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ギルドスレッド

樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2018/03/01

 ???

 ――さあ、サーカスがやって来る。
 待ちに待ったお待ちかね、歌に乗って、踊り踊って愉快なサーカスがやって来る。
 どなた様もごゆっくり、どなた様も御覧じろ。
 シルク・ド・マントゥールがやって来る。
 不吉なサーカスがやって来る。もうすぐ? まだまだ?
 嘘吐きばかりだから分からない。でもきっと、そのサーカスはやって来る――
2018/03/05

 フォルデルマン三世

 何と素晴らしい事だろう!
 あの有名なシルク・ド・マントゥールがこの幻想にやって来るなんて。
 ローレットといい、サーカスといい……私は実に幸運だ。
 イレギュラーズ諸君も、きっとこれは楽しんでくれる事だろう。
 おお、そうだ。間違いない。ならば、これは全力で協力するしかないじゃないか!

 ※メフ・メフィートに『シルク・ド・マントゥール』がやって来ました……
2018/3/14

 ???

 機械の翼が見事な月を陰らせた。
 涼やかに、何事も無いかのように彼女はそこに佇んでいる。
「ええ。分かってるわ、オニーサマ」
 年の頃は十代半ば程にしか見えない、しかして『絶対に無辜の十代半ばの少女には見えない』。
 矛盾の塊のような、魔性の塊のような。そんな少女が口元を僅かに歪めていた。
(そうは言うけどね。君は遊び過ぎる癖があるから)
 頭の中に響く『オニーサマ』の声に媚びるように、反面せせら嗤うかのように彼女は応じる。
「それの何処がいけなくて? 『罪の果実は齧ってこそのものでしょう?』
 そう、ずっと昔から。少なくとも他ならぬオニーサマと、私達にとっては間違いなく」
 伝わってくる苦笑のような気配に少女は一層機嫌を良くした。
(……そう言われると手詰まりだ。君がどういう意図でそう呼ぶかは、何となく分かっている心算だけど。
 僕はそれを言われると弱いからね。君がそうあろうとするならば、きっとそういう事なんだろう)
 相手は親愛なる、そして唾棄すべき――兄であり、父であり、造物主であり、恋人である。
 揶揄する心算で『オニーサマ』と呼ぶ度に。嗚呼、その度に。
 劣情に直結するような激しい愛情と、それ以上の殺意がマーヴルする。
 即ち、彼との会話は極上の快楽を伴うと共に激しい苦痛を覚える彼女にとってのお気に入りに違いない。
「冗談ばかりではなくってよ。運命が転がった以上、全てはここから始まるのでしょう?
 オニーサマだって、まさかむざむざと終局に抗う程のパンドラを貯めさせる気では無いのでしょう?
 だから、もう頃合。これから先はこれまでの何百年――でしたっけ――永遠のような凪とは全く別物」
 少女は言葉を切って、遥か彼方――歓楽に沸く幻想の王都を見下ろした。
 彼等は彼方より来たる有名なサーカス団(シルク・ド・マントゥール)の公演に沸いているのだろう。
「――まぁ、何れにせよ。任せておいて下さいな。
 私も貴方も『罪』だから。きっと素敵にご覧に入れましてよ」

 ――これより始まる終局(滅びのアーク)の、その愉快な第一章を。
2018/3/14 23:20

 ルドラ・ヘス

 グラオ・クローネか。
 ふふ……異郷の彼等にとって、どんな時間になっただろうか。
 ……楽しんで貰えていればいいのだが。
 それから、出来れば……そうだな。何時かこのファルカウに招く事も出来れば……
 ……少し気が急いてしまった。
 彼等がどんな存在なのか、アルティオ=エルムの警備責任者としてしっかり見極めねば。
2018/3/24

メフ・メフィート

「昨日の公演、驚いたな」
「ああ、流石有名なサーカス団だ。あんなに凄いの見たの人生で初めてだったよ」
「何でも、今回は今までに類を見ない長期公演だそうだぞ。王様も大喜びだ」
「珍しいな。シルク・ド・マントゥールは一箇所に留まらない事で有名なのに」
「余程支払いが良かったのかな? 王様が褒美を出したとか」
「だとしたら税金を少しは安くして貰いたいもんだよ」
「……やれやれだな。ああ、そう言えば」
「どうした?」
「昨晩、表通りで殺人事件があったみたいだぞ。酔っ払いが暴れた所から大事になっちまったみたいだが」
「サーカスに浮かれるのもいいが、程々にして貰いたいもんだよなあ」
2018/3/25

メフ・メフィート2

「知ってるか?」
「何をだよ」
「また殺しがあったらしいぜ」
「嫌なニュースばかりだな。『恋する殺人鬼』だろ。何だって急に大暴れを始めたんだ」
「ジョンボードクラブもだ。どいつもこいつもイカレてやがる。
 それにそれだけじゃないぞ、余り大きな声では言えないが、あのサリューが……大混乱だと」
「クリスチアン・バダンデールの『王国』が暴動とか……何があったんだ」
「……世も末だな。で、例の『不吉なサーカス』はどうなんだい」
「絶好調さ。評判が評判を呼んで、国中から観覧客が集まってるぜ。
 こっちとしちゃ王都にカネが落ちるんだから様々だ。全く有り難い話だが」
「噂は笑えねえが噂だからなあ。連中、おかしな動きはしてないんだろ」
「官憲じゃねえから知らないよ。唯、『花の騎士』様とかはしっかり見張ってるって噂だぜ」
「流石!」
「ま、王様はともかく彼女が動いてるなら安心だぜ」
「そうそう。ま、事件は王都だけじゃないんだ。サーカスは関係ねえよ。単なる噂に違いねえ」
2018/3/26

