形で素早く移動し、駆け抜けていく。
数々の戦いの中で確立した負傷者救助と運搬テクニックはここへ来てマックスの冴えをみせていた。実際、行って帰ってくるまでの時間はごくわずかだった。
「こう見えて人を運ぶのと逃げるのは得意中の得意でござる。何せニンジャでござるからな!」
「マナはね、怪我したお友達を直すよ!
お空にはハイペリオンさんて鳥さんがいるんでしょ? 鳥さんは太陽なんでしょ?
お陽さまの下ならね、マナはいつでも元気なんだよ!」
連れてこられた負傷兵にそっと手をかざし、笑顔をむける『筋肉植物のお友達』マナ(p3p009566)。
かざした手から暖かい光が放たれ、負傷兵の苦しそうな表情が和らいでいく。
●太陽の翼
丘の戦いがローレット優勢で進むその一方、ノワールクロウの卵は続々と融合し、その巨大さは増していくばかりだ。
「なぜあんな大きさに!? 卵というのでこれっくらいのを想像してきてみたら、驚きタント様ですわ!」
ハイペリオンの背にのり、なびく金髪を押さえる『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)。
その隣に寄り添う形で、『神翼の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)はガスマスクを装着していた。
「たぶん、フレイス・ネフィラが集めるはずだった『死』を横取りしていたんだと思う。鉱山の作戦でも関わりがあったし、あのときもきっと……」
思えば、フレイスや巨人達がスランロゥの封印から解き放たれたのと、ウィツィロで古代獣の封印が解かれたのはほぼ同時だった。
ハイペリオンがちらりと視線をジェックたちへと動かす。
「古代獣の封印は確かなものでしたが、フィナリさんの封印が壊れた時、余波を受ける危険はありました。彼らの集める『死』もまた、生命の源である『太陽の翼』と対になるものだからです。
ノワールクロウは母や私からエネルギーを奪っただけでなく、フレイスからも奪い、自分こそがこの国の頂点に立とうと目論んだのでしょう」
「いまミーミルンドの手にはレガリアもある。漁夫の利を得てすべて手に入れたなら……確かにこの国を壊して作り直すこともできるかもしれない」
「けれど――」
ジェックとタントは手を重ね合わせ、うなずき合った。
「ここにローレットが居る限り、そうはさせませんわ。ジェック、『あれ』を――共に往きますわよ!」
「一緒に……戦おう」
ジェックがスッとスナイパーライフルを構えると、タントも全く同じように構えた。
前方に現れ、猛烈な速度で突っ込んでくる巨大な鴉型古代獣。
対して放たれた一発の弾丸は、まるで愛するものと繋ぐ絆のように二つに増え、古代獣を貫いていく。
「なっ――」
たったの一発で核となる羽根を破壊され、爆散する古代獣。無数の白い羽根になって消えた後、羽根はハイペリオンの身体へと吸収されていく。
「思えばこの羽根も、生と死のエネルギーを反転させたものなのでしょう。彼らが死を、私が生を司る。これは、まるで……」
「オーッホッホッホッ! さあ、この調子で突き進みますわ! 目指すは最深部、ノワールクロウの卵まで!」
大きく声を張ったタントの声に続くように、『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)はぴょんとハイペリオンの背から飛び上がった。
装着したリュックサック状の機械から翼が広がり、スラスターを噴射。本来なら安全着地や高所への移動といった非戦闘作業に用いるはずの装備だが、ハイペリオンが羽ばたいて白い羽根のオーラを散らしたことでそれは紛れもなくリュコスの翼となった。
「いっくよーーハイペリオン!
まかせて! だいじなもふもふ……ハイペリオンはたおさせない!」
出撃前にしっかりもふった感触を思い出し、ぎゅっとこぶしを握りしめるリュコス。
対するはミーミルンド連合軍から選抜された高高度飛行戦闘部隊、通称『黒鷹隊』。
彼らの構えるアサルトライフルの射撃を掻い潜り、リュコスは隊員の一人を思いきりぶん殴った。
「いやー、乗れる機会が来るのを待っていましたが、中々に快適ですねー。んー、風が気持ちいい。
羽根もモッフモフでこのまま寝落ちして……。
の前に、ちょっと煩いのお掃除しなくちゃですね!」
翼を一生懸命パタパタしていた量産型ハイペリオン。親機(?)であるハイペリオンから羽根をわけてもらったことで十全な飛行能力を一時的に獲得。頭にしゃきーんとメイドカチューシャをはやし『ぺりー!』と叫んだ。『裏表のない素敵な人』小鳥遊 美凪である!
