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シナリオ詳細

ローレット・トレーニングVII<幻想>

完了

参加者 : 193 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●王者の挨拶
「イレギュラーズの諸君」
 『放蕩王』フォルデルマンが感極まって涙ぐんだ。
「直接会えた今日この日を祝いたい。ありがとう、本当にありがとう!!」
 声量も発音も耳に心地良く、絢爛たる衣装を完璧に着こなす様は高貴な生まれを証明している。
 だが軽い。
 徹底的に軽い。
「君達の活躍はいつも報告書で読んでいるとも。実は何度かこっそり見に行こうとして……」
 こほん。
 音量は小さいのに悲痛な思いの籠もった咳払いが響き、しかしフォルデルマンは全く気づかない。
「是非気軽に宮殿まで来てくれたまえ。私はいつでも歓迎をっ」
「陛下!!」
 流れるような黄金の髪がふわりと揺れる。
 蒼い瞳は歳に似合わぬ落ち着きと知性を感じさせ、『花の騎士』シャルロッテ・ド・レーヌが武のみの人物でないことを示している。
「ローレットの特異運命座標達も戸惑っています。レガド・イルシオンの王にふさわしい態度で接してあげてください」
 幻想近衛隊隊長シャルロッテ。
 腐敗と強欲と根性悪のいずれかまたは複数が当たり前の幻想貴族としては珍しく、善人で常識人であった。
「シャルロッテ、言葉が固いよ?」
 フォルデルマンが砕けすぎているだけだ。
「イレギュラーズの諸君なら気にしないよ。ねえ?」
 同意を求められても困るんだが……という視線に気づかないのが放蕩王が放蕩王である理由だ。
 シャルロッテを胃痛が襲う。
 幻想は良くも悪くも古い国だ。王の死を望むものから一時的な不調を望むものまで、膨大な数と種類の悪意が王個人に向けられている。
 それを鎮圧あるいは威圧して防ぐという近衛隊の役割は極めて重要かつ激務だ。シャルロッテの美容と胃と命は日々脅かされていた。
「陛下……へい、か……」
 蒼い瞳が虚ろになっていく。
 積もりに積もって極限まで圧縮された上にさらに積もったストレスが、ついに爆発しようとしていた。
「国王陛下。説明を代わってもよろしいでしょうか」
 『幻想大司教』イレーヌ・アルエが口を挟む。
 中央大教会の主にふさわしい風格のある装束。
 滴るような色気を持つ泣きぼくろの美女であるのに、それすら些事と思える水準の信仰心。
 そして、シャルロッテと同じくらい珍しい地に足がついた善人だった。
「ん? 構わないよ」
 フォルデルマンが気軽にうなずく。
 大国レガド・イルシオンの中でも有力な勢力の長に貸しを作った、などということは気付きもしない。
「ありがとうございます」
 イレーヌは目礼をして、まず最初に痛めつけられたシャルロッテの胃に治癒の術をかけた。
「始めまして、お久しぶりです」
 召喚されてから時間が経っていないイレギュラーズに挨拶し、キャリアが長い面々との再会を喜ぶ。
「世界存続の為に活動する皆さんに、中央大教会を代表してお礼申し上げます」
 深々と頭を下げる。
 シャルロッテが驚き、放蕩王は相変わらず分かっていない。
「この度行われるローレットトレーニングに、我々中央大教会は可能な限り協力させていただきます」
 シャルロッテへ目配せする。
 否応なく苦労人として生きる事を強いられているシャルロッテが、予め王から指示されているかのように大きくうなずく。
 なお、国王陛下は全く気づかず近くにいたイレギュラーズに依頼の話を強請っていた。

●トレーニング決行予定地
 あれって本当に国王? と問われた『黒猫の』ショウ(p3n000005)が大げさに肩をすくめた。
「この国の国王さ。見ての通りの……独特な人だ」
 ショウが直接的な表現を避けるほどの権力者であり、可能な限り穏やかな表現にしてもこうなる人物だ。
 フォルデルマンに目をつけられないよう息を潜めるショウやイレギュラーズの元に、イレーヌが厳重に封印された箱を運んで来た。
「この地図をご覧下さい」
 イレーヌと『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が2人がかりで取り出し広げた地図は、大きく緻密な王都の地図だ。
「おおー」
 特に何も考えていないフォルデルマンとは違い、王都住まいのイレギュラーズは地図のおかしな所に気付く。
 宮殿、有力貴族の屋敷、ギルド『ローレット』、そしてイレギュラーズの家があるはずの場所が空白なのだ。
「これがトレーニングに使って良い場所です」
 歴史情緒溢れる町並みから、郊外にある踏み固められた演習場、ピクニックに向いている庭園や野原までみっしりと記入されている。
「祈りや冥想をするのでしたら中央大教会を解放します。実戦形式の演習は教会内ではご遠慮ください」
 地図の空白については一切触れない。
 故意でなくても大貴族の面目を潰すと、ローレット対大貴族の抗争が始まりかねないのだ。
 多数の懸案を抱えるローレットも、幻想内の治安をなんとか維持して民衆を支えようとするイレーヌも、揉め事を回避するという一点では完全に合意していた。
「宮殿でトレーニングしてもいいんじゃないか?」
 最も面子が潰れてはいけない男が無茶を言う。
「陛下、お飲み物をお持ちしました」
 『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)がオレンジジュースにしか見えないものを手渡す。
 愛想が良いが目は冷めている。
「うむっ」
 フォルデルマンは気取った態度で受け取り渇いた喉を潤す。
 酒精に気づいたシャルロッテが何か言おうとして、止めた。
 シャルロッテは気持ちを切り替えイレギュラーズへ向き直る。
「ローレットトレーニングの開催日に、幻想の騎士の一部が休暇をとって自主トレーニングを行う予定です」
 イレギュラーズとたまたま同じ場所で訓練をするのだから、決闘でもないし勝敗が決まる戦いでもない、という建前だ。
「幻想の騎士の多くは皆さんのような多様な戦闘の経験を持っていません。全力で相手をすると騎士達参加者も喜ぶでしょう」
 自主訓練の騎士が欲しているのは、イレギュラーズ相手の勝利ではなく貴重な実戦経験だ。
 口から撃ち出す極太ビームで死なない程度に消し飛ばしても、容赦の無い業火や毒で倒しても、恨まれるどころか感謝されるらしい。
 半ば標的扱いすら許容するということだ。
「参加者は全員重装甲で、武器は剣と盾か重量武器です」
「武具や装備に紋章があるのに気づいても気づいていないふりをして欲しいのです」
 ユーリカが小声で補足する。
 身元を隠して依頼をこなせもするイレギュラーズとは違うのだ。
「装備は似通っていても得意分野は違います」
 花の騎士の説明は続く。
「剣技が得意な者も、防御や回避が得意な者もいます。現地で希望すれば希望する相手と戦えると思います」
 一騎打ちでも集団対集団でも構わない。
 自主訓練する騎士達は、強くなるための手がかりを渇望している。
「では皆さん、良いトレーニングを」
「宮殿で待っているよ!!」
 深々と頭を下げる大司教と、徹底して軽い放蕩王。
 シャルロッテとその部下達は胃の痛みに耐えながら、本来いるべき場所へ2人を護衛するのだった。

GMコメント

Re:versionです。三周年ありがとうございます!
今回は特別企画で各国に分かれてのイベントシナリオとなります。

●重要:『ローレット・トレーニングVIIは1本しか参加できません』
『ローレット・トレーニングVII<国家名>』は1本しか参加することが出来ません。
 参加後の移動も行うことが出来ませんので、参加シナリオ間違いなどにご注意下さい。

