PandoraPartyProject
リインカーネイション
――きっと、聖女というのは万人を救う人の事を言うのではなくて。
たった一つの何かを後悔せぬように切り開ける人の事を言うのだろう。
「ねえ、ルルちゃん」
「何よ、バカスティア」
「バッ……」
今、そういう事を言う場面? そんな風に振り返った『天義の聖女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)へとカロル・ルゥーロルゥー笑った。
「いや、おまえだけじゃないわ。自分の時も思ったけど。
イレギュラーズって、莫迦ばっかりよね。イレギュラーズだけじゃないわ。サマエルも、コンフィズリーの坊やも。
カムイグラ? って国のあの何? MIKADO? あのみょんってした帽子の男とか神様もそうよ。
此処では無い何処かで戦う奴らだって皆大馬鹿者だわ。でも、嫌いじゃない」
カロルは、『元々は敵であった女』は朗らかに微笑んだ」
サイズが――ツリー・ロド(p3p000319)が己が身を切り裂かれようとも為したいことがあると告げた。
妖精女王フロックスの杖に光が宿される。傍らで、つんと肘で小突いた『赤々靴』レッド(p3p000395)は「ア~リス」と笑った。
「ついでに『ピエロ』にも『はよ出て来い』て伝えといてくれる?
あの旅は混沌世界では無かったけれども……記憶に良き思い出と残るもうひとつの『現実』でもあった」
グレイ(p3x000395)を一瞥してからジェーン・ドゥは明るく笑う。「ええ、構わないわ。目が醒めるような毎日をお見舞いしてくれるならね」と。
ああ、構わない。レッドはこれまで沢山の道を歩んだ。困難だって知っていた。
――それでもいい。
レッドは『靴』だ。歩みの象徴だ。
汚れたって、草臥れたって、靴がなければ歩けやしない。
「さあ! 世界を一度救ったことがある。ならこの世界も救ってみせようじゃない!」
まるで『異世界』を行くような冒険譚。その光景を双眸に映したのはセララ(p3p000273)だった。
「行くよ、リンツ!」
「背中は任せなさい。コンフィズリー卿」
淑やかにアンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)が声を掛けた。背を押されるようにリンツァトルテが走り出す。
「スティアの嬢ちゃん! 護りは任せろ!」
その手には『オリオール』の盾が握り締められていた。ゴリョウ・クートン(p3p002081)の声を聴きスティアはカロルの手を握り締める。
「まるで、あの日のようだね。サクラちゃん」
「そうだね。私達の国は二度の冠位魔種による危険に晒されたけれど――今は、それをも乗り越えた力がある!」
生きていくことは、苦しい事ばかりだった。
アミナは、『革命派』の娘は。決して聖女様になんてなれない。万雷の拍手の下で、気取ったワルツを踊るような馬鹿げた姿を見せることしか出来なかった。
「――アミナ。初めての国外旅行にしては物騒な地を選んだな。全剣王の時の疲れは取れているのか?
