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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2018/11/9(3/3)

「貴方に万一があれば、それこそ国の一大事です」
「あら、ご心配下さいますの? 流石にお優しい。
 しかしながら、遊楽伯。貴方は身共が失敗するとでも?」
「いいえ。しかし、鉄帝国の連中は『薔薇十字機関(アサッシン)』の対応に慣れておりますからね。
 我々も援護します故、どうかお気を落ち着けになりますように」
 政敵に加え、ガブリエルも言葉を添えればリーゼロッテは一つ咳払いをした。
 相変わらずその愛らしい顔立ちにはらしからぬ表情が浮いているが、触れない方が幸福というものだろう。
「皆も、手をこまねいているばかりではないでしょう?
 私も含め、この所の幻想貴族はこういった時にどうすれば良いか、どうするかの選択肢を得ている筈だ」
「特にお二人は同じでしょう?」とガブリエルが念を押すと、レイガルテは鼻を鳴らし、リーゼロッテの険しい表情は少し緩んだ。
 三人が思い描いたのは同じもの。
 南部の盗賊王に対応を依頼したイレギュラーズの顔、ローレットの事である。
「ザーバとて、力押しで我々の結集を押しのけられるとは思っていますまい。
 軍勢を動かす気配を見せているのは、半分は南部盗賊王の動きに対してのアシスト。
 もう半分は、あんな名将の考える事。私程度では及ぶべくもありませんがね」
 三貴族におけるバランサーの役割を果たすガブリエルは一先ず幻想側の暴発を抑える事を考えていた。
 それは盗賊王に対応するローレットを信頼してのものでもある。相手の侵攻となれば交戦は是非もなしだが、後顧に憂いを持って『こちらから』開戦の判断を切れば、どれ程の民に災難が及ぶかは分かったものではない。少なくともそれは率先して判断するべき最良ではないと考えている。
(頼みますよ、皆さん)
 不思議なものだ、とガブリエルは考えた。
 あの傲慢な黄金双竜も、怒れる幻想の青薔薇も。
 彼等を示せば、不思議に落ち着く――
「ふふ。確かに賊徒共等、私達が手を下すまでもない。料理を待つ獲物のようなものでしょう。
 ……上手くやって頂けたら、またお茶会にでもお呼びしようかしら」
 ――特にリーゼロッテの機嫌は驚く程、『戻っている』ではないかと。

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