シナリオ詳細
<終焉のクロニクル>凶星の落ちた日
完了
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オープニング
●世界を救う物語
話は実にシンプルだ。
滅びを齎す怪物が現れた。
倒さなければ、世界が破壊されるのだ。
●希望の少女曰く
「…………!」
遠く世界の果て、プーレルジールの一角で、一人の少女が顔をあげた。
彼女の名はステラ。滅びを見守る少女。
一度は世界を滅ぼそうとし、イレギュラーズたちのパンドラを喰らったことでその性質を反転させてしまった少女。
彼女は知っていた。
世界を滅ぼすひとつの方法を。
とてもシンプルで、強大な、それでいて不可逆なそれの名を。
「『大いなるもの』が……目覚める……!」
●絶望の少女曰く
「もうすぐ目覚めるわ。みんな、準備はいい?」
遠く世界の果て、『影の領域』にて、一人の少女が顔をあげた。
彼女の名もまた、ステラ。滅びを見守る少女。
世界を滅ぼそうとし、星界獣たちを次々に目覚めさせ世界中へと降り注がせた少女。
彼女は知っていた。
世界を滅ぼすひとつの方法を。
とてもシンプルで、強大な、それでいて不可逆なそれの名を。
「『大いなるもの』が……目覚める……」
●大いなるもの
凶星が煌めき、それが強く燃えた夜。
『それ』は天より降ってきた。
地面に突き刺さる衝撃と爆発。周囲の星界獣すべてが吹き飛ぶ中、それはまるで痛みなど感じていないかのように悠然と頭をあげた。
見上げるほどの巨大な体躯。常人を容易く切り刻むような爪。そして竜のごとき牙。
あまりにも巨大なそれは、史上すべての星界獣と比較にならぬほどの巨大さを持ち、世界を滅ぼせるだけの純粋なパワーを持っていた。
それが大地に降ることは、すなわち世界の滅びを意味している。
ゆえに名前などなく、ただ一言――『大いなるもの』と呼ばれていた。
大量に集まる星界獣たちの中で、ひときわ巨大なそれは咆哮をあげ、天空を睨むように頭をあげる。
それを見下ろしていたのは、空中に浮遊するステラであった。
「…………」
大いなるものの召喚は、それ即ち世界の滅びを意味している。
やり方はシンプルだ。『大いなるもの』を影の領域から覇竜領域のワームホールを使って解き放ち、覇竜領域を皮切りに人類圏のすべてを蹂躙するのだ。
『大いなるもの』が持つ圧倒的なパワーはすべてを破壊し、すべてを喰らい、すべてを終わらせるだろう。
誰の目からも分かるほどの滅びを人類へともたらし、この世界を終わらせてくれるだろう。
「そう、すべてが終わる。もう誰も、生まれてこないようにする……」
ステラはどこか悲しそうに地上を、星界獣たちで埋まった地獄のような地上の風景を見つめて首を振った。
「この世界は悲しみに満ちているわ。
貴族に搾取されて飢えていく貴族たち。
強者に虐げられて寒さに震える弱者たち。
小さな罪で腕を落とされ涙する罪人たち。
金に換えられ売られていく子供たち。
穴蔵へ閉じこもり震えて暮らす亜竜種たち。
みんなみんな、かわいそう。こんな世界に生まれてこなければ、苦しむことなんてなかったのに。
けれどもう大丈夫。わたしがすべて終わらせるわ。
悲しいことも、苦しいことも、これで最後。
それがわたしから世界に贈る、餞別よ」
囁きかけても、しかし答えは返ってこない。
大いなるものは黙ったまま空を見上げ、周囲に戻ってきた星界獣たちもただ沈黙するのみだ。
「…………」
そう、沈黙のみ。
ここにはもう、ステラはある意味で一人きりになってしまった。
そうなったときに思い出すのだ。
自分ではない自分の記憶を。
滅びを見守る端末として繋がっている、『プーレルジールのステラ』の記憶を。
蒼い薔薇を貰った。素敵な花束や、飴細工の花も貰った。
『彼女』は言うのだ。この世界は素晴らしいと。この世界は美しいと。
素敵で、優しくて、楽しくて、わくわくすることでいっぱいだと。
だからこの世界を、救ってほしいのだと。
「ちがうわ。そんなはずない」
ステラは見てきたのだ。この世界の醜さを。苦しさを。絶望の数々を。
生まれてこなければよかった。そんな、最悪な世界なのだと信じている。
「この世界は滅ぼすべきなのよ。あなただってそう思うでしょう?」
大いなるものへと語りかける。すると、大いなるものはグルルと喉を鳴らして振り返った。ただそれだけだ。
答えてくれるひとはどこにもいない。
この暗くて寂しくて、どこか冷たい影の領域に、まるで自分がひとりぼっちになったような感覚におそわれて、ステラは自らの膝を抱いて丸くなった。
「大丈夫。大丈夫よ。わたしはやり遂げてみせるから。
この世界を、ちゃんと滅ぼしてみせるから」
それが、この世界のためなのだから。
●世界を賭けた決戦
「そう……ついに、この世界の『ステラ』は滅びを実行に移したんだね」
静かに語るのは、アルム・カンフローレル(p3p007874)。
自分で淹れたコーヒーをマグカップに移すと、ちびちびと啜りながら会議室の棚に背を預ける。
ここは覇竜領域の小集落。
隠れ集落アスタの民を避難させ、逃げ込んだ先である。
いまもアスタの上空には影の領域へと続くワームホールが開き、危険な状態は続いているのだろう。それを思えば、この環境は天国のようだ。
アルムに対して頷いたのはローレットに長年貢献してきた情報屋、『黒猫の』ショウ(p3n000005)だ。
「そうだね。それまで観測されていた凶星が燃え、地上へと落下したという報告が上がってる。まず間違い無く、言い伝えにある『大いなるもの』だ」
凶星輝く時、大いなるものきたれり。
覇竜の古い文献に存在する伝説の存在だ。もし地上へおりたなら、それは不可避の滅びを齎すという。
伝説級の怪物がその姿を見せ、その力を奮うのだ。どれだけの被害がでるか想像もつかない。仮に言い伝えが本当だとするならば、誰もかなわないような強大な存在が世界中を蹂躙し尽くし、世界は終わってしまうのだというが……。
「落ちた場所は?」
鵜来巣 冥夜(p3p008218)が眼鏡の位置を指で直しながら問いかける。
もし滅びが迫っているのだとしても、冷静さを失うことはない。
なぜなら自分達はいつだって『それ』に立ち向かってきたのだから。
前人未踏の地に踏み込み、前代未聞の強敵に挑み、そして成し遂げてきた。その始まりはいつも、こんな冷静な一歩だった。
「前人未踏の危険地帯。『影の領域』だ」
「影の領域……!」
そのことに誰よりも強く反応したのはユーフォニー(p3p010323)だった。
ムサシ・セルブライト(p3p010126)がちらりと彼女を見て、頷いて見せる。
なにせ知っているのだ。ユーフォニーが影の領域というものにどれだけ執着しているのかということを。一時は自分一人だけで影の領域へと踏み込もうとまで考えていたほどだ。
影の領域と言えば魔種たちの住まう危険極まりない土地だ。踏み入れただけでも身体にさわる。もしそんなことをすれば、ユーフォニーの命だって危うかったことだろう。
「ユーフォニー。君があの場所を目指していたことは知ってる。あのワームホールに目を付けていたことも」
「はい。以前目撃したとき、覇竜領域のアスタ上空に開いたワームホールは人が踏み入れることのできるようなものではありませんでした。少なくとも私の見た限りでは……」
執着しているというだけあって、ユーフォニーはアスタ上空に開いたワームホールにアナザーアナライズをかけていた。未知の存在ではあるものの、それを漠然と調べることができていたのだ。その結果、どうあっても立ち入りはできない危険な存在だと分かったのだが……。
「それが、できると言ったら……?」
「!?」
それはユーフォニーの言ったように覇竜領域の端、隠し集落アスタの上空に開いた『影の領域』に通じるワームホールである。
一見して、それは敵側がこちらに侵攻するためだけのものにも思えたが……。
「あれを、利用できるのカ」
身を乗り出したのは赤羽・大地(p3p004151)だった。
一方的な侵攻ルートとしか思っていなかったものが利用できるとなれば、それはこちらから攻め込むという作戦が使えることを意味している。
上空にあいていることの不便さは多少あるものの、そんなものはワイバーンにでも乗って飛び込んでいけばいい話だ。
こくりと頷いて見せるショウ。
「だね。ざんげの話によると、生身でマトモに飛び込めばたどり着く前に狂ってしまうかもしれないらしいけれど、パンドラの力でその通路の安全を確保してくれるらしい。
ま、出たとこ勝負は否めないけれど……ね」
「なるほど、そうなってくると話が変わってくるナ。こちらから攻め込むことができるってわけダ」
「えーっとつまり? その『大いなるもの』がこっちに出てくる前に、攻勢をかけられるってこと?」
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)が言うとルナール・グリムゲルデ(p3p002562)が頷いて返した。
「偵察隊の話では、アスタに展開していた星界獣の軍勢は一度ワームホールの向こう側に退いたそうだ。多少は残っているらしいが……まさか突入してくるとまでは思っていなかったのかもな」
アスタの民を避難させた甲斐があった、とルナールは続ける。
そこで声をあげたのはアスタの民たち、その代表である巫女アドプレッサであった。
「であれば、ワームホール周辺に展開しているという星界獣たちは私たちが対処しましょうう。話によれば、各国の方々も兵を出して協力してくださるのでしょう?」
アドプレッサの言うとおり、この乾坤一擲の作戦は全世界が注目し、そして協力している。
アスタの民とてそれは例外ではないのだろう。
「だが、折角助けた命だ。ここで失うつもりはないぞ?」
「分かっております。危険になれば戦士達を退かせますし、無茶をするつもりはございません。けれど……あそこは元々私達の里。取り返すくらいの気持ちで挑まなくてどうしますか。
私達が露払いをしますので、影の領域への突入を任せたいのです」
「とはいえ。その『大いなるもの』の戦力は計り知れないのでしょう?」
そう声をあげたのは、それまでずっと腕組みをして聞いていたヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)だった。
「私達の倒した特殊星界獣ギャラド。そして別働隊が戦ったというドラゴニック。それすらも凌駕する存在となれば……もはや数十人でこなせるミッションとも思えません」
特殊星界獣と呼ばれる協力な個体が星界獣の中にはいて、その戦力は精鋭たちが束になってかかってやっとというレベルだ。しかし『大いなるもの』に関してはそれどころの話ではない。世界を滅ぼすほどの強敵となれば、数十人が死力を尽くすというレベルの話ではもはやなくなるだろう。
「ああ、その通り。だからかなりの人手がいる」
イズマ・トーティス(p3p009471)がぎゅっと拳を握って力を込めた。
「それも、大規模な、な……」
「それにその場所には、ステラがいる。この世界のステラが、ね」
アルムが声をあげると、冥夜もこくりと頷いた。
彼らはしっかりと覚えているのだ。
『プーレルジールのステラ』から託された願い事を。
「『あの子を助けてあげて』……か。今度こそ、言葉を届けるチャンスだね」
「ええ、というより、今回をおいて他にはありません」
「ステラさん……」
メイメイ・ルー(p3p004460)は思い出した。『混沌のステラ』が見せた悲しげな瞳を。
この世界に絶望し、苦しみと悲しみから救うべく世界を滅ぼすのだという主張を。
「けれど、ステラさんは知っているはずです。わたしたちのことを、『覚えて』いました」
「そうです。そこが、大事なところなんです」
鏡禍・A・水月(p3p008354)はステラと過ごした思い出を心の中に刻み直しつつ、胸に手を当てた。
鏡型のチョコレートクッキーを選んで微笑んだ彼女の顔を、グラオクローネにプレゼントした軌跡の欠片を、今でもはっきりと思い出せる。
「『滅びを見守る少女』は世界の端末。端末として記憶は根っこの所で繋がっているようでした。だから、プーレルジールのステラさんの感じた世界の素晴らしさや思い出を、混沌のステラさんも知っているはずなんです」
「そうです。たくさんの『おいしい』を、一緒に経験したのですから」
ニル(p3p009185)が声をあげ、紅花 牡丹(p3p010983)もまた頷いた。
「オレは一緒にお菓子作りをした。大切な誰かにプレゼントするんだって言ってな。そうなる前に世界が滅んじゃもともこもないぜ」
「ああ。この世界は護る。そして、『混沌のステラ』も助ける。すべてを成し遂げるんだ。オレたちは」
ファニー(p3p010255)もまた強く頷き、蒼い花束を贈ったあの日のことを思い出す。
「ステラ。知っているはずだ。この世界の素晴らしさを。それを、オレたちが思い出させてやる」
「そして見せ付けるんだ。この世界が滅びないってことを」
アルムはカップを置くと、ぎゅっと杖を握りしめて歩み出た。
握った手の温かさを。暖かな微笑みを。自分達は覚えているから。
「だから……君だって笑えるはずなんだ。ステラ。世界の滅びと絶望が邪魔をするなら、それを壊してあげるから」
- <終焉のクロニクル>凶星の落ちた日完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別ラリー
- 難易度VERYHARD
- 冒険終了日時2024年04月16日 21時10分
- 章数3章
- 総採用数331人
- 参加費50RC
第3章
第3章 第1節
空中へと投げ出された赤い光の球体は、まるでガラス細工のように砕けてちった。
中に捕らわれていたステラは重力にひかれるように落下を始め……ようとしたところで、アルム・カンフローレル(p3p007874)によって受け止められる。
仲間の支援を受けて空を飛んだ彼は、パンドラの加護の力を一度解除し、目を細めた。
「わたし……」
「いいんだ。もう、大丈夫だよ」
アルムには、そして仲間たちには既に感じ取れていた。
ステラの纏う気配が、滅びを齎す端末のそれから、パンドラを喰らい反転したそれへと変化していることを。
『プーレルジールのステラ』と同じ存在に、変わっていることを。
ゆっくりと地上へと降り立つアルム。その腕の中でステラは呟いた。
「わたし、沢山壊してしまったわ。沢山傷つけてしまった。
けれど、光を知ってしまったの。
美しい思い出を、温かい記憶を、輝かしい物語を、知ってしまった。
わたしも、この世界を旅して――あなたたちの、『旅の仲間』になりたいと、思ってしまったの」
だから、受け入れてしまったのね。
ステラはどこか寂しそうに、目をそらした。
その視線は『大いなるもの』へと向けられている。
「あなたは、まだ世界を滅ぼしたい? そう、よね。そのように産まれ、そのように落ちたのだもの。それこそが、あなただものね」
悲しげに微笑むステラ。大して、大いなるものは潰れた右目から血を流しながら吠えた。
その咆哮は、聞くものたちの心へ響き、声として脳裏に呼びかける。
『愚かなり――!』
次に、頭のなかに響く声は荒々しい憤怒に満ちていた。
『滅びよ、イレギュラーズどもよ!』
それまでただ通り過ぎるだけ、邪魔者を払いのける程度にだけ使われていた殺気が、直接叩きつけられる。
常人であれば卒倒しそうなそのプレッシャーを前に、しかし彼らは引き下がらない。
シャラン――と錫杖を鳴らして、イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が馬上より声を上げる。
「いいえ、滅びるのは貴方のほうよ。私たちが――ここにいるすべてのものが貴方を滅ぼす」
「ああ、そうだ」
声に応えるように、戦闘用トランペットを握りしめて立つフーガ・リリオ(p3p010595)。
「おいらたちは立ち向かう。そして、『滅び』を滅ぼして――平和な明日を手に入れるんだ!」
相手は凶星。大いなるもの。
その巨大な存在に、イレギュラーズたちは立ちはだかった。
――いや、それだけではない。
「どうやら、間に合ったようですね!」
ワームホールを抜け、声をあげるものがあった。
それは白き太陽の翼、『神翼獣』ハイペリオン。
巨大化したその背に乗っているのは、大勢の人々だ。
「なんといっても覇竜の果て、ヘスペリデスの奥地だ。駆けつけるのに随分かかったぞ」
もはや通じない折りたたみ式携帯を手て弄ぶのは希望ヶ浜学園の校長黄泉崎・ミコト(p3n000170)。
「俺は戦わんが……希望ヶ浜からも戦えるヤツらを連れてきた。例の星界獣とやらはこっちで引き受けよう」
「ウホッホ!」
ハイペリオンの背から跳躍し、待ちきれないとばかりに大地に降り立つコンバルグ・コング(p3n000122)。
着地と同時に両腕を大地に叩きつけ、その衝撃で周囲の星界獣たちを吹き飛ばした。
そうして開いたエリアにハイペリオンが降り立ち、そこから次々に援軍が展開する。
「希望の戦士の皆さん、共に戦いましょう――希望合体(パンドラフュージョン)!」
召喚したクルーザーと変形合体したグッドクルーザー(p3n000117)が、群がる人型星界獣たちを巨大な剣でなぎ払う。
「助けて貰った、救って貰ったこの命だもの。世界を護るために使ったっていいよね」
更にエイス(p3n000239)が手をかざすと、人工コアから電撃が走り星界獣たちへと浴びせかけられる。同時にイデアが虹色に光る剣をとり、星界獣を斬り付けた。
「こっちも大変そうだし、あっちはハウザーに任せて抜けてきたよ」
パドラ(p3n000322)は銃を構え、後続の星界獣たちを撃ちまくる。
「私たちだって、護られてばかりじゃないのだ! 総員、攻撃開始!」
キャピテーヌ・P・ピラータ(p3n000279)が号令をかければ、連れてこられた兵士たちが一斉にマスケット銃をぶっ放す。
そこにはカルネ(p3n000010)たちも加わり、射撃を行っていた。
「みんな、イレギュラーズに助けられた人達さ。勿論、僕もね。恩返しをするなら今だよね」
「みんな……」
イレギュラーズたちが唖然とするその中で、ハッとしてアルムたちが声をあげる。
ハイペリオンの背から、見覚えのある……けれど見たこともない少女が降りてきたのだ。
「みんな、わたしも一緒に戦うわ」
それは、紛れもなくプーレルジールのステラ(p3n000355)であった。
だがその姿は幼い少女のものではない。成長した女性のそれだ。
「この姿? 影の領域へ来たら、不思議とこうなっていたの。みんなのパンドラを喰らったからかしら……私の姿にも影響が出ているのね。それに、ほら!」
手をかざすと光が漏れ、星の瞬きにも似たそれは星界獣たちをなぎ払う光となった。
そうして、『白きステラ』は『黒きステラ』へと振り返った。
「わたし……」
「大丈夫、なにも言わないで。わかっているわ」
近づき、頬へと触れる。黒きステラの頬に涙が流れ、それを白きステラは指で拭った。
「一緒に、『旅の仲間』になりましょう。大いなるものを、滅ぼして!」
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※システムアナウンス
第三章が開始されました。
この章の目的は『大いなるものを撃破する』こととなります。
ここが最終局面です。全力でぶつかって下さい。
●パートタグ
【大いなるもの】
イレギュラーズを脅威と見なし、全力で屠ることを決めた大いなるもの。
そのすべての力が叩き込まれようとしています。
こちらも全力をもってこれに対抗し、大いなるものを撃破しましょう。
大いなるものは強力な超範囲攻撃をもつほか、ブレスによる攻撃、魔力を纏った爪による攻撃などを行っていました。
邪魔者を振り払う程度の興味しかなかった時とは違い、全力を出してくるでしょう。
●援軍
このパートより援軍が駆けつけています。援軍キャラクターとはプレイングで指定することで共に戦うことができます。
・ハイペリオン
太陽の翼にして神翼獣。勇者の時代から存在する生きた伝説です。
治癒の魔法を使いイレギュラーズを支援してくれます。
また、ハイペリオンと共に飛行することで飛行ペナルティを大幅に軽減することができます。
・黄泉崎・ミコト
希望ヶ浜学園の校長で元悪魔憑き。今は戦闘能力こそないものの、契約していた無数の怪異や外で戦うことのできる希望ヶ浜民を率いてくれています。
・キャピテーヌ・P・ピラータ
シレンツィオの代表執政官です。襲撃のなかったシレンツィオの兵力を一部引っ張ってこちらへ援軍としてよこしてくれました。
・エイス
ROOに発生したNPCを電子生命体化し、人工のコアへと定着させた新たなる秘宝種です。
兄のイデアと共に戦います。
・パドラ
凶(マガキ)に所属する傭兵です。別名シルバーバレット。
大口径のリボルバーを用いた戦いを見せます。
・カルネ
皆の受付カルネくんです。銃撃を行うほか、連鎖行動などの役立つスキルを持っています。
・コンバルグ・コング
ラド・バウA級闘士。強くて優しくてゴリラというイケメン三拍子のそろったファイターです。
彼と共に戦う『コングコンビネーション』が解禁されています。合体技を大いなるものへ叩き込みましょう。
・グッドクルーザー
古代遺跡から目覚めた伝説の勇者にして秘宝種です。
古代の専用兵器を持ち込んでおり、『深層希望合体』が解禁されいます。彼と合体し大いなるものへ強烈な一撃を叩き込みましょう。
・白きステラ(イクリプスバージョン)
大人の姿へと変身した『白きステラ』です。
星の魔法を使うことができ、今度は共に戦うことができます。
・黒きステラ
Bad End 8であった黒きステラはイレギュラーズたちのパンドラを受け入れ、反転しました。
得意の支援魔法を使ってイレギュラーズたちを支援します。
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第3章 第2節
咆哮をあげる『大いなるもの』。地上へと落ちた凶星が、ついにその殺意の全力をつきつけてくる。
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)はパンドラの加護を継続して発動させると、『メロディア・コンダクター』を美しく振り抜いた。
「あれも、ただそう生まれついただけか。
その在り方にステラさんから干渉する事も、できないか?
