PandoraPartyProject

ギルドスレッド

自由図書館

【RP】魔術師は図書館に住む

自由図書館の敷地内にベルの音が鳴る。
ポストに括り付けてあるベルが、配達員の手により鳴らされる。

その音に、自由図書館司書、赤羽・大地は心当たりがあった。
馴染みの書店に、新刊を宅配するように注文していたのだ。

心待ちにしていた一冊。それを大事に胸に抱き、図書館内へと戻ったなら。

……そこに来客があったのだ。

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だよナ。
(見たところ汚れはないが、ペンペンと一応ホコリを払ってから、そこそこにクッションの利いている椅子を勧める)

……デ、暇潰しったって結局何するんだヨ。
中味が決まってる本を読み切ったんなラ、今から台本もクソもねぇお喋りでもするカ?
(本人も椅子に掛けてから雑に足を組み肘をついた)
さあね。
ボクはこの場所に本以外にどんな楽しめるものがあるかわからない。
ボクはボク自身の頭脳や機転を生かせるゲームなら大概楽しめる自信はあるが……別にそういうものを当てにしていたわけでもないしな。

台本が欲しければまたカード(真実)でも引くかい。
あア……あのカードなァ。

(真実。実の所、あれからあの手のカードを、自分でも買い求めた。
今はこの建物の二階……自室に大切に保管しているが、中々出す機会がない。
……これは綺麗なものを手に入れてしまうと、つい勿体無くて、使うのに気後れしてしまう……『大地』の方の悪癖だ)

そっちは今日はパス。もっと軽ク、自由に喋ろうゼ。
せっかくアンタが来たんダ、聞きたいことがちょっとばかりあル。
ゲーム抜きで一問一答って奴サ。
俺が聞いてアンタが答える。アンタが聞いて俺が答えル。

そっちが俺達に聞きてぇ事があるかは知らんけド。
聞いたとて全部正直に答えるかも別問題だけどナ。
(そして一言多いのは『赤羽』の悪癖だ)
構わないよ。
(視線が細くなる。その重心は前方へわずかに傾く。
 腰かける椅子と衣擦れが、蛇の這う音に似ている。)

本当ならルールのひとつやふたつ、賭け事のひとつくらいあれば、ボクとしても遣り甲斐があるが……それでは気楽とは程遠いからね。制限付きの雑談がちょうどいい。
ただし、『赤羽君』と『大地君』で一度に質問攻めをするのはやめてくれよ。
ニ対一で攻められちゃあ、さすがのボクでも話すことがなくなる。
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(どうやら、赤羽の提案を相手は受け入れてはくれたらしい。逆に、セレマからの注意もまた尤もな内容だ。故に司書は静かに頷いて)
……ああ、勿論。一問一答、と言ったのはこちらだし。
『赤羽』若しくは『大地』。どちらからの質問か、発言する前になるだけ明確にするようにするよ。

代わりにセレマ、お前も質問の内容、『赤羽』か『大地』、どっちに聞きてぇかを名指ししろヨ?
二人同時に喋られても聞きにくいだロ。
別にそっちが負担じゃなきャ、『両方』に聞いてもいいけどナ。

……ああでも、例えば俺……『大地』に死霊術の事を聞かれても分からなくはないけど……そういうのとかは、より専門的なことを知ってる方……赤羽が口を挟むかもしれない。

えっと……(他に定めたほうがいい事はあるだろうか?)
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受け入れよう。
勝負じゃないなら多少ラフなくらいがいいさ。

それじゃあボクからだ。
まず前提として、ボク達がいるこの世界は『混沌』と呼ばれている。
『混沌』とは別に存在するといわれる『異世界』全てを内包しているとされている。
『混沌』の住人は魔術を用いることによって『異世界』の力の一端を引き出し行使し、あるいは空中神殿の召喚によってその実体そのものを『混沌』に定着させることに成功している。
しかしながら、召喚された異世界の住人は『混沌肯定「レベル1」』によってその性能を一律化され、本来持っている特異性も脆弱性も満足に発揮することは適わない。
ここまでは事実だ。