「味方識別マップ兵器、いきますよー」
敵陣へ味方が突っ込んでいくのを確認すると、背負っていたメイド用清掃道具兼殲滅兵器であるメイドマイクロミサイルポッド(MMMP)を解放。大量のミサイルが敵兵だけをロックオンして追尾飛行していく。
「ハイペリオンの加護か! くそっ、航空戦闘は不利だ!」
ペナルティを軽減できない敵兵は見事にミサイルの餌食……なのだが、そこへ黒き翼をはやした鴉頭の巨人が出現。
ノワールクロウε。真ノワールクロウの一部を切り離した強力な個体である。
「ハイペリオン。ローレット。貴様らには随分と邪魔されたが……ここまでだ! 空の塵と消えるがいい!」
両手を組み合わせ漆黒の魔術光線を放つノワールクロウ。
が、それを――。
「怪獣と聞いたら黙っていられないわよね。がおー、食べちゃうぞー♪」
両腕をクロスした『グレイト・マザー』アレクシエル(p3p004938)が強引に割り込んでガード。
光線をその身で受け止めると、『運び屋』シエル・アントレポ(p3p009009)が超高速で接近。
「オレはこの空を飛べればいい。今回はハイペリオンのおかげで随分と飛びやすいからな!
空はオレの戦場。存分に羽を伸ばさせてもらうぜ。
追いつけるんなら追いついてみろ。ま、無理だろうがな」
常人ではとてもではないが追いつけない速度で突き抜け、ノワールクロウに真空手刀で斬り付けるシエル。そのまま追いつくことは不可能な速度で離れ、反転して魔力を込めた銃を連射。
「ぐおっ……!?」
「ただ見てるだけじゃ、待ってるだけじゃいけないのよねー。
おばさんも頑張って、平穏を掴み取るわよー」
ハイペリオンからジャンプした『戦場の調理師』嶺渡・蘇芳(p3p000520)ノワールクロウの背へと着地。
かと思えば、とりだした包丁ですぱっと羽根を切断してしまった。
「残念ねー。折角解体しても、お空じゃ拾えないわー。
お料理に使えるかとか知りたかったけど、後で出来るかしらねー」
「き、貴様らはなぜそうやって我らを喰いたがる! 野蛮な勇者の子らめ!」
「あらあらー、お口も悪いのねー」
ロデオでもするように暴れるノワールクロウを押さえむその隙に――。
「ふっふっふ……空飛ぶ円盤、もとい空飛ぶイルミナをお披露目するときが来たようッスね……!」
フライングイルミナキックが炸裂。ノワールクロウの顔面が激しく歪む。
『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)は腰から伸びたパーツと両足のスラスターをを青白く発光させ、その力によって巧みに飛行していた。
「見てくださいよこの自由自在なふわふわ感! 小回りもよく効くのでもはや死角はない! というやつッス!」
キュン、という光を殺す音をだし、目にもとまらぬ速度でノワールクロウの周りをジグザグに飛び回りながら幾度も蹴りと手刀をたたき込んでいく。
「はいそこへ必殺! かわいいエナちゃんのかわいいクラッシュ!」
『自称 可愛い小鳥』エナ・イル(p3p004585)翼を広げて飛び上がった『自称 可愛い小鳥』エナ・イル(p3p004585)が斧を振りかざし、自らを大回転させながらノワールクロウを豪快に切断していった。
「空中戦なら、かわいいボクにお任せ!」
すげー練習したであろう空中急ブレーキからの横ピースポーズをキメにキメるエナ。今すぐこの格好でフィギュア化されそうなほどの完成度である。が、そんなエナめがけて大量の漆黒光線が殺到した。
「ボクの戦斧で蹴散ら――えぇぇぇぇぇ!?」
ばたばたするエナ――の前に突如として現れたのが『水底の夢』ルルゥ・ブルー(p3p006410)。
ハイペリオンの背に乗るかたちで割り込んできた彼女は青い傘を広げると、小さく『えいっ』と言って突きだした。
ルルゥの傘から展開した雨の匂いが、潮風の香りが、聖域となって周りの人々を包んでいいく。
「おっきなとりさん。ふわふわ。
ぼくの憧れの空、きみに乗れば行ける、わくわく。
海の中で歌うのも好きだけど、空の上で歌うのもとっても気持ちいいね」
ルルゥの聖域によって光線を迎撃。しつつ、仲間達が勢いを増していく。
『身軽過ぎるデザイナー』ティーデ・ティル・オーステルハウス(p3p009692)はスカーフの魔法で空を飛ぶと、ライフルのスコープを覗き込む。
こちらを狙うノワールクロウΔの集団が見えた。
「ハ、ミーミルンドも下手を打ったもんだ。国なんて代物、貴族の一集団でひっくり返すにはでかすぎるだろうよ。
にしても、俺の実家は……当然出てきてねぇか。まぁそうだな、こういう時に表立って動き回る家じゃねぇ」
狙い澄ました射撃で一人また一人と撃墜していく。
「人間だろうと魔獣だろうと、この国に仇なす敵なのは一緒だ……ならぶち殺す。簡単だろ?」
「援護射撃よろしく。いってくる!」
『幻耀双撃』ティスル ティル(p3p006151)は翼を広げ、天空を蹴るかのような機敏さでノワールクロウΔの集団へと突撃。
「ハイペリオン様の話はなんとなく知ってたけど、こんなの相手にしてたなんてね。
さて! 決着をつけるって言うならしっかり送り届けてみせましょう!」
「矮小なる人間風情が、この我々と一騎打ちなど――」
ぬいた羽根を剣の形にして対抗し――ようとしたノワールクロウを既にバッサリと斬り捨てるティスル。
「こいつらは私に任せて!