できなさそうなら後はもう、屠るしか無いな。
俺達も混沌も、滅ぼさせるものか!」
騎乗していたワイバーンのリオンが大いなるものの左側へと回っていく。狙うは今だ無事な左目だ。
「希望の光で目を灼くんだ」
対する大いなるものもまた、その狙いに気付いていたらしい。空中に大量に現れた魔方陣がイズマへと集中し、彼の展開したルーンシールドを一瞬で崩壊させる。
「まだだ!」
『シュトルム・リッター』を発動。超強化された音楽の魔法が、光の斬撃となって大いなるものの顔面へと斬り付けられる。
それとほぼ同時にして、『こそどろ』エマ(p3p000257)は大いなるものの右側へと回り込んでいた。
「さぁ、いよいよラストスパートですね……! ここまで来てやられるつもりはありませんよ! ステラさん、もう動けるんですか?」
「おかげさまでね。って、言って良いのかしら」
複雑な表情で空に手をかざす黒きステラ。エマがえひひと笑うと、そんな彼女に星の加護を付与してきた。エマの身体が煌めき、身体が軽くなる。
直後に大いなるものがエマを踏みつけようと足を振り下ろしてきたが、高速で駆け抜けることでそれを回避。
「大きいですねえ、これだけ大きければ――!」
エマは叩きつけられた足から駆け上がりながら、大いなるものの肉体を切りつけた。魔力すら伴った頑強な鱗にメッサーが弾かれるが部分部分ではそれを突き破って斬り割くことも可能。吹き上がる血をよけながら、エマが大いなるものから飛び退く。
「さて残るは大物のみか。
随分とまあ長期戦が続いたね、とはいえキミを倒せば終わりなら。
此方も出し惜しみをする必要性は無い訳だ」
『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)が血を吹き出す大いなるものめがけ接近。パンドラの加護を継続使用し、美しくも禍々しいその姿を露わとすると、『禍剣エダークス』の魔術を発動させた。
「大いなるもの、やっと牙が届くね」
「ふむ、これで最後か。長い連戦もこれで終わるんだ、我らグリムゲルデも派手に行こうか」
攻撃のタイミングを完璧に合わせ、『片翼の守護者』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)もまたパンドラの加護を継続使用。
「元より出し惜しみは得意じゃない。やるなら徹底的、ある種のセオリーみたいなものだろう?」
ルーキスには付与術式を与え、自らもまた接近。白銃『グラシア・メンシス』を突きつけると零距離で弾を連射させた。
「という訳だから着いてきてね、ルナール先生! これが最後だ、精々気合い入れていくよー」
「あぁ、これでラスト。派手に叩いてやろう。カバーは俺に任せてルーキスはいつも以上に強くアイツを叩いてやればいい」
その一方で、『同一奇譚』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)と黄泉崎・ミコトの部隊は星界獣の群れを大胆に切り拓いていた。
「全く地獄も地獄だ。どうだ美術教師、生きているか?」
「嗚呼、校長先生ではないか。貴様、犬に噛まれて息絶える脆弱が何を宣う」
ロジャーズは自らの力を複雑怪奇に解放すると、戦っている生徒たちを護るように動き出した。
「宜しい。我々の務めは生徒を守る事。美術顧問として相応な働きを為すのみ」
跨がるは『外世界からの漁師』。羽ばたくワイバーンが高度をあげると、それを見た大いなるものは口を開き星光のブレスを叩きつけてきた。細く鋭いそのブレスは、これまで大勢を乱雑になぎ払ってきたものとはまるで違う。一人一人を確実に殺すための殺意が込められたブレスだ。
「我等こそ肉の壁、致命を刺す為の礎とせよ」
対抗して結界を二重展開するロジャーズ。結界は一瞬で崩壊したものの、ロジャーズの有り余る体力がそれを受け止める。いや、受け止めきれずに一度は可能性の奇跡を使うまでに追い込まれた。逆に言えば、そこまで大いなるもののブレスの威力は凄まじいということだ。
「ほう、受けきったか。さすがは美術教師。そのまま引きつけておけるか?」
校長の言葉もあってか、生徒たちは更にやる気を出しているようだ。
「Nyahahahaha!」
ロジャーズは笑い、そして大いなるものへ挑発的に手を伸ばす。
成否
成功
第3章 第3節
「ステラさん……良かった、助かったんだね!
ハイペリオンさまや白いステラさん達も……!
黒きステラさんとも一緒に…大いなるものに終止符を!」
「良かったね、アルムさん達……みゃー。僕も一緒に、頑張るよ……!」
空を飛ぶ『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)と『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)。
その横を、白きステラと黒きステラがそれぞれ飛行していた。
「気をつけて、大いなるものの攻撃からはそうそ逃れられないわ。一撃くらいは貰うつもりで突っ込んでね」
黒きステラが星の加護を付与すると、白きステラがこくんと頷いて星の魔術を発動。前方を邪魔するように群がっていた飛行型星界獣たちが瞬く光と爆発によって散っていく。
「今――!」
「ステラさんは自分の道を選んだよ。愚かなのは、お前の方だ……大いなるもの!」
ヨゾラは流星のごとく飛行すると、大いなるものの腹めがけて拳を握りしめる。
(黒きステラさんや白きステラさん達と一緒に戦えるのが嬉しい。
星に手を伸ばし、星々のような素敵な仲間と共に戦う。
これが僕の望みの1つ、到達点だ……!)
振り抜いた拳には『星の破撃』の魔術が込められ、凄まじい衝撃が大いなるものへと走る。
と同時に、祝音の『アイン・ソフ・オウル』もまた叩きつけられた。
「『旅の仲間』と一緒に戦えるのが心強い…だから、僕等は絶対勝てる! ここで、潰えろ……!」
その途端、攻撃に反応した大いなるものが広範囲に向けて大量の魔方陣を展開。ヨゾラを取り囲んだそれは一斉に星の魔術を叩き込んでくる。
「誰も倒れさせない! 皆で勝って生きて帰るんだ……みゃー!」
が、それに対応した祝音の『デウス・エクス・マキナ』によって瞬殺されかかったヨゾラが復活。更に攻撃を叩き込み続ける。
「クライマックスにアガる展開になってきたじゃない!!」
一方で後ろ側へと回った『焔竜の頌歌』星華(p3p011367)。
掲げた杖に炎のドラゴン・ロアを纏わせると大いなるものへと構えた。
「後、さっきからメチャクチャ馬鹿にされてるようなんですけど~?
流石のお姉さんも堪忍袋の緒がキレるという奴で。
そうなるとどうなるか知ってる?
なんか知らんけど、武器(これ)パワーが上がるのよ。
覇竜を荒らしてくれた恨みもあるしねぇ……。
その図体だと、避けようがないんじゃない?
クリムゾン!! インパクトォ!!」
星華の放った激しい炎が大いなるものの背を焼き焦がす。
流石に痛みを感じるのか、腕を振るって暴風を巻き起こし、大いなるものは星華たちを振り払った。
「大物ぶっていた奴が憤る様は痛快ね。本気を出そうが関係ない。私達は最後まで滅びに抗うために戦う、それだけだわ」
『無限円舞』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)はそんな大いなるものへと、ワイバーンを操って突っ込んでいた。
暴風に煽られそうになるも、それを華麗に掻い潜り至近距離へ。
「追い詰められてからようやっと本気なんて、大仰な呼び名の割にダサいわね? 器が小さきものとかにすれば?」
抜いた『夢煌の水晶剣』に淡き光を纏わせると、アンナは大いなるものの顔面を切りつける。
直後、パンドラの加護を発動。白銀の髪に赤いドレス。血塗れの大鎌を手にした禍々しい姿をとったアンナは、更なる斬撃で大いなるものを出血させる。
再び腕をふるって払いのけようとする大いなるものではあるが、俊敏に動き回るアンナとそのワイバーンをとらえることができない。
その隙を突いて更にアンナが畳みかけるという構図である。
その一方で、『殿』一条 夢心地(p3p008344)。
「夢心地コンビネーーーーーーーション!!その一。
無名偲無意識……否、黄泉崎・ミコトじゃったか。
麿と校長が戦場で出会ってしまった以上、満を持してあの技が解禁される!」
「何?」
突然の呼びかけに二度見する黄泉崎校長。が、夢心地のウィンクによってすべてを察した。
「そう、マジ卍ビーム・アルティメット!」
マジ卍祭りの中で披露されたあのふざけたダンスが、この最終決戦の場で披露されるのである。
「夢心地ビームがマジ卍の力を得て、進化したような感じのする必殺光線じゃ。
夢心地と黄泉崎が卍のポーズを取ることで、一生に一度だけ放つことが出来ると言われている……!」
謎の解説をはさみながら踊る夢心地。それに付き合う黄泉崎校長。
「ここまできて押し負けるワケにはゆかんからの。
ババンババンバン攻め立てるのみ。
皆の者、麿に続けーーーい!!
良い感じのやつをドカバキ放ってゆくのじゃ!
なーーーっはっはっは! マジ卍!」
二人でマジ卍ポーズをとると、そこから夢心地ビームを発射。
「なあ、これ……俺はいらなくないか?」
「何をいうか!」
ふざけたビームなれど、大いなるものへと激しく直撃する。
成否
成功
第3章 第4節
「世界を滅ぼす為に産まれたか、己が存在理由を果たさんとするのはご立派だ。
だが俺たちが止める!ここまで来たら真っ向勝負だ!
御大層な意義にエンジンが掛かるのが遅かったみたいだが、当然手加減なんてしてやらないぜ!」
『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は式符の束を握るとパンドラの加護を発動。
凄まじいオーラが全身を包んだかと思うと、白黒調の陰陽師服へと姿が変わっていた。
「さあ、見てろよ!」
錬は手にした式符を一斉展開。複数同時に発動した『式符・青龍槍』が大いなるものへと突き刺さり、そこへ『式符・相克斧』が無数に飛来。そのうち一本を跳躍して握った錬は、大いなるものの足についた傷口めがけ強烈な斬撃を叩き込む。
「ここで倒れてもらいますよ」
そこへ駆けつけた『泳げベーク君』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)。
錬たちを支援するように『ソリッド・シナジー』『天衣無縫』『ウロボロス・プロト』といった付与術式を豪勢に使いまくると、自らの再生能力を破壊力へと変換。
どぅっとたい焼き姿で跳躍すると、『G・L・B(ギガント・ライフ・ブラスター)』を発射した。
錬の猛攻に伴って放たれたG・L・Bは大いなるものの巨体に直撃。流石の大いなるものとて、その動きを一次的に止めざるを得ないほどに痛みが走ったようだ。
「今です、希望の戦士ムサシ!」
そう叫んだのはグッドクルーザーだった。
頷き、拳を握る『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)。
「この世界は……確かに、苦しいことも悲しいこともいっぱいある。俺だって、何度も泣いて悲しい思いをしたこともあるさ。
それでも、俺はこの世界でヒーローに出会った。友達や戦友が出来た。なによりも……『いちばん』好きだって言える人が出来たんだ。
その人がこの世界を好きだって。
だから……俺はこの世界を守る!
