シナリオ詳細
<終焉のクロニクル>凶星の落ちた日
完了
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オープニング
●世界を救う物語
話は実にシンプルだ。
滅びを齎す怪物が現れた。
倒さなければ、世界が破壊されるのだ。
●希望の少女曰く
「…………!」
遠く世界の果て、プーレルジールの一角で、一人の少女が顔をあげた。
彼女の名はステラ。滅びを見守る少女。
一度は世界を滅ぼそうとし、イレギュラーズたちのパンドラを喰らったことでその性質を反転させてしまった少女。
彼女は知っていた。
世界を滅ぼすひとつの方法を。
とてもシンプルで、強大な、それでいて不可逆なそれの名を。
「『大いなるもの』が……目覚める……!」
●絶望の少女曰く
「もうすぐ目覚めるわ。みんな、準備はいい?」
遠く世界の果て、『影の領域』にて、一人の少女が顔をあげた。
彼女の名もまた、ステラ。滅びを見守る少女。
世界を滅ぼそうとし、星界獣たちを次々に目覚めさせ世界中へと降り注がせた少女。
彼女は知っていた。
世界を滅ぼすひとつの方法を。
とてもシンプルで、強大な、それでいて不可逆なそれの名を。
「『大いなるもの』が……目覚める……」
●大いなるもの
凶星が煌めき、それが強く燃えた夜。
『それ』は天より降ってきた。
地面に突き刺さる衝撃と爆発。周囲の星界獣すべてが吹き飛ぶ中、それはまるで痛みなど感じていないかのように悠然と頭をあげた。
見上げるほどの巨大な体躯。常人を容易く切り刻むような爪。そして竜のごとき牙。
あまりにも巨大なそれは、史上すべての星界獣と比較にならぬほどの巨大さを持ち、世界を滅ぼせるだけの純粋なパワーを持っていた。
それが大地に降ることは、すなわち世界の滅びを意味している。
ゆえに名前などなく、ただ一言――『大いなるもの』と呼ばれていた。
大量に集まる星界獣たちの中で、ひときわ巨大なそれは咆哮をあげ、天空を睨むように頭をあげる。
それを見下ろしていたのは、空中に浮遊するステラであった。
「…………」
大いなるものの召喚は、それ即ち世界の滅びを意味している。
やり方はシンプルだ。『大いなるもの』を影の領域から覇竜領域のワームホールを使って解き放ち、覇竜領域を皮切りに人類圏のすべてを蹂躙するのだ。
『大いなるもの』が持つ圧倒的なパワーはすべてを破壊し、すべてを喰らい、すべてを終わらせるだろう。
誰の目からも分かるほどの滅びを人類へともたらし、この世界を終わらせてくれるだろう。
「そう、すべてが終わる。もう誰も、生まれてこないようにする……」
ステラはどこか悲しそうに地上を、星界獣たちで埋まった地獄のような地上の風景を見つめて首を振った。
「この世界は悲しみに満ちているわ。
貴族に搾取されて飢えていく貴族たち。
強者に虐げられて寒さに震える弱者たち。
小さな罪で腕を落とされ涙する罪人たち。
金に換えられ売られていく子供たち。
穴蔵へ閉じこもり震えて暮らす亜竜種たち。
みんなみんな、かわいそう。こんな世界に生まれてこなければ、苦しむことなんてなかったのに。
けれどもう大丈夫。わたしがすべて終わらせるわ。
悲しいことも、苦しいことも、これで最後。
それがわたしから世界に贈る、餞別よ」
囁きかけても、しかし答えは返ってこない。
大いなるものは黙ったまま空を見上げ、周囲に戻ってきた星界獣たちもただ沈黙するのみだ。
「…………」
そう、沈黙のみ。
ここにはもう、ステラはある意味で一人きりになってしまった。
そうなったときに思い出すのだ。
自分ではない自分の記憶を。
滅びを見守る端末として繋がっている、『プーレルジールのステラ』の記憶を。
蒼い薔薇を貰った。素敵な花束や、飴細工の花も貰った。
『彼女』は言うのだ。この世界は素晴らしいと。この世界は美しいと。
素敵で、優しくて、楽しくて、わくわくすることでいっぱいだと。
だからこの世界を、救ってほしいのだと。
「ちがうわ。そんなはずない」
ステラは見てきたのだ。この世界の醜さを。苦しさを。絶望の数々を。
生まれてこなければよかった。そんな、最悪な世界なのだと信じている。
「この世界は滅ぼすべきなのよ。あなただってそう思うでしょう?」
大いなるものへと語りかける。すると、大いなるものはグルルと喉を鳴らして振り返った。ただそれだけだ。
答えてくれるひとはどこにもいない。
この暗くて寂しくて、どこか冷たい影の領域に、まるで自分がひとりぼっちになったような感覚におそわれて、ステラは自らの膝を抱いて丸くなった。
「大丈夫。大丈夫よ。わたしはやり遂げてみせるから。
この世界を、ちゃんと滅ぼしてみせるから」
それが、この世界のためなのだから。
●世界を賭けた決戦
「そう……ついに、この世界の『ステラ』は滅びを実行に移したんだね」
静かに語るのは、アルム・カンフローレル(p3p007874)。
自分で淹れたコーヒーをマグカップに移すと、ちびちびと啜りながら会議室の棚に背を預ける。
ここは覇竜領域の小集落。
隠れ集落アスタの民を避難させ、逃げ込んだ先である。
いまもアスタの上空には影の領域へと続くワームホールが開き、危険な状態は続いているのだろう。それを思えば、この環境は天国のようだ。
アルムに対して頷いたのはローレットに長年貢献してきた情報屋、『黒猫の』ショウ(p3n000005)だ。
「そうだね。それまで観測されていた凶星が燃え、地上へと落下したという報告が上がってる。まず間違い無く、言い伝えにある『大いなるもの』だ」
凶星輝く時、大いなるものきたれり。
覇竜の古い文献に存在する伝説の存在だ。もし地上へおりたなら、それは不可避の滅びを齎すという。
伝説級の怪物がその姿を見せ、その力を奮うのだ。どれだけの被害がでるか想像もつかない。仮に言い伝えが本当だとするならば、誰もかなわないような強大な存在が世界中を蹂躙し尽くし、世界は終わってしまうのだというが……。
「落ちた場所は?」
鵜来巣 冥夜(p3p008218)が眼鏡の位置を指で直しながら問いかける。
もし滅びが迫っているのだとしても、冷静さを失うことはない。
なぜなら自分達はいつだって『それ』に立ち向かってきたのだから。
前人未踏の地に踏み込み、前代未聞の強敵に挑み、そして成し遂げてきた。その始まりはいつも、こんな冷静な一歩だった。
「前人未踏の危険地帯。『影の領域』だ」
「影の領域……!」
そのことに誰よりも強く反応したのはユーフォニー(p3p010323)だった。
ムサシ・セルブライト(p3p010126)がちらりと彼女を見て、頷いて見せる。
なにせ知っているのだ。ユーフォニーが影の領域というものにどれだけ執着しているのかということを。一時は自分一人だけで影の領域へと踏み込もうとまで考えていたほどだ。
影の領域と言えば魔種たちの住まう危険極まりない土地だ。踏み入れただけでも身体にさわる。もしそんなことをすれば、ユーフォニーの命だって危うかったことだろう。
「ユーフォニー。君があの場所を目指していたことは知ってる。あのワームホールに目を付けていたことも」
「はい。以前目撃したとき、覇竜領域のアスタ上空に開いたワームホールは人が踏み入れることのできるようなものではありませんでした。少なくとも私の見た限りでは……」
執着しているというだけあって、ユーフォニーはアスタ上空に開いたワームホールにアナザーアナライズをかけていた。未知の存在ではあるものの、それを漠然と調べることができていたのだ。その結果、どうあっても立ち入りはできない危険な存在だと分かったのだが……。
「それが、できると言ったら……?」
「!?」
それはユーフォニーの言ったように覇竜領域の端、隠し集落アスタの上空に開いた『影の領域』に通じるワームホールである。
一見して、それは敵側がこちらに侵攻するためだけのものにも思えたが……。
「あれを、利用できるのカ」
身を乗り出したのは赤羽・大地(p3p004151)だった。
一方的な侵攻ルートとしか思っていなかったものが利用できるとなれば、それはこちらから攻め込むという作戦が使えることを意味している。
上空にあいていることの不便さは多少あるものの、そんなものはワイバーンにでも乗って飛び込んでいけばいい話だ。
こくりと頷いて見せるショウ。
「だね。ざんげの話によると、生身でマトモに飛び込めばたどり着く前に狂ってしまうかもしれないらしいけれど、パンドラの力でその通路の安全を確保してくれるらしい。
ま、出たとこ勝負は否めないけれど……ね」
「なるほど、そうなってくると話が変わってくるナ。こちらから攻め込むことができるってわけダ」
「えーっとつまり? その『大いなるもの』がこっちに出てくる前に、攻勢をかけられるってこと?」
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)が言うとルナール・グリムゲルデ(p3p002562)が頷いて返した。
「偵察隊の話では、アスタに展開していた星界獣の軍勢は一度ワームホールの向こう側に退いたそうだ。多少は残っているらしいが……まさか突入してくるとまでは思っていなかったのかもな」
アスタの民を避難させた甲斐があった、とルナールは続ける。
そこで声をあげたのはアスタの民たち、その代表である巫女アドプレッサであった。
「であれば、ワームホール周辺に展開しているという星界獣たちは私たちが対処しましょうう。話によれば、各国の方々も兵を出して協力してくださるのでしょう?」
アドプレッサの言うとおり、この乾坤一擲の作戦は全世界が注目し、そして協力している。
アスタの民とてそれは例外ではないのだろう。
「だが、折角助けた命だ。ここで失うつもりはないぞ?」
「分かっております。危険になれば戦士達を退かせますし、無茶をするつもりはございません。けれど……あそこは元々私達の里。取り返すくらいの気持ちで挑まなくてどうしますか。
私達が露払いをしますので、影の領域への突入を任せたいのです」
「とはいえ。その『大いなるもの』の戦力は計り知れないのでしょう?」
そう声をあげたのは、それまでずっと腕組みをして聞いていたヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)だった。
「私達の倒した特殊星界獣ギャラド。そして別働隊が戦ったというドラゴニック。それすらも凌駕する存在となれば……もはや数十人でこなせるミッションとも思えません」
特殊星界獣と呼ばれる協力な個体が星界獣の中にはいて、その戦力は精鋭たちが束になってかかってやっとというレベルだ。しかし『大いなるもの』に関してはそれどころの話ではない。世界を滅ぼすほどの強敵となれば、数十人が死力を尽くすというレベルの話ではもはやなくなるだろう。
「ああ、その通り。だからかなりの人手がいる」
イズマ・トーティス(p3p009471)がぎゅっと拳を握って力を込めた。
「それも、大規模な、な……」
「それにその場所には、ステラがいる。この世界のステラが、ね」
アルムが声をあげると、冥夜もこくりと頷いた。
彼らはしっかりと覚えているのだ。
『プーレルジールのステラ』から託された願い事を。
「『あの子を助けてあげて』……か。今度こそ、言葉を届けるチャンスだね」
「ええ、というより、今回をおいて他にはありません」
「ステラさん……」
メイメイ・ルー(p3p004460)は思い出した。『混沌のステラ』が見せた悲しげな瞳を。
この世界に絶望し、苦しみと悲しみから救うべく世界を滅ぼすのだという主張を。
「けれど、ステラさんは知っているはずです。わたしたちのことを、『覚えて』いました」
「そうです。そこが、大事なところなんです」
鏡禍・A・水月(p3p008354)はステラと過ごした思い出を心の中に刻み直しつつ、胸に手を当てた。
鏡型のチョコレートクッキーを選んで微笑んだ彼女の顔を、グラオクローネにプレゼントした軌跡の欠片を、今でもはっきりと思い出せる。
「『滅びを見守る少女』は世界の端末。端末として記憶は根っこの所で繋がっているようでした。だから、プーレルジールのステラさんの感じた世界の素晴らしさや思い出を、混沌のステラさんも知っているはずなんです」
「そうです。たくさんの『おいしい』を、一緒に経験したのですから」
ニル(p3p009185)が声をあげ、紅花 牡丹(p3p010983)もまた頷いた。
