シナリオ詳細
君に、光あれ
オープニング
●
――冠位傲慢を打ち倒した。
理想郷が罅割れ、生還を果たしたイレギュラーズに舞い落ちたのは一片の雪である。
もうすぐシャイネンナハトがやってくるのだ。鼻先に落ち着くその気配にイル・フロッタは「さむ」と呟く。
「……アドラステイアから、随分と長く……」
そう呟いたイルにリンツァトルテ・コンフィズリーは「そうだな」と頷いた。
聖剣はもう光を帯びていない、今は静まり返り、静寂が漂っている。
怪我人は此方へと声を掛ける聖騎士達や、各地での修復作業に追われる民の姿が見えた。
「……何だか、あの日よりも『まだ大丈夫』だと思えたのは……この地が大袈裟な程に戦火に見舞われなかったからだろうか。
それとも、『お前なら大丈夫だ』と背中を押して貰えたからか」
呟くリンツァトルテに「どちらもじゃないですか?」とイルは笑った。
「先輩は大体は不器用で、大体は……鈍感ですし、あと、大体、自信もなさ過ぎるし、それから」
「……手厳しいな」
リンツァトルテにイルは「ずっと見てきました」と笑った。
「冠位強欲が襲ったあの日よりもずっと前から。騎士になった頃から、私はあなたが憧れだった。
コンフィズリーという家のことなんか、どうでも良い位にあなたの事に憧れていました。
その瞳が見据える希望が見て見たかった。正義を貫くあなたの剣のように私も――」
そこまで言ったイルにリンツァトルテは小さく首を振った。
「イルダーナ・ミュラトール」
「はい」
「……ミュラトール家は、どうすると?」
「今、聞くんですか。うーん、多分、この一件がありましたから、きちんとミュラトールの養女となるかと」
その手続きを踏むことになるから忙しいだろうとイルはそう言った。ミュラトール家の令嬢ともなれば貴族だ。コレまでのような大雑把な振る舞いは許されないだろう。
屹度、作法も教え込まれる。その辺りは友人達に頼むつもりなのだとイルはへらりと笑った。
「そうか、ミュラトール家の養女、か……」
「どうしました?」
「いや……」
何かを考え倦ねた様子のリンツァトルテは呼び掛けられたことに気付いてから「また後で」とその背を向けた。
――貴族令嬢ともなるならば家同士の婚姻になる。おいそれと感情だけで恋愛などしてはならない。
などと、ややこしいことを彼が考えて居るのは完璧に分かり易い程の『いつもの癖』なのであった。
●
「こっちよ、こっち」
カロル・ルゥーロルゥーは手招いた。しんと静まり返った大聖堂にやってきた彼女は「此処知ってる?」と問う。
サン・サヴァラン大聖堂はエンピレオの薔薇を起動するレーテー石や元・枢機卿アストリアの本拠であった場所だ。
その中庭の辺りにまでカロルはイレギュラーズを呼んだ。
「ここ、私が処刑されたあたり。あ、聖女ジョークよ」
からからと笑った彼女は『ただの少女』だ。竜の心臓によって生かされている『遂行者』でしかない。
そんな彼女は言うのだ。
「遂行者って、まあ、私にとっては友達だったのよねえ。マスティマも、サマエルも、アドレもそうだし、皆ね。
ルスト様のことは、まあ、吹っ切れて頑張るぞ~とか、……まあ、どこまでホントか分んないけど思ってるの。
でも、あいつらのことって、そう簡単にさ、どうでもいいよとか、言えないわよね。
だからね、此の辺りに、お墓とか作れないのかしら。聖遺物の欠片とか使えば、弔えたりしないかな」
カロルはぽつりと呟いた。
――貴様は阿呆か。大概にしろ、カロル。
アンタって何時も叱ってたわよね。ウザかったけど、その声って思い出すと聞きたくなるもんよね、マスティマ。
――君に薔薇を一輪贈ろうか、ルル。この花瓶に活けておこう。
アンタってその性癖が無かったら良い男だったのよ。ホントよ。まあ、私に睨まれると興奮するのがダメなのよ、サマエルって。
――どうしたワケ? カロルってバカだな。
アンタホント口悪いし、ガキのクセにそういう事ばっか言ってさあ。あーあ、アドレ、お前も、どうかしてるわよ。私と一緒。
それから、それから……全員のことを思い浮かべてから、カロルは静かに目を伏せった。
「――主は真実、正しい存在である。わたしたちが罪を犯したとき、主は必ず見て居る。
救済の光は天より雪ぎ、全てをきよめてくださることだろう。
疑うことは、罪である。すなわち、疑わず願うことこそがわたしたちに与えられた使命である。
願いなさい。祈りなさい。わたしたちの未来を開く光の再来を待ちなさい。
それは波となり、全てを覆い尽くす。
わたしたちがあるがままに生きて行く為に、主は全てを導いて下さるのだ。
……導かれたままに生きてきた私達は、どうしましょう。ううん、こんな気分あれね。
あいつ、えーと、なんだっけ、シェアキム、茄子子の好きな男がパーティーしてくれるって。今は肉の気分だわ、行きましょ」
緩やかに降る雪の下を少女は征く。
あなたがたはむなしい世界を生きてはならない。
わたしのみことばには知恵と知識のいっさいがこめられている。
偽りの言葉に惑わされることはなく、わたしの言葉を聞きなさい。
あなたがたがゆるがず、わたしを信じるならば天の言葉が降ることだろう。
――アラト書テーモスへの手紙 第三章一節
- 君に、光あれ完了
- 聖なる哉、天義に平穏が訪れました
- GM名夏あかね
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2024年01月11日 22時05分
- 参加人数61/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 61 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(61人)
サポートNPC一覧(3人)
リプレイ
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長くハードな戦いが続いた。市中に溢れる夥しい死の気配も漸く拭いされられた頃だろう。騎士達の労いの声を耳に為て昴はどかりと椅子に腰を下ろす。
「この戦いでは私も含めて多くのイレギュラーズの活躍があって勝利を掴めた――健闘と勝利に乾杯!」
昴に騎士達が喜びの声を上げる。普段は肉を好んだ彼女であれどあっさりとした天義の料理も偶には喜ばしい。
疲れた体に染み入るものがあるのだ。量も沢山食べる事が出来る飢えに、滅多に食べないからこそ、この機会に味わうことも出来よう。
「ゆっくりと体を休めなくてはな」
「そうよ」
にこにこと笑っていたカロルはある程度のボディチェックを受けに騎士団にやってきていたのだろう。
「冠位傲慢との戦いもようやく終わり、カロルも――ルゥも普通の女の子として生きていけるようになって、良かったわ。
ルゥも、これから色々な季節の祭典に足を運んだり、色々な国を見て周ったり出来るのは楽しみじゃないかしら?」
「あら、アルテミア。そうねえ。結構心配してくれていたし」
アルテミアを見詰めてからカロルは小さく笑った。思えば彼女にも随分と気を揉ませた頃だろう。
アルテミアは「まぁ、まずは大名の――ルル家さんの付き添いで豊穣に向かうのかもしれないけれど」と付け加えてから「もしも幻想に訪れる事があれば、その時は色々と案内させてね?」と穏やかに声を掛けた。
「おまえの家にも乗り込まないと行けないしねえ」
「ええ。そう、それでで……いつまで私の胸と話しているのかしら? そんなにガン見しても、ルゥの胸は大きくはならないわよ?
ルゥはその慎ましい胸が魅力の一つなんだから、ない物ねだりするものじゃ……」
「は? うしちちめ。おまえのちちをもいでやろうか」
「――ッ、だぁれがうしちちですってぇ!?」
アルテミアの声に騎士達が笑う。「揉んでやろうか」と手をわきわきとさせるカロルにアルテミアは「もう!」と唇を尖らせた。
それだけの騒がしさにヤツェクはからからと笑う。この喧噪は心地良く、屹度仲間達も聞きたいものだっただろう。
「さて、勝利と追悼のためなら、曲は必要だろ? おれは一杯酒を貰えりゃ、それでいい。
ギフトと演奏で、この戦いで逝った人々の生き様をかたる歌を奏で続けるとするか。
……若い奴らが、笑って次の生にいくなり、天国に行くなりできるよう。
誰も奴らのことを忘れないようにするように。覚えられているならば、そのあいだは、そいつは不滅だ」
ああ、忘れることはないだろう。『ウィザード』――彼と過ごしたアーカーシュの日々も、酔っ払って倒れた彼を見た日だって。
実に彼らしい生き様であったのだから。響く音色に上座に鎮座した聖盾は喜んでいることだろうか。
「さ、喰え喰え!」
ゴリョウはからりと笑った。並んだ料理を食べる騎士達は目の前の盾が何を示しているかよく分かって居ただろう。
ゴリョウが悼むのはタイムと、そして、好敵手として殴り合ったセレスタン=サマエルだ。どちらも大切な友であった事に違いない。
「さて……二人の好物は何だったんかねぇ。
ぶはははッ、そんな簡単なことも知らんうちにどっちにも先に逝かれるたぁ思ってなかったねぇ」
「タイムは分かんないけど、サマエルは、そうねえ、アイツが連れてたガキンチョに聞いてみたらどうかしら」
カロルはゴリョウの料理を摘まみ食いしてから「良い案でしょ?」と言った。
「ああ、そうか……成程」
頷いたレイチェルはぱちくりと瞬いた。ジル少年ならばセレスタン=サマエルの事に対しても詳しいだろう。リンツァトルテも「彼を探そうか」と頷く。
「ああ、そうだなァ。この戦いが終ったら、ゴリョウの作った飯でパーッと宴会したいと思ってたンだ。
セレスタン=サマエル・オリオール、天国のお前にもこの声が届く様にな?
