PandoraPartyProject

ギルドスレッド

プロメテウスの火

秋と冬の合間の市

それは雲ひとつない程によく晴れた、とある町の近くの農村での話だ。

その日の市は秋の恵みと冬の備えに沸いていた。
様々な作物に、ずらりと並ぶ肉類、近くの森で集めたろうベリー類がそこかしこに並んでいる。
いずれも新鮮なものから既に保存加工が済んでいるものまで様々だ。
近くの露店には、りんごの木の薪なども売られている。
他にも何か欲しいものがあるなら、探せば見つかるかもしれない。

そんな市の片隅に、買い物客向けの休憩所があった。
昨今、日を追う毎に風の冷たさが増しているからだろう。
座って休めるベンチの傍には火が焚かれ、予備の薪まで並べてある。
――これは、流石にりんごではないようだけれど。

ともあれ、時刻は市が始まって幾ばくかの頃合。
早々にやってきた客達は目当ての品を手に入れ家路につき、
遅れてやってきた客達は今まさに品々に目移りしている最中だ。

彼女は、早々にやってきた人間のうち一人だった。
ある程度の買い物は済ませたのだろう。
幾つかある包みは、ある物は木屑の詰まった箱にそっと入れ、ある物は袋にまとめて詰め込む。

いくらかの後、終わったのだろう。
ほっと一息つくとベンチに腰掛け、傍らに置いていた茶を飲みだした。

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……ふぅ。これで半分だな。

(先程、市の店で買ってきた暖かい茶を一口飲む。
 昼に差し掛かり、気温は少しずつ上がってきている。
 朝は上着が手放せない気温だったが、そろそろ火から離れなければ少し暑いかもしれない)

あとは終わる頃に一巡りするだけか。
良い物が残っているといいが、この分だと売り切ればかりかな。

(休憩所に一人だから、自然と独り言が漏れていた。
 市の終わりには、商品を売り切ろうと値を下げる店が出てくる。
 最後にそこを一回りするつもりだったが、それなりに市は盛況な様子。
 この分では売れ残りにはあまり期待が持てないようだ)
――はァい、じゃあよろしくね。

(長い尾を揺らした獣種の女がそう言って己が荷物を託した荷車に手を振った。
 屈強な男は無言で頷き重そうな荷車をロバに引かせて市場を後にしていく。
 それを見送った女は踵を返し、悠然と休憩所へと足を踏み入れた。
 唯一、女の手荷物らしき紙袋がかさりとその手元で揺れる)

あら、お一人?
お邪魔じゃなければご一緒しても大丈夫かしら?

(ベンチに居る先客に気付いたか、気安い様子で声が掛けられる。
 ゆるく首を傾げ慣れたような愛想笑いが口元に張り付いていた)
(市が終わる頃合までどうやって時間を潰そうか。
 二本の足を何度か組み替え、持ってきた本でも読もうかと考えていた時だった。
 かけられた顔を上げれば、笑顔の女性が一人)

――ええ、もちろん。

(対するこちらは特別愛想も良いとは言えず、然程表情も変わらずの有様であった。
 ただそう言いながらも、着々と荷物をベンチの脇へと寄せていく。
 ベンチはそれなりの大きさがあり、この分なら余裕をもって二人で座れそうだ)

肌寒ければ火の近くに座られるといい。
私は少々暑くなってきた所で。

(薪を足さなかった為に少しばかり火勢が衰えている。
 まだまだ消えはしないだろうが、温もりが欲しければ薪を足す頃合だろう)
休憩中にごめんなさいね、助かるわ。

(寄せられる荷物にありがとう、と笑みと礼を返す。
 遠慮なく空いたベンチのスペースにするりと腰を下ろした。
 火の弱まった焚火に視線を向けるも肩を竦めて)

今は陽射しがあるから大丈夫そうね、お気遣いどうも。
最近肌寒くなってきたし朝からの市は堪えるわね、美味しいものが多いのは嬉しいんだけど。
今の時期用意しなくちゃならないものが多くて大変だわ。

(足を組みながら女が溜息を零す。視線は当てもなく市場を彷徨って。
 恐らく目的な隣の彼女と同じく、市終わりの値下げ品だろう)

