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ギルドスレッド

樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2018/6/8

リーゼロッテ・アーベントロート

 すっかり暑くなって……季節柄、蒸すから大変な時期になりましたわ。
 ……え? 何て格好をしている、ですって?
 うふふ。今年の為に、新調させた衣装が出来ましたのよ。
 皆さんはネオフロンティアにお呼ばれしているのでしょう?
 私も機会があったら覗いて見ようかと思いまして……
 ……え? サーカス? ああ、そんな事もございましたわね。
 別に忘れている訳ではなくてよ。アレは皆さんが片付けると豪語したのだから――
 信用、しているという事になるかしら?
 ……ええ、大丈夫! きちんと協力はしておりますから。

※……まぁ、それでもサーカス包囲網『幻想の檻』は更に狭まっているようです!
2018/6/9

ガブリエル・ロウ・バルツァーレク

 ……ふむ、順調ですね。
 様々な懸念はありましたが、ここまで幻想貴族達もおしなべて協力的だ。
 サーカスを早く燻り出し、この国に平穏を取り戻さなければ。
 しかし――しかし、そう簡単にはいかないのでしょうね。
 追い詰められた彼等が動き出せば、被害が出る事は避けられない。
 彼等が軍と相対してくれるならば、押し切る事も可能でしょうが……
 最後は遊軍――ローレットの皆さんに頼る事になるでしょうね。
 この国の為政者の一人として、何とも心苦しい話ではあるのですが。

※サーカス包囲網『幻想の檻』がほぼ完成したようです!
2018/6/10

フォルデルマン三世

 ……何と。あのサーカスが国内各地で暴れ出した、とは!
 信じたくは無かったが、やはりローレットや諸侯の言った事は真実だったか……
 良かれと思った公演だったが、やはり迷惑をかけてしまったのは確かだな。
 しかし――過ぎた事を考えても仕方ない。
 一先ずは諸侯とローレットに協力を願い、少しでも被害を食い止めなければ……
 ……む、シャルロッテ。何故目頭を抑えているのだ?
 おかしな奴だな。泣いている場合ではないぞ、ローレットに連絡し、連携を取るのだ。
 国民はかの英雄の助けを待っている!

※『幻想の檻』に追い詰められたサーカスが決起したようです!
2018/6/11

フォルデルマン三世&シャルロッテ

「シャルロッテ! 聞いてくれ!」
「はい、如何なさいましたか、陛下」
「イレギュラーズが装備を求めているという話を聞いてな。
 大急ぎでキャラバンを追わせ、彼等の在庫を丸ごと買い上げてきたのだよ」
「……そ、それは思い切った事を。闇市はガラクタも多く混ざっていると聞きますが」
「全て買ったから問題ない」←王者の覇気
「……は?」
「全て買い、その上で有用なものを選別し、ローレットへ提供する。つまり、完璧だ。
 それだけではないぞ。海洋商人を捕まえて、物資の供給を約束させたのだ」
(う、それは……思い切りカモにされている予感が……
 釘は刺しておかないといけませんね。でも……)
「どうした? じっと私を見て」
「いいえ。何でも。ふふふふふっ……」

※『幻想の檻』に追い詰められたサーカスが決起したようです!
 闇市に『進撃のフォルデルマン』、『海洋商人の用立て』が発生しました!
2018/6/19(1/2)

公演の前触れ

「まったく――嫌という程、騒がしいわ」
 傲岸不遜たる剣客は邸宅の窓から見下ろす風景に吐き捨てるようにそう言った。
 追い詰められたシルク・ド・マントゥール――乾坤一擲の大暴れは商人の町サリューにも届いていた。
 街にサーカス一味が現れた報告は暫く前にやって来ていて。狂気を蔓延させる傍迷惑なパフォーマーは我が物顔で街を闊歩している。
「まぁ、面白い芸人達だよ。いや、正しくは彼等の芸なんてどうでもいい――」
 端正なマスクを皮肉に歪めた金髪の男――クリスチアン・バダンデールは冷ややかに続けた。
「――私に飽きられているのを自覚出来ない、その愚かさが愉快極まる」
「成る程! 神にでもなったような口振りじゃな。まさに主こそが連中に勝る道化よな!」
 彼の言葉に剣客――死牡丹梅泉はカラカラと笑い声を上げた。
「連中に天啓を受けた者の言葉とは思えぬな?」
「子は親を超えるものだよ、バイセン。第一、私は確信しているんだ。
 あんな連中に触れなかったとしても、私は何れ目を覚ましただろうと――ね」
 クリスチアンはサーカスの訪れと共に『覚醒』した。
 されど彼は<終焉(ラスト・ラスト)>に囚われてはいない。
 彼の楽しみはこの世の終焉には無く、自身の楽しみを吟味する為に時を待つ理性を持ち合わせていた。
 酷く静かに。酷く深く狂った彼はこの世の全てのゲイムに見立てる。
 その彼は底の割れた手品(サーカス)に付き合う心算は無かった。つまる所、騒がしいばかりで場を乱し、やり難くさせる彼等の早期退場を望んでいる。ましてや『維持する情』こそないが、彼等がクリスチアンの基盤たるサリューに被害を出すならば面白い筈もない。
2018/6/19(2/2)

「――さて、面倒事を片付けるとしよう」
「魔種、といったか。それともアレはキャリアーか?」
「どっちでも構わない。大した問題じゃないさ」
 気楽なクリスチアンに梅泉は「ほう?」と視線をやる。
「どの道、君が斬るんだろう?」
「他力本願か。戯けが、わしを使い走るな」
「いいや。使い走るとも。だって君は間違いなく――『魔種を斬りたい』。
 実際、魔種が来てるかどうかなんて知らないけどね。
 何かにつけ、強そうな相手を仕留めたがるのが『ケンカクショウバイ』ってやつだろう?」
「――は」
 鼻で笑った梅泉は成る程、反論の術がない。
 腰の業物に触れて、ふと考える。
(この間ここに来た連中はどうしておるか――
 ……まぁ、愚問よな。連中もサーカスを斬るに違いない)
 ならば、鈍る必要もない。多少の運動は健康の為にも必要だ。
 折角寝かせた連中の前菜に――或いは食前酒に。
 牛飲馬食のサーカスを逆に食らうも興というもの。
2018/6/25

???

 くすくす……
 くすくすくすくす……

 あんなにも右往左往して、あんなにも必死になって――何て愉快なんでしょう。
 オニーサマの邪魔(いいつけ)が無ければ、もっと面白くなる所ですのに。
 まぁ、宜しくてよ。直接出なければ良いだけでしょう?

 お説教を聞き流すのは乙女の特権ですものね。
 この私にも、この時間を楽しむ術は幾らでもあるのだから――
2018/7/2(1/3)

七罪語りき
 幻想(レガド・イルシオン)が似合わない大団円と祝勝に沸く頃。
 混沌の片隅、闇の領域。
 誰の目も、光も届かない<終焉(ラスト・ラスト)>の片隅に『珍しい顔が揃っていた』。
「うーむ、全員おるのも久方振りですな。ざっと何十――はて、百年は超えておりましたか」
「いやぁね、ベルゼ―。ボケちゃったの? とっくに二百年は超えてるわよ」
 天を突く角と竜翼を備えた紳士を女性的な風貌が特徴的な大柄の男が揶揄してみせた。
「いや、これは手厳しい。アルバニア殿は変わりませんな。相変わらず美容にも気を使っておられるようで」
「揃わなかったのはカロン坊やが眠ってばかりいたからでしょう?」
「……ベアトリーチェはすぐ猫のせいにするにゃ。協調性のないルストが悪いんだにゃ」
 静かに言った黒いドレスの女に和装を纏った猫――そうとしか呼べない――は語るに落ちる反論をする。
「低レベルな話だな。私を付き合わせたいなら、もう少し己のレベルを上げたまえ」
 横合いを水を向けられた複翼の青年はと言えば小さく鼻を鳴らし、そんな言葉を一蹴するばかり。
 表面上が談笑の形を取っていようとも、まるでこの場は『煉獄』そのもの。
 仮に世界の裏側に巣食う『魔種』なる存在を災厄とするならば、それはきっと黙示録のような光景だ。
 身を浸したならば司教さえ信仰を捨て、聖女も姦淫するような。
 悪徳の果て、異界の底、決して直視してはいけない絶対の冠位達がここに在る。
「相変わらずですわね。纏まらない連中は。さて、オニーサマ?
 こうして私達を集めたのだから、いい加減お言葉を頂きたいものですわね」
「そうだ。いちいち勿体つけんな、イノリ。ぶっ殺すぞ」
「バルナバスは、本当に野蛮ですわねぇ」
 機翼の少女は目を細め、隆々たる肉体を誇る青年は「お前もだ、ルクレツィア」とやり返す。
 全員の注目を集める美しい男――イノリは、目を細めて好き勝手な一同を眺めている。
 バルナバスの言う所の『勿体』をたっぷり嗜んだ後、彼は舞台俳優のように通る声で語り出す。
2018/7/2(2/3)

