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シナリオ詳細

<悠久残夢>魔王イルドゼギア

完了

参加者 : 67 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『クレカ』
「おはよう、可愛い君」
 瞼を押し上げて、初めて見たのは微笑むその人だった。
 月の色を編み上げたような長い髪、穏やかな紅色の眸。清潔な白衣と傷だらけの指先。
「おはようございます、お父様(マスター)」
「今日から君は僕の仕事を手伝って欲しい。この世界を護り、この世界を愛するための重要な任務だ」
 悪戯を愛する子供のように微笑んで、拳を振り上げたその人ははっとしたように頬を赤らめた。
「すまない、大袈裟だった」
 すらりと長い人だというのが初めの印象だった。お父様(マスター)は明るく、そして騒がしい人だった。
 私はその人の誘うが儘に歩き出す。
 これが、右足。これが、左足。順番に動かすことで歩くことが出来た。
 脚に力を入れれば肉体を支える事が出来たが、重力を感じてふらつく。
「大丈夫かい」
「はい」
 私が頷けばお父様(マスター)はほっとした様子で胸を撫で下ろした。
「ここはギャルリ・ド・プリエ。今は伽藍堂としているけれど、何れは沢山の魔法使いがやってくる。
 君と同じゼロ・クールが作り出される筈だ。そうすると賑やかになって、人の暮らしは豊かになる」
「ゼロ・クール? それは人間を豊かにするのですか」
「勿論。僕がゼロ・クールを作ったのは滅びに向かうこの世界を食い止める為だ。
 人間はその心に闇が掬って殺し合う。君達はプログラミングした通りに動くだろう。
 僕が与えた心は、誰かを愛して欲しいというおまじないだ。滅びに何て負けず、君が愛を得た時にきっと、人形と人間の境は失われ、真に助け合う関係になる」
「愛――? 理解出来ません」
 私はお父様(マスター)を見て難解な生物を見ているような心地にもなった。
 私が作り上げられた人形であると言うのに、人間との境目がなくなるようにと願うのは理解も出来ない。
 人形とは利用し、使い捨てられる存在ではないのか。
「意味分からないって言いたげだ。
 人形を人形だからって使い捨てたら僕が君達に殺されてしまうよ!」
「そうでしょうか」
「そうだよ。そうした時に恨むことも、怒ることも、僕は敢て制御しない。
 心が存在しない人形だなんて君達のことを思って居ないからだ」
「理解出来ません」
「何時か出来るよ。愛しい僕の『クレカ』――」

 目が醒めたとき、混沌世界と呼ばれる空間だった。
 境界図書館と呼ばれたその場所は懐かしい気配がしていた。私は、人になったのだ。
「お父さ――」
 呼び掛けようとしたけれど、その人は傍には居なかった。
 手も、足も、頭も、体も、全てそろっているのに。心にだけはぽっかりと穴が開いていた。
「……?」
 私は『秘宝種』だ。
 私は『人間』になった。
 私は――父を助けるために、この世界にきたのかもしれない。

●魔王と勇者
 勇者アイオンの伝承を知っているだろうか。
 混沌世界に幅広く知られたそれは諸説はあるが、魔王イルドゼギアを打ち倒した所は全てが共通している。
 東奔西走。遺跡の最奥で出会った冬に閉ざされかけた常春の国を救い、冬の気配を身に纏う凍狼とも相対した。
 様々な地に訪れながらも最後の最後にまで勇者が踏破出来なかったのが果ての迷宮である。
 故に、彼はその地に『レガド・イルシオン』を築いたのだ。
 王家には代々は勇者王の血が引き継がれ、果ての迷宮の踏破こそがこの国の王侯貴族の義務となった。
 そう――彼の伝説は混沌に幅広く受け継がれている。

「だからこそ、魔王を打ち倒す程の力が持つと信じられた存在を、新たな魔王に据えたのだ」

 男はそっと胸に手を当てた。
 男には真名がない。与えられているのは『魔法使い(ウォーロック)』という称号だけである。
 幼少期からプーレルジールの片隅で物作りに勤しんだ彼は遂に心を持ち自立する人形を作り出すに至ったのだ。
 その技術はプーレルジールでは親しまれ『心なし(ゼロ・クール)』を製造する者を『魔法使い』と呼ぶようになった。
 魔法とは、即ち心である。
 心を与え、命を吹き込み、それを人たらしめる。
 魔法使い(ウォーロック)を祖とした魔法使い達はそうして地へと踏み出した。

「僕は魔法使いではない、魔王だ」

 そう、魔法使い(ウォーロック)は名前がない。故に、魂と肉体を結びつける事が出来ていなかった。
 だからこそその隙間に終焉獣が寄生したのだ。
 その終焉獣はより強力な運命を求める。魔王が世界を滅ぼすように。
 勇者が魔王を打ち倒したならば、勇者を第二の統治者に据えれば良い。
 この世界に『二度と』は勇者は必要ないのだ。
 果ての迷宮を探索し続けた勇者王の姿へ、伝承へ、滅びのアークは結びつき『魔王イルドゼギア』と相成った。
 ……だからこそ、プーレルジールのアイオンは勇者ではない。勇者と呼ぶべき存在は終焉獣によって魔王に作り替えられたのだ。

「……せめて、この世界の『あの子達』を救わなくてはならない」

 頭を抱えたイルドゼギアがすうと息を吐出した。
 作り上げたゼロ・クール達は次々に滅びのアークに蝕まれていく。
 そんなことをするために作ったのでは――ああ、いや……それでいいのかもしれない。
 そうでなくては『それはこの世界と共に緩やかな死に至る』のだから。
 管理人と名乗った男が言っていた。彼が『上位世界に全て飲み込まれる』と言っていた。
 この世界が滅びるのは上位世界が滅びる為の前準備なのだと。
 滅びを蓄えたこの世界が混沌へと吸収された時、その上位世界――混沌世界は、更なる滅びの危機に面するのだ。
 だが、その前に『移動』する事が出来ればゼロ・クール達も、この世界の住民も命を僅かにでも延ばすことが出来る。

「生き残らねばならないのだ。僕は、この命を賭してでも――あの子達を」

 イルドゼギアは頭を抱えて苦悩した。心を与えた。魂を作り上げた。人形であろうとも、生きていると実感する。
 彼女達を勝手に作り出した己が、死にゆく方舟に同乗させることには耐えられなかった。
 その思考を滅びが塗り固めていく。
 違うだろう、イルドゼギア。
 ――滅ぼすのだ。何もかもを。この世界を滅びに塗り固め、そしてその案内人となるべく混沌へと至れ。
 そうだ。そうだろう、イルドゼギア。
 死とは遁れ得ぬ者だ。のうのうと生き延びる者が居ては仕方が無い。
 どうせ滅びるのならばお前が統治し、お前が最期の時まで管理すれば良い。
「……ああ、僕は――」
 僕は、誰だ――?

「魔王様……」
「マスター」
 イルドゼギアの元へと、近寄ったのは『魂の監視者』セァハと『骸騎将』ダルギーズであった。
 一方は頭を抱え苦しみ悶えた主を気遣い、もう一方は何処か悲しげな瞳をしている。
「……どうかしたのかい」
「勇者が」
 勇者なんて言葉はこの世界に必要なかった。
 だがセァハは敢てその言葉を使った。己の中で今だ抵抗するクラウディウス氏族の娘がその名を強く叫ぶのだ。

 ――アイオン!

 彼女が『イルドゼギアの傍に居たい』のは馬鹿みたいな恋心だった。
 メル・ティルと名乗るゼロ・クールが傍に居たいのは父親への愛情だった。
 どちらも、終焉獣が覆い被さりその行動原理を歪めただけに過ぎない。
「勇者が、参りました」
 セァハは静かな声音でそう言った。その背後にはドクター・ロスと呼ばれた男が立っている。
「魔法使い(ウォーロック)、ご機嫌よう。
 ……どうやらこの地も安全では無くなった。ニーヴィアは今だ作り上げられていない。
 何を犠牲にしたってニーヴィアを完成させなくてはならないのだが」
 ドクター・ロスはしげしげとイルドゼギアを見てから言った。
「ミスタ、貴方から『剥がれた』ならば、私が貰おうか」
「それは良い案だ、ドクター。……僕から引き剥がしたそれを『逃がして』くれれば混沌を滅ぼす手筈にもなる」
 ドクター・ロスは「それでニーヴィアを作る時間稼ぎになるのならば」と囁いた。
 イルドゼギアに張付いた『終焉獣』。それを星の奇跡を束ねて引き剥がしにイレギュラーズはやってくることだろう。
 それならば、剥がされた瞬間に『肉体』を移れば良い。
 実に単純だ。そうすればドクター・ロスは更なる知識と強化を受け目的に近づけるはずなのだから。
「……では、戦いを始めよう。魔王城サハイェルに踏み入る不届き者は全て、滅ぼしてしまえ――」

●勇者パーティー
「あ、私、ここに来る途中に綺麗な女の人を見たのよ。賢者って感じだったわ」
「魔法使い、人間の印象にしては高潔が過ぎますよ」
 栗鼠の姿をした魔女ファルカウを肩に乗せて『魔法使い』マナセは楽しげに歩き出す。
 うきうきとした足取りで進むマナセは「アイオン、アイオン」と呼び掛けた。
「どうかした?」
「魔王を倒したら何したい?」
「……冒険かな」
「えっ、ストイックすぎない!? 私も魔法をもっと勉強したいけど、その前にお風呂かなあ~」
 頬を緩めて微笑んだマナセにアイオンは困った様子で笑みを浮かべた。
 魔王イルドゼギアは終焉獣に『憑かれて』いる。
 それも、彼はクレカの製作者でありギャルリ・ド・プリエの創始者なのだそうだ。
「全てのゼロ・クールを作る切っ掛けだった人って凄いわよね。魔法使い(ウォーロック)かあ。
 でも、あの人って名前がないって言って居たわ。お名前つけてあげる? 太郎とか、ゴリランダーとか、どんぐりマン?」
「マナセに名前のセンスが無い事が分かったよ」
 アイオンは傍らでうきうきとした足取りで歩くマナセの額を小突いた。
「えー」
 拗ねた彼女は頬を膨らませる。
 アイオンの興味はマナセではなくその肩に座る栗鼠に移った。
 混沌世界――イレギュラーズがやってきたその場所――では『大樹ファルカウ』という森の象徴と同じ名を持った魔女。
 何かを知っていて、何かの使命を帯びている。滅びを封じ、滅びと共に眠る封印術を知っている彼女。
(……ファルカウは、マナセを連れてきた。マナセに封印術を行使させて、何かを眠らせるのか。
 この場なら、イルドゼギアか? ……だが、彼から終焉獣を引き剥がして救う手筈だろう。
 じゃあ、終焉獣を引き剥がすように戦えば良いのか……)
 彼はただの青年だったが此れまでのイレギュラーズとの冒険で成長していた。普通の冒険者などとは括れない存在である。
「クレカの父親なんだろう。救おう、それから、話せると良いね」
「……うん。ただいまを、言いたい」
 クレカはぎゅうとローブを握り締めてから呟いた。アイオンは「任せて」と胸を張る。
「ねえ、アイオン」
「どうかしたのかい? マナセ」
「……あのねえ、魔王を倒したらやりたいこと、やっぱり更新して良い?」
「どうぞ」
 アイオンは頬を赤らめた魔法使いを見た。小さな発展途上の家出娘。そんな彼女は眸を煌めかせて言うのだ。
「混沌世界って所に一緒に行く方法を探しましょう。それで、イレギュラーズの言う滅びとか、恐い奴を倒して上げましょうよ」
「君と俺が?」
「勿論。他に仲間を見付けたらその人も一緒よ。ぶん殴って、ぶん殴って、それであの人達も平和にしてあげるの」
「その心は――?」
 マナセはとびきり微笑んで見せた。それから、口にしたのは『伝承ではアイオンが言ったとされる言葉だ』。