大いなるもの! 貴様には、この世界は渡さない! ――深層希望合体!」
跳躍したムサシに、分裂したグッドクルーザーとディープクルーザーが変形合体していく。
ムサシを包み込む青き鋼は正義の光を示し、全身を淡く緑色に発光させる。
「「ビッグクルーザー・XZ・ムサシ!!」」
そろった声で叫ぶと、巨大な剣の柄を握る。現れたのはレーザーソードだ。
「この世界は滅びたりしない! 宇宙保安官が命をかけて戦う限りだ!」
動きを止めた大いなるものへ、強烈な斬撃が叩き込まれる。
それは強固な鱗を斬り割き、また新たに血を吹き出させた。
血塗れとなる大いなるもの。それを見上げ、『紅矢の守護者』グリーフ・ロス(p3p008615)は祈る。
「R.O.Oから現実へと転じ秘宝種となったエイスさん。
反転した2人のステラさん。
可能性は、溢れている……」
グリーフの辿ってきた『伝説』は、いくつもの奇跡でできていた。
「まだこの核の輝きは尽きていません。
さぁ。
彼女(ラトラナジュ)と同じ色の。
紅の炉心を廻して。
彼女が護った世界を。
私が護ります」
それはどこか、祈りの言葉に似ていた。
「今度は滅びではなく、未来を願います。
プーレルジールのためにも。
力を貸してください」
グリーフが掲げたのは『死せる星のエイドス』。一瞬にして砕けたそこから光が漏れ、グリーフの力と合わさり紅に輝いた。
それは、まさに、『紅冠の矢』によく似ていた。
グリーフの生み出した、六本目の矢と言ってもいいかもしれない。
「さあ、救いの力を――」
突き出した手に答えるように、矢が大いなるものへと突き刺さる。
痛みと苦しみによる咆哮が、天をついた。
成否
成功
第3章 第5節
天に響く咆哮は、そのまま雷鳴を齎した。
無数の光が、衝撃が、そして轟音が辺りを包み込む。
――その中を、『虚飾』楊枝 茄子子(p3p008356)は仲間を引き連れ飛行していた。
「助かって良かったじゃん、ステラ。
キミも助かりたいって言えばいいのに、大いなるキミもさ」
『羽衣賛歌』を再び仲間に付与することで飛行能力をもたせた茄子子は、自らに降り注ぐ雷撃を『フェイクシフト』の言霊で、自らを殴りつける衝撃を『レイヤープロテクト』の言霊でそれぞれキャンセル。周囲の仲間を庇うようにして飛んで行く。
その軌道は美しく螺旋を描き、『ライアーメイク』と『レッド・ヘリング』更に『ブラフアデプト』の言霊を重ねることでより強力な状態へと移行する。
「まぁ、最後まで駆け抜けようか。翼を授けましょう。キミ達がそれを求めるならね」
茄子子が微笑みを浮かべると、それに礼を言うように手を振って『願い紡ぎ』ニル(p3p009185)が先行を開始する。
「ステラ様……よかった!
プーレルジールのステラ様も来てくださったのですね!
ふたりのステラ様が揃ってニルはとってもうれしいです!」
ニコニコとするニルが黒きステラに『どうお呼びしたらいいのでしょう?』と首をかしげる。
一緒に飛行していた黒きステラは眉をぴくりと動かして振り返った。
「なんでも。好きに呼んでいいわ。それより、あれをなんとかしないといけないでしょう。世界が滅んだら、呼び名どころじゃないんだから」
黒いほうはちょっぴり皮肉屋らしい。ニルには『はい!』と元気よく答えると、パンドラの加護を発動させた。
身体のあちこちを結晶が覆う、不思議な姿へと変化するニル。壊れても前に進むためのカタチだ。
「……いきます!」
『ミラベル・ワンド』を振りかざし、傷を負った大いなるものへと『パラダイスロスト』の術式を放つ。そのまま巨体へと突っ込み、『フルルーンブラスター』へと繋げるおなじみのコンボだ。しかしニルがイクリプスの姿をとっているためか、それともステラたちの援護のためか、青き星の如く魔力が煌めき、巨大な水晶が槍のように放たれ大いなるものへと突き刺さっていく。
その様子を眺めつつ、『生命に焦がれて』ウォリア(p3p001789)は竜の如き鎧の姿へと変化。
「共に大敵を打ち破る時が来た! ゆくぞ、コング!」
「ウホッホ!」
共に飛行するコンバルク・コングが、ウォリアをがしりと掴み回転を開始。
「オマエたちは強い。国を救い、光となるほどに。ならば、滅びそのものをも、滅ぼせるはずだ」
賢者の光を目に宿し、コングはウォリアを全力投射。
対抗するように爪を放ってくる大いなるもの。すべてを斬り割く暴風を纏ったそれに、ウォリアはあえて突っ込んでいく。
「オオオオ――!」
自らを巨大な炎で包み込むウォリア。巨大な弾丸と化したそれは傷を負いながらも大いなるものの肉体へとめり込み、そして斬り割いた。
「やっと此方を認識したな…ならば刻もう……此処がオマエの「終焉」だ!
今こそ解き放つ! メギド……ブレイザーッ!」
攻撃を受け、大いなるものの動きが大きく揺れる。
荒れ狂う雷神もまた、その濃度を増していった。
「黒きステラさんとの、最初の冒険ってやつだな。
当然、勝ちで飾るさ。
支援、頼りにさせてもらうぞ!」
「ええ、そっちこそ――墜ちないでね」
黒きステラから星の加護をうけながら、『君のもとに』囲 飛呂(p3p010030)は器用に雷撃の中を飛行し駆け抜けて行く。
ジグザグな軌道を描いたそれは、大いなるものを見下ろすはるか上空で停止。ばさりと星の翼が羽ばたき開いた。
「例の右目、まだ回復を続けてるみたいだな。なら――」
狙うならそこだ。飛呂は再びパンドラの加護を使用し蛇神の力を身体に浮かべると、ライフルのスコープを覗き込んだ。
血を流す大いなるものの目が、こちらを確かににらみ付けた。スコープ越しに、目が合ったのだ。
「逃がさない」
――発砲。
放たれた弾は空中に生まれた魔術障壁を貫通し、大いなるものの眼球へと打ち込まれる。
グオオと再び声をあげた大いなるものは飛行するイレギュラーズたちへ向けてガパリと口を開いた。
ブレス攻撃が来る。そう察した茄子子、飛呂、そして『夜鏡』鏡禍・A・水月(p3p008354)がそれぞれ並び、結界を展開。
直撃するブレスが彼らの結界を秒殺で破壊するが、それでもなんとかこらえてみせた。放射状に分かれた光が飛び、地面や天空を焼き焦がしていく。
「白きステラさんが来てくれるなんて、問題はないのでしょうか?
念のためさっさと片付けるに限りますね。ね、黒きステラさん、仲間はたくさんいるでしょう?」
二人のステラを護りつつ、振り返る鏡禍。黒きステラはつんとした表情で目をそらしたが、どうやら照れているのだと鏡禍にはわかった。
「友達? 可愛い子だね」
そんな鏡禍に声をかけてくるパドラ。一緒に飛行し、銃をリロードしている。
「パドラさんも来てくださっているなんて心強いです。援護射撃頼みますね!」
「ん、任せて。そのために来たんだから」
銃を構え、鏡禍を盾にしながらパドラが大いなるものの眼球めがけ撃ちまくる。
何発もの激しい銃声。首を振ってそれを逃れようとする大いなるもの。
そこへ――。
成否
成功
第3章 第6節
また別の方向から、『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)が飛翔する。
『空想』によって仲間達を飛行させながら、大いなるものの巨大な身体を迂回して回り込んでいたのだ。
「少女は助かったみたいだが、まだデカブツは物足んねえってか。
まぁでも、そうだよな。
最後の最後でやっと出番を貰ったんだ、粘りてぇ気持ちはよくわかる。
が、こっちだって、はいじゃあわかったで、降りるわけにはいかねーのさ」
不敵に笑い、『心の内より湧きし刃』を握り込む。
「ところで……」
ちらりと見ると、同じ場所をハイペリオンが飛行していた。
(いと白き太陽の翼の加護、使いすぎて怒られるかな?)
そんな視線に気付いたようで、ハイペリオンがちらりとサンディのほうを向く。
「どうしましたか? 乗りますか?」
ぱたぱたと翼を動かしてみせるハイペリオン。怒ってないらしい。
「アイオンの乗った神鳥か……ああ、頼む!」
サンディは素早くハイペリオンへと乗り込むと、アイオン気分で『滅棘ミストルティン』を叩き込む。その姿は、まさに世界を救う勇者そのものだ。
「わーーー!!僕等だけ先に出ちゃった! ごめん! 今度こそは足並みをそろえるよ!」
「ご、ごめんね……先走っちゃった……みゃー。今度こそ、昴星の人達と一緒に……!」
その左右を抜けて飛ぶ『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)と『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)。
二人は継続してパンドラの加護を使用すると、イクリプスの姿へとチェンジする。
サンディの加護とハイペリオンの加護を受け、普段以上に飛行が軽やかだ。
「旅の仲間と一緒に戦えるんだ! 何度だって頑張れるよ!」
ヨゾラは『星空の魔術紋』を再び発動させると、『星空の泥』の魔術を発動。星が降り注ぐように、或いは爆撃の如く大いなるものへと光の魔術体が叩きつけられ、爆発を起こした。
その中でひときわ輝く光となって飛び込み、大いなるものを『星の破撃』で殴りつける。
そこへ、ステラの放つ星の魔法が炸裂した。
まるで魔法と一体になったような気分で、微笑みを浮かべるヨゾラ。
「星に手を伸ばし、星々のような素敵な仲間と共に戦う……。昴星の皆と一緒に戦えるのも嬉しい、頑張るよ!」
その一方で、『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)もまた仲間達を襲う雷撃に対抗して『無穢のアガペー』や『デウス・エクス・マキナ』の治癒魔術を展開。防衛を固めていく。
「皆、頑張れ……僕も頑張って癒すから……!」
そんな祝音をフォローするように、合流した黒きステラが星の加護をかけてきた。
祝音を直撃した雷撃がばちりと散って、星の加護によってできた障壁に護られる。
ならばと、祝音は反撃に転じることにした。
「何度だって、何度だって……ぶちのめす! みゃー!」
倍加した『アイン・ソフ・オウル』を両手に宿すと、大いなるものへと突っ込み近距離からぶっ放す。
二人の攻撃が炸裂したところで、それを引き剥がそうと飛行型の星界獣が群れを作って飛びかかってきた。
「おっと、ここは任せて貰おうかな?」
髪をなびかせ飛行する『解き放たれた者』水鏡 藍(p3p011332)が、護符を扇状に広げてばらまいた。それぞれの護符が炎となって燃え上がり、それを目にした星界獣たちが藍へと注意を向ける。
「囚われのお姫様はうまく取り返せたね。そしたら後は大ボスを倒すだけ。そうすればきっとハッピーエンドも近いさ!」
群がってくる星界獣に、これ幸いとばかりに刀を抜く藍。刀身をスッと指で払うと、そこに神気が宿り光を放った。
そこからの流れるような回転斬り。斬撃が巨大な円を描いたかと思うと、その円がいくつも生まれ空を裂いていく。
いや、空どころか星界獣たちを斬り割いて次々に撃墜していった。
「さ、今のうちに」
「助かる!」
群れを掻い潜って飛ぶ『つばさ』零・K・メルヴィル(p3p000277)。
(アルム……世界の敵だったはずのステラを生かせた。やっぱすげぇよお前)
零は心の中でそんな風に呟くと、左右を飛ぶエイスとイデアに目を向けた。
「エイスにイデアも来てくれてありがとう、すげぇ嬉しい! 一緒に行こう!」
「うん、けど『久しぶり』がこんな舞台だなんてね」
「まあ、俺たちらしいといえば、らしいよな」
剣を握り込むイデア、手をかざし雷撃を放つエイス。
その中を零はまっすぐに飛んで行く。
(俺はCCCを生かせなかった、でも二人が生きてる、其れが嬉しい! だからこそ!)
零はパンドラの加護を発動。紅蓮の衣に身を包み、爆煙を両腕に宿す。
いや、それだけではなかった。
(エイドス、我儘な奇跡を請うぞ。
大いなるものをぶっ飛ばす為に……姉ヶ崎CCC、友の力も! ROOの中の俺達(ZERO/アイ)の力も全部! 俺達に貸してくれッ!!)
そんな願いに応えるように、乱れたモザイクカラーの光が零の両腕へと宿った。
繋いだ魂が、思い出が、力となって湧き上がり、そして拳の連打によって世界の『滅び』へ叩き込まれる。
成否
成功
第3章 第7節
両サイドから次々に叩き込まれる攻撃によって、大いなるものは苦しむように身をよじる。
そして、反撃にへと転じた。咆哮をあげ、再びブレスによってなぎ払ったのだ。
何人かの仲間が撃墜され、残った仲間たちが『昴星』アルム・カンフローレル(p3p007874)のもとへ合流していく。
そこには二人のステラの姿もあった。
「アルム、大丈夫?」
「うん。というか……ステラが来てくれたんだ。こんなに心強いことはないよ。俺達は絶対に負けない! みんなであれを……滅びの化身を倒す!」
アルムは治癒のフィールドを展開。
そのフィールドに重ねるようにして、黒きステラが星の加護を展開した。
「まずはあのブレスを掻い潜らなくちゃね。できる?」
そう言って黒きステラが目を向けたのは『灯したい、火を』柊木 涼花(p3p010038)だった。
こくりと頷き、ギターを弾き始める涼花。
パンドラの加護を使い纏う気配は、『柊木涼花という伝説』だ。
「ふふ、ステラさんが二人……両手に花、いえ、星ですね、アルムさん?
せっかく成し遂げたんです、ケチのつけようもないハッピーエンドを獲りにいきましょう!」
『Dragonsong』と『嘆かわしきラメント』を仲間たちに付与すると、そのままアルムたちと共に突っ込んでいく。
連続して治癒の魔法を放ち続けることで、大いなるもののブレスのなぎ払いを突っ切ろうという作戦だ。
その先頭をゆくのは『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)だ。
「はっ、マジか。リスクを恐れず来やがったか。てめえはいい女だよステラ!」
白きステラにそう呼びかけると、黒きステラに振り返る。
「てめえもだ。覚悟を決めた。勇気を持って踏み出した」
そしてハイペリオンへと飛び乗ると、パンドラの加護を発動させる。
「ならよ、姉貴分として応えねえわけにはいかねえよなああ!」
パラソルを握りしめ、愛と炎の力で巨大な結界を生み出した。
それを弾頭のように突き出すと、大いなるものの放つブレスへと対抗。
直撃する光を、四方八方へと散らしながら突っ込んでいく。
「何度でも言ってやる。オレは硬い、オレは無敵だああ!」
あまりに巨大なそれは、仲間達をすっぽりと包み込む盾となる。
その盾に護られる形で、『指切りげんまん』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)は大いなるものへと距離を詰めた。
「ステラ様が二人? まあいいでしょう。アルム様、両手に花というものでは〜?
皆で生きて帰り……アルム様に色々奢っていただかないといけないのです〜焼肉やら懐石やら〜……なので全力でがんばりますよぉ」
バッと扇子を広げ、パンドラの加護を発動。
巨大な黒龍の姿をとると、その腹より竜の頭をのぞかせる。
次々にブレスを放つ竜たちに弾幕を張らせると、黒龍もまた口を開く。
狙うは右目。傷を治させぬように追い打ちをかけるのだ。
「さて、いきますよ」
『ゼピュロスの息吹』を発動させながら『恒常性グランギニョル』の力を喉に込め、ブレス砲撃を開始。
無数の弾幕をつれた黒き光線が大いなるものの顔面へとぶつかる。首を振って逃れようにも、それを回り込んだかたちで追撃を仕掛けていった。
「メイメイ、乗れ!」
牡丹が飛び退き、代わりに『約束の力』メイメイ・ルー(p3p004460)がハイペリオンへと飛び乗る。
そして顔を埋めると、スゥーーっと息を吸い込んだ。こんな場所だというのに、やっぱりお日様の香りがする。
「えへへ、ハイペリオンさまも来て下さって頼もしい、です」
ちらりと見ると、二人のステラがメイメイの顔を覗き込んでいる。
「……旅の仲間が揃いました、ね。良かった……本当に」
短杖『カペラの道行き』を握りしめると、メイメイは大いなるものを見つめる。
「さあ、これからが正念場です。ぎゃふんと、言わせてあげましょう……!」
「まあ、ね。あなたにも色々言われたし。少しくらいは応えてあげないと」
つんとした顔で星の加護をかけなおしてくる黒きステラ。
一方で白きステラは微笑みながらメイメイによりそった。
「うん。一緒に、行きましょうね」
メイメイは頷き『黄金色の護り』と『全覚ノ奏者』を付与。
大いなるものの右目めがけ、『界呪・四象』と『神翼の加護』を大盤振る舞いでぶっ放す。
無数のミニペリオンがハイペリオンの加護を受けて突撃していった。
そしてメイメイ自身もハイペリオンの背から飛び立ち、杖にこめた『フルルーンブラスター』を叩き込む。
「わたし達は、負けません。この手で、未来を掴み取るのです……!」
成否
成功
第3章 第8節
【昴星】の面々が大いなるものの右目を重点的に追撃したことで、続く【騎兵隊】の作戦は成った。
「騎兵隊の力は今まで魚群や牙に例えてきた。しかし、今は違う」
空を飛びまわり大いなるものの注意を引きつける【昴星】を見上げ、馬上より錫杖を掲げる『流星の少女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)。
「全てを滅ぼすものがあるなら。私達は対する「剣」となろう。
全剣王とも打ち合った「剣」――存分にご覧あれ!」
後光を放ち、パンドラの加護を発動させる。そして戦旗へと持ち替えると、それを天に掲げて降った。
「全員生きて帰るわよ。突撃!」
イーリンの号令によって一斉に突撃を開始する騎兵隊の面々。
狙うは目を潰した右側だ。
「大いなるもの。
貴方は下等生物相手に思考合戦をしているのではない。
私達がその視座に明星として登る!」
それに続く形で『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)が『現に映る天の流星』に跨がり地を駆ける。
「最早選択肢はなく。
迷い選ぶ事はなく。
只々あのデカブツに攻撃を当てるのみ!
