シナリオ詳細
<夏祭り2018>パッション&デザイア!
オープニング
●漸く使う日が訪れた。
ネオフロンティア海洋王国の真夏の祭典は混沌住民にとっての一大イベントだ。
ネオフロンティアが国家を挙げて開催するこの大祭はかの王国が長く受け継ぐ伝統行事であり、多数の観光客を集める外貨獲得の手段でもある。
政治的に衝突の多い海種と飛行種の二頭体制もこの時ばかりは休戦し、夏の海という最高のロケーションとシチュエーションを活かすべく手を取り合うという寸法だ。
サマーフェスティバルはかくして幕を開けたのだ。既にあちこちで活気のある催し、無数とも言えるイベント、この夏を彩る某かの物語が始まっている。
そんな夏の渚の一幕。
「ああ――」
エメラルドブルーを臨む白い砂浜で。
「――何て素敵なビーチでしょう!」
嗚呼、情熱と欲望の砂浜で。
「皆さんもそうは思いませんこと?
この晴天といい――やはり、皆さんは運命に愛されていると」
陽の光を跳ね返す銀色と、透き通るような白い肌の印象的な、一人の少女が笑っていた。
赤い瞳に悪戯気な色を乗せて。少し幼気な少女のなりに特上の蠱惑を携える彼女は美しい。
彼女こそリーゼロッテ・アーベントロート。言わずと知れた幻想貴族の重鎮で、最も危険な幻想の毒花その人である。
「海は久々ですけれど――ふふ、たまには良いものですわね?」
「取り分け、貴方と一緒ならば」と声を落とした彼女は極上のスマイルに実に白々しい親愛の言葉を乗せてイレギュラーズを誘っているかのようである。
「折角ですから、私と渚遊び等いたしませんこと?
ふふ。涼を取るのも、砂浜で遊ぶのも楽しいかも。子供のような時間も宜しいのではなくて?」
極上の令嬢は、自身のその美貌を熟知していらっしゃる。当然「ハエ取り草か」と言ってはいけない。舌禍という言葉の意味を知りたくないならば。
イレギュラーズが誘いを受けるも断るも一興である。
真夏の海は、全ての自由を内包しているものだから――
●何で俺はTOP画面に立っていないんだい?
「……まぁ、邪魔だからだよな」
その通り。
「英断だな。俺も俺なんざ見たくねぇ」
渚のリーゼロッテを遠目に眺める『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)は我ながらの愚問に小さく溜息を吐いた。
見慣れたギルドマスターの格好をラフなシャツに変えた彼は強烈な真夏の日差しを遮る茅葺きの屋根の下、木のジョッキで冷えたエールを一気に飲み干す。
「いや、休暇ってのはいいもんだねえ。イザベラ女王、それにイレギュラーズ様々だ」
海洋王国からの正式な招待を受けたローレットは、各国貴族にも並ぶ謂わばVIP級の扱いである。流石の海洋王国と言えどサマーフェスティバルの間はビーチが混み合う事もあるのだが、御覧の通り。リーゼロッテが満足する程度に素晴らしいこのビーチは、今回の為に用意された王家のプライベートビーチなのである。
この不健康なおっさんは取るものも取らず、海で遊ぶ所では無く――早速特設の海の家に陣地を構え、我が世の春ならぬ、盛夏を満喫しているという訳だ。
海で遊び疲れたイレギュラーズはやがてこの場所にも来るだろう。
そんな見知った顔を見る度に気安いギルドマスターは安易に堕落を誘ってくる。
「折角の夏なんだし、俺とダラダラしようぜ。
ここには飯もドリンクも揃ってるし――ご丁寧にハンモックもある。
景色も酒も最高だ。ガキには飲ませねぇが、まぁ――
――ああ、調理器具もあるからな。飯を作ってくれても。
皆でって言うなら、バーベキューの一つも準備してみるのも面白いかもな」
要するにここは休憩場であり、ちょっと疲れた大人のサボり場でもある。
時間が許せば、顔を出すのも良いのではなかろうか――
●鳥魚の仲
「……ここは妾の船じゃが、何故そなたが乗っておるのだ? ソルベ」
「いやあ、偶然ですねえ! しかしながらイレギュラーズがここを訪れるキッカケは偶然に現れたものではない事はお忘れなく!」
「……ちっ……」
ネオフロンティア海洋王国女王イザベラ・パニ・アイスは涼しい顔で白々しい言葉を並べたソルベ・ジェラート・コンテュールに女王らしからぬ舌を打った。
全く不仲な二人だが、今日は仲良く(?)王家のクルーザーで青い海を進んでいた。
「彼等はビーチに居るのでしょう? 折角です。海の遊覧に誘ってみては如何でしょうか?
船には釣りの準備もある。『魚を釣って捌いて貰う』等、如何にも海洋らしいイベントではありませんか!」
「奇遇じゃな。妾もそれを考えておった所だ。
『浅ましい海鳥に餌をやる』のも面白いかも知れぬな。
全く海洋らしい良き時間になるじゃろうて」
「ふっふっふ」
「ほっほっほ……」
剣呑なる二人はバチバチと火花を散らしているが、そのやり取りは何処かコミカルで――言うなれば幻想貴族同士のような『湿度』を持ち合わせていない。
二人はこんな有様だが、彼等と過ごす時間もイレギュラーズの非日常という意味では中々に面白い時間になるかも知れない。
――さて、本日は晴天なり。
情熱と欲望の海。君が望むは何たるや!
- <夏祭り2018>パッション&デザイア!完了
- GM名YAMIDEITEI
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年08月04日 21時46分
- 参加人数114/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 114 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(114人)
サポートNPC一覧(4人)
リプレイ
●渚にまつわる何とやら
「うみだ……」
茫と漏れるのはQ.U.U.A.の言葉。
夏の匂いに混ざって溶ける彼女の声が楽園の景色に揺蕩っている。
「うーみーだー!」
青い空、白い砂浜。
頭上から降り注ぐ満点を振り切ったような太陽の光を無数に跳ね返すエメラルドのキャンバス。
「ざっばーん!ヾ(≧▽≦)ノ」
何処までも美しく――圧倒的に息を呑むような『真夏』は、その場に居る誰もに非現実的なまでの『バカンス』を叩き込んでくるかのよう。
何せ、これだけ暑いのだ。
灼熱の太陽に照りつけられ、火傷しそうな砂を素足で踏めば気分も否が応にも盛り上がる。
日頃、色々な苦労を背負い込む特異運命座標ならば、開放感も一際だった。
「派手な事をするものね……」
『貸切』という言葉もピンキリである。
「これが海洋王国の王家というものなのかしら。
……それだけ買われてるし今後に期待されてる、という意味で、悪い事ではないのでしょうけど」
「うむ。ここは言葉に甘えておくか――水着もよく似合っている、綺麗だぞ」
「水着はともかく、こういう場所はなんというか、今一慣れないのですが……」
臆面もなくそう言う傍らの颯人に舞花は幾らか面映そうな顔を見せる。
これまでの活躍とその名声から海洋王国王家のプライベートビーチに招かれるに至ったイレギュラーズはまさに極上の夏を約束されていた。観光客でごった返す海洋の人混みも何のその。百を超える人間が詰めかけても余裕十分なそこは頑張った彼等へのご褒美――まさに特別な設えと言えるだろう。
「さて、折角海に来たのだし泳ぎに出て見ようか。そうだな、目印になりそうな何かがあれば……」
「流石に。水泳はそんなに得意ではないですけれど。折角です。出来る限りですが、挑ませていただきましょう」
ここで遠泳めいた提案が出るのが何とも言えずこの二人なのだろう。
「海に来たら、必ず一人はいるよな。ずーっと泳ぎ続けているヤツ!
