シナリオ詳細
<チェチェロの夢へ>遥か蒼空へ祝盃を
オープニング
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鉄帝国軍部――
「……と言うわけですな」
ホワイトボードの前でふんぞり返っているのはアーカーシュ調査計画を(本人曰く)率いている『特務大佐』パトリック・アネル。
その話に耳を傾けていたのはアーカーシュ調査隊の成果を心待ちにしていた『鉄宰相』バイル・バイオンと『歯車卿』エフィム・ネストロヴィチ・ベルヴェノフであった。
「成程。いやはや素晴らしい成果ですなあ! のう、陛下?」
「……まあ」
興味があるのかないのか。国家にとって重要な局面だと声高に叫んだバイルに会議室まで引っ張ってこられた『麗帝』ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズは明後日を眺めながら返す。
「陛下、よもや!! よもや!! アーカーシュに行きたいなどとは仰られませんな!?」
「いや、新種の生物に命名するのは羨ましいと思っただけだ。アネルが見付けてきた生物にはまだ名前がついていないのだろう?」
アーカーシュ探索隊は発見した新種生物の命名権を協力関係にあるイレギュラーズにも与えていた。
つまり、鉄帝国の現・最強の男は命名権を得たイレギュラーズ達が羨ましかったのだそうだ。
「こんにちはー! アネル特務大佐。頼まれてた魚とか虫とか持ってきたよ!
ボク一人じゃ運べなかったから皆に手伝って貰っちゃった。あれ? 陛下だ! こーんにちは~!」
まるでコール&レスポンスでも行っているかのようなアイドル挨拶を繰り出したのはパルス・パッション。
渋い顔をした『歯車卿』はさておき、彼女は此度の調査報告の為に新種生物を幾つか運んできてくれたのだろう。
「まずは、この子。赤くて強そうなとげとげがあるお魚! 結構凶暴かも?
食べられるそうだけど……名前はついてないみたいだから調査報告会で名付けておく予定だよね」
「よし。『スーパーゼシュテルヴェルスフィッシュ』だ」
「「はい?」」
「『スーパーゼシュテルヴェルスフィッシュ』」
――有無も言わせずスーパーゼシュテルヴェルスフィッシュが誕生した。
「こほん、次がこの子! ひらひらしててとっても可愛い七色の燐光の蝶々なんだけど、これは……『キラキラナナイロラブリー蝶』だよ。ボクの命名。
それからビッツが抱っこしてる猫ちゃんが、ビックリすると空を飛ぶんだけど『ビューティフルビネガーキャット』らしいんだ」
「ええ、この毛並み、この優美さ! そして、驚くと蒼空をも制圧するばいたりてぃ! ビューティフルビネガーキャットと名付けるしかないわ!」
「この子は『セイバー魚(さかな)』よ! 可愛いでしょ?」
ビッツ・ビネガーに『セイバーマギエル』リーヌシュカまで参戦してきたが……ネーミングセンスに『歯車卿』は頭を抱えた。
「それから、えっと……ウォロク、持ってきて」
「……これ。喋る稲穂。煩いけど、食べる事ができる」
「名前は「『ギエエエエエエエ』」……えっと、『ギエエエエエエエ』だって」
――ウォンバットに遮られたがそのまま名付けられた。命名が雑にも程がある。
「アネル」
どうにかこの混乱を収められないかと『歯車卿』が視線を投げ遣るが――
「そして、ゴーレムが復元された訳ですな。いや、めでたい。これでアーカーシュ調査も一段階進んだわけです。
イレギュラーズが復元した『だけ』では『此方も色々と不都合』ありましょう。
軍部でも研究用に一体、得ておきましたのでご紹介しましょう。名付けて――『グレートクイーンアネル3世』であります!」
特務大佐パトリック・アネルは堂々とそう言った。
身を屈めたゴーレム。古代兵器と呼ぶべき錆び付いたそれは目と呼ぶパーツを点滅させながら言った。
「こんぶ……おにぎり……」
――なんて?
●
「という会議があった訳ですな。諸君の活躍、鉄帝国としても非常に喜ばしい」
バイル・バイオンがイレギュラーズに宣言したのは鉄帝国南部の町ノイスハウゼンでの事であった。
これより探索隊は上空の伝説の浮遊島アーカーシュへと登ることになる。
百年余りの前に消息不明になった探索隊の子孫――レリッカ村の住民たちの協力もあり、進捗は順調だ。
「生物に土地、遺物の発見は浮遊島の謎を解き明かす重要な情報でありましょう!
勿論、島には古代人と呼ぶべき何らかが暮らした形跡が見られ、精霊が使役された痕跡があったと。
古の魔王がこの地を蹂躙したのは確かでしょうが……魔王が討たれたのはこの地で無いとすれば正に我々こそが『未踏の地を既知』とする喜びを得ているわけです」
カカカ、と大仰な笑いを漏したバイルの演説はまだまだ続く。
「古代獣には少々困らされることはアルでしょうが、我が領土よりも農耕に適しているのであれば入植の芽もある!」
「ええ。宰相殿。しかもゴーレムの復元も果たしました。
『EAMD』の協力を得て、メンテナンスを行う事でこれからもゴーレムの数は増やせましょう! そうだろう、ガスパー!」
アネルの呼びかけに頷いたのはEAMD所長たる『 趣 味 爺 』ガスパー・オークソンであった。
満足げなアネルは「古代遺跡の深部への通路も発見され、更なる探索も可能となりましょう!」と手を叩いて喜んだ。
「皇帝陛下も『祝え!』と申しておりましてなァ! これもベルヴェノフ卿のお陰ですかな?」
「いえいえ、それ程でも」
鼻高々と言った様子の『歯車卿』にアネルも自身の出世が約束された気がしてふふんと鼻を鳴らした。
「諸君、喜べ! 酒だ! 祝杯を挙げ、これからの探索の英気を養うのだ!」
アネルの宣言に鉄帝国アーカーシュ探索隊(とお手伝いのラドバウの皆さん)は大いに沸き立った。
「ギエエエエエ!」
「……ん、喜んでる」
「やったわ! ごちそうが食べれる!」
「ボクも謳っちゃおうかな~? ねえ、コンバルグ。バックダンサーしてくれる?」
「ウホホホホホホホホホッ!!!!!」
「全く、静かにできないのか……やめろマイケル。眼鏡が曇る」
「だが祝いの席は良いな! イレギュラーズを湛えようではないか! イイ食事はイイ身体を作るために必要だ!」
「アンタたち煩いわね……ま、そういうわけなのよね。少し祝宴に付き合いなさいな」
大騒ぎと言った様子の鉄帝国軍。彼らにとって浮遊島アーカーシュの探索は『これで二度目』。
歴史を繰り返すこと無く、成果を上げられたことを喜んでいるのだろう。
……強引にも話を進め派閥を形成するパトリック始めとする『特務派』と彼に反感を抱く『軍務派』の派閥抗争はまだ露見していないがきな臭さは少し感じさせる。
それでも今は喜ぼう。鉄帝国軍は発見した良く分からない物品のネーミングを幾人かのイレギュラーズへと託すことや、これからの調査希望をヒアリングする事も考えているらしい。
遺跡深部に、外周の浮遊小島探索。まだまだ白紙の地図と呼ぶべきアーカーシュの調査。
忙しない毎日ではあるが、次の探索のための英気を養おう。
- <チェチェロの夢へ>遥か蒼空へ祝盃を完了
- GM名夏あかね
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2022年05月29日 22時05分
- 参加人数67/∞人
- 相談6日
- 参加費50RC
参加者 : 67 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(67人)
サポートNPC一覧(4人)
リプレイ
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アーカーシュの探索は『予想以上』に上手くいっているらしい。
――と、言うのは鉄帝からローレットへと齎された知らせであった。
現地調査も兼ねて、現地での宴を行うことに決めたらしい彼らはローレットにも招待状を出した。曰く、「飲もうぜ!」である。
「ごはん……」
宴に誘われたならば食事が出来るとスフィアは会場に訪れた。
「こんぶ……おにぎり……」
何故か握り飯の事を告げる謎のゴーレムをまじまじと見詰めてからスフィアは「グレーなんとかアネル3歳?」と首を傾げる。
「グレートクイーンアネル3世!」
特務大佐の訂正が飛んでくるが今はどうでも良い。何という料理かは知らないが、美味しい食事を楽しめるならばスフィアはそれで良いのだ。
「いやー、アーカーシュは本当にすごい所であります……!