●成功度について
 難易度Easyの経験値・ゴールド獲得は保証されます。
 一定のルールの中で参加人数に応じて獲得経験値が増加します。
 それとは別に『ローレット・トレーニングVII』全シナリオ合計で700人を超えた場合、大成功します。(余録です)
 まかり間違って『ローレット・トレーニングVII』全シナリオ合計で1000人を超えた場合、更に何か起きます。(想定外です)
 万が一もっとすごかったらまた色々考えます。
 尚、プレイング素敵だった場合『全体に』別枠加算される場合があります。
 又、称号が付与される場合があります。

●プレイングについて
 下記ルールを守り、内容は基本的にお好きにどうぞ。
 
【ペア・グループ参加】
 どなたかとペアで参加する場合は相手の名前とIDを記載してください。できればフルネーム+IDがあるとマッチングがスムーズになります。
 『レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)』くらいまでなら読み取れますが、それ以上略されてしまうと最悪迷子になるのでご注意ください。
 三人以上のお楽しみの場合は(できればお名前もあって欲しいですが)【アランズブートキャンプ】みたいなグループ名でもOKとします。これも表記ゆれがあったりすると迷子になりかねないのでくれぐれもご注意くださいませ。

●注意
 このシナリオで行われるのはスポット的なリプレイ描写となります。
 通常のイベントシナリオのような描写密度は基本的にありません。
 また全員描写も原則行いません(本当に)
 代わりにリソース獲得効率を通常のイベントシナリオの三倍以上としています。

●GMより
 GMの馬車猪です。
 幻想でのローレットトレーニングを楽しんで下さい。

●任務達成条件
・訓練になる行動ならなんでもよし!
・ただし良識の範囲内でお願いします。

●訓練内容の例
 走る!
 戦う!
 遊ぶ!
 ヒャッハー!

●訓練場所の例
 広々とした演習場。超威力な攻撃をぶっ放しても怒られません。
 緑豊かな野原。  見物客がいたら、巻き込まないようしてあげてください。
 王都の大きな通り。ジョギングをしたら楽しそうですね。最も観客が集まり易い。
 自分のおうち。  黙々と筋トレをするのもいいですよね。
 解放された薔薇園。非戦闘スキルの訓練にも使えます。
 中央大教会。   騒ぐと怒られます。イレーヌが忙しくしています。
 宮殿。      一日説教(される)コースです。担当はシャルロッテ。精神鍛錬になるかも。フォルデルマンもいます。

  • ローレット・トレーニングVII<幻想>完了
  • GM名馬車猪
  • 種別イベント
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年08月17日 23時10分
  • 参加人数193/∞人
  • 相談8日
  • 参加費50RC

参加者 : 193 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(193人)

