PandoraPartyProject

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最大火力

「――轟け、春雷!」
 マリエッタ・エーレイン(p3p010534)ユーフォニー(p3p010323)が唱和した。
 セレンディの盾、この島を覆う雷雲の防壁がその力の全てを振り絞っている。
 アーカーシュ地上部へと降り注ぐ魔物共が、次々と雷撃に撃ち貫かれた。
「これでしばらくは保ちそうね、二人を守り抜ぬくわよ」
「今のうちに島内の魔物をどれだけ片付けられるか、頼む――焔王」
「燃えよ焔心! レーザーッブレーードッ!」
 セレナ・夜月(p3p010688)が術式を紡ぎ、ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)ムサシ・セルブライト(p3p010126)が炎と光線の剣を振るい抜く。

「アーカーシュを、もっとリッテラムへ近づけるんだ」
 指揮机に両肘をつき、口元で手を組むマルク・シリング(p3p001309)がスクリーンを睨んだ。
 独立島アーカーシュは、帝都の本丸たるリッテラムへの接近作戦を試みている。
 だがアーカーシュは完全に疲弊していた。
 独立混成連隊『ルーチェ・スピカ』の損耗率は大きく、自慢の技術力は莫大な消費を強いられている。
 切り札であるイレギュラーズとて満身創痍であり、戦う力など最早残されてはいない。
 だがアーカーシュにただ一つ残されたもの。
 それは最後の切り札『ラトラナジュの火』だった。
 彼等の仕事、存在意義はこれを冠位憤怒バルナバス・スティージレッドへ撃ち込むことだ。
 そのためには島を王城リッテラムへ更に近づけねばならない。
 当然ながら高度低下による制空権の喪失は、島が多量の襲撃を受けることに直結する。
 彼等はそれを承知の上で、この作戦を敢行しているのだ。

「セレンディの盾、出力低下!」
「だったら次の手だ。アイアン・ドクトリン『イルドゼギア・エアフォース』の出撃を緊急承認する!」
「――了解ッ!」
 巨大な卵のようなセラミックス塊が無数に射出され、震え、切れ目から頭と手足を生やす。古代ゴーレム兵だ。そして蛇腹のような腕から皮膜めいた翼を戦慄かせ、一斉に舞い上がった。
 ゴーレム頭部の発射口から光がこぼれ、大気を灼く熱線が迸る。
 斬り、貫き、焼き払い――アーカーシュを覆う無数の天衝種が地上へ落ちていった。
 だがそれ以上に敵の数は多い。
「どんだけ居やがるんだよ」
 バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が駆る軍用装甲蒸気スノーモービル『ヴァイスフリューゲル』が二十二口径砲黒槍(シュワルツ・ランツィーラー)を放った。
「予想はしていたけれど、これは……」
「相当ですね」
 光線の一撃で天衝種を撃ち払ったノア=サス=ネクリム(p3p009625)が、水天宮 妙見子(p3p010644)と背を合わせた。
「艦姫島風 不敗 問題皆無 v」
「シュカさん、そちらはお願い出来ますか?」
「もちろんよ、すずな、ヨハン。ルーチェ・スピカ、突撃よ!」
「……はーぁ、どこまでもお供しますよ」  軍用浮遊式蒸気バイク『ラウフェンブリッツ』を加速させた島風型駆逐艦 一番艦 島風(p3p010746)が敵陣を翻弄し、すずな(p3p005307)リーヌシュカ(p3n000124)は果敢に斬り込んだ。癒やしの術式を紡ぎながら、その背をヨハン=レーム(p3p001117)が追いかける。

 ――島東部の遺跡が地上へ崩落しました!

「構わなくていい」

 ――黒い太陽が膨張、天衝種の出現を多数確認! 数が把握出来ません!

「迎撃を続けるんだ」

 ――島内の防衛が機能していません!

