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Migrateur

《第2章》せせらぎ

レガド・イルシオン某所、木漏れ日揺れる緑の中。
幻想種の老夫婦が営むちいさなちいさな喫茶店。
其処は街からすこし離れた木々の中にひっそりと扉を構えている。

落ちる水の音をたよりにやってきた『おきゃくさま』。
ヒトも、動物も。此処ではみいんな、おもわず笑顔になってしまうんですって!

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おきゃくさま:ポシェティケト
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(ちょんちょん、ちょん)
(彼女からの『しょうたいじょう』は実に不思議な文様だった)
(其れでも――)

――よめちゃうんだなあ、これが。

(混沌七では収まらない不思議のうちのひとつ)
(どんな世界の、どんな人々の言の葉でもなんとなく理解する事が出来るすてきなちから)
(彼女曰く、ティータイムのおさそいであるらしかったが、)

街を出てからわりと歩いたけど……ここでいい、のかなあ?

(見渡す限り、木、木、木、である)
(どう見ても森の入り口で、とてもお店があるようには見えないけれど)
あ!

(ふと。風に靡くやわらかな銀糸、ぴょこんと飛び出たツノをみとめれば、足取りは浮き立って)
(たたたと軽い足音を立て乍ら、ましろいきみのもとへと)

ポシェ、ポシェ!
よかった、みつけた。ごめんねごめんね、まった?

(待ちぼうけにはなっていないかしらと、恐る恐るに)
(蹄がひんやりきもちいい。ちいさなみずたまりに浸かっているのだ)

(そのひんやりを感じつつ、にこにこと、それでいてちょっとだけそわそわしていた)
(だって、お茶会だなんて、とってもたのしみなんだもの)
(浮き足立つ気持ちを感じつつ、鹿はソッと目を閉じた)

(森の風はいいにおいがしてきもちいい)
(聞こえてきたかろやか足音と名前を呼ぶこえにぱちりと目を開けて)
(森の中でもひときわぴかぴかの緑色の女の子、彼女の姿を見止めれば、トコラトコラ、みずたまりを出て駆け寄った)

サティ。サティ。
そうよ、ワタシ、ポシェよ。
待ったわ。楽しみに待ってたの。

(鹿の言う『待った』にはもちろん批判めいた響きはなく、しかし緑の女の子のおそるおそるの表情に何やらハッとした様子)

森の道、平気だった?
ワタシは鹿だから慣れているけど、サティには難しかったら、たいへんだわ。
もう、もう、安心よ。
滝も、お店も、もうすぐだわ。それに、森に詳しい鹿も一緒よ。

(けんとうちがいだ!)
(待ったわ。そう聞けばわかり易く狼狽して、)
(直後。『楽しみに』が付いたことで彼女の本意が理解出来た)
(ぱっと顔に喜色をのぼらせて、思わず身体も動いてしまった。諸手を挙げて歓喜を示して)

僕も!
えへへ。きのうの夜、とってもたのしみだったから。
ひつじの代わりに、お星さまを数えていたんだよ。

(ぴかぴか、ちかちか。もう幾つ数えたら、朝になる。きみに会える!)
(なんて事をやっているうちに、夜更かしせずに眠りにつく事ができたのだ、なんて笑み咲かせ乍ら)
(森は不慣れ?と問われれば、ふるふるとかぶりを振って見せ)

へっちゃらさ、僕はこう見えて『旅人』だからね!
野を超え海を超え山を超え、森の中だってお手の物さ。
……もちろん、ポシェにはかなわないけれど!

(ふと。ましろい彼女の足元が、すこうし濡れていることに気付いたなら目を丸くして)

ポシェ、おみず、がまんできなかった?
ふふ!そうしたら、すぐに出発しなくっちゃ。
ね、ポシェのないしょの『おきにいり』まで、僕を連れて行って!

(そう告げて。ちいさな冒険者は、てのひらを片方差し出した)
(手を繋いでいこう、そう言いたいらしい)
(元気な身振り手振りにニコニコと頷きながら)
(眠る前にひつじや星を数えるのね、鹿は数えないの? と、冗談まじりに微笑み)

そう。平気なら、良かった。苦手な場所にひとりは、こわいもの。
旅人のサティは、いろいろな場所、行けるのね。りっぱだわ。
ワタシ、森以外を超えたことないから、あなたのほうがきっと旅、お得意だと思うの。

(すっかり忘れていた濡れた脚のことを指摘されれば、少しいたずらの様子でフフフ!と)
(トコラトコラ、その場で足踏み)

