PandoraPartyProject

ギルドスレッド

町外れの古アパート

【ヴィルヘルムの部屋:105号室】

"Wilhelm"と書かれた飾り気のないシンプルなプレートのかけられた部屋だ。
鍵が掛かっていないのか、扉は簡単に開く事だろう。

小さな文机とシングルサイズのベッド、数冊の本がある以外には何もない。
ただただフローリングが広がるだけの、空虚な部屋だ。
部屋の主の心を、反映しているかのように。


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主にRP。
鍵(入室制限)はありませんので、何かありましたらご自由に入室ください。

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(ふらりとアパート前から消えていた男は、どうやら長い散歩の旅に出ていたらしい。いつの間に受け取っていたのか、部屋の鍵をくるくると手の中で弄びながら)

……部屋を得て、漸く落ち着けるのかな、私も。
透垣君には感謝しないとね。私みたいな得体の知れない奴を受け入れてくれたんだから……
(覇気のない声で、そうぽつりと一つ呟くと、男は部屋へと入っていった)
(男はただ静かに、窓から月を眺めている)

――……、……‥………

(無意識に紡がれた掠れた旋律は、どこの物ともわからぬ異国の言葉で出来ていた。
 紡がれた音の主である男にすら、理解のできない言葉なのだから。この世の誰にもこの歌の意味を理解する事はできないのだろう。
 それが酷く、男には恐ろしい事の様に感じられた)

……怖い、怖い、寂しい……底の無い穴が、ずっと広がっているみたいだ。

(己を見失ったまっさらな男は、身の内を苛む言い知れぬ虚無の中に沈んでいった。
 ……次に目覚める時には、この恐怖が消えている事を願いながら)
(こんこんこん、と控え目なノックの音を響かせてドアを叩く。時間帯の事を気にしてか、小さく口を開いて)
……こんばんは。ヴィルヘルムくん、いるかい?
(微かに衣擦れの音と足音が響いた後、ぎいと軋んだ音を立てて扉は開かれた。普段身につけている白衣は脱いでいたのか、ワイシャツにスラックスのシンプルな装いで姿を見せて)
……嗚呼、やっぱり透垣君だったんだね。こんばんは。
こんな夜更けに一体どうしたんだい?

