シナリオ詳細
<Phantom Night2018>砂の都のフェアリィテイル
オープニング
●鮮やかなれや、ネフェルスト
ラサ傭兵商会連合――通称として『傭兵』と呼ばれるこの国家は力ある商会と傭兵団の結びつきによって形成された連合体だ。
首都たるネフェルストは砂漠地帯のラサの中でも美しいオアシスとして名高く、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)に聞けば「幻想のガイドブックでも行ってみたい旅行先に数えられている」とのコメントが発される夢の都だ。
特異運命座標にとっては世界最大規模として名高い闇市サンド・バザールの本拠地と言われればピンとくるものも多いのではないだろうか。
「キナ臭い事件ばっかりでシケた面してんな。……こっちも迷惑はかけた。
折角の『ファントム・ナイト』に対する迷惑料とでも思ってくれ」
傭兵団『赤犬の群れ』の団長たるディルク・エッフェンベルグがローレットへと行った提案は夢の都『ネフェルスト』でファントム・ナイトを過ごさないかというユリーカに言わせればそれこそ『夢』の観光チケットだ。
「『魔法の夜』を夢の都で過ごせるってなりゃ、上等だろう?
勿論、それなりにこっちでももてなさせて貰うさ。こういう夜には色々と『紛れて』くるもんだろうしな」
ディルクの言葉に、彼の傍らに立っていたイルナスはゆるゆると頷いた。
――なりたい姿になれるという魔法の夜――
どのような姿になれど、正体は明かさないお約束。
砂漠のオアシス、夢の都にて、貴方はどの様に過ごすのでしょうか。
●???
ぎゅうと盛大な音を立てて鳴った腹。
「まるでドラゴンの鼾のようね、オジサマ!」
快活に笑った桃色の髪の乙女には竜を思わす角と翼、そして尾が映えていた。
作り物ではなく――それこそ、旅人と思わしきオーラもない――そんな彼女は巨大な裁ち鋏を背負ったまま、くすくすと笑って見せる。
「お祭りの時のサンド・バザールってわたし好きなのよね。
この明かりも、特別製の料理も。期間限定って言われると胸、躍らない?」
「食事が出来れば何でもいいというのはお嬢さんには悪いですかな」
灰のコートを被った青年は彼女と同じ様に生えた竜を思わす尾をゆらりと揺らす。
「ふふ、オジサマらしいけれど。さ、ディルクが言ってたじゃない。
今夜はブレイコーの日。わたしたちも楽しくファントム・ナイトを楽しみましょう?」
「フィオナ」
呼ばれた声にくるりと振り返り、褐色肌の『びしょうじょ』は口元にゆるりと笑みを浮かべている。
哀れな犠牲者にそれは見事なフィッシャーマンズスープレックスを仕掛けていた彼女は何事も無かったかのようだ。
「はいはい? 今日は王子様以外のお声掛けはノーサンキューっすよ」
小悪魔染みた笑みを浮かべた『れでぃ』はにぃと笑って「呑むです、騒ぐです、そして、魔法の夜を謳歌するのです」と『ないすばでぃ』を張って見せた。
はてさて――今日はどんな夜になるのか。それは誰もが解らぬ夢の一時なのです。
- <Phantom Night2018>砂の都のフェアリィテイル完了
- GM名鉄瓶ぬめぬめ
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年11月16日 21時35分
- 参加人数75/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 75 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(75人)
リプレイ
●
さてはにぎやかしは、魔法の夜。
ラサの首都ネフェルストは、夜を忘れたかのように人々でごった返している。
『夢』の観光チケットを手にした彼ら特異運命座標は、砂漠のオアシスに足を運ぶ。
煌く光と湧き上がる喧騒。
少女が流されぬようにとラノール・メルカノワはギュッと手をにぎる。
「あなたの、ふるさと、とてもきれい」
街明かりの砂の海、重ねられた手を揺らして歩く。エーリカ・マルトリッツが目を細めれば、コホンと咳払い。
「いえいえ、郵便屋さん、私は吸血鬼です」
「あ、吸血鬼さん、すてきな宝物がみつかるといいね」
すました顔がなんだかおかしくて郵便屋はくすりと薄く笑う。
七色ランプに星のオルゴール。素敵なものは山程にある。アチラコチラに目をやる少女がふと足を止めた。
月ににた石をあしらったふたつの、おそろいの首飾り。きっとこれは狼とねこに似合うから。
「……と、とりーと!」
ねこは中途半端な呪文を唱える。狼はそんなねこの魔法の呪文(おねだり)に総合を崩す。
彼は店主に支払いし、首飾りを受け取ると、少女の首に恭しく捧げる。
「よく似合うよ」
そんな狼の低い声に胸が踊るのは、空にうかぶまあるい月のルナティック? それとも?
サンティール・リアンはポシェティケト・フルートゥフルを案内する。
『魔法の夜』を知らないなんてもったいない!
魔法に攫われないようにしっかりと手を繋いで。星の砂にいたずらされないように。
「ぴかぴかね、サティ。星の海を泳げるなんてとびきりだわ」
森の少女は絢爛に煌く夜よりも煌めく笑顔。
「あっ」
サティがちいさな装飾店の前で足をとめる。
さかしまの鹿が首をかしげる。
「やさしいきみへ、きいろいラナンキュラスの髪飾りを!」
きっと鹿の角には似合うから。
「まあすてき、じゃあ、あなたにはお姫様の羽と冠の髪飾りを」
新緑の髪にはきっと似合うと一目見たときからきめていたから。
互いに頭を垂れてさかしま鹿とお姫様英雄の、たった二人の戴冠式。
白猫海賊ミアはティア・マヤ・ラグレンに故郷であるラサを案内する。
「ラサはミアの故郷なんだね。ならゆっくり回っていきたいね」
「家出したては、ここでお世話になった……の
変わってない……にゃあ……」
少女の瞳に浮かぶのは郷愁。ティアが声をかけようとする瞬間に其の瞳の色はくるりと変わる。
「今日はミアがティアティアを案内するの。アルパレストの紹介状もあるから……大舟に乗った気で任せるの。 よーそろー……なの♪」
「あ、その紹介状使ってくれてるんだね。ありがとう、ミア」
ふたりとひとりはラサの味覚を楽しみながら歩く。
「あれ、竜の角?」
『獣種ではないのか?』
変わった二人が彼女らの目にうつる。
「……ミアの勘が顔売っとくといいと言ってる気がするの。一緒にご飯を食べるの!
