シナリオ詳細
<黄昏崩壊>クリスタラード・クラッシャー
オープニング
●『霊喰晶竜』クリスタラード
あるところにドラゴンがいました。
将星種『レグルス』級のドラゴンの彼は、名前をバシリウスといいます。
彼は、ピシュニオンの森から内側だけが自分の世界でした。
強い亜竜は沢山いましたが、彼と遊んでくれる存在は皆、彼の暴力の前には壊れてしまうものばかりでした。
一緒に遊んで(戦って)くれる相手は、どんどんいなくなっていきました。
彼は強い強いドラゴンであるだけに、ひとりぼっちだったのです。
そんな彼のもとに、ある人々がやってきました。
ローレット・イレギュラーズと呼ばれた彼らは、バシリウスが殴っても、蹴っても、思い切り振り回しても壊れませんでした。
そんな人間は初めてでした。
彼はとってもとっても、うれしくなりました。
もっともっと、人間を知りたくなりました。
近づいて話してみれば、人間はいろんなことを知っていました。
音楽や、ダンスや、ボードゲームやカードゲーム、小さくておいしい食べ物。
暴力しか遊び方をしらなかった彼に、新しい世界を開いてくれました。
そして教わったのです、これが『友達』というものだということを。
「すごい、すごい! 僕にも『友達』ができたんだ! パパとママに教えてあげよ! クリスタラード様にもご報告しなくっちゃ!」
スキップしながらの帰り道。
報告のために訪れた広大な巣穴の奥で。
パパとママがクリスタルに囚われ、衰弱していました。
「…………え?」
レグルス級のドラゴンであるバシリウスのパパとママは、どういうわけか亜竜のワイバーンです。クリスタラード様がこの二人がパパとママだと言って会わせてくれて、自分のお世話をしてくれた、立派な立派なパパとママでした。
ご飯を沢山とってきてくれたパパも、巣穴をいつも守ってくれたママも、今は青い顔をして七色のクリスタルの中に閉じ込められています。
クリスタルの中心には、焼いた亜竜の肉を喰らうクリスタラード様がいました。
「おう、帰ったか。バシリウスよお」
手に肉を持ったまま立ち上がって、ゆっくりと歩いてきます。
まるで巨大な壁が迫るような圧力に思わず後退しそうになって、その時初めてからだががちがちに硬直していると気付きました。それが恐怖ゆえだと、直感できました。
「『お友達』、だあ? センスねえこと言ってんじゃねえよ。クソゴミ人間どもと俺ら竜種(ドラゴン)が対等なわけねえだろうが。あ?」
動けないバシリウスの肩を、がしりとクリスタラードは掴みました。
クリスタラードは六竜と呼ばれる天帝種『バシレウス』級の存在です。圧倒的な暴力と、圧倒的な破壊力がクリスタラードにはあるのです。たとえドラゴンといえど、逆らうことができないほどの。
めきめきとバシリウスの肩に手が食い込み、痛みにうめき声をあげるのを無視してクリスタラードは歯を見せて、笑顔を作りました。
両目を見開いた、まるで威圧のような笑顔でした。
「テメェは利用されてんだよ。テメェを倒せねえからって友達ヅラしてよお、守護領域を越えようとしてるだけなんだよ。そんなこともわかんねえんだなあ、テメェは。仕方ねえなあ」
びきびきと音をたてて、クリスタルがバシリウスを覆い始めます。
「や、やめて、クリスタラードさま」
「テメェはそのお友達ごっこでこの俺様を裏切った。テメェはもういらねえ。あのパパとママ『もどき』と一緒に、俺様の餌になってろ」
●アルティマからの応援
「『災厄』が、力を取り戻そうとしています……」
『占い師』プルネイラ・吏・アガネイアムは水晶玉を覗き込んで悲しげに目を細めた。
彼女はフリアノンの占い師であり、災いに関するものにのみ強い占いの力を持っている。
そんな彼女が今『災厄』と述べる存在があるとすれば、一つしか無い。
七つの集落を支配し人間牧場へと変えた悪しきドラゴン、クリスタラードだ。
「ちょっと! クリスタラードの力の根源は奪ったはずじゃない!」
『鈴家当主』鈴・呉覇が身を乗り出して叫ぶ。
そう、クリスタラードは人間などの生命体をクリスタルに閉じ込めその生命力を吸い取ることで力を蓄えていた。
そのための人間牧場として支配していた『アルティマ集落群』はローレット・イレギュラーズの活躍によって解放され、そのひとつでるオーシャンオキザリスは呉覇が管理を引き継いでいる地域だ。
「ここにも栄養源はあるってことだろ。亜竜とか、あのバシリウスって竜とかね」
『ダイアモンドドレイク』アダマス・パイロンが苦々しい顔で腕を組んでいる。
「つまり……こういうこと?」
伊達 千尋(p3p007569)が手をかざす。
「クリスタラードはあのバシっちゃんを餌にして力を取り戻そうとしてる」
「そんなのひどい……!」
タイム(p3p007854)が思わず立ち上がって声をあげ、そして大声を出してしまったことを恥じるように椅子に座り直した。
「なんとか、助けてあげられないなかな」
「それもあるが、クリスタラードをこのまま放置しておけば手に負えない力になっちまう。そのクリスタルから引き離す必要があるだろうな」
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)の言葉に、トスト・クェント(p3p009132)がこくんと頷いた。
「クリスタラードを、直接叩く。今ある戦力で、奴を巣から追い出さなきゃならない」
- <黄昏崩壊>クリスタラード・クラッシャー完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別決戦
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年07月01日 12時03分
- 参加人数70/70人
- 相談6日
- 参加費50RC
参加者 : 70 人
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参加者一覧(70人)
リプレイ
●クリスタラードの巣
花咲く山野を走り抜ける。知らせは確か、先行した調査員からのものだっただろうか。
バシリウス、そして他数十体の亜竜がクリスタラードの作り出す結晶体に閉じ込められているという情報だ。
それをうけ、何人かのイレギュラーズはすぐさま走り出しそうになっていた。それを止めたのは、やはりまた何人かのイレギュラーズだ。
『竜の頬を殴った女』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)などは、クリスタラードの強さを間近で、そしてその身で知っている。
なにせ『まっすぐ飛んでいるだけ』の存在に当時最精鋭のローレット・イレギュラーズたちが全滅しかかったのだ。
もののついでに。まるで小虫を払うかのような粗雑さで。
当時の作戦が成功したのは、突き詰めればクリスタラード側が気分を変えたからで、もしこちらを執拗に全滅させようとしたなら、きっと今頃生きてはいなかっただろうから。
一方で同じくらい危険を知っていたはずの『この手を貴女に』タイム(p3p007854)が思わず走り出してしまっていたのは、かのバシリウスと結んだものが形ばかりの友情などではなかったから。本当に、彼に友情を感じていたから。
かくしてローレット・イレギュラーズは大々的に依頼を募り、当初50人規模を想定していた部隊は70人という超過した規模の部隊へと編成され、クリスタラードの居座る『巣』へと進撃を開始したのだった。
「クソ人間どもが、何の用だァ? 餌の追加か?」
岩に腰掛けたクリスタラードの姿は、人間形態のそれ。しかし仮に人間であったとしても、素手で岩を砕きそうなくらい屈強な肉体だ。そして事実、砂遊びでもするように岩を握り潰せるだろう。
「クリスタラード!! 初めて会うな!俺、熾煇! よろしくな!
