シナリオ詳細
<絶海のアポカリプス>絶望に拳を掲げよ
完了
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オープニング
●おわりのはじまり
――人間共。『冠位』を傷付けし者共よ。その顔を見てやろう。
その小さき力を嘲り、その小さき力を僅かばかり認めて。
我が好奇と興味の的として、貴様等の姿を覚えてやろう。
絶望等と生易しい、後付けの廃滅等問題にもせぬ。我は神威。我こそ世界。
光栄に思え。たちどころの感謝に咽べ。
称えよ、竦め。許しを乞え。我が名は滅海――滅海竜リヴァイアサンなり!
大海原を爆砕して現れた、あまりにも巨大すぎる怪物。否、『滅海竜リヴァイアサン』の存在は魔種たちを倒し少なからず勝機を感じていた海洋海軍たちを一転して絶望のムードで覆してしまった。
高層ビルがうねるかのごとく巨大なその体躯は、ただ動作するだけで荒波を引き起こし船を転覆させてしまうだろう。未知の力によって守られた鱗はいかなる攻撃も弾いてしまうだろう。
言うなればそれは、『物理的な絶望』であった。
「た――」
味方の船が次々と転覆するさまに、そして天を突くがごとくふり上がった巨大な頭を前に愕然としかできなかった海軍船長は震える顎でなんとか叫んだ。
「退避ィ!」
きわめて簡潔な命令だが、なにより正しい判断だった。これだけの敵を相手にできることは退避をおいて他にない。
転覆した船から離脱した兵士たちが素早く泳いでは船へと無事な這い上がり、時には瀕死の重傷を負った者や意識の戻らぬ者がデッキへと寝かされる。
まるで地獄のような風景だが、まだそれは地獄の入り口に過ぎなかった。
●みんな一緒になれる、最後のチャンス
マリー・クラーク。別名『流氷のマリア』には夢があった。
素敵な素敵な兄弟達と自分が対等に笑い合い、まるでふつうの家族のようにひとつのテーブルについてシャイネンナハトを祝う風景である。
最高の夢。最高の宝物。それをきっとかなえてくれるのは、誰にでも垣根なく触れて、人の心を溶かしていく。
私の一番の宝物。
誰もがきっと、あなたになりたかった。
マリーは嫉妬の根源を知っていた。妬ましさとは、つまり――。
「ねえ、デイジー。私はあなたになりたかったわ」
だから。
いまこそ。
「壊れて崩れて溶けて混ざって、みんなひとつになりましょう」
マリーはリヴァイアサンの胴体の上に立つと、両手を広げて高く天へ掲げた。
まるで彼女の指揮に応じるオーケストラの如く、海面へ無数の氷の山がつき上がり、海軍たちの逃げ道を阻んでいく。
氷の山から再現なく生えていずる氷の人型モンスター『アイスガーディアン』たち。
船が氷山にぶつかったことで強制的に停止させられた海軍混成部隊デリンジャー少尉は顔面蒼白のまま武器をとり、海豹艦隊アシカ副長はデッキに転がった負傷兵たちを庇うように立ち塞がった。
水上バイクを船のそばにとめ、ゴーグルをあげて舌打ちする海軍将校ユーナバー。
「チッ、なんだこりゃあ。ここが俺らの墓場だってのか?」
「いいえまだです。まだ死んでたまるものですか。氷山の隙間を抜ける形でなんとか船を通せます。まずはせめて負傷兵だけでも退避させなくては!」
「あの『アイスガーディアン』を見ろ。ホテルのボーイみたいに通してくれると思うか? お荷物お持ちしましょうかって?」
アイスガーディアンたちの腕が剣やハンマーや大砲へと変わる中、まだ無事な海軍兵士たちがそれぞれの武器をかまえて挑みかかる。
なかの一人が、あなたへ――イレギュラーズへと振り返る。
「この場を突破するにはあなたの力が必要です。アイスガーディアンを倒すのでもいい、襲われる負傷兵を守るのでもいい。とにかく、ここを我らの墓場にするわけにはいきません!」
- <絶海のアポカリプス>絶望に拳を掲げよ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別ラリー
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年06月13日 21時03分
- 章数5章
- 総採用数386人
- 参加費50RC
第5章
第5章 第1節
『流氷のマリア』は倒され、赤い氷山は沈んでいく。
――矮小で小癪な人類どもが!
リヴァイアサンの声が怒りを伴って天空を震わせる。
『流氷のマリア』が施した血を媒介とした魔術を、リヴァイアサンは即席で復元。
海上には自らの血を固めた船舶型ブラッドガーディアンが並び、その甲板には無数のアンデッド兵が乗り込んでいた。
『出せるカードはこれが最後』だと言わんばかりの編成。
しかしその数はあまりに膨大。
倒せるのか?
いや、倒せぬはずはない。
奴らにツケを払わせろ。
そう。
今こそ。
「「絶望に拳を掲げよ!」」
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■第五章の概要
ついに魔種を討ち滅ぼし、残すはリヴァイアサンのみとなりました。
リヴァイアサンは大量に流した血を媒介とした召喚術により幽霊戦艦を無数に生み出しました。
だがもう恐れることはありません。
駆けつけた仲間たちの援護射撃や、仲間たちた作り上げた防衛網や医療体制が皆に勝利を確信させています。
さあ、皆で一緒に、最後の一撃をたたき込んでやりましょう!
■特殊効果
この章では以下の特殊効果が発生しています
・超連合軍:PC全員のCTが大きくブーストされます。これは敵軍の攻撃によって負傷兵が出るほど低減していきます。
・高速回収:負傷兵は戦闘不能になっても死亡のリスクが低減します
・船上病院:負傷兵は一定割合で復活し、戦線へ復帰(超連合軍効果を維持)します。
■グループタグ
誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの一行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。所属タグと同列でOKです。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
例:【鮫殴り同好会】3名
※このタグによってサーチするので、逆にキャラIDや名前を書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
※また同様の理由で、参加していないタグ名を書き込むと誤サーチ&紛れ込みの原因となるのでお気をつけください。
※グループ参加人数が5人を超えた場合、描写人数が抽選になることがあります。
■作戦タグ
以下の内から自分の参加する作戦を選択してください
どの作戦タグを選んでもリヴァイアサンに攻撃できるチャンスはありますが、基本的にアンデッド兵との戦闘になるため『対アンデッド兵』前提でプレイングをかけるようにしてください。(リヴァイアサンへの攻撃はアドリブ描写扱いとなります)
【空中戦】
幽霊船団の中には飛行可能なアンデッド兵も含まれており、高高度に登って味方の武装民間船たちに急降下自爆を仕掛けようとしています。
これを撃墜すべく、空で戦いましょう。
海兵たちも一部が空に上がって戦っているので、彼らと共に率先して戦うことになるでしょう。
(戦闘には『飛行』または『飛翔』スキルが必要です。簡易飛行や媒体飛行では戦闘が行えません)
【水中戦】
アンデッド兵の中には水中で戦闘可能な個体も多くいます。
彼らは武装民間船にとりつき自爆攻撃を仕掛けようとしています。
これを撃破すべく、海中での戦闘をおこないましょう。
これらを撃破するため、水中戦闘を行います。
(戦闘には『水中行動』や『水中親和』スキルが必要です)
【船舶戦】
船舶型ブラッドガーディアンとそれに乗り込んだアンデッド兵たちが攻撃を仕掛けてきます。
これを撃退し、この海に勝利を刻みましょう。
手持ちの小型船系アイテムを(1PC1つまで)投入すると有利に戦えます。
第5章 第2節
背中に爆弾を背負い、海中を泳ぐ海種アンデッド。ザギハンタイプの彼らは足ヒレを使った特殊泳法で船からの射撃を回避。
船底への自爆特攻を仕掛けようとしていた。
「ええっ、アンデッド海潜れるの!? ……って思ったけどあれは潜れるね納得」
さじを投げた海兵たちに頼み込まれて船から海中へダイブしたトゥリトス。
大量のアンデッド兵が突っ込んでくる光景に軽く引いたが……。
「泣き言は言ってられないね、少しでも数を減らして、とにかく船を守るよ!」
ビッと十字を切った手刀にキラメキを纏わせ、かぎ爪を構えたアンデッド兵めがけて突撃。
繰り出される攻撃を手刀で払うと、相手の首筋にドンと突きを打ち込んだ。
タイマンなら負けない……が!