サティ、たくさんものごとを見ているのね。
水、気持ちいいからね、待っているとき、水につかっていたの。
ええ、ええ。行きましょう。ワタシのお気に入り、遠くはないわ。

(差し出された手を、少し不思議そうに眺め、自分の手も眺め)
(手を繋ぐということだわ!と、緑の女の子の手をしっかりぎゅぎゅっと握るのだった)
(道すがら、鹿の言うことには)

(お気に入りは、鹿が鹿のときに森の川に沿って散歩をしているとき、たまたまたどり着いた場所らしい)
(店主の老夫婦はパンを分けてくれたり、毛並みを梳いてくれたのだって)
(鹿は鹿のときにひとまえでひとに戻ることはほとんどしないし、その時もそうだったので)
(ひとの時にまた来ます、と、鹿なりに頑張って伝えて帰途についたのだそう)

(でも、ひとりで行くには勿体なかったから、一緒に行けて嬉しい、とのことだった)
鹿さんは、数えているうちに元気に飛び跳ねだしてしまうでしょう?
だから、眠りにつくときよりも。
起きているときに、こうして一緒に遊ぶのがいいな!

(それじゃあだめかい、なんて。いたずらっぽく目を細め)

あはは!たしかに。
『まっくらやみ』にひとりぼっちだったら、さすがの僕でもちょっぴり不安かも。
でもでも、今日はポシェがいてくれているってわかっていたし。
木々も、小鳥も、僕が彼らをいじめたりしなければ、みんな歓迎してくれるから。
知らない森でも、ぜんぜんへっちゃら!

(かぽかぽ、ちょこちょこ)
(すこしだけおてんばな足踏みを見れば、ちいさな冒険者もまた、ふふふ!と)

いいなあ、僕はきみみたいにすてきな蹄がないから。
森を歩く時は、ほら、こんなふうに!

(いつもより、すこうし丈夫な靴底の)
(歩き慣れたブーツ、片足を掲げて見せ乍ら)
(さしのべたてのひら、ましろい彼女が首を傾いだのも束の間)
(ぎゅうっとしっかり握り返されたなら、其の笑みを更に深めるのだった)
(『すてきなばしょ』を語る鹿は、常よりも饒舌だ)
(となればおしゃべりな雲雀は囀るのを暫し我慢して)
(翠のひとみをきらきらと輝かせ、うん、うんと何度も相槌を打ち)

そんなすてきな『はじめまして』のばしょへのおともに。
僕の顔をいちばんに思い浮かべてくれたことが、とってもとってもうれしい!

(枝葉を手で軽く避け乍ら、ましろい彼女の大事なつのが引っかからないように)
(暫く木々の合間を進んだなら。さらさらと、風に乗って微かな水の音が耳に届き)
(もうすぐかしら、なんて。期待に胸を高鳴らせ乍ら傍を仰いで)
あら、まあ。鹿、元気ねえ。
でも、そうね、眠たいときに元気だと、目がさめてしまうわね。
鹿は、起きているときが良いわね、ええ。ええ。
(とても良いと思う、と、どこか誇らしげに頷いた)

ふふふ、へっちゃらさんなのね。
サティ、森はもちろんだけど、あなたならどこへでもようこそってお迎え入れをしてもらえると思うわ。

……! ほんとうにりっぱなお靴。旅人の相棒ね、とっても頼もしそう。
靴、いいわね。ワタシ、靴って憧れよ。

(掲げられた旅人の片足の動きを真似して蹄をちょっと持ち上げ、少しはにかみながら)
(繋いだ手はあったかく、なんとも楽しい道行き)
はじめしてで、楽しみで、やさしい場所、きっとあなたも楽しんでくれるだろうなって思ったの。
サティも嬉しい? ふふ、それなら、良かった。

(枝を払ってくれる優しさに気がつくと、あたたかそうに目を細め。彼女にふりかかった小さな葉っぱたちをソッと落っことしていくのだった)

(水の気配、風の気配、もうすぐかしらのわくわくをお隣からひしひしと感じたならば、鹿、同じくわくわくの瞳でもって、大きくブンブン頷いた)
そうさ、鹿さんはとっても元気なんだ。
それに――ほら!

(こうして一緒に居たならば)
(歩みは軽く、立ち止まってなんかいられない!)