メフ・メフィート3

「……………」
「どうした?」
「ショックを受けてるんだよ」
「やぶからぼうに。何があった」
「取引で良く行く街にな。本当に気立ての良い美人三姉妹が居るんだよ。
 本当に優しくて可愛い子達でさ。街ではちょっとしたアイドルよ。
 俺も年甲斐もなくいいなって……いや、それはいい。
 その、彼女達が事件を起こしたって……それもバラバラ殺人」
「おいおいおいおい、ちょっと猟奇的過ぎるだろ。
 聞いた話じゃ、他所じゃ異端審問まで始まったらしいな。
 神様狂いなんて天義だけで十分……いや、天義だけでも要らねえってのに……」
「サリューの件も続報が無いし……
 一体全体この国はどうなっちまったんだ? 何が起きてるんだ」
「例のサーカスは……」
「相変わらずだよ。もう評判は幻想中に広がってる。老いも若いもサーカスだ」
「話題がサーカスと猟奇騒ぎか……馬鹿騒ぎにも程があるな」
「……『花の騎士』様はちゃんと見張ってくれてるんだよな?」
「多分……」
「……ああ、もうよそうぜ。こんな景気の悪い話。こんなの今だけだ、今だけ。
 その内全部落ち着くさ。きっと、全部元通り。眠たい退屈な日常が戻ってくるだけさ」
「そうだよ。ああ、そうだ。たまたま、全部たまたまだよ!」
「……そうだよ、な」
2018/3/27

メフ・メフィート4

「…………」
「おい、どうした。尋常じゃない顔色だぞ」
「…………ああ、お前か……」
「しっかりしろ。何があった」
「嫁が事件に巻き込まれた。
 白昼いきなり襲われて……クソ……何だってんだよ!
 一体アイツが何をしたって言うんだ……!」
「マジかよ……お前の嫁さんって……すげぇいい子だったのに」
「もう何が何だか分からねえよ。犯人は気でも触れたみたいに笑い続けてるって言うしよお」
「あの曰くつきのミセス・ロウの姿が見えないって……
 まさか貴族様まで事件に巻き込まれてるんじゃないだろうな?!」
「神様に祈りたい気分だぜ。そんなものが居るならこんな状態になってねえだろうがよ」
「サリューも大丈夫だろうな? クリスチアンが無事ならいいんだが……」
「もう、分かんねぇよ。何もかも」
「『不吉なサーカス』……」
「……相変わらず楽しそうだな。サーカスは」
「俺よ、少し考えたんだが……動きは無い。無いんだから、そんなのはオカルトに決まってるんだ。
 だけどよ、タイミングがよ。おかしいじゃねえか。なあ、そうだろ?」
「ああ……」
「『まさかあの噂、本当じゃないだろうな?』」
「…………」
「……知らねぇよ。俺は知らねぇ。分からねぇって言ってるだろ!」
2018/3/28

メフ・メフィート5

「……………」
「……嫁さん、助からなかったよ」
「……………」
「毎日毎日嫌な話ばっかりだ。誰が死んだ、誰が殺された、傷付けられた」
「……………」
「今度はお茶会に、耳泥棒……
 挙句の果てにはヘンゼルとグレーテルだってよ。笑えるぜ……」
「……………」
「なあ」
「……………」
「どうしてこんな事になっちまったんだろうな」
「……………」
「嫁さんが死んで、親友も亡くして……」
「……………」
「……サーカス。……サーカス、サーカス、サーカス!
 一体あんなもんなの何が楽しいんだ!? ええ!?」
「……………」
「間違ってる。狂ってる。間違ってる。狂ってる。
 おかしい。おかしい。許されない。こんなの変だ。
 不吉? 不幸? 冗談じゃねえ! こんなもん全部――何もかも――」

 ――殺してやる。

「何だ、何するんだ、お前!?」
「きゃあああああああああ――ッ!?」
「だ、誰か衛兵を――」
「――死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね! 全部死ね!」
2018/3/29(1/2)