俺は輪廻転生を信じてる……と言うか、俺自体が1度転生した身らしいからなァ。
アンタも必ず縁があるこの地に戻ってくるって信じてるンだ。吸血鬼だから不老だしな、待ってるぜ?」
笑うレイチェルの傍に駆け寄ってきたイルは「レイチェル、酒を掛けるイベントがあると聞いたんだ!」と眸を煌めかせている。
「え? ああ、はは、ビール掛けはしないから安心してくれ」
「しないのか?」
ぱちりと瞬くイル。その様子を何時もならば咎めるセナ・アリアライト、改め、セアノサスはしくしくと泣いていた。
パーティーは柄ではないが、兄が働いている場所だというならば利用できるならば利用しようと考えて居た星穹は「お兄様!?」と困惑していた。
「あの、ヴェルグリーズ。あの突進してくる凄まじい形相のお方はうちの兄で違いはありませんよね?」
「ああ。確かにセナ殿だが……」
酒臭いと星穹は思わず言った。ヴェルグリーズは祝盃についつい勢いを増したのだろうかと「義兄上」と呼び掛ける。
「あ、義兄上……? 少し飲みすぎでは……ワイン数杯しか飲んでない ? そう……。
なるほど、これは星穹の兄上だ…。義兄上、とにかく少し休めるところにいこうか。星穹は水を取ってきてくれるかな」
「そんなところで血縁を感じないでください、私はこんなに弱くありませんし……ともかく、ええと、お兄様をお願いします。私は水を……!」
兄は酔っ払うことこうなるのだろうと星穹は頭を抱えた。ヴェルグリーズは穏やかに微笑み泥酔する義兄の顔を覗き込む。
「義兄上には改めての挨拶と家族になってほしいことを伝えに来たんだけど……。
これからゆっくり家族になっていきたい?そう言ってもらえるとこちらも嬉しいよ」
「えっ、良いのか、うぐ……ぐすっ……セラスチューム……俺の知らない所で嫁に言ってしまうだなんて……」
泣き出すセナにヴェルグリーズは慌てて「嗚呼、泣かないで義兄上……」と呼び掛けた。
「婿殿のことを俺は余り知らなくて……」
「俺もこれからキミとゆっくり親交を深めたいと思っているよ。取り急ぎ、年明けには子供達とも会ってもらえると嬉しいな」
「お兄様。
空と心結にシャイネンナハトの贈り物をありがとう。二人も会いたがって居ましたし、勿論ヴェルグリーズとも仲良くなってくれると嬉しいです」
穏やかに微笑む星穹を見て更にセナの涙は濁流と化した。セラスチュームと泣き出す兄に星穹は「こんなに人を振り回しておいて、お兄ちゃんったら……」とぽつりと呟く。
「仕方有りません、ヴェルグリーズ。宿にお兄様も連れ帰りましょう。
宿で待っている心結と空には泥酔したお兄様を見せることになりますが、そうすれば私達も躊躇いなく楽しめますもの。
さあ、ヴェルグリーズ! 飲みますよ!」
「ああ、そうだね。騎士団の人には伝え――って、え……キミも飲むのかい……。ほどほどにしておいた方が……いや、今日くらいは仕方ないかな」
この後、ぐでんぐでんになったグラヨール兄妹が出来上がったのは言うまでもなかった。
その翌日に、セナと星穹はメイメイに誘われた。ヴェルグリーズはライナスを呼び出して、向き合う事にしたのだ。
「ブーケさま……マートルさまです。あの子の帰りたかった家は、もう無いのかもしれなくても。
ライナスさまにちゃんと、会わせてあげなくては、そう思ったのです。だから、どうか、会ってあげてください」
花で埋め尽くした棺で少女は嬉しそうに眠っている。彼女は遂行者じゃ無いからこそ遺体が遺ったのだ。ライナスは「マートル」と呼ぶ。
なすらなかった一人の少女。大事な妹に手を伸ばして彼は噎び泣く。守り切れやしなかったのは己が弱いからだ。
「ロイブラックはもう居ない。当時を知るのは……ライナスさまだけ、でしょうか。……まだ気がかりな事はあるけれど。今は、今だけは」
マートルの為に祈って欲しい。彼女の名を呼んで、どうか、おかえりと告げて――
●
「トー横キッズもたまには良いアイデアを出すのじゃな。感心感心。かかる費用はすべて我が妹、夢見ルル家が出そう!」
「待って」
ルル家が「妹じゃないですけど」と夢心地に言うが、兄(ではない)は止まらない。
「うむ、うむ。言いたいことはわかる。そうしたいのはやまやまじゃが、どうすれば最高の墓を用意できるかわからない、じゃろ?
なーーーっはっはっは! 心配無用! 麿の伝手(友達栽培キット)によって、石屋に話をつけてやるからの。
最高品質の石を用い、熟練の職人によって、これ以上ない墓石を作ってもらうのじゃ」
「友達栽培して作って、それってマジで大丈夫な奴? やばい奴じゃない? やばい奴でしょ? ねえ、おい、聞いてんのか、兄」
カロルが夢心地の腕を掴んでいる。その様子をルル家は何とも言えぬ顔で見詰めていた。
「なんじゃ~ルル家~そのお顔は~! おじいちゃんおばあちゃんからもらったお年玉、貯め込んでおるのは知っておるのじゃぞ」
「何の話です!?」
騒がしい彼等を見詰めてベネディクトは一つ咳払いをした。足元のポメ太郎が困惑した顔で夢心地とカロルを見ている。
「ああ、カロル。今は大丈夫か? ポメ太郎が会えてうれしいのか周りをぐるぐるしているから、良ければ遊び相手になってあげて欲しい」
「ええ。犬。相手になるわよ」
堂々と犬と呼び掛けたカロルにポメ太郎がぱちりと瞬いた。
遂行者の墓は送り出すために必要なものだとベネディクトは考えて居た。未来をその手で変える権利を彼等から勝ち取ったのだ。その事実を忘れないためにこの場に遺さねばならない。
「戦場では見かけたが声は掛けず仕舞いだったからな。戦いの傷などは大丈夫なのか、カロル」
「まあまあ元気よ。驚くけれど」
笑うカロルにベネディクトは頷いた。ポメ太郎を抱き上げたカロルが「こいつ太ってんじゃないの」と告げる言葉に小さく笑う。
「これから考える事もあるだろうし、大変だろうと思うが君を引っ掴んだ連中がちゃんと責任は取ってくれるだろうから安心してくれ。
俺も必要があれば茶くらいなら付き合えるだろう」
「じゃあ、茶の約束をしましょう。この犬のダイエットも兼ねてね」
ポメ太郎の怯えた声を聞いてからサクラはひらひらと手を振った。
「やっほー、ルルちゃん。元気? 体の調子は問題ない?」
「ああ、疲れたから掃除はおまえの仕事ね、サクラ」
もう、とサクラが肘で小突けばカロルがからからと笑う。セレスタンや祖父を此処に立てようかとサクラは思い悩んでいたのだが――
「でも良いかなって思って。私はお祖父様が素晴らしい聖騎士だったって信じてるから。何恥じる事もないなら誰が何と言おうと家系の正式な場所にお墓を建てちゃえって思ってね!」
「ああ、騎士としてよね」
「そう。二人とも恥じやしない。正しい騎士だった。
何せ私はロウライトの娘だよ? 自分が信じる正義を通せなくてロウライトの娘は名乗れないからね!」
そう想うからこそ、好きに出来る。だから、カロルだって自らを貫き通して欲しいとサクラは笑った。
中庭に遂行者の墓を作るというカロルの案を聞いてからゲオルグは「どの様な形であったとしても繋いだ命である事には変わりないな」と頷く。
「カロルよ、相談したいことがあるのだが」
「はい?」
慌ただしく動いていたカロルは振り返ってからゲオルグをじいと見た。イケてるオジサンに呼び止められちゃったとジョークを言う彼女にゲオルグは一度思い悩むような仕草を見せてから言った。
「ルストの墓は、どうだろうか。ルストによって齎された悲劇は確かに多いが、ルストがいなければ、遂行者達は存在することすらなかったのだから。
存在そのものだけでなく、それに関わる全てのものを否定されることが、どれほど悲しいことなのか、私達よりも余程カロルの方が知っているだろうからな」
「……良いのかしらね」
カロルは困った様子でそう言った。勿論だと頷くゲオルグはベアトリーチェのものも一緒に作ればどうかと提案する。
「メッチャ嫌がりそう」
「ああ。当人達は嫌がりそうだがな」
思わず顔を見合わせて笑ってから、カロルは呼び掛けに答えるように背を向けた。
「なあ、カロル。マスティマの墓はどうする」
「作りましょうね」
牡丹は頷いた。ルストを相手にするときハッタリとしてロンギヌスのガワを借りた。マスティマの墓参り位しなくては彼には叱られそうだ。
……いや、最も、墓参りしても『死んでからすらまた貴様か!』などと言い出しそうなのが彼なのだが。
「こっちからはもう面を拝むことはできねえんだ。好きなだけあの世で文句言いやがれ」
マスティマの名を耳にしてからルブナットは「カロル君」と声を掛けた。
「弔いか。良い考えだな。とはいえ天義は異教の地である故、私が手を貸せることは一つしかないのだが、聞いてくれるかな。
実は、私とマスティマ君は――兄弟だったのだ」
「え?」
カロルはぱちくりと瞬いてからルブラットの至近距離へとやった。まじまじとペストマスクを眺めて「それってマスクじゃなくて皮膚ってこと?」等と問い始める。
「……いや、今のは私の言い方が悪かったな。彼とは同じ教会に属していた同胞だったのだよ」
「あ、ああ、そういう」
「ああ。あの丘で十字架を背に、彼なりの理想を口にしたとき、全てが理解できた気がした。一方的な仲間意識だったのだろうがね。
彼の理想を継ぐなんて分かった口は聞けないけれど、彼のことは私も忘れないでいたいと思っているよ。
それで、私は彼が望む場所に辿り着けるよう、此方での祈りを捧げてあげようと考えている。
槍の葬儀は初めてだが、上手くいくよう努力してみせるつもりだ――任せてくれるかな?」
「ええ、お願いするわ。言葉を届けたい子も居るみたいだから」
カロルの視線の先には牡丹が居た。承ったとルブラットは小さく頷く。
「……見てたかよ。救ってやったぜ、天義。
てめえの言うところの嘆き、悲しみ、涙。一つ終わらせてやったぜ? てめえも使ってな。
……分かってるよ。まだ、一つだ。世界にゃいっぱい悲劇がある。あり続ける。
だとしても。罪ある世界でもそいつを終わらせ続けることはできる。
だから見ていろ。最後まで折れずに進めと言うのなら。最後までオレ達を見ていな! ――オレ達はてめえを二度と絶望させやしねえよ、マスティマ」
愛故に死んだ者に遺られた。屹度、どこか――いいや、どこまでも似ていたのだろう。
(だからこそオレはてめえがムカついた。……まっ、この辺は言わぬが花だよな、ばーか。
最後まで見ていな、つったからな。あばよ、とは言ってやらねえよ。最後までオレと付き合え)
遂行者の墓を作るというならば雲雀はその手伝いをしたかった。手伝いを申し出たときにカロルは「嘘」と眉を寄せたのだ。
「俺も手伝うよ。冠位傲慢は最期まで彼らを見ようとしなかった。
彼らも信念あって戦ったということを、敵として倒した俺たちは絶対に忘れちゃいけないことだ。
けど、意外って顔するな。確かに遂行者は敵で、相容れないから戦ったよ。変に同情するよりもその方がお互い楽でしょ?