心配しないで、行ってきてくださいな! それでしっかり勝って帰ってきてくださいなっ!」
ビッと敬礼っぽい合図を送るティスルに、ハイペリオンは頷いた。
「あなたも、必ず一緒に帰りましょう。あなたとは、もっとお喋りがしたいです」
「んっ」
仲間達の援護を受け、高速で目的地へと飛んでいくハイペリオン。
雲に手が届きそうに思えるくらいの高さで、眼下にははるかに小さくなった味方が戦っている。
(攻撃を受けて真っ先に墜落するのは、生殖階級の方々ではなく働き人でなくてはいけません……)
『働き人』アンジェラ(p3p007241)はそんなハイペリオンの背にしがみつき、邪魔しようと群がる黒鷹隊たちの集中射撃からハイペリオンを守っていた。
「私が真に守るべきは、私たちの母すなわち女王であるハイペリオン様……」
「ハッハー!回りくどい話は辞めておくか!こう言わせて貰うぜ!」
色々考えていたらしい『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)が豪快にハイペリオンの背からジャンプ。
スラスターユニットを起動すると、敵集団めがけて突っ込んでいった。
「ブライアンさん! 私から離れすぎれば加護の力が……!」
「なあに、心配いらねえ!」
ブライアンは全身から緑色の炎を湧き上がらせると、敵兵めがけて剣を叩きつけた。もつれあう形でくるくると回転し、一緒になって転落していく。思わず彼に引きつけられてしまった黒鷹隊の敵兵たちもそれを追って降下していく。
「高く真っ直ぐ飛べよ! 露払いは任せとけ!」
「やれやれ、手助けするか」
そんなハイペリオンの背から中立ち上がったのは『Meteora Barista』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)だった。
暴風になびく髪をそのままに、ぴょんと大空へと跳躍。
スカイダイビングの姿勢で黒鷹隊を追うと、身を丸めての流星キックで一人を撃墜した。
その勢いでジャンプし、さらなる敵へと蹴りつける。
「こっちは任せろ。先へ」
ピッと指さすモカに頷き、先を急ぐハイペリオンたち。
真ノワールクロウの卵まで目前と言うところで現れたのは、無数の古代獣たちだった。
「さて、大見得切った手前、しっかりとやらないとね」
ハイペリオンの上で立ち上がる『北辰の道標』伏見 行人(p3p000858)。
精霊の力を借りて古代獣たちへと攻撃を仕掛けていく。
「それにしても数が多いね。敵も焦って在庫を放出してきたかな? まとめて蹴散らせる人は……」
「任せて。やれるわ」
『おやすみなさい』ラヴ イズ ……(p3p007812)はパッと両手を空にかざすとその両手に拳銃をそれぞれ顕現させ握りしめた。
「ハイペリオンさんを無事に送り届けるのが使命。
任せて頂戴。守るのは、私の仕事」
大量の敵めがけて銃を撃ちまくる。まるで意思を持ったかのようにカーブする弾丸が、古代獣のみへと突き刺さっていく。
「あなたも、あなたも、どうぞ――夜を召しませ」
「わたしセティア、じつはとべるから、たぶん」
そんな中へ自ら飛び込んでいく『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)。
「偏頭痛より痛いからこれ、絶対」
妖精刀法ブラスタリーガルデニア。またの名を低気圧爆弾斬り。ものすごい勢いで回転したセティアは古代獣たちを切り裂きそして嵐を巻き起こしついでに周囲の古代獣たちを引き寄せて次々に切り裂いていく。
こうして次々に敵を倒し、時には仲間に託しながら突き進むハイペリオン。
最後に現れた古代獣は――。
「ユウシャ、カエレ。カエレーッ!」
翼を大きく広げたまるっこくて黒い怪物。終末の翼スルトリヤデであった。
「よりによって?」
「ここにもでてきた!」
「トリヤデッッッッッッ」
同時に身構える『特異運命座標』饗世 日澄(p3p009571)と『トリヤデさんと一緒』ミスト(p3p007442)。
「しかしまあ、御伽噺の代名詞、ハイペリオン様の背が舞台だなんて、贅沢すぎて私めには役者不足……ぴえん……とかいう茶番も惜しい!