(何か怒られる様な事をやらかしてしまったかな……等とぼそりと呟きながら、目の前の彼を不思議そうに見つめている)
(何も心配することはないよ、とでも言いたげに首を振って微笑みを浮かべる。)
ふふ、こんな時間にごめんね。
急に誰かと話がしたくなったっていうのと、ヴィルヘルムくんの引っ越し祝いに来た……って所かな。
ヴィルヘルムくんさえ良ければ、深夜のお茶会に付き合ってよ。
(にっと笑い、魔法瓶と茶菓子が入った手提げ鞄を振って見せる)
(彼の表情と振られた手提げ鞄を見比べて、ほっとした様に表情を緩めて)
そうだったんだね……びっくりしたよ。
ちょうど眠気が来なくて困っていた所だったんだ。そういう事なら、喜んで。
(彼の笑顔に応える様に控えめな笑みを浮かべると、彼を招き入れる様にゆっくりと扉を開いた)
驚かせちゃってごめんね。やっぱり時間帯は変えた方が良かったかなぁ。
……ああ、でもそれなら良かった!起こしてしまったんじゃないかと心配してたんだ。
ふふ、それじゃあお邪魔します。
(リラックスしやすい種類の茶葉を選んで良かったなぁ、と思いながら扉をくぐる)
そうだね……私はあまり寝付きの良い方ではないからまだ起きていたけれど
早寝の習慣がある人だったら、ちょっと困っていたかもしれないね。
(まあ、そこも含めてお互いに都合が良かったって事かもね?と零しながら、殺風景を通り越して伽藍堂な自室を軽く見渡して)
……ごめんね、この部屋に椅子も座布団も何も無い事を忘れていたよ。
透垣君が平気なら、ベッドに腰掛けてくれて構わないから。
せめて座椅子位は調達しておくべきだったかな……
(そうぼやきながら、鞄を置く為のスペースを確保すべく、文机の上に置かれた本を片付け始めた)
ふふ、そうだねぇ。ヴィルヘルムくんが夜更かしさんで良かった……いや、良くはない、か?
(眉を寄せて首を捻り、ううんと唸る。ヴィルヘルムの視線につられて部屋を見渡し、本当に最低限の物しかないなぁ、と思う)
ううん、大丈夫だよ。少し申し訳無いけれど……失礼するね。
……そうだねぇ、いつもベッドに座って過ごすのも落ち着かないだろうしねぇ……?
(躊躇いがちにベッドに腰掛けて鞄を膝に置き、片付けている様子をまじまじと観察しながら)
良い事ではないかな……?
……まあ、その点については今起きている以上君も同罪だから、これ以上は追求しない方針で、ね。
(それ以上は気にするな、とでも言いたげな様子で、ぱちりと小さくウインクして見せた。)
あ、はは…………普段はベッドどころかフローリングにずっと直で座ってたよ。
ずっと一人だったから別に困らなかったんだけど……最低限、もう少し家らしくしたほうが良かったね。
(自身の度を越えた頓着無さにいたたまれない気持ちにでもなったのか、気まずげに言葉を吐き出しながら、せっせと作業をこなして行く。
 そうして、空っぽになった文机をずるずるとベッド近くまで引きずってくると)
はい、お待たせ。鞄、邪魔だったら机に置いても良いよ。
それと……その、あんまりまじまじと観察されるのは、ちょっと恥ずかしいかな……
(気恥ずかしくて落ち着かなかったのか、微かに頬を染めて困った様に微笑んでいる)
(申し訳なさそうに眉を下げた後、ウィンクに答えるように微笑みを返す。)
フローリングに直で!?
……ああ、いや、人が来ることを想定していなかったなら仕方ないと思うよ。
こちらに急に喚ばれてしまっては、準備する金の工面も大変そうだもの……
(驚いて大きな声を上げてしまったのを申し訳無く思い、慌ててフォローする。
そしてぐるりと部屋を見回し、余りにも殺風景な部屋の様子に、今度は花の一つでも持っていこうかと思った)
……わ、ありがとう。それじゃ、失礼するね。
ふふふっ、ごめんね!どうも手持ち無沙汰だったから、つい、ね。
(机に鞄を置き、鞄の中から紅茶が入った魔法瓶と二つのマグカップを取り出しながらくすくすと笑って)
(慌てた様子の彼に、思わずといった様子で苦笑を漏らしながら)
っはは……嗚呼、その……ごめんね、気を使わせちゃって。
素直に「流石にそれはどうなの」って言ってくれて良いんだよ。
せっかく君から部屋を借りたんだから、もう少し人間らしい生活をしないとね。肝に銘じておくよ。
(この世界で何をどうすれば良いかさっぱりだったから、些細な事とは言え目的が見つかって安心したよ。
 そう囁き、目を細めて笑っているのは、男なりの"気にするな"というフォローなのかもしれない)
あー……うん、何も無い部屋だからね。私を眺める以外に間を持たせる手段はない……かな?
でもちょっと恥ずかしいから、今度からは控えめに……して欲しいかな。
(羞恥を誤魔化そうとするかの様にそっと彼から視線を外すと、ベッドの上の彼と対面する位置にぺたりと座り込んだ。フローリングに直で。
 手伝える事が見つからない為か、その後はぼんやりと机の木目を眺めている)
(魔法瓶の蓋を開け、ほかほかと湯気を立てる紅茶をマグカップに注ぎながらはっと目を開く。……ああ、砂糖とミルクを持ってくるのを忘れてしまった)
あ、言って良かったんだ。
じいさんに人の事をとやかく言うなって教えられたから、はっきり言うのもどうかなって思ったんだよね。
(少しほっとしたように目尻を下げ、仄かに林檎のような匂いがする紅茶が入った、黒猫が描かれているマグカップをヴィルヘルムに差し出す。)
ちょっと熱いよ。気を付けてね。砂糖とミルクは好みで……というか、ある?
ん。それもあったけど、どうもこれは癖みたいで。
ああでも、恥ずかしいなら次からは気を付けるよ。
(バレないようにする。と悪戯に笑って、鞄から貝殻の形の焼き菓子と、煎餅を取り出して几帳面に机に並べ始めた)
そうなんだね……うん、人によってはそのほうが良い時もあるだろうから、お祖父様の教えは間違っていないと思うよ。
ただ私が、無理に取り繕われるくらいなら素直に吐き出して欲しいと感じる気質だった、と。
それだけの事さ。
(差し出されたマグカップに、ありがとう、と礼の言葉を投げかけながら、そっと受け取る。
 カップに描かれた絵柄を暫く眺め、可愛らしいねと笑みを零しながら)
これでも一応自炊はしているから、普通の上白糖と牛乳ならあるよ。
私は砂糖しか入れないけれど……君が必要なら、牛乳も持ってこようか?