「いや、それでもやるんだ。僕等は可能性の獣、イレギュラーズだ。不可能はない!」

 司令室には絶望的な情報ばかりが飛び交っている。
 非情な決断が幾度も下されていた。
「野郎共! 前線を保たせんぞ! 弾薬ありったけもってこいや!」
 キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)が部下達へはっぱをかける。
 その時だった。
 けたたましい音と共に、基地の防壁が破られたのは。
「邪魔だなんて、させてあげないわ」
「ええ、無論です。ここまで来たのですから」
 アーリア・スピリッツ(p3p004400)が天衝種に混沌の波動を叩き込み、小金井・正純(p3p008000)が特注のボウガンを放つ。
「ありがとう、カルマート。力を貸してくれるのね」
 オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が顕現させた光球が怪物共を焼き払う。
「まあ敵は敵じゃ、全滅させればよかろう!」
「本当に仕方がないわね」
「ボク達も行くよー! がおっ!」
 ニャンタル・ポルタ(p3p010190)に続き、ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)の雷撃が敵を打ち、ソア(p3p007025)も爪を振るっていた。
(……俺は、俺の存在意義を果たし続ける)
「全力で戦うよ! 飲み込め、泥よ!」  サイズ(p3p000319)が天衝種を一文字に斬り捨て、ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)が紡ぐ術式が敵陣を一気に飲み込んだ。
「あらかた片付いたっスかね」
「打って出ましょう、そちらはお任せします、ほむらさん」
「はい、美咲さん。後ろは頼みます」
「司令部にはこれ以上近づけさせないっスよ」
 ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)普久原・ほむら(p3n000159)佐藤 美咲(p3p009818)達がバイクで前線へ飛び出していく。
「ライブはやめんぞ、詩人の名が廃るってもんだ」
 ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)がリフを刻み続ける。
 けれど果敢に奮戦するイレギュラーズの手は、まるで足りていない。

「戦力分析をお願いします。どの程度保ちそうですか?」
「いや、いい。迎撃のみに集中するんだ」
 リュドミーラを制止したマルクの表情に、参謀達が息を呑んだ。
「僕等の撤退はあり得ない」
「……そうですね、私達は立ち止まる訳にはいかないんです」
 歯車卿が言葉を続けた。
 膨張しつつある黒い太陽は大量の魔物を産み出し、アーカーシュを蹂躙していた。
 制圧されるのは時間の問題であり、何もかもが間に合っていない。
 それでもやり抜かねばならない。これはそういう戦いだ。
「さあ、これはどうしようか」
 ジェック・アーロン(p3p004755)はセレンディの力を借り、徐々に近付くリッテラムを睨んでいた。
 この場に居ない者であっても、雲を操るセレンディの投影能力によって、僅かな時間擬似滞在出来る。
 大精霊の『無茶』ではあるが、四の五の言ってはいられない状況だ。
 なにはともあれ――
 ラトラナジュの火『砲身ラン・カドゥール』の照準を合わせ、バルナバスを狙撃せねばならないのだが。
「……!?」
「何がどうなっているんだ!?」
「――まさか、吶喊したのか!?」
 先程まで奮戦を続けていた空中航空戦艦とも呼ぶべき鉄帝国秘蔵の超兵器グラーフ・アイゼンブルートの姿がまるで確認出来ないではないか。
「土煙が立ちこめています。これでは目標が目視できません」
「待って下さい、それでは作戦の前提が成り立ちません!」
 グリーフ・ロス(p3p008615)の言葉に夢見 ルル家(p3p000016)が息を飲んだ。
「……」
「おいおい、嘘だろ。冗談じゃねえ」
「俺達は技術的課題をすべてクリアしてきたが、これでは」
「だがどうすりゃあいいんだ」
 天目 錬(p3p008364)とルカ・ガンビーノ(p3p007268)が拳を握りしめる。
 ラトラナジュの火を撃ち込むには多くの条件があった。

 一つ。二発の弾丸『紅冠の矢』が必要である。これはクリアしている。
 二つ。広域を破壊する『火』の技術的収束が必要である。これはクリアしている。
 三つ。対象への超距離精密射撃が必要である。これはクリアしている。
 四つ。射撃時に砲身がぶれる反動への対策が必要である。これもクリアしている。
 五つ。狙撃可能ポイントまで島を十分に近づける必要がある。これはクリア目前だ。

 だから問題がないはずだった。
 なのに現実はそうではなかったのだ。
 王城リッテラムは取り巻く戦禍――炎や土煙に覆われており、バルナバスを目視出来ていない。
 視認出来ないのでは、どだいそもそも『当てようがない』ということだ。
 ここに来て、作戦の前提自体が瓦解してしまった訳だが――