自分も降り立って命名権までいただいてしまって至れり尽くせりという感じで……」
未知の生物が並んでいるのだと聞いてムサシは格好いい昆虫は居ないかと周囲を見回し――
「ええっ古代兵器!?!?!? なんでありますかそのすごい格好いい物!?
しかもロボット!? すごいぞ格好いいぞであります!!! ……あっ、ゴーレムだったであります
グレートクイーンアネル3世……さわってみていいでありますか……!?」
ムサシは早口でグレートクイーンアネル3世に語りかけ――
「――り」
「えっ!? 喋るんでありますか……なんて?」
「こんぶおにぎり」
「……こんぶ……おにぎり……?」
――どうしてこんぶおにぎりなのか、誰も答えてはくれないのだった。
「ヌーハッハッハ、酒が呑めると聞いてやって来たわい。ただ酒の為なら例え火の中、水の中、空の上の島だろうと問題ないわ。
高い所で飲む酒も乙じゃな。それにしても流石は鉄帝じゃ、度数の高い良い酒が揃っておるわい」
流石は鉄帝だとナールは宴に揃った酒を楽しむ。
「宴の準備、運営なら、わたしに任せて? 伊達に、年三回の村祭りを毎年仕切っていないのよ? ……いいから、手伝わせなさい」
唇を尖らせたアルフィオーネはじゃがバターしょうゆや味噌田楽を調理して軍人達に振る舞った。
宴が円滑に回っていないと気になってしまうのだと、『きつね色のヴィーナス正純・ドラゴン風』を披露する。
自身が探索した場所以外の話も聞いてみたいのだとマリエッタは鉄帝の宴に参加していた。
「アーカイブスを見てはいますけれど、それ以上に現地のお話って興味があって……
どんな遺跡や文化の跡があったりしたのでしょうか! 歴史や、構造物……あと本、本とかありませんでした……!?」
「本かあ~。あったのかな? 皆に聞いてみよっか」
にんまりと笑ったパルスが「飲み物飲む?」と問いかける。ついつい熱が入ってしまったとクールダウンを兼ねて、パルスが適当な軍人から受け取ってきた酒をあおったマリエッタは「あ、おいしい」と呟いた。
「強いお酒はあまり飲みませんでしたけど意外と飲めるものなのですね、私。
記憶はないですけれど、こうやってお話しするのはとても楽しいですね、ええ」
「ふふ、知らない自分を知れるのってとっても楽しいよね」
ラド・バウ人気ランカーが勢揃いと聞けばシャルロッテも是非に挨拶をと心を躍らせた。スカートの裾を摘まんで美しい淑女の礼を見せたシャルロッテの前にはビッツが酒を煽っている。
「ごきげんよう、ビッツ・ビネガーさん。ワタクシはシャルロッテ・ナックルと申しますの。
今回のアーカーシュの件、ご活躍だったとお聞きしました。どうか記念に是非とも握手をお願いしますわ!」
「アタシなんてまだまだよ。宜しくお願いするわね」
口調こそ軽やかだが、闘技場では毒花ともなるとされるビッツとの握手に『肉体言語』を用いたシャルロッテは力強く意思をその眸に込める。
「ワタクシの目標はラド・バウの頂点(てっぺん)。S級でお待ちくださいビネガーさん、必ず辿り着いてみせますので」
「あら、待っているわ。イレギュラーズで一番になって頂戴ね?」
●
折角なら、アネル特務大佐にも挨拶をしておきたいと考えた美咲は流石に諜報畑の人間だけあってガードは堅そうだと彼の様子を眺めて感じ取る。
「どーも、練達出身の佐藤美咲でス。こんぶー」
「こんぶ……おにぎり……」
――何故かゴーレムの方が先に答えた。パトリック・アネル特務大佐は「こんぶ」と軽やかに挨拶を返す。上官がいない場では割とフランクなのだろうか。
「飲んでますか大佐ー? 私も食ってばかりではありまスが。偉くなると飲み食いが仕事みたくなって大変っスねー。
そんなわけで、仕事を増やしてあれですが、ま、一杯」
グラスに酒を注げば「君は成人かね」とイレギュラーズの『年齢層の広さ』を把握した上で問いかけられる。「ええ」と返しながら美咲はそうした情報からも『個人的な情報』は流れるのだと感じていた。
(鉄帝の男はほっとくと死んでるのでその前に心中を知っときたいという個人的興味もありますね。
知り合う前に死んでた知り合いの前例があるんスよね。全く……忠誠心を図っておかなきゃ何時死ぬかも分からないっスから)
美咲はにんまりと笑う、パトリックの出方を確かめるように。
「……んにしても、大佐は何で探索に参加しているんスか? いや、探りとか嫌味とかじゃなくて純粋な興味でス。
説明会で企業が学生に語るようなキラッキラした建前でいいので教えてくれませんかねー」
「この油画は昔、画家イローが描いた空想上のアーカーシュでね、フフ。私も少年の日にこれを見たのさ」
軍人の派閥抗争も政治的な駆け引きもヤツェクにとっては興味の無い事であった。
だが、パトリックに目を光らせたのは――長年の勘から彼が冒険の障害に成り得るかも知れないからだ。
「全く勤勉なことで、パトリック殿」
「いやいや、特務大佐として当たり前のことだよ」
パトリックの目的が国益なのか、野心なのか。複合か。其れを知っておくことこそが腹を空かせた民間人とアーカーシュの民のためになるはずだ。
「で、そちらは?」
パトリックの視線が向いたのは『Elegantiae arbiter』E-Aであった。
「人工知能だ、ゴーレムにも近い。興味があってな」
「成程……?」
パトリックは国益も野望も『どちらも』とは思える。ある意味では『至って普通の将校』だろう。例えば『腹の底が知れない』といった不気味さは感じられない。だが、ヤツェクは彼を警戒することは怠らなかった。
(秘めた欲望で面倒を引き起こすパターン――故にめんどくさく、興味深い)
リュカシスは丁寧にぺこりと挨拶をした。鉄帝国を担う者として挨拶はしっかりと、である。
「はじめまして、アネル様。『リュカシス・サリーシュガー』と申します。先日は姉に探索のお声がけをいただいたようで!
あそこは彼女が向かうには少々賑やかな場所ですので、僭越ながら自分が探索させていただいておりますよ」
「ああ、はじめまして」
「そうだ、オーリー・バイエルン様もお知り合いですか?