はは……癖を自称するだけあって、やめたりはしないんだね。流石に。
私なんかを見ていて楽しいのかはわからないけど……君がそれで満たされるのであれば、まあ良いか。
熱心に見つめ過ぎると視線の強さでバレるから、程々にね?
(困った様にそう小さく呟くと、砂糖を取って来る為、ゆっくりと立ち上がった)
(ヴィルヘルムの言葉に納得したのか、子供っぽくこくりこくりと何度か頷く。また一つ勉強になったなぁ、とひとりごちて)
ふふ、そうでしょう?とびきり可愛いのを持ってきたからね。
……へえ、ヴィルヘルムくん自炊出来るんだね。普段はどんなのを作るの?
……んー、僕はどっちも普段は入れないけれど……折角だし、どっちも貰おうかな。

ふふ、一応趣味でもあるからね。
どんな人物であれ、見ていて飽きはしないから大丈夫だよ?ヴィルヘルムくんは見目も良いし……
ふふふ、気を付けて見てるね。
(煎餅の袋を開け、ぱりぽりとかじりながらヴィルヘルムくんも好きに食べていいよ。と声を掛ける)
んー……大したものは作らないし、作れないからね……
最近作った料理らしい料理といえば…………ええと、肉じゃがかな……?
(適当に切って適当に煮込んだだけだからなあ……とか何とか言いながら、砂糖の瓶と牛乳の瓶を抱えてとことこ戻って来て)
はい、どうぞ。分量はお好みでね。

……成る程、人間観察が趣味なんだね。
純粋に趣味を楽しむ事が目的だって言うなら、止める事はしないさ。私で良いなら、心ゆくまで眺めるなり観察するなりして良いよ。
私にとって趣味の時間が大切な様に、君の趣味の時間も大切なものだろうからね。
("見目も良い"と言われた辺りで、何とも不思議そうに目を瞬かせて)
……自分の見目の事なんて考えた事無かったな。お褒めいただき光栄です……なんて、ね?
(悪戯っぽく笑みを浮かべると、勧められるがままに煎餅の袋に手を伸ばした)
肉じゃがかぁ。なんか思っていたよりも家庭的でちょっと驚いたな。
でも、適当に切って煮るだけで食べられるまともな物が出来るのは凄いと思うんだ……
(僕だと確実にダークマターになるな……と呟いて遠い目をする)

(ありがとう、と微笑んで紅茶にミルクと砂糖をたっぷり入れる。趣味の許可を得られたことに目を丸くして)
い、いいの?自分で言うのも何だけど、かなり悪趣味だと思うんだけどな……
でも嬉しい。有り難うね。
……ヴィルヘルムくんの趣味が何か聞いても良い?
(読書とかそれっぽいよね、と言いかけて言葉を詰まらせ、暫く見惚れてしまった。あ、余りにも顔が良い……!)
ヴィ、ヴィルヘルムくんって結構お茶目だよね……?なんというか、意外というか……
(恥ずかしくなったのを隠すように一口紅茶を啜って)
少し多めに作っておけば、次の食事の時の分も同時に確保できて楽だからね。
……透垣君は料理が苦手なのかい?器用な方だと思っていたよ。
(基礎の事で良いなら教えようか……?そう、どこか気遣う様に呟いた)

