シナリオ詳細
<夏祭り2022>豪華客船クイーンエリザベス号
オープニング
●豪華客船クイーンエリザベス号
あなたはソファに腰掛ける。
肌触りのよい布で覆われ、ゆったりと身体のしずむ一人がけのソファだ。
目の前には大窓。カーテンが開かれ、ベランダの手すりごしに広い広い空が……そして無限に続くセレニティ・ブルーの海が見えた。
部屋にはやさしいアルダハ香がかおり、遠きラサの芸術家が描いたという古代遺跡の風景画が、ラサスタイルを取り入れたモダンなスイートルームが、あなたを包んでいる。
カーテンを挟んだひとつ隣の部屋にはキングサイズのベッドが整えられ、部屋には太陽の光が差し込んでいた。
汽笛の音が、きこえる。
ここは豪華客船クイーンエリザベス号、ロイヤルスイートルーム。
あなたのための、部屋だ。
●出港ならず――されどパーティーは開かれる
「開拓二周年記念! クイーンエリザベス号クルーズツアー、出港――は、まだできないのだ!」
がくーんと膝から崩れ落ちた幼女がいた。
代表執政官キャピテーヌ・P・ピラータ。三番街の繁華街や映画館にその名がつく程度にはこの島に影響力をもつ幼女である。幼女ながらに大学を飛び級した才女であり、父はかつてのリヴァイアサン戦にて戦った英雄のひとりであるとも。
ゆえに。キャピテーヌは諦めなかった。
「ダカヌ海域の深海魔がうようよしてるせいでクルーズツアーはできないのだ。
だが! 船はあるのだ! フェデリア島を一周するくらいなら、充分にお披露目できるのだ!」
拳を握り、天に突き上げるキャピテーヌ。
「そして、憧れのローレットを沢山船に招くのだ!」
大きな屋上プールデッキと、それを囲むように置かれたビーチチェア。
かたわらにはバーカウンターが設置され、優雅で開放的な時間が流れている。
船には複数のレストランが入り、ラサのエスニックな料理や、海洋のピザダイナー。豊穣懐石、鉄帝式ミートバル、アジアン・フュージョンスタイルのレストランに、カジュアルビュッフェ。この船の上だけで様々な国の料理を、そして様々な雰囲気のなかで楽しむことができるだろう。
更にはショーラウンジやシガーバー、様々な絵画や彫刻を展示したアーツカフェや、しっとりとした雰囲気のカクテルドリンクを楽しめるサイレントバー。
カジノやジム、スパやライブラリーといったパブリックスペースに富んだこの空間は、きっと貴方を飽きさせないはずだ。
サマーフェスティバルにむけ、フェデリア島沿岸にあがる花火を眺めながら、スイートルーで足を伸ばす。そんな時間が待っている。
さあ、一足先に豪華客船に乗り込もう。この海を作ったあなたは、間違いなくVIPなのだから。
- <夏祭り2022>豪華客船クイーンエリザベス号完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2022年07月31日 22時06分
- 参加人数79/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 79 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(79人)
リプレイ
●海の上に都会をもっていこうか
世界が四角く切り取られていた。
どこまでも続く水平線の中に、特徴的にそびえ立つカヌレ・ベイ・サンズ。
続く波の音はいつしか心へと染みこんで、音のない世界にいるような気持ちになってきた。
『亜竜祓い』アンリ・マレー(p3p010423)はゆったりとソファに背を預け、傍らに寝そべるワイバーンのドラちゃんに目をやった。
眠れるくらいふかふかの絨毯を、今はドラちゃんが独り占めだ。はじめはワイバーンと一緒に入室はできないかと思っていたが、そこは豪華客船。ベランダを改造してワイバーン用の出入り口を作ってしまった。
「今日は一緒に寝ようね、ドラちゃん」
どんな場所でも、一人きりにはなりたいものだ。
『戦支柱』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は静かなスイートルームのベッドに寝そべり、ルームサービスの紅茶とサンドイッチに目をやった。
「一昨年は船の上で捕まっていたのが懐かしいね。あぁ、全く。一人で思い出に耽るなんて、私も歳を取ったのかね。まだまだ若いつもりだったんだけど」
その隣の部屋では『特異運命座標』四(p3p010736)が眠りにつくところだった。
「静かだな…ベッドも大きいしふかふかだ。
普段使っているベッドも大きいがここのも中々…部屋も広いし一人だと少し寂しいがまあ、ゆっくり過ごせると思えば良いか」
そのまた隣の部屋では、グリム・J・リーパー(p3p010755)が誰かに語りかけている。
「ハハッ、新婚時代を思い出しちまうな。
…君のその真っ赤な瞳も燃えるような赤髪も…触れられないのが本当に残念だ。
…絶対に生き返らせるからな、マリア…だから…それまで離れないでくれ…お願いだから」
流石に国の威信をかけた豪華客船というだけあって部屋数は多く、家族向けの部屋も当然ある。
「やはり皆さん水着似合ってますよね。……コンテスト中は必死に我慢してましたが不特定多数の目には触れさせたくないくらいには」
『血吸い蜥蜴』クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)が椅子に腰掛け、くるくると回ってみせる『傍らへ共に』アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159)たちを見た。
「ミーナ緊張してるの~? いつも通りでいいと思うよ~。
むしろ、私が付いて行っても本当に大丈夫~?