うぉー、かっけーな! ほんとにほんとの竜なんだな!? つよそーだな。強いのか?俺とも遊んでくれよ!」
『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)は出会い頭そう叫んだが、クリスタラードはそれに答えなかった。ただ、視線を向けた。
人間が石やタンポポの花に話しかけないように、クリスタラードにとって価値がないと見なしたのだ。それを、熾煇は本能で察した。
だから――まずは飛んできたワイバーンに騎乗し襲撃した。
鋭く放たれた矢尻(アローヘッド)のようなそれに、誰かの拳が重なる。
ただの拳ではない。ローレットでも拳という点に置いて頂点にあると言って良いくらいの人物。『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)のパンチだ。
「HAHAHA、清々しいくらい悪党だな、クリスタラード!
嫌いじゃないぜ、変に事情があるなんてほざく奴よりマシだ
思いっきりぶん殴ってやったらスッキリするしな!」
二人の、それこそ人間を水風船のように破壊できるような強烈な攻撃がクリスタラードの胸に炸裂――したはずだ。したはずなのに、クリスタラードは微動だにしていなかった。
「くあぁ――」
どころか、ダルそうに大あくびをして、てを翳す。
虫でも払うようなその動作は、しかし彼らを殺すに充分過ぎる。
咄嗟に防御姿勢をとった彼らに、『かみぶくろのお医者さん』毒島 仁郎(p3p004872)が自らの使える最も強力な治癒魔法を唱え、そして『竜の嫌いな食べ物』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)がそれを何発も連射するためのエネルギーを供給し始める。
実際、貴道たちは弾丸の如く吹き飛び巨大な岩壁にめり込んだ。
「久しぶりだな、クリスタラード。食わず嫌いの時間はおしまいだぞ、クソ竜種」
マニエラがギッとにらみ付けるが、クリスタラードは意にも介さない。ダメージがまるで通っていないのだ。あの貴道たちの力をもってしても、だ!
「これを『抑える』ですか……」
仁郎は紙袋の上から汗を拭うような仕草をした。実際汗だくなのだろう、首の下からだらだらと嫌な汗が流れ出ている。
見上げると、水晶体がくるくると回り始めた。
七色のそれらは魔力でできた弾丸をマシンガンのように連射しぶつけてくる。
「皆、いくよ!」
『この手を貴女に』タイム(p3p007854)が盾を手に走り出す。
クリスタラードにダメージを与えるにはまずこの水晶体を潰さなければならない。
「バシリウスくんをそのまま帰すんじゃなかった。少し考えれば予測位できたのに。くやしい~!」
歯噛みするタイムの視線の先には、大きな水晶体。人間形態をとったバシリウスが青色のそれにおさめられている。その隣には、紫色の水晶体。中におさまってぐったりとしているのはバシリウスがいうパパとママだろう。
『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が叫ぶ。
「破壊の優先順位に気をつけて! 順番は『黄>青紫>白黒>緑赤』だよ!」
直後、水晶体たちから【雷陣】【崩落】【呪縛】という凶悪なBS効果をもった魔術弾が雨のように浴びせられる。
タイムがそれをガードした直後、『星灯る水面へ』トスト・クェント(p3p009132)が黄色い水晶へと手をかざす。
「……直接会うのは初めてだな、クリスタラード。
ひとを、竜を恐怖で押さえつけて従えさせて。
そんなやつの犠牲になるひとを、これ以上増やさせてたまるか!」
展開された巨大な魔方陣からミサイルの如く飛び出したサンショウオ型エネルギー体。狙いは水晶体の破壊――ではなく、そこに付与された無効化結界の破壊だ。
見事に結界を破壊した直後に、『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)はリニアドライブによって飛び上がる。走る『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)と共に。
「急ぎましょう、マリィ。
あまり時間を掛けてしまうと、間に合わなくなってしまうかも知れませんわっ!」
「うん!ヴァリューシャ!
あんなクリスタルさっさと破壊してしまおう!正直あの竜は気に入らない!
タイム君! コルネリア君! 私達もいるんだからね!」
「タイムー、私達も応援に来ましてよ!」
他の水晶体が健在な状態である今、黄水晶はHPとAPに凄まじく高い補正がついている。これをゴリ押ししなければならないが――。
「マリィ、せーので行きますわよ!」
「ヴァリューシャ!せーの! で行くんだね!まかせて!」
「「せーーーのっ!」」
二人が完璧に息のあった同時攻撃を叩き込んだことで、黄色水晶にぴきりとヒビが入った。
「っし――」
『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)が片手で小さくガッツポーズをとる。『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)が『行くぞ』とハンドサインを出した。
「俺らはバシっちゃん優先で青いくぞ青! ブレイクシクヨロ!」
「ったく、不利な順番選んだわねぇ。仕方ないし、わかるけど」
クリスタラードの水晶体は破壊する順序によってその破壊の難易度が上がる。赤を残せばHPのゴリ押しを要するし、白黒を残せば無効化結界を割る手間を要する。緑が残っていれば【怒り】等の付与が意味を無くしてしまう。
ちなみに紫を残しておくことで中の対象を救出しやすくなるのだが、そうなるとバシリウスのパパとママを危険にさらすリスクを負うことになる。
結果、最も破壊難易度が高い状態を選ばざるを得なくなっていた。
「黄水晶の体力がかなり低下しているようだ。トドメの準備をするぞ」
『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)がミゼリコルディアを握りしめ、『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)に合図を出す。
「おー…あれがアルティマの面々で動かしてたというクリスタルっスかー。
思ってたよりしょぼいスね。
というか、私、六竜のうち4体と会ったことがあるんスけど…。
アンタが一番小物感強いでスよ。
特に人間の力を借りなきゃ戦えないとことか」
美咲はキッチリとクリスタラードをディスってから、黄水晶に銃弾を撃ちまくった。
破壊――からギリギリでもちこたえる黄水晶。
そこへルブラットが鋭くミゼリコルディアを走らせることで完璧なトドメとした。
「お……」
クリスタラードはそこでようやく、こちらを敵として認識したらしい。
「クリスタラード。覚えているか?
グリーンクフィアという集落を……ベルガモットという亜竜の名を」
「グリーン……? よく覚えてねえなあ。人間牧場の名前か? ベルガモットはクソだったよなあ、人間ごときに負けてよ、根性がねえよ。まあいいや、テメェが今壊した分の養分になっとけ」
ずいっと出したクリスタラードの腕。それを『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)ががしりと掴んで止めた。
「よぉ、クリスタラード。
アンタの言うクソゴミが大勢連れてやってきたぜ? つまり今からアンタはゴミまみれだ!
中でもあたしは一等しつこいからね……蹴ろうが殴ろうがしつこく纏わりついてやる!」
チッと舌打ちし腕を振り払うクリスタラード。派手に吹き飛び『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)が岩壁に激突するが、直後に『特異運命座標』鯤・玲姫(p3p010395)がクリスタラードに斬りかかった。
「村を解放してる時にぼんやり疑問に思ったんだ。
どうしてクリスタラードだけはここまで大規模な「食事」をするんだろうって。
だって他の竜ではここまで大袈裟な話を聞かないんだよ!?