彼の『お願い』にお力添え叶わず悔しい限りですが……これからも新発見の為に全力を尽くしますので、応援の程どうぞよろしくお願い申し上げます!」
「こちらこそ、部下が面倒をかけたようだね。良く言って聞かせておこう」
パトリック・アネルという男に興味を持ったキドーは「ゴブリンったら鉄帝との縁がほぼ無い? 知るかよこれから作るンだ!」と意気込んだ。
「行こうぜ千尋くん! あそこのエラそーな人に挨拶して顔売って、あわよくば気に入られてチーム悠久の名を空の上でも轟かせようぜェ〜!」
「OK!」
イレギュラーズに囲まれているパトリックの姿を一瞥してから、まずは千尋が軽い調子で挨拶をする。
「まいどぉ~! 俺達『悠久-UQ-』のモンです~。目立った勲功はそれほどでもないけど冠位魔種を倒したことです~。
どうです? 俺達使えますよ? 覚えといて貰えると嬉しいです~」
「特務派とか軍務派とか知らねェよ。ローレットは中立だし。でも俺は結構アンタの事気になってるし、気に入ってるんだぜ? 特務大佐殿。
アンタから俺好みの強欲さと野望を感じるんだよ。それがどう転ぶのか分からねェが、出来ればイイ関係で居たいって思ってるぜ。
だから仲良くやれる内にいい感じに仕事回してくれよ。出来れば末永く! な! 千尋くんもそう思うよなァ!」
「モチ! Foo~!」
グレートクーンアネル3世にもよろしくとウインクをする千尋を前にしてからパトリックは常の表情を崩さない儘、言った。
「帝国軍人に誰しもあるであろうものを、私とてことさらに否定はしないがね。適切な距離感というものは、ご理解いただきたい。これでも特務を預かる身なのでね」
特務派はどこか『イレギュラーズとの交流を避けたい』ような気配もある。職務柄当然ではあろうが。
「アネル特務大佐。先ずは、お慶び申し上げたい。この遠征は、今のところ成功と言っていいだろう。
貴殿の今探索における功績は瞠目すべきものだ。私としても、是非力添えしたいと思って居る」
本心であると微笑みを浮かべたエッダの瞳は笑っていない。真に国益に沿うのであれば、エッダは構わない。
「これはこれはフロールリジの大佐、あなたのお眼鏡にかなったなら光栄だ。私とて他人の事を笑える立場にはないが、帝国軍人はどうにも纏まりが悪い。貴官の手腕は存分に拝見させていただこう」
――何方も食えない相手であるのは確かだ。
「乾杯させてほしい。この国の未来に」
口端に登る言葉は軽薄だ。エッダは理解している己の笑みを真に受けることはない。流石は特務大佐――だろうか。
そんな様子をまじまじと見詰めていたヘイゼルは敵として会うと罵倒合戦になる『タイプ』との交流をしてみようと『情報量スカスカ』の褒め言葉を並べ立てた。
「特務大佐なのですよね、すごくないです? そこに気づくとは……やはり天才ですか。見事な仕事だと感心致しますがどこもおかしくはないのです」
――この方が純粋に反応を見られるのではないかと考えたのだ。
「そうだろう! そうだろう! 見たまえ、偉大なる帝国の技術により甦ったゴーレムの姿を」
「こんぶ」
こんぶ。それが偉大なのだろうか。ヘイゼルは帝国の技術って、と首を捻る。
「……ほぼ……かまぼこ」
「――!?」
その様子を眺めていた黒子は社交辞令を経てから自身の交戦経験を交えてパトリックとの交流を行った。
「労働力に使うそうですが、作業指示はどうなさるんで? 1体1体を毎日巡回して指示を出して回るのは大変では?
私の経験(出身世界の話)では、無線の類で一括管理というシステムがあるのですが」
「まだ思案中と、答えておこうか」
「良からぬものがそれを握ると厄介。戦えば手強い、が実感。特務大佐なら『適正に管理』するかとは思いますが」
特務大佐は腹の底も見透かせぬ笑みを浮かべるだけだ。流石に役職者は簡単に御せるものではないだろうか。
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「わーい宴会だー! レリッカの人達が所在なさげでつらい……」
口には出さないがパトリックを胡散臭いと感じていたヨゾラは皆でわいわいしたいと食材を持ち込んだ。
バーベキューとシチュー、おにぎり。レリッカ風の料理も作って一緒に食べてみたいと果実のフルーツ盛りもアピールする。
害がない可愛らしいアーカーシュ山猫やビューティフルビネガーキャットにはヨゾラは味付けをせず食事を与える事とした。
「わぁい猫可愛い……!」
他の猫たちとも出会いたいとは願うが、そうそう現れるものではないだろうか。
「ねこさん、見つかるといいね」とレリッカの子供がヨゾラに微笑みかけるだけでも今は嬉しいのだ。
(宴会、ね。鉄帝としては入植したいのでしょうけど、この地には昔から住んでいる人もいるのだし、その人達を蔑ろにはしてほしくないですね。
国に取り込むか、ここを別の国として認めるか……まぁ、領土拡大を考えると自領にしたいですよね。
その辺りはおいおい話し合っていかなければ。無理矢理……というのは宜しくないですし)
宴会の様子を眺めていたフルールはまじまじと宴会の様子を眺めていた。アルミラージは早く食事にしようと跳ね上がる。
あまりアルミラージが食べるとフルールに負担が来ると注意をすればフィニクスがそうだと言いたげに追従する。彼女の可愛い精霊達は今日も愉快な様子で『主人』の周りで漂っているのだ。
「こっちはビッツ、冷めた態度をしているけれど意外とメンドウ見がイイんだ!
パルスは鉄帝の人気者でアイドルっていう仕事をしてる! ウォロクは捉えどころがないけれどノリは結構イイよ! マイケルはもふもふしてる!」
「ギエエエエエエエ」
「ちょっと、冷めたって何よ」
レリッカの民にラド・バウ戦士を紹介するイグナートをビッツが肘で突いた。
「ゴメン、個々のことを紹介するから!
度数の高い酒がウマイよ! 酒に合う肴もイロイロある! 酒が飲めなくても甘い果物なんかが豊富だし、キノコなんてのもあったね!
後は鉄帝本土には出ないようなゴーレムやモンスターが居てオモシロイよ!」
「モンスターは倒しに行きたいわね」
「いく?」
一緒に仕事をしに行けば良いじゃないかとワクワクと身を揺らしたイグナートに「考えて置くわね」とビッツはひらひらと手を振ったのであった。
「鉄帝国のお偉いさん方が勢揃いの宴会だなんて珍しい! 今頃下に就いている方々は羽を伸ばしているのかしら」
そんなことはさておいて、とアーリアが手にしたのは鉄帝国らしい度数強めの酒とセイバー魚、それから燻った『ギエエエエエエエ』をつまみにする。
所在なさげな住民達とは『飲み仲間』として交流を。やはり、宴の席だからこそ上下を気にせずにこの地について話し合っておきたいというのがアーリアの考えた。
「あああああパルスちゃああああん」
謳ってると慌てて走り出した焔は「あれ?」と所在なさげなレリッカの少女を見詰めた。軍人達の様子に緊張をしているのだろうか。
「ねえねえ、こんなところにいないで一緒にパルスちゃんのお歌を聴きに行こうよ!
パルスちゃんは凄いアイドルで、ってアイドルって言ってもわからないかな?