落ちずに生き残った暁には、人の金で鳥肉食べにいきましょうね! ミスト様!」
超高速でお色直しをした日澄はめちゃくちゃカワイイフェイスでウィンク。スカートの下から取り出した拳銃をスルトリヤデめがけて撃ちまくる。
「わっふー!! またハイペリオン様のために戦える~!
ハイペリオン様の邪魔をする敵はみーんな焼き払……じゃなかった、八つ裂きだよ☆」
「ヤデッ」
スルトリヤデめがけて流星の如く突っ込むミスト。頭の上でトリヤデさんが荒ぶるトリヤデさんポーズをキメ目をキラリと光らせたその瞬間、ミストは燃え上がるオーラに包まれゴッドバードミストとなった。具体的には巨大なトリヤデさんのオーラを纏ってスルトリヤデのおなかを貫き大穴をあけた。
「お見事です、ミストさん。日澄さん。さあ、ここからは危ないので後ろへ」
翼を広げ、深呼吸をするハイペリオン。
ミストたちは、ジェックたちのように自力で飛行できないメンバーを抱えて一旦離脱。
ハイペリオンはこれまでローレットと仲間達が倒してきた古代獣――そこから得たエネルギーを一気に解放した。
「古代獣たちから取り返した力を蓄えていけばかつてのように大陸を飛び回ることもできたかもしれない。母のようなあの姿を取り戻せたやも……。
けれど、これできっと良いのです。母の言葉です――『大地の子らを守るのは、我が使命』!」
●真ノワールクロウVSジャイアントハイペリオン
「ついに」
翼を広げ、腕を広げ、黒き雷が周囲をなぎ払う。ローレット側の大軍勢が一斉に地面ごと吹き飛ばされ、黒き暴風にさらわれていく。
「ついに取り戻したぞ、神の力を!」
空に大笑響かせて、割れんばかりの嵐を起こす。
「今こそ名乗ろう。我が名は真なるノワールクロウ! 天空の覇者である! 矮小なる勇者の子らよ、平伏し滅び去るがいい!」
幻想各地に現れた黒い卵が集まり、ついに現れた超巨大な怪獣、真ノワールクロウ。
塔のごとく高くそびえたその身体は、ローレット連合軍はおろか味方であるはずのミーミルンド連合軍の兵すら巻き込んで黒い嵐を暴れさせた。
「お待ちなさい!」
そこへ。
同じほどに巨大化したハイペリオンが登場。
「おはようございました。私はハイペリオン――太陽の翼にして、大地の子らを守る者!」
ヴィーグリーズの丘中央にて、塔の如く巨大な古代獣ノワールクロウ。黒き巨人の身体に鴉の頭。黒き翼の怪獣である。
正面で翼を広げるのはハイペリオン。力を解放した白鳥のようなアルティメットフォームで現れるかと思いきや雛鳥のようなグローイングフォームのまま巨大化していた。
「この姿は羽根を集めてくれた大地の子らの願いによって作られたもの。
……しかしなぜこのような姿で? もっと神々しく強い姿を望んだのでは?」
「可愛さとは力だよ」
巨大なハイペリオンの中。真っ白な空間にふわふわと浮かぶように存在する『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)。彼らはジャイアントハイペリオンになった際一時的な融合を果たしたイレギュラーズたちだ。
「すなわち今のハイペリオンさんはノワールクロウの100倍は強い!!」
「なるほど!?」
「行くよ、ハイペリオンさん。闇を貫け、『破式太陽光線』!!」
「なんの――!」
片手を突き出し闇の光線を放つノワールクロウ。ハイペリオンも翼をY字に広げ真っ白な光線を発射。間でぶつかり合う巨大な光線。
真下で突撃しようとしていたミーミルンド連合軍がその衝撃の、それも余波によって転倒し転がっていく。
「ほうほう、敵もデッカければ味方もデッカいデスね。
デッカいことは良いことデス、レミーも知っているデスよ。
何故ならレミーも――」
『特異運命座標』レミファ=ソラージット(p3p007739)のフィンガースナップ。と同時にすさまじく巨大な剣型デバイスがハイペリオンの頭上に出現。これまたすさまじく巨大な魔方陣を描き、ノワールクロウめがけて魔術砲撃の光を膨らませた。
「デッカい武器が得意デスからね! Fire!」
レミファの動きに連動して発射される魔術光線。
「ぐおっ……!」
かざした腕に魔方陣を広げビームを受けるノワールクロウ。しかしそこへ
『遅れてきた超新星』リオリオ・S・シャルミャーク(p3p007036)の歌が流れ始めた。
(あたし、幻想には今回初めて来たから状況が全く分からないわ。
政略だのなんだのは興味ないんだけれど……これは面白そう! もう参加するっきゃない!)