そちらも随分大荷物ね、行商の方かしら?
何か良いものは買えて?
ちょうどひと段落ついた所だったから問題ない。

しかし、朝早いのは今の時期仕方ないのだろうな。
そこの店で言っていたが、市の為に朝から収穫作業で、帰ったらまた別の収穫だそうだ。
畑に今年分の収入が実っているのだから仕方ない、と笑っていたが。

(まだまだ人通りのある市へと視線を投げる。
 威勢のいい呼び声や談笑する人々の声がサワサワと休憩所へも流れてきていた)

行商ではないが、仕入れのようなものだ。
菓子作りに使えそうなものを、せっかくだし果物類を中心に幾らか。
予定外のものも購入したものだから、予定より少々多くなってしまったが……
まぁ収穫祭やらある今の時期なら捌けるだろう。

そちらも無事買い物が済んでいるようだが、どんなものを?

(ちらりと紙袋へと視線を移す。
 美味しいものか用意すべきものか、興味が声音に少し滲んだ)
あぁ…なるほど、確かにね。
果物も野菜も朝採りが美味しいし、その分市が早まるのも仕方ないか…。
今年の無花果も瑞々しくて甘かったわ。

(思わずザルに山盛り買っちゃったもの、と目を細めて笑った。
 賑わう市の喧噪に耳を傾けながら同じベンチに腰掛ける彼女へ金目を向ける)

あら、そうだったの。どこも収穫祭の用意で忙しくて結構だわ。
良い買い物が出来たなら何よりね、今の時期なら多少値段を吊り上げても売り切れそうだし。

私は雇い主からのお使いよ、そのついでに自分の私用も少しばかりね。

(大きい荷物は先に送ってしまったと話しながら紙袋を探る。
 出てきたのは女の掌ほどもある大きな南瓜型のクッキーが一枚。
 目にも鮮やかなオレンジ色のアイシングでコミカルなおばけ南瓜が描かれている。
 それを何の躊躇もなく半分に圧し折り片方を隣の彼女へ差し出した)

一緒に味を見てくださる?
収穫祭向けのお菓子ですって、宣伝にもらったのよ。
無花果か。なら帰りにひとつ覗いてみるか。

(そんなに美味しかったなら、と釣られてこちらも笑みを零す)

景気がいいのは良い事だよ、お陰で若造でも恩恵に預かれる。
だが吊り上げるのは中々難しいな。
自分の首を絞めていないか、冷や冷やする時がある。

――おや、雇われる側だったか。
てっきりそちらも商売か何かしているのかとばかり。

(少々意外そうに相手を見つめるも、哀れ真っ二つとなったお化け南瓜を前にすると
 苦笑と共に受け取り、ぱくりとかぶりついた。
 サクリとした食感にクッキー自身とアイシングの甘み、それから何かの香りを感じる)

これはどうも――ん、本当に南瓜か何か入っているのか?美味い。
見た目も良いし、良い売り上げに繋がりそうだ。

しかしこういった物を食べると水分が欲しくなるな。
そうだ、梨でも食べるか?

(流石に自分が口をつけた茶を勧めるわけにもいかず
 先程買った梨をひとつ取り出し、ナイフで半分に割り差し出した)
(クツクツと咽喉奥で密やかに笑みを噛み殺した)

慎重ね、でも良いことだわ。商売って冒険ばかりじゃないもの。
でもここで仕入れたものなら多少値が張っても良いと思うのは事実よ。

(意外そうな相手に軽薄なウインクをひとつ飛ばす。
 割ったおばけ南瓜にこちらも歯を立てた)

えぇ、本業は傭兵をしてるの。今回はギルドとして間借りしてる酒場の仕入れの手伝いよ。
人使い荒いったらないわ、どうせ今は仕事が少ないから良いんだけどね。

……確かに美味しいけど、歯が溶けそうねぇ。
もう少しスパイスが効いてた方が個人的に好みかも。

(もく、と口を動かしながら困ったように苦笑した。
 けれど隣からの申し出に表情が華やぎ、すぐに受け取る)

ありがとう、こういう瑞々しい果実の方が好きなの。
こっちは良いわね、干したり瓶詰にしてない生の果物が豊富で。

(切り口に滲む果汁を啜り、それから齧りつく。
 美味しい、と先程よりも柔らかく微笑んで)
確かにどれもいい物を買えたな。自分用にも幾らか買った程だ。
だが売り先もこれから店を出すと言っていたから、あまり吊り上げるのも気が引ける。
今回は金より縁の為の商売になりそうだ。

(服の上に落ちた屑とバサバサと叩き落としながら少しばかり苦笑する。
 だがそれが不満だという風でもなかった)

ああ、本業はそちらだったか。
傭兵に仕入れを任せるとは、酒場の主も余程忙しいと見えるな。
しかしそうか、ならば貴方もラサの出か?