それに「食事」無しでは元々備わってるはずの力が抜けていくってのは――!」
「――ッ」
殺気が、瞬時に玲姫へ向いた。
腕が玲姫の首を掴み、それ以上を喋らせない。
クリスタラードの瞳に浮かぶ感情の欠片に玲姫は笑みすらうかべた。
そこへ『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)と『期待の新人』线(p3p011013)の攻撃が炸裂する。
「騎士様がドラゴンを討つってのも陳腐だけど定番でよくな~い? ま、うちの騎士様に首はないんだケド♪」
マリカの召喚した『お友達』がクリスタラードへと迫り、騎士の剣で斬りかかる。
线はそんな仲間たちをある程度盾にしながら重火器による徹底的な砲撃を叩き込んでいく。
「あなた様のような方はわたくし嫌いなのです」
斬撃が、砲撃が、クリスタラードの屈強な肉体の表面をはねる。まるで鋼鉄の板に銃弾を撃ち込んでいるかのようなカキンという音が連なり、ひとつの連続した戦場音楽へと変わっていく。
「バシリウスまで生け贄にするなんて酷い。彼はクリスタラードの事を信頼していたのに。
クリスタラード。ボクはキミを許さない! キミを倒してバシリウスを救ってみせる!」
そこへ『魔法騎士』セララ(p3p000273)が魔法で限界まで強化した聖剣を振り上げた。巨大な剣の形をした魔力の固まりが、クリスタラードめがけて迫る。
「なるほど強いのだろう、貴様らは。
だが、それが為に同胞をも虐げるのであれば……それは悪だ」
反対側からは『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)が思い切り殴りかかる。
セララの巨大魔法剣が砕かれ、エッダの拳がクリスタラードの背にぶつかってガキンと止まる。
「――」
エッダとセララはその一瞬で理解した。
クリスタラードに施されている無効化結界をブレイクするのはクリーンヒット率からしてほぼ不可能。次いだ理由でBSの付与も不可能であると。
とにかく攻撃を撃ちまくり、クリスタラードを『邪魔する』ことに専念しなければならないと。
なので、ここはせめてヘイトを買うべく――。
「魂がみみっちいって言ってんでありますよ、テメー。
メテオスラークの方がまだ、敬服に値したでありますよ。
貴方は、ここでお仕舞いであります!」
「奴らと比べるんじゃねえ!」
振り返り、クリスタラードの腕が奔る。直撃すれば死、だ。
が、そんな彼の腕に飛びかかりしがみついたのが『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)だった。
「ガーハッハッハ、初めましてであるなクリスタラード殿。
竜種にして天帝種バシレウスである貴殿とはお会いしたいと思っていたが買い被りのようであるな。
力を維持する為に喰らう事を悪とは言わんがそこで同種にまで手を出してしまうのは些か品がない、つまりインテリジェンスに欠ける言わざるを得ないであるな!」
そう言い終わらないうちに吹き飛ばされた練倒に、『静観の蝶』アルチェロ=ナタリー=バレーヌ(p3p001584)が素早く治癒魔法をかける。
そして、クリスタラードへ振り返った。
「アナタは、とても寂しい子なのね。
命は皆平等なモノ。
全てその重さに変わりはないわ。
アナタも、水晶の中の子等も、私達もよ。
アナタを慕う子等を食らえば、アナタは一人になってしまう。
私は、それを寂しい事だと思うのよ」
両手をそっとあわせ、治癒の力を高めていく。
「一人は寂しい。
だから、アナタが一人にならない為にも。
この場にいるすべての命を、決して散らせはしないわ。
もしここでアナタが倒れるのならば、せめて私だけは、アナタの安らぎを祈りましょう。
しがないおばあちゃんにも出来ることはあるのだから」
「『倒す』だ? テメェらゴミ人間どもにそんなことができるかよ!」
吠える。それこそ、仲間たちの狙っていた隙だ。
「チャンスだ――アーマード・ディビジョン、着装ッ! 召喚プログラム、ドライブッ!!」
『新たな可能性』レイテ・コロン(p3p011010)は『S・P・A・D・D』を用いて実体化した強化装甲を纏い、青い水晶体へと走る。
叩き込まれる魔術弾を全てその身で受けるためだ。
「友達が出来たって喜んでる奴を馬鹿にするな! どうせお前こそボッチだろゴリマッチョッッ!」
青い水晶体。つまりはバシリウスがとらわれている水晶体だ。
『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)は『福音砲機Call:N/Aria』を構え、思い切り撃ちまくった。
「タイム、千尋、気張っていきなさいよ。だれかれ大事な者を『もどき』とのたまう馬鹿に一泡吹かせなさい」
そして水晶体めがけとびあがる『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)。
「俺はよぉ、元居た世界でよぉ。
ロクでもねぇ大人に育てられてよぉ。
歪んじまったガキをそれなりに見てきてよぉ。
そういった奴をよぉ。
やっぱり何とかしてやりてえんだよなぁ。
――聞いてんのかクリスタラード!
バシっちゃん、『あれ』は俺にとって大事な友達の証なんだ。絶対に見捨てねえ。だから死ぬな! お前は強い奴だろ!」
水晶体にはしる、確かなヒビ。『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)と『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)はそれを見てこくりと頷き合った。そしてオデットが叫ぶ。
「もうすぐ壊れる。ヤツェクさんお願い!」
声を受け疎き出したのは『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)だった。
「よう、クリスタラード。おれのダチに随分なおもてなしをしてくれたなぁ?
おれはガキを利用する大人ってのが嫌いだからな。その目論見命がけで撃ち抜いてやる」
彼の演奏で楽しく踊った少年を覚えている。あの瞬間に生まれたのは、確かに友情だった。もどきなんかじゃ、絶対にない。
「バシリウス、アンタのダチが来たからには、全て解決だ。全部終わらせてまた遊ぼうじゃないか。な?」
ビームリボルバーを抜き、全弾撃ち尽くす。
破壊をギリギリのところで免れた青水晶めがけ、オデットは『疾駆する仔狼』――つまりオディールに似たあの仔狼を召喚し放った。
(オデットさんがレイドに行くならば助力せねば…竜の相手は苦手だけど、妖精道具として頑張るよ!)
サイズもそれに合わせて『シードスティール』の攻撃を放つ。
完璧なEXF値をもった青水晶を必ず倒し、そして内側に捕らわれたバシリウスを助け出すために。
かくして水晶体は破壊され、ぐったりとしたバシリウスが地面へと投げ出される。
ヤツェクたちが駆け寄り、『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)がその様子を確認。『生きている』というサインを仲間たちに出した。
それに安堵するイレギュラーズたち。逆に、クリスタラードは激怒した。
「テメェら。なに勝手なマネしていやがる!」
立ち上がり、ルブラットたちにずかずかと詰めよろうとするクリスタラード。ただ歩いているだけだというのに、間にあるものを全て破壊できるかのようなプレッシャーがあった。
そこへ立ちはだかったのが『魔女の騎士』散々・未散(p3p008200)と『懐中時計は動き出す』ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)だ。『破壊』なら、慣れている。
「チル様は敵のことは気にせずに。私が護りますから、思う存分攻撃をなさってください」
ヴィクトールがクリスタラードへと踏み込み、その視線で何かを破壊――しそこねる。空気が爆ぜ、のけぞるヴィクトールをクリスタラードがむんずと掴んだ。笑みを浮かべるヴィクトール。
(死にたがりの、守りたがり。今は出逢いたての頃のヴィクトールさまの様で)
未散は目を細める。
(嗚呼、嗚呼、けれど。黄金の心臓を失った今のあなたさまは。
――そうして居れば、何時か本当に死んじゃうんですよ?)