そう、つまりミーたちのことだ! ユーたち海に何しに来てるんだい?
水着って何のための服だか知ってるかい? それは、泳ぐためだろう!!!」
遠泳と言えば、やたらな筋肉が渚に眩しい貴道が異質な存在感を放っている。
「そう、我輩実は海は始めてであるからして! あれあれ?我輩泳げるのであるかな?
でもこういうのって意外とやれば出来る奴である! たぶん! きっと!」
「体力作りのために競泳に参加するよ!
多少は泳げるけどそれだけじゃ足りない。
海でもポーを守れるくらい――速く持続的に泳げるようにならないと!」
「そんなに遠泳は得意じゃないですけどやっぱり泳ぎたいです!
ビート版とかあのぶくぶくするやつとかローレットは貸し出してくれないんですか! うおー!」
腕をぶすボルカノやルチアーノ、気合十分のヨハンといった【遠泳】の面々は判り易い程に判り易く。
何でも、曰く彼等は何処ぞの島まで泳ぐらしい。いってらっしゃい。
時に素直に、時に少しは捻くれて――この時間を満喫するイレギュラーズ達は早速めいめいの時間を過ごしている。
「屋敷のみんなでバカンスだヨ! いやァ海ってどうしてこうも心躍るんだろうネ!」
日差しの強さに、猛暑さえ心地良い。目を細めて大きく伸びをしたのはイーフォである。
「ひゃっはー! 水着でスイカ割りだー!
……なんで浜辺で目隠しして果物割るんだろうー? 考えてみると謎の風習だねー」
「水着でスイカ割りをしましょうね。
でも、普通のスイカ割りじゃ満足できないってお話になったの、困ったわぁ。
あら、かわいいギルドメンバーの為に、レイチェルちゃんがスイカの隣に埋まってくれるですって?
レイチェルちゃん流石ね、ギルドマスターの鑑だわぁ!」
「まー、棒振り役がレストの人なら死にはしないだろー」
【月夜二吼エル】――屋敷の面々でバカンスと洒落込んだ一行だが、夏を満喫するイーフォの傍らでクロジンデとレストのやり取りで恐ろしい話が進んでいるのがいとおかし。
「やれやれ……身を挺するのは構わんが、安全策は執らせてもらうぞ?」
「……って、使うの棒じゃなくて剣ー? 位相剣の人の本体かー。
んー、こうなってはオタッシャ重点なんだよねー。あとはスイカが仕事をしてくれることを祈るだけだねー」
苦労性で真面目なシグは苦笑しながらも浜辺で砂に埋まるレイチェルを慮っている。
「……絶対、スイカを割れよ! 俺の頭は割るなよ!! スイカの方だからな!!!
と言うか、それ! 刃物だよな!? どー見ても見覚えある魔剣の気がするンだが! どーしてこうなった!!!」
雉も鳴かずには撃たれまいて――レイチェルの敗因は……
――ククク……普通のスイカ割りじゃつまらんからなァ。スイカの隣に誰か首だけ出して埋めようぜ!!!
とか何とか言っちゃった事に起因する。
尤もシグは何も嫌がらせで魔剣に転じた訳ではない。
自身を使わせる事によって、緊急回避を考えての事であるから、流石の切れ者である。
まぁ、ラッキースケベとか起きても俺は責任もたねーけど。
「持てよ!!!」
「な~む~」
バカンスの光景は千差万別だ。騒がしい一行もいれば、
「濡れても透けない包帯を巻いて太陽きらめくビーチに余! 参上じゃヨ!」
「アマルナと一緒にバカンスに来れて嬉しいなぁ! 透けない包帯とか健全すぎない? 水着よりすごい恰好じゃない?
ぐふふ、今日はアマルナの為にピラミッドを作ってあげよう……!」
「うむ、余が装飾した立派なピラミッドの中で優雅にバカンスじゃ」
アマルナとフルートのような微笑ましい(?)組み合わせもある。
無論、今日は特別な日だから――雰囲気を楽しむ二人も居る。
「見て、とても綺麗なの」
「……ああ、大きい貝殻だな。とても綺麗だ」
「砂浜だって宝石みたいで。見えるものすべてが――嘘みたい」
「……あまり、そういう目で海を見渡したことが無いな。だが、確かに美しい物だ」
屈託のないはぐるま姫の様子に精悍にして冷静なソフィアの表情も少し和らいだものになる。
「こういう風景、誰かと共有すると、もっと楽しいと聞くわ?」
小さな姫のくすぐるように悪戯気な微笑みは何処か感情が薄くも見える彼を誘う夏の呼び水だ。
そんな彼が相手だからこそ、綺麗なものに感動する気持ちを共有できたなら、とても嬉しい――果たして姫の算段はそう悪いものでは無かっただろう。
「ほぉらよォ!!」
「きゃあ――」
アランの仕掛けた水掛け(いたずら)にエステルが珍しく可愛い悲鳴を上げていた。
「やりましたねえ、こっちからも仕掛けてやるですよ」
肌を晒すのは好きではない――彼女だが、こうなれば是非もなしである。
えいやと脱げば現れ出るは、ホルターネックのビキニに包まれた……
(……おぉ、何だあの二個のスイカは)
アラン曰くのスイカである。
「はは! 掛かって来いよ、そんなもんか!? メイドさんよ!!」
(……まぁ、これもひと夏の思い出なのですよ)
少しはしたないかな、と思いつつもエステルは不良勇者を追い回す。
楽しげに戯れるのはクロバとシフォリィも同じであった。
「この海すごく綺麗ですよ! ですから、クロバさん、こっちで一緒に遊びましょう!」
「おい、まさかオレも水に入れと言わないよな……ってヤメロ!? オレは泳がない!」
「ですから、じゃない。繋がってねぇ」と言う暇も無く、専ら今日は見守り役を気取る心算だったクロバがシフォリィに引っ張られている。
抵抗虚しく飛沫を上げる水際は心地良く、この後で起きるシフォリィの水着ないない事件(ちょっとしたハプニング)の前座としては十分だ。
以上だか未満だか良く分からん二人のラブコメは置いといて、本当にいちゃいちゃしてる連中も居る。
「今日はポテトの泳ぎの訓練の成果を見せてもらう日だ!」
「うん。この夏の集大成か。頑張って泳ぐぞ。目標は二十五メートルだ」
リゲルとポテトは相変わらず仲が良く、意気込む彼女を彼はニコニコと眺めている。
「よ、よし……泳ぐぞ……に、二十五メートルだ」
不安と緊張、期待の綯い交ぜになったポテトは優しい恋人が意地悪無く付き添ってくれる事を信じてやまない。
されど、このリゲルの方はと言えば――
(俺って不意打ちや悪戯が好きなんだよなー)
彼女をエスコートしながらも、そんな風にこの先のシーンを考えた。
聖騎士の誉れは兎も角として、不意に自分が溺れたら彼女はどんな顔をするだろうか。
――わ、リゲル!? リゲル、大丈――
慌てて潜る彼女の目はきっと閉じているだろう。
そんな彼女の唇はきっと――
閑話休題。
「はい、イーリンあーん……え、ダメ?」
「ちょっと食べさせようとしないの! こら、つくでしょ!」
相も変わらずかしましく浜辺でアイス等を片手にいちゃつく……うーん、若干一方通行なミーナとイーリンの姿も見える。
「あら、ごきげんよう。ほらミーナも」
「おや、令嬢。今日も可愛いじゃねーか」
二人が手を振った先にはこの特別なビーチでも一際人目を引き付ける大変豪奢な美少女が居た。
「誰にでも仰るのでしょう?」
如才なく微笑む令嬢は、普段の彼女を知る者ならば些か信じられない位の人に囲まれた『人気者』。
(やれやれ、イレギュラーズってのは怖いもの知らずだな。
噂の暗殺令嬢か。美しい花には……って言うが、棘なんて域じゃねえよな、あれは)
全くグレンの考えるその通り。
蓼食う虫に好かれた幻想の食虫花、毒の薔薇、暗殺令嬢リーゼロッテ・アーベントロートその人であった。
「御機嫌よう、暗殺令嬢。
まっ、今日はリーゼロッテと言いましょうか。
貴女がさっき言った通り、折角だから遊びに来たわよ」
「あら、律儀ですのね。今日も壁の花かと思っていたら」
リーゼロッテはそう言った旧知の竜胆の顔を見て少し嬉しそうな仕草を見せる。
「それじゃ、今日ばかりは『オトモダチ』じゃなく、『普通のお友達』としてとことん遊びつくしましょうかっ!」
サバサバとした調子でそう言う竜胆のような人間は恐らく彼女の周囲には殆ど存在していないだろう。
「オーホッホッホ! お誘い感謝しますわ、リーゼロッテ様!