みょみょんとはえたタコ足によってジャイアントハイペリオンが大きく立ち上がり、余ったタコ足で練り上げた歌の魔法が大きな球状にふくらんでいく。
ヌッとうめいて砲撃を警戒するノワールクロウ。
「いけいけぼくらのハイペリオンさま!」
「タコ足!? どうしてタコ足!? なんじゃこりゃあ!?
いや、とにかくやるしかあるまい!」
『最高の一杯』御子神・天狐(p3p009798)はハイペリオンの中で『うどん』って書いてある榊をしゃっかしゃっか左右に振った。
「来たれ、天恵!」
すると今まさに砲撃を放とうとしていたハイペリオン様の脇にインド風のターバン男がスッて現れた。全長10mくらいの。
「カレーうどんを作るとき、麺を半分に切っておくと汁がはねにくい」
「へえ……」
とだけ言って消えた。
「何しにきたんだあいつ!?」
「ふふ…とうとうこの時がやってきてしまいましたね……。
ふむふむ…特異運命座標でドーピングする事で鳥さんを強化できるというわけですね。
私はちょっとスゴいですよ……?」
とかやっていると、『蛇霊暴食』セレステ・グラス・オルテンシア(p3p009008)がスッと空間内でスライドインして髪をふぁさあって払った。
「さあ、私の『ささやき』を込めた魔法を放つのです」
セレステがソッて何かをささやきかけると、タコ足(まだはえてた)から発射した魔法の級がボーリングみたいなフォームで発射される。
「ぐぅ!? だが死の力を蓄えたこの身体ならば――」
「フッ、まだわかりませんか……」
セレステが今日イチ真面目な顔をした。
「死の概念へ直接『あなたのボディ、ブラックですよ』と告げて『帰ってビール飲んでおやすみしたい』という気持ちにさせたのですよ」
「ばかな!?」
ぐらりとよろめくノワールクロウ。そこへジャイアントハイペリオンがうおーと言ってどすどす突進を始めた。
「ついに決戦の時が来たか。ハンマーランドの時の様に再び一つになって戦うとはな。
良いだろう、ハイペリオン。俺の力を、命を存分に使え!
俺の名は日高 天! 天高く昇る太陽だ!
太陽の翼ハイペリオンそして同志と共に、これより黒き闇を打ち払う!」
『特異運命座標』日高 天(p3p009659)が白い空間内で手をかざす。と同時に『ウィツィロの守護者』ハロルド(p3p004465)もまた手をかざした。
(気づけば義務と責任に縛られる立場、今後は自ら戦場に出向いて自らを危険に晒すことも不可能……か。だが仕方ない。全ては俺の行動が招いた結果なのだから。
成さねばならぬことは必ず成すが、真に成したいことは成せず。俺はそういう宿命なのだろう)
二人の力がハイペリオンへ宿り、巨大な剣型のエネルギー体が出現。ハイペリオンは両手(羽根のなんかさきっぽ)で剣を握ると、ノワールクロウへと繰り出した。
「願いの力を受けなさい!」
「させん!」
剣を受け止めようと黒く巨大な剣状のエネルギー体を形成。剣を止める気だ。
と、そのとき。
「にゃ。みーお、もふもふで可愛いハイペリオンさん好きですにゃ」
『ねこ戦車』もこねこ みーお(p3p009481)がにゃーんといって招き猫ポーズをとると、ハイペリオンの頭にひょこっと巨大猫耳がはえた。
それだけか? とノワールクロウが目を細めたその瞬間。
「あっ!」
ハイペリオンが地面の小石(というか横転した馬車)につまづいて転んだ。
手かすっぽぬけた剣が回転しながら飛んでいき、ノワールクロウの頭に突き刺さる。
「グワーーーー!?」
「みーおがハイペリオン様に与えられる力は、幸運ですにゃ!