……まあ確かに、手放しで褒められる様な趣味では無いかもしれないけどね。
ただ私自身が、もしも自分の趣味について勝手に善し悪しを決めつけられて否定されたら嫌だな……って思ってね。
自分がされて嫌な事を人にはしたくないなって……犯罪行為だったら流石に止めてたけどね。
(そう一息に言い放つと、自身のカップに砂糖を少し入れ、息を吹きかけながら中身を啜って)
そうだね、確かに読書は好きだけど……、……?
……えっと、急にどうしたんだい透垣君?なんだか様子が変だけど……
(挙動不審の彼を不思議そうに見つめ)
お茶目、お茶目か……そうなのかな?自分の事は自分ではわからないから……
見た目が人間らしくない、とはたまに言われるけど。
そういうものなの?
……正直に言うと、お茶以外はまるでからっきしなんだ。手先が器用なのは認めるけど、料理は……全く。
(手間を掛けさせるわけにはいかないし、大丈夫だよ……と申し訳なさそうに笑って)

まさか!流石に犯罪を趣味にするほど趣味は悪くないよ。
……そっ、か。うん、ありがとう。
ヴィルヘルムくんって、良い人だね?
(ご近所さんがまともな人で良かった。とほっと息を吐いた直後、慌てて大袈裟に首を振って)
あ、いや……なんでもないよ!その、本当になんでもないからさ!
(口に手を当て、軽く咳払い)
……そっかぁ、好きなんだね読書。こっちに来てから面白い本は見つかったかな?

うん。お茶目と言うか……雰囲気の割りに話しやすいなって。
……ううん、そうかな?言われてみれば確かに不思議な感じはするけれど……
こんな世界で生活してきたせいか、余り気にはならないよ?
(僕からすると、だけど。と付け加えてまた一口啜る)
不器用な人とか、大雑把な人が分量を間違えて失敗する例は見たことがある気がするなって思って……器用だからって全部ができるわけではないって事なんだね……?
(申し訳なさそうな様子に気づき、気にしないでと言わんばかりに頭を降った)

良い人……なのかな?
(どうもこの男は、自分自身の事となると途端に実感が沸かなくなってしまうタイプらしい。
まとも、まともかぁ……そうなのか……?とか何とか呟きながら、首を傾げて)
それが……その、まだあまり探せていないんだよね、本。
まだこの世界に適応するので精一杯で……ここ幻想に関する本は読んでいるけれど。
……透垣君おすすめの本は何かあったりするかい?

(彼の言葉を聞き、暫しの沈黙の後)
割と近寄りがたい雰囲気だったのかな、私は。
……他に何か、私に対して感じた事があれば良ければ教えてもらえないかな?
(どこか思い悩んでいる様な表情で、そう問いかけて)
僕の場合は味がしっくり来なくて、色々と試行錯誤している間に味は世紀末、見た目は炭って感じになるんだと思うから……気をつけさえすれば、なんとかなるかもしれないね。
(どこか他人事のように納得して頷き)

良い人だよ。少なくとも僕は好ましく思う。
(まともかと改めて問われると、少し、変わっているかもしれないけれど?と苦笑して)
そっか……それもそうだよね。召喚されてまだ日も浅いんだし……
……僕のおすすめ?……少し、描写がアレなのでいいのなら……
ある吸血鬼と人間の恋の本かな。数々の障害に阻まれながらも、最後には結ばれるっていう……よくある話だよ。

(ふむ。と顎に手を当て、首を傾げて)
近寄りがたくはないけれど……何と言えばいいのかな。
なんとなく、神々しいとまで言うと言い過ぎかもしれないけれど……「人ではない」ような雰囲気を感じていたかな。
後は……そうだね、自分に無頓着すぎ?
(へらっと柔らかく笑うと茶を啜って)
そう、なんだ……?炭、炭かぁ……
(その様子なら、レシピに忠実に作るだけでも美味しく出来そうだけどな……とぼやきつつ)

そ、そうかい……その、ありがとう……?
(肯定されるだけに留まらず、はっきりと好意を示されたのは想定の範囲外だったのか、少々照れくさそうにはにかんで)
ふむ……フィクション、なのかな?
確かによくある話なのかもしれないけれど、おすすめするって事は気に入った所があるんだろう?
(それに君の好みも把握できるし、と小さく笑って)