で、あるならばだ。
そもそもが『異世界』そのものの存在、その大前提が疑わしくなる。
精霊種が自然流から可能性の波を受け、そこで初めて受肉し人格を得るように、キミ達旅人と呼ばれる存在がありもしない『異世界という虚構』を雑な張りぼてでくみ上げ、召喚される直前になって過去と人格を書き込まれたナニカでしかないという可能性だって十分にある。
境界とよばれる場所が無数の『異世界』と繋がっているらしいが、そこで手に入れたものの多くは混沌ではまるで意味をなさない。
ボク達が現実として触れている『異世界』とは限りなく薄く、厚みがなく、便りがないんだ。
果たして『異世界』などというものは存在するのか…… 

  ……という疑問をぶつけるのは酷だし水掛け論だ。

だからボクが問うのは「キミからみて世界とはなんだろう」だ。
別にキミの世界にあった学術書や宗教に基づいた説明をしてくれて構わないよ。
「大地君」。
えっ(話は聞いていた。聞いていたけども。急にシンプルかつ難しい事を問われてしまった。普段からそんな事をすっと答えられる程度に深く考えている人物など、どれほど居るだろう)

あー……えーと……(それでも無視だけはしない。しないが、今急ピッチで喋りながら組み立てるので、不格好な回答ではあるかもしれない)

そう、だな。
あくまで、旅人の一意見だし、ウン日後に同じこと聞かれたら……話す内容、少し違ってくるかもしれないけど……。

昔、ぼやーっと思ったことなんだけども。
世界というのは、決まった著者がない本かなあ、というか。
皆が作者で、皆が読者で、皆が登場人物というか。
共通の世界観で、どんな物語を書いていくか。どの地域に生きる人を主人公にするか。
主人公をどう動かして、他の登場人物をどう物語に関わらせていくか。
それが、その人それぞれが書く『世界』ってタイトルの本になる気がして。
それをうまく使える人が、人生をうまく渡ってける人かなあって気もしてる。

で、その世界という本を、誰が読むのかと言えば……それこそ、神様とか?
で、神様あたりが……気まぐれにその本を勝手に編集したり、気に入らない本を破り捨ててしまったり。……まあ、理不尽極まりない。
だから、心ならずも途中で筆を折らねば行けない人もたまにいちゃうわけで。

その辺でいやあ……俺は……神様に嫌われたんだか、好かれたんだか知らないが。
少なくとも、『三船大地』という人間の本は、少なくとも地球には今無いんだろうな……。

(我ながら、随分ポエティックな回答になってしまった。言い終わってから、大きく息を吐くと。そのまま照れくさそうに目を伏せた)
(講釈を並べ、さも「赤羽」を対象にした風に装ってからの不意の一撃。
 それに対応した動きは……なるほど。少なくとも考える力はあるし、アドリブもきいている。
 「わからない」で済ませるような思考放棄もしない。
 普段の言動から察するに「大地」は根本から真面目であるせいだろう。
 惜しむらくは押しが弱いし押しに弱い。いや、都合がいいことだ。
 対して「赤羽」は特に動きを見せない。言葉を挟んだりちゃちゃを入れる様子もない。
 ルールに対して真面目であるか、それともあまり興味のない話題だったか……)


なるほど。
つまりキミがいうところの世界とは、感覚と知識と主観というフィルターを通して成立するものであり同時に手段であるが、常に第三者の介入によって崩壊しうるものだ、ということだね。
ではその第三者……きわめて都合のいい呼び方をするなら神だが、なぜそれは世界に影響を及ぼそうとするのだと考える?
(別に百点満点の回答など目指しちゃいないし、あっちだってそこまで上質なモノは求めちゃいないだろうけど。大地は、セレマの意図を掴みかねている。この質問、赤羽ならばどう答えただろう。……後で赤羽にも同じこと聞いてやろ。それより今は)

ン、ンン……。
(重ねられる問。そこに小さく唸る)

まあ……便宜上神って言っとくけども……その……神ってのは、俺達が思ってる以上に下世話というか……俗っぽいというか。
ワガママというか……退屈しいというか……。
本人が自由な身分じゃない分、とかく刺激を欲しがって……その皺寄せがこっちに来てるんじゃないかなあ、って、途方も無いことなら考えたこと、あるかな。