(言いながら、こちらも梨に一口噛り付いた。
 味に満足がいったのか、納得がいったように軽く数度頷いている)

――瑞々しいが味が薄い訳でもない。今年は晴れに恵まれたようだ。
私は先程のような甘い焼き菓子も好きだが、夏や今の時期は生の果実もいいな。
腹も満ちるし喉も潤う。
行儀が悪いと言われるが、歩きながら食べるのにも丁度いい。
(賢明ね、と愉快そうに眼を細めて呟いた。
 己より商売を分かっている彼女にそれ以上余計なことは言わずに)

忙しいっていうよりただの出不精だと思うのよねぇ、傭兵を何だと思ってんのかしら。
酒場を半ば占領してるし、強く言えないのよ。

あら、『も』っていうことは……やっぱり貴方も?
そうじゃないかと思ったのよ、空気に馴染みがあったし。
やっぱりラサの女は商売上手ね。

(同郷の者との出会いに女の言葉に喜色が宿る。
 かしかしと梨を齧りながら滴る果汁でうまそうに唇を湿らせた)

ほんと、良い味。新鮮な果物はそれだけでご馳走よね。
うちのところではよく水瓜を食べてたわ、暑い時は良く冷えたのが最高だったわねぇ。

(貰った梨の半分ほどをあっという間に食べてしまってからクッキーの残りを思い出す。
 割れたお化け南瓜のアイシングに歯を立て遠慮なく齧った)

あ、そういえば名前聞いてなかったわね。
私はリノよ、リノ・ガルシア。
貴方は?
酒場で傭兵というと用心棒でも欲しいのかと思う所だが……
少々変わった人のようだな。

(話を聞く限りでは、と付け加えて梨をもう一口齧ると
 果汁が滴り落ちそうになり、慌てて指で拭い上げる。
 と、同郷と分かるとこちらも嬉しそうに顔を綻ばせた)

やはりか。こんな所で同郷の者と会えるとは奇遇だ。
――私はラダだ。ラダ・ジグリ。
どこまでまた顔を合わせるかもしれないな。その時はよろしく頼む、リノ。

しかしラサでは家族で商売をしていたが、上手と言えるまで私はまだ遠いようだ。
少し前に家から出たばかりだし、一人だと勝手も違う。
少しずつ仕事にあり付けているのだから、焦らず済んではいるけれど。

(梨に続けて口を付け、やがて残った芯は焚き火へ放り込んだ。
 燃えにくくあるだろうが、やがて灰になるだろう)

暑い日は水瓜が一番だよ、うちもよく家族で食べたものだ。
歩きながらよく食べたのは葡萄だったか。
しかし、本当に果実が好きなんだな。
その用心棒がほんとの仕事なんだけど…まぁ文句言っても仕方ないわ。

(慣れちゃったのよねぇ、と溜息を零しつつ苦笑してみせる。
 愚痴は言えどそれほど嫌がってもいないらしい。
 クッキーの残りも瞬く間に口に収めた)

ラダね、こちらこそよろしく。
あら、どこかでなんてつれないわね。私はまた是非お喋りしてほしいわ。
こっちで出会えた同郷なんて貴方くらいだもの。

(悪戯っぽい笑みを浮かべウインクをひとつ飛ばした。
 また梨を齧る作業に戻る)

そりゃ一家でやるのと一人でやるのとじゃ方法が違うもの。
最終的に得できれば良いのよ、現状うまくいってるなら問題ないじゃない。
少なくとも今回の仕入れで益より縁を取る貴方なら大丈夫よ、きっと。

(名残惜しげに最後の一口を齧り彼女にならって焚火に芯を放る。
 指先に残る滴を舐めながらご馳走様と呟いた)

好きよ、葡萄なんかも独りでいくらでも食べられるわ。
ラダの所ではよく葡萄がとれたの?
なるほど、人となりは良いのだな。

(その横顔を見てそう零した。苦笑いをくっ付けて)

おや、そう言ってもらえるとはありがたい。
私もこちらに来て同郷らしき人を見かけても、こうも話した事はなかったな。
見知らぬ土地にひとり来るというのはそういうものなのかもしれないが。