シェリー(p3p000008)
泡沫の夢
R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
朝倉 まいち(p3p000030)
アクア・サンシャイン(p3p000041)
トキシック・スパイクス
上杉 降(p3p000044)
孤独のトレジャーハンター
サンティール・リアン(p3p000050)
雲雀
エンヤス・ドゥルダーカ(p3p000069)
手を汚さずに手柄をたてよ!
ハイド・レイファール(p3p000089)
紫陽花の逢香
はぐるま姫(p3p000123)
儚き花の
透垣 政宗(p3p000156)
有色透明
フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)
海淵の騎士
エマ(p3p000257)
こそどろ
フニクリ=フニクラ(p3p000270)
歪んだ杓子定規
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
巡離 リンネ(p3p000412)
魂の牧童
シフト・シフター・シフティング(p3p000418)
白亜の抑圧
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
銀城 黒羽(p3p000505)
嶺渡・蘇芳(p3p000520)
お料理しましょ
シェンシー・ディファイス(p3p000556)
反骨の刃
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)
悦楽種
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
ノア・マクレシア(p3p000713)
墓場の黒兎
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
口笛・シャンゼリゼ(p3p000827)
エリーゼより、貴女へ
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
フアン・バウティスタ・オエステ(p3p000842)
Aguila
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
虹色
瑪瑙 葉月(p3p000995)
怠惰的慈愛少女
ヴィンス=マウ=マークス(p3p001058)
冒険者
フィオナ=バイエルン(p3p001239)
牛柄ガーディアン
ロイ・ベイロード(p3p001240)
蒼空の勇者
レナ・フォルトゥス(p3p001242)
森羅万象爆裂魔人
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
ギルバルド・ガイアグラン・アルスレイド(p3p001299)
重戦士
ダルタニア(p3p001301)
魔導神官戦士
ダーク=アイ(p3p001358)
おおめだま
パティ・ポップ(p3p001367)
ドブネズミ行進曲
豹藤 空牙(p3p001368)
忍豹
アト・サイン(p3p001394)
観光客
ライトブリンガー(p3p001586)
馬車馬
アレクサンダー・A・ライオンハート(p3p001627)
百獣王候補者
クィニー・ザルファー(p3p001779)
QZ
エリシル・ルクレツィア・クラッド(p3p001810)
異界の神の守護騎士志望
クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)
血吸い蜥蜴
カノープス(p3p001898)
黒鉄の意志
ワーブ・シートン(p3p001966)
とんでも田舎系灰色熊
ロビ・シートン(p3p001967)
狼王の末裔
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
カレン=エマ=コンスタンティナ(p3p001996)
妖艶なる半妖
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159)
傍らへ共に
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
カイル・フォン・フェイティス(p3p002251)
特異運命座標
セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
ラァト フランセーズ デュテ(p3p002308)
紅茶卿
ミレニア(p3p002579)
不明の白繭
鈴 美凰(p3p002715)
カシエ=カシオル=カシミエ(p3p002718)
薔薇の
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
リジア(p3p002864)
祈り
ダークネス クイーン(p3p002874)
悪の秘密結社『XXX』総統
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
Legend of Asgar
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
ミルフィーナ・シエル(p3p003570)
かわいいメイドさん
カシャ=ヤスオカ(p3p004243)
カイカと一緒
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
シレオ・ラウルス(p3p004281)
月下
シュリエ(p3p004298)
リグレットドール
エト・アステリズム(p3p004324)
想星紡ぎ
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
シラス(p3p004421)
超える者
無限乃 愛(p3p004443)
魔法少女インフィニティハートC
彼者誰(p3p004449)
決別せし過去
オカカ(p3p004593)
兎に角
アンジェリーナ・エフォール(p3p004636)
クールミント
辻岡 真(p3p004665)
旅慣れた
タツミ・サイトウ・フォルトナー(p3p004688)
TS [the Seeker]
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
ジェーリー・マリーシュ(p3p004737)
くらげの魔女
コール・コーラー・コーリング(p3p004841)
真紅の解離
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
ルシ(p3p004934)
穹の天使
アベリア・クォーツ・バルツァーレク(p3p004937)
願いの先
十鳥 菖蒲(p3p005069)
涙の婦警
ティリー=L=サザーランド(p3p005135)
大砲乙女
社守 虚之香(p3p005203)
たらい屋休業中
イリス・フォン・エーテルライト(p3p005207)
魔法少女魂
黒・白(p3p005407)
リズ(p3p005855)
凶運の黒猫
アデライード(p3p006153)
移動図書館司書
ガーベラ・キルロード(p3p006172)
noblesse oblige
スノウ・ドロップ(p3p006277)
嗤うしかばね
Melting・Emma・Love(p3p006309)
溶融する普遍的な愛
ルツ・フェルド・ツェルヴァン(p3p006358)
暗黒竜王
パーシャ・トラフキン(p3p006384)
召剣士
ムー・シュルフ(p3p006473)
味覚の探求者
No.9(p3p006484)
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
グリモー・アール(p3p006591)
This is a book
森谷 透(p3p006598)
霊媒師
道子 幽魅(p3p006660)
成長中
ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー
02(p3p006730)
diavolo
アネモネ・キルロード(p3p006806)
猟犬
サルビア・キルロード(p3p006808)
血濡れ
蟻巣虻 舞妃蓮(p3p006901)
お前のようなアリスがいるか
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
花に願いを
エルウィン・ロンド・ラースケス(p3p006912)
元聖騎士
プリス・ラトレイア(p3p006913)
サレリア・ハールフェルト(p3p006914)
観察者
ゴドフリート(p3p006949)
首無し騎士
シャラ・シュヴァイツァー(p3p006981)
深い緑の蒼
ルナリア(p3p006982)
白猫散歩
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
ティーナ=レイフィード(p3p007050)
The Third Eye
アオ(p3p007136)
忘却の彼方
城火 綾花(p3p007140)
Joker
水橋 風葉(p3p007160)
クレア・カドラ(p3p007165)
ミザリー・B・ツェールング(p3p007239)
本当はこわいおとぎ話
メリエッタ(p3p007272)
光輝なる者
ファレル(p3p007300)
修行中
ナデシコ・キルロード(p3p007335)
影が薄い
ユメ(p3p007344)
箱庭の魔女
陰陽丸(p3p007356)
じゃいあんとねこ
フリウ・F・リースアール(p3p007367)
戦火の花
ナディア・ランベアト(p3p007383)
淑女
クリスティアン・メルヴィル(p3p007388)
Star Lancer
ビジュ(p3p007497)
汚れた手
ウィリアム・ウォーラム(p3p007502)
軍医
マナ・板野・ナイチチガール(p3p007516)
まな板最強説
運び屋(p3p007591)
ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
懐中時計は動き出す
ロべリア・ハンニバル(p3p007793)
悪意の華
シム=リエス(p3p007802)
パッチワーカー
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
アリューズ・エリスブラッド(p3p007895)
自称・勇者
シェリオ・アデラ(p3p007986)
癒やしの魔法人形
ノックス・ラクテウス・オルビス(p3p007987)
究極のヒモ
虚栄 心(p3p007991)
伝 説 の 特 異 運 命 座 標
エレン(p3p008059)
豊穣神(馬)
奏多 リーフェ 星宮(p3p008061)
お嬢様の恋人
ヘーゼル・ナッツ・チョコレート(p3p008080)
指し手
シルヴェストル=ロラン(p3p008123)
デイウォーカー
ルリム・スカリー・キルナイト(p3p008142)
勇気のチャロアイト
歩峰 透夜(p3p008147)
うたたね
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
月虹(p3p008214)
悲無量心
ミシェリア・レーヴェル(p3p008271)
雨紅(p3p008287)
愛星
月待 真那(p3p008312)
はらぺこフレンズ
スリーピー=スロウ=グロウ(p3p008314)
寝てたら育った
シュテム=ナイツ(p3p008343)
久遠の孤月
碧紗(p3p008350)
物理型お嬢様
テルル・ウェイレット(p3p008374)
料理人
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
フォークロワ=バロン(p3p008405)
嘘に誠に
天空寺 吹雪(p3p008449)
心はヒーロー
アドラ・ドール・シュタイフ(p3p008450)
名も無きドール
一之瀬・ユキ(p3p008461)
教会に馴染んだ
トニトルス(p3p008489)
雷竜再臨
秋野 雪見(p3p008507)
エンターテイナー
暁 橙史郎(p3p008531)
新たな可能性
遊動 サキ(p3p008535)
導きの光
浅蔵 竜真(p3p008541)
ヴァージニア・エメリー・イースデイル(p3p008559)
魔術令嬢
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
鷹崎 マルガレーテ(p3p008619)
縞パンこそ至高
アシェン・ディチェット(p3p008621)
玩具の輪舞
モニカ(p3p008641)
太陽石
イミナ(p3p008692)
ただの
玄緯・玄丁(p3p008717)
蔵人
久泉 清鷹(p3p008726)
新たな可能性
黒野 鶫(p3p008734)
希望の星
ランデルブルク・クルーガー(p3p008748)
遍歴の
桜衣・巴依(p3p008751)
日々精進
日向寺 三毒(p3p008777)
まなうらの黄
海紅玉 彼方(p3p008804)
扇動者たらん
ノルン・アレスト(p3p008817)
願い護る小さな盾
フォーミュラ=マーリーン(p3p008818)
紐の緩い財布
そよ(p3p008826)
巨腕の雨鬼
エミール・エオス・极光(p3p008843)
脱ニートは蕎麦から
ライ・ガネット(p3p008854)
カーバンクル(元人間)
ウォールマン(p3p008909)
クライン=クレイル(p3p008918)
特異運命座標

リプレイ

●挑戦者のBAR
 何十年も営業しているかのように、王都の裏通りに馴染んでいた。
「いらっしゃいませ」
 内装は質素。
 しかし全てが調和していて不快感がなく、テーブルの上はもちろん床の隅々まで掃除が行き届いている。
 心地良い時を過ごすための場所と五感で理解出来る空間だ。
 ドアが開て小さな鈴が鳴り、静謐な気配が艶のあるバーのそれに切り替わった。
「やあ。久しぶり、マスター。今日は何かオススメはあるかな?」
 真がカウンター席につく。
 馴れた態度でやりとりを楽しみ、穏やかに微笑み注文を出した。
「……これは訓練なのだろうか」
 転星術師のクリスティアンが、ノンアルコールのカクテルとつまみを頼んで寛いでいる。
「バーでの礼儀作法や料理を舌で学ぶ場でもありますメェ……」
 羊獣種のムーが特徴的な語尾であるのに全く違和感のない雰囲気で料理を仕上げた。
 ウェイターとして完璧過ぎてバトラーにしか見えない彼者誰が、不快感の無い程度の微音をわざと立ててテーブルに届けた。
 ただ並べるだけの動作が、衛生、礼法、その他全ての面で理に適っている。
 クリスティアンは納得して美しいグラスに口をつけた。
 雰囲気の良さに気づいた客が集まり、その中でイレギュラーズは目立っている。
「カクテルはお任せで、甘いのがいいわね!」
 程よく塩辛い、それでいてお洒落な肴も出てきて雪見はにっこにこだ。
「おねーさんどうしたにゃ? 飲むにゃ」
「そうね。私をイメージした一杯をくれる?」
 元婦警で今も心は婦警な菖蒲が、据わった目つきで注文をする。
 出されたのはほろ苦く、けれど芯の通った甘さのあるカクテルだった。
「ふふっ、メニューぜんぶ制覇しちゃうからね!」
 ソアが大皿を瞬く間に空にしたところでマナーを思い出し、白いナプキンで口元を拭いて得意げな顔をした。
「すまねェ、何か飲み物をもらえると……いや、酒は飲まねェからそれ以外で、適当に摘めるモンも一緒に頼む」
 フードを目深に被った三毒も、このバーは柔らかく受け止める。
 隅の方に座っても疎外感はなかった。
「音も良い」
 ゼノポルタの清鷹は舌と目でだけでなく耳でも味わう。
 別大陸のそれらは目新しいが、決して不快ではなかった。
 テルルの手により柑橘類が絞りたてのジュースに変わる。
 ムーの味と飾り付けを目で盗みながら、テルルは食欲旺盛な若者客に応えるため仕事を加速させる。
「のんあるこーる? かくてる?」
 アドラが恐る恐るオレンジ色のカクテルに唇で触れ、軽く目を見開いた。
 とても複雑な薫り味がして、大人の世界が見えた気がした。
「……ごちそうさまです、素敵な時間を過ごせました」
 最近再起動したばかりの秘宝種の雨紅が、専門家による全力の持ち主を堪能して満足した。
 心なしか、コアである紅玉も艶やかだ。
 楽しい時間もいつかは過ぎ、夕日の頃に今日だけのバーは店仕舞いを向かえる。
「ふふ、たまにはこういうのも悪くは無いね」
 ノックスが隣の店の店員と挨拶を交わし、店の前も綺麗に掃除する。
 客としてして訪れたイレギュラーズは去っても、バーは変わらずバーのままだった。