へっちゃらさん!
僕はね、海も、山も。いろんなところへ行ったことがあるよ。
それはこのせかいではないけれど……でもでも、それってつまり。
『まだしらないせかいがたくさん』ってことだから!
僕も、ポシェも。いろんなところに『ようこそ』してもらえるんだよ。

(ね、それってすてきだろう?なんて)
(繋いだてのひらをゆらゆら揺らして、悪戯に微笑んで見せ)

ふふふ。いいでしょう!
『歩き慣れないところに行くなら、歩き慣れた靴で行くんだぞ』って。
母さんいつも言ってた。そうしたら、足が痛くならないんだよ。
……でもでも、ポシェのりっぱな蹄なら。そんなしんぱいいらないね!

(お互いを羨むなんて、なんだか不思議だ。くすくすと笑みを零し乍ら)
もちろん!僕もとっても嬉しいよ。
ね、僕にはお水のおとが聞こえるんだ。
ポシェ、それってきっと、

(『とうちゃく』なんじゃないかしら!)
(輝く瞳が、喜色に染まるかんばせが、こくこくと頷くならば)
(すこしだけ歩調を早めて、枝葉のトンネルを潜って、其れから)

――――わあ!

(木々のさかいめ。ひらけたその先)
(せせらぎ、こもれび。頬を撫でる涼やかな風が、心地良かった)
(ちいさな滝、川のほとりにちょこんと建つ東屋をみとめれば)
(あそこ?と。飛び出さんばかりの足をぐっとこらえつつ、雲雀は問うた)
元気、元気ねえ。
一緒にいると、なおのこと、だわ。
そうだわ、サティ、あなた、旅人さんだから、もうひとつ世界をしっているのね。
それって、なんてたくさんなのかしら。
……あら! ワタシも、ようこそしてもらえる? すてき。すてきね。

(すてきだろ?の返しに、とっても!と、頷いて)
(繋ぐ手をゆらゆら嬉しげに揺らすのだった)

おかあさまの教え、きちんと守っているの、りっぱねえ。まぶしいわ。尊敬する地図みたい。
ふふ、ワタシ、蹄と、ギフトもあしのうらにあるのよ。歩くのは得意なの。だから、しんぱいはいらないわ。

(お互い。見つけようと思えばいくらでもある、と、羨ましいこと、すてきなところ)


ええ、ええ。サティ。
聞こえるわね、水の音。
とうちゃくよ、きっと!

(同意、と、大きく大きく頷き、軽やかに駆けるはや足)

(以前のときもそうだったけど、とつぜんあらわれるのだ、あのすてきなたてもの)
(こんどはやっときちんとお客として)

(雲雀の子の問いかけに、にっこり笑みを深める。つまり、つまり!)
(ごとうちゃく!)
(ふと、すこしもじもじとした様子で)
(雲雀の子に、コッソリみみうちすることには)

(『あのときの鹿です』って、名乗るのは、ひとのあいさつとして、変ではないかしら?って)

(鹿、鹿ぐらしが長かったため、ときどきひととしてのコミュニケーションが不安になる様子)
そう!こことはちがう、もうひとつの『そら』を知ってるんだ。
父さんと母さんと一緒に、いろんな国を旅してきたんだよ。
僕はこのせかいに来る前も、旅人だったのさ!
惜しかったなあ、このせかいに呼ばれる前にきちんと準備ができたなら。
僕のとっておきの絵日記を、ポシェにも見せてあげられたのに!

(旅先で書き留めた『せかいのかけら』)
(其れは、此の世界に降り立ってからも続けている日課なのだと得意げに)
(頷く鹿の嬉しげな様子に、えへんと胸を張って見せ乍ら)

えへへ、褒めてくれてありがとう。
……ポシェは、地図を尊敬しているの?

(それって、どんなすてきな地図かしら、なんて首を傾ぎ)

へえ!ポシェの『おくりもの』は、そのすてきな蹄なの!
いいなあ、それじゃあ遠くのおさんぽだってへっちゃらだね。

(どこへでも、どこまでも)
(前へ前へと進んでいける脚。なんてすてきなのかしら!)
(たかたか、かぽかぽ、二つの軽い足音が響く)
(傍らの鹿を置いていかない程度の気遣いは残しつつ)
(其れでも急く思いが足取りをより軽くさせるのだ)

すごいや、森のひみつきちみたい!
見て見て、あそこにひとがいる…………、

(不意に。軽く手を引かれれば、なあにと鹿を振り向いて)
(もじもじする鹿の言の葉を聞けば、見る間にかんばせに笑みを咲かせ)

もちろん、もちろん!
『あのときの、まっしろな鹿です』ってごあいさつしたなら。
きっとお店のひとも、すぐにポシェのことをわかってくれるよ!
もうひとつの『そら』でも、旅人さんだったの? あらまあ、家族で?