不肖、キルロード男爵家が長女、ガーベラ・キルロード、リーゼロッテ様のお相手という光栄なるお役目、務めさせていただきますわ!」
テンション高くそう宣言したのは此方もゴージャス感を感じるお嬢様である。
「ええ、巷では『暗殺令嬢』等と呼ばれ、暗部を率いてる恐ろしい方と聞き及んでいましたが……
渚遊びに心をときめかせるお方ですもの。悪いお方ではありませんわ! ええ!」
些か余計な事を言いまくるガーベラの物言いが逆に愉快だったのか、「あらあら」と口元に手を当てたリーゼロッテはコロコロと笑っている。
「令嬢ちゃん、なんだか似たようなするめ……じゃなくてスメルを感じるんだお。
特に服のセンスなんかは親近感が湧くんだぬ」
「可愛らしいお洋服が好きですの?」
ニルにリーゼロッテは微笑みかける。
「うんうん、暗殺令嬢! つまり宇宙警察忍者みたいなものですね!
拙者、同業者つながりもあってリーゼロッテ殿と仲良くしたいと思ってました!」
「あら。貴方はウチューケイサツニンジャと仰るのね」
「拙者! 職業も似てるし、歳も近いし! ……リーゼロッテ殿っていくつでしたっけ?」
字面のパンチでは早々負けないルル家が続け様に地雷原でタップを踊る。
「否! 実年齢など些細! 見た目上の歳も近いし、ぜひ拙者と親友を前提に友達となって欲しいです!」
「先の戦いでは、ご支援ありがとうございました……一言、お礼が言いたくて」
「あら、どうも。でもお気になさらずとも結構ですのよ。どうしてもと言うなら、私とこうして遊んで下されば」
非常に生真面目にそう言ったシズカにリーゼロッテは涼しい顔をした。
「リーゼロッテ関~、すもうやろうぜ! 砂まみれになろうや! 水着すもう海洋場所開幕じゃ~!」
「あ、私――鉄帝的(ゼシュテル)文化はちょっと」
「ちぇー」
「あ、では……『旅人』さんから伺った道具で、ワンタッチで絵姿を残せると。宜しければ如何ですか?」
「そうよ、折角の水着のお披露目会だものね!
リーゼロッテも部屋で水着着ちゃってるぐらい、楽しみにしてたものね。
まっ、気持ちは分かるけど。黒は女性を美しく彩る良い色だわ、ええ!」
やはりと言うべきか綺亜羅の誘いを回避したリーゼロッテに、水を向けたシズカにミラーカが加勢すれば「では、折角ですから皆で一緒に」と彼女は簡単に提案を首肯する。多分、相撲がちょっとしんどかったのだとも思われる。
(ち、近いんだけど!?)
ミラーカさんは百合ーカさんなのでこういう時、ちょっとドキドキする。決して強盗ではない。
「リーゼロッテ、こんにちは。水着とっても似合ってるね。もしかして、優勝するんじゃない?」
「うふふ。お世辞でも嬉しいですわね。まぁ――アーベントロートの子女たるもの、見世物になる趣味はないのですけれど」
「そういうものか」
『貴族というヤツだからな』
神様の補足に「そっか」と頷くティア。
リーゼロッテはそのやり取りがおかしかったのか、また鈴を転がしたような笑い声を上げていた。
『まるで見た目通りに』社交的な令嬢を気取る彼女は実際ひどく上機嫌なのだろう。
或る種張り詰めた普段の空気は薄れ、比較的付き合い易い雰囲気のリーゼロッテはまさに『彼女が水着に着替えたら』である。
「ふむ、砂の城もいいが、砂で貴女の像を作るのもいいわね。貴女からのオーダーはある、レディ?」
「砂の像は壊れてしまいますから。持って帰れないのが残念ですわねえ」
控えるシルキーから冷えたドリンクを受け取って「ふむ」とシャルロットは思案顔。リーゼロッテはと言えば、抜けるような白い肌である。
「御機嫌ようリーゼロッテお嬢様。日差しが熱いわね? 日除け対策はばっちりかしら?」
冗談めいてそう言った女王(レジーナ)はふと考える。自分はきっと誘蛾灯に誘われる虫のようなのだろうと。
「日除けクリームは、この世界でも一般的なのかしら?
よろしければいかが? 今なら塗るところまでお付けします、なんてね」
「あら、私に触れて頂けますの? 毒で死んでしまうかも知れないのに」
炎天下に多少参ったリーゼロッテはレジーナに微笑む。
ビーチパラソルを立てたエリザベートの傍らに座り、興味が沸いたのか白い砂を指先に遊ばせていた。
同系カラーが三人揃えばこれはこれで壮観である。
「スナ山をとても高くするのと、スナ浜をとてもフカく掘るのはトクイだ。三時間カケて掘ったアナを一時間カケて埋めたりデキルよ!」
砂と戯れる令嬢にここぞとイグナートが胸を張った。
「あら素敵。役に立ちそう」と呟いた彼女がその掘り埋めスキルを『何の役に立てる事を想像した』かは聞かない方がいいだろう。
「へーい、彼女! スティアと遊ばないかい? へへへ、一度やってみたかったんだよね」
「私もそんな風に声を掛けられたのは初めてかも知れませんわねえ」
悪戯気な顔をしたスティアを見上げてリーゼロッテ。
「そういえばリーゼロッテさんって海でどんなしようと思ってたの?」
「ああ、それは私も気になるのです。海にきたのはいいけれど、私は海に入れる状態ではないのです。
そちらはどう過ごす心算なのか――伺っても?」
「私はのんびりと過ごしますわよ。まぁ、渚遊び位ならばするかも知れませんけど」
リーゼロッテの言葉にスティアは「じゃあせっかくだし遊ぼ!」と笑顔を見せ、彼女に何処と無い親近感を覚えるエリザベートは「成る程」と頷いた。
「バカンスですもの。身も心も休めなければ。
まぁ――あちらの方々のようには、とても、とても」
リーゼロッテの赤い双眸が捉えているのは遙か水平線で豆のように小さくなった遠泳の人達である。
先頭を行くのは貴道、ちなみにヨハンは大分前に沈んでいる。鉄帝は水に沈む。やーい、ゼシュテル!