ほら、食費とか~」
言われて苦笑する『天駆ける神算鬼謀』天之空・ミーナ(p3p005003)。
「や、うん。感極まると言葉なくすな、ほんと」
「緊張してるでしょ、ミーナ。力抜いて」
彼女の後ろから肩に手を置いて、『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)が肩越しに覗き込む。
彼女たちは皆、美しいウェディング水着に身を包んでいた。
その様子は涼しげな結婚式にも見えたし、あるいは――。
「…覚悟してね? 私は、一生が終わったとしても、皆を離さないから」
「私だっていつまでも皆さんと離れるつもりはありませんよ!」
「ふふふ~、私もみんなが大好きだよ~」
「命尽きても、私も皆が大好きよ!」
特別で特別な、家族のように。
家族というなら、『楔断ちし者』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)と『闇之雲』武器商人(p3p001107)もそうかもしれない。
「海洋の海は美しいねぇ。この窓が一枚の絵画か写真みたい」
「凄い……綺麗だねぇ……」
二人がけのソファに並び、互いに寄り添う。自然と膝の上にあった手が重なっていた。
ヨタカが立ち上がり、窓を出てベランダの縁から外を眺める。
そんなヨタカを、武器商人は後ろから抱きしめた。
「わわ……紫月…?」
「んー? 幸せでつい。ほら、今この瞬間は2人きりだから……ね?」
「それにしても海洋・豊穣・鉄帝・傭兵、よくもまぁ各国の名酒を取りそろえた物です、さすが豪華客船」
「この船に置いたこと自体がブランドを高めるといった所だろう」
『夜妖<ヨル>を狩る者』金枝 繁茂(p3p008917)と無名偲・無意式(p3n000170)はあえて開放的な水着をきたまま、スイートルームのバルコニーで酒を飲み交わしていた。
「せんせい、残念ながら安っぽい欺瞞の味は期待できなさそうですね?」
「かもしれんな。非常に残念だ」
などと言いながらも、無名偲の表情は安らかに綻んでいる。
「羽を伸ばすという言葉をこれほど体現する機会はそうありませんね」
「ああ、全く……」
●青の上、青の下
プール脇にあるデッキをてくてくと歩く『自在の名手』リリー・シャルラハ(p3p000955)。
「あなたは、リリーさんなのだ?」
声に足を止め振り返ると、地面に手をついて屈むキャピテーヌがいた。
「あれっ、キャピテーヌさん?」
「本物なのだ! どうしたのだ? きょろきょろして」
「リリー、迷子になっちゃって」
「なら船長のキャピテーヌに任せるのだ!」
照れ照れして言うリリーに、キャピテーヌはどうぞと言って手を出した。自分の帽子の上にリリーをのっけると歩き出す。
「ありがと」
「ううん。パパと一緒に戦った英雄をのっけられるなんて光栄なのだ」
「そちらの方も一緒に? 良いですよ。お話を続けましょう」
キャピテーヌを待っていたのだろう。『善行の囚人』イロン=マ=イデン(p3p008964)が一緒に歩き出す。
どうやらこの海でおきたかつての戦いの歴史を話していたようだ。どこまで話したかなと記憶をさぐるようにして、キャピテーヌは続きを語り出す。
「パパはこの海の向こうにたどり着くのが夢だったのだ。
私にいろんなことを話してくれて、いつも楽しそうだったのだ。
リヴァイアサンの戦いで殉職してしまったけど、その働きが豊穣郷に繋がって、今があるのだ。わたしはパパを誇りに思うのだ」
「それは素敵な話ですね……では、私からも」
「アウラちゃん、こっちこっち!」
今日のために引っ張り出してきた白いうさぎさん仕様の水着をきて、『魔法騎士』セララ(p3p000273)がプールへと入っていく。浅いプールでぱしゃぱしゃと水を蹴り、燦々と照る太陽をまぶしがるように額に手をかざした。
アウラスカルト(p3n000256)もプールに片足をちょんとつけると、『おお』と呟きながらゆっくりと脚を沈めていく。青い、どこか幼さの残る水着。頭に飾った青い花が海風にゆれた。
「えへへ。やっと一緒に遊べたね」
「人はこの人造の水たまりをもって、身体の清潔を保つでもなく海での遊戯の模倣となすか。海が間近にあるにも関わらず、興味深い」
笑いかけるセララに、アウラスカルトもどこか柔らかい表情を返したのだった。
『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が一通り船内の探索を終えたらしく、デッキへと出てくる。こっそり内部まで探索してやろうと思っていた矢先、警備員が見つけて『ご覧になりますか?』とかいって全部案内してくれたのだ。
どうやら鉄帝で多く採用されている造船技術が主に使われ、航海士などは海洋が主という構成らしい。珍しさはないが、信頼感は抜群にあるという案外保守的な作りであった。
「ぺんぎんさんこんにちは!」
『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)が身をかがめて呼びかけると、ペンギン――もとい『絶海』ジョージ・キングマン(p3p007332)が振り返った。
「おう。こんにちは、だ。もふもふか? いいぞ!」
「やったー!」
メイがジョージをもふりはじめると、スクール水着をきたキャピテーヌがじーっとその様子を見ているのがわかった。
手招きするメイ。
「あなたも一緒にもふーってしよ?」
「いいのだ!?」
「いいぞ」
「やったー!」
二人でジョージをもふりはじめるメイとキャピテーヌ。
そんな光景を横目に、『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は『諦めない』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)と一緒にプールサイドを歩いていた。
「かわいいでしょ、見て見て!」
くるっと回るココロ。華蓮に選んで貰ったという水着は胸に貝をあしらった実に可愛らしいものだった。と同時に首元のハートがどこか色香を感じさせる。
(可愛い色合いの素敵な水着……私の好みも知ってくれてる。
ココロさんが選んでくれた水着に身を包んでるって思うと、心がぽかぽかしてドキドキするの)
一方の華蓮もまたココロに選んで貰った水着らしく、清楚さと明るさが同居した夏色のコーディネートに仕上がっていた。華蓮の雰囲気を一段階明るくする。
「華蓮ちゃーーーん! もっと泳ごう! いくよ~!」
「ココロさんココロさんー♪ えへへ、とっても楽しいだわね。好き好きなのだわよー!」
二人はプールへと入っていく。
『不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)はそんな風景を微笑ましく眺めながら、猫型ビーチボールを係員に預けると飛び込み台の上に立った。
「楽しいプールだやったー!」
わーいとばかりに飛び込み台からジャンプ。
激しい水柱をあえて上げると、水面から顔を出して笑った。
(…そういえば、僕等をここに招いてくれたのキャピテーヌさんなのかな?)