「わたしは滅びとかそういう変なのが好きじゃないから、こうしてしばきにやって来た。それが一番シンプルな答えよ」

 嗚呼、成程――それはいい。
「了解。じゃあ、まずはこの世界を救うための『冒険』を始めよう」

GMコメント

夏あかねです。よろしくおねがいします。

●成功条件
 『終焉獣イルドゼギア』の撃破

●同時参加につきまして
 決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(通常全体とは同時参加出来ます)
 どちらか一つの参加となりますのでご注意下さい。

●排他制限
 こちらのRAIDに参加した場合、他のRAIDには参加出来ません。
 ※複数のRAIDに優先がある方は、特別に両RAIDに参加可能です。
 ※片方のRAIDに参加した後、運営にお問い合わせから連絡いただければ、両方に参加できる処置を行います。恐れ入りますがご連絡いただけますと幸いです。

●ロケーション
 魔王城サハイェル城内。その玉座の間がその舞台です。
 広々としておりその様子は幻想王国の王城にも良く似ています。
 天井高もそれなりにありますが屋内である事に留意して下さい。

●サハイェル城攻略度
 フィールドが『サハイェル城』のシナリオにおいては城内の攻略度が全体成功度に寄与します。
 シナリオが『成功』時にこの攻略度が上昇し、全体勝利となり、プーレルジールにおける『滅びのアーク』が減少します。

●エネミー

○『魂の監視者』セァハ
 その体はサーシャ・クラウディウスというアイオンの幼馴染みの少女のものですが、四天王を名乗ります。
 肉体は通常の少女と言えるようなものではありません。強大な魔種の様な力を有します。
 邪妖精や怨霊、ゾンビなど魂を支配されたモンスターたちを召喚することを得意としているようです。
 アイオンに片思いをしていましたが、叶わぬ恋でした。ただ、高潔な精神を有するためセァハが体に馴染みきっていません。
 邪妖精や怨霊を呼び出し続けると数ターン『ガス欠』を起こして動かなくなります。

○邪妖精や怨霊達 初期50体
 セァハが召喚するエネミーです。どれ位で魔力切れを起こすかは分かりません。1ターンで10体まで召喚できます。
 セァハを守るように動くほか、特にアイオンへと狙いを定めているようです。

○『骸騎将』ダルギーズ(メル・ティル)
 四天王ダルギーズが憑依しているゼロ・クール。索敵と後方支援を得意とする魔法使い(イルドゼギア)の作品。
 一度戦闘で負傷した際に記憶が『リセットされたしまった』ことでダルギーズに肉体を明け渡す事が多くなった。
 マスターである魔法使い(イルドゼギア)を護る事がセットアップされている為、ダルギーズを護る事を最優先とします。
 弓を携え後方から狙撃手として非常に高い精度の攻撃を放ちます。また、配下が盾となります。
 固定砲台的な存在であるとも考えても構わないでしょう。

○アンデット 40体
 ゾンビともいいます。人間形態の戦士達です。その素体はゼロ・クールが多めです。
 ……どうやら半数の外見だけを見ればグリーフ・ロス(p3p008615)さんにも良く似ているようですが……。
 ダルギーズの配下であり、非常に人間的な動きを見せます。

○寄生されたゼロ・クール
 複数存在しており、ドクター・ロスとイルドゼギアを守るように存在して居ます。
 彼女達はドクター・ロスと『魔法使い』の作り上げたゼロ・クールですが終焉獣がそのコアに住み着いてしまっているようです。
 憑依状態を解除するには様々な手段を講じる必要があるでしょう。

○『Dr.lost』(通称:ドクター・ロス)
 元は外科医の青年。この世界にやってきて、魔法使いから『ゼロ・クールの製造方法』を学びました。
 その目的は事故で失ったニーヴィアという女性の復活です。愛しい女性を作成し、共に過ごすことだけが彼の目標です。
 ゼロ・クールには自壊コードを与えて居ます。ただ、ニーヴィアを取り戻したいが為だけに彼がゼロ・クールを作り続けていますが――……
 イルドゼギアの代わりにゼロ・クールを量産し、『管理人』やイルドゼギアにそのコントロールを委ねているようです。
 この場で斃しきれなかった場合は彼は元々は混沌の存在であったからか混沌へと逃げ果せます。

○『魔王』イルドゼギア
 元々はプーレルジールの存在するギャルリ・ド・プリエの創始者であるゼロ・クール製作者(クリエイター)。
 ゼロ・クールの基礎を作り上げた存在であり、ベースになった人間は魔法使い(ウォーロック)と呼ばれていた。
 名を有さず、自らの存在が『上書き』しやすかった事から『終焉獣』魔王イルドゼギアに憑依されている。

 ・『終焉獣』イルドゼギアのベースは混沌世界の『勇者』アイオンである。
  勇者アイオンの伝承と滅びのアークが結びついた終焉獣に憑依されているため、彼を取り逃がした場合は非常に危険な事が起こる事が推測される。
  ファルカウ曰く「世界的に知られた御伽噺」である事から地に染み、プーレルジールから運ばれた滅びは急速に拡大するだろうとの事だ
 ・『終焉獣』イルドゼギアの戦い方は『勇者』アイオンである。
  非常に卓越した剣捌き、少々の魔法。前のめりにも程のある戦法だがタフネスはお墨付きである。
 ・『終焉獣』イルドゼギアを『魔法使い』から吹き飛ばすには、奇跡を束ねた上で強力な一撃を見舞う必要がある。
  尚、その時に魔法使いの肉体の保全を完了しなくてはならない為、回復部隊はタイミングを合わせて『肉体のみの回復』を意識する事が必須となるようだ。
 ・『終焉獣』イルドゼギアが『魔法使い』から解き放たれたとき、直ぐさまに撃破しなくてはならない。
  また大元となった『物語』そのものを封印せねばならない。ファルカウによる封印術は『マナセ』に伝えられている。
  ただし、マナセは封印術よりも攻撃魔法を得意としているため、サポーターが必要となる。
  (※この時点でマナセが倒れていた場合は封印術の行使者はイレギュラーズに移る、が、非常に難解な術式である)

●『同行』NPC
 ・『青年』アイオン
 混沌史では勇者である青年。プーレルジールでは只の冒険者です。
 それ程戦いには慣れていませんが、剣を手に皆さんの戦い方を模倣し、そしてアレンジしながら戦います。
 非常に明るく闊達。かなり距離感が近い青年ではあります。元気いっぱいです。迷うことなく戦う事が出来るのが利点です。
 皆さんと一緒に、奇跡を追い求め、世界を救うことを意識しました。

 ・クレカ(K-00カ号)
 ゼロ・クールである境界図書館の館長でもある秘宝種の少女(便宜上、少女と称する)。
 基本的に魔術を駆使して皆さんの支援をします。戦うことは余り得意としていませんが、皆さんの力になりたいようです。
 魔法使い(イルドゼギア)の作品です。お父さんを、救いたいです。

 ・『魔法使い』マナセ
 魔法使いかお姫様になりたい女児です。
 古語魔法を理解し使用することが出来ます。攻撃魔法>回復魔法>>>>封印術です。
 威力は流石は勇者パーティーの魔法使いです。制御が下手くそですが……。
 性格的には明るく溌剌。元気いっぱいの女の子です。自信が無いのは「古語魔法をつかったって良い大人になれない」と周りに言われ続けて居るからであり、その辺りは現実世界のマナセとはあまりかわらないようです。

 ・ファルカウ
 大樹ファルカウと同名の魔女『ファルカウ』――の作り出した栗鼠です。マナセの肩に乗っています。
 魔術書の著者であり、古語魔法の遣い手のようですが……マナセのサポートをしています。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はC-です。
 信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
 不測の事態を警戒して下さい。


行動場所
 以下の選択肢の中から行動する場所を選択して下さい。

【1】魔王撃破班
魔王イルドゼギアを中心に攻撃を行ないます。
アイオンと共闘し、『イルドゼギア』を撃破しましょう。
(アイオンは皆さんの指示に従います)

【2】周辺掃討班
イルドゼギアを守る四天王達を撃破します。
また、周辺のゼロ・クールたちへの対応なども此方で行ないます。

【3】護衛もしくは補佐等その他対応部隊
マナセやファルカウ、クレカなどの護衛を行なうほか、その補佐を行ないます。
また、その他の特殊な行動を行ないたい場合は此方を選択して下さい。

【4】回復班
各部隊への下支えである有効な支援を行ない死傷率を減少させます。

  • <悠久残夢>魔王イルドゼギアLv:50以上完了
  • GM名夏あかね
  • 種別決戦
  • 難易度VERYHARD
  • 冒険終了日時2023年12月07日 22時05分
  • 参加人数67/67人
  • 相談6日
  • 参加費50RC

参加者 : 67 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(67人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
私のイノリ
セララ(p3p000273)
魔法騎士
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
シルフォイデア・エリスタリス(p3p000886)
花に集う
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
終わらない途
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
シラス(p3p004421)
超える者
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りと誓いと
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ウルリカ(p3p007777)
高速機動の戦乙女
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
雨紅(p3p008287)
愛星
チェレンチィ(p3p008318)
暗殺流儀
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
パーフェクト・オーダー
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
流星の狩人
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護
ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)
母になった狼
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼
夢野 幸潮(p3p010573)
敗れた幻想の担い手
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く
オリアンヌ・ジェルヴェーズ(p3p011326)
特異運命座標

サポートNPC一覧(2人)

マナセ・セレーナ・ムーンキー(p3n000356)
魔法使い
アイオン(p3n000357)
勇者

リプレイ

●勇者と魔王I
『僕は君が好きじゃないから、こうしてしばきにやって来た。それが一番シンプルな答えになるんじゃないかな』
『――――』
『駄目だった? この答え。まあまあ妥当だとは思うけどね』
 彼は何時だってシンプルな解放を好んでいたように思える。穏やかでありながらも、信じた道を諦めない強情な人。
 勇者と名乗るからには地位や名声を求めた事だろう。だが、どちらかと言えば『アイオン』は自らの思うが儘に進み損得をも顧みない者だった。
 まるで寝物語のように語り聞かせてくれた『フィナリィ』は何と云うことだろう。
「アイオン」
 呼び掛けてからシフォリィは剣を構えた青年がゆっくりと振り返るその表情に『あの日』を見た。
「そういえばアイオンには私とどんな縁があるか、言ってませんでしたね」
「俺も、君を知っている気がするんだ」
 屈託のない笑みと、勇者に何てならなかった青年らしい青年。伸びやかに、何にも囚われることなく駆け抜けて行くだろうその人は一度足を止めた。
「私の世界では、魔王を倒す際に貴方の仲間である女性がいたんです。私はその人の……子孫、のようなものです。
 この世界のその人は一人で魔王を倒しに行こうとして行き倒れてたんですよ。無茶しますよね」
「じゃあ、シフォリィの世界の『俺』のパーティーメンバーなんだ」
「ええ。そうだったのです。だから、私は貴方に興味を持っていた。
 けれど、関われば関わるほどに、分かったのです。貴方は『彼女』の知っているアイオンではない、と」
「そうだね、きっとそうだ」
 アイオンは肩を竦めた。困ったときに、肩を竦めてから頬を掻くのが彼の癖だった。
 小さな癖は全て似ているのに、此程までに違うと感じたのはその人と過ごした時間が嘘では無かったからだ。