「……けほ」
小さく咳き込んだリーゼロッテにふわりが駆け寄った。
似たような生業を持つ少女にとって『暗殺令嬢』及び『アーベントロート』の家名は正しく憧れそのものだ。
飲み物の一つも欲しくなる頃合いなら、ふわりのギフト(ミュンちゃん)が家事万能(おーるまいてぃ)に役に立つ。
「どうも、気が利きますのね……ええと」
「ふわり、なのです。不破ふわり」
「……ありがとうございます、ふわりさん」
「――――」
そう名を呼ばれ、不思議な感無量に浸る少女は置いといて。
ともあれ、令嬢の周りは恐らく――彼女の人生で初めて、そして最大といっていい程に気楽な友人達の居場所となった。
「時に、何で私はTOP画面に立てないんだい?
いええええい! 私なんかTOPに立てないんだから何着てるかわかんないだろうけど水着!
水着だよ水着! たぢたんありがとう! リーゼロッテchanに大☆興☆奮!」
何だか分からんが凄まじい勢いの奏が居たり。
「オッケェイ!! どうですかぁリーゼロッテさぁん! こんな暑いディは俺とプリティ・ヒップ・バトルしましょう!
オ! ルール説明! 俺がお前にプリティ尻を向ける!
それを思うがままにドゥン! とビートを刻むリズムアクション! ケツの達人! チャリーン!
おしりモードを選んでくれ、皆伝! ドゥーーン!! ほら早くお尻を叩かないとどんどんラブゲージが下がっていきますよぉ!
かのリゲルボーイに重傷を負わせたというリーゼロッテのご褒美キック! を俺のおしりに!
ハリー!ハリー!早くしろリーゼロッテ!! 好きだ!お前の椅子になりたい! チュ!!!」
「妖精さんは、死亡判定とか興味ございます?」
「オッケェイ!! ユアミステリーマイラヴァー! リーゼロッテ結婚してくれチュ!!!」
「その線からこちらに近付かないように――私、手が出てしまいそうですから」
中にはラヴィエル(こんな)例もあったのだけれど――
ちなみにハートマーク(トレードマーク)は封印だ。本当に手が出そうだから仕方ないね。
「あ、あははははは……」
イレギュラーズ特有の無軌道ぶりに困った笑顔を見せる渓。
「リーゼロッテさんも大変ですよね。貴族故の苦労とか」
言葉の後半の「パンツ売られる苦労とか」は当然口に出さない渓である。
「まぁ、ノブレス・オブリージュ、というヤツですわね」
どうにもそういう概念を持ち合わせない幻想貴族の物言いは一周回って面白い。
リーゼロッテが何処まで本気かは知れないが、渓はと言えば「ふむふむ」と頷いている。
「さぁ誰がスイカを割れるか……割れたなら上手に割れたかで勝負だ……!
リーゼロッテ、審判お願いしていいか? 一番上手に割った奴を決めてくれ……!」
「ふふん、高貴で美しい妾がスイカも綺麗に割れるという所を見せてやるのじゃ!
賢い妾の高い神秘を生かしたシックスセンス――足は八本じゃが――を見るが良いのじゃよ」
「あら、素敵。早速ノブレス・オブリージュがやって来ましたわ」
ヨルやデイジーの言葉に目線をやったリーゼロッテ。
そこには夏の定番スイカ割り――レイチェル割りではない――で【勝負】に興じるハロルドやラクリマが居る。
「まっすぐ棒を振り下ろすのじゃ! 妾は非力故、このためらいなくがポイントじゃな」
「オラァ! そこだ!! くたばりやがれ!!!
いいぞ、その調子だ。殺(や)ってしまえ!」
「HAHAHAスイカ割と聞いて!
さあ、スイカよそのうちに秘めし灼熱の果実を俺にさらすがいいのです!
くくく……今宵の棒は血に飢えているのです……!」
可愛らしいデイジーとは裏腹にハロルドやラクリマの目はマジで、彼等は妙に物騒だったけれど。
……兎に角、今日は平和だったのだ。多分。きっと、メイビー。
「竜の一撃を受けてみろ……!」
あ、この子もダメだった(確信)。
「リーゼロッテ殿! わ、私と遊んでくれりゃやがれませんか!?」
「構いませんわよ。まずはスイカをお割りなさい」
天然に命令形でモノを言うリーゼロッテにド緊張するイヴはコクコクと頷いた。
「わ、私はウォーカーで戦闘兵器です、ですが私は変わりたいのです。あなたの様な地の足のついた生き様に憧れるです!」
「宜しい。では、もっとどんどんとお割りなさいな」
暗殺者が地に足をつけた生き方をしているかどうか、更にスイカを割る事と何の因果関係があるかはこの際捨て置く。
ヨルが提案したこの勝負――三人の枠を超え、お嬢様のオーダーに続々とイレギュラーズが参戦し始めていた。
彼女は生まれながらの貴族であり支配者であった。望めば何故かスイカまでもが(誰かの努力で)次々と補充されるのだから――
――おにゃのこじゃあ!やっぱり海はええのぅ! 水着のおにゃのこがいっぱいじゃあ!
むお!? あそこにクッソカワユイおにゃのこがいるではないか!
これはさっそくお近づきにならねばならんのぅ! うははははは!
無鉄砲な元はスイカと共に埋められて。
「チェストー!!!」
ぱっかーん、と『頭が鎌』なクレッシェントが頭突いている。
「ぬ、抜けない……」
目隠しして西瓜割りではなく、西瓜で目隠しする羽目になり、西瓜頭にクラスチェンジしたクレッシェントに皆が笑った。
「バカンス中に不躾とは存じますが失礼します、リーゼロッテ様。私、ファンドマネージャの新田と申しまして……
ああ、いえ。私怪しいものではございません。肖像画に関するファンドを扱っておりまして。
是非、大層お美しいリーゼロッテ様の『一瞬』を切り取らせて頂きたく……」
まるで冗談のような光景だ。スイカヘッドがフラフラと彷徨うその一方で暑苦しいスーツ姿のビジネスマンが怪しげな商談を持ちかけている。
「本当に、おかしな人達!」
イレギュラーズの無茶苦茶な無軌道にリーゼロッテは嬉しそうだった。少なくとも本心に『見える』程度には。
そんな大騒ぎから少し離れて。
渚の『君』は、そこに居た。
「何か探し物やろか、砂の中に何かあるん?」
「――きこえる?夏のおと。僕、このおとがだいすきなの」
浅瀬でしゃがみ込んだ自身を覗き込むようにした蜻蛉にサンティールは柔らかく笑む。
「波のささやき、海鳥のうた、風のにおい。そらを違えても、変わらないものがあるんだって知れたことがうれしいんだ」
差し出された巻き貝を耳に当てた蜻蛉が何処か泣きそうな顔をした。
――聴こえる。
彼女の見る世界、感じる色、匂い。
一緒に居るからこそ、見える景色がそこにあって――
「ねえ、蜻蛉! 今日だけじゃないよ! もっともっと、いろんなせかいを見に行こうね!」
普段と違う夏の装いは、黒いビキニにパレオ――麦わら帽子。
サンティールは夏の日差しより眩しくて。そんな風に言われたら、蜻蛉はもう頷く事しか出来なかった。
●駄目な大人の陣地
――海岸の外れ、薄暗い天幕の中、黒翼の少女は佇む
ここに集うのは泳ぎ疲れ骸の如く成り果てた者、あるいは成りかけ、撚れたオッサン――
「むしゃむしゃ」
そして、串焼きを頬張るナハトラーベ。
「ぶははははっ! おぅらっしゃい! 何か焼いてくかい?」
イカに串刺してタレ付けて焼いたり、ステーキ焼いたり、ハンバーグまでコネてみたり。
早速面倒見のいい所を見せるゴリョウが、
「此れが我等『物語』で作った肉料理だ。調味料は『燃える石』の店主に貰った。
刺激的なものに挑戦する輩は並び給え。何。要らないだと。ならば違う店の諸々と混ぜて愉悦遊戯を始めよう」
或いは本来は深淵なる『物語』たるオラボナが完全に海の家のおっさんと化している。
「海の家のヤキソバとかカキ氷ってお値段高いよね。
だけどなんというか、雰囲気とかで普段より美味しく楽しく感じちゃうんだ」
「違いねえ。だが、今日は女王陛下のオゴリだからなぁ!」
もぐもぐするセララの言葉にゴリョウが豪快な笑い声を上げた。
「んあー、あっちぃ。サーフィンやるっても、こんな気温じゃきついぜ。いやまじで!