プールサイドでペンギンもふってるキャピテーヌを見つけ、手を振るヨゾラ。キャピテーヌは笑顔で手を振りかえしてくれた。
「すげー、映画で見たのと同じだ!」
『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)はデッキに出てきてぷるぷると振るえると、急にキリッとした顔をしてそばのバーカウンターに『アンファジー・ネーブルを』とかワントーン低い声で言ってからビーチチェアに腰掛け麦わら帽子とサングラスをキメた。
思いつく限りのセレブ感……なのだが。
「……飽きた。泳ぐか」
そして始まる遠泳。
『都市伝説“プリズム男”』アイザック(p3p009200)はプールサイドで準備運動を終えると、ラッシュガードの腰元をくいっとあげた。
「水着って初めて着たよ、ラッシュガードって便利だね。そういえば水場で遊んだことがないな……」
ウォータースライダーの台に乗ると、滑り台をまっすぐな姿勢で滑り落ちてみる。
「こういうのも、良い子へのご褒美になったりするかな?」
ばしゃーんとプールに勢いよく滑り込んでから、アイザックはプリズムキューブの頭だけを水面から覗かせる。
ぱっとみわからんが、VIP(自分達)への挨拶をして回るキャピテーヌを振り返っていた。
「あのキャピテーヌ君は良い子だなぁ……ソレを邪魔する深海魔は、悪い子だね」
●カジノチップに感謝を込めて?
豪華客船クイーンエリザベス号にはカジノがある。
それも、狭い部屋にスロットマシンが数台ならぶなんていうものではない。ポーカー台やルーレット台をはじめ一通りのスペースが揃い、一画にはバーカウンターまで用意された立派なカジノだ。
「まあ来ない理由ないよな。賭けに酒、おまけにかわいい兎まで揃ってんだからなあ?」
『のんべんだらり』嘉六(p3p010174)が変換したカジノチップを手の中でもてあそび、にやりと笑った。
「ひゃひゃひゃ!!! 嘉六ぅ! 聖霊ぃ! 賭場じゃ賭場じゃ!!
稼ぎぃ行くぞぉ!! 勝って今晩はねーちゃん居る酒場で祝杯じゃあ!!
聞いた話にゃねーちゃんたちは『ばにー』の格好で接客しちょ――」
バァンと扉をあけた『天を見上げる無頼』唯月 清舟(p3p010224)が、セクシーなバニーさんと目が合った途端スゥーって意識を失った。
仰向けにぶっ倒れる彼を後ろから支える『医神の傲慢』松元 聖霊(p3p008208)。
「俺がついてきて正解だったな……」
「いつになったらその悪癖治るんだ? まあいいや、早速――」
嘉六はルーレット台の前に座ると突然の感覚に目を見開いた。
黒の六番が、まるで手招きするように煌めいて見えたのだ。
「いける……全賭けだ!」
「止めとけって絶対録なことに――」
回り続けるルーレット。はねるボール。
そしてボールが溝に止まったその瞬間、カジノに悲鳴がこだました。
目覚めた清舟が心配そうに寄ってきたバニーにまた気絶した。
「浴衣? っての着てお祭りに着たんだけど…っふふーん、いいじゃん気に入ったよ、暑いけど悪くないね夏!
それにしてもキミって賭け事とか好きだったの? いがーい!」
「無謀にカジノに散っていったイレギュラーズの負けざまは無駄にしないさ」
『秋雫の妖精』メープル・ツリー(p3n000199)と『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)はブラックジャック台に座っていた。
「いいかい、いい必勝法を思い付いたんだ。
倍になるブラックジャックとかでまずは1枚だけチップを賭ける、負けたら2枚かける、そんで負けたら4枚かける! かったら1枚に戻す!