とにかくお歌を聴いてると元気になって楽しい気持ちになれるんだよ! だからほら、一緒に行こう!」
パルスが歌って盛り上げてくれるならば、焔は彼女達を誘いたい。にこにこと笑みを浮かべた焔に少女は「うん」と大きく頷いたのだった。
パルスの唄に合わせて雨紅は瑾音鈴(きんねすず)を使用して舞い踊る。どうやら、彼女がライブを始めた理由は瑾音鈴を使用して舞う雨紅に「コラボしようよ!」と誘いを掛けたからのようである。
瑾音鈴を知っている住民達が居たならば、屹度、大勢による来訪に緊張している心を解きほぐせるはずなのだ。
「あら、いつもベルヴェドウォッカにはお世話になってますわぁ」
にこりと微笑んだアーリアに「ああ、これは嬉しい。自信作なんですよ。お名前を伺っても? 私の名は――」と柔らかに返したのはエフィム・ネストロヴィチ・ベルヴェノフ。ベルヴェドウォッカへの言葉を社交辞令として穏やかに受け入れてくれているようだ。
「ねえ、実際に此処へやってきた感想はどう?」
アーリアにとって、この国の軍人と言うだけで気が滅入るのは確かだ。だが、反映すれば無暗な侵攻も経るはずだと和やかに言葉を続けた。
「もしも、何か困ったことがあれば、いつでもローレットで私をご指名くださいな。それなりに私、名も張って使える駒ですもの!」
「そうですね、ローレットの皆様はこんな殴り合いにしか能が無いクソ雑な国のカス――おっと。
大雑把なばかりの気質と違ってきめ細やかな対応を頂いており、感謝しております。これからも頼りにさせていただきます」
「空飛ぶ島なんてまずお目にかかれるもんじゃねぇよな……
先生にも見せてやりたかったが来られないみたいだし、俺はどうすっかな。
今後の仕事の繋がりになるかもしれん。どんちゃん騒ぎに混ざるのも悪くねぇかもな」
練達で晴陽に「浮島でイベントがあるそうだ」と告げた天川は「空中散歩は、少し怖いから練習からで」と緊張した様子で告げた彼女を思い出す。
レリッカの住民や鉄帝軍人と親睦を深めておくのは悪くは無い。
「まぁ飲もうぜ! 俺は練達って国で探偵業でメシくってる國定 天川ってもんだ。
まぁ何でも屋に近いな! 何かトラブルがあるならいつでも頼ってくれ」
現地の野菜に胡椒をきかせ、ごま油と軽く醤油で香り付けした野菜炒めを振る舞う彼はふと周囲を見回した。
「露店とかはねぇのか? まぁ時間はあるし、少しぶらついてみるか……」
――東京では経験が無い、低空飛行体験から。呟く彼女を思い出してからaPhoneで撮影したのはぺちゃんこの顔をした少しブサカワなブタのような生き物であった。
「流石に連れては帰れんわな……」
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「ここに生息する動植物に関しては気になるけども、何しよ……」
川や湖は自然豊かなアーカーシュでは振り返れば存在してる可能性もある。雷霧は支給されたテントを立て、拠点を準備する。
軍人達も練り歩いている安全地帯アルバから鍛錬を兼ねてののんびり探索を始めようか。
「飛行で空中散歩?」
戦闘を積極的に行わないのであればのんびりと散歩しても良さそうだとアンリは宙よりアーカーシュを眺めやる。
ノイスハウゼンの上空に存在するこの浮島は空より眺めても美しい。植生や生存する動物たちも大きく違うのだ。
遠巻きに見ているだけでも楽しめる。
「さて、この地には自然が豊富にあり、そこに息づく生き物たちもまた個性的な面々が揃っていることだろう。
仮に新たな種を発見したとしてそれらがずっとこの地で過ごせるように尽力するのもまた、この地での役割なのだろう」
アルバの自然は息づいている。ムエンにとってはこの地に息衝く者達の簡易的な調査を行いたい。
走っている動物を罠に掛けるように一瞬、スキルを使用して動きを止め、実地調査を行うだけだ。
「……ごめんな、動けなくして。だけどお前たちが脅威かどうか調べないと私達は前に進めないんだ」
彼女が捕まえたのはゼンマイが背に刺さっている大型のウサギであった。それは機械人形などではなく肉を喰らう生物のようだ。
(浮遊島ならあの花の種もあるんじゃないかと少しだけ思ったりして……。そんなわけがないのですが、今も……心残りなんです)
ジョシュアはガーデナーの知識を活かして、小さな花や何かの種を探すことは出来ないかとアルバからの景色を眺める。
「植物は昔から好きですし、見ていると和むような気持ちになります」
植物にヴォアレの紫薬を投与し、出来る限り豊かな緑を護りたいと願う彼の傍には小さな花の種がお礼のように落ちていた。
「伝説の浮遊島アーカーシュ……初めて来た、よ」
猫たちがいれば嬉しいなとわくわくとしている祝音は珍しい草木に綿毛と遊ぶ動物たちを眺めて目を細め笑う。
ファミリアーの猫をお供に、のんびりと散歩をすればビューティフルビネガーキャットが勢い良く走り征く。
「みゃー……驚かせちゃったかな?」
既に発見された猫に似た動物も、猫を思わせる植物も可愛らしい。祝音にとって理想の猫さんが居ないかは――まだまだこれからの冒険で、だろうか。
「宴会も気になるんだけどね。学者さん? の仕事ぶりって近くで見ると面白そうだし!
アルバの方に調査に行けるみたいなんだけど、クシーくんも行くの? 行くなら着いて言っても良い?」
「勿論いいですよ」
クシーの笑みにトストはやった、と頷いた。荷物持ち兼雑用扱いになったことは否めないが、周辺の水場探しをするのも悪くは無い。
クシーが調査をしたいポイントまで彼を連れて行くのも『助手』の仕事なのである。
「釣りも、水中から追い込むのもまーかせて! 協力して生き物を探すのも楽しいね。
……見つかったらこの場合命名権ってどっちなんだろ? クシーくんかな?」
「いやいや、貴方では?」
その前に一緒に探し当てなければ、と二人は顔を見合わせて笑ったのだった。
「今日は宜しく。初心者だけど、出来る限りそっちの邪魔はしないから、自由に飛んでくれ」
ワイバーンに挨拶をしてから狛斗はその背に乗って空中散歩に飛び出した。練達はセフィロトドームの内部にあり『空』を飛ぶことには適さない。
「はー……改めて思ったけど、世界は広いな」
あの小さな世界で過ごしてきたからこそ、改めて狛斗はそう思った。
自身一人は世界から見ればちっぽけに見える。この世界で自分は何を為せるのだろうか。
――両親は、どう思っていたのだろうか。今更になってからもっと対話を重ねておけば、と思う事もある。
「きゅい」とワイバーンが鳴いた声に気づき狛斗ははっとその背を撫でた。
「……あ、そろそろ戻るか。今日はありがとうな」
「まだ見ぬ未開の土地、また何か見付かれば良いのですが……さて、どこから探しますか」
桜花は周囲を見回す。旅人の偽灯台の喧噪から離れ遠巻きに眺めることが出来たのは植物や動物たちだろうか。
古代獣との接近は戦闘が必須になりそうだ。軍人達が「危ないから祝の日は止めておきな!」と桜花を手招いた。
この周辺はイレギュラーズが名付けた土地であるために遺跡等は少し離れた場所であろうか。
「無機疎通が反応すれば遺跡の記憶例えばここが何に使われていたのか。当時の人が何を持って遺跡に入って行ったのか入口はどこか――そうした事も調べられそうですが……」
宴半分、調査半分だ。今日の所は其処までの深追いは難しそうであろうか。
小さな竜の姿を取っていた熾煇はきょとんと首を傾げる。
「こんなところあったんだなー?」
「ん、ドラゴン!?」
思わず武器を構えられたことに驚きながらも熾煇は違う違うと首を振る。可愛らしい竜の姿は鉄帝国軍人達も見慣れぬものだったのだろう。
「俺、ドラゴンだけどドラゴンじゃないからな? 熾煇っていうんだぞ。
俺はワイバーンに乗れるんだぞ。てつていの人は乗れるのか? 教えてやろうか?」
「ワイバーンは馴染みがないな……」
「えっとなー? こう、掴んで、いくぞーってやるんだぞ。
わかんないか? えーっと、多分子供のワイバーンを育てたら何となくわかるかもしれない!」
――それは覇竜領域の者でなくてはむりではないだろうかと、軍人達は困ったように肩を竦めた。
可愛らしく首を傾いでいた熾煇はワイバーンの餌でも狩れないかなあと周囲を見回すのであった。
「半分宴会、半分調査か……それなら、琉珂君を誘って灯台の方に行ってみようか。
のんびりするのも良いけれど、折角の新天地。何か見つけられる方が面白いだろう?」