(さきほど聞いた、世界のいろいろな場所、そこかしこを旅する彼女と、話の端々から感じる仲良さげな父母との様子を思い浮かべて、しみじみと頷き、)
それって、とってもすてき。
絵日記、サティの冒険の記録なのね。
見てみたかったわ、あなたの目で見た世界のこと。またいつか、見せて。

……あ、ちがうのちがうの、地図って、たくさん物知りのひとのこと、そう呼んだのよ、ワタシの家族のなかで。
道とか、生活の知恵とか、とにかくたくさん知ってるひと、あたまのなかに大きな地図があるみたいって、尊敬なのよ。
(だからあなたのおかあさまも地図みたいって、思ったの、と、はにかむ鹿)

そう、そう。ギフト、蹄なの。
足あとつけないの、得意なのよ。
遠くへのお散歩も、そうね、どこまでも、だわ!
サティ、あなたは、どんな?
聞いたこと、なかったかもしれない。
ひみつきちみたいって、いいことば。
おさんぽだけど、これはもう冒険だわ。
……! ひと、?

(そうして)
(おすみつきをいただけば、輝く笑顔とみなぎる自信)
(鹿はサッサッと毛並みを整え、サティの顔を見てうなづき、トットコとお店のひと、ご店主のひとりと思しき老婦人に近づいた)
(そして)

ごきげんよ。ワタシ、すこしまえの、白い鹿です。友達と、遊びに来たの。
そう、家族で!
父さんも母さんも、いろんなせかいを僕に見せてくれたんだ。
とまり木はそのたび変わるけれど……。
いろんなひとたちのくらし。
どんな景色を見て、どんなものを食べて、どんなことを思うのか。
足を進めるたび、ものがたりの頁をめくるみたい。
だから僕、旅をするのがだいすき!

(『いつか』を強請る鹿のことのはに、もちろんいいとも、なんて大きく頷き)

へえ!それって、すてき!
ポシェの家族のなかでは、そうした『地図』のひとを、暮らしのみちしるべにしているんだね。

(なれば自分の母は、彼女の言う地図に相応しい)
(はにかむ鹿につられて、雲雀もまた、にこにこと嬉しそうに微笑んで)

自分のからだが贈り物のひとつだなんて、いいなあ、格好いいなあ!
……あっ、ほんとだ!ポシェの歩いたあと、あしあとがついてない!

(とこらとこら。足跡は確かに聞こえるのに、草花には傷ひとつついていない)
(まるで、彼女の蹄だけ。ふんわり、やわらかいものに包まれているようだ)

僕のおくりもの?ふふ、それはねえ。

(悪戯に目を細めて見せたなら、繋いでいない片方のてのひらを)
(いっぱいに広げて、そらに翳して)

『――もしもし、ごきげんいかがですか?』

(なんて、歌うように告げたなら。ちかちか、木漏れ日が微かに揺れて)

……『きょうはとってもうれしい』って!
だから、今日のそらは泣き出したりしないよ。
ふふ!そうだね、これは僕たちだけの冒険さ。
今日のものがたりは、とびきり胸が踊るものになりそうだ!

(いそいそと。自慢のふわふわの毛並みを整える鹿を見て、雲雀もちょいちょいと髪を直し)
(緊張の面持ちで、彼女の自己紹介を見守って)

(『あら、まあ、まあ。こんなにすてきなお嬢さんだったなんて!』)

(老婦人のかんばせが、見る間に喜色に染まったのを見たなら、思わず笑みを咲かせ)
(鹿と顔を見合わせること暫し。ややあって、雲雀もぺこんと頭を下げた)

こんにちは!白い鹿さんの、おともだちです!
(旅の話、彼女のすこやかさから浮かぶ、ご両親のあたたかさを想像して、にこにこと頷き)
(地図の話、久しく会ってはいない家族のことを思い出して)
(しみじみと家族について思い出しているのだった)

ふふ、そうそう、あしに、贈り物。
鹿のワタシは、苔の上が好きでね、
でも、歩くと足跡つけてしまうのがすこし、ごめんねってね、だからこういうギフトなのね、きっと。

(お空にかざした雲雀の掌を見上げ、キョトンと見つめてから、)
まあ、まあ!今日はとってもご機嫌さんなの。
あなたの贈り物は、お空のうえのだれかと話しができるのね。
すてきね、遠くでも、声が聞こえるのね。
(ご店主のことばにホッとしたりはにかんだり忙しい鹿、雲雀と顔を見合わせて
彼女の挨拶にもニッコリと笑みを深めた)

あのときは、優しくしてくれて、どうもありがとう。
今日はお礼も言いたくて、ともだちと、来たの。
おじいさまのご店主も、お元気ですか?

