シナリオ詳細
募集:離島旅行者(行き先秘密★)
オープニング
●わくわくーどきどきー旅行ターイム!
これはおかしい。妙だぞ一体どういうことだ。
船だ。我々は船に乗ってきた。偶には依頼から離れて旅行でもどうかと、そう。そんな誘い文句だっただろうか。港に案内され乗船し、隣の者と一体どこへ到着するのだろうかなどと他愛のない話をしていたら。
「ここは……どこ……?」
いつの間にか島に着いていた――ただし人気の全ッく。全ッッッく無い離島だが。
中央には木々が生い茂っているの見える。何処からか鳥の鳴き声も聞こえるなぁ。わぁとても自然的な島だぞう。問題は陸地がとても見えないって事かな。飛行しても海を泳いでもこれはとても単独では帰れない。しかも船は帰っている。
「よし。船も見えなくなったね。では……」
と、その言葉に続けてメガホンを取り出すのはギルオス・ホリス(p3n000016)だ。
皆をここへと案内した男。なにこれどういう事と困惑する皆を前に、彼は。
「では皆――騙して悪いがこれよりサバイバル訓練を開始する!」
平然と言い放った。え、何? ちょっと待ってサバイバル訓練?
「別名遭難訓練と言い換えてもいいよ。この島はねローレットに恩のある、とある貴族の方から貸していただけた離島なんだ。結構な広さもあるし、こういう訓練には最適な地でね。その上魔物の類も多分いないから大丈夫だよ」
今なんて? 多分って言った? というか何が大丈夫なのかちょっと分からない。
まぁ百歩譲ってそれは良いとしても、だ。旅行と聞いていたので食料の類など持ち込んでいないのだが。どころかサバイバルに必要なアイテムなど何人が偶々に持っているだけの事か。恐らくほとんどの連中は持っていないと思うのだが。
「ハハハ――安心してくれ。僕もだ」
「どこに安心できる要素が!? やめろ――! 家に帰してくれ――!!」
「依頼の最中には不測の事態が発生しうる事もある。例えばこういうサバイバルな環境に身を置かざるをえない事も……そういう事態に少しでも備えられるよう今回の件を企画したんだ」
はた迷惑にも程がある。
「まぁある程度の日数が経過したら迎えが来るようには手配してあるからね。その辺りは安心してほしい」
ちなみに具体的にはいつ?
「それは教えられないなぁ――わくわくドキドキなサバイバルじゃなくなるだろう?」
わくわくどきどきな旅行という話だっただろうがこれは――!
抗議する者。どうしようと悩む者。いっその事楽しもうとする者。
様々な思惑が入り乱れて――さぁサバイバルの始まりである。
- 募集:離島旅行者(行き先秘密★)完了
- GM名茶零四
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年04月02日 20時55分
- 参加人数148/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 148 人
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参加者一覧(148人)
リプレイ
●一日目
なにがどうしてこうなった。そう思う者は多いが船は帰っている。残念だったな!
「あぁもう! 何がサバイバル訓練よ! 完全に騙されたわッ!!」
「おおぅ……まさかこの展開とは……旅行、楽しみにしてたのにな……」
ユウとセシリア。互いに旅行気分で来ていた彼女達にとっては勿論寝耳に水。どころか旅行予定が全力で潰れてどちらかと言えばおこである。おこ。しかしいつまでも項垂れている訳にはいかない。行動せねば、嫌な予感がしているのだ。
「私が誘ったばっかりに……ユウ。巻き込んじゃってごめんね?」
「いいのよ、セシリア。悪いのはこんな事を企画した奴なんだから……! と、それより向こうに見える雲もなんだか怪しいしね。早く凌げる洞窟とか水源を探さないと。私は空から見てみるわ」
「後で集合、だね。このままだとなんだかよく分からないけれど負けた気がするし……意地でも楽しもう!」
実際にこういう機会になるのは絶対にごめんだが、とセシリアは呟いて。
往く。あちらにそちらに。この場を凌ぐためにこそ。
「……天が荒れているのです」
などと意味深な言動を放つのはひまわりだ。彼女は気象衛星の化身。なんと一週間先の天気をばっちり半分の確率で測定することが出来るパァーフェクトな存在である。パァーフェクト! ならお願い、キャンプの準備手伝って?
「ひまわりは断言します。明日はとんでもなく天が荒れるでしょう。明後日はマシになり、そこからは安定するだろうと。お分かりですか? つまり今の内に明日の準備をする必要がある訳です」
だから準備手伝って?
「……? おかしな事を言いますね。ひまわりは予報が本分なんですって」
「……やれやれ。結局予報が正確でも備えに至れねば意味が無いだろうに」
やむを得ない。私が手伝おう、と申し出たのはルチアだ。
「ま、力仕事があるだけマシか……こういう時一芸に秀でていればなぁ」
吐息一つ。イレギュラーズになったばかりの彼女。苦難はこれからである――
「サバイバル訓練と言ってもな……まぁ慣れたものだが」
そんな近くでまた別のサバイバル対策をしているのはウィルフレドだ。
常日頃から旅を続ける人生。ならばサバイバル生活など隣にいる友人のようなモノであり。
「たしかに、向こう側の天候が怪しいな……今の内明日以降に備えるべきか」
彼は布、砂、石、草など――細かい物質を用いて濾過装置の作成に取り掛かる。後は魚なり鳥なり食料を確保して、洞窟でも見つければ備えに出来る。ああ余裕があれば大型のシャコ貝など見つかれば鍋にも出来るなと考えながら、順当に作業を行えば。
「ハハハ――無人島ですよ無人島。マリナさん畜生はめられた」
「無人島ですね無人島。泳いでも帰れないですよこの距離」
やってくれやがって……と言う表情で海の端を見つめるのは狐耶とマリナである。
さりとて気はすぐに立て直し。求めるはライフライン。衣食住の内、衣と住はなんとでもなるとは思うが――しかし食。食だけは全力を尽くさねばならない。働かざる者食うべからず。
「ラッキーな事に釣り竿は持っていました。これでバンバン釣りましょう」
「流石マリナさん、海のプロ。海の加護マシマシで――ほら凄い。長靴。長靴が釣れちゃいました」
私こんなの釣れた事ないです。テンション上がりますねハハハ漫画か。
「ハハハ奇遇ですね。私も今長靴が釣れました――ほら左右揃いましたよ。色もサイズも違いますけど」
「マリナさんの加護なし役立たず」
「狐耶さんがぽんこつラックなだけです」
ブーメランではなかろうか。ともあれ、しょーがないから潜って獲るかとマリナが潜水。
果たして晩御飯は無事取得できるのか――?
「……全く。見知らぬ離島を、思い思いに飛び回って過ごそうと思ってたのにね」
予定が崩れたと呟くのはジェニーだ。されどその想いも一瞬で。
「まぁいいか。明日の事は明日考えれば。とにかく今は……」
どの道景色を眺めたり木々の間を縫って飛べれば問題なし。
あとは水でも探して備えるとしよう。
「なんで……?」
旅行って言ったじゃん……? と黄昏気味に海を眺めるのはアレクシアだ。もしかすれば深緑では見られない様な自然があるかもしれないと楽しみにしていただけに落胆も大きい。違う。求めていたのはこういう豊かな自然ではなく。
「責任者は後で引っぱり出すとしてッ! とりあえずは安全そうな場所とか食べ物とか探して。はぁ、サバイバルに備えないとね……さー頑張ろう!」
現地の植物や動物と会話行い手探りにサバイバルだ。幸いにして天気はいいみたいだしなんとかなるだとうと気楽に構える。明日の大嵐に彼女が吹き飛ばされるまで、あと……
「おねぇちゃん……ボクたち、ひょっとして騙されたの……?」
「あ、ええと。旅行と聞いては、おったのだが、その……ほんっと――に申し訳ないのじゃ!!」
旅行の話を聞いてこれは結乃を誘わねば! と意気揚々にしていた華鈴だが、今はその頭が地にめり込んでいた。見事な土下座である。別に彼女が悪い訳ではないのだが、それでもどこか罪悪感があったのだろう。
「え、と……騙された、けど。おねぇちゃんもなら、ボクもだから。おあいこだよ。
だから……このチョコたべよ。はんぶんこで、あおいこどうし……」
「おぉ……結乃は良い子じゃのぅ……うむ、半分こじゃ! 折るのは任せよ!」
偶々に持ってきていたお菓子が役に立ったようだ。チョコを半分口に運べば糖分が体に染み渡る。されど優しさにも甘える訳にはいかず、華鈴はチョコを一口だけ含みその他は隠す。いざなる時に結乃への渡す為に。
「一人残されるのは嫌だから、一緒にいてね」
二人ならきっと何とかなるよ、と結乃はそう言葉を含んで。
「結乃を一人残したりはせぬぞ! うむ、まずはわらわと一緒にご飯探しじゃな!」
されば華鈴もまたいつもの調子を取り戻す。
さて。どちらがどちらを安心させたのか。
「聖剣の加護……こんな無人島でこそ、特に輝きそうだな」
ハロルドだ。彼の聖剣には加護が……ギフトが宿っている。様々な病原体を寄せ付けぬその能力。感染症を心配しないでいいのは大きい。これを利用して探索の先陣を切ろう。
「水源を早くに見つけたい所だが。さて……鬼が出るか蛇が出るか」
しかし未踏の地に率先してはいるのは危険もあろう。
鬼が出るか蛇が出るか。あらゆる技能を用いて、彼は危険に備え森へと踏み込んだ。
「気乗りは最初からしていなかったんだが――また厄介な事になったな……」
まぁいい。じっとしているのは性に合わんと島に繰り出すのはプロミネンスだ。
途中で見つけた暇そうなセレスタイトの襟首掴んで、食料の事情を優先とし。
「はわぁ、大変な事になってしまいましたねぇ……まぁ動物がいそうな所への案内はしますが」
「その後は俺がやる。いいから教えろ」
セレスタイトの動物知識に加えプロミネンスの超聴力。それらを合わせ、動物を見つければ一刀両断。食材として持ち帰れば多少の腹足しにはなるだろう。
と、その時後ろを振り返れば怪しげな薬草を物色してるセレスタイトの姿があって。
「ふふふ。いやぁこれも食べれそうですねぇ。ええ――明らかに毒キノコですが。まぁ『食べられる』事に間違いはありません。いざなれば医療知識でフォローを」
「成る程。先にお前の口に捻じ込んでやろうか。口を開けろ」
「あぁーやめてくださいプロミネンスさぁん、乱暴はやめてくださぁい……」
うわぁぁぁ……と言う声が聞こえた。南無。
「え~……サバイバルなんてやったことないのですよ……」