「君達兄弟が相変わらず仲良くやっているのを見て、安心したよ。
 それはそれとして――今夜集まって貰ったのは『神託』の話をしようと思ってね。
神託(あれ)のフェーズに変化があったのは知ってるね?
 一年程前になるか。特異運命座標の大量召喚が起きた。
 この世界を『救う為』の可能性(パンドラ)はこれまでに有り得ないようなペースで溜まり続けている」
「滅びの運命(けってい)を覆す程に?」
 複翼のルストが嘲笑混じりにイノリに問う。
「さあ、それは扉が開かなければ分からない。
 だが、彼等が『この世界の悪足掻き』だとするならば――可能性はゼロじゃないんだろう。
 僕は神(あれ)を心底信用しちゃいないが……
『誰かを犠牲にして永らえる』その合理性(いきぎたなさ)だけは疑えないからね。
 彼等に関してはルクレツィアが詳しいんじゃないか?」
「ああ、そう言えばべそかいて撃退されたんだっけ?」
「オニーサマの言いつけを守っただけでしてよ!」
 口元を歪めたバルナバスにルクレツィアが牙を剥いた。
 双方で牙を剥く兄妹が些細な事で殺し合いに発展するのは日常茶飯事だ。
 もっとも数十年、数百年に一度の大喧嘩を日常と称する事が出来るかは不明だが。
「喧嘩をしないの! ルクレツィア、アンタもレディなんだからそんな顔をしない」
 双方を宥めるアルバニアに「苦労が多いですなあ」とベルゼーが気楽な言葉を添える。
「静かになさいな。イノリ様、お話の続きをどうぞ」
「ありがとう、ベアトリーチェ」。イノリは苦笑して再び口を開く。
2018/7/2(3/3)

「――結論から言えば、ルクレツィアの玩具(サーカス)は『あの』幻想で敗退した。
 有り体に言ってしまえばそれは殆ど特異運命座標(かれら)の力と言えるだろう。
 彼等と神託の力関係は未知数だが、僕達と彼等は相容れない。
 世界が悪足掻きを始めたなら、そろそろその時は見えてきた――と言えるだろう。
 僕達も大いに――大いに。この世界の全てを終焉の色に染め変えなければならない」
「嫌だにゃ。息をするのもめんどくさいにゃー……」
「君はそう言うと思ったけどね。だから君は君の好きな『あそこ』にしよう」
「てー事は俺は、『あっち』か」
 カロンに応じたイノリにバルナバスが笑う。獰猛に。
「ならば、私は『あちら』だろうね」
「アタシはどう見ても『あそこ』よね」
 ルストが鼻を鳴らし、アルバニアが頷いた。
 七罪は全てを欲する。
 終焉の望むのは些細なサーカスの芸等如き無い。この世界全てを各地を罪の色に染め、侵食する――
 やがて来る最後の日の為に、それを為す為に産まれ落ちたのだから。
「細かい事はそれぞれに任せるけどね。今夜がその始まりである事は間違いない」
 イノリは高らかに言った。

 ――罪の音色(いのり)を奏でよう。世界の懺悔を聞く為に。
2018/7/5

もうすぐ一周年

 早いもんで、あの日からもうすぐ一年ですか。
 ……ローレットでは色々あったみてーです。
 巻き込んじまって申し訳ねー気もするですが、大きな事件も解決して……

 ……この先も上手くいくといいですが、私も少し地上(した)が気になるですね。
 こんな事、レオンに言ったら笑われそーですけど。何か、そわそわするっつーか。
 あ、今ビビっと神託降りてきやがったです。
 これは早速ローレットに伝えねーといけねーですね。

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2018/7/9

ヴェルス・ヴェルグ・ヴェンゲルズ

 成る程、特異運命座標(イレギュラーズ)ね。
 俺の勘も中々捨てたもんじゃない。やっぱり面白い連中だったじゃないか。
 さぁて、彼等も準備運動は十分だろう。

 やはり、人間――健康の為にも闘争が必要だ。
 彼等を招待しようじゃないか。我等が鉄帝国が誇る――魅惑のラド・バウへ!

 ……いや、まぁ。ココの連中の流儀に従っちゃ救世主サマが一月で激減するからな。
 勝とうと負けようと毎日毎日担架じゃ話にならんよ。俺が言うのも何だが、困った国民だ。
 多少のルール変更は必要か。まさか、ゼシュテル人ばかりじゃあるまいし!

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2018/7/24

フォン・ルーベルグにて

 神聖に満ちた白亜の王都においても、最も厳粛なるその場所は余人の立ち入れぬ特別な場所に違いない。
「どうやら、噂に間違いはないようですな」
 そう述べた白き峻厳の騎士・レオパルに国王フェネスト六世は「うむ」と鷹揚に頷いた。聖教国の中枢を成すこの二人が玉座の間に居るのは決して珍しい話ではないのだが、今日に限っては三人目の――客人が居るのが特別なのである。
「ローレットは『シルク・ド・マントゥール』を名乗った魔種の群れを撃滅せしめたという事。
 これは主の、天の、そして神託の願いに沿いましょう。
 ……色々苦労はあったでしょうが、良いご子息を持たれましたな。ルビア殿」
「大変光栄にございます」と如才なく一礼をして見せた貴婦人は、暫し会っていない息子の顔と、もう少し縁が離れてしまった夫の顔を思い出し、嬉しいような寂しいような複雑な感情を覚えていた。このネメシスにおいて魔種を討伐するという事は、非常に大きな意味を持つ。立派な聖騎士になりたいと願っていた息子は少なくともその本懐を果たし始めているのだろうか。
「何でも、諸国で魔種が動き出したとも聞く。
 どうやら、事態は余談を許さぬようだ。彼等にも今こそ聖教国で正義を果たしてもらう必要があるだろう」
「全く、その通り。陛下の慧眼には恐れ入ります」
 フェネスト六世に頷いたレオパルはちらりとルビアの顔を見た。
 ルビアはそれで何となく察する。面子を大事にする聖教国は頭を下げるのが非常に苦手である。
 つまり、自分から息子にそれを伝え、それとなくローレットを呼び寄せろという事なのだろう。
(……それ自体は構わないけれど……)
 この国は他所の国とはかなり勝手が違う場所だ。この国の正義と、この国の論理と上手く折り合い、上手くやれる事を祈るしか無いのだが、ローレットは果たして――

          <リゲル・アークライト (p3p000442)の母親ルビア・アークライト>
2018/8/8

妬みの深海

 ……あぁ、面倒くせぇ、必要以上の労働はしねぇ主義なんだよ俺は。
 ローレットは依頼で大渦まで来たってか? 労働が生きがいとは妬ましいなぁ、全く勤勉なる豚共め!
 どうせ、アリサが遊びに行ってんだろ。
 楽しい、楽しい、楽しいね。何が一体楽しいってんだ。
 それを楽しいと思えるなんて妬ましい――
 下らねー姫様の玩具と一緒に馬鹿みてーに遊ぶんだな。俺の仕事はまだ後だ。
 精々、頑張って生き延びてみるんだな――

          <ヴィマラ (p3p005079)の関係者"スカベンジャー"ヴィマル>
2018/8/12

パルス・パッション

 やあやあ、皆のアイドルパルスちゃんが参上だ。
 大闘技場『ラド・バウ』で『自由競技』が始まったって知ってる?
 これからはラド・バウでもガンガン鍛えられるみたいだよ!
 記念に今だけ獲得経験値がちょっと多いらしいから覗いてみてね!

 更に今日はそれだけじゃあ無い。
 何とボク主催の『ローレット・トレーニングII』が開催中!
 この夏は君もTETTEIだ! 頭から爪先まで筋肉色でボクと握手!
 ……言っておくけど、ボクは柔らかいからね。ホントだよ?
2018/8/18

青空乗せて、紙飛行機

 平和は良いが、なんじゃ……暇じゃのう。
 そうじゃ、暇なら――暇じゃなくすればいいのじゃ。
 願いを描いた紙飛行機を飛ばす『空まつり』……
 それに特異運命座標の皆が来てくれれば、面白い話も聞けそうじゃし。
 あの空まつりなら喜んで貰えると思うしな――

          <ブーケ(p3p002361)の関係者ミルテ>
2018/8/23

アネモネ・バードケージ

 ああ、もう。何て奇跡! 何て僥倖!
 あの子が自分から会いに来るなんて!
 きっと小賢しい事を考えているのでしょう。怯えて、嘆いて、震えながら……
 ……震えている癖に、なんて愛おしい。
 ああ、楽しみ――本当に、神様って何て素敵なのかしら。
 いつも、いつでも、こんなにも。御慈悲と加護深く。
 こんな私を見守って下すっているのですものね!