あゝだから、総攻撃だ英雄共!
全身全霊乾坤一擲魔力暴走なんだっていい。
今もてる『全て』を吐き出せ!」
降り注ぐ無数の雷撃を仲間が受ければ、それを『描写編纂』を編集する。いつもよりも大胆な編集になっているのは、パンドラの加護を使い仮想身体へ適応しているからだろう。
――Ne-World存在定義概念拾伍項『悪魔』即ち『悪縮魔羅』也。
「『汝の征く終幕の定刻まで我は筆を執り続ける』」
そんな支援をうけ、『流星と並び立つ赤き備』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)は『フリームファクシ』にお騎乗し走る。
「くっくっく、でかいのは一つ墜とした。
ならばあとは残りを墜とすのみ。一つの剣となった騎兵隊のその切っ先、先駆けを担うこのアタシの技を見せてやらぁ!」
エレンシアは先頭へと出ると、手にしていた武器に力を流し込む。
「出遅れた分はまだまだ取り返し切れてないからな! こいつを討って取り返し、とするぜ!」
「――今!」
「応!」
イーリンの叫びに応じて、エレンシアは『終焉のレーヴァテイン』を発動。
緋色の光が武器を包み、『コードレッド・オーバーゾーン』が大いなるものの右半身へと叩き込まれる。
「こいつで決める! アタシの最大級の一撃だ! 食らいやがれ!」
空に気を取られ、そして右側への注意が疎かとなった大いなるもの。その巨体に不意打ちの如く突き刺さった緋色の斬撃は肉を大きく斬り割いた。
否、それだけではない。
『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)が『マジカル☆アハトアハト』をインフィニットモードに移行させ、既に傷口を照準にとらえていた。
「みんなの想いはステラに届いた。あとはあれを撃ち落とすだけ。
大いなるもの。世界を滅ぼすためだけの存在。
みんなの「だいすき」な世界を、壊させはしない……!」
『ティタノマキアの閃光』を発動。増幅に増幅を重ねた『マジカル☆アハトアハト・インフィニティ』が傷口へと発射される。
莫大なエネルギーを伴った巨大な光が、天をつく巨体へと突き刺さるのだ。
「どれだけ大きくても、私達全員の力なら負けはしない。これで終わりにするよ」
静かな呟きは、激しい雷鳴の中でもよく響く。
それを聞きとがめたわけではないのだろうが、大いなるものはぐるりと振り向いて騎兵隊の一団へと口を開いた。
「ブレスが来るよ!」
『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)が叫べば、イーリンが『騎兵防御陣』を発動。素早くイーリンを先頭にした陣形が組まれ、巨大な結界が部隊を覆う。
「ドラゴニックの首は獲った。ステラさんも無事。あとはもう、大いなるものを倒すだけ! 「剣」の折れない粘りと、落ちない斬れ味を持続させるのが私の仕事!」
ヴェルーリアは再びパンドラの加護を発動させ『黒竜魔人』の姿をとると、叩きつけられるブレスに対抗したイーリンめがけ全力で治癒と付与の力を流し込んだ。
対象の戦闘行動を最適化させる特殊支援術式『SS』、更に勇者を助ける運命の術式『FFA』。加えて希望の呼び声『CoH』。そのうえで送り込むホープの到達点『希望』。
盾となった者を決して沈ませない完璧な力が、黄金のごとく輝いてイーリンを包み込んでいく。
ゆえに、滅びのブレスとて耐えきってみせるのだ。
成否
成功
第3章 第9節
ブレスを耐えきった騎兵隊。
そこから即座に反撃が始まった。
「っし!とりあえずお姫様は助けられたって事で。最後とどめさしにいきましょか!」
『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)は仲間がブレスに対抗していた間に『SSSガジェット3.0b』『完全逸脱』『ダニッシュ・ギャンビット』をそれぞれ自らに付与。最大火力を出せる状態にまで持っていくと、更に『天衣無縫』まで重ねて完全な状態へと移行した。
「オマケにこいつで、これで全力や――!」
『ゼピュロスの息吹』を瞬間的に発動させると、構えた弓に『メテオバースト・ストライド』と『オーバーザリミット』の力を連続して乗せ、一撃に込めて放った。
斬り割かれた大いなるものの傷口へと突き刺さった矢が、爆発したような衝撃を発生させる。
そこへ更なる追撃をしかける『100点満点』Lily Aileen Lane(p3p002187)。
「私の我が儘に騎兵隊を巻き込みたく無くて別行動してたけど――目標達成したので騎兵隊に復帰です!」
どこか安心感のある顔つきで『執行兵器・薊』を構えると、至近距離へと飛び込んでいく。
「大いなるものへ、何度でも貫いてあげるのです! 騎兵隊のlily、行きます!」
叩きつけるパイルバンカー。レバーを引き、杭を思い切り叩き込む。
それは鱗をはいでさえ今だ頑強な肉を穿ち、その巨体に杭をめり込ませる。
滅びの怪獣とて、Lilyの杭を拒むことはできないのだ。
一方でティンダロスに騎乗し走っていた『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)はパンドラの加護を使い身体に更なるオーラを纏う。
「あの嬢ちゃんこっち側に着いたみたいだな。じゃあ残るのはこのデカブツだけか。
エイスもイデアも居るみたいだし、ちょいと気合い入れ直すか……!」
ふと見上げれば、かつて交流し、そして共に手を取り合った『友達』が空を飛び大いなるものへ果敢に攻撃を仕掛けている。ちらりと見たエイスが、マカライトへ小さく手を振ったのが分かった。
こくりと頷き返し、そして大いなるものを睨む。
こんな怪物を相手にするのは、もしかしたら『出身世界』以来かもしれない、などと思いながら。
「そろそろ膝を突いてもらうぞ!」
マカライトは生み出した鎖で巨大なフェンリルの顎を編み上げると、大いなるものの足へと食らいつかせた。
がくりと大いなるものの動きがとまり、鎖を切ろうと爪が振るわれる。
『天下無双の貴族騎士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)はシェヴァリオンの馬上で厄刀『魔応』を抜くと、その隙をついて襲いかかる。
「しばらく気力回復のため休んでいたが、新たな力を得た今、騎兵隊として、そして貴族騎士としてこの戦場に立たせてもらう!」
パンドラの加護を発動。シュバリエの一族に伝わる真の力を身に宿らせ、倍加した『ルーラーゾーン』を解き放つ。
「貴族騎士流秘――真奥義!」
最大火力で繰り出された斬撃は巨大な光となって大いなるものの傷口を十字に斬り割き、激しく血を吹き出させる。
右目から血を流す大いなるものが、痛みに顔をしかめる様子がこの距離からでもわかった。
「総員、ここから正念場だ、全力でいくぞ!」
シューヴェルトの叫びに対抗し、大いなるものは彼らめがけて爪を振り下ろす。
すべてを斬り割く暴風を纏った爪の一撃だ。くらえばタダでは済まないだろう。
そんなときに前へ出たのは【麗しの覇王】ギネヴィアに跨がった『闇之雲』武器商人(p3p001107)だった。
爪の直撃をうけ粉みじんに斬り割かれた――かと思いきや、足元から吹き上がる不可思議な存在によって身体を埋め、そして笑う。
その様子に、大いなるものは明らかに『一手指し間違えた』ことを悟った。
だが、この世界に待ったはない。武器商人はここぞとばかりに『太陽と月の祝福』を追加発動。
「──落ちろ、凶星!」
『拝謁せよ、瑠璃の骸套』『レガリア・レガリア』をそれぞれ付与したその身から、『頭を垂れよ、緋色の罪杖』を解き放つ。
影の茨が大量に生まれ、巨大な槍となって大いなるものの腕へと突き刺さる。
そして絡みつくように枝分かれすると、大いなるものの腕を引っ張った。
思わずそれを引きちぎる大いなるもの。だが、その隙もまた大きかった。
「勝とう、進もう……どこまでも。
君の、君達の望む場所まで付き合おう」
その隙を見逃さず、『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は仲間全体へと攻撃指示を飛ばす。
『クェーサードクトリン』『タクト・オブ・グレイゴースト』『アブソリュートグレイス』『英雄奇譚ラグナロク』の付与効果としてシャルロッテの声は響き、追従する戦闘人形部隊レギオンたちは一斉に重火器を構え打ちまくった。
弾幕と爆発が大いなるものの側面を打ち、隙が更に大きなものとなる。
「さあ、この隙を逃さずに。一斉攻撃」
シャルロッテの声に応え、仲間達が一斉に最大火力の技を解き放つ。
それに対抗するように大いなるものが大量の雷撃を放つが――。
「これが騎兵隊なのか、凄いね! それでは、私の出来ることで先輩達をサポートだ!」
『サキュバスライム?』ネクタル・S・ライム(p3p006674)がそこへ治癒の魔法を広範囲に発動させた。
スライム状の身体をぷるりと震わせ、その歪ながらも完成された姿で大いなるものを見上げる。
「ふぅ、人が多いと大変だね! でも世界を護る戦いだものね、頑張るよ! だから、皆で生きて帰ろうね♪」
ライムの治癒魔法に支えられる形で、仲間達は攻撃の第二派を開始。
その中でも特筆する火力を放ったのはやはり『無職』佐藤 美咲(p3p009818)だった。
「もはや考えるまでもない! 全員突っ込みまスよッ!!」
先陣を切って仲間を扇動した美咲は『完全逸脱』『SSSガジェット3.0b』『業撃鉄芯』を纏めて発動。うなりをあげ蒸気を噴き出す義腕を一瞬だけそっと撫でた。
そんな彼女の見せる超反応の動きに、仲間達が一斉に引っ張られる。
流石の大いなるものとて、美咲の反応速度を上回れなかったらしい。腕を払うより早く、その攻撃は始まっていた。
飛んできたでっぷりしたワイバーン『バーベ』に飛び乗り、大いなるものの傷口へと再び回り込む。
そして至近距離から鋼の拳で殴りつけた。
放射状に衝撃が走り、そこへ仲間達の攻撃が重なる。大いなるものは、激しい痛みによってその身体を大きく揺らしたのだった。
成否
成功
第3章 第10節
影の功労者の話をしよう。
騎兵隊が部隊を率い、大いなるものを正面から捕らえていたその一方で、『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)は闇に紛れるようにして大いなるものの裏側へと回っていた。
「無事ステラさんは助かったし、もう心配することはないね。
新しい門出の邪魔をする輩はお引き取り頂こうか。
偉そうに踏ん反り返るその足、引っ掛けて引き摺り回してあげるよ!」
大いなるものが爪を振り回し騎兵隊へと殴りかかる一瞬、その動きに鈍りが出た。
というのも、雲雀が呪術を用い不意打ちを食らわせたためである。
呪力を含ませた血液を指につけ、宙をなぞる。描き出された複雑怪奇な呪印は力を持ち、『灰燼世界』の呪術を発動させる。
突如として大いなるものの身体が燃え上がり、そこへ更なる『禁呪血・蒼怨穿紅』を発動。
絶対零度の矢となったそれは、今まさに振り込まれようとする腕へと突き刺さった。
それが、騎兵隊への一撃を鈍らせた一撃だとは、大いなるものとて気付けない。
「さて、一斉攻撃の時間かな?」
『流転の砂時計』を発動させ、ファンブルをキャンセル。『恒常性グランギニョル』の呪術を紅の矢へと変化させると、仲間達の一斉砲撃にあわせ影からの連打を放ったのだった。
成否
成功
第3章 第11節
ここまでの戦いで重篤な負傷者が出ていない理由がある。それは、『青薔薇救護隊』フーガ・リリオ(p3p010595)率いる青薔薇隊が負傷者を逐一陣地へと運び込み、仲間達と共に治療し続けていたためだ。
そしてその事実に、大いなるものが気付かないはずもなかった。
猛攻を受けながらも、負傷者を陣地へ運ぼうとするフーガたちを振り返り、咆哮をあげる。
そして負傷した足を引きずるように動かし、フーガたちを追って動き出したのである。
「まずい、こっちに来る!」
「陣地まで入られればコトだぞ!」
移動中だった『終音』冬越 弾正(p3p007105)たちはドレイクチャリオッツを反転させ、大いなるものへと立ち塞がる。
「ここで止める。できるな!?」
「ああ、勿論!」
フーガはトランペットを手にするとパンドラの加護を発動。光の翼を展開し、青薔薇のマーチを奏で始めた。
咆哮をあげた大いなるものに応じるように、天空が稲妻を降り注がせる。対抗して放った治癒の魔法が仲間達へと広がり、対抗するように雷へとぶつかっていった。
「皆、無事?」
そこへ合流してくる二人のステラ。
フーガは『立派になったなあ』と白きステラを見てから、黒きステラに振り返った。
「初めまして。早速だが人助けと行こうじゃねえか。
大丈夫、青薔薇隊もいる……一緒に頑張ろう!」
「ええ……けど、あれを止められるの?」
「なあに、一度やったんだ。もう一度やればいい」
弾正はマイクを握りパンドラの加護を再発動。更なる轟音が雷撃と共に降り注ぐが、それを広く展開した音の魔法で相殺していく。
『愚かな、滅びを受け入れぬか――』
頭に直接響く声で語りかけてくる大いなるもの。弾正は不敵に笑い、マイクへと叫ぶ。
「愚かなどではない。諦めない心が俺達の原動力だ。
大いなるものよ、その胸に敗北を抱くがいい!」
その一方で、『青薔薇救護隊』レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)は弾正の馬車に乗せられていた負傷者を自分のドレイクチャリオッツへと移し替えていく。
「ほらほら、乗ってくださいまし。無理は良くないですよ」
負傷者を収容したところで、馬車を走らせるレイア。
逃がすまいと天空に出現した無数の魔方陣がレイアの馬車を狙うが、レイアは御者台から戦旗を高く掲げ治癒の魔法を放出する。
青き薔薇のような幻影が一帯へと散り、無数の光の槍が空中で相殺されていく。
「足止めは任せましたよ」
「ええ、早くそちらは急いで陣地へ!」
大いなるものの動きに合わせ、その眼前へとワイバーンで回り込む『ポイズンスペシャリスト』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)。
「仲間となら困難を乗り越えられると、僕もフーガ様達に教わりました。今一度勇気を持って共に立ち向かいましょう!」
背負っていた矢筒から洗練された動きで矢を取ると、流れるように弓へとつがえる。
『摂理の視』を発動させて狙いを定めると、矢に『月の雫』の力を込めた。
「――そこです!」
大きく動く大いなるものの頭。その眼球へ、狙い澄ました矢の一撃が放たれた。常人であれば当てることすら難しかったであろうそれを、見事にジョシュアは命中させる。傷付いた片目に毒の矢が突き刺さり、大いなるものは一瞬動きを止める。
そんなジョシュアたちをなぎ払おうと、大いなるものが爪を振り上げた。
「ン。ステラ 夢叶ッタ。青薔薇ノ如ク。
コノ戦イ 死者出タラ ステラ 責任感ジル。
ソウサセナイ為ニモ 誰モ喪ワセハシナイ」
『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)が両目をカッと光らせる。そしてイクリプスの姿を再びとると、グッドクルーザーへと呼びかけた。
「深層希望合体!」
「了解しました、希望の戦士フリークライ!」
高く跳躍したフリークライの全身に、分解し変形したグッドクルーザーのパーツが装着される。
「「ビッグクルーザー・XZ・フリークライ!」」
巨大なフリークライを彷彿とさせるロボへと合体したその姿は、双頭の青鳥と翼を背負って輝く。
「ダブル アクティベート!」
瞬間、大いなるものの爪が叩き込まれた。
対抗するように治癒の力を展開。『エンジェル・レイン』を同時発動させたそれは、大いなるものの放つすべてを斬り割く暴風の爪を耐えて見せた。
爪の一撃を抑えている最中、今のうちだと目で合図を送る。
それを受けたのは『青薔薇救護隊』常田・円(p3p010798)の救急馬車だ。
軍馬にひかれたそれは、負傷者をのせて大いなるもののすぐ横を走り抜けていく。
暴風と雷撃の余波が馬車を揺らすが、円は負けじと馬の手綱を握りしめた。
「ステラさん! 良かったです! さあ、目的の1つは果たせました! ならば、どんどん進むだけです! 青薔薇のマーチに乗って!」
円が操るのはただの馬車ではない。これまで幾度も人々の命を救ってきた救急馬車だ。
影の領域の悪路であっても、それは変わらず走り続けた。
「救命は速く早く、そして確実に!」
円含む青薔薇隊の馬車が青薔薇陣地へとたどり着く。
そこには負傷者が大勢集められ、今なお治療が進められている。
円は馬車に収容していた負傷者に肩を貸すと、陣地で治療する『雨に舞う』秋霖・水愛(p3p010393)たちへと引き渡す。
水愛は保護結界とオルド・クロニクルを駆使して陣地を護り、そして持ち前の『ホワイト・クイーン』技術と治癒魔法を駆使し負傷者の治療に当たっていた。
負傷者はイレギュラーズたちよりも、援軍たちにこそ多く、その多くは酷い傷を負っていた。
けれど、水愛は慌てない。これまで大勢を助けてきたのだ。今回だって、それは変わらない。
マイペースを維持し、次々と負傷者を回復させていく。
「こうやって治療にバタバタしてると白いステラちゃんと頑張ったの思い出していいねぇ~」
振り返ると、空を二人のステラが飛び、大いなるものへと抵抗を試みているのが見える。
その景色に、水愛はあえて微笑んで見せた。
「ステラちゃんが二人! これは素敵な物語になりそうだね? 後は悪いのをやっつけてハッピーエンドで〆って感じになるに違いないよ」
そしてすぐに、陣地から『貴方を護る紅薔薇』佐倉・望乃(p3p010720)の操る馬車が飛び出していった。新たな負傷者を収容するためだ。
馬車を操りながら、望乃は空を飛ぶ二人のステラを見上げる。
「もう一踏ん張り、ですね。
頑張ったご褒美に、美味しいお菓子をご馳走様しますから
あとで白いステラさん、黒いステラさんの好きなものを教えて下さいね?