(静かに彼が紡ぐ言葉に耳を傾けていたが、無頓着の辺りで盛大に吹き出して)
……っふふ、あははっ!確かにそれはその通りだね、ぐうの音も出ないよ。
一つ何かに気を取られると他が何も見えなくなるから駄目だね……悪い癖だ。
……嗚呼、ごめんね?急に変な事聞いて。
私自身はこの通り、自分の事がまるで見えていない物だから……君の目には私がどう映るのか、つい気になってしまってね。
うん、炭。色々頭の中で考えてるうちに、炭になってるんだ。
(なんでだろうねぇ、と不思議そうに首を傾げる)

ふふ。思っている事を言っただけだし、そんなに照れないでよ。
(表情の移り変わりが面白いのか、愉しげに目を細めて)
多分、フィクションだと思う……よ?
どうも他の世界の本みたいだから、自信は無いけれど。
……気に入った所、は……そうだなぁ、沢山あるのだけど……
描写が綿密な所、かな!吸血のシーンや、人間の少女を他の人間や吸血鬼から守る時の戦闘シーンがまるで作者が本当に体験したかのように臨場感があって…
(ここまで一息に話していたが、その事が恥ずかしくなってきたのか段々と顔が赤く染まって)
……詳しくは、読んでみた方が早いと思う、よ?

本当だよねぇ。この部屋なんか装飾もなくて殺風景だもんねぇ……
いいよいいよ、気にしないで。
……でも、何でそんなに人から見た自分のイメージが気になるのかは、気になるなぁ。
……えっと、ある種の才能があるのかもしれない、ね……?
(何とかフォローしようとしたのだろうが、全くもってフォローになっていなかった)

えぇ……そう言われてもなぁ……気恥ずかしいのはどうにも……
(なんだか落ち着かない……と口の中でぼそぼそ呟きながら、言葉通り落ち着かなさげに身動ぎして)
ふふ、そうなんだね。君の話を聞いて益々読みたくなったよ。
ここではない世界から来た、って所も気になるしね。今度本屋で探してみるよ。
……所で、どうも顔が赤いみたいだけど、大丈夫かい?
(熱でもあるのかい?なんて的外れな事を言いながら、心配そうに)

あー……それ、は……その……
……いやでも……君には話しておくべきなの、かな……
(妙に悩ましげで深刻そうな様子で、暫く一人で唸っていたが)
……ええと、話が若干長くなる上に、思いっきり私の身の上話になってしまうのだけど。
それでも良ければ、自分のイメージが気になる理由、話そうか。
あはは……でもそれはそれで凄い事だと思うな。
(気にしてもいなさそうにあっけらかんと笑って茶を一口)

ふふふ、気にしすぎると体に毒だよ?
(にこにこと生暖かく見守りながら)
うん、他の世界の人が持ってきた本らしくてさ。
物珍しさで有名になっていたから、探せばあると思うよ。
……ごめんね、僕余り自分の好きな物の話をするのは得意ではなくて。
なんだか恥ずかしくなってきてしまうんだよね。
(軽く手でぱたぱたと顔を扇ぎ、恥ずかしさを誤魔化すように苦笑して)

……ふむ?何かワケアリっぽそうだね。
まあ、こっちに無理矢理連れてこられている以上ワケが無いはずがないけれど……
(指を組み、控え目に肘を文机についてヴィルヘルムを安心させるように微笑む)
構わないよ。むしろ君の話が聞けるのは嬉しい。
それに、色々と聞いておいた方が君が住みやすくなるような手伝いが出来るかもしれないからね。
……純粋に興味があるっていうのもあるけど!
うぅ……できる限り気にしない様にするよ……
(降り注ぐ生暖かい視線に相変わらず気恥ずかしそうにしながらも、そう言葉を絞り出して)
……そっか。人が召喚されている以上、物も一緒に入ってくるのか。
こんな世界でも、やっぱりこれだけ沢山の人や物が流れ込んで来たら珍しくもなるのかな。
(ぱたぱたしている彼を、ぼんやりした目で見つめて)
恥ずかしく……?
好きな何かがあるのは良い事だし、恥ずかしがらなくても良いと思うけどな。
……そうやって頭で分かっていても、感情である以上そう簡単に制御できないだろうけど。
(私だって「褒められるのは良い事だから恥ずかしがるな」って言われても無理だしね。そう自虐っぽく笑って)