「いや、なんら問題ない」
「……?」
「私には分かるぜ、この空には風が吹いているからな」
「…………」
 天之空・ミーナ(p3p005003)の胡乱とも思える言葉に、一同が視線を集中させた。
「……そうか!」
 マルクが勢いよく立ち上がった。
 ミーナの授かり物(ギフト)――『風読みの娘』は、見知った者の位置を直感的に知らせる。
「バルナバスの野郎の位置は、なんとなく分かるんだ。だから撃たせてもらう」
「射線上を土煙諸共焼き払えば、目視可能になるね」
 ジェックが続けた。
「ああ、邪魔なゴミ諸共にバルナバスの野郎を吹き飛ばしてやる」
 ミーナが天賦の『直感』で一射目を放つ。
 ジェックが磨き上げた『技術』で二射目を放つ。
 方針は決まった。
「ラトラナジュ、どうですか?」
「……」
 グリーフは違和感のようなものを抱いていた。
 それはラトラナジュ自身の態度に対してだ。
「あなたはわたしを守るっていいましたぁ。だから、えっとぉ」
 この大精霊のふわふわとした性格はなかなかつかみ所がないが、この数時間は特にひどい。
「わたしはぁ、うぅーん……」
 長い時間を寄り添ったグリーフは、人が焦燥と呼ぶ胸の苦しみを感じていた。
「貴女を知りたい、貴女を守りたい、だからどうか教えてほしいのです」

 ――今、何を考えているのかを。

「……」
 なのにラトラナジュは何も答えようとしなかった。
「なぜ答えてはくれないのですか、ラトラナジュ」
「…………」
 ラン・カドゥールに座ったまま所在なげに足を揺らすラトラナジュは視線すら合わせようとしてくれないではないか。こんなことは、いままで一度もありはしなかったというのに。
 時間は非情にも流れてゆく。
「みんな、そろそろ配置についてほしい」
 マルクが告げた。
「女神様、反動の制御は頼む」
 ルカがその身に宿す加護――『月と狩りと獣の女神』大精霊ユーディアの力を顕現させた。
 ラン・カドゥールが月光のような淡い光に包まれる。
「それじゃあ行くぜ」
 ミーナが砲手席へ身体を預け、照準を土煙の渦――リッテラムの一角を睨む。
 本来、一射目も二射目もジェックが撃てば良いとさえ思っていた。
 だって適任ではないか。狙撃の腕前でジェックを越える者なんて居やしないのだから。
 けれどようやく分かった気がする。
 なぜ自身がこの弾丸を持つに到ったのかを。
 なぜ自身がこのトリガーに指をかけるに到ったのかを。
 正に『運命』と呼ぶ他にない。

 ――目標、射程圏内です!

「ラトラナジュの火――用意!」

 ――紅冠の矢、装填確認!

 ――エネルギー、充填開始!

 ラトラナジュが瞳を閉じ、ラン・カドゥールの砲身が熱に揺らめく。
 砲身にプラズマが走り、砲口は目を灼くほどの光に覆われていく。
「射出準備、完了まであと5秒! 3、2、1――」
「……撃て――ッ!」
 マルクの号令と共に、ミーナが引き金を引いた。

 ――天に光は二つもいらぬ。
   くたばれ、『冠位憤怒』バルナバス・スティージレッド!

 最大火力が放たれる。
 閃光が迸り、光条が大気を焼き貫いた。
 莫大な熱量がリッテラムへ突き刺さる。
 砲手席からミーナの実体幻影が消え、ジェックの幻影が顕現した。
 バルナバスは――

 All You Need Is Power(鉄帝国のテーマ) 作曲:町田カンスケ


 ※独立島アーカーシュが切り札『ラトラナジュの火』を行使しました!
 ※独立島アーカーシュがアイアンドクトリン『イルドゼギア・エアフォース』を再使用しました!

 ※<鉄と血と>の決戦シナリオで戦勝報告が挙がっています!
 『フローズヴィトニル』の封印を開始するようです。


 王城リッテラムの戦況が変化しました!
 最後の切り札『人民軍』が発動しました。グロース将軍との戦いは最終フェーズへと突入します!
 独立島アーカーシュより、勝利の報が届いています!


 イレギュラーズの手に入れている切り札が大いなる力を纏っています!
 スチールグラード帝都決戦が始まりました!!
 ※領地RAIDイベント『アグニの息吹』が始まりました!!
 ※帝政派、ザーバ派は連合軍を結成している為、勢力アイテムが『帝国軍徽章』へと変更されました!


 ※ラサでは『月の王国』への作戦行動が遂行されています!

鉄帝動乱編派閥ギルド

これまでの鉄帝編ラサ(紅血晶)編シビュラの託宣(天義編)

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