●おんせん
 その湯が温泉かどうか、今日初めて訪れた客には分からない。
 ただ1つ確かなのは、とても大きな湯船に熱々のお湯がたっぷりあるということだ。
「お客さんあんまり来ないね」
 湯処「たらい屋」を一般公開した虚之香は、言葉の割りには気にした様子はない。
 体に染みこむ熱を楽しむのに忙しいし、ここ女湯はともかく男湯は盛況だからだ。
「早速入りに来たぜ! ちゃんとルールとマナーを守って男湯に入ったらァ!」
 リザードマンのクラインが、お風呂マナーの教本に載せたくなる流れで体を清潔にして湯に入る。
「打たせ湯……ちょっくら打たれてみようじゃんな?」
「うわぁっ!?」
 客が驚き転倒しかけ、そっと伸ばされた大きな手で支えられた。
「危ないですよぅ」
 熊である。
 すっかり良い気分の灰色熊ワーブが、お忍びの貴族っぽい少年を椅子に座らせ湯に戻した。
「攻撃の修行! ふー、いい汗かいたー」
 角兎型オカカが、自前の角で打たせ湯を弾いて湯を飛ばす。
 子供達が遊んでいいんだ! と感じてオカカ相手に水を飛ばし始めた。
「遊ぶな。クマも迷惑がってるだろ」
 精悍な狼であるロビがぎろりと睨むと、子供達は涙目になり大人しくなる。
 ロビは、子供に気づかれないようワーブにフォローを頼んでいた。
「んー、一汗かいた後の風呂は気持ちいいなぁ……露天風呂っていうのがまた気持ちよさを増幅させる気がするぜ」
 タツミが女湯で空を見上げる。
 火照った頬に風が気持ちよかった。

●トレーニング様々
 体を鍛えるのだけが訓練ではない。
「さあ、娘さん。何処から攻める?」
 幻想地図の上でポーンを動かし、ヘーゼルが膝の上のアッシュに語りかける。
「……わたしは軍略の才が無いようです」
 王都のキングを逃がす場所がない。
 アッシュがしょんぼり肩を落とすと、アッシュの膝の上の猫がにゃあと鳴いた。
 大通りから悲鳴混じりの歓声が響く。
 黒装束を着込んだ黒・白から、おどろおどろしい半透明の手が無数に伸びる。
「ハッハー! 今です、総統ッ!」
 アリュズが子供達を……ご近所から集まった観客達を背に庇う。
 臨場感溢れるヒーローショーに子供だけでなく保護者達も大盛り上がりだ。
「無様な。とどめを刺してやろう、クイーンズダークネス!!」
 ダークネスは通常戦闘なら牽制の術を必殺技として使う。
 客にはばれないよう派手に吹っ飛ぶアリューズも、演技に全力である。
「良い子のみんなー! マジカル☆ステッキを振って、ヒーロー達を応援してあげてー!!」
 自称サキュバスのモニカが、観客が感じる恐怖を抑えて興奮を盛り上げる。
 この種の娯楽に慣れていない親子からの精気は新鮮で、背中の黒い羽もぱたぱた上機嫌だ。
「がんばえ~~~~!!」
「悪を挫き正義を助く愛の極光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!」
 追加戦士は熱く輝くピンクの魔法少女(22)だ。
 愛の極太ビームが悪の一党を襲う。
「馬鹿な、こんな威力、出来るはずがっ」
 強者の態度と三下の態度を見事に両立させながら、悪の戦闘員役の橙史郎が後ろへ跳んで大道具の影に隠れる。
 ビームが派手なので消し飛んだように見えた。
「みんなの声が……俺に力をくれるッ! くらえーッ!」
「これで勝ったと思うなよ!」
 アリューズの前にダークネスが倒れ、盛況のうちに午前の2回目公演が終わった。
「何者だっ」
 広大な演習場で、なんだか嬉しげに誰何する騎士がいる。
 面子を考えず戦える機会は宝石のように貴重なのだ。
「ぬおっ」
 死角から不意打ちを受け、全力で踏ん張ってなんとか倒れるのを防ぐ。
 兜で視界が制限されているので、猫科獣人族のウォーカーである空牙を捕捉できない。
「ぬわーっ!?」
 重装甲騎士を助けようとした同僚が浅い穴に足を取られて足首を捻る。
「どんなもんでチュ」
 盗賊パティ・ポップは、勇者の一党に相応しい技術を見せ付けていた。
「しっかり耐えな。ファイアボール!!」
 レナは容赦がない。
 爆風でまとまったダメージを、炎で継続的なダメージを与えて騎士の集団を苛む。
「がっはっはっはぁっ!! やはり、戦闘は血がみなぎるのじゃあっ!!」
 何故か味方の攻撃に巻き込まれた重装甲ドワーフギルバルドが突入して騎士に立て直しをさせない。
「改めて名乗ろう。俺が、ロイだ」
 混沌肯定『レベル1』の影響を受けてもなお勇者であるロイが、改めて開戦を宣言して堂々と斬りかかった。
「ヒヒーン!!」
 大型馬車を引いて、勇者の一党である馬車馬ライトブリンガーが突貫する。
 彼による被害が、一番大きかった。
「オーバーキルしても死なないとは、皆さん頑丈だ」
 ダルタニアの癒やしの業が、前のめりに倒れた騎士達に降り注いだ。
「もうローレットトレーニングの時期なのね、早いものだわ。ルシは私離れはしないの?」
 ロリババア海種のジェーリーが優しく微笑むと、騎士でも音を上げる苛酷なメニューをさらりとこなした天使の末裔ルシが柔らかく受け止める。
「はいはいお婆ちゃん、君はなかなかに頑なだね。これからも共にあるからね?」
 美男と美少女カップルにしか見えなかった。
「先の『蠍』やシルク・ド・マントゥールのように、何時か再びレガド・イルシオンが戦禍に見舞われる時、国を民を守るは皆様騎士の力あればこそ。その時の為に備えましょう」
 単独のリースリットに手も足も出ず、新人といえ一通りの訓練が修了した男達が押されて、負けた。
「大勢で同じ相手を狙え、それでいて一所に人数が固まらないように。それじゃあ実演いってみようか、かかってきなよ」
 シラスは懇切丁寧に実戦的アドバイスを与えた上で容赦なく勝つ。
「足りないものをこの場で身につけろ。さあ、これはどう対処する」
 竜真は恐るべき斬撃を、ぎりぎり対処可能な程度に狙いを外して新兵に繰り出す。
 直前の2人と比べればまだ戦いが成り立っていた。
 休憩時間はリアによる戦闘経験の教授だ。
「じゃあ、ひとりずつ、かかってこい。あたしはリースリットの様に優しく無いから、覚悟をしてもらいます」
 鬼教官より上があることに、体に刻み込まれた。
「ぬわーっ!? 只でさえ非力だった力がっ」
 豊穣から来た新人神使の鶫が新人に混じって揉まれている。
 明日、凄まじい筋肉痛と共に、力量が新人の域を超えたことに気付くかもしれない。
「ほら、ちゃんと頑張りなさいな。今頑張らないと後悔するのは貴方たちでしてよ?」
 優雅に甘い果実を味わうコルクは、目で見ることで力の使い方を身につけていっていた。
 木製バットが硬球の芯を捉える音が高らかに響いた。
「走れ走れ! 近衛の根性見せろー!」
 打った本人の洸汰が大声で煽る。
 武具から運動着に着替えた強者達が、本気で野球に取り組み洸汰達の技術に対抗している。
「こうとるんだよっ、と」
 速度は負けていたが、どこに落ちるか予測するのもミットで受け取るのも透の方が速かった。
「そら返球!」
 混沌に来る前のことを思い出し、口元が緩んでいた。
「カイカ飛びついちゃ駄目だよ。あっあっカイカ、持っていっちゃ駄目……!」
 なお、最後に球を支配していたのは、カシャがいつも引き連れている、球を見てテンション上がった犬であった。
 短くも激しい戦いが、野球と同じくらいに衆目を引きつける。
「お疲れ様、とっても楽しかったし……いい汗、かいた」
 うさみみフードを深くかぶり直したノアが、直射日光に当たらないよう気を付けて持って来た菓子を取り出す。
「2人とも戦えたんだな!」
 豪快な節穴っぷりを披露するランドウェラだが、ほとんどの特殊攻撃を無効化する頑丈さは見物していた騎士達を驚かせている。
 葉月は置いて行かれた気がして少し落ち込み、けれどすぐに奮起する」
「私もちょっと依頼参加してみなきゃかなぁ……そのときは付き合ってくれる?」
 にこりと、返事が返ってきた。
「ッ! 私は恋人とは言え、何てはしたない事を…って、奏多様!?」
 組み手直後で息が乱れたガーベラが離れようとして、華奢な奏多が優しく包み込んだ。
 宝玉のように己を包む黒翼を感じ、ガーベラは直前までとは別の意味で顔を赤くする。
「僕の自慢の恋人だよ、強くて優しくてとっても素敵だ」
 そんな強者同士の恋愛関係を、複数の小姑を目撃した。
「ま、まさか! あの恋愛に関して堅物でそれで夢見がち乙女みたいだったガーベラ姉に恋人が出来ただって!?」」
「ガーベラお姉ちゃんに恋人が出来たって聞いたから様子を見に来たけど……本当に居たんだね、恋人」
 次女のアネモネが詐欺ではないかと疑心暗鬼になり、四女のナデシコが純粋に驚いている。
「嗚呼、ついに恋愛をする事が出来たのですね、ガーベラ姉上」
 三女のサルビアは純粋に喜び、その程度が激しすぎて鼻血を出している。
「あっ、お嬢様方、あの恋人の方の情報買いますか? へっへっへ、今ならこのくらいのお値段で……」
 サルビアが小切手を出す前に、マナが隠し撮り写真を取り上げた。
「ったく、おめでとう、お嬢。ようやく初恋の呪縛から逃げ出せて……」
「クッ……! 確かにガーベラお姉様より強いのは認めますわ。しかし! 強さだけでガーベラお姉様に相応しいなんて思わない事ね!」
 お姉様に免じて今日は直接文句をつけないであげますわという態度のルリムに、ガーベラが真っ赤な顔で近づいて来る。
「あなた達ーっ!」
 最初から、全てばれていた。
 同時刻。ローレットでユリーカが猫の群れに埋まっていた。
「うちの「おにーさん」がいつもお世話になってる、ます。これはお礼。」
 大量の猫に埋まるという状況をプレゼントしたのはアオ。
「猫なんて乗せても喜ばないだろうさ! ここは、アタシの愛すべきガラクタを乗せてあげようじゃあないか!」
 朽ちた羽根に影の蝶。ユメが呼び出した目を楽しませる軽いアイテムは、猫達を喜ばせてもぞもぞする。
「羽に潜るなです」
「怒られちゃった。……ううん、怒っていないの?」
 フリウがこてんと小首を傾げる。
 情報屋ユリーカは何かを考え込んでいる。
「宮殿、何人か行っちゃったのです」
 イレギュラーズは信頼している。
 問題は、王様だった。