わたしはアップルパイが大好きですよ!」
直後、大いなるものの放つブレス砲撃が地面を舐める。
急カーブをかけてブレスをかわした望乃だが、馬車に乗っていた仲間たちがその車体事傾く。
続いて無数の魔方陣。雷撃と光の槍が次々に馬車を襲うが、望乃は治癒魔法を展開して抵抗した。
一方で、馬車から飛び出す『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)。
「黒い方のステラ君、青薔薇隊の話をした時の君の表情を忘れていないよ。
今度こそ、共に戦おう。
そして無事に帰還し、建てよう。『ステラたちとみんなのわくわくHOUSE 2nd edition』を――」
思い出が、伝説が、そして人々の祈りが、ルブラットたちの背中を押している。
ルブラットは短剣を手に大いなるものへと走ると、その剣に『祈り』を込めた。
踏み出した巨大な足に、突き刺さる短剣。
そこから『識の殺・業式』『薔薇黒鳥』『滂沱の海』を連続して叩き込んでいく。
まるで刃の嵐だ。
そうやって激しいBSを流し込んだところで、馬車から同じく飛び出した『惑わす怪猫』玄野 壱和(p3p010806)が追撃を仕掛ける。
[ツキハネ]の翼で飛行し、[せんり]の力を発動。イクリプスの姿となった今、壱和が見逃すものはない。
「ここが正念場ダ! アーリーデイズフル稼働! 行くゼ!!!」
大いなるものが更なる咆哮をあげ、雷の雨を降らせてくる。
「しのし、ふしなし、つくれ、ホウライのクスリ!」
対抗して[ほうらい]の術式を起動する壱和。
「[ねこのおう]の加護が付いているからには誰一人として死なせネェ!!!」
白き銅鉾にも似た躯体が振り回され、権能が振りまかれる。
馬車は大いなるものの足元を駆け抜け、そして負傷者たちを次々と収容し始める。そんな彼らを、収容しながらにして治癒し始めていた。
そこへ降り立つ黒きステラ。
星の加護を展開する彼女に、『茨の棘』アレン・ローゼンバーグ(p3p010096)は小さく手をかざした。
「一緒に頑張ろうね」
「ええ、そっちも。この人たちをお願いできる?」
「ああ、任せておいて」
アレンはパチンと指を鳴らし、パンドラの加護を発動。いびつな翼を広げると、口づけた指先から薔薇の花びらを散らした。
振り返り、馬車への攻撃を始めようとする大いなるもの。だがそれを、アレンたちが許すはずがなかった。
「友達も皆も守りたい――僕の赤薔薇が微笑んでくれますように」
願いを込めて、薔薇のレイピアを振り抜く。
美しい魔法の薔薇が大量に散ったかと思うと、大いなるものの胴体へと叩きつけられる。それは頑強な鱗を斬り割き、まるで散る薔薇のように血を吹き出させた。
「黒い方のお嬢さんが無事で何よりだ。ハッピーエンドまで走るぞ、皆」
そんな仲間達を馬車から降り立ち支援するのは『最強で最高のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)の役目だった。
『口笛と軽口』『約束の口吻』『詩歌顕現』を発動させて楽器を構えると、『十六弦の叙事詩』を歌い始めた。
(見ろ、これが希望の歌、希望の音、そして人の力だ!)
ヤツェクがこの世界へと召喚されてから、それこそ色々なことがあった。出会いがあり、別れがあり、そして何より数多の戦いがあった。
救われた人々。叶わなかった嘆き。繋いだ希望。そのすべてを背負って、ヤツェクは歌うのだ。
その歌が、星から降った滅びに負けるはずはない。
『母になった狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)は負傷者を次々に担ぎ上げて馬車へと運び込むと、馬車の扉を閉めて振り返る。
「青薔薇隊の士気も上がってるみたいっすね。
ハッピーエンドで終わる為に最後まで気を抜かずに!
みんなで生きて帰るっすよ!」
馬車を狙って繰り出される大いなるものの爪。対して、ウルズは大地を蹴って跳躍する。
自らに秘められたパンドラの加護を使い、激しいオーラを全身から吹き上げさせる。
「皆には、指一本――爪の先ですら触らせないっす!」
空中で繰り出された回し蹴りが大いなるものの爪と激突。凄まじい暴風が刃の群れとなってウルズを襲うが、それをウルズは耐え抜いてみせる。
「さあ、先に行くっす。後から必ず追いついてみせるっすから!」
まるでフラグのようなことを言いながら、地面に着地するウルズ。帽子を被り直すその後ろ姿は、誰よりも頼もしかった。
成否
成功
第3章 第12節
「ステラ」
『竜域の娘』ユーフォニー(p3p010323)は黒きステラへと振り返ると、優しく微笑んだ。
「手荒にして、ごめんなさい」
「……いいのよ。けど、今度は『あいつ』へ手荒にするんでしょ?」
黒きステラに言われて、ユーフォニーは表情を苦笑へと変える。
「そうなりますね。けど、必要なことですから」
ユーフォニーはパンドラの加護を使用し竜の姿となると、空へと羽ばたき飛び上がった。
「ねえ、凶星。
その果てしない欲望は苦しくないの?
喰らったものはちゃんと美味しい?」
問いかけながら、爪を振り上げる。
万華鏡のような光が爪へ集まり、振り下ろしたと同時に大いなるものへと衝撃が走った。「そう生まれ落ちただけなら裁かれるべきものなの?」
問いかけに、大いなるものは顔をしかめたように見えた。
『笑止――。我が存在は、滅びのため!』
拒絶するように頭へと声が響く。
それでも、ユーフォニーは止まらない。終わらない。
そんな彼女の手の中で、星の鍵が光を放った。
ああ、時が来た。ユーフォニーが願えば、裁きの光を放つことが出来るだろう。
「星の祠が、貴方を裁きます。今のままの貴方を、進ませるわけにはいかないから!」
成否
成功
第3章 第13節
仲間達の猛攻によって、大いなるものの動きは確かに鈍っている。
溢れんばかりの殺意と、未だビリビリとする感覚は残っているものの……。戦えない相手じゃない。そう、思わせてくれるのだ。
『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は剣を手に、鉄帝のスターであるコンバルク・コングへと振り返った。
「コングさん、共に戦いましょう!」
「オリーブ・ローレルか。望むところだ」
コングが鉄帝のスターならオリーブは鉄帝の英雄だ。二人は同時に大いなるものへと走り出すと、まずオリーブがクロスボウで射撃を開始。
大いなるものが雷撃を広範囲にまき散らし、それが二人を襲うが、『アクアヴィタエ』を使用することで強行突破。
「正面から全力を叩き込む、我々が慣れ親しんだ鉄帝のやり方でもあります。全力で派手にやりましょう」
「ウホッホ!」
オリーブとコングは同時に大いなるものの足元へと飛びかかると、斬撃と拳を同時に叩き込んだ。
凄まじい衝撃が二連打で押し込まれ、そこへ『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が追撃を開始する。
「おー、あれがこの戦場のラスボスですか。
絶景かな、絶景かな♪
どうせなら、お花見団子でも持ってくれば……あ、世界の命運がかかっているので真面目に戦いますよ?
よし、では……ぶっとばしましょうか!」
イナリはパンドラの加護を使用。狐の尾から凄まじい力が燃え上がるのを自覚すると同時に、『デスティーノ・コイントス』を発動させた。
大太刀の鞘をとり、豪快に抜刀。
「ここまで来て後には引けないわね、切って切って、攻撃あるのみ! 傷付けられるなら何時かは殺せるはずよ!」
オリーブたちのつけた傷口めがけ跳躍すると、斬撃の跡にクロスさせる形で自らの太刀で斬り付けた。
これまた凄まじい攻撃に、大いなるものは足から多量の血を流し始める。
『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)はふっと息を抜くと、ついにイクリプスの姿を解禁させた。
「ステラ、炎たるわたしも力を貸すの。
もう、変わらずにあらずとも、きっと良い方向へ進んでいけると、信じられるようになったから」
青き焔を背負う和服姿の女へと変貌すると、胡桃は『Dragonsong』の付与を再開。『狐影焼燃』の術式を発動させ自らを加速させると、超強化された炎を大いなるものの傷口へと流し込んだ。
『ゼピュロスの息吹』を使ってまで連打された炎は大いなるものの足を焼き、苦しみの声をあげさせる。
「大いなるものよ、其方が終焉の化身たる存在であろうとも――。
その終焉を否定する為に、皆ここにいるの。
蒼火の化身たるわたしも、その一人なれば」
そんな胡桃たちを振り払おうと、大いなるものは再び口を開きブレスの予備動作へと入った。
『歪角ノ夜叉』八重 慧(p3p008813)がザッと前に出ると、宙へと浮かび両腕を広げる。
「ドラゴニックは倒れた。そちらさんの攻撃もしっかり耐えてみせますよ」
再現『苦反』で【棘】の呪いを発現。更に相手が大きく動いてもいいようにと『モード・スレイプニル』で加速をかけると、吹き付けてくる滅びのブレスを身体で受けた。
凄まじい衝撃が身体に走るが、その一部を呪いへと変えて反射。慧の身体は吹き飛ばされたが、かなり危ないところにあったオリーブたちを守ることには成功したようだ。
「助かりました。今のをくらえばどうなっていたか」
「なに。そろそろひとつお返ししますね」
再現『呪絶』の呪力を使い、ボロボロになった身体のまま鬼血の呪刀を抜く。
「呪い、か……」
『文具屋』古木・文(p3p001262)はフッと笑って白紙『折鶴』を手に取った。
「戦意を表にだすのは得意ではないんだけどね。
でも自己暗示も兼ねて言わせてもらう。
世界を滅ぼすと言うのなら最後まで争うよ」
眼鏡をきらりと光らせると、文は『折鶴』に素早く呪いの詩を刻みつける。
(結局のところ、僕は呪いを書き散らかして、誰かを不幸にすることしか出来ない。でも、それで良かった。まさか滅びに対して殺意を記す日が来るだなんて思ってもみなかったけれど)
洋墨によって描かれた呪いは『紅イ月』の力を受けそのまま強大な呪力の塊となり大いなるものへと叩きつけられる。
それは慧の呪刀と合わさり、大いなるものに激しい出血を強いたのだった。
片足をダメにされた大いなるものは、その苦しみに声をあげ、怒りを咆哮へと変える。
天空が荒れ狂い、殺意が雷撃となって降り注ぐ。
成否
成功
第3章 第14節
雷撃の荒れ狂う空に、ひとり浮かぶ『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)。
(ひとまずこれで一安心。
理不尽に奪われることの辛さは…何よりわかっているのが私ですからね。
でも……ちょっと思ってしまいましてね。
完全に滅する前に、やるべきことを。私の為すべきことを)
一度目を瞑り、そして開く。美しい瞳には紅の色がさしていた。
「大いなるもの。話をしましょう。私、貴方の事を知りたくなりました」
呼びかけるマリエッタの声に、大いなるものは片目で視線を向けてきた。
「私は死血の魔女マリエッタ。
貴方の名は? 何を思い世界を滅ぼしに?」
本来なら無視したことだろう。大いなるものにとって、人間は矮小な存在に過ぎないのだから。
だが今となっては、もう無視することはできない。
『我は滅ぼすもの。名など不要。想いなど不要。この星のすべてを喰らい、そして共に終わるのみ』
それが、大いなるものから発せられた言葉のすべてだった。
目を細めるマリエッタ。
「そう……貴方は、『なにもない』のね」
無垢で、狂暴で、そして……。
其はまさに、ただ純粋な破壊と暴力の化身であった。
『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)はその白き身体を飛行させ、雷撃の間を掻い潜りながら空を駆け抜けて行く。
自らの持つ付与術式、『ソリッド・シナジー』『AAA』『DEF』『賽は投げられた』のすべてを起動させ、そして大いなるものの側面へと回り込んでいく。
「さて、色々試してみましょうか?」
『声』を使い可能性を全解放。これまで疎通してきた世界そのものを武器として、大いなるものへと叩きつける。
顔面に衝撃をくらった大いなるものは、ヴァイスをにらみ付けるとその腕を振るった。すべてを斬り割く暴風を纏った爪には、殺意のオーラが乗っている。
まともにくらえばタダでは済まないだろうと滞空飛行をかけた、そのとき。
「ぶははっ! 出番だな!」
聖盾を構えた『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が前に出て大いなるものの爪を引き受けた。
『モード・スレイプニル』であげた機動力で追いつき、『アムド・フォートレス』と『ルーンシールド』で防御を固めての突撃だ。
それでも、ゴリョウの張った無効化結界は一瞬で崩壊し、盾でうけた衝撃はゴリョウの身体をいとも簡単に吹き飛ばす。
が、今回は違った。
「エイドスよ! 滅びを避ける可能性があるというのなら! 俺と共にこの一撃を防いでみせろぉッ!」
ゴリョウの手の中でエイドスが砕け散り、光の翼がゴリョウの背から吹き出るように現れる。
羽ばたきは衝撃をかき消し、ゴリョウの盾は見事に爪を受けきってみせる。
『――!?』
驚きの表情を見せる大いなるもの。だがその目には、まだ余裕の光があった。
その瞬間を、『涙を知る泥人形』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)たちは見逃さない。
「なぜ俺が泥の身体をしているのか、馬鹿の一つ覚えみたいな生き方にも意味はあった!! それを証明してみせる!!」
空へと飛び上がり、ゴリョウめがけ集中しつつあった大量の魔方陣の前に出る。
大量の雷撃がマッダラーへと集中するが、『アクアヴィタエ』を使用しながら無理矢理に耐える。
「まだ耐えられる!! 腕がちぎれようが、足が吹き飛ぼうが、俺の後ろに守るべきものがある!! ならば俺は立ち続けよう!!!」
稼いだのは、永遠に近い一瞬。
「泥人形を舐めるなよお!!!」
『晴夜の魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)が男性モードをとって『欠けない月』ピリア(p3p010939)を共に前に出た。
「黒いステラは、無事に救出できたみたいだね。
だったら、後は簡単、大いなるものを打ち倒すだけだね。
うん、敵はかつてない程に強大だけど、不思議とマリオンさんも怖いとは思わないよ。
何故って、隣にピリアが居るからね。
だからアレは倒すよ。マリオンさんも、ずっとピリアに隣にいて欲しいからね。
さあ行こう、何時も君と未来へ」
構えた武器に『殲光砲魔神』の力を込めて全力放出。
「ステラさん、助けられてよかったの〜♪
これで、あとはおっきい子ぽこぽこするだけだよね?