ローレット
「……と言う訳だ。状況は聞いての通り、聞きしに勝る大騒ぎだな」
 溜息を吐いたレオンに集まった情報屋三人は苦笑した。
「とっても心外だけど、これを表現する色は『ブラック』のみね」
「おや、血の色の『レッド』も混ざるかと思ったけど」
「……ショウ、笑えない冗談を聞く気分じゃないの」
 プルーの言葉にショウは「悪いね」と肩を竦めた。
 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の公演が始まってから幾分か経つ。
 公演は噂通り大層立派なもので、ユリーカも含めた四人も一度は見に行った。
 確かに評判が上がるのは当然で、噂になるのは当たり前ーーそれは共通認識である。
「最新の報告をするのです。
 誘拐事件に、鍛冶屋のおじさんの辻斬り……
 ……一番気になるのはイレギュラーズの偽物事件なのです。
 皆、大変な事件を一生懸命追いかけているのです。酷いのです」
 大きな瞳を潤ませてそう言うユリーカは余程憤慨しているのだろう。その顔色は赤らんでいる。
「……ま、揃いも揃ったり酷い有様だ」
 そんなユリーカの頭にポン、と手を置いたレオンは何時に無く真面目な顔をしている。
「これまでの『公演』でこれだけの『不吉』が起きたって話は聞いた事がねぇ。
 蛇の道は蛇ってな。長い間やくざな仕事してりゃ、伝わってくるモンも多い。
 この俺が知らねぇって事は少なくともサーカス絡みの過去にねぇって事だろう。
 まぁ、これが初めての事態だとして。それを前提にした時、考えられる可能性は何だと思うね」
「まず、『変異』。現象自体が変わった場合。これまではこうでなく、今回からこうなった。
 その場合はもしかしたら、当事者の意識にはない受動的な変化かもね」
 プルーの言葉をショウが継ぐ。
「次に『意識』だな。この事態を起こしている何者かが居るとするなら、ソイツが本気になったって事。
 こちらは能動的な目的意識や悪意を帯びているかも知れない」
「どちらだと思うね」
「そりゃあ」と言葉を揃えかけたプルーとショウに代わってユリーカが言い切った。
「悪い奴が居るに決まっているのです!」
 ユリーカの言葉は酷く感情的なものだったが、同時にある種の正鵠も射抜いていた。
 一連の事件は自然発生するには余りにもドス黒い。タールのように煮詰めた悪意は高度な知性と意志を感じさせる志向的な邪悪そのものだ。勘に過ぎないが、面々は自身の直感を現時点で疑っていない。
201/3/29(2/2)

「生憎と俺も余り遭遇した事はないがね。今回の事件は『魔種』絡みの可能性を疑ってる。
 連中の『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』は魔種を増やし狂気を伝播させるって聞くからな。
 まぁ、魔種がゴロゴロしてるとは考え難い。魔種化と狂気感染は別レベルの適性が必要なんだろうがね。
 何れにせよ、力のある魔種が『本気』になって力を解放している、何てストーリーは納得がいかないかい」
「……………」
「……いよいよ、って感じか」
 無言のプルー、苦笑のショウ。恐らくは考えた所は一緒だろう。
 一先ず最も疑いが濃いのは言わずと知れたサーカスだ。連中が仮に魔種ならば、その拡散力は極めて高い。
 原罪の呼び声の仕組みは分からないが、もし。感染した誰かがキャリアーとなり、その呪いを周囲にばら撒くのだとすれば。
 嗚呼――『国中から評判を聞きつけた観客がサーカスに会いに来ているではないか』。
 現状に厄介な点は明らかだ。『花の騎士』ことシャルロッテが彼等を自主的に見張っているとは聞いているが、恐らくは何の証拠も上がるまい。となるとサーカスの庇護者となっているフォルデルマン三世の存在がいよいよ重い。何らか強力な材料を『てこ』にして状況をひっくり返さねばこの流れは止まるまい。
「大規模召喚が起きた以上、反動する勢力が黙っているとは思わなかったけど。
 この国の、いえ。この世界の運命も、これから動き始めるって事なんでしょうね」
 アコナイト・バイオレットのヴェールは行く手を厚く包む。
 誰にもこの先の未来は分からなかったが……
「売られたケンカは買うもんだろ」
「そうなのです! 悪いやつをやっつけるのです!!!」
 レオンの言葉にユリーカは大きく頷いた。
「ローレットが反撃するのです! やり方は……これから、考えるのです!!!」
2018/4/2

夢の都ネフェレスト

「聞いたか、イルナス」
「どの話かは分からないけど……多分聞いてるわよ」
「話が早いな。だが、一応確認しておこう。例のクソ共――ジャスティーン・クラブの話だよ」
「……ああ。貴方(ディルク)が始末すると言っていた」
「そう、そのジャスティーン・クラブだが。あの――レオンの所の救世主サマ達が片付けてくれたらしい」
「旧交は温めておくものね。手間が省けたじゃない。
 ローレットは幻想のギルドよね。ああ、貴方が何を言いたいか何となく分かってきたわ」
「当ててみなよ」
「『砂蠍』のキング・スコルピオが幻想に侵入したって噂があるわね。
 つまり、自動的に、必然的に彼等がキングの対戦相手になるんじゃないかと思ってる」
「ご名答。幻想は上得意だが貴族主義だ。国と国の関係になると『赤犬』も始末をつけにくいんでね。
 例の『サーカス』だっけ? 唯でさえ混乱している所に……
 ま、彼等には災難だが一つお手並みを拝見しようという話にもなる」
「……自分達の失敗でしょうに」
「何、タダとは言わねぇよ。連中が上手い仕事をしたら、こっちにだって考えがある。
 傭兵ってのは信義則が大切だ。契約が無くとも、そういう使える連中とは仲良くしたいもんだからな!」

※ラサ上層部にローレットの活躍が伝わっているようです。
 え、イワシの騎士? なんですか? それ???
2018/04/08(1/2)