(ポツリポツリと伝える様子はいつもより言葉がゆっくりで)
(鹿、どぎまぎすぎである)
僕にはあと、兄さんがひとりいるんだよ。
歳はちょっぴり離れているけれど、やさしい兄さん。
ね、ポシェは、なんにん家族?
群れでくらしをしていたなら、家族がたくさんいるのかしら。

(其れこそ、親戚一同が丸ごと家族で兄弟のような感じなのかなあ、なんて)
(真白い鹿のすてきな家族に想いを馳せ乍ら)

苔、しっとりしていて気持ちが良いものね。
僕も川遊びをしているとき、滑って転ばないように、はだしになるんだよ。
ポシェは草木に親しいから、きっと、そんなやさしい贈り物がもらえたんだね。

(とってもすてきだ、と微笑み頷き)
(自身の贈り物を褒めてもらえたなら、えへんと得意げに胸張って)

そう!僕の贈り物はね、おそらのごきげんを教えてもらえるの!
『あしたはどうしても晴れにしてください!』ってお願いするとね、てるてる坊主もいらないんだよ。

(だから、とっておきの日は。いつでもこうしてお天気なのだと、悪戯に片目をつむって見せ)
(『まあ、まあ。とっても、おどろいたわ。
  あのときの鹿さんが、おともだちを連れて、また来てくれるだなんて。
  ふふ、どうぞおいでなさいな、主人もきっと喜ぶわ』)

(しわしわの顔をくしゃくしゃにして微笑む老婦人が、ふたりを手招く)
(やわらかな声。やさしい言の葉に、先に緊張がほぐれたのは雲雀のほうだった)

……ポシェ、ポシェ。
だいじょうぶだよ。おばあさん、ポシェがきてくれてうれしいって!

(なんて。鹿の顔を覗き込み乍ら、心配ないさと軽く繋いだ手を引いた)
(おまねきにあずかろう、なんて促し乍ら)
まあ! サティ、お兄さん、いるの。
あなたのお兄さんなら、きっととっても素敵なかたでしょうね。
としがはなれていたのなら、うんと可愛がられたのではないかしら。

ワタシ? ワタシの家族は…
とってもたくさんいるわ。
お兄さんとかお姉さんみたいなひととか、小さい子とか、大人とか、たくさん増えたり、減ったり、
あ、減るの、旅に出るひともいたってことよ。
よその鹿の家族のことは分からないけど、ワタシの鹿の家族は、たくさん家族。

(想像していた雲雀の家族に、新緑色のお兄さんをくわえつつ)
(鹿は、《たくさん》すぎる自分の家族の人数を指で数えるのを断念した様子)

ふふ。川、はだしになるわよね。
足、ひんやりで気持ちいいものね。
草木に親しい、って、すてきな言葉。
ポシェティケトは、草木に親しいギフトを持っています、ね。

! お空のごきげん、お願いも聞いてくれるの。
やっぱりあなたたち、仲良しさんなのね。
とっておきの日、こんなに気持ちが良いのは、あなたのおかげ。
(愛らしい悪戯なウィンクに微笑むと)
(晴れの日、ありがとう、と、お空に向かって手を振った)
(覚えていてもらえたことと、歓迎をしてもらえたことが嬉しくて、顔を赤くしながらボンヤリしていた鹿)
(呼ばれた名前と繋いだ手の優しさにハッとして、はにかみながら頷いた)

サティ。どうもありがとう。
ご店主、うれしいって! ワタシも嬉しいわ。
ええ、ええ。おまねきにあずかる、しましょ。

(ほわほわるんるん、途端に軽くなった足取りでお店の中へと進み行く、なんともげんきんな鹿である)
そう!兄さんがいるんだ。
兄さんは父さんに似てて、背が高くて、力じまんなんだよ。
僕のことをよく肩車してくれて、たくさんいっしょに遊んでくれたんだ。

(側から見たら、男の子同士のきょうだいのように見えたふたり)
(そんな兄や両親に囲まれていたからこそ、今の雲雀の豪快さがあるのかもしれない)

へええ、そうなんだ!
ポシェの家族はいっぱいの家族のなかで、森の四季の移ろいに身を委ねているんだね。
なんだかすてきだ。木々の慈愛を、水の恵みを受けて育ってきたなんて。
ひとびとの住む町もすてきだけれど、そんな暮らしも、僕はすきだな。