ああ、いや……そう大した理由ではないのだけどね。
ただ少し……自分自身に関するあらゆる記憶を無くしているだけで。
自分で自分がわからない、から。
周囲の人の印象で何とかこの穴を埋めようと足掻いている……それだけだよ。
うん。今回の大規模召喚では特別、沢山の人や物が来たものだから……純種は皆、こっそり注目しているんじゃないかな?
……まあ、その本は今回の事以前に流れてきた物だから、余計に珍しかったのかもね。
(気を落ち着かせるためにマグカップの中身を煽って)
……そうかな?でも、うん。
多分まだ慣れていないだけだと思うから、これからは恥ずかしがらないように頑張ってみようかな。
(気を遣わせちゃってごめんね、と言いたげに微笑んで)

成る程、ねぇ……
(暫し目を細め、品定めするようにヴィルヘルムを見ていたがにこりと微笑んで)
……うん、事情はわかったよ。記憶喪失、っていうのも中々大変そうだね……
でも、そうやって足掻く姿は美しいと思うし、手助けしたいとも思うよ。何をすればいいかは思い浮かばないんだけれど……
(自信なさげに目線を落として)

……この世界の中で、色々な物に君が触れて何かを思い出せればいいなぁとも、思ったよ。
へぇ……大規模召喚以前に召喚されたんだ。それはさぞかし話題になっただろうね。
どこの世界の、誰が書いた本だったんだろうね……ふふ、気になるね。
(こちらへ来てから時間は経ったみたいだけど、それを突き止めた人はいるのかな……?なんて囁きながら、楽しそうに笑って)
それじゃあ、君が慣れる為にも君の好きな物の話を沢山聞いてみる事にしよう。
私自身も興味があるしね。
……そうだな、無難に好きな食べ物とか、教えてくれるかい?
おすそ分けが出来そうな物なら、今度作って持って行くよ。
(冗談めかした口調ではあるが、割と本気で聞いているらしい。まっすぐな視線は好奇心に煌めいている様に見える)

美しい……?醜いとか、見苦しいの間違いじゃなくて?
そんな風に言われたのは初めてだよ……
(本気で驚いたのか、真紅の瞳を見開いて)
……色々と自分なりに考えてはいるんだけどね。手がかりになりそうな前の世界からの持ち物がほとんどなくて……
さて、どうだったかな……原稿だけこちらに流れ着いてきたのを本に纏めたものらしいから、よくわかっていないみたいで。
(残念だけど、大規模召喚でその人も来ていたら……って考えるとわくわくするよね!と明るく笑って)
うう、僕の話なんてあまり面白くはないと思うけれど……?
……そうだなぁ。肉料理なら基本的に何でも好きだけど、中でもハンバーグが好きかな。
後は甘い物も好きだよ。唯一まともに作れる食べ物だし……美味しい、し……
(真っ直ぐな視線と雰囲気から感じる本気さに気恥ずかしくなり、マグカップの持ち手を弄り視線をうろうろと泳がせながら)

うん、美しい!僕は……なんと言うか、悪趣味な人間だから。
人が足掻いたりもがいたり、苦しんで何かを成そうとする姿に魅力を感じるんだ。
(だから君は美しいよ。と恥ずかしげもなく笑顔で言い放ち)
そうか……ううん、なら本は?
本や衣服に見覚えがあったりしないかな?
原稿?そっか……まとめた人は大変だっただろうな。
(一纏めにこちらに来たのかな……?とか、原稿に筆者名は書いてなかったのかな……?だとか、どこかぼんやりした視線のまま呟いた。どうやら、自分の思考の世界に入り込んでしまったようだ)
ハンバーグと甘い物……うん、覚えた。
……正直、君を初めて見た時から、随分可愛らしい顔立ちをしているなと思っていたから
甘い物が好きなのは割と想定内だったけれど……ちゃんと男らしい所もあるんだね?
(ハンバーグ、今度作って持って行くよ。恥ずかしそうな彼をどこか楽しそうに見つめながら囁いて)