ジャイアントラッキーハイペリオン様、ですにゃー!」
「いやそうはならんだろ!」
「コャー。じゃあ次は狐耳ね」
『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)がかざした手首をくいっとやると、ハイペリオンの頭に今度は狐の耳がはえた。なんかぼわっと青い炎をまとった耳が。
「我が蒼火の力、受け取るといいの。
これぞまさしく、神翼蒼焔はいぺりおんこやんふぁいあ~!!」
「ふぁいあー!」
ツァンフオの右ストレートの動きに合わせ、炎をまとった翼でノワールクロウを殴りつけるハイペリオン。
『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)がグッと拳を握った。
「ミーミルンドに巨人に古代獣……こんなに大きな戦いになるなんて。
ハイペリオンさま、オイラも力になるよ!」
殴り飛ばされたノワールクロウが転倒。瀕死の古代獣や逃げ遅れた巨人を押しつぶし、たまたまそこにあった小屋を粉砕しながら転がる。
起き上がったノワールクロウは手刀を構え、横一文字に払うことで黒い刃を作って発射してきた。
「負けてなるもんか、ここじゃだれも死なせない! これ以上おまえたちに死の力を与えてたまるか!」
チャロロの生み出した炎の盾が巨大な壁となり、ノワールクロウの斬撃を完全防御。
「何!?」
「最強合体!殿ペリオンじゃ! なーーーーーーっはっはっは!」
そこへ『殿』一条 夢心地(p3p008344)の力を受けてちょんまげのはえたハイペリオンが羽ばたいて跳躍。ノワールクロウへ飛びついてホールドすると……。
「ハ イ ペ リ オ ン バ ス タ ー じゃ~~!!」
ぴょんと飛び上がり、空中で反転してノワールクロウを地面へと叩きつけた。
「ぐおお!?」
まさかこんな技でくると思っていなかったノワールクロウ。
転がって追撃を逃れると、すぐ近くにいた巨人を掴み上げてハイペリオンめがけて投擲してきた。
たかが投擲と侮るなかれ。この巨人にぶつかれば常人などひとたまりもない。
「此度の話はそれなりに理解しているつもりです。
どうして愛しき人と永久に居られないのでしょうね、どの世界でも……」
ハイペリオンの中で自分の手のひらを見つめる『愛しき影と共に』カスミ・スリーシックス(p3p008029)。
キッと前を向くと、両手の拳を握りしめた。
「どうか、愛しき影と共に私達がハイペリオン様の盾となれますように!」
途端、ハイペリオンの影から何かが伝わり、飛来した巨人をばりしとはねのけてくれた。
「今だ! 畳みかけるよ!」
ヒュウンとアクティブになった『鋼のシスター』ンクルス・クー(p3p007660)とマッスルポーズの『甘い筋肉』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)。
「今、言葉でなく心で理解した」
マッチョプリンの顔(╹◡╹)がプリンごと回転反転し(╹v╹)となり、また反転し(╹∀╹)となった。
「口よ開け! 迸れ想いよ!
今こそ必殺の――ハイプリオン☆ビィィィィィッム!!!」
ぱかっとひらいたハイペリオン口からプリン味のビームが発射される。
両腕をクロスしてなんとかガードするノワールクロウ……だが、ビームを発射した直後にハイペリオンは空高く飛び上がっていた。
「皆に創造神様の加護がありますように……いや? 今回はハイペリオン様の加護の方かな? ともかく――」
ンクルスが拳をブンッと振り込む。
飛び上がったハイペリオンを見上げたノワールクロウは、その時偶然か必然か太陽を背にしたハイペリオンのせいで一瞬目がくらんだ。
「ハイペリオン様×創造神様=最強!
この1+1は200! 100倍だよ! 100倍!
更に回転を加える事でノワールクロウを超える100万パワーだよ!
……ってことで名付けてハイペリオンプレス!」
きりもみ回転をかけ頭から突っ込んだハイペリオンによって押しつぶされるノワールクロウ。
「な、なんなんださっきから! ふざけているのか!? 因縁の対決をなんだと――」
「いいえ、誰もふざけてなどいません」
ぴょんと飛び退いたハイペリオンがつんつんと毛繕いをし巨大なハンマーを振り上げる。
「強いて言うならば……『真剣にふざけている』のです」
『ママの気遣い』アルフィンレーヌ(p3p008672)の力である。
「常世の悪を滅すため。心の闇を照らすため。太陽の翼、神翼獣ハイペリオンここに推参! この輝ける翼を恐れぬならば、かかってきなさい!」
とぅ! といって空へ再び飛び上がったハイペリオン。ノワールクロウもまた空へ飛び上がったが、そんなノワールクロウに『あたたかい笑顔』メイメイ・ルー(p3p004460)の力が加わった。
「わ、わたしも、ハイペリオンさまに…なります。
この、もふもふでふかふかでダイナマイツなお姿で、敵をやっつけます……!」
えいっと両手を高くかざしたメイメイに応じて。ハイペリオンの身体がひつじさんみたいなもこもに包まれた。
口から放つひつじさんビームがノワールクロウを直撃。
「ところであなた、焼き鳥はたれか塩かどちらが好き?