レオン&ざんげ
「――そういう訳で意見を伺いたいね」
 ローレットを含む幾つかの重要施設には神託の少女ざんげと繋がる映像通信装置が設置されている。
 ざんげとコンタクトを行える個人は多くはなく、幻想国内で言えばローレットのギルドマスターであるレオン・ドナーツ・バルトロメイと大司教であるイレーヌ・アルエに限られている。とは言え、イレギュラーズ(及び『バグ』であるレオン)は、空中神殿に直接赴く事も出来るのだから、彼等にとってそれは然して特别な機能と呼ぶ必要は無いのだが。
「意見とゆーと、例のサーカスについての話でごぜーますか?」
「そう。そのサーカスについて、だ。ぶっちゃけ連中は『魔種』なのかどうか。
 オマエに分かるかどうかは知らないが、例の『滅びのアーク』は『空繰パンドラ』の対なんだろう?
 後生大事に溜めてるパンドラに悪影響や、逆の要素が感知出来るなら、一つ情報にはなるだろ」
「用がある時しか顔出さねーですね」と淡々と言ったざんげにレオンは「用がなきゃ相手にもしねぇだろ」と応じ、直接的に本題を投げかけた。『滅びのアーク』は『空繰パンドラ』と対照的にこの世界を終わりにする可能性――より厳密に言うならば『パンドラという希望を打ち砕く可能性』を蓄積する神器であるとされる。ざんげ曰く魔種の王とでも呼ぶべき人物が持っている、との事であるが、レオンですらも余り多くを語られてはいない。このざんげが語りたがらないのは酷く珍しい出来事なのだが。
 硝子球のような無機質の瞳は神託の少女の『本質』を余り外に伝えない。
「予めお断りしておくですが、私に『魔種』を感知する力はねーです。
 レオンの言う通り『滅びのアーク』の加算自体は確認出来るですけれど。
 まぁ、この世界から魔種が絶滅しねー限りそうなります。してねーので当然とゆー話で。
 その上で結論から申し上げますと、一連の事件に魔種が絡んでる可能性は高いです。
 それで、現在世界中で起きている『事件』を見ていくと幻想国内の大混乱が一番でっけー事件です。
 同時に滅びのアークの加算値が跳ね上がってるんで……恐らくは。
 まぁ、本当に断言出来ねーのが非常に申し訳ねーのですが」
 神様やその託宣というものは往々にして身勝手で使い勝手が悪いものだが、それはざんげでも同じようだ。
「成る程ね。つまりこう言いたい訳だ。
『サーカス自体が魔種かは断言しかねるが、事件には魔種が関わっていると思われる』。
 まぁ、ストレートに考えるなら全く無関係って訳でもねぇだろうがな」
「そういう理解の仕方しか出来ねーので、話が遅くてすまねーです」と頭を下げたざんげにレオンは笑う。
「まぁ、そう簡単に話が済むとは思ってねぇよ。
 神託ってのがそんなに便利なら最初から苦労はねぇし、ローレットも不要だ。
 それにオマエが確認している間にこっちも幾つか事件を解決して――話の流れは掴んでる」
「……どういう事でごぜーます?」
「一連の猟奇事件の下手人がおかしな事を言ってんだよな。
『神の声を聞いた』だの『衝動がどうこうだの』。『原罪の呼び声』ってのと一致するだろ。
 元から頭のおかしい殺人鬼は兎も角、美人三姉妹の神のお声はまったくもってそれらしい。
 うちの連中が上手くやったお陰だ。水先案内人(オマエ)としても嬉しかろうよ。
 まぁ、兎に角。ほぼ断定だ。オマエの話とこっちの話で、犯人は魔種野郎だってな。
 サーカスが白か黒かは知らんが、取り敢えず排除すべき対象なのは間違いない。
 これで事件と何の因果関係も無かったら土下座して詫びても足りねぇが、まずねぇよ」
「レオンの勘、でごぜーます?」
「その通り」
「成る程、じゃあ多分当たってると思います」
 頷いたざんげはレオンの言葉に納得したようだった。
 魔種が大規模な活動をする事はこの二十年にも無かった出来事である。ローレット設立以降、レオンは常にその相手を警戒していたが、それが現実のものになったのは今回が初めてである。大規模召喚が世界の悪足掻きだとするならば、加速し始めたこの流れはそう簡単に止まる事は無いだろう。
「この後、ローレットはどう動くのです?」
「まぁ、プランは無くはない。戦力強化や準備もしてる。
 だが……まぁ、正直いい手は無いな。
 選択肢が足りないと言うか、サーカスは国王のお気に入りだ。
 このクソ国で逆転打を打とうとするなら、多少の問題は避け得ないが、国王はまずい。
 ……俺の読み通りなら、その内事態は動く筈だ。無論、悪い方向にだが、そこからやっと打つ手が増える。
 ま、上手くいくかどうかは分からん。取り敢えず思い切る意味でも確信が欲しいのは山々だ。
 サーカスに絞ってくれてもいい。何とか連中が魔種であるって結論を頂ければ、こっちとしては捗るね」

※ローレット・トレーニングが大成功を修めています
2018/04/14

リーゼロッテ・アーベントロート

 あら、皆様。ごきげんよう。
 ふふ、珍しい。お顔を見せに来て下さいましたの?
 ええ、ええ。皆様は私の『オトモダチ』ですものね。歓迎いたしますとも。
 サリュー暴動があっさり終了したそうですわね。クリスチアンから終結宣言を届けられましたわ。
 何でもローレットも少し関わったとか? ええ、お聞きしませんとも。
 ……え? 最近、頭の中に怪しげな声が聞こえたりしないか、ですって?
 うふふ! 何時も聞こえておりますわ。『汝、為したいように為すが良い』。
 ……ええと、皆様どうして距離をお取りになりますの?
 もう、ただのアーベントロートジョークですわ。本気になさらないで下さいませ!
20184/18

???