言うは愛莉だ。地球、日本という国の出身である彼女にサバイバル経験は皆無。苦手意識が滲んでくるが、出来るようになるべくの訓練という事なら仕方ない。人数も多いのだ、協力すればなんとかなるかもしれないと思い。
「んー調味料セットはありますし、料理なら行けそうですね。食材に毒さえなければ……!」
彼女がセレスタイトの食材に手を出さないことを祈ろう。早く帰って、温かいお風呂に入りたいと思いながら、彼女は初日を過ごしていく――
「最近こうやって強引に依頼に連れて来られる事、多い気がするのであるよ……」
高い所から強制バンジーさせられたり。とはルクスの言だ。
若干呆れの感情が芽生えるが、折角の機会と心を平常にして。
「当たりの果実は採取・確保で良いが……さて寝床はどうするべきか……」
深刻な問題である。と、その時。背もたれにした木の後ろから男の声が聞こえて。
「あぁ、クソ。美味い話なんざあるわきゃねェ……たくッ、そりゃそうだよなぁ」
ちくしょうが、とやむなき感情で島内を歩き回るのはロアンだ。イラッと来たので主犯であるギルオスをぶん殴ったはいいが、殴っても帰れる訳ではないので仕方なく寝床を求めている。洞窟でもあればいいのだが。
「黒雲がこっち来る前になんとかしねぇとな――とッ?」
「おやこんにちは。お互い目的は一緒なようだね」
なんだそっちもか、とルクスに答えるロアン。持っていた護身用ナイフで乾いた落枝を回収しながら共に良さそうな環境を探さんとする。火を起こす手段は誰なりと持っている様子なれば、更に合流出来れば生存も容易かろうと思案して。
「サバイバル? なんとか村を見てたボクなら楽勝だよ!」
そう、アイドルとはサバイバルをするもの! 楽器を持って安心してはいけない。桑を持って安心しなければとどこかの先人をセララは思い浮かべて。
「川に仕掛けた罠にお魚が獲れてー! 後はサッと火を点け、点け、あれ? 点け……」
一時間後。
「で、出来たー! ついにもぐもぐ焼き魚――! ヤッター美味しい!」
感動である。趣味でお菓子は作っていたが、実際に火を点けるのはこんなに大変なのか……
口に広がる自然の味は、それでも美味に。
「数日程度の飲まず食わず、なんとでもしてみせるッス!」
言うはスウェンである。無人島とは言え、周りに海も植物も豊富な地となれば飲食には困らぬと判断。
ならば折角の島。己の訓練にしようと思考して。
「目指すは――島の天辺スね。中を突っ切ればその内辿りつく筈ッス……!」
クラウチング姿勢からの獣道へと一直線。
足元不安定な地を如何に体勢崩さずスピーディーに進めるか――彼は己が境地を見出す為に、駆ける。
――二泊三日の豪華南国旅行(豪華ディナー付き)と聞いていたのだ。
「赤ワインに、フォアグラのパテ――今夜のフルコースはどこへ行ったんですか!?」
肉体を持つことの不便さを感じながら幻が言葉を。恋人たるジェイクと共に無料旅行を出来ると楽しみにしていたのに、
「ふざけるな! 無人島サバイバルなんて聞いてねえぞ! ええい、くそ……フルコースは欲しけりゃセルフってか!?」
食材調達の段階からかよ、と嘆くはそのジェイクである。しかし嘆いてばかりもいられない。幻を守るのは己の役目と思考して。
「よし、森の方へ行ってくる。獲物を狩ってくるから料理は任せた……!」
往く。マスケット片手に技能をフル活用して。獲物さえあれば、あとは幻が上手く――
「はっ、そうだこういう時こそ僕のギフトがあるじゃないですか! 正に天啓っ!」
調理――するまでもなく幻にはギフトがあった。使えば料理など楽々だ。唯一の問題は数分で消え去る『夢』って事かな。ふふっ。
「うーん……島ではここまで非文明的な生活をしてたわけじゃないけど、なんとか頑張らないと」
イリスは言う。まさかのサバイバル生活だと。
元居た故郷でもここまでの環境ではなかった。ともあれ海が時化る前に食料を確保せねばならない。
「私は海の方に行って魚介類を獲ってくるね」
「はい。私は――山の方に」
答えるのは妹分のシルフォイデアだ。イリスは海に潜ると同時、人化を解いて元の姿へと。
トラクトステウス属に近い光沢の姿にて――魚を狩る。こうなってしまえば己の本分だ。
「遭難訓練……確かに、こういう状況になる可能性もあるかもしれないのです」
一方のシルフォイデアは山の方へ。果物や山菜がある方向へと向かう。自然知識がある故毒物かそうでないかの見分けは……恐らく付くと自らに言い聞かせる。ついでに寝床になりうる洞窟も探すべきだろうか? 悩みながらも歩は緩めず。森の方へと。
「海だ! 船だ! 島だ! 凄い凄いッ!!」
故郷ではこんな光景は見れなかったとテンション高めなのはニゲラだ。
「え? でもなに? ん? 訓練? さばいばる? あぁ……そういう事ですか」
ちくしょう! と騙された事が分かっても大体変わらない。そもそもだ。田舎育ちの身からすると環境自体には慣れたものである。海はともかく陸の食糧調達など余裕であり、故に思わず。
「――楽勝ですね!」
言ってしまった。さぁ明日を期待しておこうかニゲラ君。
さて。それでは無人島と言えば?
「ダンジョンだよね! え、違う? ない? いやそんな筈はない必ずある!!」
信じる心は大切だ! アトの好奇心は無人島ダンジョンへと一直線。それ往け突撃隣のダンジョーン! しかしその想いを抱いたのはアトだけでなく。
「まずはたんけんたんけーん! 未知のダンジョンだってきっとある! あるって信じて探さなくっちゃ、見つからないものだってあるんだよ!」
シャルレィスも同様だ。貴族の所有の島なのである筈がない? いやそんな話こそ知らない。
信じれば必ずある。諦めなければ夢は叶う。旅行がサバイバルになったがその程度なんのその。そんなこんなでアトと競合して探索したら、
ガチであった。
「ふ、深い洞窟だよ! むっ、装備は……おやつに持ってきたお菓子もあるし……大丈夫だね!」
「待って! これ、おかしい。なんか毛深い巨大なモッフモフがあって前に進めな……」
いや違うこれクマだ――! という叫びをアトが。挙げたと同時にクマの雄叫びも。
死闘が演じられる。だが諦めてはならない! この先にこそきっと探求すべき迷宮があるのだから! お宝求めて――さぁ行け冒険者! 例え血塗れになろうとも!
「神様、思うんだけど旅行じゃないよねこれ?」
『訓練としては丁度いいだろう?』
「それ、お節介って言うんだよ」
十字架に宿る魂との会話はティアだ。こんなお節介はいらなかった、と吐息が漏れるが、ひとまず飛行して水場を探索だ。幸いにしてテントセットも持っていた。これを敷けば寝床には困るまい。あとはとにかく水。
「瓶か――なければ適当に木材で器でも作ろうかな」
早くして、明日以降に備えねば。
「そっかーサバイバルかー……たいへんだなー」
思わず他人事の様に威降は呟くが、吐息を一つすれば立ち上がり。
「……さて、まずは水だな。食料はオヤツに齧ろうと思ってた干し肉があるし。あとは他に、住む所さえ見つかれば」
なんとかなるだろうと思考する。こんな状況、子供の頃にあった気がするなぁ。
暖かいからこっちの方がまだマシかもしれない。彼は森の中へと足を踏み入れて。
「さばいば、る?? え、とそれは……つまり旅行ではないって……えっ?」
いやホントに主犯の奴が何を言っているのかよく分からないが『のんびりしていいよ』という意味なのだと蜜姫は前向きに解釈。実際間違ってはいない。環境が過酷なだけで。
「……とりあえず水場、とか。教えてもらうのに、挨拶しなきゃ」
初めて訪れる地だ。故に現地の木や草、つまり精霊に挨拶しながら散策。されば向こうからある程度の情報は教えてくれるものだ。これからはどうしたものか。困っている参加者がいれば手助けしたいのだが。癒しの力は得意である故に。
「――む。私はてっきりお仕事を頂けるのかと思い乗船致しましたが」
まさかこんな事態になろうとは、とクロウディアが呟く。
あれよあれよの間だった。事態の把握より先に船は帰って。いや、まぁそれはもういいが。
「もし、お嬢さん……大丈夫でありますか? ここに居ては肌が焼けますよ」
「あっ……これは、親切に……ありがとうございます」
日陰へ参りましょう、との言葉に手を引かれるのはウィリアだ。とてもサバイバルに相応しくはなさそうな雰囲気がクロウディアの目に入ったのか。日差し避けにスーツの上着もかけて。
「今は、晴れてますが……遠くからの雲行きが、不穏です。晴れている内に……休める場所を探しておきましょうか」
「ええ、これも何かのご縁。ご一緒しましょう」
お礼にと手渡された携帯食に、助かるのでありますと返答するクロウディア。
「一緒に……乗り来ましょうね、クロウさん」
実は互いに旅には慣れている同士。アクティブな数日はこれからである。
「離島旅行と聞いていたが……成程。そういう事か」
「趣向と言えば、そうなのでしょうけれどね。理解はできます」
アレフとアリシス。二人はサバイバルという単語を聞いた時点で全てを察した。アレフは離島のどこかにあるという遺跡に興味があったのだが……どうもこうなると探索の余裕はなさそうだ。残念である。
「遠からず嵐が来そうだ。まずはそれを凌ぐとするか……アリシス、こういった経験は?」
「そうですね……サバイバル、とは些か異なりますが、似た訓練自体には経験が」
昔取った杵柄、と言うべきか。守り人の折の。
されば思う。今後を想えばこそ『そういう』経験は今でこそ経験しておくべきだと。『その時』が来るとも来ないとも知れぬが、来た時。何も心構えが出来ているとは限らないのだから。
「此方に来てからのこの身で、どこまでやれるかは試してみたい所ですね」
「そうか、なら……大きな戦を乗り超えた者、知識を持つ者……多くの者がいる。
生存の術を持つ彼らがいれば向こうはなんとかなるだろう」
故、我々は我々で好きに過ごさせて貰うとするか、とアレフは言葉を紡いで。
「フッ……ミーの人生こんなんばっかだ」
その近く。貴道は食料を調達するべく森へ入って――なんと道に迷った。遭難先での遭難である。
バッドラック。道を勘で選んでいたのが駄目だったか。昔からこれだから……とは思考しながら彼は水辺に向かう。水さえあればなんとかなるだろうと思考して、あっ。
クマがいた。
「ワァー……ォ」
明らかに尋常なサイズではない。3mは超えてる。しかもこっちを視界に、逃げられそうにない。では決戦だ。バッドラックからのデッドアオアライブ。果たして食料になるのはどちらか――!