ミアの奢り……にゃ
素敵な串屋のおじ様……串焼き4本、紹介状でまけてー……なの♪」
ミアはアグレッシブに彼らに向かって走っていくのをティアは追いかけるのだった。
エンヴィ=グレノールとクラリーチェ・カヴァッツァはラサのサンド・バザールが自慢のアラビアン料理をご賞味中。
「辛い料理……初めてだから、心配ね」
「スパイスが主人公のお料理って興味津々です」
ふたりは同時に魔法の夜に煌めく銀のスプゥンを口に運ぶ。
「これ、結構辛いわ……美味しいけど」
「思ったよりは……んんっ!」
後から舌に追い上げる辛味に二人は顔を見合わせる。
ふとエンヴィは同じように辛味を堪能する竜角のペアに目をやり、小さな声でクラリーチェにささやく。
「あら……あの人達、私と似たような姿をしてるのね」
「旅人さんなのでしょうか?」
「旅人なら、私と似た姿の人が居ても不思議では無いわね……立派な羽や角で……妬ましいわ……」
彼女とて海龍の血をひいているのだ。なのにあんなに違って。
「エンヴィさんの羽や角だって、綺麗だと思いますが……」
「その、羽じゃなくて鰭なのだけど、その、ありがとう」
照れて赤くなった顔を水の色を映した髪で口元を隠しエンヴィはそういった。
馴染んだ海洋とは全くに違う砂漠の国の物珍しさに十夜 縁はあちらこちらと見回す。人の波と空気と喧騒に、隣を歩く蜻蛉が攫われるような錯覚に、縁は反射的に腕を掴んでしまう。
「どないしたん? 平気よ。一人でも歩けるし……」
「……あー……ほら、なんだ。はぐれたら困るだろ、お互い」
しどろもどろになる縁の手が熱い。蜻蛉はその熱さに顔が火照る。いつもなら強がりをいうのだけれども、今日だけは砂の夜の魔法がそれを許さない。だから。
「……もし、はぐれても、旦那はきっと……うちを見つけてくれる」
それは確信? それとも願望?
「魚の目は良くないんだ」
呟く縁はバツが悪そうにそういう。顔をそむけた縁の目には店先。手をつないだまま目についた三日月を拾い上げる。
「だがまぁ、そうさな。もしはぐれちまったら……これでも鳴らして、呼んでくれや」
縁はもう片方の蜻蛉の手のひらに三日月を落とす。落とせばチリンと高く澄んだ音色。
「これ」
問われる言葉をごまかすように縁は店主に銀貨を支払う。
「……んもう」
煌めく一夜に思い出が一つ。チリンと音を鳴らした。
ネフェルストにくるのは初めてだ。サンド・バザールの熱気に少し気後れしつつも鳶島 津々流は夢の都を堪能する。
かぐわしきは香辛料の香り。くぅと小さくお腹が抗議。
香りに誘われてみれば美味しそうに肉の串を頬張る竜の角の少女。
人が食べているものは美味しそうに見える。祭りならばなおさらだ。パクリとたべれば辛味が舌をしげきする。
おいしいね、と桃色の竜に話しかければ「ええ」と帰ってくる。おすすめはあったのかと問えば、桃色の少女は嬉しそうにあそこと、小さな屋台を指さした。
クロバ=ザ=ホロウメアはこっそりと屋台を展開していた。多分これだけの数があればばれないだろうと。
そういえば、さっきの腹ペコの二人を思い出す。
「ようこそ! 腹ペコそうなお二人さん、ここらで飯でもどうだい?」
はなしかければナイスミドルと少女は嬉しそうに近づいてくる。
たくさん食べそうな雰囲気に、闘志がわいてくる。底なし食欲のドラゴンなら知り合いにいる食材確保はばっちりだ。
「流石夢の都、アンタみたいな綺麗どころも来ると。屋台を出してみるもんだぜ」
そんなお世辞に少女は顔を赤らめる。
ああ、そんな顔が可愛かったなと鼻を伸ばしていると、肩をラサの強面の傭兵に叩かれる。
「へ?」
屋台をたてるにはショバ代というものが必要なのだ。クロバは強面の傭兵に連行されていく。
「こんにちは、はじめまして!俺は秋宮史之っていうよ。さっきから見ていたけれど、いい食べっぷりだね。何か飲みたいものはある?」
史之はギフトで、彼らに冷たいジュースを披露する。
「わわ、素敵」
桃色の少女とオジサマはそろそろ乾いてきた喉を潤すその飲み物に礼をする。
「俺は見てのとおり、ウォーカーだよ。ニホンのコウコウセイってのをやってた。あなたたちはどこから来たの?」
「デザストルよ。オジサマは……ずっとデザストルにいるわよね? 私が生まれる前から」
少女は若干ドヤ顔で胸をはれば、オジサマはそうだねと笑う。
君たちの食べっぷりをみてたらお腹がへったよ。なにかいいデザートはなかった? と聞けばあっちもこっちもと桃色の少女は答える。流石に全部は食べれないけれど、紹介されたデザートを食べることにした。
驢馬の仮装でチャロロ・コレシピ・アシタは好奇心のままにバザールを見て回る。
はじめての異国情緒に目がきょろきょろ。
細工物も綺麗だ。どうやって作ったかなんて想像もつかない。これをお土産にしようとおもうがなんともお小遣いではゼロがひとつ足りない。
そして選んだお土産はスパイスのきいた日持ちのするお菓子。さあ、ハカセはどんな顔をするだろう。
ペンギン仮装のセララはぺんぺんぺんと闊歩する。
美味しそうな食べ物は制覇! 焼きそばわたあめ焼き鳥りんご飴。両手のなかには小さなオマツリ。
桃色の竜の少女の隣には竜角のおじさま。
やたら食べる少女が目立つがおじさまの消費量もたいしたものだ。
セララは路上フードバトルを勃発させる。もぐもぐもぐもぐ。
だけど、二人の勢いはセララを超越する
「けぷっ。おじさん、いい食べっぷりだね。負けたよ……」
そんなセララの敗北宣言におじさまは口の端をあげてニヤリと笑った。
腹ペコなのはふらんけんしゅたいんの怪物姿のデイジー・リトルリトル・クラークもまた同じ。
美味しい魔法の夜は始まったばかり。ギフトをつかっておまけしてもらったスパイシーなケバブサンドに舌鼓。
腹ペコは腹ペコを魂レベルで感知できる。物欲しそうな桃色の少女にケバブサンドを分けてあげると少女は羽をパタパタさせて喜ぶ。
「妾は寛大故、遠慮すること無いのじゃー」
しかして。少女のほうは初めてだが、少女の後ろのおじさまにはどこかであったことがあるようなきがする。さあてどこだったか?