こうしていけば必ず1枚は勝ち続ける! ブラックジャックで2.5倍になれたら負けてても一発大逆転さ! すごいだろ! …なんだいその顔は!」
「いや……」
楽しいならいいか、とサイズは配られたカードを眺めた。
その一方で、『俗物シスター』シスター・テレジア(p3n000102)は大量のチップをつめた箱を重箱みたいに抱え、ルーレット台の前に立つ。
「カジノの遊び方に関しては、わたくしにお任せくださいまし! まず、賭け事というのは無くしても困らないお金でやるものですのよ!」
くそほど借りた(というか持ち出した)金からできあがったこのチップ。
テレジアはとんでもないドヤ顔をしながら赤に全額をベットした。
「ルーレットには必勝法があるんですのよ。回転数と玉の位置を計算すれば落ちる場所を特定することたできますの。ご覧なさい、ほうら、元手の600万Gが――」
「あっ……」
『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は見た。
バニーガールの格好をして顔のパーツをめっちゃ中心に寄せたテレジアを。
「いらっしゃいませですわ」
「なんでバニーのバイトを……」
「いいニュースと悪いニュースがありますわ」
テレジアは一枚の借用書を取り出した。
「悪いニュースは、フラーゴラ様からお借りしたGOLDは全額スッたこと」
「全額スッたの!?」
「良いニュースは……今からあなたがバニーになれることですわ!」
「それは良いニュースじゃなーい!」
逃がすか! といって羽交い締めにされたフラーゴラはそのままバックルームへと連れて行かれた。その日、カジノではテレジアとフラーゴラによるバニー接客が受けられると話題になった。
「ブラックジャックしかルール知りませんわ!!! えいえい倍プッシュですわ!!!」
「ルーレット???フロラ様挑戦なさるので…は? 私も? えーっと…分かんないので全部ベットしちゃいますぅ!! え~い!」
「……あっ負けましたわ」
『宙より堕つる娘』水天宮 妙見子(p3p010644)と一緒に来ていた『自称・豪農お嬢様』フロラ・イーリス・ハスクヴァーナ(p3p010730)。
そしてたったいま全額スッたらしいフロラと妙見子。
フロラは高笑いをあげると、バッグからサイバネティックウサミミを取り出した。
「こんなこともあろうかと持ってきていますのよ〜〜!!!! 労働ですわ〜〜〜!!!!」
「もう二度と賭け事には手を出しましぇぇ~~~~ん!!!!」
かと思えば。
「ヤメロー!シニタクナーイ!シニタクナーイ!そこの卮濘って奴が我の分の負債払うからー! あー!!」
「……は?いやいやいやいやいや私関係ないからなんで私も連れて行くの!? ぎゃー!」
『崩れし理想の願い手』有原 卮濘(p3p010661)と『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)がバックルームに連れ込まれていた。
なんだろう。バニーになって働くと負けをチャラにできるルールでもあるんだろうか。
暫くするとエナメルポニテバニーと化した幸潮がシガーボックスを手に現れる。
同じく卮濘も。
「全く、仕方ねェ奴らだぜ」
チップをどうやら儲けたらしいクウハが手元でじゃらじゃらやりながらその様子を眺めていた。
「クウハうっさい! お前もバニーにしてやろうか!」
「この手の客船のカジノなんてのは接待用なんだよ。部屋代で既に利益が出てんだから、ある程度はこっちが儲かるようにできてんだ。派手に賭けるから負けるんだよ」
「クッ――バニーの胸元のえっちさに気を取られなければ!」
とかいいながら、幸潮はチップと引き替えに葉巻を差し出した。全部売ったらチャラになるシステムらしい。
「フハハハ!ここはバニーガールがいっぱいだね!
我もこの格好はバニーガールそのものであるからして実になじむ!」
しまいにゃ負けてもいないのにバニーになる者が出現した。『奇術師』カルラ・ティアドロップ(p3p010744)である。
「という訳でディーラー、一つ勝負と行かないか? 我が勝てたら彼女達の借金をバニーガールで働かせる以上の物にしないと誓ってくれ。我が負けたら我も借金まみれ。この体、好きにしてくれていいさ。そう例えばこの……」
といって振り返ると、『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)がバニーになっていた。
「――貴様が望む、望まないに関わらず
此度、我が身は月の兎に等しい
或いは妖艶な化け物か
――チップを寄越せ
Nya――HAHAHA!!!」
なんかわかんないけどすげー禍々しいバニーだった。あと多分こいつ負けてないのに最初からバニーだった。
「…………」
一方の『チャンスを活かして』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)はまさかのメイド服だった。
「その勝負……僕も乗ろう」
「なんでメイド?」
「題して、メイドVSバニー対決!」
「なんでメイド?」
「剣勝負で、こちらは一切手を抜かずに戦おう。また、相手がいかさまをしようものなら、聞き耳でその証拠をつかんでみせる!」
「……なんでメイド?」
困惑するカルラ。
だが救いの手はあった。
「違うよ! ボクじゃな――あっ今日はリアちゃんいなかった」
バリバリにバニーの『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)がそこにはいた。
およそ二年前から既にバニーだった炎堂 焔である。バニ堂 焔と言ってもいい。
「きっと今日の経験はこれからの役に立つよね! よーし、頑張ってバニーガールするぞ!」
その時カルラは確信した。この子らがこれ以上の目には合わないだろうと。
「びぇん!!! また盛大に負けましたー!? …ひぇ!バニーでも何でもしますから命だけはお助け!」
「はぁぁぁ?? 今のどう考えても当たる流れだったでしょうがよ!?」
びっくりするほどバニーが生産されていくカジノ。『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)と『立派な姫騎士』雑賀 千代(p3p010694)が新たなバニーになってバーカウンターで接客を始めていた。
とはいえ一旦バニると覚悟をキメるのがイレギュラーズらしい。なんでだろう。
ライはブラックなバニーとなると、ここぞとばかりに聖職者オーラを出してサービスを始めた。ライも必死に負け金をチャラにすべく働き始める。
なんかディーラーよりもバニーのほうが多いし、なんなら客より多いまである。
「ここは天国かな?」
『一般人』三國・誠司(p3p008563)が鼻の下をでろーんてしながらバーカウンターの椅子に座っていた。
「勝てたらバニーさんにおごってもいいかな、勝てるかな。
カルネきゅんに頼み込んだら着てくれないかな、バニー……」
脳内で響く『誠司?』て声に、首を振る。
そんなバニーだらけのカジノに――『深緑魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)が!