「オレは一緒にお菓子作りをした。大切な誰かにプレゼントするんだって言ってな。そうなる前に世界が滅んじゃもともこもないぜ」
「ああ。この世界は護る。そして、『混沌のステラ』も助ける。すべてを成し遂げるんだ。オレたちは」
ファニー(p3p010255)もまた強く頷き、蒼い花束を贈ったあの日のことを思い出す。
「ステラ。知っているはずだ。この世界の素晴らしさを。それを、オレたちが思い出させてやる」
「そして見せ付けるんだ。この世界が滅びないってことを」
アルムはカップを置くと、ぎゅっと杖を握りしめて歩み出た。
握った手の温かさを。暖かな微笑みを。自分達は覚えているから。
「だから……君だって笑えるはずなんだ。ステラ。世界の滅びと絶望が邪魔をするなら、それを壊してあげるから」
- <終焉のクロニクル>凶星の落ちた日完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別ラリー
- 難易度VERYHARD
- 冒険終了日時2024年04月16日 21時10分
- 章数3章
- 総採用数331人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
※システムアナウンス
●第一章
ワームホールを抜け、『大いなるもの』へと戦いを挑みます。
そのためには大量の星界獣を倒し道を切り開く必要があるようです。
また、現場には『混沌のステラ』も存在しています。彼女に想いを届け、助けるチャンスは今でしょう。
●パートタグ
【星界獣】
大量の星界獣が行く手を阻んでいます。これらを倒し、強敵への道を切り開きましょう。
敵となるのは星界獣の幼体、成体、人型となります。
【ステラ】
悲しい瞳をした『混沌のステラ』がいます。
星界獣と戦いながら、世界に絶望した彼女にこの世界の素晴らしさや思い出を伝えましょう。
このステラは『プーレルジールのステラ』と記憶が繋がっており、思い出を語って聞かせることでも効果があります。
想いを強く届け続けることで、彼女を大いなるものの呪縛から解放できるかもしれません。
第1章 第2節
世界の果て。影の領域。
天空に開いたワームホールを抜け、『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)は羽ばたいた。
「戦場はたくさんあって、どれも無辜なる混沌を滅ぼす存在が相手だけど……」
飛行型の星界獣たちが次々に襲いかかる中を、アクセルは右へ左へと回避しながら舞い降りた。
「この戦いは、混沌の方のステラに思いを届ける戦いでもあるんだね。
だから――ステラに声を届けるヒトたちのために、邪魔になる星界獣を蹴散らすよ!」
アクセルのパンドラ収集器が輝き、そしてアクセルの前身を輝きが包み込む。
そして現れたのは仮想反転姿のアクセルであった。
銀の装飾と虹の光。五線譜の光輪、光の翼。
放たれた『ケイオスタイド』の魔術は爆発的な威力を発し、星界獣たちを吹き散らかしていく。
「凶星、大いなるものね。大仰なやつだぜ。
しかしあの質量だけでも脅威として余りあるのは事実……。
星を撃ち落とす予行演習にはちょうどいいって事だな!」
ワイバーンを用いてワームホールを抜けてきた『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が星界獣の群衆の中へとあえて着地。
「俺の陰陽五行は臨機応変、トータルファイターの極みで敵を撃破していくぜ!」
周囲に群がる星界獣たちに対して『式符・陰陽鏡』を発動。瞬間鍛造した巨大な魔鏡から陰る太陽を写し出す。すると魔鏡から溢れる暗黒の滴が星界獣たちの運命を纏めて漆黒に塗り替えていった。
攻撃をしようと星界獣たちが飛びかかるが、無数の式符を使い分けて戦う錬の前には崩れ去るのみだ。
そこへ更に現れたのは『アネモネの花束』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)。
華麗に大地へと降り立つと、絵筆を取って構える。
「こんな所で終われねぇんだ、俺は。
まだアネモネに何もしてやれてねぇし、ステラにだって、まだ絵のモデルになって貰ってねぇ。
画家は生み出すのが最上の幸せだ。
何より、苦しみも悲しみも、負の感情さえ芸術家は愛し、筆にのせる。
辛さからしか生み出せない物も沢山ある。
勝手に取り上げられんのは御免だぜ!」
そう、彼の生涯は決して美しいだけのものではなかった。けれどだからこそ、彼の絵筆が描けるものがある。
「ステラに声を届ける奴らの道を切り拓く……否、描いてみせる!」
空中に走らせた絵筆は魔法の力を持ち、描き出された無数の人々が兵団となって星界獣へ襲いかかる。
「願うは自由の蒼い翼と、この黒一色の辛気臭ぇ場所に道を描いて導く力。さぁ、派手に色をぶちまけて、戦おうじゃねぇか!」
そんな大地へと颯爽と着地する『無限円舞』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)。
「この世界にろくでもない点があるのは否定しないけれど。
どうしようもない、なんて決めつけるには少し早すぎるでしょう?」
ひらりと舞う『イモータルクロス』。抜き放たれる『夢煌の水晶剣』。
美しいその姿に目をとられ、星界獣たちが爪や牙を用いて襲いかかるも、誰もアンナを傷つけることなどできなかった。
「それを教える皆の道を切り開くとしましょう。最後の戦いも私らしく、ね」
目を細め、ふふっと笑うアンナ。
引きつけた星界獣たちめがけて件を振り抜くと、水晶の破片が散って星界獣たちを蜂の巣に変えていく。
「さーってと。んじゃ下っ端らしく邪魔な奴らを吹き飛ばす作業でもするっすかね。
っしゃ気合い入れていくぞオラァ!」
ワイバーンから飛び降りた『蒸気迫撃』リサ・ディーラング(p3p008016)。
背負った装置から上記を噴射して落下速度を緩めると、ずだんと豪快に大地へと降り立った。
「さー少しでも前線を押し上げて行け!
あのくそったれな敵共なんぞに負けてたまるかよ!」
背負っていた魔導蒸気機関搭載巨大火砲『Final Heaven』が展開。四連装ガトリング砲とマイクロミサイルポットがすべて露出したかと思うと、そのすべてが轟音をたてて放たれた。
無数の爆発と煙の中に星界獣たちが消えていく。
成否
成功
第1章 第3節
「さていつも通り露払いと行こうじゃないか。
私にくる攻撃のカバーは任せるよルナール先生!」
「これが最後の戦いになるかならないか。正念場だな?」
手を取り合い、やわらかく歩き出す二人組。『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)と『片翼の守護者』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)だ。
「うわぁうじゃうじゃ居る。こんなに潜伏してたのか」
「何時も通り庇い役は俺に任せて、バンバン行こう」
顔をしかめるルーキス。
「まったくあれだけ焼き払ったっていうのに。無限湧きみたいじゃないか、まあお陰で此方の手も休まらない訳だけど」
『星灯の書』を手にしルナールから手を離すと、『ケイオスタイド』と『ソトースの銀鍵』を使い分けながら星界獣の波を押し返していく。
「さて片っ端から叩くとしましょうか!
キミ達を逃がすと外にも害が出るからね!」
その一方ではルナールが敵陣へと飛び込み『ブレイズハート・ヒートソウル』。引きつけた星界獣たちを団子状に纏めてルーキスに処理させるというコンビネーションアタックを続けていた。二人なら、どんな場所だって乗り越えられる。たとえそれが世界の果ての、影の領域であったとしても。
「さあ器用貧乏の強みを見せてあげよう!」
ルーキスはイクリプスの姿を解放。その美しい姿にルナールがフッと微笑みを見せる。
「器用貧乏な部分まで似るとはね、流石夫婦と言ったところか!」
対抗するかのようにルーキスもまたイクリプスの姿を解放し、黒き翼を広げてみせる。
二人はそのまま敵陣へと突っ込み、その圧倒的なパワーで大量の星界獣を次々に蹂躙していく。
そこへ更に加わったのは『指切りげんまん』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)。
「ステラ様の元へ向かう方々のために、私が美しく道を切り開くといたしましょう。
頑張った分は後でアルム様にご褒美をいただくことにいたします。
アルム様、この戦いが終わったらよろしく頼みますよ〜?」
そんなことを言いながら両手の扇子を広げ、術式展開。
美しい舞いが踊られるたびに魔法が生まれ、星界獣たちを時に【退化】させ、時に【怒り】で支配し、時に【不吉】系BS塗れにし、時に【石化】させてしまう。
まさにヴィルメイズの一人舞台といった様子であった。
「この星は……この世界は、滅ぼさせはしない! 宇宙保安官の名にかけて……この世界を守る!」
大地に拳をつけるようにして着地した『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)。
彼は立ち上がり、そして天空に向けて特殊コードを発した。
「ステラさんへの道を開くために、星界獣達を蹴散らす。
多少の無茶は承知の上……!」
すると天空から巨大な飛行物体が接近。それは複雑な変形をはかると、中央のスペースを解放。そこへムサシが入り込むと、半人型となったアーマーがムサシの動きに連動して動き出す。
「ブラスターアーマー!」
武装を一斉展開。無数のビームが星界獣たちを崩壊させていく。
「終焉に大いなるものに……絶望的な存在が山程出てきてこの世界を滅ぼそうとする。
ふざけるなよ……そんな奴ら、自分が、宇宙保安官が跳ね返してやる……!」
そんな戦場をゆっくりと歩く『冠位狙撃者』ジェック・アーロン(p3p004755)。
狙撃銃『Wrath』と散弾銃『Pride』をそれぞれ抱え、星界獣の群れを見やる。
「デカブツとの闘いなんて、リヴァイアサンでとうに経験したけれど……まずはそこに辿り着かないとね」
狙撃銃を構えると、まずは星界獣の中でも強力そうな人型を狙ってトリガーをひいた。
放たれた銃弾は狙い違わず人型の頭部に命中。弾け、倒れる人型星界獣。
その間にジェックへと迫った星界獣たちを蹴散らすべく、今度は散弾銃を構えて片手で撃つ。
あまりの衝撃に纏めて吹き飛んでいく星界獣たち。
「さあ、やってしまおうか」
成否
成功
第1章 第4節
敵陣へと走る巨大な炎があった。
否、炎を槍に纏わせた、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)の姿があった。
まるで炎のように赤い髪は風に靡き、神々の力で炎そのものを鍛えて創られたという槍『カグツチ天火』を構えて星界獣へと突き立てる。
斬り割き、振り抜き、吹き飛ばせど、その向こうには更なる星界獣の群れ。
「うわぁ、本当に星界獣がいっぱいだ
星界獣を倒すだけでも大変そうなのに、みんなはそれだけで終わらせるつもりじゃないんだよね
よーしっ! それなら道はボク達が切り拓くよ!」
槍をくるくると回し、そして笑った。
「ボクはステラちゃんとお話したことはないけど……。
みんなのお話を聞いてたら、ボクもお友達になりたくなっちゃったんだ!
だから、ちゃんと連れて来て紹介してよね!」
炎があがり、星界獣たちへと襲いかかる。
いや、炎だけではない。その中を駆け抜ける二刀流の『音呂木の蛇巫女』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)もだ。
「ステラちゃん、ぶっはっは! 荒れてんな! マジヤバくね?」
などと言いながら星界獣を一刀のもとに斬り捨てる。
「ありゃ?昴星のメンバーそろってんね。
なら……心配はいらないね。
そう簡単には、イレギュラーズやめれそうないもんな。
私ちゃんはいわばステラちゃんなんとかするチームをなんとかするチームだ!」
更にもう一刀で星界獣を切り捨てると、ニッと歯を見せて笑う。
「ま、騎兵隊の反応も良き良き。というわけでー…戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ!世界の敵を抹消する!」
そこへ無数の星界獣が襲いかかるも、華麗な動きでいなしていく。
「この戦神、この程度では斃れるつもりはないのだけど?
