シナリオ詳細
ローレットトレーニング・ビギナーズⅢ
オープニング
●ようこそニューフェイス!
「みなさん、ようこそなのです!」
ここはローレット酒場。
レガド・イルシオン幻想王国の首都メフ・メフィートに居を構える、あなたの所属ギルド本拠地だ。まあ、本拠地というより主なたまり場と呼んだ方が正確なのだが……。
「今日は、まだレベルの高くなっていない方のためにピッタリの依頼を用意しているのです。
初心者さんにお勧めの幻想郊外での簡単な依頼から、いま一番ホットな覇竜領域での依頼!
遠い海の先にある豊穣卿カムイグラに、近未来都市が広がる練達!」
あなたを案内して依頼ボードの前にぴょんとはねたのはギルドの看板娘にして情報屋、ユリーカ・ユリカ(p3n000003)である。
「今回は皆さんをバッチリサポートしますので、依頼も安全! 経験値もがっぽり! 一気に経験を積めるのです!」
さあどうぞ! そう言って貼り付けた依頼書の前に、あなたは……。
●広大なるこの世界
幻想(レガド・イルシオン) Legado Ilusion
鉄帝(ゼシュテル鉄帝国) Sestell (Sestell Eisen Reich)
練達(探求都市国家アデプト) Adept (Adept the Seekers City-state)
傭兵(ラサ傭兵商会連合) Rasa (Rasa M&C Union)
深緑(アルティオ=エルム) Artio=elm
天義(聖教国ネメシス) Nemesis (Religious state of Nemesis)
海洋(ネオ・フロンティア海洋王国) Neo Frontier (Neo Frontier ocean Kingdom)
豊穣(豊穣郷神威神楽) Kamuy=gla
覇竜(覇竜領域デザストル)désastre
ローレットに所属したあなた、つまりイレギュラーズは空中庭園のポータルを通して各主要都市あるいは集落へとワープすることができる。
時として一国に数百という規模の仲間達で駆けつけることが出来る理由でもあり、前人未踏の覇竜領域や広大すぎる海の先にある新天地カムイグラの依頼を自由に受けることができる理由だ。
あなたはボードに張り出されたどの依頼をいつ受けてもいいし、受けなくてもいい。
なぜならあなたという存在は特異運命座標(イレギュラーズ)。生きているだけでパンドラという奇跡の力(今画面左上に表示されている数十万単位の数字)が溜まっていく。日常生活をしているだけでも、極論なにかしらの犯罪を働いていたとしても世界を救っているのだ。実際、この力は冠位魔種という国滅級の災厄を討ち滅ぼしたり、伝説のドラゴンに対抗したりといった様々な形で行使されてきた。
今あなたが受けようとしている依頼は、たとえばモンスター一匹を倒し苦しむ村人を救うのみならず、こうした世界の救済に繋がるということだ。
「今日も世界中から依頼が届いていますが……今回はホットな所を選び抜いてお届けするのです。特に人数がいっぱい居ると有利な依頼ですね!」
まずはここ、幻想王国での様々な依頼である。
郊外の村々を襲うモンスターの退治から、国家間を移動する商人や貴族の護衛。
時には闇酒場でこっそりと掲示される盗みや暗殺といった依頼まで幅広い。
もしあなたが依頼というものに馴染みが浅く、標準的な依頼を求めているならこの中からお勧めを見繕って貰うのがいいだろう。
次に、覇竜。前人未踏の秘境であり、立ち入るだけで死ぬとまで言われた覇竜領域デザストル。
その踏破を世界で初めて成功させたローレット・イレギュラーズは、亜竜種という未知の種族との接触に成功していた。
彼らとの結ばれた絆は運命となり、中にはイレギュラーズとして空中庭園に召喚を受けた亜竜種もいるかもしれない。
一旦初心に返って己の里で、ローレットの一員として依頼を受けてみるのもいいだろう。
勿論亜竜種でないイレギュラーズも今では亜竜集落で歓迎ムードだ。
力を試されている段階であるとはいえ、いくつもの依頼をこなしかのジャバーウォックを初めとする竜たちを打ち払った功績は大きい。
集落周辺の亜竜退治が沢山舞い込み、あなたが無作為に手に取った依頼書もそれかもしれない。
そして次に紹介されたのは、豊穣。
少し前までは世界の端っことまで言われその先はないとされていた絶望たる海の向こうに、『カムイグラ』という島国があった。
そこは和風の文化が独特に花開いた国であり、首都である高天京はローレットによって救われた恩を決してわすれていないだろう。
この国では首都で進んでいる復興作業の手伝いや、あえて『観光』をしてその感想をレビューしてほしいという平和な依頼が多く舞い込んでいる。
カムイグラの空気を見て回ってみるというのも、今回はいいかもしれない。
最後に、つい最近まで凄まじい戦いのおきていた練達だ。
異世界から召喚された人々(総称『ウォーカー』)によって作られた国であり、様々な世界の技術を結集したことでいっそ近未来的な風景をつくりだしている階層都市である。
全てのシステムを統括しているマザーコンピューターAIの暴走や、伝説のドラゴンたちの大襲撃に晒され一事は国ごと消えて無くなるかと思われたが、ローレットの大活躍によって今もこの国は生きている。
早速復興が始まり、彼らの得意な『創造』に取りかかっているところだろう。
実のところ、本件最大の功労者であるローレットをただただ歓迎したいという声も少なくない。
あなたはこの練達という都市に訪れ、酒なりパフェなりを奢って貰うだけという時間をすごしてもいいのだ。
なぜなら、この機会を通してローレットというものがどういう組織か、この世界がどういう場所なのかを説明しあう時間を作るからである。
もしこの世界に馴染みがないなら、あるいはローレットという組織を知識面で知りたいなら、この集まりに参加してみるのもいいだろう。現代日本を完全再現した『再現性東京』なるエリアも、そうした世界から召喚された人々には魅力的なのだから。
「お好きな依頼を選んでください! きっといい経験ができるのです!」
- ローレットトレーニング・ビギナーズⅢLv:40以下完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2022年02月22日 22時10分
- 参加人数362/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 362 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(362人)
リプレイ
●はじめてのクエスト、或いは、reboot loading
ギルド・ローレットには様々な依頼が舞い込み、それは対応国家という規模でもみても史上最高に幅広く、受ける仕事の種類という意味でも恐ろしく幅広い。
ゴブリン退治ネコ探し、貴族の護衛から危険地域の調査。果ては国家に味方し最前線で冠位魔種と対決することすらある。
そんな中でも日常的に見かけるのが……。
「いらっしゃいませ」
「へいらっしゃい――この店は子供まで雇うようになったのかって?
んじゃ、本当に子供かどうか試してみるか?」
葵 夏雲(p3p010384)と杏 憂炎(p3p010385)。二人は酒場の手伝いという依頼を受けていた。
「いやいや、こんな見た目でもフツーに成人だぜ?
で、こっちは俺の幼馴染――ん? どう見てもお前の方が年下だって? おいおい、どう見たら俺が年下に見えるんだ、控えめに見ても俺の方が年上だろ?」
客とも気さくに話す憂炎に、夏雲がすこし口を尖らせる。
その一方、酒場の外では『❀桜華❀』季 桜綾(p3p010420)と『天又雪』朱 雪梅(p3p010421)が連れだって歩いていた。
「こら、暴れるなジョセフィーヌ!」
桜綾の抱えた腕の中にいるのはネコだった。ローレットへ日常的に寄せられるネコ探しの依頼である。こういった依頼は普段派手なモンスター退治の影に隠れがちだが、昔はこういったものばかりが表面化した時期もあったらしい。
雪梅がちょいっと服の裾をつまむ。
「なぁ桜綾、『ろーれっと』への帰り道判る?」
「小梅はわからねえのか?」
「アタシ? 判らんから訊いとるん……でも其処ら辺の人に訊いたらさあ……」
「ハッハッハ! 確かにハズいよな。ま、オレはわかるけどな! わからねえならオレに感謝しながらついてこいよ~?」
歩き出す桜綾の横を早足で抜かすと、雪梅が『んっ』と言って手を出した。
「手。つなげっててか?」
「……何やの、小さい頃は迷子にならない様にーってよう手繋いでくれたやろ」
「ったく、しょうがなくつないでやろうじゃねえか!」
そういって繋いだ手は、『小さい頃』とはずっと違って……。
二人は無言のまま、きょとんとしたネコを抱えてギルドへの帰路につく。
ネコ探しというものは地味に見られがちだが、案外そうでもない。
「ボクだって毎回が飛鳥に任せきりじゃないぞ、猫探しなんざ朝飯前だ」
『天之狐』七々扇・雪乃(p3p007507)が和服の袖をまくると、『空之狐』雨乃宮・飛鳥(p3p007515)が複雑な表情で小さく肩をすくめる。
「久々の酒を抜いてまでする仕事が猫探しとは……」
「猫、猫か……俺もユキヒョウ交じりの半獣人だからな、猫といえば猫だが。
一般的な猫ってのも大変なんだなぁ、まさか追いかけまわされているとは」
一緒にチームを組んで依頼を受けていた緑青・槐(p3p009104)がチラリと見ると、『銀の兎』ルルディ・グリムゲルデ(p3p010092)はグリフォンめいた『特異運命座標』ラスヴィエート(p3p010476)の上にぐいぐいよじのぼっていた。
「ん、あなたラスヴィエート君っていうのね?
今日からラス君って呼ぶね♪とっても大きくて可愛い!」
「Oh、お嬢(ルルディ)……そんなにどすんばたん乗り上がらないで頂けるといだだだだだだだっ。羽根はちゃんと生えてるヤツなの。乱暴はNOですよ」
「あ、ごめんね?」
どうやら仲良くなったらしく頭をルルディは頭を撫でている。
その様子を一通り一緒に眺めていた『特異運命座標』白妙(p3p008936)が、槐と顔を見合わせる。
「俺達が頼まれたのは5㎏ぐらいの大型だったか」
「……マヌルみたいなのを探す、オーケー分かった俺も手伝う」
例えネコ探しでも六人チームを組むことがある。これがローレットのちょっと変わったところである。彼らは生きた奇跡であり、何かしらの活動をしているだけで世界を救う力が蓄積される。そのため一見コスト度外視な仕事でも普通に回ってくるし報酬もしっかり入ったりするのだ。
話は戻すが、ラスヴィエートは2mほどのグリフォン型ウォーカーである。
そんな彼を目立たせながら、飛鳥がマタタビ罠を仕掛けたり雪乃が狐型式神を走らせたりしている内に、目的のネコは見つかった。
「やれやれどの世界でも猫はやたらとすばしっこいなあ。
……が。ふふん、ボクを褒めるといい」
「よし、帰ったら雪乃の好きなツマミ何品かを作るか。褒美の晩酌といこう」
ドヤ顔をする雪乃の頭を撫でながら、飛鳥はネコをスッとラスヴィエートの上に置いた。相乗り(?)しているルルディがニコニコしながら頭を撫でる。
もうすっかりルルディはラス君と友達になったようだ。
「なあ槐、ネコの抱え方知ってるか?」
「貸してみろ、こうやって抱えるんだ。コイツは重いから尻も支えてやるといい」
白妙はその一方で、ネコの抱え方を槐にレクチャーしてもらいながら歩いている。
こんなふうにして六人と一匹は依頼人のもとへネコを届けるべくあるいていくのだった。
「いっぱい、来ちゃった……」
『カイカと一緒』カシャ=ヤスオカ(p3p004243)は手元に束になった依頼書と、目の前に軽く15人前後のイレギュラーズ。
ネコや犬をもふれればいいなくらいの気持ちでネコ探しチームを募ったが、どうやら思いのほか同じ気持ちの人が多かったらしい。
が、こういう時に役立つのがローレットの多様性である。
カシャは動物疎通の力によって面をつけた白犬カイカに話しかけると、匂いを辿るように言った。
「け、怪我したり、お腹減ってたり、しないかな……はやく、見つけてあげよう……」
「さて、仕事は猫探しじゃったな。特徴は目元に黒い黒子みたいな模様がある、サビの女子。首輪は赤のエナメル」
『柳暗花明の鬼』形守・恩(p3p009484)が依頼書の一枚をとり、特徴を読み上げはじめた。
恩もカシャの『聞き込み』を手伝ってくれるらしい。
彼と同じようにそこいらの塀の上で丸くなっていたネコへと、写真を翳して話しかける。
「この別嬪さん、見とらんかねぇ?」
聞き込みというのは脚で稼ぐ必要があるものだが、こういうとき人を集める才能があると有利に運ぶものだ。
(目が見えなくてもこれならできそうだわ!
私は少しでも猫や犬を怖がらせないように……)
フェリチタを優しく奏で始めた『盲目の花少女』ソフィラ=シェランテーレ(p3p000645)。それにのせた歌を聴いて気持ちを落ち着かせたのか、ネコたちが徐々に集まり始めた。
「こりゃあ凄いな」
ネコを小脇に抱えてやってきた『特異運命座標』梶ヶ谷 イオリ(p3p010399)が、腕の中で丸くなるネコを見て瞠目する。
先にあちこち駆け回って、一匹探し出していたらしい。子供がコネも金もなくオロオロ迷い猫探しをしていたところを見つけ引き受けてきたようだ。こういうことができるのもローレットのいいところだ。
「相手は小さいですし、怖がられたりしないと良いのですが…たしか、こちらが変に怯えたりしてしまうと動物相手にもそれが伝わってしまうと聞きました。あくまでもリラックスして挑まなくてはいけませんね!」
「さあ待っていてね猫ちゃんワンちゃん! もふもふして差し上げm……いえちゃんと保護してあげますわよ!!」
集まったネコたちの中から目的のネコを探し始める風華 蛍(p3p010464)。そして猫用の玩具を振っておびきよせる『嘘に塗れた花』ライアー=L=フィサリス(p3p005248)。
近くまで寄ってきたネコチャンへそーっと手を伸ばし、そして案外なつっこいそれの頭をなではじめる。
「もふもふ最高ーーッ!!」
「む、どうやら目標はあの猫様のようですが、なんと素晴らしい毛並み!」
そうしていると、『薔薇剃刀』ウーナ・ブルー(p3p009736)が空からゆっくりと降りてくる。
自慢の機動力で逃げるネコをおっかけ、迷い猫の一匹をつかまえるのに成功したらしい。
「犬猫追っかけるのって結構コツがいるんだよね、足早いし。けど捕まえた後が……」
爪でひっかかれまくって困っていたウーナも、ソフィラの歌でネコが落ち着いたらしくほっと肩を下ろす。
なるほど上手くいっているようだ。
(成程、犬猫探し系の依頼を消化するってヤツか。
確かに初心者向け依頼で、『冒険』を求める新人にはスルーされがちな依頼だな。
俺は犬猫探しじゃないことに忙殺される予感があるが…)
ブラム・ヴィンセント(p3p009278)はうんうんと頷いてから振り返り……アヴニール・ベニ・アルシュ(p3p009417)が大事そうに白いネコを抱きかかえてなでこなでこしているのを見つけた。
「書いてある特徴が一致してます……けれど、本人よりもだいぶハンサムさんですね?」
「れは探しモンじゃないから置いとけ、こっちが誘拐犯になりかねない」
(この子、ネコ探しなのわかってるのかな……?)
『夜を歩む』アムル・ウル・アラム(p3p009613)は心配そうに見つめるが、どうやらそれは杞憂だったようだ。
「手配書の子です、ブラム様!」
指さすアヴニールにいち早く反応したアムルがネコをキャッチ。しかし、苦手そうに顔をしかめた。
(猫は…羽根を弄って遊ぼうとするから、ちょっと…苦手。でも、おしごとだから…)
「なんだネコ苦手なのか? 無理すんな、その猫こっちに寄越し――猫! 俺は踏み台じゃないぞ猫、この猫ー!」
混乱する彼らを横目に、『花吐かせ』シャオ・ハナ・ハカセ(p3p009730)はついてきた犬(?)のシチの頭を撫でる。
「犬や猫がいなくなって探している、と。それは嫌でしょうね……」
「ボクの初仕事! ナルちゃんの活動記録はここから始まる! いぇい」
虚空に向かってピースサインをする『特異運命座標』鳴葉(p3p010415)。
彼女にシチ用の餌を持たせ、空からぱらぱら落として貰う作戦を始めた。
「迷子の動物さん達は、どんなコかな??
お目当てのコを見つけたら、あわよくばモフってみてもい〜いんだよね???」
「ネコ探しの依頼ってよく聞くけど、実際にやるのは初めてだな〜。ホントにあるんだねぇ……」
餌に釣られて出てきた目的の猫を自慢の機動力と跳躍力で捕まえるのが『多言数窮の積雪』ユイユ・アペティート(p3p009040)の役目である。
「捕まえられたら、日向ぼっこでもしながらモフらせてもらお〜!」
などと言いつつ、既になつっこい野良猫を抱えてなでこなでこしていた。
「わっふー! みてみてミスティ、もふもふだよもふもふ!」
「ヤデ」
トリヤデさんとネコに囲まれた『ゴッドバード』ミスト(p3p007442)が手を振る。
それを保護者みたいな目で見ていた『深き森の冒険者』ミスティ(p3p007447)が苦笑する。
「はいはい、ネコ探し頑張ろうねぇミスト。えっと…物陰とかに隠れてたりするのかな…? 犬猫はあんまり詳しくないや。とりあえず高い所を見るなら……」
翼を広げ空から探そうと浮きあがったミスティの耳に、ミストの『ああっ!』という声がささった。
慌てて振り返るミスティ。
大きなボスネコにくわえられたトリヤデ。
這うような姿勢で手をかざすミスト。
「まって猫さん、その子噛まないで! そして食べないでー!! トリヤデさぁぁぁん!!!」
「(;╹V╹)<タスケテヤデ」
「ネコぉー!」
走り出すミスティたちを横目に、リスェン・マチダ(p3p010493)と『自由医師』御幣島 十三(p3p004425)は猫用の罠を仕掛けていた。
「ローレット通いもそれなりに長くなってきたから、この辺りのにゃんこのたまり場はある程度調査済みだよ」
そう言いながらついてきた弥七やドラネコの頭を撫でる十三。
一方でその当たりのネコたちから聞き込みを終えたらしいリスェンが戻ってくる。
「どうやらこのあたりで見かけたらしいですよ。ね?」
リスェンが首をかしげてみせると、ドラネコも肯定するように首をかしげて見せる。
暫くまっていればよさそうだが、念のためにと隠れそうな場所を見て回るらしい。猫用おもちゃを持って立ち上がる。
「こっちは任せますね。ネコ出ておいでー。怖くないよ、一緒に帰ろー?」
そうして歩いていると、『じゃいあんとねこ』陰陽丸(p3p007356)とでくわした。ぶっちゃけ3mのネコである。
陰陽丸は他の動物たちのお悩み相談にのっていたらしく、見ればすぐそばで『見果てぬ世界への憧憬』斑目 椿(p3p010463)がネコを抱きかかえていた。
リスェンが探しているネコだったようだ。
「こうしてネコの集まる場所を探していけば、ついでに町の散策も出来て可愛いネコちゃんも見られて一石三鳥ですね~」
などと言ってにこやかにネコを撫でる椿。
すぐそばでは『ふわもふ大好き』曉・銘恵(p3p010376)が別のネコを書かせていた。ものすごく暴れているが、銘恵はほこほこしている。
「あ、やっぱり獣なんだね…爪や牙は痛い…けどもふもふで幸せ。ネコ、初めて見た……」
暫く抱えたままでいた彼女は、やっとおとなしくなったネコを撫で始めた。
「外の世界、ネコやふわもふがいる世界…。
しゃおみー、頑張る。ネコの毛並みを撫でたりしたいから…。
……じゃなかった、私、頑張る!」
勿論入ってくるのはネコを探すばかりでなく犬探しもある。
「おーい、この辺でこんなん見なかったか?」
ネコのあつまる場所に宇・暁明(p3p010405)がひょっこりと顔を出した。
亜竜種なれしていない者は驚くが、それ以前にウォーカー慣れしていたローレットや町の人々はさして驚かないようだった。もう3mのネコすらいるし。
案外里の外も過ごしやすいんだなと暁明が思っていると、天蓋 星輝(p3p010368)が腕に子犬を抱えてやってきた。
「見つけたぞ」
「おお、やるな!」
褒められ、星輝は頷いた。
(星を見ること以外してこなかったからな。少しでも外のことが知りたいと思ったが……建築物も、植物もまるで違うんだな)
あとで、依頼人の少年に星の見える丘でも聞いておこうか、などと思いながら。
さて、ネコ探しの次はモンスター退治である。
王都郊外の村に森からレッサーゴブリンの一団が流れてきたということで討伐依頼が入っていた。
「さてさて集団の連携練習ですか。
上手く行くといいですなあ。
精一杯張り切ってお手伝いさせていただきましょう」
背筋を伸ばし意気揚々とする『洪水の蛇』成龍(p3p009884)。
「誰かと一緒に頑張る、というのはとても「良い子」らしいよね
なら僕はその「良い子」たちの手伝いをするだけさ」
その横では『不滅の都市伝説』アイザック(p3p009200)がどういう原理かわからないかかりかたをしたネクタイをきゅっと結ぶ。
木々の間から姿を見せたゴブリンたちに突撃すると、彼らの繰り出す粗末な棍棒を謎のプリズム障壁によってガードしはじめた。
(折角の機会じゃし、矢張りここは儂も魔物退治に協力しようかの!