もっとも、あなたが焼き鳥になるのだけれど!」
アルフィンレーヌの力で炎を纏ったハイペリオンの突進もといハイ・アタックによって打ち抜かれるノワールクロウ。
なんとか残った力をかき集めて損傷箇所を埋めるノワールクロウだが、そのタイミングで……。
「トドメです。行きますよ。カイトさん、澄恋さん!」
「よっしゃあ! お前も一緒に行くぞアカペリオン!」
『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)は一緒に連れてきた赤い毛皮の量産型ハイペリオンと一緒に翼を広げると、ハイペリオンと力を融合させた。
空高く、吹き抜ける風のすべてが分かったかのように、カッと目を見開くハイペリオン。
「ノワールクロウ。誰かから奪った力だけで大きくなった貴方にはわからないでしょう。
かつての勇者も、現代の勇者(ローレット)も、自ら『力を合わせて』戦っているのです。
思想もカタチもバラバラな彼らがただ一点のために集まり、力を合わせ戦う。これが、『現代最高の勇者パーティー』の力なのです!」
ハイペリオンが炎の翼を広げ、真っ赤に輝く。
「ああ〜愛らしさの累乗でマイナスイオンが出てるのでスゥー!
ハイペリオニウム吸引による元気チャージ、ヨシ!」
空間内でめっちゃ深呼吸した『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)。
「白き太陽は不滅です!」
バッと両腕をY字に掲げるポーズをとると、澄恋は『紫蝶』の秘術を解き放った。
にゅっとツノのはえたジャイアントハイペリオン。だが変化はそれだけではない。
ハイペリオンの理想とした近似解――巨大な勇者王に似た光の巨人へと変化した。
「貴様――!」
「終わりです、ノワールクロウ。倒すこと叶わず封印するしかなかった貴方を――今こそ、現代の勇者たちが倒すのです!」
光の剣を抜き、突撃する。
対するノワールクロウもまた剣を作り出し突進。
二人がぶつかり、交差し、大地をえぐりながらブレーキをかける。
巨大な勇者王の姿となったハイペリオンはパキンとその力が剥がれおち、もとのハイペリオンへと戻った。どころか、融合状態が解けてぽてりと地面へと落っこちてしまった。
目をばってんにして起き上がるハイペリオン。
だがその背後では。
「見事……こんな力が、我にもあれば……あんなこと、には」
激しくヒビいった真ノワールクロウが、バラバラに崩壊していく。
あとに残ったのは、一羽の大きな鴉の死体であった。
ぽふぽふと歩み寄り、その死体を抱き上げるハイペリオン。
澄恋たちがそこへ駆け寄っていく。
「ハイペリオン様、それは……」
「ノワールクロウ……の、最初の姿と言うべきでしょうか」
包んだ翼でそっと撫でると、強く抱きしめふかふかとその身体の中に埋めていく。
「彼は敵でした。私から母や、この国の人々の幸せを奪った。けれど。憎むのはもう終わりです。
私の中で安らかに眠りなさい、ノワールクロウ。憎しみを抱え続けるには、この悠久の時は永すぎました」
それからしばらくして、ヴィーグリーズの丘における主戦場はローレット連合軍の勝利という形で終わりを迎えた。
ある意味元凶であったノワールクロウは消え去り、ハイペリオンのなかで安らかに眠り続けるだろう。倒した敵軍も拘束され、然るべき処分をうけるという。
ノワールクロウの手から離れた古代獣の一部はどこかへ逃げ去ってしまったが、この国の脅威になることはそうないだろう。
『現代の勇者』たちが、幻想王国の平和を取り戻したのである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
主戦場での戦いに勝利し、ミーミルンド連合軍を倒しました。
GMコメント
●決戦シナリオの注意
当シナリオは『決戦シナリオ』です。
<ヴィーグリーズ会戦>の決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(通常全体とは同時参加出来ます)
どれか一つの参加となりますのでご注意下さい。
●これまでのあらすじ
今回の主戦場『ヴィーグリーズの丘』には幻想ミートルンド派連合軍、フレイス派巨人軍団、ノワールクロウ古代獣軍団が終結し、最後にして最大の抵抗を始めていました。
彼らを放置すればヴィーグリーズを中心とした幻想各地の民に甚大な被害が出てしまうでしょう。ですが様々な策略によって幻想貴族の軍勢は動きが鈍り、この電撃的な作戦へ即座に対抗することが出来ません。
そこで、最もフットワークの軽いローレット・イレギュラーズ及びローレット派領主たちによるローレット連合軍がヴィーグリーズの丘へと集結。
ミートルンド連合軍VSローレット連合軍の大決戦が始まったのだった。
この主戦場の鍵を握るのは古代獣の主『真ノワールクロウ』。
幻想各地にて復活した力の結晶である黒卵を集結させ復活を早めたノワールクロウは、その力でローレット連合軍をなぎ払おうと画策しています。
この力に対抗できるのは、伝説の神翼獣ハイペリオン。ミートルンド連合の大軍勢を押さえつつ、大空を突き進むハイペリオンをノワールクロウのもとまで出撃させ、そして蓄えた力を解放した巨大ハイペリオンと共に真ノワールクロウを撃ち倒すのです!