          <ベルナルド=ヴァレンティーノ (p3p002941)の関係者"アネモネ・バードケージ>
2018/8/30

昏き渦の中

『新米情報屋』 ユリーカ・ユリカ(p3n000003)
「各国で『魔種』らしき悪党の姿が見えるのです。
 比較的平和な海洋ですが、狙いが分からないので油断は禁物なのです。
 また何かを企んでいるのかも知れないですからねぇ……」

『ふわふわな嫉妬心』 エンヴィ=グレノール (p3p000051)
「……妬ましいわ。何だか、楽しそうだったもの。
 調査を無事に完了したけれど……これからどうなるのかしら?」

『凛花』 アクア・サンシャイン (p3p000041)
「調査結果とこれまでに分かってる情報をユリーカがまとめてくれたのよね?
 自然発生でないことを判明させてから、急展開ね。まさか、渦の中に古代都市なんてものがあっただなんて」

『リグレットドール』 シュリエ (p3p004298)
「(最強ぷりてぃーなわらわのファミリアーも役に立ったにゃーって顔)
 うむ、古代都市に向かう手はずも整えなくてはにゃ! こわ……怖くはないにゃ!」

『新米情報屋』 ユリーカ・ユリカ(p3n000003)
「これも皆さんの調査のおかげなのです。
 シンデレラ……幻想でのサーカスの一件で取り逃がした魔種、チェネレントラって、そう言えば、そういう意味じゃなかったですっけ……?」
2018/8/31

アルテナ・フォルテ

 最近、ローレットめちゃくちゃ忙しいわね……
 頼りにされてるのか平和じゃないのか……ちょっと分からないけれど。
 ゴッデスの人から、くじらさんまで……
 イレギュラーズの交友関係が広がったり、活躍してるのはいい事よね。きっと、うん。
 きっとこれからも色々な関係者が増えるんでしょう。
 ……………ところで、私に素敵な人は何時現れるのかしら。
2018/9/1

蠍と凶手
 平和極まる夏の喧騒はこの世界の一幕だ。
 屈託なくバカンスの時間を楽しむ人々の数は多いが、生憎とこの世界はそればかりでは出来ていない。
 密やかな悪意は人知れず侵食し、世界の一片を構成する『日常』である。『魔種』なる新種のプレイヤーが大暴れした一方で、未だ解決を見ていない禍々しき火種は何処にでも残されていた。いや、むしろあのローレットが――特異運命座標達が勝ち取ったかけがえのない安寧の時間は故に尊いとさえ言える。
「――命知らずめ。ここがどういう場所だか、俺が誰だか分かっているのだろうな?」
「さて、な。主の名とこの場位は心得ていよう。
 わしの酔狂も又然り。しかし、主にそれ程の価値があるかは未だ知らぬわ」
 ターバンの盗賊王――『砂蠍』のキング・スコルピオはその細い瞳に一層剣呑な光を宿らせていた。彼を大いに煽り、苛立たせるもう一人の男――派手な着流しを纏った剣客、死牡丹梅泉は相手の殺気にも頓着せず、全く自由な有様だった。
 梅泉が砂蠍の幻想内の暫定本拠に訪れる事で始まったこの『会談』は密かに勢力を回復しつつある砂蠍の一派に囲まれてのものとなっている。なればこそキングの言は尤もであり、例え梅泉がどれ程狂気的な技量を持ち合わせていようとも、いざ事を構えればこの場を逃れるのが中々骨である事は間違いのない事実であろう。
「まぁ、主が相手をするというのであれば重畳。
 だが、有象無象を向けてくれるな。それは面倒というもの故」
 ……だが、梅泉は御覧の物言いである。基本的に彼はキング以外を見ていない。
「……チッ、訳の分からん野郎だ。だが、その度胸に免じて質問するぜ。
 その答えが気に入れば――そうだな、用件位は聞いてやる」
 キング・スコルピオは基本的に冷静で慎重な男である。彼のその気質が、暫く前に起きたラサでの大討伐から一派を辛うじて逃げ延びさせた。腕前は確かで残忍だが、蛮勇を誇る真似はしない。むしろ正体不明の相手に望まば、このように新たな情報を伺いたがるタイプでもある――
2018/9/1(2/2)

「ならば問うがいい、蠍の」
「てめえは、どうやって此処を嗅ぎ付けた?
 確かに蠍は幻想内で力を取り戻してる。ここを知る人間もゼロじゃねえ。
 だがな、ここに居る連中は謂わば――『新生砂蠍』の中核連中だぜ。
 有象無象の盗賊共は従えても、ここは知らねぇ。
 つまり、お前がここに居るって事は……」
 キングの言葉に周りの盗賊達が青褪めた。一斉に首を振り、自身の潔白を訴える。
 成る程、彼は圧倒的に畏怖されている。残酷と狡猾を併せ持つ盗賊王であるが故に。
「物事に絶対は無いという事よ。主がどれだけ慎重に上手くやっても嗅ぎつける犬はいる。
 ……まぁ、性質の悪いのに目を付けられたとは言えるか。
 安心せい、官憲やらローレットやらはここを知らぬ」
「信じるとでも?」
「単なる事実じゃ」
 キングは咳払いを一つした。
「成る程、まあいい。次だ。今度はてめえの用件を聞かせろよ。
 ま、官憲の知らねぇ話なら――てめえの心算がどうあれ面白い話を聞かせてくれるんだろうがな」
「わしの心算だけを言うなら、主を斬りたいと――こうなるが。
 まぁ、仕事は仕事じゃ。わしの今日の用件はつまらん使い走り――伝言役じゃな」
「ほう……?」
「わしには大した意味のある話では無いがな。主にとっては面白い話やも知れぬぞ。
 まぁ……性悪同士の話じゃ。折り合うかは知れぬが……主は『復讐』を望むのじゃろ?」
 梅泉の言葉にキングはすぐには答えなかった。
 相手は正体不明、さりとて、野放しにも出来ぬ。気にならぬと言えば噓となる――
「もう少しだけ、戯言を聞いてやるぜ。聞くだけ、だがな――?」
「それで構わん。わしにはどうでも良い事じゃ。
 主がどういう結論を下しても、わしを殺すと言い出そうと」
「――ハ!」
 キング・スコルピオは言葉を鼻で笑い飛ばす。
 むしろ、そちらが望外じゃ――と語らぬが華は梅泉か。
 蠍と凶手の会談はかくて続く。
 終わりを匂わせる夏の夜が、周りを僅かに寒からしめる――鬼気を帯び始めた事は間違いなかった。
2018/9/11(1/2)

愉悦とゲイム
 商都サリュー。混乱の多い幻想で最も安定していると呼ばれたこの街は、今や最も安定しながらも、最も混乱を望む場所に成り下がっている。
「して、首尾はどうなんだい。きっと良い報せを聞かせて貰えるのだろうね?」
 飄々と言うクリスチアン・バダンデールこそ、サリューの『王』。圧倒的な財力と確かな政治的基盤、人望と才覚を有しながら『まるで人が変わってしまった』彼は、まさにこの街の抱く病巣そのものである。性急さを知らず、稚拙さを嫌い、優雅に華麗に――そして実直に困った事には勤勉に。『魔種』と呼ばれる存在の多くが抱く欲望(げんざい)に身を灼きながら、派手な事件を起こすのとは対照的に彼の遊戯(ゲイム)は『熱のない熱情』を現すかのように静かであった。
「戯けが。わしに言葉遊びを弄するでないわ」
 前髪を軽く弄るクリスチアンを一蹴したのは彼の視線の先に居る梅泉である。
 クリスチアンの『使い走り』で梅泉がかの盗賊王の元を訪れたのは暫く前の出来事である。
「結論から言えば主次第といった所か」
「ほう?」
「しかし、存外に慎重な男よ。彼奴め、微塵も隙も無い」
 顎で結果を問うクリスチアンにこそ『問答は無意味』と考えたのか梅泉は不親切で一方的な報告を始めた。
「首でも刎ねてやろうかと思ったが、なかなかどうして――愉快な輩よ」
「……君ねぇ」
 雇い主が雇い主ならばメッセンジャーも不良に違いなかった。梅泉の眼鏡に叶ったキング・スコルピオは問題なく健在で、クリスチアンの伝言が一応は果たされたのは――果たして、幸か不幸か。
「まぁ、諸手を上げて飛びついてくるような男じゃないのは知っている。
 だが、どの道彼も手詰まりだ。やがて、此方の話に乗るさ」
「自信家め。傲岸不遜にして身勝手――主も随分と変わったな?」
「出会った頃よりはね。目的が違えば手段も思考も変わるものだ。
『君と出会った時、私はこのサリューを維持し、発展する事を望んでいた』。
 一方で、今の私は」
「理由も何もなく、唯試してみたいのじゃろう?
 その手で、その力で、どれだけの混乱をばら撒けるか――世界をどれだけ破壊出来るか。
 酔狂よな。黙っていても面白おかしく生きられように」
2018/9/11(2/2)