世界救ったやつなめんなおらー!」
そこへ恐ろしく光り輝く存在が突撃していった。
『殿』一条 夢心地(p3p008344)――否、シン・シャイニング・夢心地・アルティメットである。
「想いを伝えたい相手がおるんじゃろ。そなたたちには。
なれば存分に想い、願い、伝えてくるが良いわ。
その為の道を作るのが、殿的存在であるこの一条夢心地の役割じゃ」
ただ、そこにあるだけで全てを照らし出す、地上の光。
輝くその姿は人外の如く。放つ夢心地ビームは星界獣たちを貫き迸る。
「なにが星界獣じゃ。
星々の煌めきすら超越し、天地人全てを光輝で包み込む……。
それが、シン・シャイニング・夢心地・アルティメットじゃ。
往けい! 迷わず往けい! そして思いの丈を存分に叫んでこい!
その為の道は麿が作ってやるわ」
その一方で、両手に蒼き炎を纏った『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)がぽつりと呟く。
「さて、こちらのステラも来ていると聞いているけれども……。
会いには行かない方が良さそうねぇ……。
わたし、結局のところは燃やす事しかできぬので」
そう言いながら両手の炎で空を撫で、無数の狐型の炎を作り出す。
それらは空中を駆けて星界獣へと襲いかかり、牙で食らいつき身体で燃やす。
「あちらを皆様にお任せした以上は、無様を晒すわけにもいかぬので。
一切合切全部燃やしていくのでそのつもりなの」
そんな胡桃へ人型星界獣たちが襲いかかる。
身体から槍をはやし、一斉に突撃を図る星界獣たち。
だがそれを阻んだのは『つばさ』零・K・メルヴィル(p3p000277)だった。
「ステラに声、届けても良かったが…俺の親友があっちで頑張ってるんだ。
なら俺はその道を創るさ、その為にも、全力を尽くすまで……!」
間に割り込んだ零は拳を握りしめる。
「力借りるぜ、姉ヶ崎……ストイシャ!」
真っ赤に染まる手、燃え上がる炎。
瞳はまるで虹のように輝いた。
すると突然、彼の周囲に術式投影された無数の剣。それらが一斉に発射されたかと思うと人型星界獣たちへと突き刺さる。
ROOに連なる思い出が、蘇ってくる。
「可能性があるなら俺は、全部掴み取ってほしい。
それが友の、アルムの望みなら猶更だ」
成否
成功
第1章 第5節
「この戦いには、救いたいという思いが満ちている。その手助けをさせてもらう。
泥人形の戦い方を見せてやろう」
戦場にゆらりと現れた泥人形こと『涙を知る泥人形』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)。
彼はふわりと魔法の力で浮きあがると、星界獣たちの上を通り抜けながら『ブレイズハート・ヒートソウル』を発動させた。
飛行型の星界獣たちが一斉に集まりマッダラーを攻撃するが、意にも介さず即離脱。空中で反転すると『ワールドエンド・ルナティック』を発動させた。
「あの海を思い出す。あのころは先人の背を見ているだけだったが、今は隣に立つことが出来る。
どんな攻撃を受けても、立ち続けるのが泥人形だ。
前に進め、この世界の明日が、そこにある!」
墜落してきた星界獣たちを、『真打』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)の剣が高速で切り裂いて行く。
「ステラは救う、星界獣も掃討する。
両方やらなくちゃいけない、か。
なら、オレはステラに向かう者たちの支援をしよう。
そのためにも、道を切り拓く!」
そんな紫電に目を付けたのか、人型星界獣たちが腕を剣に変えて突撃してくる。
「有象無象がわらわらうようよと湧いてきやがる……!
だが、ステラへの想いを抱いて向かう者たちの妨害はさせない。
それにだ、大いなるものに挑むためにも…邪魔な障害は排除する!」
繰り出された剣を弾き、時にかわし、自らの剣を叩き込む。
ジグザグに描かれた剣の軌跡にそって、星界獣たちが斬り割かれた。
「届けてこい、特異運命座標(オレたち)の想いを。
孤独に、滅亡を望んでしまった少女に、な」
そんな紫電へ無数の砲撃。身体を砲台化させた星界獣たちの一斉砲撃だ。
そのすべてが着弾しようかという瞬間――『アイのカタチ』ボディ・ダクレ(p3p008384)が間へと割り込んだ。
大爆発が起こる……が、ボディの身体は無傷だ。胸に刻まれた縫い跡だけが美しく残っている。
「前回は最後まで戦えませんでしたからね。
リベンジマッチ、させていただきます」
『ルーンシールド』と『マギ・ペンタグラム』を発動させたボディを傷つけられる者は少ない。星界獣の有象無象ではまず無理だろう。
ボディは悠然と歩き出すと、特に数の多い幼体の星界獣たちに『AGⅡ』を発動。
意識を奪われ、集まっていく大量の星界獣たち。
見事に釣り上げた彼らを狙うのは、『春色の砲撃』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)だ。
「この日の為に装備の調整をしてきたのよ。私の元いた世界の技術を搭載した武器のお披露目と行きましょう!
とはいえ、下手に動くとやられそうだけど……大胆かつ、的確な攻撃で道を拓きましょう」
超高負荷超高火力武装『LNX-2930』、正式名称『マルチエネルギーライフルラストネクサス』。
更にはビームバズーカの趣をもつ『AON-0705』。
これらを構え、込められた魔術砲撃を開始する。
「――」
プーレルジールで共に旅をし、護るために戦ったステラのことを思い出す。
爆発する『ワールドエンド・ルナティック』の魔術の光を見ながら、そのずっと遠くにいるもう一人のステラを見た。
「辛いことがあるからって世界が終わるのが幸せだなんて無責任すぎるわ!
私は生きて、戦って、足掻くの! 生きる意思が強さになると私はこの世界に教えて貰ったから!」
爆発の中へ飛び込んでいく人影。誰有ろう『竜拳』郷田 貴道(p3p000401)だ。
竜すら殴り殺したその拳で、星界獣を殴りつける。すると破裂したスイカのように吹き飛んだ。その姿は鬼のようで、両手に蒼き炎すら見えた。
「どうやら泣いてる女が居るな。
だが、救うのは俺の役目じゃねえ。
それを邪魔をさせねえのが俺だ」
ギラリとにらみ付けると、その威圧で幼体の星界獣たちが一瞬怯んだ。
それだけの眼光。それだけのプレッシャーなのだ。
「見てみろよ、野郎ども!
有象無象が叩き売るほど居やがるぜ!
まとめて相手してやるよ、殺してやるからさっさと来い!
いや、やっぱり俺が行く、全員黙ってくたばっとけ!」
一瞬退こうとした星界獣の元へ高速のフットワークで近づくとその顔面をぶん殴った。
はじけ飛ぶ顔面。
「轢き殺してやるよケダモノども!」
成否
成功
第1章 第6節
切り拓かれる、道。その先にあるのは、空中に浮かびこちらを見つめるステラという少女だった。
御國式大筒『星堕』で星界獣を撃ちながら、大声で呼びかける『一般人』三國・誠司(p3p008563)。
「確かにこっちきた時は驚いたさ。
いろんな歪み、悲しみ、怒り、欲望、それは確かにあった。
だけれどそれだけじゃなかった。
誰かの痛みを感じる優しさも、絶望から救い出そうとする勇気もここには確かにあった。
それも平等に見ていくべきなんだよ、僕たちは」
ステラは目を細める。
「本当にそう思う? 悲しいこと、苦しいことのほうが、この世界には多いんじゃないかしら。だからこそ、あなたたちのような人が世界中を駆け回ることになる」
「ああそうさ。悲しいことが嬉しいことより多いかもしれない
けど誰かがいってたよ。
人生って喜びと悲しみのトータルがゼロになるって」
群がる星界獣たち。それをはねのけ、誠司は叫ぶ。
「ふざけんなって。
負け越しのままでたまるかよ。
折角生まれてきたんだから、勝ち越さなきゃ。
さぁ、勝ち越しに行こう。
Pay back timeはこれからなんだからさ!
貰えるものはもらっとかなきゃね!」
気圧された様子のステラに、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)が更に呼びかける。
「ステラさん、久しぶり。ヨゾラだよ」
彼が語ったのはプーレルジールやこの世界の素晴らしさだった。
『星空の泥』で星界獣たちを圧倒しながら、目を輝かせて語る。
「僕には大切な親友達が3人いて…その内1人とは結婚して夫婦になったんだけど、皆でわいわい過ごすのが楽しいよ。
一緒にクッキー作ったりするんだけど、うっかり焦がしちゃっても、皆で作るのが楽しいしおいしいんだ」
そして目を瞑り、プーレルジールの思い出をまぶたの裏によぎらせた。
「プーレルジールでは、一緒にコーヒー飲んだりしたよね。
可愛い猫を撫でる姿も覚えてる。
ステラさん……君とも一緒に、コーヒー飲みたいな。
猫も紹介するよ、温かくて可愛いよ!」
首を振るステラ、そこへ『黒撃』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が声を張り上げる。
「オレはステラに言いたいのは、確かに世界にはカナシイ事も沢山あるけれどだからこそ生き甲斐があるって事だよ!」
人型星界獣を殴り飛ばし、決意の籠もった目で振り返った。
「人間は弱いから全員が悲劇を乗り越える事は出来ないんだろうけれどね。
でも、人間は他の人へ想いを遺す事が出来るんだ!
道半ばで死んじゃうとしても、自分で事を成せなくても、誰かがミライで自分の願いのカケラを拾って叶えてくれる。
その証拠に、オレたちは過去の悲劇にも手伝ってもらってココまで来たよ!」
「何を……」
ステラが呟くそれを上塗りするように、イグナートは笑ってみせる。
「後は個人的な意見だけれど……今回、世界の危機に戦いを挑めるのはオトクだよね!
未だ嘗てこんな色んなモノが詰まった戦いに参加出来た強者は居ないよ!
全力を超えた全力でも勝ち目が見えないなんて戦い甲斐があるよね!」
「甲斐、か……」
言葉を引き取るようにして、『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)が懐からすらりとナイフを取り出した。
『Laminas para o Povo』。同胞たちの祈りが籠もったそのナイフは、ある将軍の落としたものを打ち直して作られたという。力に善悪はなく、使うものにこそあるのだとして。
そしてだからこそ、『彼女』はルブラットに託したのだと。
「虐げられる者の涙は慰められず、ただ消えゆくのみ。
己の幸福以上に、そんな誰かの哀しみが忘れられない……。
君の大義が間違いだとは言わないよ、ステラ君。
だが、そんな風に苦しそうな顔をするのなら、大義も心も裏切らない方法があると伝えたかった。
これから、幸福な未来を創り上げてしまえばいい――我々と、君の手で!」
「そんなこと……無理よ。私はもう沢山壊してしまった。今更そんな都合のいいことは言えないわ!」
首を振って叫ぶステラを前に、ルブラットは仮面の下で微笑んだ。
「それと、青薔薇隊から伝言を預かっていてね。
『また一緒にステラ君と人助けができる日を待っている』と」
「――ッ!」
ステラは咄嗟に頭を抑えた。流れ込んでくるのだ。かつて青薔薇隊と共に『戦った』あの記憶が。
「そうですか……ステラさんはあのステラさんとつながっているんですね。
声を届けるのなら今しかないかもしれない!」
ワイバーン『ルベウス』に騎乗し飛び上がった『こそどろ』エマ(p3p000257)が、ステラへと呼びかけた。
「ステラさん! あなたがプーレルジールのステラさんがつながっていると聞きました!
世界を観測した結果滅ぼしたくなるような気持ちもちょっとわかります! 私も運が悪ければ絶望の中呪ってたかもしれません!」
でも! とエマは独特の笑顔で続けた。
「後悔と悲劇だけじゃありませんでした! 思い出して笑顔になるようなことも、これから先が楽しみになるようなこともあるんです!