いれぎゅらぁずと言うのは極論生きているだけでも徳となると良いが、腐るよりはお役目を受ける方が良いだろうしのぅ
いざ、という時も幾度となくあるであろうし、その時の為に動ける様になっておくのは何よりの宝となろうぞ!)
頭の中でそこまで言い切ると、『希望の星』黒野 鶫(p3p008734)が和剣を握って走り出す。注意を引いていたゴブリンの一体に強烈な袈裟斬りを入れた後、ラウンドシールドを構えそのまま派手にタックルを撃ち込んだ。
衝撃に吹き飛ばされるゴブリンに追い打ちをかけるのは『特異運命座標』凛・詩楼(p3p010438)の役目だ。
(俺自身は自警団仕事で荒事も多少は慣れてっけど、場所や人が変わりゃあ勝手も変わる。依頼は複数人行動が基本な以上、集団戦闘での連携の訓練はしといて損はねぇだろ?)
などと考えていた詩楼はフッと小さく笑い、吹き飛んだゴブリンへ一気に距離を詰め拡張装備の爪を繰り出した。
ズッと腹に突き刺さった爪がそのまま相手の肉体を引き裂き、そして放り捨てる。
ペイトまわりでたまに見かける亜竜と比べればなんことのない敵だった。
とはいえ、群れで現れれば結構な怪我もおう。
(最近身体動かせてないし、丁度良いから簡単な依頼に同行させてもらいましょ。連携の練習も兼ねてるし、役に立つよう頑張らないとね)
ルサルカ(p3p007202)がちょっとした怪我をした鶫へ向けてコイン状の物体を指で弾いてパスした。
カジノチップに見えるそれを鶫がキャッチすると、手の中でさらさらと崩れて消えてしまった。魔法のチップなのだろうか。それだけで鶫が負っていた傷から血が止まり、痛みもメントールのようなスッとした感覚と共に消えていった。
「ほう、やりますな! 見事な連携プレイですぞ!」
成龍が逃げようとしたゴブリンに範囲魔法を放ち破壊すると、ルサルカへグッドのサインを送る。
「少しの間だけ部隊を率いてたからね。まぁ、壊滅しちゃったんだけどね」
冗談のような顔で笑うルサルカに、アイザックが頭部のプリズム体をくるりと回した。
「お疲れ様。いい子にはご褒美をあげないとね」
ローレットは基本、その場その場でできた組み合わせでチームが組まれるが、時として望んだメンバーで依頼を受けることもある。
『サヨナキドリ』からやってきた五人がそうだ。
天義支部長、『硝子の檻を砕いて』ネリウム・オレアンダー(p3p009336)。
深緑支部長、『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)。
練達支部長、『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)。
海洋支部長、『煙草のくゆるは』綾志 以蔵(p3p008975)。
練達支部長、『ふわふわ』えくれあ(p3p009062)。
そして少なからず付き合いをもつ再現性九龍城より『雷龍』ユー・コンレイ(p3p010183)。
彼らの受けた依頼は王都郊外の洞窟に住み着いたという大蛇型モンスターの討伐だった。
「正直、魔物退治とか面倒でめちゃくちゃ帰りたいけど……倒した魔物は好きに解体していいっていうなら……ちょっと、おっさん。ヤニくさいから風上に立たないでくれる?」
「断る。こいつはコイツは俺の武器だ。武器を控えさせるのは同じ支部長としても容認できないな」
若干ぴりついた空気だが、それはすぐにえくれあの言葉で霧散した。
「以蔵おにーちゃんはいつも冷静でかっこいいし、コンレイおねーちゃんはとっても勇敢なんだよ!
クアトロおねーさんは優しいし、ネリウムおにーさんはとっても物知り!
みんなすごーい! ぼくもいっぱい頑張ってみんなの助けになりたいな!」
「……ピザ食べる?」
トドメとばかりにピザボックスを取り出すクアトロに、二人がなんともいえない顔をする。そうこうしていると、洞窟の奥から大蛇がのっそりと顔を出した。
全員の目がギッと光る。
コンレイが一番槍をとるかのようにライトニングの魔法を解き放った――その数十秒後に、大蛇はすっかり死体となり果てていた。
「っと、あーえくれあ、おめーはあっちでクアトロと遊んでろ、な?いいからいいから。一緒におやつでも食ってな」
コンレイがおやつをパスすると、えくれあがわーいといってクアトロと走って行く。コンレイはネリウムと顔を見合わせ、モンスターの解体を始める。
やれやれと、以蔵は煙草をくわえた。
モンスター退治はなにも彼らだけに回ってきた仕事ではない。
日頃から多く依頼が寄せられ、そして日常的にギルドメンバーはその報酬を受けていた。中にはそれで日々の生活をたてている者だっているだろう。
「こんな所に来てまで人助けとはねぇ」
「困っている者たちを放ってはおけない。簡単な仕事でも油断せずに動こう。弦、真面目にやれよ」
「ま、孝がやるなら付き合うさ」
『特異運命座標』空鏡 弦月(p3p010343)と『特異運命座標』九十九里 孝臥(p3p010342)が大量にジャイアントラッドが沸いたという村へと訪れ、早速ラッドたちと戦い始めた。
「モンスター退治ぐらいは手伝うかのぅ。
久方振りに身体動かすから加減とかわかりにくそうだのぅ。
領地に侵入されても困るからのぅ」
『楽しそうなの』
『妖艶なる半妖』カレン=エマ=コンスタンティナ(p3p001996)と『溶融する普遍的な愛』Melting・Emma・Love(p3p006309)もそこへ加わり、周囲のモンスターをダークムーンによって見事になぎ払っていく。
「戦うのは苦手ですが、補助や治療とかは少しはできるはずなのでちょっとはお役に立ちたいですね」
『月光ミセリコルデ』ディアナ・リゼ・セレスティア(p3p007163)が怪我をした仲間を治療する一方で、『傍らへ共に』アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159)が素早くラッドを切り払っていく。
「たまにはお仕事しないと怒られちゃうかな〜?
獣退治ぐらいならしてもいいけど私はそこまで強く無いからやるなら気を付けないとね〜」
『困ったな……最近の情勢とかあんまり気にせずのんびりしてたから依頼とかあんまりだったんだけど……。
まあ、領地守る為にも一応領主らしく仕事しようか。モンスター狩るぐらいなら少しは手伝おう』
みるみる敵が減っていく中、『彷徨う銀狐』妖樹(p3p004184)とソニア・ウィーピング・ウィロー(p3p009677)が加わった。
「ご、ご主人様の代わりに、えと、モンスター退治、です……?
ただ、その……あんまり、戦うのは、苦手で……。
ううぅ……こ、怖い、ですが、ご主人様の、領地は、私も、守りたい、から……た、戦い、ます……」
ぷるぷると震えるソニアが思い切って攻撃魔法を放つと、そこへ更に『土の中からやってきた』穴穂 結乃(p3p010482)がドッと現れた。まるでサンドワームのような姿に仲間達は瞠目するが、そこは多種多様なるローレット・イレギュラーズ。口から僅かに見せた人間めいた顔に仲間だと安堵した。
「私としては、外の食べ物に興味があるので、倒すモンスターが食用可能なものだとありがたく……元の世界では地上に出た覚えがないので地上の生物にはどうも惹かれるのです」
等と言っている間も胴体(?)がもごもご動いていた。ラットを食べてしまったのだろうか。噂によると清流付近にすむラットは食用に耐えるというが……。
敵意をむき出しにするラットたちの前に立ちはだかり自らを壁とする――その一方。『青嵐』李・蔚蓝(p3p010492)が颯爽と現れラットを槍によって一閃。斬り伏せる。
「かぁーっ!今まで覇竜の外には出た事はなかったけど全然知らねぇもんばかりでワクワクするぜ! さぁ、モンスター共!うちの師匠仕込みの竜狩りの槍術、その身で特と味わいな!」
そこへ加勢したのは『お前も愛を知らせてやろうか!』ナズナサス(p3p001053)。
「…ええ。練達で愛を享受しまくっていましたが。私の使命として改めて愛を与えねばです」
力を限界まで高めた拳でラットを殴り倒すと、同行していた『必殺の銃弾』隠岐奈 夜顔(p3p008998)へと目を向ける。遠い建物の屋根に陣取っていた夜顔はそれを察したように狙撃を行い、ラットの頭を撃ち抜いた。
(そういや、幻想。初めてじゃないかってぐらいに来た覚えがない。
折角だし、此処で何か依頼を受けてみるのもアリ……なんて思ったけど)
倒れたラットの上を、『脳筋魔術師』炎 練倒(p3p010353)がドゥっと勢いよく飛び越える。
両腕を手かせと鎖で繋いだ彼は口から吐き出した炎のブレスでラットをまとめて焼き払った。
「吾輩は覇竜一の知識人にしてスゥーパァーインテリジェンスドラゴォニアの炎 練倒である。
吾輩の類まれな頭脳を持ってしてエレガントに依頼を解決して見せようぞ。ガーハッハッハ」
がちゃり、と扉が開く。
ローレット酒場と呼ばれる皆のたまり場であり、ギルドの中心ともいえる建物の入り口だ。
入ってきた『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)は店内を見回し、数人の男女がいることを確認すると依頼ボードへと歩いて行く。
「そちらは?」
問いかけに、『何でも屋』ハビーブ・アッスルターン(p3p009802)と『座右の銘は下克上』袋小路・窮鼠(p3p009397)がグラスをあげてこたえる。
「俺は町歩きだな。過去のローレットの資料なんかを見ると色々と後暗いというか陰鬱な感じがあったイメージだが、だいぶ改善されてきてるんかねこの街は」
「かもしれん」
ハビーブはグラスに口を付け、自分がコネ探しのために歩き回っていたことを話した。
それは凄いと関心を示す『特異運命座標』ヒューバート・クリアブルーム(p3p010334)。
「俺はフォルデルマン王に挨拶に行きたかったんだが……さすがに門前で止められたな」
「ふむ、イレギュラーズにはよくある」
はるか昔、大貴族の屋敷にバイクで突入しようとして殺されかけたイレギュラーズがいたという話がある。王や大貴族となれば、目の前に立つだけでも相応の準備や金や権力を要するものだ。割とポンポン前に出てくるフォルデルマンが異常なのである。
話を横で聞いていた『運び屋』シエル・アントレポ(p3p009009)がふうんと感心を示すような声を出した。
彼らもいずれオレを追い抜いていくんだろうか、などと思いながら。
ふとシエルが視線をめぐらせると、酒場の中をリフィヌディオル(p3p010339)がたかたかと走って行く。
大量の依頼書を、何枚もあるボードに貼り付けていく作業をしているようだ。
「おや、ローレットのお手伝いですか?」
丁度酒場へ戻ってきた『星辰の書』セス・サーム(p3p010326)が、終了した依頼を報告するためにか依頼書を取り出した。
「図書館の整理作業、終わりましたよ」
セスのように知識が深く広い人間にしかできない仕事だが、こうした人材がちゃんと見つかるのがローレットである。
リフィヌディオルはお疲れ様ですといって依頼書を受け取り、カウンターへと小走りになる。
すると、入り口が開いて『愉快な麒麟』黄野(p3p009183)と『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)が姿を見せた。
「戻ったぞ! 爆速麒麟便じゃ!」
ローレットに案外舞い込んでくる配達系の依頼をこなしてきたらしい。機動力に自信のある黄野にはうってつけの仕事だろう。
「しかし配達とは。国家間の移動やモンスター退治ばかりだと思っていたが……」
「過去にはピザの出前すらあったらしいからね」
まるで足音をたてずに歩く雲雀が、依頼書をカウンターへと置く。
素早く町を走り抜ける腕が求められる時もあれば、雲雀のように危険な場所をこっそり通り抜ける技術が求められる時もある。はたまた、国家間を馬車や船で何日も旅する腕が求められることもあるらしい。
「しかし……聞いては居たけど、『裏』の仕事もやっぱりあるんだね」
彼の言う裏の仕事は、ローレットが必ずしも正義の味方ではないことを示していた。
暗殺や盗み、時には他者が顔をしかめるような仕事をこなすことだってある。
勿論望んで悪事を働いているわけではない。ローレットにも受けるだけの理由があり、そしてイレギュラーズにもそれを請け負うだけの動機があるものだ。
とはいえ、『特異運命座標』萊 連理(p3p010469)は内心で『失敗したかも』と思っていた。
酒場の給仕仕事を受けることで王国での宿代にするつもりだったがまさか……。
(明らかに裏酒場ですよね。客層が悪そうなのが一目で分かります)
ドラゴニアが珍しいのか奇異の視線が向けられるが、つとめて気にしないように仕事をこなしていく。流石家事能力は高く、仕事はてきぱきこなすのだ。
そんな中で、『身軽過ぎるデザイナー』ティーデ・ティル・オーステルハウス(p3p009692)がひときわいかつい男へ甘い声をだして横に座った。
「あらぁ旦那さん、随分豪勢な飲みっぷりねぇ」
いわゆる逆ナンに気を良くした男はニヤニヤと笑ってティーデの肩に手を回す……が、彼は気付いているのだろうか。後ろをスッと横切った『特異運命座標』ポルカ(p3p010301)が美しい手際で男から何かのマジックアイテムをスリとっていたことに。
ポルカが『成功』の合図を出すと、四人の男女が酒場へと入ってくる。
「『年貢の納め時』――のようだな」
怪盗リンネとして現れた『表裏一体、怪盗/報道部』結月 沙耶(p3p009126)は、何枚かの写真を扇状に広げてから男のテーブルへと投げた。広がる写真に、彼は自分が所蔵していたいくつかのマジックアイテムが映っていることに驚愕する。幻想のスラム街で暴力支配を行っていた彼。そんな彼の財宝を見つけ出すためのキーアイテムである。
「意外か? この怪盗リンネにかかれば多少の鍵などこの通りだ」
ガタッと立ち上がる周囲の男達。
が、『新たな可能性』アンケル・ユルドゥズ(p3p009578)がそれを牽制するようににらみ付ける。
「おうおう、こういう仕事を待ってたぜ。こんなんでもパンドラっつーのが溜まるんなら、大義名分もバッチリだしな」
無銘の双剣を構え、にやりと獰猛に笑うアンケル襲いかかってくる男のひとりを剣で切り伏せると、『天邪鬼』神無月・明人(p3p010400)がタイミングよく別の男を殴り倒した。
「よぉドサンピンのクソチンピラども、ゴキゲンかい。俺ぁオメェらのツラが見れてすこぶるゴキゲンだぜぇ?
お天道様に顔向け出来ねえようなきったねえツラしたオメェらにプレゼントをくれてやらぁ。
オメェらにはもったいねえ金物(鉄拳と大剣)だ、泣いて喜べってんだ、くかかっ!」
そんな様子になるほどなと頷く『ブロークンフォリア』コルト・グズマン(p3p009494)。
「確かに、こういう場面は俺に依頼するのがピッタリかもな」
感情を消したような顔で、コルトはボスらしき男へと急接近。
刀剣を抜くと、男の腕を切り落とした。
吹き上がる血と悲鳴。
「貴族も手を出せない悪党を抹殺し、財を奪ってまき散らす……か」
その流れで多少自分のポケットに入れても構わないときた。なんとも愉快な『悪党』ではないか。
拾いお屋敷をぱたぱたと歩く『ダーティ・ローズ』ポムグラニット(p3p007218)。
彼女が受けた仕事は貴族の屋敷でのメイド業だった。
どうも、メイドたちにまとめて有給休暇を与えたいという領主がその間の館の世話をローレットに依頼してきたらしい。
こういう仕事もあるのね、と洗濯物の入った籠を置く。
すると、キッチンで料理をする『特異運命座標』ミレイ フォルイン(p3p009632)の姿が目に入った。
「今日はカレーよ。得意だって言ったら、ぜひそれを作ってくれって」
存在に気付いたのだろう、ミレイが背中越しに語りかけ、そして振り返る。確かにただよってくるのはカレーのいいにおいだ。
隣で別の料理を作っていた『舞い降りる六花』風花 雪莉(p3p010449)が顔を出し、手を振る。
「もうすぐご飯が出来ますから、預かっている子供達を呼んできてもらえますか? 今は畑の周りで遊んでいると思います」
言われて見に行ってみると、確かに屋敷のそばにある畑でアルミネス・トバクルス(p3p010365)が子供達に作物の育て方を教えていた。
「伊達に歳はとっておらんよ、どれ貸してみい」
ドラゴニアの彼にとって幻想の作物は珍しいようだが、長年培ってきた地質学者としての知見や農業への技術はどこへ行っても通用するらしい。
それはノウェル・スノウドロップ(p3p010494)にとっても同じだったらしく、
「なんでしょう、岩とか木みたいなのでできた住まいみたいなのがずらっと並んでいてすごく同じ世界とは思えないっていいますか……」
「ふぉふぉふぉふぉふぉ、空中庭園を使えばいつでもデザストルには戻れるじゃろう?」
「そうなんですけどね」
ノウェルはよいしょといって重いものを持ち上げると、子供達やアルミネスと一緒に歩き出す。
知らない土地での知らない生活。里の中では出会わなかった人々。
これから自分は、どんな発見をするのだろう。世界を巡る、大冒険のなかで……。
●竜の住まう大地
ローレットが成した偉業は数多いが、その中でも最も新しくホットなのが覇竜領域への踏破だろう。
危険な領域を力尽くで突破し、骨の道を見つけ出し、隠里に認めさせ、ついに亜竜種の里を発見したのだ。前人未踏のこの地を見つけたことで運命が繋がったのだろうか。里の亜竜種たちも次々とイレギュラーズとして空中庭園に召喚され、一部はそのまま王都等で暮らし始めているとも聞く。
「ここが……あの機械だらけの国を襲ったドラゴンたちの住む場所」
『主無き人形』ファルム(p3p007966)はフリアノン近郊のワイバーン駆除に訪れていた。
襲いかかるワイバーンはファルムにとってもなかなか強敵だが……。
(ファルムはこれまで、ずっと真白な部屋で主と二人だった。
主と会えぬようになり、ファルムは一人になった。
けど、今は――『ともだち』がいる)
攻撃を受け止めるファルムの後方から飛び出したのは『つよいおにだぞ』砧 琥太郎(p3p008773)。
「うっひゃー! すげーなすげーな、オレらが見たことない世界!