「ワンコじゃねえ、狼だ!」
どうにもかわいいワンちゃんはけたたましい。そんなレイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタインも愛しいとシグ・ローデッド は思う。
あちらこちらと走り回る恋人はしっぽをちぎれんばかりにふってこの喧騒を楽しんでいる。
シグは食べ物の味付けを解析中。ああ、あれが好きなのだな。こっちはそうでもないか。自称狼の表情がまるでセンサーのようにくるくるかわる。
シグはフルーツのスパイス串焼きをひとくちかじる。ああ、これは好きな味だとレイチェルに向け
「……あーん、である。……一度やってみたかったのでな?」
などと嘯くのだ。
「ぐぬ、今日だけだぞ」
目を閉じてあーんと口をあければ、その鼻先にキスが落ちる。
「ふ、ふいうちはずるい」
「それは申し訳ないことをした、ならば正面からということかね?」
「そういうわけじゃ……」
真っ赤になる恋人の可愛さに、シグはくつくつと笑うのだった。
娘のノーラと食べ歩くはポテト チップ。
おいしい食事があれば確りと味わって家でも作れるようにしよう。
娘のおねだりは終わりがない。パパが喜んでくれるかな? といわれればポテトは折れるしか無い。
あっちこっちに走り回る娘をおいかけてポテトも走る。
少女にとって目まぐるしく煌めくバザールは宝箱。宝探しのトレジャー・ハンター気分。
前を見ずにはしればドンと竜の二人に激突する。
「おじさんとお姉さん、ご飯凄くいっぱいだな!」
ふたりの両手の食べ物に目がキラキラとする。
ポテトはそんなノーラの蛮行に焦りながら走りより二人に謝る。
「ほら、ノーラもちゃんと謝る!」
「ご飯の邪魔してごめんなさいだ」
ぺこりと頭をさげればブレーコーよ! と竜の少女は笑う。
ポテトがたくさん食べた中で美味しかったものは? ときけば、少女もおじさまもあれもこれもとたくさん答える。
これは作りがいがありそうだなとポテトは笑うのだった。
今日はレーム様とおでかけです。久しぶりのお出かけにマナ・ニールは気分が弾むのが抑えられない。
ハロウィン一色の砂の街は賑やかであれもこれも素敵なものにみえる。
それも、きっと、隣にいるヨハン=レームと一緒だから?
かくいうヨハンはマナのための装飾品をちらちらと横目でかくにんあらびやーん(バベル翻訳済)でキラキラするのがいいなと探し回る。
だというのにマナは花より団子。辛いお料理は苦手だけれど、二人で食べるならそれも素敵だからと、めについたスパイシーな肉の串をはんぶんこ。
「レーム様、さぁ、お口を開けてください あーん?」
可愛く首をかしげて差し出されるものだから。
「もう、しかたないなぁ」
探索は一時停止、砂漠のスパイシーなひとときを過ごすのだった。
今日は保護者のウェール=ナイトボートと一緒におでかけ。レーゲン・グリュック・フルフトバーはグルメレポーターをみつけてはしゃぐ。
「あの食べっぷりは間違いないっキュ! きっと食べた物を後日新聞や雑誌に載せるっキュ!」
「いや、家族のふたりが普通にご飯を楽しんでるようにしか見えないけどな」
「保護者さんのパンを食べさせて新聞や雑誌に載せてもらうっキュ! よし、近くでパンを食べて気をひくっキュよ」
そういって走り出すレーゲンを呆れながらもウェールはおいかける。
案外普通に食べてもらって、美味しいと答えてもらうことにウェールは少し面映い気分になる。
「でも、もうすこしスパイシーなのがこのみね!」
そんな桃色の少女の言葉に
「次はもっと美味しいのをつくるよ」
と答えるのだった。
私! この機会にやりたいことがあります!!