歩み寄れるかもしれない希望を持っても、それが不可能だったら互いに辛くなる。でもイレギュラーズのみんなは優しいから、絶対に放っておかない。
……そんな優しい人たちの手を汚すのは君も嫌でしょ? カロル」
「てか、優しいから鬱陶しかったのよね、だから嫌いだった。そうやって、傷付くのは……さあ」
雲雀は「君も大概だけれど」と付け加えてから真っ直ぐに向き合う。
「だからこそ俺は君に謝らないといけない。そちらの気も知らないようなことを言ってすまなかった」
「はあ!?」
深く頭を下げた雲雀にカロルは慌てた様に「いきなりなによ!」と周囲を見た。そんな、実に人間らしい仕草に雲雀は肩を竦める。
「別に許しを得たいワケじゃない。どんな理由であれ非礼は詫びるべきだ、そう思ったから謝りたかったんだ」
「雲雀、でも、おまえは私のこと嫌いでしょう」
「……? 『遂行者カロル』のことは今も嫌いだよ。でもここにいる君は『普通の女の子』でしょ?
まあいきなり軟化はキモいかなとは思うから、棘は全部は抜かないけど。あとそもそも最初に嫌いって言ってきたのはそっち」
今となっては可愛い反応だと揶揄う雲雀に「私も遂行者の私が嫌いなお前は嫌いよ」とカロルは指差してから「でも友達ってんなら嫌いじゃないわ」と笑った。
多くの遂行者と戦い、最後を見てきた。互いにイレギュラーズとして、遂行者として、戦った。
トールはそれぞれに信念があり、背景があり、退けない理由があったと理解している。彼等の行ないに怒りを覚えたことはあっても個人的な恨みは抱かなかった。
「いくら世界を破滅へと導こうとした遂行者と言えど……。
きっと人並みに喜び、怒り、悲しみ……そうして散っていった者も少なからず……いいえ、そういったものが大半なのでしょう」
小さく首を振ってから妙見子は「だからこそ丁重に弔わないと、ですね!」とトールの背をぐいぐいと押した。
「あら、ルルちゃん、えっとキャロちゃんって呼んだほうがいいのかしら? お久しぶりね」
「メリーノちゃん」
カロルが顔を上げてから手を振った。その仕草も、その笑顔も、戦場のものとは違って見えたのだ。
「良いお顔だわ よかった 晴れ晴れしてる。
ねえ、よかったわね、決して犠牲がなかったわけじゃない わけじゃないけれど。少なくとも、キャロちゃんは救われたんでしょ?」
きっと、そうならば正解だ。カロルは「そうよ」と答えられなかった。それは乙女の僅かながらの惑いであったのかもしれない。
「遂行者ちゃんたちも、キャロちゃんのお友達みたいなものだもの、きちんと送ってあげましょ。
ほら、こんなにたくさん、今のキャロちゃんについてきてくれる人がいるのよ。でも、ちゃんと、キャロちゃんが虐めた子にも、謝りに行かないとね うふふ」
「あー……」
眉を寄せたカロルにメリーノは「それじゃ、グウェナエルちゃんのお墓を見てくるから」と告げた。幸せな夢を見て居て欲しい。苦労性のその人は、きっと困った顔をして居るだろうけれど。
「謝るねえ」
「困った顔をして居ますねえ。ああ、ルルちゃん。知ってますか? 薔薇って本数によって花言葉が変わるんですって。
献花には向いてないかもしれませんが……そうですね、捧げるとしたら5本の白薔薇がいいんじゃないでしょうか?」
妙見子に「煌びやかで喜びそうな奴が居るわ」とカロルは周囲をきょろりと見回した。当たり前の様に、友人のように彼女は振る舞っている。
「……必死だったとはいえ彼女には色々と不躾なことを言ってしまいました、ごめんなさいね。
まだ割り切れないとは思いますが、きっと貴女の未来は明るいと信じてますよ、ルルちゃん……キャロちゃんの方がいいんでしょうか?」
「どっちでも。おまえのこと、私も羊羹ちゃんって呼ぶし」
妙見子はふっと小さく笑みを零した。本当に『人らしい』。彼女は妙見子を人だと言った。ならば、妙見子も人として彼女に接するのだ。
「ねえ、キャロちゃん。きっとこれから辛いことも悲しいこともたくさんあるでしょう。
けど今の貴女の傍にはこんなにたくさん支えてくれる人が集まっている……誰も貴女を聖女と呼ばない、友人たちが。
だから弱音くらい、吐いてもいいんですからね。それでも辛い思いをしたのなら……まぁ尻尾くらいはもちもちさせてあげますよ!」
「おまえの尻尾は私の物にしとかないとね」
なんですかそれ、と妙見子はおどけるカロルに笑って見せた。
「天義が決着した今、遂行者に加担していた貴方たち”再誕の救済者”と僕が明確に敵対する理由はなくなりました。これからどうするおつもりですか?」
「……冠位魔種を倒した君達と敵対するほど我々も愚かではありません。
しばらくは大人しくしているつもりです。遂行者として名乗った事もありましたが本腰を入れて活動していたわけではありませんからね」
ヘイエルダールは静かにトールを見た。その姿は良く似ている。同じアシェンプテル姓を名乗る者同士、思う事は在るだろう。
「ヘイエルダールさん」
「年が明けたら改めて対話の場を設けるとしましょう。次に会う時は互いに肩書を捨て、血の繋がった家族として……。
ベルシェロンとヴィルヘルムを交えた兄弟4人でテーブルを囲みたいものです。ごきげんよう……我が末弟、トール」
かつり、と靴音が立てて遠離る。トールはただその背中を眺めて居ることしかできやしなかった。
(テレサ)
一時は味方だった。仲間だと言えるか。美咲は墓を眺めて居る。テレサのその死ぬ間際に見出された救いはなんて呆気なかったか。
(……結局、『この世界に命は生まれるべきではない』という言葉を私は否定できなかった。
私が戻ってきた理由は連れ戻そうとした人がいたことと、ローレットが優勢だった、この2つ。別に強い意志があったわけではない。
でも、そういえば機関をクビになった後、何人かから次の仕事にって声をかけられたっけ。
ディアナ氏が元の世界に変える方法も見つかってないし……やること多いしもうちょっと人生頑張るかぁ)
美咲は小さく笑った。あの美しく笑う人は、どんな顔をするだろう。それも、また、死後の楽しみにとっておこうか。
「私、生きなきゃいけないみたいなんで……地獄に落ちたときにでも『それ見たことか』と嘲笑ってください」
●
遂行者等の墓を建てる手伝いだと石を運ぶ慧は「花の種を植えてもいいっすか」と問うた。
「ええ、おまえが選んで遣って」
「あと、アルヴァエルの墓も建てるなら、隣にもう一つ欲しいんすけど……」
妙な縁があったのだと慧はファミリアーの塞ぎを連れて行き、『アモル・カリート』と名付けたのだと言った。
聖痕が与えられていたため、アルヴァエルが逝った後はしばらく面倒見ていたが、ルストの死とともに消えてしまったのだ。
「お互いに気に入ってたみたいですからね、こっちでも一緒じゃないと寂しいでしょ。
ウサギを巻き込んでしまった、遂行者を倒すことを選んだ。後悔はしてないすけど」
「いいじゃない。ウサギも喜ぶわ。人参でもやる?」
「ああ、よければ」
慧は緩やかに頷いた。
「ズィールのお墓を作りに来たよ。カロル、ここでいいかな?」
「ええ。セララ。ズィールって、えーと、ネズミ」
「うん。ネズミは遂行者で、大切な人達を復活させるために遂行者になったんだよ。
亡くなった人達を諦められなかっただけで、悪人じゃ無かったの。ボク達とは何度も争ったけれど最後の最後で友達になれたんだよ。
だからボクはお墓を作って友達のために祈りたかったんだ。……安らかに眠ってね、ネズミ」
お友達を送る、それはきっと苦しい事だろう。カロルは眉を寄せ、目を伏せる。
そんな彼女達の耳に響いたのはロジャーズの声音だった。
「HA――! アーノルドに墓は不要だ。正確には、此処に奴の墓は不要だ。
奴は私の一頁として『此処』に在り、奴には奴だけの居場所が在る。残念だが、奴を帰す気も還す気も私には『無い』のだが!