 さぁて、面白くなってきた。
 まだまだ序の口……良くて種火って所だが『動き』があるのは結構だぜ。
 嗚呼、このクソ国なら、燃え上がる時はさぞ派手に燃えるだろうよ。
 他人(ひと)の動きに便乗するってのも癪っちゃ癪だが、ま――場の混沌は歓迎だ。
 こっちはこっちで荒らさせて貰おうじゃねえか。
 ……待ってろよ、ラサの赤犬共。
 雑魚(てあし)を潰して勝った気になっていやがれ。
 理解させてやる、そのまま唯じゃ済まさねえ。
 蠍の毒は遅れても――必ずテメエ等を殺すって事をな!
2018/4/19

レイガルテ・フォン・フィッツバルディ

 ……ふむ。少し愉快ではない噂が広がっているようだ。
 密偵によれば、不穏分子の動きあり、と……
 面倒な。この黄金双竜の威光も忘れ、馬鹿げた夢想に浸らんとするとは。
 あの陛下は気に入っておられるようだったが、或いはこれもサーカスの噂の影響か?
 ……馬鹿な。有り得ん。馬鹿げている上に忌々しい。
 何れにせよ、腹立たしくとも対処は取らねばならぬな。
 さて、どうするか。見せしめが必要か、それとも――

※幻想国内各地で市民の一部に不穏な動きが見えているようです……
2018/04/19

馬鹿騒ぎ(サーカス)は嗤う

 ……うん、うん。割と予定通り、いやそれ以上かな。
 いい加減なんだもんなあ。困っちゃうよ。「兎に角、派手にやって下さる?」とか。
 自分は見てるだけだからいいけど……おっと、聞かれたら大変だ。
 これならおっかないオーナーも満足すると思うし、満足してくれるよね?
 僕は、ピエロはとっても貴方様に忠実ですよ!
 ……でも、何だか予想以上のペースな気もするなぁ。
 僕達以外にも、何か仕掛けている奴がいるみたいな。
 火を付けたのはこっちでも、油を巻いてる奴がいるような。
 ……ま、オーナーも派手な分には満足するだろうし、些細な事か。
 でも、本当に今回はいい仕事だなあ!
 こんなにやりやすい国ったら無いよ。これも王様サマサマだよね!
2018/04/19

ガブリエルの憂鬱

 ……やれやれ、困りました。
 あのサーカスの開演以来……この国の空気は中々無い程に荒れてしまった。
 民衆の不満はこれに端を発した事ではないでしょうが、加速させるに事件は十分な燃料だ。
 ですが、この国の貴族は自身の治世を顧みるような事はしないでしょう。
 ……民衆が一度暴発してしまえば、待つのは大きな被害だけだ。
 この上、国は荒れ、多くの血が流れれば……陛下が気付いて下されば良いのだが。
 ……いいえ。悪い方に考えても仕方ない。私は私の出来る事をせねば。
 少しでも、そう。少しでもこの国の、民の為になるよう。私の出来る事、すべき事を考えねば――
2018/4/25

喧騒の街は変わらず

 ……恋の味はイチゴ味?
 暗殺令嬢も不思議な事を言うのね。それにしたって幻想蜂起の真っ只中だけれど、国王陛下は変わりもないし、幻想の上層部は『平和』と称していいのかしら。

 幻想蜂起、ね……私も頑張らなくっちゃいけないわ。
 ……こんな、酷い混乱が起こるだなんて。起きているのに、変わらないなんて。
 こんな事言っていいかは分からないけど、『あてにならなさ』ではこの国の偉い人は飛び抜けてるわ。
 でも――だからこそ、私達が居るのよね。皆、頑張りましょうね。
2018/5/11

<海洋への誘い>

おったまげたなあ、ソルベ様が特異運命座標(えれぇひと)を海洋に招いたらしいべさ。
おらも時々ローレットには採取のお願いしに行くけど、ソルベ様に招かれるなんて中々ないチャンスだべ。
おらも一緒に遊べるんだなぁ? 調香したサシェも皆に渡せるといいべなぁ。
さあ、お迎えにいくんだべ――――……ひぎぃっ!?(←こけた)


<朝長・晴明の関係者『ペッシェ・アリントン』>
2018/5/12

<キャラバンの夜幕>

何でも商隊(キャラバン)がメフ・メフィートに到着したらしいねぇ。
幻想と言えば……今をときめくローレットか。御縁の一つもありゃいいけどね。
世間は相変わらず騒がしいけど、今頃、あの子はどうしてるんだか。
顔位見ておきたい所だけど、求めるも野暮か。生きてさえいればその内機会もあるだろうさ。

……ああ、はいはい! いらっしゃい!
ははん。その顔じゃ、今日の商売は上手く行ったみたいだねぇ? 一つ聞かせて貰おうかな!