それはアルバイト!!!! 藤堂 夕はユリーカのつてをたどって可愛いスイーツウィッチの姿で、給仕のバイトを得ることができた。
高校に上がったばかりの夕はバイトを楽しむ前に混沌に召喚されてそんな暇もなかったのだ。
からんころんとバイト先に件の竜の角の二人組が入ってくる。夕はうれしそうに、彼らのもとに向かうと、事前に調べておいた名物を彼らに紹介する。
彼らはなるほどなるほどとメモをとりはじめる。
「もちろん! うちの料理もおいしいのです!」
とアルバイト先のアピールもわすれない。桃色の少女は微笑むと進められるすべてを上から順番に注文するのだった。
小さな直立する猫(ケットシー)姿のアクセル・ソート・エクシルは街の様子をレストランで眺める。テーブルの直乗りはお行儀悪いけど猫だから大丈夫。
とはいえ、猫には人の料理は多すぎて。キョロキョロと周りをみれば、しっかりと正装で着飾ったマルベート・トゥールーズがネフェルストフルコースに舌鼓をうっている。
あまりにも美味しそうにたべているものだから、アクセルがぴょんとテーブルに飛び移って、はなしかけると、キョトンとした顔のマルベートは一瞬固まるも美味しいと微笑む。
でもそれはちょっとお行儀が悪いなと言われてアクセルはごめんなさいと椅子に降りる。
行儀よくなら一緒にたべるかい? と誘われればしょんぼりした顔が笑顔に戻る。
一人で食べるのもいいけれど、たまには猫と食事を囲むのも一興だ。
「ふふ、はじめての場所はワクワクするね。本で見るのとはまるで違う」
でも、特別に感じるのは隣にシャロン=セルシウスがいるから? 恋歌 鼎は淡く微笑む。
「その格好、にあってるね」
「ああ、ドラキュラだよ。まあ、怖がりで誰も襲えそうにないけれど」
僕だって格好をつけたいんだ。君のために。其の言葉は飲み込む。
「じゃあ、堂々と襲えるように練習するかい?」
鼎はクマの手をくいくいと振ってみる。
「まったく、可愛いクマさん、お腹はへってないかい? 辛いものは平気かな? これがまたおいしいんだ」
ドラキュラ伯爵は冷える夜にはピッタリのスープを注文する。
ぽかぽかとお腹からあたたまるその辛いスープに鼎はおいしいと微笑んだ。
「やっぱりシャロンは襲うよりぽかぽかさせるほうが似合うね?」
「はは、君とここに来れてよかった。ラサの景色をみせたかったんだ。空気は冷たいけど星空が綺麗なんだ」
言って見上げれば満天の星。
「綺麗だね」
「くしゅん」
こたえはくしゃみ。ふふ、と笑ったクマさんは寒がり吸血鬼を抱きしめた。
いたずら妖精リトル・リリーは竜の二人に声をかける。
「とりっくおあとりーと! おかしをくれないといたずらしちゃうぞ」
お決まりの合言葉にはわわと少女が足をつんのめればおじさまがそっと背中をささえる。
「じかんぎれー」
いたずら妖精は大きな筆をぐるんとまわせば二人の竜の尻尾にはらくがきが。
こらーと少女は叫ぶがいたずらっ子はもう消えている。
「幻想とはまた違った異国情緒だね」
古木・文は香辛料香るその通りをご機嫌であるく。
「変な名前の食べ物を買うのって、お祭りの醍醐味だよねぇ。スパイシー系だといいな」
きいたこともないような食べ物を買っては一口。確か友達へのお土産を探していたのに両手にはいつのまにかスパイシー料理の数々。
ドラゴン角の女の子が買っていたあのフライしたおやつは美味しそう。挨拶をして同じものを買う。
どうにもお土産を選ぶのはもう少し後になりそうだ。
半透明の衣をかぶり、麗しき『牛若丸』は高い下駄を鳴らしながら闊歩する。
少し恥ずかしいけれどとりっくおあとりーとの合言葉を交わす。
小さな子どもに笛を吹いてとねだられた黒杣・牛王は不器用に笛を吹く。普段はそんなことはしないのに。これはきっと夜の魔法。
心が躍って未熟でもためしたくなる。
だから、私は夜がすきなのだ。
とりーとと、りー、と
笠鷺 舞香はギフトで花弁をふりまきながら歩く。色は橙色のハロウィンカラー。
去年よりも素敵なおばけたちに嬉しくなる。
かけられた合言葉に、かぼちゃ味のキャンディを配る。食べたらおばけがみえるようになるかもしれない! 貴方にたのしいトリックを! 楽しいトリックをくれたのならたくさんキャンディをあげるよ!
「た、のーしま……なぁいと!ざん、ねん。にーなるよっ!!」
ラデリ・マグノリアは熱気に気圧される。
「ファントムナーイト! にゃっはぁ!!」
吸血鬼姿の相棒のジョゼ・マルドゥのテンションはマックスだ。
「ラデリも仮装すればよかったのによ」
「魔法使いといっておけばいいだろう」
噂にはきいていたがそれ以上の熱気だ。緑の魔法使いはあちらこちらをきょろきょろと。
すれ違ったドラゴンの角の少女にうっかり杖を構えそうになるのを、ジョゼにとめられる。
「こんなに人がいたら、魔種が混ざっていたら気づけ無いだろう」
「おいおい、モノを眺めるのも面白いが、オイラの物質疎通で逸話を聞くのもたのしいんだぜ。すこしくらい気を抜けよ」
「楽しい気分を台無しにしたいわけじゃないが……それでも俺は彼奴らへの警戒を解けない」
「めんどくさいやつだなあ、楽しもうぜ! この夜を!」
ゲオルグ=レオンハートはギフトで呼び出した羊のジークとスイーツめぐり。
砂漠スイーツをたのしみながら狼と羊は練り歩く。
スパイスのきいた紅茶に沈むタピオカを堪能したところでディルクに出会う。
ゲオルグはこの招待に礼をいうと、サンドバザールでの戦利品を自慢する。
ネフェルストでのファントムナイトなんてそうそうできることではない。さあジーク、夜はまだまだ続くぞ。
ジャパニーズレッドオーガは新しい料理のスキルを磨くための武者修行!