もう一人のステラさんも、私を仲間と言ってくれた! つながっているのならきっとあなたも!」
「わたし、も……」
言いかけて、ステラは首を振った。
「けれど、わたしは『あの子』とは違うわ! 沢山の星界獣を世界中に降らせてしまった。大いなるものも呼び出してしまった。取り返しがつかないのよ。もう、罪を犯してしまった!」
成否
成功
第1章 第7節
『ミラベル・ワンド』が掲げられ、魔法の光が爆ぜる。
吹き飛ぶ星界獣たちのその向こうに、『願い紡ぎ』ニル(p3p009185)の姿はあった。
「ステラさん! ニルはいっしょにごはんを食べたいです。
「おいしい」はみんなのこころをぽかぽかにします。
ニルは混沌のステラ様とも「おいしい」を知りたいです。
アップルパイ、食べませんか?」
優しく微笑み、そして続けた。
「ステラ様がかなしいことがいやなように。
ニルも、ステラ様がかなしいのはいやです。
ステラ様に笑っていてほしいです!
いっしょに笑える道を、さがしたいです。
だからニルたちは、何度だって手を伸ばすのです」
言葉を実現するかのように空いた手を伸ばし、ニルは笑う。
「つないだ手があたたかいのを知っているから。
一緒にのむコーヒーがおいしいのを知っているから」
そんなニルに襲いかかる無数の星界獣。
だが、その星界獣たちが爪をたてるより早く、『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)の狙撃が星界獣たちの脳天を貫く。
「混沌のステラさんも多くを見てきたんだろう。
見てただけ、ってのも言われたんだってな……」
スコープから目を離して、飛呂はステラを見た。
「俺は混沌生まれだけどずっと再現性東京に居て、その外は話でしか知らなかった。
この二年半、その外だった場所を駆け回って、ずいぶん自分の気持ちも変わったよ。
プーレルジールのステラさん曰く、冒険したがってるっていう相棒(銃)も出来たし」
ちらりと銃を見下ろしてから、彼は手を差し出した。
「今のステラさんは、どうしたい?
もっとさ、話したいんだよ」
差し出された手は温かく、そして優しかった。
しかしステラは首を振り、身を退く。
「無理だわ。私はあなたの知ってる『あの子』とは違う。見て、この大勢の星界獣たちを。『大いなるもの』を。わたしはもう世界を沢山壊してしまった。もう戻れないのよ。罪を犯してしまったの!」
「それでも――」
『無限ライダー2号』鵜来巣 冥夜(p3p008218)が光を纏いながら現れる。
「お迎えにあがりました、ステラ様。
かつて私が『プーレルジールのステラ』様へした様に――。
VIPの貴方へ最高の夢を見せましょう。
そう。旅の仲間と共に在る、という夢です」
「そういうこと! かわいいお嬢さんがしかめっ面じゃもったいないぜぇ!
アンタが笑顔になるまでホストクラブ・シャーマナイトはもてなすぜ!」
襲いかかる無数の星界獣たちを、『復興青空教室』オラン・ジェット(p3p009057)が次々となぎ払っていく。
二人の大技で星界獣たちを吹き飛ばし、大きな空白を戦場に生み出すとオランは膝をかがめてお辞儀をしてみせた。
「記憶を共有してるつっても体験するのは初めてだろ?
これから楽しいことが待ってるぜ
約束するぜ!
だからこっち来いよ!」
「ここに集まった皆は、貴方と未来を歩む為に来たのです。
いや、ここに居らずとも、貴方を想う人は沢山いる。
今まさに終焉獣と戦っている仲間達や、私の店で働くホスト達も。
勿論、私自身も」
冥夜もまた、手を伸ばした。
「悲しみや苦しみを上塗りできるぐらい、幸せや素敵な思い出を作れる事をお約束します。今こそ夢を現実にする時です!」
そんな中でふわりと浮かび上がる『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)。
彼女のことを覚えていたのだろう、ステラはびくりと肩をふるわせた。
「ドラネコさんを撫でたことはありますか。
覇竜名物ブタウシ鳥のお肉や、空に浮かぶわたあめは食べましたか?
ドラゴニウム温泉に入ったことは?
俯き牡丹のおまじないはしてみました?
ワイバーンに乗って大空を翔け、頬に風を感じたことは?」
「何を言って――」
「この世界は、素晴らしいことに溢れています。試しに、ドラネコさんを撫でてみては?」
リーちゃんを抱いてみせるユーフォニー。ステラは距離をおき、首を大きく横に振った。
(そう……やはり、あなたは罪を感じているのですね……)
アスタの巫女アドプレッサと交わした会話を思い出して、ユーフォニーは目を細めた。
「あなたはまだ世界を識らない。償うことだって、今からでも遅くはないのですよ」
成否
成功
第1章 第8節
星界獣たちを、血の刃がなぎ払う。
「成程、文字通りの力と威圧感……本当に飽きさせてくれない世界ですよ。
けれど……何よりも貴方ですよ、ステラ」
目を開く、どこか血のような赤き光を宿した瞳は、しかし優しく微笑んでいた。
「存外、嬉しかったんですよ。
あの旅の中で私の血を見て、好きだと言ってくれたこと。
この力が私と冒険したがっていると伝えてくれたこと。
ふふ、優しすぎましたね。もう一人の貴方は」
「う……」
頭を抑えるステラ。マリエッタと交わした会話が、脳裏に流れ込んでくる。
「だから、ね。貴方の心の内にもあるはずです。
世界を終わらせたくない思いが」
「私……に……」
「ええ私は最初から”混沌の"貴方に言っている。
ステラ。諦めるのはまだ早いですよ」
「そうだね」
『雪花蝶』斉賀・京司(p3p004491)は無数の魔法を駆使して星界獣たちを殲滅すると、前髪をスッと指でどかして顔をあげた。
「僕はあまり、君と関わることが出来なかったけれど。
君が僕たちと過ごし、笑いあった日々は嘘ではないと思っているよ。
僕の恋人がギフトで出したシャンパンをはじめて飲んだ味は覚えている?
イレギュラーズと色々な場所へ遊びに行った時の気持ちは?」
胸を押さえ、苦しみの表情を浮かべるステラに、京司は呼びかけた。
「もうちょっと、もう少し。僕たちがいる世界を信じてみないか?」
「それでも……この世界の苦しみは」
「ステラさんは優しい人だね」
仲間達を治癒しながら、『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は杖を地面に突き立てた。
その表情は、この世の終わりの如き怪物を前にしているというのに勇敢だ。
「苦しみや悲しみに共感してくれるなんて……。滅びが救いになる人もきっと居ると思う。
でも、その人が明日もそうかはわからない。混沌では突然何か現れてもおかしくないから。私もそんな風に現れたバーで飲んだことがあるし。
それにそんな人に会ったなら私が力になる。私が救いの手になるよ。絶望の中にも希望があることをステラさんにも証明してみせる」
箒に乗った『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)が、飛行型星界獣たちを魔法で次々に撃墜しながらステラに呼びかけた。
「星は吉兆にも凶兆にもなるものだわ。
けど、『ただそれだけ』にさせない為に、わたし達はここに来たのよ。
知らんぷりなんてさせないからね」
この箒に乗せたとき、プーレルジールのステラはあんなにも楽しそうだった。
対して混沌のステラはどうだ。こんなに苦しそうで、辛そうで……。
「夜は。夜空の姿はひとつきりじゃない。
混沌の夜空はきっと、『あなた』の方が、よく知ってるんじゃないかしら?」
目を細め、微笑みかける。
「大いなるものの端末じゃない『ステラ』として。あなたが望み、願うことを、考えてみて」
胸を押さえ、ステラは首を振った。
「だめよ。今更、そんな権利、わたしにあるはずないわ。だってこんなに沢山世界を壊して、悲しませて……アスタの里だって、滅茶苦茶にしてしまったのよ。今更私に、望みなんて……」
そんなステラの耳に音楽が響いてきた。
『灯したい、火を』柊木 涼花(p3p010038)の奏でた希望と喜びに満ちた音楽だ。
これまでずっとそうしてきたように、彼女は音楽で世界を救う。人の心だって、例外じゃない。
むしろ、それこそが本分だ。
「一緒に色んなことをしてみませんか?」
微笑む涼花。星界獣との戦いで傷付いた仲間達を、音楽の魔法が癒やしていく。
(経験則ですけれど。
観客として見に行くより、演者として出た方が楽しいんです。
だからあなたも一緒に)
成否
成功
第1章 第9節
ステラへの説得を辞めさせようというのだろうか。星界獣の群れはイレギュラーズたちへの攻撃性を増し、ギラギラと目を光らせ襲いかかってくる。
「滅びの淵にいたって手を取り合える相手はいる、俺はそう信じたい。
そして相手が手を伸ばさないなら、手を伸ばすように声をかけ続けるべきだ。
それを邪魔するというなら、斬られる覚悟は出来ているんだろうね?」
アルムたちに襲いかかる星界獣たちへ、『約束の瓊剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)は目を見開いた。
それまでの彼とは大きく異なる。蒼き光を従えたイクリプスの姿。
剣のひと薙ぎが星界獣たちを纏めて吹き払い、襲いかかる無数の爪の攻撃を光が阻み撃ち落としていく。
「誰かを救いたい、その意思があるからこそ運命をより良いものへとすることが出来る。
その意思を後押しできるならこんなに嬉しいことはない。
仲間たちの道は俺が切り開いてみせるよ」
さあ、と囁くヴェルグリーズ。
彼によって開かれた道を、『約束の力』メイメイ・ルー(p3p004460)たちは走って行く。
逃げるように身を退いたステラを追いかけて。
(優しい…混沌のステラさま。
貴女が受ける哀しみや苦しみを知って、そのままにはしておけません。
そこから貴女を連れ出します!
大好きだって気持ちを、諦めないで……!)
大きな声と、ハイテレパスで呼びかける。
「お花のクッキーは美味しかったですか?
お料理もしましょう。皆で食べるから鍋料理ばかりになるけれど。
貴女の中には、思い出がある……でも、貴女だけの思い出もこれから一緒に。
可能性も希望も、わたし達と繋げていきましょう……!」
「無理よ! わたしにそんな資格なんてないわ! こんなに世界を壊してしまったのよ! 大いなるものまで呼び出して、世界を今まさに滅ぼそうとしてる! そんなわたしに、思い出なんて……!」
『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)が星界獣たちを振り払い、ステラへと叫ぶ。
「オレは一緒に菓子作りをしたんだ。
あいつの手作りすごく美味かった。
きっとてめえとでも楽しくて、けど違う味になるんだろうな。
どうよ?
一緒に作ってみねえか?
てめえだけの味と思い出を」
襲いかかる星界獣の群れを華麗に回避し続けながら、牡丹は続けた。
「悲しいことも、苦しいことも見続けて、その弱ささえ愛したヒトを知っている。
愛していいんだよ。
混沌を滅ぼすために産まれてきたのだとしても。
世界に絶望しているのだとしても。
矛盾してようが、愛していいんだ。
世界のため、みんなのためなんだろ?
