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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2018/9/1(2/2)

「ならば問うがいい、蠍の」
「てめえは、どうやって此処を嗅ぎ付けた?
 確かに蠍は幻想内で力を取り戻してる。ここを知る人間もゼロじゃねえ。
 だがな、ここに居る連中は謂わば――『新生砂蠍』の中核連中だぜ。
 有象無象の盗賊共は従えても、ここは知らねぇ。
 つまり、お前がここに居るって事は……」
 キングの言葉に周りの盗賊達が青褪めた。一斉に首を振り、自身の潔白を訴える。
 成る程、彼は圧倒的に畏怖されている。残酷と狡猾を併せ持つ盗賊王であるが故に。
「物事に絶対は無いという事よ。主がどれだけ慎重に上手くやっても嗅ぎつける犬はいる。
 ……まぁ、性質の悪いのに目を付けられたとは言えるか。
 安心せい、官憲やらローレットやらはここを知らぬ」
「信じるとでも?」
「単なる事実じゃ」
 キングは咳払いを一つした。
「成る程、まあいい。次だ。今度はてめえの用件を聞かせろよ。
 ま、官憲の知らねぇ話なら――てめえの心算がどうあれ面白い話を聞かせてくれるんだろうがな」
「わしの心算だけを言うなら、主を斬りたいと――こうなるが。
 まぁ、仕事は仕事じゃ。わしの今日の用件はつまらん使い走り――伝言役じゃな」
「ほう……?」
「わしには大した意味のある話では無いがな。主にとっては面白い話やも知れぬぞ。
 まぁ……性悪同士の話じゃ。折り合うかは知れぬが……主は『復讐』を望むのじゃろ?」
 梅泉の言葉にキングはすぐには答えなかった。
 相手は正体不明、さりとて、野放しにも出来ぬ。気にならぬと言えば噓となる――
「もう少しだけ、戯言を聞いてやるぜ。聞くだけ、だがな――?」
「それで構わん。わしにはどうでも良い事じゃ。
 主がどういう結論を下しても、わしを殺すと言い出そうと」
「――ハ!」
 キング・スコルピオは言葉を鼻で笑い飛ばす。
 むしろ、そちらが望外じゃ――と語らぬが華は梅泉か。
 蠍と凶手の会談はかくて続く。
 終わりを匂わせる夏の夜が、周りを僅かに寒からしめる――鬼気を帯び始めた事は間違いなかった。

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