そんな彼女へ集中攻撃を仕掛けようと三叉槍を抱えて突っ込んでくるアンデッド兵たち。
ひいと小さく鳴いたトゥリトスだが恐れることはない。いっぱいいるのは敵だけの話ではない。
「ほら、しっかりしろ。陸で大事なやつらが待ってるんだろ」
ゆらりと現れた十夜が、海中の流れを制御しまるでぼうっと立っているかのような自然さで間に割り込んだ。
「…………」
心に響く『彼女』の声。その意味は今は知っている。
「不思議なモンだな」
「?」
「ついこの間までの俺は、ただ漠然と海で死ねりゃぁいいって考えてたってのに
いい加減身体はボロボロで。
廃滅も広がりきっていて。
それでも今の方が……」
指折りで数えられるほど死が近づいている。
置き去りにしたはずの過去が今の彼に追いついて、冷たい海の底へと誘っている。
けれど、今彼は一人きりではなかった。
彼と並んで歩いてくれる人々が、彼の心を海の中にあってなお暖めてくれた。
「最高に気分がいい……!」
しゃらりと抜いた刀の光に誘われてつい彼へ集中してしまうアンデッド兵。
十夜はその悉くを回避ないしは防御し、四方八方から繰り出される突きを利用して槍による同士討ちをさせた。
味方の槍に刺さったことで慌てて退くアンデッド兵。
どうやら痛みは感じないらしいが――。
「今がヤバイってのは分かってるみたいデスネー!」
宙返りジャンプで海に飛び込んできたわんこがくるくる体育座り状態で回転しながら海中へとエントリー。
バッと両手両足を広げると、慌てて陣形をとりなおそうとしたアンデッド兵の一人に蹴りを打ち込んだ。
「眼前には無数の敵……もはや見慣れた光景デスガ、今回ばかりは事情が違いマス。
なにせ、心強い味方が沢山来てくれたのデスカラ!!
ここでやらなきゃ何かが廃る! 気合い入れマスヨ、キャヒヒヒ!!」
蹴りによって首を飛ばされたアンデッド兵が背負っていた爆弾によってその場で爆発。
爆風をかわして飛び退くと、クイックターンの動きで反対側のアンデッド兵を蹴り飛ばした。さらなる爆発。
「竜が召喚した物は屍兵、ですか……」
腕組み直立しせいでスゥーっと下りてくるボディ・ダクレ。
「しかしながら、ただの操り人形と判断されます。
ならば排除を。撃破を。撲滅を」
ノイズの走る画面。
パッと切り替わったエマージェンシーマーク。
「──同類の一つとして」
意思をインストールされたアンデッド兵、ボディ。
意思の有無は、使命の有無は、歩く死体にとっていかなるものであろうか。
ボディはきっと、その意味をまだ知らない。
時折泡のように浮かぶ『身に覚え』だけがある記憶。自分のものではない人生。
そして天恵のごとく突如与えられた世界崩壊に対抗するという使命。
そのすべては。
「痛みを知りなさい、死体」
画面に走った電子術式(コード)が力を持ち、拳に力がみなぎる。
アンデッド兵を次々に拳でぶち抜き爆発させ、ボディは素早く泳ぎ抜けていく。
成否
成功
第5章 第3節
武装民間船団モビーディック。大量に連結した船の上だけで生活を送るというかわった船上街コミュニティから厳選された武装船とハッピーな男達。その先陣をきるゴーグルにツナギの男ジャッキは、同じ船に乗り込んだドゥーやセレマたちへと振り返った。
「よっしゃあ、いこうぜ兄弟! ありったけの砲弾を幽霊船どもにぶちかましてやる。その間の守りは任せたぜ!」
「うん。あとちょっと、だね。
ここが最後の正念場。それなら……」
ドゥーは借り物のゴーグルを装着すると、水中呼吸の魔術を自らにかけてからデッキからダイブ。
「それなら全力で走り抜けるだけだ!」
爆弾を背負ったアンデッド兵が既に大量に船へ迫っており、今にも船底に張り付いて爆破しようと試みていた。
だがまだ間に合う。
ドゥーは『ファントムチェイサー』の魔術を起動させるとアンデッド兵のひとりをロックオン自らの腕を銃身代わりにして片手で押さえると、開いた手から魔術弾を連射した。
(海の中は暗くて怖い。
でも皆がついてるから大丈夫。
一人きりで戦ってる訳じゃないから、俺でも先に進むことができる。
絶望に立ち向かえるんだ。
その証をこの海に刻み付けるよ……!)
「いいよ。君も、この船も……」
セレマは美少年燐光を纏いながら美少年回転をかけゆっくりと水中へと下りてくると、美少年呼吸法によって大きく深呼吸をした。
「美しいボクが、キミたちを守ってあげようじゃないか」
さあ、歌って。と手をかざすセレマ。
待ってましたとばかりに歌い始めるメリルナートの美しくも特殊な音波が海の中へと染み渡り、セレマの美少年センサーによって敵影がマーキングされていく。
細くしたそばから美少年魔術によってアンデッド兵たちをしめやかに爆発四散させていった。
「武装民間船とは、これはまた無茶をしてきたものですわねー。
とはいえ貴重な援軍です、雑兵程度にお釈迦にされるわけにはいきませんわー」
高らかに歌を強めるユゥリアリア。彼女の力によって紡がれた魔法がアンデッド兵たちを苦しめ、次々と破滅させていく。
「シャルロットも味方艦隊も…正直、余力は殆ど残されてねぇ。いろんな奴に時間が無ぇ……」
どこか焦った様子でパイプを噛むレイチェル。詰め込んだ酸素供給用の煙草から呼吸を行うと、しかしどこか余裕そうににやりと笑った。
「こういう時は決まってる。全力で攻勢に出るだけだ。
本来の俺の役割は──敵を叩き斬る『剣』だからなァ」
レイチェルが引き絞った拳。刻まれた紋様が赤く輝き、繰り出した拳が巨大な赤い手となってアンデッド兵を握りつぶした。
「狩って狩って狩り尽くす。狩り尽くせば、俺の守りたい者は守れるだろう?
次はどいつだ…! 来いよ、さぁ!!」
成否
成功
第5章 第4節
突き進むモーターボート。海洋王国や鉄帝国からかき集められた無数の漁船や客船、時には個人所有のボートまでもが無理槍武装し、既に船舶型ブラッドガーディアンとの砲撃戦に突入していた。
敵船舶はこちらの船を爆破によって沈めようと海種アンデッド特攻兵を複数投下。
そんな中、戦闘の指揮を執っていたゼニガタ大佐は背のアームストロング砲を発射しながら叫んだ。
「息子よ! 海の強者を思い知らせるのだ! 目には目を、空腹には烏賊を!」
「いいぜ! やってるぜー!」
とあーと叫んで甲板から発射されたワモンは放物線を描いて海中へと突入。
「今日のオイラに前振りはねえ! 初弾からクライマックスだぜー!」
突入と同時にヒレをたくみに操作しきりもみ回転をはじめたワモン。
「必殺――海豹牙斗燐具武放猛怒!」
こちらに気づいたばかりの人魚型アンデッド兵たちがぎょっとした様子のまま撃破され、背の爆弾によって次々と爆発。
海中で起きた爆発の光と塵の中を突き抜けるように進むノリアとゴリョウ。
二人はぎゅっと手を繋ぎ、互いの顔を見て頷きあった。
「海の中での、爆発は…威力が、ダイナマイト漁になって、危険ですの…!
