PandoraPartyProject

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Gleipnir

 男はフギン=ムニンと名乗っていた。一端の軍師、だった者だ。
 疾うに仰ぐべき王は死に、蠍座の煌めきも遠離った――

 だが、目の前に立っていたのは、その王の最後を目の当たりにしたという騎戦の旗だった。
 彼女が引連れた騎兵隊員達は頭目の怨敵を前に苛烈な戦いを展開した。その統率を見たのは男にとって初めてではあったが王を翻弄したのだろうかと、考えずには居られなかった。

 ――あの日、蠍座の輝きを見たその日。
『ラド・バウA級闘士』サンディ・カルタ(p3p000438)は、その場には居なかった。
 フギン=ムニンが王と崇めた男の傍に居たのは御幣島 戦神 奏(p3p000216)であり、一条院・綺亜羅(p3p004797)だったからだ。
「フギン、お前とも随分長い付き合いになったな。
 ……こいよ、フギン。ここで俺を殺せないなら、今日という日はお前にとっちゃ、あの日よりマシにはならないだろうぜ!」
 大地を蹴った。『奇跡に頼るしかなかったガキ』は此処に居なかった。
 自身を信じてくれる『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)が居る。目的が別たれようとも、『光芒の調べ』リア・クォーツ(p3p004937)にも決意があった。

 ――殺すわけに、強くなったわけじゃない。
   目標だった。アイツに絶対負けない『強さ』が。

 その為に止まる理由は此処にはなかった。己を示すのが『男の子』なのだから。
「……アレを排除しなきゃね?」
 ぎろり、と戦意を滾らせて睨め付けたのは『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)だった。
「おっと、いけねぇ。此処ん来た時に戻りかけてんな! 失敬失敬! 私はみんなと違って手加減ができねーからさ」
「俺もだよ、秋奈」
 確実に、殺す事だけを考えてやって来た。『紫閃一刃』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)はそれは自身のエゴだという。
(そうだ、フギンを楔にしてしまおう、か。
 成程確かに。封印の人柱にして死ぬより酷い目に合わせると言うのはいい案だ)
 これも、これも、これもこれもこれも――全ては『奏』の分だ!

 ――私はバーサーカー。闘争の獣。闘いたいだけ、殺したいだけ。たとえそれが……。

 秋奈はただ、戦いを楽しむことにだけ意識を裂いた。彼女の後を追いように、苛烈に。
 男の足を挫いたのは『フギン=ムニンを楔』にすると決めた『元』同僚だったのは皮肉な事だろうか。
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)を護るように、『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は立っていた。
「ここまで来れば十分ですわね。ありがとうギュルヴィ、私が欲しかったものを快く渡してくれて。
 ……怒りは目を曇らせるのです。その迷惑な理想ごと、封印の楔になりなさい!」
 封印を。
 男に代償の全てを支払わせ、『フローズヴィトニル』を捕える鎖を作り上げる為に。
 遍く奇跡を求める者が居た。
 叶わぬ『夢』を追い求める者も居た。

 それでも、命をも賭せるからこそ、叶える為に全てを賭ける。
 ――奇跡を願うなら。
 フローズヴィトニルの欠片達を独立した存在にして春を迎えてやりたい。
『後光の乙女』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)は『同じ願い』を抱いていた『氷の女王を思う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)を真っ直ぐに見詰めた。
「私はね、フローズヴィトニルの意思が私の連れている欠片に少しでも移って、欠片が意思を持てるよう願うわ。
 彼の意思が少しでも残って春の世界を見に行けるよう。この子を通じて幸せな夢が見られるように」
 満身創痍となったフローズヴィトニルを見上げ、穏やかに微笑んだオデットの傍にブランシュが立っている。
「……共に助け合う。それが革命派の信条です。自由、平等、博愛。それは全ての者に与えられます。
 これが後光の乙女としての最後の務めでしょう――それが、ブランシュの見つけた『人類の幸福』だから」
 だから、共に。そう願ったブランシュにオデットはぱちりと瞬いた後、微笑んだ。
 眩い光が形を作る。
 オデットはそっと、光を抱き締めた。
 奇跡(PPP)は二人で分け合える。死を、恐れてなんか居ない。
「オディール・イヴェール・クリスタリア。
 白鳥と対なす黒鳥の名を、貴方の性質である冬の名を、そして家族として私の姓を――フローズヴィトニルの欠片、貴方にあげるわ」
 エリスが驚いたように目を見開いた。
「オデットちゃん、ブランシュちゃん!」
 呼び掛けたエリスの傍を小さな子犬たちが駆けて行く。それは『欠片』を持つイレギュラーズの元に。
 オデットは穏やかに微笑んでから、膝から崩れ落ちた。