……ああ、いやあ、そう言われるような存在を、一部の人達が崇めて敬愛するのを、馬鹿にする意図はないんだ。
神がどうとか言って商売するのは……俺個人はあんま好きじゃないけど……そういう人のことは軽蔑するわけでもない。
(ふと天義のことを思い浮かべたのか、小さく注釈を挟む)

……マ、神様ってのに媚び売って泥ン底から這い上がれるんなラ、幾らでも頭は下げてやるがナ。
(しかし自分はそんな事などしてやるものか。とばかりに息をつき、一言だけ赤羽は毒づいた)
(つまり、この「大地」という存在は、なにかの勝手やわがままに振り回されることを嫌っているということだ。であるなら、「大地」への対処法は極めて分かりやすい。
 良識と常識の範疇を逸脱しない対応、そして理詰めで論拠がしっかり存在する…ように見せかけた行動。「赤羽」側のストップがかかる可能性は十分に高いが、根が真面目であるので丁寧に攻めれば大体の話は通せる。)

ありがとう。十分に分かった。
ボクの質問は以上だ。
あー……どうも。
(この一問一答、キャッチボールは始まったばかりだが。何か今のでわかったのだろうか?だいぶ歯切れの悪い答え方だったと、我ながら思うけれど……)

あー……質問ト、それに対する追加・補足の質問まではOKって感じかネ。
(先程までのセレマ、大地、双方の言にほとんど『聞き』に徹していた赤羽が口を開いた)

じゃア……俺……『赤羽』が聞きたいのハ……。

(あー、んー、とわざと声に出しながら、目の前の人間を見て。ようやく口を開いたのは)
……そういやァ、お前、顔はかわいいナ。
『なんか美容の秘訣とかあるワケ?』

(さも世間話のトーンといった雰囲気だ)
自分自身が素晴らしく価値のある存在だと信じて疑わないことだが。
(清々しい程の断言に頬杖していた肘がガクッとズレた。ズッコケに近かった)
……まあでも自分に自信持つのは大事だよウン。
そうだワ、シンプル・イズ・ベストな結論に落ち着く可能性見落としてた俺が悪いワ。

あーえーとそーだなーうーン……。
(ちらり、また赤の瞳があなたを見たなら)

じゃア……お前がそう思う根拠って何?
大方、親からめちゃくちゃ褒められて愛されて育ったカ、その真逆だろうけどよォ。
おいおい、待てよ赤羽君。
キミはまさか、自分の値段を他人につけてもらって、それに納得するような向上心のない存在だっていうのか。違うだろう?

自分がどういう価値を持っているか。
自分がどれほど素晴らしい人間であるか。
自分がどれだけの可能性を有しているか。
自分が将来何をなす存在になるのか。
それは全て自分で判断して、自分が決めることだ。
そこに生まれや根拠、他人の判断が必要だっていうのかい?

いいや、違うね。
(さも常識のように語っている……わけではない。
 どこか大仰で芝居じみた、そして確信をもった言い方だ。)
先ほどの問いを敢えてキミが納得できるよう換言するならだ。
ボクはとても素晴らしく価値のある人物だ。
なぜならボクはボク自身が自分に対してその価値を見出し、その判断を信じているからだ。
だからこそ、ボクはボク自身に相応しくあらねばならない。
知識量、優雅さ、勤勉さ、競争能力……そして外見、特に美貌。
ボクはボクの為に、それらを磨くために『あらゆる』努力を惜しまなかった。
だからボクがなぜ美しいかといえば……その価値観に基づいて、自らの価値向上のための『あらゆる』行為に手をかけたからだ。
むしろだよ。
美しくなること、力をつけること、自らに期待をかけることに、それ以上の理由が必要だというのかい。
あるならどんなくだらない理由なのかぜひ知りたいね。
いんや別ニ、おかしいとは思わねぇヨ。
仮に俺がそう思った所デ、それを押し付けていい理由も無イ。