ともあれ貴女と話すのは私も楽しいよ。
雇われているというのはどこの酒場なんだ?
――ああいや、ギルドとは言え未成年が顔を出しても問題なければ、なんだが。

(楽し気に言葉を連ねた後になって、場所が場所だと気がついた。
 慌てて言葉を付け足して、自嘲するようにため息をひとつ)

そうだな、少々無駄に後ろ向きになっていたようだ。

うちは街中だったし、交易で彼方此方まわってばかりだったな。
ただよく行く町が葡萄の産地だったよ。
大人達は酒が美味いと言ってたけれど、私達には葡萄とジュースの町だったな。
リノの故郷はどんな所だ?
最近の情勢を考えれば探せばもっと居るんでしょうけどね。
あんまり活動範囲が広くないから中々出会えないんだと思うの。

(横の繋がりは作っておきたいとは思えど中々うまくはいかないらしい。
 溜息と共に肩を竦めて)

まぁ、嬉しいわ。是非とも来てちょうだい。
別に置いているのもお酒だけじゃないし気兼ねなく来てね。
ただうちの店のお客、男ばっかりだから…それで良いならだけど。

(懐から小さなカードを引っ張り出す。
 ひょい、とそれを差し出した)

酒場のある場所の大まかな地図よ、『惑いの花酒亭』ってお店なの。
ただ迷いやすい場所だから……匂いを辿ってね。甘い花の香が漂う先にあるから。

(同じラサの獣種であれば問題なく辿り着けるだろう、と)

葡萄酒が美味しいところはジュースも葡萄も美味しいって決まってるものね。
うちは首都に近い方だけど乾燥が酷かったわ。
といっても一族揃って傭兵だし、あちこち飛び回ってたわ。ラダと一緒ね。
そう言えば大規模召喚が夏頃にあったな。
ローレットの仕事が始まれば出会いも増えそうだが、まだ音沙汰ないんだったか。

(些細なものであれ、切欠がなければ関わりは持ちづらいのは同感だった。
 さてどうなるやらとよく晴れた空を見上げる)

酒場によっては、未成年ひとりだと追い返されそうだからな。大丈夫なら何より。

――『惑いの花酒亭』だな。
香りを頼りにと言われたのは初めてだが、探してみよう。
しかし店の名や香の話からすると、女性客も多そうな印象なのに男ばかりとは。
表通りでないと入りづらいのかな。

(カードを受け取り地図を確認する。路地の先にあるようだが何とかなるだろう)

傭兵も仕事場がよく変わるからな。
うちも武力を商品にする時はあったから、
意外と家の者同士では顔を合わせた事があるかもしれないな。

しかし首都か。美しい所だと聞くから、一度行ってみたくはある。
帰るのはまだ先だろうけれど、その時は寄ってみるか。
いい加減仕事のひとつでもやらせてもらいたいものだわ。
そろそろ情勢が動きそうだからこっちに来たっていうのに。

(溜息を零す。ゆらゆらと女の後ろで長い尾が気まぐれに揺れた。
 暇ってヒトを殺すわ、と呟いて)

お酒なんてどうせいつかは味わうものなんだし未成年が飲んでも良いと思うんだけどね。
早いか遅いかの違いよ、単に。

酒場に置いてあるのも花酒が多いんだけど…男ばっかりなのよねぇ。
でも気の良い奴等よ、殆ど私より年上ばっかりだけど話が分からない奴等じゃないわ。
いつでも来てね。

(彼女の為においしい葡萄ジュースでも仕入れるべきだろう、と思う。
 雇い主にそう進言してみようか等と思考を巡らせて)

ラダのところは手広いわね…でも行商するなら相応に強いか護衛が必要だし当然かしら。
うちのお爺様ならジグリを知ってるかもしれないわ。

首都はとても綺麗よ、そこそこ物騒だけどね。
でもラダも戦えるんでしょう?得物はなァに?
それについては同感だ。
実入りが良さそうだと期待してたんだが、結局痺れを切らして自分で仕事を始めたよ。

(勘も鈍るしなぁと、空を見上げたまま呟きに続いた。
 しかし聞きなれない名称を耳にすると、珍しそうに視線を向ける)

花酒というと、スミレとかのやつか?
そういうのなら本当に女性向けのように聞こえるな。

うん、でも私はジュースでいい。
なめる程度は経験あるけれど、やはり茶や甘いジュースの方が美味しかった。
大人になると分かるとも言われたけれど、まだそこまでじゃないのかもな。