いつかすげー強くなったら、竜に乗って飛んでどかーん!なんて出来んのかな」
琥太郎は鬼のような棍棒でワイバーンを殴りつけ、一方でひょこんと顔を出した『水底の夢』ルルゥ・ブルー(p3p006410)が傷付いたファルムに涼しげな青白い光をあてた。微発光するクラゲの群れが踊るような幻影に包まれたファルムは、その損傷箇所に優しく触れる幻影によって損傷をじわじわと回復していく。
「空にいっぱいワイバーンが飛んでて、なんだかとってもふぁんたじー。
こたろーがぼくたちを乗せて、空をぴゅーんって飛んでくれる日が楽しみ」
まかせろ! と力こぶをつくる琥太郎。実際ワイバーンでの飛行訓練が亜竜集落で行われているらしく、彼らの夢が実現する日も遠くないだろう。
「それじゃ、いこっか。えいえいおー」
たとえ手強い亜竜相手でも、仲間と一緒なら乗り越えられる。今回のトレーニングの主立った内容こそそれだ。
「カンちゃん、貴方やっぱり強いわねぇ……わたくしがいたら足手まといではなくて?」
「わたしが強い?冗談キツいよアングィス。
わたしは通りすがりの観測者、歴史を観るだけの女。
戦いなんて向いてないの、はい戦闘準備よアングィス」
「いやですわ、わたくしは泣く子も黙るか弱い系蛇竜種の乙女ですのに……オホホ」
『新たな可能性』ダリア・R・アングィス(p3p010484)と『歴史を観る人』カンブリア・フェルグラン(p3p010379)は穏やかに語らい、そして背後から襲撃するワイバーンへと同時に向き直った。
「おんどりゃあ、どっせぇい!!!!!」
後ろ回し蹴り――ならぬ後ろ尻尾蹴りを繰り出すダリア。ナーガスタイルなだけあって太い尾はワイバーンの強襲を一瞬止めるに充分であった。
「それじゃ──行くよ。ドラゴニアぱーんち!」
カンブリアは拳に紫色のオーラを纏わせると、そのままワイバーンめがけて殴りかかった。
細腕からは想像もできないような魔法の衝撃が走り、ワイバーンが吹き飛び地面を転がる。
そこへ追撃にかかったのは『春風と導き』プラハ・ユズハ・ハッセルバッハ(p3p010206)と『新たな可能性』ヴュルガー(p3p010434)のコンビだった。
飛行しワイバーンの注意を引くヴュルガーの一方、側面から回り込むプラハは作り出した虚無の剣で斬りかかる。ぐるりと振り返るワイバーン。
「後頭部を狙ってください! 無理しないでくださいね?」
注意が逸れた瞬間、ヴュルガーはすかさず大砲を構え、ワイバーンの後頭部へと直撃させた。
「亜竜種以外と組むのは初めてだ。そのような戦い方もできるとは驚かされる」
大きくよろめいたワイバーンに、トドメとばかりに『死神小鬼』アヤメ・フリージア(p3p008574)と『いつか貴方に届く弾丸』ミズキ・フリージア(p3p008540)が飛びかかる。
「あわわ…! 亜竜ですか…!? 強くないですか…っ!?
で、ですがそんな相手だからこそ、ヒーラーは必要ですよねっ…!
だから行きます…でも1人は心細いので、ミズキ義姉さん、お手伝いお願いしますっ…!」
「亜竜とは…竜よりランクが下がるとはいえ強敵に違い有りませんよね。
…ですが、コレを倒す経験があればゲブラーさんへ一歩近づけるはずです!
それにアヤメ…義理妹を1人でいかせる訳には行きませんからね!」
ミズキは持ち前のスピードを生かしてワイバーンへと距離を詰めると、その首筋に斬撃を与えた。
最後の抵抗とばかりに噛みつくワイバーンだが、アヤメがカウンター気味に発動させた治癒魔法が傷を即座に治癒。結果としてワイバーンは血を吹き出し、その場に倒れることとなった。
「最後に皆で全力で勝利を祝えるように、誰も死なないように、私…頑張りますから…っ!」
前人未踏の領域というだけあって、この土地では弱小の亜竜であっても手強い敵となる。
練達へと襲撃してきた亜竜たちが弱かったのはそれだけの長距離を遠征することで弱ってしまったからか、あるいはあえて弱い戦力で数を揃えていたかのどちらかだろう。
「であれば――!」
『noblesse oblige』ガーベラ・キルロード(p3p006172)が待ってましたとばかりに扇子を開き高笑いをあげた。
「オーホッホッホ! 覇竜解禁! 我々特攻野郎Bチームもやはり流行りに乗るべきと馳せ参じましたわ!」
それにしても二年ほど見ない間にローレットも成長しましたわねと、当時であればレベルキャップ級にあったガーベラがしみじみしながら扇子をビッと突き出した。
突進してきた巨大な虫型亜竜ゼーベーベがカブトムシめいた角を突き出し、ガーベラの扇子と拮抗するように止まった。
「成程…ここが覇竜…ドラゴンさんがいっぱいな場所なのですか。
…ハクは不謹慎かもですが…ワクワクしてるのです!…果たして亜竜さん達は美味しいのでしょうか?今から興味は尽きないのです!」
チャンスとばかりに『魔眼王』ハク(p3p009806)が死の魔眼を発動。魔眼ビームが放たれゼーベーベの固い装甲をやき始める。
ここぞとばかりに飛び出す『首輪フェチ』首塚 あやめ(p3p009048)と『アイドルでばかりはいられない』ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)。
「クヒヒ! 遂に我々も新領域「覇竜」へ進出ですかァ…亜竜種の皆さんも素敵ですよね、思わず首輪をつけてお持ち帰りしたくなりますよォ…クヒヒ!
さりとて今回の依頼は亜竜の方なので…まあ、ペット枠として見ればイケるかも?」
ゼーベーベが魔法の槍を無数に生み出し放ってくるのをみるや、ガーベラが素早く引いてあやめ&ミリヤムに交代。
「いやいやいや! いくら何でも亜竜とかいう化け物相手にはボクも死ぬから! EXF100以上あっても死ぬときは死ぬから! だからボクを囮役にするのはやめ…い、いやだー!」
「クヒヒ」
交代っていうか、あやめに羽交い締めにされたミリヤムが盾にされたようなものである。
グワーと叫ぶミリヤムをよそに、『子鬼殺し』鬼城・桜華(p3p007211)と『新時代の鬼』小刀祢・剣斗(p3p007699)が同時に行動を開始。
「クハハハ!新天地にて人々の安定の為にも害獣駆除は力ある者の務め!
故にこの小刀祢・剣斗!義によって助太刀いたす!」
「今回は亜竜…ドラゴンが多数生息する地が舞台なのね……いや、本当にいつも思うのだけどキツくない? とりあえず生き残る為にも頑張りましょうね! あたし!」
二人はそれぞれ剣を抜き、ゼーベーベの頭部へと飛び乗ると刀身を突き立てた。
装甲の間に入ったことで痛みを感じたのか、暴れ始めるゼーベーベ。
カブトムシらしく展開した羽根がばたばたと動き、振り落とされそうになる。
が……そこは数が売りのローレット。
「皆様! 一狩り行こうぜ! ですわ!!」
ガーベラの号令によって次々とイレギュラーズたちが襲いかかる。
『龍魔術師』カーリン・ラーザー(p3p010424)と優雨(p3p010426)がこっそりと、そして『みんなの?お母ちゃん』アルフィンレーヌ(p3p008672)が堂々と飛びかかり、『深き森の冒険者』ルカ・リアム・ロンズデール(p3p008462)のメガヒールをうけた『ちがうんですこんなはずじゃ』赤羽 旭日(p3p008879)が持ち前の機動力でライフルを撃ちまくる。
まさかこんな場所に足を踏み入れる日が来るとは思いませんでした。ローレットって凄いんですね。帰ったら家族に自慢出来そうです」
「集団行動だから危険は少ない。こういうときこそトレーニングだな。しっかり鍛えよう」
「あんまり戦闘は得意……好きですが、得意かと言われると疑問ですわね」
更に『物理型お嬢様』碧紗(p3p008350)と『無星』Nil・Astrum・Fine(p3p008413)が交代し、Nilの治癒支援をうけながら碧紗が殴りつけ始める。
『新しい土地が出てきたと言うか見れるようになったらしいから観光がてらお手伝いに行こうか?』
「………」
『もちろん、危ない事になりそうなら逃げようね』
リリア=リザイア(p3p010432)が空へ飛び上がりレッドニードルをたたき込むと、『力いっぱいウォークライ』蘭 彩華(p3p006927)が狐を変身させたような刀で白黒華麗な二段斬りを繰り出す。
「殴る戦い方なのでフォローしてくれたら嬉しいかな。さぁて、ぶっ飛ばしていくよー!」
「イヤー! 必殺、二段斬り!」
『お嬢様の恋人』奏多 リーフェ 星宮(p3p008061)は側面からの魔術を連打し、風花(p3p010364)は同じく側面からとった射線で矢を放つ。
「普段海洋や幻想から出掛けるつもり無いのだけど、ちょっとぐらいは他の地域の治安維持ぐらいはしたいね。どんな世界なのかも見ておこうか」
「防御を貫く私の矢。一芸特化でもなかなか痛いですよ」
あまりの猛攻にぐらりと揺れ、そして地面へと着地するゼーベーベ。
「亜竜退治、よくわかりませんが、しないよりした方がいいのでしょうね。でしたら細腕ながら私も力を尽くします」
「皆さんが無事に今回のトレーニングを終えられるように……お手伝いをしていきたいですね」
「新たに来られるようになった秘境、と言う事だけど……なるほど。なかなかどうして、楽しそうなところじゃないか。ボクは気に入ったぞ」
さらなる魔法の矢を乱射するゼーベーベに対して『特異運命座標』田・源内(p3p010496)と『妖精医療』ヴァールウェル(p3p008565)の回復支援がはしり、ミシェリア・レーヴェル(p3p008271)が飛びかかり鋭い斬撃をたたき込む。
そこへロレイン(p3p006293)渾身の魔砲が放たれる。
「これからの障害を乗り切るために……相手にとって不足はないわ。覚悟!」
「今いきますよ!! 待っててください亜竜さん!! 討伐隊の波にのって突撃! 乗り遅れるなこのビッグウェーブに!!」
「向こうじゃ竜なんていなかったからな。
亜竜とは言え竜とやり合えんのはおもしれーじゃん。
そのうちマジのドラゴンともやり合ってみて―とこだけど。さすがに無茶か」
流石に破壊されてしまったゼーベーベの側面装甲。そこをつく形で『泥沼ハーモニア』ウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)のソーンバインドが発動し、豪速で突っ込んだ『特式空戦機巧少女・甲型』ルビィ・コランダム(p3p009743)の剣が突き刺さった。
装甲が落ち、薄青色の血が吹き上がる。
しかしここで油断してはならない。手負いの亜竜を侮れば、殺されるのはこちらだ。
「人数も多いですし、依頼の危険度もそれなり……ですが、未知なる場所には未知なる危険が潜むもの。油断せず、万全を期して挑みましょう」
ネフェルティ(p3p010259)が相手がさらなる勢いを増して放った槍による雨を広域治癒魔法を展開することでカバー。
「人数が多くとも、いえ、多いからこそ偏りというものは生じますから。
ケガ人を出さないよう、微力ながら努めましょう。
後にこの一歩が、良き思い出となりますように」
『灰色の女』グレイ・レディ(p3p007297)は8.8 cm大口径短身砲を構え、鋭くD・ペネトレイションを発射。
「故郷でも、狩りする。まかせて」
装甲のない肉を撃ち抜いた弾が反対側から突き抜け、『新たな可能性』シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)はゼーベーベが逃げないようにと真上からの打ち下ろしを開始した。
「獲物変わる、やり方も変わる。色々、教わりたい」
暴れ、猛攻から逃れようともがくゼーベーベ。
『流浪の“犬”客』安宅 明寿(p3p004488)と『電ノ悪神』シャスラ(p3p003217)がそれぞれの武器をしゃらりと抜いた。
「新たなる種がともに戦うようになったのは感慨深い。世界が一つになるのであれば、なおさらだ」
「畑が荒らされるなどとも聞く、それは特に見過ごせん。食というのは大事だからな!」
見るからに犬顔の侍である明寿と人造竜であるシャスラが並ぶとその対比は凄まじい。二人の交差する斬撃はゼーベーベを押さえ込むに充分で、『もふもふハンター』リカナ=ブラッドヴァイン(p3p001804)はそこへ思い切り殴りかかった。
そして……すぐ後ろをてってこ走って逃げていくふわっふわの毛皮がはえたダチョウのような亜竜へと飛びかかる。
殺気? かと思われたがリカナは素早くもふもふしはじめた。
「モフモフ、モフモフ……我がギフトは覇竜にも通用する……!」
敵となる亜竜は多く居るが、なかにはこうして品種ごと改良された亜竜もいる。根本的に共生の難しい生物なれど、うまく付き合っている部分もなくはないのだ。
さて、と『薬師』紲 冥穣(p3p010472)と『渇望』ショゴス・カレン・グラトニー(p3p001886)が弱ったゼーベーベへと歩み寄る。
「さぁて、子供たちが楽しく旅行している間におじいちゃんがなるべく頑張っておかないとね」
(火炎と蹂躙を撒き散らす忌々しい存在め。憎い、嗚呼肉い。骨髄までしゃぶり尽くして喰い散らかしてやる。本能の侭に、冒涜的に! テケリ・リ、空腹で愚生の腹に穴が開きそうだ)
ショゴスはその冒涜的なまでの力によってゼーベーベへと襲いかかり、粘液で喰らい始める。
一方の冥穣は抵抗しようとするゼーベーベの攻撃を霊体の蛇で打ち払うかのように治癒魔法を放った。
こうして、一方敵な蹂躙を行えるはずの強力な亜竜が、逆に一方敵に蹂躙されるという状態が発生したのだ。
覇竜領域は弱肉強食。
それは個体では劣る種であっても上位種を喰らうという事実にも現れる。
●亜竜祓い
「フリアノン周りでの依頼をローレットとして受けようと、『亜竜祓い』というチームを組んだが……」
『霞流陣術士』霞・美透(p3p010360)は腕組みをして前を見て、20を越える亜竜の群れに目を半眼にした。
「多すぎないか」
隣では綾辻・愛奈(p3p010320)が同じように腕組みをして並び、肩をすくめてからちらりと後ろを見る。
「まあそれは、こちらもですが」
ザッ――と数えて35名。ひとつのチームとするにはあまりに多くのメンバーがここに会していた。
ローレットでは『まれによくある』大規模チームである。
二人は前へ向き直り、そして構える。ワイヤーを展開した愛奈は神秘の光を宿し、ワイヤーを蜘蛛の巣のように張り巡らせる。
まるで盛りのように突き立った岩が並ぶフリアノン郊外の岩場。
突っ込んできた飛行ワイバーンの一体が網にかかり、残る数体が同じく網にかかった所で美透が杖を突き出した。
「霞の陣術、お見せしようか……!」
空中に投影された無数の魔方陣がダイヤルでも回すようにカチカチと複雑に回転し特定の位置で合わさると、足元を中心に広がった『二重強化命脈陣』が仲間達へと付与される。
数の利が生きるのはこういう時だ。
「竜と戦えるってのは本当か? 俺自身別に命知らずってわけじゃねぇが珍しい相手との戦闘経験は積めるだけ積んでおいて損は無しってな。よろしく頼むぜ」
「さて、初めてくるところではありますが……ふむふむ」
『魔王やめました』マーギ・ピルツ(p3p010087)、『謎と闇』レーツェル=フィンスターニス(p3p010268)、『天嬢武弓』フォルテシア=カティリス=レスティーユ(p3p000785)、『砂漠の冒険者』テリオス=スィスィア(p3p009396)の四人が一斉に行動を開始。
「ビギナー……の中ではまぁ比較的場数はふんでるほう、だと思う。たぶん。
まぁだからといって「戦い方を教えてやる!」とか胸張って言えるほどではないんだけどもね」
加えて『大空の支配者』メリッカ・ヘクセス(p3p006565)が網にかかったワイバーンたちへチェインライトニングの魔法を放つとテリオスの槍がワイバーンの腹へと突き立ち、フォルテシアの魔法がワイバーンの頭部を撃ち抜いていく。
「フフ、楽しめる相手だと良いのだがな?」
更にレーツェルのショットガンブロウがもう一体の頭部をはげしく揺らし、ピルツの魔砲が撃ち込まれる。
そうしてワイヤーの網から飛び出した『トキシック・スパイクス』アクア・サンシャイン(p3p000041)はワイヤーからなんとか逃れたワイバーンへと『イノセント・ディフェンス』の魔法を解き放った。魔力障壁を巻き取って作ったような槍がその強固さをもってワイバーンを貫く。
「せっかくだから来たかったのよね。別に観光気分ってわけじゃないけれど、足を運んだことの無いところだし」
「覇竜でモンスター退治か。こういう公然と暴れられる機会は俺には持って来いだ。存分に力を振るわせてもらうぜ」
『切り裂きジル』ジルベール(p3p010473)はそこへ両手から放った複合魔術をたたき込み意識を奪うと、そのままぐったりとしたワイバーンを地面へと叩きつける。
『孔雀劫火』天城・幽我(p3p009407)はその上を飛行によってとびこえ、同じく飛行によって食らいつこうとしたワイバーン二体めがけて青藍色の炎を広域展開。稲妻のように走った炎がワイバーンたちへとからみつく。
「強化を受けられるのはありがたいね」
そこだとばかりに放った魔炎の矢がワイバーン一体の頭部を貫き命を奪い、『花咲く龍の末裔』咲花 イザナ(p3p010317)が落下するワイバーンを足場に跳躍すると大きく旗を掲げ自らの姿を敵に見せつけた。
(小生も龍の末裔であるから、興味があるのだ。幸い、亜竜種の者達も多く居る)
キッとにらみ付けると、ワイバーンたちもイザナを睨みその身体を食いちぎらんと迫った。
集合するというのはそれだけで隙だ。岩陰から岩賀へへと移動していた『豪放磊落』呂・子墨(p3p010436)は強力な亜竜の骨からできたという大型ライフルを構える。
「腕が鳴るぜ――弱ってるヤツ狙って楽しいか!? あぁ!?