青も赤も黄金も、最早、私の掌の中だ。このロジャーズ=ラヴクラフト=ナイアのものだ。
キャンディの甘さも、噛み応えも、永劫のものだと誓ってやる」
ロジャーズは真っ直ぐにカロルを、そしてその向こう側に存在する墓を眺めた。
「さて、貴様、一応『懺悔』でもしておこうか、私こそが神故、懺悔も糞も無いのだが。
私は『彼』に心臓を渡した、これは愛だ。『貴様』は私に心臓を渡した、これは何だ……莫迦々々しい、何が神だ。私も人間ではないか。
彼にも貴様にも理解させられた、私は最早、世界を滅ぼすまで滅べない! ――Nyahahahahaha!!!」
からからと笑ったロジャーズに「ほんと、良い『彼女』を持ったわねえ、アイツ」とカロルは呟いた。
「カロル。俺があの野郎にブチギレてた時、何かしら言おうとしてたな。
――その内容によっちゃあ、俺は礼を言わなきゃならんかもしれない。あいつの肩を持とうとしてくれてありがとうってな」
キドーに声を掛けられてからカロルは「意外ね」と言った。
「おまえは踏込まれたくないだろうけれど」
「ご明察。ただ、あいつと俺の、俺らの付き合いは俺らのモンだ。あいつとの思い出も俺らのモンだ。俺の感情は俺だけのモンだ。
だから、礼以上の事は何も話すことはない。カロルにとっても話された所で、だろ――でも大人として義理は果たさねえと。今や社長だしな」
キドーはカロルにそれっきり言って手を振った。思えばあの時遮られて良かったのだろう。
割り込まれていれば今だってカロルに対して冷静に接することが出来ていたかは分からなかった。自らの問題に首を突っ込むなと、怒りを露わにして居た可能性だってあるのだから。
「お墓、か。作ろうか」
彩陽は作業する者達の背を眺めてから、キドーの背を見詰めて立っていたカロルに声を掛けた。
「作ってもええかな。犠牲者やった奴も多いやろうし。……エクスに、ティツィオに致命者の方の『イズマ』に、ぐ……じゃなくてキリエスに。……一応ヘンデルも入れといたろか。その辺の連中纏めていけてると良いな。神様のところにさ」
彩陽は遂行者達一人一人の名前を呼んでからさて、どうしようかと考えた。
「キリエスの奴に神様なんていないって言ったけど信じる所にはおるんとちゃう。神様って奴。
自分にはおらんかっただけやったから。ただ、それだけ。
クワトロ君は……また会えたらええね。後はネロはんも。何処かにいると信じてる、会えると信じてる子らの名前は刻まんし作らん」
カロルの視線を感じてから「初めまして、カロルはん。まともに会うんは初めてやろ?」と声を掛ける。
「そうね、友人としては初めましてで構わないわ。彩陽。祈ってあげてね、私はそれも許されない気がしているから」
目を伏せるカロルを見て、マリエッタは彼女がいるならば己だってこの場に踏込んでも許されるのだろうと一歩ずつ進む。
(……死血の魔女が、こんな所にまで踏込んでしまうのは、良いことなのでしょうか。でも、遂行者のカロルがいるなら――)
一つ唾をごくりと飲み込んだマリエッタの背をセレナがぽんと叩く。
「死血の魔女だろうと、冠位魔種を倒して天義を救った事には間違いないんだから、堂々としてていいと思うわ、マリエッタ。
マリエッタは、わたしがルオを殺した事を知ってるのよね。だったら、わたしも命を終わらせた責任を取らなきゃいけない……勿論、初めから、お墓作りを手伝うつもりで来たんだしね。良いかしら?」
「ええ、戦う相手で直接じゃない相手もいたとしても私は多くの遂行者達を終わらせた事に違いはありません」
マリエッタはゆっくりと歩き出した。セレナはじいとその背中を眺めている。
ルオはマリエッタの罪の鏡写しであった。マリエッタが悪の儘、強欲な儘であったならば屹度彼女は彼のように変化していただろう。
だからこそ、許せやしなくて、あの時は感情のままに殺してしまったのだ。それを少しだけ後悔していた。
(……マリエッタの罪ごと、強引に押し潰してしまったような気がするから)
マリエッタはセレナのその胸中を知ってか、知らぬか、そのままにして向き合った。
「最後まで可哀そうだったヘンデル、同じ目的を持っていたルオ、誇り高きマルティーヌ、似たもの同士で……友人になれたオルタンシア。
私を恨み……けれど救ってあげられたグウェナエル。ルストに関しても直接ではなくても私が終わらせた。
こんなにたくさんの可能性を摘み取った。だからこそ彼らの墓を作ってあげたい。彼らが生きた証を……ここに残す為にも――本当に、生きるのは大変ですよね」
「ほんとよ」
カロルはマリエッタに肩を竦め、戯けて見せた。マリエッタは一度目を伏せて「カロル、貴女には謝らないと」と声を掛ける。
「私は貴方に一つ謝らないと。聖竜の力。貴方とアレフに還すつもりだったのに……結局使わざるを得なかった事を。
少しでも残っていたら、貴方とアレフが共に在れたのではと思って……謝るのはこれっきりですけどね」
「良いのよ。私の中にアレフの気配が僅かにある気がする。これが、命そのものだからね。ひとつになったの」
アレフは消えてしまっただろうけれどとカロルは目を伏せた。それだけでも、一つの命が消えたようなものだ。
「ねえ、カロル。アレフの墓を覇竜に建てに行こうと思っているんです。
貴女さえよければどうですか? 僅かでも残滓があると信じて……あの地に葬送りに行きましょう」
「じゃあ、世界が滅びなくなったらね。平和になったら返してあげましょうよ。その方が、アレフは喜ぶわ。約束が出来たわね、マリエッタ」
にいと唇を吊り上げたカロルにマリエッタは責任重大ですねと困ったように笑って見せた。
「えっと、カロル……って呼んでいいんだっけ。それとも、カロルさん、の方がいい? ほら、ずっと年上の筈だし……なんて」
「カロルで良いわ、セレナ」
有り難うと返してからセレナは視線を右往左往とさせた。どうにも、気まずさが滲んでいる。
「わたし、マリエッタの事になると頭いっぱいになっちゃうのは……見せちゃったわよね。あの時は不躾でほんとにごめんなさい!