『王』から得た答えを、まだ黙っている。其れを識ったら、幸せだと、喜ばしいと思うんだろうから。
未散は黙ったまま剣を抜き、クリスタラードの腕に叩きつけた。
直後、『真打』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)と『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)の刀が同時に走り、クリスタラードの腕を切りつける。
奇跡的にというべきなのだろうか。クリスタラードを覆っていた物理攻撃無効化結界が剥げ落ち、クリスタラードの腕に浅い傷が走る。
「チッ」
舌打ちし、腕をひっこめるクリスタラード。
「アローアロー?
わたしわたし。そう、貴方のおめめぶっ刺したやつ。
前回のリベンジ……もあるんだけどぉ……」
わざともじもじした顔をすると、秋奈は笑った。
「そのぉ……おめめの定期健診だオラァ! 不測の事態に対して当医院では一切責任を負いかねます」
(久方ぶりのクリスタラード…数ヶ月前にアルティマの完全解放で全盛期から大幅に弱体化してるとはいえ、完全討伐にはまだ至れない、か。
全く、竜の規格外さには頭が痛くなってくる。
それでもかのリヴァイアサンよりかは遥かにマシな状況というのも更にな)
そんな彼女とぴったり息を合わせ、紫電は連続で斬撃を叩き込んだ。
クリスタラードの肉体にいくつものかすり傷ができあがるが――それがみるみるうちに再生していく。
それでも思わず片目を瞑ったのは、あの日を覚えているからだろうか。
「あの日を覚えていますか? さあ、追い掛けてきましたよ?」
『竜眼潰し』橋場・ステラ(p3p008617)が突撃し、『チェインライトニング』の魔術をぶっ放す。
「そうだったなあ……テメェらは地の果てまでも追いかけてくるんだったか?」
『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)が間に割り込み、クリスタラードからの攻撃を阻む。
(練達に現れた時ステラに大怪我をさせてぼくも怒ってるんだよね。
卑怯な手も使って……ステラが全力で戦えるようになるのが一番だけどぼくからも一発殴らないと気がすまない)
水晶が破壊されたらこちらも一発殴ってやる。そんな気持ちを燃え上がらせ、リュコスは構える。
「バザーナグナル様の地を壊した元凶を許せはしません。
贄の減り食べながらでないと戦えぬ程か弱くなった今が好機。
彼に仕えた乙女達のためにも、ここで決着をつけます!」
そこへ追撃をしかけたのは『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)だった。
「爪牙の扱いはわたしも負けていない筈。
攻防一体となった我々に倒せぬ敵などおりません。
竜(あなた)と鬼(わたし)、どちらが『か弱い』か決めましょう!」
跳躍し大上段から撃ち込んだ澄恋の斬撃――それらが見事に刺さった――次の瞬間。
カッとクリスタラードの両目が開いた。
やや前傾に姿勢をとり、『破ッ』と吠えるクリスタラード。
その瞬間に彼の眼前にある全ての人間が纏めて吹き飛んだ。
澄恋が木っ端みじんにならなかったのは、『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)が咄嗟に割り込み彼女を庇ったからだ。
「ン。フリック 澄恋 護ル。
主トノ日々 思イ出ス。
澄恋 クリスタラード脅カス一人。
力 存分ニ振ルエルヨウ 澄恋ニ不足シテイル耐久面補ウ」
既に激しくダメージを受けたフリークライはよろりと起き上がり、それでもまだ戦えるとばかりに構えている。
そして、数の多さこそがこちらの有利。
「今ッス――!」
「うん!」
とてつもない高反応によって動き出した『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)と『持ち帰る狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)。
それに並ぶほどの速度で動いた『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)がナイフをどこからともなく抜いた。
「クリスタラードだがなんだか知らねぇが、別にお前の餌にするために頑張って出し抜いてたわけじゃねーんだよな。
ってことで、宝石がいつまでも手元に残ってると思ってる典型的なクソ竜の手元からの、クリスタル消失マジック! ってのがちょうど見世物として良さそうかな」
サンディの放ったナイフは紫水晶をコーティングしていた無効化結界を破壊。直後にフラーゴラとウルズのキックが纏めて水晶体に叩き込まれる。
「クリスタラードには紫水晶絡みで因縁がある。この僕も参戦させてもらうぞ!」
『竜食い』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)がそこへ貴族騎士流抜刀術『翠刃・逢魔』を繰り出した。
その剣が鋭く閃いたのは、間違いなく『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)が皆の力を高めていたからだろう。
「皆さん! 相手は強大ですが、恐れる事はありません! 勝利を我らに!」
リディアは剣に光を宿すと、フラーゴラの勢いを受けて斬りかかる。
「クリスタラード。貴方は確かに、この場の誰より強い力を持っているかもしれません。
ですが、それを驕った結果がこれです。命を、舐めるな!」
ヒビ入る水晶体。バシリウスがうっすらと目を開け、『ぱぱ、まま』と呟いた。
それに答えたのは『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)だ。
「大丈夫だ、まだ生きてる。それに……水晶体の体力もあと僅かだ」
アーマデルは蛇銃剣アルファルドによる射撃を連続で叩き込み、『アーマデルを右に』冬越 弾正(p3p007105)が完璧なコンビネーションで哭響悪鬼『古天明平蜘蛛』参式から伸びた光の剣で斬りかかる。
破壊――寸前。紫水晶の効果によって自身にEXF強化の効果がかかる。だがその状態を見逃す彼らではなかった。
「――英霊残響:怨嗟」
「――燦々煌々!」
アーマデルの放った音色が弾正のマルチスピーカーによって拡大され、紫水晶がパンッと破裂する。ウルズとフラーゴラは素早く駆け寄り、そしてぐったりとした二体のワイバーンを抱えると大急ぎで戦場の外へと運び出す。
「テメェら――!」
振り返るクリスタラード。
その目には強烈な敵意が満ちていた。
浮かび上がる白、黒、緑の水晶体。その力を受けて自らの防御を固めたクリスタラードは、外へと走るウルズたちを追いかけるように飛翔する――が。
『雨宿りのこげねこメイド』クーア・M・サキュバス(p3p003529)、『グリーンスライムサキュバス』ライム マスカット(p3p005059)、『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)の三人によって無理矢理ブロックされた。
「あんな筋骨隆々なのに人質取って吸収頼み、ドラゴンらしくない陰湿さ…あんなのの妨害してたとか悲しくなりますよ。
クーア、もっといたずらしてやりたくなりました。…あとライム、取り込まれそうだしまだ行っちゃダメよ」
「ドラゴンさんってどんな味するんでしょうかねー、やっぱり食べたら私も強くなれるんでしょうか? うーん、でも近づいただけで蒸発しちゃいそうですね…最初は我慢我慢」
「所詮は自然の摂理たる弱肉強食を崇めたて、生物の命題たる共存共栄を知りもしない脳 筋の分際で、どうして上位種を気取っていられるのやら。
それに貴方の”元”支配領域たるアルティマも今や我らが手中。
……私の領民・領地に仇名してくれた狼藉者には、御退去願わなければなりませんね? にひひ♪」
アルティマの民は既に立ち上がった。もう彼のエサではない。
ライムが治癒を、リカが防御を、そしてクーアが思い切り燃える爪で斬りかかる。
三人のコンビネーションを前に、クリスタラードは立ち止まらざるをえない。
「チッ、黄水晶がのこっていりゃあ――」
呟くクリスタラード。大して、岩壁にめり込んでいた『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)が自力でずぼっと脱出し自らの手を見下ろした。
「異様に動けないと思ったら、呪縛やらの効果か。けど、そいつはもう無くなったらしいな」
ギラリと笑い、本領発揮とばかりに走り出す。
それは、仲間たちも同じだ。
(もし、あの時トルハを助けられていなければ。
今この場にクリスタルに閉じ込められていたのは……)
『老兵の咆哮』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)の瞳に燃え上がる、炎。
「石トカゲ! てめぇの相手は俺だ」
義手で、殴りかかる。そして至近距離で大砲ギミックを発動させると、クリスタラードにぶっ放した。
「今は届かなくとも必ず斬り落とす、必ず殺す!