強いヤツ狙えよ! 俺はここだ!」
叫びと共に放たれた銃弾は見事にワイバーンの一体の目を撃ち抜き、悲鳴をあげて暴れた個体へと巨大なニワトリこと金剛梵天丸が飛びかかった。
「よぉし! 今回もお仕事頑張ろうね! ぼんちゃん!」
背に跨がる『鶏ライダー』滋野 五郎八(p3p010254)は至近距離まで迫ったところで梵天丸へ魔法を注入。目も覚めるような咆哮(鳴き声)と共に黄金の光線が放たれ、ワイバーンを貫いていった。
「ふふっ…こうやって、色んな人と連携を取りながら戦うのってワクワクするよね!沢山の仲間がいるんだー! って感じ。さあ! 悪い子だーれだ!狙いうっちゃいますよ〜!」
味方が連係攻撃によって落とされたことを察し、ワイバーン二体はキッと近くのイレギュラーズへと視線を移し牙を剥く。が、その判断は遅すぎたと言わざるを得ない。
岩を駆け上がり跳躍した『それいけ柔道オクトパス』コータ・ヤワン(p3p009732)ががしりとワイバーンの鱗を掴み、翼や身体の動きをそのまま利用した体捌きによって相手の身体をきりもみ回転させる。
「身体の大きさにかまけていると、こうなるぞ!」
コータは器用に空中で調整をかけると、ワイバーンを顔面から岩肌へと叩きつけ離脱。ぴくりと動いたワイバーンめがけ、『大空を翔る』藤宮 美空(p3p010401)の魔術弾が見事に炸裂した。
「これが私のローレットでの初仕事ですわね!
単身で討伐、と言うのはまだ無茶ですがこれだけ居るのでしたら――!」
ピッと指を別のワイバーンへ向け、自らは翼を広げて空へと飛び上がる。
「早速ですが故郷に錦を飾らせてもらいますわ!」
範囲強化スキルはその人数が多ければ多いほど、そして対象者のレベルがある程度低いほどその相対効果は高い。
つまり、今にうってつけの作戦なのだ。
「豊穣で鬼人種が仲間となって今回は覇竜での亜竜種が仲間になるとは。
竜たちの練達侵攻を防いだ甲斐があった……ということなのですかねー?」
『鋼鉄の冒険者』ココア・テッジ(p3p008442)はライフルの狙いをドレイクという四足獣型亜竜へつけると撃ちまくった。
「すごい…ここが覇竜領域!
先輩方の尽力で新しく踏み込めるようになった前人未踏の秘境!
うわぁ! そんな場所にこれるなんて感動しちゃいますね!」
『純真無垢』メリッサ エンフィールド(p3p010291)はそうしてダメージを与えたドレイクめがけて翼を広げながら距離を詰めると、真正面から『エメスドライブ』を発動。突き出した両手から走るプリズム光がドレイクをまるでトラックではねたかのように吹き飛ばす。
なんとか起き上がろうとするドレイクだが、高所の岩場へとのぼりクロスボウの射線をとっていたアンリ・マレー(p3p010423)がその頭部へと狙いを付ける。
いや、狙っていたのはそれだけではない。予め仕掛けたトラバサミがドレイクの身体にがちりとくいつき、一瞬だけ動きを止める。その一瞬があれば、アンリは相手の脳を破壊できた。
「……」
頭に矢が突き刺さり力尽きるドレイク。
が、ドレイクはこの一匹だけではもちろんない。
残る数匹が一気にこちらへと迫るさまは、人によっては失神ものである。
「うっわー……なんとも凄い数で、壮観だねぇ……。
でもそうだよね、私も晴れてローレットの一員になったんだもん。
こういう風に団体行動や、連携ができるようにならなくっちゃいけないよね!」
『嶺上開花!』嶺 繧花(p3p010437)は紅蓮之竜甲をスッとなでると、突き出した片手を開く。
迸る炎のオーラが迫るドレイクへと放たれ、その顔面へと炸裂した。
怯むのは一瞬。そしてその一瞬で距離を詰めた『一歩ずつ』ザハール・ウィッカ・イグニスフィア(p3p008579)。
手にした槍でその頭部を思い切りなぐりつけた。
「なんかちょっといい武器を手に入れたから試し切りしにきたぜ、ヨロシクな!
俺も去年はまだまだぴっちぴちでな…あんま無茶し過ぎない程度に頑張れよな!
駆け足もいいが、息切れしていいタイミング逃しちまうと勿体ないからな!」
槍からはしる反動に『いって!』と顔をしかめるザハールだが……。
「心配はいりません」
『蛇霊暴食』セレステ・グラス・オルテンシア(p3p009008)が『スケフィントンの娘』を発動。魔法の奔流がドレイクたちを包み込む。ウオオと叫んで飛び退いたザハールを巻き込みかけて。
「俺ごとやろうとしたか今!?」
「はは、まさか。私は見守るのが役割ですよ。後方彼氏面というやつです」
「彼氏ではないですよね」
『特異運命座標』白ノ雪 此花(p3p008758)が入れ替わるよにドレイクへと迫り、ドレイクの首を刀で切り落とす。
「ザハールさんの介護も大変なのです。手早く倒さねばなりませんね、私が気疲れで過労死する前に」
集団戦闘のコツは『引く』こと。余裕があってもすぐに引くことでこちらのリソースを潤沢に維持できるのだ。
『特異運命座標』日高 天(p3p009659)と『手向ける血の花』志岐ヶ島 吉ノ(p3p010152)が入れ替わるようにドレイクたちへ接近。剣を抜く。
「このところ依頼に参加出来ていないからな、ここで錆を落としてカンを取り戻すことにしよう。
新しい武器も不吉だが、皆を守る為に使いこなしてみせる!」
わざと浅い踏み込みから剣を放つと、連動した鎖がドレイクへと巻き付き魔力を吸い上げる。複数の鎖がドレイクへ絡みつき二体を同時におさえると、吉ノもまたドレイクの鼻先を刀で斬り付けることで複数の注意を引いた。
「修練となればやはり実戦が最も効果的だろう。しかも、亜竜とはいえ竜退治!!胸が躍るな! 是非この機会に経験を積ませてもらおう。いざ!」
次々に爪で斬りかかるドレイクの猛攻を、刀で縦横無尽に弾いていく吉ノ。
「ふふふ、やはり己を磨くというのはいい!何よりこの緊張感。やはり実戦に限るな」
無論、それは仲間達に攻撃のチャンスを幾度も与えることになる。
「ボクらはあちこちに飛べるようになったし、強くなる機会にもなったけど、まずは故郷の安全から。だね!」
『深き森の冒険者』玖・瑞希(p3p010409)は死霊術によって禍々しい弓矢を作り出すと、ドレイクめがけて連続発射。
「世界を救うなんて、大それた事はわからないけど、これが、イレギュラーズとしての第一歩!」
「別の集落の事ではあるが追い立てるのであれば手伝おう。
とはいえまだイレギュラーズとしては成り立ての身、そう強くは無いかもしれぬがそれも修練として挑まさせて貰おう」
そこへ飛び込んでいった『特異運命座標』レオナ(p3p010430)はがっちりと守りを固めながらも骨の剣を振りかざし、ドレイクの胴体を派手に真っ二つに斬り割いた。
それにしてもやはりデザストルで元気に振る舞うのは現地ドラゴニアたちだ。
「ボクもフリアノンの民だからねー。
ここは霞ちゃんにびんじょーして…故郷の為の亜竜退治に行っちゃおうかー!久々の戦闘、頑張っちゃうよん。いぇーい」
『藍染霹靂』藍 瑞冰(p3p010485)はニッコリ笑うとドレイクの一匹を踏み台にでもするように踏みつけて後方へ回ると、宙返りの上下反転中に爆弾を投擲。爆発を背にくるりと着地してブイサインを出した。
二匹ほどのドレイクがうなりをあげてにらみ付けるが……。
「今の俺の攻撃が亜竜に届くかどうか、その試金石とさせてもらうぞ」
『靡く白スーツ』コルウィン・ロンミィ(p3p007390)が構えた対戦車砲から放たれた砲弾が命中。爆発。
「ふむ……亜竜が屯する竜の地か。悪くない。俺向きの土地かもしれんな」
無理に近づこうとしたドレイクを大砲で殴り倒すと、くわえていた煙草を手に取り煙をはいた。
余裕さは仲間への信頼であり。勝利への確信である。
後方から迫るドレイクを、横から『自称まっどさいえんてぃすと〜』宇喜多 那由多(p3p008295)の魔術砲撃が撃ち抜いていく。
「新しい国だ~。なら、探検しなきゃいけないよね」
倒したドレイクをかるくつついてから、流れ出る血を瓶へととる那由多。
そこへ、ひときわ巨大なドレイクが出現した。
全長にして5mオーバーといったところだろうか。真っ赤に燃えるような牙をした四足獣型亜竜。通称レッドファングである。
「ネームドの登場とは、珱・琉珂のルァイヴァル(自称)であるこの『(自称)姫』劉・麗姫(p3p010422)の初陣に相応しいですわ! オーホッホッホ!」
およそ何十回と練習したであろう高笑いをあげると、麗姫はグッと拳を握った。
「喰らいなさい、華麗なる――姫拳(ひめなっくる)!」
まさかの顔面へのパンチに思わず驚いたレッドファング。
しかし怯むことなく腕をふりはたき落とそう――とした所へ『死にながら息をする』百合草 瑠々(p3p010340)が思い切り割り込んだ。
(アァ……めんどくせぇ。少なくとも、ウチが前に出ないといけないって時点でもう嫌だ。
痛いのは慣れたけど、立ち上がるのはもっとめんどくせぇんだよ……)
がしりと、凶悪な爪と巨木のような腕を掴む。
そして、両足で思い切り地面を踏ん張った。
「けどそれがウチの役目だ。ほら、引き付けてやるからどうにかして見せな。新人共」
あろうことか少女ひとりによってなぎ払いを止められたレッドファングは瞠目し、そして喰らうに値する敵であると判断したのか牙をむきくらいつく。
が、それを許す仲間達ではない。
「当たって砕けろということで頑張ってみるしなかないっス!」
『特異運命座標』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)が文字通りの『当たって砕けろ』でレッドファングの横っ面に体当たりをかけた。まるで巨人の拳をくらったかのようによろめくレッドファング。
「話の通じない亜竜さんたちには、集落の周りからお引取り願うぞ!」
「勝手知ったる我が故郷…というにはまだ然程たってはいませんが…慣れぬ場所で動くよりは多少は戦働きできるでしょう…イレギュラーズとなってから感覚が大分ずれている気がしますけどね…それは追々感覚を取り戻すとしましょうか」
『新たな可能性』アンバー・タイラント(p3p010470)がここぞとばかりに跳躍、飛行、高度を稼ぎ、垂直急降下からの大上段斬りを繰り出した。
そんな勝機を逃す『蛟』尹 瑠藍(p3p010402)ではない。仲間の盾役が必要なくなったとみるや素早くレッドファングへと迫り、抜刀。
「叩っ切る!」
速度を乗せた斬撃はアンバーのそれと交差し、レッドファングに鮮血を吹き上がらせた。
大きく叫び、がくりと膝を突くかのように傾く。
「初めて来る場所初めて出会う人、だけどやることはいつもと変わらない、ガンガン撃ってガンガン攻めて行くわよ!!」
そんな光景をまるで途中経過だといわんばかりに、『ガンカタ巫女』昼子 かぐや(p3p009597)は突きつけた二丁拳銃を超連射。
最後の力を振り絞って繰り出された爪をギリギリのところで飛び退くことでかわすと、最後の一発で相手の脳を破壊した。
「昼子神社の巫女が魅せる遠近両用アタッカーの立ち回り、お代はアンタの鱗で許してあげる!」
「どんなに誠実に生きようと、力がなけりゃ奪われたって何にも言えねぇ。元の世界でそう思い知ってから、俺は未だ、戦い続けている。歩みはとめねぇ。何もかも灰に介してやるよ!」
ここはペイト。広く長く続く地下空洞の一角。モンスターアイアンアントの群れがあふれ出たことへの対応として討伐依頼が発行されていた。
『タロットも任せとけ』札貫 リヒト(p3p005002)くわえた煙草から煙をあげて立ち、腕の装置からカードを抜いた。ヘルメットを被った猫のような式神が出現し、特殊能力を発動。炎を纏った狐や火ネズミの式神が代わりに出現し、アイアンアントたちへと襲いかかる。
がら空きになる仲間を守るのは『姉ヶ崎先生』姉ヶ崎 春樹(p3p002879)の勤めだ。
「モンスター討伐が主な趣旨って聞いてきたが……」
突進してくるアイアンアントを分厚い本で受け止めつつ振り返ると、『甘い香りの紳士』朝長 晴明(p3p001866)が両手の指でハートを作ってウィンクした。開いた片目には$マークが浮かんでいる。よく見たらハートの下に『おかね』のサインができていた。
「いい感じに儲けて恩を売っておこうぜ! 覇竜にもサヨナキドリは支店を設けるつもりだって旦那が言ってたからな」
「亜竜を売ったら金になるのか?」
「そうじゃなくて! ……あ、売れるのか!? やっべここ未開地じゃねーか歯の一本ですら高値がつくぜ!」
パネェといいながら光翼乱破する晴明をよそに、『鋼の咆哮』ヴァトー・スコルツェニー(p3p004924)は『そう都合良くいくかな?』という顔をしながらも銃を構え、紫色のスパークを放った。アイアンアントめがけ連射。固い装甲を撃ち抜く弾が何匹もの敵をとめる。
「俺は人類を補完・飼育するために作られたアンドロイドだ。この度その保護カテゴリの中に亜竜種をインプットした。今後は俺も、覇竜での活動を開始する」
射撃を終え、味方に警告を発した。自分の攻撃によるものではなく――『バミ張りのプロ』クロサイト=F=キャラハン(p3p004306)の魔法詠唱が完了する合図だ。
(追いつきたい相手がいるのです。サポートしてやるなんて大口叩いて、あっという間に追い越されて、宿命の敵と戦う彼に、何もする事が出来なかった。……本人には知られると癪なので黙っていますが)
クロサイトは解き放った魔法でアイアンアントたちを氷漬にしていった。
「さぁ、貴方の嘆きを聞かせてください。それが私の糧となり血肉となるのですから」
一方こちらはウェスタ。ピシュニオンの森へ至ることは(死ぬので)無理だが、湖まわりの亜竜と戦う依頼はいくつも発光されていた。
「どんな集落のそばにも暴れん坊というのはいるもんだ。こらしめてやらないとならないね」
杖を翳して魔法をとなえる『白眉の獣竜』呉・英朋(p3p010410)。
作り出された魔法の弾が次々とジャイアントトードへと飛んでいく一方、『黒狐はただ住まう』生方・創(p3p000068)がもふもふとした腕でもって殴りつける。
「英朋さんは魔法使いだからトドメはそっちに任せる。よーく狙って撃ってねー」
二人のコンビネーションによって派手に転倒したジャイアントトード。そこへ巨大なイモリ型モンスター、マッドサラマンダーが出現した。泥を魔法によって硬質化し、弾丸のように放つ亜竜だ。
(『心身を鍛え強い男になり、可憐な花嫁と手を携え集落に戻り、族長となった暁には皆を守る』……夢を叶えるための第一歩としてまずは)
そこへ勇敢にも踏み込んだのは『特異運命座標』暁明(p3p010468)。
戦いを挑む暁明を手助けするように二丁の魔術回転式拳銃(マギリボルバー)が唸る。
『ふわふわな嫉妬心』エンヴィ=グレノール(p3p000051)による連射だ。
はっとして振り返る暁明。
「そこなる乙女。俺様は暁明という新人だ。よかったら名前を聞かせてもらえないだろうか」
「えっと…エンヴィ=グレノールだけど…」
私に聞いてるの? という顔でこたえるエンヴィに、暁明はどこかうっとりとした様子で目を閉じた。
「グレノール嬢…良い名だな」
なにか運命を決めたような様子があったが、エンヴィはわからず首をかしげた。
一方戦いは続く。マッドサラマンダーのマッドガトリングをうけながらも、『輝きを目指して』ダリル(p3p009658)はぎょろりとした目から魔法の砲撃を発射した。
「竜じゃと!? 以前の騒動でも盛大に我を突きおって……あの攻撃はかなり痛かったのじゃぞ! おかげで墜落しそうになったわい! 許さん! 我がしかと追い払ってくれようぞ!」
「あー、あのときはヤバかったな」
『知識が使えない元錬金術師』緋翠 アルク(p3p009647)は最近調合法を『再発見』したポーションを飲み干すと、空瓶を丁寧にサイドバッグへしまい代わりに剣を手に取った。
亜竜という存在は初見でずいぶんと驚かされたが、こうしてデザストルに来てみると珍しさも薄れていくというもの。
一般的なモンスターを相手取るような感覚で距離を詰め、剣を突き立てる。
彼らがこうして敵の猛攻を気にせず戦えているのは勿論仲間の力あってのことだ。
「こういう機会があるのは安心できますね。
前回練達の一件で私は「戦うこと」を忌避していました。
けれど避けられない「戦い」はきっとこれからもあるはずです。
その時後方でただ無事を祈るだけではなく、私自身の手で仲間を守りたいです。
が…今はまず戦いの基礎を覚えるべきでしょう」
『特異運命座標』レナート=アーテリス(p3p010281)は仲間が攻撃に集中できるようにと治癒の魔法を唱え始める。レナートの送り込んだ治癒の力が相手のダメージに勝れば、それは決定的な防衛として機能する。
そして、『未だ遅くない英雄譚』バク=エルナンデス(p3p009253)だ。
「見果てぬ地、覇竜。
フリアノンにペイト、ウェスタと複数の集落もある様子。
他の集落も見る事が出来ればであるが、それにはまず道を開ける必要があるか」
バクは自らに守りの魔法をかけると、それ以上マッドサラマンダーが距離をつめてこれないように体当たりでもするようにぶつかっていった。
二体を同時に魔法の障壁で阻み、がりがりと爪でひっかく力にたえる。
「大丈夫。傷は浅いわ。死なない程度には」
『深き森の冒険者』アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)はそんなバクの耐久をより強めるべく強力な治癒の魔法をかけ始めた。
防御を固める仲間と治癒を行う仲間、そして攻撃を行う仲間。全ての行動が同時に行えるというのが何よりも強みだ。
「ほいほい、亜竜の掃除っスね。
亜竜とかはあんま知らないっスけど、生き物ならやることは一緒っス。
ちゃっちゃと退治しちゃいましょ」
『Sweeper』マルカ(p3p008353)は空になったマガジンをしまい込むと、どこからともなく予備弾倉を取り出しライフルへとこめた。
そしてあえて距離を詰め、マッドサラマンダーの頭と腹にあたる場所へ的確に三点バースト射撃を与えていく。
スフィア(p3p010417)はそこへ素早く射線をとり魔砲を発動。
(見知らぬ顔…見知らぬ場所…住んでいた里が何処なのか、わからない。
フリアノンは違うと思う…多分、小さな所だったと思うし…)
魔法の炎が解き放たれ、マッドサラマンダーを包み込んでいく。
『恩義のために』レニンスカヤ・チュレンコフ・ウサビッチ(p3p006499)はそんななかにあって、ものすごい挙動不審さをみせていた。
「鬼逃げウェーイ! ……う、うぇーい。……だ、駄目かな。やっぱり駄目なんだね。ちょ、ちょっとその、うさねぇ、恥ずかしい。皆と仲良くなれる、よ、ヨウキャ?になりたいんだけど。無理なんだねぇ」
おりゃあと持ち前の素早さを活かしてマッドサラマンダーを蹴りつけるレニンスカヤ。
「こわい! こわい! うーーーーーじゃす!!!」
反撃とばかりに食らいつこうとするマッドサラマンダー。『癒やしの聖歌』クリストフ・セレスタン・ミィシェール(p3p006491)はここぞとばかりに『リバースサンクチュアリ』の魔法を発動させた。
聖域を反転させることでマッドサラマンダーをつつき込み、癒やしとは全く逆の力をもたらす魔法である。その威力は凄まじい……のだが、クリストフは地面からちょっと浮いた状態でずーっとプルプルしていた。たぶんいま小突いたら『アッ』とか言って死ぬんじゃないかと思えるほどのプルプルである。
となれば防御役が肝心。
『魔法警備士 マジカルにーと☆ミラージュごーるど』ベディヴィア・ログレス(p3p006481)がずんと立ち塞がった。
「うぐぐ、働かないと家賃払えんので大家に追い出されてしまうのじゃ。致し方なく出稼ぎに来てみたのじゃg――痛ったい手が!?」
おもいっきり噛みつくマッドサラマンダーを振り回しながら涙目で自分にヒールの魔法をかけまくるベディヴィア。
「まぁ、竜が多い所らしいのじゃが…われはさいきょーじゃからな。竜如きにび、びびったりしないのじゃy――痛ったい脚が!?」
そして場面は変わってペイト。土を泳ぐように掘り進む亜竜、サンドワームによる襲撃をうけたエリアにローレット・イレギュラーズは集結していた。
「機械の修理にきただけなのに……!」
修理中の目覚まし時計やら何やらを抱えて走る『出張修理工房』ルル・ドロップ(p3p000961)。
すれ違うように『老兵は死せず』リョウブ=イサ(p3p002495)と『《力(ストレングス)》』ネメアー・レグルス(p3p007382)がサンドワームに立ち塞がる。
「まさか生きているうちに新天地に二度(豊穣・覇竜)も足を踏み入れることになるとは……長生きはしてみるものだ。と、私の個人的な感情はさておき。
ここでも依頼があるんだね、老いぼれで良ければ手を貸すとも」
「我等がイーゼラー教の布教活動を行うのだ!