言われた通り……わたしなりに大事にしたいと思う。……ねえ。わたしとも、そのうちお喋りとかさせて欲しいの。
女の子として、もそうだし……いまは、わたしの中にも『聖女』がいるから……なんてね!」
「構わないわ。私、友人はそれなりに大事にしてやれる方の女なのよ」
楽しげに笑うカロルの横顔は、涼やかにも見えた。イズマは此れまで関わって来た遂行者達を思い返す。
彼女のように、生き延びることが出来なかった者達だ。
(アルヴァエル、リーベ、ティツィオ、サク、アーノルド、チェイス、グラキエス、ロイブラック、ヘンデル、ダラス……。
遂行者とは少し異なるがブーケとイズマティヌスも含めるか。……一人一人に抱く気持ちが違いすぎて、なかなか整理がつかないな)
何時までも悩んでは居られないからこそ、見送りにやってきた。パイプオルガンを演奏し、一人一人に音色を捧げ続ける。
そして彼らを討った先の未来も弛まず生き続ける事を誓いたいのだ。
――彼らの抱いた理想には無理も矛盾もあったが、全てが悪では無かった。その遺志に継ぐべき部分があるならば継ぐために。
「何だか、未だに実感が湧きませんわね。本当はすぐそこにいて、私達が気付くのを待っているんじゃないかって思えるくらい。
……あーあ、また失敗してしまいましたわ。後悔しないように、伝えたい気持ちはすぐに伝えるようにしようって、司教様の時に反省したつもりでしたのに」
ヴァレーリヤは肩を竦めてから中庭に降り注ぐ光を見た。冬の光は暖かく、どこか『あの日』を思い出す。
「ありがとうグドルフ、鉄帝で内戦が起きた時、私達を助けてくれて。ありがとうタイム、いつも私達を守ってくれて。
結局言えず仕舞いだったけれど、本当はすごく感謝していましたのよ。なのに恩返しもし終わらない内に行ってしまって……」
祈る事をグドルフは嫌がるだろうか。タイムは屹度くすぐったそうに笑う。こんな事しかしてやれないけれど、とヴァレーリヤは目を伏せた。
彼女の横顔を見ているとマリアはこれはきっと悪い夢だと思い続けることも出来なくなった。
だって、ほら。目覚めたらいつもの朝で、いつものマリ屋で「襲い、遅刻じゃない?」と笑う声がして、そこに祝勝会だと彼がやってくる。
そんなことばかりを考えて居たのだ。それが叶わぬ夢だと分かって居たって、憧れてしまうように。
「失敗か。確かに失敗だったかもしれないね。もっと色々お話していれば良かった。もっと色々伝えておけば良かった。
ありがとうグドルフ、鉄帝で内戦が起きた時、私達を助けてくれて。タイム君、グドルフ君には本当に感謝しなくちゃいけないね。本当にありがとう……」
――主よ、どうか彼らの旅路を照らし給え。彼らの魂が冥府への道で迷わぬように。貴方の元で永久の安息が得られるように。
我らが愛した人よ、灯火となりて我らの旅路を照らし給え。墓の上の嘆きのままに、我らが朽ちることのないように。
いつか我ら、主の御許にて再び相見えんことを願う。全ては主の御心のままに。どうか我らを憐れみ給え――
●
「遂行者達の、お墓を建ててあげたい、です。
彼ら彼女らも、ある意味では、過去の天義に翻弄された、被害者なのです。
今後の天義を良くする為にも、戒めにもなると思うので、遂行者達の居た証を残して、あげたいのです」
Lilyが見送ったのはリーベだった。それでも、ジョエルやナーワルといった他にも沢山の遂行者がいたのだ。
「ええと、カロルさん。ルルさん?」――どちらでも、と答えた彼女に「カロルさん」と頷いてからその位置を決める。
Lilyは葬儀屋だ。告げればカロルは「おまえに任せるわよ」とその肩を叩いた。
「……」
目を伏せたメリーは墓作りを手伝いながら酷く思い息を吐いた。山賊と呼ばれていた男がいた。彼は内面には近しいものを持っていたと感じていた。
けれど――彼は最後まで、欲しい物に手を伸ばすことを諦めなかったのだろう。貪欲な人だ。
(……私は、いつからか手を伸ばすのを止めてしまったけれど。そう……私は逃げたのよ。
困難に立ち向かうことから逃げた。命を懸けることから逃げた。
でもそれが悪いことだとは思わない。だって苦労したくないし、死にたくもないから)
この場所に間違いなんて無いような気がしていた。シューヴェルトは元々は敵対していた者であれども、戦いが終れば戦死した者は皆平等であると認識していた。
自らは生き残ったのだ。だからこそ、役に立つことが出来ればと考えて居た。聖遺物の欠片に僅かでもその者の意識が遺っていて欲しいと考えたのだ。
これからの希望を聞き出したい。それが弔いにも必要になるとかが得たのだ。
それが死にゆく者達の望みを訊き最後の願いを叶えることが天義騎士だったシュヴァリエ家の在り方なのだ。
「ありがとね。でも、聖遺物は、普通のモノに戻ってしまった。だから、ここに魂なんてものはないの。……悲しいわよね」
カロルは眉を寄せた。この墓を作るという行為だって伽藍堂になった全てへの弔いのようなものだから。
「カロル……様は、遂行者をそう扱ってくださるのですね」
雨紅は少し嬉しいのだとカロルを見た。ルストはそうでは無かった。だからこそ、リーベを思えば心苦しさもの凝ったのだ。
「ここは遂行者としてのリーベの墓、村は薬師としてのリーベの墓、となるでしょうか。どちらも、彼女には違いないでしょうから」
「故郷? ……なんというか、大事な場所なら、それでいいわよ。その方がリーベも喜ぶでしょ」
カロルはさらると告げた。その言葉に聖霊は「ここは遂行者リーベの墓だ」と頷いた。土仕事は指先がキツイだろうと手当をする聖霊に「ありがと、気が利くのね」とカロルは返す。
「私達は遂行者だから、愛されてはならなかったのよ。だって、世界を狂わすために生きていたのだもの。でも、良かったわね、リーベ。友達が多い」
カロルに雨紅は目を見開いた。友達になりたいと告げる事は出来なかった。それでも、リーベは友にと言ったのだ。
「私は、リーベと出会えてよかったと思っていますから」
前向きに、向き合う事が雨紅とって必要な事だった。Lilyは俯く。
リーベ。リーベ・アポテーカー。その人は医師として、不条理で死ぬ人を亡くしたいと願った優しい人だった。
(そして、あの人に恋をしていた――)
Lilyの視線は聖霊を追いかけた。彼は、彼女に気付いただろうか。分からないけれど、リーベに食べて欲しいと約束したからと墓前に一つ供える。
「世界が平和になったら、またここに来ますね。そしていっぱいお話をしてあげたいの、です!」
「Lily、もうひとつ……らしいわよ」
顔を上げたLilyにカロルはほら、と聖霊と雨紅を指差した。村に作るのだという。その準備を彼等は整えているのだ。
「ここにも刻もうか。 リーベ・アポテーカーの名は刻んでやろうか。遺言でもあったからな。
……戦いってのは嫌だな。数多の生命が零れていく。どんな大義名分掲げたって、手を血に染めることには変わりねぇ。
だから俺は止まる訳には行かねぇんだ――休む暇なんざねぇんだ」
今だけは白い薔薇を一つ捧げ、目を伏せ祈ろう。その行く先が幸福であるように。
「ルル」
近寄るリュコスに「おまえ、体は?」とカロルは問うた。大丈夫だと笑ってからリュコスはそっと胸に手を当てる。
遂行者の遺体は遺らなかった。マルティーヌを作っていた欠片の一部は自身の中にある。だからこれは聖女マルティーヌなんかじゃなく、遂行者だった『幸せになりたかった』普通の女の子マルティーヌを世界に残すための儀式なのだ。
「『遺す』機会をくれてありがとう。前にも言ったけどルルとマルティーヌはどこか似ていると感じた。
でも色んな偶然と祈りが重なってルルは生き延びた。……マルティーヌにはそれがなかったからいっしょに生きることはできなかった」
「リュコス」
「……ルルのことを恨んでないよ。怒ってもない。八つ当たりだし、最初に『できない』と選んでしまったのはぼくだ」
彼女が遂行者だから。諦めたことを悔むこの想いを、リュコスはカロルに近付いていった。その服を掴めば「抱き締めたやろうか」と彼女は言う。
「ひとつだけわがままを言っても良い?」
「いいわ、友人として聞いてやる。私はね、お友達想いなイイ女なのよ。言いなさい」
「……ルルには全部せおって、生きて、生きてるかぎり忘れないで。ルルは『言われなくてもそうする』って言いそうだけどね。
ぼくも忘れないよ。マルティーヌのことも…作り物の神の国から帰ってこなかったタイムのことも。
ここまで歩いてきた道の中で関わって、死んでいった人たちのことを、全部」
「ええ、私はそうするわ。だから、生きていくって約束したし」
笑うカロルにリュコスは小さく頷いてから「ねえ、あの時は二度とは無いと思ったけど、またしようね。お茶会」と微笑みかけた。
――彼等の墓を作りに。そして、祈りにウォリアはやってきた。
(鬨に誰かを救い、時に誰かに憎しみを向ける相反した心の道行き。
この先はどうやったって跡が残る、そう言った自分自身に残った傷とでも呼ぶべき『痕』。
――いつだって「物語は」めでたしハッピーエンド大団円、そんな完全は無くても)
本当は、笑って強く生きていく姿を見ることが出切れ間満足だっただろう。一時、祈る事を許して呉れるならば彼に祈ろう。
心を汲むことも、分かり合うことも出来ない。死は絶対的な溝であれど生者が背負っては行けるはずだ。
「……カロル___いや、ルル! オレも……トモダチになれるか……?」
「は?」とカロルは驚いたような顔をしてからウォリアを見てとびきりに笑って見せた。
「もう友達じゃなかったの? ゴリラの真似してくれるんでしょ。楽しみにしてるんだから」
彼女の軽やかな声音にウォリアは「ああ、そうだった」と一つ、答えることしか出来まい。
(すまなかった、等と詫びるつもりは一切ない、声が届く事も無い。
そんな事で『精算』されてしまう様な因縁や気持ちなら、最初から後生大事に持つべきではない)
神様なんて信じていない。ウォリア自身も神と呼ぶべき存在だからだ。それでも――『誰か』のように剣を握らぬ手を伸ばすべきだったか。
(怨嗟、憎悪としか片付ける事の出来なかった感情には――違う答えがあったのだろうか?)
●
多くの遂行者が戦った。弾正はスモーキーのことを想うとクロームの墓を作らねばと、そう考えた。
「心の整理がつかなくとも、こういう傷は時間が癒してくれるものだ。ゆっくり受け入れるといいさ」
パーセヴァルのことも気になるが、騎士である彼を騎士団と、その娘は丁重に弔ってくれることだろう。
だからこそアーマデルはクロームが行くべき場所に行けることを願ったのだ。
「俺はクロームさんを、もう戻れない日々に縛られている彼女を救い。
それだけの想いひとつでここまでつっ走ってきたが、最期の瞬間でさえ、きっと帰りたい場所に帰してやれなかったんだろうな。
せめてこの地で、安らかに眠って欲しい。
アーマデル、弾正。お前らがいなかったら、俺は彼女の最期を看取る事すらできなかっただろう。……感謝する。
俺はこれから、クロームさんの為にも、彼女の心を連れていくつもりで日々を丁寧に生きていくよ」
「ああ……願いは自分の為、祈りは誰かの為。それが我が神の……正確にはそれを奉じるものの教えだが。
つまりは祈りとは誰かに対する願いであるような気がするんだ」
アーマデルに弾正は「謳おうか」と声を掛けた。伴奏はアーマデルに、そして、唄を歌うのはクロームと共に。
鎮魂歌は、彼等の信じる先が間違いだとしても行くべき場所を見失わないように、だ。
「折角だから、今日はアーマデルのお勤めを手伝おう!