「お仕事手伝わせてもらってもいいですか?」
既にバニーのリディアが!
もう負けとか関係なく最初からバニーだったし、『祝三周年!』のプレートを書き換えて五周年を祝ってすらいた。
「コスプレ同好会で鍛えられた今の私ならバニーガールになるくらい……恥ずかしくないといえば嘘になりますが、これまで依頼でもっと恥ずかしい目にあったこともある私ならこれくらい我慢できます!」
「おいおい、イカサマなんてしてねぇよ。ただのビギナーズラックってやつさね」
『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)はちゃっかりポーカーに勝ってチップを増やしていた。
(昔の兄貴分がこういったゲームに滅法強くてな。隣で見ている内に自然と手やら引き際のタイミングを覚えちまったのさ)
などとは言うまい。十夜は肩をすくめ、勝ちすぎないようにと席を立った。
入れ替わりに現れる『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)。
「ふふふ!
ヴァリューシャの為にカジノで荒稼ぎする!
5000兆G稼いで一緒にシャンパンタワーしようね!!!」
両脇に抱えたチップボックスは彼女の背景に吠える虎を幻視させた!
その――壱時間後!
「……どうして……」
背景で子猫がニャーンした。
「なぜ勝てないんだい! いかさまだー! わー!」
仰向けになってバタバタするマリア。周囲でバニーにさせられていたリディアたちが一度顔を見合わせたあと、マリアを抱えて裏へ連れて行った。
その後、マリアはディーラーの服を着て出てきたという。
●ショーは夜更けから
「最近、舞って居なかったので――」
「出来るとあれば踊らない訳にはいきません」
ステージに並んで立つのは『要黙美舞姫(黙ってれば美人)』天閖 紫紡(p3p009821)と『銀月の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)。
「夏の舞姫、華拍子、天爛乙女の参上です。皆様楽しんでいってくださいね」
「今宵、此の時、一夜(ひとよ)の夢、どうぞ御付き合いの程宜しくお願い申し上げます」
二人が揃いの扇子を広げると、光る蝶が舞台の下から舞い上がり舞台全体を照らし始める。
そのなかを美しくそして妖艶に舞う弥恵。
「ゆったりとした浴衣で、友達と一緒に数々のショーを楽しむ。ふふ、この客船の事を聞いた時からやってみたかったんだ」
そんな一級のショーを眺めながら、『霞流陣術士』霞・美透(p3p010360)は椅子にゆったりと腰掛けている。隣には『亜竜姫』珱・琉珂(p3n000246)。
二人は可愛らしい浴衣を着てノンアルコールカクテルのグラスをとる。
「忙しいのに無理を言ってすまないね、琉珂君」
「ううん、息が詰まっちゃうもの! 誘ってくれて有り難う美透。とっても嬉しいわ!」
「折角抜け出してくれたんだ、存分に楽しむとしようか!」
二人は乾杯すると、互いの浴衣を見つめる。
「しかし、君の浴衣は綺麗だね……紫の色合い、琉珂君によく似合っていると思う。帽子もとても可愛らしいよ」
「えへへ、そう?初めて浴衣を着たからドキドキしちゃった。
美透の浴衣もとっても可愛い。紫水晶のようなイメージが合ったのだけど翡翠の色も似合うのね」
「なるほど、ここでショーやダンスなど色々披露しているのですね!
トスト様、我々もステージに上がりませんか? 折角ですし一緒に踊りましょう」
ステージ裏に続く通路を指さし、『ONIGIRI』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)が手招きをする。
「へあ!? え、あ、出演するの? …一緒に!?
いやちょっと待っ…ヴィルメイズくんは慣れてるかもしれないけどさぁ、人前で踊るっていうのは、結構恥ずかしいよ…!」
「おやおや、そんなに恥ずかしがらなくとも。
こういう場所に居る方は大抵お酒を飲んでいますから。適当な踊りでも皆さん上機嫌になりますよ。さあ、ご一緒に!」
「もう…それなら頑張るけど、ちゃんとリードしてよね!」
二人はスタッフの快諾を得るとステージへとのぼり、亜竜種の都に伝わる鮮やかなダンスを披露し始める。
すると、彼らに続けとばかりに続々イレギュラーズたちが飛び入り参加を始めた。
「ヒーローショーをやれというお達しでありますね!!!!! 飛び入り参加歓迎ということはそういうことでありますか!!!!