私は取れていない――が、この身も、君がくれた短剣も欠けてはいない……止まる訳にはいかない、な」
「あなたが、それに先輩がいるからここまで来ることが出来たんです」
アミナはにんまりと微笑んだ。『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)ははたと動きを止める。
「ルブラット。アミナのこと、お願いしますわね。
あの子、危なっかしいところがあるから。貴方が守ってあげて下さいまし。
――……主よ、どうか二人を、私達に御加護を。困難に立ち向かう勇気を、皆を守り抜く力をお与え下さい」
願うように、祈るように。『願いの星』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は静かにそう言った。
ヴァレーリヤは何となく寂しさも感じていた。ああ、だって、あのアミナの顔。もう随分と成長をしてしまって。
(雛鳥のように着いて来ていた子供ではなくなってしまいましたのね――)
それでも、心配するのが『友人』なのだ。ヴァレーリヤは杖を手にした魔女の背中を見詰める。
深緑の魔女。ファルカウではない、『特異運命座標』の魔女の一人だ。
「まったく、少し目を離すとすぐに無茶をするんですもの。
……アレクシア、一つだけ約束して頂戴。どんな無茶をしても良いけれど、ちゃんと帰って来るんですのよ」
彼女は、きっと「大丈夫」だなんて朗らかに笑うのだ。
(無事に――その為に、私達は全員で先を願うんだ)
スティアは指輪を握り込む。リインカーネイション、己が持ち得た『最大』の力。
悲しみも、苦しみも、途方もない痛みとなって降りかかった。
母は死に、父は身を投げた。
父を殺そうとしたのは――「それは、私のおじいちゃんだったんだよ。スティアちゃん」
親友(あなた)の家族だったけれど。
『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は微笑んだ。
いつだって、彼女はその笑顔を曇らせることはない。
「この先何があるとしても、まずは生きてこそだよね!」
「そうだよ。これから、紡いでいく未来があるんだから」
――親友は、長命種だ。
サクラはそれだけが心配だった。自分も、それから彼女の家族だって、彼女を置いて行ってしまう。
何時の日か一人になった彼女の傍に『ルルちゃん』だけでも居てくれるならそれだけで安心だ。
「サクラちゃん。ルルちゃん、手伝って。……私は、この物語を悲劇で何て終らせない!」
「勿論だよ、スティアちゃん」
「莫迦ねえ、サマエルの事を好きだって言った女も云ってたでしょ? これってハッピーエンドなのよ。
おい、向日葵! 死なないで頂戴よ。お前とサマエルの話しが足りてないんだから!」
声を荒げたカロルに唐突に呼び掛けられてから星影 向日葵(p3p008750)がぱちりと瞬いた。
「え――と、」
「私の友達を好きになったのなら、私とおまえは友達でしょ」
揶揄うような彼女の声音に「まあ、キャロちゃんなので」と夢見 ルル家(p3p000016)が肩を竦めた。
「ルル、皆。……行こう」
『神殺し』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)は決意のようにそう言った。
アドラステイアと呼ばれたその場所は冠位傲慢が裏で糸を引いていたらしい。
それに、冠位強欲があの『小さな国』を作ったとも言える。それだけの恐ろしさを乗り越えて、滅びを打ち破らんと願う。
「ステラ」
――彼女は、打ち破れた。
そして、力をくれたんだ。
(……アレフ、力を貸して。ルルもぼくたちと一緒に進むから。……ぼくは、皆とハッピーエンドを見たいんだ!)
『騎兵隊』が双方から流し込んだパンドラ。指先を絡め合うようにリンクし合ったそれを、打ち消すが為にリュコスは願う。
「ベヒーモスと密接にリンクしているなら怨炎に干渉することで怨炎ごとベヒーモスの滅びの力を打ち消すこともできるはず。
ファルカウだって生き残って欲しい! ぼくらはそういう未来が見たいんだ!」
「そうだよ! こんな風に、沢山の人が力を合わせて、世界のために戦えてるんだもん。
すぐには無理かもしれない、皆が完璧に幸せになんていうのは難しいかもしれない。
それでも、1度はこうして心を一つに出来たんだもん……誰かに与えられたりするんじゃなくて、皆で平和な世界を作っていけるはずだよ!」
瞳が煌めいた。『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は友人達と共に此処までやってきた。
まだまだ、何だって出来ると、そう信じている。
「ボクはね、友達のやりたいことなら手伝って上げたいんだ」
「無理ばっかするんだから。やーっと追い付いた」
「パッ、パルスちゃん!!?!?!?!」
「さっきね、レイリーちゃんにも『無理ばっかめー』って怒ったんだよ。ボクも手を握って居させてよ。友達だから」
にんまりと笑うパルスに焔は小さく頷いた。
じゃあ、此れが終ったら『お祝い』をしよう。それから、何をしたいか話そう。
そうやって、未来の話しをしたならば、世界は明るく開けてくるはずだから。
――明日は、どうする?