信じている宗教は違うが、救われていない死者の魂を救えるのは、俺の教義にも叶っているからな」
――というのは建前で彼と離れたくなかったのだ。そんな、想いを知ってか知らずかアーマデルは「弾正、スモーキー殿の思い出を聞こう」と声を掛けた。
丁寧な暮らしぶりのスモーキーは想像もつかないけれど。
「アドレ様のお墓、ですか」
ニルはハーミルのものも、と申し出た。
「ニルたちを逃してくれたハーミル様。ありがとうございました。
ニルはコアを多部ちゃうコーラス様のことが、ずっとずっとこわかったけど……。
コーラス様がいてくれたから、ハーミル様はひとりぼっちじゃなかったんですね……」
茶会の時のように甘いお菓子を用意した。マカロンにチョコレート、カラフルなカップケーキ。黒豹のぬいぐるみを置いてからニルはゆっくりと立ち上がる。
「カロル様……アドレ様は何がすきでしたか? アドレ様のすきなもの、供えてあげたいです
すきなものがわからないのなら、ニルのすきなもの……おいしいおかし、きれいなお花はどうでしょうか」
「あいつは、色々と混ざっていたから。……分からないけれど、ニルの好きなものを、教えてあげて」
「はい。でも、……すきなもの、知りたかった。笑ってるかお、見てたかった。
ほんの少し会っただけのニルでもかなしいのだもの。カロル様はきっと……もっとずっと、かなしいのですね……」
少し眠たいと呟いたニルの頬に触れてから「大丈夫よ、私ね。アイツのこと覚えているから、アイツの分まで良いもの見てやるの」と微笑んだ。
だから、安心して眠っておきなさいとカロルはその背中をぽんぽんと撫でた。
「カロルさん。セレスタン=サマエルさんのお墓にはゴリョウ先輩のお料理を供えていいですか?」
「ええ。良いわよ。私の知ってるサマエルだったら『素晴らしい料理だな』って私の口に突っ込んでくるわね。殺したくなる」
ジョークを交えるカロルに朝顔はふ、と目を細めた。セレスタンの墓は屹度騎士として丁重に弔われ作られる筈だ。
セレスタン=サマエルとサマエルは違うのだろう。カロルの知っているサマエルは彼の一部であっても、何処か違って聞こえる。
「ねぇ、カロルさん。サマエルさんの話を聞かせてくれませんか?」
「サマエルのこと? そうねえ、薔薇の花を一輪、私が好きだと送ってくるの。きもいって言うと笑うのよ。
……まあ、良い奴だったの。アイツも、私も、人には言えないようなものを抱えていたのかも知れないけどね」
「ところでキャロちゃん。折角なのでルストのお墓も作らない?」
ゆっくりと顔を上げたカロルはルル家を凝視していた。「え?」と呟いた彼女の唇が震える。
別れを告げたのは確かだ。それでも、カロルは彼が好きだった。その想いに屹度嘘は無かったから。
「……お墓参りできると良いんじゃないかなって。
天義の教会に神を自称していた冠位傲慢のお墓を建てるのってやばい気もするけど……名前とか彫らなければバレないでしょ!」
本人もこんな場所に墓を建てられたら堪ったものではないと怒るだろうか。揶揄うように笑ったルル家は「二人だけの内緒って事で、ね!」と笑う。
「あのね、ゲオルグも同じような事言ってて。……イレギュラーズってバカが多いわよね」
「いきなり罵るね」
ルル家は瞬いてから「そうだね、皆バカかも」と笑った。
「綺麗に作ってあげたいわ」
カロルは秘密だけど、と笑ってから場所を探すために立ち上がった。その横顔が少しだけ泣き出しそうに見えてルル家は「キャロちゃんもバカだよ」とその肩を叩いた。
●
ああ、疲れた。ベルナルドは重い息を吐き出した。遂行者にも彼等なりの優しさや信念があった。
倒す事が恐ろしかったのだ。相手を失うのが、寂しくて。その心境の不安定さがベルナルドにも重責となった。
旨い食事に高い酒よりも何よりもアネモネに会いたかった。特異運命座標になりたての頃には想像も付かなかった事ではあるが――
(……アネモネ。ささくれた俺の心を縛ってくれよ。今だけでいいからさ)
戦うために筆を執る事が増えた。芸術を求められるのは悪くもないが描き疲れたのだ。
弱音を吐くのは格好悪くて、素直になれやしないのだとベルナルドは、アネモネの元を押し掛けて絵を書かずに横で眠ろうかとふらりと立ち上がる。
ああ、アイツはどんな顔をするだろうか――?
何処に居たって構わなかった。マリカは目を伏せる。静かな場所に吹く風は冷たい。
(冠位傲慢にできたことなど無いにも等しい。……強いて言えば私情で遂行者たちにちょっかいをかけたことくらいか)
マリカは俯いた。ヘンデルの死に目には会うことは出来なかった。彼は誰からも否定と拒絶をされているように見えたのだ。
嗚呼、仕方が無いのだろう。彼の在り様と理想郷を見れば当然だった。そえでも、彼を理解してやれるモノは居ただろうか?
彼は、何を想って逝ったのだろう。詮無きことでも、考えてしまう。
(アーノルドは死んだ。正確には肉体(ハー)は死んだ。
影(シュト)と名前(レン)は奴が握ってる。魂(バー)の行方はもうわからない)
ああ、それが――本当に。マリカの拳はか冷められた。大嫌いな自分と重ねた彼。無意識にも救いたがっていたのだと、その指摘で気付いた己は疑問と自己嫌悪に塗れ息をしていた。
テレサの理想郷への入り口。その近くにまでやってきたリースヒースは彼女の戦いで解放された魂の無事を祈っていた。
(神の国についたか、それとも次の生へと向かったか……。しかし、悪いようにはなっていないだろう。そんな気がする)
留まっている霊達は、天義という国に名残惜しさを感じているかのようだった。笑いかけ、そして、語らう。
自由であるというのは、自分のあり方を自分で決めるというのは、やはり怖いことだ。次へ進むための恐怖を和らげてやろうと嫋やかに声を掛ける。
屹度、それが、新たな一歩に繋がっているはずなのだから。
「これでアドラステイア……いや……強欲から始まった事件も完全に終わったかね……」
オウェードはアドラステイア――いや、アスピーダ・タラサの様子を眺め遣った。復興作業は騎士団が続けて居るのだろう。
今だ、深く覗き込むことの出来ない疑雲の渓に追悼を行ない、瓦礫の撤去が行なわれるフォルトゥーナの跡地を眺め遣る。
「まあ戦いはこれで終わった訳じゃない……これからも依頼も来るじゃろう……それに最大の危機が迫って来ているしのう……」
冠位傲慢を撃退できた。だが、犠牲も多かった。彼等には敬意を。そして、変わりゆくこの国を見て居てくれと願って。
グリーフはネロの痕跡がないかと探していた。黒衣も黒剣もなにか、一つでも残っていてくれればとそう考えたのだ。
「……何方へ」
彼の姿は戦場に無かったならば、生き延びて、自身の意思で離れた可能性だってあるだろう。黒剣の力を行使した際に、奇跡を拒んだ。
自らは何れは飲まれ敵となると。ならば、もしも、生き残ってしまったなら彼は絶望して、自ら命を絶つだろうか。
(なんとなく、彼は抗おうとする気がします。背負った黒衣の仲間や、手を伸ばしたイレギュラーズとの繋がりが、そうさせる気が。
仮にそうであったとして、彼はきっと、万が一迷惑をかけないよう、この地を離れるのでは。
自ら天義に仇なすことのないよう、独り、終焉の地へと。……優しい方だから)
それでも、また――合える事だけを願っていた。
「すいませーん、自首しに来ましたー」
まあ、けじめですと言わんばかりに茄子子はにこにこと遣ってきた。リンツァトルテが思わず吹き出し掛けたが咳払いでなんとか鎮めたようである。
「いやぁ、まぁ、けじめつけないとね。沢山いい子になれば、悪い事をしても許される。そんなわけないよね。分かってるよ」
気付かないふりも、聞こえないふりも、自分を騙して信じたい者だけを信じちゃってきたのだ。そうじゃないとシェアキムを手に入れられなかったから。
「笑った」
「笑ってしまう、だって――」
「だって、シェアキムが答えをくれて、凄く嬉しかった。だから、私はもっといい子にならないといけない。
そして、私は私のやりたい事しかやらない。例えシェアキムが断罪を望んで居なくとも、これは私がやりたい事だから。
私は魔種の陣営に寝返り、宮殿に侵入し、陛下を誘拐しようとしました。如何様にも処罰を、って感じです」
茄子子は堂々と言い放った。リンツァトルテが驚いた様子で茄子子を見て、シェアキムをうかがう。
思い息を吐いたシェアキムに茄子子は「私は、私の意志でやりました」と告げた。
最初からそうあるべきと遂行者のように担ったわけでも、誰かを救うためでもない。これはエゴだ。だから、彼と向き合うならば罪を背負わねばならない。
「例え檻の中でも地の獄でも私は幸せだから――待ってるよ、シェアキム。えへへ」
シェアキムは「世界に未曾有の危機という神託は知っているか」と問うた。
「うん」
「獄中では、何も護れないだろう」
「シェアキムを護るんだ? うん、そうだね。いいよ。『そう言う滅びとかって邪魔だもんね』」
リンツァトルテは彼はなんて存在に好かれたのだと言い掛けてから唇を引き結んだのであった。
●
ステンドグラスを眺めヨゾラは一人思う。――神の国はもうない、ルストも倒されたのだ。
冠位魔種との戦いでは様々な事があった。自らの無力さを感じる事だってあった。
(それでも、あの時……僕が戦った一番最後に、ルストに言った事に後悔はないんだ。
僕は不完全でもいい、万能でなくていい。星空に手を伸ばし続ける、できる事をできる限り頑張っていく――今の瞬間が最後であっても、後悔しないように)
何があったってこの先はどうなろうとも、今の瞬間を噛み締めて生きていこう、そう思える。ステンドグラスを、そして、天義の星空をその瞳に焼き付ける。