どうにか、自爆を、止めませんと…」
「任せな! 自爆特攻なんぞさせるかよ!」
ゴリョウは早速銃旋棍『咸燒白面』による射撃でアンデッド水兵を牽制。
鎧からのジェット噴射で距離を詰めたところでてんかいした天狼盾『天蓋』の側面によるシールドバッシュで相手をノックダウンさせた。
「死人が生者を引き摺り込んでんじゃねぇ! とっとと昇天しやがれ!」
その勢いのままぐいんとノリアを前方へと出し、ノリアの尻尾による打撃でもって相手を吹き飛ばした。
踊るようにくるくると回る二人を排除しようとアンデッド水兵たちが密集するが、その一人たりとて彼らを傷つけることはできなかった。
ある者は盾や足で、ある者は尻尾によって弾き飛ばされ海面から飛び上がった水平が空中で爆発四散する。
「此処からの地獄には門が不可欠だ。私こそが肉の門で在り、希望を破棄するのは何者か。屍風情が浮上する事など赦し難く、鉛に浸かって朽ちて逝け」
花火のように打ち上がったアンデッド水兵たちの中をタクティカルスワンボートによって抜けていくオラボナ。
ボートを操る屈強な男がビッと親指を立てると、オラボナはスワンボートの頭上(?)からジャンプ。
空中でもごもごと奇妙な動きをするとひどく大きな体格へとチェンジ。進行中のアンデッド水兵の上へと覆い被さるようにダイブしていく。
一見身動きがとれないかのように見える体型だが、器用に動き回って水兵達を物理的にとりこんでいく。抵抗した水平が自爆をはかるが、オラボナの体型を一瞬だけボコンと帰るだけだ。
「倒れるまで我が身は絶壁と知るが好い。Nyahahahaha!!!」
その一方、スワンボートの上ですらりと刀を抜く咲耶。
「死霊を使った自爆など、龍にしては姑息でござるな!他の龍種が嗤っておるぞ、滅海龍!」
目指すは水平――ではなく、その先でどっしりと横たわるリヴァイアサンの胴体である。
味方の船舶が一斉砲撃を仕掛けたことで転覆していく敵船舶。
「チャンスだ『ござる』ちゃん!」
「承知!」
咲耶はボートがかたむくほど激しいジャンプを仕掛けると、リヴァイアサンの胴体めがけて刀を煌めかせた。
見開く目と刀の照る光が三本の光の線となって激しい回転が始まる。
防御の弱まったリヴァイアサンの鱗を削り取り肉を切り裂くには十分すぎる回転。
「ようやくここまで追い詰めたのだ。これ以上誰も失わせてなるものか!」
成否
成功
第5章 第5節
海中からの攻撃がイレギュラーズや海兵たちによってほぼ阻まれてしまったことで、幽霊船団は新たな攻撃方法に打って出た。
「九時方向! アンデッド兵が次々に離陸しています! 潜水特攻兵と同様の装備を積んでいる模様!」
「海がダメなら空から、か。ナメられちゃったもんだね」
ニッと笑い、全身にばちばちと迸らせた赤い電撃によって腕組みしたままふわりと浮かび上がる『雷光・紫電一閃』マリア・レイシス(p3p006685)。
「ガイアズユニオン最速の軍人を甘く見ないでもらおうか、なんてね。
皆、行くよ! 一斉離陸!」
急速に飛び上がるマリアに続いて、仲間たちが次々と翼を広げていく。
「そうね。何時までも、見て待ってるだけっていうのも嫌だものねー」
『羽休め』嶺渡・蘇芳(p3p000520)はコートを脱ぎ捨てると、背にぱっくりとあいた穴から美しい翼をはやした。
「また、失ってしまいそうだから。
……だから、私も戦うわ」
海兵からパスされた剣をキャッチし、螺旋を描いて上昇していく。
鞘に手をかけた『虚刃流開祖』源 頼々(p3p008328)が、蒼い翼を羽ばたかせてゆっくりと上昇をはじめる『強者食い』ハンス・キングスレー(p3p008418)へと呼びかけた。
「莫迦共め! 我とハンスに、こともあろうに空中戦で挑むとはっ! その蛮勇の対価――貴様らの命で贖って貰う……!
さあ行くぞハンス! 適当に当たってあとは流れで、というやつだ。派手に乱戦といこうではないか!」
「便利な言葉だね……ああ、いこう頼々くん!」
両腕でしっかりとホールドするように掴んだハンスによって空へと舞い上がる頼々。
「飛行荒くなるけど──あんまりはしゃいで落ちない様には気を付けて、よね……!」
一方で既に空に浮かんでホバリングをかけていた『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が仲間と共に高度をぐんぐんと上げていく。
「あとはリヴァイアサンだけ……いろんな場所でみんなが死力を尽くして戦ってて、もうひと頑張り!
頑張ってるみんなの邪魔はさせないし、リヴァイアサンの意図を挫いてそれに手を割いてた分だけ消耗させるよ!」
「手負いの獣は恐れるべきだ。一層警戒しておこう」
『救いの翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)は巧みな飛行術によって急速にかなりの高度を稼ぐと、空から海の霊魂たちへと呼びかけた。
――『俺たちの無念を晴らしてくれ』
――『こんなところで終わるんじゃない』
――『新天地を見つけるんだ』
かつて王国の民がみた夢。いまこそかなうかもしれない夢。
それは霊魂の呼びかけとなってミニュイへと集まっていく。
「……ああ。報いよう、その夢」
一方、魔術によって飛行し、どっしりとした腕組み姿勢のまま垂直に高度をあげる『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)。
「はぁあ。そもそも死んでいるからってさぁ、自爆? 別の所で勝手に死んでろよ!! めんどくさい」
「しかし他人の魔術をも取り込んで復元、自らの物とする……しかもこの物量だ。
流石神のごとき竜か。事あるごとに規格外性を見せつけて来るね? だがこちらも立直かけてるんだ、今更退きはしない」
『ストームライダー』メリッカ・ヘクセス(p3p006565)は空中で大きく翼を広げ、青いマントも相まって空に自らの姿を焼き付けるかのように魔術の光を煌めかせる。
そのまた一方、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は剣に込められた神威を自らに部分憑依し、炎の輪を背負って空へと飛び上がる。
「絶望に拳を上げて、後は振り下ろすのみ、絶望の海、叩き壊させてもらうわよ!」
「そうだね……じゃあ、俺も手伝おうかな」
『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)は彼についてきた精霊『四季運びのカイ=レラ』と手を繋ぐと、精霊の力を身に宿し花の香りを纏いながら空高くへと飛び上がった。昨今へきて急激に精霊使いらしさを発揮する行人である。
こうして仲間たちが次々と空へ舞い上がるなか、『首神(首刈りお姉さん)』紅迅 斬華(p3p008460)もまた八咫烏のような黒い翼を新規生成させて急離陸急上昇をかける。
黒い巨大ナイフをがちんと接続し、はさみのようにじゃきじゃきと動かして笑う。
「有象無象がわらわらと♪ 少しはあの子を見習ったらどうです?