クリスタラァァァァァァァドォォォ!!!! 次は必ず心臓を引きずり出してめぇの首を柱に括りつけてやる!」
彼ほどの熱を、しかし持たないが。だが同じだけの闘志を心の中で燃やして『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)が槍をクリスタラードに突き込んだ。
「やあね。つい最近、信じられない腕力バカと遣り合ったってのに。このテの奴は当分お腹一杯だったんですけど」
槍がクリスタラードの皮膚で止められる。あまりに堅い。が、それなら殴れば済む話。すぐにゼファーは自らの足でクリスタラードを蹴りつけた。
「どんなに強くたって、弱いもの虐めが好きなお子様には負けたくないのよ。私はね」
振り返り、腕を振りなぎ払おうとするクリスタラード。そこへ『希望の星』黒野 鶫(p3p008734)が割り込み剣で防御をしかける。剣がへし折れるかというほどの衝撃が走り、鶫は吹き飛ばされた。
いや、吹き飛ばされかけたというべきだろう。
根性で腕にしがみついたところに、『ドラネコ保護委員会』風花 雪莉(p3p010449)の治癒の魔法がかけられる。
「信じていた相手に裏切られるのはとても辛いですよね。ましてや両親と共に命の魔でも奪われようとしてるなんて。竜はとても恐ろしい存在です。災厄と呼ばれるクリスタラードなら猶更。けれど――」
雪莉の心はこう言っている。『立ち向かえ』と。
「理不尽なほどの嵐に晒されようと、儚い雪のように消えるわけにはいきません」
雪莉の治癒力と鶫の根性が合わさり、ギリギリに持ちこたえる。
が、それ以上はマズイ。
「交代だ、下がれ!」
『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が叫び、地面をダンッと叩く。
式符によって瞬間鍛造された巨大な魔術大砲が地面からせり上がるように出現。それがぶっ放され、クリスタラードに直撃する。
「奪う事に慣れ切ったクリスタラードに負ける訳には行かねないね。
まだまだイエローイキシア含めた覇竜の発展を見ていたいんでな!」
と同時に斬りかかる『破竜一番槍』観音打 至東(p3p008495)。
「――小石、小娘、大いに結構。竜の躓くを見れば、人、それを巌と讃えよう――!」
がきんとクリスタラードの表皮に刀が弾かれる――が、それは至東にとって『手応え』だ。
「『破った』」
「――」
クリスタラードの纏っていた無効化結界をついに破ったのだ。
「バシリウス君には悪いと思ってますが、今は君の趨勢よりもこの戦に夢中ですよ私! いいなあ、竜! いいなああ!」
ハハッと笑う至東。そんな彼女を払いのけるべくクリスタラードが腕を振る――が。
「これ程の非道を……許せません! これ以上の横暴は見過ごせないですね――!」
「久しぶりにのぞけば、世界に平和は訪れるのでしょうか。誰一人欠けずに帰るべき場所へ帰りましょう! ただいまを言う為にね」
『ヒーラー見習い』レナート=アーテリス(p3p010281)と『聖なるかな?』アザー・T・S・ドリフト(p3p008499)が同時に治癒の魔法を発動させた。
頭のなんともいえない部位を発行させたドリフトと、両手を突き出し何かをとなえるレナート。
治癒によってギリギリ死なずに済んだ仲間たち――を追い越して、『山吹の孫娘』ンクルス・クー(p3p007660)、『空気読め太郎』タツミ・ロック・ストレージ(p3p007185)、そして『おしゃべりしよう』彷徨 みける(p3p010041)が飛びかかる。
「抑えきれる気がしない――でも、それでも!
覇竜の人達や、慕ってくれてる竜やそのお父さんお母さんを。
閉じ込めて吸って殺すなんて許せない!
覚悟しなさいこの糞竜が!」
仲間たちを守るべく立ちはだかったみけるはクリスタラードの腕を掴み、その身で押さえ込む。
タツミもまた、反対側の腕を掴んで押さえ込んだ。
「相対するにはとんでもねぇ相手だが、やってることが気に食わねえ。
だからと言って届く相手じゃねえのもわかってる。だけどこのまま見過ごすなんてできるか!
やれることはやる、人の底力、なめるんじゃねぇぜ!」
両サイドから――だけではない。背後に回り込んだ『山吹の孫娘』ンクルス・クー(p3p007660)が怪力によって羽交い締めにする。
「民や慕う人から収奪して力にするなんて……駄目に決まってるよっ!
そんな悪い事する人には天罰だね!
皆に創造神様の加護がありますようにっ!」
三人の力で無理矢理押さえ込む。いや、抑えられるような力ではない。ではないが、振り絞った勇気と決意は、その一瞬だけを可能にした。
『導きの双閃』ルーキス・ファウン(p3p008870)が剣を抜く。『鬼斬り快女』不動 狂歌(p3p008820)が剣を抜く。
「生贄や同種のはずの竜種を吸収して強く、いや強さを保つなんて竜よりも妖怪とでも名乗った方がいいなじゃないか。これじゃあ、折角準備した竜殺しも効果ないな」
などと皮肉を言いながら、狂歌は斬撃を解き放った。
同時に、ルーキスが絶好のタイミングで瑠璃雛菊と白百合を交差させた斬撃を繰り出す。
「俺達が必ず助ける! だから、こんな所で負けるんじゃない! 生きろ!」
言葉は他ならぬ、バシリウスたちに向けて。
そうして刻み込まれた傷は――奇しくも、クリスタラードを練達のあの日に止めた、胸の傷に重なった。
「なるほど。ではお見せしなければなりませんね。
『友達』を想う心が目的を果たす力を生むのだと。
そして友達に種族の垣根など無いのだと」
『想光を紡ぐ』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)は自らが使える最大限の治癒魔法を展開すると、四つのクリスタルへ向け突進する『流浪鬼』桐生 雄(p3p010750)に回復支援を放った。
「あと一息です。今の陣容からすれば――白い水晶体を先に」
「任せな!」
刀に光を纏わせ、迫る大量の魔力弾をあえてかわしもせずに突っ込む雄。
「おうおう竜なんてでっけえ図体した奴がなんとも情けねえなぁ。強い奴が正義だとかはまぁどんな所でもどんな生き物でも通る道理だ。結局好き勝手やるにゃ相応のモンがねえとな。
でもまぁなんだ、同族食ってパワーアップってのは見境なさすぎねぇか? 必死過ぎて見てらんねぇわ。
つー訳で、今からそのキラキラしたモンぶっ壊すから覚悟しやがれクソ竜野郎!」
ダンッと大地を踏んで跳躍、斬り付けた雄の刀は水晶体が纏っていた無効化結界を破壊する。
『物語領の兄慕う少女』コメート・エアツェールング(p3p010936)と『物語領の猫好き青年』メテオール・エアツェールング(p3p010934)はその隙を逃さなかった。
「今の自分にできる事は……これですから」
「中の方々にまで余波が届きませんように……撃ちますわよ!」
体力の大きく減耗していた白水晶へヴァイス&ヴァーチュの魔術を放つコメート。そしてデッドエンドワンを果敢に撃ち続けるメテオール。
二人の射撃は白水晶に決定的なヒビをあたえた。
「ここから一気に行くぞ。『見極め役』は気合いを入れろ」
『竜の頬を殴った女』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)が『禁術・運命歪曲』を発動。白水晶を破壊した。
内部に捕らわれていた亜竜がぼとりと落ち、ひゅうひゅうと荒い息をしながら倒れる。
ここからは結界を無視して物理攻撃一辺倒に絞ることが可能だ。
残った三つの水晶は黒、赤、緑。攻撃方法さえ絞っていけばゴリ押しが可能という点では、赤を先に潰すのが道理だろう。
そうはさせまいと水晶体たちが魔術弾をマシンガンのように乱射してくるが、『いのちをだいじに』観月 四音(p3p008415)は治癒の魔法を展開することでそれに対抗。魔導書をぎゅっと抱きしめるようにすると、水晶体を睨んだ。
(私達の働き如何で犠牲者が出るかもしれない、と言うのはとても嫌ですからね……ち、直接戦闘は出来ませんけど、出来る事をやりましょうっ)