<『砂の仔』 ジュア (p3p000024)の関係者『ノラガナ』>
2018/5/16

『博愛声義』垂水 公直

 やあ、特異運命座標。今日もいい天気だね。ん? そうでもない?
 ……まあ、そこは気にせずに。挨拶みたいなものだ。
 オーナーが君達へ王への直談判の話を持ってきただろう?
 君たちが幻想で起こった大規模な戦いを抑えてくれたおかげだ。
 誇ってくれていい。旅人である俺からするとあまり経験のない暴動ではあるけれどね。
 さて、それと同時に俺達の仕事の手伝いをお願いしたい。
 経験の浅い特異運命座標にとっては新人研修――言わば会社のチュートリアルみたいなものだね。
 新人研修には俺も慣れているんだ。何、前職はしがない中間管理職さ。
 俺は真面目に誠実に君たちの活躍を楽しみにしているよ。

 ……さて、仕事の話は済んだ。
 遊びがてらにキャラバンでも見に行こうか。
 成程……名うての商人も君達には根負けしたか。
 良い装備を一人一回確実に売ると白旗を上げているみたいだよ。
 種別までは選べないみたいだが、見てきたらいいんじゃないかね?
2018/5/18

<シトリンクォーツ>星空と謳う鉄乙女

「チャオ! みんなぁ~、今日はボクの為に来てくれてありがとう!
 お馴染みラド・バウのアイドル『パルス・パッション』だよ。よろしくね!」
 開口一番楽し気なパルス・パッションはウィンク一つ。
 彼女を応援する『ロリ宇宙警察忍者巡査下忍』夢見 ルル家(p3p000016)と『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)の歓声が聞こえている。
 ――流石はシトリンクォーツの流星の日。鉄帝も活気だっているのが良く分かる。
 星も綺麗で、料理も幻想と違う。
 文化がまるで違うのは『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)にとってはよく知っていたことだ。彼にとっては幻想が『異国の地』なのだろうから。
 多数の客人を招き入れた鉄帝。幻想への侵略の話さえ聞こえるこの国に、こうして特異運命座標が訪れて旅行をするのも数奇な運命だ。
『タノシイネ』
「タノシイネ」
 パカダクラのおかげかもしれない……?
 なんて冗談を言いながら『人形使われ』レオン・カルラ(p3p000250)はパカダクラをもふもふ。
 ダカァー―――
 間延びした鳴き声はもっと遊んで欲しいと言っているようで。
「変なお店を利用してるんでしょ?
 ボクのサインも入ってくれないかしら? みんなの希望があればきっと入荷されるわよね!?」

 ――現場からは以上です!
2018/5/19

<シトリンクォーツ>機の幻影に躍れ

「ぶいあーる……? 夢……?」
 夢という言葉に両手を叩いて喜んだ『実践』の塔主の佐伯操にとってこのシトリンクォーツは大満足だった。
 不安げに『おねえちゃん』に寄り添う桜坂 結乃(p3p004256)は丸い瞳でVRシステムを見詰めている。
 練達が作成したVRシステムは技術力を示す物差しとしてもぴったりだ。テストプレイヤーとして様々な実験に取り込む特異運命座標達。
 操の見つめているモニターではバトルロイヤルが開催されており――『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)がブヒッと危機的状況に陥っていた。
『あ、……あああ―――――!』
 どこからか声が聞こえる。戦闘ではなくVRを使用したマップテストを行っている『宿主』カウダ・インヴィディア(p3p001332)も現在は危機的状況なのだろう。
 皆揃って危機的状況に陥っているとはアトラクションとしての出来も十分だと操は確かな実感を覚えていた。
「相手にならないわ。機械に愛は解らないでしょう?」
 ――ほら、『魔法少女インフィニティハート』無限乃 愛(p3p004443)がそんなことを言うから。研究者も興味を持った。

 ――現場からは以上です!
2018/5/20

<シトリンクォーツ>海色に揺れるは航海者

 美味しい物ばかり。とても心躍るのだと『『しおから亭』オーナーシェフ』パン・♂・ケーキ(p3p001285)は食べ歩き。
 海洋は幻想と文化が違う。その街並みに特異運命座標を招いたのは貴族派筆頭『ソルベ・ジェラート・コンテュール』だった。
「楽しんでいただけて幸いですよ」
「勿論、楽しいとも。砂漠とは違うね」
 仲間で楽しく旅行を楽しむ『砂の仔』ジュア(p3p000024)達にこの語訪れる突然の『イベント』はだれも予測していなかったことだろう――
 一方で、レッツ食べ歩きタイムな『金狼の弟子』新道 風牙(p3p005012)はこうして海洋で美味しいものを食べ続けられるのは楽しいと頬を緩める。
 偶には師匠から離れて遊んだっていいじゃない?
 思い出を残そうと、ゆっくりと波打ち際を歩きながら『ゆきのはて』ノースポール(p3p004381)は笑った。
 楽しいシトリンクォーツになりましたか?
 ――きっと、来年もこの海に来れますように。
2018/5/25

嵐の前の静けさ?

