PandoraPartyProject

ギルドスレッド

噴水前の歌広場

【ヨハナ・ゲールマン・ハラタ】冬への扉

「波をね、消してるんだ」

 残暑厳しい季候ももうすぐ終わりを迎えようとしている。なまぬるいばかりであって文句を言っていた噴水も漸くひたひたとしていられる具合になった。りぃりぃと茂みから虫の歌が聞こえる誰そ彼時に感じ入るような様子でいながら足を浸し、俯いて水面を見つめながら彼女はそんなことを唐突に言った。
 ゆらめいた足がぱちと波紋を生み出して、映った青白い顔がゆらゆらと消えた。

「こんなちょろちょろの噴水でも、波は起きてるからさ。だから、蹴っ飛ばして消してみようって思ったんだよね。でも何度蹴っても消えない。新しい波が出来るばっかり」

 あーあ、がっかり。と言いながら楽しそうな顔で彼女はぱちゃ、ぱちゃ、と波風を立てる。何度も。何度も。何度も蹴って蹴って蹴っている。

 そんな彼女を目にした貴女は―――

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そうなんだ。
ヨハナちゃんにとっては、それはとても具体的な形のある行為なんだね。
外形なんて無くなっても、そんなことはどうでもいいんだね。
本質は形なんだ。うん。
まると しかくと さんかくと
ほどいてみたら いっぽんせん♪

(鼻歌を歌いながら、調子っぱずれの曲を奏でている。
最初は電子音華やかなりし舞踏曲、そしてミニマルな繰返し、でもどれも違うなあと首を傾げながら、ああでもないこうでもないとキィボードを爪弾き続けながら、噴水の周りをぐるぐる回っていた)

思えばさ。
僕とあなたは、こうやってお互い楽しい話をしてばっかりだよね。
楽しい話の楽しさが同じだものなので、もうすっかりお互いの具体的な自己紹介をしていないんじゃないかって思うよ。
……だよね、きっと。
(ゆーら)(反対側へゆーら)(また反対側へとゆーら)
(メトロノームみたいに額を交互に揺らして)(旋律に合わせて...)

....やや?
そういわれてみればっ! そうでしたねっ!
ヨハナとしたことがお仕事で簡単な自己紹介を済ませたっきりでしたっ!
カタラァナさんともっと仲良くなるのでしたらば、もっとお互いのお話が必要ですものっ!

 (ずるずるびたん、と)(水を吸った衣服を引き摺り噴水から這出て)

それでは改めましてヨハナはヨハナ・ゲールマン・ハラタじゅうななさいっ!
あいにくながらヨハナはヨハナ自身の経歴を知らぬため多くを語れませんがっ!
語れませんがっ どこにでもよくいるちょっと軽快な未来人ですっ!
ご質問ございましたらばしばしどんどんどうぞっ!
自身の経歴がわからない。
なのにみらいじん?
はてなが一杯だね。そもそもみらいじんという種族を僕は聞いたことがないよ。さてどう質問したものかな。
(ぽろんぽろんと爪弾くのは結局スタンダードなハープの音色。
アルペッジョでメイジャー、マイナー、交互に進行するコードが場景に合うのだか、合わないのだか。
夕暮れの西日がぎらぎらと背なを照らすので、彼女の顔はまっくらだった。
未来人というワードを彼女は恐らく知らないが、便利なのは崩れないバベルである。それはきっと彼女には、見知らぬ神の名にでも聞こえたのだろう)

そうだね。ながっぴろく聞込むのもいいけど、詩人らしく簡潔に行こうかな。
未来を知っているあなたに、未来はあるの?
まったくですねよねーっ。
ヨハナ自身も軽いアイデンティティ・クライシス起こして困ったり、困らなかったりですよーっ。
経歴分かんなくとも、私生活は全然問題ないんですけどもねー。

(白く冷えた肌に、煌々と輝く赤焼けを顔に受け、眩しさからか「きゅう」と目を細める様は)
(絹に陽の朱が差したように紅潮し、どこか喜ばしそうに笑っているようにも見える)
(真実、あなたとのやりとりが楽しいのだろう)(事実、笑っているのだろう)