我等がイーゼラー教は精神…知性を高め、上質な魂になってイーゼラー様の御許に赴く事が何よりも大切。
では如何にして知性を高めるか?我がたどりついた答えがこれなのだ…破っ!」
ネメアーは全身をパンプアップさせると両手でサンドワームをがしりと掴み、動きを止める。リョウブは『まかせた』と言わんばかりに数歩さがり、ネメアーへの治癒魔法を唱え始める。
なにもこの二人だけで倒さなければならないわけではない。
守るもの、癒やすもの、そして攻撃するものが居れば大抵の場合なんとかなるのだ。
「私、どんな方とご一緒しても、お恥ずかしながら戦っていると周りが見えなくなりますので――」
有閑マダムみたいな雰囲気をした『朗らかな狂犬』イサベル・セペダ(p3p007374)はゆらりと歩くと、その高い身長と秘めたるパワーによって、笑顔のままサンドワームの側面をパンチで撃ち抜いた。
「ほう、良いパワー……」
ネメアー(パンプアップ状態)がにやりと笑うと、とどめとばかりに『翡翠色の小竜』ヴァラァ=A=グラトニア(p3p010406)が『全員伏せろ』と叫んだ。
「魔法全弾ぶっ放すぜ!」
ばちりと空中に生み出された雷の弾。何十個というそれをいっきにサンドワームへと解き放つと、サンドワームは地面にその身体を横たえた。
一方でべつのエリアでは、巨大な百足型亜竜たちが地を這い出現していた。
「こ、此処が亜竜とかが居るという場所ですね…!
なんというか、他の混沌の国とはまた異質な所…!
いいえ、いいえ!
初めての場所で、歴戦のイレギュラーズでも倒せないという竜が出てくるとしても…怖気づいてはいけません…!
私は盾として、此処に来たのだから!」
迫力におされかけていた『愛しき影と共に』カスミ・スリーシックス(p3p008029)だが、気を取り直して突進。百足型亜竜『スチールセンチピート』を押し止めた。
「穴蔵はドワーフのホームじゃわい!」
そこへ『鋼鉄の谷の』ゲンリー(p3p001310)が鋼の斧で斬り付ける。
「穴蔵暮らしで竜退治とはのう。しばらくはこの辺りを根城にするのも悪くないのう」
髭をさすりにやりと笑うゲンリー。
そこへ『紫煙揺らし』シガー・アッシュグレイ(p3p008560)が踏み込み、豪快にスチールセンチピートと切断した。
「ところで、亜竜種って煙草吸うのかねぇ?
煙草に似た何か、は有りそうな物だけど…」
文化自体は伝わっているらしく、煙草の栽培をしている集落や水煙草がさかんな集落もあると聞く。異国の煙草に触れたりこちらの文化を伝えるのも、それはそれで楽しめそうだ。
「それにしても……」
『水晶角の龍』リヴィエラ・アーシェ・キングストン(p3p006628)はどこか嬉しそうに尻尾をぴしゃりと動かし、癒やしの魔法を展開しながらて笑った。
「このあたりはなんだか心が和むわね。似たような角の人もいるし……」
出身世界の『鉱龍』そのものと出会うことはさすがになさそうだが、同様の存在がいてもおかしくはなさそうだ。石を食う竜や亜竜種もまた。
そうこうしている間に『セクシーの魔法』フィノアーシェ・M・ミラージュ(p3p010036)と『鬼看守』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)がスチールセンチピートへと距離を詰めていく。
フィノアーシェは『名乗り口上』で敵の注意を引き受けると、刀でもって攻撃を受け止める。一方でセチアは己の身の堅さを武器に、魔法のこもった籠手で殴りつけた。
「楽しいイベントに行くのも吝かではないけど。
この前の竜騒ぎもあるし、看守としては鍛えたい所なのよねー…」
スチールセンチピートの固い装甲はしかし、彼女のはげしい拳には負けるようだ。ボスンと穴の空いた装甲は、再び二つ目三つ目の穴をあけることになる。
「さぁ、食らいなさい! これが看守の力よ!!」
自慢の装甲を破られ、やわらかい肉体を破壊されたスチールセンチピートがぐったりと横たわる頃、セチアはやりとげた顔でフウと息をついたのだった。
●前へ進む者たちの
豊穣郷カムイグラ。暫しの間魔種による支配統治をそうと知らずに受けていたこの国は、ついには魔種による人間牧場へと変わってしまうかとおもわれたその折を、絶望の海を踏破し現れたローレット・イレギュラーズによって助けられた歴史を持つ。
四神精霊による結界に守られた首都高天京は平和を取り戻し、魔種の廃絶に成功していた。
未だ地方は魔種の被害に晒されているというが、それらを拭うだけの力は残念ながらない。だがそれもいずれは叶うだろうと思えるほど、首都は活気を取り戻している。
「俺も豊穣の出だが端っこの漁師町出身なんでな! 高天京なんざ来たことがねぇ! 平和だなぁここは!」
『大海を知るもの』裂(p3p009967)は杯を掲げ並びの良い歯を見せて笑う。対する『特異運命座標』嘉六(p3p010174)も同じく杯を掲げ、互いにそれを乾杯した。
「お、兄ちゃん行けるクチだねぇ」
「あんたも依頼で飲みに来たのか?」
「まあな、せっかくの縁だ。これからはしご酒ってのはどうだい。
何、金なら気にすんな。俺の奢りにしといてやるよ」
「良い奴だな…そんじゃ遠慮なく!」
こうして新たな縁ができるのも、また活気のよいところだ。
ローレットに課せられた依頼は、実際のところ観光旅行である。
首都の復興が叶っているのかを確かめる意図があるのだろう。
「このお店、前から気になってたんだけどせっかくなら一緒にどうかと思ってね」
それに応えてやってきたのは『一緒の思い出』リオ・ナハト(p3p009475)と二人。
『一緒の思い出』メア・エテル(p3p009474)と、その後ろからちらりと顔をのぞかせる『いつか兄様と』シエル・アトラス(p3p009444)である。
「確か前に海洋で一緒に砂のお城を作った子…よね?」
それに気付いたメアが振り返ると、おずおずとシエルは頭を下げた。
「あ、こんにちは。たしかメアさんとリオさん、でしたよね」
「あなたもこのお店が気になるの? もし一人で入りづらいなら私達と一緒にどうかしら」
「ここはあんみつが人気らしいけど、他のものもすごく美味しそうだ。
俺がご馳走するから、遠慮せず好きなものを選んでほしいな。」
「ご一緒して良いんですか? …じゃあ…えっと、お願いします」
三人連れだって店へと入っていく。『弟ができたみたいで楽しい』と笑うメアやにこにこするリオ。つられて笑うシエル。
店には他にもローレット・イレギュラーズが立ち寄っているようで、『名高きアルハットの裔』アルハ・オーグ・アルハット(p3p010355)や梅・雪華(p3p010448)も店の味を楽しんでいる。
(お祖母様は「人との絆は求めるものではない、出会うものだ」と言われておられたな。
ならば――わらわもまた、ただの通行人(みちゆくひと)として、栄える街を通り過ぎよう)
あとからふらりと入ってきたシッコク(p3p010498)が店の中を覗き込み、ぽつりと呟いた。
「そう……「闇」の先輩が……どこかに……。
どんな方かしら……でも「闇」に選ばれているはずだもの。
きっと素晴らしい方に違いないわ……」
そんなシッコクの後ろを通り過ぎる二人組。
『禁忌の双盾』阿瀬比 瑠璃(p3p009038)と『禁忌の双盾』阿瀬比 彗星(p3p009037)。
「『既にある程度復興が進んだこの街を歩き過ごしやすさを確かめたり旅の感想を求めているようです』…ねぇ。
鬼である私達にとっては、それは最悪に等しいのだけれど。
…いや、少しは変わったのかしら?
それを確かめに一緒に歩きましょうか、彗星」
「そうだね、瑠璃。一緒に行こう」
実際に首都を歩いてみると、町の人々の(特に若者の)視線は柔らかいものになっていることが肌で感じられた。
獄人への偏見が破られたことで、彼らの考えも変わっているのだろう。未だ偏見に縛られた者も少なくないようだが、それが時間と共に消えていくだろうと二人は思えた。
「この役割は獄人しか出来ないものねぇ…」
「…僕達の故郷なんだ。良い変化があって欲しいと思うよ」
「これが復興支援になるのでしょうか?
依頼や家事をやっているとどうしても毎日が過ぎ去ってしまいます、こうしてゆるりとするのも久々かもしれません」
「こんの住み慣れた街並みも慣れたもんじゃが……まぁええわ。ここ最近は腰を落ち着けて見て回るというもしてなかったからのう。
茜音もイレギュラーズとして喚ばれ……こうしてゆるりとした日も少なくなってくるか。
よし茜音、ちぃとばかし付き合っちょくれ」
「兄様のお願いとあれば喜んで!」
先ほどの二人をすれ違うようにして、唯月 茜音(p3p010256)と『天を見上げる無頼』唯月 清舟(p3p010224)が賑やかな通りへ向けて歩き出す。
いつかは巨大な妖怪たちによって踏み荒らされたであろう商店街はすっかり再建を終え、商魂たくましく瑞髪や四神をかたどった饅頭やら人形焼きやらを販売している。商売繁盛を願ってか飾られた熊手にもそのモチーフがあった。
「普段は見逃していますけれど……こうしてみると」
お土産屋に立ち止まる茜音。
清舟は興味深げに見ていた飾り物をつまみあげると、店主に突き出し財布を取り出した。
「って待ってください! ちゃんと茜音が払います!」
「たまにはええじゃろ。兄らしい事をしたいと思うてもな」
和やかに笑い合う二人。
『我、深川飯を所望する』暁明(p3p010408)と『孤独なオメガ』フロッケ(p3p010194)はその光景にちょっとまぶしそうにしていた。
「オー、突然飛ばされてまるで蜂の巣にくっついたみたいでしたけど、引きこもりには良い刺激だったネ。
引きこもりといえば、カムイグラも最近までは開かれてなかったと聞きマス。通りで他とはチョット違うexoticな魅力でっぷりデス!」
「引きこもり、か。俺もずっと、檻の中が自分の世界だったからこうして広い野外に立ってるだけでも少し不思議な気分だ」
二人は温泉捜しと称してそれっぽい場所を掘る仕事を請け負ったらしい。
「温泉を作るための源泉探しの仕事なんて、初仕事同士には丁度いい」
「丁度良いカナ?」
実際温泉が見つかったかどうかは、さておいて。
『特異運命座標』ラピード・アンストーム(p3p007741)と『特異運命座標』帳守(p3p010412)、そして『自称パッショニスタ』メルバ・サジタリウス・サーペンタリウス(p3p007737)の三人は二階建ての宿の窓から外を眺め、そして画用紙を広げていた。
遠くには天を突くほどの大樹。眼下には行き交う人々。豊穣ならではの景色に、メルバは鉛筆をたてる。
「当方は覇竜でもさらに人の行き来がない場所で長年過ごしてきましたので、このように鮮やかな場所は見たことがございません…なんと美しいのでしょう…絵を描くのは初めてなので色々と教えてくださいね」
「上手いとか、下手とか気にしない!気にしない!何事もチャレンジが大事なんだから。それに、本番で失敗しないためのスケッチで尻込みしてたらもったいない!」
「お弁当はぼくに任せてよ! 豊穣のご飯を真似して作ってみたんだ。中々面白くて作りすぎちゃった」
三人は楽しげに写生大会を繰り広げ……その眼下の道を『死と共に歩く者』辰巳・紫苑(p3p000764)と『イエスマスター』リンドウ(p3p002222)が歩いて行く。
「色んな物を食べてレビューした方が良いという事よね?腕がなるわ…?
…しっかし、リンドウの世界に召喚される前…生まれ育った世界が現代日本だったから
練達の次に妙に懐かしさを覚えるのよね…此処」
チラリと見てくるリンドウ。紫苑は咳払いをしてから、適当な店を見つけて歩いて行った。
「大きさをウリにしてる所は何処かに在るはず。まずはそこを探しましょう、リンドウ」
「イエス、マスター。人形はマスターほど食べれませんので、レビューの為に一口ずつ貰います」
リンドウはメモ帳を取り出し、レビューの準備は万端だとばかりに頷いた。
食べ歩きとは中々楽しいもので、琥珀(p3p010478)やメリーノ・アリテンシア(p3p010217)たちはかなり大勢のグループを組んで食べ歩きレビューに勤しんでいた。
「せっかく豊穣に来たんだもの 美味しいごはんをいっぱいたべたいわぁ!
甘いものもしょっぱいものもたくさんあるととてもうれしいわ!」
もう何件も回っているのにまだ入るとばかりに微笑むメリーノ。一方の琥珀は後ろに連れていた蛍(p3p010479)へ振り返り『迷子になるなよ』と声をかけた。
「わぁ〜っ、すごいすごい! 綺麗な場所だねぇっ! これお菓子なの?鉱石を綺麗にカットしたわけじゃなく?」
手を引かれるままあるき、羊羹屋さんを指さした。
「フリアノンじゃ見ない食べ物だな。……食ってみるか?」
バグ召喚で元から外からの文化流入があったり、ローレットや海洋王国との繋がりでかるい文明開化状態になっていた豊穣には独特な食文化が花開きつつある。和風に整えたカステラなんもそのひとつだ。
「わぁ……おいしそう」
『夢みる子猫』夜影(p3p009454)が大量に袋にはいった鈴カステラをベンチに座って食べていると、横に『洋服屋』ファニアス(p3p009405)がちょこんと座った。
「ファニーは練達で洋服屋をしながら暮らしてるから、それ以外の国に来るのってあんまりないんだよねー!」
その反対側には『特異運命座標』ユーフォニー(p3p010323)が腰掛け、抱えていたミーフィアを下ろす。
「ここが豊穣…この独特の雰囲気、私、好きかもしれません」
どうぞと言ってわけてもらった鈴カステラをぱくつきながら、賑やかな通りを眺める。
「わあっ、これ美味しいです! えっと、なんていう食べ物でしたっけ? 鈴?」
「カステラ」
おそらく同じものが幻想王国とかにも普通にあるかもしれないが、味付けや形や袋の雰囲気がなんとも豊穣風である。
「あ、1個だけどうしても行きたいお店があるんだ~◆ 付き合って貰って良いかしら?」
そういってファニアスが指さしたのは『練りきり』と書かれた看板だった。
「つーか、緑がいっぱいでまず空気からうめぇよな!てことは水もうめぇ。
覇竜の方では植物らしい植物ってなかなか見つからなくてな。へへっ」
流石に草一本ない生活はしていないはずだが、『蟒蛇』洞岡 奏音(p3p010474)のくらす集落は特に岩っぽい場所だったのだろう。新鮮味に溢れた目で風景を眺めていた。
横では『要黙美舞姫(黙ってれば美人)』天閖 紫紡(p3p009821)がなるほどねえといった様子で陶器でできた小さなコップに透明なものを注いでいた。
立ち上る発酵した米の香り。口を付けると喉をスッと滑るように落ち、そして胸の奥で熱をもったように身体をなでた。
「これでお酒を我慢するのは無理ですねー!」
とかいいながら饅頭をパカッとわり、片方にかぶりつく。こしあんである。
もう片方を貰った『特異運命座標』鯤・玲姫(p3p010395)が饅頭をぱくついてから『おぉう』と二度見している。
「こうなってくると、焼き魚行きたいですね。炭火焼きのサンマが……」
「おさかな」
玲姫は首をかしげた。
「玲ちゃんがお魚の料理食べたら共食いになるのかな?」
「さあ?」
「ディープシーには魚食を嫌う人もいると聞くけど……私から見ると完全に別生物よね。魚が歌ったり喋ったりするなら躊躇するだろうけど」
横で聞いていたらしい『炎熱百計』猪市 きゐこ(p3p010262)がフードをちらりと上げる。
膝には三色団子ののったお皿が、手には緑茶のはいった湯飲みが。
この組み合わせが至福らしく、うっとりとした様子である。
「豊穣って元世界の故郷に良く似てるのよねぇ。だからこの国の食べ物は舌に馴染むし偶に食べたくなるのよねぇ……」
前の世界じゃ色々やったわとしみじみするきゐこ。
『暴食のヨルムンガンド』龔・巳華(p3p010363)はそんな話をなんとなあく聞きながら、清酒をちびちびとやっていた。
「ん…折角イレギュラーズになったのだもの…外の世界の美味しいもの…いっぱい食べたいよね…」
ぱっと見小食そうに見える彼女だが、横には大量の皿が積まれていた。
「今日は…付き合ってくれて…ありがとう。
…出来れば…あたしと…友達になってくれる…かな?