どうだろうかと笑った美透に「勿論!」と琉珂は頷く。専門知識を持たない二人は足で探すことになる。
「何か見つかったら面白いけれど、何も見つからなくってもそれだけでもお散歩で楽しいわね」
「ああ、そうだね。一通り見て回ったら、引き上げて宴会に混ざるとしよう。あくまで深追いは禁物だからね」
注意を促す美透に「美透は宴会で何か飲む? お酒とか?」と首を捻る。
「ああ……お酒のお呼ばれは、今日はやめておこう、酒癖が良い方ではなくてね。
特にこういう雰囲気では飲み過ぎるんだ、私は。ふふ、里長の前で醜態は晒せないだろう?」
「ええ、それってとっても見てみたいわ?」
――『ちょっと不味い情報を与えてしまった』のだろうかと美透はにんまり笑顔の琉珂を眺めるのだった。
迷わないようにと灯台の位置を確認しながら飛呂は探索に進む。調査済みの範囲が何処であるかは地図がない為に確定することは出来なさそうである。
「……食糧問題考えると、やっぱ植物や動物重視かな……」
水場や、果樹が多い場所であれば食べ物を確保することも難しくは無さそうだ。さて、灯台から安全地帯と見做された場所で新しい生物は居るだろうか。
「主さんへの土産話にもなりそうなんで来てみました、実は初上陸(?)っすね俺は」
そう呟いた慧は『主』は「えー、おもしろそう」とこの地に訪れることを羨むだろうと想像して小さく笑った。
植物は元から知っているつもりではあるが、知らない物は新種として存在して居る可能性はある。例えば、凰花桃や月片花などは彼にとっても新たな出会いであろう。
「ちょっと持ち帰りたい気持ちはありますが、変に増えても困るし、そもそもここじゃないと育てられないものも多そうっすねー……」
暴れ回っているという精霊の情報でも持ち帰れれば嬉しいが、この島に漂う精霊達の『遺構』を見付けることは出来ても、本人は近くに居ないようである。
●
「わたしはブレンドティーに使えそうな植物を探してみようと思いますの。
チャノキがあれば一番いいのですが、他の植物でも葉や花があればハーブティーに使えますので、ぜひともがんばって探してみたいところですの。とっても楽しみですの。うふふ」
うっとりと笑ったSuviaの様に目的を持って探索する者も居れば、シキの様に『旅人の偽灯台』の名が気に入って訪れる者も居る。
「知らない場所に行くのが好きなんだ。特に空なんて、ずっと手を伸ばしたって届かないと思っていた。青い空はいいものだね、つい手を伸ばしたくなってしまう」
ついつい手を伸ばしたシキに「ギエエ」と同調するように頷いたのは草叢で散歩をしていたマイケルであった。
「じゃあ散歩してくるよ。新種のものも見つかっていると聞くし、なにか面白い発見があるかもしれない。
例えばお花とかさ、綺麗なものが見つかるといいよね。あとは動物とか……そ、空にはどんな動物がいるんだろう!?」
キラキラナナイロラブリー蝶が飛び回り、シキが想像したとおり羽の生えた兎やハグルマリスちゃんやプティ・アミが走り回る。
「周辺の調査、主に植物だな。調査自体はイシュミルがメインで、俺は助手兼護衛というところか」
「宜しく頼むよ」
アーマデルは「どこから『新種』なんだろうな……?」と首を捻る。調査を担当するイシュミルは「そうだね」と膝をついて植物を確認しながら呟いた。
「新種には全く未知のものもあれば、既存の種の類縁もあるだろう。
地上と同じ種が根付いている、それにも意味はあるものさ。
小さな種子を持つ実をつける植物であれば、鳥が運んできたのかもしれない。だが、飛べない動植物は?」
「なるほど、魚などは飛べないから……環境に適した変化をしたものは、ここに正しく根付いているという事かな」
「長くここで系譜を紡いでいくうち、環境に適応して変化する。それが変種や類縁の種とされるものだ。
ヒトだってそうだ、日差しの強弱など、様々な要因で共通の特徴を持つ変種が生まれるのさ」
「……もしそこに明らかに環境に適していない変種がいたら、それは何か…人為的な要因、何処かから意図的に連れて来られたりしたものということかな……」
「それもありえるね」
この地はまだまだ『未知』だらけなのだから、どうした場所であるかはこれから調査しなくてはならないとイシュミルはアーマデルに「助手は任せた」と告げたのだった。
「アルヴァ、アルヴァ、一緒にアーカーシュにお出掛けしようっす♪ 今まで見た事のない珍しいのとか見られるかもしれないっす」
「アーカーシュを探索したいの? 良い機会だし、少し出掛けようか」
最近は忙しかったから久々だねと笑うアルヴァにレッドは嬉しそうに微笑んだ。二人でなら面白い物を見付けられるかも知れないと心が躍った。
アルヴァは何よりもレッドを護ってやらねばならないと楽しげな彼女の背を追掛ける。
「此処から遠くまで見える景色は絶景っすね」
「折角だし、少し飛んで周りを見渡してみようか」
「飛ぶっす? そうっすね! そうして見渡したらまた違った世界が見れそうっす」
レッドを抱き上げる口実にしか過ぎないけれど、とは言わず、ぎゅっとしがみついてくるレッドをしっかりと抱えて空へと舞い上がる。
普段より高い場所だからと緊張するレッドに「落とさないよ」と囁けば「信頼してるっす」とレッドは微笑んだ。
「何か目ぼしいものは見つかったかい?」
「あ、あそこの木の上の鳥の巣っぽいの見てみようっす」
「さっきの鳥の巣かな?」
追いつけなかったけれど、と二人で顔を見合わせて――穏やかな風を肌に受けながら、未知を探して二人で進んだ。
「うむ、始めてきた時と変わらぬ雄大な景色である。
それなりにアーカーシュには出入りして居るが、この景色の殆どに知らないものが詰まっているというのは不思議なものだな」
百合子は宴も好ましいが、一人で自然を謳歌するのもまた楽しい物だと周囲を眺めやった。
上空から眺めればイレギュラーズ達が名付けた花々が存在して居る。季節も良い。鮮やかな色が見つかれば色や香りを確かめるのも悪くは無い。
「ふむ……地上でも挿し木で増えるやもしれぬ――ぬぅ、ダメだぞこれはお前のおやつではない」
「ぎ」
ワイバーンが百合子の摘み取った花にあんぐりと口を開けた事に気づき、無理矢理その頭をぐっと抑えた。
「ダメと申して……あー苦かったのか、こ奴め本当に……後で泉に行こうか」
口に含んだワイバーンの様子に百合子はついつい苦い笑いを浮かべるだけなのであった。
タイニーワイバーンに乗って空の散歩を行うハイデマリーは宴会騒ぎの中でも鉄帝国軍人としての警邏を怠ることはなかった。
深追いはせず、宴会や活動範囲と軍が定めた場所からは今回は出ないように注意をする。
警戒地域にはドローンを。休憩もしっかり念頭に入れているハイデマリーは軍人の鑑であった。
「ゴーレム2号3号と再度ふやしていきたいものですね。労働力は純粋に貴重なものですから。
今後の調査で遺跡内部から見付けることは出来るでしょうかね……」
●
「たっか! 景色はいいけど〜落ちたら無事じゃすまないね〜。パパたち、連れてこれなくてざんねんだったね。高い所の景色も見てみたかったかな」
エンジェルいわし代表としてやってきたアンジュはいわしの亜種が存在するならば確保してやらなければならないと強く考えた。
もしかすると川に適応したいわしのような存在が居るかも知れない。海はないが、そうした姿の似た魚類が居る可能性は否定できないのだ。
「最近はあんまり海洋から出てなかったしね〜。いろいろ忙しかったし、のんびり散歩でもしながらリフレッシュさせてもらおうかな!」
――それにいわし探しもしておかねばならないはずなのだ。
「宴会も楽しそうだけど、今は未知に興味があるかな。
にしても、灯台跡とは思えないけど……なんだろうね、これ。
もし本当に灯台だとしたら、空島がもっと沢山あって、灯台が必要になるくらいには空を飛び移動する手段があったってことだし」
ジェックはふと、眺めやった。空を飛び移動する手段があったのか――それとも。
風の精霊の支援があったのか。それを可能等する文明があったのかは分からない。
其れを飛んでみて確認すると目印のようにも見えた『灯台』はレリッカの存在する浮島が見失われないようにと気遣っているようでもある。
――嘗ては、無数の島があった。
(……だとすれば、文明は大きかったのかもしれない。鉄帝国に落ちていた何らかの遺構や残骸は、アーカーシュが元なのかな?)
