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樹上の村
2018/11/1
<砂の都の珍客>
夢の都・ネフェレスト――
世界各国からありとあらゆる人間が、モノが集う砂漠の大オアシスは平時から人種の坩堝である。
加えて、今夜はファントムナイトなのだから――特別な何かが混ざっても誰一人として気付かない。
「オジサマ、見て見て! びっくり南瓜スープだって。何が吃驚なのかしら?」
快活な声は楽しげに弾む。薄く色付く桃色の竜の角の乙女は軽い足取りのままにくるり、と振り返る。『領域』から出ることが少ない彼女にとって、サンド・バザールに並んだ品々はどれも珍しい物ばかりだ。
対するオジサマ――草臥れたコートに髭を生やした紳士並ぶ食品類をまじまじと見ながら購入の検討を進めている様だ。彼のなりは軽く枯れたナイスミドル――といった風だが、彼の目は些か真剣過ぎる位に屋台の食べ物達ばかりを見つめている。
「琉珂、このスープとパイ、それから……」
「ええ、ええ。分かっていますとも」
琉珂と呼ばれた少女は『オジサマ』の言葉に胸を張る。それは得意げに。
「ええ、オジサマがお腹いっぱいになる位に購入していいわ。
こういう時の為にわたしも『お小遣い』を貯めて来たのだもの。
『領域(くに)』のみんなに文句も言わせないんだからね。
わたしはあっちにあるかぼちゃジュースが飲みたいわ。オジサマも如何?」
君の小遣いで私の腹は満ちないだろう、とオジサマは言わない。
……それは、一見して保護者とそれに良く懐いた少女の何の異常もなく、全く平和な光景である。
ファントム・ナイトは異物も飲み込む。そこの誰も気付かない。気付け無い。
自分への返答もそこそこにもう食事に夢中になっている紳士に対して竜乙女は楽し気に表情を綻ばせた。
――嗚呼、全く。鮮やかなれや、ネフェルスト!
<砂の都の珍客>
夢の都・ネフェレスト――
世界各国からありとあらゆる人間が、モノが集う砂漠の大オアシスは平時から人種の坩堝である。
加えて、今夜はファントムナイトなのだから――特別な何かが混ざっても誰一人として気付かない。
「オジサマ、見て見て! びっくり南瓜スープだって。何が吃驚なのかしら?」
快活な声は楽しげに弾む。薄く色付く桃色の竜の角の乙女は軽い足取りのままにくるり、と振り返る。『領域』から出ることが少ない彼女にとって、サンド・バザールに並んだ品々はどれも珍しい物ばかりだ。
対するオジサマ――草臥れたコートに髭を生やした紳士並ぶ食品類をまじまじと見ながら購入の検討を進めている様だ。彼のなりは軽く枯れたナイスミドル――といった風だが、彼の目は些か真剣過ぎる位に屋台の食べ物達ばかりを見つめている。
「琉珂、このスープとパイ、それから……」
「ええ、ええ。分かっていますとも」
琉珂と呼ばれた少女は『オジサマ』の言葉に胸を張る。それは得意げに。
「ええ、オジサマがお腹いっぱいになる位に購入していいわ。
こういう時の為にわたしも『お小遣い』を貯めて来たのだもの。
『領域(くに)』のみんなに文句も言わせないんだからね。
わたしはあっちにあるかぼちゃジュースが飲みたいわ。オジサマも如何?」
君の小遣いで私の腹は満ちないだろう、とオジサマは言わない。
……それは、一見して保護者とそれに良く懐いた少女の何の異常もなく、全く平和な光景である。
ファントム・ナイトは異物も飲み込む。そこの誰も気付かない。気付け無い。
自分への返答もそこそこにもう食事に夢中になっている紳士に対して竜乙女は楽し気に表情を綻ばせた。
――嗚呼、全く。鮮やかなれや、ネフェルスト!
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何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。