 ――フィナリィ。僕とおいでよ。楽しい旅にしよう。

 ええ。『アイオン』。次はシフォリィが『もう一人の貴方』と楽しい旅をしようと思います。
「……物語は既に変わってます。この世界の物語は私達の世界と違う結末でもいいと私は思います」
 だからこそ、シフォリィ・シリア・アルテロンドは手を差し伸べた。
 嘗て勇者アイオンがフィナリィに手を差し伸べたように。
「――どうか貴方もちょっとだけ奇跡を願ってくれませんか? 意味はなくとも、新しい物語を紡ぐ為の奇跡を」
 青年はその手を取ってから「それじゃあ、御伽噺を始めようか」
 そうやって見慣れた笑みを浮かべて見せた。

 王城と呼ぶには余りにも無骨な場所だった。
 酷く冷えた空気の漂う玉座の間は謁見のために誂えたと言うよりも斯くあるべしと念入りに用意された場所のようにも思える。
 実に作り物めいた空間だ。かつ、と革長靴が音を立てた。砂避けの使い込まれたマントが青年の動きと共に揺れる。
 燃えるような紅色の髪の青年アイオンは『魔王』の前へと相対した。
「『一体どうして邪魔をする?』」
 ――まるで御伽噺の通りだ。アイオンは知らない『悠久残夢(勇者王の旅路)』を再現しているかのように。
 アイオンは笑った。イレギュラーズも最初は己を伝説の勇者、勇者王として相対したが今や『冒険者のアイオン』として彼等は自信を同一視はして居ない。
 こうも『勇者』扱いをされてしまえば些か気分もよくなろうもの。
「『「答えよ、勇者。
 座して死を待つ世界を望むか。他に為せる者が無いならば――
 我が闘争は、野望は高貴なる務め(ノブレス・オブリージュ)足り得ぬか』」
「良く分からないけれどさ、俺は『勇者』じゃないんだよ、イルドゼギア」
 勇者と魔王は相対した、いいや、言い換えよう。
 ただの冒険者と『魔王』に憑かれた者が相対した。
「アイオンさん手伝いに来たよ!」
「フラーゴラ!」
 アイオンは蒼いキャンディを頬張ったフラーゴラへと振り向いてから笑みを浮かべる。
「『魔法使い』さんを助けよう! クレカさんのためにも……ワタシのためにも!」
 フラーゴラの決意を耳にし、アイオンは実に晴れやかに笑って見せた。
 フラーゴラが『自分のため』だというならば、アイオンだって『自分のため』に戦っても良いはずだ。
「魔王、お前の闘争をどうやら俺は気に入らなかったみたいだ」
 ゆっくりと、勇者未満の冒険者は剣を抜いた。これは屹度、未来に進む為の戦いなのだから。
 駆けるアイオンと共に前線へと走るのはウルズであった。持ち前の速度を生かして仲間達を『失わない』事が目的だ。
(あたしじゃ奇跡を起こせないかもだけど、本当に大切なのは奇跡を起こさんとする強い意志っす。
 みんなの束ねた奇跡、あたしの手で持ち帰ってみせるっす! ――だから、まずは『生きる』!)
 フラーゴラと共に展開した回復陣形。その中には大地の姿もある。
「任せてくれ」
「大丈夫カ?」
「そんなこと言うなって……」
 揶揄った赤羽に大地が肩を竦めた。終焉獣であるイルドゼギアを『魔法使い』から引き剥がしたタイミングで魔法使いの肉体を保全することこそが、回復部隊の役割だ。
「なんとかなるだろ」
「本当ニ?」
「本当だって、なあ」
 大地の同意を受けてから、アイオンはにんまりと笑った。そうだ、信じているからこそ進めるのだ。
「魔王との決戦、か。まさか。勇者王の伝説を、実際に体験することになるとは。
 しかし、今回の魔王は、クレカの父親でもあり……なんとか助け出さねば、な」
 エクスマリアは振り返る。大地と共に陣を張り、出来うる限りの仲間の体力の保全を意識する。
 それだけではない。この作戦は『クレカの父親でもある魔法使い』を救うことが目的なのだ。
(終焉獣イルドゼギアが魔法使いと分離したときに『肉体のみの回復』を行なう――それが目的だ)
 回復要員はイルドゼギアの指示を見ても真っ先に始末しておきたいはずだ。故に、班員全員の状況を見極めねばならない。
 文字通りの戦場の要。それこそがエクスマリアや大地を始めとした回復隊なのである。
 前を行くアイオンと、そしてその傍らを進むオウェードは魔王を睨め付ける。
「生きて帰るんじゃアイオン殿! その為にワシも覚悟した!」
 魔王イルドゼギアは『物語』だ。それに終焉獣が交わったことにより『肉体』に憑依した驚異的存在になっている。
 つまり、伝承と戦う事になるのである。本来の混沌で語られた勇者アイオンと剣を交え戦う事になるとは――
 ごくりと息を呑んだ。あの男の視線を此方に向ける事が出来るのか。ここからが根競べの始まりだ。
「大詰めだな。魔王を討ち、新たな勇者譚の幕開けと行こう!
 アイオン、マナセ、”ファルカウ”、その名前が関わるのなら俺は最後までこの冒険に付き合うだけさ」
「付き合う、か。違うぞ、クロバ。俺が『英雄の物語』に着いていくんだ」
 晴れやかな笑みを浮かべたアイオンが地を蹴った。走るアイオンと共にクロバは行く。
「アイオン、連携していくよ!」
「ああ、セララ! 君の技は覚えた!」
 頼もしいと言うべきか、それとも――セララはドーナツを食べるかと揶揄うように問うた。
 早食いドーナツ選手権があれば、セララに勝てる者は居ないなんてジョークを交えるアイオンは彼女と共に駆け抜けて行く。

●勇者と魔王II
「混沌世界に渡る手段を探し出し、私達と戦ってくれる、ふふ……良いわね、それ!
 あなた達が来てくれるなら心強いわ! その為にも――魔王を倒して、『魔法使い』を救い出さなきゃ、ね!」
「行ったらアルテミアの家に行くわね」
「どうして」
 アルテミアはにんまり笑ったマナセ(スティアに引き摺られていって居る)を見た。
「マナセはアルテミアの家に行ってたんまり食事するらしい。アルテミアと同じものを食べれば成長するとかいってた」
「……そ、そう。気を取り直して、さぁ、行きましょうアイオンさん、マナセさん! プーレルジールを救う為に!」
 幻想貴族に名を連ねたならば、これを楽しまぬ訳がない。フィルティス家の令嬢、アルテミアの心は躍る。
「まさかアイオン様とまた共に戦えるとは。光栄の極みです。以前のように、お供いたします」
 ヲルトにとってアイオンは『混沌世界においては』仕えるべき存在だ。王侯貴族リーモライザ家に仕える者として、勇者王を蔑ろには出来まい。
「なあ、ヲルト」
「……はい?」
 アイオンの護衛役であり、傷付くことでその力を発揮する己を盾にすることを先んじてアイオンに告げたヲルトにアイオンは困った様子で行った。
「もしも、勝利したら俺のことはアイオンと呼んでくれないか。勇者王だったか、と、被って仕方ないならアイでも良い。
 俺はさ、ヲルトの仕える王様でもないし、他人の空似みたいなものだから……友人になりたい」
 にかりと笑ったアイオンにヲルトは妙な顔をした。
「……約束はしかねます、ですが、今こそ我らの勝利を齎しに参りましょう」
 その言葉を耳にしてマニエラは「ふむ」と小さく呟いた。
 マニエラはアイオンの伝説は好きではない。彼女の伝説はマスターとして今も生きている。
 だが『姉妹弟子』からのオーダーはしっかりと熟すのみだ。出来うる限り戦場の『死』を遠ざけるのがマニエラの仕事でアル。
「伝説の勇者と魔王との戦いに混ざれるなんてオレたちは運がイイよね! 運がイイついでに新しい伝説になりに行こうか!」
 にんまりと笑ったイグナートは無数に邪妖精を使役している四天王セァハの姿を見た。
 アイオンが僅かに戸惑ったことに気付く。躊躇いと途惑いがないまぜになったのはセァハの『寄生先』の所為だろうか。
(知り合いだったかな? じゃあ、助けてやらなくちゃね!)
 セァハを前に、アイオンへ行く事を遮る。それがイグナートと、そしてオリーブの役割だ。
「数が多いですね」
「そうだね! けど、そっちの方が燃える」
 イグナートがにいと唇を吊り上げた。地を蹴って走り出す。続くオリーブは掃射撃を持ってイグナートの行く先へと激しい弾幕を叩き付けた。
「出て来たら、出て来ただけ叩き込めば良いんじゃない? こっちだよ!」
 イグナートが引き寄せオリーブが掃射する。その案は『嫌いじゃない』とでも言う様にジルーシャは笑った。
「ゼロ・クールたちは、もうアタシたちの大事な友達だもの。あの子たちの暮らす世界を守ってみせようじゃない!」
 L-L-00(リリア)は行ってきますと告げれば送り出してくれるときにアイオンをイメージしたのだという練り香水をくれた。
 その感想だって伝えてやらねばならない。シャンティはその感想を待ってくれているだろう。全く回りくどい『やり方』だ。
「来る」
 セァハが呟いた。指先がぴん、と張られ無数の魔法扉(ゲート)が宙に浮き上がった。
「魔王と四天王が相手なら不足はない。ハッピーエンドに至るわよ!
 私はレイリー=シュタイン! ここは迂回禁止よ!」
 堂々と立ったレイリーはセァハを前にしていた。邪妖精はずんぐりむっくりとした者も居れば悪い顔をして笑う者も居た。
 それらを倒しきる事がレイリーの役目であり、アイオンを護る事こそが使命である。
「アイオンや仲間達には手出しはさせないわ! 私を超えることなどできないのだから!」
 レイリーが胸を張る。彼女の元へと向かう事を確認しセァハの魔法扉がまたも無数に出現した。
 それを一瞥してからジルーシャは「うんうん」と頷く。
「やっぱりアタシはこっちね。世界が違ったって、大事なお隣さんであることには変わり無いし……あと、ゾンビとかおばけは恐いし……!」
 困った顔をしたジルーシャに「なら、オバケ達は俺かな」とアイオンは笑う。任せてくれ、と簡単に引き受ける彼はセァハの相手だけは躊躇っていた。
(仕方有りませんね)
 リースリットは嘆息してからセァハの召喚する敵の数々を斬り伏せて行く。魔力を纏ったレイピアから真空に放たれる精霊魔術。
 精霊光が邪妖精を包み込んだ。リースリットは「こんにちは」と微笑む。
「サーシャさん、頑張っている貴女に朗報を一つ――脈は、有るようですよ」
「……違うわ、遠縁の貴女。あの人は、恋愛なんて程遠いのですよ」
 それはセァハではなくサーシャの声だったのだろう。リースリットは目を瞠る。この場において、彼女が自我を保てているのは……『イルドゼギア』だろうか。
 彼を蝕む滅びから、少しでも遠ざけるべく相対した者が願った奇跡を『イルドゼギアは自分の為には使わなかった』のだ。
「だからね、あの人はわたくしを好きにはならないの。貴女や冒険の旅に出られる誰かを好きになる」
「それは……どうして?」
「そういう人だから」
 サーシャはそう笑ってから目を伏せた。自我の上に何かが被さった。
「けれど――『イルドゼギア様を見捨ててまで救われてはいけない』」
 ああ、タイムリミットだ。良く分かる。勇者になってしまえば遠く遠くなってしまう。
 世界を越えた勇者という立場は身分を越えて姫君の手を取るだろうが、サーシャはそれでも自らが選ばれないというのだ。
(ああ、そうだ。あの人は光を見てしまったのだ。イレギュラーズは眩くて、サーシャもアイオンも全てを飲み込んでしまったのだろう)
 セァハの周辺に邪妖精が現れた。ガス欠までまだまだか。それでも根競べでアル。
「ハァイ、初めまして。アンタたちは、アタシの香りはお好きかしら?」
 微笑むジルーシャと、その側で回復を持って仲間達を支えるシルフォイデアが困った顔をして立っている。
「なんとも」
 なんとも言えない。そう言葉を繋げたのは彼女が目の当たりにした青年が余りにも我武者羅で無鉄砲だったからだ。
「きっと、彼にとっては勇者であるかどうかは然程重要な事ではないのでしょうね。
 それは得難い資質だと、わたしは思うのです。
 ……滅びに抗うこと、大事な人を救うこと、それらの助力になれるように、わたしもできる限りの事をしたいと思います」
 勇者に何て、なれないけれど。生きていく為に戦う力を使っているだけなのかもしれない。
 それでも大海原のように、何も宛のなかった人生で行く先を見付けられるならば――光が、眩く包み込む。
「びりびりどーん、そんなふうに集まったら一網打尽だよ」
 セァハを前にしてソアは本能のままに戦っていた。アイオンの元に何て行かせやしない。
 牙を剥き、的確に相手の対処をする。それこそが獣の在り方だ。
 大地を蹴って走る。雷の気配の娘は天真爛漫で有りながらも『攻略方法』が分かって居た。
 此の儘セァハのガス欠を撒けば機がやってくる。それは案外早いのだ。戦いを重ねれば良く分かる。相手は『戦いになれていない』。
「もうすぐだ」
 ソアにジルーシャは頷いた。
「サーシャさん!」
 リースリットは手を伸ばした。彼が成し遂げたならば、屹度その隣でサーシャは笑っていられるはずだ。
 物語ではフィナリィが手を取ったとも書かれることはある。しかし悲恋であったともされた。
 王の座に着いた彼の側に誰がいたのかは分からない。けれど、『この世界の彼に恋する乙女』が居なくなっても良いなどと誰も言っては居ないのだから。
「貴女が、いなくてはならないでしょう」
 己の『可能性』を分け与えるように命に灯火を。終焉を払い未来を紡ぐ可能性を、与えたいのだ。
「サーシャ! 聞こえる?
 アイオンが貴女を助けに来たわ、だからもう少し頑張って! 貴女の夢を、彼の夢を私は絶対に護る!」
 アイオンとおんなの唇が動いたことをレイリーは見逃さなかった。
 どうなったって良い。彼女の恋が叶わなくたって、生きていれば幸せになれるのだから。
 だって、『こんなにいい女を無碍にするのだから、アイオンは後悔したって良い』はずだ!
「ッ――」
 サーシャから何かが剥がれ落ちた。リースリットは「今!」と声を張り上げた。
「サーシャさん、お願い、届いて!」
 ソアは手を伸ばした。これ以上はきっと、いけない。分かって居る。だから――だから、手を伸ばした。
 サーシャの身体をぎゅっと抱き締める。力が抜けていく少女はそれでも息をしている、生きている。
 それだけでいい。生きてさえ居れば、幸せになれるのだ。