もう、夜を待ってナイトサーフィンしに行くほうが良さそうだな――って、ギルドマスターじゃねーか。
んなとこで、滅茶苦茶だらけてどうしたんだよ。年か? いや、冗談だって!」
強烈な直射日光に負けて海の家へ避難してきたイーディスの言葉にレオンは即答で「たりめーだろ、歳に決まってる」と何故か胸を張った。
「レオンのおじさんは海の家から出ないのかな?」
「オマエ達も大人になれば分かるよ」
レオン・ドナーツ・バルトロメイは問うレオン・カルラに真顔で言った。
「休みの日ってのはね、休まないと駄目なの。アクティビティなんてクソ喰らえ。
楽な格好でダラダラして、旨いモン喰って、ねえちゃんを鑑賞する――海の過ごし方はこれが一番なの。ホント、マジで」
「知ってる。『かぞくさーびすのお父さん状態』って言うんだ」
「子供が遊ぼうよ」『お父さんは言うの。仕事で疲れているんだ』。
「はいそうですよ。日曜日は働きませんよ」
「レオン殿ー! あーそーぼー!」
「美少女流はしませんよ。ドッジポールはステイ」
説明しよう!
ドッジポールとは、尖ったポールを投げ合い敵を貫く美少女的遊戯である!
浜辺で行うモノを特にビーチポールと称する事もあるぞ!!!
「しないであるか……」
百合子の眉がハの字になる。かわいい。
「吾は出来る美少女であるのでグッとこらえる!
代わりに酒のつまみにそこらへんで食べられそうなものを拾ってきたのである。
ウニ、岩に張り付いてた牡蠣、でっかいやどかり、ひとで、くらげ、いそぎんちゃく、ふじつぼ……
……レオン殿、どうして途中からそんな顔をしているのである?」
小首を傾げる百合子。かわいい。
「またまた、そんな事言って――動けば案外動ける癖に」
混ぜっ返したジークがそんなレオンをパタパタと扇いで言った。
「そんないい筋肉しといて。歴戦の戦士って感じだ。私とは大違い」
「オマエ、骨じゃねーか!」
「まぁ、肉と皮を着ていて夏は暑そうだなって思うけどね。筋肉と皮膚(それ)、脱げないの? とても不便そうだ」
「うむ、ゴッドなビーチ……そこでビューティフルエンジェルたちと戯れるも善いがユーたちとフレンドシップを築くが善しと考える!
そういう訳だ、マスター・レオン!
こうして酒を酌み交わすチャンスなどそうはない! ゴッドのワインを一杯どうだね?
このワールドではゴッドのブラッドはワインになったりはせぬ故、安心して飲むがよい!」
「おー、おー。飲み会は何時でも歓迎だぜ。ジークもやるかい。呑めるかどうか知らんけど」
爛れた大人のどうしようもねえ持論と漫才、豪斗も加えいきなり始まる何次か分からん飲み会。
まさかレオンに賛同した訳では無かろうが、プライベート・ビーチの海の家もまた中々の盛況を見せていた。
「BBQ、まだまだ足りませんね。
材料を一口サイズに切って串に刺して――ああ、忙しい!
お肉も良いですけれど、お野菜も欠かせないですよね。そこはちょっと多めに確保しておきましょうか……」
「こんな所で給仕してていいのかい」
「いやぁ、他はどうにも政治色を感じると言いますか、気軽に顔を出すのが何だか怖いんですよね……
という訳で招待はありがたいのですが、今日はずっと海の家で過ごしますよ!」
アグライアの言葉にはエール片手のレオンも「成る程」と一撃で納得したようである。
「水泳は普段使わない筋肉を使った全身運動と言いますからね
私も天義にいた時は泳ぐ機会がなかったけど良い運動になりました」
「海で泳ぐのも体力がいりますね。少し休憩していきましょうかっ!」
「アマリリス様は何を食べますか?」
「サクラちゃんは、なにを食べられますか? では、私は……焼きそばでも食べてみましょうかね」
「ええと、私は……イカ焼きを頂きます」
「ぶははははは! イカ焼きに焼きそば一丁!」
「レオン様、お隣あいておりますよ?」
「今なら食事を奢るだけで両手に花ですが、如何ですか?」
「あー、騙されたくなるねぇ。美人が二人」
サクラやアマリリスのように休憩目的で立ち寄ったイレギュラーズ、
「オイ……俺は暑いの苦手だと言っただろうが……選りに選ってなんでこんな真昼間の海なんだ!?
暑い、死ぬ……バリガぁ……水くれ……俺は日陰の風通し良いとこに居るから……」
「ンー? なんでって、いや、まァ、たまにはイイかと思ったンだがな……ダメだな、こりゃ、バテてやがる。
冷たいタオルでも額に乗せてやるか。あ、飲み物もちゃんと飲めよ、ほら
食いモンは? ……食うのかよ、食い意地張ってるなァ、ンなダレた格好してるくせによ!」
ダレ尽くすアルクに呆れた顔を見るBriga――つまりセレクトが割と間違いだったイレギュラーズ、
「そこの方、お時間はございますか?
もし良ければ、海の家でお食事しながら歓談でも如何です?」
「……?
あぁ、俺か。一瞬他の連中に声を掛けたのかって思ったわ。
目立つ連中やらは本当に多いからなー……いや、ホントに。
……っと、悪い悪い。食事だったな。丁度腹も減ってたし、俺で良ければ付き合うぜ」
「申し遅れました、私、コーデリア・ハーグリーブスと申します。どうぞお見知りおきを。
折角このような場でしょう? 私は旅の身空ですから、この機会に色んな人のお話を聞いてみたいと思いまして」
「成る程、俺は勇司、佐山勇司だ。そっちは……コーデリアね、今後宜しくな?」
ひょんな事からボーイ・ミーツ・ガールを果たしたコーデリアと勇司も居る。
「暑い。非常に暑いね……だが、故に役立つ品もある。
これはこちらの商人に譲ってもらったものでね。
動力が手回しなせいで、涼むために使うとまず汗が噴き出してくるのが欠点だが……
セットで譲ってもらったシロップもいろいろとあるから、使いたければご自由に――」
「お店で売ってるかき氷は食べたことがあったけど、自分で作るのは楽しいわねぇ。汗をかいちゃうのもまた楽しいかも!