レシピ開拓と称した食べ歩きを始める。
ああ笑えるほど辛い。エールにピッタリだ。あっというまにお腹はてっぷり。
でもこれで終わるようじゃ夜をたのしめない。ギフトでカロリーを消費すればお腹はぺこちゃん。
さあて、次の屋台の味はどんなものか!
分析してメモに記すレシピは宝具。さあてこのレシピをだれに試してやろうか。
「こんばん……あ、はっぴーはろうぃんだったかしら! 良い夜ね!」
六車・焔珠は魔法の夜に笑顔で歩く。
綺羅びやかな光の中の屋台で食べ歩き。たくさんありすぎて目移りする。お腹には限界だってある。だから情報交換。
竜角の二人が両手に持つ戦利品の情報偵察。
もちろんこちらの情報がその御礼。
彼らの正体がきになるものはたくさんいるだろう。けれど彼女はきにしない。だって楽しい祭りの夜だもの。戦場で会ったわけではない。
だったら、笑顔で別れるのが粋ってものなのだから。
ディルクも太っ腹だ。
こちらもはらぺこどらごんだ。前にいったお店はとてもおいしかった。ヨルムンガンドは足を其の店に向けるも、其の途中にある店だって魅力的! そんななか二人組の竜をみつける。
「とりーと!」
挨拶を交わすと同席させてもらい一緒に食事をしようと誘いをかける。
注文はメニューの上から下までありったけ!
何かの縁だ、奢るぞといえば桃色竜はぱあっと笑う。
ちなみにその財源はディルク。あとで彼は苦い顔をしたとかしないとか?
夢の都ネフェルスト!
素敵な景観は星の煌めきにも負けずに輝いている。
アニー・メルヴィルはまるで夢の中にいるような気分にスカートをつまんでくるりと回る。
夢の中であればお姫様気分でもかまわないでしょう?
周りには愛をかたらう恋人たちが溢れてる。もしかしたら私だって振り向けば王子様が?
期待に胸を膨らませて振り返れば足元にはにゃーんと白い猫がすり寄る。
「あはは、貴方が私の王子様?」
猫を抱き上げアニーは微笑む。王子様のエスコートに魔法の夜を楽しもう。
ごはんごはん。
刺激臭が多いけどたべれるのならいいのかな?
眼の前を竜人が通り過ぎる。なんだあの変わった生き物は? リジアはその後を追いかける。
どうも竜のおじさまはお酒が恋しくなったようだ。桃色の少女が食べたりないと頬を膨らませている。
自分たち天使は酒を飲むという文明はなかったが、興味がある。
竜人に相伴させて貰う形でリジアも試すことにした。飲み過ぎはだめだときいた。
かの竜人は底なしに酒を飲んでいる。ふわふわとしてきた。ねむくなってきた。
気がついたときには竜人の姿はそこにはなかった。
ラルフ・ザン・ネセサリーは案内を断り最初の未知をじっくり咀嚼する。
好みの屋台を巡って舌鼓。
並ぶ列には竜人の姿。少女は早く早くとせかしている。
「並ぶのも風情と云う物ですよ、食べるのは料理だけに非ず、祭りの料理は雰囲気ごと味わうものです。然しお二人共仲が良いご様子、親子か何かですかな?」
「違うわ。オジサマはオジサマよ。ずっと前から私のそばにいるの」
そんな不思議な返答が帰ってくる。
さてはては祭りの偶然。水を指すのは無粋というもの。今日は夢の夜。
なればお互い幸せな夢をみるべきた。
「我ながら面白い偶然を拾ったものだな」
猫男爵辻岡 真は引越し先で出会ったアーリア・スピリッツと夢の都でデート。
いやそこまで踏み込んだものではないが、親交を深めるのにはピッタリの夜。
立ち並ぶお店に目移り。アーリアはそのなかでもお酒だけれど今日は我慢。
真がこれが美味しいと手渡す串はなんとも、お酒と一緒に食べれば何杯も美味しいはず!
目の端にはみたこともない美味しそうな香りを放つお酒。それには我慢ができるわけがない。
そんな相方のすがたにくつくつと笑えばおすすめの酒をお買い上げ。
すこしだけバツの悪そうなアーリアに乾杯と杯をむければ笑顔がかえる。
「真くんのいた世界、こんなお祭りはあったのかしらぁ?」
アーリアにとってはこの世界こそが自分の世界。旅人の話はなんとも刺激的。
「そうだね、似たようなものはあったけど、同じものは一つもない」
「ふぅん?」
「俺は過去の記憶より、貴方と過ごす今がたのしいよ」
人混みは好きじゃないけどお祭り事態は楽しい。
感情の旋律に身を委ねるのはけっして悪くない。リア・クオーツはクオリアでその人々が奏でる旋律を楽しみながら歩く。
ふと。聞き慣れない旋律に引かれるように歩を進めれば見たことのない竜の角のペア。
仮装なのかしら?と思い
「お菓子でもいかが?」とお菓子を進めれば桃色の少女はうれしそうにとりーと! と笑う。
この違和感のある旋律。それが何かはわからないけれど、リアは二人の顔を確りと目に焼き付けるのであった。
血まみれメイドの 天之空・ミーナは目ざとく竜人のペアを見かける。
「ん……? 珍しい仮装ですわね? 竜ですか?」
と問えば少女は自前と胸をはり、オジサマはどうかなと意味深に微笑む。
「自前?」
なるほど旅人かと不躾を謝罪する。お詫びとお菓子を差し出せば少女は嬉しそうに受け取った。
「良ければ少しご一緒しても? 一人で食べるのも、つまらないものですから」
その申し出に二人は頷く。
魔法の夜はなりたいものになれる。ヴィマラはそんな夜もいつだって最高の自分のワタシには関係ないと嘯いた。
だから今日はお買い物。ガラクタの中のお宝さがしは最高に楽しい。
値段は楽しくないけど。
それにあきれば路上でライブ! 勝手にうたって勝手に楽しむ。それが自分流。
数年前は特別な日には歌っていたけどそんな仲間はもういない。
さてはて、少年少女、紳士淑女のみなさま、今夜君たちはなりたかった自分になれているかい?