「離島……でサバイバルか。ま、そんなこともあるわな」
いややっぱないか、と自問自答するのは黒羽だ。しかし幸いにして空は快晴。ならばゆったりと普通に過ごしリフレッシュしよう。まさか狙った様に嵐が来たり日照りが人を焼いたり。
「水不足の果てに生存のバトルロワイヤルで特異運命座標が死屍累々なんてことある筈ないしなぁ~」
あっはっは! まっさかなぁ~はっはっは!
武器だけは手入れしておこう。
「ほほほーう? 俺にサバイバル訓練をさせようとはいい度胸だな?」
コンバットナイフを持つエイヴァン。これがアレば大抵の状況はなんとかなりそうだが。
「……正直面倒だな。迎えが来るまで寝て過ごしてもいいが」
流石に暇だろう。いつ来るともしれぬし。
やむを得ない。飯と寝床だけは確保しておくか、向こう空を見れば良い海況ではない様子が窺える。
ギフトの効果で体力に問題はない故……さて。ジャングルの方でベッドでも作るとしようか。
「はっは――! マジかー無人島で暫く暮らせってかー……」
マジかーなんとなくイヤな予感はしていたんだけどなー、とロクスレイは語る。
「まー無人島っつても森があるなら俺は問題ないけどさ。どうすっかねぇ……安全に休める場所をまずは作るとしますか? 上の様子がなんだか怪しいしなぁ」
天を見上げれば雲の様子が。今の内、洞窟を改修するなり、なんとか嵐に耐えれるような住居を確保したい所だ。いざ来てからではもう遅い。
「動物除けのトラップ、も一応な」
さてさてどうなる事やら。
「いやぁいい天気だね! うんうん! 嵐の予感がひしひしと感じられるけど、そんな事を全く感じさせないぐらい本当にいい天気だ!」
どういうつもりでもないが、避難できそうな洞窟を探しに行こう! と叫ぶのはグレイ。
黒い雲が見えた事もさる事ながらハイセンスによる三重感覚が言っているのだ。やばいと。
早い所避難の準備をするとしよう――
「ふんふふーん♪ あ! 動いた動いたお魚お魚――!」
そんな近くでアトスは釣りをする。貴重なご飯だ焼き魚にしよう。
無人島生活。これで凌げればよいが――
水の中に手を入れるのはレオンハルトだ。
この水源に毒物が混じっていないかギフトによって調べている――が、色に変化はないようだ。ならば飲んでも特段の問題は無いだろう。
「剣と非常食を持ち込んでいたのは幸いだった……後は、風除けの場所か」
それから火元の意地としての燃料も運んでおかねば。天の様子を見ながら、彼は呟いた。
「……なんなんだろうなこの状況は。俺は、保養に来たはずなんだが……」
義弘は思う。旅行の筈だった。だから来たのだ、ギルドの飲み仲間達と。しかし目の前にある現実は。
「はは――コンチクショウ! なぁにが『依頼から離れて旅行でもどうか』だよ! こんなもん情報確度Dじゃねーか! 依頼で色んな物燃やされてるが、島は燃やせねぇだろうから罠はねぇと油断してたぜ!!」
キドーが叫ぶ。こんな依頼、情報確度D。DONZOKOだと。ごめんね★
しかしやられっぱなしで終わってたまるか。生き延びてやる。必ず。これから毎日島を……じゃなかった。焚火を焼こうぜ。
「ま、なんにせよこうなっちまっては仕方ね。ぇ生き延びしかねぇよ――なぁ皆?」
「うむ、その通りだな。まずは、食料の調達と寝床の確保ぐらいが出来れば上等かな?」
義弘の言葉に賛同を示したのはジークだ。食材調達として木の枝と蔓で釣竿を作れば。
「ギフトも交えて魚を狙ってみよう……上手く行かなければ、まぁ狩猟だな」
身が骨だが、この世界に来てからは味覚が戻って腹も減るようになった。食料は重要要素である。上手く事が進めば夜の暇な時には金属製の手記でも解析して読みたい所なのだが。
「俺も食材集めと、アトはコノ島に何があるのかをマッピングすル」
言うは豪真だ。ジークと役割が被るのでマッピングをしながら食材集めをすることにしようか。
歩きながらサバイバルと冒険技能の組み合わせで罠を設置。これに動物が掛かれば良し。あとは果物も取っておこう。大所帯故に数が必要だ……
「水源、食糧……何日いるか分からないからナ」
持ち歩いていたサバイバルナイフが役に立つ。さて、まだまだ数が必要だ。
「まさかこのギフトを使う日がくるなんてね……他の人がどこか、真っ当な水源調達するまでは、飲み水はシグに任せて」
指先を軽く切って、零れた血がギフトにより浄化される。
出し過ぎると普通に疲弊するため、シグルーンは少量のみに抑えれば。
「俺は拠点の確保にでも動くか……貴族管理なら管理小屋でもあるかもしれねぇ」
あるいは洞窟などか。大型動物に鉢合わせたくはないが、ひとまずは探索をしてみねば。
「フフフ……遭難、困難、災難、至難! これぞ正しく暗雲低迷」
されど自らの精神は期待に高鳴ると、ジョセフは同時に声も高らかに。
「時めく。サバイバル。生存訓練か。あぁ、己を痛め付ける絶好の機会だな、我が友よ、苦痛! 愉悦! 戯れよう! さぁ愚者に相応しき地獄は今ぞここに!!」
「親愛なる友よ。彼方に浮かぶ暗雲を仰ぐが好い。奴等が魅せるのは娯楽の極みだ」
呼応するようにオラボナも――自らのギフトにて『芸術』を生み出さんとする。それは、
暗雲に生える牙と舌。悪夢の如く膨張する怪物は緩やかに宙を咀嚼する。
触肢と蹄が海を踏み、哄笑するような波を孕む。
親は地上で楽器を搔き乱す芸術家だ。
踊り狂う雲の怪物が、雷の咆哮を――嘲りを。
それは17秒の――芸術。
「おぉぉ友よッッッ!」
思わず歓喜狂乱しそうになるジョセフだが堪えねばならない。
これは娯楽的恐怖。素晴らしい者は素晴らしいと叫びたいがッ!
狂気の混沌――ここに在り。ジョセフとオラボナの高揚は留まるところを知らない――
探してみれば崩れた洞窟、という場所はあるものだ。
「うむ――ここじゃな。拠点とすべきは」
見つけたのは世界樹だ。どういう理由で出来たのか、飛行できねば辿り着けるかは微妙な程度の高さに。入り口が岩で崩れて物質透過でも無ければ入れぬ横穴があった。
「天気も遠からぬ内に崩れそうじゃし、今の内に果物を手に入れて来るか」
世界樹は往く。明日を、明後日を凌ぐ為に。
「魚が獲れたぞ! お昼は焼き魚だな――誰かいるか!」
「バカンスかと思ったら命の危機じゃないですかヤダ――!! はいはい私いりまーす!!」
思わず走り出すジェームズ。命の灯が直に見える彼にとってカロリー制限は死に直結だ。故にプライドとか知ったこっちゃねぇ。手持ちの固形携帯食ではとても足りぬのだ! その為、水泳上手なカイトの取った魚に全力で飛びつく。お魚ありがとうございます!