「……綺麗だね、本当に」
「ここは、いつ見てもため息が漏れるくらい荘厳で美しい場所よね。思わず祈りを捧げたくなるくらい」
ルチアの傍には鏡禍が居た。此処がリンバスシティで神の国の入り口だっただなんて思えないほどに美しい場所だった。
「ひょっとしてルチアさんは神の国に魅力を感じてしまうのではないかと思ってました。
貴女の思う神じゃなくても通ずるところがあるんじゃないかと……でも、杞憂でしたね、ごめんなさい」
「神の国、響きだけならこんなにも魅力のあるものは無かったのでしょうけれど。私が殉じる主イエスと、彼らが奉じていた神は同じではないから」
ルチアは目を伏せてから愛しいその人を見た。
「それにね、鏡禍。これが真実私の神に関わるものだったとしても、今更貴方を置いて、一人あちらに行ってしまうなんてことはしないわ。
果てが地獄だろうと、貴方と共に歩むのだから。人は誰かと共にあることで強くなれるものだと思っているわ。
……だから、貴方がそうやって私と居ることに価値を見いだしているのなら、それはとても人間らしい事なんだと思うわよ」
微笑む彼女を見てから鏡禍はもう一度、思った。彼女と共にセレスタンと戦えて良かった。
護るべき物を見せられていたら、とそう思っていた。自身にとって彼女がいなくてはダメだと自覚したのだ。
頑張ろうと、そう思えるのは彼女が傍に居るときだ。祈る彼女の姿は美しい。ただ、今はその傍らに佇んでいた。
「タイムさんと初めて出会ったのはローレット・トレーニングの迷宮の探索訓練でだっけ。
ふふ。今じゃ想像も出来ないけどあの時はタイムさんどこに行こうかオロオロしてたんだっけね。
ワタシたちすっかり強くなっちゃったね……その時ワタシの好きな人の話もしたんだっけ」
フラーゴラは静かにステンドグラスを見た。美しいその人は、パイプオルガンに腰掛けて「どうしたの?」と笑っている気もしてしまうのだ。
「タイムさんの好きな人がどんな人か聞きそびれちゃったな。
今でも話しかけたらタイムさんが長い耳を見せてひょっこり現れたりしそう。ねえ……タイムさん? ――なんて」
笑うフラーゴラにウルズは「そうっすねえ」と肩を竦めた。先輩、と呼び掛けても彼女は姿を現さない。
「あたしは色んな人を先輩って呼んじゃうけど……タイム先輩はそんな中でも一番先輩らしかったっす。
先輩は凄いから、あたしと肩を並べて戦ったことはなかったっすね。やる事といえばコスプレしたり、JKになったり……あれ?」
首を捻ったウルズにフラーゴラは「そうそう」と笑った。そんな思い出ばかり、沢山募れば何にも変えがたいもので。
「つまりっすよ、あたしはタイム先輩を尊敬してたんすよ。姉御みたいに思ってたんすよ、知ってた?
他愛のないことしかしてないけど、先輩の凄さはあたしが知ってるっす。もっと先輩のこと、知りたかったな。
先輩の恋の行先、もっと見守りたかったな。あの場にはあたしもいたのに、あたしよりずっと早く先走っちゃうなんてずりーっすよ……また会えたらもっと話そうね」
「でも、タイムさんはためらいがないからいつかこんな風になると思ってたよ。すごくかっこいい最期だって聞いた」
だから、貴女の分まで頑張るから。フラーゴラはそう決意したように彼女を想った。
「祝勝会、のはずですが……素直に喜べないのは、どうしてでしょうね……代償として失ったものが……あまりにも……」
祈りを捧げるミザリィは目を伏せる。ネロ、ネロと名を呼んだ。何処かで彼が聞いてくれるような気がするからだ。
(遂行者たちは死にました。カロル・ルゥーロルゥーが奇跡の力で遂行者から普通の人間になりました。
そして……ルスト・シファーは斃れました。けれどイレギュラーズにも死者は出ています。
……ネロ、貴方はまだどこかにいるのでしょうか。フローズヴィトニルのように、どこかで眠りについているのでしょうか。
『世界が救われた後で』という貴方の言葉を、私は信じます。必ず世界を救って、そのときを待ちましょう)
それが己の誓いだった。口にすれば、甘ったるくも感じる響きだ。
「それまで私は、善き狼であることを誓います」
天義式の祈りを捧げてから彼者誰は目を伏せった。幼少期に習った作法は身にも沁みているのだ。それが妙な心地でもある。
アドラステイアから、そして、この国から出るときに、故郷を棄てた。
見て見ぬ振りを続けて居るつもりだった自分と子供達と向き合って。それから生きる己と遂行者の傲慢さで欲しい物比べをしたのだ。
「……でしたね、一連のことは。俺は今回、何を得たんでしょうね。強さでしょうか。弱さでしょうか。……悼み、でしょうか。
どんなに大切だと、守りたいと言っても人の死は還って来ない。でも、それは。これからの天義だってそう。
人々の生活、宗教国としての在り方、考え方、神の解釈。
言葉はまだ力を持って生きているなら、変わろうともがいているなら――俺はもう一度、天義に向き合えるかも知れない」
ここは神の国であった場所だ。アルムは静かに一人で佇んでいた。
(ルスト・シファー。彼は理想を間違え、周囲を頼れず、特異運命座標たちの力量を見誤った。
それでも、彼は……彼ら遂行者たちは、この天義という国のあり方に押し潰され、意を唱えざるを得ない人たちだったんだろう。
もしルストが、復讐心からではなく、国と人々への愛、慈しみと哀れみの気持ちを持って神になろうとしていたら……
この国は一体、どんな風に変わっていたんだろう。理想の目指し方が違えば、今回のような結末にはならなかったのかもしれない)
天義という国は、正義を遂行する余りに人々を押しつぶしてきたのだろう。
「けど、そうはならなかった……彼の起こした惨劇を乗り越えて、この国は進まなきゃならないんだな」
これから、変わっていくと言われても過去を易々と切り離すことは出来ないだろう。
だからこそ、向き合う先を見付けなくては鳴らないのだ。そう理解はしていた。
「キャロちゃん」
正純は呼び掛けた。
「おやパーティーの方はもういいのです?」
「正純は?」
「私? 私は、そうですね。亡くなられた方々に祈りを捧げてたの。これでも一応元シスターで元巫女なので。
まあ、アドレあたりは、そういうの別にいいから、って素直じゃなさそうなこと言いそうだけど。
……本当はあの子も、って思うことも少しだけあるけど。そんなこと言ったら逆に怒られちゃうだろうし」
カロルは「違いない」と腹を抱えて笑った。可愛い事なんて言いっこないのがアドレなのだ。それを彼女も、正純もよく知っている。
「今度、あの子の名前を持っていた都市に、アドラステイアに祈りを捧げに行こうと思うんだけど、キャロちゃんも行きません?
何回も潜入したし、街の中で大暴れもしたから割と地理は把握してますからきっとご案内できるはず! 我ながらバイオレンス過ぎるかな。ふふ」
「潜入したの? おまえ、なに? 女スパイってやつ? やってみたーい」
「やってみたいんですか?」
それはどうだろうなあと正純は笑ってから、はたとカロルを振り返った。
「と、そうそう、あと一つだけ。戦場のバタバタもあったりしたから改めてだけれど。
私は小金井・正純。今は巫女でもなんでもないただの一人の人。私も、貴女と友達になりたいな。どう?」
「友達だったと思ってたわ。じゃあ、気分を変えましょう。『純ちゃん』。アドレの姉ってことで一つどうぞ」
「……それでいいのかな」
正純は肩を竦めてから「よしらやりたいことも終わったし、後で恋バナでもしましょ!」と笑った。
普通の女の子らしいことは正純もあまり経験が無かったから――
「例えば実はルル家と私は同じ男の人が好きだった話とか」
「マジ!? え、詳しく聞かせなさいよ。ちょっと、何、豊穣って所でその男の顔を拝まなきゃ!」
「……めっちゃ食いつき良いね。やっぱりそういう話好きなんだ」
これは彼が大変な目に遭いそうだなあと正純は小さく笑った。カロルは飛び付いて大騒ぎし出すタイプだろうから。
●
「……あら、来てたのねぇ」
ふらりと歩いていたアーリアは涼しくなってしまった寂しい首元に襟巻きを巻いてこなかったことを少しだけ後悔していた。
見知った顔ではあるけれど、不思議な気持ちになってしまう。遂行者ではない服をその身に纏った彼女は「アリア」と呼ぶ。
「アーリアよ、ルルちゃん」
「アリアでいいのよ。おまえと私はそういう仲ってことよ」
カロルが笑えばアーリアは「ねえ、元気? 体の調子は? アレフは?」と問うた。アレフは己の心臓だ、カロルが元気なら元気なのだと彼女は言う。
何処か一抹の気まずさを覚えてから髪を指先で弄ぼうとして空振りをした。染み付いたクセはどうやら抜けそうにない。
「髪」
「ああ、似合う? ルルちゃんもいっそばっさりどう? 女の気持ちを断ち切るには昔から断髪よ」
揶揄うように笑ったアーリアにカロルは「暫くは伸ばしているわ。これ、多分、仲間を背負う意味があるから」と肩を竦めた。
「そう。お互い厄介な相手が好きだったわね、なんて零してしまう。
あ、でも断じて私のこれは男と女的なものじゃないわよ? 今度私の恋人を紹介するわ」
「……是非。うふふ、いいじゃない。是非。ほら、是非」
圧が強いとアーリアは一頻り笑ってから目を伏せた。
「……友達を、二人も失っちゃったわ。そのどちらも、私の目の前で居なくなってしまったの」
その後悔は消えないけれど、新しい友達が出来た。彼女は屹度背負って歩いて行くのだから。だから――
「ねえ、ルルちゃん。年明けってね、練達は安売りの季節なのよ。ものすごい戦場、連れて行ってあげる!