そう……理解はできないけれど、否定はしないよ。
私にはわからなくとも、君の目には私が美しく見えるのだろう。
(理解はできずとも尊重する姿勢を崩さない、それが男の信念なのだろう)
本……見覚えとは違うけれど、恋愛小説を読んでいると頭が痛くなるな……
(トラウマでも眠っているのかな……と一つ、ぼそり)
ううん……幸いページは欠けていなかったらしいから、案外なんとかなったんじゃないかなぁ。
(僕はそういう仕事はよくわからないけれど。と囁き、一人考え始めたヴィルヘルムをじーっと観察し出す)
ぐう……あ、ありがと。楽しみにしてるね。すごく。
……それとっ、褒めてくれてありがとう。男らしい、は余計だけどね!
(そう早口に言い切るとふいっと顔を背けた。火照った頬に手を当てて面と向かって褒められるのは慣れてないんだよなぁ……とヴィルヘルムには聴こえないように呟いた。照れているようだ)

んふ、ありがとう。そういう所も君の美点だと思うよ?
(彼の信念を快く思い、何か目映い宝石でも見るように目を細め)
ふむ?じゃあ僕の薦めた本は読まない方が良いかな……
……あ、まさか記憶を失っている原因が女性絡みだったりしないよね?
女性の怨みは怖いもの、色々と……
(何か想像でもしたのか身震いして苦笑した)
そうか……そうだよね。
いくら物珍しい物だとはいえ、欠けたページを探す労力とは釣り合わないだろうし……
(マイペースに本について思いを馳せているらしい男は、観察されている事にも気づいていない様子で、手元のマグカップを見つめている)
……?ええと、可愛らしいだけの方が良かったのかな。ごめんね?
(そっぽを向いてしまった彼を、相変わらずの様子で不思議そうに見つめている。嫌な気分にさせてしまったかな、だとかそんな事を考えている顔だ)

(女性絡み、の辺りでびくりと肩を震わせて)
あー……ど、どうだろう……?何も思い出せない、けど……
……今、一瞬何故か寒気がしたから、案外間違ってないのかもしれないね。
何かしらのトラウマが眠っている可能性は否定できないかな……
(血の気の薄い顔を更に青白くしながら、自身の中に走った恐怖心を誤魔化そうとするかの様にマグカップを傾けた)
元の世界に探しにいく方法なんてそうないだろうしねぇ。
(どうも気づいていない様子だし、もっとよく観察してもいいだろう。と頬杖をつき、彼の容姿をまじまじと見た。どうも、余りに余って美しすぎると思っていたのだ。……それこそ、人知を超えている。)
そ、そうじゃなくてっ、……は、恥ずかしいんだよ。褒められるの。
可愛いって言われたのは、嬉しかったけど……
(文机に突っ伏し、ごめんねぇ……と唸る。あと、ヴィルヘルムくん色々と疎すぎない?と上目遣いに睨みながら呟いた)

(一瞬動揺したように瞳を揺らして)
その、なんだかごめんね……?
うーん、それが何かの手がかりになりそうな感じはある、けど……
あまり深く思い出さない方が良い記憶のように感じるな。
(身体が拒絶しているなら尚更ね。と安心させるように、優しく微笑みかけて彼の手に触れようと手を伸ばした。人肌で触られると安心する、という経験則からだ。)
だよね……仮に元の世界に帰れる方法があるのだとしたら、今すぐにでも帰りたい人が
きっと大勢いるだろう、し……?
……そんなに見つめて、どうかしたかい?
(一人思考の世界に浸っていた男は、ここで漸く自分が観察されている事に気づいたらしい。私を眺めているのは楽しいかい?と、不思議そうに一つ零して)
嗚呼、そういう……ふふ、ごめんね?
でも……私はただ事実を指摘したまでに過ぎないよ。
鈍い私ですらそうと感じる程の秀麗な容姿の持ち主の君なら、これまでにも賞賛の言葉の一つや二つ位、受け取ってそうだけどね……?
(でも慣れていない、と。そう、疑問を隠しもしない様子でぼそりと呟いた)