「とっくの昔に燃え尽きたモノ(プライド)になんて拘らないさ……はー、後は飲料水かな?」
とりあえず今日は保ちそうだ。と思考しながら自らのケミストリーたる知識を活用し皆の手伝いに往くとする。自身は、水は必要ではないが助け合いはやはり必要だ。
「なるほど、旅行ではなくこういう展開か。ふふ、面白い。望む所だ」
ラルフは笑みを見せる。訓練ならば訓練でそれでよし。まずは植物が多い地帯で洞窟を探すとしよう。上手く行けば水源付きで見つかる。見つかれば後はケミストリーを生かしてろ過装置も作れれば完璧。
「さて。過去に俺はどんな可能性があったかな……」
ギフトも用いて。さぁ――この環境に挑むとしよう。
「やれやれ……旅行の筈がサバイバル、か。とんでもない事になっちゃったね」
嵐の中での戦闘訓練でも、などとルチアーノは思っていたのだが。趣旨に反しそうだし親友に怒られそうだ、止めておこう。空のペットボトルにひとまず水を採取しつつ。
「後は――うん、野鳥かな?」
狙うは鶏肉。成果次第で今宵のおかずが決まるだろう。漆黒のマスケットの遥か先には、その姿を捉えて。
「上手くいけば物々交換して……その後は寝床も探索して……」
やる事は一杯だ。引き金を絞って、銃声一つ。
「はぁあ~~あぁ……微妙でもいいから酒が入ってないとやる気がでないのに……」
これは困るわぁ……とため息をつくは琴音だ。常日頃から持ち歩いている安酒2Lを前にして。
「いつもなら半日もたない量しかないのにぃ……ちびちび飲むしかないか……」
2Lが、半日? 聞き間違いだと思うがとりあえずはこの2Lで数日保たせるようだ。ひとまず彼女は寝床を探す。素人の手作りは危ないと洞窟を、だ。あとはぐうたら。無駄に動くことは無かろうと思案して。
「うーみーはひろいーよー、おおきーいよー……ふぅ……」
まったりしているのはメリルだ。ん? 歌が現実逃避? 気のせいである。
それよりも旅行のつもりで持ってきた釣り道具が反応していて。
「わ、釣れる手ごたえ――むー? なにこれー?」
お口が凄い形の魚が釣れたー。なんだろうこれ。スナヤツ……なんとかという魚だった気がするが。
「り、リリース! 川へお帰り!」
とりあえずキャッチ&リリースした。その後も暫く釣りを続け。
夕方になったら焼き魚にでもしようかと思考しながら。
「……サバイバル? カンテラと折り畳みナイフしか持って来ていないのだが……」
まぁ考えようによっては今の身体になれるいい機会だとイースは思考して。
「折角だ。楽しむとしよう――まずは、動物を探して食料を確保せねばな」
姿だけでも見れればいい。後はギフトでその姿に変身すれば、二度目の邂逅で警戒心は削げるはずだ。初日で保存用まで余分に取れれば良し。だがなるべく急いで洞窟も探すとしよう。寝床の確保に悩むのは御免だ。
「あれこれ思わないでもないけれど――今は行動あるのみ、か」
嘆いていても状況は変わらないと、スティアは前向きだ。
必要なのは他の者と同じく寝床か。雨が降っても雨水が流れてこなさそうな所が良い。果物なども重要だが、まずはそちらの方から。あとは困っている者がいれば互いに助け合うようにしたい所だが。
「こういう時こそ助け合いが大事だし……なにより」
己も、役に立てると良いなと。心で呟いた。
お肉にお魚、野菜にお米にパンに仕舞いにはデザートえへへ。楽しみだなぁ旅行バイキング――
「はああああッ!!? サバイバル!? バイキングは!? 食べ放題は――!!?」
お腹を全力で鳴らしながらリックはこの世の地獄にいた。全てが夢の泡沫と消えていく。
――だがそれも最初だけ。やがて空腹耐えきれずハンターの血が騒ぎだして。
「肉だ……肉の、匂いがする!」
飛び出した。凄まじい速度だ……あれが野生か。
落ち着けばキャンプの様で楽しみを見出してくるだろう。それまでは狩りの時間だ。
「つまりこれは抜き打ちの訓練だろう? さほどおかしい事ではない」
ローレットでもこういう事はやるんだな、と紡ぐは汰磨羈である。
元々島を探検するつもりで持ってきていた方位磁石と文房具を取り出して。
「まさかこんな形で使う羽目になるとは些か思っていなかったが……」
備えあれば憂いなし、その実感をしている。簡単な地図を作る為歩き出せば。
「行動拠点を確保する事。基礎にして、最も重要な事だ……明日以降、どんな天候になるか分からんしな」
寝泊りに使えそうな洞窟があれば良いが――そんな事も呟いて。
「私はココル~♪ コル家の養女~♪ 羽無しだけど~♪ パパとママは優し~♪」
陽気に歌を歌いながら、ココルは木の上に乗って歌っている。
いつ帰れるか、それは重要ではない。きっとパパとママが迎えに来てくれるから。
「だから、ジャングルごっこなのです!」
と。更に上から垂れていた蔦を両手で握りしめ、全体重を前に書ける。さすれば半円を描いて――
「あぅららららら――!!? 千切、千切れッ――!!」
しかしあまり丈夫ではないそれは途中で音を立てて千切れてしまった。勢いを付けてココルは森の中へと投げ出され――数瞬遅れて何かが木に当たる音が響き渡った。
「はぁ。最低限の道具であるけれど……持ち歩く様にしてて正解だったわ」
方位磁針と時計を取り出すはエスラだ。いつなんとき、何があってもいいように……いやまさか今回が正にその場面になるとは思ってなかったが。夜用にカンテラもあって。
「あとは――この島の『皆』にお願いして、木の実も分けてもらって……あ、水も必要ね」
初めまして。この島の皆さん――とエスラは言う。島の『自然』に協力を求める為に。
「どうしよう、正宗くん。サバイバルだってさー旅行な筈だったんだけどな―」
「マタ トラブルデスカ」
うん、いつもの。そう答えるのはコリーヌである。お手伝いメカ政宗くんと共にいて。
「とりあえずは初日の内に色々と……こういうのってさ、最初の行動に掛かってるんだよねー」
天気が悪くなる前に、出来得る限りの事を。
簡易ブービートラップを作成し動物を待つ。上手く取れれば燻製にしよう。そうすれば長持ちだと。
「オイシイ クンセイ デキマスヨウニ」
「優雅な旅行と聞いていたのですけど……どこに優雅が?」
『観光名所も名物料理もここにはないだろうな。現実を見据えよう』
イリュティムと呪具のアーラが話すのは無人島の事。いや現実。
とにかく島内探索を行うとしよう。寝床が、洞窟でも見つからねば話にならず。
「はぁ、せっかく準備した化粧品もこれでは使う機会はなさそうですね」
『羽根を伸ばして自由にする機会だったが残念だったな』
吐息一つ。森を開拓してゆく。
「……帰りの船からアレを叩き落しても問題はないわよね?」
『だが行方不明や死亡は問題だな』
せめてロープは括りつけておけとイーラに言うは呪具のコルヌだ。
主犯に怒りを感じながらもイリュティムと共に行動。ひとまず飛行で展望してもらいながら、自身は木々にマーキングを。
「……契約の不履行ということで諸経費は全部責任者に押し付ければいいのかしらね?」
『騙したと明言していたからな。誠意を求めてもよいだろう』
そしてスペルヴィアと呪具のサングィスも。
近場のイレギュラーズの邪魔にはならないように道を作りながら、森の中へと歩いて行って。
「洞窟とか過ごしやすい場所が発見されていればいいのだけどね――どうなる事、か」
単独での遭難ではない。なんとかなるだろうとは思うのだが、見つからねば一大事だ。
さてはて唐突なる用意されたトラブル。どう知り合いらと共にどう乗り越えたものかと思考する。
「……あいつ……帰ったら絶対にぶちのめしてやるわ……」
今ぶちのめした人もいるよ! 利香はともあれ、もたらされた理不尽に怒りを覚えながらもまずは目の前に対応を。カンテラと一日はなんとかなりそうなチーズがあるが。
「天気が怪しいし、まだ食べるのは控えた方がいい、か」
いずれにせよこのままでは限界がある。なんとか誰かと共に行動できれば良いのだが――と、その時。
「さてと、こういう事ならまず飲み水の確保かな」
ライセルだ。サバイバルか――まぁ冒険者であればこういうのも日常茶飯事だと思考する。
数日程度なら全然大丈夫だと。山の上のほうへ湧水でも探しに行こうとすれば、利香とバッタリ。
「おや、こんにちは。君は……この状況、大丈夫かい? 俺は比較的慣れてるけど、助けは必要かな?」
「そうね。誰かと協力して乗り切りたいと思っていた所なのだけれど……」
なら是非とも一緒にと、行動を共にする。
雨雲が見えているから、その前になんとかしたいねと。そんな事も話しながら。
手持ちにあるのは常備品の干し肉のみだ。
しかしそれがどうした。彼女は、ハクウは狩人だ。サバイバル技術も狩猟技術も持っている。
「――不便はない。あとはどう過ごすか……」
飛行で島の様子を伺う。水、それから寝床の確保。急務である。向こう側の雲は黒い。
サバイバル技術で樹脂などを応用。弓を作り出せば狩猟の時間だ。それが終われば後は動物除けの焚火も作って――
「ま、それで概ねの日々は過ごせるだろう」
不安もなく。絶望もなく。ハクウは島を過ごしていく。
「な、なんて事……折角旅行気分で来ていたのに酷いわッ!」
最初から『そう』だと言われてたならまだしも天から地に落とす必要は?
非常に結は機嫌が悪い。耐え抜いて責任者には文句を言わねば!
『イヒヒヒ、まさか騙されて訓練とはな! ま、精々頑張るんだな! こりゃきっと嵐も来るぜ!』
「冗談を言わない! ああ、もう、とにかく水と果物と……!」
色々揃えねば。結は島を駆けて往く。
「嘘の関係者に魔法を打ち込むのは後にして……とりあえず先に食糧確保ですね」
海種たるフローは海に潜ればサバイバルもなんのそのだ。
しかしそれはそれとしてフィッシャーマンの嗜みというものがある。つまり。
「釣りです。ふふふ貴族所有の離島……如何なる魚がいる事か」
釣りの様子が不調でも特化のギフトを持つ彼女に隙は無い。大物が釣れれば周りに御裾分けするし、調子よく大量に獲れても同様だ。自身は人並みにさえ摂取出来れば満足なのだから。
「……はぁ、わくわくドキドキってこういう事だったのね。そこだけは嘘を言ってないけれど」
思わず頭を抱えるのは竜胆だ。替えの服と旅行に必要な物一式はあるが。
「ま、これも日々是精進という事で。乗り越えてみせましょうか」
一人ではないのだ。皆と協力すればなんとでもなるだろう。
アクロバットな技術で果物を獲り、鹿を見つければ刀に手をかけて。
「……これも生きる為ってね」
一刀にて、その首を断った。
「……ふぁ……ぁあ」
いい天気だ。実にいい天気だ。だから誰の声も耳に入ってない。これが今サバイバルであるという事もついさっき理解したのはランドウェラである。どうしたものか。もう一度寝ようかとも思ったが。
「……最低でも寝床は必要かな……うん」
そうしていては向こうに見える嵐が先に来そうだ。やむをえない凌げれる所を探すとしよう。
「とりあえず食べれそうな物を持ってきた。次は海の方で……魚や貝でも採ってくるか」
言うはルナールだ。野草や果物。それらをルーキスへと渡し、自身の足は海へと向かう。
「ふむ……えーこれは毒。これは……うん、大丈夫っと」
一方のルーキスが行っているのは選定だ。自然知識を活用して食用云々を見極めている。食料の有無は気力に直結。食べられる物が確実にある、というのは重要である。そして一足早く海の方では。
「私の、世界では……こんな光景、考えられないですね」
マリスが散策していた。かつての世界に、こんな色彩溢れる地など無かった。
海辺の穏やかさも心地よく。暫く遭難(させられた)事を忘れかけるが。
「……食料採取。主に肉、エネルギー源。とても大事」
近くに降りてきていた兎が目に入った瞬間、真顔のままレイピアを繰り出す。
お肉の栄養源は貴重だ。それから岩塩も持ち帰ろうか。後は――向こうの空に見える。
「天候悪化、可能性大。要報告……です」
黒雲だけは報告せねばならないとマリスは思考して。
「貝は動かないだけ楽だな……水が冷たいのだけがアレだが……」
これだけ取ればスープに出来るだろうかとルナールは呟き。
はて。しっかり帰れるかどうか不安ではあるが……この状況。楽しくもあるのが困りモノだ。
「――うん? 黒雲が見える? あぁ、これは荒れるかな明日にでも」
そしてマリスの報告を聞いたルーキスは頭の中の計算を早める。森の奥の拠点作りを急がねば。
「とりあえず飛来物と風が凌げるだけでもね。大分違うよ」
しかし天候が悪くなったのはこの日を狙ったのか?