●魔法使いマナセI
「ふはは、元気してましたか我が妹よ!」
「――!? 妹だったみたいだわ!?」
 ぱちくりと瞬いたマナセはしにゃこを凝視していた。しにゃこはと言えば、マナセの側で首を傾いだ栗鼠に気付く。
「あ、いや姉を名乗る不審者ではありません! しにゃこです!
 いいんですって姉は何人いてもいいし妹も何人いてもいいんです!」
「じゃあ、私はしにゃこの妹よ。護ってね、お姉ちゃん」
 お姉ちゃん。良い響きだとしにゃこの頬が緩んだ。和やかな空気で居られるわけではない。
 マナセには『仕事』がある。イルドゼギアから離れた終焉獣を撃破し、封印術を施す為の術式行使の役割があるのだ。
「マナセちゃん、行きますよ!」
 可愛らしいパラソルを銃を掲げる要領で構え、そして放つ。モーションに無駄はなく、雨に気付いたかのような単調な仕草だけで無数の弾丸が放たれ行く。
「時間稼ぎ位ならやって見せよう。俺達に出来る事は信じて戦い抜く事だ、マナセ。頼んだ」
 マナセの肩を叩いてから、ベネディクトは地を蹴った。しにゃこの弾丸に足止めをされたアンデッドを睨め付ける。
 腰に下げた剣を引き抜いて姿勢はやや前傾に。飛び込むが為に踏み締めて、アンデッドの首を落とす。
 主人の背を追掛ける事は無く、マナセの足元でぐるぐると回るのは使い魔(ファミリアー)のポメ太郎であった。
 ふわふわとした毛並みに、戦場慣れした様子は普通のポメラニアンなどではない。歴戦のわんこだ。
「ポメ太郎」
 マナセはごくりと息を呑んだ。アイオンは前へ、前へと走って行った。アレクシアやスティア、チェレンチィが側に居てくれる。
 それでも、マナセは『天才肌の魔法使い』であっても戦い慣れた戦士ではない。アイオンのようにモンスターと戦う事への恐怖心を捨てきれない。
「私、戦場に来るまで自覚してなかったけど、恐いのね」
 マナセの杖を握る指先が震えた。サイズが誂えたそれはマナセの魔法制御の助けになる事だろう。
「……ポメ太郎は恐くない?」
 尾が揺れる。マナセさん、マナセさん。ポメ太郎が呼んだ気がしてからマナセは「なあに」とその小さな身体を抱き締めた。
『僕はみんなみたいに賢くないですし、どっちかっていうと馬鹿だと思います。
 力なんて、小さい身体と短い脚じゃとてもじゃないけど貸せそうにないです。
 でも、みんなは僕と居る時に笑ってくれます。喜んでくれるんです。 だから僕はマナセさんの傍に居ますよ!』
 ――なんて、『いぬのきもち』が分かったのはファルカウのお陰だったのかもしれない。マナセはにこりと笑ってからポメ太郎を降ろす。
「それじゃあ、全部が終ったらベネディクトに美味しい物を奢って貰いましょうね! ポメ太郎!」
『はい!』
 杖を握る指先に力を込める。その時が来るまで、戦うために。
 チェレンチィはゆっくりとマナセに向き合ってからその首にネックレスをかけた。ヘリオライトがきらりと光る。
「指一本触れさせません。だから、マナセさん、安心して下さい」
 傷の一つも許さない。チェレンチィの握る慈悲がキラリと光った。
「きれいなネックレス」
「……守り抜きます、だから大丈夫ですよ」
 ――心にかかった暗雲を晴らし自信が持てますように、そして貴女の素敵な夢が叶いますように。
 その願いと祈りを共に。チェレンチィは地を蹴った。マナセの元へと向かわんとする敵を弾き飛ばす。
 弾かれたように腕を上げたアンデッドの元へと勢い良く飛び込んでいくのは洸汰。
「マナセ! ファルカウ! クレカ! それに一緒に戦う皆の身は、オレがガッチリ守るかんなー!」
 ふええと泣き声を上げるパカおとFueeと鳴いたメカパカお。その二匹に牽かれる軍用馬車に乗りながら洸汰はずんずんと攻めていく。
 無数のアンデッドも、軍勢も。四天王達が後衛タイプであるのは自らを護る為なのだろう。
「こっちだぜ! 前に出てこいよ!」
 何時までも有象無象を払い除けているだけではじり貧だ。だからこそ、洸汰は前に出る。己を狙えと声高に叫ぶが為に。
 
●魔法使いマナセII
「初めましてお嬢さん。此度は貴女を護りにきました」
 涼やかに微笑んだブレンダに「王子様みたいだわ!」とマナセがきゃあきゃあと声を上げる。
 その嬉しそうな声音にブレンダはやや面食らったが、魔法使いもお姫様も騎士に護られる物だと彼女の前に一度傅いてから、剣を抜いた。
「騎士として貴女を護ろう。今の私はマナセ殿、貴女の騎士だ」
 黄金を纏うブレンダをその双眸に映してから「宜しくね、私の騎士様」とマナセはにんまりと微笑んだ。
 御伽噺ではただの端役、名も憑かぬ存在であることが多い『騎士』は王子様ではないのかも知れない。だが、戦場ではそうではない。
「私達の母なるファルカウとは、直接的には異なるこちらの世界のファルカウではあるのでしょうけれど。
 ……その意志を叶えたい、と思うのは大樹ファルカウに連なる幻想種の性なのでしょうか」
 呟いたドラマに「幻想種は同胞意識が強いからかもしれませんわ、読書家」とファルカウは返した。
 小さな栗鼠の姿をしているが、彼女はファルカウそのものだ。ドラマは母なる存在であるファルカウを護る為にその身を盾とする。
 音を聞き分け、土の中より迫り来るアンデッドの存在に気付いたように地へ向けて、魔術を放つ。
 剣に、魔法に。卓越した知識と技量を有したのは師の教えだ。
 ここまで歩んで来たからには数えきれぬ苦難があった。それはサイズにとってもファルカウやマナセを見るだけで思い出される。
(この世界に妖精は居ない、守れなかった春の妖精女王に合う手がかりも無い。
 ――その時点で俺が肩入れする理由なんて無いと断言出来るのに心の片隅で期待しているんだ)
 ファルカウにもその存在を否定されている。ないならば不幸になった者が居ないと断言できるだけなのに。
 そして、その目の前にはマナセがいた。彼女こそが妖精郷の『盟約』の封印を作った一人でもあるのだ。
 嫌いだと告げた相手に肩入れする理由なんて、きっと、ないだろうにとサイズは自嘲する。
「どうです! ただふざけてるだけのねーさんじゃないんですよ!
 あ、なんか敵に囲まれてる気がします! 助けてマナセちゃん!」
「分かった――わああああ、ごめんなさい、巻込む!」
 マナセが魔法杖を向けたが早いか、魔術が突如として飛び出した。
 しにゃこを『轢き』飛び込んでいく魔力の砲撃が流星の如く尾を引いた。アンデットに叩き込まれた魔力はマナセが咄嗟に撃ちだしたせいか制御も疏らだ。
「ふっ……中々やりますね妹よ……」
「わーん! しにゃこが死んじゃうー!」
 慌ただしいマナセにしにゃこはアクシデントは付き物だと汗を拭ってから立ち上がった。
 回復魔法を使用しながら祝音は「魔王という終焉獣、物語は封印されて……『めでたし、めでたし』になるんだよ。みゃー」と頷く。
 マナセだけじゃない。この場の誰喪を失わぬ為の決意を祝音はしていた。
「魔王なんてなるもんじゃなーいでーすよー。貧乏くじっていうんです、それ。
 変なのに憑かれてんじゃないですか? いや憑かれてるのか……」
「リカ、おもしろい」
 マナセが腹を抱えて笑い出すが「いやいや、笑ってる場合じゃないですよ」とリカはマナセを窘めた。
 その肩でファルカウが呆れた顔をしていた。それは兎も角、だ。セァハの邪妖精が制御が外れて暴れるならば退け、ダルギーズの無数の召喚するアンデッド達を退け、ああ、それにゼロ・クールも。
「忙しくないですか!?」
 リカは困った顔をした。マナセの攻撃魔法に頼り、彼女に吹き飛ばして貰う為に前線に出るが――流石に、しにゃこのように『轢かれたく』はないものだ。
「いいですよ、まあ、大丈夫。勇気を出してどでかいの一発撃って下さい!」
「リカ、死なない?」
「殺す気なんですか!?」
 えへへ、と笑ったマナセの側で「だ、大丈夫なのだわ」と華蓮が応援している。
 どうしようと言った顔をしたのはウィリアムだっただろうか。ファルカウの護衛をしながらも、集まってくる敵影を退けては居る。
 此処は安全地帯ではあるが敵が多い。何せ、マナセは『敵陣を突っ切って』封印術を行使しなくてはならないのだから。
「大丈夫だよ、マナセ様。……絶対に守り切るから」
「ええ、ええ、そうなのだわ。アイオンさんの世界を救う壮大な旅はそれでも……いや、だからこそ楽しい物であって欲しい。
 そうでなくては成功しない……そう思うのだわ。だから、マナセさんも楽しい旅にしなくっちゃ」
 にっこりと微笑んだ華蓮に近付くアンデッドをウィリアムが渾身の魔力を叩き込んだ。炸裂する魔力塊が近距離で高濃度にぶち当る。
 華蓮は直ぐさまに癒やしを送り、仲間達の支えと鳴り続ける。
「……」
 何処か困った顔をしたクレカはぎゅうとその拳を固めていた。グリーフの姿が見える、それから、アイオンも。世界も居る。
(……私は……)
「クレカ様」
 ウルリカはそっと呼び掛けた。彼女には聞きたいことがあったからだ。
(そうですか……ゼロ・クールは滅びを防ぐために作られ、その鍵は愛にありましたか……。
 やはり愛は世界を救うのでしょう。私の世界の博士がそう告げたように)
 集団戦となるこの乱戦状態の戦場で、ウルリカは静かに問うた。
「クレカ様は、愛が何であるかを理解しましたか?」
「きっと、目には見えなくて、誰もが持っている、ふしぎなものだよ」
 クレカはそう呟いた。愛とは、クレカには良く分からない。ウルリカは知っているのだろうか。
「ねえ、多分ね……人を好きになるのって、簡単なようで、とっても難しいから、大事なんだろうね」