ご唱和ください自分の名を!!!!!!
宇宙保安官、ムサシ・セルブライト!!!!!」
『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)が派手で賑やかなヒーローショーを始めれば、一方で『レディ・ガーネット』海紅玉 彼方(p3p008804)がアイドルライブを開催しはじめる。
「飛び入りでごめんねー! けど、いっぱい歌わせてもらうよー!
コーレスいくよー! カナタちゃーん!」
「「カナタちゃーん!」」
観客たちは海の英雄であるローレット・イレギュラーズのショーに歓喜し、ステージをノリノリで楽しんでいた。
「すまねえな、出演者の方々…自由に吹かせていただくぜ!」
そこへ『黄金の旋律』フーガ・リリオ(p3p010595)が参戦。トランペットを召喚すると、高らかに吹き鳴らし始める。
(すげえな、豪華客船…スイートルームもカジノも、プールもレストランも最高すぎる。
夢のような場所だ…いや、夢なのかもしれねーけど)
「ふわぁ、なんかとっても素敵な演奏ですね、うっとりしちゃいます……」
勿論観客席もといラウンジでうっとりと聞き惚れる『純真無垢』メリッサ エンフィールド(p3p010291)たちもいる。
夜はそのボルテージをあげ、歓楽の時がやってくるのだ。
●ディナーはいかが
「ジョセさんは何にしますか? 私はお魚が好きなので魚料理にしようかと」
「何を選んだらいいのか。そして僕が食べていい物なんでしょうか?」
『早天』クロエ・ブランシェット(p3p008486)と『千紫万考』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)はちょっぴり高級な店に入り、どこか緊張した様子で向かい合いって座って居た。
「よかったら食べながら海洋のお話を聞かせてくださいますか?」
「はい、もちろんです。お話ししながらも楽しいですからね」
にっこりと笑い合かけるクロエ。ジョシュアはつられるように笑みを浮かべた。
レストランの裏方には、そう『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。
「ぶはははッ、こんなデカい豪華客船のゲストシェフとして呼んでいただけるたぁ光栄だねぇ!」
「勿論なのだ! ゴリョウ殿の噂は世界中で聞くのだ!」
カウンターに手をのせてぴょんぴょんとはねるキャピテーヌ。
裏方といっても壁のないオープンなスペースでの調理だ。ライブキッチンというものである。
「どうだい、食ってくかい!」
分厚い肉を鉄板に載せ、太い指で優しく丁寧に鉄板にひろがる油となじませるように動かしていくゴリョウ。
「たべるのだー!」
一緒に店に入っていた『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が微笑む。
「幼いのに豪華客船の船長だなんてスゴイね! オレはイグナート。ヨロシクねキャプテン!」
「知ってるのだ! 岩をも砕くイグナートなのだ!」
サインくださいなのだといって鉄板を出してくるキャピテーヌ。鉄帝式なのは、イグナートの闘技場マニアぶりを知っているからか。
「これはソボクな疑問なんだけれど、クイーンエリザベス号は何でエリザベスなの?」
「それは勿論、エリザベス前女王陛下のお名前からとったのだ。大遠征を誰より願い、その遺志のうえに私達の栄光があるのだ。あと実は……ドレイク船長の伝説もちょっとだけかかっているのだ」
「なるほどね。祖先の遺志、か」
そうしていると、『フリースタイルスナイパー』コヒナタ・セイ(p3p010738)がお店へと入ってきた。
「とにかく美味しいゴハンゴハン!」
ゴリョウの料理はどうやら性に合ったようで、ベーコンをカリカリに焼いたものを山のように積んでいく。
「タコやイカも食べたいですネ。この際だから沢山食べてしまいましょう!」
こちらはビュッフェスタイルらしく、セイはお皿に好きなものをどんどん乗せていった。
そんな様子にゴリョウもニッコリなのであった。
●ナイトプールへようこそ
ご想像頂きたい。
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)、『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の三人がぽきら水着をむき出しにして貝殻型のエアボートに座って妖艶に笑うライトアップされたナイトプール。
そんな理想と――。
「お仕事なら気合でなんとかなるのにどうしてなのかしヴッッ。
あっ待ってね今なんかこう、来そう」
「誰でありますかしこたま飲んだ後でナイトプールに行こうって言ったのオエッ。
こんなことならバーにでも引き籠もっていればよかっオエッ……」
「ぜえぜえ、おかしいですわね……。
作戦では、浴びるようにお酒を飲んで酔っ払ったら、船酔いが収まって存分にプールで 遊べるようになるはずだったのだけれど
船酔いにお酒の酔いがプラスされて、逆にぎぼじわるいですわ」
三人は貝殻にひっかかって真緑の顔をしていた。たぶん青い顔に夜用のライトが浴びせられてるからじゃないかな。
「ねえアーリア、悪いのだけれど、お部屋に戻って袋を取ってきて頂けませんこと?」
「むりぃ……そうだわエッダちゃんのせいよぉ! 体内で作るオリジナルカクテルでありますとかなんとか言って全部ちゃんぽんしたから!」
「うおお揺するな! 出る! 胃が引っくり返ってダッエちゃんになっちゃう!」