シロップも色とりどりで綺麗だし……そうよ、何も一皿に一種類だけなんて決まりはないわよねぇ。
あれもこれもかけて欲張りかき氷にしちゃいましょ~!」
気の利いたペンギンを持ち込んだイシュトカに今日は少女のように目を輝かせた酒飲み(アーリア)、【かき氷】の二人の姿も、
「どれどれ何味があるかな? ん~、とりあえずメロン味でいいかな! ユウは何食べる~? ユウはイチゴ味か……」
「……え? 一口欲しい? それはまあいいけど、って食べさせて貰わなくていいわよ、自分で……え? 鉄板?
……あぁ、分かった分かったから食べればいいんでしょ?
これで満足かしら……あぁもう……こんな所で何やってるんだろ……恥ずかしいわ……」
かき氷に釣られたかと思いきや見てるこっちがご馳走様になるセシリアとユウの姿もあった。
『うーん! 冷たくて美味しー! やっぱり夏はかき氷だよねー!』
『だなぁ! こんだけ暑ぃと大量の氷の崖を丸ごと食べれそうだよなぁ!』
一人で二つの人格を持つ『霧玄と零夜』も氷には概ね満足そうである。
客層は実にバラエティに富んでいた。
「エマ君……君は元から美しいが、その水着は少々『ガチ』じゃないのかな?」
「ラルフさん、あのですね。いきなり恥ずかしいし、私はコメディアンになったつもりもないし! ガチってどういうことですか!」
「君が希少なツッコミで私がボケ役なのは承知しているが突っ込まずにはいられぬ。
野に咲く花の如き貞淑な顔立ち、小動物のように怯えた表情、普段は分厚き装束に隠されたガチボディ!
見るからに自信無さげな態度と裏腹なその美しさに私の鼓動は高鳴り、心は解錠寸前さ――君もそう思わないか?」
「思う思う」
「ねぇえぇどうしてそうつらつら恥ずかしいセリフ並べられるんですか!
誰が小動物ですかもおぉやだぁぁ……! この人達やだぁああああああ!」
酒飲んで管を巻くラルフやレオン、被害者(おつまみ)のエマみたいな取り合わせもあれば、
「……なんで、休暇に来てるのに依頼のクライアント…それも、とびきり厄介なのと一緒に居なきゃならないのかと……いえね?
別に令嬢様が遊ぶなとは言ってはいないんですがね? 此方としてはですね、とてつもなく気を使うというか……
……元よりアタシはこの暑さの中で遊ぶつもりなど毛頭無かったのでいいんッスけど……
はぁーあ……ジョッキ片手にエール持ってる方が落ち着くよ、アタシは……ひっく……」
「元気が無いぞ、美人。胸を張れ」
「やかましいです、女の敵」
レオンにやり返す出来上がったクローネのように圧の強い人から逃れてきた者も居るし、
「あと少し休憩したら泳ぎに行くか。セレンは泳げるよな?」
「じつは、泳ぐのは得意ではないです……なので、サメさんをお借りしてぷかぷかしようかな……」
「あー、それもいいかもな。じゃあ、俺も海に入ってのんびりしようかね」
まだまだ遊ぶ心算たっぷりな侠やセレン等も居る。見ての通り、非常に様々、エトセトラ。
海の家の客は見知ったローレット関係者ばかりだが、クローネの気分を鑑みれば逆に気心が知れるというものか。
貸切の魔力は気の置けなさにも十分な効果をもたらしていたとも言える。
何だかんだで居心地のいい空間は入れ代わり立ち代わりそれなりに多くの人間を飲み込んでは吐いていた。
「綺麗な海ね…南国の景色なんて何年ぶりかしら――あらチャロロ、戻ってきたのね」
「ふぅ、海で遊んできたらのどが渇いちゃったよ……」
「まずビールを一杯……はあなたにはまだ早いから、あっちのフルーツジュースでも飲むといいわ」
海の家をベースにしたミシャに『帰還』したチャロロは言う。
「ねえハカセ、もうちょっとくらい水中活動できるように調整とかできないかな?」
混沌肯定なる難題に挑む一組は置いといて。
――黄昏差す珊瑚礁は七色の宝石のように煌めいて――♪
「……次は……っと」
「初めまして、だな。思わず聞き入ってしまった……差し入れに作ったんだが良ければ」
「わ、オニーサンありがと♪ イメージに合わせてくれたの? とっても綺麗!」
「プロのシンガーだろうか? ライブをやるなら教えて欲しい」
「やだーそんな大したモンじゃないヨ、ただの弾き語り♪」
ルフトの真っ直ぐな言葉に照れくさそうな顔をしたミルヴィがパタパタと手を振る。
海の家には氷もあれば酒もある。食料もたっぷりでルフト曰くのプロの歌もついたとあればこれは上々である。
何だかんだでゆっくり話す機会は珍しいからか海の家のダラケコミュニティ――宴会もいよいよ盛り上がるばかりであった。
「レオンさんは何を頂いてるの?
私、海の家のメニューって食べるの初めてなの。
オススメがあればそれを頂いてみたいのだけど……ご意見頂けるかしら?」
「オマエ、向きねぇ」
流石に『くらげの魔女』に海産物を勧めるのはどうかと思案顔のレオン。
そんな彼をジェーリーは期待を込めて見つめている。
「俺は何でもやるけどよ、今は専ら酒のあてだな。
焼きそばとか氷とか、串とか? まぁ、モノは試しで物語屋で肝試ししてみても面白いけどな」
レオンの言葉にオラボナがおいでおいでをして見せる。
「海の幸がたっぷりと、おまけに調理器具もある――なら、たまには腕を振るうのも悪くねーよな」
「この際、アオイのコレとか御勧めしとくぞ。さっき喰って美味かったから」
色々放り出したレオンがジェーリーにアオイ謹製、海鮮たっぷりの塩焼きそばを勧めている。
「味の方は保証するぜ」
「オマエもいい加減休みなよ」
あれやこれやとパタパタ走り回るのは世話焼き世話好きの性格故か――レオンに声を掛けられた華蓮の頬が外気の熱に拠らず赤くなった。
「えっと、そのゆっくりして貰おうかと思って――で、でも……少しでもご一緒出来たら嬉しいのだわ」
「相互利益の一致だな」
人の多いレオンの周りは少し気遅れるのか何とも罰の悪い、歯切れの悪い華蓮だが、レオンはひょいと彼女の腕を引っ張って自分の横に着席させる。
「つ、謹んでお相手するのだ……わ!」
「良きにはからえってな」
むしろ今度は世話をさせる気はないようで、レオンはどんどんと華蓮の料理やら飲み物を取り分ける。
彼の性格からすれば要するに宴席の花は大歓迎という事のだろうが、目がぐるぐるになった華蓮は頭から煙を噴きそうである。
「相変わらずね」
「オマエなー……」
そんなレオンの背中を『撃った』のは涼しい顔をした暁蕾だった。
「挨拶代わりよ。前に話していたじゃない。『友人』が『女の子に背中を流してもらった』とかって」
成る程、水鉄砲を構えた彼女はたった今、レオンの背中を『流した』とも言える。
「ざんげって、こういう楽しいイベントの時も空中庭園から出てこられないのかしらね?