●勇者と魔王III
「さ、てと。貴方がDr.lost?」
 問い掛けたオリアンヌはさっとサングラスをとった。混沌世界では彼女が過ごした『クォ・ヴァディス』が佇むボーダーラインの向こう側にこの場所は位置している。
 似通った異世界ではこんな事になっていたというのは土産話にでもなだろうか。
「貴方相手に派手な奇跡なんて必要ない。ちょっとの間足を止めさせられるなら、殺すには十分すぎる」
 オリアンヌは地を蹴った。オリアンヌが向かって行く先にDr.lostが立っているが、その眼前に無数のゼロ・クールが進み出す。
「さあ、お行き」
 それは全てがグリーフにも良く似ていた。ニーヴィアという女性を求めて作られた『人形』達だ。
 その光景にぎょっとしたのは仕方が無い事だろう。ヴィリスは「あら」と呟いてから掌で口元を覆う。
「なんだか大変なことになってるわね。でも魔王との戦いだなんてまるで戯曲じゃない!
 大事な戦いなんでしょうけど私は勝手にやらせてもらっちゃうわ。だって、ゼロ・クール達を放置しておくのだって忍びないもの」
 地を蹴った。ふわりと跳ね上がってからヴィリスは踊る。プリマは何時だって観客に魅せ付けるように戦うのだ。
 大地を跳ね上がる。掌は『軸』の代り程度には使えたか。広げた両の足が回転する。そのままの勢いで蹴撃を放っては立て直す。
「寄生をどうこうする手段は私にはわからないけれどとりあえず動きを止めておけばどうにかできる人がいるでしょう!
 せっかくのこの大人数。活かさない手はないわ! 私の手は使い物にならないのだけれどね!」
 くすりと笑ったヴィリスは向かい来るゼロ・クールだけを相手取る。彼女達に心があるならば、是非ともこの踊りに溺れて欲しいものだ。
 特等席はさぞ楽しかろうに――しかし、ゼロ・クール達は何も知らぬと云うように拳を振り上げた。
「心が巣食われてるんだ……!」
 カインはそう言った。勇者の邪魔をさせない。何よりも冒険者として世界の滅びに繋がるものを許容できるわけもない。
 直感が囁いている。彼を逃がしてはいけない。クレカは「グリーフ、どうする?」と問うた。
 護られているクレカの側にはルチアの姿がある。魔王を護る配下の多さからしても『役割』であろうともそれが上位存在であることがよく見て取れた。
「魔王だ、なんて言ったところで無欠の存在じゃあない。耐え続ければ勝機も見えるはず。
 けれど……『途を定めなくちゃ』ならないのだものね。どうするのかは、そう、決めなくてはならない」
 袂を分かつのか、それとも――ルチアの側に立っているクレカにグリーフは振り返った。
「ええ。相手は英雄を模した『魔王』。倒せるならば。けれどそれが叶わないならば――私が『方舟』となりましょう」
「グリーフ!」
 剥がれた『イルドゼギア』をドクターに回収されることを阻止する。つまりは、自らが封じ込めることに失敗したならば盾になると言うのだ。
 クレカが声を荒げ、驚いた様子で世界は振り返る。随分と人間らしくなったものだ。彼女は友を得て、信頼を宿したのか。
「……大丈夫ですよ、クレカさん。ですが、全てを諦めるつもりはありません」
 握り締めたのは『死せる星のエイドス』であった。全てが終わり、世界が鎖されるまで自らの儘で抗いたい。
「……クレカ」
「世界。私はグリーフが好きだよ。世界のことも」
「ああ」
 だからどうしたと言いたげな顔をした世界にクレカは言った。
「だから、私のパンドラ、あげる」
「は?」
「グリーフ、連れて帰るし、封印だって成功させて貰う。これからも、私達は普通のお友達で、過ごす為にね」
 クレカは「私って多分、結構わがままだ」と囁いた。その声を聞きながら、グリーフは一つの決意をする。
(愛する人と共にありたいと願う、その想いは純粋なものなのだろうが……ゼロ・クール達に自壊コードを与えている辺り、精神性はかなり『歪んで』いると見える)
 地を蹴ったルーキスはすらりと剣を引き抜いた。
「ここで見逃せば混沌の脅威となる事は必至。ならば……その命、この場で頂戴する!」
 理解は出来る。ニーヴィアという愛しい人を喪ってから彼が歪んでしまったことも。
 だが、彼はニーヴィアの為に世界を捨てられる。ルーキスは知っているのだ。世界で一番に恐ろしいのは我欲のために世界を捨てられる人間だ。
 剣がゼロ・クールにぶつかった。ふわりと布が舞い踊る。
「別にあなたが何を願おうが勝手だけど。それが混沌に滅びをもたらすのであれば相容れないわ」
 アンナは目を伏せってから、地を蹴った。流麗なる舞は剱のように翻った布と共に。
 アンナはただ、ゼロ・クール達を引き寄せ、Dr.lostを睨め付ける。
「自壊コード? へぇ、随分身勝手だなぁ。
 『大事な奴以外は全部捨てて良い』と思ってる創造主サマは最大限笑って叩き落してやるのが俺の流儀。
 逃亡なんか許さずに確実に潰してやるよ」
 苛立った様子のカイトはゼロ・クール達に対応を続けて居た。雨紅とて同じ。
 願うのは同じ事だった。滅びの気配を遠ざけ、『彼女達』を救うこと。
 その為に『自壊コードを植付け不幸を産むドクター』はこの場所には不要だとカイトはそう考えて居た。
「――願え。滅びのなき未来を。破滅の無き将来を。
 この星は、俺の築き上げる舞台は――汝らの真なる願いを聞き届ける!!」
「多くの彼らを救うなら……。
『魔法使い、彼らの始まり、父との繋がりに干渉。そこから寄生体を弾き飛ばす力を流し渡す』――その繋がりは、滅びの為のものじゃない」
 雨紅はただ、願った。無効化したゼロ・クールを救う為ならば自らだって努力は出来る。
 最善が救出だ。Dr.lostの用意したという『自壊コード』を利用して、寄生した終焉獣だけを救うのだ。
 壊れてしまったパーツだってイルドゼギアの元となった魔法使いさえ救えれば彼に修繕を願い出ることだって出来る。
 始祖たる男が救われるならば、彼は屹度、ゼロ・クールに個別の感情を与え、その姿を望む物にだって換えてくれる。
 だからこそ、これは未来への投資だ。雨紅の可能性がちりりと音を立て気を失っていたゼロ・クールの身体から滅びの気配が消え失せる。
「逃がさないわ」
 アンナの囁きは、剱となってDr.lostの腹を穿つ。ぼとりと血が落ちた。それはゼロ・クールからは見られぬものである。
「ご愁傷さま、お医者様。目的があるならさっさと逃げれば良かった。魔王を貰おうなんて、欲張りすぎたね」
「いいや、生きていたって――」
 Dr.lostの身体がぐらりと傾いた。オリアンヌは男の瞳がグリーフを見たことに気付く。
 ドクター・ロス。それが男の呼び名だった。オリアンヌは目の前の『グリーフ・ロス』を見る。
「ああ――」
 Dr.lostはグリーフへと手を伸ばす。
「ニ……ア……」
「……お久しぶりです、ドクター。今の貴方には、私はどう映りますか? ヒトですか? それとも、人形ですか?」
 寂しげに囁くグリーフはその手を取った。男が此処で死したならば『不幸なゼロ・クール』は産まれないだろうか。
 イルドゼギアにとっては彼は友人だった。庇護下に置くほどの。
「貴方にとって魅力的でないヒトであったなら……嬉しいです。私が、私になれたということだから」
 クレカは思う。もしも、彼女が『父』を失うことを是としていないなら、どうしよう。
 胸が締め付けられる気分にもなった。けれど。
「何度も、何度も、繰返されるなら、此処で終れば良いのかな」
「クレカさん……?」
「ドクターが、ニアさんのところに、行けるなら、私はそれが良いって言えるのかな」
 分からない。ただ、ドクターの眸にはグリーフは『人』に見えた。男は最後まで『ニーヴィア』を手には出来なかった。