●宮殿
「偉大なる幻想王、フォルデルマン陛下に於おかれましては、ご機嫌麗しゅう」
(まだ勝てないか)
 恭しい態度のまま近衛隊隊長と気配でやりあい、エクスマリアは軽く息を吐いた。
「王様、この度はお招き頂きまして……ありがとうございます」
 ナディアの金の髪が揺れる。
 形式も内心も礼儀正しいのはこの2人くらいだった。
「何も盗みを働いたりは致しませんよ、えひひひ……」
 シャルロッテの胃壁が磨り減る。
 高度な隠密技能を持つエマが、わざとらしく近づいてきたからだ。
「なんだよねーちゃん、睨むなよ。オレは依頼でしかしねぇぜ? アッハイごめんなさい黙ります」
 悪名轟くことほぎを目にした瞬間、シャルロッテの気力と胃壁の厚みが一気に減った気がした。
「へいかー! トランプ持ってきたからポーカーしようぜにゃ! 負け方は一枚ずつ脱いで……あっ」
 花の騎士に気付いたシュリエが冗談だよという顔で誤魔化そうとした。
「陛下と遊……頭脳訓練」
「シャルロッテさんもどう? こういうのって2人より3人のほうが面白いもの」
 碩学のアデライードが大真面目に提案し、除草剤の専門家であるアクアが悪意なく言う。
 専門家と親しくするのは悪くないので、強く止めることも出来ない。
 問題は、玉座に座ったまま一局楽しもうとするフォルデルマンである。
「親しみがあっていい王様じゃないか」
 からかうように言う美凰だが貶める意図は無い。
「そうですね、私はこの世界に来てまだ浅いのですがそれでも様々な冒険をしてきました。例えばですね……」
 王に問われて冒険談を語ろうとしたフォークロワが、これ以上王を刺激するなという気配に気付いて花の騎士の視界から消えた。
「何かおかしなところでも? 王家の白兎そっくりの誂えに何か問題が?」
 露出過多なバニーもとい舞妃蓮が、近衛騎士達によってローレットまで連行される。
「まあ今では立派に迷宮を踏破する『観光客(ローグ)』をやってるってもんです」
「観光、の意味が違うのかな?」
 アトのことを覚えていた国王は、打つ手をミスして最下位に転落した。
「陛下」
 もう一局と国王が言った時点で説教部屋行きが決まった。
 説教部屋とは王の執務室でもある。
「今回も来たか……だが……いや」
 黒羽が正座する。
 感情を封印しているので修行にはちょっと向いていないかもしれない。
「私今日お金賭けてないのに……なんで説教受けてるんだろう」
 バニースーツ姿が板についている綾花は、巻きこまれただけだ。
「そうだね」
 紅茶の香りを漂わせるラァトに、近衛騎士から疲れた視線が向けられる。
 精霊や妖精の価値観で行動されると、人間は困るのだ。
「何故天使である俺が見ず知らずの人間の女に説教されなければならないんだ。そうカリカリするな、皺が増えるぞ」
 逃げようとしないStarsは義理堅いのかもしれない。もっとも花の騎士への精神的ダメージは最大値だが。
「いかがしたかなマドモワゼ~ル、折角の美しい顔が台無しであ~る」
 真面目な顔してパンチラを狙う自我を持った魔導書グリモーに、目にもとまらぬデコピンが直撃した。
(何故ボクは正座させられているんだろう。耐えることによって精神の鍛錬になるんだろうけど、いつ終わるんだろう)
 巻き込まれたミシェリアだけは、真面目な顔で真摯な説教を聞いていた。
 白茶ぶちの毛皮を着た小さな猫が、シフティングの頭上でにゃあと鳴いた。
 正座していても元が大きいので、猫とシャルロッテの目と目が合う。
「休息を推奨。あなたは色が薄まり過ぎています。それでは見える色彩も濁り、霞んでしまいます」
 シフティング以上にメカメカしいコールが休息を勧めている。
「大変でしょー、その若さで隊長ってー。あ、毒味とか大丈夫?」
 蘇芳がお茶と飲み物を運んで来て、国王が最初に受け取りにいったのを花の騎士が制止する。
 温度も味も胃腸に優しいのに気付き、涙ぐんでしまった。
「おーめー(王命)にしたがってきたよ。王様って大変だよね……だって、すごい数と音の悪意が向けられてるよ」
 蘇芳に続いてやって来たコゼットの発言と視線に、近衛隊が微かに動揺する。
 音も無く、それまで気付いていなかった曲者を追う。
「陛下が私たちに謙れとまでは言わないけれど、せめて対等に接するのは当然ではないかしら?」
「間違ってはいませんが時と場合をっ」
 虚栄 心の言葉で、胃が限界を迎えた。