他人の意見を参考にするなリ、そこから何かしらの気づきはあれド。
自分がどうなりたくテ、結局どうするかを選ぶのは手前自身だもんナ、ウン。

言われたからやる事じゃなイ。そうしたいからそうすル。
……その手段や方法はまァ、様々あるガ。
悪魔に魂売り渡してでもってやつもそれこそ多かろうガ。

結果より過程が大事だっていう奴もそれなりにそうかって思うシ、結果が全てだと言われりゃそれもまたその通りだとは思うヨ。

わかっタ。この話題はこれで終いで良イ。
次はセレマん番だゾ。
どうも。納得いただけてボクもうれしい限りだ。
じゃあ続けて問おうか。
生まれが大事かい。赤羽君。
あァ(頷いた)
……生まれた時の環境。国。情勢。
親、若しくはそれにあたる人間がどんな人物だったカ。
そういうのハ、良くも悪くもそいつの下地・人格の元になるだロ。

子供の頃貧乏で苦労した奴ガ、自分の子供には同じ思いをさせまいと奮起しテ、何とかそれなり程度の金持ちになったリ。
家族や親戚一同は至って敬虔な信徒だったけド、厳格すぎる教義に嫌気がさしてついにやっちまったリ。
たまーに聞くだロ、そういう話。

そいつが今現在その姿になってるのにゃア、大なり小なり生まレ……出自が関わってるのはまず間違いないだろウ?

とはいエ、仮にそいつの親が犯罪者だろうト、やんごとなき身分の血統だろうト、俺ァ別ニ、それだけを理由にそいつの扱いを決めなイ。

血筋は今更変えられねぇガ、運命だの未来だのハ……運も大いに絡むガ、当人の努力でどうにでも変わるしナ。……変えられなかった連中?
そいつに関しちャ、運か実力か努力か何かが足りなかったんだロ。
可哀想な事だガ、そこは俺の知ったこっちゃなイ。

……先の話に微妙に戻るガ、俺は物事の判断にハ、過程の方もそれなりに参考にすル、ってぇ事サ。

たダ、そいつ本人は何もしてねぇのニ、少なくとも凡人並みに働こうとはしてるのニ、罪を犯した身内の事をいつまでも周囲がネチネチやんややんや言う連中ヤ。
大層なご身分を傘に着テ、自分は裁かれまいと錯覚しテ、好き勝手にやってたりするボンボン、若しくは既に貴族の称号さえも剥奪されてるようなオッサン。

過程ばっかみテ、結果を正しく評価しない阿呆。
若しくは過去の栄光がいつまでも生きてると思い込む馬鹿。
そういうのは等しく屑だと思うゾ。
いや、文句ないけど。
むしろツッコミどころだなぁと思って聞いてたけど、別に相手の意見のどっかをつつくゲームじゃねえから、別にいいかなぁって。
まァ、ガバガバ理論なのは認めるがナ???
俺もクソスラムに産み落とされたんじゃなかったラ、もう少し豊かに賢く魔術師やってたってぇノ。
いややってたかわかんねぇヤ。そういう環境じゃあそもそも魔術自体要らねぇしナ???
うん。そうだね。
同情とか深堀とかするつもりもないから別にいいよ。
質問とかしれくれていいよ。
全く聞かれた事にはちゃんと答える事に定評のある赤羽様をよォ……。
(こほん、と咳払いして)

……赤羽の言にツッコミどころがあろうがなかろうが。
そうやってプリプリいってると、色々台無しだと思うんだけどなぁ。……まあいいや。

んー、そうだなあ……。
……『大地(俺)』から、他に聞きたいことは……。

……『そういやあ、セレマって本当は幾つなの?』
(前に女性陣も交えて彼と遊戯に興じていたときも感じた事ではあるが。彼は、その見た目と実際の年齢とはひどく乖離しているように思える。その口ぶりと、経験則と、その他色々なところからそう感じるのだ。今更といえば今更の疑問ではあったが……)
…。

中央(幻想)における先王の即位の報せを聞いたことはあるな。
うん……まあ……。
教科書的な物を読んだ程度には知ってる……かなあ。
………人の年齢尋ねるなんて失礼だと思わないかい。
デリカシーないって言われるだろ。
ええ……。
そんな……しん(親戚のオバサンみたいな、と言いかけて)……まあ、親密度以前にプライバシーが過ぎる話だったかなあ。ごめんて。

……ン?
えート……先王、つまりあの俺達が知るフォルデルマン三世の親父が即位した頃ってぇト……?