●魔王と勇者IV
 ウルズは魔王イルドゼギアを支援するべく前線へと迫るアンデッド達をその身に受け止めた。
「……奇跡には頼らねえ、そいつは黒い太陽に捨ててきた。二度目の奇跡はいらねえのさ」
 ぐっと拳を固めた貴道が笑う。
「俺が狙うのは奇跡の先だ、無駄にはさせねえ。逃がさねえよ、お前は確実に仕留める――RPGの魔王は潔く散るもんだろ?」
 貴道はイルドゼギアへと肉薄した。魔力の障壁が展開される。
 叩き付けた拳がぶつかる音がする。屈強なその肉体で筋肉が躍動した。
 振りかぶった右腕と共に身体が僅かにブレた。その反動を利用し、直ぐさま左足を突き出す。
「勇者じゃなくて悪いな魔王様、鉄砲玉だコノヤロウ!」
「はは」
 アイオンはその言葉を聞いて手を叩いた。
「最高だ!」
 鉄砲玉くらいが丁度良いとアイオンは笑う。貴道は「分かってるじゃねえか」と唇を吊り上げた。
 勇者なんて不似合いな称号よりも彼は屹度鉄砲玉だとか、そうした存在である方が好ましいのだろう。
「アイくん、右!」
 シキが叫んだ。アイオンは飛び交うダルギーズの矢を受け止める。ダルギーズは『不似合い』な武器を持っている。
 弓を得手とするゼロ・クールの肉体で前衛はさぞ辛かろう。
 故に、後方射撃に徹しているのだろう。人間の真似事をする骸将軍の矢の雨を走り抜け、アイオンは行く。
「シキ、前に行こう」
「オーケー」
 駆ける。その隣を走りながらシキはくすりと笑った。
 まるで『勇者』然としている。臆することもない、そして、彼はイレギュラーズを『信頼している』事が良く分かる。
「……ねぇアイくん、この世界の君は確かに『勇者』の立ち位置は与えられなかったのかもしれない。
 でもそんなの関係ないよ。君は君の意思と力で世界を救おうとしている。どんな物語が何と言ったって、君は勇者だよ」

 ――俺は勇者なんかじゃないよ。

 ――『僕は勇者だ。君が魔王であるようにね、イルドゼギア』

 伝承のアイオンはエゴを前面に押し出しながらも、自らの歩む道を自ら決めて居た。
 側を進む彼は、自分自身で進むべき道を定める事は出来ないだろう。まだ、彼は発展の途上。生きる道を定める前だ。
(……うん、そうだ。魔王を倒してハッピーエンドでした、なんて物語みたいにはなりやしない。
 完全無欠な『めでたし』じゃなきゃダメなんだ。クレカと、アイくんと。絶対助けるって約束したんだから)
 ダルギーズをその双眸に映してから昴は拳を固めた。
「ゾンビが護衛か。成程、有象無象を盾にして術者が後方に下がるのは『分かり易い戦法』だ。だが――此方だって同じ事」
 昴の拳が叩き付けられた。ゾンビの肉がぐちゃりと潰れ音を立てる。お構いなく、進むのが昴の在り方だ。
 鬼神の如く、全てを暴力に訴えることがシンプルな戦法だ。力任せに殴りつけ、道を開きダルギーズへと迫るのだ。
「……来る」
 ダルギーズが囁いた。四天王とも鳴れば至近戦でも対応してくるはずだ。相手の肉体はゼロ・クール。
 壊れるまで動き続けることが想定される。昴はそれをも理解してダルギーズに至近に迫った。
「来て、どうするんですか」
「お前を止める、ダルギーズ」
 アルテミアは『魔王』を引き剥がすべく健闘していた。鋭い切っ先に炎の気配を保つ。
 それが氷と炎を作り出す。奇跡を重ねて『隙』を齎すために、二重奏にイルドゼギアの張った魔力の障壁がばきりと音を立てた。
「抵抗するのね」
「この身体は返せないから」
 イルドゼギアの柔らかな声音は心地良い。だが、裏腹にその内部に潜んだ悪意は突き刺す気配に満ちている。
 イズマのネイロが響き渡り、イルドゼギアを食い止める。今だ、健在のダルギーズに向け、ラムダは肉薄した。
 配下のアンデッドを集めるボディは静かに佇み、恐れを宿していない。彼が盾になるならば、攻撃手は自由に走り回ることが出来よう。
「邪魔はさせないよ? ダルギーズ」
「何故邪魔だてするのだ」
 ダルギーズはゼロ・クールの身体を借り受けて叫んだ。コアにまで侵食した四天王の眸がぎらりと輝きを帯びる。
 阻止する。それが目的だ。仲間の思いと願いを遂げさせるために――此処で迷って等はいられない。
「何故だなんて、『そうするべき』だと思ったからだよ」
 素早く、風の如く。ラムダは危機を察知して敵軍を斬り結ぶ。
 後方より飛び込むのはミヅハの弓だった。索敵と後方支援が得意、だからこそ四天王の『肉体』にぴったりだったという。
「うんうん。索敵と後方支援が得意な弓兵、つまり同業者ってワケだ。
 ……本人は後方から高精度の狙撃を放ってくる上に、配下が盾になって近づき難い。なるほどな、俺だってそうするぜ。
 だがそもそも近づかなければ、盾を越えて攻撃出来れば、その作戦は無意味になる」
 盾と斬り結ぶ仲間と、それでも尚もラムダを押し返そうとするダルギーズ。ならば――ミヅハは弓を引き絞る。
 つまりはそれをも越えて後方から狙い撃つ。
 二度とは使えない手だ。ボディが味方を庇いながら堂々と佇むその姿を双眸に映してから。
「盾になります」
「なら、俺は――致命的(クリティカル)な一撃をおみまいしてやるぜ!」
 ボディが全ての矢を受け止めた。鍛え上げた腕に突き刺さった矢になど構うまい。
 その隙に、ミヅハが『背面』を狙って撃ち込む。ダルギーズの予想だにしない方角から飛び込んだその一撃が背を貫通し、かくりと膝を落とす。
 明確な弱点がダルギーズにはあった。つまり、『コア』を壊せばゼロ・クールは稼働を終えるのだ。
「ダルギーズ……」
 イルドゼギアの眸がぎらりと輝いた。剣に魔力が宿される。
「おまえ達に勝利などありはしない。この世界は僕が守り抜き、そして滅びるまで管理をするのだから」
「滅びなんて、御免だ! イルドゼギア!」
 アイオンが叫ぶ。その側よりするりと飛び込んだのはサンディだった。イルドゼギアの剣を受け止める。そして顔を上げた刹那。
「アイオン、上だ!」
 サンディの声にアイオンは頷いた。跳躍、空から降る矢の数々を剣で弾く。
「サンディ」
「……アイオン、シキ、任せておけよ」
 シキがこくりと頷いた。入れ替わるように姿を見せたダルギーズにイルドゼギアが後方へと下がる。
 サンディは地を蹴った。アイオンが振り向く必要なんてここにはない。
(アイオンがみんなの為に進むってんなら、やつについていけるのはここまで。
 ……ま、”英雄”アイオンと別れた後にやることってのはひとつ。ヤツの故郷を守ることかな。
 まぁそもここのアイオンの故郷がどことも知らねえが。守るべきものは明白だ)
 サンディは唇を吊り上げた。彼と少しだけしか関わらなくったって人となりは良く分かる。
(今戦ってる仲間、そしてこの世界の人たち。アイオンが守りたかったものすべて。
 袂を分かった意地として、この決戦の間位は、1人も死なせずに守り切って見せようじゃねえの)
 だからこそ、彼が振り返ることは許さなかった。たった一度だけ、名を呼ばれたそれだけが『サンディ・カルタ』の意地となる。
「イルドゼギア。お前は『疲れて』いる。休息が必要だ」
 ヲルトは静かに告げた。

●勇者と魔王V
「アイオン!」
 セララが叫んだ。
 眩い光だ。白い翼が広がって――紅いリボンの彼女が白を纏うだけで、勝利を確信させる。
 明るく、燃え滾る紅色の眸に純白が揺らぐ。
「セララ!」
 剣を握る指先に力がこもった。大地を蹴り上げたアイオンと、跳ね上がるように空から切り下ろすセララ。
 その剣の軌道は十字を描く。身を屈め、横薙ぎに剣を振るったアイオンに合わせるようにセララの剣はイルドゼギアの肩から切る。
「ギガクロスブレイク!」
 肉を断ったか、いいや、辛うじてイルドゼギアが構えたか。魔力の障壁が音を立てた。
 もう一度だ。セララは「いくよ、魔法使いを護る為に!」と再度駆ける。
 セララは振り返らない。そこに信頼があるからだ。アイオンは勇者なんかじゃなかったかもしれない。
 けれど、君は――勇者になれる。
 君が御伽噺に擬えた英雄には遠いと笑っても、届くだけの勇気は持っているだろうから。
「勇者王の物語ってのは俺達にとって大切なもんだ」
 ルカは目を伏せてからゆっくりと大剣手にした。片手で振り回すには似合わぬそれを両手で持ち直す。
「お供致します」
 リュティスは笑みを浮かべた。マナセを護る主人を思えば、彼に加勢し『負担』軽減することこそが必要な事項だ。
「戦う理由が二つある。マナセと一緒に魔王を祓ってやるって約束した事。
 もう一つは私情だ。
 俺にとって英雄と言えば赤犬、蒼剣、そして勇者王だ。その物語は憧れ、夢、色んなものを与えてくれた。
 終焉如きに自由にされるのは我慢ならねえ! ――物語(そいつ)は俺達のモンだ。返して貰うぜ!」
 我欲が最も強い、なんてのは当たり前の話のようだ。
 勇者も名声を求めた者も居るだろう。アイオンという青年は只何となく勇者になっただけだったのかもしれないが。
 その強さは、そして、その我武者羅な姿はルカの幼き頃の憧れであり、夢でも在った。
 穢されてなるものか。頑張れと声を上げるマナセとその腕に抱かれたポメ太郎を見てからリュティスは肩を竦める。
「懐いていますね」
「マナセを混沌に連れてってやらねぇとな」
 そうして、共に過ごして、世界を案内してやる『目標』だって此処にある。
「参りましょう。英雄の伝承が世界を滅ぼすなんて皮肉、存在して良いわけがありません」
 スカートを持ち上げ一礼、直ぐさまに地を蹴って跳ね上がる。構えた魔力の弓に矢が番え――放たれる。
 リュティスが狙ったのは障壁のひび割れだった。流石に防御魔法も手慣れているか、ならば、そこに。
「寄生野郎!」
 ルカが振り下ろす。ただ、その一撃が障壁を割る。
 直ぐさまにその障壁を『修復』しようと魔力が走った。アイオンは「ルカ!」と名を叫んだ。
「アイオン、行けるか!」
「ああっ、行くぞ、バクルド!」
 アイオンが走る。冒険の何たるかをバクルドは旅人として教え込んだ。
 その背中は混沌の冒険者の多くが憧れた冒険譚の一節のようだ。
 彼が果ての迷宮で何を見たのかは重要じゃない――その冒険が憧れだった。
 バクルドは思う。ひょっとして、アイオンがその果てで見たのは『こんな光景』だったのだろうか?
 真実は分からない。ただ英雄と、勇者を謳われた男が別の異世界へと足を運び『世界を救っていた』なんてのはどうだろう。