まぁいいでしょう♪ 刈る首は多いに越したことはありません♪
紅迅は恩を忘れない。あの子に救ってもらった恩を返さねばなりません♪さぁ! 祭壇に捧げる首を集めましょう♪」
一番槍となったのはそんな斬華であった。
飛行しフリントロック銃による射撃をしかけてくる飛行種アンデッドの攻撃を軌跡的に回避すると、架空の翼を羽ばたかせて急加速。
「ごきげんよう♪ その首ちょ~だい♪」
じゃきん、とアンデッドの首を切断。墜落し空中で爆発するアンデッド。
サーベルをぬいたアンデッドたちが斬華を狙って飛びかかるが、陣形を組んだ蘇芳と行人がそれぞれ妨害。
間に割り込むようにして剣で攻撃を受け止めた。
「さぁ、皆で帰って、美味しい物食べる為に!」
アクセルの演奏によって生まれた魔法の光が解き放たれ、蘇芳は音楽にのって軽やかに踊り始める。
いや、踊るかのように剣を繰り出し、アンデッド兵を美しく切り裂いていった。
一方の行人は蔓草が巻き付いたかのような剣に花の香りを纏わせ、精霊の加護でもってアンデッド兵を切り裂いていく。
「戦って、生き残って、そして帰るんだ。祝杯が待ってる!」
「進もう。すべては明日を紡ぐため」
そこへまっすぐ突っ込んでいくハンス。
「虚刃流秘奥――【空柊】!」
彼に抱えられた頼々は抜刀姿勢をとると、鞘から架空の刀を抜き放ち、架空の斬撃によってアンデッド兵を切断。
「虚刃流見様見真似、【空柊】!」
あちこちでおこる爆発の中で、ハンスは急速に接近しかぎ爪によるキックでアンデッドを破壊。
「それは普通の蹴り技ではないか?」
「そうかも……」
ハンスは頼々にもらった角から作り出されたという疑似鉤爪をかちかちと鳴らした。
対して、イナリたちは船を狙って急降下爆撃を仕掛けようとしているアンデッド兵たちに対応していた。
「天孫降臨――」
剣に宿した迦具土神(火の神)の神威をあふれんばかりの炎に変え、さらには光線として天空へと撃ち放つ。
「迦具土連砲!」
ボッと音をたてて燃え尽き、背負っていた爆弾によって爆発四散するアンデッド。
一方のランドウェラは『ショウ・ザ・インパクト』の構えで急降下してくるアンデッドへと飛び上がった。
「一人で沈んでろ!」
オーバーヘッドキックによって軌道を直角に曲げられたアンデッドが海面に突っ込んで爆発。更に飛んでくるアンデッドたちへ魔道ミサイルを一斉発射。空で激しい花火があがり、アンデッドたちが吹き飛んでいく。
「これで大体は片付いたか……そろそろ『本命』を攻めるか?」
メリッカがくいくいと指でリヴァイアサンをさし示すと、ミニュイとマリアはちょいと顎をあげることで応じた。
彼女たちを阻もうと上昇してきたアンデッド兵――をメリッカは眼帯を外し偽魔眼の力を解放。
「どいていろ、木偶」
ばちゅん、とたったの一瞬で見えない何かに握りつぶされたアンデッド。
その左右を高速機動姿勢をとったミニュイが超高速で突き抜け、マリアは天空にひかれた架空のレールを形成。
メリッカの解き放つ蒼い魔術ミサイルの一斉発射に会わせて、二人は猛烈な速度でリヴァイアサンへと突っ込んでいった。
否。
突き破っていったと述べるべきだろうか。
きりもみ回転によってリヴァイアサンのボディを突き破り反対側から飛び出すミニュイ。
レールで増幅させたエネルギーで蹴りつけ、超連打によってリヴァイアサンの肉を掘り進むことで突き抜けたマリア。
「すごいな。今ならなんでもできそうだ」
成否
成功
第5章 第6節
総勢15名。短い間にメンバーを船に集め、再編成を済ませた部隊がある。
その名は輝かしき『騎兵隊』。その全てとはいかないが、ダイジェストで彼らの活躍をご覧頂こう。
「イレギュラーズだけではない、皆様の尽力!
敬意を表する為にも、負けるわけにはゆきませんわね!」
ババッと両腕をクロスさせると、『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)は頭上で開くようにY字ポーズへもっていくと両手の指を鳴らした。
「さあ皆様! このわたくし!」
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
「──と、共に!勝利致しますわよーー!」
周りで一緒にコールしていた海兵の皆さんでドンドンパフパフしながら紙吹雪をまき散らす。
船の上でこうしていると、そのむかしこのコールをはじめたばかりの頃に沈みゆく船と共にみんながコールしながら沈んでいったのを思い出す。
いや、言うほど昔ではない。一年半くらいだ。
しかし随分遠くまできたものだ……。
今ではこんな仲間までいる。
「のけい芥共めが!
たとえ見る影もなく弱ったとて我はモスカの祭司長ぞ!
心で遅れなぞ取るものかよ!!」
魔法楽器の鍵盤をドンとグーで叩き、『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)は大海へと吠えた。
カタラァナと二人で一つのコン=モスカ。性格は真逆なれど、心の奥に流れるひんやりとした心地よさは同じだった。他人に会った気がしない、というものである。
『観光客』アト・サイン(p3p001394)はそんな仲間立ちを乗せ、どこか意気揚々と空に向けて空砲を放った。
「さあて、オーラスってところか?
全員、しっかり捕まってろよ
連中の船にカチコミかけるんだからさ!」
船の舵を握り、たくみに操作するアト。
わざと蛇行して対面にある幽霊船団を煽ってみせる。
こちらの数は武装民間船舶も含めればかなりのもの。リヴァイアサンが呼び出した幽霊船団と同等といっても良いくらいだ。
だが戦力で言えばどうだろうか……。
『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は個々人のもたらす力と、それを掛け合わせたことで生まれる力を知っている。深い知識と積み重ねてきた経験によって知っている。
「この後に及んで数で攻める方針か?
それは失策だよ、今更…もしくはまだ、雑魚の群れが我々をどうにかできる状況にはない。
リヴァイアサン自身の人智を超えた威力の攻撃だけが、我らの脅威だった」
「そのとおりです! 数に頼るのは守りの策、つまり気持ちが弱っているのです! ならばこちらは攻め込むまで、ですよ!」
アトの船『観光フラッシュ号(仮)』の後ろにくっつく形で、『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)のモルティエ号が元気よく突き進む。
彼女たちの言うとおり、リヴァイアサンは強すぎるカードを立て続けにきることでこちらの投了を狙うという、極めて上からのプレイスタイルを見せつけた。
確かに戦力差は圧倒的で、とてもではないが勝ち目のある戦いではなかった……。
イレギュラーズたちの見せたいくつもの奇跡と奮闘。そしてなによりもそれをつかみ得る魂の輝きが、今まさにリヴァイアサンの手札を焼き尽くしつつあった。
残りわずかな、普通ならまず使わないような弱いカードを必死に叩きつけあがいているのがリヴァイアサンの今だ……と、シャルロッテは分析していた。
いや、彼女だけではない。
彼女と共に『騎兵隊』を率いてきた女傑、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)もまた同じように分析していた。
「対多数の戦闘は騎兵隊の十八番。とうとう打つ手も誤ったと見えるわ?」
肩をすくめて、片眉を上げてみせる。
寄せ集めの戦力が、頭数を揃えただけで対抗できるものではない。
特に、強く結集した戦士達を前にしては。
「総員、攻撃準備! 本物の攻性防壁を見せてやるわよ!」
ザッとイーリンの前に集まり、同時に武器を構える三人の美女達。
「私はね、叙勲されるくらい何度も何度もこの海洋で戦ってきたんだよ。
船舶戦もいい加減慣れてきたっつーの!」
巨大テーブルナイフ『ハーロヴィット・トゥユー』をぐるぐると回し、大身槍のように構える『戦うことしか出来ないみたいに』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)。
「この騎兵隊が見せてやるよ、人間達の結束の力を!!」
「結束? 戦術のことはわからんが…数が多いと言うのなら一気に叩いてしまえば良いのだろう?」
改造巫女服の腰にさげたナイフをすらりと抜く『こむ☆すめ』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)。
「道は拓けた。
希望は繋がった。
絶望は目前――」
美しいドレスに身を包んだ『騎兵隊一番槍』レイリ―=シュタイン(p3p007270)は、右腕の一部をカシュンとスライド式に開放し、乳白色の螺旋がはしるエネルギーランスを形成した。
「さぁ、行こう! 『彼女』に報いるために」
立て続けに浴びせられる砲撃に対しシャルロッテは騎兵隊の面々に役割を指事し、周囲の武装民間船や海洋王国の戦艦たちに陣形をとらせた。
「間に合わせのアンデッドと間に合わせのガーディアン。陣形も連携もローレットとは比べるまでもない…学んでから出直してこい」
「まずは一撃離脱でいくぞ! 攻撃能力の排除だけで十分だ!
味方が攻撃されるのがまずいんだからね!」
アトはたくみな運転技術で砲撃を回避すると、幽霊船団の中へと割り込むように入っていく。
それならばとアンデッドたちは船へ一斉に乗り込むなり射撃を加えるなりしての集中公的をしかけるが……。
「対抗防御だ! タント!」
「さあ、この大嵐に晴れ間が見えて参りましたわよ!」
ちょあーと叫んで最大発光したタントの輝きが仲間を治癒。ダメージをうけたそばから回復し、更にはちょっと元気にした。
(――何と禍々しい。
ローレットは、特異運命点座標共の戦いは、斯様なものであったか。
愚か者じゃ、誰も彼も!
こんな危険に進んで挑む奴らも!
それをわざわざ助けて死ぬ奴も!
……それに助けられて、歯噛みしかしていられなかった我らも!
巫女の力を失いし我に最早かつての力はない。
搔き集めた力は我(カタラァナ)の真似事。
だが、それでも尚、何かが成せるならば!)