うあーと言いながらひっくり返るボート。沈む三人。
そんな光景を見ない振りして、『なけなしの一歩』越智内 定(p3p009033)は……なんていうか震えていた。
「ビビらないでおくれよ! 夜のプールって憧れてたんだ、ほら、流行でしょ?」
とんでもねー体型をとんでもねー水着で包んだ『猫鬼憑き』綾敷・なじみ(p3n000168)が定のひじを小突いた。
(今日は二人で良かった気がする。何故そう思うのかは分からないし、花丸ちゃん達には誘わなかった事を怒られそうだけれど……)
「今日は私が定君を独り占めだね。
花丸ちゃんだってひよひよと一緒に何処かで遊んでるんだ」
見透かしたことをいうなじみをとりあえず直視しないようにしつつ、定はふと思いついたことを言ってみた。
「なじみさんって猫だよね。もしかして夜目とか利いて……?」
「んふふ、見えているかは秘密さ!」
「イケてる感じのぱーりーぴーぽーが集う場! これがナイトプールって奴ッスか!」
今年に新調したえちえちな水着姿でぴょんとはねる『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)。
「ここで自撮りしてクラスで自慢しちゃおうって寸法ッス!えっと、良い感じの撮影スポットが設けられているものだと聞いていますが……」
などと見回して、丁度良くライトアップされた場所を見つけてぱしゃぱしゃ自撮りを始めるイルミナ。
皆こんな調子で楽しんでいる様子である。
「こんなに素敵な景色が見れるなんて、少し前までは考えたこともなかったです。来年も、また一緒にみましょう♪」
「船の上でしかもプールでなんて…ロマンチック……だね…
アリス、もっとノルンと初めて…共有したい……うん、来年もきっと行こ…絶対行こ…!」
『泡沫の胸』アリス・アド・アイトエム(p3p009742)と『願い護る小さな盾』ノルン・アレスト(p3p008817)は新しい水着をきてナイトプールにちゃぷちゃぷと足をつけていた。
顔を見合わせにっこりと笑うアレスト。アリスも照れたように笑みを浮かべた。
その一方。
「ねぇ、ペリカ。水着のプレゼントにも面映ゆいって言ってくれたけど……イヤ、じゃないのよね?」
「そうだねぃ、着慣れないけど悪いもんじゃないさね」
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は白いドレスような水着姿でビーチチェアに腰掛け、同じような色合いの白い水着をきた『総隊長』ペリカ・ロズィーアン(p3n000113)と並んでいた。
「当たり障りのないことを聞いちゃう辺り、私まだ貴方のことなんにも知らないのよ……。
だからそう、もっと貴方のこと、聞かせて? 例えば好きなこととか」
「穴――」
「穴掘りはナシで」
さあ、夜は長いわよ。いつまで隠せるかしら?
イーリンは笑ってグラスを掲げた。
「…なんともオシャレな所だな」
場違いではないだろうかなどと心の中でつぶやきながら、『特異運命座標』九十九里 孝臥(p3p010342)はオシャレにライトアップされたプールサイドに立っていた。
「そう萎縮するなよ、孝。好きなように楽しめばいいのさ」
『特異運命座標』空鏡 弦月(p3p010343)がその隣に並び、ビーチボールを指の上で回してみせる。
「さ、花火が見れるんだ。いくら遮るものがないって言ったって良い場所を探さないとな!」
「ああ……さぞ綺麗に見えるだろうな」
こんな所で弦と過ごせるなんて夢みたいだ。そんなことを、孝臥は心の中で呟いた。
「ふふ、水着で船だなんて…こんな素敵な客船。お誘いがなければ絶対に来なかった気がします」
爽やかなグリーンとどこか妖艶な黒。彼女をよく表現したよな水着をきて、『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)はプールサイドに座っている。
隣では、アロハシャツを着た『乗り越えた先』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)がどこか照れくさそうに笑っていた。
「ん? まあ良いってことよ。
俺自身独りだったなら豪華客船なんか見向きもしなかったろうしな」
カウンターから持ってきたカクテルを手渡すバクルド。
マリエッタはブラッディマリーを手に取ってくすりと笑った。
「でも本当に、素敵な時間、ありがとうございます。
これからも…何もない、空っぽだった私にたくさんの思い出をくださいね」
「空っぽというなら溢れるぐらいに満たそうぜ。
俺もお前さんもあいつらも一緒にな。これからもよろしくな、マリエッタ」
やがて、船内に案内放送が流れた。これより海上に花火があがるのだという。
皆デッキへとやってきて空を見上げている。
どんっ――という音と、閃光。ひらく花火に、デッキのランニング通路に立っていた『歪角ノ夜叉』八重 慧(p3p008813)は見とれていた。
「これはなかなか贅沢な……」
VIPとして呼ばれているとはいえ、自分達だけで堪能するのは、ちょっと勿体ない。そんなふうに思えるほど、振り返ると皆の顔が楽しげに照らし出されている。
その中にはゆっくりとワイングラスを揺らし微笑む『冬の王』オリオン(p3n000257)の姿もある。
「……深海魔、はやくなんとかして安全に楽しめるようにしたいっすねぇ」
そんな風景の中に、『砂漠に燈る智恵』ロゼット=テイ(p3p004150)の姿もある。