クリスティアン=リクセト=エードルンドはロクと一緒にウィンドウはないけれどウィンドウショッピングをたのしむ。
たくさんの煌めきは星屑のよう。
そんな星屑のなかで見かけるのは運試し。
あたりはメカ子ロリババアなる不思議なアイテム。
ロクは王子のその挑戦を嬉しそうにみつめる。お金は無いから自分はできないけれど、王子がたのしそうならそれでいいかなと思う。
ロバがでたら800GOLDで買うよ! と調子のいいロクの声援に王子は大仰にチャレンジ!
なにがでるかとロクの目は煌く。
しかして、結果は散々で。
ギャンブルはみつの味。他のお店の運試しも気になって仕方ない。なによりロバが欲しくてたまらない!
「ねえ、王子、その王冠いくらで売れる?」
「ええっ? 多少の価値はあるだろうけど、売らないよ!」
夢の都でなりたい姿に。
凍李 ナキは大人の青年の姿に。なんでもできるのが大人だから。
どうせなるなら子供に優しいおとなになろう。父母とは違う優しいおとなに。
大人になったナキは子供をみつけると、お菓子をかってあげる。
たくさんかってあげる。そして自分も食べる。
子どもたちに尋ねる。君たちは早く大人になりたくないの? と。
逆に問われる。大人になってどうかと。
大人はいいものだと答える。君たちを笑顔にできるからと。
それはきっと自分がしてほしいことなのだと、ナキは気づかない。
宛もないネフェルストの街に 瑞泉・咲夜は腕を組む。
さあて何から始めようかとスキップするエリーナとごつんことぶつかってしまう。
「ごめんね」と二人であやまって笑う。エリーナはお父様とお母様へのおみやげを探すのだといえば咲夜はそれに付き合うことにする。砂の数ほどたくさんのお店は目移りするばかり。
子供とすれ違えばお菓子をねだられ咲夜がお菓子はもっていないと困れば、エリーナはギフトで妖精を呼び出し、甘いクッキーをプレゼント。
ハロウィンのお茶会は南瓜味。咲夜がくうとお腹をならせばお茶会しましょうとエリーナに誘われる。さりとて妖精は気まぐれなのだ。咲夜の紅茶はとっても酸っぱい。びっくりする其の顔にエリーナはくすくすと笑うのだった。
月の弓女神と月狩人の女神に扮したエリシアとイージア・フローウェンは両手にお菓子たっぷりのバスケットを盛ってネフェルストの探索。
「ああ、そう焦るでない。きちんと用意してあるから、喧嘩もするではないぞ?」
「お菓子をくれないと悪戯でしょうか、ちゃんと用意してますから……はい、どうぞ。」
あっという間に子供に囲まれる。とりっくおあとりーとの合言葉にお菓子をくばればあっという間になくなってしまう。
「うむ…我はこういった催しにはとんと疎いが…耳にした事はあるな。子どもたちの無邪気な笑顔は良いものだ」
「元は古代の収穫祭や悪魔祓いの行事でしたが様変わりして、この世界でもハロウィンの催しがあるのですね」
そうだ、とエリシアは弓狩人に食事を切り出すために合言葉。
「あら、エリシアさんにはいたずらされてもいいのに」
イージアはいたずらげに微笑んだ。
「ファントムナイト、要はハロウィーンのようなものと言うことね」
水瀬 冬佳は酒々井 千歳と歩みを進める。由来は気になるけれどと呟く冬佳の手を退く千歳は定番の吸血鬼。対する冬佳は魔女。
魔女と吸血鬼はサンドバザールをあるく。目まぐるしいほどの物流はなるほど、闇市でもアレ程の品物を集めることができるのだと納得できる。
「ハロウィンに因んだ料理とかも出すらしいよ、折角だから覗いていってみようか」
「こういう地域特有の料理ってあるのかしら?」
「ここのは辛いらしいよ。冬佳さんは大丈夫?」
「初めてですから、でも」
貴方といっしょなら、きっとなんでも美味しく感じると冬佳は笑う。
「それはなんとも、意地でも美味しい店を見つけないとってプレッシャーだね」
笑って千歳も答える。
美味しい料理はさて魔女にはお気に召しただろうか?
其の答えは彼女の笑顔が物語っている。
ユリアンはジェックとサンドバザールを楽しむ。
「オー……人ってコンナ沢山いるんダネ
アタシは銃をチョット見てミタイかな、ユリアンは……って、アブないナー」
人混みに流されそうになるユリアンの腕をすかさずとれば、ユリアンは
「あ、ありがとうございます。……ふふ、こうしていれば離れずに済みそうですね」
と答えるものだから、ジェックはついぞ本音がはみ出てしまう。だってショタ少年と手をつなぐなんて役得意外のなにものでもないのだから。ぐふぐふと怪しい笑いがでそうになって挙動不審になったのをどうしたのと問われれば、なんでもないと手を引く。ほんとに役得。
「アタシのだけじゃナク、キミの見たいトコもね?」
そう言って二人は物色しはじめる。ちなみにジェックは武器よりもユリアンに着せる服にご執心であったのは内緒。
ここは故郷の森にはないものばかり!