何があるやら。先行きが実に不安なサバイバルだよ。
「期待とは少しばかり違ったが……訓練か。これはこれで趣があっていいんじゃないか?」
言うは空海だ。精霊・動物・植物。あらゆる存在と疎通して得た情報は地域を地図とせん勢いで。
されば同時に取得できたのは嵐の情報だ。明日には来るかもしれないと動物たちは感じている。むぅ、面倒だ。動物達が雨を凌いでいる場所でも近くにないだろうか――などと思考していれば。
「と、ギルオスではないか……そういえば主、サバイバル経験はあるのか? 私は山の生まれである故……少し、懐かしいぐらいだがな。この環境は」
ギルオスがいた。歩いて探索中だろうか。ほれ、と先程入手した木の実を渡しながら。
「あぁ、これはありがとう。サバイバル経験、か。あまりないよ……でも、ないから企画した次第でね」
いつかどこかで、唐突なる窮地が訪れた時様に。自身も参加したのは、試練を皆に与えるだけなのはどうかと思ったが故。それ以上の理由は無いと語り。
「こんなの……あんまりだ……離島で羽を伸ばせると思って来たっていうのに……」
船はもう見えない。早々に察して飛び乗ればよかった、とマルクは思うが。
「――まぁたしかに驚いたが。皆と一緒なのだから心強い。それに自然環境での生活には慣れている」
「僕もかなーサバイバルとか慣れてるし!」
一方でリディアと比の二人には不安が見えない。普段が故、だろうか。むしろ比は普段見ない海が見えてハイテンションにも見える。二人が元気ならば気が滅入っている場合ではないとマルクは切り替えて。
「気を取り直して役に立ちそうな道具は……ええと……うん、ティーセットと茶葉がある!」
住み込み仕事場の道具だ。他は特にない。なんてこったい!
「うーん、あっ! 僕はマッチは持ってるからね。山に入って狩りをしてくるよ!」
「では私は飲み水の確保に。木々が生い茂っているし、どこかに川か湖があってもおかしくありません」
水筒はありますので、とリディアが取り出す。食料は比、水はリディア、拠点確保がマルクとなりそうだ。三人で協力して、なんとしてでも凌ごうと決意し。
「――余裕が出来れば外でお茶でも入れてみようか」
偶には青空の下もいいものだと。マルクはティーセットを眺めながら。
「こんな時でもお茶っ葉? ――なんてね、ふふ冗談よ。そうね楽しみにしてる」
「昼と夕方には一回戻ってくるからね! じゃ、解散!」
比は山に、己が持てる技能をフル活用して。リディアはマルクの紅茶を後の楽しみとして水の確保へ往く。
「――だまくらかしてくれたあれを吊るし上げてもいいのかね? いや、するか」
『まぁ……止めはしないが。優先順位で言うなら建設的行動をした方がいいかもしれんな』
アワリティアはギルオスを睨みつけるがブラギウムに止められ行動変更。まずは食料の配布を行うべく行動する。己がギフトを用いて複製を作り。
「何するにも食事は必要だろう? とんだ旅行になっちまったけど協力しようじゃないか」
これでなんとか乗り切れないかと思案しながら。しかし一人で配るには量が多すぎる故。
「…………ふぁ」
『木陰で寝ようとするな、我が契約者殿。しっかり起きたまえ』
強引に引っ張て来たアケディアとオルクスにも手伝ってもらおう。眠たげなアケディアであるが。
「……いつになったらこれ、終わるのでしょう?」
『働かざる者食うべからず……だ。ま、そう遠くはあるまい』
別に無限にいる訳ではない。遠からず必ず終わりは来るとオルクスは言葉を紡いで。
「ぇ? 旅行……え、サバイバ……えぇっ……!?」
『はっはっは、酷いサプライズもあったもんだなァ。ほぼ遭難みたいなもんだろう』
一方でこちらも。アワリティアに首根っこ掴まれて連れてこられたインヴィディアと呪具のカウダである。彼女は未だ旅行が残念ドッキリだったという事を理解出来ておらず。
「……うっ……あぁ……っっ!? え、あぁ……!」
『毎度ありってなぁ。っと、おいおい向こう側が足りてねぇぞ?』
あたふたしながらカウダに励まされながら、配給の手伝いをする事になった。頑張れインヴィディア!
「あらあら。これは昔の抜き打ち訓練を思い出しますね」
懐かしい、と頬に手を当てながら、鶫は行動も同時だ。ひとまずは飲食物の確保。
「作業されている方から火種は借りるとして……あとは食料ですか。ふむ岩礁でもあれば……」
海の方へ往こうか。貝類、甲殻類、海藻……気候は良さそうだし、その辺りが様々取れそうだ。あとは万能調味料のカレー粉を持ってきていれば完璧だったのだが――
「ま、贅沢は言えませんね。この場だけでなんとかしましょう」
吐息一つ。歩いていく。
●何者かの証言
協力して生き抜こうぜ――ええ。彼は確かに最初そう言ったんです。
「俺ァ、キャプテン・オクト・クラケーン。特技は食材だ! ……なんてな、かかっ!」
それが挨拶でした。そして、暫くしてからです。皆がひそひそと内緒話を始めたのは。
「おいおい俺は非常食じゃねぇって。ま、焼いてみると結構いい味でるんだがな! かかッ!」
森の奥へと果物を探しに行くと、更にひそひそ話と彼への謎の視線は増えました。
やめろよ~ブラックジョークはよぉ~、なんて声が聞こえましたね。ええ。ええ……
「な、何、ひそひそしてんだ……や、やめろよ、不安になるだろ?」
俺達仲間だよな――
そして次の日でした。皆に……ええ。たこ焼きが支給されたのは。
●二日目
おはようございます。
オクト・クラケーンさんが無残な姿で発見されました 。
誰が犯人か相談を開始してください。
「――悲しい事件だったなぁ刀根オィ」
配られたたこ焼きを頬張りながらゴリョウは呟く。ついに嵐がやってきた。
かなり強いぞこれは。今のままでは初日に作った即席拠点はとても保てないだろう。
「なんとかして新しい拠点探しだな! ぶはははっ!」
「濡れると冷えますなぁ……ま、こういう環境の耐性はあるので私は大丈夫ですが」
テンション高めの相方に、過酷耐性を持つ刀根はこれからどうしたもかと思案。
些か気持ちはメランコリーである。訓練とか言ってたがもしかしてもっと純粋に嵌められたのでは? 迎えは嘘で、このままずっとここに……陰謀があったのでは……
「ぶはははっ! 高くしねぇとやってられねぇんだよチクショウ! おぃ刀根! こうも暗いと一回逸れると命取りだ! 良いか逸れるなよ! 絶対だぞフリじゃねぇぞ!」
「ははは所謂フラグですね。ご安心をその辺りは分かります」
ともあれ気持ちは救急箱の中の薬で落ち着かせる。ふぅ。ついでにリップも取り出して、拠点が見つかれば盾の裏に遺言でも書いておこうか。ええ。万一の為にこっそりと。ええ。
「なななんでこんんんなことになっててててるのおおお、予想外楽しいけどぉぉぉぉ」
そして燃える石のメンバーで第二拠点をヨダカも探索する。
全力だ。全力の探索である。しかし非力で力が無いと自称するヨダカにはこの環境は些か厳しく。
「ひえェっ……! あっ、あそこ! あの洞窟なら入れそうだよォ!」
さりとて見つける。辛うじて、洞窟があるのを発見できた。
中にいる猪一家と遭遇するまで、あと――
「あ、これ知っとるぞ。飼い犬に手をかまれた気分だ……とかいいながら逆ギレする流れじゃろ?」
ま、オレ飼った事ないからよーわからんが。と呟くはシビュレだ。
小さな体ではこの嵐、どうしようもない。マジやばくね? と思わず呟き。
「船来たら誰か教えてくれ。俺酒飲んでるわ」
まずは洞窟の奥にでも行くとしようか。
「……怪我人や病人がいたら……私の所へ連れてきてくれ」
闇医者たるアクセルには医療知識がある。
この天候だ。体調が悪くなる者が出るかもしれない。周囲を巡り、薬草も集めながら。もし怪我人や病人がいれば――己に教えるか。連れてきて欲しいと周囲に頼んで。彼は歩く。医療器具の入ったカバンを握りしめ。
ルアナ達は初日に洞窟を見つけていた。故、嵐を凌げていたが。
「――外行ってお魚捕ってくる!」
突如、ルアナが洞窟を飛び出した。あまりに一瞬。グレイシアは止める間もなく。
「この嵐の中で魚など……いかん、待て!」
それでもすぐに追いかけた。この酷い状況の中魚など……いやそれ以前に自殺行為だ。
嵐なんて怖くない! この程度ではイレギュラーズ務まらない、とルアナは闘志を滾らせるが。
「あっ」
おじさまが付いてきてる!? と気づいて振り向いた矢先。砂に絡め取られて頭から転んでしまう。ぎふとー、ぎふとの効果はー? と嘆くがその間に追いつかれて。
「この嵐、そう長くはあるまい……魚はその時に改めて採りに行けば良い」
「やだーっ! ルアナは、ルアナの事はいいからー!」
ルアナは想う。迷惑を掛けるつもりはなかった。
ただ――彼に美味しいお魚を食べて欲しかった。
その想いを知ってか知らずか。グレイシアは彼女に服を掛け、ガッチリと抱えてホールドして。
「全く――手間のかかる勇者だ」
サバイバルは過酷、と言われるがそうだろうか。粗末な食事を管理されず自らで探せば好きな時に求めて食べられる。疲れれば休め、監視で気が休まらない事もなく。
「――不自由にも色々あるだろうけど、これぐらいなら気楽なものさ」
まぁ流石に歩き回るには厄介だが、と言うはシェンシー。
天候は荒れ。マトモな楽しみ方は出来ないだろうが。
「けれど、この風景も初めてとして体感するのは貴重だ。嵐もそうそうあるものではない」
今、この瞬間すら己が「楽しめている」のは事実である。
「嵐だって? なるほど大自然か――相手にとって不足なし」
己は紫電を謳う身。クロバの二刀に滾らせるその雷は、嵐の中でも輝いている。
食糧調達。あえて初日ではなくこの二日目に敢行せんとすれば
「うぉおおおおお――ッ! さぁ、刻め! 紫電の死神の名をな!!」
駆け抜ける。降り注ぐ木の枝が凶器と貸すが斬り捨てて。
己が狂気で、ねじ伏せて往く。
サバイバル? いや待て待ってくれ。普段すらサバイバル生活みたいなモノなのに。
「……なんでここでもサバイバル? なにこの陰謀……」
荒ぶる洞窟の外の事は考えたくない。零は己がギフトでフランスパンを量産しながら。
「まぁ困った時はお互い様だしな……パン食べたい人はこっちだぞー。自慢のフランスパンだぞー」
「騙して悪いが遭難訓練だ! であるか。これだけの数を引き連れて、よくもまぁ」
やるものだ、と言うはSvipul。数が多いのだ楽勝である。楽勝過ぎて食料の持ち合わせなんぞ勿論ない!