何かの事情であそこに縛られているだとしたら、とても気の毒だわね」
暁蕾の言葉にレオンは何とも複雑な顔をした。
「……大概、アイツの事を気にするねぇ。オマエも」
「貴方と同じだからではないの?」
切り返しは鮮やかで饒舌なレオンは軽く苦笑いを浮かべていた。
「オマエも、宴会参加な」
「はいはい」と肩を竦めた暁蕾は丁々発止のやり取りにもすっかり手慣れた風である。
「はァい、今日も男前ねレオン!
アナタは泳がないの? それとも監督さん役かしら――ふふ、忙しいローレットのオーナーも今日ばかりは骨休めって所なのね」
リノが「まったく楽しまなくちゃ損だわ。私とも一杯くらい付き合ってくださる?」とウィンクをする。夏の装いの伊達男はと言えばそんな魅力的なお誘いには一も二も無く頷くばかり。「一杯と言わず――潰してやるから覚悟しな」。
「日々の熱気とお祭りの空気に釣られてついつい、水着と言うものに初めて手を出してしまいましたが……どう、でしょう」
本の虫(ドラマ)に肌を余り見せない可愛らしい水着は掛け値なしに良く似合う。
「……どこか変だったりしないでしょうか?」
「ふむ……」
「……」
「……………」
「……………………」
ドラマがおずおずと尋ねれば、レオンは顎に手を当てたまま彼女をじっと見つめるばかり。
「あ、あの……レオンく――」
「――似合うよ。最高に可愛いから安心しな」
長い間合いに不安になり、堪らず口を開いたドラマを追いかけた言葉が遮った。
「い、今の、わざとでしょう!?」
手慣れた意地悪は何とも面映ゆく、ドラマは何とも複雑な顔をした。
レオンの好意が素直に発揮されない事は分かっているが、心臓に悪い事は確かである。
(……レオンくんも、良い身体してそうですから水着姿ちょっと見てみたい気もしますけれど……)
駄目な大人はカップを傾け、今年は水着を披露する気がないらしい。
「さ、オマエも一杯。呑めるんだろ?」
「この時間からお酒は少し早くないですか!?
……うう、でもこの熱気に麦酒と言うのも……抗いがたい誘惑です」
恐らくはレオン・ドナーツ・バルトロメイにとっても今日という日は最高の日足り得た事であろう。
酒もある。のんびり出来る。美人は一杯、面白い奴も沢山。旨い飯もあって、義務は無い――
「そこ」
「――!?」
青い海、白い砂浜――キラキラしたものに惹かれないのは概ね性質だ。
秘かに侵攻し密やかに掠める――つまみ食い(スニーキングミッション)は普段の料理を一味も二味も変えるスパイスである。
幾度と無く獲物を捉えたヘイゼル(ハンター)が失敬した串を咥えて珍しい顔を見せていた。
「折角だから、一杯位は一緒にやれよ」
「皆様、冷えた泡麦茶を一気に行って――混沌に来て唯一大きく不満な点と云うのは、異様に高い飲酒の解禁年齢なのですよ」
嘆息した彼女はやれやれとコップを手に取った。
呑めるのは酒ではないが、呷る姿は堂に入る。
その一気、あくまで喉が乾いたからだ――
●ほのぼのギスギス
「イザベラさんとソルベさんのクルーザー! わーい、初めての船! あっ王子! 王子遊ぼう!!」
「ロク君、こういう船に乗ったときの男女は、タタイタニックだかを再現するのが定番なんだそうだ!
僕たちもぜひやってみないかい!とてもロマンチックになるそうだよ!」
「えっ? タイタイニック? タイタイニックって何? まあ、とりあえずやろう!」
ブルーブラッドのロクはれっきとしたレディである。
そして、クリスティアン=リクセト=エードルンドは麗しの王子である。
「やり方はだね、こうして僕がロク君の腰に手を回して……まわし……回せない!!
身長差があるとできないのかもしれない! ここはひとつ、ロク君を持ち上げるしかないな!!!」
今日の淑女はされど、何処からどう見ても犬だった。
そして王子とは、時に素っ頓狂な行動を取るものと古来より相場が決まっている。
「わっ! どうしたんだい、暴れないでおくれ! 海面がなんだって!? 波の音がうるさくてよく聞こえないよ!」
「……ほっほっほ、楽しい光景じゃのう。主に妾のお陰で」
「いやあ、お日柄が良いですねえ。太陽が眩し過ぎて事実が見えなくなる位には」
「ほっほっほ……」
「ふっふっふ……」
ネオフロンティア海洋王国の支配体制は長らく海種と鳥種の持ち回りとなっている。
国内情勢のバランスを取る意味もあり、海種が国王の時は、鳥種が貴族筆頭――逆でも又然りである。
二種の仲はそこそこ悪く、現国王が海種のイザベラ・パニ・アイスだからして、貴族派筆頭はソルベ・ジェラート・コンテュール。
つまり、イレギュラーズを歓迎する為に用意されたイザベラの船は、まさに呉越同舟の有様なのであった。
まぁほのぼのギスギスはお約束として、船遊びと言えば定番は釣りである。
「……僕、ちょっと挑戦してみてもいいでしょうか?」
「うん? おっきなお魚さん釣りたいの?」
「大きなお魚が釣れたら嬉しいですね、頑張ってみます……!」
「わぁ、それはたのしそうね~私は見てるから頑張ってね!」
同道のメアトロの声援と期待を受け、ヴァンが慣れない釣り竿を弄り始めている。
「……静かだな。時折飛沫やら飛んでくるし、揺れるしで眠くはならないが。
釣り、か……釣り竿も、網も、存在は知っている。だが、使うのは初めてだ」
「まぁ私も、文献で読んだだけですのであまり上手ではないですけどね……」
船釣りに興味津々といった風のリジアに遙凪が言う。
「命に感謝していただくのもよし、感謝をしてリリースするもよし そんな形で釣りは終えるのです」
「女王様のクルーザーで魚釣りって凄い豪華だよね、えへへ。
釣って、食べて、お話して! スペシャルな今日を精一杯楽しんじゃおうっ!」
「うんっ!」
アリスの言葉にアレクシアは大きく元気に頷いた。
クルーザーに乗って釣りを楽しむ――今日の出来事はアレクシアにとって何もかも初めてだ。
海洋行きが決まった時から、こんな事もあろうかと事前に予習を済ませた彼女は未だ見ぬ今日という時を心待ちにしていたと言える。
その甲斐あってか、アリスの教え方が良かったからか――
「アリス君! 釣れたよ! 釣れた!!!」
「凄い凄ーいっ! もしかしたら才能があるのかも? よーし、私も負けない様にいっぱい釣るぞーっ!」
――海面から小さな獲物を巻き上げたアレクシアの笑顔が弾け、アリスもとても嬉しくなった。
釣りに興じるのはクラリーチェやグレイも同じ。
「夏の日差しは強いけれど――海面を撫でる風が心地よくて……絶好の釣り日和と言えるでしょうか」
「こうして楽しむ休暇もいいものだねぇ。釣れた魚はクラリーチェくんに料理してもらおうかな?」
「お夕食ですか? 生魚が大丈夫ならマリネとかおつくりしましょうか」
応じたクラリーチェにグレイは「いいね」と頷いた。
肝心な釣果を溜めたバケツから煤猫がまた一匹を拝借しているのに今は未だ二人共気付いていない。
「釣りなんて初めてだが……竿を垂らしてれば獲物がかかるんだろう?