とはいえ四音の役割は重要だ。ここで『切り裂きジル』ジルベール(p3p010473)と『豪放磊落』呂・子墨(p3p010436)が走り出し水晶体への攻撃範囲へと入るが、彼らに攻撃をかわすだけのスペックは残念ながらない。故に治癒によってカバーしなければ戦い続けることは難しいのだ。
「『スタープレイヤー』の腕の見せ所だな」
「ああ。このときのために用意したんだ。人質のつもりなんだろうが、全力でやらせてもらうぜ」
面識もさほどない二人だが、あえてジルベールは握りこぶしを突き出してみせる。それに合わせるようにコツンと拳を合わせる子墨。二人は笑い、回復支援を背にうけながら魔力弾の雨の中へと飛び込んだ。
身体を貫くような衝撃――を、無視して、子墨の跳び蹴りが炸裂する。彼の目が青く、燃えるように輝いた。
と同時にジルベールの魔力が渦を巻き、クリスタルを貫いて放たれる。
「お前はこんな所で死なせない! 俺たちを見ろ! 俺たちに応えろ!」
墜落し破裂する水晶体。『中身』は無事だ。あれだけ全力の攻撃を仕掛けても無事というのは、さすがとしか言いようがない。
一方で、『aerial dragon』藤宮 美空(p3p010401)が残る水晶体からの射撃をジグザグに飛行することでなんとか回避していた。
「私も、一亜竜種としてあの様な所業は見逃せませんわ。
微力ながら、全力でお手伝いして、彼の企てを邪魔して見せましょう!」
翼を羽ばたかせ、加速。空圧を蹴るかのようなドラゴン・ロアの力が発動し、美空はミサイルのごとく水晶体へとぶつかった。
衝撃。それが更に『放逐されし頭首候補』火野・彩陽(p3p010663)の放つ矢によって加速する。
『剔地夕星』と『穿天明星』。つまりは地を剔り天を穿つ弓矢だ。
「……ちっとばかり酷いんちゃうの? 『それ』、そこまで慕ってくれてたの……縁はないけど今来たからそれで出来たな。ほないくで!」
彩陽は再びつがえた矢に全神経を集中させた。
いや、この場合『全身全霊』とでもいうべきか。死した者たちからまでも分けてもらった霊力を乗せた技の名は。
「――その力を借りて放つは、祓えの一撃」
謳うように囁くと、矢が放たれる。
直撃。と同時に大上段から斬りかかった『欠け竜』スースァ(p3p010535)の剣が水晶体へと叩き込まれる。
「あの悪食に食わせるにゃ高級過ぎる。そのご馳走全部かっさらってやろう」
ぱきんと割れた水晶のヒビに更に力を込め、スースァはそのまま水晶部分だけをたたき切った。
ここまで一つも落とすこと無く水晶体だけを破壊できていたのは仲間たちの努力のたまものだが、スースァのもつ『叡智たるツァラトゥストラ』の効果によって彼らのスキルが強化されていたのも当然一助となっていた。
そして、ここからもう一押し。
「アルティマも『いい趣味』してたが、クソ野郎のクソ野郎さが極まってきたな
人外のクソさというより人間のクズさに近いとこはあるか?」
可愛らしいピンクのライフルを構え、『フレジェ』襲・九郎(p3p010307)は棒付きキャンディをくわえる。
シニカルに笑うと、水晶体の中央を狙って発射した。
「竜種や亜竜種にゃ義理もねぇし、本来理由はないんだが……そういやアイツの顔、ムカつくよなぁ?」
そこへ更なる攻撃が浴びせられた。キラキラ光る星のエフェクトが散り、『夢見る薔薇』ジャンヌ・フォン・ジョルダン(p3p010994)のはなつ魔法の星が水晶体へと激突する。
「ドラゴン様との戦いですか? とおくの国のおはなしですが、きっと貴族の嗜みとして学びになるはずなのですね!」
爆発したように散ったお星様のエフェクトにあわせ、『物語領の愛らしい子猫』ミニマール・エアツェールング(p3p010937)が『ヴァイス&ヴァーチュ』の魔術を発動させる。
(メテオールもコメートも頑張ってる…わたしも少しでも頑張る。にゃ)
水晶体に次々にぶつけられた魔力の固まりがその表面を削り、徐々にヒビが大きくなっていく。
「さあ、終わりよ」
『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)がふわりと空に浮きあがり、手をかざす。世界にそうあれかしと認められたかのように。
そこでやっと、クリスタラードは自らの気がそれていたことに気付いた。
「やめろ――!」
という叫びは、当然のものだったろう。
味方を食わなければならないほどに、このクリスタルは再生産の難しいものだろうから。
これを失ったクリスタラードは、本当に追い詰められてしまうのだろうから。
そしてヴァイスは、無慈悲にも白き閃光を放った。
最後の水晶体が破壊され、中に捕らわれていた亜竜だけを残して散っていく。
ぱらぱらと雨のように散るそれを、クリスタラードは驚きの表情で見つめていた。
●クリスタラードという、男
「ゴミ人間どもが……わらわらと、邪魔なんだよ……」
悪態をつくクリスタラード。彼を守る水晶体はもうない。ギラリと目を見開いたそのプレッシャーは、確かに天帝種『バシレウス』のそれだった。
だが、ひとりぼっちの天帝種だ。
領民を喰い、部下を喰い、守護者すらも食った彼に、もうそばに立つものはない。
自らを守る水晶体でさえも、力を誇示してみせようという意識にとらわれ、むざむざと破壊されてしまった。
「くそ……」
そこでようやくクリスタラードは表情を素のそれに変えた。
一瞬だけ。一瞬だけ、泣きそうな男のそれになってから。
「全員、ぶち殺してやる!」
吠えた。その衝撃は、万物を吹き飛ばすほどのものだった。
「まずいですよこれは!」
『かみぶくろのお医者さん』毒島 仁郎(p3p004872)と『竜の嫌いな食べ物』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は即座に治癒の力を展開。そこに『静観の蝶』アルチェロ=ナタリー=バレーヌ(p3p001584)も加わり何重にも治癒がかけられる。
仲間を守るべく『特異運命座標』鯤・玲姫(p3p010395)と『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)が前に出るが、彼女たちは纏めて吹き飛ばされた。
が、そんな彼女たちに守られた『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)が素早く接近。クリスタラードの顔面に拳を叩き込む。
「ぐお!?」
鼻を潰されのけぞるクリスタラード。そこへ『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)と『夢見る薔薇』ジャンヌ・フォン・ジョルダン(p3p010994)の攻撃が同時に炸裂した。
お星様と紅焔撃。そこへ更に『竜食い』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)の斬撃が。
連撃の最後に打ち込まれたのは『フレジェ』襲・九郎(p3p010307)の狙撃だ。それも、顔面ど真ん中に。
「途切れさせんな、繋げ!」
九郎の叫びに応じて攻めを続ける『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)と『期待の新人』线(p3p011013)。
『お友達』の襲撃と线の砲撃によろめく所へ、『魔女の騎士』散々・未散(p3p008200)と『懐中時計は動き出す』ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)が剣と杖を突きこんだ。破壊が浸透し、クリスタラードが一歩下がる。
更に『鬼斬り快女』不動 狂歌(p3p008820)の斬馬刀・砕門がぶつけられた。
『物語領の兄慕う少女』コメート・エアツェールング(p3p010936)と『物語領の猫好き青年』メテオール・エアツェールング(p3p010934)が全く同時に攻撃をたたき込み、更に『物語領の愛らしい子猫』ミニマール・エアツェールング(p3p010937)の魔術が直撃。そう、直撃だ。ここまで積み重ねた攻撃がクリスタラードに決定的な隙を作ったのである。
だがクリスタラードとて天帝種。やられ続けるようなタマではない。
一歩退いた足で踏ん張って、その拳を振り抜いた。
拳の衝撃は空間その者を撃ち抜き、破壊し、眼前の全員を吹き飛ばす。