(おいしい草木の見分け方なんてものも、鹿にとってはお手の物なのかしら?)
(なんて。内緒話のように問えば、鹿は笑ってくれるだろうか)

川の中の、苔がついたつるつるの石を踏むのがすき。
滑らないようにきをつけて……それでも転んじゃったりして!
でも、水の流れにしりもちをついても、それがまたつめたくてきもちいいんだ。

(ポシェは、そんな中でもへいき?なんて、首を傾いで問い乍ら)

ポシェは、草木を愛しむ脚を。
僕は、そらを見通す目を。
僕らの贈り物はそれぞれ違うけれど、でも、今日という日には、とってもぴったりだ!

(そらに向かって手を振る鹿に合わせて、雲雀もまた、ひらひらと空に手を翳し)
(背中の曲がった老婆は、ゆっくり、ゆったりと店の奥へと歩を進めていく)
(ぽーっとしている鹿の手を軽く引いて、くすくすとちいさな笑みを零し)

ふふふ、よかったねえ。
おばあさんも、とってもやさしそう。
ね、どんなすてきなお茶会になるだろう!
僕、もう胸がどきどきしているんだ!

(なんて、小さな声で意気込みを語り)
(ちいさなログハウスのようなお店に足を踏み入れたなら)
(あたたかなランプのひかりに照らされた店内に、ほわあ、と気の抜けた感嘆を上げて)
かたぐるま!力じまんの優しいお兄さんなのね。
サティのお兄さんも、新緑の色、しているの?

……まあ!まあ。ふふ。
あなたは、世界をそんな風にすてきな目で見ているの。
ワタシたちのこと、そういうふうに思ってくれて、ありがとう。

(美味しい草木ならにおいで分かるのよ、と。どこか誇らしげな様子で頷き)
(こんど美味しいにおい教えてあげる!と、コッソリ返してくる鹿)

ワタシも水の中のツルツル石、好きよ。
かわいてるときは見えない模様が見えたりするのも、楽しいし。
転ぶこと? ふふふ。森の中ではずっと鹿でいたから、ツルツルのところでも、頑張って立っていたわ。

(お空に手をかざす少女の様子をニコニコ眺め、贈り物、ほんとうに、と。おっとりゆったり頷いた)
(ポカポカあついほっぺたを開いている手で押さえつつ、雲雀に引かれゆく鹿)

ええ。ええ。ほんとうに。
優しくて、きっと、素敵なお茶会になるわね。
ワタシもよ、胸、全速力の時みたいになってるのよ。

……ぐらいにいた。そうだ、ぐらにいた。
あのね、ぐらにいたっていうメニューね、前の時から、気になっていたの。あるかしら…

(コソコソ不思議と小さな声になる鹿)
(お店の中の思いがけない美しさにびっくりの様子で目を見開いて)
(お隣の雲雀と同じく、ひゃー、という声が漏れている)
うん、もちろん!
髪の色は母さんに似ていて、目の色は父さんに似てて、胡桃色をしてるんだよ。

(なんだかおいしそうでしょう、なんて、悪戯に目を細め)

えへへ、ポシェのおはなしを聞いて、そう思ったんだ。
おひさまといっしょに目を覚まして、朝露に濡れた葉っぱでお腹いっぱいになって……。
それで、つめたい小川の水でのどの渇きを癒すんだ。
僕の知っている森の動物さんは、みんなそうしているから。

(においでおいしい草木がわかるなんて!)
(なんだか、自分になじみのない葉っぱが、とんでもないごちそうに思えてきた)
(実際に食べてみたら、雲雀はきっと目を白黒させるのだろうけれど)
(鹿の素敵な提案に、至極楽しそうにこくこくとうなずき返すのだ)

すてき!ポシェのすてきなあしは、つるつるの石にも負けないんだ。
僕はすてきな靴を履いていても、つるんと滑ってしまうから。
ね、こんどこっそり、こつを教えてくれない?
(ふわふわの鹿を先導するように、ゆっくり、ゆっくり歩を進め)
(老夫人の足取りはとても緩やかなので、それでも置いていかれることはない)

ふふふ!ポシェのどきどきが、てのひらから伝わって来るみたいだ。
森の中でこんなにすてきなお店に出会えるなんて、僕たちはなんて『しあわせ』なんだろう!

……ぐらにいた?グラニータ!