アイリス・アベリア・ソードゥサロモンはそれが嬉しくて珍しくてアチラコチラを見回る。
キラキラしたアクセサリーにスパイシーに香る食事の数々。
全部全部が珍しくてキョロキョロしていると子どもとぶつかる。
せっかくの出会い。アイリスは子どもたちにこのオマツリのことを聞けば、子どもたちは嬉しそうにいろいろ教えてくれるものだから。走ったり飛んだりするのは苦手だけれど、目一杯子どもたちがあきるまで遊ぶ羽目になるのだった。
ラサの子どもたちは思いの外に元気なのだ。
なりたいものになれるなんて! さすが混沌ハロウィンバンザイだ! アンシア・パンティーラは元の世界の姿に戻る。
3日とはいえこの姿から解放されるのは気分がいい。
名馳 悠もまたなりたい姿を思う。本当の私。ダ、ダメ! でちゃう!
『ふ、やはり表は心地よい、手始めにひと暴れ、なに? 内に封じられてなお我を縛るか』
さてはて、屋台でいっぱいとアンシアはご機嫌モード。ふと隣に目をむければ自分の所属している悪の秘密結社の首領の姿!
ぶふぉっと大部分を吹き出す。
「まあ! ジャスティスレッド先輩!
い、いえ変身してらっしゃらないのですから……藤田英一郎様!」
なんともご丁寧な彼女は首領本人ではなさそうだ。というか呼ばれた名前は従兄弟の名前。
ヒーローじみた名前にもしかしてあいつヒーローなの? っていうかこの子が後輩? と半眼になる。
「その、人違いだ。親戚だけど」
「まあまあ失礼しました、よく似ていたので! それにしても! このような異郷の地で同郷のかたと会えるとは! 私、名馳悠と申します。あの、お名前をいただいても……?」
「ア・アンシアトナノッテイル」
だいぶ片言になってしまったが混沌の名前なら怪人とばれない……はずだ。
混沌の女神の齎すこの出会いが彼ら……彼女らをどう変えるかはまた別のお話。
これはファントムナイトの一夜の出来事を語るある人物の証言である。
証言者のプライバシーを考慮して、仮にN田K治と表示する。
音声もプライバシーを考慮して変えてある。
『ええ、はいあのときは気づいたら地面に突き立っていました。
アレは確か祭りを楽しもうとしていたときです。
褐色の美少女がいまして、得意先が増えることはやぶさかではありませんし声をかけたのです。
突如その美少女は私の片足をフックすると頭から落とされて……そこから先の記憶はありません。
名前ですか? たしかフィ……』
(この後画面が揺れ暗転)
二人は衣装をラサファッションに着替えて、サンド・バザールでお買い物。
シラスとアレクシア・アトリー・アバークロンビーはお互いの姿をみて似合うね! と笑い合う。
シラスは民族感あふれるスタイリッシュな衣装、アクセサリーもジャラジャラと。ラサの王子のできあがり。アレクシアは薄手の、魔法使いのような衣装を選ぶ。暑い国の服ってひらひらしてて薄くてイイ! とは少年らしい感想で。でも口にはださない。
お互い衣装を褒め合うが、足りないものがあるとお互いに思う。
だからふたりはお互いに、さり気なく物色中にみつけた素敵なものを送り合う。
「えい!」
シラスの頭に飾り紐のついたキャスケットが被せられる。
「これ?」
「その、似合うと思うんだよね!」
はにかむアレクシアの髪にシラスは彼女によく似合う茉莉花(ジャスミン)の髪飾りを飾る。
「うん、よく似合うよ!」
誰かに貰う側というのはなんと嬉しいのだろうか?
アレクシアは髪飾りのように美しい笑顔をシラスに向けた。
砂の都。幻想とはまた違う雰囲気はお祭りだから?
祭りに載せられていつもとは違う衣装。もしかして拙は祭りに浮かれているのでしょうか?
「おや、よくお似合いですよ。雪之丞さん」
鬼桜 雪之丞の姿に、ヨシツネ・アズマスクがいつもの姿で微笑む。
「ヨシツネ様は平常通りでございますね」
「そうか、仮装する必要があったのか。なんだか今日は雰囲気が違いますね?何処か楽しそうだ」
彼女との逢瀬はこれで二度目。柔らかくなったその雰囲気に言葉をかける。
「どうでしょうか。今回は、果たし状も貰っておりませぬから、それ故かもしれませぬ」
前回の文が果たし状だと思われていたことにヨシツネはこころの中でため息をつく。なんとも文というものは難しい。
「エンニチはこちらの世界でしか体験したことがありませぬね」
そういう彼女の朴念仁にヨシツネは仕方がないなとエスコートをはじめる。これは今日は忘れぬ日になるように、めいいっぱい楽しませようと誓った。
【金色流れ星】の面々は各々仮装姿で集まる。
マルク・シリングはベージュに茶色のチェックのインバネスと鹿撃ち帽。ルルリア・ルルフェルルークはお菓子の魔女。リディア・ヴァイス・フォーマルハウトは南瓜パンツのコウモリ娘。
アンナ・シャルロット・ミルフィールは赤ずきん。
「これにパイプを銜えると、ウォーカー世界では有名な探偵の姿になるんだってさ」
マルクはウインクをする。
アンナは二人が魔女なら自分も魔女にすればよかったと呟く。でもそうなったらマルクさんはなにになるんだろう?
一面の砂だらけの中に浮かぶオアシスの其の街は彼らにとっては珍しいものでいっぱいだ。
まずはみんなでレストランに。
「これは羊肉かな?ものすごくスパイシーに味付けされてる。どのくらいの香辛料を使っているんだろう」
マルクは余裕の表情だったが、残りの三人は辛いものは得意ではない。
んん~~と口をおさえてスパイスの刺激にアンナとリディアとルルリアは涙目だ。
「ナツメヤシか。干しぶどうみたいに甘いんだね」
そんな三人にきづくこともなくマルクが解説をすることに三人はんもう、とにらみつける。
辛そうじゃないのを選んだのに口の中はもう大火事だから。
口直しのおやつをお菓子の魔女と赤ずきんがだして口に入れる。コウモリ娘はマルクにあとで美味しいミルクティを所望するのだった。
【花酒亭】の面々もまたみんなで集まって、闇市での目利き勝負をはじめる。
せーのでえらんだその物品は?