「ね、エリスちゃん、ひとつだけお願いしてもいい?
 望んで頂戴な。一緒に春を迎えたいって――それだけで、アタシたちは何倍だって力を出せちゃうんだから」
 まるで、甘えるような声色で『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)は微笑みかけた。
「……はい」
 エリスが、望んでくれるなら何れだけだって力が出てくるのだから。
 寒さも、傷みも、何もかもが感じないのは戦いに高揚しているからか。それとも。
 もう、考えて居る暇なんてなかった。

 鎖が伸び上がっていく。『山吹の孫娘』ンクルス・クー(p3p007660)は『要石』を手に、笑みを浮かべた。
「冬(きみ)は終わりにしたいんだね。要石は制御してる。方法も分かった。
 勿論一人では無理かもしれないけど……私には手伝ってくれる仲間がこんなにも居る。
 ――私は皆を助けたい。皆は私の為に、私は皆の為に冬を終わりにするっ!!!」
 頷いたのは『涙と罪を分かつ』夢見 ルル家(p3p000016)。共に要石を維持するルル家は「ヴァン君」とフローズヴィトニルへと呼び掛ける。
「もう少しだけおりこうにしていて下さいねヴァンくん!」
 目の前のフローズヴィトニルは最早動かない。後は――
「最後の大仕事ですよ!」
 けれど、とンクルスの唇が震える。どうしようもなく、『フギンを代償にする』事にさえ忌避感を感じてしまうのだ。
「あのさあ。念のために聞くけど。まさか……万策尽きた、なんて言わないよね?」
『友人ハイン/死神』フロイント ハイン(p3p010570)の問い掛けにぱちくりと瞬いたのはンクルスだった。
 フギン=ムニンの犠牲さえも躊躇する彼女は、優しすぎる。
「命というものはね、他の命を犠牲にしないと成り立たないんだ。
 君は食事の必要がないから、その実感が湧かない。僕も秘宝種だから良くわかる。
 でもね、犠牲のない世界は、人が人である限り存在し得ない。だから、人は食事の際に感謝するんだ。いただきますって」
 ブリギットも、言って居たではないか。
 
 ――人間は己を最も高尚な種だと認識している。故に、言語を持ち得ぬ家畜を喰らうた。当たり前の摂理の如く。

 その通り、とは言わない。だが、栄養を得るために、家畜を喰らわねばならないのだ。それが人が人である限り必要とされた犠牲だ。
「実は私あんまり食事をしないんだ。必要じゃないからね。
 でも今考えると無意識に犠牲を避けてたのかな……人が人である限り犠牲は出る。……覚悟してたつもりだったんだけどね。」
 肩を竦めたンクルスは首を振った。
「……だけど改めて覚悟を決めるよ。私は私の世界の為にフギンさんを消費する。だからせめての祈りと感謝をフギンさんに……」

 ――頂きます。

 辞めろ、と男は叫んだ。情けもない、死を目の当たりにした男の最後。
 呆気のないものだと眺める『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)の傍でブリギットが「少し足りません」と呟いた。
「ブリギットさん」
「スティア、わたくしは貴方達が傷付くのは嫌なのです」
「けれど――」
 スティアは小さく首を振る。ブリギットを助けたい。それは彼女の願いだった。後で戦いたくはない。
 だが、彼女が魔種である以上、何が最善になるかは分からない。要石を用いてもブリギットは魔種のまま。
「教えて欲しいことややりたいことだってある。誰かを護る為の魔法を教わったり、一緒に料理だってしてみたい。
 それにウォンブラングに戻って村の再建もできるかもしれない。あそこにはブリギットさんが絶対に必要だと思う。
 だから敵対する運命に打ち勝って欲しい。なんだってするから……」
 縋るような声音を漏したスティアに『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は頷いた。
 己だって、考えて居る事がある。その為に――
「フギン!」
 男の名を呼んだジルーシャは腕を伸ばす。
 ジルーシャはこの男と心中なんてするつもりはなかった。

 ――畜生!