ここぞとばかりに繰り出すクレマァダの『ディスペアー・ブルー』。鍵盤操作によってかなり無理矢理構築された波濤魔術がアンデッド兵を押し流していく。
かと思えばココロの船も幽霊船団の中へとエントリー。
船全体を透明な貝殻で包むように治癒空間を形成すると、ココロは真珠色の魔術弾を船から砲撃。『ヴェノムクラウド』の爆発によって幽霊船が傾いていく。
「征こう、征いきましょう! この海を駆け抜けた英傑達を、万雷の拍手で迎えてくれる人達の為に!」
イーリンは『紅い依代の剣・果薙』を召喚。大きく旗を振ってみせると、くるくると旗を巻いて槍形態へチェンジ。
「ぶち破れ…ぶち破れ、ぶち破れ!私の熱情(ケモノ)!」
ウィズィニャラァムの『ラカラビ』。光を纏ったナイフが船に突き刺さり、炸裂した光が迸る。
そうして吹き飛ばされ船の端へとよったアンデッド兵たちめがけイーリンは『カリブルヌス・改』を解き放った。
つい最近の艦隊戦闘で覚えた新戦術である。
突き抜ける力の波動がアンデッド兵たちを破壊して進み、リヴァイアサンによって縛られた哀れな魂たちが解放されていく。
「む……」
レイリーは顔を上げ、メーヴィンにハンドサインを出した。
「リヴァイアサンが新たにアンデッド兵を呼び出そうとしている。阻めるか?」
「ほう。早速『コレ』の出番かな」
メーヴィンは手の上でナイフをくるくるともてあそぶと、『邪魔者達は任せたぞ』と行って船から大きくジャンプ。
同じくジャンプしメーヴィンへの攻撃をエネルギーシールドで代行防御するレイリー。
幽霊船へと着地すると、あえて槍を天に掲げて叫んだ。
私の名はレイリー=シュタイン! 聞け、血の人形よ――この私を木偶人形どもが倒せるか!」
レイリーに攻撃が集中するその一方。メーヴィンは勢いよくリヴァイアサンの胴体へと跳躍。
そして――。
「さっさとここを抜けなきゃいけないんだよ。海に還る前に……!」
メーヴィンの繰り出す不可思議な連続斬撃がリヴァイアサンの『なにか』を切り裂き破壊していく。
その直後、呼び出した筈のアンデッド兵がすぐさまぐずぐずと溶け、血から新規生成した船舶型ブラッドガーディアンが軋む音をたてて崩壊していく。
「今度こそ『打ち止め』のようだな? リヴァイアサン」
成否
成功
第5章 第7節
「これ以上、誰も死なせはしない。
リヴァイアサンに勝って、ハッピーエンドを掴んでみせる!」
勇敢なるイルカさんによって突き進むドルフィンコメット号が、船舶型ブラッドガーディアンの砲撃へと挑みかかる。
次々と飛来する爆裂氷塊弾を魔法の剣で切り払い、『魔法騎士』セララ(p3p000273)は叫んだ。
「ボク達は滅びの運命を覆す光! 聖剣騎士団だ!」
「これは、鉄帝軍人の私の(魔法少女名声が広まりすぎた)八つ当たりであり腹いせであり
身を挺した歌姫への鎮魂である」
同じく剣で砲撃を切り払い、ビッと剣を突きつける『魔法少女一番槍』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)。
「鉄帝に仇名すモノらよ、私はヴァイセンブルグの名において……ナーゲルリングとして討伐、討滅、殲滅してみせるでありますよ」
「あっはっはぁー!! ようやく追い詰めたよリヴァイアサン!!
最後っ屁のアンデッド軍団如きじゃあたしたちは止められない!!
いざセララちゃんの船に乗り込んで、聖剣騎士団突撃だー!!」
「おー」
でっかいハンマーっつーか石斧の『原始刃ネアンデルタール』を軽々と振り上げた『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)。その後ろでグーにした手を突き上げてみせる『祖なる現身』八田 悠(p3p000687)。
「今更、死体や亡霊はお呼びじゃないんだ。
響いたあの歌は、この先を生きていく者達へ響いたんだから」
「そゆことそゆこと! ……どゆこと?」
「『終焉を断つ者にして、終焉を刻む刃の慈悲を』……だ」
甲板にガツンと剣を立て、鎧の目元から炎を吹き上げる『彷徨う赤の騎士』ウォリア(p3p001789)。
「どゆこと!?」
「死すべき地を見失った兵達よ、荼毘に付され安らかに眠るがいい!」
「そうです! 煉獄の、業火に……強火で……」
『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)もまた剣をしっかりと握り込……みつつ顔をしかめた。
「ええと……」
「無理に難解な言葉を使わなくていいんですよ」
そっと後ろから声をかける『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)。
「この勢いで、勝利をもぎ取るぞ! 負けてたまるかァッ!!」
「はい! 戦場を切り拓く天剣『スコフニュング』の名に賭けて! 全力で参ります!」
あっ結構言えるじゃん、という顔で銃のセーフティを外す『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)。
(廃滅病で肉体の限界は近づいている。
体のあちこちにガタは来ている。
リヴァイアサンの一息で。
心と体が砕け散っていきそうだ。
こんな姿は……)
ジェイクの脳裏をよぎる、美しいまぼろし。
ジェイクの記憶にかかる、美しいゆめ。
「糞ったれ。血を流しすぎたか? 目が霞んできやがった」
苦笑し、そして弾倉をのぞき込む。
『弾が撃てるならまだ銃だ』なんて言葉が世界にはあるが、ジェイクはまさにそのものだった。
「『狼牙』と『餓狼』よ。わりぃが最後まで付き合ってもらうぜ」
弾が撃てるなら、まだジェイクだ。
この期に及んで病院のベッドでシーツにくるまるなど、御免被る。
「聖剣騎士団のお通りだ! てめえらそこを退きやがれ!」
船と船がすれ違い、船舶型ブラッドガーディアンに乗り込んでいたアンデッド兵たちが船へと乗り移ってくる。
ウォリアはそれを炎の回転斬りによってまとめた破壊。
悠の展開した特殊空間の力を借りて、アンデッド兵たちを砕き、折り、燃やし、そして切断していった。
更にリゲルが、ハイデマリーが、同時に繰り出す白銀の閃光が交わりアンデッド兵たちをたちまちに破壊していく。
かと思えば、船舶型ブラッドガーディアンへと朋子がジャンプ。身に纏うガルカーサのオーラで風を走ると、ガーディアンの核があるであろう場所へと殴りかかった。
それも猛烈に、何度もである。
「あはははっ、どうだー!! あたしの左は最高にキくでしょぉ!?」
「もっかいいくよ!」
「はい!」
セララとリディアの剣が同時に炸裂。
ガーディアンの固い装甲を無理矢理破壊していく。
そこへ飛び移り、二丁拳銃を突きつけるジェイク。
「とっとと沈め、泥船野郎」
弾切れになるまで猛烈に連射。
ガーディアンの核は破壊され、船舶型ブラッドガーディアンはずぶずぶと形を失い海へと沈んでいった。
そしてその一方――。
「皆、今度こそ……やっちゃおっか!」
セララはにっこり笑い、そして仲間達もそれに続いた。
リヴァイアサンに『最初の一撃』をたたき込んだ聖剣騎士団。
鱗にひとつヒビをいれるのがやっとだったあのときとは、全てが違う。
これまで積み重ねた絆が、共に歩んできた仲間が、そして託してくれた沢山の想いが、彼女たちの剣となって光り輝く。
「希望を刃に変え、絶望を討つ! 聖剣騎士団――目標リヴァイアサン、一斉攻撃ィ!」
素早く弾倉をリロードし、銃撃を乱射するジェイク。
彼らに切り離された世界のカタチを付与する悠。
力を受けたウォリアの剣が、朋子の石斧が、全く同時にリヴァイアサンの鱗をかち割っていく。
更にセララとハイデマリーのクロススラッシュが、十字にはしり、そこへリゲルとリディアのクロススラッシュがX字に走る。
大きく切り裂かれたリヴァイアサンの肉体から、激しい鮮血が吹き上がった。
成否
成功
第5章 第8節
砲撃の鳴り止まぬ戦場で、デイジーはひとり遠い空を見上げていた。
「マリー、お主は……」
「デイジーパイセン……」
その後ろでぎゅっと胸に手を当てるフラン。
「最後はマリーさんと仲良くなれたんだね。それだけでも、よかったよ。ベーク先輩は迷子になって二人きりだけど最後までがんば――」
「居ますよ」
ヌッて後ろから顔を出すベーク。
「居たァ!」
「すみません。ちょっと道に迷って破壊髪の盾にされてました」
「そっかー……ん?」
小首をかしげるフランを余所に、話を進めるベーク。
「いやぁ、しかしこう言ってしまうとあれですが……ちゃんと家族だったんですねぇ、クラーク家も」
「そうじゃな、思えば妾は昔――」
目を瞑るデイジー。頭上に浮かぶもやもやの雲。フランたちが『あっこれ回想シーンだ』って見上げたその瞬間。
『モノローグが入ると思ったか、ば~か~め~』
もくもくを突き破って『妾なのじゃ!』つって出てきたデイジーがデイジービームを発射。なんかのついでに船舶型ブラッドガーディアンを一隻沈めた。こういうスタンプ欲しくないですかって思ったらもうある!