キョンシーに扮するリノ・ガルシアは久々のラサに心が躍る。
なにか素敵なものをとのオーダーに変えたものは唐揚げ。うん、美味しいからいいけど。
具体例がなかったことが敗因。美味しいけど。
みんなは何?と問いかけた。
ハーピイ姿のラダ・ジグリは商業知識と交渉術で挑戦する。
日々培う知識と経験は誰よりもあるはず!
じゃーん!! 盗賊王のぱんつ。
ねえ、これだれが、闇市にもってこれたの?
亘理 義弘は彼女らの仮装に似合ってるじゃねえかと頬が緩む。
そんなヤクザな彼の目利きで選ばれたものはなんともびっくり! 皇帝挑戦権。
なんでラサの闇市でこんなものがあるのかはわからないが、自分は鉄蹄民ではないのだ、こんなものいらないと、少し焦る。
ラダとリノは無責任にもやっちゃえ! やっちゃえと騒ぐ。
やらねえからな。と煽りには断固拒否する義弘。でもほんとにやってみたくないの?
メイドに扮するRemora=Lockhartは彼女らの仮装に目をぱちくり。
さては闇市。いつもは猫ばかりだけれども今日こそはすてきなものを! 雑多に詰まれる品々のなかにきらりとひかる宝物。鮫の目はそれを見逃さない!
とりだしてみればガラスの中に色とりどりのラインのはいった……ビー玉だ。
その、下着と危険なものはともかく……、私とリノの一騎打ちでは?
というか、からあげは食べたらおわりですがビー玉は残りますよとレモラは続ける。
まあ、宝石にも見えなくないかな? とリノは苦笑する。
ラダは猫が飲み込まないようにねと同じく苦笑する。
では勝敗は?
この思い出を共有できた俺達全員が勝者じゃないのか? 義弘はそういってシニカルに笑った。
一人歩くサンディ・カルタはこの祭りを持て余す。
調べずに飛び込んだサンド・バザールはどこから手をつけていいのか見当もつかない。
そんな彼の目に映るのは色黒の美少女。
ラサの子っぽいからきっと詳しいだろうと話しかける。
名物があるなら奢るよと話しかければ、ニンマリとわらった彼女はやたら高い食事を所望する。
お金あるかな?
少しくらいはいいところをと射的に誘えば、思った以上に美少女は上手くていいところを見せれなかったことに悔しくなる。
ああそうだ、名前は? ときいた瞬間に地面と空が反転する。
投げられた。
理不尽にも地面とキスをすることになったサンディは褐色の少女があっかんべーして走っていくのがみえて、一筋縄ではいかないな、とそう思った。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
この度は突然の代筆でお客様にはご迷惑をおかけしました。
夏あかねGMは無事ご出産とききホッとしております。
しばらくの療養で母子ともに元気に帰ってきてくれると嬉しく思います。
今回ふんわりと描写させていただきました。代筆ゆえ物足りないものはあるかもしれませんがご了承くださいませ。
全員描写したつもりですが抜けていましたらお問い合わせくださいませ。
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
夏あかねと申します。トリック・オア・トリート!が合言葉です。
皆様をお招きするはラサの夢野都と名高い『ネフェルスト』。
サンド・バザールや景観をどうぞ、お楽しみくださいませ。
※ご同行者がいらっしゃる場合はお名前とIDではぐれないようにご指定ください。グループの場合は【タグ】でOKです。
※当依頼には謎のNPCが紛れています。なぜって、ハロウィンですよ!
●傭兵(ラサ傭兵商会連合)
平素は何処の勢力にも与せず、依頼を受ける事でスタンスを変える傭兵国家。
力ある商会と傭兵団が結び付く事で共同体を形成した連合体です。
大陸中心部の砂漠地帯に存在し、その首都ネフェルストは砂漠のオアシスとして機能しています。その美しさより『夢の都』と称されることも……。
今回は『砂蠍』の大討伐を行った事で『特異運命座標』に迷惑が掛かったとラサの『赤犬の群れ』首魁のディルクよりご招待を戴きました。
夢の都と名高いネフェルストやサンド・バザールで心行くまでお楽しみください。
(イメージはアラビアンな感じです。素敵なアラビアン・ナイトですね)
●首都ネフェルスト、サンド・バザール
アラビアンな雰囲気をお楽しみいただける砂漠のオアシス。夢の都と呼ばれています。
様々な我楽多から一級品までが並ぶサンド・バザール(闇市でおなじみ!)にはハロウィンに因んだ料理も勿論のこと、スパイスのぴりりと辛い料理やアラビアンなお料理が並んでいます。
勿論、何所かのレストランでお楽しみに戴くも、仮装したラサの傭兵や商家の子供達と遊ぶも、サンド・バザールを回るも皆様次第。
※※※皆さんは今回はディルクのお客様として招かれてます。不要な戦闘行為はお控えください※※※
●NPC
当シナリオにおいてはNPCはお名前を呼んでいただけましたら登場する可能性がございます。
ステータスシートのあるNPCに関しては『クリエイターが所有するNPC or ローレットの情報屋』であれば登場が可能です。
ラサのNPCに関しましては
・『赤犬の群れ』のディルク
・『レナヴィスカ』のイルナス・フィンナ
は確実にホストです。
●???
街の中にどうやら、商家の褐色肌のびしょうじょ(一目置かれてる!)や竜角の少女&おじさんペアがいるようです。
彼らに声掛けをする事は可能ですが、竜角ペアは正体不明です。取り敢えず飲み食いしています。
フィオナについてはまぁ、謎も何もない駄存在です。(にぎやかし)
それでは、楽しい休日をお過ごしください。
皆様の冒険をお待ちしております。
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