(赤羽の頭の中でカタカタそろばんが鳴っている)
頼む赤羽答えがわかったとてお前の中で締まっといて!!!
俺また死にたくない!!!!!
……ちェ。
わかったヨ、大地クンの優しさに感謝しろよ美少年?
(どの口が言うのか死霊術師は呵呵と笑った)
大地君は分別のある子だよ。大成するよ。間違いない。
・・・・・・で、またボクの番かい。
まあ(目的も半分達成したようなものだから別にここでやめても)いいんだけども……。
(どこに、とは言うまでもない)

……さあネ、と黙るのは簡単だガ。ヒントくらいは言ってやるヨ。

普通、一つの肉体に宿るべき魂は一ダ。
……何らかの理由で主人格を守るために人格が分裂した奴らも居るだろうガ、それも大本は同じ人間から生じた一ツ。
拒絶反応だのが起こるはずもねェ。

さて俺ハ、流浪の魔術師。古びた器は捨てテ、生き長らえてきた外道の不死王。
生きる意志のねぇゴミを拾っテ、再利用してきた死霊術師。
『生きたい』と叫ぶ事すら辞めちまった身体を操る人形師。

そんな俺ガ、わざわざ大地とくっついた経緯ハ……前に言ったナ?

……大地は死にたくなイ。俺も消えたくなイ。
この器に宿る魂は二ツ。それモ、どちらも生きたいと願っていル。

……俺達は生きるために手を組んじゃいるガ、同時に互いの願い故に魂が摩擦していル。

……ここまでハ、良いカ?
専門的なことはわからないが、まあわかるとも。
……続けるゾ。

俺が学んだ魔術。反魂の法。
他者から肉体を奪イ、俺の意志のままに四肢を操ル。
つまリ、他人の身体を俺のものにする魔術、という事ダ。
しかシ、それには本来、相手の合意を必要としなイ、というか自我のない身体を奪う事を前提にしていル。
下手に器に魂が欠片でも残っていたラ、抵抗され返り討ちに遭うリスクもあるからダ。

だから俺ハ、人生を終わらせたい奴。既に廃人と化している屑。
そういう人間を選んデ、俺のものにしてきタ。

……だガ、その魔術にも弱点があってナ。
コップからコップに水を移す事を何度も繰り返せバ、自ずと量が減っていくようニ。
俺が死を拒ミ、逃げれば逃げるほド、この魂が削れていク。全盛期の力かラ、遠ざかっていク。

……大地の時ハ、正直、この反魂の法をギリギリ一度、行使できる程度にしカ、この俺に力は残されていなかっタ。

それでモ、俺はまだ消えたくなかっタ。俺もまた、理不尽な死を拒んだ。
互いの『生きたい』、その願いガ、たった一度の奇跡を成就させタ。
……その末ニ、俺達の融合はうまく行ったように見えた、けれド。

……さる老魔術師が、俺達に現実を突きつけてきた。
この俺の身体は、この俺自身と、赤羽。2つの魂を受け止めるように生きていない。
赤羽と共にあるだけでこの身体は蝕まれ、俺達の魂さえも食い合う形になってしまう。

詰まる所。俺達の契約は不完全。失敗とまでは言わねぇが歪。
今のままなら俺モ、俺も。削られ削れてその末路ハ、緩やかな死を迎えるのみダ。

……この赤羽様ガ、よりによってこの平和ボケしたガリ勉クンなんかと共倒れするのハ、真っ平御免ダ。

こいつなんテ、痴話喧嘩の末に女に刺されるカ、分不相応に正義の味方気取っておっ死ぬカ、何事もなくただただジジイになって死ぬカ。
そういう最期がお似合いダ。そんなつまんねぇ温い空気、俺は側で嗅ぎたくもねェ。