だったら少し待ってればいくらでも釣れるんだろうさ。ぬるいぬるい……
ひとまず三、四匹釣れたら問題ないな。食うにも困らないし」
「え? 糸が引いてる? ……本当! は、早く釣り上げないと……!」
あっさりと当たりが来たエリーナにシェンシーが『まだ』余裕の顔をした。
積極的にフラグを立てまくるシェンシーの今日の釣果――未来の結果は武士の情けで捨て置いて。
この船の持ち主、イザベラは海洋王国のトップである。
そんな彼女に一目会おうと乗船を希望したイレギュラーズはそれなりに居た。
「イザベラ女王陛下、お目もじ叶い光栄なのです。
海洋出身の特異点、ルアミィ・フアネーレと申しますのです。本日のご招待に感謝致しますのです!」
「女王陛下に置かれましては、この度のご招待誠に有難うございます?
いやー、やっぱり異世界だけあって見たこともないような魚が釣れますね!」
折り目正しい挨拶をした海洋出身のルアミィと、些か怪しい敬語で釣り糸を垂らす主人=公、
「お目にかかれて光栄です女王陛下。ああ、何とお美しい……」
「おう、ういやつ等め。楽しんでおるようで重畳じゃな」
極めつけに鳥を形どったカフェオレシャーベットを献上し、スプーンでガシガシと突いた史之にイザベラ満足気である。
(陰険? 普通普通! 女王の敵は俺の敵!)
一目惚れ(?)とはげに恐ろしきものかな。
「ふふん」と鼻を鳴らすイザベラが、いちいち傍らのソルベに視線をやる辺りがほのぼのとギスる二人の大人気無さを良く表している。
とは言え、今日のイザベラの『優勢』は本人のレアリティにもよるものだろう。
「しっかしまあ、楽しそうに争ってんねえ……昔からそんな感じなのか?
ネガティブさがなくて晴々しくも見えるぜ」
「お褒めの言葉をどうも!」
呆れ半分、感心半分のMorguxにソルベが応じる。
ご覧の通り、いい意味でもソルベ・ジェラート・コンテュールは親しみやすく話しやすい貴族である。
海洋王国とローレットとの関わりで彼が表に立つ事は多いから今日後塵を拝したのはその辺りの影響もあるだろう。
「このクルーザーに乗せていただき、感謝を。
海洋で開催されている他のイベントの数々もどれも楽しませてもらって――この地に訪れる事が出来て良かった……と、そう感じているのです。
まだ未熟な身ではありますが、この地の為に頑張らせていただきますね」
まあまあ、とイザベラ、ソルベ、両方にそう言ったのはノエルである。
更にそこにフロウが続いた。
「この度はお招き預かり光栄です。初めまして、私はフロウ・リバーという者です。
――いずれこの先に至る一助となる女です。以後お見知りおきを……と思いまして」
「ぐぎ」りかけたソルベが「これはこれは」と冷静さを取り戻して目を見開いた。
フロウの手にしていたのは絶望の海図である。この海洋王国でそれを手にする事の意味は多くない。
「……これは……ええ、何れ彼等にも期待したいものですね? 陛下」
「全くじゃな」
この時ばかりは息を合わせソルベとイザベラが同じように頷いた。
狭い国土の諸島国家である海洋王国は外洋の先に存在する『かも知れない』見果てぬ大地を夢見ている。
『絶望の青』と称される不到領域を超える事は王国数百年の悲願であり、海種、鳥種の諍いもその大目的の前には些事と呼べる。
幻想(レガド・イルシオン)における『果ての迷宮』と同じ価値を持っていると言えば多くに判り易いだろう。
世界には冒険がある。そして、恐らくは来るべき戦いも――ある。
「大戦を終えた後の、戦士たちの休息、か……あるいは、それも『大事の前の小事』であろうか」
息を漏らすように呟いたローラントのサングラスの下の表情は読み取れない(※但しゴリラ)
「待つのもメイドの職務の内……とは言えなるべく早く姿を現して欲しい、とも思いますが」
「ウォーカーに伝わる伝承には、ある軍師が釣り糸を垂らし、己が使えるに相応しい人物が掛かるのを待っていたという故事があると聞く。
イレギュラーズはある種、運命の呼び水か――
ならば我等も待つとしよう。アイオンの瞳が見届けるべき敵が、英雄が、この釣り針に掛かる時を」
吹き抜けた海風に髪を抑え、目を細めたヘルモルトが応えるように小さく零し、副部長(勝手に決定)――じゃない、ゲンリーが今日も重く年輪を刻んだ表情と言葉で中学生の部活に勤しんでいる。
そんな、ちょっとしたシリアスは今は封印して。
だって、バカンスだもの。
圧倒的にバカンスなのだもの。
――イエー! ヒャッハー! ターノシー! ロッケンロー!
船にはヴィマラのデス声が響き渡る。
――うみのふかきは みまもるよ
ぼくらのいのちの そのはてを
そらのひろさは みちびくよ
ぼくらのたびじの そのはてを――♪
まるでハーモニーなんて知らない顔。
対照的に柔らかなカタラァナの歌が水面の上に揺れている。
「ああ、久しぶり! こんなに自由に泳ぐなんて――陛下もご一緒いかが?」
イザベラはそんな言葉に目を丸くして「一興かも分からんの」と小さく笑った。
イレギュラーズの休日は黄金の如き輝きを放ちながら過ぎていく。
最初の年の、最初のバカンス――全ての瞬間が二度と無い時間であるのと同じように、今日も又何より特別だ。
ザバザバと船の向こうを泳ぐのは【遠泳】な彼等。
貴道は余裕で、ルチアーノは力尽きかけ流されている。
「こ、この扱い……絶対に許されない……間違ってる……」
まさかの締めでシェンシーに『釣り上げられた』のは最初に沈んだ大物――ヨハンであった!
――閑話休題、パッション&デザイア! 休日はまだまだ終わらない!
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
YAMIDEITEIっす。
何だか久し振りに色々こなさなくていいイベシナを書いた気がします。
平和で緩くてのんびりしていて気楽でした。
お楽しみ頂けてれば幸いです。
シナリオ、お疲れ様でした。
GMコメント
YAMIDEITEIっす。
雑なイベシナを作る事に定評がある私。
珍しくきちんと作りました。
以下詳細。
●依頼達成条件
・何か楽しく遊んで平和な感じならいいんじゃないかな!
●ビーチ
全く美しいパーフェクトなビーチです。
海洋王国王家のプライベートビーチであり、イザベラから招待を受けたイレギュラーズと権力で自身をねじ込んだリーゼロッテの貸し切りになっています。
白い砂浜は広く、エメラルドブルーの海は澄んでいます。
専用の海の家があり、沖合には談笑するイザベラとソルベの船が浮かんでいます。
●選択と書式
以下からプレイングに近しいものを選び、書式ルールの通りに記載して下さい。
【渚の君】:渚で遊びます。泳いだり砂浜で遊んだり。リーゼロッテはここに居ます。
【海の家】:海の家で休憩したり飲み食いしたり。レオンはここに居ます。
【船遊び】:イザベラのクルーザーで釣りしたり遊んだり。イザベラ&ソルベはここに。
【その他】:一応項目作っておきますが趣旨に沿うプレイングをお願いします。
・書式ルール
以下の通りに記述して下さい。
一行目:【】の選択肢のみを記述
二行目:同行PCやグループタグ(【】でくくる)がある場合は記載。NPCにご用命ならばここに名前を書いて下さい。
三行目以降:自由記載
例
【渚の君】
【サーファー愚連隊】
全力でサーフィンします!
守られていない場合カット率が爆上がりします。
実は特別性のないイベシナをPPPで運営するのは初めてです!
以上、宜しければご参加下さいませませ。
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