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噴水前の歌広場

【ヨハナ・ゲールマン・ハラタ】冬への扉

「波をね、消してるんだ」

 残暑厳しい季候ももうすぐ終わりを迎えようとしている。なまぬるいばかりであって文句を言っていた噴水も漸くひたひたとしていられる具合になった。りぃりぃと茂みから虫の歌が聞こえる誰そ彼時に感じ入るような様子でいながら足を浸し、俯いて水面を見つめながら彼女はそんなことを唐突に言った。
 ゆらめいた足がぱちと波紋を生み出して、映った青白い顔がゆらゆらと消えた。

「こんなちょろちょろの噴水でも、波は起きてるからさ。だから、蹴っ飛ばして消してみようって思ったんだよね。でも何度蹴っても消えない。新しい波が出来るばっかり」

 あーあ、がっかり。と言いながら楽しそうな顔で彼女はぱちゃ、ぱちゃ、と波風を立てる。何度も。何度も。何度も蹴って蹴って蹴っている。

 そんな彼女を目にした貴女は―――

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(いつもの時間を気にしない厄介な常連に加えて、今日はもうひとり喧しいのがいるとこれまた、露骨にイヤな顔。
恐らく旅人か、その縁者であろうあからさまな屋台のアルファベットが目を引く。露天商とはありふれたものであるが、揚げ魚に好きにソースをかけさせるスタイルはまぎれもないイングリッシュスタイル。
ぴょんこぴょんこと跳ねるのを無視し、軒先のカーテンを下ろそうとするのだが、てこてことそれに近づきカタラァナはふたつ、くださいと言った。
火を下ろし切ってないのに気付いているというのも、あった。
彼女が音に耳聡いのを彼は知っていて、本当の店仕舞いの時は邪魔をしない、ということも。
だから結局彼は、あいよ。と言ってフライヤーに白身魚をぶっきらぼうに突っ込むのであった)

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