だかラ、俺はこいつなんて捨ててやル。
だから、俺は契約によりこの身に縛られた彼を、解放しなくてはならない。

三船大地。この身体は俺には要らなイ。
赤羽。俺は彼に頼らず、生きる術を得なくてはならない。

……そのためのヒントでも見つかりゃあナ、って思っただけサ。
……まあ、辿り着いたとて。如何にその意思を主に伝えるかも、問題の一つになるのだけれど。
ヒントどころかほぼ答えじゃねーか。
(デリカシーなぞ持ち合わせていないとばかりに空気を読まなかった。)
うるせぇぞお前、具体的に何をどう伝えるカ、ってぇ明確な答えもとい文言は俺にも浮かんでねぇんだから答えまでバラしてことにはなーりーまーせーンー。
(クソみたいな煽りだった)
さては言語化下手糞だなお前。
別にいいけど。なんも損はしてないからいいけど。

(……大体はわかった。
 赤羽はコンプレックスの多いタイプのひねくれものである。
 おまけに自分が有能で現実主義的存在だと思い込んでいる…そういう自分と同じ部類の奴だ。
 こういう手合いは利益を用意すればある程度の話は通せる。
 そしてこいつが求めるであろう利益は………ボクの蔵書でなんとかなるだろう。)
だークソッ!!!
そうだぞ話してやったんだから感謝しろよナ!!!
デ、ダ。『そういうお前はどうなんだヨ!?』

(先程自分達に向けられた問、それをそのまま眼の前の彼に返す。『赤羽』『大地』双方の瞳が、彼に注がれている)
()
エ???
まさかそれだけじゃねぇだロ???
「それだけ」とはなんだい。
シュペル・M・ウィリーといえば混沌世界における最高位の魔術王だ。
手心があるとはいえど魔術王の工房を攻略し、踏破すれば、それ相応の価値を得られる。
「有象無象の冒険者とは違う」という評判そのものが、ボク自身の価値を上げる。
価値が上がればそれによってなんだって手に入れられる。そう、なんだってだ。
それに素晴らしく聡明で美しいボクには、「魔術王の工房を踏破した」という優秀な功績は、ボク自身にとって相応しい称号であることには違いないだろう?
それとも………なんだい。
キミ達は「気まぐれで願いを聞いてくれるかもしれない」なんて、ギルドマスターが言いだした根拠の薄い話を、本当に真に受けているのかい。
まあ……それは確かに。
(こくり、青年は肯く。この混沌において立身出世を夢見るものは、ローレットにも多くいる。
かの魔術師の塔に挑み、制覇した事実を得られれば、金銀財宝よりも価値のある宝となるだろう。誰にも奪えぬ装飾品と言ってもいいかもしれない)

ふぅン……マ、俺ぁ面白いもんが見られりゃア、それはそれで結構だガ。
てっぺんまで登れりゃア、結局それが一番面白ぇに決まってるしなァ?

……あそこに登る理由なんテ、結局は興味があるかラ。
その他の理由なんテ、後付ケ、補強、言い訳に過ぎまいと思っちゃいたガ。

こりゃあ少しは真面目になんねぇとなァ……。
ああ、願いを叶えるって話。
信じているといえば信じているよ。

でもダメだと断られるか……それこそ途中でダメだったとしたら、俺達の実力か運、どちらかが足りなかったって事だろう。

ぶっちゃケ、俺らの願いはアイツに頼るしかないほど絶望的な願いじゃねェ……ト、思ってル。
ぶっちゃケ、一番どうにかしてぇ問題を楽して解決できるならそれでいいシ、無理そうならさくっと他に切り替えル。

願いはどうでもいいって事は無いガ、要は面白くテ、かつ少しは役に立つ方面に行きてぇだけなのサ。
まあ、そんなもんだろう。
本当に逼迫した願いをもってるやつなんて、あんな塔を昇ったりなんかしないし、そもそも冒険者なんかやったりしないだろうよ。
そんな暇があるならとっとと魔種にでも堕ちればいいんだ。
まあ……(堕ちろとまでは言わないけど、と口の中だけで呟き)そうだな。

俺たちはまだ手段の選びようも考えようも探しようも残されてるからなあ……。

楽しみながらああなれば嬉しい、こうなればいいな、と考えられるだけ幸せではあるのかもしれない。

……フン、まあいいヤ。
色々聞かせてくれてありがとサン。面白かったヨ。

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