「は、心にも無い事を言うなよ。
 首までを腐肉に浸けたそんな怠惰に意味はない。
 この生き方はむしろ君に近いだろう?
 ――だから私は理解しているんだ。
 皮肉屋の君が今、案外気分良く仕事をしている事もね」
 クリスチアンの断定に梅泉は呵々大笑する。
「全くじゃ。主がそうでなければ、素っ首戴いてとうの昔に辞去しておる。
 払いのいい雇い主のお陰で、食うに困る事もない故な」
「良く言うよ。困ったら辻斬りの一つでもしてみせるんだろうに、君は」
 笑えない冗談をかわす二人は慣れた調子で殺気をかわす。一見すれば愉快極まる歓談の様子だが、何時殺し合いになってもおかしくないのはここも同じ。混ぜるな危険とはこの事だ。
「仕事は果たした。次は主の出番になろうな。
 幸いに主は商人じゃ。それもとびきり悪辣な――その良く回る舌を精々こき使うが良い」
 ソファにどっかと腰を下ろした梅泉は大した興味もなさそうに皮肉を投げた。
「そうとも。私は商人だから――盗賊如きに決して遅れはとるまいよ。
 まずはそうだな、『手付け』だな。功利主義者は判り易い。
 どの道、彼等にはもっと強くなって貰わねば困る。
 彼等は駒になる心算は無かろうが、それも含めたコン・ゲームさ。
 ご苦労だったね、バイセン。君への『報酬』は用意するとして――引き続き付き合ってくれたまえよ」
 酷薄な笑みを浮かべたクリスチアンはゆっくりと続けた。
「何、本編は退屈なゲイムかも知れないがね。
 世が乱れる程に戦いと強敵(きみののぞみ)も果たされる。
 ――十分に報いられるだろうさ。君も、君のその刀にもね!」
 退屈。退屈。退屈。退屈。

 もっと、もっと、もっと――

 あのサーカス等話にならない位の混乱を。世界の名を冠するような混沌を。
 誰しもが驚愕し、忘我し、泣き叫ぶ――最高の恐怖劇(グラン・ギニョール)を。
 誰もが呆れ果て、諦念し、笑う『しかない』――究極の喜劇(トゥラジコメディー)を。
 最高の筋書き(ドラマ)には最高の役者(キャスト)が不可欠だ。
 心してかからねばならぬ。指揮者(タクト)の無様等誰が望もう?
「ああ、愉しい。人生がこんなに愉快なのは――本当に何時ぶりだろうね?」
 彼は堅実に生きてきた。
 誰もに慕われ、誰もに施し、可能な限りで多くを救ってきた。
 己の才覚全てを『維持と発展』に向けていた天才が裏返れば、その時は――
2018/9/20(1/2)

<悪性ゲノム・異常発生の噂>
「まったく、ようやく国が落ち着いたと思ったのに今度は盗賊団が攻めて来るなんて」
 幻想の中心街にある食事処にて、安酒で気分を紛らわそうと集まった者達が幻想に再び訪れた危機に嘆いていた。
 彼のサーカス団『シルク・ド・マントゥール』を中心にして引き起こされた幻想蜂起。それらを貴族、イレギュラーズの連携で鎮圧し、幻想の人々が平穏と勝利に酔いしれていたのがついこの間の話だ。
 あれ以来、いくらかの村や市街にて「イレギュラーズに憧れて」なんて理由で青少年達が自警団を結成し始めたという頼もしい話もある。
 しかしながら実戦経験の薄い彼らに、盗みや殺しに手慣れた盗賊団への戦果を期待するのは酷である。しかも此度の盗賊は、異様に采配が取れていると聞く。
 ……情けない話であるが、やはり盗賊団への対処は貴族直属の兵士やイレギュラーズに頼るしかあるまい。酒を飲んでいる男性がそうこぼしながら、ため息をついた。
「だけど、自警団の若い子達も頑張ってるってよ。寝ずの見張りとか、あと害獣駆除とかね。近頃は鼠とか野犬の被害が妙に多いでしょ」
 食事処の女将は配膳の最中に愚痴を聞き、自警団に対してのフォローを入れた。
 盗賊団の被害とは別に、最近は野生の動物による家畜や食物への被害が多い。貴族お抱えの学者など知識陣によれば、それら動物の異常繁殖が発生しているとの事である。
 原因は「急進的な開拓によって生態系が崩れた」やら「天敵を駆除し過ぎた」やら推測がされており、詳細の解明に彼らは頭を悩ませているらしい。いずれにせよ、その辺りの学術的な事について我々市民は関心の無い話だ。
 とにもかくにも、自警団の者達は異常繁殖した動物らの駆除を率先して行なってくれている。彼らに明確に出来る事といえば、現状はそのくらいだろう。
 我らが自警団は随分と御活躍なさっている様だと、男性らは苦笑を浮かべる。その皮肉的な物言いに、女将はムッとしながら叩きつける様に皿をテーブルに並べた。
「そんな事言ってからに。酒かっくらってるアンタらの方がよっぽど情けないよ! ほら、肉でも食って御国の為に働いてきな!」
2018/9/20(2/2)


 そんなやり取りを隅の席から聞いていたローレットギルドの傭兵ことエディ・ワイルダー。
 若い者達が率先して自治に協力する事は喜ばしい事だが、異常繁殖と聞いてエディは漠然としたモノを感じていた。
 生物学的な事は、彼も門外漢だから難しい事は分からない。ただ、その手の事は学者なり情報屋なり、専門家達が事前に何かしらの予兆や原因を察知してくる事も多いのだが。今回はまさしく、突然降って湧いた様な話だった。
「湧いて増えるのは、せめて蠍だけにして欲しいものだ」
 ただでさえ国内の状況が不安定なのだから、これ以上良からぬ事が起こらなければいいのだが。
 混沌世界はその名の通り、時に予想もし得ない状況を引き起こす。
 エディの直感に根拠は無かったが、どうしてか胸がざわつく時――何かが起きた事は少なくない。
 ……ローレットに戻ったら情報屋達に相談してみるか。彼はそう思いつつ、女将と男性らによる喧騒を後にした。
 そう、唯の杞憂であれば何の問題もないのだ。しかし、そうでなければまた何か――
2018/9/29

<泡渦の都>

キヒヒヒ――ッ
来るのかしら? 来るのかしら? また死んでしまったのね。
きっと死ぬときはさぞ気持ちよかったのでしょ? いいなァ、チェネレントラもそうなりたいわァ!
王子様に愛(ころ)されるってなァんて素敵かしら?
オーナーもクラリーチェも快楽(いいこと)ばっかり羨ましいわ。
死体漁りクンのお仕事はチェネレントラは知らないけれど、楽しみね、楽しみね。
早く会いに来てね、王子様たち。

※大いなる海洋を舞台に魔種の暗躍が続いています……
<Autumn Festa>

……秋祭り? 暑さも少し和らいで涼しくなってきたね。
蠍とか、色々で騒がしいけれど、遊びも大事だよね。秋祭りが行われるんだって。
ボクはあまり詳しくないけれど……『ふぁっしょん……の、秋?』のお祭りがあるらしい。
そういえば、今月の末には……『姿が変わる魔法の日?』があるそうだね。
アンタがどんな姿に変わるか、ボクも楽しみだな。
2018/10/5(1/2)

水底より仄暗い『愛』を込めて

 悪意は水底に蟠る。
 勢力圏の殆どを大いなる海洋に覆われたネオ・フロンティアは刺激的なミステリーと嗜虐的なドラマに満ちている。
 昨日も、今日も、そしてきっと明日も――
 今はない旧世界が海中に沈もうと、今ある王国が騒がしく人の生業を続けていようとも。
 そんな事はお構いなし、とばかりに確かに脅威は存在し続けているのだ。
 ――昨日も、今日も、きっと明日も。
「うふふ。乙女の登壇再び、ですわあ」
「……本当に出たがりよねぇ、アンタ」
 幼い美貌に危険な色香を漂わせる『自称乙女』――最も危険な『妹系』ことルクレツィアに呆れ半分の感情を隠さないアルバニアが応じた。
『七罪』と称される御伽話の存在は人の世に確かな存在を刻んでいない。
 しかしあの大規模召喚のその日から、或いは幻想で嘘吐きサーカスが敗れたその時から。
 確かに彼等は動き始めているのだ。人知れぬ深い闇、濁って見通せない水底にその身を揺蕩わせながら。
「我儘と気まぐれ、癇癪は乙女の華というものでしてよ?
 貴方なら、分かって下さると信じておりますわ」
 ルクレツィアの言外には「いけずのオニーサマではあるまいし」と皮肉が滲んでいる。
 それを口にした瞬間、彼女の瞳の中には狂おしい熱情と殺意が燃えているのだが――当然アルバニアは取り合わない。
2018/10/5(2/2)

「……まぁ、いいけど。一応、海洋(ここ)はアタシの縄張りだってお忘れなく。
 あの子――ええと、チェネレントラだっけ。あの子は随分お気に入りなのね」
「乙女のリベンジは当然の権利でしてよ。私も、あの子も同じ事でしょう?」
 ルクレツィア独自の理屈にアルバニアは「まぁ、いいけど」をもう一度繰り返した。
 イノリは「それぞれ自由にやれ」と言っていた。まだ本格的に動き出した七罪は居ないが、活動場所が被っていけない法も無い。
 自分達は基本的には自由気ままに独立した存在――大罪とは独立しているべきもので、混じり気の無いものなのだが――どうしても噛ませろと言われれば。自覚して自分は甘い。恐らくはルクレツィアはそれも計算の上で、自分が根を張る海洋を選んだのだろうと、アルバニアは苦笑した。
「でも、あんまり調子に乗ったら駄目よ。物事には順番があるし――イノリも言ってたでしょ?」
「分かっておりますとも。そこは、アルバニアもオニーサマと同じように仰るのね」
「……ホント、いい加減『淑女(レディ)』になってよね」
 ご機嫌のルクレツィアを半眼で眺め、アルバニアは溜息を吐いた。
 どれ程の永きが過ぎようと変わらない『妹』は言われて聞くような相手ではないけれど、『天真爛漫にとびきりの無邪気を載せた邪悪の塊』はそれを周りに認めさせる不思議な力を持っている。
「ああ――」
 笑うルクレツィアは美しい。まるで理想的な少女のようだ。