――昨日は、何があった?
「しゃおみー……特異運命座標になってから、ドラネコ達や亜竜種の皆と一緒に過ごしたんだ。
混沌世界で、美味しい物や楽しい事を沢山過ごしたり……特異運命座標として、戦いに協力した時もあるけど。
どれもしゃおみーにとっては大切な思い出だよ」
どこか、震えるように声を絞り出して『初めてのネコ探し』曉・銘恵(p3p010376)は掌にぎゅうと力を込めた。
覇竜領域は閉じた場所だった。冠位暴食と呼ばれたその人は、ただ、愛していてくれただけだった。
それは銘恵も、『覇竜領域』に棲まう者ならば誰だって分かる事だった。
誰もが穏やかに暮らせる世界が欲しかった。その理想は尊くて、ヴァレーリヤとて望んだのだった。
シスター・ナーシャ。あなたの憧憬は、墓標となった。過分なしあわせなんて望んでいなくとも、すべて取払われてしまうから。
たった、その程度の事すら叶わない世界だった。
「いいえ。ずっと、ずっと考えて居た。
守るべきものを犠牲にすることでしか結果を得られないのであれば、そもそもその方法が間違っているのでございますわ!」
そうだ。世界が絶望に満ちていたって。
だから壊してしまえと嘆く大樹の魔女の思いに触れ理解してしまったとて。
「……世界は絶望に満ちている。本当は……分かってしまうのだ。君もそうだろう? アミナ。
だが、喪い疲れ、諦めかけても、光が見える瞬間があったのだ。それはきっと私だけではなかった。
……手を、握ってくれないか。君がそうしてくれれば、こんな私でも届けられる気がするから」
「力になれるのであれば、嬉しいです。あの寒々しい冬に、凍え止むこと無き吹雪に、遠く天に降臨した二つの太陽に。
私達は打ち勝てたのですから。私こそ……手を握ってください。何倍にだって強くなれる気がします。だって」
――此処に立っている事ができるのだから。希望を願うだけの勇気を此処に持ってくることが出来たのだから。
「ええ……よろしいですね。ファルカウ様。
憤怒の炎……千年の陰気。よくもまあ、ここまで抱えてしまったものです。
その情の深さ故とはいえ……独りで頑張り過ぎですよ、ファルカウ様」
嫋やかに微笑んで『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は『炎』が薄れていることに気付いた。
このまま、このまま消え失せれば制御を喪ったベヒーモスは地へと叩きつけられる。その前に。
「……感じませんか、ファルカウ様。彼らのような者こそ、まさに貴女と共に在れる者達です。
貴女の手さえ引いていく事が出来る……人は、貴女程長くは生きられずとも、こうした想いを受け継いでいくのです」
だから、目を覚まして。恐れる事で瞼を伏せることは容易だった。
それでも、『貴女がそうしてきた』ように、人々の希望をその姿に集めんとする者が居る。
「ッ、これが僕らの―――希望だ!」
それが、彼女の背を押した。セララとリンツァトルテの振り下ろす聖剣が光を帯びた。
その光が、彼と、彼女の背を押すのだ。
「守ろう。ファルカウさんの体を護り、全てを追わせるために――」
リインカーネイションが光を帯びた。
それは天義の決戦で一度力を発した聖遺物だ。そして、二度目。使えば罅割れてしまう。
母親が遺してくれた最後の品だった。「スティア」とカロルが呼ぶ。いい。これでいいんだ。
「どうしても、助けたい。私達が今までやってきた事やアレクシアさんの決意を無駄にしない為にも!
ファルカウさん! 誰かの犠牲の上で成り立つ幸せなんて望んでいない! 皆で笑顔を迎える為に頑張るんだ!