「ちゃっちゃと切り替えて次に行くのじゃ!
行くぞ迷子のタイヤキ、ベーク!」
「他の名前ないですか」
「む? では鋼鉄ベーク、いや鉄壁のベークよ!」
「まあそれでいいです」
「わらわ魔女のデイジー。
そしてこっちは絶壁のフラン!」
「デイジー先輩を守る二枚の絶壁だよ!!!!!!!」
何かに開き直ったフランがカッと目を見開いて構えた。
そこへ浴びせかけられるガーディアンの集中砲撃。
いまだーといってフランとベークはその悉くを防御、ないしは破壊していった。
「大いなる力の源 宙の海に輝く者よ 妾の手に集い 妾とともにあるもの達の道を切り開け!」
反撃にと繰り出された月の魔術がガーディアンのボディへと直撃。
がくんと傾いたところへ、もう一隻の船が突っ込んでいった。
「こちらも時間はない! 一気に押し切らせてもらうぞ!」
装甲屋形船地獄清楚膝栗毛号の瓦屋根の上で清楚に腕組みする百合子。古来から伝わる美少女操舵方のひとつであり、清楚な立ち古間いによっておきる謎の風と謎の光で船を操作するのだ。
ずがんと船体ごと叩きつけ、敵船へと乗り込む百合子。
「さて。この死闘も、いよいよもって佳境といった所か。
では行こう。私達らしく、只管に――殴り倒す!」
同じく宙返りをかけて船へ飛び込んでいく汰磨羈。
「デカイ敵とそれに乗り込む雑兵共! 残念だったな!!!
こちらの方が小回りも効き、火力も上! 貴様らに勝ち目はない!」
同じく助走をつけたジャンプで甲板へ飛び込むブレンダ。
そんな美少女スリーに新たな美少女がエントリー。
紹介しよう!
怪物をドン引きさせた女。KANAME!
「いつも通り、今まで以上に……痛くしてくれるといいなぁ☆」
カナメは両目に禍々しいハートを浮かべると、エヘェと笑って走り出した。
「ねぇみんな、カナと遊ぼうよ! 倒れるまで痛めつけて欲しいな! 骨が見えてからが本番だからね! それすらできないなんてざこざこざぁーこ!」
アッハァと狂った笑い方をしながら素手でアンデッド兵の群れへダイブ。
うわあやべえのが来たという反応を見せるアンデッドたちだが不思議と無視できない魅力(圧)によって密集。
そうした所を船の柱を木こりスタイルでへし折って掴んだブレンダのブレンダストライク(別名丸太薙ぎ)がアンデッドたち(カナメ含む)を吹き飛ばした。
「目の前に立ちはだかるのであれば叩き斬るッ!」
「まだだ! 貴様等全て、まるっと叩き斬って塵にしてくれるわ!」
いつの間にか空叩く跳躍した汰磨羈が謎のエフェクトを纏った流星蹴りでガーディアンのボディを(無駄にカナメごと)蹴りつける。
「美少女の作戦は3つ! 「強く殴る」「もっと強く殴る」「とにかく殴る」である!」
更に迸る清楚なオーラを纏いアンデッドの群れを(カナメごと)清楚に殴り飛ばしていく百合子。
更にカッと目を光らせ、ガーディアンのボディめがけて連続パンチを繰り出した。
「ユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリィーーーーッ!!!!!!」
船がアンデッドたちもろとも(カナメと一緒に)沈んでいく。
蒼い海にカナメの嬉しい悲鳴がこだました。
成否
成功
第5章 第9節
「遅くなった。機体の調整に手間取ってな」
『クーゲルシュライヴァー』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)は武装民間船のデッキで黒いパワードアーマーへと足をかけた。
クルーザー型秘宝種グッドクルーザーがビッと親指を立てる。
「希望の戦士シュピーゲル。あなたに海の運命を託します。コードネームは……『シュピーゲルⅢ』?」
「この機体の名だ。同時に……」
中へと入り込むと、アーマーはガシャガシャと彼女を格納していく。
ギュンと音を立てて目にあたる部分を光らせると、ジェットによって離陸を開始した。
「この私、シュピの名前でもある」
――本機体(ユニット)
――動作正常(ステータスグリーン)
――攻撃準備破砕射撃(アタックブレイク)、了解(ラジャ)
――目標正面敵性飛行体(フロントマーカー、フライイングユニット、セット)
――交戦開始射撃始め(エンゲージ)!!
空に飛び上がったSpiegelⅡもといSpiegelⅢは飛行するアンデッド兵を次々に巨大な腕によるパンチや装備された機銃によって破壊していく。
「おいおい……」
そんな風景を苦笑しながら見上げる三國・誠司(p3p008563)。
「いきなりこんな異世界に呼び出されて…その挙句になんだってこんな大規模な戦場に…!」
ただの学生だった彼にふりかかる、最初にして過去最大規模の戦い。
この世界へ強制的に召喚された多くのウォーカーがそうであったように、無関心を決め込んで立ち去ってしまうことはいくらでもできた。
しかし……。
「知らない誰かの死も、知らない誰かの戦いも……『知らないから』でほっとけるほど、俺はまだ大人になっちゃいねぇ」
この戦場へたどり着く(ないしは送り込まれる)までに手に入れた、または譲り受けたいくつもの武器。その中から彼が選んだのは二丁の銃だった。
「ちゃんとした理由だの責任だのは後で考える! 今は……撃ちまくる!」
銃を構えて力一杯乱射する誠司。
そんな彼らに頷いて、ザッハトルテ(p3p007883)は優しく微笑んだ。
「戦力にはなれへんけど、支援だけはさせてほしいな。
うちがここに居るだけで誰かの力になれるのなら、こんなに嬉しいことはないよ」
赤いフレームの眼鏡をそっと指で押し、心に浮かんだ言葉にまほうをかけて解き放つ。
――さぁ進んで。迷わなくてええんよ。どうか信じて。
――ここまで来たんや。あとは、進むだけやで。
――怖がらなくてええよ。大丈夫、まだ立ち上がれるはずや。
――うちがここに居る……やから安心して行ってらっしゃい。
つらいときにかけられた言葉が誰かの人生をすくううように、ザッハトルテの呼びかけた誠司たちに力をもたらす。
「うん……」
『宗教風の恋』シュヴァイツァー(p3p008543)はひとまず頷いて、ガスマスクの表面をコンコンと指で叩いた。
「俺のイレギュラーズ人生、いきなりこんな戦場からスタートなの? 召喚されて即船乗れって言われたから来たけどさ……ハードモードだね、どうも」
そんな風に言いながら、シュヴァイツァーは指からぶら下げた抜き身の直刀をぐるんとまわして柄を握り込んだ。
近づく船へと飛び移ると、刀が炎を纏って敵を切り裂いていく。
「アンデッドは燃やすに限る。天国行きならぬ、炎獄行き。なんてね」
こうして混沌世界での戦闘経験もろくに詰まないまま過去最大規模の戦場に突入してしまったイレギュラーズは他にもいる。
「いざ勢い勇んで乗った船……」
『紫煙の剣客』シガー・アッシュグレイ(p3p008560)はぽりぽりと頭をかいて、やっと火のついたたばこの煙をふかくふかく吸い込んだ。
ため息のように煙をはいて、空を見上げる。
「駆け出しじゃ役に立てねえと様子見してたが、やっぱ……それけじゃあダメだよな」
さてと、と腰にさげた刀をとり――その途端、くゆらせていた煙草の煙だけを残してアンデッドたちの群れを駆け抜けていた。
彼らの腕や首を次々と切り落とし、刀を振り抜く。
「お? やけに調子いいな」
「でしょう? 味方の連中がこれでもかってくらいに強化術式だの支援砲撃だのを突っ込んでくれてますからね」
はっはっはと船の手すりによりかかって笑う『レプリカ・コレクター』海野 郷(p3p008561)。
「え、誰。海軍のひと?」
「いや、召喚してすぐ船に乗れって言われたただの異世界人ですけど」
「俺と同じじゃねえか!」
はっはっはと郷はもう一度笑い、杖をアンデッド兵たちへと突きつけるように構えた。
「なに、新参も古参ももはや関係ない。違いがあるなら、戦うかそうでないかだ! 勝利のための口火をともに切ろうじゃないか!!」
そう叫んで魔術の光を連射する郷。
フォークロワはくすくすと笑って、目深に被った帽子のつばをあげた。
どこかうつろ目をした、美しい人形のようなひとだ。
「最高に意識が高まっておりますね。ではひとつ――」
彼は仮面をひとつ被ると、急に口調を変えた。
「よしテメェら! さんざん苦しんだな!? いやになるほど絶望したな!?