「琉珂ちゃんこっちだよ!」
何かを探しに行こうよと微笑んだスティアに「何があるかしら?」と琉珂は周囲を眺めやった。
鳥を使役し、前方を確認しながら珍しい物を探して突撃して行く。アイルスローンやゼフィランサス・レイメイニアなどの間を掻き分けて進むだけでも一苦労である。
「ねえ、スティア、あれってアーカイブスに乗っていた瓔珞草よ! ヴァレーリヤが私の事を考えて付けてくれたの!」
「じゃあ琉珂ちゃんの草だね!」
ステキだねと笑うスティアは折角だからサンドウィッチを食べて草花を眺めて休憩しようかと微笑んだ。
浮遊島であるだけあって景色は何処でも目に嬉しい物が広がっている。琉珂は「食べられそうな果物も村から貰ったからデザートにしましょう!」と鞄から取り出した。
考えていたことは一緒だった事に安堵して「美味しい物をいっぱい食べようね!」とスティアは意気込んだ。
休んだらもう一度探索へと出掛けよう。きっと、美味しい物や面白い物が存在しているはずだから。
「かつてこの地に住んでいた人々の夢の跡でありながら、私達にとって新たな夢の地でもある……そう考えるとなんだか不思議な気分ですわね」
周囲を見回すヴァレーリヤにマリアは「ねぇ! ヴァリューシャ!」と何時もの調子で声を掛けた。
「どうやら鉄帝軍はこの島で現地の人達に農耕をしてもらおうと色々考えてるみたいだよ!
もし、もしだよ……それが上手くいって、少しでも鉄帝で飢える人達が減ると素敵だね。私達もここで何か出来ること、手伝えることがあるといいね!」
「ええ、そうですわね。これで少しでも、食糧問題が緩和されると良いのだけれど」
ヴァレーリヤにとっても故郷に当たる鉄帝国での食糧問題が緩和されれば――屹度、苦しい過去を繰り返さずに済む。
切なそうな笑みを浮かべるヴァレーリヤに「それでね」とマリアは声を掛けてから手を引いた。
「ここって見晴らしがいいしワイバーンで空中散歩が出来るらしいんだ! 一緒にどうかな?」
「空中でお散歩というのも、偶には良いですわねっ! 行きましょう!
折角だから、あの一際高い島の上なんてどうかしら? きっと遠くまで見渡せますわよ!」
「そうだね! 帝のより良い未来が、ここから少しずつ始まるかもしれないって思ったらね、そわそわしちゃって!」
高いところまで目指してみようかと手を伸ばす。風が強い場所を少し避けてゆっくりと――「マリィ! 見て!」と呼ぶ彼女の声にマリアは「綺麗だね」と微笑んだ。
「なんだか、自身の付けた名前を、皆様が言葉にするのは……くすぐったいような気持ちに、なります、ね」
少し照れたような心地になりながらネーヴェはソレイユを足代わりにのんびりと進む。
「丘に登ったら、もっと色々なものが、見えないかしら。たとえば、太陽の登る方向には、何かのシンボルが、あったり、とか。
まとまった時間が、取れたなら。アルバからさらに向こうの、誰もまだ知らない場所まで、行ってみたい。ね、ワクワク、しませんか?」
そっとソレイユを撫でたネーヴェにソレイユは呆れたように身を揺らす。そんなリトルワイバーンの気持ちが伝わってくる気がしてネーヴェは小さく笑った。
「……なぁに、そのお顔。ソレイユ、呆れてます?
もうっ、わたくしだって……義足で多少は、動けるようになるんですから! 冒険だって、へっちゃらですよ」
「未知の浮遊島! 伝説の場所! 幻想に伝わるアイオンの英雄譚の舞台(とは違うけど)! こういうのすっげーな!」
アイオンが立ち入っていない場所――ともなれば伝説となるのはイレギュラーズであるかも知れない。
リックが眸を煌めかせリトルワイバーンの背に乗って精霊を探すように調査に赴いた。
風の精霊達は「こんにちは」と挨拶をしてくれるが風が気持ちよいことばかりを伝えてくれる。精霊にとっての好みの地形や自然があるのだろうか。
リックはそうした情報を集めて、心地よい場所に誘って貰うのも悪く無さそうだと微笑んで――ふと、思った。
「……初めて精霊っぽいことをした気がするぜ?」
「新大陸……というか未踏の地か。
それで浮き足立ってるのはまぁ分からなくはないが……それに絡む利権は厄介事を持ってくるだろうな。
――歯車の城塞みたいな事にならん事を願おう」
マカライトは祝賀会に参加せず、のんびりとジーヴァと共に遊覧してみようかと考えた。
摂食できる草花が在れば喜ばしいと考える彼はアーカイブスの内容をふと、思い出す。
『ギエエエエエエエ』やサライラズ、アーカーシュ黒麦などの他に新たな食料を見付けることが出来れば鉄帝国にとっては食糧問題解決の大いなる一歩となるだろうか。
(……まあ、だからといって全てを得られるわけではないけどな……)
●
「浮島への探索へ行ってみようか、リュティス」
「探索ですか? ポメ太郎の運動も兼ねて行くのであれば良いかも知れませんね。私達より鼻が利くと思いますし、何か発見があるかもしれません」
新たな発見があるかも知れないとリュティスが応えればベネディクトは友人が出来るかも知れないと張り切るポメ太郎の頭を撫でた。
てこてこと歩いて行くポメ太郎の背を追掛けながら、そのリードを握るリュティスの背をベネディクトは微笑ましそうに眺める。
「あの子はどうだ。屋敷に馴染んでいるか?」
依頼でリュティスが保護をした『ルゥー』と云う少女はまだまだ屋敷に馴染んでいるとは言い難かった。
「流石にまだ遠慮している様子ですね。早く馴染むためにも名前をつけてあげた方が良いとは思っているのですが……」
名を求めた彼女に少し戸惑っていて現状は『ルゥー』と呼びかけているのだとリュティスは肩を竦める。
「俺はあの屋敷の主ではあるが、男で彼女にはまだ必要以上に近づかない方が良いだろうからな。
……君の好きな様に手助けしてやると良い。悪いようにはならないだろう」
ふと、リードがくんと引っ張られる。食い意地の張ったポメ太郎に「何を見付けたのですか」とリュティスは覗き込んで――星の形をした薄紫色の花。
「マナガルムですか」
「ああ、リュティスの名付けた花がこれか……」
綺麗だと笑った主人に「気に入って頂けたのならば良かったです」とリュティスは頷いた。
長閑な光景だと目を細めたラダはふうと息を吐いた。宴会の空気から少し離れてみるのも悪くは無いからだ。
「ここは賊の心配はないし、場所を選べば獣も警戒しなくていいし、調査ではあるがのんびり歩くにはちょうど良さそうだな」
「んーこういうのも嫌いじゃねぇけど、ずっとこういうトコばっかりだと老け込んじまうよーな気がしてねぇ」
景色に変化がない事を感じるのだとスティーブンがラダに返せば、彼女はふと彼の姿を眺めた。長耳は『隣人の森』に良く棲まう人種だ。
「そういえばスティーブンって一応深緑出身でいいんだっけ?