…同じ…食べ歩きした仲なら…友達でも…いいよね?」
一緒に食べていた仲間達はきょんとしてから、笑顔で頷いた。
紲家、というものについてここでは説明を差し控えよう。
「わーい、家族旅行だー! いっぱい楽しまなきゃね!」
高天京にある温泉旅館。その一室を『ドラゴニュート』紲 白虎(p3p010475)がぱたぱたと小走りに通り抜け、窓際へと立つ。あのなんともいえない小さくて落ち着くスペースから、外を眺めれば、美しい都の風景があった。
「皆探検に行こうよ!
お庭とか温泉とか!
料理食べたり温泉食べたり!」
「どんな酒があるかなー、楽しみだぁー!」
既に酔っ払っている『呑兵衛』紲 酒鏡(p3p010453)がうっとりと目を瞑ると、後ろで紲・桜夜(p3p010454)が妙な顔をした。途中から歩くのが面倒になって翼で飛んでいたが、むしろそっちのほうが面倒なのではと隣の『新たな可能性』紲 董馬(p3p010456)が首をかしげた。
とはいえそんな時間もほぼ一瞬。すぐに気持ちを切り替えた。
「桜夜ちゃんも、食べるー? はい」
「……ありがとう」
途中で買ってきた団子を突き出し、ぱくりと食べさせる。
「母様。母様。美味しいお菓子もありましたよ。一緒に食べませんか」
同じく団子を差し出されて、『紲一族のお母さん』紲 蝋梅(p3p010457)がおっとりと笑った。
「なぁに、董馬ちゃん? あら、美味しそうなお菓子。良いの?それじゃお茶も用意して一緒に食べましょうね?」
なんていいながら、再び景色に目を移した。
(まさか子供たちと共に特異運命座標になるなんて。
世界の危機とかまだ実感はわかないけれど…。
それはそれとして、皆と旅行なんてとても楽しみだわ~?)
「家族旅行なんて嬉しいね。こんな機会をくれるなんて、感謝しなくては…ほら、愛しい家族たち、楽しもうよ」
別の部屋、荷物を置いたところで『紲一族のお父さん』紲 雨軒(p3p010444)は振り返る。
隣の部屋では蝋梅がそとで可愛いことをいってやしないか心配になったが、どうやらその心配はすぐに無くなりそうだ。女中のひとりが宴会場の準備が整ったことを教えてくれた。
「さて、呑める子たちはお酒でも呑もう。大宴会だ」
「酒だと? ああ、早く言え、お酌ぐらいする。吾輩は茶で良い。他に茶が飲みたいやつはいるか?」
酒と聞いて振り返ったのは紲 月色(p3p010447)だった。放っておくとマイペースに振る舞う兄弟達の面倒をみようと先ほどからあちこち歩き回っている。
「久々の宴じゃけぇのう。ほれ、ちっちゃいのも呑め呑め」
「おいやめろやめろ」
紲 建峰(p3p010471)が豪快に笑い、既に持ってきたらしい瓶を掲げてみせる。
よもや酒を……と止めようとした月色だが、よくみるとブドウのジュースだった。
豪快に見えて気の利く叔父である。
「慣れない土地に来た事で体調崩したりしてる奴はいないか?
はは、その様子じゃ心配いらなそうだな。
なんか見つけたら後でオレにも教えてくれよ」
『特異運命座標』紲 寿馨(p3p010459)は穏やかに笑い、雨軒へと向き直った。
「長旅で疲れたろ。肩もむよ。いいっていいって。オレ、伯父さんの事尊敬してるんだ」
一方旅館の庭では『桜龍』紲 六合(p3p010461)がたったかと走っている。
「おー、庭ひろぉい! 緑があって気持ちいー!
これだけ集まって騒げるんだから家族ってやっぱりいいよね!」
楽しげな様子を、『運命で満たすは己の欲』文・久望(p3p010407)は後ろからのほほんと眺めていた。
(他の里には似たような造りの建物があると聞く。
世界は近からず遠からず、何かの縁で結ばれている。
それぞれ風土も歴史も違うこそ、個性と風情が存在する。
俺には其れを文にする才など無いが、里に帰ったら良い土産話が出来るだろう)
「ところで久望叔父上! 気になるお相手の方は見つかっただろうか!?」
その真後ろから大声でいう『緋を紲ぐ者』紲 暁蕾(p3p010390)。
ぎょっとして振り返ると、同じく出てきたらしい家族たちが後ろから隣から、あるいは二階の窓からのぞきこんでくる。
「是非話を聞かせてほしく思うぞ!!」
いまその話はやめてくれと手を翳す久望に、まーまーと暁蕾が肩を叩く。
うんうんと頷き、家族達の様子を腕組みして眺める紲 煌氷(p3p010443)。
「家族旅行で旅館貸切とは随分思い切ったね、父さん。
みんな楽しそうにしちゃって……」
自分は? と尋ねるような視線を隣から浴び、煌氷は肩をすくめる。
「あぁ、えっと……楽しいよ、自分も」
さあて兄弟達の面倒を見に行こう、などと歩き出す。
今日も紲家は賑やかになりそうだった。
「観光レビュー、デスか。
普段はゲーム実況とかTCG動画とかインドア系がメインデスけど、
レビュー配信とかもたまにはいいかもデスね」
のんびりと豊穣の街並をながめながら、『カードデュエラー』明星・砂織(p3p008848)は大通りを歩いていた。
「復興が進んでるってコトをアピール、ってなるとお店のレビューとかが丸いデスかね。
人気出そうなのは定食屋と甘味処あたりデスね。
あとは着物や反物を扱うお店とか工芸品なんかも押さえておきたいデス」
と、そこまで独り言をしてみたところで、黙ってふっと空を見る。
「……いっそ全部いってみたらいいデスね!」
ということで片っ端から見ていこう!
まず酒場で豪快に飲んでいるジークムント(p3p007318)。胡蝶(p3p009197)はその隣の席で『戦うんは好きやないからなぁ』とちびちびとやっていた。
『特式空戦機巧少女・乙型』サファイア・コランダム(p3p009488)は甘味処の前で『端末に記録して、甘味マップでも作るか?』などと呟いて首をかしげている。
『ライカンスロープ』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)に至っては定食屋で『ごはんと味噌汁』という組み合わせになにか感動を覚えたらしく『これで母様に報告できます』としきりに頷いていた。
『半人半鬼の神隠し』三上 華(p3p006388)はそんな定食屋の香りに誘われ、入るや早々『そこで焼いている魚をひとつ貰えるか?』とものすごくハンサムな顔で注文を言う。
『薬屋さん』不 隠(p3p010362)はといえば、目当ての薬屋を一通りみたあとらしく、満足げに甘味処ののれんを潜った。
店内ではコユキア ボタン(p3p008105)がどこで見つけてきたのか冬牡丹の花を手に甘味をまっていた。どうやら以前友人とみた花を探しにきたらしい。
「こう、なんというかビビってきた国に直接これて嬉しいな!」
『特異運命座標』大豊・恵(p3p010442)はそんなことをいいながら握り飯屋から出てきた。様々な種類の握り飯を売っている店らしく、彼女の表情も満足げだ。
「お土産に持って帰れそうでなによりだな。あとなんか景色が綺麗なとこも知りたいな!」
そう言って歩き出すと、『旋律が覚えてる』ガヴィ コレット(p3p006928)とすれ違う。
やがて夜が更けてくる頃合い。空の色も闇にかわりつつある頃。
繁華街ともいうべき通りにガヴィは入っていた。
予想していたよりも、町の雰囲気はやわらかい。女性が一人で出歩いたところで何も問題にならないくらいだ。
その空気は『探索上手』藤袴(p3p009289)も感じたらしく、早速路地裏散策を始めた。
「ふむ、それならそれでひたすらゆっくりするのもありかの。
そうと決まれば我が同朋たる猫のたまり場でも探すとするか。
猫のいる場所は居心地が良いと相場は決まっておる」
路地をずっとゆくと、案外前からあったらしい豊穣のお好み焼き屋がある。
『よーいどん!』エルディン(p3p004179)は粉物の食べ物屋を探していたらしく、その店へと入っていった。
「そうそう、こういうのを探してたんだよな」
店に入ると、『金剛不壊の華』型破 命(p3p009483)が窓の外の季節ながらの風景をみながらちびちびと酒をやっていた。
「お、先客か?」
「今出るとこだよ。この後旅館で風呂に浸かりながら雪見酒といきたくてなぁ」
といった所で、また表通り。
『鬼ごろし殺し』桐野 浩美(p3p001062)は好みの漬物を探してあっちこっちの店をハシゴしていた。
「うまい酒、うまいうどんがあるなら、きっとご飯に合ううまい漬物見つかるはずっす。
いい感じの漬物を見つけたら、それでおにぎりを作って食べたいっす」
「おいしいうどんはありましたよ?」
たまたま一緒になったらしい『サブマリン小太刀』京極・神那(p3p007138)が、近くのうどん屋さんを指さして言った。
「お昼に食べたんですけどコシが絶品で。あ、きゅうりのお漬物も美味しかったんですよ」
「それっす!」
善は急げと店に入っていく二人。
そんな様子を……『天空の魔王』ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)はのんびりとした様子で横目にみながら歩いていた。
(そういえば豊穣には訪れたことがありませんでしたね。
せっかくの機会ですので一人でのんびりと観光してみるとしましょうか。最近は何かと忙しい日々が続きましたからね、たまにはこういったゆっくりする機会があってもいいでしょう)
豊穣の空気を見ていると『同盟国』を思い出す。あまり食文化には触れられなかったが、ここでならそれが体験できるだろうか。
そんな中でふと目についた姿は、『氷の狼』リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)のものだった。
どうやら頑張った愛弟子に贈り物をするべく、店で品物探しをしていたらしい。
「何がいいだろうか…ああ、この簪というものをくれないか。
深紅の珠をあしらっていてとても好い。あの子の瞳の色だ。
喜んでくれるといいのだが……。
それから俺には…この水色の珠が着いた白い組紐をくれ」
彼女に恥じない師匠でありたい。そんな決意を込めて、買った組紐を手首にまいた。
「いやぁ、何か騒ぎになってたのは知ってたけど、私自身は豊穣って来たことなかったのよねぇ。
まあそういう豊穣慣れしてない人からの感想の方が依頼の趣旨的にはありがたいでしょう、多分」
そう言って、リズィ・ライム(p3p009161)はぷかあっと温泉から肩を出した。
「いいわねーこれ。あとでお寿司食べたいわ、SUSHI! ……あっれぇ、仮にも依頼のはずなんだけど、これ、完全に遊びに来ただけじゃない? 私」
まあそれもアリよねとのんびりするリズィ。
一方で温泉旅館の屋根の上からは、紅華禰(p3p008277)が夜景をながめていた。
「ほうほうほう、復興がかなり進んでおるな。関心関心。
あれほどの大戦があってもなお、ここまで活気が戻るとは…ニャふふ。ヒトとはしぶとくも健気な生き物よな」
鼻をうごかすと焼き魚の香りがする。
ふと目を向けると、『特異運命座標』サビア(p3p010495)が庶民的な通りを歩いているところだった。
サビアは自分にとっても初めての町で、ローレットの一員だからと歓迎されることにむずがゆさを感じているようだった。
(なんだか少し罪悪感を感じなくもないけどね。だってこの歓迎ムードの理由に、僕は一切関わりがないんだし)
とはいえ、感謝をされて無視はできない。心の中でありがとうと言ってみた。
『遅れてきた超新星』リオリオ・S・シャルミャーク(p3p007036)もある意味では同じだ。感謝を向ける先はむしろローレットの側だが。
「聞いた話によると和風?っておさかなの食べ方も独特なんでしょう?
リオリオお姉さんは見ての通り魚人だからおいしい食べ方があるなら教えてほしいのよ」
そんなふうに町の人に尋ねるリオリオ。そんな中で出会ったのは、なんとたこ焼き屋台だった。
「タコ……やき……?」
想像していたのと全然違う丸くて暖かくてなんか青海苔のってる不思議な物体をつまみ、しげしげと眺める。ミートボール的なやつかなと口に含んで、そして突然の熱さに目をしろくろさせた。
『破戒求道者』釈提院 沙弥(p3p009634)が観光としてやりたかったのは、神社仏閣巡りだった。
神が普通に宴会の席に出てくる国である豊穣では、そうした施設はしっかりとあって、そして沙弥が想像するよりずっとゆるい雰囲気だった。たとえば青龍という四神が祭られている神社は巨木の下にあるが、青龍そのものがそこにいるため参拝客たちは思い切り声に出して挨拶や感謝を告げていた。
(水や地質への感謝なのね……この神が管理しているってことなのかしら)
想像していた信仰とはちょっと違う風景になるほどと頷く沙弥。
たまたまそこにいた『紡ぐ者』饗世 日澄(p3p009571)は『なるほどー』とこの地の出来事を聞いていた。聞いていたというか、看板に思い切り書いてあるのだが。
「この地にやってきたウォーカーが四神に気に入られてチートの限りを尽くした結果国になったと。へーえ!」
精霊種の歴史。鬼人種の歴史。偏見やそれが壊れたこと。一通り読んでから頷き、そういえ自分は観光に来たのでは? と虚空を見上げる。
そうして視線をさまよわせると、『自分を失った精霊種』ナナ(p3p009497)が椅子に座って青龍の巨木をスケッチブックに描いていた。
「青い空とか海とか、色々あると思ってたけど……これはすごいね。空に突き刺さりそうなくらい大きな木だ……」
この巨木こそが四神のひと柱である青龍である。木であり、神霊であり、そしてこの地の神なのだ。
描くにはうってつけの題材だろう。
上機嫌に筆を走らせるその横で、『ラッキーキャット』もこねこ みーお(p3p009481)は神社で売っている大福をぱくついていた。
「みーおは甘い物も味わえるねこなので美味しくいただきますにゃ。
あまぁい、幸せもちもちなのですにゃー…!」
どうやらこの辺りは(これだけの巨木があるにも関わらず)日当たりは良好らしい。
日向ぼっこをして昼寝するにはもってこいのスポットだろう。
明日はここでお昼寝して、お土産買って帰ろうにゃあ……などと思うもこねこである。
「いやァ一度でいいから来てみたい所だったんですよねェ、豊穣!」
『探求へ至る好奇』煌・彩嘉(p3p010396)が楽しげに風景を眺め、そして両手を広げた。
「旅のしやすさともなりゃアタシの出番。張り切って観光させて貰いましょうか。
道、街並みの整備環境、人々の生活水準…どれを見ても実に実に興味深い。
ついでに歩いた道は覚えて帰りたいとこですねェ。記憶力はいいんですよアタシ。
後は…観光ってなりゃあその土地の名所って奴ですか。景色のいい所を一つでも見つけて行きましょうか」
やることはまだまだ沢山ありそうだ。
皆の観光レビューが纏まったときには、ここ豊穣の首都はまたひとつゆたかな町になれるだろう。
●はじめてのロレトレ
「ふん、歓迎会なんて気が利くじゃないこの国。
こういう場では交流会をするのが定番って聞いたしアタシが主催してあげる!」
『特異運命座標』秦・鈴花(p3p010358)は高く指を掲げると、広い会場の真ん中で宣言した。
「『はじめてのロレトレ』――始めるわよ!」
ここは練達。つい最近までマザーコンピューターの暴走や真なるドラゴンの襲来によってあやうく滅びかけた国である。さすがというべきかローレットたちによって滅びを免れ、いまこうして復興という、戦闘や破壊とは異なるまた別の難行が始まったわけだが……。
ローレットはいわば救国の英雄。そんな中にあっても慰労され、歓迎される立場なのだ。たとえそれがつい最近デザストルから召喚された身であってもだ。
「ま、同郷なら知ってる顔もいるかもだけど。
アタシは秦・鈴花。フリアノンの亜竜種よ!
アンタ達と交流なんて里の皆は正気なの?って思ったけど、ぱんけーきに免じて許すわ」
蜂蜜たっぷりのパンケーキをリスかなってくらい頬張りながら胸を張る鈴花。
「ああ、秦家の。邪魔しているよ。フリアノンの亜竜、シャールカーニのレーカだ」
軽く挨拶に続いた『ベンデグースの赤龍』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)が、周りの顔ぶれを眺めた。
「覇竜は自己研鑽には良いところだが、いかんせん相手が相手だ……。新天地と相手を用意してくれるローレットには感謝している。先輩方、心躍る武勇譚を、この私に語ってはくれまいか?」
「えっと……私はラビットと言います。こうみえても亜竜種です。よろしくお願いします。すみません……お肉はあんまり好きじゃないんですぅ」
隣では『弱さゆえの強さ』ラビット(p3p010404)が『なので私もパンケーキを』とお皿を引き寄せる。
今更だがこの部屋は30人ほどを収容できる大きなイベントホールである。
椅子はそこそこにあるが、大抵はバーカウンターから軽食や飲み物をとってスタンディングテーブルで向き合うような形式がとられるようだ。
「そうですね……初めての依頼でこういったことができるのは嬉しい限りですね」
そちらは? と話をふられた『特異運命座標』雨涵(p3p010371)が深く頷く。
「わたし、いれぎゅらーずになれて嬉しい。
いれぎゅらーず、憧れてた。
ドラゴンを退却させた、本当にすごい。
先輩達が頑張ってくれたから、わたしたち、今ここでお話し出来てる。奇跡起こした。かっこいい。
わたしもがんばらなきゃっておもった」
やけにカタコトなしゃべり方だが、どうやら雨涵個人の癖らしい。
「わたし、雨涵(ゆーはん)。フリアノン出身。
将来の夢は「あいどる」になること。仲良くしてくれたらうれしい。甘いもの、お肉とお魚好き」
「そうね。お外の世界は見たことないものがいっぱいでとっても楽しいし!