ピリア、マリオンさんといっしょだったら、おっきい子が相手でもこわくないよ!だって、マリオンさんの隣で、ずっといっしょがいいから。
まだまだがんばるの! むんっ」
一方でピリアはパンドラの加護を発動。『ステイシス』の魔術を放ち、大いなるものの動きを鈍らせにかかる。それを察知した。マリオンは『糸切傀儡』をあわせることで足止め効果を強化する。
「おまけに、『ワールドエンド・ルナティック』なの!」
狂気の力が大いなるものへと襲いかかり、そこへ仲間たちによる全力の攻撃が重なる。
大いなるものの目から、余裕の光が消えつつあった。
成否
成功
第3章 第15節
星より滅びを齎す大いなる獣は、血にまみれていた。
あげる咆哮は手負いのそれ。
全身に滅びの気配を纏った『大いなるもの』は、殺意に満ちた咆哮をあげた。
雷鳴が轟き、大地がえぐれんばかりの衝撃が辺り一面に走る。
それを掻い潜るように走りながら、大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)は艤装の砲をすべて大いなるものへと向けた。
「あぁ、我等には、こんなにも多くの味方がいるのだな。それに武蔵には貴様もついている、全く、負ける気がしないな!!」
「任せて武蔵! あれを倒すまで、絶対に武蔵を守り切るからッ!」
すぐそばを飛行し、翼を羽ばたかせる『武蔵を護る盾』レイテ・コロン(p3p011010)。
幾度も大いなるものの攻撃を防いできた彼の表情は明るい。
そんなレイテたちをぎろりと睨んだ大いなるものは、素早く結界を展開したレイテめがけて大きく口を開いた。
「ブレス攻撃だ! 来る!」
武蔵を庇うように前へ出ると、レイテは『茨の鎧』と『ルーンシールド』を全力展開。
吹き付けるブレスの砲撃を防御――しようとして、その圧力に目を見開いた。
「この威力、これまでと違う!」
一瞬で結界が割られ、幾度もレイテを衝撃が襲う。気づけばレイテは吹き飛ばされ、派手に地面を転がっていた。視界が高速で回転し、そして血色に滲む。
「レイテ!」
「振り返らないで、撃って!」
レイテの叫びを受け、武蔵は歯を食いしばった。
「砲撃戦用意!! 目標確認!!
大いなるものよ、受けるがいい!!」
レイテに守られたことでダメージを負っていなかった武蔵。そのすべての砲から全力の砲撃を放った。
連続する爆発のような音と衝撃。それは大いなるものの胸に直撃し爆ぜる。
「何者をも敵として見ていなかった者が、我等を敵として見た所で、全ては『今更』よな!!
貴様の敗因は、己と世界の未来が定められた物と決めつけ、あらゆる可能性を見ようともしなかった事だ!!」
「人類を警戒するのが遅過ぎたなッ!大いなるものッ!
今目にしているのが、お前を否定する「この世界の声」だッ!」
ふらつきながらも立ち上がり、叫ぶレイテ。
『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)は大地を駆け抜け、砲撃によって舞い上がる煙に紛れて突っ込んでいった。
「ほんとーにしぶとい野郎だな、まったく!」
風の魔法で固めたナイフを握りしめ、パンドラの加護を使用。
「突然出てきて、本当に何様のつもりだ! 確か、まだ、くそったれな世界だろうさ。嫌になったり、壊れてしまえと思ったことなんか、なんどだってあるさ。お前より遥かに前から、お前よりずっと細かいところで見てきたんだ。そう、なんどもな――」
サンディを風がとりまき、振り抜くナイフが巨大な斬撃へと変わる。
「でもな、そんな世界でも、それでも――ここにある皆が、先を繋いでいく世界なんだ。あいつが、アイオンが、生涯をかけて繋いだ世界なんだ」
斬撃が、たちのぼる煙を割って大いなるものの胸を切り裂く。
「俺の目の黒いうちにゃ、てめえなんかにバラバラにさせるものかよ!」
瞬間、大いなるものの傷口に『茨咎の鎖』が走った。
仲間達の動きに紛れるようにして接近していた『シャドウウォーカー』バルガル・ミフィスト(p3p007978)が、ナイフをその傷口につきたてていたのだ。
(さ、いつも通り。やれる事を熟すだけでございます)
にやりと笑うバルガル。その姿に一瞬にして変化した。パンドラの加護を使い変化したのは、相手を殺傷する概念そのもの。
かつて彼がいた世界で振るった、都市伝説のごとき恐怖の力。
「――!」
執拗なその攻撃に、大いなるものはバルガルを掴み投げ飛ばす。
「ぐうっ――!?」
地面へと叩きつけられ、バウンドして転がる。しかしナイフは手放さず素早く立ち上がり、再び大いなるものへと飛びかかった。
と同時に、空から大量の血の刃が放たれ大いなるものの胸へと突き刺さった。
『未来への葬送』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)のは放ったそれは、傷口へとめり込みより深く出血させる。
「そう……貴方も『なにもない』のね。
文字通りの滅びの化身。過去も未来も、可能性も何もない終幕機構。
だからこそ私達は抗い、貴方を滅ぼす必要がある」
なんて悲しい存在。なんて空しい存在。あなたはただあるだけで、憎まれる。
「――なんて、それだけで済むなら魔女はいらない。
私は死血の魔女。そして未来への葬送者。貴方を終わらせ、送る者」
マリエッタは巨大な血の大鎌を作り出すと、大いなるものへと斬りかかる。
「ええ、貴方には『なにもない』。
だからこそ、私もアタシも貴方に裁きを与えはしない」
その一撃に、『願い』を込めて。
その願いは――。
成否
成功
状態異常
第3章 第16節
凶悪な雷鳴が轟くなかに、鳴り響く音楽があった。
それはもはや世界が知る音楽、『青薔薇のマーチ』。
その音楽と共にやってくる彼らの名は――『青薔薇隊』という。
「あと少し、あと少しで滅びの未来を打ち砕けます!
今は混沌世界が僕の生きる場所! 僕の故郷です! 絶対に守ってみせます!」
仲間を救急馬車に乗せて走る『青薔薇救護隊』常田・円(p3p010798)。
ちりちりと身体を焼く影の領域の空気に軽く咳き込みながら、大いなるものの足元を回り込むように駆け抜ける。
「そこです! まずは機動力を殺しましょう!」
『ヴァイス&ヴァーチュ』の魔術を起動すると、円は指を突きつけるようにして魔方陣を展開。複数に重なった魔方陣は魔術の弾丸を作り出し、連続で大いなるものの足元へと叩き込まれた。
見上げるほどの巨体ながら、足には酷い傷が残っている。そこへと畳みかけたのだ。
「大いなるものを止め、死者を出さない! 今の僕達ならやれます!」
「その通りだ――!」
『青薔薇救護隊』フーガ・リリオ(p3p010595)は『青薔薇のマーチ』にアレンジを加えて演奏し始めた。
ステラがこの曲を好きだと言ってくれたことがある。そう、思い出したのだ。
どこか勇猛で、そして壮大で、伝説の締めくくりのような音楽が場を支配する。
その音楽は力となり、馬車に乗った仲間達の背中を押した。
(――奇跡の花や星、明日に届け!)
パンドラの加護を使い背から光の翼を広げるフーガ。
フーガは演奏に込めた想いを形にすると、大いなるものへと巨大な爪の一撃を見舞った。
青く輝く光の爪が、巨大な身体を引き裂きにかかる。
頑強な鱗を傷つけられ、大いなるものは憎しみを込めた目でフーガたちをにらみ付けた。
『なぜそうも抗う。下らぬ世界だ。愚かな人間で溢れた世界だ。守る価値など、あろうものか――!』
対して、『最強で最高のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は不敵に笑った。
「そうかもな。この世界にも嫌な奴は山ほどいたし、悪いやつもゴロゴロいた。だがな……いい世界だ。いい世界だった」
パンドラの加護を使用し、白き騎士の姿へと変わるヤツェク。
『口笛と軽口』『約束の口吻』『詩歌顕現』と順に発動していくたび、思い出が溢れていった。胸を震わせた出会いや、駆け抜けた戦場が、彼を進ませる力となる。
フーガのトランペットに合わせ、ギターを構え演奏を開始する。二人の楽器が合わさったそれは、重厚で豊かな、そして紛れもなく世界を救う音楽だった。
無数の光が舞い、それらが一斉に大いなるものへと向き直った。次々に発射される光が、大いなるものへと着弾するたびに爆発を起こす。
『おのれ――』
大いなるものは怒りを露わにブレスを吐き出し、地面ごとなぎ払うように放射する。
円の救急馬車がひっくり返り、乗っていた仲間達が纏めて投げ出された。
が、それで足を止める者などいない。『奉唱のウィスプ』クロエ・ブランシェット(p3p008486)はごろごろと転がりながらも、鞄に手を突っ込んで治癒のポーションを引っ張り出す。
「医療鞄に必要な物をたくさん詰めて来たから任せてください! まずはこれを!」
ぽいっと投げたポーションを仲間達がキャッチし、素早く飲み干す。
クロエは立ち上がりながら、パンドラの加護を発動させた。
彼女は、幸せを知っていた。平和の温かさを知っていた。だからこそ、世界の果てで、本来なら人が立ち入ることなど叶わぬこの地でさえ飛び込み、仲間と共に戦おうとしたのかもしれない。
「希望を歌い、傷を癒し、皆でハッピーエンドを迎えましょう!」
羽ばたく翼が光を纏い、フーガたちの演奏にあわせ歌をうたいはじめる。
即興でつけた詞は暖かで、聞く者の心を優しく包むようだった。
その歌を受けて、『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)が治癒の力を更に広く展開する。
「ン。キット最後ダカラト無茶スル者 多数。
最後ダカラコソ犠牲出サセハシナイ」
パンドラの加護を継続使用し、双頭の青鳥に騎乗するフリークライ。美しく咲いた花々が散り、甘い香りを放ちながら広がっていく。
それはブレス砲撃によって半壊した仲間達の体力を治癒し、再び立ち上がる力へと変えていった。
そうして『フイユモールの刻』によって連続発動した治癒の力で仲間を立ち上がらせると、フリークライは大いなるものを見上げる。
世界を滅ぼすためだけに地上へと降りた怪獣。世界の終わりの体現者。それのみを使命とした、悲しき獣。
「大イナルモノ。
存在意義果タセナカッタ君ガ今感ジテイル ソノ無念コソ。
最後 得タ 君ノ心ダ」
『――!』
大いなるものは目を見開き、そしてそれを否定するかのように爪を振り回してきた。
治癒の力を背に受けながら『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)が走り、暴風を纏う爪の一撃を掻い潜る。
纏う風がルブラットの肉体を斬り割き血を吹き上がらせるが、パンドラの加護を使い纏った炎の幻影が彼を力強く進ませる。
「では、家の名前は決定ということで……。
まあ、名前はともかく、だ。
私たちには、まだまだ話したいことも成し遂げたい願いもある。
そろそろ、帰ろうか――!」
空へと舞い上がり、大いなるものの足元へと至る。
巨大な翼が羽ばたきはじめようとしたのを察したためだ。
フーガたちの合図の音が聞こえ、ルブラットは全力の『至極劔・王威』を叩き込む。
繰り出した短剣はいくつもの願いをうけ、大いなるものの硬い肉体を斬り割いた。
それだけではない。
「毒の僕でもどうありたいかは自由なのに、滅ぼすだけなのですね……。
そんなあなたに可能性を持つ僕たちが負ける道理はありません。
どうか見守っていてください、エリュサ様……」
『愛花』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)が『押し花の栞』に祈りを込め、イクリプス化。美しく力強い弓を構えると、仲間達と同じく大いなるものの足元へと矢を放った。
特殊な毒を塗りつけた矢は大いなるものの足へと刺さり、その毒を浸透させていく。
本来ならばレジストできたはずの毒も、仲間達の集中攻撃によって浸透するだけの隙ができてしまっていたらしい。
痛みに苦しむように声をあげる大いなるもの。
その叫びは雷鳴を呼び、ジョシュアたちへと雷撃の束となって襲いかかる。それはまるで竜の群れのようですらあった。
「耐えて下さい!」
陣地を出てドレイクチャリオッツで駆けつけていた『青薔薇救護隊』レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)が、馬車から飛び降り戦旗を掲げる。
青き薔薇の幻影が広がり、巨大な治癒のフィールドを形成する。
「これで最後なら、私も力を貸しますわ」
薔薇の幻影が巨大な竜の如き形をとり、雷撃の竜とぶつかり合う。空中で相殺するその二つを見上げていると、フーガによる新たな合図があった。
二度目の一斉攻撃だ。
レイアは戦旗を翻し、攻撃魔術へとシフト。突き出すように構えた戦旗から放たれたのは、薔薇の幻影による弾幕だ。
そこへ更に、『茨の棘』アレン・ローゼンバーグ(p3p010096)が駆け抜ける。
青き薔薇の幻影にのって、レイピアに口づけをする。赤き薔薇を咲かせると、それを大量に放ち周囲へと散らした。
「僕の大切な人がいた世界も、友達いる場所も、全部守りたい。こうやって思えるようになったことは、素敵な巡り合わせのおかげだろうから。まだ見守っていてね、姉さん」
再びイクリプスの姿をとると、纏っていた薔薇の花弁が力を持ったかのように渦を巻く。
レイピアを引き絞り、そして突き出すように放つ。
「僕の赤薔薇に願われているから。ここで負けるわけにはいかないんだ」
すると赤き薔薇が巨大な槍のごとく放たれ、大いなるものの足元へと突き刺さった。
二つの薔薇の力が合わさり、大いなるものの足を貫く。
その傷を広げるように、『ねこ』玄野 壱和(p3p010806)は再びパンドラの加護を使用。
「コレで最後なんだロ?
こんなにも長い稼働時間は初めてだろうが、あと少しダ。
最後まで頼むゼ。[ねこ]たちヨ」
影の領域の『空気』にあてられ、姿をときおり霞ませる[ねこ]たちへと呼びかける。
ここはいるだけで命を削られるような場所なのだ。はじめのうちはパンドラの力でなんとかなっていたが、そろそろ身体にガタがくる頃だろう。
壱和はなんとかもっているが、仲間達には明らかに疲労の色が見えている。
だが、そんな時だからこそ――。
「即興セッションといこうじゃねぇカ!
[いかり]、術式、正式起動!Contact,Anchor,Trance!
『弓の弾/引き潮と鳴/成らば、射て狩/駆る怒り/錨』!
高らかにッ、鳴きやがレエェェ!!!」
全力で放たれた[ねこ]のオトが仲間達の演奏に乗って放たれ、大いなるものの足の傷をガリガリと広げていく。
パンドラの加護を使い、身体に薔薇を纏っていた『貴方を護る紅薔薇』佐倉・望乃(p3p010720)は、一斉攻撃委にあわせ薔薇の弾丸を連続発射。
そして返す刀で大いなるものの放つ雷撃から皆を守るために治癒の魔法を展開した。
「あと一息、ですね。
全員笑顔で帰還を果たしましょう!
だってわたし達の旅は、物語は、また明日も続いていくのですから!」
思い出すのは青薔薇隊との、そしてフーガとの沢山の思い出だ。世界中のいろんな場所に行って、遊んで、戦って、笑い合って。それを終わらせようと墜ちてきた凶星だって、今こうして撃ち払わんとしている。
そうして願った望乃の魔法は音楽へと昇華し、雷鳴を打ち消した。
大いなるものが、がくりと膝をつくように身体を傾ける。
成否
成功
第3章 第17節
「お前はどこにいて、いつから混沌を見てた?
この星もいつかは寿命を迎えるとしても、それは今では無い。
さぁ、存在意義を賭けた生存競争に決着をつけるぞ」
幾多の竜が荒れ狂うが如き雷撃の中を、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は華麗に駆け抜ける。
時折直撃コースに入った雷撃へ向け、『メロディア・コンダクター』を抜いて強引に弾くと、バチンという音が変化して美しい音色となって流れた。
イズマの姿は美しいイクリプスの姿。服の裾は炎のように燃え上がり、剣のひく軌跡は五線譜の光で出来ていた。
剣に『ケイオスタイド』と『完全掌握プロトコル』の力を込めると、斬撃として放つ。
片足を負傷した大いなるものは翼を広げ回避を試みるが、それよりもイズマの斬撃が食い込むほうが早かった。
跨がっていた箒から飛び降り、着地する『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)。
「ただ滅ぼすだけの、その為の仕組みなのね。
それなのに感情があるように振る舞って……。
あなたを創った存在は、どうしてそう創ったのかしら。
どうして、そういう風に生まれたのかしら」
浮かべる表情には、どこか哀れみがあった。
それを拒むように、大いなるものはセレナをにらみ付けて咆哮をあげる。
無数の雷撃が集中するが、祈願結界『vis noctis』を全力展開。
と同時に、パンドラの加護を発動させた。
それは祈りと願いと、そして血によって繋いだ絆の姿だ。
「――わたしは、何も取りこぼしたくない!