――てめえはとっくに、この世界が好きなんだよ。
オレ達だけじゃねえ。てめえも手を伸ばせ、ステラ。
星に願いを」
「だからって、犯した罪が消えることなんてないわ! そんな結末、許されない……!」
「いいえ――」
『夜鏡』鏡禍・A・水月(p3p008354)が手を伸ばす。彼を止めようと襲いかかる星界獣たちはすべて彼の妖力結界によって阻まれていた。
「ステラさん。一緒にクッキーを選んで、それがお気に入りになってるって知って嬉しかったです」
クッキー選びも、マシュマロを一緒に焼いたことも、飴細工をプレゼントして喜んでくれたことも……全部全部、語って聞かせる。
「ステラさん、あなたを孤独から、恐怖から、絶望からお守りします。
だからどうか僕らのそばへ。
僕の『後ろは落ち着く』でしょう?」
「――ッ!」
ステラは知ってる。『覚えて』いるのだ。鏡禍のうしろが落ち着くと語ったあの日のことを。沢山の沢山の思い出を。
「言葉を交わすのは3度目だね、混沌のステラ君。
ステラとの約束を果たしにきたよ」
杖を振る『昴星』アルム・カンフローレル(p3p007874)。
降り注ぐ星の光が、仲間達の力となった。
「君の気持ちを晴らしたい。この世界の綺麗なところをたくさん見せたい。
境界で生きているステラのように、君にも幸せになる道があるんだ。
俺には星降る夜のおもいでがある。それに、僕等は奇跡を知っている……。
君も、覚えてるんだろ?」
「それは……」
「ステラ君。俺たちと、旅の仲間になろう」
想いが届いた。それを、確かに感じた。
皆が掲げた『死せる星のエイドス』が、この影の領域にあって確かな光を放っている。
それでも、ステラは首を横に振った。
「わたしだって……わたしだって、『あの子』みたいな思い出が欲しいわ。
けれどだめなの。わたしではだめ。
だってこんなにも世界を壊してしまったんだもの。
世界中に星界獣を降らせて、滅茶苦茶にした。傷つけた人だって沢山いるわ。
アスタの里だって、もう戻らない。
だって『大いなるもの』を呼び出してしまったんだもの。
わたしの犯した罪は、もう取り返しがつかないのよ。
わたしに、『あの子』みたいになる資格なんてない……!」
ステラの頬に、涙が伝った。
成否
成功
第1章 第10節
「連中、早速こちらを学習し始めてるな。だが――」
『アネモネの花束』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)は星界獣たちの学習速度を逆手に取るように、蒼穹の絵筆で空中に鮮やかな作品を描き出した。
「七彩と呼ばれる師を持つ芸術家のプライド、見せてやるぜ!!」
描き出された天使の群れは星界獣たちへと襲いかかり、蹂躙していく。
「こいつらの成長速度は侮れない。学習して強くなっちまう前に、なるべく数を減らしちまおう」
そんなベルナルドに対抗するように飛び出したのは成長した人型星界獣たちだった。
片腕を絵筆の形に変えた星界獣が空中に前衛的な作品を生み出し、それを魔法に変えてベルナルドにけしかけてくる。
が、作品の精度で言えばベルナルドの方が圧倒的に上だ。真っ向からぶつかれば勝るのはベルナルドの方である。
かと思えば、人型星界獣がバックパックを出現させ、そこから大量の生体ミサイルを発射。イレギュラーズたちの間で次々と爆発が起こる。
「はっはー! 大分数も減ってきたってところではあるっすかねー。
んじゃまた一発ぶち込みに行くぞオラァ!」
『蒸気迫撃』リサ・ディーラング(p3p008016)は『パーフェクトフォーム』を発動。
おそらくリサをコピーしたであろう星界獣のそれを圧倒的に上回る、全力攻勢のフルバーストモードへと『Final Heaven』を変形させる。
「ガードは捨てた。徹底的に獣共を叩きのめしてやる!」
次々に発射されるミサイル群とガトリング掃射。
そこに加え折りたたみ式の砲身が展開し、先ほどの星界獣の上半身を砲撃によって吹き飛ばす。
「どうやら敵も学習し始めてきたようね。こっちのコピーがぞろぞろ出始めたわ」
『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は大太刀を抜いて突撃。
「あっちこっちで戦線が開いて大忙しだわね。
さてと……数が多いわね。一気に潰す手段も無いし、こっちも味方の数で押し切るしかなさそうね。
よし、やるわよ!」
数体の星界獣を太刀で切り捨てると、腕を大太刀に変えた星界獣とつばぜり合いを起こした。
が、今まさに技をコピーした星界獣とこれまで無数の修羅場をくぐり抜けてきたイナリとでは技の練度がまるで違う。
幾たびも剣を打ち合わせた後、相手の首を切り落としたのはイナリのほうだった。
「プーレルジールのステラが、オフィーリアを見て俺に言ってくれたんだ。
沢山、一緒に冒険をしたのねって。
キラキラしてるから、なんとなくわかるって。
彼女に貰ったキラキラを、混沌のステラに返すために。
道を拓く一助に、必ずなってみせる」
無数の星界獣を操り人形のように駆使する人型星界獣相手に、『キラキラを守って』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)はアタッシュケースからメアリを展開。
踊るように星界獣たちの間を駆け抜けたメアリは、手に絡めていた無数の糸を星界獣たちに絡みつかせていた。
「布を裁つように柵を断ち、糸と針を繰るように縁を繋ぐ。
磨き抜いた職人の技をご覧あれ! だよ!」
もう一方の糸を握っていたイーハトーヴがぎゅっと拳を握ってひくと、星界獣たちは次々に切断され崩れ落ちていった。
ただ人形を操ろうとする星界獣と、愛を持って人形たちと接するイーハトーヴではまるで違うのである。
そんな中、巨大な大砲を両腕にそなえた星界獣たちが一斉砲撃。
「世界を滅ぼせば何者も苦しまず、痛まず、救われると。
間違いではない。
だが、滅びを齎すのは私で在るべきだ」
間に挟まる『同一奇譚』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)がイクリプスの姿を解放し、その砲撃を見に受けて笑った。
「一頁。
私と奴、アーノルドとの約束だ。
私は私自身の手で世界を滅ぼさねば、ロクに眠れんと謂うワケだ。故に、貴様等の滅びなど拒絶する。
私こそが混沌世界の敵として。
レイドボスと成るのだ」
美しい少女の如き姿を見せたロジャーズ。だがその頑強すぎる肉体を傷つけることは、星界獣たちにはできなかったようだ。
よしんば傷つけても、古くよりレイドボスなどと呼ばれるロジャーズの体力を尽きさせることなどできない。
戦場に、ロジャーズの笑い声がこだました。
成否
成功
第1章 第11節
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※システムアナウンス
イレギュラーズたちの活躍により、状況に変化が起きました。
【星界獣】
あまりにも強力なイレギュラーズたちの攻撃を受け、星界獣たちはその強さを高速で学習、エネルギーを喰らい進化を始めています。
ここからは星界獣の中の多くの敵はイレギュラーズたちをコピーしたような技や能力を使ってくるようになるでしょう。
【ステラ】
多くの説得と希望の力によって、ステラの心は大きく動いています。
しかしステラはこの世界を壊してしまった責任や罪を感じ、イレギュラーズたちをまだ受け入れられないでいるようです。
彼女への許しと希望が、きっと彼女を変える力となるでしょう。
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第1章 第12節
右も左も危険地帯。安全な場所など、ワームホールを抜けた先にしかないこの影の領域。
星界獣たちも強化され、負傷者たちも出始めた。
そんな中でついに、あのトランペットの音色が響き渡る。
「この音は――!」
誰かが言った。そう、戦場に響くトランペットの音色を聞けば分かるのだ。戦場に、かの『青薔薇隊』が現れたことに。
「絶対ステラは旅の仲間達と一緒に戻ってくる。
これは新たな旅路の準備。誰一人欠けちゃいけない」
決意を胸に抱き、『青薔薇救護隊』フーガ・リリオ(p3p010595)は引き連れた大勢の仲間達の先頭をゆく。
「まずは陣地の構築だ! 簡易的なバリケードを作って少しでも安全な場所を作るんだ! 場所の防衛はおいらたちがこなす!」
鳴り響くは『青薔薇のマーチ』。
「うん、誰か欠ける…なんて嫌だね!
だからワタシは働かせてもらうよ。
皆ががんばってるのだから、ワタシもがんばるよ!
ワタシはその背を押すの」
戦場に組み立てられていくバリケード。
それを崩そうと襲いかかる人型星界獣たち。
腕を剣に変えた人型星界獣の群れを前に、『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)が立ちはだかった。
『百花号令』で仲間のAPを回復させつつ、『怒りの日』を発動。
周囲の星界獣たちはフラーゴラに意識を向け、腕の剣で次々に斬りかかってくる。
「こんなことで倒れる、欠けるワタシたちじゃない。
ねえ、そうでしょう」
『バリスティックシールド』を煌めかせ、剣を受け流すフラーゴラ。
そこへ早速負傷者が運び込まれた。『バカンスお嬢様』レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)が保護結界をはりつつバリケードの内側へと滑り込む。彼女の腕には負傷者が抱えられていた。
「死ぬんじゃありません! 生きて帰るんです!」
『幻想福音』『ミリアドハーモニクス』、更には『クェーサーアナライズ』までもを駆使して治療を開始するレイア。
彼女の決意を示すかのように、『青薔薇の御旗』が風にはためく。
「今こそ響かせよう、俺達の勝利の音を!」
トランペットの音色に合わせて歌い始めたのは『終音』冬越 弾正(p3p007105)だ。
イクリプスの力を解放すると、光の翼を大きく広げマイクを握りしめる。『絶歌極彩』の音色が仲間達を強化した。
「俺はかつて、R.O.O.で一人の少女を守れなかった。二度と同じ過ちは犯さない。
ステラ殿と手を取り、希望の未来を勝ち取るんだ!」
そんな防衛陣地に更なる星界獣たちが襲いかかる。フラーゴラのガードをすり抜けた個体たちだ。
彼らに向かって歩み出た弾正は『マリシャスユアハート』を発動。激しいビートが星界獣たちの心を揺らし、無理矢理に意識を彼に集中させる。
直後、放たれた音楽が魔法となり、爆発をおこし星界獣たちを纏めて吹き飛ばす。
そこへ強力な弓の一撃が走り、星界獣の胸へと突き刺さった。
『追憶駆ける希望』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)の放った弓だ。
ジョシュアはイクリプスの力を解放し、鮮やかな髪色に変えると凄まじい力を纏って次なる矢を弓につがえる。
「集落が滅んだ時とは違う。
仲間と一緒なら僕は、絶望に沈む事なく戦い抜けます。
温かさを教えてくれた人達が暮らす世界を守ると決めましたから」
攻撃に反応した人型星界獣が砲台化した腕をジョシュアへ向ける。
ジョシュアはそれを敏感に察知すると、素早く矢を発射した。
ざくりと突き刺さった矢は封殺と無策の力を流し込み、星界獣に膝をつかせる。
強力な星界獣が群れを成しているためだろう、弾正たちのダメージがどんどんかさんでいく。だが心配はいらない。『救済の視座』リスェン・マチダ(p3p010493)が駆けつけ、杖を振りかざした。
英雄譚の魔法使い『リスェン』の杖。朽ちかけてなお弱きを導く使命を帯びた杖。
そこから放たれたのは美しい癒やしの光であった。
「みんなで帰るって決めてるので、誰一人欠けさせやしませんよ。
それに……『青薔薇のマーチ』が聴こえてるから、不思議と不安は感じないんです」
フッと笑い、癒やしの力を増加させるリスェン。
それを後押しするように、『洪水の蛇』成龍(p3p009884)が『クェーサードクトリン』を発動。仲間たちにバフをかけると、バッと手を突きだして笑みを深める。
「馳せ参じました成龍ですぞ!
世界、ひいては皆様の危機とあればお手伝いいたしましょう!