沢山かわいい服を着て、メイクで今よりずっとずーっと素敵になって。お酒は飲める? 私、いい店知ってるの。
沢山話をして、色んな所へ出かけましょう。そして、とびきりの恋をするの!」
「ええ、遊びましょう。おまえとの約束だもの。
それと、飲めるわ。外見はこんなだけど、天義って国と同い年。ま、クッソ絡み酒だから覚悟してなさいよね」
アーリアは「ああ、こわい」と思わず呟いてから笑ったのだった。
「ルルちゃん」
祈りを捧げ終わったスティアはそっと顔を上げた。聖女として、見つめることがその責務に思えたからだ。
「遂行者は人間らしい人達が多かった。だから安らかに眠れるように祈りたいなって思う。
……リスティア、オウカ、アリア……似てるようでどこか違う人達。
天国では仲良くできると良いんだけど、心からの親友になれるといいね」
「なれるわよ。リスティアは兎も角、オウカはしがらみがなければ、すぐにでも手を取るでしょ。やっぱり、天義の背負わせる責は重いのよ」
「……そうだね」
だから、何にもとらわれず、安らかに眠れるように。この国を守ることを決めたスティアは見守っていてと願う。
「ルルちゃん。ここには聖女が2人いるんだし、普段よりはご利益がありそうじゃない?」
「そうね。倍増よ」
「じゃあさ、もっと『必要』なことしない? これから大事なミッションの時間だよ。
イルちゃんとリンツさんの恋の行方を見守らなきゃ……せっかくだしどう? こういうのも普通の女の子らしくて良いでしょ?」
「あら。ラブなの?」
「そうだよ。ラブなんだよ。私は親友のイルちゃんを応援したい!ルルちゃんは恋する乙女を応援したい!
利害の一致のはずだー! って事で2人を探しに行こう。あ、良い雰囲気の所で邪魔はしたくないからね。ようやく自覚したリンツさんがどう動くか注意しよう!」
笑うスティアに「おまえも悪いわねえ」とカロルはからかうように言った。
「……神の国はもう、ない。グラキエス……い…や。キリエスや聖女カロルに……様々な遂行者達の願った地はもうない。
自分は命をやり直す彼らを否定した。でも…彼らの願いや意見が……全て間違っていた、なんてことは決して言えない」
ムサシが呟けばユーフォニーも頷いた。ああ、なんて苦しい事だろう。
誰もが救われる世界があれば良いのに。誰もが救われる数だけの世界があったら良いのに。ずっと、ずっと、この国で活動してそう思ってきた。
「彼らだって、悪意だけでこの選択をしたなんてことは無かった。
想いも、願いもあった。聖女ルルと話していて、分かったんだ。遂行者だって、人間なんだって。
それに、ルスト・シファーの神の国を打ち破れたのは……キリエスの力もあってだ」
「はい。はい……。キリエスさんに、なんで、一緒に進みましょう、なんて言ったんだろう。咄嗟に出たの、不思議。
気持ちに嘘はなかったけれど、綺麗な言葉を言っても結局は殺めること……死は終わり、無に還ることだもの。
殺められたひとに、殺めた側の未来は見えない。死後の世界だって生者の都合のいい想像でしかない。一緒に進むなんて……結局『こちら』の言い訳でしょう?」
ユーフォニーは言い訳にしない為に、それを抱き締めていこうと思った。それでも、なんて傲慢なのだろうと己に笑ってしまう。
それを全て背負えると思う『傲慢さ』が自分自身なのだ。
「……暗い話は、もう終わり。ほら、ユーフォニー」
美しいステンドグラスの下に彼女を誘ってから、ムサシは向き合った。「とても大事な話。聞いてくれるかい?」と。
言わなきゃいけない。弱さから逃げていた、言えていないことを、言わなくては伝わらない。
「ユーフォニー。ずっと今まで言えてなかった。甲斐性なしだって怒ってもいい。
……貴女は強いから、俺が守りたいなんて言うのは筋違いかもしれない」
それでも。君の彩りに、己の色を添えたい。そして、共に在る喜びが其処に芽生えることを知って欲しい。
「結婚しよう」
ユーフォニーは瞬いた。
「……ふふ。姉妹に義姉さんとか言ってたもんね……私何にも言われてなかったのに」
「ッ……それは」
「いいよ」
ユーフォニーが微笑めばムサシは緊張したように、そっとその手を取った。
「この指輪を受け取ってほしいんだ。ユーフォニー」
指輪は美しい。彼の世界にユーフォニーの色がある。ああ、なんて、嬉しくて――どうして、不安になるのだろう。
「私は見た目はひと、だけど本当にムサシと同じ人間?
ムサシよりずっと短命、長命だったら? 子を成せないとか、ムサシの世界で当たり前な結婚からの未来と違ったら?
だいすきだから。気持ちは伝えて、一緒にいる。でもその先は……ねえ、ムサシは、私との未来に何を望む?」
――もしも、全てが違ったら。
その答えが出るまで、もう少し。あなたの彩はまだ、お預け。
「……静かだ。此処で冠位との戦いがあったとは、思えぬ程に――」
リゴールはアリスティーデ大聖堂に立っていた。その背中をカミラが見詰めている。
「……アランは本当に、様々な人々に愛されていました。
あいつが愛を忘れなかったのは……もう一度、人として戻れたのは。あのロザリオのお陰、なのですね」
カミラは三人にロザリオを手渡していた。信仰を、希望を、そして愛を忘れぬよう。死しても消えぬ、見えぬものであるそれは確かに残った。
リゴールには希望を。カテリーナには信仰を――そしてアランには、愛を。
「いいえ。あれは、気持ちを少しだけ支えるだけのもの。あの子が、人も世界も愛し続けていたのは。
あの子自身が、そう変わらざる事を願った……姿形が変わっても」
カミラはゆっくりと胸に手を当てた。遂行者。世界のために殉じた者、タイム。そして我が子の為にとカミラは祈る。
青龍の巫女であるからには明日にもこの国を立たねばならない。後ろ髪を引かれたのは、カロルが「お前とは話すことがある」と言った事も在るだろうか。それでも彼女は「役目があるなら仕方ないわね」と笑っていた。
「リゴール……また、一人にしてしまいますね。ですが必ずこの地に帰ります。その時まで――」
「大丈夫ですよ。アランと、カティ。先生と、レプロブス。皆がいなくなってから、漫然と生きてきました。
司祭になったとて何も変わらなかった。……けど、此の歳で、俺にも夢ができました。
貴女が帰るまで、守ってみせます。あいつが愛した、この国を……」
――行く先は、彼が示してくれたのだから。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
どうか幸あれ。
天義編お疲れさまでした。
終焉による襲撃もありましょう。ですが、この国は一つにまとまりました。
皆さんの力です。何があったって、皆で協力できるでしょう。
GMコメント
夏あかねです。天義編お疲れ様でした。
●同行者について
プレイング一行目に【グループタグ】もしくは【名前(ID)】をご明記ください。
●同行NPC
シナリオ指定のNPC(サポートNPC)に対してのプレイングは自由にお掛けください。
また、指定されていないNPCにつきましてはシナリオ推薦等をご利用頂けますと幸いです。
行動場所
以下の選択肢の中から行動する場所を選択して下さい。
【1】聖騎士団詰め所
無事を祝っての祝勝会が行なわれています。
天義らしい食事が用意され、並んでいます。食事は基本淡泊なモノが多めですが、持ち込みも可能。また、幻想が隣国である為から幻想王国の料理(フランス料理などなど)も用意されているようです。
ソフトドリンクだけではなく酒類も存在して居ます。
パーティー会場として利用して下さい。
【2】サン・サヴァラン大聖堂
聖堂側の宿舎では個室を借りてのんびりと過ごすことが出来ます。
また、カロルはサン・サヴァラン大聖堂の『中庭(白薔薇の間)』に遂行者の墓を作れないかと考えて居るようです。
「そういうの出来れば良いわよね」と行って居ました。
パイプオルガンの音がとても心地良く響いています。
【3】アリスティーデ大聖堂
ほぼ神の国です。リンバスシティだったテセラ・ニバスは姿を取り戻しました。元の通りです。
アリスティーデ大聖堂の礼拝堂は神の国の入り口として知られていました。
ですので、最も神の国に近しい場所です。
美しい聖母のステンドグラスが光を射しています。
【4】その他
何処か行きたいところがあればご指定下さい。
ただし、ご要望にお応え致しかねる場合もございます。
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