●祈り
 幻想の信仰の拠点。中央大教会。
「あー、こらこら。騒いじゃ駄目だよ、静かにしてねー」
 ユキのようなイレギュラーズだけなら、心労で倒れる者もいなかったはずだ。
「ォ……どうぞ、私ごときで宜しければ、告解室でのお手伝いを致しましょう」
 信徒が目視すればパニック確実なビジュもいた。
(私は破壊しか行えない天使だが、どうか。万物その祈りが届きますよう)
 リジアの祈る様は場に似合う。用もないのに聖職者まで集まっていた。
 月虹は祈りを通して己の業と向き合う。
 暇などないはずのイレーヌが見守っていた。
「お邪魔している。この度はご協力に感謝する」
 旅人であり竜人族でもあるエリシルが祈りを終え立ち上がる。
 中央大教会は、イレギュラーズに対して開かれていた。
 緑の園にイレギュラーズが集まっている。
 的に矢が突き刺さった直後、マスケットの弾で粉砕された。
「まだまだですわ」
 訓練だからこそ、フォーミュラは弾詰まりするまで連射するつもりだ。
「若いのに真面目だねえ。っと、騎士さんもいたか、一丁やってくかい?」
 遍歴の身であるランデルブルクと現役騎士が、正々堂々訓練を始めた。
 フリスビーを宙で受け止め抱えて駆け戻ってきた真那を、ティアが優しく出迎える。
「ん、よく取れたね、えらいえらい」
 ティアが頭を撫で、真那が嬉しげに目を細める。
「もう1回、行こう」
 真那は文字通り尻尾を振って飛び出すのだった。
「ポー、生き生きしているね!」
 細身の男女が激しく絡み合う。
 性的な要素がないのが余計に雰囲気を盛り上げる。
「ここだ!!」
 ノースポールが見事に足払いを決めたと同時に、ルチアーノが倒れるのに巻き込み2人同時に緑の中で受け身をとった。
「うん休憩しよう、よく頑張ったね」
 乱れた息で、優しく手を握り微笑んだ。
「警戒を怠るな。訓練で悪い癖をつけると戦場で不覚をとるぞ」
「はい師匠」
 シューヴェルトに指導を受けている彼方が、緊張を隠せない顔でシューヴェルトの背後でライフルを構える。
「では」
「来られよ」
 4人からなる騎士隊が、殺意がないのに足がすくむほどの戦意をぶつけてくる。
 シューヴェルトが剣と銃で4人を抑えるのに勇気づけられ、彼方は必死に後衛の勤めを果たした。
「来ないの?」
「オスライオンは狩りが下手だと言われれいるが」
 ライオンのウォーカーであるアレクサンダーが、猫好き……超猫好きの女騎士達と向かい合う。
「やるしかないのじゃ」
 なかなかの、強敵であった。
「皆様、塩と砂糖と檸檬はこちらです」
 アンジェリーナが適温の水だけでなく、軽食をはじめとする必要な物資を揃えている。
 激しい訓練で疲れた体にとっての最高の美味だ。
「有り難い」
「わっ、美味しいっ!?」
 イレギュラーズだけでなく、騎士達からも非常に好評だった。

●薔薇園
 茶会を過不足なく整えた上で、ギフトの影響で浮いている幽魅のためアレンジする。
 善と悪を敷く天鍵の女王の仕事は今回も完璧だった。
「レジーナさん……ありがとう……」
 今日の幽魅は、慌てず礼儀正しく礼を言うことが出来た。
「ではお茶菓子でも摘まみながら頂きましょうか」
 楽しい時間は始まったばかりだ。
「さすが幻想ね」
 ジルーシャは管理人の許可をとり、複数の薔薇を摘み匂いを確かめる。
「使いこなすせるかと言ってるみたい」
 香術の口上のため、地道に研鑽を積んでいた。
「……あら、あら、もしかしなくっても……作りすぎちゃったかしら?」
 実物に刺激され、カシエの編み物は豪勢かつ大量に薔薇園の一角を彩っている。
「駄目?」
 清楚なはぐるま姫が上目遣いをすると、精神的な攻撃力は特上だ。
「本心を隠しきれていないかもね。はいどうぞ」
 透夜の侍女としての仕事は完璧に限りなく近い。
 ホットサンドとクッキーをお茶とともに出された姫は、上機嫌に味わっていた。
「文化だな」
 クリムは席にはつかず広々とした庭園を歩いている。
「偶には花でも愛でながらのんびり過ごすのも悪くないだろう」
 そんな彼女の前を、猫を追うディチェットが横切った。
「なるほど」
 倒れもしないしぶつかりもしない。
 クリムは静かに見守っている。
「あら、幼い子を驚かしては駄目よ」
 白猫状態のルナリアが小さな野良猫を保護をして、ディチェットと一緒に食事が用意された席へ向かっていった。
「何か面白い物を見た事ある? ……へえ、そうなの! ふふふっ!」
 薔薇を相手に政宗が笑っている。
 通りかかった警備の兵が微笑ましく見守っているが、彼……彼なのだ、ともかく政宗が薔薇から聞いている情報を知れば、拘禁に動いたかもしれない。
 幻想王の面白エピソード、即ち幻想から見て国の恥部は、こんな所にも転がっていた。