(あなたが音色に問いかけを載せる僅かな間まで、心地が良いようだった)

「未来を知っているヨハナの未来」ですかー?
えっとですねー。ではヨハナらしいお返事はですねー・・・・。
(んんんと首を傾げ)
まず、「ヨハナは未来を知りません」。
予感をしてはいますが、未来について確かな事実は何一つ記憶にないんですよ。
まったくもっておかしな話だというのは重々承知ですけども。
まぁ、それは置いといてですね。

それで、ヨハナ自身の未来ですかー?
未来はですねー、それは当然...
当然っ!
これでもかーっ これでもかーっ ってくらいの、輝かしくも安息と幸福に満ち満ちたっ!
そんな素敵な未来が待っておりますともっ!
そしてそれはヨハナが、ヨハナ達が手に入れるんですよっ!
(誇らしそうに、えへんぷい!と胸を張る)(断崖絶壁だった)
おー。なるほど。
何となく、あなたのことが見えた気がするよ。
(ぽろぽろと迷子のように迷走していた曲が、段々と連なって行く。
技巧的なアダージョ。淡々と静かで寂寥感すら感じる、緩やかで安らぐ破滅的な終末感。
まだそれに歌詞を付ける気はないようだ。断崖絶壁をとっくと眺めながらうんうんと頷いている)

過程がないんだ。
空恐ろしく、結論ばかりがここにある。
あなたは過程の大事さを知っている。
なにひとつ実を結んだ結論がないのに。
それこそ、あなたが結果の申し子である理由。

……段々、曲になってきたよ。
なんてね。
さあ、いっぱい聞いてしまったからには僕の話をしないと行けないよね。

ぼくの なまえは カタラァナ
うたの そとに ぼくはなく
ぼくの なかに うたはない
つたなく ひびく れこぉどの
はりを つまんで おきましょう♪

何でも聞いてよ。
生まれた場所でも、家族構成でも、いっぱい聞いてくれていいよ。

あ、そこんとこにさ、いつも美味しいフィッシュアンドチップスを出してくれるお店があるんだ、それでも摘みながら座る?

(カタラァナが指差すと、屋台の親爺が露骨にイヤな顔をしている。
ぼちぼち店仕舞いのつもりだったようで、またああいう顔をするからには、そういう反応をカタラァナは今迄さんざん無視していたということがわかるものである)
然もありなんですねー。
実りある過程をとるには、選び取るべき結果を選定しているのが必要条件ですのでー。
これ即ち、目指す結果が明確ならば、過程は如何様な形でもー・・・
・・・・というのはヨハナ的にもまだ答えが出ない領域ですねっ!はいっ!

わぁいふぃっしゅあんどちっぷす!
ヨハナ、それはまだ食べたことのないものですねっ!
思えばまだまだ食事をとっていなかったので大変ちょうどいい申し出っ!
食べましょう、ふぃっしゅあんどちっぷす! おしゃべりしながらっ!

おじさまーっ! みしらぬおじさまーっ!
とびきりおいしいふぃっしゅあんどちっぷすっ!
おひとつくーださーいなーっ!
(ぴょんこぴょんこと跳ねながら、屋台の爺に向かって両手をふる)
(いつもの時間を気にしない厄介な常連に加えて、今日はもうひとり喧しいのがいるとこれまた、露骨にイヤな顔。
恐らく旅人か、その縁者であろうあからさまな屋台のアルファベットが目を引く。露天商とはありふれたものであるが、揚げ魚に好きにソースをかけさせるスタイルはまぎれもないイングリッシュスタイル。
ぴょんこぴょんこと跳ねるのを無視し、軒先のカーテンを下ろそうとするのだが、てこてことそれに近づきカタラァナはふたつ、くださいと言った。
火を下ろし切ってないのに気付いているというのも、あった。
彼女が音に耳聡いのを彼は知っていて、本当の店仕舞いの時は邪魔をしない、ということも。
だから結局彼は、あいよ。と言ってフライヤーに白身魚をぶっきらぼうに突っ込むのであった)
(じゅわじゅわと油の弾ける衣とポテトがガサガサっと紙を折りたたんで作った袋に押し込まれる。
世が世なら新聞紙とも呼ばれただろうそれは、質はお察しながら限りなく真に迫っていた。
料理は味わうものであるが、味だけが本質ではない。
そんなことを語っているようなぶっきらぼうな料理を二つ受け取ってゴールドを払うと、カタラァナはくるりと振り返った)