美味しいものとか楽しいものは何でも教えてほしいな! ぱんけーきも美味しいし?」
『宝石ぱくぱく』ユウェル・ベルク(p3p010361)は『紹介が遅れたわね』といってパンケーキから視線を外す。
「わたしはユウェル・ベルク。亜竜種! みんなよろしくー! それで、屋台のクレープが美味しいって話だった?」
「いれぎゅらず、すごいって、話」
視線は先輩イレギュラーズに。つまり『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)たちへと向いていた。
「俺はライ・ガネット。ウォーカーだ。
今は元の世界での呪いのせいでこんな姿になっているが、元は変身能力とかは無い普通の人間だ。
元の世界では冒険者やってたぞ……あ、冒険者って言うのは洞窟や遺跡とかを探索する職業だ。
俺はそういう未知の場所を探索するのが好きなんだ。だから覇竜も気になってるんだよな」
それは同感ですねと、『《Seven of Cups》』ノワール・G・白鷺(p3p009316)がウィンクをした。
「ノワール・G・白鷺と申します。以後お見知りおきを。
基本的にはお仕事……依頼の話を。簡単なものから難しいものまで、様々なものが舞い込んで参りますが……事前に相談し準備をすれば、不安に思う必要はない、ということを伝えられればいいな、と」
などと、苦笑を浮かべるノワールだった。
「自分はジムグリ。ペイトって集落で穴掘って地下で暮らしてたよ。
練達どころか他の亜竜種のこともあんまし知らんから、以後お見知りおきをってヤツ。
他に言う事は……ペイトって所は、まぁ血の気多い人とかたまにいるけど面白いよ。色々掘るし鉱石好きは試しに来てみても良いかも?」
別のテーブルでは『穴掘り』ジムグリ(p3p010369)がジョッキを置いてそう語り始めた。
このテーブルにはドラゴニア以外が多いようで、燦火=炯=フェネクス(p3p010488)は周りの顔ぶれを珍しそうに見ている。
「ここへ来るまで迷ったんだけど……文化が違いすぎて驚きだわ。エスカレーターってなに? 永遠に階段から出られないかと思ったわよ」
『ほよもちクッション魔王様』あい・うえ男(p3p002551)が『わかるー』といってぽよぽよしていた。ドラゴニアたちが外の世界に触れて驚いたのは主にこれだ。ウォーカーという、この世界ではそうそう見ることのない異世界の存在。
「仕事の話、自分もしないとだめかぁ…。
…自分はあんまり行かない…そもそも、特異運命座標って存在するだけで役立つらしーじゃん…。
仕事、やりたいならやればいいけど、無理にやんなくてもいーんじゃない…?
早くても遅くても、自分のペース大事すればいーんじゃないかなぁ…。
生き物って、怠け過ぎたら死ぬし、怠けなさ過ぎても死ぬんだから」
「ウィ〜っく…ヘヘへ…よく来たなあヒヨッコどもぉ!
俺様こそは…ローレットは随一のイレギュラー、ゲンゾウ様よぉ…ヒック…。
ああ…?昼から酒飲んでて大丈夫かだってぇ…?
俺様ほどの立場になりゃなぁ…そんなのは問題になんねぇのさぁ…!」
その隣では『特異運命座標』ゲンゾウ(p3p009219)が思い切りのんだくれていた。
もう一つ驚くのがこれである。ローレット・イレギュラーズに『救国の英雄』や『精強な戦士』のイメージを持っていた者たちにとって、驚くべきハードルの低さである。
当然うえ男やゲンゾウも立派なイレギュラーズだし、イレギュラーズとしての役目を充分に全うしていると言えるのだ。
「ヤダ ソウヤ、長いから「蛇」でいい。
蛇の子だ、だから亜竜の坊っちゃん嬢ちゃん達と近いけど体の形は変わらんよ。
えーっとなんだ、今までの依頼の話?でいいのか?
胸糞悪い話はともかく、この間はさる大貴族の依頼でゲルツ・ケブラーっていう鉄帝の 規律に煩い軍人の眼鏡を割ったりした。多分依頼内容は絶対違ったと思う」
一方で『蛇に睨まれた男』蛇蛇 双弥(p3p008441)が自分達の経験した依頼の話をし始めた。
それに乗じて語り出す『とりかご』葛籠 檻(p3p009493)。
「ふむふむ、実は小生は『はじめて』ではないが、それでも聞き手という役割は必要であろう。
故に小生もこの“はじめて”たる集いに混ざろうかと思うぞ。それに、良い「愛」の話でも聞けたのであれば寄り良いであろうしな!!
小生はガンロン――亜竜種でもなければそもこの世界の出身でもない龍の葛籠 檻という名である。小生は小生の奉じる神がいるが、小生の神と成る存在を探して彷徨うておるぞ!ふふ、しかし安心めされよ。その愛は特別であるがゆえに、すぐに向けなどはせぬ」
そうした話を聞いて、『アラミサキ』荒御鋒・陵鳴(p3p010418)はうっすらと苦笑の声を漏らした。
「しかしオレの世界は狭いな……。
数十年だか数百年だか社に籠りっきりだったせいもあるだろうが。
世の流れ、ヒトの変化を読まねばまた追われる側になる。
……嗚呼、あんな思いは一度きりで十分さ」
目指すべき先を見失わないためにも確りと尋ね、耳を傾けよう。そう心に決め、陵鳴は自分からも問いかけを始めた。
「俺はジン、ペイトの亜竜種だ。
里での生活に不満があったわけではないが、外には前々から興味を抱いていた。この機会を得られたことを喜ばしく思う。
若輩ながら俺も武を嗜む身だ。リヴァイアサンを始めとした強敵との戦いの話など、体験した者がいれば聞かせてくれると嬉しい」
そんな風に切り出したのは、ソファ席に腰掛けるジン(p3p010382)だった。
半円形に合わさったソファと中央のテーブル。すだれのような幕によってホール全体と仕切られた半個室のような席だ。
『元ニートの合法のじゃロリ亜竜娘』小鈴(p3p010431)はそれに続きこくりと頷く。
「のじゃ。妾はフリアノンの亜竜族、小鈴(シャオリン)なのじゃ。
いや、他の場所の集まりだと仕事しろとか、お腹が痛くなる事を言われてしまってのう」
だいぶ働きたくないクチのようだが、それでもいいのがローレットである。
ぎょっとしたジンとは対照的に、周りの反応はむしろ柔らかい。
「元ニートとしては仕事をしたら負けだと思っておったのに、ここに来る前に、仕事をする羽目になってしまってのう……。
ううう、妾は汚されてしまったのじゃ……。
これも小遣い廃止とかいう鬼の所業のせいなのじゃ」
そして、続く言葉にちょっと同情的にすらなっていた。
フフッと小さく笑う『炎の剣』朱華(p3p010458)。自尊の笑みだ。
「フリアノンで暮らしてた連中は知ってるのもいるかもしれないけど、
自己紹介の場って話だから改めて名乗っておくわっ!
――フリアノンの炎の剣とは朱華の事よっ!」
立ち上がり、『ふふっ、決まったわっ!』と会心の笑みでキメた朱華を、全員がじっと見つけていた。
「え? 聞いた事ない……?」
一瞬がくりと肩を落としたが、すぐに復活した。
「こ、これから有名になるのよっ!」
その言葉を否定する者はいない。なぜなら、大体のイレギュラーズがそうだから。神だろうが異界の魔王だろうがレベル1から始まり、時にはスター街道を突如流星の如く駆け抜ける者もいる。
話題は徐々に日常の話へとかわり、席に着いていた『今は未だ秘めた想い』ハリエット(p3p009025)が記憶を巡らせる。
「情報屋さん達にはお世話になってるね。レオンさんは尊敬できるし、ユリーカさんの明るさはこちらも明るくなる。あとは……」
と一度虚空をみつめ、少しだけ真剣な表情になる。
「ぱんつまみれになってることが多いけど、ギルオスさんにも、お世話になってるかな。とても面倒見のいいひとだよ。私の恩人でもあるんだ」
そんな場面に、『ケイオスイーツ』カフカ(p3p010280)が幕を丁寧にはらって現れた。
「呼ばれたならばどこでも参上!どーも、ケイオスイーツです!
とまぁ定型の挨拶をしたカフカ君18歳なわけですな。
新人歓迎会やるって聞いたんで張り切って飯作りすぎたんやけど、こんだけ人数いるんなら足りそうですねぇ」
ローラーシューズでころころと現れた彼はトレーにのったサンドイッチをテーブルへと置いていく。
どうやら届に来たのはサンドイッチだけではないようで、後ろから二人のドラゴニアが現れた。
「私は秋霖・水愛、亜竜種で亜竜集落ウェスタの出身だよ。
ずっと集落の外の世界に憧れてて、こうやって知らない世界を見ることができてとても嬉しいの。
みんなの冒険のお話とか、故郷のこととかいっぱい教えてもらえると嬉しいな」
まずは自己紹介だよと胸に手を当てる『雨に舞う』秋霖・水愛(p3p010393)。
隣にいた『特異運命座標』ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)もその会話に加わった。
「覇竜の外はこんな異文化で溢れてんのか? 全く底知れねぇな!
俺はジェラルド・ヴォルタ。覇竜のペイト出身だ。
刀が外の武器だって知ったのはつい最近だったんだが。
ペイトの武闘と外の流派が合わさり派生した家門の一つ、ヴォルタ家門で刀を学んでたんだ。
俺は弱いヤツ……と言うか、元気がねーヤツを見るとほっとけなくてよ。力になってやりてぇって思うわけ。
それが死んだ母さんの教えってヤツだからな?」
席に着いてた『雨の獣』ラニット(p3p007386)は『なるほど』と頷いて、ジェラルドたちを席に誘った。
「我も召喚されて幾年か経ってしまったが。それ故に、導き手としてこの場に居るのも悪くないか」
ラニットが語ったのは精霊種についてだった。
「精霊種というのは、この世界の自然事象が形を成した存在だ。銀の森という我等の美しい住処の危機を救った君達の先輩との出会いで、我等も世界を救う手や、力を手に入れたいと願ったのだ。
かつて絶望の青と呼ばれた先の豊穣では鬼人種というものに出会い。
幻想の果ての迷宮で出会った秘宝種は、練達の事件以降電子生命体が人工身体に定着した形も生まれた。
そして、今回の亜竜種たる者との出会い。世界は美しく、可能性に満ちているのだ」
対して、国家についての説明を(感想メインで)話し始める『涙の婦警』十鳥 菖蒲(p3p005069)。
「幻想はローレットの本拠点。
貴族イケメンからスラムイケメンまで。
鉄帝は力こそ正義の寒い国。
闘士イケメンの胸板に抱かれたいわね。
練達はここ。研究者系イケメンから再現性東京のリーマンまで。
傭兵はアラビアン。褐色のイケメン傭兵から石油王まで」
指折りして数えながら各国を紹介してから、バッと手を翳す。
「覇竜はこれからイケメン紹介してちょうだい! 絶賛!婚活!中!!!!!!!!」
●スーパー炊き出しタイム
練達ではただただ歓迎されたローレットだが、ただ歓迎されるだけではいられない者も勿論いた。
「具はおかかチーズ、鮭、シーチキン、昆布、塩です。どうぞ、お好きなものを持っていってください」
幌馬車に積んだ大量のお握りを、人々へと配り始める『肉壁バトラー』彼者誰(p3p004449)。
練達の技術力たるや素晴らしいもので、仮設住宅暮らしだった人々も殆どが新築された住宅へと移り住み、元の経済活動へと戻りつつあるらしい。
このあと青空教室へも持っていこうか……などと思っていると、『日々吐血』鏖ヶ塚 孤屠(p3p008743)がからからとワゴンを運んできた。
「重い物とか任せてくださいね。これでも力だけはあるんですから!
よいしょ! ほら、じゃがいもとかなんのそnアッヤバイハキケガ」
口元を抑え、そのまま仰向けにばたーんと倒れる孤屠。
常人なら慌てて駆け寄るが、ローレット的には割と慣れた光景である。
『鮮血の薔薇姫レベル27』トルテ・ブルトローゼ(p3p009759)はミネストローネスープを平然と配っていた。
「皆に感謝され敬われる仕事と聞いて来たのだが?
余は魔王なんだが!なぜ人間共の給仕の仕事をせねばならんのだ!?
は? 逃げる? そんなわけなかろう!
魔王たる余が一度請けた仕事を投げ出すようなことはせぬが!?
やってやろうではないか! 余に不可能などないが!?」
「やっぱりお腹がへったら甘いものですね!
頭には糖分が1番効くんだぜ☆
なのでボクはお菓子を作り振る舞いましょう!お腹が膨れてしまうくらいのたっぷり多くのメガサイズ!」
その一方でパフェやホットケーキといった甘い物をこれでもかと配る『おかし大明神』ロリ☆ポップ(p3p010188)。
「食べよう! たらふく! 満足するまで!!!」
さすがローレット食にはこだわりが強いな……などという反応が変えてくる中、『淑女の心得』ジュリエット・フォン・イーリス(p3p008823)は丁寧に料理を作っては椀にもりつけていた。
「私に今お役に立てそうな出来る事は、趣味で続けてきたお料理を作る位ですから。
今日は美味しいものを作りますよ!」
そうして容易されたのはポトフやミネストローネといった家庭料理である。あったけぇ空気に人々の顔もほころぶというもの。
翠蓮(p3p010273)もその配布を手伝っていた。
「炊き出しね…ま、料理は出来なくても人手はあって困らないだろ。
配膳とか、必要なものを運ぶくらいなら手伝えそうか…。
その方が向こうは料理に集中出来るだろーし、役割分担、ってことで。
……っふふ、美味そうに食ってるなあ皆。 俺もお腹すいてきた! 終わったらなんか食わせてもらお」
(練達も大変でしたし、私も出来る限り復興に力を貸していきましょうっ。
皆さん、お腹が満ちれば元気が湧く物です! 一杯食べてくださいね!)
微笑む翠蓮の一方で、『聖なるかな?』アザー・T・S・ドリフト(p3p008499)がなんかマイナスイオン的な? あれ? を? 頭の丸いアレなんていうあのわかんないあれ、あれからぽわーっと発していた。
「人の手は幾らあっても足りないでしょう。そんな訳で炊き出しのお手伝いに参加したいと思います。この腕も器用に動かせるのです。えっへん」
ローレットが炊き出しをしたというのでとんでもない数の人々が集まっているが、料理の方はどうやら問題ないらしい。なぜなら……。
(練達では以前の襲撃もありましたし、復興の何かお手伝いになれば。
機械やドローンもあるとはいえ、人手は必要でしょうしその方に対して僅かでも微力となれるならば)
『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)が腕まくりをしてサンドイッチを丁寧に、そして沢山こしらえていた。
「R.O.Oの一件が落ち着いたと思ったら亜竜とは、練達も休む暇がないな。ま、多少の手助けになるといいが」
その隣では朔(p3p009861)が寸胴鍋で温まったスープをゆっくりとかき混ぜ、小皿にうつして味をみていた。
「あとでお茶をいれて、休憩を取りましょうね」
「そうだな。皆忙しいだろうけど、冬でもしっかり水分補給すること。体調管理は気をつけないとな」
賛成だねぃと言って『魔性のちっぱい』リルカ・レイペカ・トワ(p3p007214)が別のテントから現れる。
「小ぶりなチョコチップクッキーをたくさん焼いてきたのよさ!
糖質は早くエネルギーになって効率もいいし、喜んでもらえるといいだわさ。
あとは携行品の食糧でお汁粉でも煮るのがいいかねぃ。
あったかくて甘いのは心もなごむと思うのよさ」
食べ物を持ち寄れと言われるといきなり多様性を発揮するのがローレットという組織である。
おそらく彼女たちだけで祭り屋台を並べろと言えば、かなり賑やかで鮮やかな祭りが開かれることだろう。
そしてその多様性は、出てくる料理のみならず才能や肉体能力にも表れるのだ
「炊き出しに利用する材料の荷運びや、食器類の片付けゴミ収集は任せて頂くでござるよ!」
『跳躍する星』糸巻 パティリア(p3p007389)が触手を活かしてどしどし荷物運びをしていく。大きな作戦の間は負傷者救助に大活躍した彼女だが、今もその才能は活かされているのである。
「これらはいずれも問題のない炊き立ち活動や景観の維持といった雰囲気作りに重要な部分でござる。衛生は重要でござるからな!」
「医療もね」
『小さな灯火』ケルツェ(p3p010419)は料理の配膳をしながら、周りの様子を眺めていた。
彼女なりの気遣いとして竜の鱗を出さないようにしていたが、どうやら練達民に竜鱗やそれに類するトラウマや忌避感はないようだった。突然あらわれたドラゴニアに対して好意的な反応が多く、どころかあまり驚かれない。
練達という、異世界の民が集まる性質上異質なものや非日常に慣れているのかもしれない。あるいは、たまたまか。
なので、ケルツェは遠慮なく周りに電子レンジや冷蔵庫について尋ねていた。
「量も量でしょうし人手が必要になりそうだわぁ、おばあちゃんだけどお手伝い頑張るわね~」
一方でのんびりした様子で『竜の呪いを受けしおばあちゃん』スガラムルディ・ダンバース・ランダ(p3p000972)も炊き出しに加わっている。彼女も彼女で前の世界では竜と相打ちになったというが、ドラゴニアに忌避感を示していなかった。それは彼女の度量が広いがゆえかもしれないが。
「まずは、食材の準備お手伝い~。
あとは食器の準備も調理の間に進めておかなくちゃね~。
その後は、器に取り分けて渡していきましょうか~」
などとてきぱきと作業をこなしていく。
『お父様には内緒』ディアナ・クラッセン(p3p007179)はそんな様子を横目に、パンと飲料水を配り歩いていた。
「人間、食べるってとても大事なことなのよ。
身分ある人間が手ずからやる必要はないって言われそうだけど、花嫁修業の一環とでも言っておけばお父様は満足でしょうし。嘘も方便よね」
自分手呟いてから、ふと思う。
特異運命座標になって得られる自由とは、思いのほか広いのかもしれないと。
家のしがらみから解き放たれるだけではない。全て自分で考え、自分で決断し、そしてその反応がこうして返ってくる。
良いことなのかどうかは……きっとこれから分かるのだろう。
「けどまずは、目の前のことからよね」
●青空教室
「練達には俺の世話ンなってるホストクラブ、シャーマナイトがあるからな」
そんな事を言って背筋を伸ばす『ネットワークブレイカー』オラン・ジェット(p3p009057)。
一通り片付いた瓦礫の真ん中に、ぽっかりと広場が出来ていた。
とめたワゴン車によりかかり、別の仲間が運んできてくれた握り飯を囓る。
それだけではない。彼はその場に集まった多くのイレギュラーズたちに、自分の知るローレットのことを伝えていた。
「クソ田舎飛び出して混沌! いやー、やっぱ練達はナウいじゃん!
こないだの怪竜の襲撃で流石にとっ散らかってるけど、ちゃんと形を保ってて流石は練達と先輩方々って感じ」
外の世界に感動する『期待の新人』グルック・ストラーハ(p3p010439)。
「へぇー、オラン先輩ホストなんだ!