(とは。どこかで聞き齧ったことがある気がする)
(つめたいお菓子。あまくておいしいお菓子、だったような気が、する)

あるといいねえ、僕、あたたかい飲み物も飲んでみたいかも。

(だってだって、茶葉の香りと珈琲豆を煎る香りが、ずうっと鼻を擽っているのだもの!)
(老婦人がふたりぶんの椅子を引いて、どうぞ、と促してくれたなら)
(どきどき、そわそわした心持ちで。すとんと席に腰を下ろし)

……みて!ポシェ、メニューにぜんぶ絵が描いてある!

(それは。水彩で描かれた、温かみのある口絵だった)
(これなら、名前でわからなくてもばっちりだ!)
髪の毛はおかあさまで、瞳はおとうさまの、お兄さんなのね。……あら、
(そう聞けば、はたとまじまじ雲雀の瞳を覗き込む鹿。あなたは翠玉の色ね、と頷いている)

(森ぐらしを思い出すように、ゆっくりゆっくり頷いて)
(それから、ことあるごと謎のタイミングで『このにおいは美味しい木!』と鹿が知らせてくることになる未来を雲雀はまだ知らない)

ふふ。つるつる石にも負けないあし。そうねそうね。
コツ、ええ、コツ。……あら? 考えると、少しだけ難しいわ。サティ、あなた、歩くとき考えないでしょう。でもお上手よ。
ワタシ、ほんとはまだちょっとだけ二本足に慣れないもの。どうやるのかしらって、思うの。
だから、足のことって、あたまで考えては、いないのかも。
ね、これ、それぞれのコツ、こうかんしましょうよ。
ふふ。いやだわ、そんなにドキドキ分かってしまうの? 今はワタシ、手が心臓みたいね。
しあわせ。ええ、ええ。ひとりだったら、きっと来られなかった。ありがとうね、サティ。

そう。ぐらにいた。あると良いな。
サティの飲みたいものの気持ちも分かるわよ、あたたかいお茶のいいにおい、するものね。

(ペッコリ深々と老婦人にお礼を伝え、借りてきた鹿のごとくお行儀よく着席)
(キラッキラの様子でメニューを見つめている)

まあ。ほんとうねえ、とっても可愛い絵。これなら、鹿もわかるわよ。
……!みて、みて。これ。ぐらにいたのページじゃなあい?

(ペラペラとめくった途中、《デザート》の項を見つけテンション上がりまくりの鹿)
(《アーモンドとリンゴのグラニータ》のイラストを指差した)
うん、そうなの。僕はぜんぶ母さんのいろをもらったんだよ。

(まじまじ。じぃ。じぃぃ)
(しののめの雲の色をしたひとみが此方を覗き込めば、雲雀、気恥ずかしさに頬を染める)
(『てれちゃう!』なんて冗談交じりに告げたなら、彼女は笑ってくれるだろうか?)

(おいしい木。鹿が道中でそんなグルメスポットを教えてくれたなら、雲雀は目を丸くするだろう)
(この時ばかりは自分の顎の強さが足りないことをすこし悔やんだ)
(だってだって、彼女が『おいしい』と言うものは、とてもとても美味しそうに聞こえるのだもの!)

むむ、それもそうだ。僕たちはいつのまにか歩き方を覚えていて、誰かに教わることなんてないものね。
ポシェの『ふつう』が僕にははじめてで、僕の『ふつう』がポシェのはじめて。
ふふふ!ぼくたち、さかしまだ!

(鹿が二本足のレクチャアを望むなら、雲雀は足取り軽やかにステップを踏んで見せるだろう)
(靴音高く、軽やかに!)
あはは!そうだね。でもこれは、『うれしい』どきどきだから。
ふたりで半分こしたら、もっともっと『しあわせ』だよ。

(老婦人の動向を追いかけるように、鹿の頭が彼方此方へ)
(そんな姿に釣られるように、雲雀の頭も彼方此方へ)
(其れを見た老婦人がくすくすと笑ってくれるものだから)
(なんだか雲雀もうれしくて。それから、ちょっぴり気恥ずかしくて、はにかんでしまった)

ね!炒ったばかりの珈琲も、お茶っぱのかおりも、すごくいいにおい。
ひとりで喫茶店に入るのは、おとなの仲間入りをしたみたいでどきどきするけれど。
ふふ、今日はふたりでいっしょだものね!

(だから、胸を張って注文しようと笑みかけて)
(ふたりで顔を突き合わせてメニューを覗き込む)
(色鉛筆のにおいがほんのり香って、それがまた胸を躍らせた)

デザート、ってかいてあるよ。
アーモンドと……、……うん、うん!
あってるよポシェ、これ、『ぐらにいた』だ!