このね、塩とビネガーと、あとグレービーソースとケチャップと、あと……
うん、いっぱいあるんだ。
好きにかけていいんだよ。

(云うやいなや、彼女はどばーっと魚に塩とビネガーをかけったくると、近くのベンチに腰掛けてポテトをもさもさ齧り始めた。
……何だか、芸に成功してイワシを貰うイルカのように見えた)
ひょあああああぁっ!
油っ! 揚げ物っ! じゅわじゅわしてるっ!
ありがとうございますっ! ありがとうございますっ! いただきますっ!
(一言目をあなたに)(二言目をお爺さんに)(そう言ってから紙袋を手に取る)

ほぁっ ほぁっほわぁっ! あついっ! あつあつですっ!
出来立てほやほや・・・いや、ぱちぱちしてますっ!
(右に左に紙袋をパスさせながら熱を冷ますさまは至極楽しそうで)
えっとですねーそれじゃヨハナはソースとケチャップとマスタードとー・・・・
・・・・えぇいっ! ひとつやふたつでなく全部かけてしまいましょうっ!
今日のヨハナは欲張りですよぉっ!
(ぺたりと隣に座りこんで、一口目をサクリ)
ほはふはふはふっ!
ひゃはらあなはんっ! ほえ、ふほふおいひいれふっ!
ふはへははははにねふはもほっへひまふっ!
へんひひゃふはいへふっ!
うん、そうでしょう?
やっぱりそう思うよね。
僕もそう思うよ。(てきとう

(もさもさと齧りながら、暮れなずむ街を茫洋と眺めていた。
見ているところはとても遠くのように見える)

……さあ、腰も落ち着けて、お腹もくちて。
言葉に詰まった時の為の食べ物も手に入った。
僕の、聞かれる準備はもう整ったよ?
(まふまふと魚のフライを頬張りながら...)

そうでした、そうでしたともっ!
えぇ、えぇ、このヨハナ・ゲールマン・ハラタは食事に気取られて主題を忘れてはいませんっ!
聞いてみたいこと語っていただきたいことはいろいろ思いつきますがっ
まーすーがーっ!
まずは、「カタラァナさんの故郷ないし家はどのような所か」なんて伺ってみましょうっ!
そっかそっかよかったよ。
てっきり僕の存在はフライの彼方に飛んでいってしまったのかと思ったよ。
フライだけに。

(ヨハナちゃんのほおばる逆の端からワインビネガーをどぼどぼかけている。
おじさんが、高いんだからそんなに使うなという顔をしていた)

ええと、故郷、家、うーん。普通だよ?
……って言っても、それじゃあ納得しないよね。
だって誰の故郷も誰にとっては普通で、誰かにとっては普通じゃないものね。
そうだなあ、何といえばいいかなあ。

(ぽろんぽろんと鍵盤を掻き撫でる。散発的で即興的なハープの音はとり止めの無さを脱して流麗なアルペッジョに移行していた。そこには震えるように官能的なサキソフォンも混ざる。もし然るべき知識を持つ者が見ればそれをシンセサイザーという楽器と見間違ったかも知れないが、この音色を為さしめるのは彼女の魔法と音楽的素養である。

ぶくぶくと しずんでいく
あわをはいて みずをのんで
くらい くらい うみの かなたへ
さむい さむい なにも ないところへ

 例えるなら、そんな曲だった)

僕のふるさとは、海洋のはじっこの、そのまたはじっこの、さらにまたはじっこ。
ほんのわずかの島嶼がいくらか、あとはぜんぶ海ばかり。
みわたせば底には無限の青、それを遠目に眺めて過ごす。
それが僕らの いつもの暮らし。
ほんの普通の、海洋の田舎貴族だよ。
地上ではね。
海っ! 海ですかっ!
ヨハナ、勉強をしたので島嶼がなにかはわかりますよっ!
ちっちゃい島ことですよねっ! どのような、までは想像がまったく追いつきませんがっ!
しかも貴族だったとはっ! お洋服選びに育ちの良さが滲み出ているはずですっ!