……?どうして君が謝るんだい?
記憶を取り戻したいと一番願っているのは私なのだから、君が気に病む必要はどこにも……
……えっと、今度はどうしたんだい……?
(伸びてきた彼の手の意図を理解できなかったのか、困惑を浮かべた様子で硬直している)
まあ、ざんげ様がそう簡単に帰してくれるとは思わないけどねぇ。
……ん?ふふ、どうもしないよ。ずっと考え込んでるヴィルヘルムくんを見てただけだもの。
(でもヴィルヘルムくんはただの人間っぽくないし、楽しいよ。と口許を緩ませる)
ほん、ほんともう……!そういうのがいっちばん恥ずかしいのに!
……んー。昔は、容姿が目立たないようにしていたから……かなぁ。
正直、興味の無い人から言われても嬉しくないし……目立つと人間観察にも不向きだからね。
(だからかなぁ。とさも当然のように首を傾げた)

そうだとしても……ううん。
自分がきっかけで人が苦しんでいる姿を見るのはあまり好きではなくて。
(困惑した様子の彼に伸ばす手を止めて、ひらひらと振る)
うん?……ああ、これ?
怖がっているようだから、人肌にでも触れば安心するかなって思ってね。
(でもよく考えたら、ヴィルヘルムくんってそういうタイプじゃないよね。と苦笑した)
そうかい?楽しめているのなら良いけどね。
……君の言う通り、私はただの人間ではないのだと思う。
他人と自分を比べるだけでも、身体的に掛け離れている点が多すぎるから……
(具体的に何なんだと言われるとよくわからないのだけど、と苦笑して)
ご、ごめん……もう喋らない方が良いかな……
ふむ……関心を抱いてない人の褒め言葉には、興味がなかったのかな。
しかし逆に言えば興味を抱いている人の言葉にしか反応しないって事で……
……ふふ、うぬぼれても良いのかな?
(少しでも興味もってもらえる事は、嬉しい事だよね。そう囁いて、くつくつと笑って)

嗚呼、そういう……でも、本当に謝らなくて良いんだよ。
過去を思い出そうとして気分が悪くなる事は今までもあったから……
(彼を安心させるかの様に、うっすら微笑んで)
気遣ってくれたんだね、ありがとう。
でも、やめておいた方が良い。私の手は冷たいから……
(自分の右手を摩りながら、ぽつりと)
やったあ、当たった。僕の審美眼も中々だね?
……しかしまあ、ヴィルヘルムくんも旅人なのだもんね。ヒトでなくても不思議なことではないよねぇ……
(種族が何なのか気になる所だけど。と愉しげに目を細めて)
そ、それはそれで困るから!そのままで、もう君はそのままでいいから……!気にしない!で!
うーん……多分ヴィルヘルムくんの言う通りだと思う、けど……?
(しまったと思わず目を開く。じわじわと赤くなっていく頬を隠そうともせずに、うぬぼれてもいいよ、と小さく呟いた。仲良くなりたいのは事実だし。)

……そう、か。じゃあ、もう謝らないよ。
でも、無理はしたら駄目だからね?
(心から心配そうに眉を下げて)
どういたしまして。……?そう、なんだ?
でも、手が冷たい人は心が温かいって言うじゃないか。僕は素敵だと思うよ?
(前に手を握ったときはあんなに熱かったのに。と不思議に思いながら、へらりと緩く笑みを浮かべた)
……ふふふ、ありがとう。
そのままの私を肯定してくれる事も、そんな私と仲良くなろうとしてくれる事も、すごく嬉しいよ。
…‥今みたいに君を困惑させてしまう事もあるだろうけど、仲良くしてくれたら嬉しいな。
(じわじわと朱に染まっていく頬を見て苦笑しながら、それでも楽しそうに微笑みかけた)

手が冷たい人は心が温かい、か……そんな話があるんだね。
じゃあ仮に体温がころころ変わる人がいたら、それはつまり──……

(部屋の管理人と住民とで行われた真夜中の小さなお茶会は、静かに密かに続いてゆく。
 茶会の終わりを告げるかの様に空が白み始めるまで、あと──……)
(……後日、購入したのであろう小さな本棚と二脚の座椅子を
 重そうにのろのろと運ぶ白髪の男が拝めたとか、拝めなかったとか。
 それはまた、別の話。)

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