そうだな、近い内に顔を出すよ。

(もう一度カードを見て道筋を確認すると、そっと懐へと仕舞いこんだ)

手広いというか、リノの言う通りの流れだそうだ。
自前でやってる内に力自体を求められる場合が出てきて、だな。
ただ流石に本業の家程ではないよ。商売している方が多い。

私は銃の扱いが主だな。 リノは?見るからに身軽そうだけれど。
(誰でもそうよね、と肩を竦める。
 花酒に興味を示した彼女に微笑みを向けて)

菫、薔薇、ジャスミン、金木犀。なんでもあるわ。
それでも喜んで飲んでるのよ、可愛い男達でしょう?
そうね、貴方なら…エルダーが良いかもしれないわ。勿論ジュースよ。
いつかお酒に付き合えるようになったら花酒を一緒に楽しめたら良いわね。

(それまでジュースでお付き合いするわ、と。
 隣の彼女をそれとなく、見分するように眺めようか。
 武器があるだろう位置、仕草や癖。
 職業病のようなものだろう)

雇うより自前で何とかしちゃうジグリって怖いわねぇ、敵に回さないようにしなきゃ。
ラダと仲良くしていた方が得策ね。

(茶化すように笑う。逆に問いを投げられ組んでいた足の先をひょいと持ち上げてみせた。
 幾らか剣呑に光る、爪先と踵の刃)

コレと、あとはナイフとか手当たり次第。銃も少しね。
ただ銃声って得意じゃないのよ、耳が痛くなるの。
ラダは慣れてるのかしら?
(次々と挙がる花の名に、その香りを思い浮かべる。
 いずれもそれは良い香りがしそうだった)

それだけ聞いているとまるで香水だな。
しかし話を聞く限りだと、リノはカクテルとか作ってそうだな。

(未成年なりのイメージで尋ねた所で視線に気づいた。
 いや、気づいたというよりも会話の流れから何となく察した方か)

銃ならないよ。目立つし怪しまれるし、こういう時は持ってこないんだ。
街道を行く時なんかは分かりやすく背負うけれども。
今日はこれ1本。

(指先で叩くのは、腰に差す先ほど梨を割った大振りのナイフだった。
 特徴は少なく、あるとすれば柄に溝がついている程度か。
 そんな地味な自身の武装に対し、光る相手の武装におやと目を剥く。
 気づいていなかったらしい)

――これは蹴られると事だな。

銃声はそんなに気にした事はないな。相手によっては怯んで便利だとも思うし。
でもその分他があんまり。剣とか拳とかさっぱりだ。
残念ながら飲む専門よ、そこまで器用じゃないわ。
それに自分で作るより作ってもらった方がずっと美味しいもの。

(視線に気付かれる。悪びれもせず笑ってひらひらと手を振った。
 銃がないと聞けば残念そうに肩を竦めて)

背負うってことはそれなりにおっきいのを使うのねぇ。
まぁそんなもの引っ提げて歩いてたら顰蹙ものだし、当然かしら。
――…ふぅん、使い込まれた良いナイフね。

(流石に見せて、とまでは強請ることはなかった。
 掲げていた足を降ろし組み替える。剣呑な爪先をゆらゆらと揺らして)

威嚇にも使えるってわかってるんだけど…やっぱり苦手ね。
私は逆に近接の方が好きよ、きちんと殺してるって感覚があるし。
銃だとヒトを殺してるって感じが薄くてちょっとね。
あ、勿論私の場合よ。

ラダは何歳から銃を?
そりゃ飲むだけ食べるだけというのが一番楽だし美味しいのは確かだが。
だがそうか。私にはエルダーをと言うから、人を見て作ったりするのかと思ったよ。

(肩を竦める様子にまた今度な、と返した。
 とは言っても酒場に担いでいく事もないのだろうけれど)

両手で使うやつだから、それなりの大きさだな。
その分遠くを狙うのにもいいし、私には合っていると思うよ。
ナイフは一応戦闘で使えるものだけれど、今は果物や肉を切ってる方が多いな。

リノが使う銃は片手で撃てるやつか?