■■■プレイング書式■■■
迷子防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
・一行目:パートタグ
・二行目:グループタグ(または空白行)
大きなグループの中で更に小グループを作りたいなら二つタグを作ってください。
・三行目:実際のプレイング内容
書式が守られていない場合はお友達とはぐれたり、やろうとしたことをやり損ねたりすることがあります。くれぐれもご注意ください。
■■■パートタグ■■■
以下のいずれかのパートタグを一つだけ【】ごとコピペし、プレイング冒頭一行目に記載してください。
【攻撃】
・こんな方にオススメ:「勢いのある突撃をしたい」「範囲攻撃を打ちまくりたい」「前線部隊を直接支えたい」
兵士、巨人、古代獣がごちゃ混ぜになったミートルンド連合軍へ攻撃を仕掛け、各主作戦への合流を阻止します。
敵の数は多く激戦が予想されますが、多くの仲間達と共に戦えばきっと勝利できるでしょう!
【騎兵隊】
『騎戦の勇者』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)を中心とした『騎兵隊』。今回の役割は最前衛斬り込み部隊、及び中盤から終盤にかけての味方部隊の連携を必しめる部隊です。
持ち前の機動力によって広く展開し、ミートルンド連合軍に対して陣形的主導権を握ります。
この動きが素早く、かつ連携がとれ、かつ戦意が高いほど敵軍に対する主導権を維持しやすくなります。
また、初動においてイーリン・ジョーンズ氏にはその旗を掲げた全軍突撃号令の役割が求められています。
(※これはパートタグです。この中で更にグループを組む場合はグループタグを別に用意してください)
【救護】
・オススメ:「医療スタッフになりたい」「負傷者を減らしたい」「機動ヒーラーの腕をみせたい」
戦場での負傷者を素早く回収し後衛テントで治癒する部隊です。
この部隊が活躍すればするほど味方の重傷者が減ります。これはローレット・イレギュラーズにも、本作戦に参加している領兵たちにも適用されます。
【指揮】
・こんな方にオススメ:「自分の領地の兵隊を投入したい」「指揮能力を発揮したい」「領地の特色を出したい」
自領地の兵を指揮して戦うパートタグです。部下の士気を高めて戦いましょう。
もし自分の領地を持っているなら、領地から兵士を10人前後つれて参加できます。(残りは領地の防衛や維持のためにお留守番しています)。領地が遠いカムイグラとかにあっても、この動きを予想して予め幻想まで旅行させておいた扱いになります。
兵の戦闘力は強すぎず弱すぎず程度を基準としますが、領民たちに演説をして士気を高めたり先陣切って戦って士気を高めたりといった方法で戦闘力を上げます。
※注意:指揮パートを選択した場合、指揮に集中することになります。他のパートへの同時参加はできません。
【飛行】
・こんな方にオススメ:「空を飛んで戦うのが得意」「シューティングで戦いたい」「ハイペリオン様が好き」
大空を飛び、ノワールクロウの元までハイペリオンを送り届ける必要があります。
もちろんそんなことをされてはたまらないのでノワールクロウの古代獣軍団やミートルンド軍の混成飛行部隊が迎撃に出てきます。これを倒し、大空を突き進みましょう。
このパートでは味方に『ハイペリオンの加護』が与えられます。
内容は『飛行戦闘ペナルティが大幅軽減』されるほか、今回は特別に『媒体飛行or簡易飛行』でも戦闘が可能になります。
また飛行しない場合でも、ハイペリオンの背にのって戦うことが可能です。
背に乗って飛ぶメインアタッカーとして、『神翼の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)が特別に任命されています。
【ハイペリオン】
・こんな方にオススメ:「巨大怪獣と融合して戦いたい」「尖った特技を活かしたい」「ハイペリオン様が好き」
古代獣から奪い返した力で巨大化したジャイアントハイペリオン様と融合して、敵のボスである真ノワールクロウ戦います。
どちらも高層ビルなみの巨大さをもち、その溢れんばかりのパワーでぶつかり合います。
ミートルンドの丘を部隊に、巨大古代獣VS巨大神翼獣のド派手なバトルに参加しましょう!
真ノワールクロウはこれまで蓄積していた死の力と、封印中ハイペリオンから奪い取った力の合わせ技を使います。
一方でジャイアントハイペリオンはこれまでローレットが倒してきた古代獣から奪い返した力と、ローレット・イレギュラーズが融合したことでできた力を使います。
プレイングには、自分が『ハイペリオンの特殊能力そのもの』になったらどんな風かを書いて叩きつけるととてもたのしいのでオススメです。
ハイペリオンが敗北したら依頼は失敗ですので、敵の攻撃を受けるスーパーシールドになったり、付与支援を行ってハイペリオンを強化させたり、必殺技を出して敵を殴り飛ばしたりしましょう!
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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