 何度も繰返し叫ばれた言葉を包み込むように、ジルーシャは封印の中へと男を押し込んで行く。
 ジルーシャの力の源たる右眼。だが、フギン=ムニンの代償が足りぬのは男の目が『欠けている』からではないか。
「アンタにアタシの目を、あげるわ。
 アタシの力の源、約束の証。敵でも、魔種でも、アンタ一人にすべてを押しつけることへのお詫び……アタシの自己満足にすぎないけれど」
 精霊の力を借りて抉り出された右眼が男を雁字搦めにした鎖に包み込まれていく。
(構わない、何があろうとも――今は!)
 ジルーシャの決意を見届けながらもブリギットは縋るスティアを眺めて居た。
「スティア君、ブリギットさん……。
 ブリギットさんに、お願いがあるんだ。フローズヴィトニルと一緒に眠って欲しい」
「アレクシアさん!?」
 ンクルスが声を荒げたがアレクシアは首を振った。
「……私、ずっと考えてたんだ。ブリギットさんと和解できたとしても、魔種であればずっと一緒にはいられない。
 それじゃあ『ミロワール』の……シャルロット君のときと一緒だ。私はそんな束の間の未来は嫌だ。きちんと未来を紡ぎたい!」
 だからこそ、考え続けたことがある。
 深緑での『一件』が、アレクシアの『考え』を確信めいたものにして居た。
「だから、一緒に眠ってもらえば……或いはその可能性を遺せるんじゃないかと思ったの
 いつかまた、封印を解いて、ブリギットさんを迎えに来ることができるんじゃないかって
 ……ただ、そのまま眠れば溶け合ってしまう。いなくなってしまう……」
「ええ」
 ブリギットもそれは認識している。エリスとて同じだ。しかし――アレクシアは諦めることはない。
「でも、この遺失魔法は『鎖を作る』のでしょう?
 それを応用して、封印と同時にブリギットさんの形を……魂を繋ぎ止めておけないかって。
 遺失魔法は何が起きるかわからない……でも、何かを起こせる可能性もあるってことでしょ?」
 その言葉に『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)は静かに頷いた。
 ――が、許してくれた選択肢があった。
Bちゃん様を救えなかったことを悔いてるのもありますが、心優しき人を犠牲にしたくはないのです。
 それにもし彼女がここにいたならきっと文句を言いながらも手を差し伸べてくれたに違いありません。ですから――」
 奇跡を乞う。大切な短剣だ。
 悪しき狼よ、その傍に佇むウォンブラングの魔女よ。
「私は」
 パンドラパーティープロジェクト。それは、自らの命を代償にした奇跡。
「リュティス!」
 ブリギットの声が響く。女の手を握りしめたのはアレクシアだった。
 自らだって願った。有りっ丈の『可能性』の奇跡を此処に繋いで欲しかった。
 あの海で、微笑んだあの娘も、『兄さん』も。未来へと祝福をくれていたから。
 けれど。
「だめ」
 ブリギットは、その時初めて理解し居た。
 オデットが、ブランシュが、冬の狼たちに願った『奇跡』とて、その一つだった。
 自らの命を削り、誰かを救う。それは尊い願いであり、一握りしか起ることのない希望だった。
 眩い光がブリギットに『僅か限り』の時間を与えた。それは魔種でありながら猶予を齎したのだろうか。
 鎖が結ばれて征く。ブリギットは己の杖にその鎖を巻き付けてから深く息を吐いた。
「ウォンブラングの地に、コレを結びましょう。春を齎す白花を迎えに行くために」
 己のこれからも、その時に決めようとブリギットはぎこちなく呟く。ンクルスは「おかえりなさい」とブリギットに抱き着いた。
 その手をぎゅっと握り震える声音でルル家は良かった、と絞り出した。
「……ブリギットちゃん、こんなのはどうですか?
 かつて貴方に良くあれと願ったものがいたからエリス殿が生まれた、ならば拙者はこの地に伝え続けましょう」

 ――かつて悪しき狼は心優しき魔女、狼の良き心たる精霊、そして英雄達によって封じられた。
 しかし彼らは狼を殺すことを良しとせず未来に繋いだ。いつか狼は彼を想うものたちによって良き狼となって再誕する。
 冬がやがて春になり、雪が解け、水となって川を作り大地を潤す希望となるように。だからそれまで……。

「おやすみなさい、ヴァンくん」

 リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)さんが起こした奇跡の代償としてパンドラが消費されています。
 ※フローズヴィトニルの欠片がブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)さん、オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)さんの『奇跡』により個々の精霊として活動可能になりました(後程アイテムが配布されます)

 『フローズヴィトニル』の封印が完了しました! ――残る戦場は……。

 All You Need Is Power(鉄帝国のテーマ) 作曲:町田カンスケ


 ※<鉄と血と>の決戦シナリオで戦勝報告が挙がっています!
 帝政派の切り札、『決起の時は今』が発動しました! アーカーシュのラジオ放送を利用し、全国民への決起を促しています!
 グロース師団に勝利しました!
 あらゆる戦場で、市民たちが立ち上がり、決戦に挑まんとしています!


 ※ラサでは『月の王国』への作戦行動が遂行されています!

鉄帝動乱編派閥ギルド

これまでの鉄帝編ラサ(紅血晶)編シビュラの託宣(天義編)

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