龍になるためであればそのようにどーんと大きく心を持たないといけませんな」
更には『英雄叙事詩』と『ソリッド・シナジー』。
それを仲間達に順々にかけていき消費APを削減していく。
これだけの大群を相手にしているのだ。APはどれだけあっても足りないだろう。
そんな陣地へと猛烈な速度で駆け込んでくるのは『救急搬送班』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)。
「何故騎兵隊ではなく、青薔薇隊にあたしがいるのか。
人命救助ならあたしの右に出る者はいないからっすよ」
彼女が抱えていたのは星界獣の群れへと突っ込んで負傷した仲間であった。
ザッと陣地内へと滑り込み、ブレーキをかけるウルズ。
そして負傷者をゆっくりと下ろすと、すぐそばの『雨に舞う』秋霖・水愛(p3p010393)と『ライブキッチン』アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)に振り返った。
「この人は任せるっす! あたしは別の負傷者を運んできますから!」
こくりと頷く水愛。
「飛ばした小鳥が負傷者を見つけてる。先導するからお願い」
駆けていったウルズを見送ってから、水愛は倒れた仲間やその周りの負傷者たちに『サンクチュアリ』の治癒魔法をかけ始めた。
降り注ぐ優しい雨のような光が仲間達へと染みこんでいき、見るも痛ましい傷が高速で塞がっていく。
「だーいじょうぶ、誰も倒れさせないよ。
私だってこうやって戦ってきたんだから。
どんなところでもどんな怪我でもだーいじょうぶ!」
アルフィオーネはそれに合わせて『コーパス・C・キャロル』の治癒魔法を使って味方を治癒していたが、そこへ新たな星界獣が近づいてくる。
「影の領域に安全地帯はないようね……。仕方ないわ、蹴散らしてあげる」
アルフィオーネはすっくと立ち上がると、パンドラの力を高め目を閉じる。
光に包まれた彼女のシルエットはすくすくと成長し、まるで大人の女性を思わせるシルエットへと変わっていった。
「さすがに、親しみやすさなんて、考えている場合では無いわね。250年の瞑想が、無駄じゃなかったってとこ見せてあげる!」
光が晴れた中から現れたのはまさに大人のアルフィオーネ。手には巨大なハンマー。身体には美しいドレス。
その姿となったアルフィオーネが近づいてくる星界獣を殴り飛ばす。
そうしていると『青薔薇救護隊』常田・円(p3p010798)の救急馬車が飛び込んできた。
「ちょっと出遅れましたけど、僕も救護班として全力を尽くします! それがきっとステラさんの心を動かす事に繋がると思うから!」
馬車をとめた円は積み込んでいた味方を陣地内へ降ろし、青薔薇隊の仲間達へとパスしていく。
そして、爽やかな笑顔を浮かべて振り返った。
「ステラさん、よく見てください! 過ちは助け合うことで救えるんです!」
「負傷者はこれで全員だな。あとは任せておけ」
『最強のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)が円に言うと、円は再び救急馬車へと乗り込んで走り出す。
「さて、と……遅れたが皆の頼れるダチコーなおじさんの登場だ。
かわいい嫁さんもいて領地もあって、人生で一番ハッピーな時。世界を終わらせやしないぞ」
ヤツェクはにやりと笑うと、負傷した仲間達を一箇所に集めて楽器演奏を開始する。
音楽は魔法となり、魔法は人々を癒やす力となる。
この世界へ流れ着いてきた時は多少の武器と服以外殆どなにも持たなかったが、この世界で沢山のものを手に入れることができた。
それを手放す気も、壊させる気もない。
だからこうして戦うのだ。
「ステラ。皆、少しは幸せになっていいんだよ」
呟きながら演奏を続けるヤツェクの元に、『惑わす怪猫』玄野 壱和(p3p010806)がふらりと現れた。
「我が真名、パラミアキス=メイル。[ねこのおう]、その本当の力の一端、今此処に御見せしよウ!」
それは一目見ただけでは壱和とは分からぬ、どこか異様な人型実体であった。
光の翼を広げ、長いねこのしっぽをはやし、耳をたてている。ちらりと見える髪が、壱和の原形をかろうじて残していた。
ふわりと[ツキハネ]を使って飛行し、円の救急馬車へと素早く追従。
そして馬車を狙って現れた星界獣へ[たま]弐式を使って迎撃をはかる。
その力は圧倒的で、人型星界獣たちをまるで馬車に近寄らせないだけの圧を持っていた。
「[ねこのおう]の加護があるんだ。誰一人として死なせネェ!」
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※システムアナウンス
『青薔薇隊』の活躍により戦場に特殊効果が発生しました。
・特殊効果『青薔薇隊陣地』
影の領域内に作られた小規模な後衛陣地です。
青薔薇隊によって護られており、戦場での負傷者発生率を低下させます。
================================
成否
成功
第1章 第13節
ローレットは自由な組織だ。個々がバラバラの出自を持ち、思想を持ち、容姿を持ち、目的を持っている。それが依頼という一点において協力するという、世界的にも奇妙な巨大組織となっていた。
そんな組織にありながら、大きな戦いにおいては一つのチームを組んで協力し合い、時にはある一つのチーム名を名乗ることがある。
その中でも最も長く、大きく、そして激しい組織が何かといえば――そう、『騎兵隊』であろう。
「さあ、はじめましょうか」
『流星の少女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)がしゃらんと錫杖を鳴らし、歩き出す。愛馬ラムレイに跨がりもう一方の手に持ったのは『騎紫後光・戦旗』。身に纏うは『戦乙女の舞踏服・斑鳩』。腰にさげるは『流星の心臓』。騎兵隊の名をその力に込めたそれは、大きな戦いにおいて無二の力を発揮する。
「ステラへと行く友軍を邪魔させない。そのために騎兵隊は敵陣に激突し、一体でも多くの敵を引き付け、それを粉砕する。いいわね?」
引き連れた仲間達は多く、掲げた旗が強く靡く。
「騎兵隊が水先案内を任された! 行きなさい!
勝鬨をあげよ、大いなるものに騎兵隊ここにありと伝えてやるわ!」
対抗するのは同じく戦旗を掲げた人型星界獣とそれに率いられた異様な集団。
騎兵隊のコピーとでも言うべきそれを前にしかし、イーリンは笑った。
「この信頼まではコピーできないでしょう?」
味方にバフを与え、声をあげる。
それに伴って走り出したのは『策士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)たちだった。
「騎兵隊としてはせ参じた! 強大な敵たちよ、この僕が相手だ!」
シェヴァリオンに騎乗し走り出すシューヴェルト。
厄刀『魔応』を抜刀し、同じく馬型星界獣に騎乗し剣を抜いた人型星界獣と真っ向からぶつかっていく。
剣と剣がぶつかり火花を上げる。しかし技の精度はシューヴェルトのほうが圧倒的に勝っていた。
貴族騎士流蹴技『蒼脚・堕天』。呪いの力を足に集中させて放つというその技が相手の身体を大きく揺るがし、落馬させる。
そこへ馬上から飛び降りたシューヴェルトの剣が突き刺さった。
突撃する仲間達を支援するように『群鱗』只野・黒子(p3p008597)と『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)が周囲を確認する。
「好きなように動き給え、その為にボクは居る」
支援に特化したシャルロッテは戦場の中でも特異な立ち位置をもち、『練達式戦闘車椅子壱型』の上に腰掛け、悠々と背もたれに身体を預けている。
そんなシャルロッテがまるでチェス盤を操作するかのように手を動かし、仲間たちに指示を飛ばしていく。
一方で黒子もまた広域俯瞰とハイテレパスを駆使して仲間たちにそれを伝え、時には自らの意見を交え最適化していく。
彼らもまた、騎兵隊というチームに集まる優秀な頭脳の持ち主であり戦術をより強固なものとするメンバーだ。歴史も長く、そして信頼も厚い。
「ぶはははッ、随分とひでぇ顔色してんなこっちのステラの嬢ちゃんは。
全部終わったらサハイェル拠点の時みてぇにクッキー焼いてやんねぇとなぁ」
指示を受け人型星界獣の群れへとローラーダッシュで突撃をはかる『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。
翳した聖盾が星界獣からの砲撃を防ぎ、同じくがっしりとした人型星界獣と正面から激突する。
「友達同士の大事な『お話』の邪魔してんじゃねぇよ星界獣どもがよぉ!
テメェらの相手は俺らだ! かかって来いよ、その爪や牙が飾りじゃねぇってんならなぁ!」
が、機先を制したのはゴリョウのほうだった。硬化した殻に覆われた腕で殴りかかってくる星界獣の攻撃を盾で受け流し、逆に激しいパンチを叩き込む。
その一方で『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)はタイニーワイバーンに騎乗し、翼をはやし突っ込んでくる人型星界獣相手に攻撃呪術を発動させる。
呪力を含んだ血液で空中に印を描くと、【流星流転】死兆将来を起動した。
「前にも言ったよね? 無粋な真似は控えて、と。
大事な友人たちが彼女を救う為に全てを懸けているんだ、邪魔は誰にもさせない。
さっさと死んで道を開けなよ!」
同じく呪術を発動させる星界獣と交差するように力と力がぶつかり合い、空中で歪な呪力の爆発を起こす。
それに打ち勝ったのは雲雀のほうだ。鋭く洗練された呪力が星界獣の肉体を貫き、血を吹き上がらせる。
墜落する星界獣をスルーして『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)が突進。
「ステラを助けたい、っていうみんなの想いが集まってる。
それを邪魔するやつは全部私が撃ち抜く……!」
マジカルライフルを天に向かって発砲するとどこからともなくやってきたドローン戦車とドローン戦闘機が分離。オニキスへと装着される。
対抗するのは巨大な火砲を備えた人型星界獣だ。
こちらに向けてそれを発砲してくるが、こちらとてそんな相手と戦ったことがないわけじゃない。いや、これまでこの世界幾度も、そして幾通りもの戦いを経験してきたオニキスには――もはや敵ではない。
「インフィニティモードへ移行! マジカルジェネレーター、フルドライブ。バレル接続。固定完了。超々高圧縮魔力充填、120%。ターゲット、ロック。マジカル☆アハトアハト・インフィニティ―――発射(フォイア)!」
相手よりも更に強力に変化した火砲から魔法の光線が放たれ、人型星界獣の上半身をぶち抜いていく。
そこへ更なる集中攻撃が起こり、オニキスに生体ミサイルが集中するが――。
「大丈夫さ、ジョーンズの方。大軍に最も強いのが騎兵隊(われら)だろう?」
ゆらりと現れた『闇之雲』武器商人(p3p001107)がそのすべての攻撃を引き受け、そしてそれでも立っていた。
自分でも戦場を細かく観察し、情報伝達にも余念が無かった武器商人。
『麗しの覇王』ギネヴィアに騎乗したその姿は圧倒的で、そして強力無比であった。
ただEXFを高めただけの人型星界獣など、武器商人の前では何の役にも立ちはしない。そう、長き戦いの中で経験を積んできた武器商人の前では。
そうして周囲の星界獣たちを引き寄せる中、『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が攻撃態勢へと移る。
「説得出来れば敵の大手駒1人抱え込めるだろうが……。
いや今更だな。海戦の時にも同じ状況があった気がするし、なんとかなるだろ。
こっちはこっちで、邪魔者を叩き出すのみ」
無数に生み出した鎖が巨大な棍棒のように編み上がり、星界獣たちをなぎ倒す。
そこへマカライトの能力をコピーした人型星界獣が鎖を生み出して飛ばしてくるが――。
「静かにしろ、大事な話の最中だ」
その鎖を断ち切って、マカライトは編み出した巨大な狼の顎で星界獣を食いちぎったのだった。
成否
成功
第1章 第14節
「自分によく似た星界獣か。それなら弱点は明瞭だ。俺は素早い分、防御の方はおざなりになりがち。先手で狩りきった方が強ぇって事だろ」
手に絵筆を握り、身体全体をカラフルに彩った人型星界獣を前に、『アネモネの花束』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)は絵筆を強く握りしめる。
芸術において模倣はつきもの。むしろされて当たり前の世界だ。
けれどそれでも差を付けるのは、絵画に込めた想いと情熱。そして培ってきた技術と才能だ。
「昔ならまごついただろうが、生憎、自分によく似た敵ってのは何かと相手をする機会が多くてな。
俺達を倒したけりゃ超えた姿で挑んで来やがれ」
相手より高い反応速度で生み出した絵画の魔法が相手の魔法とぶつかり合い、そして打ち破る。
「私には叶えなければいけない、人生の目標がある!」
そこへ飛び込んでいったのは『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)だ。
凄まじいダッシュからの跳び蹴り――に対抗して、同じフォームで跳び蹴りを繰り出した人型星界獣と交差する。
「世界の人々に美味い食を与える!