それに、青っ! 海っていうのは底の方までちゃんと青かったんですねっ!
いえいえヨハナも実際に海を見に行ったことはあるのですけもっ
ですけども、浜辺は足元の砂浜がすぐに見えてしまってですねっ
青みがまーーーーーーーーーーったく足りなかったんですよっ!
そうですかぁっ ちゃんと芯までたっぷりの青色だったんですねぇっ!

見上げても浮き上がっても沈んでも青色・・・・・
・・・・・うーんっ! 想像もつきませんっ! 見て見たくありますねっ!
ううん、底の方はまっくらだよ。
光なんてなくてもっと暗くてすっごく暗くて、目なんてあってもなくても変わらない真っ暗の黒。
透明な浜辺も綺麗だけど、僕にとって海は黒いものだったな。

……でもね。
そんな海も、どうしようもなく青くなる時があったんだ。
僕の手が届かない無限の青。
人が呼ぶそれは、絶望の青。
やっぱりそこも真っ暗だけど、僕にとっては青いんだ。あすこは。
海は黒い。黒色。
黒いのに青くなる、ですかぁ・・・・???
んっん~・・・・・なるほどぉなるほどぉ???
(わかっているのか、わかっていないのか)(そんな様子で首を傾ぐ)
いえ、さっぱり。
(わからないようだった)

やはりこの地点において、ヨハナはまだまだ見聞が足りず浅学で無知ですねー。

あっ! つぎっ! つぎですねっ!
カタラァナさんがヨハナに質問する番ですよっ!
もうなんだって聞いちゃってくだ
ーーーえっきゅ!
(ワインビネガーどばどばなフライを齧って、変な声を挙げた)
今の説明でわかったら僕もびっくりだよ。
だって人の五感なんて芸術でも使わなきゃあいくらか伝わるものでもないでしょう?
だから、僕から聞くのは……ううんと、そうだね。
もっと単純なところから行こうかな。
僕はまだまだ、さ迷うばかり。泳ぐためにはヒレがいる。
ヒレをあなたから貰いたいから……

あのね。
貴女の『過去』を、全部教えてほしいんだ。
今から見て、どうとか。じゃなくて。
あなたが覚えているかどうか。じゃなくて。
貴女の持っている『過去』。
これは僕は、とても非常に、興味があるんだ。
一体何を 持っているの?
なにも もたず しらないくせに
たしかな なにかが そこにある♪
……それが僕は、不思議だよ。
過去は憶測できる。現在は演算できる。
そして未来に確証を持つのは歴史だけだよ。
それがないのに、結果だけを持っているその不自然さが、僕は、とぉぉっても、気になっているんだ。
――おいしいでしょ?

(ビネガーのことは、急に味が変わるいたずらであったことは確かだが。
しかし確実に善意ではあるようだ)
突然のパワーに面食らうぐらいにはおいしいですねー?
ヨハナの舌がまだおこちゃまなのがいけないんでしょうかー?
(ビネガーでずくずくになったフライをもっちゃもっちゃしながら)

あ、でも、だんだんおいしさが舌に馴染んできたようなー?
(もっちゃもっちゃ もっちゃもっちゃ)
・・・・閑話休題。
カタラァナさんもなかなかに欲張りさんですねぇー。
1個だけ質問していいよ、って言ったら「世界とは何だ」と問うようなものですよっ。
包括的だし具体性に欠きますし、なるったけ主観を排さなければなりません。
なによりもなによりも、記憶がございませんと言っているのに、ですよ。
あらやだ意地が悪いったらありゃしませんわうふふのふっ!