●それぞれの家で
「動かないでなまっちゃいけませんからね……!」
「ころでその、利香? せめて天衣無縫を一切使わないと約束していただけるなrにゃああああああああ!?」
 幻想王都の宿『雨宿り』の前で、利香が容赦なくクーアの弱点をついた。
 気心の知れた者同士のじゃれあいである。
「次は走り込んで機動力を維持しましょうね♪」
 王都の地元民もそれぞれに訓練している。
「案外悪くないものだな」
 しっかりした壁の上を風葉が走っている。
 英才教育と実戦経験に体術が磨かれ、壁に対する負担はほぼない。
「えっ」
 そんな風葉が少し動揺した。
「変身!」
 自意識は魔法少女である吹雪が爆発的に加速する。
 スキルを使っていないのに『レベル1』の影響を受けたばかりの体にはまだきつい。
 それでも、主人公格に相応しい華やかさがあった。
「なるほど」
 イリスが壁から頭を出して観察している。
 吹雪はどちらかというとヒーローだが、魔法少女に通じるものを感じた。
「今日も魔法少女魂だ」
 友(非魔法少女でしかも健在)の名をつけた魔法少女剣を抱え、射撃訓練のため郊外へ向かった。
「いつまでも依頼の事を引きずって、沈んでなんていられない」
 シャルティエは後悔を抱えたまま力を込めて前へと進む。
 耳を塞いでも聞こえる悲鳴に耐え、必死に進み続けるのだった。
「無料で見ないでほしいのですぅ」
 男どもからの視線を感じ、元々速くは無かったミルフィーナがさらに遅くなる。
 スカート短めメイド服は、彼女の魅力を表現しすぎていた。
「お洒落な通りだねー」
 ハーモニアのエミールがだらだら走る。
 素材は良くても服装は雑というかニートっぽくて、視線を遮られた男どもが舌打ちした。
「お先にっ。他の国では泳いだり滑ったりすのかな?」
 アイリスの速さと早さは圧倒的で、不用意にイレギュラーズに近づいた不埒者を混乱させた。
「おれ達は見世物ではないぞ」
 シェンシーはストイックニア走り続けて自身を追い込む。
 危険の少ない訓練だからこそ、己の限界を確かめることが出来るのだ。
「トレーニングつっても、日頃からやってることは変わらないっスね」
 人の流れがある通りであるのに、葵はドリブル中のボールを自身と道以外に触れさせない。
 いつも、高度な訓練をしていた。
「ほほう!」
 白髪と金髪で天然メッシュ縞々で作画カロリーが高そうなマルガレーテが、駄目眼鏡をきらんと光らせる。
「縞パンの映えそうな方々ですわね!」
 イレギュラーズ以外も、彼女の内部で縞パン姿にされている。
「これを頂ける?」
 碧紗はランニングではなく散歩中だ。
 普段着に近くても生まれは隠せず、富裕層向けの店からも軽食を買って、味と景色を楽しむ。
「同時点火! よっしゃぁぶっ飛べー!!」
 ハッピーが地上ではなく大空へ飛び立つ。
 遠くの地面で、派手な術が解き放たれているのが見えた。
 未だ高い太陽、ぎらつく陽射し。
 かすかなざわめきが聞こえる家の窓が開く。
「このような中で午睡というのもまた乙なものです。休養もまた訓練のうちでしょう、いかがでしょうか?」
 ヴィクトールの言葉は真実だ。
 ただ生きているだけも膨大な情報に触れることになりヴィクトールの成長繋がる。
「成る程、休養も――何とも便宜的な手段、且つぼくらにはお似合いだ。言い得て妙です、考えましたね、ヴィクトールさま?」
 未散とヴィクトールは、しばしの休息を楽しんでいた。
「自由にしていいならそうさせてもらおう。迷惑はかけるまい」
 そんなことを言う小さな怪生物を抱え、スリーピーは王都の午後を楽しむ。
「ねぇねぇそこな道行く兵士さん、お話聞いてくれないかい?」
 酒を使って背徳の気配を漂わせる兵士を丸め込むのがフニクリ。
「すごいのですっ」
 外見を活かして地元密着の噂話やおとぎ話を集めているのが四音だ。
 情報収集と交渉の、空連になっていた。
「あー、宛先はまたギルオス・ホリスか……」
 届け物の途中のウィリアムが足を止める。
「嬢ちゃん、何かいいことあったのかい?」
 言動は不審者風だが目は真剣だ。
 上機嫌だったシャラがはっとして、スケッチを抱え直して周囲に気を配る。
 何人かの人攫いが、舌打ちして彼女から離れていった。
「羨ましい……甘酸っぱさも羨ましい……」
 嫉妬リスト作成中の華蓮が、一般人を怯えさせるほどの気配を放っている。
「書いたか。それをどうすれば良いって? その内容が羨ましいのだろう? そのリストが君の欲しい物なのだろう?」
 シャルロッテが華蓮の心を解読、解説する。
「だったら今からは、そのリストの物を一つ一つ手に入れる努力をしたまえ」
 手に入るかどうかは、華蓮次第だ。
「女心……乙女心か」
 ルツはシャルロッテを通して、自身に思いを寄せる女性を見ている。
「いかんな。トレーニング……いや、まずは学ばねばならぬか」
 本人は真剣でも、色んな人間から嫉妬されそうだった。
「封印指定書があるエリアは無理か」
 休憩のため王宮図書館から出て来たトニトルスは、ドラゴンを思わせる顔に落胆を滲ませる。
 去って行く大きな背中を、セティアが窓から眺めている。
「なつ絶対あついし、ふつうに過酷すぎて無理だから」
 窓を閉じて空調を強め、出前を取った脂っこいものをぱくりと一口。
「わたしいつもすぐねれるから、とくいなとこのばすさいきょうのくんれんておもう、たぶん」
 寝息は、幸せそうだった。