●勇者と魔王VI
「アイオンさん、いけーー! ワタシたちが助けるから!」
 フラーゴラがアイオンの背を押した。終焉獣を『魔法使い(ウォーロック)』から引き剥がす、その瞬間。
 ただ、それだけを見失ってはならない。回復部隊が動き出す。フラーゴラの声にその背を押されてアイオンは走る。
「私のパンドラは多くは無い…が、ここで姉弟子一人喪う訳にも行かんのでな。
 その奇跡、私も乗っからせてもらおう。
 ……邪なる魂を祓、元の主人に血肉を返し給え。その身体には為すべき命が残っているのでな」
 マニエラに、そしてココロは号令に合わせて回復を行なった。
「いくよ! マニエラちゃん!」
『魔法使い』は人間だ。只の人だからこそ、ああやって心を巣食われた。
 作り物であったゼロ・クールならば不必要な心(パーツ)を取り出すことが出来ただろうか。ああ、分からない――けれど。
「パンドラならたくさんある! 滅びを止めるためなら、どんどん持っていきなさい!
 ――アイオンさん! この戦友はあなたとあなたの世界の為に戦います!」
 ココロは叫んだ。『魔法使い』は勇者にだって成り得る存在だ。彼がこの世界を治めるべく進んで来た。
 ゼロ・クールを産み出して、世界を護ろうとしたその人を守り抜かねばならないから。
 奇跡なんてクロバは願えやしなかった。その時ではないと考えたからだ。だが、為すべきは決まっている。
 これまでに培ってきた人の研鑽。時を超えて重ねた。マナセが振り返る。
「マナセ! お前の為に道は開く! ――これで終わりだ魔王!」
 鋭い一閃。展開されたイルドゼギアの魔法防御陣に罅が入る。
「ッ、割れろ――!」
 終焉なんて受け入れて遣るものか。生憎と、クロバは過去を振り切れない手強い奴を振り向かせる戦いがあるのだ。
(……もうすぐだ。もうすぐ。だからこそ)
 ウェールはイノリ事に決めて居た。我が子との別れを、苦しみを、痛みを知っている。
 イルドゼギアが『父親』だというならばクレカが『梨尾』のように泣かないように護ってやりたい。
 イルドゼギアに届ける一撃は狙い澄ました一撃が乗せられていた。仲間達に、授けたのは共鳴する炎。
 ウェールは狼札を手にイルドゼギアの『隙』を狙う。
 共に進む仲間達の中からミーナは突出した。続く、オデットはヨゾラ共に駆け抜ける。
「出来る限り削りましょう。タイミングは『今』よね!」
 オデットは憑依している終焉獣を引き剥がすことも、封印術を施す役割にあるマナセの準備は出来ている事も理解していた。
 アイオンはヨゾラにとっては一緒に冒険した大切な友人だ。だからこそ、彼の力になりたかった。
 イルドゼギアから分離した終焉獣に向けて、魔力を収縮させた渾身の一撃を叩き付ける。
「勇者と一緒に魔王を倒す、星空の極撃! ナハトスターブラスター!」
 ばちん、と激しい音が鳴った。弾く。それが見る見るうちに勇者アイオンの姿をとり剣を握る。
「ッ、しつこい!」
 ヨゾラが叫んだ。魔力を集め、再度殴りつける。剣が弾かれ靄のように霧散する。
「終焉獣分離時 魔法使い肉体 ……ウォーロック。創造主トシテノ責任 果タソウトスル者ヨ。
 君ノ墓標ココニ非ズ。君ノ霊標イルドゼギア非ズ。クレカ達ト 生キロ」
 フリークライが声を上げた。回復部隊全員が『魔法使い』の肉体を回復する。
 分離した終焉獣。それが剥がれ落ちた瞬間に牙を剥く。この場の皆の奇跡を束ねた。
 ヴェルグリーズは「アイオン殿!」と叫ぶ。新たなる肉体を求めているか。そんなことやらせはしない。
 星の奇跡を手に、終焉獣に向けてヴェルグリーズはその剱を振り下ろした。
 終焉獣は霧散し、またもその腕を伸ばそうとする。奇跡をその身に宿さないアイオンやマナセは格好の的だ。
「ぎええええ、ヴェルグリーズ、そいつ殴ってぇー!」
 マナセの声がしてからアイオンは「此の儘、押すぞ!」と声を掛けた。押し切れ、それを抑えなくてはならない。
 ここでイルドゼギアを逃がしたらどうなるかをヴェルグリーズは耳に為ている。此処で撃破しなくてはならぬ存在だ。
「行くか」
 囁くミーナの声に幸潮がやれやれと言わんばかりに肩を竦めた。戦線維持の為にやってきた。
 回復を行ない、出来うる限り仲間達の進む道を確保する。それこそが幸潮の在り方だ。
(必殺だけは喰らわんようにしよ。いや、普通にしてくるかもしれんしな……)
 筆を執る。仲間達を支える為に癒やしを送る。その手に握り締めた死せる星のエイドスが僅かに光を帯びた。
「汝ら英雄の道行きは我が筆にて盛り立ててやる」
 幸潮は声を潜めた。背を押すだけに十分だ。

 ――ミーナ、行ってきてね。

 赤き翼が大きく広がった。その背を追いながら、魔王イルドゼギアの剣をぴんと張り詰めた魔糸で食い止めたのは彩陽であった。
「……大丈夫。どんな物語も最終的にはハッピーエンド。だから今回もそうなるようにするだけよ!」
 これは英雄譚の再現だ。いいや、そうではないか。『英雄譚を作り上げる編纂』だ。
 降り注ぐ雷は鋭く地を叩いた。
「魔王様」とか細く呼ぶ声がした。『ダルギーズ』が手を伸ばす。その細く頼りなさい腕は、『主人』を救うべく駆けてくる。
 天が許さず、その身体を雷が叩いた。
 彩陽が引き絞った弓は、天を穿つ矢を空へ放つ。番えた矢の先は天を貫き、雷雲を運び来た。
 血潮の気配を纏うその呪具は死兆星を輝かせる。雲雀は望む未来の為に何度も、何度も繰返す。
 救いの気配を。
 求むる、未来の為に。その気配と共にオデットは願った。
「魔王なら魔王らしく自分の殻で戦いなさいな!」
 出し惜しみなんてしなかった。奇跡を願う。イルドゼギアを『引き剥がした』この瞬間だけが狙いだった。
「今一度こう呼ばせて欲しい……アイオン"様"……」
 オウェードが両手に所持した片手斧をクロスさせ、無数に飛び交うイルドゼギアの魔力受け止める。
 勇者アイオンは剣士だが、その魔法技術は『マナセ』や『フィナリィ』から学んだものか。流石は伝承と呼ぶだけのことはある。
 オウェードも、雲雀も知っている。奇跡というのは全員の祈りが等しく束ねられるものではない。
 個々の祈りが、奇跡となる。代償は分け合えるものではなく、命をも賭す決意なくては叶わない。
 奇跡を誰もが願っていた。魔王イルドゼギアを『魔法使い』の肉体から弾き出したこの後に『撃破』する事を。
「このまま、倒す!」
 ヨゾラが叫んだ。もう少し、あと少し。雲雀は目を伏せて、決意を言葉にした。
「そちらの事情に首を突っ込みはしないよ。でも貴方には帰りを待つ人がいる……俺が貴方を止める理由には十分だ。
 どうか諦めないで。彼らの起こす奇跡を――信じて欲しい!」
 雲雀は只、祈った。魔法使い、彼が『帰ってくることだけ』を願っている。
 奇跡を願った。イレギュラーズの奇跡が束ねられる、それが奇跡を求めた星による煌めきのように。
 幾度も、幾度も繰返した。星の煌めきが、指先から溢れていく。
「これが死神の力を使える最後になってもいい……私の中の死神の力よ、目覚めて!」

 ミーナは叫んだ。
 女は死神だ。死神とはただ死を齎す者ではない。限りある命を全うする生を愛している。
 だからこそ、愛する者達に与えられた定めを護る。
 たったの千年。それでも、されど千年。気が遠くなるほどに戦ってきた。
 そんな女の――意地比べだった。

 ――叶うなら、皆の来世にも立ち会えますように。

 僅かな可能性が燃えてゆく気配がする。眩い紅色の翼が広がって、それは純白に変化した。
 そして、女の『不変の呪い』は消失し、時が流れ込む。
 嗄れた声も、細く枝のようになった指先も、それでも尚も剣を握り込む。
 見逃さない。剥がれた終焉獣を食い留め、倒し封印を施すまで。
「ッ―――!」
 可能性が音を立て爆ぜて行く気配がした。ミーナの紅色の眸が見開かれる。
 生きて進む。その為に、覚悟はしてきた。未来を乞うた希望の剣は蒼く澄み渡り、からんと音を立て落ちて行く。

●封印術式
 はた、と顔を上げたマナセは『奇跡』を見た。
 眩い光が包み込んで、魔王イルドゼギアから剥がれ落ちたものを留めてくれている。
「マナセさん!」
 チェレンチィが呼ぶ。マナセは足元を見た。酷く、朧気な地面に思えてならない。
 脚が竦んでいる。此の儘大地が崩れ落ちて、何もかもが土塊に埋もれてしまった方が楽かも知れない。
 指先が冷たくなっていく。恐い。恐い。
「しばいてやれマナセ、こんなクソッタレた終わりをな」
 クロバの声がする。バクルドが勢い良く投げ与えたのは星の欠片だった。
「願えアイオン! 手元にパンドラがなくとも奇跡とは己が手で掴むものだ。
 『魔王イルドゼキア』いや歪んだ勇者王の英雄譚! 今ここが物語の終端だ!」
「ああ、祈る。マナセ、頼んだ」
 バクルドと、そしてアイオンに頷いたマナセは「頑張る」と拳を固め――
 チェレンチィはひょいとマナセを横抱きにした。「きゃあ」と声を上げたマナセがチェレンチィにしがみ付く。
 彼女が女性である事を理解していても、その整ったかんばせが直ぐ近くにあるだけで乙女はどきりとしてしまうのだ。
 ラブコメディなら屹度ときめきの恋が始まってしまう……けれど、此処は魔王城。
「――大丈夫。貴女なら絶対に出来ます! ファルカウさんが認めた実力です。自信を持って」
 封印術に必要な距離まで。
 50。
「出来るかしら」
 40。
 不安だって、飲み干さなくちゃならない。
 ――ミーナの奇跡が光を帯びて『食い止めている』。剥がれ落ちたそれらが封印されるまで、持ちこたえてくれている。
『マナセ様、貴女の魔術行使の特徴を鑑みると意識すべきことは特に一つ。イメージをより明確にする事です。
 封印の展開の仕方が具体的に解るとよりやり易い筈ですが……ファルカウ様?』
 ここに至るまでにアリシスが言って居た。マナセの魔術講師が安定しないのは技術的には詠唱は気にも近いからだ。
 彼女は安定的に魔術を講師は出来ない。イメージ出来ない魔法は、『魔法』を帯びてはくれないのだから。
 だからこそ、戦う前にアリシスはファルカウの話を参考に、例示された封印術の術式構築をサポートしのだ。
(分かってる、アリシスが言ってた。最初は術式さえはっきりしていれば、大丈夫。いける)
 マナセがはあと息を吹く。
 30。
 教わった通りに、イメージした通りに、コレで行けると『理解した』通りに。
「マナセさん。サポート致します」
 ドラマがチェレンチィに抱えられたマナセを見上げた。
 術式が展開されていく。巨大な魔法陣だ。まるで花開くように美しいその術式の構築は『魔法使い』として目を瞠るものがある。
 アレクシアも、ドラマもその魔法陣が『花開く』様子を見ていた。
「マナセ、主制御はしないぞ」
 20。
 サイズの声を聞いてからマナセは「大丈夫、見ていて」と杖を振った。大丈夫、イメージできている。
 封印術が大嫌いだ、お前が嫌いだ。そういったサイズだって「あんなこと言って応援してるのよ」とマナセは小さく笑った。
「マナセ君! いくよ!」
 アレクシアは手を伸ばした。
「細かいところはこっちで補助するから、君は封印術の発動に集中してね!
 滅びはこの世界にも、混沌にも渡らせるわけにもいかないんだから! 『運命』なんかに縛られない!」
 その為にアレクシアは『可能性』を宿していた。
 奇跡なんてなにもないこの世界に僅かな可能性を宿す星のきらめき。
 その輝きを手にして――手を伸ばす。
 10。
「封じて、助けて……全く以て、クレカの願いというのは『面倒』が多い」
 呟いた世界は酷く疲れた顔をして居た。
「魔王を倒す勇者か……バカが、いまさら憧憬して何になる。俺はただクレカの願いを叶える、それだけだ」
 そうだ――勇者に何てなれやしない。奇跡も信じちゃいないし、奇跡を起こせる器なんかじゃないと考えている。
 それでも回言 世界は知っている。
 クレカという『秘宝種』アレで居て案外感情豊かで強欲なのだ。
 そうなったのは世界と、グリーフと、そしてイレギュラーズと関わったからだ。
(強欲な奴め)
 世界は呟いた。クレカは「グリーフのことも全て救ってしあわせになりたい」なんて宣ったのだ。
「マナセ! 封印の一助となろう、くれぐれも『曲げて』くれるなよ」
「クレカのお父さんを、助けるんでしょ!? 分かってる! ねえ、世界ってクレカの何!? 王子様なの!?」
 女の子はそういう物が好きだ。言ってろと吐き捨ててから世界は願った。
 今この瞬間だけは『アイツ』の為に――己の信念だって曲げてみせる。
 ――0。