ややや・・・・・それにしたって困ったものです。
全部ですか。ぜーんぶですか?
でしたらばっ?
ヨハナ的にもほぼ確実と呼んでいい始まりの記憶を語るべきでしょうっ。
おそらく記録や事実について聞かれている訳ではないでしょうしねっ!
ちがったらちがったでアンインストール、あってたらDLCを順番に落としてもらう感じでいきましょうそうしましょうっ!
まず、私の感覚は痛みから始まった。
重く、息苦しく、閉塞感に満ちた鬱屈さ。
目の前は真暗だった。すぐに気づいたことだが瞼を閉じていたからだった。
自分が何故こんな事になっているのかわからなかった。
混乱の中、錆びた鉄の車輪が空回りする音が、苦痛の呻きを挙げていたことを覚えている。

痛み、過呼吸、動悸。否応なしに叫ぶ心臓の震えが首筋を通じて脳を揺らす。
落ち着いて・・・・と、私は自分自身を宥めるように声をかけた。
ひとつ、ひとつ、ひとつ、と息を重ねて。重ねて。
ひとつひとつを確かめるように五感を開いていく。

視界・・・・曇っていた。なにかを被せられて、ガラス越しに外を見ているようだった。
聴覚・・・・耳鳴りが酷い。千回転した後みたいにぐるぐると気持ち悪い。
嗅覚・・・・鉄とオイルの焦げる匂いに鼻が曲がる。
痛みはいわずもがな、どうやら自分は無事であるようで少し安心する。
指先と足先に力を籠めれば、痛みはするものの動くことはできるようだと解る。
そこに来て初めて自分自身がなにかに座っていることを理解した。

次に、這うような速度で立ち上がる。
すると、足元のぶよりとした感覚に脚を取られ、額から崩れ落ちる。
曇った視界を突き刺し、撫でるようなセーフティランプカラーの迷彩が、自分が被っている「なにか」越しにぞりぞりと撫でつけてくる。

・・・・・意味が分からない。
私自身の理解と解釈が追いつかないままに放り出された気分になる。
後ろを振り返ってみれば、そこには漸く私に理解できるものがあった。
錆付いた『C204蝙矩㍾蜉帶ュェ譖イ譎る俣霆「遘サ陬?スョ』が、スパークをあげながら明滅していた。
おおよそ修理もできないほどに壊れているように思えた。
あー・・・・・・(ここで話を切る)

丁寧に話しすぎて、ここだけでめっちゃくちゃに大仰に長くなりそうなんですけども。
要約した方がいいですかねー?
でしょう?
敢えて台無しにするのもひとつの醍醐味だと思うんだよね、僕。
(そんなにするなら食うな、という視線と、分かっているじゃないかという視線が半々ないまぜになったものが後ろから飛んできている気がする。
既に油の火を落とした親爺さんは、店の周りを片付け始めていた)
(そして彼女は、もさもさと魚を胃の腑に収めると、ごくんと喉を鳴らした。
丸呑みだったのではなかろうかとばかりの健啖を見せつけながら、噴水の水たまりに手を突っ込んで乱雑にばしゃばしゃと指の脂をこそぎ落とし、好奇の面持ちを全く隠さないまま楽器を爪弾いた)

どうして。もっと話してよ。
大仰に長くて壮大なのが人間というものでしょう?
ならそれらしく脚色するべきさ。
そう、だからなるたけ人間らしくお願いね。
それが事実であれ、あるいは貴女が誇大妄想狂(メガロマニア)なのであれ、その差に興味はないから。
貴女が貴女を作り上げるファクターを、僕は知りたいんだもんね。

ところで、でぃーえるしーとかだうんどーろってなぁに?
簡潔でスリム、あるいは要所要所だけ盛ったボンキュッバーンもありかと思うんですけどもねー?
ヨハナ自身がスーパーフラットであることはさておいてですよっ。
それじゃあ話続けますね。
分割商法とかアンロック商法の話はまた別の機会に...
話を戻そう。
振り返るとそこには壊れた『C204蝙矩㍾蜉帶ュェ譖イ譎る俣霆「遘サ陬?スョ』があった。
金属の骨組みと歯車、そして様々な機械部品が散乱していて、手のつけようがないほどに。

 ・・・・なぜ?