 ――まるで、全く夢見がち。この世に思う侭にならない事が無いと疑っていないかのような。
   我儘と乙女心でデコレートされたお姫様、なんて。
   ああ、羨ましい。ああ、妬ましい。この手でバラバラに――してやりたい位に!
2018/10/6

<泡渦カタラータ>

 キヒ――ッ、キヒヒッ!
 オーナー、オーナー、麗しのチェネレントラの『ママ』。
 乙女ってどうしてこうも意固地でずる賢くて欲深いのかしら?
 サーカスの時も楽しかったわ?
 けれど、乙女は執念深い生き物でしょう?
 だから、考えたの。この海洋(おしろ)は嫉妬(かれ)のものだけど。
 遊び場にするくらい、少しは許してくれるでしょう?
 ねえ、ヴィマル。それまでおやつをあげるから良い子にしていて?
 ねえ、オーナー。キモチヨクなってアタマまでトロケちゃうまで、少し遊ばせていて。
 ここは深海。素敵な場所よ。ねえ、早く愛(ころ)しに来てよ。

 あら、ご存じなくて……?
 乙女と魔種(オンナノコ)は自分の気持ちに正直なのよ、王子様!

※中規模全体依頼が発動しています!
 海洋に突然発生し、国を騒がせる謎の大渦事件。
 それに関係して海洋の海底古都に危険な魔種の存在が確認されました。
 今回の事件を首謀したと見られているのは、『道化師』チェネレントラ。
『あの』シルク・ド・マントゥールでローレットと因縁を持つ魔種の女です。
 事態を受け、海洋女王イザベラと貴族派筆頭ソルベはローレットに事件の解決を要請しました。
 海洋王国の民を『人質』にとったこの動きに、まさに魔種を破ったローレットの働きが期待されています!
2018/10/12

ディルク・レイス・エッフェンベルグ

ああ、お前達。久し振りだな。
え? 誰かって――冷たいねぇ。ローレット・ワークスの時会っただろう。
改めて、俺はディルク。ラサで傭兵をやってる。気が向いたら覚えといてくれ。

……さて、今日来た理由はって?
ああ、そりゃあ――そう。うちが逃した『砂蠍』が今幻想で暴れてんだろ?
執念深くて厄介なヤツだ。簡単にはいかないだろうが、生憎とうちも外国には手が出し難いんでね。
迷惑かけたついでにレオンと話をしに来たって訳だ。

ついでに、お前達にも今度ラサで『サンド・バザール』が開催される事を知らせようと思ってよ。
世界一とも言われる大市だ。気が向いたら是非、見学にでも来てくれよ。
なあに、お前達が『見学』する為の軍資金はレオンに預けてある。

こちらは文字通りの迷惑賃だが、受け取っておいてくれ。
じゃあ、『期待』してるぜ。イレギュラーズ!


※ディルクが訪れ、サンド・バザールの開催が告げられました!
 また、ディルクから活動実績があるイレギュラーズに2000Goldが配られます!
2018/10/13

<青雀とTHEO事件>

こんちゃッス!
……
……………
……あー、その顔……
…………そんな露骨に警戒されると僕も傷つくッスよ?

サンド・バザールとかで盛り上がってる所申し訳ないッスけど!
あちこちにレギオニーターって怪物が各地に出現したッス。
怪物は何でも食べちゃうヤツで、とにかく危険が危ないッス。
先輩方の力で、なんとかお願いするッスよう!

それにしても、なーんかアレに似てるんッスよね。
ホント、どこに居るんだか。
芋虫はってヤツは基本的に『幼体』ッスからねえ……
2018/10/14

<パスクァーレ・アレアドルフィ>

……全く、益体もない。
……折角、この国も少しはまともになったかと思えば……
次は物の道理も分別もない賊徒共がこうまで増長するとは。
さて、これが賊共の単なる蛮行だけならばそう大きな問題にもなるまいが……
どうも、それだけではない何かを感じますね。

眩闇に身をやつしたとて、侮られたもの。
総ゆる理不尽を憎む私を雇いたい、等と愚挙の極み。
既に血に汚れた身。純潔の『正義』に拘る心算は無いが、さて……
2018/10/19(1/2)

<鉄帝南部・幻想北部国境線>
 厳しい気候風土にさらされるゼシュテル鉄帝国にとって、南部に広がる肥沃な領土の獲得は悲願であった。
 逞しく強靭な肉体と精神を有するゼシュテル民は過酷な環境にも負けず、強大な帝国を維持している。されど、彼等が現状で生きていけるかどうかと、凍らない港――国土的な豊かさを求める心は全く別問題である。
 かくて、彼等はその肥沃な大地にあぐらをかく――特にこの数代は腐敗と弱体化の著しい幻想(レガド・イルシオン)との戦争状態を続けている。何時から始まったか覚えている者も少ない戦争は、その時々で激しさを変えながら延々と繰り返される二国間の風物詩とも言える状況となっていた。
 ここ暫く、大きな戦闘が起きなかったのは言うまでもない。
 よりにもよってあの幻想に特異運命座標を束ねるギルド(ローレット)が存在するからだ。
 鉄帝国は神託のあれこれに真剣な国ではないが、彼等がパワーバランスを崩し得る存在である事は理解している。直接的に彼等と争うかどうかを別にしても――例えばあの天義(ネメシス)の動向が変わるだけで状況は劇的に変化すると言えるからだ。
 鉄帝南部、幻想北部の国境線は両国軍が睨み合う事実上の最前線である。
 幻想側は有力貴族の持ち回りだが、鉄帝側は一人の名将が受け持つ絶対領域である。
「……とは言え、だのう」
 顎に手をやりつつ、何とも困ったように声を発したのは黒鉄の巨漢――『塊鬼将』の名を数多の戦場に轟かせる『その』ザーバ・ザンザだった。
「何時までもこまねいておる訳にもゆかぬし、宰相殿は胸が痛かろうしなあ」
「鉄帝国の冬は厳しい、ですからね」
 傍らの副将に「うむ」と頷いたザーバは思案顔であった。
 敵陣容はアーベントロート派を主力にした軍閥らしく、睨み合いは今日も続いている。
 幻想の北部要塞は堅牢で、守備の中核を担うその場所を巡る攻防がこの数年の小競り合いの中心である。
 言ってしまえば国境は今日も『日常通り』といった所なのだが――
「……将軍。例のお話を考えておられるのですか?」
「実際の所、主はどう思うよ?」
「例の使者の話は……何分、寝耳に水の話過ぎて……
 我々の調査でも『砂蠍』なる盗賊が幻想を荒らしているという事実は裏付けが取れておりますが」
 ザーバの視線を受けた副官は少し思案して、その結論を言い淀む。
 鉄帝国らしからぬこの副官はザーバが信をおくだけあって、中々に慎重さも兼ね備えた人物である。
「その盗賊が幻想側にある謎の人物のコントロール下にあると。
 しかもその人物は鉄帝国の有利を図っている、と聞けば。
 十中八九――いえ、九分九厘罠としか考えようがありませんね」
「ま、そうだろうな」
 副官の至極真っ当な結論にザーバは気も無く頷いた。
「この時期に俺達が焦れるのも――此処暫く小競り合いが起きてねえのも計算に入れてるかのような話だ。
 確かに。例の盗賊共が上手いキッカケを作れば、そりゃあ俺達の千載一遇の機会になる。
 宰相殿や国民は『そういう手』を嫌うだろうが、まぁ。元はと言えば俺達の仕掛けじゃねえし――そもそも戦争ってのは敵の弱みを突くもんだ。手加減とフェアは違う。『本当なら至極有効』って事は、『露骨過ぎて罠』って事の裏返しでもある」
「では、やはり罠ですか」
「多分な。しかし」
 自身の言を肯定され、何処か安堵した顔を見せた副官にザーバは続ける。
「本当だったら、どうする」
「……は?」
「露骨過ぎる好機を本気で演出する幻想側の有力者が居たら、どうする。
 それだけの仕掛けを用意しながら何一つ要求してこない――売国奴とも違う何者かが居たらどうする。
 言っただろう。焦れるこっちの気持ちを見透かしたように来やがる、と。
 つまりだな、これを持ちかけた人間は真偽問わず『性格が物凄く悪い』ヤツだろ。
 そんな破綻者なら、逆説的に何をするか分からないってのもあるだろうのう?」
 ザーバは副官に危急の為の臨戦態勢、出撃準備の徹底を命じる。
 見極めるのはこれから。しかし肝心のその時に動けなければ遅きが過ぎる。
 嘘ならばそれで良い。罠ならば踏み潰してみせる、そして好機ならば逃すまい。
「俺に任せておけ」
 ザーバ・ザンザの言は雷の如き絶対である。
「――は! 幻想側に気付かれぬよう、各隊に通達をいたします!」
 幾多の不可能を可能にしてきた彼に、副官は背筋を正して敬礼した。
(……さて、しかし状況は怪奇。嘘にせよ真にせよ、正直を言えば複雑だのう)
 彼とて、鉄帝軍人。正面衝突で敵を打ち破らんとする喜びは痛い程知っている。
 フィッツバルディの黄金騎士やアーベントロートの青薔薇を正面に引っ張り出せるなら、それが一番いい。
 だが、彼は鉄帝国の守護神である。自身の双肩に飢え、凍える子供や国民の望みが掛かると考えれば――
2018/10/22(1/2)