いや街中で顔を合わせるのが基本だから、あんまりイメージつかないけど。やっぱりこういう所の方が落ち着くものかと思ってね」
「ラダだってずっと砂漠ばっか見てるより、街にもいきてーだろ? 何しろここの街はどこも刺激的だからな」
確かにそうかもしれないとラダは呟いた。砂漠の都は華やかで、其れだけでも目は肥える。そうした刺激は少しでも生活にゆとりを与えるのだろう。
「見たことねぇ鳥も飛んでんな…いい羽根があったら土産用にコサージュでも拵えるか?」
「私は砂漠の生物なら幾分わかるけど森だとどれが新発見かもよく分からない。綺麗な鳥の羽でもあれば土産にはなりそうなんだけどな。
……ところで疲れてないか? 軽食と茶なら持ってきてるし一休みしよう。言っとくが酒はないからな?」
ちぇえ、とスティーブンは肩を宇s久米田。すっかりと見透かされてしまっている。仕方が無いと花を幾つか摘み取ってから「土産に花輪でも作るか」とスティーブンは腰を下ろした。
「空飛ぶ島なんてとってもロマンチックな場所ね。プルーちゃんも、ここに来るのは初めてなのかしら?」
「情報を探ることはあっても探索としてはないかもしれないわ? サニー・シー・ブルーの空が美しいわね」
一緒に散歩しましょうよ、とジルーシャはプルーが転ばないようにそっと手を取った。エスコートは基本なのだ。
「……ここにはアタシたちの知らない生き物もまだたくさんいるって話だし……はっ、ま、まさか幽霊は出たりしないわよね……!?」
「あら? ノース・シーの影があったかも知れないわ」
「もうっ! ね、ね、見て見て。あのお花、プルーちゃんみたいですっごく綺麗じゃない? なんていう名前なのかしら」
アレってステキじゃないと微笑んだジルーシャに誘われてプルーはゆっくりとした動作で花を見遣る。
この地に咲いた花は何かの変異種か、それとも特別な物であるかは分からない。プルーは「摘み取って拠点で聞きましょう」と提案した。
「そうね! ……ふふ。こういうの、楽しいわね。
なんだか、真っ白のキャンバスにそれぞれ好きな色を塗っていくみたいだもの♪」
「ええ、二人で埋めていくようで特別なベビー・ブルーだわ?」
「見た事もない不思議なものが沢山あるわ。アルエットわくわくしちゃうわね!」
「新種に命名ねぇ…いつの間にそんな話になってたんだか。
まぁ、もうこの辺は捜索され尽くしたんかね? 何か見つけられれば見つけたいところだが……さて」
アルエットの気になるモノがあればアルエットにも命名させてやりたいとジェラルドは考えた。
「ジェラルドさんは?」と問うたアルエットに「新種を見つけて名前まで付けられるなんてーのはロマンだろうさ」と彼は肩を竦めて、アルエットの後で良いと笑う。
「さて、迷子になんねぇように手も繋ごう」
「手をつないで? ふふ、アルエット迷子になっちゃうから心配してくれてるのね。この前15歳になったから、結構大人のレディなのよ?」
胸を張ったアルエットにジェラルドは「足下が危なけりゃ支えるのが友達だろ?」と笑った。
「アルエットにお兄ちゃんは……いないけど。
ジェラルドさんみたいな頼れる人が傍に居てくれるのは安心するわ。召喚されたとき、アルエットひとりぼっちで寂しかったもの」
兄のようだと笑ったアルエットに、ジェラルドは『妹を思う兄心』というやつなのかと一人納得する。
愛だ恋だは面倒で――アルエットと居ると落ち着く気持ちはあるが、変わらぬ関係も素晴らしいと思うのだ。それは悪いことでは無い筈なのだから。
「さぁ、新たな未知を求めて出発よ、琉珂っ!
まだ見ぬ生物に新発見っ! 朱華達が見つけたモノに名前を付けられるって面白い試みよね」
安全地帯で未知の生き物探しをしましょうよと心を躍らした朱華に琉珂は「えいえいおー!」と拳を振り上げる。
「朱華達の帰るべき場所はフリアノンだけど、外の世界で朱華達が名付けた何かが、名前が残るって事だもの。
それってとっても素敵な事じゃない? 朱華も一つ名前を付けさせてもらったのよ! その名もシュカニウム……」
シュカニウムと琉珂が反芻した所でがさがさと茂みが動く。
「今何か動いた気がしたんだけど……気になるわね……。琉珂、行ってみましょ!」
「ええ。危なくないところまで行ってみましょうね!」
走り出すお転婆娘二人が追掛けていたのは、ずんぐりむっくりとした羽の生えたハムスターなのであった。
アーカーシュは此れで二度目。ここでしか観測できない生き物や昆虫が居るのは喜ばしいとジュリエットは思い出話に華を咲かせる。
「前に仲間とアーカーシュヘご一緒した時は、キャンプをして、夜にマシュマロを焼いて食べたんですよ。
ギルバートさんとも食べたかったので、一緒に来られて嬉しいです」
「ふふ、俺もジュリエットと一緒にこの景色を見られて楽しいよ。お祝いも兼ねて一緒に飲むかい?」
ギルバートの言葉にジュリエットはぱちり、と瞬いた。
「お酒……ですか? そうですね、お祝いですし一緒に飲みましょう」と隣に腰掛けてジュリエットはふと物思う。
『誕生日』の時は少し酒に飲まれてしまった。限度を知らなかった彼女は出来るだけ狩れに迷惑を掛けないように――と考えて。
「ジュリエット、おかわりは此れだよ」
グラスに水を注ぎ込んだギルバートへと「ありがとうございましゅ」と裏返った越を帰したジュリエットは赤ら顔でそっと彼の手を握る。
「んふふふっ、やっぱりお酒って美味しいですね〜。
あ、あの……んん……前からぁ、聞きたかった事があるんれしゅ。私達は恋人同士れすかぁ?」
「ジュリエット随分と酔っているね……?」
酩酊する彼女は本音を話したのだろう。ギルバートにとっても彼女が恋人ならば嬉しく思うこともある――だが、酔ったままなし崩しというのは誠実でないし、狡い。可愛い彼女を見せたくないからと人気の無い場所に連れてきた自分の行動を思い返してからギルバートは笑った。
「今はまだ恋人ではないかな。けれど、君を独り占めしたいとは思うよ」
「んん〜、そうれすかぁ。れは、なれる様に頑張りますれ〜」
少し距離を詰めた彼女の頭を撫でてから、その表情はどの様な物だったのだろうかと――つい、気になってしまったのだ。
●
「よし、一緒に頑張ろうか」
「よろしくお願いし、ます」
屋外での情報収集のやり方を教えて貰う立場であるハリエットは緊張したようにギルオスを見上げた。
情報屋を目指すと聞いたからにはギルオスもしっかりとレクチャーしておきたい心算である。
「入植って、人が住むってことだよね。人が住むためには、何が必要だろう」
「入植かぁ……そんな事まで考えられてるんだね。けれどここは遥か天空だ。
何か異常事態があって補給が途絶えればそれだけで飢えが生じて全滅も……食料の継続的確保がなされないと危なそうだなぁ」
何が必要だと思う、と問うたギルオスにハリエットはふと、周囲を見回して。
「私なら『水』……水路? をここに引き込めるならって考えた。寝床も大事かな」
「良いアイディアだね。人が生きていくにはまずなにより水に食べ物があって――そこから寝床や衣類にも広がっていく。所謂衣食住の概念に繋がるね」
調査を終えたならばキャンプで少し食事をしながら、情報を語り合おう。そうして肩を並べて話す時間は得がたい物である筈だからだ。
調査と皆の手伝いに訪れたフーガは調査は『直感』でも出来るだろうかとむっちスクエアで行われる軍人達のキャンプに参加していた。
「……キャンプやろうとしてるのか? 楽しそうじゃねえか。
キャンプ飯ってやつも食いたかったし、オイラも混ぜてくれよ」
「おっ、入って行けよ! 何か食料は持ってきたか?」
