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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2018/9/11(2/2)

「は、心にも無い事を言うなよ。
 首までを腐肉に浸けたそんな怠惰に意味はない。
 この生き方はむしろ君に近いだろう?
 ――だから私は理解しているんだ。
 皮肉屋の君が今、案外気分良く仕事をしている事もね」
 クリスチアンの断定に梅泉は呵々大笑する。
「全くじゃ。主がそうでなければ、素っ首戴いてとうの昔に辞去しておる。
 払いのいい雇い主のお陰で、食うに困る事もない故な」
「良く言うよ。困ったら辻斬りの一つでもしてみせるんだろうに、君は」
 笑えない冗談をかわす二人は慣れた調子で殺気をかわす。一見すれば愉快極まる歓談の様子だが、何時殺し合いになってもおかしくないのはここも同じ。混ぜるな危険とはこの事だ。
「仕事は果たした。次は主の出番になろうな。
 幸いに主は商人じゃ。それもとびきり悪辣な――その良く回る舌を精々こき使うが良い」
 ソファにどっかと腰を下ろした梅泉は大した興味もなさそうに皮肉を投げた。
「そうとも。私は商人だから――盗賊如きに決して遅れはとるまいよ。
 まずはそうだな、『手付け』だな。功利主義者は判り易い。
 どの道、彼等にはもっと強くなって貰わねば困る。
 彼等は駒になる心算は無かろうが、それも含めたコン・ゲームさ。
 ご苦労だったね、バイセン。君への『報酬』は用意するとして――引き続き付き合ってくれたまえよ」
 酷薄な笑みを浮かべたクリスチアンはゆっくりと続けた。
「何、本編は退屈なゲイムかも知れないがね。
 世が乱れる程に戦いと強敵(きみののぞみ)も果たされる。
 ――十分に報いられるだろうさ。君も、君のその刀にもね!」
 退屈。退屈。退屈。退屈。

 もっと、もっと、もっと――

 あのサーカス等話にならない位の混乱を。世界の名を冠するような混沌を。
 誰しもが驚愕し、忘我し、泣き叫ぶ――最高の恐怖劇(グラン・ギニョール)を。
 誰もが呆れ果て、諦念し、笑う『しかない』――究極の喜劇(トゥラジコメディー)を。
 最高の筋書き(ドラマ)には最高の役者(キャスト)が不可欠だ。
 心してかからねばならぬ。指揮者(タクト)の無様等誰が望もう?
「ああ、愉しい。人生がこんなに愉快なのは――本当に何時ぶりだろうね?」
 彼は堅実に生きてきた。
 誰もに慕われ、誰もに施し、可能な限りで多くを救ってきた。
 己の才覚全てを『維持と発展』に向けていた天才が裏返れば、その時は――

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