ステラ達は勿論、仲間も、家族だって当然!」
箒を引き寄せ、キャッチする。そしてセレナは結界の光を纏って大いなるものへと突撃した。
『すべて滅びる定めだ。なぜ抗う。なぜ――!』
猛攻を受けた大いなるものが、再びブレスを放出。大地をえぐるような衝撃が走る。
今周りにいるのはパンドラも乏しく死の危険があるような仲間たちだ。
セレナは咄嗟に結界を展開。仲間達を守りにかかる。
(どうか、これ以上なにも失われないように――すべてを、護って!)
眩い輝きを放った結界が、ブレスの砲撃を弾き放射状に反射させる。反射したブレスの光は地面にぶつかり、その地形を破壊していった。
「これは……見事だな」
『目的第一』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)はさすがに死を覚悟したものの、ダメージをまうで受けずに済んだことに安堵する。
そして、大いなるものを見上げる。
「今更こちらを敵として認識するか……どうにも個で高い能力を持つ輩は、意識が遅い事が多いな。
どうせなら最後までそのままだったら仕事も楽だったが……これだけ味方が増え、敵は減り。既に状況は最上か
さて。仕事を完遂しにいこう」
マッチョ ☆ プリンは再びパンドラの加護を発動。全身を頑強な鎧で包み、雄々しいハンマーを手にすると大いなるものへと走り出した。
大地を蹴り跳躍すると、突き出されていた大いなるものの顔面をハンマーで殴りつける。
横っ面を叩かれた形になった大いなるものは身体を揺らし、傾けた。
ぎろり、と睨む。
直後に天空に大量の魔方陣が現れ、天を埋めるかのごとく輝いた。
「――!」
危機を察した『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)が触手を展開。
前に出て攻撃を受け止めながら、治癒の魔法を放つ。
凄まじい衝撃に全身を焼かれながらも、なんとか仲間への被害を抑えきる観測端末。
それでも攻撃は続く。殺意に満ちた魔法の雨は、誰もここから生きて返す気が無いと見える。
『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)はそんな中で、仲間を守るように立ち塞がった。
「ここからが本番ってとこかな……!」
パンドラの加護を発動。3mほどの巨大な影へと膨れ上がると、その全身を機械のそれへと変えていく。
手にした『機煌重盾』と『機煌宝剣・二式』も巨大なものへと変わり、降り注ぐ大量の雷撃を盾と剣で撃ち払った。
「パドラさん」
「ん」
気付けばパドラがチャロロの後ろへとつき、銃をリロードしている。
「ここまで来てくれたんだ。全部終わったらまた祝勝会をしたいね」
「そうだね。いつもみたいに、やろっか」
ぱちんとウィンクをしてから、チャロロの影から半身を出し大いなるものの翼へと銃撃を加える。
「この世界は壊させないよ、オイラたちの可能性を信じて!」
チャロロもその意図を察し、ジェット噴射で飛び上がると巨大化した機煌宝剣を振りかぶる。
強烈な斬撃が、大いなるものの翼を傷つけた。
空へと飛び上がろうとする大いなるものの動きが、目に見えて鈍る。
「このまま翼を攻撃するんだ! 空に逃がしちゃいけない!」
「なるほどね、わかったわ」
『無限円舞』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)は地面に叩きつけられた大いなるものの尾へ飛び乗ると、そのまま豪快に駆け上がっていく。
「さて、煽ったは良いものの。さすがにこの辺で決着を付けないとまずいわね。
後はもう小細工は不要。押し切れるかどうかの話……」
『夢煌の水晶剣』を抜き、パンドラの加護を発動。
水晶の剣が変形し血塗れの鎌となり、髪は長く白く、そして背は高く美しく。
「もう言葉は要らない。私達が倒れるか、それより先にあなたが倒れるか。それだけでしょう。けれど勝つのは私達だわ!!」
ハッとして大いなるものが振り向こうとするが、それよりもアンナが翼の付け根に到達するほうが早かった。
『終焉のレーヴァテイン』を発動。紅蓮のオーラを刃に纏わせると、付け根めがけて強烈な斬撃を叩き込む。
どれだけ苦しい戦いでも、生き抜き、勝ち抜いてきた。
「これまでの戦いもそうだった、そしてこれからもそうしてみせるわ!」
成否
成功
状態異常
第3章 第18節
剣を一本だけ握った、傷だらけの青年。
それが、『超える者』シラス(p3p004421)のもつイクリプスの姿だった。
「何度潰されたって俺達は立ち上がる。イレギュラーズをなめるなよ」
大地を駆け抜けるその周囲を、地面をえぐるほどの雷撃が走る。
次々と起こる爆発のような衝撃を受けても、シラスの足は止まらない。どころか、天空を翔る。
その力強い姿から感じたものがあったのだろう。大いなるものは爪にすべてを斬り割く暴風を纏わせ、シラスめがけて繰り出してくる。
繰り出された爪は確かにシラスをとらえ、貫いた――かに見えたが、違う。
『終焉のクロニクル』が発動され、シラスはにやりと笑っていた。
底から繰り出されるのは倍化した『竜剣』。彼の伝説と名を同じくするそれは、救国の一撃だ。
剣の一刺しが、大いなるものから激しく血を吹き上がらせる。
(傷の治りが遅いな。怒りに身を任せて、攻撃に集中しているのか? だったら――)
ここまでだぜ。シラスは不敵に笑い、大いなるものの攻撃圏から素早く離脱した。
荒れ狂う空と大地のなかで、『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)は顔をあげる。
コンバットスーツ越しの景色は、まるで世界の終わりみたいだ。
(大いなるものも混沌のステラさんも、最初から俺は許せなかった。
様々な人が一生懸命生きて、そして、彼女がいる世界を滅ぼす? そんなこと絶対に許せなかった。
だが……)
あえて、声をあげる。
「大いなるもの。……考え直す気はないんだな? これだけ勝ち目がなくなっても……世界を滅ぼすために、戦うんだな?」
その声に、答えがあった。
『無論!』
怒りと、殺意と、そして何よりも強い使命感が大いなるものを吠えさせる。
「ならば――大いなるものッ! この世界に生きる存在のためにも、お前を倒す……! グッドクルーザー!」
「はい、戦いましょう! 希望の戦士ムサシ!」
ムサシは跳躍し、走ってきたグッドクルーザーと再び深層希望合体を完成させた。
巨大なレーザーブレードを握りしめ、大いなるものの翼を斬り付ける。
必殺の斬撃が、翼を大きく傷つけた。
それでもまだ飛び立とうとする大いなるものめがけ、『蒸気迫撃』リサ・ディーラング(p3p008016)が吠える。
「っしゃ! グッドクルーザーさんも来たっていうなら最高っすよ!
んじゃ、今回もお願いするっすよ!」
「全力で行きましょう、希望の戦士リサ!」
「「深層希望合体!! ――ビッグクルーザー・XZ・リサ!」」
灰色のボディに無数の火器を備えたロボットへと合体したリサ。
大地を揺らすかのごとく着地すると、アンカーチェーンを四方へとセット。
すべてのミサイルポットを開いて発射すると、四連装ガトリング砲を全力射撃。
更に肩から展開したロングレンジライフルを力の限りぶっ放した。
そのすべてが大いなるものへと直撃し、激しい爆発の連続を起こす。
激しい痛みに苦しんでいるのだろう。大いなるものは声をあげて天を仰いだ。
「畳みかけるぞ、グッドクルーザーさん!」
『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は懐から『ステラビアンカII号』のミニチュア模型を取り出すと、それを天に掲げた。
奇跡の光が降り注ぎ、モカを包み込んでいく。
飛んできたディープクルーザーがステラビアンカの姿へと変わり、分解されモカの両足へと装着される。更に両腕と頭がそれぞれ覆われ、胴体を包み込むように展開。
「「ビッグクルーザー・XZ・ステラビアンカ!」」
本来ならありえない特別な合体が完成し、モカは星の如き光を背より放ちながら飛行した。
繰り出す攻撃は勿論蹴り技だ。大いなるものが空へと逃れようとするその動きを制するように、流星の如きキックが翼をへし折らんばかりに叩き込まれる。
そこからの流れるような連続攻撃。
その様子を見上げ、『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)はぐっと拳を握りしめた。
「みんなすげえよな。あんなでかくてやべー奴相手に、誰一人臆していない。
ここに集ってる皆が皆、『希望の戦士』なんだ。アガるよなあ、グッディ?」
呟き、そして自分もまた歩き出した。
合体を解除したグッドクルーザーがその横へと並ぶ。
胸をこつんと叩き、笑う。
「これだけ希望が揃ってんなら、いけるだろ?
みんなの希望、勇気、全部受け止めて、一つにしよう」
「希望の戦士風牙……。そうですね。今こそ!」
二人が見上げると、空から三体のロボットが降下してくるのが見えた。
「レッドコプター、イエロージェッター、ホワイトドライバー!
みんなも力を貸してくれ!
これが、世界を救うための最強最後の合体だ!」
頷くロボットたち。
光を纏い空へと浮きあがる風牙。
「『最終希望合体(ファイナルパンドラフュージョン)』!!」
すべてのロボットたちが変形し、合体し、そして巨大な肉体を形成する。
そのコアとなるのは風牙。それはまさに、戦う意志と覚悟を示した風牙の精神を拡張しているかのようだった。
ファイナルビッグクルーザーは巨大な槍を手にすると、大いなるものへと突撃する。
「絶望の雲を斬り裂き、希望の太陽で世界を照らせ!」
カッと輝く槍。と同時に全身までもが黄金に輝き、大いなるものの肩口へと槍を突き刺す。対する大いなるものは正面からのブレス砲撃を放ち、グッドクルーザーによって覆われていた半透明なバイザーを破壊した。
それでも、止まらない。
「いっけええええええ!!」
風牙の繰り出した槍が、ついに、大いなるものの翼を斬り割いた。
飛行能力を喪失し、大地へと激突する大いなるもの。
一方で甚大なダメージをうけたグッドクルーザーたちは合体を解除し、散り散りに大地へと墜落していく。
成否
成功
第3章 第19節
地上へと墜落し、轟音をあげる大いなるもの。
手をつき起き上がり、殺意に満ちた片目をギラつかせるそれへ、チーム【昴星】が次々に襲いかかる。
「ステラさん達と一緒に旅や冒険、も良いよね。
シュペルさんの塔に…は、彼に怒られちゃうかな?
星の名前の素敵な仲間達、楽しい冒険ができると良いな
その為にも……!」
未来への希望を語りながら、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)はパンドラの加護を使用。両手の上に星の光を放つ書を浮かべ、全身に力を纏う。
そしてその力を、大いなるものへと解き放った。
「僕の星空は、旅の仲間や大切な人達と共に輝く!
この先の旅路の為にも……ぶち抜け!」
流星のように次々と叩き込まれる魔法。
そこへ更に、『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)がパンドラの加護を使用。イクリプスの姿をとると、ふわりと空中へ浮かび上がった。
「今度、ステラさん達と珈琲を一緒に飲みたいな。
その為にも……大いなるものを討つ!」
星の魔法が次々と打ち込まれるなかで、大いなるものへと距離を詰めた祝音は『球掴希端』を発動。悲嘆と憤怒と決意の果てに編み出した励起魔術が白き光を全身に纏わせる。
竜の群れの如き激しい雷撃がヨゾラたちを襲うが、それを強化された治癒の魔法で掻い潜っていく。
「まだまだ! 完全に倒すまで自分達は止まらないし、止まる気もないよ!
ハッピーエンドを招く為にも此処で退くわけにはいかない!」
残り少なくなった星界獣たちを剣に纏った光でなぎ払うと、『解き放たれた者』水鏡 藍(p3p011332)はその剣を大いなるものへと突きつけた。
死ぬつもりはない。だが、臆するつもりも毛頭無い。
(最後の最後まで、倒す最後まで皆と一緒に戦うつもりだよ)
大地を蹴り、仲間の付与効果によって飛翔すると大いなるものの頭上をとった。
そして血を流す右目へ向けて、力を込めた護符を次々に発射する。
散弾のように放たれたそれは、首を振ってかわそうとする大いなるものの目へとぶつかり、光の爆発を引き起こした。
そんな大いなるものの目へとしっかり狙いを定めていた『君のもとに』囲 飛呂(p3p010030)は、大きく振られ動くその巨体の眼球をとらえる。
それは空を飛行しながらも、全くブレることのない熟練の動きであった。
パンドラの加護を使い蛇神の力を顕現させると、弾丸にそれを込めた。
「――そこだ」
小さく囁くと同時にトリガーを引く。放たれた弾丸は雷瞬く天空を駆け、大いなるものの目へと着弾する。
痛みのあまり声を上げる大いなるものに向け、飛呂は更に銃撃を連発した。
眼球といわずとも、顔面へと次々に着弾する飛呂の弾丸。
その光景を見上げていた『つばさ』零・K・メルヴィル(p3p000277)は、ふと『彼女』のことを思った。
(姉ヶ崎……応えてくれて、ありがとう! 魂が繋がるのは想定外だったけど……見ててくれ)
「ねえ、何のこと考えてる?」
声をかけられ振り返ると、イデアとエイスが並んでいた。
零は気まずげにあたまをかく。
「久しぶりがこんな場なのは悪かったよ、イデア、エイス!
あとで詫びはするよ。其れこそ祝勝会とかさ?」
「あ、言ったからにはちゃんとするからね? どこかで死ぬとかナシだから」
「わかってるよ」
言いながら、パンドラの加護を発動。
(アルムは諦めちゃいねぇし。
もし、大いなるものが生きたいって望むなら……一緒に生きて欲しい。
奴を変えれる運命の一手があるならその一助になりたい)
相変わらず甘いと言われるだろうか。けれど、それでも。
零は空へと飛翔し、大いなるものの胴体めがけ突進。愛刀の天星を術式で投影すると、次々に投影し続けた剣を掴みその胴体へと斬り付け続けた。
吹き上がる血を見上げ、『虚飾』楊枝 茄子子(p3p008356)は微笑む。
「詰めだね。どう転ぶか、まぁ見ものかな。最前線で見させてもらおう」
魔法の言霊で自らの身体を浮きあがらせると、降り注ぐ無数の雷撃を言霊の力ではねのける。
『ライアーメイク』『レイヤープロテクト』『フェイクシフト』『レッド・ヘリング』『ブラフアデプト』……茄子子が世界についた嘘は、世界の滅びを前にして今なお彼女に力を与える。
「キミ、つまんない。私は頑張ってる人が好きなんだ。世界滅ぼしたいならもっと頑張りなよ。縋れよ。もっと頑張れば、私一人くらいなら殺せるかもよ」
言いながら、茄子子は手をかざした。『羽衣賛歌』が発動する。
「これで最後だね。飛べ飛べ特異運命座標。
お膳立てしてあげるからかっこいいとこ見せてよ。私が見たいからさ」
成否
成功
第3章 第20節
仲間の力を受け、空へと飛び上がる【昴星】のイレギュラーズたち。
その一団の先頭へと出た『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は、叩き込まれる大いなるものの爪を巨大な魔術障壁で受け止めた。
その姿はパンドラの加護を使った『黒竜魔人』のもの。
突き出した手には杖が握られ、勇気の光が世界を照らしている。
「ねえ、『大いなるもの』――名も無き滅びの使者。あなたがもし滅ぼされたくないと感じるなら、世界を滅ぼさないことでそれができるかもしれないよ」
問いかけに、しかし大いなるものは怒りを露わにする。
『我が使命――この身が滅ぶとも達するのみ。貴様等は邪魔だ、イレギュラーズ!』
「そう……」
表情に悲しみを浮かべ、ヴェルーリアは力を強める。
「戦うしかないんだね。それなら――」
「こっちも抗うだけや!」
ヴェルーリアの影から飛び出した『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)が弓を構え、矢に封殺の力を込める。
上位竜すら封殺したその力は二つ名にもなり、これまでいくつもの戦いで強敵の動きを止めてきた。
『天衣無縫』『完全逸脱』『ダニッシュ・ギャンビット』を瞬く間に一斉発動させた彩陽の弓は、正確に大いなるものに狙いをつけていた。
「まだまだ! どんどん攻め立てるで。それだけの力を自分らは持っとる。
倒せると信じる心もな!」
『笑止――!』
吠える大いなるもの。身体を無理矢理に起こし、血塗れの肉体をふるって再び爪を放つ。
が、その腕めがけ放たれた彩陽の矢は強烈な封殺の力を発動させた。
仲間達の絶え間ない猛攻の果てに、その隙ができていたのだ。
「!?」
突然の、そしてあり得ないと思っていた出来事に目を見開く大いなるもの。
その隙を突くようにして、『生命に焦がれて』ウォリア(p3p001789)が剣を振りかざした。
(『ステラ』のように救いがあって欲しい。
そう考えるのは傲慢だろうか。
共に手を取り合うのを願う事は、戯言だろうか。
本当にお前は、それでいいのか?