「ふふふ配給をアテに非文明生活を生き抜く……! これぞ人と人の繋がり!」
意訳:フランスパンありがとうございます! とはいえ貰うだけもアレだ。レイピアで魚でも獲って、おかずの調達でもしようか――Svipulはそんな事を考えていた。
「楽しぃ旅っ行ぉ~って思っていましたがぁ、これは想定外ですねぇ」
『……』
「こうなったら楽しんだもの勝ちですよぉ」
この状況ですら、と言葉を呪具のレーグラに放つはルクセリアだ。
零から頂く幅広のフランスパン。それに集めておいた具材を敷き詰めサンドイッチに。
三日目は――さて。晴れるとよいのだが。
「ボルカノ君。ボルカノ君――ちょっと痛みに耐えてもらっていいかな?」
ムスティスラーフはガチだ。零と共に食糧配給班として為さねばならぬとボルカノを見つめて。
「うむ……この事態。最終手段であるな。食料が少ないのならば、吾輩自身が料理となる事である!」
覚悟完了! 尻尾を! 切って! 提供! 食材適正万歳!! 君達正気か!!?
「いた――い!! むっちゃん殿ヒールしてーヒール!! はやく――!!」
「任せて! 移植用の尻尾を召喚してくっつけるよ!! よーしくっ付いたそれ――!!」
二刀目。ぎゃあああとボルカノの響きが洞窟内に。なんだこの地獄は!?
え? ヒールオーダーの移植用尻尾をそのまま食べればいい? いやボルカノ君の尻尾にならないと品質が保証されないし……この痛みは業務上必要な処理なのです。やべ。業務上言ってしまった。
「ぐあああ吾輩自身が考えたとはいえやっぱり切るの痛いのであるが――!!」
「ボルカノ君頑張れ! 回復と切断のループとかものすごくえぐいけど! 理論上永久にできるから!」
犠牲は忘れない! 三刀目が振り下ろされた。
「うわあああ狙ったかのような嵐だッ――!!」
無茶苦茶な天候である。わざとこの日に遭難したのではとリンネは疑わざるを得ない。ともあれ荷物が吹っ飛ばされれば終わりだ。急いで縛り付けるが……嵐の中で見えるのは木材すら飛び交う様子。これはシャレにならないぞ。
「飛ぶ! 吹っ飛ぶ! さっきちょっと浮いた! 誰か私も縛り付けて――!」
これで何とか耐えてみせる! と、したら矢先に木から変な音がする。
あヤバい、ヘルプミ――! 叫ぶも強風に言葉は掻き消されてああまずい折れる折れる折れた!
うんうん。これは楽しい旅行の筈じゃったのう。そういう触れ込みじゃったし。
ところがどっこい? うん、サバイバル? 遭難訓練?
ほうほう――
「何を考えとるんじゃあああああ!!」
ルアは叫ぶ。あああどうしてこうなった。砂浜にテントをはってキャッキャウフフ。
完璧かつ完全な計画が――
「しかも二日目から嵐じゃし! おかしいじゃろなんにも出来んぞ!!」
男子禁制テントの中でなんとか凌ぐが。ああ何とか気が紛れる様な出来事は無いだろうか――
「お腹空いたなぁ……ランプはあるから奥を目指してみようか」
一方でカイトは人間の姿へと変化すれば。誰ぞが配給でもしていないかと――洞窟の奥を目指す。
なんで君まだ食料になってないの?
「今天から変な声が聞こえた気がするけれど、ふふ。嵐の時こそ魅せるはにわとりぢからッ」
クールだわ私、とトリーネは意気揚々。いざ往かん。ギルドマスターとして嵐を跳ねのけ美味しい食べ物の元へ往くべく! 誰か鏡用意して!
「いや流石にこの外じゃ飯はとれねーなぁ……トリトリは? え、飯取り行った?」
「うん――そして今しがた行方不明になった所」
丁度帰ってきたランディスに言葉を紡ぐは緋呂斗である。指差した先から聞こえて来るはトリーネの悲鳴。嵐の中、空を飛ぶ姿はこの上なく神々しかった。だが。
「わかっているよ……見事な飛ばされっぷりにもしかしてと思ったけど」
あれ完全に飛ばされていっただけだよね、とメートヒェン。おーい、トリーネ殿! と皆で探しに行く。
見つからなければ彼女にはこの地で野生として生きて頂く他無い。が、運が良かったのかトリーネは近くの木の枝――ただし高所に引っかかっているのを発見されて。
「あーまるで血抜きの態勢だ。さてどうにかして助けたい所だけど……私では機械の身。重量があるから……」
「お――! トリトリすっげ!! 飛んだだけじゃなくこの嵐の中枝に止まれるのかよ! かっけー!」
「ラン君待って! ステイ! 駄目よ跳んじゃだめ! 衝撃で枝が折れ」
た。こきゃあああぁぁぁ! という叫び声と共にトリーネがまた遠ざかって。あっ。ランディスも強風に煽られて跳んで、いや飛んで。めーちゃぁあああん! ひろとくぅぅぅぅん!
「まさか2人とも飛ばされちゃうなんて……ああ、もう見えない」
なんてこったい。もう少し奥まで探す必要がありそうだこれは。
「でも、迎えの船が来るまでに絶対絶対見つけるからね! 二人とも生きてて! 必ず見つけてみせるから!」
緋呂斗、長期戦の構えである!
「はわわ、降られてしまいましたね」
果物を獲っていたティミとシキは、到来した嵐に避難を余儀なくされた。
服が完全に濡れている。スカートを絞るがもはや今更。上着はずぶ濡れでブラウスすらも。
「……くしゅんっ」
「――リリーさん、大丈夫ですか?」
体温が奪われる。故のくしゃみ。そうか、人間は寒いと風邪をひくのだった。濡れれば刀が錆びると、それは袋に入れていたがティミの様子に気付くのが遅れてしまった。どうするかと一瞬の逡巡の末。
「はわ……シキさん!?」
抱き寄せる。肌同士の体温は、確かなぬくもりがそこにあって。
「……あたたかいです。とっても」
膝を抱えて震えていたが、抱きしめられれば自然と止まった。
シキの膝の上、腕の中にすっぽりと収まって。彼女の手を頬に当てれば。
「……はい。あたたかいです」
シキも想う。人の姿……存外、不便とばかりは言えないかもしれない、と。
「わぁー! あらしすごい!!Σ(゚д゚;)ノノ」
でもきゅーあちゃんの方がつよいよ! だって【暴走台風】だからね! 何に張り合っているのか彼女はハイテンションだ。殆どの者が大人しいのに彼女はむしろ外に出て跳ねまわっている。
アクロバットな動きで動き回り跳躍で着地。濡れても元気一杯で暗い場所も発光すれば楽しい!