(海に消えたあの子、皆の記憶に残ってるのはその最後なのかもしれないけれど……)
僅かにふいた海風に、いつかの思い出を蘇らせる。
一番鮮明なのは、ピアノと一緒に即興で歌ったあの姿。
その歌に故郷を海の向こうに探していた青年。
花火の音に紛れて、遠くでイルカの笑い声が聞こえた気がした。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
サマーフェスティバルの夜は明けていく……
GMコメント
ついに開かれた開拓二周年記念のサマーフェスティバル。
舞台は『静寂の青』こと海洋王国と豊穣、そして鉄帝国の間にあるフェデリア島・シレンツィオリゾート。
クルーズツアーに出ることができないかわりに、せめてもと島のまわりを一周するミニツアーにVIPであるローレット・イレギュラーズ――つまりあなたが招待されています。
●シレンツィオ・リゾート
かつて絶望の青と呼ばれた海域において、決戦の場となった島です。
現在は豊穣・海洋の貿易拠点として急速に発展し、半ばリゾート地の姿を見せています。
多くの海洋・豊穣の富裕層や商人がバカンスに利用しています。また、二国の貿易に強くかかわる鉄帝国人や、幻想の裕福な貴族なども、様々な思惑でこの地に姿を現すことがあります。
住民同士のささやかなトラブルこそあれど、大きな事件は発生しておらず、平和なリゾート地として、今は多くの金を生み出す重要都市となっています。
https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio
■■■プレイング書式■■■
迷子防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
・一行目:パートタグ
・二行目:グループタグ(または空白行)
・三行目:実際のプレイング内容
書式が守られていない場合はお友達とはぐれたり、やろうとしたことをやり損ねたりすることがあります。くれぐれもご注意ください。
■■■グループタグ■■■
一緒に行動するPCがひとりでもいる場合は【グループ名】といった具合に二行目にグループタグをつけて共有してください。
大きなグループの中で小さなグループを作る場合はグループタグを横並びで二つ書いておくとよいでしょう。
■■■パートタグ■■■
シナリオ内には様々なお楽しみがあります。
ですが描写されるシーンはそのなかの一つに限られますので、どのシーンを描写してほしいかをこのパートタグを使って示してください。
(なので、パートタグから外れた部分のプレイングは描写されないことがあります。ご注意ください)
【プール】
昼間に屋上のプールデッキで遊びます。飛び込み台やウォータースライダーまでついた豪華な吹き抜け式プールとなっております。
水着にきがえて遊びまくりましょう!
【ナイトプール】
夜は一転してプールがオシャレなムード空間へと変わります。
水着でくつろぎ、アーバンスタイルをご堪能下さい。
夜には島に花火が上がるので、遮る建物のなにひとつない船という特等席から花火を眺めることができます。
【スイートルーム】
船内にはあなたのためのスイートルームがとってあります。
部屋には大きなベッド、テーブルやソファ。海の一望できる窓があり、自分だけの時間を過ごすことが出来ます。
一人でのんびりくつろいでもよし、誰かを呼んで一緒に遊んでもよしです。
【ショーラウンジ】
広いラウンジにはショーを行うためのステージがあり、世界中から呼び寄せた様々なアーティストが歌や踊り、楽器演奏などを披露しています。
この場所でフェスティバルの時間を楽しんでもいいですし、むしろあなたがショーを見せる側としてステージに立ってもよいでしょう。なにせローレットは島の英雄。飛び入り参加も歓迎してくれる筈です。
【カジノ】
船内には大きなカジノが設置され、ルーレットやポーカー台といったオーソドックスなゲームが用意されています。お金をチップに替え、早速遊んでみましょう。
勿論カジノにはバニーさんもいます。大事なことなのでもう一回いいますがバニーさんがいます。
もしあなたもバニーになってカジノで働いてみたいなら、飛び入り参加は歓迎です。
【レストラン】
クイーンエリザベス号には様々なレストランが入り、一流のシェフたちが料理の腕をふるっています。
優雅なディナータイムを独り占めに、あるいは誰かと共有するのもよいでしょう。
もしかしたら、そのシェフの中にあなたの名前があるかも?(レストランのシェフに指名されたことにしてもOKです)
【その他】
他にやってみたいことがあったらご自由にどうぞ。
■■■参加NPC■■■
●キャピテーヌ・P・ピラータ
シレンツィオリゾートの代表執政官のひとりであり、このクイーンエリザベス号の船長をつとめる幼女。父はリヴァイアサン戦にて戦死している。
『絶望の青』における英雄であり、いくつもの奇跡や英雄譚を残したローレット・イレギュラーズに強い憧れを抱いている。
シレンツィオリゾートではなにげにローレットのイレギュラーズを題材にしたグッズが売られており、キャピテーヌはそれをコレクションすることが趣味。
彼女に会いに行くとあなたのグッズを差し出してサインを求めてくるかもしれません。
また、彼女はあなたに誘われることをとても歓迎するだろう。部屋やラウンジ、レストランやバーといった場所に誘ってみてください。
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