 幻想に来てたサーカスの一件で何かあったって街で噂になってるぜ?
 俺のダチコーは俺の故郷に遊びに言ったりしてたみたいだな。
 ハンターとして色々噂は集めてるんだけど。
 海洋の近海じゃ色々モンスターが飛び出してきてるらしいな。
 夏ももう直ぐだし、海洋の近海警備も季節柄大事ってことかも知れねぇな。
 面白いモンスターが居るんだったら俺もローレットに情報提供するからそんときゃよろしく。
 ……そういや。水着とか浴衣がどうとかっていう噂を聞いた気もするけど――何の事やら。

    <【ノベルギャザラー】 ジョゼ・マルドゥ (p3p000624)の関係者・ジュノー・マカロフ>
2018/5/28

大岩が動いた

『梟の郵便屋さん』 ニーニア・リーカー(p3p002058)
「『絆の手紙作戦』大成功だったね!
 幻想の半分近くの人達に、手紙が回ったんだって!」

『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)
「いやあ、上手くいって良かったぜ。
同意書形式をとったのは貴族連中には効いたみたいだったな」

『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ (p3n000002)
「お疲れさん。この先は兎も角、ここまではほぼ完璧だ。
 大岩は動いた。連中は王都から姿を消したが……
 なあに、逃がさねぇよ。貴族連中には検問を頼んである。今、この国は檻だ。
 相手が魔種だっていうなら――何が何でもここで決着する必要があるからな」
※ノーブル・レバレッジの結果を受けて、『シルク・ド・マントゥール』が王都から逃走しました……
 また、国王、貴族、民衆がサーカスの排除に対して一致団結を見せています!
2018/5/29

風の便り・手紙の匂い

『絆の手紙』だって。何だか、驚いちゃうわね。
 イレギュラーズか……あの子、随分活躍したみたいだし、いっぱい褒めてあげないと。
 うちのお客さんも最近じゃ荒れてた事もあったから……これで平和になるといいんだけど。
 夏ももう直ぐだし、嫌な事件は吹き飛んじゃえば一番よね。
 ……暑くなってくるのだもの。気楽に水着とか浴衣を着れる位で丁度いいわ。

    <【絆の手紙】 ニーニア・リーカー (p3p002058)の関係者・アイシェラ>
2018/5/30

御触れは幻想を駆ける

 いやー、例のサーカスもやっと退去か!
 ボクの場合、アレで死にかけてる訳で……一層他人事じゃないんだよな。
 活躍に家人が関わってるなんて中々すごい偶然だ。
 早速、祝杯の準備をしないとね。勿論、ゴリョウ君のおごりだけど。
 ……あーあ。でも、サシで呑んでも、男二人か。
 水着とか浴衣の女の子でも居たらいいのにさ!

    <【名監督】 ゴリョウ・クートン (p3p002081)の関係者・ヤマダ>
2018/5/31

逃走マントゥール

「はあはあ」
「……」
「ふうふう」
「……………」
 急転直下、フォルデルマンの翻意によって王都を追われたシルク・ド・マントゥールはほうほうの体での逃走を余儀なくされていた。
 サーカス団員達は皆疲れていた。
 特にでっぷりと太ったジャコビニ団長にとってこの強行軍は本意では無かったのだろう。
 汗で額を光らせた彼は荒れた呼吸で来た道を振り返る。
「はあはあ、ふうふう……一先ずここまで来れば大丈夫か」
「だと良いけどね」
 暗い夜の森に追手は無い。
 少しだけ緊迫した表情を緩めた彼に皮肉に言ったのは素顔を晒したピエロ――クラリーチェであった。
「幻想は伏魔殿だ。王の気変わりは予想外だったが、公演は別で続ければいいだろう」
「予想外かー」
 冷笑を浮かべたクラリーチェは続ける。
「予想外、だから。一度あった事がもう無いって?
 例外が出来た時点で――『突然』王サマの目が覚めて? 『あの』貴族達が民衆と結託した時点で――奇跡じゃん。だからこの先はもう読めないんだぜ」
「それに問題は『オーナーだ』」と続けたピエロにジャコビニの表情が曇る。
「オーナーは我侭で自分勝手で執念深くて――思い切り『オンナノコ』で。
 実際、此の世の女子の困った所をジャムにしたみたいな人だからなあ。
『愛しのオニーサマ』に大見得切って――僕達が逃げ出したら、怒られちゃうかも?」
 サーカス団員達は恐怖を語る道化の言葉に思わずざわめく。
 決して考えたくない事だ。終焉(ラスト・ラスト)の鐘が響く時――終末は怖くなくても彼女は別だ。
 原罪の煉獄篇、その冠位においても――彼女は特別『感情的』なのだから。
「とにかく! 態勢を立て直さねば……!」
 大公演以来、初めて劣勢に回った空気にジャコビニは杖を振り上げた。
「幻想の統治レベルなぞ知れておる。上手く立ち回れば、まだまだ『オファー』はばら撒けるとも!
 ……脱出もその隙にすれば良い。まずは状況を整理しなければ……」
 ジャコビニの言葉に頷く団員達を見たクラリーチェは「日和るなあ。まぁ、ご随意に」と肩を竦めた。
 空の月が笑っている。
 笑われているのは幻想か、サーカスか――
「……どっちでもいいや。『面白くなるならね』」