そう問うた。
それは「なぜ壊れているか」ではなかった。
なぜ『C204蝙矩㍾蜉帶ュェ譖イ譎る俣霆「遘サ陬?スョ』を理解できて、今の状況を理解できない自分がいるのかに、疑問を覚えたのだ。
疑問の解を求めて痛みを訴える頭をほじくり返す。
自分の知識と記憶の一つ一つを精査し、振り返り、審美し・・・・

・・・・そうして私は愕然とした。
私には『C204蝙矩㍾蜉帶ュェ譖イ譎る俣霆「遘サ陬?スョ』や『驕雁虚繧、繝ウ繧キ繝?Φ繝亥庶譚溯ェ、蟾ョ』や『蜿苓i陌壼ョ滓焚繝エ繧ゥ繧、繝画?蝙狗黄』の情報を知識として備えているのに、それらを裏付ける記憶が存在しなかったのだ。
私がなんであるのか、ここがどこであるのか、なにをしていて、なにがあっていまにあるのか。
そういったここまでに至るために必要な情報の全てが、致命的でなく壊滅的に欠けていたのだ。
意味不明な解答だけを突きつけるような「知識」だけしか自分の中に残っていない。
しかも口に出そうとすれば、まるで『なにかに存在を否定されるように』形になろうとしない。
冷え切った思考は安定をもたらすどころか、自己そのもの存在の危うさを囁く。
思考を、思考を止めなくては。
そこからどういう道筋を辿ったかは覚えていない。
じっとしていると思考に攫われそうで、できるかぎり考えなしに歩いていた。
一歩踏み締めるたびに、節々の痛みが思考を麻痺させてくれる。
被り物のおかげで曇った視界と、荒い呼吸は集中力を余計に削いでくれた。

そういえば、なんでこんなものを被っていたのだろうか。
なんだか有害なものから身を守るために装着していた気がする。
それすらもよく分からない。

指先で引っ掻くように顔を撫ぜると、それは布と樹脂でできているように思えた。
隙間なく肌に密着したそれを乱暴に引っ張り、剥ぎ取って
その瞬間
ヨハナですねっ。
その瞬間に、どうでもよくなっちゃったんですよっ。

(手についたソースの残りを舐め取って)
(ごちそうさまでしたっ!とお爺さんに頭を下げた)
たていとと よこいとの
もようは だれにも みえるのに
ほどいて といて やれるのは
いったい だれの しわざやら♪
(爪弾いていた曲は、複雑なエフェクトのかかったゴリゴリのチューンから一転、チルアウトに向かっていた。
特に、顔に佩いていた“なにか”を剥ぐあたりに向けて、じっくりと緊張感と焦燥感を盛り上げて、そこからすっと穏やかで寂寥感のあるナンバーに繋ぐ。
それは、なくしてしまったきっと大事な何かを惜しみ悲しんでいるのに、それがなぜ大事なのかを理解できずに茫洋としているようだった)

そうか、君にあるものとないもの。
縦糸と横糸。僕はそれを少し勘違いしていたかも、と少し思ったよ。
君に大事なのは縦糸だと勝手に思っていた。けれど。
たぶん、実は……
ううん、憶測で云うのは失礼だよね。

ふふ、良いおはなしを聞かせてもらったなぁ。
お礼に、僕もひとつ、サービス。アーティストの面目にかけて、あれだけ披露されては僕もそれだけの質を提供しなければとても。恥ずかしくって明日の朝御飯も買いに行けやしない。