(時折光を反射するその爪先へと視線を移す。
 その手の武装にはあまり馴染みがないのだろう)

戦う事の自体が好きなタイプか?
いや嫌いだったら家業であれど傭兵にはならないとは思うけれど。
私はどうもその辺りを考えた事がなくてな。

今の大きさのやつなら12歳を過ぎてからだ。
銃自体はもう少し前から撃ってたけれど、
当てるのが好きだと言ったらこっちが合うだろうって。
色々飲んで味だけ知ってるだけよ、あと私が好きだから。

(けろりとした顔で答えつつふと市場へ視線をやる。
 そろそろ朝市も終わりに近いのか、ヒトの波は随分と収まっていた)

羨ましいわねぇ、私そういう遠くの的を狙うのって苦手だわ…。
ナイフやダーツで中距離を狙うのは良いけどそれ以上遠いと難しくなるのよ。
やっぱり相性とか、練度の差かしら。

勿論片手よ、大きいと嵩張るしね。
そこらでよく売ってる安い量産型よ。

(戦いが好きか、と問われればうっとりと蕩けるような笑みが浮かぶ)

だァいすき、うちの家系って代々血の気が多いのよ。
だから皆生まれた時から傭兵になる為に育てられるし、それ以外になることはないわ。
趣味と仕事が一致してるの、イイでしょ?

(ラダも強そうだから興味があるわ、と悪びれもなく口にして)

狙撃手の才能を見出された、ってワケね。納得だわ。
商品に近付かれる前に処理するってスマートねぇ、ステキよ。
錬度が一番差を生むのだろうが、その前に好き嫌いがあるのかもしれないな。
結局よく習うのは好きな事だったりするものだから。

色々と武装を使い分けるとなると、やはり小型で嵩張らないものがいいものなんだな。

(釣られたように人並みがすっかり落ち着いた市場へと顔を向ける。
 店によってはそろそろ店じまいの頃合だろう)

それはいい。好きな事を仕事にして、それを楽しめるんだったら言う事はない。
ガルシアにとっての傭兵業は天職だな。
こちらとしても、互いに敵陣営とならない事を祈るよ。

(さて、と立ち上がって置いていた荷物へと手をかけた。
 それなりにはあるが背負える量ではない)

得意な事と好きな事が一致しているからお前は幸せだと言われたよ。
それを才能と言うのなら、そうかもしれない。
腕前についてはローレットの仕事なんかで一緒になったら、だな。

さて、もう少し話していたいが私は行くよ。
市が終わる前に、もう一回りしておきたいから。
火器の優位性は十分把握してるんだけどねぇ…。
餅は餅屋ってとこかしら、まぁ別に現状困ってないから良いんだけど。

今度また機会があればオススメ教えてちょうだい、小型で使い勝手いいの。
量産型もイイけどちょっと愛着の持てる一品が欲しいのよ。

(ラダは詳しそうだし、と。
 遠目に目を付けていた店が店仕舞いをしていくのが見える。
 残念そうに肩を落として)

ありがと、うちの一族一同天職だって思ってるわ。
そうねぇ、対立するのも面白そうだけどちょっと厄介そうだわ。

ふふっ、一緒に肩を並べられる方を楽しみにしているわね。
同じ特異座標点として仲良くしてほしいところだわ。

(彼女に合わせ立ち上がる。すごい量ね、と荷物に目を向けて。
 自身が爪先を向けるは市場の出口だ)

無花果のお店もしまっちゃったし、私はここまでね。
イイ物が手に入るよう祈ってるわ。

(またね、と手を振って女は去っていく。
 人波に紛れ影のように黒い尾は消えて行った)
小型で使い勝手がいいやつか。
一度リノの戦ってる所を見てからがいいかもしれないな。

(結局気に入ったものを人は愛用するものだと付け加えながら)

ああ、その店が目当てだったのか。
流石に出来が良かった分、よく売れたようだ。
この分だと私の目当ても売り切れているかもしれないな。

ありがとう。また近い内に酒場へ顔を出しに行くよ。
話の続きは、その時にまた。

(立ち去る彼女に手を振り替えし、黒い影が人波に消えるのを見送った)


――さて、まずはロバでも貸してくれる所を探すか。

(ため息ひとつついて近くの店に声をかけに行く。
 よく売れた分、彼らの帰りの荷物は減ったことだろう。
 幾らか出して貸してもらえれば助かるのだが、さてどうなるか。
 次に買い物する時は、懐と一緒に帰りの事もちゃんと考えようと今更ながらに考えた)

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