いや、吹き飛ばしたのは彼らではない。
「インテリジェンスに守るである!」
「そう、誰一人欠けること無くです!」
入れ替わるように突進をしかけた『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)と『希望の星』黒野 鶫(p3p008734)。そして腕にまたしても掴みかかった『山吹の孫娘』ンクルス・クー(p3p007660)だ。
彼女たちは纏めて吹き飛ばされるも、『ドラネコ保護委員会』風花 雪莉(p3p010449)と『ヒーラー見習い』レナート=アーテリス(p3p010281)、更に『聖なるかな?』アザー・T・S・ドリフト(p3p008499)の治癒魔法がかかり一撃死を免れる。
そうでもしなければ死にかねないだけの攻撃だったのだ。
「っしゃー、リベンジ!」
「『か弱さ』が足りませんね!」
攻撃には隙ができる。背後に回り込んでいた『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)と『真打』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)がクロスする斬撃を放ち、『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)と『竜眼潰し』橋場・ステラ(p3p008617)の打撃と砲撃が側面から浴びせられる。
抵抗しようと翳した腕を『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)がガシリと掴み、『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)の手刀が腕に叩きつけられた。
それだけではない。『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)の魔剣、『雨宿りのこげねこメイド』クーア・M・サキュバス(p3p003529)の爪、『グリーンスライムサキュバス』ライム マスカット(p3p005059)の溶解液が集中して腕に叩き込まれ、その腕が肘から切断される。
「ぐ、ううお……!」
たまらず数歩後退するクリスタラード。
だが、クリスタラードの腕は後退するその数秒でみるみる再生し、元の屈強な腕へと戻っている。
『空気読め太郎』タツミ・ロック・ストレージ(p3p007185)が次の攻撃に備えてガードを固める。
「チッ、再生力が高すぎるな」
「けどそれを上回って攻撃し続ければ……!」
『この手を貴女に』タイム(p3p007854)は虹色に光る石を握りしめ、叫んだ。
総攻撃のチャンスだと。
クリスタラードが地面をだんと踏みつけることで大地が次々に隆起し仲間たちを吹き飛ばしていく。
『おしゃべりしよう』彷徨 みける(p3p010041)はタツミやタイムが仲間を守るのを横目に、ダメージをうけそうな位置にいた仲間を纏めて突き飛ばす。
同じく仲間を庇って踏みとどまった『新たな可能性』レイテ・コロン(p3p011010)は、残る仲間に攻撃のチャンスを託した。
「頼む、一発かましてやれ!」
「トーゼン」
『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)は構えていた重火器をぶっ放し、『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)は鎖を巻いた腕で殴りつける。
「それにしても硬いわねぇ」
「攻撃もヤバすぎやろ。何発も耐えてられへんで」
『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は鋭く槍のように尖らせた白き閃光を放ち、『放逐されし頭首候補』火野・彩陽(p3p010663)が矢を連射で放つ。
『欠け竜』スースァ(p3p010535)の剣が、『aerial dragon』藤宮 美空(p3p010401)の剣が、別々の方向から交差するように叩きつけられ、『豪放磊落』呂・子墨(p3p010436)の繰り出す拳がクリスタラードの胸に直撃した。それだけではない。『切り裂きジル』ジルベール(p3p010473)の零距離からの魔力砲撃が胸に直撃。
今度こそはさがらずに踏みとどまったクリスタラードだが、その表情に余裕の色はもうない。
その間に『持ち帰る狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)は負傷し戦闘不能となった仲間を担いで脱出。『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)がそれを守ろうと盾を構え飛び出す。
クリスタラードは『破ッ』と吠えると赤き閃光を迸らせた。眼前の風景をまるごとなぎ払うかのような砲撃を、回転斬りでもするように全方位に放つ。
それを防いだのはフラーゴラ、だけではない。
『想光を紡ぐ』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)と『いのちをだいじに』観月 四音(p3p008415)による治癒魔法。そしてオデットを守るべく庇った『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)。
そうして負傷を免れた『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)はプリズムの光を収束させる。
「もう一息!」
「倒さなくったっていいのさ」
「ここから追い出しちまえば俺たちの勝ち!」
『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)のビームリボルバー全弾打ちと『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)のナイフがオデットのプリズムビームに重なり撃ち込まれる。
「体勢を立て直させるな!」
「力を束ねるのです!」
「おい『姉ちゃん』! ちょっと頼むわ!」
自己を強化した『流浪鬼』桐生 雄(p3p010750)の斬撃にあわせ、光の剣を繰り出す『アーマデルを右に』冬越 弾正(p3p007105)と蛇腹剣を放つ『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)。
そして青く輝く剣による必殺技を繰り出す『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)。
彼らの斬撃がクリスタラードの硬い表皮をついに破り、血を出させる。
「血、だと? この俺様が――」
「そうだ、血が流れるなら、竜とて死ぬ」
『竜の頬を殴った女』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)が禁術をまたも発動。
「雨垂れ石を穿つ、っスね」
「追い詰めますわ!」
「哀れだな、その姿は」
放たれるその瞬間に『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)は鋼の腕で殴りつける。
更に『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)のナイフが、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)のメイスが、『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)の雷撃キックが次々に叩き込まれ息をつく暇を与えない。
「どんどん行くよ!」
「でも死にそうにないわねまだ」
「いいのです。与えさえすれば」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)の聖剣が光と共に撃ち込まれ、『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)の拳と『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)の槍がそれぞれの方向から叩き込まれる。