そんなのはもう終わりだ! あの傲慢なクソ蛇にありったけをぶっ放せ!! 俺らをナメたことを死んでも後悔させてやれ!!!」
懐から抜いた銃を、アンデッド兵たちめがけて豪快に撃ちまくる。
「最終ラウンドだ!しこたま脳天にブチ込んでやるよォ!」
成否
成功
第5章 第10節
鉄帝から派遣された戦艦のデッキに、『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)はファイティングポーズで立っていた。
『めざせ番長』『やってやれリュカシス』『鉄帝校の誇り』というノボリがなぜかたつ中で、リュカシスは強化された鋼の拳をガツンと胸の前で打ち合わせる。
「ブラッドガーディアン……名前だけは大変に格好良いですネ!
ではその船、絞り潰してあげましょう!」
「いや、まったく……氷のゴーレムの次は幽霊でのお出迎えかい?
そんなに手を変え品を変えてもてなしてくれなくても構わないのだけどね」
やれやれといった様子で首を振る『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)。
「とはいえ、リヴァイアサン自身がこの戦場に兵力を送り込んだのはこれが初めてだ。それだけ『追い詰められた』と見るべきかな」
彼女たちの船に追いつくかたちで、複数の小型船舶が横並びに現れた。
たとえば『暴風バーテンダー』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)のS.B.水上デリバリーサービス船。
「皆、遅くなったな!
食料はこの船に積めるだけ積んで、後方に預けておいた!
今から私も戦力に加わるぞ!」
たとえば『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)の組み立て式小型船。
「作ったばっかで強度が心配だけど……この戦いをしのげればそれでよし、だな! 頑張るぜ!」
たとえば『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)の乗る仙術強化船こと『鉄仙』。
「ソウ! オレも負けちゃいられないね! 絶望にコブシを掲げよ!」
「そういうことだ。ここまで来て味方の船を沈められちゃたまったもんじゃないからな」
杠・修也(p3p000378)は同じ船に乗り込んで、後方にずらりと並ぶ武装民間船たちを振り返った。
「味方は多いが脆い船ばっかりだ」
「けど、立派なセンリョクになる」
イグナートたちの目的はひとつ。
「敵軍の船舶型ブラッドガーディアンを一隻でも多く沈めて、この戦いに勝利する」
モーターボートの上であえて水着姿で挑むコレット・ロンバルド(p3p001192)。
彼女の纏う破壊のオーラが、何よりも強力な鎧となって飛来する砲弾をうち弾いた。
弾かれた砲弾が背後で爆発し、炎を背に突き進む。
「止められるものなら止めてみなさい。船ごと葬ってあげる」
まずコレットはボートに無理矢理取り付けた加速装置を起動。
猛烈な速度で敵船舶へ突っ込むと、ボートから飛び上がっての『破壊神ドロップキック』で切り込んでいった。
ただのドロップキックと侮るなかれ。
かつて天義で破壊神を恐れられ他各所で様々な伝説を残してきたいわば『生ける伝説』である彼女がよりによって最前線に出てきたことによるドロップキック。
伝説そのものを叩きつけていると言っても、もはや過言ではないだろう。
その一発でかち割れるブラッドガーディアン。
周囲の船が慌てた様子で迎撃態勢をとるが、そこへリュカシスが突撃。
「味方の防衛の陣も厚く、ならばいっそう力も入るというものデス!
魔も神も幽霊も、恐れるものなどありません!」
自らを強力な『破壊兵器』と化してアンデッド兵の船へと転がり込むリュカシス。
コマのように回転するとアンデッド兵たちを次々に蹴散らしていった。
「ドロップキックか……よし、やるか!」
「やるのかい?」
船越しに顔を見合わせるモカとメートヒェン。
二人は小さく笑うと、船の勢いそのままにアンデッド兵たちの船へと突入。
ドロップキックによっていきなりアンデッドを蹴り飛ばすと、その後ろに控えていたアンデッドたちもろともまとめて吹き飛ばしてしまった。
「ミサイルになった気分だ」
「斬新なエントリーだね」
ぱたぱたと服のほこりを払って立ち上がるモカたち。
一方で、別の船へと飛び込んでいった一悟。手持ちの爆弾をありったけたたき込むと、自らの拳でもってアンデッド兵たちを殴り倒していく。
「めちゃんこ残念で悔しいことだけど、ブラッドガーディアンに攻撃されて絶望の青に沈んだ人たちがいる。あるいは図らずしも魔種に捕らわれていいなりになっているアンデッド兵が……」
拳に悲しみを乗せて叩きつけ、一悟はキッと目の光りを輝かせる。
そんな彼に、海に漂う英霊たちが味方したような気がした。
海の先を見たいという男達の夢や、夢半ばにして倒れてしまった者たちの希望。
それは一悟だけではない。イグナートや修也たちにもしっかりと受け継がれている。
アンデッド兵が仕掛けてくる銃撃をグローブの甲から発動する魔術障壁でもってガードする修也。
「邪魔はさせん。突っ込むぞ」
「任せて」
イグナートは船を巧みに操作すると、敵船舶へと無理矢理叩きつけていく。
更に激しく跳躍。
イグナートの気が充分にのった拳が、修也の魔術式が巧みに組み込まれた拳が、それぞれアンデッド兵の顔面を見事に粉砕していく。
そしてコレットは、翼を広げて再び空へと舞い上がった。
「ネオフロンティアの民! ゼシュテルの軍人! そしてここに集う多くのイレギュラーズ! 勝利は目前よ。ゆえに――『絶望に拳を掲げよ』!」
成否
成功
第5章 第11節
「いよいよ最後の大勝負……じゃな」
『超☆宇宙魔王』フーリエ=ゼノバルディア(p3p008339)はニッと笑うとギザついた歯を見せた。
眼前に広がるは幽霊船の大艦隊。
フーリエは手刀で小さく刻むようにジェスチャーし、大雑把に敵軍を五分割して考えると『よし』とつぶやいて頷いた。
「大体一人一艦隊倒せば勝ちじゃな」
「既に割り算を間違えておりますが、勝ちは間違いありませんね」
ステッキを甲板につけ、小さく息をつく『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)。
シルクハットを深く被ると、幽霊艦隊をにらみつける。
「あの唄を聴いて。一人のイレギュラーズが目の前で消えていくところを見て、心震えない方などいるのでしょうか。
僕はこの犠牲を決して無駄にはしない。
今こそリヴァイアサンを倒すとき!