やっぱあのあれ……凄いっすね!つーかオラン先輩俺とタメじゃない?経験が違うってやつじゃん。……ホストって何?」
「よっしゃ説明してやる」
地面にどっかりと座り本腰を入れたオランと、それを熱心に聞くグルック。
『うまうま』巫馬・峰風(p3p010411)はそんな話を腕組みしながらウンウンと聞いていた。
ふと、隣の『幸運の引鉄』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)にスッと奇妙な柄の袋を翳してみせる。
「ところでコレは、歴史的な化石かなにかか?」
「いやそれはポテチの空き袋だな」
「ぽて……ち……? とは?」
「いや俺もよく知らん」
お互い初練達である。なんだかんだ文化の入り交じったこの世界ではあるが、さすがに前人未踏の覇竜領域ともなれば文化に関する知識が偏った者もいるのだろう。
といっても、ウォーカーのような全くの異世界からやってきた者に比べればまだなじみやすいはずだ。
「ところで、『幸運の女神』の話を知らないか。俺は彼女を探すために覇竜を出たんだぜ!」
そんなことを言われ、『特異運命座標』柊 沙夜(p3p009052)はきょとんと首をかしげた。そして知らないといった顔で呟く。
「うち、豊穣の神逐のあたりでいれぎゅらぁずになったんやけど、あんまり他の国はようわかっとらんのよね。練達のお話やろか」
ちょうどさっきまで物資の集積所で作業を手伝っていたところらしく、額にはわずかに汗がにじんでいる。
ついこのあいだの騒動によっていろいろなものが散乱し、持ち主不在のアイテムも山のようにある。命が助かりこれからのことを考え始めた人々は、自分達の持ち物をとりかえすために動き始めるだろう。そのための集積所でもあるのだ。
「わたしも最近来たばかりで世情に疎い。何を聞いていいのかピンときてないんだがな」
苦笑しつつやってきたのは『少年は世界の宝』ディアーヌ・アーベル・アルノー(p3p010063)である。
こちらは炊き出しチームに加わって料理の手伝いを追えてきたところだ。
他にも力仕事や迷子捜しといった細々した労働を助けていたわけだが……。
「インフラやライフラインはだいぶ復旧したみたいだけどまた何かあったときにある程度保つようにそこも考えなくちゃいけないわね」
話に加わった、というより別の話から斬り込みはじめた『マッドドクター』ミシャ・コレシピ・ミライ(p3p005053)。
マザーコンピューターの暴走によって破壊された通信網は早くも復旧されつつあるが、物理的な不足はいかんともしがたい問題だ。物資が集まり次に技術が必要になった時、いずれまたミシャの助けが必要になる時が来るだろう。
「それで、今は何の話? 各国の情勢も復習を兼ねてぜひ聞いておきたいわ。
とくに今はあちこち忙しいことになってるみたいだしきちんと把握しておいたほうがいいわよね」
「神殿に召喚されたのはだいぶ前だけど、まだまだ知らないことだらけだからな。
アタイもいろんな国の情勢とか全部知ってるわけじゃないから助かるぞ」
その話は自分も聞きたいとばかりに『ブーストナックル』モモカ・モカ(p3p000727)が手を上げた。
あちこちで力仕事をしてきたせいで軽く煤によごれているが、元気いっぱいの顔はむしろ綺麗にすら見える。
その横では『ここが安地』観月 四音(p3p008415)。こちらは力仕事というより人捜しや物探しといった足を使った仕事を手伝ってきたところだ。破壊の著しいエリアで人助けセンサーを使った彼女は、感知できた数に驚いたものである。
「安全圏に居る内は、ちゃんと私もお仕事しないとですよっ」
そんな彼女は、この『リアル』に対して手を合わせ、黙祷をささげていた。
「わしにとって練達はもはや縁深い土地になっておる。その復興の為に出来ることがあるなら……な」
これまでの戦いで幾度も人々を助けてきた『特異運命座標』フロル・フロール(p3p010209)だが、終わってみるともう他人のようには思えなかった。そして、自分達の仲間へと加わったイレギュラーズたちにもだ。
「わしも得意運命座標の活躍に目を輝かせた身、新たな仲間達の活躍の助けになれれば本望じゃよ」
「あの! 何でもやらせて下さい! 何も分からないからこそ、まずは何でもやってみようと思うんです!」
復興作業の大半は力仕事である。
『なんで私なんかが…。』翠・帝華(p3p010375)は空を飛び、物探しや瓦礫の撤去といった様々な作業に取り組んでいた。
「大襲撃があったとは聞いていたけど、実際に現場を見てみると。凄まじすぎて言葉で言い表せ無くなっちゃうなー!」
『蒼玉』サーニャ=S=クライノート(p3p009771)は元々のテンションで喋ってこそいるがこの状況には同情的だった。
「もしも時間があったら、パフェでも食べたいかな~なんてね」
練達のものすごい所は、ここまで破壊されたにも関わらず一部では都市機能を回復し娯楽産業も十全に動いているところである。切り替えの速さなのか、練達民のタフさなのかはわからないが。
そんな、一方。
「なんじゃあああ!? めちゃくちゃ高い塔がいっぱいじゃああ!」
「なんだ、ビル初めてか?」
『亜竜種いれぎゅらぁず爺さん』赤 源(p3p010491)と『特異運命座標』茶麗咲・ウルスーノ(p3p010302)が破壊の著しいエリアへとさしかかり、迷子になっていた源を茶麗咲が一緒に連れて行く形で合流した。
「練達とやらは甘味がなかなか充実していると聞いて来たはいいが、まずは働かなくてはならないのか」
「わわわ、竜の侵攻で大変なことになってるね。こんな時こそ頑張らないと……!
新しい神使の人も増えてるし、僕も先輩になって来たのかなぁ」
現地へと訪れると『シャドウストーカー』エル=シャドウ(p3p000986)と『ちびっ子鬼門守』鬼ヶ城 金剛(p3p008733)が瓦礫の撤去作業を行っていた。
「ROOを通じて、私は少し変わる事ができました。
暴走事件に続いて竜の襲撃。練達はやはり、大変な事になっていると思うのです。
だから……私もなにか、復興作業のお手伝いを、と思いまして……。
何かお役に立てる事が、あればと……!」
『華奢なる原石』フローラ・フローライト(p3p009875)と『藍玉眼の弾丸竜』劉・藍珠(p3p010477)もそこへ加わり、見落としがないかと確認をしてまわっている。さすがにこれだけ時間がたてば要救助者が残っているということはないだろうが、仮に残っていたら見落としはそのまま死に繋がるだろう。
「えー、何だ……でっけぇな、全てが」
『亜竜種として外の連中に舐められる訳にいかねーぜ』というプライドははやくも消え去り、既に彼女も仲間の一人だ。このあとは復興が完全に済んでいるエリアへと移って食べ歩きでもしようという話になっていた。
「あれだけ快適だったネットワークも物理的に破壊されてしまっては弱いものよ。
我の快適な引きこもり生活の為にも疾く復旧して貰わねば困る」
『量子ドラゴン』アレイドスピーア(p3p009241)はネットワークの復元作業を現地で行っていた。いくら電脳といえどそれを通すのは物理的な線であり機械だ。結局は足と腕を使うのである。そこへくると、アレイドスピーア自身のデータストレージはだいぶ役に立った。生きるクラウドサービスである。
そんな中で、『紅眼竜の盾少女』シルワ・カルブクルス(p3p010416)はあらゆる意味での新鮮さにふれていた。
「ここがペイト、そしてデザストルとは外の世界。わたしがイレギュラーズになったからにはまずはこの世界についてもっと知らなければ……」
これから、この世界で生きていくのだ。そのために知識はいくらでも必要になるだろう、と。
「なんなのかしらこの車は……」
コスプレ同好会とかかれたワゴン車に、荒流(p3p010351)はてきぱきと荷物を運び込んでいた。
破壊の少ないエリアだが、ここにはシェルターが密集していたことで避難民も多い。
通常の運搬手段では物資を運びきれないのだろう。
(沢山の亜竜そしてかの竜種達を撃退した国。
私達では未だ竜種、亜竜種ですら懐かせることができていないけれど、認められた人たちがいるのはこの国の人たちなのよね)
ふとみると、『葬送の剣と共に』リースヒース(p3p009207)が黙々と土を掘っている。
「此度もまた、人の子は命を落とした。竜という強大な生き物は、無慈悲に押し寄せる天災のよう。
天災であったと割り切れたならば、……まだ、気は楽だ。
故に、今はこの惨状を目に焼き付け――」
とても詩的なことを話しているようだが、様子から察するに墓を掘っているということなのだろう。
怪我をする者が多い一方で、死者もまた多く出ているだろうから。
同じく物資を運んでいた『学者見習い』標・預安(p3p010378)が、医療品のなかから包帯を取り出してしげしげと見つめていた。
「ここの技術身につけて帰れば、少しは……馬鹿にされないかなあ」
「何言ってんだ。誰も馬鹿にしやしねえよ」
やたらと子供に懐かれる『救い手』ヨシト・エイツ(p3p006813)が、ぽんと預安の背を叩く。
「だって、ここの薬や医療品ってすごいし……」
「変わらねえって。新しいモンだから新鮮に移るだけでよ」
弓矢と銃が同等の価値を持つこの世界。薬と魔法も同じようなものだ。ただ、練達という研究機関が集まる場所で開発されるアイテムが優れているというのは確かにあるだろう。
だた、ヨシトは思う。どんな場所にも子供はいて、『ガキは笑ってるのが一番だ』と。
炊き出し用の物資をワゴンに積み終えた所で、『寛容たる傲慢』オジヴァン・ノクト・パトリアエ(p3p002653)が貫禄のある顔で頷いた。
「ふむ、これを構築するためにはまずこの土砂を片付けねばならぬな。であるならばそこな道具を使いその場所にまとめると良い、搬入の妨げにもならぬし撤去も容易い。その担当は汝らに任せた」
手にはボード。設計図や地図が貼り付けられたそれを指さし、近くの者へと指示していた。
出しているのは吸血鬼の王としての貫禄なのだが、やっているのが現場監督というのがまたシュールである。そしてそのシュールさをはねのける貫禄と指揮能力を、彼は発揮できていた。
「…貴公、その瓦礫運び、無幻皇帝たる私が引き受けよう。息抜きをするといい」
そこへスッと現れる『有象夢象』ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)。
妙に迫力のある言葉でいうと、瓦礫の撤去作業を始める。
「この都市が我が同胞の襲撃を受けたというのか……。しかし、無幻皇帝……我ながら良い肩書きを思い付いたものよな」
世界は広く、発見に満ちている。
新たに製造されたと言えるレガシーゼロ、『平和主義者』糸(p3p010467)。
そしてデザストルからやってきたであろう『同一奇譚』深々・おじぎ(p3p010429)。
この二人が出会うことは、もしかしたら永遠にありえなかったかもしれない。
「ここはどこなのでしょう。……学校?」
見慣れない風景と、やや聞き慣れた単語。おじぎは保健室のベッドから起き上がる。
「熱中症かなにかでしょうか。このエリアは天候も操作できるそうなので」
糸は起き上がるおじぎに手を差し伸べた。
互いに、あまりにも未知。
そこへ元気に現れたのは『太陽の恵み』マナ(p3p009566)だった。
「この間のロボットさんに、その後のドラゴンさん。大変だったよね。たくさんたくさん木や花も傷ついたよね! よしよし」
保健室の鉢植えにきりふきで水をやって、マナはにっこりと太陽のように笑った。
練達は鉄と石だけでできていそうにみえがちだが、植物もちゃんとある。人工的に植えられたものであっても、生命に違いはない。そして僅かながらも、低位の精霊はいるようだ。
マナがそんなふうに植物をねぎらいながら庭へ出ると、ベンチに『特異運命座標』董・白桜(p3p010455)がちょこんと座って居た。
「この国の人はほとんど、特異運命座標なのね。とても興味深いわ」
そんなことを呟きながら、チョコレートをぬったクッキーのお菓子をつまんでいる。
隣では『旅人2世な女子高生!』彷徨 みける(p3p010041)が同じクッキーをぽりぽりとしている。
「ここは再現性東京って言って、『現代日本』から来たウォーカーたちが作った都市だよ」
そんなものがあるのねと頷く白桜がふと目をやると、しぐま(p3p009467)が一生懸命素振りをしている。
「この第六感に語り掛けてくるほのかなウロコ臭さがどことなくブリテン星系の赤いトカゲ共を彷彿とさせますね!もしかして紅茶のプールで溺死する趣味があったりします?
まあまあともあれ、故郷の記憶が刺激されて親しみがわきます!
よろしい!えと、こっちに来て…1年くらい?先輩のこの美少女ビッグバンリーガーのしぐまがここは一つ生皮を脱ぎ!迷える新顔の皆さんに教えて差し上げます!
ズバリローレットとは……なんでしたっけ?」
凄い勢いで丸投げされたが『宇宙戦艦『ベテルギウス』』オリオン級 弐番艦 ベテルギウス(p3p008833)たちは動じなかった。
「そういえば……この空の果てはどうなっているのでありますかね。
当艦は宇宙戦艦でありますから、この空を突き抜けた先にも星の海が広がっているといいでありますな。
とはいえ、当艦は現在エネルギー資源が不足して航行不能でありますから、知った所で飛べはしないのでありますが。
人間的に言うと、知的好奇心というものでありますな」
どころか自分の話を普通にした。ローレットの自由な所であり、ある意味強みだ。
「ローレットっていうのは、僕みたいに召喚された人たち──イレギュラーズが所属する団体って認識で合ってるかな。そのローレットから今みたいに依頼を受けて、資金と信頼を得て生活していくって流れかね。ははあ、なるほどなあ」
『錆縅』マツリ(p3p010397)は自力で調べてまとめたメモを読み上げた。
「そういえばギルド長のレオンはイレギュラーズじゃないのよね?」
「話によれば、ざんげさんのためにギルドを作って災厄に備えたそうだよ」
ほう、と感心したように頷く『銃愛好家の司書竜』劉・紫琳(p3p010462)。
が、関心事はすぐに手元のスマートライフルにうつっていた。
「見た事のない機構ですね……なるほど装填はこのように。給弾は、連射は、排莢はどのように――おお!」
どうやら外の世界の銃器にだいぶ感心したらしい。
「先日のジャバーウォック襲撃や様々な魔に連なる者を打ち破ってきたローレット。
どのような銃が……ではなく。どのような戦いがあったのか、当事者から直接聞くのも良いですね」
『STARGAZER』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)は小さく肩をすくめて返すと、ベンチから立ち上がる。
すこし歩いて行くと、そこは丘になっていた。広い町が一望できる。
一部は都市機能を回復しているが、一部は未だに瓦礫の山だ。
「この傷ついた領地、私の故郷みたいにするんだから」
既に自領の回復を済ませていたノアには、この傷付いた風景が回復していく未来が見える。
隣に立っていた『白い影』ミリアム・リリーホワイト(p3p009882)が頷いた。
「相当酷くやられてしまったようだが。復興だから0からじゃなくてせいぜい0.1ぐらいからかな?」
ちらりと見れば、ドラゴニアの仲間が別の仲間となにやら話している。
情報交換なのだろう。そして、これからこの環境になじもうとしているのだろう。
遠くを見つめるようにして、ミリアムは息をつく。
「これから、どうなるんだろうね」
冠位魔種という世界の脅威が姿を見せ、そして倒され。
竜というさらなる脅威が出現し、未だ彼らはどこかの空を飛んでいるのだろう。
だが自分達は生きていて、脅威とあらゆる意味で戦うための組織がある。
これからの未来はきっと、自分達の手にかかっているのだろう。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お帰りなさいませ
皆様お帰りなさいませ
世界中に広まった皆様の評判は、また新たな依頼書となってローレットのボードに貼り付けられることでしょう。
それを手に取ったならぜひ、新たな冒険へと出かけてみてください。
また、沢山のご参加につきまして参加者全員に経験値ボーナスが付与されております
特典アイテムの『ざんげハンマー(U45)』はアイテムページの『その他』カテゴリから使用でる消費アイテムです。スキルの振り直しにご利用下さい。
GMコメント
■■■注意■■■
・このシナリオはレベル40以下のPCだけが参加できます。
・このシナリオで貰えるゴールドは通常より少ないです。
・通常入る経験に、特別にボーナス経験値が加算されます。(人数やプレイングでアップ!)
・シナリオの確定報酬に『レベル45以下制限のスキルリセットアイテム(譲渡不可)』が加わります。
■■■プレイング書式■■■
迷子防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
・一行目:パートタグ
・二行目:グループタグ(または空白行)
・三行目:実際のプレイング内容
書式が守られていない場合はお友達とはぐれたり、やろうとしたことをやり損ねたりすることがあります。くれぐれもご注意ください。
■■■パートタグ■■■
【幻想】【覇竜】【豊穣】【練達】のうちいずれかのパートタグを【】ごとコピペし、一行目に記載してください。
【幻想】
ファンタジーと聞いて真っ先に思い浮かぶようなヨーロッパめいた街並、幻想王国首都。
この場所を舞台に簡単なモンスター退治やネコ探し、要人護衛や裏のお仕事を紹介してもらいましょう。
プレイングにはあなたのやってみたい仕事を書き込んでください。きっといい仕事を紹介してもらえるでしょう。
【覇竜】
いま最もホットなニュースポット。前人未踏の秘境で冒険に出ます。
といっても、ドラゴンは会っただけで死ぬので、亜竜と呼ばれるモンスターたちの退治が主な依頼内容となるでしょう。
フリアノン、ペイト、ウェスタという三つの集落を中心に、仲間達と冒険に出かけましょう。
勿論依頼が難しくならないように大勢でパーティを組み戦いに挑みます。
プレイングにはあなたの得意なバトルスタイルや、アタッカーやヒーラー、タンクといった漠然としたポジションを書いてみるとうまく連携がとりやすいでしょう。
【豊穣】
和風の都市高天京を観光しましょう。
復興支援という瞑目で出された依頼ですが、既にある程度復興が進んだこの街を歩き過ごしやすさを確かめたり旅の感想を求めているようです。
といっても、はるかなる海を越えて旅しに来る人はそうそういないので、本当は大恩あるローレットに感謝を伝えたいだけなのかもしれません。
プレイングには、この和風国家で見てみたいものや食べてみたいものを書いてみましょう。もしかしたらいい場所を見つけられるかも。
【練達】
つい最近まで大変なことになっていたこの国で、復興支援に赴きましょう。
といっても復興作業は簡単なもので、主には皆さんで集まって『ローレットってなに?』というお話をするのが主です。
プレイングでは、このギルド・ローレットやこの世界についての疑問や、気になっていることを尋ねてみましょう。
周りの人や詳しいひとがそれに応えつつ、一緒にご飯を食べたりできるでしょう。
戦ったり守ったりというのも大切なお仕事ですが、こうして学ぶことも大切なお仕事になるのです。
■■■グループタグ■■■
一緒に行動するPCがひとりでもいる場合は【くまさんチーム】といった具合に二行目にグループタグをつけて共有してください。(PCIDで指定しても見逃す可能性があります)
この際他のタグと被らないように、相談掲示板で「【○○】というグループで行動します」とコールしておくとよいでしょう。
うっかり被った場合は……恐らく判定時に気づくとは思うのですが、できるだけ被らないようにしてください。
また、グループタグを複数またぐ行動はできません。どこか一つだけにしましょう。
膨大なプレイングを【】タグで一旦自動整理していますので、今回同行者の名前とIDだけを指定していた場合、かえってはぐれやすくなってしまうかもしれませんのでご注意ください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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