それが私の聖女としての在り方、そして皆を照らす為の光でいたい。そんなワガママを押し通す!」
魔女ファルカウの体は眩い光に包まれた。守護の結界が周囲へと広がっていく。
久遠の光に背を押され『生命に焦がれて』ウォリア(p3p001789)がその名を呼んだ。
「ファルカウ!」
託し、託されたものがある。繋いだ絆に、己のを名を呼ぶ者が居る。
「シャルロット、『君』とは違うけれど……今度は、友達になりたいな」
「友人になってくれるのなら、うれしいわ。どうか、素晴らしき航海(たびじ)を」
嘉神の少女に背を押され、ウォリアは、『嘗て神様だったイレギュラーズ』は進む。
「ブリギット、いつかまた出会い、平和な世界で共に笑える事を信じてるよ。
フェニックス、オレは託してくれた魂に恥じない戦士であれただろうか。
カロル、普通の女の子として、どうか君がずっと幸せでありますように」
「おまえもしあわせになるのよ」
「ああ。……黄龍、瑞。本当に、ありがとう。
二人から始まった縁が、誰かを救うという『やりたい事』を教えてくれた。ずっと大好きだ」
「漸く素直に言いおって」
黄龍の笑う声がした。
「吾も幾久しく主を思うよ、ウォリア――」
それだけで力になれるのだ。
「____最後に、リサ。愛しているよ」
ウォリアの希望が、スティアの指輪へと更なる力を与えた。ぱきり、と音を立てる。
眉を顰めたスティアがそれでも、祈る事を止めやしない。手を繋ぐサクラはただ、未来だけを見詰めていた。
「絶対に……諦めてなんて……上げないんだからぁ!!」
ファルカウは、祝福をくれる象徴だった。彼女は未来を信じていた。己の身を犠牲にしても祝福を願った。
その結末が暗澹とした滅びに飲まれて獣と共に死に耐えました? 莫迦な話しだ。
「ファルカウさんがくれた祝福を、今度は私達が返す番だ!
どれだけ間違っても、傷ついても!
だからこそ人は過ちを正して未来に進んでいけるってファルカウさんに示す!
そしてファルカウさんが幸せに、前向きに生きられるようにするんだ!」
貴女が、優しい人だったから。
――どうか、しあわせにね。
ああ、そうだよ。愛情たっぷりだったもんな。『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)は小さく笑った。
「アレクシア! クロバ! 行け! 誰も邪魔なんざさせねぇ! 『魔女の魔法』とやらで『くそったれた滅び』なんて斥けちまえよ!」
牡丹が叫んだ。いつだって、彼女の心には『母』がいた。
優しく微笑んでくれるその人は、何時だって幸せそうな顔をするのだから。
「かーさんの愛、オレの誇り。足りねえとは言わせねえぜ!
すべての希望、全ては全てだ! 込めるのはオレの旅路だけじゃねえ! 愛は盲目と包み込む愛に遺されたかーさんの旅路もだ!」
ぎゅうと抱き締める腕の強さも、朗らかに微笑む顔も。何処か遠くへだって駆けて行くその背中も。
かーさんなら何もかもを優しく抱き締める。ベヒーモスのことだって。
スティアの指輪が更に輝いた。一体に保護のまじないが広がっていく。動きを止めたベヒーモスと、掻き消えんとする炎の気配。
(……あの日は見送ることもできなかった。
共にさえいられなかった。だからやっとアンタに言える――あばよ、かーさん。愛してくれて、ありがとう)
その愛情は、聖女と神の祈りによって包み込まれた砂の海に一輪の花を咲かせた。
花の気配に、眩い光が集っていく。
「ッ――」
目を覚ましたならば、何が見えるだろうか。
絶望の荒野? 無へと化した世界?
それとも。
それとも――気取った様子で笑う貴女達かしら。
魔女は――魔女『ファルカウ』は花瞼を押し上げて、静かに笑った。
「愛おしいわたくしの友よ。そして、蒼穹の魔女よ、森を愛す死神よ。
わたくしに、力を貸してくださいますか」
※魔女ファルカウの戦場に変化が起きています――!
※最終決戦が進行中です!
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