気易い鉄帝軍人の言葉にフーガは配布されていた食料を携帯嚢より取り出した。
少しでも軍人達と距離を縮めておこうというのがスースァの考えであった。自己紹介をしておこうとよく響く声で自身の名とイレギュラーズという身分、そして酒を好むことを軍人達に告げ、『差し入れ』を差し出す。
「皆で頂こうじゃないか。お堅い宴もいいがね、こっちの方が楽そうだ!」
仲を深めて何かしらの情報を得ることが出来ればと『ヴォードリエ・ワイン』など酒類と『フリアノンポテト』を持ち込むスースァに「イレギュラーズが居ると旨い酒が飲めるな」と軍人達は赤ら顔で楽しげに笑った。
「ここにはどんなひとがいて、どんな風にすごしていたのでしょう? 前に見た遺跡の……魔王様とかと関連するようなものは、ないですよね?」
こてりと首を傾げながらもニルは軍人達が食事をしている様子を眺めるのはとても嬉しいと微笑んだ。
『おいしい』の顔を見るのは何時だって幸せなのだ。
「ふふ~ん♪ さてさて♪ 空飛ぶ島ですか! わくわくしちゃいますね! どうしましょうね~……。
この辺りはまで調査が全て終わっているわけでもないようですし、お姉さんも調査してみましょうか!♪
首塚とかあるかしらね??? んー? 首っぽい生き物とかいるといいですねぇ……」
相変わらずの様子で散策していた斬華はキャンプを行っている軍人に「食用になりそうな実や獣を持ってきましたよ!」と微笑みかけた。
『首』を目当てにしていた彼女は沢山の食材を持ち込んでにんまりと微笑んだのだった。
「精霊と仲良くやってたのなら結構だけど、エレメンタルパワー村みたいに放棄されるんだったら精霊たちを解き放ってあげるべきだと思うのよね。こっちはそんなんじゃないといいんだけど」
どうなのかしら、と町の跡地に思いを馳せるオデットは伽藍堂の待ちを眺めやる。
結局は『跡』が残っているだけだ。過去に何があったのかを精霊達に聞き出せれば嬉しいが、精霊が暴れ回っている可能性もある。
「深追いが出来ないのはもどかしいわね……。
もしかしたら予期せず離れないといけないようなことがあったとか、っていうのは考えすぎかしらね?」
人間の怠惰がこの現状を作り出したのならば、我慢はならないけれどと唇を尖らせた。
むっちスクエアでの調査を行っていた繁茂は調べ尽くしたわけでもないなら何か残っている可能性はあるだろうと鉄帝軍人の細やかな宴会が行われている間に周辺を見て回ろうと考えた。
「ああ……でも、少し位は宴にも参加しておきましょうか。
鉄帝の人達とお酒を飲みかわしましょう、情報の交換ができるかもしれません。
こういった時でじゃないと鉄帝の人達とお酒を飲むことなんてありませんからね」
楽しげにエールを煽っている彼らと話すのも屹度楽しいはずだ。
遺構には出入り口と思われる場所も幾つか存在して居るようだが――其方はまだ、これから。だろうか。
未だ謎の多いこの地は細やかながらの進展を経た。
これからどうなって行くのはか――『未踏』の地である現状はまだ分からないのである。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。
アーカーシュ探索も未だ未だ続きますね。皆さんにとっても新しく楽しい発見が訪れますように。
GMコメント
特務大佐も大喜びです。
●目的
鉄帝軍の祝勝会に参加しましょう
●持ち物
皆さんはアーカーシュに向かう際には鉄帝国から数日分の食料や嗜好品をある程度支給されています。キャンプ用品などもあります。
ですが、他にも料理や酒などを持ち込むことも可能です。
今回は鉄帝国軍が沢山のお料理を持ち込みました。安心して下さい、ちゃんと美味しいです。
●プレイング書式
一行目:【番号】
二行目:【グループ】or同行者(ID) ※なしの場合は空行
三行目:自由記入
例:
【1】
リリファ・ローレンツ(p3n000042)
●場所
空飛ぶ島アーカーシュです。
鉄帝国南部の町ノイスハウゼンの上空に発見された、伝説の浮遊島です。島の内部には遺跡がありますがほとんどが未知です。
皆さんが向かうのは遺跡の村レリッカ郊外。安全が確認された土地です。
【1】蒼穹教会街遺跡での宴会
パトリック・アネル特務大佐&グレートクイーンアネル3世が待っている宴会場です。
ラド・バウ闘士の他、鉄帝国軍人の姿が見られ、ここでは宴会と共に新生物発見への感謝のねぎらいや新種への命名権譲渡、今後の調査方針ヒアリングを行っているようです。
とても度数の強い酒が揃っており、料理も各種取り揃えられています。レリッカの住民も招待されているのか、何処か所在なさげにしているかもしれません。
(どうやら此処で料理を披露し、レリッカ住民に気に入って貰うことでアーカーシュでの農耕を行って貰えるようにと考えているようです)
【2】旅人の偽灯台、アルバからの調査
遠くを見通すことの出来る地で鉄帝国軍人と宴会半分調査半分で周辺の浮島への探索を考案してみましょう。
また、何らかの生物の発見などを行える可能性もあります。
自然が多く、まだ見ぬ生物も多く揃っています。余り深追いすると危険ですので、あくまでも安全なこの地だけの調査に留めましょう。
また、ワイバーンを使用して空中散歩を楽しむことも出来ます。
【3】むっちスクエア、まほろば町跡での更なる探索
イレギュラーズが命名したこの地でも入植を行えるのではないかと軍部は宴会半分調査半分での探索を行っています。
この地に貯蔵庫を作成し調査を円滑にしたいという考えもありそうですが……
「宴会って言ったって大佐がいたらやり辛いからさ!」という軍人達が此方でキャンプセットを持ち込んでわいわいしているようです。
この地でも何らかの新発見を行える可能性がありますが深追いは厳禁です。
●特殊ルール『新発見命名権』
浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
発見者には『命名権』があたえられます。
※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
命名権は放棄してもかまいません。
※放棄した場合には、何も起りません。
●同行NPC
・『特務大佐』パトリック・アネル
・『ラド・バウの皆さん』ビッツ・ビネガーやパルス・パッション、ウォロク・ウォンバットとマイケルなどなど
+夏あかねのNPC(亮、リヴィエール、琉珂、晴明&庚あたりはプレイングでお声かけ下さい)
・鉄帝関連の関係者(EXプレでの指定でも可です)
・無制限イベントシナリオですので、ステータスシートを所有するNPCが参加する場合があります。
(通常の参加者と同じように気軽にお声かけしてあげて下さいね)
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
村人達は信用できますが、なにぶんほとんど未知の遺跡です。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●Danger!
当シナリオには【村の外で大幅に活動した場合のみ】パンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
未知の場所であるからです。通常の交流をしている場合には関係はございません。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
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