騒動の後
 騒動の後、バダンデール邸にて。
「――それで、改めてだ。彼等をどう思った? バイセン」
「主ともあろう者が、実に胡乱な問いをする」
『サリューの王』クリスチアン・バダンデールの何とも当を得ない曖昧な問いに、死牡丹梅泉は心底面倒臭そうにそう応えた。クリスチアンの問いは一見すれば先にイレギュラーズが請け負った『砂蠍』対応の事を指しているのだが、彼はそんなに判り易く平面的にモノを言う男ではない。腐れ縁でも縁は縁、梅泉は明敏にそれを察して呆れてみせたのだ。
「主の聞きたい台詞かどうかは知れんがな。概ねにして侮り難し、といった所か。
 もっともわしからすれば此度の結果は朗報よ。
『巨獣狩り』なぞ達成された日にはその場でわしが狩りたくなるわ」
「まぁ、私の見解も概ね同じだ。彼等には意地悪をした心算だったのだが、欠けずに戻ってきた以上はね」
 冗句めいて笑えない事を言うクリスチアンに梅泉は「ふん」と鼻を鳴らした。
「そうむくれるなよ。『死滅』の件は何度も詫びているだろう?」
「茶番は好かぬわ」
 苦笑するクリスチアンを一蹴した梅泉は相変わらずの不機嫌面である。
「……とは言え、じゃ。主にも主の予定があるのだろうよ。その目的を考えれば、な。
 蠍の消耗を嫌う考えは分からんでもない。
 じゃが、次はないぞ――次のわしは必ず斬る。神が止めようと止まらぬぞ」
「……ま、そんな命知らずは神位のものだろう。文字通り」
 クリスチアンは「安心したまえ。次は存分に蠍も狩ってもらうさ」と応じた。
「私もアーベントロート麾下だ。点数は稼ぐ必要があるからね」
「どうだか。して、次はどうする。主の事じゃ。もう仕掛けは済んでいるのであろう?」
「勿論、万端だとも。駒は配した。そろそろ大きなゲイムが始まるぜ」
 クリスチアンにとって言うまでもなく――自身以外の全ては駒でしかない。
 彼一流の悪徳の流儀に従って、事は順調に運ばれている。
 全く安全な場所から悪意を繰る指揮者(コンダクター)気取りは、開演の時をまさに待ちわびている。
2018/10/22(2/2)

「全く愉快な程の狂人よな」
「君にだけは言われたくないさ」
「首が恋しくはないようじゃな」
 気安い友人同士のようなやり取りはどうしようもない位の剣呑に満ちている。
「じゃがな、クリスチアン」
 片目を閉じたままの梅泉は不機嫌の名残をようやく片付けて口元だけで笑む。
「言うてしまえばそれが良い。わしが主を評価する理由は一つよ」

 ――主はまさしくこの世の毒じゃ。世を乱し、かき混ぜ、わしの望む闘争を、危機を呼ぶ。
   その為に生まれついた、何と迷惑な男よな!

「――何とでも言ってくれ。
 私を理解出来るは、私以外には居ないだろう。
 唯、君とは唯一にして絶対だ。君とは目的という名の手段を共有出来る。
 だからね、私は私らしくもなく君とは友情を感じないでもないのだよ」
 梅泉は呵々大笑し、クリスチアンは芝居掛かって一礼する。
「――では、期待を御覧じろ」
 危険な剣士に愉快気に評された美しい男もまた、剣士と同じく全く悪魔の顔で笑っていた。
2018/10/23

<深海古都にて>

「ルル――ルルル―――」
 饐えた匂いのするこの事をチェネレントラは甚く気に入っていた。
 屋敷の下に設けられたパーティーホールも、何より、忘れ去られた屍骸たちがわんさか眠っている事だって彼女にとって居心地のいい場所となる重要な要素であって。
「逢えたわァ、来てくれたわァ、でもフェアじゃないものねェ。
 チェネレントラを愛してくれる王子様にも、この場所の事を深く知ってもらわないと、ねェ?」

 ルルル――ルル――♪

 謳いながら乙女はからから笑う。きっと『愛しい人』もこの場所を気に入ってくれる。
 だからこそ招いた。彼らが飛び切り好きな『人命(エサ)』まで用意して。
「気に入ってくれたかしらァ、チェネレントラのお気に入り。チェネレントラの大好きな場所」
 そんな場所に自身を愛してくれる王子様が来てくれるなんて――
 幼い頃に夢見ていたシチュエーション。乙女の甘い夢(エニュプニオン)。
 また、と誓った王子様たちがいる。きっと、彼らは硝子の靴を持ってこのパーティーホールへ迎えに来てくれるだろう。
 魂を囚われた様に己の夢に生きる灰被り(シンデレラ)。童話は何時だって繰り返し同じハッピーエンドを見せてくれるとは限らない。
 だから、女は一人で待っている。王子様の迎えを、この夢が醒める時まで。
 名前を呼んでくれる人がいる快楽を。
 己と血潮を流し戦ってくれるという快楽を。
 その瞳に己を映し込み一心に求めてくれるという快楽を。
「楽しみねェ――また、来てくれるって言ってたわァ。
 その時は、あなたのかわいいかわいい妹ちゃんもご招待しましょうねェ」
「……下らねェ」
 チェネレントラはこの場所を甚く気に入っている。
 だから、この場所で待っている。
 大渦の中、乙女は愛されるその時を待ち焦がれながら。


※魔種の狂気は深く、重く――その企みはまだ蟠っているようです……
2018/10/27

<キング・スコルピオ>

いけすかねぇ協力者様曰く――
『貴族軍は鉄帝の動きを受けて北部戦線で膠着する』ね。
いいだろう、何一つ気に入らねぇが乗ってやる。これが蠍の宴の始まりだ。
従わねぇ奴、幻想貴族、何よりラサのクソ犬共!
……それから、ああ。やっぱり来たか特異運命座標(イレギュラーズ)!
いいぜ。かかってこいよ。
俺を使った気になってるクソ野郎含めて、きっと皆殺しにしてやるぜ!


※『盗賊王』の軍勢が幻想南部に本格侵攻を開始しています!
2018/11/1

<砂の都の珍客>
 夢の都・ネフェレスト――
 世界各国からありとあらゆる人間が、モノが集う砂漠の大オアシスは平時から人種の坩堝である。
 加えて、今夜はファントムナイトなのだから――特別な何かが混ざっても誰一人として気付かない。
「オジサマ、見て見て! びっくり南瓜スープだって。何が吃驚なのかしら?」
 快活な声は楽しげに弾む。薄く色付く桃色の竜の角の乙女は軽い足取りのままにくるり、と振り返る。『領域』から出ることが少ない彼女にとって、サンド・バザールに並んだ品々はどれも珍しい物ばかりだ。
 対するオジサマ――草臥れたコートに髭を生やした紳士並ぶ食品類をまじまじと見ながら購入の検討を進めている様だ。彼のなりは軽く枯れたナイスミドル――といった風だが、彼の目は些か真剣過ぎる位に屋台の食べ物達ばかりを見つめている。
「琉珂、このスープとパイ、それから……」
「ええ、ええ。分かっていますとも」
 琉珂と呼ばれた少女は『オジサマ』の言葉に胸を張る。それは得意げに。
「ええ、オジサマがお腹いっぱいになる位に購入していいわ。
 こういう時の為にわたしも『お小遣い』を貯めて来たのだもの。
『領域(くに)』のみんなに文句も言わせないんだからね。
 わたしはあっちにあるかぼちゃジュースが飲みたいわ。オジサマも如何?」
 君の小遣いで私の腹は満ちないだろう、とオジサマは言わない。
 ……それは、一見して保護者とそれに良く懐いた少女の何の異常もなく、全く平和な光景である。
 ファントム・ナイトは異物も飲み込む。そこの誰も気付かない。気付け無い。
 自分への返答もそこそこにもう食事に夢中になっている紳士に対して竜乙女は楽し気に表情を綻ばせた。

 ――嗚呼、全く。鮮やかなれや、ネフェルスト!
2018/11/9(1/3)