「ふふーん! きゅーあちゃんのほんりょーはこっからだ――!」
更に奥へ奥へと進んでいく。遊びの感覚で、彼女はどこまでもぶっ飛んで。
「くそ、本当に降ってきたな……元気な奴がいるのが不思議になってくるが」
きゅーあが飛ばされている割と近くで、シラスは逆に洞窟を探していた。
嫌な予感はしていたのだがこんなにも強い雨とは想定外で。
「いざとなればカンテラもある。暖は取れるだろうけど……濡れた服をなんとかしないとな」
体温を奪い続けるだけだ。見つけられなければ、あまりいい状況ではない。
この際食べ物は一日ぐらいなんとでもなる。後は動物を警戒して、浅く眠っては起きるのを繰り返すとしようか。
「――ま、空見た時から嫌な予感はしたが、本当に的中するとは思わなかったな」
レンは愚痴る。この嵐、行動し辛い事仕方がないからだ。
しかしそれはそれとして――男って種族はだ。
「こういう台風に……テンションがあがるって面もあるわな!」
沸かすぜ! 鉄帝の極度な気候より千倍マシと思考しながらいっその事己を鍛えようと。
走り込み、筋トレ……果ては見つけた岩を相手に殴り込み。
過酷に身を置いてこそ昇華するものだ。後は食料の調達をどうするか。
拳を連打しながら。豪雨の中にて彼は輝いた。
初日に気付けた者はいる。嵐の事だが、Morguxもその一人だ。
外の煩さはともかくとして、彼には片付けねばならぬ仕事がある。
「……外は今頃必死にサバイバルしてるだろうな……ま、俺には関係ないか」
しかしギフトが一切この事態を感知しなかった。どういうことなのだろうかサボタージュとは言語道断である。何のための恩恵なのか――
「……いかん。独り言はよくないな……さて腹も減ったが……」
ま、あと二日ぐらいは食べなくても問題あるまい。それよりも仕事・仕事・仕事だ。
ワーカーホリックの夜は遅い――そして朝も早いのだが。
「うわーなんだこりゃ。サバイバルって言ってたけど、こういう事か」
外の尋常ならざる様子にサバイバルの意味を理解したルーニカ。
されどこの程度で不安になる訳にはいかない。笑顔。いつ如何なる時も笑顔だ。
「はっはっは。さー! 洞窟とか見つけれてない皆――! 一緒に探そう!!」
皆の避難を優先だ。己は後でいい。風圧で飛ばされる者がいれば支え、場合によっては自身が先頭に立つ。
人を支え、支えられ。そうであればよいと願いながら。
セティアは思う。昨日。そう、昨日。わたしは、ギフトの椅子に座って。
「あったかーい」
ぽかぽかしてた。どうしてみんな、いそがしそうなんだろう。そんな事思ったけれど。
今はこかげに倒れて震えてる。
なんだろうこれは? さむい? つめたい? 感覚はよく分からない。ただ震えだけが止まらない。
ありときりぎりす――なんとなく思い出したその言葉が胸のどこかに。ヤシの実。きれいな海。昨日の光景が瞼の裏に流れるのは、走馬灯? ――だめだ。
生きたい。
死ねない。
立ち上がる。
まだ自分は、生きている。
サバイバルか。元の世界では根無し草として過ごしていた。故に野宿なぞお手の物――
「だが流石にこの嵐はキツいな! さては狙ったか!?」
オロチは叫ぶ。雨風を浴びつつも上った木から海を眺めるが荒れ狂っている。風も強くなって木も折れそうで。
「うげ! くっそ、なんだよこの強風は! 木材やら木の実やら……ああくそ!」
仕方なく降りる。洞窟でも探さねば無理だと。
されど歩きは悠々に。そして森へと彼は消えていく――
閉鎖空間。不安の渦中。
こういう状況で最も必要なのは娯楽であると――師から言葉を受け取ったのはLumiliaだ。
「心まで病んでしまえば……もうそこから、状況は好転しませんから」
気を楽に待つのが一番なのだ。とはいえそれが分かっていても心が相反することはある。
故に成る。己が娯楽の提供者にと。
己が才知を持って演奏の技能は高められ、届くフルートの音色は――安らかなるもの。
「せめて今宵は不安なく」
眠りに着ければ、明日が来る。
希望の明日は、必ず来るのだ。
●希望はやってきた
「グル…………Zzz……」
あぁなんだろうか。昨日は静かだったと言うのに――人の気配が急にまた増えた気がする。中には見知った者も多いな……
……ん? いや何故だ?
「グルルル……」
アルペストゥスは思う。洞窟から這い出れば、誰かに出くわす事もあるだろうか。
腹も少し減ってきた――外の様子を見に、少し出てもいいかもしれない。
「おっどうやら嵐は止んだようだな」
十夜は見る。外の、嵐が止んだ景色を。
「やぁれやれ。おっさんがうっかり寝過ごした、とかでなければ……三日目か?」
迎えとやらはいつ来るのだろうか。まぁ、まだ来ないのなら……幸い酒も煙草も持ってきた。ならばこのまま『旅行』として楽しませてもらっても問題あるまい。
「こういうのは楽しんだモン勝ちさね。――ん? ほれ、お前さんも一寝入りしていかねぇか?」
流れには逆らわない。身を任せて緩やかに生きる。
そう。己はこれでいいのだ……どうせ今更。他の生き方など……
「……あまりにもタイミングがよいのですが、嵐が来るのを狙っていた訳では……」
リースリットは言う。確保していた洞窟があった故、嵐はなんとかなったが。ひとまず今の内焚火に使えそうな枝を集めるとしよう。細かなクズも幾らか作って。火が付きやすいようにすれば。
「あっ――点い、た」
念じたギフトで火が点いた。こういう使い方も、簡単になら出来るのか。
どことなく嬉しい。そんな感情を抱きながら――今回の件、存外と良い経験になったかもしれない。
「あぁ……私達、いつになったら帰れるんですかね……」
燃える石のメンバーと共に外に出てきたエマ。
なんだかんだ食べ物はあるし雨風も防げてはいるが……野生暮らしはしんどいものだ。
「……嵐は過ぎたか。なんともはや、厄介な事態だった」
まあコレはコレで良い余興でもあったと言うはゲンリーだ。嵐で壊れた物は沢山あるが。
「ま、壊れた物は直せばよい。それより待っておれば船が来るんじゃし、今日は一日何もせんでもよいのではないか?」
「そうですね、それもいいですが……はぁ~……あと何日……あと何日……」
彼の一族。ドワーフは洞窟に暮らす一族だ。何もない自然の中というのは別段苦ではない。エマはしんどそうだが。
「それは道理だな。しかし、だからこそ出来る事が一つあるとは思い至らないか?」
「……えぇ? 嫌な予感がするんですが、それは?」
うむ、それは。と言葉を続けるはエレムである。全ては整い、脅威も去ったのならば。
やり残したことは一つ――そう。鍛錬である!
「己を鍛える道に終わりはない……! そら、そこの暇な連中も!!
迎えが来るまで時間があるなら、私が浜辺できゃっきゃとウフフを手伝ってやろう!」
うわぁ! とか、ひぃ! とか先の嵐で疲れ果てていた者達が逃げるが、無論彼女は追う。捕まったら筋トレハードスケジュール(予定ギッチリ)だ。こんな事もあろうかと所持していた鉄アレイ片手に迫っている。なんてこったい逃げろ!!
「……迎えが来るまでのんびりさせてもらうかの」
ゲンリーはそれを横目に。あくびを一つ、平穏を過ごす。
「しかし昨日は酷い嵐だったな……足元がまだ不安定かもしれん。遠くには行きすぎないようにな」
「そうわざわざ言わなくても大丈夫だよ、ブローディア」
最低限の道具はいつも持ち歩くようにはしている――そう短剣の魔たるブローディアに言うは契約者のサラだ。荒事だって最近は慣れてきたモノ。
「それより嵐の間はろくにご飯が食べられなかったんだから、晴れた内に外へ行かないと。私のお腹と背中がくっついちゃったらどう責任を取ってくれるつもりなのよ」
求めるは肉。ジビエな肉を求めて少女と短剣は森へ歩みを。
しかし嵐を好んだ者もいる。それはディープシーたるアイオーラで。
「むしろ昨日は絶好調だったわぁ。ふふっ、今日はお日様も出て来たし……
ダーリンと一杯触れ合わなくちゃ♪」
きゃっきゃうふふ――用意していた水着と共に、恋人のレ・ルンブラと最終日を過ごしていく。
「聞いた事がありますわ。騙してわるいがこれも……と」
きっと四体、場合によって五体に囲まれて大変な事になるだろう、と思考するのはミディーセラだ。そんな思考である故か、ギルオスが手紙の書き残しではなく残ったのが意外そうだ。そうか、そんな手もあったね。
「……ま、それはともかく遭難三日目……今日も今日とて生きて行きましょうか」
現地の生物と動物疎通。あるいはファミリアーを活用して嵐の後でも残る食料がないか探索を。
「もぉう~! 観光ガイドさんはまだ到着しないのかしら~? もう三日目よ~?」
ヤシの実ジュースは飲み飽きたわ~と言うはレストだ。え、ガイド?
彼女自身は優雅に。偶然漂着したビーチチェアーに寝そべりながら。
「まるでこれじゃサバイバル訓練だし……まさかおばさん騙された、なんて事ないわよね~」
きっと天気が悪くてガイドさんは遅れているだけなのだ! きっとそうに違いない!
果報は寝て待て。最初の説明を聞きそびれた彼女が気付くのは、帰りの船でだろうか――
「わぁ……綺麗……」
昨日の激しい嵐はどこへやら。落ち着いた外を駆けて、木に登るのは焔珠だ。齧る干し肉。朝日に輝く島の様子は、台風の影響を鑑みても彼女に『美しい』と思わせるだけの情景がそこにあった。
「迎え。そろそろだと思うのだけれど……まだなのかしら?」
慣れている者はいい。だが限界な者も出て来るかもしれない頃だ。
朝ご飯は終わった。故に、昼ご飯の確保に向かうとしよう――不安な者達に分け与えれる程に。と、すれば。
「僕は頑丈だから良いけれど。昨日の嵐も込みで、そろそろ参る人もいる筈」
カザンだ。彼もまた、似た様な思考に到達していた。
人助けセンサーをフル活用。誰ぞが助けを求めていないか、探して支援を。
「分け与える為の食糧は――うん、少しだけれどまだ幾つかはある」
いつも持ち歩いている甲斐があった。さて、どうなる事かと島を歩く。
「……しかし迎えの船とやらは一体いつになるのやら、ですね」
海の果てを眺めながら、アイリスは呟く。肉体的な疲れはともかくとしても、精神的な疲労は別だ。食料を巡って争うような末期的事態は流石に訪れないだろうが。
「終わりが見えない、というのは厄介です。誰かの心にいつ芽生えるともしれない種……」
それは人を容易に蝕む。決して軽んじてはならない。
彼女は少しでも皆の平穏を保つべく。自らの医療知識を活かし、回診に赴くとした。
「…………」
穏やかな波を士郎が死んだ目で眺めている。生気が無い。
身体は若いが実年齢が高い域の彼にはこの三日間は色んな意味で厳しかったようで。
「ふ、ふふふ……なあ、綾よ……この異郷なる世界は……
ワシのようなジジイに一体何を求めておるのだろうな……」
チョコ塗れになった――ゴリラと共に野生を解放した――逃げられぬ塔からダイブ――
色んな依頼を思い出すのは走馬灯だろうか。綾、ロケットペンダントに入った亡き妻の者写真を見ながら、やっぱり目は死んでいた。
「おー……まぁそうだろうけど、辺り一面海だなぁ……」
かつての日々を思い起こすのはヨルムンガンドだ。ああ、いつぞやもこうだったと。
「よし……それじゃあサバイバルらしく、ちょっとこの島の頂点に立ってくるぞ!」
サバイバルというかバトルロワイヤル的思考! 彼女は往く。動物疎通で弱き動物達と交流を取り、強き獣に相対し。勝負し下し、天へ立つ! 島に訪れて三日もすればやがてそれは軍団ともいえる群れを成し――
「これが……竜のサバイバルだ……!」
どこを目指しているのだこの竜は!