お前の心も救いたいよ)
ウォリアは沈黙の中に想いを込めながら、パンドラの加護を再使用。パンドラがガリガリと消費されていくのを感じながら、竜の如き鎧を内から燃え上がらせた。
ウォリアを止めようと無数の飛行型星界獣が襲いかかるも、ウォリアの放つ『天意爆砕礫』がそれを撃ち落としていく。無数の光弾がウォリアの五指から放たれ、一発で貫かれた星界獣たちが墜落していくのだ。
「グッドクルーザー、今度のバディはオマエだ!」
「希望の戦士ウォリア……了解しました。行きましょう!」
深層希望合体を素早く果たしたウォリアは巨大な竜の如きロボットへと合体。大いなるものめがけ炎のブレスを放射する。
そこへ更に、『遠い約束』星影 向日葵(p3p008750)が剣を握り飛びかかる。
パンドラの加護を使いその魂を燃え上がらせると、大いなるものの腕を切りつけた。
(何も出来ないままドゥマさんが逝き、ロザリエイルさんに深い悲しみを背負わせた。
故に先輩方が手を伸ばすなら手伝いたいんです)
想いは力となり、大いなるものの肩口から激しい血を吹き上げさせる。傷口は深く、今にも腕が切り落とされそうだ。
「終焉を討ち滅ぼす刻来たれり! コレを討ち倒したらいずれ『旅』に出てみるのも良いじゃないっすか」
「ウホッホ!」
付与魔法によって飛行していた『赤々靴』レッド(p3p000395)とコンバルク・コングが並んで側面へと回り込む。重火砲魔導具『トラブルシューター』がうなりをあげ、大いなるものの腕へと激しい銃撃が加えられた。
「ボクも本気でいくよウォリア――」
レッドはパンドラの加護を使い、イクリプスの姿へと変身する。
凶悪とすら言えるその姿は、しかし世界を救うためのもの。
レッドの攻撃にあわせて巨大な岩を投げ続けるコングに向けて、レッドは『お願い』を口にした。
やっと封殺状態から解かれた大いなるものが、集中攻撃を行うイレギュラーズたちをなぎ払うように腕を振る。
対して、『絆音、戦場揺らす』柊木 涼花(p3p010038)はパンドラの加護を使い伝説を纏うと、『エルメリアの妄執』を消費しながら治癒の力を拡大させた。
「これできっと大詰め……!
ハッピーエンドまでもうすぐ、あと一息頑張りましょう!」
涼花の演奏は世界を煌めかせ、魔法のように仲間達の傷を癒やしていく。いや、それは本当に魔法であった。
「誰も死なせない、燃え尽きさせない! 皆さんなら奇跡を掴み取れると信じています。
皆で、笑って帰りましょう!」
大いなるものの爪の一撃を、荒れ狂う雷撃を、涼花はその演奏でもって相殺してみせる。
成否
成功
第3章 第21節
パンドラの加護を使い、白く清浄な気配を纏う『約束の力』メイメイ・ルー(p3p004460)。
「『大いなるもの』よ、ステラさま達を『端末』と扱った貴方にも、彼女達が感じ取ったものは届いているのでしょう?」
見えなかったのか。それとも見ようとしなかったのか。
大いなるものには、この世界は滅ぼすべきものにしか見えなかったのか。
メイメイにはわかる。この世界には沢山の喜びがあって、出会いがあった。この世界は、メイメイを変えてくれた。
そばを飛ぶハイペリオンが頷き、『行きなさい』と優しく言った。
『カペラの道行き』を手に、大いなるものへと至近距離から魔法を叩き込む。
その巨大な腕が、ついにへし折れ切り落とされた。
激しく血を流し苦しみにもがく大いなるもの。
反撃とばかりに繰り出されたブレス砲撃を、今度は前に出た『鏡花の盾』鏡禍・A・水月(p3p008354)が巨大な妖力障壁で受け止めた。
『ルーンシールド』と『マギ・ペンタグラム』はすぐに破壊され、鏡禍の肉体を滅びの光が焼き始める。それでも耐え抜くためにパンドラの加護を使い茨で自らを包むと、滅びの光を振り払った。
更に大いなるものの爪が振るわれ、それを鏡禍は巨大化した妖力の腕で受け止めにかかる。
腕はすぐに粉砕され、鏡禍は血を流し苦痛に顔を歪めるが……だが、退かない。
この後ろには、守ってきた世界があるのだ。
沢山の思い出が、キラキラした過去が、そして大切な人達がいるのだから。
「ステラ。旅立ちの時だ。てめえの晴れ姿、見せつけてやりな!」
『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)が鏡禍と入れ替わるように前に出ると、同じく黒きステラも前に出た。
「晴れ姿……ね。いいわ、見せてあげる!」
黒きステラが胸に手を当てると、黒い光が全身を覆った。
それまでとはことなる美しい衣装を身に纏った黒きステラが、星の加護を展開する。
その加護をうけて、牡丹は大いなるものへと突進した。
仲間を庇うように前に出たその姿に、爪に雷撃と滅びの気配のすべてを纏わせ大いなるものが斬りかかる。
それは牡丹の身体を貫き……そして、にやりと牡丹は笑った。
「このタイミングなら、オレをやりに来るって思ったぜ」
突如『バアルの契約』を発動。急速に回復した体力で残る雷撃をも受け止め、周囲に散らすように振り払う。
「ちょっと、大丈夫なの!?」
「今はな。それより――決めろ!」
「はい!」
『願い紡ぎ』ニル(p3p009185)が『ミラベル・ワンド』に力を込めて振り上げると、巨大な魔法の刃を作り出した。
(わかりあうことができるなら。戦わなくていいのが、いちばんいい、のです)
パンドラの加護を再び使用。傷を魔力の結晶が塞ぐ、壊れても前へ進むカタチとなる。
それは人々の痛みや苦しみを引き受けるように結晶を刃に変えると、魔法の刃と合わさり巨大な剣となる。
ニルの斬撃が、大いなるもののもう一方の腕を切り落とした。
空を舞い、パンドラの加護によって竜の姿をとる『竜域の娘』ユーフォニー(p3p010323)。
(私には黒ステラを討つ理由もあった。今だって、複雑……。
けど確かなのは。
ステラには何度も手が差し伸ばされ、凶星は只々倒すだけの未来を「素晴らしい結末」とは感じない。
そんな未来を愛せない。
戦うのは愛せる未来のためがいい)
ユーフォニーはドラゴンブレスを解き放ち、大いなるものへと浴びせかける。
と同時に、『昴星』アルム・カンフローレル(p3p007874)もまた空を舞いながら杖を掲げた。パンドラの加護を使い本来あるべきだった『かみさま』の姿をとった彼は、黄金の髪を終焉の空に靡かせる。
「凶星……「大いなるもの」
お前はこの世界のシステムとして滅びを与えに来た。
そうあれと生まれ落ち、逆らわなかったから」
目を、細める。
「でもお前の端末だったふたりのステラは、人に触れ、可能性を信じ、滅びを呼ぶ存在じゃなくなった。
お前も、端末を通してではなく、直接触れていれば、この結末には至らなかったかもしれない……。
それがただ、残念でならない。俺もお前と似た存在だから」
アルムが振り返ると、ユーフォニーはイクリプスの姿を解き、少女の姿となって天に手をかざした。
その手に握られていたのは、星の鍵。
「さあ、今こそ――」
ワームホールの向こうで光の柱が昇り、それが天空で屈折したかと思うと大いなるものへと放たれる。
巨大な光に、大いなるものは包まれていった。
成否
成功
第3章 第22節
『我が、滅ぶ……? 滅ぶのか……!?』
星の祠から放たれた裁きの光に包まれて、大いなるものの肉体はみるみるうちに朽ちていく。
抗うように治癒の力を全身に流すも、それを阻止するかのようにイレギュラーズたちが集まっていった。
「ぶち抜け! 星の破撃ーーーー!!」
「無限の光の彼方へ、消え去れ! みゃー!!」
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)と祝音・猫乃見・来探(p3p009413)の魔法が至近距離で爆発する。
「ボクの最後の一撃を喰らえ!」
コングによって投げられたレッド(p3p000395)が紅蓮の魔力に満ちた拳を叩き込む。
魔法が、弾丸が、斬撃が、ありとあらゆる攻撃が集中し、治癒の力を上回る。
『い、嫌だ――』
大いなるものはそこで初めて、恐怖を抱いた。
『まだ、何も成していない! 何一つ滅ぼせてなどいない! 我が使命は、星へ落ちた意味は! 我は何のために生まれたというのだ! なんの喜びすら、知らぬままに!』
『大いなるもの』。それは名すら与えられずに産み落とされた、『滅びのシステム』であった。
圧倒的な力と滅びの使命だけを与えられ、名前もなく、野望もなく、愛するものもなく、憎しみすら抱かず、それはただ世界を蹂躙するためだけに星へと落ちた。
それが今、終焉の地より出ることすら叶わぬまま、滅びようとしている。
「生きたいか?」
光に包まれ、意識すら刈り取られたそのなかにあって、声が聞こえた気がした。
目を開ける。切り落とされたはずの両腕は有り、潰された目もすっかりと元のままだ。血塗れだった自分の姿は、星に落ちたその時のように美しくある。
だが変だ。世界は極彩色の光に包まれ、上下左右の区別もなくただ浮かんでいる。
時ですら、止まったかのようだ。
零・K・メルヴィル(p3p000277)が手を伸ばしてくる。
「もし望むなら、一緒に生きてほしい」
『矮小なる人類と共にだと? 馬鹿馬鹿しい――!』
払いのけようと叫ぶが、どこかその声は空しかった。
「この力の正体が分かるか? これは、ステラさん達がくれた力だ。この世界の輝きってやつを、端末越しじゃないお前自身の目で見ろ」
囲 飛呂(p3p010030)が現れ、ライフルを肩に担いで呼びかけてくる。
『世界の輝きだと? これが、そうだというのか?』
「大いなるもの。何も無いなら押し付けますね?」
星影 向日葵(p3p008750)が苦笑を浮かべ、手を伸ばす。
「貴方に【カーフ】の名を贈ります。
星言葉は信じる愛と温かい心。
皆が貴方にあげたいモノ。
こんなに貴方とも共に在りたいと、生きたいと願う人がいるんです。どうか手を取って!」
他にも次々とイレギュラーズが姿を現し、声をかけてくる。
メイメイ・ルー(p3p004460)もまた手を伸ばし、優しく微笑みかけた。
「わたし達と貴方はまだ『終わらない』。『滅び』しか成せない貴方は、もっともっと。知るべきなの、です」
「あなたがいないとステラさんたちが困るかもしれませんしね。
己の目で奇跡や希望を見守る存在になればいい!」
鏡禍・A・水月(p3p008354)もまた、手を伸ばした。
「ステラ様たちが観た、世界を……仲間を。あなたももう、知っている、はず……」
そしてまた、ニル(p3p009185)も。
『確かに、見た。この世界は争いが絶えず、憎しみに狂い、魔に侵され続けていた。滅ぶべき世界だ。そう――見えていた』
「ああ、でもな。それはただ『見なかった』だけだ。大体、滅びの化身ってわりにてめえはステラたちを産んでるじゃねえか。てめえはその時点で、ただの滅びであれなかったんだよ」
腕を組み、紅花 牡丹(p3p010983)が笑う。
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)がふわりと浮かび、笑みをその顔に浮かべた。
「貴方も本当は見たのでしょう? ステラさんたちの目から、この世界がいかに美しく輝いているか」
「俺たちの願いは、少し我儘だけれど……」
アルム・カンフローレル(p3p007874)が両手を広げる。
「『大いなるもの』……君に、滅ぼすものとしての役割を終わらせてあげたいんだ。世界を創り守る役目を、代わりに俺から分けてあげたい。
そして感じるんだ。ステラたちが見ているこの世界を」
最後に、ユーフォニー(p3p010323)が祈るように組んでいた手を解く。
閉じていた瞳を、開いた。
「私は、貴方をただ裁くつもりはありません。名も持たず、何も持たず、滅びの力と使命だけを与えられた貴方……産まれてからさいごまで、そんな心で終わらないで。
万華鏡のような世界へ、一緒に行こう?」
そっと伸ばしたユーフォニーの手を、大いなるものはじっと見つめた。
『フン……貴様等の命と引き換えに見る世界など、いらぬ』
首を背けると、背を向けた。
「まって……!」
呼び止めようとした。けれど、大いなるものにそれは届かなかった。
『世界なら、もう見た。貴様等を通して、な。……美しい世界だ。遺憾ながら』
大いなるものの姿が、極彩色の光のなかで遠ざかっていく。
光の中に現れた白きステラと黒きステラが、背を向けたままの大いなるものへと呼びかける。
「行ってしまうの?」
答えは、なかった。
さようならも。あるいは、それ以外の何かも。そうすることが、最大の思い遣りであるように、不思議と思えた。
小さく手を振る二人のステラ。
『何も持たなかった我に、最後に意味を与えてくれたな。良き、滅びであった。礼を言う』
光が、晴れた。
一瞬の、夢幻のような時間は過ぎ、そこには横たわる巨大な怪獣の姿だけがあった。
「終わった……のか?」
汗を拭い、もう動かない巨体を見上げる新道 風牙(p3p005012)。振り向けば、傷だらけのグッドクルーザーが頷いた。
「!? ユーフォニー!」
ムサシ・セルブライト(p3p010126)がそのそばに倒れていたユーフォニーを見つけ、駆け寄る。
セレナ・夜月(p3p010688)とマリエッタも空から降下し、急いでそばへと駆け寄った。
「あんなパンドラ残量で無茶をして!」
「息は!?」
急いで確かめてから、マリエッタは安堵の息を漏らした。
「……大丈夫。眠っているだけです」
その言葉に仲間達もまた安堵の息を漏らす。
「しかし、しぶとい強敵であったな」
「ああ……」
大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)とレイテ・コロン(p3p011010)が、傷付いた身体を休めるように空を見上げた。
あれだけ雷撃と暴風で荒れ狂っていた空が、もうこんなに凪いでいる。
フーガ・リリオ(p3p010595)と佐倉・望乃(p3p010720)が自然と手を繋ぎ、顔を見合わせた。
「戻ろうか。陣地も、撤収させないと」
「そうですね……。この場所に長居はできませんから」
こんなに静かでも、ここは影の領域。ただいるだけで命を削られていく場所だ。
フーガはトランペットを鳴らすと、【青薔薇隊】に撤収命令を出した。
常田・円(p3p010798)とレイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)が馬車をとめ、急いで乗るように手招きしてくる。
その馬車には、一時撤退していた【騎兵隊】のイーリン・ジョーンズ(p3p000854)たちの姿があった。
「どうやら、大いなるものは仕留められたみたいね」
一次的に隊を抜けていたフォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)が合流し、頷く。
「うん。犠牲者はなし! ……って、言って良いのかな。大いなるものに第二の人生を歩ませることは出来なかったから」
「それにしては、満足そうな顔をしているね」
オニキス・ハート(p3p008639)は地面に横たわった大いなるものの顔を見やった。
「これだけ多くのものに見送られたのです。この者も満足しているでしょう」
ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)がそう告げると、迎えのワイバーンたちが飛んでくるのが見えた。覇竜領域の人々が迎えを寄越してくれたらしい。
「さて、と……『次』へ行きましょうか」
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)が自分のワイバーンへと騎乗して言う。
「はーあ、覇竜を守ったと思ったら今度は世界かぁ」
星華(p3p011367)も翼を羽ばたかせ、とんとんと杖で自分の肩を叩く。
そうだ。滅びを齎す戦場はここだけではない。未だ残っている決戦の地へ、行かなくては。
迎えのワイバーンに乗り込み、ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)とルナール・グリムゲルデ(p3p002562)が振り返る。
広大な影の領域には大量の星界獣の骸が積み上がり、その中心には大いなるものの骸が横たわっている。
これが、いずれ巨大な墓標となるのだろう。
世界をひとつ救った、その証として。
GMコメント
ついに最後の戦いが幕を開けました。
アスタ上空のワームホールを抜け、『大いなるもの』へと戦いを挑みます。
現場には大量の星界獣が陣取っており、それらを倒しながら戦うことになるでしょう。
詳細は各章の説明をご参照ください。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●『パンドラ』の加護
このフィールドでは『イクリプス全身』の姿にキャラクターが変化することが可能です。
影の領域内部に存在するだけでPC当人の『パンドラ』は消費されていきますが、敵に対抗するための非常に強力な力を得ることが可能です。
■■■プレイング書式■■■
混雑防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
一行目:【パートタグ】
二行目:【グループタグ】
三行目:実際のプレイング内容
書式が守られていないとお友達とはぐれたりすることがありますのでくれぐれもご注意ください。
■■■グループタグ■■■
誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの二行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
大きなグループの中で更に小グループを作りたい時は【大チーム名】【小チーム名】といった具合に二つタグを作って並べて記載ください。
※タグによってサーチするので、キャラIDや名前のみを書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
例:【ナントカチーム】3名
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