(僕は何にしようかしら、なんて暫くメニューとにらめっこ)
(ややあって、ふたりのきもちが固まったなら)
(此方を優しい眼差しで見つめていた老夫婦へ、すいません!と手を上げた)
(じっ)
(てれちゃう!の反応に少しキョトンとしたのち、ふんわりと微笑み)
(ごめんなさいね!と、すこしおどけた様子で目線をそらした)

じっと見られると、てれちゃうのね。
動物は、目を逸らさないことが多いでしょう。
ワタシ、鹿の癖なのかも、しれないわ。気をつけるわね。

まあ。まあ!『ふつう』って、ひとそれぞれ、ねえ。
あなたのふつうも、ワタシのふつうも、それぞれ、ね。
さかしま。それって、鹿は大好きよ。
(ふわふわ、ニコニコ)(クスクス笑い)
(随分緊張がほぐれてきた様子の鹿、座り姿勢をゆったりとくつろいで)

ワタシね、どんなお店でも、ひとりで入るの、緊張しちゃうのね。
ここには鹿の知らない大変な知らないルールがあるかも、って。思って。心配になっちゃうの。
けれど。今日は、そうね。一緒だものね。安心、だわ。
ずっと思っていた楽しみ、叶った気持ちよ。

やっぱり!ぐらにいた。ぐらにいたなのね!
鹿は、ぐらにいた、注文するわ。
サティも、決定? ……そしたら、

(元気よく手を挙げる雲雀の様子を見た鹿、真似してサッと手を挙げた)
(注文を取りに来てくれたご店主にも『アーモンドとリンゴのグラニータ』と、きちんとオーダーを伝えて)
(重要任務をやり遂げた顔)
(おどけた鹿の仕草に、『今度はそっぽをむきすぎ!』なんて)
(くすくす、けらけら。ふたつの笑い声が重なって)
(それがまた雲雀の胸を躍らせるものだから、顔はもう、緩みっぱなし!)

ううん、気にしなくってもだいじょうぶだよ。
だって、目を見ておはなしするほうがうれしいでしょう?
ふふ、でもでも。こんなに真剣に見つめられたの、僕はじめて!

(ヒトの多くは恥ずかしがり屋で、時々目をそらしたりするのだ、なんて)
(こうして見つめ合うのはちょっぴり恥ずかしいけれど。とってもうれしいものなのだと、笑って)

うふふ!僕もだ。さかしま、すき!
ふたつの『ふつう』を重ねたら、たりないかけらを埋めてくれるんだ。
(年季を帯びてつやつやと光る椅子と机。はじめて来たのに、どこか懐かしい)
(暖色系のあかりはやわらかく、木漏れ日と合わさって心地よかった)

そっか、ポシェは森にいた時間のほうが長いものね。
でもでも、平気さ!僕がいっしょのときは、僕の『ふつう』を教えてあげられる。
ポシェのねがいごと、かなえてあげられた!

(そしてそれは、雲雀にとってもうれしいことなのだと)
(メニューから顔を覗かせ乍ら、ぱちりと片目を瞑って見せて)

(『まあ、まあ。ふふふ、元気なお嬢さまたちだこと』)

(なんて。老婦人が楽しそうに笑ってくれるものだから)
(照れくさそうに頬をばら色に染めた雲雀、ちょっぴりもじもじし乍らご注文)
(『ふわふわカスタードと木いちごのタルト』。それから、ふたり分の紅茶!)

…………注文、できたね!

(やり遂げた顔の鹿へ、こっそり耳打ち)
(そっぽを向きつつ、だんだん楽しくなってきて)
(ふふふ。くすくす。にこにこ)

あら。ふふふ。それなら、よかった。
ワタシも、しっかりはなかなか見ないから。ほんとははじめてみたいな気持ちなの。
あなたの目は、ちょうどいいくらいによく見てお話し、するわね。

さかしまも、ふつうも、たくさん教えてくれてどうもありがとう。サティ。
とっても心強い、お願いを叶えてくれるかたね、あなた。街の、ヒーローという存在、かしら。
ワタシ、森のお願いを叶えることなら出来るわよ、きっと。鹿のときならあなたを背負って、いくらでも走れるもの。また今度、遊びましょう。


(耳打ちにもほんわかと頷いて)
注文、できたわねえ。それに、ご店主はやっぱりとっても優しいかただった。
ふふふ、待つのも、楽しいことなのね。

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