だからまだ死ぬわけにはいかないのだ!」
ギラリと目を光らせ、振り返り、更なる蹴り技を叩き込む。
それはモカがこの世界に渡り、いくつもの戦いを経て、いくつもの出会いを経て、いくつもの経験を経て獲得した技だ。フォームだけを真似た星界獣になど、後れを取るはずがない。
そこへ更に現れたのは『目的第一』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)だ。
対抗して前に出てくる人型星界獣……の頭には巨大なプリン型のヘルメットが被されていた。あえて旧型で来たらしい。
(例の少女は揺れている。更に押せばこちら側に引き込める見込みもありそうだが…その打算を見抜かれた場合が面倒だな。
その見込みがある者の為に、及び『大いなるもの』へ辿りつく為の露払いに集中するとしよう)
プリンは拳を握りしめ、そしてパンドラを解放。目を奪われるほど美しい鎧に身を包んだ戦士へと変化すると、手にしたハンマーで殴りかかる。
相手は拳を繰り出してくるが、この世界に目覚め様々な経験を経て成長したプリンの攻撃を、そんな拳で止められるわけがない。
ハンマーは相手の腕を粉砕し、そのまま相手の上半身までもを破壊してしまった。
「希望も絶望も、どうでもいい。
今を成す事が全てだ」
成否
成功
第1章 第15節
両の手に蒼き焔を宿した人型星界獣が、その手を広げる。
すると周囲の星界獣たちに焔が灯り、力を増した。
「さてさて、そう簡単にはやられてくれなさそうな感じねぇ……」
その様子に既視感を覚えたのは、他ならぬ『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)である。
「ただ、モノマネしただけだとどうにもならぬ事もあるの。
果たして覚えたての技でちゃんと連携できるかしら~?」
胡桃もまた蒼き焔を自らの周囲に燃え上がらせ、仲間達へと付与。
そのまま拳に焔を宿すと、星界獣へと突っ込んだ。
同じく突っ込んでくる星界獣と、拳と拳がクロスする。
「そもそもわたし自身がいわゆる地雷構築なのでメタるだけなら範囲は広いの。
ラド・バウで鍛えた拳が唸りを上げるかしら~?」
相手の拳を首の動きでいなしながら、自らの拳を星界獣の顔面へとヒットさせる胡桃。
「ただ、急に成長されるのは注意した方がいいわねぇ。次は何をしてくるやら」
そこへ巨大な体躯を持つ人型星界獣が出現。全身に搭載された火砲を展開し、仲間達へと向けてくる。
「こちらの能力や技を模倣したところで、こちらの勇気も何も学んでいないのなら……」
そこへ割り込んだのはブラスターアーマーを纏った『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)だった。
突き出した拳を中心として巨大なエネルギーフィールドが形成され、人型星界獣の放った一斉砲撃を防御する。
「勝てると思うなよ、星界獣ッ!」
バックパックに装着されていた剣のひとふりを手に取ると、そこから焔の刀身を出現。巨大な剣へと姿を変えると、星界獣へと斬りかかる。
ブラスターアーマーは先ほどの砲撃で悲鳴をあげていたが、それが逆にムサシの力を増大させた。
「あと少しで彼女の心が動くかもしれない……それに、倒すべきなのは大いなるもの。
今こんなところで単なるコピー相手に負けていられるほど自分達に暇はない!蹴散らすぞ!」
ズバン、と胴体が完全に切断され、斜めに崩れ落ちる星界獣。
そこへ新たに現れたのは翼を持った人型星界獣と船舶型の武装を備えた人型星界獣のコンビだ。
「星が落ちるような災厄だろうと、戦わねばならぬ時がある。
戦艦武蔵、出撃!! 本命への突破口を開くぞ!!」
大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)は『九四式四六糎三連装砲改』を展開すると、一斉に星界獣めがけて砲撃。
対する星界獣もまた同時に砲撃を仕掛けてくる。
「高速学習とは、中々に厄介な能力を持っているようだ。
しかし、彼奴達の軍勢も無尽蔵ではあるまい。
ここで必要なのは物量に対して火力負けしない事、正面からの火力投射で応戦すべきと見た!!」
にやりと笑う武蔵。そんな彼女を護るように着地したのは『武蔵を護る盾』レイテ・コロン(p3p011010)だ。
「あのデカブツの所へ皆を行かせる為にも、にステラって子に迷いを断ち切らせる為にも!
コピー芸の雑魚を纏めて吹き飛ばして、ここを押し通るよ!」
レイテはここまで高い反応速度で武蔵を牽引しながら『ソリッド・シナジー』で消費APを削減。激しい砲撃戦を仕掛けても問題無いよう、彼女の盾となって護り続けてきたのだ。
そこでようやく『アッパーユアハート』を発動。レイテから放たれた波動が二体の人型星界獣の動きを誘導し、レイテへと集中させる。
「ボクが居る限り、武蔵に近づけると思うなよ!」
翼を広げ突進し、まずは有翼の人型星界獣に蹴りを入れる。その流れで船舶型武装を備えた星界獣を蹴りつけ軽く怯ませると、武蔵に合図を発した。
「今だ!」
「承知!」
武蔵の凄まじい砲撃が星界獣たちを包み込み、爆発を起こさせる。
その爆発を抜け飛行していくのは『焔竜の頌歌』星華(p3p011367)。
「アスタを飛び越え、お姉さん現着!!
見渡す限りの獲物の山!! とはいえ、狩りに行くよりここは回復や支援で支えるデキる女を演出していく方向で!」
杖を握り治癒の魔法を駆けて回っていた星華だが、そんな星華の目に同じく治癒魔法をかけて飛び回る人型星界獣の姿が映った。
相手もこちらに気付いたのだろう、握っていた杖をぐるりと回し、攻撃魔法を放ってくる。
空中に生まれた紅蓮の魔方陣から魔力の槍が出現。発射される。
「そっちがその気なら――!」
星華もまた杖をぐるりと回して必中の『薔薇黒鳥』を発動。紅蓮の魔方陣から魔力の槍が出現し、二人の間で激突。相殺する。
が、これはほんの小手調べにすぎない。星華は魔方陣を燃え上がらせると炎の竜を象った魔力体を出現させ、星界獣へと発射した。
咄嗟に防御をはかる星界獣だが、その身がたちまちに燃やされていく。
成否
成功
第1章 第16節
星界獣たちの数は目に見えて現象している。これはイレギュラーズと星界獣の個体戦力差によるものが大きいだろう。
「私達のコピーとか出たらどうしようかルナール先生?」
「俺らのコピー? 本物には勝てるわけないと教えてやればいいだろ。
特に、ルーキスをきちんとコピーできるわけないんだからな」
「まあ、それならそれで見せつけてやればいいのか」
もう一息だ。そう考えた『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)と『片翼の守護者』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)はまたもコンビを組んで飛び込んでいく。
「一つや二つ、学習したところで……と言いたいところだがそうもいかないのが現状。
有効打は入ってるんだろう、というわけで継続しよう」
蒼く美しい姿をした人型星界獣が手を白銃の形に変え、ルナールへと迫ってくる。
対するルナールは相手の射撃を防御しつつ距離を詰め、零距離からの射撃を叩き込み相手をくの字に曲げさせる。
一方で美しい翼を持った人型星界獣と『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)がぶつかり合っている。
宝石を核として作り出した剣をお互いに握りしめ、至近距離で幾度も打ち合う。
「ふむ、そろそろ出てくるかとは思ったけど。
随分と今回は学習が早い。まあこれだけ攻撃に晒されれば記憶の一つや二つぐらいは容易いよね。
うーん……これは引き続き絨毯爆撃かな。
学習してるってことはきちんと有効打を与えてるって裏返しじゃない?」
そして幾たびの激突の後、ルーキスの剣は相手に突き刺さり、魔力暴走の爆発によって吹き飛ばしてしまった。
そうして再び開いたステラへの道。
箒にまたがった『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)とそれに相乗りした『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)がステラへと接近する。
「世界を壊したからあの子のようになれない。誰かを傷つけた自分にその資格がない。
本気でそう言うんですか? だとしたら、この私を……死血の魔女を見なさい。
私もこの世界の多くを傷つけた…長い年月の中で私はあなた以上に多くの人々を傷つけ、殺め、反転させた過去さえある。
だから私は許されない。取り返しがつかない。資格がないと。
そうでしょう。けれど、そんなものは関係ない」
胸に手を当て、マリエッタは叫ぶ。
「あの子のようになりたいならば、なればいい。
あの子のようにだれかに手を差し伸べて歩き出せる。許されなくても歩くことは誰にも止められない。
その心のままに歩くだけ、自分で自分を否定しなければ旅路も世界も貴方を否定しない
辛くても仲間はいるでしょう、ステラ」
その言葉に頷いて、セレナも続けた。
「この人は確かに大きな罪を犯した人だわ。
けどそれだけじゃない。
もっと多くの人を救い、守り、魔種を討ち、戦ってきた。
わたしはそれを見てきて、知っている。この人の戦いを、誰よりも見てきた。
……マリエッタにとって、贖罪のつもりなのかどうなのかは分からないし、今でも『わるいこと』はやってるけど」
そして微笑みを浮かべる。
「ねえステラ。
罪は罪だわ。だけど、だからと言って死をもって償うなんて、選ばなくて良い。
あなたを憎む人も、竜も、居るかもしれない。だけど、憎しみは未来には繋がらない。
生きてこそ贖罪。許してこそ、希望となる。
そうして未来のために償えると。わたしは思う。
だから生きましょう。
生きて、混沌のために。あなたのために!」
対して、ステラは胸に手を当てて小さく首を振った。
「そんな……だって、私は……」
「ステラ」
『アネモネの花束』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)が前に出て、ステラを描いたラフスケッチを掲げて見せた。
「戦闘の渦中でも、一度お前さんと話したかったんだ。
新しい絵のモデルになって欲しくてな。
なにせプーレルジールのステラも綺麗で描き甲斐があったが、現代のステラにはまた違った魅力がある」
「なによ、急に――」
「なぁ、ステラ。俺は、お前さんがこの世界を壊した事を、責めるつもりはない。
罪の重さはお前さん自身がよく知っている事だし、悔いてるからローレットの奴らのの優しさに触れて苦しんでるんだろ。
反省してんならいいじゃねぇか。
子供のうちは、間違ってもいいんだよ。沢山間違って、沢山学んで。そうやって成長していくものだ。
子供の起こした事を何とかするのが俺達大人の役目ってやつだ。気負いすぎるなよ」
「わたしを……許すっていうの……?」
ステラの表情がゆがみ、涙が伝った頬に手を当てる。
成否
成功
第1章 第17節
突如、飛行してきた『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)がステラの胸ぐらを掴んだ。
「心は決まってるくせに、聞いてればうじうじうじうじと……!」
「――!」
「周りを見てステラ!
この瞬間もみんな戦って死力を尽くして
その中でどれだけのひとが貴女に手を差し出してるか分かってる!?
どんなに手を差し伸べられても。
避けて拒んで下がったら。
掴めるものさえ掴めない。
ひとの大切を壊しておいて、自分からはなんっっっにもしないうちは、『資格』なんて無くて当然でしょう!?」
「そんなの、わたしだって……!」
「うじうじは後で付き合うし、罪だ何だも一緒に考えるから、『あの子みたいになりたい』なら一緒に戦って!
このままじゃ全部覇竜に雪崩れ込むの!」
震えるステラに、『100点満点』Lily Aileen Lane(p3p002187)が呼びかける。
「防衛基地の外での花火……覚えてますか?