 ――流麗な『少年』はその顔に仮面をつけた。三日月を形作る、笑みの仮面を。
2018/6/1

イザベラ・パニ・アイス

 今年も夏がやって来るのう。
 今年は、それでも特別か。何せ、神託はどうも本当の事らしいからの。
 特異運命座標の活躍も、今後の海洋(わがくに)の為にも捨て置けぬ。
 ……ソルベめ、それも含めてあれこれ画策しておったか。
 奴めは癪じゃが、確かにこれは好機かも知れぬな。
 先の挨拶以来ご無沙汰しておった事であるし――一つ、彼等を海洋に招いてみるのも悪くは無いか。

※ローレットに『Neo Frontier summer festival』の誘いが届いています!
2018/6/4(1/2)

潜伏マントゥール

「ええい、どれだけしつこいのか……!」
 苛立った声を上げたのはシルク・ド・マントゥール団長――ジャコビニだった。
 全身から鬼気を漂わせる彼は姿を隠す事を余儀なくされている現状に確かな怒りを見せている。
 先のノーブル・レバレッジを切っ掛けに国王の庇護を失った彼等の現状は実に悲惨なものだった。幻想という国は良くも悪くも貴族派の力が強い。フォルデルマンがサーカスを見限った以上、遠慮する理由は無いとばかりに所領を検問で封鎖した貴族達はローレットの要請通りに『自己利益を追求し始めた』のである。
 ローレットによる周知が進んだ今となってはサーカスは国賊。(幻想の司法に頼る事は馬鹿馬鹿しいので、或る意味でその判断は正解だったが)逃げ出した時点で黒は確定というのが専らの流れである。そうなれば、黄金双竜(レイガルテ)、暗殺令嬢(リーゼロッテ)、遊楽伯爵(ガブリエル)等、有力貴族派閥が『サーカス拿捕の功』を競うのは当然であり、派閥の領袖がそこまでを考えていなかったとしても下につく貴族達が自身の手柄を主に献上したがるのは当然だった。
 最早、サーカスは狩りの対象になっている。
 そして幻想貴族達というものは元々――酷く上手に悪趣味な狩りを嗜むような連中だ。
「……団長、どうしますか?」
 偵察から戻った団員が疲れた顔をして頭を振った。
 彼のサインが示すのは「ここにも長居するのは危険」という意味合いである。
「おのれ、大体話が違うではないか。この国は――」
 無能王と腐敗貴族による専横が進んだ『どうしようもない国』。
 そして、凶事の影を見つけたとしても決して団結出来ない、末期患者だった筈――
 表情を歪めるジャコビニに、最早平素の余裕は無く、ギリギリと歯を噛む彼はこれ以上無く焦っていた。
「それだけすごいって事じゃない?」
 笑顔を浮かべたクラリーチェが落ち着きのないジャコビニに告げる。
「『こんな国をどうにかしちゃった誰かさん達がさ』」
「……」
「いやあ! 驚いた。驚きついでに、そろそろ僕達もチェックかな?
 やー、困ったねえ! 滅びを望む『魔種(デモニア)』自身が追い詰められてるなんて!」
2018/6/4(2/2)

「何とか、あのお方にご協力を……ここを脱出しなければ」
 呻くジャコビニの言葉をピエロは鼻で笑い飛ばした。
「やめてよ、つまんない冗談。
 笑えねーし、そんなお願いしたら、首が三十回はすっ飛ぶぜ。
 ……第一、僕達って『滅びを望んでいる』訳でしょ? それなのに困ってるっておかしいよねえ!
 座して死ぬなよ。我等幻想楽団シルク・ド・マントゥール!
 地獄の沙汰は金次第、御代はどうぞ惜しみなく。拍手快哉、驚天動地!
 さあさ、何方も御覧じろ、正真正銘種は無く、何せ僕等の首が飛ぶ!」
「……貴様……!」
「面白おかしく、どうぞ笑顔で最期まで! お帰りはあちら、再演は未定!
 あー、楽し。まさに幻想大公演じゃん?」
「――ピエロ風情が!」
 杖を振り上げたジャコビニからクラリーチェはひらりを身を翻した。
「構っている場合ですか!」
「とにかく、この後を決めないと……」
 ジャコビニを制し、相談を始めたサーカスに肩を竦めたクラリーチェは醒めた視線を彼等に送る。
「いい加減、覚悟決めたら?」
 伝えるでもなく、酷薄に言ったクラリーチェは指先で刃の糸を遊ばせた。
 ……森の入口付近に近付いた兵の一人をその痕跡ごと、彼の指先が刈り取ったのだ。
「やれやれ、だ」
 決着の時は近いだろう。
 覚悟の決まらないサーカスの喧々囂々に口笛を吹いたピエロは端正な顔できっと今夜も笑っていた。
2018/6/7

レイガルテ・フォン・フィッツバルディ

 サーカス連中は未だ捕縛には到らず、しかし幾度か影を掠め、輪を狭めておる、か。
 ……ふむ、検問による国内封鎖は順調のようだな。
 幻想(わがくに)を愚弄する痴れ者共をこれ以上のさばらせるも癪よ。
 何より、小娘や若造に遅れを取るは『黄金双竜』の名折れ。
 痴れ者を誅するのは、我が手にて……
 ……特異運命座標(あのれんちゅう)は分かっているのであろうな?

※サーカス包囲網『幻想の檻』が狭まっているようです!

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