<三貴族会議>
 幻想北部、アーベントロート別邸。
 平素、他派の貴族がこの場所に集まる事は無いが、この日ばかりは別だった。
 不倶戴天――とまでは言わないが犬猿の仲で知られるフィッツバルディ家、やり方が大いに違う為、滅多に連携を取る事は無いバルツァーレク家、そして当然ながら家主であるアーベントロート家に連なる貴族達がかの屋敷に一堂に会している。
『新生・砂蠍』を名乗る大盗賊勢力が幻想を荒らし回って暫くが経つが――今回の動きは出色のものだった。
 様々な問題を抱えた幻想貴族ではあるが、『自身の寄る辺を守る事』にだけは大変熱心である。今この瞬間の会合が示す通り、いざ自身の権益が侵され得る状況ともなれば、その時ばかりは一致団結を見せる連中なのである。盗賊王の軍勢が単なる収奪に留まらない国盗りの動きを見せている以上、貴族同士の対決が一旦休戦となるのは当然の事だった。
「北部戦線は予断を許さない状況のようですね。
 一方で幻想南部に侵攻を開始した盗賊王の手勢はかなり大規模な攻勢を強めている模様です」
「ふむ」
「地政学的に南北に分かたれた『敵』の配置は或る種の挟撃を達成しています。
 盗賊と鉄帝国の連携は不明ですが、敵の敵は味方という言葉もありますからね。
 少なからず彼等はこの好機をお互いに利用し合う関係には成り得るでしょう」
「下賤の輩めに、何ぞ知恵をつけたものがおるようだな。
 痴れ者の目的は知れぬが、余りにも不自然な動きではある。
 鉄帝国の将帥がザーバ・ザンザである以上――かような動きは無いものと思っておったが」
『遊楽伯』ガブリエルの言葉に苦虫を噛み潰したように呟いたのは『黄金双竜』レイガルテである。
 高齢のレイガルテは他の貴族よりも長らく鉄帝国の脅威と相対している。その彼をして余り前例に覚えがない今回の状況は、存在するかも知れぬ『何者か』を疑わせるには十分だったという事か。
「……」
 専ら貴族同士の軍議はこの二人を中心に行われていた。
 それは当然ながら立場、権威の問題であり、他にも理由があった。
 周囲の貴族が派閥の領袖たる大貴族のやり取りに、口を挟めない最大の理由は最後の一人である。
2018/11/9(2/3)

「……本当に鬱陶しい、羽蟲共!
 如何なる思惑があろうとも、諸共叩き潰して差し上げますわ!
 ああ、本当に苛立たしい。いっそ私が直接消して差し上げようかしら」
 平素は余裕の色を崩さない『暗殺令嬢』リーゼロッテの極上の美貌が激しい怒りに歪んでいた。
 幻想一危険とも称される美貌の令嬢の明確な殺気に一同は震え上がるばかりである。
 幻想北部を主な勢力圏とするアーベントロート家は、幻想貴族きっての武闘派である。必然的に北部戦線で鉄帝国と直接相対する機会も多い彼女が動きにくい状況に非常なストレスを感じているのが見て取れる。
「そう急くな。アーベントロートの。わしとて下賤に領地を荒らされておるのだ。貴様と同じ心持ちよ」
「……公爵様の領地はまさに『幻想南部』ですものねぇ」
「然り。故に怒りは同じよ。故に戻りたいのは山々だが――
 貴様の管轄たる北部の防衛にも助力しておるのは偏にこれがレガド・イルシオンの問題に違いないからだ。
 北部戦線が乱れれば、メフ・メフィート――つまり我等の中央が危険に侵されかねん。
 陛下もこれは望まず、我等に『全力の防衛』を命じられておる」
 言葉をより正しくするならば『フォルデルマンはそう命じさせられている』だが、それはさて置き。
2018/11/9(3/3)

「貴方に万一があれば、それこそ国の一大事です」
「あら、ご心配下さいますの? 流石にお優しい。
 しかしながら、遊楽伯。貴方は身共が失敗するとでも?」
「いいえ。しかし、鉄帝国の連中は『薔薇十字機関(アサッシン)』の対応に慣れておりますからね。
 我々も援護します故、どうかお気を落ち着けになりますように」
 政敵に加え、ガブリエルも言葉を添えればリーゼロッテは一つ咳払いをした。
 相変わらずその愛らしい顔立ちにはらしからぬ表情が浮いているが、触れない方が幸福というものだろう。
「皆も、手をこまねいているばかりではないでしょう?
 私も含め、この所の幻想貴族はこういった時にどうすれば良いか、どうするかの選択肢を得ている筈だ」
「特にお二人は同じでしょう?」とガブリエルが念を押すと、レイガルテは鼻を鳴らし、リーゼロッテの険しい表情は少し緩んだ。
 三人が思い描いたのは同じもの。
 南部の盗賊王に対応を依頼したイレギュラーズの顔、ローレットの事である。
「ザーバとて、力押しで我々の結集を押しのけられるとは思っていますまい。
 軍勢を動かす気配を見せているのは、半分は南部盗賊王の動きに対してのアシスト。
 もう半分は、あんな名将の考える事。私程度では及ぶべくもありませんがね」
 三貴族におけるバランサーの役割を果たすガブリエルは一先ず幻想側の暴発を抑える事を考えていた。
 それは盗賊王に対応するローレットを信頼してのものでもある。相手の侵攻となれば交戦は是非もなしだが、後顧に憂いを持って『こちらから』開戦の判断を切れば、どれ程の民に災難が及ぶかは分かったものではない。少なくともそれは率先して判断するべき最良ではないと考えている。
(頼みますよ、皆さん)
 不思議なものだ、とガブリエルは考えた。
 あの傲慢な黄金双竜も、怒れる幻想の青薔薇も。
 彼等を示せば、不思議に落ち着く――
「ふふ。確かに賊徒共等、私達が手を下すまでもない。料理を待つ獲物のようなものでしょう。
 ……上手くやって頂けたら、またお茶会にでもお呼びしようかしら」
 ――特にリーゼロッテの機嫌は驚く程、『戻っている』ではないかと。
2018/11/15

<キング・スコルピオ>

まぁ、『こんなモン』か――
幻想南部に幾らか拠点は作れたが……だらしねぇ。思ったより負けやがったな。
チッ、ローレットの邪魔が無けりゃ早期にメフ・メフィートを狙えたものを。
おかしな聖職者に絡まれて――この俺が逃した分も一層腹が立つぜ。
……まあいい。多少のイレギュラーは計画に付き物だ。
文字通りイレギュラーな連中に邪魔をされたのはムカつくが、蠍の毒から逃れられると思うなよ。
フギンの野郎が面白い真似をしやがったようだし――お楽しみはこれからだ。
貴族も、幻想も傭兵も――てめぇ等もだ。首を洗って待ってろよ!


※幻想南部を舞台にイレギュラーズと新生砂蠍の間で激戦が行われました。
 イレギュラーズの善戦により多数の戦場で砂蠍は撃退されましたが、幾つかの拠点が失陥しています。
 又、何名かのイレギュラーズが帰還していないようです……
2018/11/18(1/3)

<続・三貴族会議>

 幻想北部、アーベントロート別邸。
『嗚呼、この間等、まだ序の口――大いにマシに過ぎなかった』と。
 参加を余儀なくされた一人の幻想貴族は考えた。兎に角、早く帰りたい。軍費だろうと兵役だろうと協力するから、一刻も早くこの場を辞したい――そんな事を一様に考えているのは当然ながら彼一人では無かった。
「……塵芥が……ッ……!」
 自然に漏れ出た舌打ち、鈴鳴る銀の美声が嘘のようなその声色は、幻想の青薔薇――(見た目だけなら)幻想の至宝たるアーベントロート家のご令嬢には何処までも相応しくないものだった。
 触れた者皆、傷付けるを通り越して切り刻まれそうな位の不機嫌は最早誰に止める事も出来ず。
 これまで彼女を上手く操縦してきた『遊楽伯』ガブリエルも宥める事も出来ずに苦笑するばかりであった。
「……一先ず、まずは状況を纏めます。
 幻想南部への砂蠍の攻撃は概ねローレットが撃退してくれたようです。
 ……しかしながら、なかなかどうして敵も手強い。水も漏らさぬ、とはいかなかったようですが」
「想定内よ。何れにせよ受けた被害は大いに軽減したのだからまずまず褒められる結果であろう。
 元より我等貴族ならぬ傭兵の仕事なのだ。むしろ評価軸を情報修正するに値しよう」
 ガブリエルの言葉に『黄金双竜』レイガルテが頷いた。
 傲慢極まる彼の物言いだが、もう一人に比べれば彼は冷静である。出来る出来ないを切り分け、現実的に期待可能な想定値を正しく取っている辺り――レイガルテ・フォン・フィッツバルディという政治家の能力が伺い知れる。その彼をして(言葉でどう評していたかは別として)今回のシャウラ事件への対応は『かなり難しい仕事』という評価が下っていたのは言うまでもない。
「彼等は良く戦ってくれまして――
 あの恐ろしい……いえ、天に弓引く愚かな盗賊王に一矢報いられたのは重畳だったかと存じます」
「分かっておるわ。男爵、一先ず無事で何より」
「勿体無いお言葉にございます……!」
 ……無論、事実としてたった今、口添えをしたメランデル男爵――自身の麾下であるフィッツバルディ派が無事に奪還されたという点も彼の評価を押し上げているのだが。
2018/11/18(2/3)