「そう、与えさえすれば!」
更に『破竜一番槍』観音打 至東(p3p008495)の刀が『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)の相克斧が、『導きの双閃』ルーキス・ファウン(p3p008870)の刀が次々と。
最後にドンと撃ち込まれたのは、『老兵の咆哮』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)の拳と『星灯る水面へ』トスト・クェント(p3p009132)の腕だった。
サンショウオ術と腕の大砲が全く同時に撃ち込まれ、クリスタラードはついに、吹き飛ばされ岩壁に背をぶつけたのだった。
「「そう、与えればいい。死の恐怖を」」
「――!」
ねばつく殺気。したたるような憎悪。絶対者として君臨し続け、浴びることなど決して無かった、死の恐怖。
クリスタラードは。
「あ、あ、あああ――うああああああああああああああああああ!!!!」
叫び、巨大な竜の姿をとって地面を殴りつけた。
その衝撃で空へと飛び上がり、逃げ去っていく。
それを追いかける――ことはしない。そんな余裕は、まるでない。
味方は負傷者だらけで、空を飛べる者だって限られている。
そんな中で、千尋が振り返る。
「バシっちゃん!」
「大丈夫。無事だ」
それを見ていたのはレイチェルたちだった。
ぐったりとしてはいるが、息はある。治療すればすぐに元気になるだろうと。
「もう、こんなことをくり返してはいけません」
誰かが言った。全員がそう思った。
「追いかけようぜ」
誰かが言った。全員がそう考えた。
「クリスタラードを、倒す」
誰かが。いや、全員が言ったのかもしれない。総意は今、動き出す。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
バシリウスやその家族を救出し、クリスタラードを巣から撤退させました。
死の恐怖を感じたクリスタラードは、この先どう動くのでしょうか。
敗北を知らなかったはずの竜は、屈辱を喰らい何を得るか。
GMコメント
●同時参加につきまして
決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(通常全体とは同時参加出来ます)
どちらか一つの参加となりますのでご注意下さい。
●シチュエーション
クリスタラードの巣へと突入し、クリスタラードをこの場所から撤退させます。
・成功条件:クリスタラードの撤退
・オプションA:バシリウスが捕らわれたクリスタルの破壊
・オプションB:バシリウスのパパとママの捕らわれたクリスタルの破壊
・オプションC:その他のクリスタルの破壊
●クリスタラードとクリスタル
六竜がひとり『霊喰晶竜』クリスタラードは、己の作り出したクリスタルに生命体を呑み込ませ、その生命力を喰らうことで力を強化させています。
これらは正しくはドラゴンクリスタルと発音表記しますが、以下同様のものは圧迫防止のため漢字で略して表記します。
水晶体には全て『収奪効果』があり、場に生きている限りクリスタラードや周囲の水晶体へと特殊な効果を及ぼします。
水晶体はある程度独自に動き、光の弾を放つなどの簡単かつ低度の攻撃手段を持ちます。
かなり高いFXAが予想されています。
また、クリスタルの内部は時間と共にエネルギーが吸い上げられるため放置する時間が長いほど内部の生存率が下がります。
対応するクリスタルとその強化効果は以下の通りです。
・赤水晶
収奪効果:クリスタラードと他水晶体のHPを+10000する。この効果はブレイクできず、自身は含まれない。
・青水晶(バシリウスが捕らわれた水晶体)
収奪効果:クリスタラードと他水晶体のAPを+5000する。この効果はブレイクできず、自身は含まれない。
・黄水晶
収奪効果:クリスタラードと他水晶体の攻撃全てに【雷陣】【崩落】【呪縛】を付与する。この効果はブレイクでき、自身も含まれる。
・緑水晶
収奪効果:クリスタラードと他水晶体の全てに【BS無効】を付与する。この効果はブレイクでき、自身も含まれる。
・紫水晶(バシリウスのパパとママが捕らわれた水晶体)
収奪効果:1ターンに1度、1つの対象に『EXF+100』の付与を与える。この効果はブレイクでき、自身も対象にできる。
・白水晶
収奪効果:クリスタラードだけに【物無】効果を付与する。この効果はブレイクできない。
・黒水晶
収奪効果:クリスタラードだけに【神無】効果を付与する。この効果はブレイクできない。
・【不殺】攻撃によるトドメについて
普通は水晶体のHPは判別できないものとします。
よって、高威力スキルを連発しトドメだけを不殺攻撃にすることは通常できません。
例えばEXF判定によってミリ残りした対象に不殺攻撃をするといった、明らかに分かりやすい場合は可能とします。
方法やその共有については相談して決めて下さい。が、方法論でプレイングを圧迫することはそれだけリスクを伴いますので、効率化や簡略化、ないしはそもそもプレイングの圧迫を必要としないスペックの用意が要るでしょう。
・水晶体内部に捕らわれた人間について
水晶体の内部にバシリウスたちが捕らわれています。
『収奪効果』は彼らの生命力を奪うことで発動しており、かなり早期に救出しなくては彼らは死亡するでしょう。
また、内部の人間が死亡した場合収奪効果は消失します。
●クリスタラードの戦闘力
多彩な追加効果を持っているクリスタラードですが、その本体が最も強力かつ危険です。
主に物理的な牙や爪による攻撃、シンプルなブレスによる砲撃を行い、そのシンプルさと比例するかのようにダメージは甚大かつ多段、広範囲なものになっています。
相当数のディフェンダーを用意しなければならないでしょう。また、優れたディフェンダーですらも相当数が戦闘不能になるだけの危険な敵です。
●その他
・プルネイラ、アダマス、呉覇たちはアルティマ集落群に応援を要請しに行っているため戦闘には不在です。
もしこの作戦が成功すれば、かけつけたアルティマ集落群の混成部隊と共に戦うことができるでしょう。
・バシリウスらクリスタルに捕らわれた者たちは衰弱しているため、救出した後は戦場の端で休ませる必要があるでしょう
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
■■■グループタグ■■■
一緒に行動するPCがひとりでもいる場合はプレイング冒頭行に【コンビ名】といったようにグループタグをつけて共有してください。
大きなグループの中で更に小グループを作りたい時は【チーム名】【コンビ名】といった具合に二つタグを作って並べて記載ください。
行動指針(序盤)
序盤の行動指針をおおまかに指定します
【1】クリスタラードの抑え
クリスタラードを抑えておき、仲間がクリスタルの破壊ができるようサポートします。
意図的にスルーされれば作戦が瓦解するので、一定以上のダメージを与えて脅威としたり、数人がかりでブロックしたりと色々な工夫が必要になるでしょう。
【2】クリスタルの破壊
クリスタルの破壊を行い、クリスタラードの能力を弱体化させます。
どこまでのクリスタルを破壊するか(逆にクリスタルを残すかどうか)は作戦によります。
戦闘スタイル
戦闘作戦上のおおまかな役割を決定します
【1】アタッカー
率先して攻撃スキルをどかどかと撃ち込みます。
威力型やBS型など形は様々ですが、あなたは頼れるチームのアタッカーとなるでしょう。
相手にバフをかけたりするのもこのアタッカーに含まれます。
【2】ディフェンダー
優れた防御ステータスを用いて敵の攻撃を引き受けます。かばったり引きつけたりは場合によりますが、あなたがいることで仲間のダメージ量は大きく減ることでしょう。
味方や自分を治癒することで戦線を支える役目もここに含まれます。
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