●騎士との戦い
「お互い多少の手傷は仕方ないとしようじゃぁないか」
「男心を弄んで楽しいかぁっ!」
 見た目は美少女のヴィンスに、最悪の形で恋破れた騎士が戦いを挑む。
 実戦を意識した訓練なので、ヴィンスは正面からは打ち合わず足で距離と時間を稼ぐ。
「回避に集中しろ。死にはせんが訓練にならんぞ」
 R.R.の攻撃は、この場にいる騎士の多くにとっては初めて見る超威力だ。
 標的扱いの訓練はまだなのに、固定式の標的の如く騎士が次々打ち倒されていく。
「幻想の軍を見れるなんてねー」
 リンネはうきうきしながら騎士達の動きを見て、膨大な情報を読み取っている。
 技、陣形、訓練方針から戦闘教義まで、美味しい情報が多すぎた。
「神威神楽から此方に初めて来てみましたが随分自由な国王様でしたね……。」
 ゼノポルタの巴依のつぶやきを聞いて、多くの騎士達が表情を消した。
 休暇中とはいえ立場上言えないこともある。
「幻想の騎士の方がどんな感じか、お手合わせを」
「承ろう」
 熟練の騎士が、技を一切隠さず巴依に相対した。
「歴戦の先輩方に混じっての実践訓練なんてとてもとても。だから、基本的には騎士達の行なっている自主トレーニングを眺めて……」
 ヴェルグリーズが徐々に真顔になっていく。
 さぼる口実のはずだったのに、見ているだけで戦闘力向上に繋がる戦闘が目の前で行われていた。
「余が幻想貴族にして特異運命座標、その名も高きエンヤス・ドゥルダーカである!」
 誰あんた、という視線を受けてもエンヤスはへこたれない。
「歩行なんて飾りなんです。偉い人にはそれがわからんのですよ」
 重すぎる鎧を来て転げてしまったまま術を使う樹里も、死角から攻めて良いのだろうかという困惑の視線を向けられている。
「悪いね、実は僕、あまり目が良くないんだ」
 紋章のことなんて分からないよとごまかして、シルヴェストルは騎士と型稽古を繰り返して互いの弱点を探っていた。
「いいぞ、遠慮無く来い!」
 神馬人のエレンとどう見ても高位の騎士が生身と馬上で撃ち合い、高位騎士に嫉妬と羨望の視線が集中した。
「次、お願いしますっ」
「応っ」
 フィオナが跳ね起き同じく跳ね起きた鎧騎士と真正面からぶつかり合う。
 安全が確保され他流試合は、武の心得のある者達にとって魅力的過ぎた。
「ナ……どこかの家の次男坊か。遠慮はせぬぞっ」
「無論です」
 騎士剣とシュテムの妖刀がぶつかり火花が散った。
「何でもあり、なんて言っていていいのかしら?」
 攻撃前に02が声をかけたのに騎士達は気付けない。
 耐えるつもりが守りを貫かれて意識を失った。
 密集縦列で暴風を耐えようとした騎士隊がまとめて吹っ飛ばされる。
「練習……はいいのだけれど。あなた達はそれで良いのね……」
 術を使ったヴァイスは困惑しているが、本当に貴重な機会なので騎士も体を張っている。
「一瞬の隙を突き、背後から刃を……なぁんてことにもおきをつけて」
 ハイドは擬似的な乱戦を活かして、致命傷の代わりに騎士の急所に撃墜マークを書き入れた、
「うおぉっ!!」
 高威力長射程の魔砲に耐えながら騎士がアイへと迫る。
 1人倒れ、2人倒れ、最後に残ったのは明らかに気配が違う上級の騎士だ。
「お主はっ」
 迎撃に来たレイチェルを嬉々として迎え撃つ。
 炎に巻かれても耐え抜いて、レイチェルを数歩押し込んでさえ見せた。
「不注意が過ぎる」
「その声、しまっ!?」
 剣形態でレイチェルに振るわれていたシグが、手加減した力を出す。
 精鋭2人の連続攻撃に圧倒され、戦歴豊富な騎士が膝をついた。
「シュバルツ~太ったんじゃないですか?そんなんだと死んじゃうのですよ?」
 騎士の熱意が移ったかのように、ミザリーが人外あるいは超人の領域の攻撃を繰り出す。
「なんでトレーニングなのに俺は死にかけてるんだ? おいミサ! 少しは加減しやがれ!」
 シュバルツがかなり本気で文句を言う。
 総合的な実力な実力で上回っていても、相手の得意分野での勝負を強要されると不利という見本であった。
 鉄の魔物ともいえる兵器を何度も構え直して試射をする。
 ティリーの技術と装備を肌で感じた騎士が、数度の実戦に勝る経験を積んだ。
「もっと、貴方様を感じさせてくださいませね……♪」
 睦言も戦場で味わうなら地獄だ。
 メルトアイの触手とそこから撃ち出される術に、男女を問わず騎士が蹂躙された。
「私はこのままで」
「それだと内臓が痛むわよー」
 占いで推測して治療で確かめることを繰り返すことで、そよが自分自身の力を把握していく。
「お茶を飲む時間もないぞー」
 シェリオの治癒術が無ければ、騎士の重傷者が十数人増えていたかもしれない。
「生まれ故郷でのこういった訓練は初めてですね」
 カイルは一騎打ちを所望しようとして、仮面を被っていても隠せていない花の騎士と遭遇する。
「召剣、ウルサ・マヨル! 騎士様、訓練のお相手、よろしくお願いします!」
「お願いしましゅ!」
 戸惑っている間にパーシャとイミナが申し込んで受け入れられ、凄まじく贅沢な訓練が始まった。
「い、痛くないです。あっ……ぜ、全然痛くないでしゅ!
「これ以上は……」
 地力の違いから新人達の息が乱れて花の騎士がちらりと見る。
「一騎打ちが至上だったのですが。手加減は無用です! いざ!」
 ヴァージニアは訓練という機会を活かすため、遠距離戦と比べれば苦手な至近戦を挑む。
「よろしくお願いします」
 カイルも加わり、訓練はますます激しくなった。
「ぬぅっ」
 若若しい騎士が苦悶の息を吐いて倒れ込む。
「悪くなかったよ」
 マルベートは口元を拭って満足げに笑い、少し真剣な表情になって振り返る。
「ミレニア、怪我したら危ないからね?」
「もう終わったでしょ?」
 言葉は無愛想でも距離は近い。
「「本番」でも頑張れるといいね。」
 ミレニアは癒やしの力もマルベートと騎士に向け戦いの傷を治すのだった。
「久々に身体を動かすのも一興かのぅ」
 鉄扇で型稽古していたカレンは、模擬戦の相手が欲しくなった。
「俺は、人間だったときと体が違いすぎてまだ慣れないぞ?」
 視線に気付いた元人間現カーバンクルのライが事実だけを口にする。
「なあに、妾も一度『レベル1』を受けた身じゃ。妾が汝を利用するように、汝も妾を利用すれば良い」
 動きは小さく技術的には高度な戦いが、互いに触れない形で行われた。
 無骨な騎士の胸で衝撃が弾ける。
「いいぞ坊主。その調子で威力を上げていけ!」
「はいっ」
 アレストは可愛らしい顔立ちを凜々しく引き締め、徐々に強さを増していく。
「自信がなくなってくるぜ」
 騎士が肩を落とす。
 練習中の降は騎士よりまだ弱く、しかし成長速度は桁が違う水準で凄まじい。
「どうだー!」
「よし来い坊主。次はデカイのだっ」
 多彩な武器の形を使うファレルを、お忍びの騎士が嬉々として相手していた。
「とと、そろそろ休憩にしますか?」
「腹が減っては――だっけ? では、お言葉に甘えるとしようかな」
 艶やかな黒髪のまいちが、王子様風騎士のレオンハートを甲斐甲斐しく世話をする。
 若い騎士からの嫉妬の視線が、仲むつまじくおにぎりを分け合う2人に向けられていた。
「行きます!」
 この混沌という世界で生きることを決めたサンティールが、小柄さも魔力も全てを使い尽くして戦いを挑む。
 騎士達は眩しげにみつめ、そして全力で受けて立っていた。

●一日の終わりに
 日が傾き王都が夕日に照らされる。
 猫の集会所と化した小さな広場で、尻尾を含めれば3メートル越えのビッグサイズ猫陰陽丸が立ち上がる。
「にゃーん!」
 会話出来るのににゃんと鳴くのが陰陽丸の流儀だ。
「猫、さん?」
 この国にも、この大陸にも未だ慣れぬ玄丁が、確信を持てない足取りで猫達に近づこうとする。
 彼等は逃げもしないし歓迎もしない。
 ただ静かにそこにある。
「今年はなんだか小規模じゃない!」
 リズが思ったことを口にした。
「マッサージの練習はたくさんできましたよ?」
 スライム状の体を持つMeltingが、古びた舗装を透過して現れる。
「でも確かに、Loveと同じことを考えた方がいませんでしたね」
 筋肉と骨格を直接確かめることが出来た、得難い経験だった。
「あの」
 玄丁が依頼について説明する。
 右から左に聞き流していたリズは、うんうん頷きながら段々目を丸くしていく。
「えっ、分散した?」
 こくこく。
「……1000人超えた?」
 にゃー。
「ひ、人並みが少なくて助かるわね! ……お姉様幻想にいなかったらどうしようかしら」
 人捜しをするリズに、暇な猫がついていっていた。

 幻想でのローレットトレーニングが終わり、細々した事務手続きが行われる。
「だいじょぶなのです?」
「大丈夫、ということにしました」
 情報屋ユリーカと花の騎士の間で、そんな会話が交わされていたらしい。

成否

大成功

MVP

コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ

状態異常

なし

あとがき

 熱いプレイングをありがとうございます。

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