次の質問、貴女からのそれはちゃぁんと応えます。
抽象や比諭じゃなくて、ちゃんと僕の言葉で答えます。
それが僕の差し出せる誠意……
うーん、違う。対抗意識かな?
およよー・・・・? 今ので充分でしたかー?
ここからもっと掘り下げなきゃかなーと思ってましたけどもー。
(合点がつかないように首を傾ぐ)(いまだ推察が及ばぬように視線も傾く)
(少なくとも、悩みなんてこれっぽっちもなさそうな、あまりに健常すぎる娘の、あまりにも当たり前すぎる様相がそこにあった)

んーんー・・・・ 対抗意識の原因もちっともわかりませんねっ。
ヨハナはやはり浅学にして無知でありますからー・・・・ そういうわけですから。
そういうわけがそういうことなので、この場合の質問はこれに限りますっ。
『またこんな風に、お友達みたいに一緒にお喋りできますか?』
なぁんてどうでしょうかっ!
充分じゃないよ。
きっとまだまだ聞けることはいっぱいある。
もっとある。ぜったいある。
でもそれは、またにとっておくんだ。
こんな面白いお話、一気に読んでしまうのはもったいないもん。
想像するのも詩人のお仕事だ。
そして趣味で、生きる意味でもあるから。
だからそうだね、その質問にはこう答えるよ。

『え、もう僕たち、お友達じゃなかったの?』
うーん……ハラ……ヨっちゃん? ゲーロゲロ……
……ハナちゃんかな?
ひゃああああああっほおおおおおおおぅっ!
(感極まった勢いに任せて立ち上がり、びょんこびょんこびょんこびょんこと跳ねまわった末にゴロゴロゴロゴロと地面を転げまわって、錐揉み回転しながら空中へと跳ね上がったかと思うと、その勢いのままに噴水へと二度目のダイブッッ!!!)

わぁいっ!お友達わぁいっ!
やりましたっ! またひとりこの地点にお友達が出来ましたっ!
うひょわほほほおがばぼべばばばばばぶびびばっ!(ごぼごぼ)
…………
とう。

(上った水柱に、続いて飛び込んだ。
目測を誤って、ヨハナよりもでっかい水柱を上げながら。
そのまますいっと3、40cmほどの水深しかない水溜りの中で、彼女を捕まえて、無駄にばしゃばしゃしている。
とても無益で水を撒き散らすだけの戯れ合い。
けれどもかかった虹はとても綺麗だった。



そしてそれはそれとして、カタラァナはともかく、ヨハナにとっては軽く命の危機であった。)
わっっ ひゃほーっ!
(水柱の中から飛び掛かってくるカタラァナをキャッチして、じゃぶじゃぶと戯れ合う)

あっはははははっ! カタラァナさんそこはくすぐったいですっ!
水の冷たさに感覚をぶばばべているといってもぶぼびばばはダメですっ! ぶぼびばばっ!
なんのヨハナもばべべばびぶば仕返しをびべばびばべばばばぼっ!
べぶばばばばびばごぼぼぶべぼびびばっ! ばぶばばぶばぶべべぶっ!
びぶっ! ぎぶあっぷべぶぶぶっ! わははスリーカウントべべばばっ!
(カタラァナをタップして必死にギブアップを訴えながらごぼべばばぶ)
しずんで しずんで うみのそこ
それでも そこは ないんだよ
あおい そらと よくにてる
そらも うみも おなじものー♪

(すいー ぱしゃぱしゃ

ぷく ぷく ぷく)

楽しいねハナちゃん。…………ハナちゃん?
(疑問の間隙に生じた、戯れ合いの僅かな緩みを突いて)
(ざばりとのたうち体が持ち上がった)(持ち上がって)

(しばらく、過呼吸と嘔吐を同時に行う息遣いで俯いていた)
(時折、本当に口から水を吐いたり、吐きかけた水を過呼吸気味に吸いなおしながら)
(それはそれは、なにかの動物の鳴き真似をするみたいに、肩で息をして)

(引き笑いのように震える深呼吸を、繰り返し、繰り返し)

―――――ハァ――ッー
―――――――めっちゃくちゃ空気おいしい
(咳き込みながらの第一声がそれで)(冗談なのか、それとも悪態なのか)
(それとも本心からの能天気なのか)

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