「わたしはッ、皆を救って、役に立って、ハッピーエンドを持ってくる! 大魔法使い――マナセだッ!」

 眩い光が満ちた。その輝きが収縮していく。マナセの手に添えてスティアが「大丈夫」と声を掛ける。
「魔法陣、支えます!」
 ドラマが手を伸ばしアレクシアが欠けた部分を修復して行く。
「―――――――!」
 イルドゼギアから剥がれ落ちた物語。それはアイオンの姿にも良く似ている。
 魔法陣を割り、マナセを狙おうとしている。その指先を撃ち抜いたのはジェックの弾丸であった。
 マナセを護りたい。仲間のピンチには駆け付けたい。背を預けて戦いたい。けれど、察知されては警戒される。
 だからこそ『ここ』だった。
「ここで終わりだ、『イルドゼギア』」
 魔王の目的は無残に打ち砕かれる。たったの一撃で言い。外さない。
 当たれば殺す事が出来る。
 魔法陣の中に砕けた物語が吸い込まれて行く。
 ジェックに砕かれた物語の中に『光』を見た。
 シラスは手を伸ばす。認められない者があったからだ。『勇者アイオン』は希望の物語だ。
 勇者の物語がこの様な絶望的な魔王になどなる訳がない。
 ザントマンの御伽噺とは違う。ガイアキャンサーだというならば違和感がある。無理矢理肉腫にした歪み、それを。
「こんな姿で出て来るなよ。違うだろ……テメーは!」
 掴む。在りし日のアイオンを越えるためにやってきた。
 取り戻すために伸ばした掌に欠片が一つ。シラスは「アイオン!」と呼んだ。
「シラス! それ、アイオンに食わせて! 口の中ばっきばきで切れても良いから!」
「マナセ、酷い事言うな」
「良いのーー!!!! おあああ、まって、封印ちょっと崩れそう。た、助け、あばばば」
 じたじたと暴れているマナセに「焦っちゃ駄目だよ、学んだ成果が出せるからね」と支えるスティアは深呼吸を促した。
 困惑しながらも欠片を取りあえず押し込まれたアイオンはそれを『吸収』したのだろうか。
 彼に溶け込むようにしてその欠片は消え、滅びの気配だけが残される。
 滅びの気配は、封印術式に張付くようにして囚われた。
「……才能というのは恐ろしいですね。
 間近で見ていて、そう感じます。あの幼い少女が構築した魔法陣がこうも美しい――そして」
 深緑でもドラマ見た。マナセの魔法陣は蕾のように鎖されていく。花開くことがないように厳重に胤となる。
 書架守が物語が封じられる光景を見るのは心苦しくもある。ああ、けれど。
 マナセの術式は一冊の本になった。物語は『見る』ものだと、マナセはイメージしたのだろうか。
「マナセさん!」
 マナセはドラマに本を閉じて、と促した。
「閉じてしまいましょう。物語は――これで、『めでたし』だもの」

●新しい英雄譚
「『魔法使い』さん……もしかして、名前、ないの?」
「そうなの。だからどんぐりマンはどうかしら」
 祝音は「それはちょっと」と言う顔をした。メイメイも何処か困ったようにしょんぼりと肩を竦めている。
「そ、それは……」
「うーん、クレカさんに近い名前はどうかなあ……テレカさん、とか」
「でも、祝音。クレカって『K-00カ号』だからクレカだから、本名じゃないのよ」
 マナセが困った様子で言えば、祝音は「じゃあ、どうしよう」と首を傾げ――
「やっぱりどんぐりマンかしら」
 マナセがひょっこりと顔を出す。誰もが悩ましげであった。
 イズマは「名が無いのは悪い事じゃない。最初の一人はそういうものだ」と頷く。
「貴方は魔法使いで製作者で父親だ。ウォーロックよりはウィザードかな。あとは……トリスメギストス、とか?」
「……お父さんは、きっと、神様をやめたいとおもうな」
 クレカはグリーフの手をぎゅっと握りながら言った。イズマは「神様を止めたい」と呟く。
「グリーフ、私達のお父さんは、神様みたいな事が出来るけど、只の人間だよね」
「……ええ。ドクターも、そうです」
 ただの人だった。だからこそ、永遠の愛を信じていた。
 ドクター・ロスの終わりは呆気ないが、クレカはその様子を見て「ずっと愛せることは羨ましいのかも」とそう言った。
(そうなのかもしれない。愛せることは素晴らしいのだろう。けれど……)
 グリーフは目を伏せた。魔王イルドゼギアをドクターが回収することを狙っていたのは理解していた。
(……ドクターの目に、私は人として映ってしまった。だからこそ、あの人は私を捨てた。
 けれど、嬉しく思う私が居る。奇跡を希った私に、世界は歪にもあの人だけを遠く置き去りにしてしまったのだろうけれど)
 グリーフはニーヴィアをアイしたドクターの記憶だけをその胸に抱いた。ドクターは『人になった』グリーフをそ双眸に映してから姿を消してしまったのだけれど。
「……きっと、人であらねばならないのです。ならば、簡単な名前がよいでしょう」
「では、ロックさまはどうでしょうか。魔法使い(ウォーロック)のロックさま」
 メイメイは伽藍堂になった男の手を握り締めた。
「貴方へお名前を、贈ります。どんぐりマンもその、素敵ですけれど……『ロック』。
 あなたは『ロック』さま、です……! 『ロック』さま、クレカさまがお待ちです、よ」
 その瞳に光が宿される。怒りではない、柔和な色が満ち溢れた。
 滅びの気配ばかりに包まれた魔王城内に柔らかな草木が萌える。
「えっ、えっ、メイメイ、芽がにょきにょきしてる! コレに包まれて、わ、わたし、死ぬんだわー!?」
「マ、マナセさま」
 慌てるマナセを落ち着かせるようにメイメイは声を掛ける。慌てるマナセにしがみ付かれていたアレクシアは「大丈夫大丈夫」と笑った。
「マナセ君、大丈夫だよ」
 この場のイレギュラーズの願った奇跡が『死せる星のエイドス』の気配に乗せられて『魔法使い(ウォーロック)』を取り戻したのだろう。
 青年は魔法使いだ。
 マナセとは少しだけ違う、魔女ファルカウと同じく古語魔法を使う存在だ。
 彼の心が穏やかな凪となり、滅びを遠ざけた事により、その周囲に緑が茂る。
「え、こ、これって、勝ったって事!? ねえねえ」
 チェレンチィに勢い良く飛び付いてからマナセは「やったあ」と声を上げる。ポメ太郎が嬉しそうに駆けよってマナセは「勝ったあ~!」と声を上げた。
「すごい……魔王城が、緑に包まれていく……」
 周囲を見回すフラーゴラに、シキは「きっと、このままプーレルジールの滅びのアークは緑に包まれて消えるんだろうね」と微笑んだ。
「ええ、わたくしが全てを抱えて眠りますもの。安泰ですわ、冒険者」
「ファルカウさん……」
 この世界に満ちた滅びをその腕に抱えて魔女ファルカウは深い眠りに就くという。
 そうして、この壊れかけたい世界を守り抜くのだ、と。
「それはどうしても、為さなくちゃならないの?」
「『異世界のわたくし』の事は知りませんわ、魔女と聖職者。
 ……この世界のわたくしは、滅びを抱えて眠ったとしてもそれに害される事は無いでしょう。
 あなた方が、混沌の滅びを払い去り、わたくしを叩き起こしに来るのです。行く手を失った滅びは、屹度、霧散し消え失せますでしょう」
「それまで、おやすみなさい、ってことかな?」
 アレクシアとスティアへとファルカウは頷いた。
 ただ、自らの掌を眺めて居た男はゆっくりと顔を上げる。
 身体は大丈夫かとフラーゴラが問えば、男はどこか戸惑ったように「大丈夫だよ」と微笑んだ。
「でも、これは……?」
「おかえりなさい」
 クレカは一歩、近付いた。『クレカ』と名を呼んだその人に涙が滲む。
 作られた命でも、生まれた意味が知りたかった。
 命の道を辿るように、辿り着いたこの場所は知らずに滅び行く定めだったのかもしれない。
 それでも、救えたのだから。
「お父様」
 クレカの唇が震えた。彼女の呼ぶ声に、そして、己の身の変化に『男』はゆっくりと立ち上がる。
「僕は、戻って来たのか……イルドゼギアではなくなって……?」
『魔王』イルドゼギアだった男は封印された。
 此処に居るのは、元魔王だった『魔法使い』と。

「初めまして、イルドゼギア……いいや、ロック――俺はアイオン。勇者アイオンだ」

 遠い異世界から遣ってきた英雄達に導かれ、勇者になった一人の青年だった。

成否

成功

MVP

天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に

状態異常

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)[重傷]
白銀の戦乙女
セララ(p3p000273)[重傷]
魔法騎士
ツリー・ロド(p3p000319)[重傷]
ロストプライド
郷田 貴道(p3p000401)[重傷]
竜拳
サンディ・カルタ(p3p000438)[重傷]
金庫破り
清水 洸汰(p3p000845)[重傷]
理想のにーちゃん
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)[重傷]
【星空の友達】/不完全な願望器
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)[重傷]
終わらない途
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)[重傷]
紅炎の勇者
天之空・ミーナ(p3p005003)[死亡]
貴女達の為に
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)[重傷]
鏡花の癒し
ソア(p3p007025)[重傷]
愛しき雷陣
カイト(p3p007128)[重傷]
雨夜の映し身
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)[重傷]
運命砕き
レイリー=シュタイン(p3p007270)[重傷]
ヴァイス☆ドラッヘ
回言 世界(p3p007315)[重傷]
狂言回し
雨紅(p3p008287)[重傷]
愛星
チェレンチィ(p3p008318)[重傷]
暗殺流儀
しにゃこ(p3p008456)[重傷]
可愛いもの好き

あとがき

 お疲れ様でした。
 MVPは生きて進む決意をしていた貴女へお送りします。

 プーレルジール、『境界』編でした。マナセも、アイオンも、イルドゼギア……いいえ、ロックも。
 皆さんの力に必ずなることでしょう。

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