って言っても、こっちのステラさんには見せたことないですね」
Lilyが微笑むと、ステラの脳裏にその時の『記憶』が流れ込んできた。
美しい花火と、それを見てはしゃぐ『あの子』。
Lilyは『火葬・白花曼珠沙華』を展開し星界獣たちへぶちまけると、『今回はナイアガラ花火バージョンなのです!』といってステラへ振り向いた。
「いつか、ちゃんとした花火を一緒に観たいです。
あと、これ」
そう言って懐から取り出したのは『死せる星のエイドス』。
「これは向こうのステラさんが託してくれたモノ、これを貴女にあげます
だから、ステラさんの意志で踏み出して欲しい。
手を伸ばせば、握ってくれる人……銀髪の魔法使いが待ってるよ。
きっと大丈夫」
「イイですね、イイ兆候です。私たちの話をきちんと聞いてくれてますよ。
このまま話してる途中に敵にやられないように気を付けて、呼びかけを続けていきましょう!」
『こそどろ』エマ(p3p000257)はそう仲間たちに呼びかけると、自分も前に出てメガホンみたいに口元に手をやった。
「今の状況について反省しているならばこれはチャンスなんですよステラさん!
出したものは私たちが片づけてますからね!
罪と罰ということであれば、私だって盗賊上がりです! イレギュラーズだから手出しされにくいってだけで思いっきり罪人ですからね! こうやって戦い抜いてきたのも、ある意味贖罪ということでもあるんです。
つまり……まだまだやり直せるんです! あなたも、私も……ッ!」
「本当に……? そんなことができるの?」
「ああ」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)もまた前に出て、自らの胸に手を当てる。
「壊した物は戻らないし、犯した罪は消えない。
だがステラさんにはそれを慮る心も償う意志もあるじゃないか。
それこそが希望を持つ資格だから、どうか君自身の希望を捨てないでほしい。
今更過去を咎めたりしないから、今から変わろうよ。
さぁ、今ならまだ間に合う。一緒に混沌の希望を掴み取ろうよ!」
そう言いながら、イズマはメロディア・コンダクターを引き抜いた。説得を邪魔しようと迫る人型星界獣たちめがけ、『アイゼルネ・ブリガーデ』を発動させる。
指揮棒のように振りかざした剣はそのまま音楽へと変わり、生み出された仮想の楽団が音楽の魔法を星界獣たちに叩き込む。
「貴女自身が口にしましたよね?
ええ、貴女と異世界のステラさんは違います。
異世界のステラさんは、異世界のステラさん。
混沌のステラさんは、混沌のステラさんです」
ふわりと立ち上がる『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)。
「だからこそ。
その始まりも、新しい道も『同じでは無い』のです。
そして、『同じで無くて良い』のです」
観測端末とステラが握手を交わしたあの思い出が、ステラの中に流れ込んでくる。思わず感じた手の温かさを、友情を。
「貴女には、貴女としての旅を。
貴女には、貴女だけの思い出を。
例え、それが多くの死と破壊の罪から始まる、贖罪の旅だとしても。
例え、その旅で失ったものを取り戻せなくても。
これ以上失わせない事も、新しく何かを生み出す事も、今ならまだ可能なのです。
さあ、ステラさん。どうぞ此方へ。
皆、『貴女』を待っていますよ」
誘うように、観測端末は触手を伸ばす。あの日のように。
成否
成功
第1章 第18節
ステラに、確かに声は届いている。それゆえに彼女は震え、涙を流すのだ。
そしてまだ、手を伸ばす人々がいる。
『願い紡ぎ』ニル(p3p009185)もその一人だ。
「ニルは、やってしまったことは、なくせないと思います。
でも、新しく始めることはできると思うのです」
ニルはあるドラゴンや、遂行者たちのことを思い出す。
「フェザークレス様は練達やニルのともだちにひどいことをしたけど、ちゃんと謝ってくれました。
一緒に戦うこともできました。
遂行者がやった「かなしい」ことは消えないけど。
カロル様はニルたちの仲間です。
ステラ様だって、ニルたちの仲間、でしょう?
ごめんなさいからはじめましょう!
「かなしい」をずっと「かなしい」のままにしないように。
プーレルジールのステラ様がいいなぁって言うくらい。
たのしいことをたくさんしましょう。
一緒ならきっと大丈夫です!」
『無限ライダー2号』鵜来巣 冥夜(p3p008218)もまた前へと出る。
「ステラ様はお優しいから、今までの事に心を痛めていらっしゃるのですね。
この世界が滅びに向かっていようと、私達がなんとかしてみせます。
私達は今までだって、根拠がなくとも絶望的な敵相手に根性で勝ってきたのですから」
ニルと冥夜はそれぞれの魔法を使い、群がる星界獣たちを振り払う。
「それに俺には、大切な恋人や、戦友達がが傍にいてくれています。
やる気もホストの魅力も絶好調!『大いなるもの』だって止めてみせますよ!
私が最初に店を建てたホストクラブは、練達の『再現性歌舞伎町1980』という街にありまして。
とある災害で壊滅状態になりました。それでも店は再開できた。誰も諦めなかったからです。
人は貴方が思う以上に強い生き物だ。ステラ様の罪も、誠実であれば、皆許してくれますよ」
そう言って店の名刺をピッと翳す。
同じ名刺を翳し、『復興青空教室』オラン・ジェット(p3p009057)が笑った。
そして指をスライドさせ、練達青空教室の写真を見せてやった。
「これは俺がやった青空教室とは別のやつかもしんねーが、めちゃくちゃになった練達で俺は青空教室をやったことがある。
人は、世界は、壊されてもちょっとやそっとじゃ完全にはなくならねーんだ。
お前が思ってるより皆は強いぜ。
それに悪いことしたらゴメンナサイって言うんだ。
許してもらわなくても言うのは大事だぜ」
言うだけ言うと、鉄パイプを握りしめ群がる星界獣へと襲いかかる。
オランの一閃が無数の星界獣を振り払い、蹴散らしていく。
そこへ強烈な銃撃を仕掛けながら、『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)が突入してきた。
「そうだな、確かに罪ってのはあるんだろう。
でも、ステラさんはその罪を忘れないだろ。
俺も忘れない、その上で言うぞ」
銃を構えたまま、飛呂は顔をあげる。
「だからこそ、手を伸ばしたいって思うんだよ。
償うってのは、罪を打ち消すものじゃなくて、背負い続けることだと思うから、持ったままでいいんだ。
きっと苦しいだろうけど、戦友たちが側にいるなら、それこそ『悪いことばかりじゃない』と思うぞ」
人型星界獣が説得を辞めさせようと襲いかかる。だがそれがなんだというのか。
飛呂はイクリプスの力を解放し、恐ろしい姿をさらすと手にしていたライフルで星界獣を撃ち抜いた。
そこへ、『灯したい、火を』柊木 涼花(p3p010038)の美しい希望に満ちた演奏が響く。
「貴女の軌跡を考えれば、当然恨んでいる人もいるでしょう。
貴女もそれを悔いて、罪や責任を自覚している。
もし償うつもりがあるなら、貴女の存在や行為で喜ぶ人を増やしていきませんか?
そんな人の数を、数えていきませんか?」
「喜ぶ人を……?」
「貴女が手を取ってくれると、少なくともわたしたちはとても嬉しいから。
だからもう一度だけ言います。一緒に色んなことをしてみませんか?」
沢山の思い出が、希望が、可能性の力がステラへと流れ込んでくる。それはもう、抗いようがないほどに眩しく、強いものだった。
ステラは思わず顔を覆う。その表情を、誰にも見せたくなかったから。
成否
成功
第1章 第19節
「泣かないで、ステラさま」
『約束の力』メイメイ・ルー(p3p004460)が掲げたのは、『死せる星のエイドス』。
プーレルジールのステラが、世界を救うために作り出しイレギュラーズたちに託した力の欠片だ。
「『もう、取り返しがつかない』じゃなくて、『まだ、取り返しがつく』、です……!
傷つけられた人は確かに居て、ステラさまを恨んでいるかもしれません。
けれど、ステラさまが変わろうと、わたし達の手を取って下さろうとするのなら。
前に、進めるのです、よ。
責任も、罪も……全部ご自分のものにしようとするステラさまの力に、なりたいのです」
メイメイはそう言い切ると、尚も波のように襲いかかってくる星界獣たちへ『神翼の加護』を発動。様々なコスプレをしたミニペリオンが姿を現し、星界獣たちへと思い切り襲いかかっていく。
「けど、もうこんな状況じゃ……」
「はっ、そうかよステラ。
なら話ははええ。
まずは『大いなるもの』をぶっ飛ばす!」
『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)が啖呵を切って前へ出た。
「てめえの罪が取り返しがつかねえっつうその諦観ごとな!
当然オレ達がどうにかするだけじゃねえ。
てめえもだ、ステラ。
オレ達と一緒に戦え。
自分の手でケジメをつけろ!
諦めるなつってんだろ。
やってもねえのに償えないと決めつけてるんじゃねえよ。
大体よ。
償いっつうのはできるからやる、できないからやらない、っつうもんじゃねえだろ?
てめえの罪が一生もんで、償いきれねえっつうのなら。
付き合ってやるよ、生涯をかけてな」
そう呼びかけながらも、牡丹は襲い来る星界獣の攻撃を次々と回避している。
そんな星界獣たちへ鏡の剣で斬り付け、『夜鏡』鏡禍・A・水月(p3p008354)もまた前へ出た。
「取り返しがつかないのは『大いなるもの』が呼び出され滅びが決まったからですか?」
鏡禍は鏡の剣を突きつけ、大いなるものを指し示した。
「それなら『大いなるもの』を倒せばその憂いはなくなるでしょうか
ドラゴニックにこそ負けましたが、実力は以前証明したはずです。
生きてさえいたら罪は償えるんです。
星の祠はステラさんたちの力ではないですか?
それが使えるのならまた里は再興できます」
強く前に踏み出し、続ける。
「罪には罰を、でもそれは一人である必要はありません。
手を差し出している僕らがいます。
共に向き合いましょう、それが『仲間』ですから。
誰もが許さないというのなら、僕が許しますよ。
僕の後ろにいたらいいんです」
「あなたの――」
「そうだよ」
杖を手に、決意に満ちた表情で歩み出る『昴星』アルム・カンフローレル(p3p007874)。
「やっと本音を話してくれたね。
確かに君は、滅びを呼んだ。星界獣を引き連れて、亜竜種の里をひとつ滅ぼした。
それでも、君は直接手を下してない。
里の人たちは全員無事に避難したし、君と対峙した特異者たちも皆生きてる。
里は再建出来るし、俺達は滅びを止められる。奇跡を起こせる。
だから君は、まだ償える」
掲げたのは『死せる星のエイドス』。
「世界が滅びたら、償わなかったことを背負ったまま……心に傷を抱えた君が一人ぼっちになるのは、俺は嫌だ。
滅びを呼んだのが罪だと言うのなら……それを防ぐのが、償いだ。
共に戦おう、俺達と!」
そして、奇跡の光が輝いた。
アルムを中心にしたその光は、仲間たちが掲げた無数のエイドスと共鳴し膨らんでいく。
それが、まるで流星のようにステラへと流れ込んでいった。
成否
成功
第1章 第20節
そして奇跡は――。
GMコメント
ついに最後の戦いが幕を開けました。
アスタ上空のワームホールを抜け、『大いなるもの』へと戦いを挑みます。
現場には大量の星界獣が陣取っており、それらを倒しながら戦うことになるでしょう。
詳細は各章の説明をご参照ください。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●『パンドラ』の加護
このフィールドでは『イクリプス全身』の姿にキャラクターが変化することが可能です。
影の領域内部に存在するだけでPC当人の『パンドラ』は消費されていきますが、敵に対抗するための非常に強力な力を得ることが可能です。
■■■プレイング書式■■■
混雑防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
一行目:【パートタグ】
二行目:【グループタグ】
三行目:実際のプレイング内容
書式が守られていないとお友達とはぐれたりすることがありますのでくれぐれもご注意ください。
■■■グループタグ■■■
誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの二行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
大きなグループの中で更に小グループを作りたい時は【大チーム名】【小チーム名】といった具合に二つタグを作って並べて記載ください。
※タグによってサーチするので、キャラIDや名前のみを書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
例:【ナントカチーム】3名
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