「褒章は後に取らすとして……問題はこの後よ」
「その通りですわ!」
 更に過剰なストレスを抱え込んだ『暗殺令嬢』リーゼロッテがここで爆発したように声を上げた。
「この国を荒らし回る賊徒共は殲滅される所か、南部に拠点――橋頭堡を築いたと聞きます。
 あまつさえ私達への対抗姿勢を取り、国盗を口にしていると言うではありませんか。これを許せますの? 公爵様」
「莫迦な。一つ残らず殲滅せねば間違いよ」
「ええ。ええ! そうでしょうとも!
 私達の権利を奪い、名誉を汚し、――た盗賊等捨て置ける筈もございません!
 北部戦線(ここ)を何とかして下さいまし、私が自ら片付けに参ります。そのお願いを出来まして!?」

 ――た。

 その部分だけが小声になったのは恐らく無意識下のものなのだろう、とガブリエルは考えた。

 ――辱めた。

 ――私の友人を捕らえ、辱めた。

「……」
 自身も特異運命座標であり、今回救われる事になったシャーロットが唇を噛む。
「お気になさらず」
 ガブリエルの言葉を受けてもシャーロットは首を振るばかりだった。
 大凡、余人の知るリーゼロッテからは想像も出来ないような言葉にガブリエルは苦笑交じりの感嘆を隠せない。リーゼロッテは極めて頭のいい深窓の令嬢だ。些か短気で武力でモノを解決したがる節こそあれ、珍しい反応であると言わざるを得ない。あまつさえ『自ら出る』とまで言っているのだから……立場上、止めない訳にもいかないが、これは何とも――
「有能な働きには報いる必要がある。今回は助力も吝かではないがな、アーベントロートの。
 しかし、ザーバの出方が知れねば、貴様をこの場から動かす訳にはゆかぬ。
『黄金双竜』の――三世陛下の勅命を受けたわしの名においてな」
「ええ、そうでしょうとも! ですが――」
「――弁えよ。聞き分けよ。貴様はそれ程、愚かな小娘ではあるまい」
「――――」
 最上位の貴族たるレイガルテは家格、実力共に幻想貴族の筆頭であり、フォルデルマンの名代である。
 薄い唇を真一文字に結んだリーゼロッテは酷く不服そうに、歯がゆそうに、何とも言えない表情で黙り込んだ。
2018/11/18(3/3)

「遊楽伯。一先ず、最新の情報を集めよ。北部戦線、南部の盗賊王の動向も。無論、例の連中の安否もな」
「――畏まりました」
 頷いたガブリエルも又、囚われたイレギュラーズを心配する一人だった。見れば周囲の貴族も――特に彼等に命を救われた男爵や、サーカス事件や日々の仕事で彼等に関わった者は特に――何処か浮かぬ顔をしているではないか。
 無論、貴族達からすれば――特に自分達のような首脳層からすれば――『ローレットを領内に有する政治的有利』、『絶大なアドバンテージ』、『体面上は神託の守護者でなければならない』という理由から彼等に特段の配慮をすべき立場はある。
 それは間違いなく功利であり、打算であり、政治である。
 さりとて、それだけだったならば令嬢は怒るまい。黄金竜は『末端の安否』を気にしなかっただろう。
(……やはり、不思議なものですね)
 運命をねじ伏せ従える者達は――ガブリエルは口にはせず、そう感心するばかりだった。


 紛糾する幻想貴族会議――一方、その頃。


※幻想南部を舞台にイレギュラーズと新生砂蠍の間で激戦が行われました。
 イレギュラーズの善戦により多数の戦場で砂蠍は撃退されましたが、幾つかの拠点が失陥しています。
 又、何名かのイレギュラーズが帰還していないようです……
2018/11/22(1/3)

<ジーニアス・ゲイム>

 蠍の動乱、鉄帝国(ゼシュテル)の不穏な動き――
 蜂の巣を突いたような大騒ぎはこの所の幻想の日常である。
 しかし物事には何事も例外というものがあるらしい。
 幻想北部、荒れた世情とは裏腹にあくまで凪を気取る商都サリュー。その中心に存在する邸宅は今夜も一分の乱れもない完璧な瀟洒さを保ったままだった。人々は口々に館の主を讃えたものだ。「流石、クリスチアン・バダンデールだ。蠍の被害も未然に食い止めたらしいし、その采配に任せておけば安心だ」と。
 そんな穏やかな屋敷の一室で穏やかならぬやり取りをする人物が二人。
 片方は噂の屋敷の主であり、もう片方は彼が特別に雇い入れた客将である。
「さて、蠍は南部を幾らか抑えたようじゃが――これは主の予定通りか?」
「思った程じゃないな。それは例の盗賊王も同じ感想かも知れないが」
 死牡丹梅泉の言葉に肩を竦めたクリスチアン・バダンデールは然程面白くもなさそうな顔をしていた。
 シャウラ事件で一斉に幻想南部を攻撃した新生砂蠍は、幻想貴族が北部戦線――即ちゼシュテルとの国境防衛ラインである――に釘付けになっているという『偶然』の利もあり、有利に事を進めると見られていたが、蓋を開けてみれば幻想側の被害は小さくないにせよ限定的に留まったという。かのローレットの活躍を以て。
「冴えぬ顔をする。自信家の主には珍しいな?」
「冗句の心算か、バイセン。しかし君は下手くそだな」
 口元を歪める梅泉にクリスチアンは続けた。
「まぁ、予想より勝たなかったのは事実だが――想定内なのも確かだ。
 こちらとしても彼等の実力は測っていた心算だし――結果は称賛こそすれ、大きく驚いて見せる程の事も無い。彼等が優秀なのはとっくに分かっている事だから」
「と、なれば?」
「まぁ、盤面はあくまで私のコントロール下にあると言えるだろうね。
 冴えない顔、とはご挨拶だが――私の顔の作りは元々こんな風でね。
 だから、そうだね。例えばアンニュイな顔をする時には演技の必要がなくて、気楽だ」
2018/11/22(2/3)

「主の方は冗句が上手いな」
 梅泉はカッカと笑い、クリスチアンも今度はそれに薄く笑んで応じて見せる。
「じゃが、どうする。『思った程は陥落しなかった』のは事実。
 幻想貴族とて無能に弱兵ばかりではない。主も含めな。
 王都に危急が迫るともなればそれは必死で守らせもしよう。
 北部戦線が不穏止まりならば、そろそろ主力が引き返し始める頃であろうよ。
 如何に蠍が『何者かの支援』を受けていたとして、国軍と正面から当たれば荷も勝とう。
 まぁ、わしはあの蠍の親玉と一戦交えられると思えば――歓迎まである、所じゃが」
 成る程、『何者か』の差配により鉄帝国の軍事活動は活発化している。
『何者か』は敢えてそれを幻想側に気取らせる事で、ここまで主力を遊兵に変えていた事は事実だ。しかして、鉄帝の主将はかの名にしおうザーバ・ザンザ。簡単に謀れる相手では無いし、このまま彼が動かぬのであれば北部戦線の主力も一部守備を残した上で南部討伐に取り掛かるだろうと推測出来る。チェス・ゲイムを嗜む『誰かさん』はそんな事に気付いていない筈は無い。
「ま、問題はない――と言っておくよ」
 梅泉の言葉にクリスチアンは指摘を問題とも捉えていない様子に見えた。
「想定内だから」と言わんばかりの態度は何時もの通りであり、この男は万事がこんな調子である。
2018/11/22(3/3)

「『そろそろ、ザーバは動きたくなる筈だから』」
 自信満々の言葉に「ほう」と眉を動かした梅泉が、不意に鼻を鳴らした。
 一瞬後に『片手で』抜刀。『片目はやはり閉じたまま』。
「――!?」
「キエエエエエエエエエ――!」
 目を見開いたクリスチアン目掛けて裂帛の一閃を振り下ろす。
 妖刀が放つ赤い軌跡――飛ぶ斬撃は身をかわしたクリスチアンの後方まで届き、部屋の壁をまさにぱっくりと割り開いていた。
「……とんでもない事をするな。下手をすれば死ぬ所だ」
「感謝せい」
 もう一度鼻を鳴らしてソファにどっかと腰掛けた梅泉は顎で壁の向こうをしゃくる。
 そこには体を上下真っ二つに分かたれた『見知らぬ使用人』の姿があった。
「うん? ゼシュテルの手の者かな。幻想側から探りを受けるとは思えないし――」
「流石にザーバといった所か。
 尤も、主が容疑者であるというより――広く情報を集めているだけじゃろうがな」
「……おいおい、それならスパイの未帰還で立派な容疑者じゃあないか」
「知らぬわ。勝手に言い訳なり考えよ」
 興味すら無さそうな梅泉にクリスチアンは嘆息する。
 全く忠実さの欠片もない護衛だが――その武力は些か狂気的である。『戦った所で大抵の相手に負けない自信はある』クリスチアンですら気付かなかったそれを彼は一瞬で嗅ぎ付けたのだから――
「……まぁ、信頼しているよ。実際の所」
 クリスチアンが気を張らないのは梅泉がそこに居るからだ。
 ――この場所から情報が漏れる事等、この先も万に一つも有り得まい。


 密やかなるサリューの謀議――一方、その頃事態は更に加速する……!


※幻想南部を舞台にイレギュラーズと新生砂蠍の間で激戦が行われました。
 イレギュラーズの善戦により多数の戦場で砂蠍は撃退されましたが、幾つかの拠点が失陥しています。
 又、何名かのイレギュラーズが帰還していないようです……

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