もう一人の犠牲も要りません。
必ずや、リヴァイアサンを沈めてご覧にいれましょう。
奇術師の名に賭けて」
「うむその意気じゃ!」
グッと拳を握り、空へと突き上げるフーリエ。
その後ろで同じように拳を突き上げて発光する『例のゴッド』御堂・D・豪斗(p3p001181)。
「聞けい皆の者! 魔王フーリエであるぞ!」
「諸君! ゴッドである!」
「確かにとてつもない数ではあるが、既に情勢はこちらに傾いた」
「何よりも告げよう!ゴッドウィズユーを! そのハート、恐れることなくブレイブと共にあれ!」
「戦の勝敗を分けるのは兵士の質の差でも数の差でもない、士気の差よ!」
「そして望もう! ユー達のヒロイックなサクセスをアンコールだ!」
「逆境を跳ね返し、絶望の向こうに見えた希望を掴み取らんとする余らの勢い!」
「アルコールはプレーオフの後だぞ!ウィンの後こそグッドテイスト!」
「死にぞこないの人形どもが止められるなどと思――ええいさっきからなんだこのゴッドは!?」
振り返ると、ゴッドは掲げた拳でサムズアップしフーリエの横へ並んだ。
「わかっている! ゴッドも今は人の子と変わらぬ身であるが……。
だからこそ、このボディーにできるフルパワーを尽くそう!」
「ほう……」
言ってる意味は半分も伝わってないけど、ゴッドの放つ後光のかんじにフーリエは何かを理解した。
「よかろう!」
もう一度バッと手をかざすフーリエ。ダブルで後光を放つと、景気づけの超☆魔王波(フーリエ・キャノン)を解き放った。
「全軍突撃! 割れに続けぃ!」
砲撃に傾いた船めがけ手刀を構え、巨大なエネルギーソードを形成。今一度必殺の超☆魔王剣(フーリエ・ブレード)が船舶を真っ二つに切り裂いていく。
幻はその動きに合わせてステッキをクルクルと回転。
思い描いた夢物語を形に、そして力に変えて、アンデッド兵たちへと解き放っていく。
青い薔薇と蒼い蝶。誰かが奪おうとした未来の夢を、希望を、取り戻すための大奇術が迸る。
「確かに感じます。これが愛」
『魔法少女インフィニティハートD』無限乃 愛(p3p004443)はスペシャルラッピングされたモーターボートのハンドル部分にグッと足をかけると、なぜか猛烈に勢いをつけたボートの上で『S.O.H.IIH.T.』をライフルモードにして構えた。
「愛と正義の前に、悪は必ず斃れるもの。
さあ幹部たる魔種の次は、首領たる竜種の番です。
私たちの愛の力で再生怪人たるボートを打ち払い、あのハート(心臓)を強かに撃ち抜きましょう。
――『竜貫きて愛に類す愛と正義の灼光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』」
幽霊船たちの間を突き抜けるようにボートで走りながら、空中に無数のハート型反射板を展開。そのひとつへとハートの魔砲を発射。複雑に反射しながら敵だけを打ち抜いていく。
さて、ゴッド再びの登場である。
「人の子がライフを感じるのはバンケット!
その時はゴッドもホーリーグレイルにサケを注ごう!
サーモンもアルコールも持ってくるがよい!」
「そうそう、ヨナちゃんにバルバロッサさんなんて見知った顔の援軍にゴッドまで来たことだし、これは終わったらぱーっと宴会ってやつねぇ?」
いつの間にか『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)の船にうつっていたゴッドと仲間達。
「ここまで来たら、やっぱり私らしくいやらしく攻めたいところよねぇ。
どうせならリヴァイアサン焼きを塩とタレでツマミにしましょー!
そうよぉ浴びるのは海水じゃなく! お酒!
待ってなさい港の酒場ぁーーー!!」
アーリアがグラスの中身を一気飲みすると、髪色が美しいスパークリングブルーへと変わっていく。
と同時に、泡立つ海が空へと舞い上がり無数の竜のごとく暴れ幽霊船へと飛び込んでいく。
込められた複雑な魔術によってアンデッド兵が飲み込まれていき……。
「終わったら、おもいきりお酒や、美味しいご飯を、頂いて……そういうこと、絶対にしましょう、ね。絶対、です。
一緒に、戦ってくれた方も……皆さんで、にぎやかに……!」
「そうです。宴会を欠席なんてさせませんよ!」
『うつろう恵み』フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)と『呪い師』エリス(p3p007830)がそこへ加わり、それぞれの得意魔術を行使し始める。
「まだ、落ちては駄目です……よ? 落ちるのは……宴会の酒樽の中、です」
船から転げ落ちそうになった海兵を引っ張り上げつつ、フェリシアは『蕩揺ニンアナンナ』のうたを歌い始めた。うたに込められた悲しげな魔法が、アンデッド兵たちが肉体で覚えていた心を取り戻し自主的にアンデッド兵へと攻撃を始めた。
混乱した敵船めがけ、エリスは自らの血を塗りつけた矢でいっぱいにした矢筒を背負って弓を構えた。
「いやー、敵が多すぎて目を瞑って攻撃しても当たりそうですね……。
とはいえリヴァイアサン達を確実に追い詰めているのは確かですし、この後の宴会の為にも頑張りますよ!」
弓のショットとリロードをすさまじい速度で連続し、アンデッド兵や船舶そのものへとダメージを重ねていく。
最後にアーリアが指をパチンと鳴らした途端、舞い上がった水の竜がはじけて雷撃となって敵船へと降り注ぐ。
「目的はシンプル! 勝って、帰って、飲むわよぉ!」
飛び交う砲弾。鳴り止まぬ爆発。
敵幽霊艦隊の多くが壊れ沈みゆく一方で、しかし味方の艦隊も少なからずダメージを受け、どちらが負けてもおかしくない危険な状況が続いていた。
「だが、それもこれで終わりじゃ」
フーリエは敵艦隊から奪い取った魔力を掲げた手刀から放出。
あまりにも巨大な剣が、リヴァイアサンの胴体めがけて繰り出される。
それだけではない。
海洋海軍が、鉄帝海軍が、武装民間船団が、海賊たちが、そして何よりもここまで戦い続けたイレギュラーズたちが集めた一斉攻撃が、リヴァイアサンへとたたき込まれた。
――何故、人間風情がここまで抗う! 小癪な……!
苦しげに叫ぶと、リヴァイアサンはぐったりと胴体を脱力させた。
もはや海に浮いているのがやっとという有様だ。リヴァイアサンの召喚したアンデッド兵たちもその呪縛から解き放たれ、清浄なる魂となって海へと還っていく。
自らの血から作り出したというブラッドガーディアンたちもまた、その形を保てずにどろどろと溶けて海の底へと沈んでいった。
戦いの決着が、ついにつこうとしていたのだ。
成否
成功
GMコメント
このシナリオはラリーシナリオです
戦果に応じて『リヴァイアサンの胴体』を部位破壊できることがあります
■グループタグ
誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの一行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。所属タグと同列でOKです。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
このタグによってサーチするので、逆にキャラIDや名前を書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
例:【鮫殴り同好会】9名
■章概要
第二章以降で状況が異なる場合がありますので、章の頭に公開される章概要をご参照ください。
・第一章の概要
リヴァイアサンの出現によって海洋海軍は壊滅的被害を受け、撤退を余儀なくされました。
しかし退路を魔種『流氷のマリア』によって絶たれ、絶体絶命の窮地に追い込まれてしまいました。
皆さんの力を駆使してこの状況を突破し、負傷兵たちの退路を確保しましょう。
・タグ概要
プレイングの冒頭に自分の役割を示したタグを記載してください。
【アタッカー】
アイスガーディアンを攻撃し破壊します
【タンク】【ヒーラー】
負傷した海兵を庇ったり治療します。
守られた海兵が多ければ多いほど突破のための戦力になるでしょう。
【コマンダー】
海兵たちをまとめて元気づけたり指揮したり、強化したりして送り出しましょう。
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●重要な備考
このラリーシナリオの期間は『時間切れ』になるまでです。(時間切れとはアルバニアの権能復活を指します)
皆さんはどのシナリオにも、同時に何度でも挑戦することが出来ます。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
※他の<絶海のアポカリプス>シナリオに比べれば可能性は低めです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はEです。
無いよりはマシな情報です。グッドラック。
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