「――やれ。これでようやく三日目か」
初日から色々と波乱万丈だったと振り返るのは佐山である。いつぞ迎えが来るとしれないが、それまでこの天気が続くことを願いながら。
「最初は流石にどうなるかと思ったけど……案外、協力し合えば何とかなるものだな」
一人ではなく皆がいたから。成程、訓練というのは方便ではなかったらしい。
ひとまずこれからは今日の分の食糧確保だ。余裕があれば――暇な連中を捕まえて冒険にでも繰り出そうかと思案中。
「嵐の後なら海岸に珍しいものが流れ着いてるかもね。後で行ってみようか……赤狐の君よ」
ヒヒヒヒヒ、と武器商人の声は響く。赤狐の君。
それは、彼にとっての大切なトモダチ。ヴォルペの事である。
「海ねぇ……ま、落ちなきゃ問題ないんだが。
麗しい宝石(レディ)の一つでも見つかれば最高だな。行ってみようか」
で、あれば。ヴォルペの方も武器商人の事を『銀の君よ』と言葉を返す。
双方共にサバイバル慣れしている身。三日経ったとはいえ疲れはあまりでていないようで。
「しかし珍しいな。銀の君が食事を取るとは、どういう風の吹き回しが?」
「んん? あぁいや……形なりサバイバル訓練という事ならばやはり栄養の摂取たる時間は必要だろう?」
普段がどうであれ、この場は緊急という事を想定した訓練だ。ならばそれに合わせるぐらいの事はすべきだろうと、武器商人は珍しくも食料を口に。寝床を揃えて睡眠も取る。
あぁサバイバルとはこういうものだと。二人して軽快に笑っていた。
「まさかこうなるとはなァ……でも普通の旅行よりもよっぽど面白そうじゃねェか!」
予想外の事態。しかしだからこそ燃えて来たとBrigaは言う。
こんな離島、ならばいい機会だ。アルクにハイエナの狩りという物を教えてやろうと。
「あぁ――だけど狙うのはなんだ? 鳥か?」
「ま、本来ならどれであろうとリレー方式で追い詰めていくんだが……とりあえずは慣らしで兎だ。俺が追い込むからそっちで仕留めてみろ」
分かった。と返答。種族が些か異なるうえ、アルクは木の上で待機。Brigaが追い立ててきた兎が己の下に来れば――瞬時に跳躍。その首をねじ切って。
おお中々上手くやるな、とBrigaの声が耳に届いた。
「――」
獲った肉は焼いて喰らう。持ってきていた酒を取り出し互いに飲んで。
アルクは、先の言葉を反芻し――喉を鳴らした。
さてこれは困ったものだ。嵐の所為で相当に散らかっている。
「はー……まぁ流木や倒木は材木として使えないことは無いでしょうが……」
パティだ。自らの斧を巧みに操って木を切り崩す。取っておけば後の役には立つだろう。
しかしあれだ。もうここにきて三日目、となれば。
「紅茶が……恋しいですね……あぁ飲みたい……」
好んでいる紅茶の味が恋しいものだ。死にはしないが心に堪える。帰ったら何を飲もうか。
アールグレイかダージリン……いやいやアッサムでも……
「旅行という触れ込みを楽しみにしていたんですけど、ちょっと残念ですよね」
『我としては変なものを口にしないかだけが心配だが』
呪具のストマクスは心配する声をグラへと掛けて。
「ちょっと口にするのに躊躇うものもありますが意外に大丈夫ですね」
『文化が違えば普通に食べているようなものもあるからな』
「ふむ、メランにも何かお勧めしてみましょうか」
構わないが、同胞の心労が溜まるだろうな――消化を努力しているストマクスは呟いた。
そして一方。そのメランコリアは。
「……あと、どれくらいここにいるのか……」
『常識的に考えて。長くてもあと二日くらいだろう』
家に帰りたい……と若干の嘆きの様子。呪具のコルの言葉もどこまで入っている事か。
「なら……少しくらいは……記念になる何かを……しておかないと」
『一応聞くが具体的には何か思いつくのか?』
「………………グラと……食事でも……しよう」
それで契約者殿がいいのなら。しかし本当にいいのかと、聞こうと思い。しかし止めて。
彼らは初日は準備を万全に整え、次の日は洞窟に篭り難を凌いだ。
しかし三日目ともなれば、人の精神は極限状態に達する危険性もあり――
「さぁ、こんな時こそ士気を高めないとな! 恐らくあと数日だ、頑張ろう!」
故にリゲルは声を張る。言霊は決して軽んじられる物ではない。人から人に伝播するのだから。
「ああ――だが、流石に初日に育てた野菜もあまり残っていないし、外でまた野菜を育てるか」
ポテトだ。己がギフトで野菜を急速に育て、収穫とする。
野菜スープが作れるだろうか。某『お家に帰り隊』との交渉で得たフランスパンも卓に並べれば量は十分だろう。だが。
「もちっとガッツリした飯も必要かもな。変な島に送られて三日目……諦めムードの奴もいる事だしよ」
モチベーションを上げる意味でも。アランは大剣構えて外へと赴く。
「リゲル――行かねぇか?」
「むっ、兄上とは初の共闘だな。望む所……だが横に立つだけでは味気ない。
同時に――どちらが大物を狩れるか勝負しようか」
外を指し示した親指に、リゲルが同調。二人して動物を狩りに行かんとする。シカ、イノシシ。クマ……とにかく大型が良かろう。生態系ブレイカー? 生存の為だ仕方ない。栄養を求めている者は大勢いるのだから。
「あれ? パパとおじさんお外行くのか? 僕も行く――!」
おじ、と言う声が聞こえたがノーラには聞こえない。外へ行こうとする二人の背に飛び掛かろうとして。
「ノーラちゃん、グレイルさんと私と一緒にあそぼっ!」
「……うん……そうだね……僕、と……ユーリエさん達と一緒に……遊ぼうか……?」
ユーリエが寸ででキャッチ。次いでその背後からグレイルも来る。
グレイルのギフト。ヒーリングテリトリーが皆の心を幾何か癒せば、ノーラも些か落ち着いたのか。
「んー? ユーリエお姉ちゃんとグレイルが遊んでくれるのか? やった――! あそぼう!」
「うん、そうだね。こっちで遊ぼうね!」
正直に言うとユーリエもこの島にしっかり迎えが来るのか不安な点は抱いている。しかしノーラの手前もあり、今やれる事をやろうと気を引き締めるのだ。グレイルもそんな気配を感じ取っているのか。
「うん……ノーラさんは任せて……はぐれないように……絶対に目を離さない……」
「すまない――頼んだ」
自らの役目はしっかり果たすと、リゲルへ声を。ユーリエが幻影を用いてクイズをノーラに出せば、彼女の目が輝く。これはなんだろう? 動物? 果物――?
「やれやレ。簡単に諦めモードにはさせてくれないカ?」
言うはモルテだ。正直三日目は厳しく、半ば彼女は諦めモードだったのだが。
「まぁ……腹は減るしナ。最期の体力で素潜りでもしてこヨウ」
「モルちゃんも行くのか!? お腹と背中が引っ付いてないか!?」
「引っ付いてル」
ええ!? と驚くノーラに冗談だと声を掛けて。
あぁ本当に腹が減る。動けなくなる前には――帰りたい所だが。
夕刻。再びの集合。なんとか皆無事に帰ってきたようだ。大量の肉を抱えていれば。
「――リゲル」
一歩早く。前に出たのはポテトで。
「……お疲れ様でした」
死闘で目立つ、汚れも気にせず。
頭を撫でて、労をねぎらう。
●希望の船
「おぉ~、零さん空が綺麗ですよぉ」
零、ルクセリアは夜になって外へと出た。さればそこには満天の星空があって。
「サバイバルは災難でしたがこれは素晴らしいですよねぇ」
「お、ホントだ。凄い綺麗だ……たまには、こんな景色見るのも良いかもなぁ」
フランスパンを配りまくった疲労からか更に美しく見える。
と。その時だ誰かが気付いた。海の向こうに、一つの光が見えているのを。
最初は遠くの星かと思ったがそうではない。間違いない。
あれは。あの光は……このサバイバルに終焉を告げる。希望の光だ。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ギルオス「えーと1人……2人……3人……(中略)……145……146……147人……よし全員いるね! じゃあ皆、お疲れ様。ローレットに帰還するとしよう!」
GMコメント
茶零四です。
騙して悪いがサバイバルだ!!
■依頼達成条件
迎えがくるまで生き延びる。
【プレイヤー情報】四日目の朝に迎えが来ます。実質三日間の出来事になります。
■場所
ある離島です。そこそこな広さがあり、中央には木々が生い茂っています。
探せば何かしらの果物・動物が見つかる事でしょう。魔物の類はいません。多分。
(メタ的に言うとプレイングに記載されない限りは出現しません。出ても危険度は低いです)
他に洞窟など、離島としてありそうなモノは基本的にあると思われます。
■シチュエーション
大まかですが以下の様な出来事があります。どれかをご選択下さい。
【一日目】:初日。天気快晴。されど海の向こう側に黒い雲が見えている……
【二日目】:嵐が来た! 非常に強い雨と風が吹き荒れる。生き延びよう。
【三日目】:嵐が過ぎ去って天気は再び回復。迎えはいつ来るのか……
■備考
『偶々持っていた』『嫌な予感がしていた』
などの理由により多少の食糧・サバイバルアイテムを最初から持っていても一向に構いません。
ベリーイージーですしね! 必要な方はプレイングとしてご活用ください!
他の方とのご一緒の参加の場合【】などでグループ名表示をしていただけると幸いです。
もしくは名前+ID表示をお手数ですがお願いいたします。
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