PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<大願成就>飲めや歌えや

完了

参加者 : 46 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 海洋大号令──それは海洋国の悲願を達成すべき大事業であり、同時に幾度も叶えられなかったもの”だった”。
 だった、とされるのは皆が知る通り。絶望の青はイレギュラーズと海洋国、そして鉄帝国の力もあってようやく踏破されたのだ。
 悲願の達成。念願の踏破。これは首都の民だけでなく、海洋全域が喜びに沸いた。

「祭りだ!」
「酒の準備を!」
「つまみの用意はできてるかい!?」
 待っていた者たちは帰ってくる者たちを迎えるべく、そして慰労も込めて準備を。

「やっと嫁さんの顔が見れるんだ」
「お、ノロケかぁ~?」
「言ってやるなよ、あんただってガキに会えるんだろ」
「へへ、まあな!」
 帰ってくる者は待ってくれていた者との再会を待ち焦がれ──時には船に積んであった酒を既に持ち出し、宴を開いて。


 けれど、皆知っている。感じている。その目で見ている。
 仲間の命がまるで紙のように儚かった様を。
 知人の命が蝋燭を吹き消すように、いとも簡単に消えた様を。
 船が丸ごと、天災とも呼べるような雷に打たれて沈んだ様を。

 勝利と喜ぶには戦没者が多すぎた。被害はあまりにも大きすぎた。
 それでも──彼らは前へ進むため、そして勇者たちの鎮魂のため。勝利に沸き立ち、騒ぎ、歓喜するのだ。



 海洋王国首都、リッツパーク。その一角にある大きな居酒屋は、その日たいそう賑やかだった。
 他でもない海洋貴族にして大商人、ポンポコ・リンが終日貸切と大金を出したのである。これぞ金持ちの為せる業。そしてパトロンとしても、絶望の青を踏破せんと船を出した者たちの慰労は義務と言うべきものだろう。
 同時に多少ながら此度の報酬も全員へ出すというものだから、居酒屋には人が詰めかけていた。テーブル席のある1階のみならずテラス席のある2階。果てには収まりきらなくてそとへ簡易テーブルを出している。従業員も大忙しだが特別手当が出ると聞いてか普段より人員は揃っているらしい。
 イレギュラーズもまた、ポンポコから直接の招待状を受けてここへ馳せ参じている。居酒屋の熱気は凄まじいもので、一足先に夏でも来てしまったかのようだ。
「皆様、ご無沙汰しています」
 立ち上がって近づこうとする【ク・リトル・リトルマーメイド】アリア。それを見たイレギュラーズの数人が思わず押しとどめる。
 水中では頼もしい友軍だった彼女だが、陸での姿は一気に印象を変える。彼女が1歩踏み出そうものならこけるだろう。そこから、これだけの大所帯で何が起こるか──とにかく惨事であることは間違いない。互いに楽しく安全であるためにも、彼女には座っていてもらうかエスコートしてくれる存在が必要だ。
 またあとでね、とアリアに声をかければすぐさま別所から声がかかる。
「イレギュラーズじゃねえか! こっちにどうだ?」
「おいおい抜け駆けすんなよ、俺たちだって一緒に飲みたいに決まってんだろ」
 わいわいと騒ぐのは絶望の青踏破へ尽力した海賊たちと海洋軍兵たち。乾杯の音頭はまだだったが、彼らは既に酒が入っているらしい。赤い顔をして睨む2人をはいはいと諫める周囲はどこか手馴れている。
「大抵こんなもんさ」
 ぽかんとしたイレギュラーズへそう声をかけたのは『レッド・メーカー』アルビダ・アヴァンティ。軽い喧嘩なら日常茶飯事、従業員どころか客でさえ慣れたものらしい。
 彼女とその部下たちもまた大きなジョッキを手にしており、既に1杯2杯どころでないことはテーブルを見れば明らかだ。最も──アルビダはけろりとした顔で、まるでジュースのように飲んでいるが。
 その隣テーブルで酒を飲むゼニガタ・D・デルモンテは周りが距離を取るくらい重苦しい雰囲気を醸し出していた。部下が酒とつまみを彼のために注文するも、ゼニガタは酒しか口にしない。
「ワモン……」
 厳格な見た目を持ち、古強者の風格を漂わせる彼は同じくらいに子煩悩の気が強かった。息子が家出したショックもまだ抜けていないというのに、此度の大号令ではイレギュラーズとして大活躍したらしい。ああ、そうして父の手を離れてしまうのか息子よ。
「ゼニガタのとっつぁん……」
「お前たちにそう呼ばれる筋合いはないっ!」
「す、すみませんっ!」
 思わず口走った部下に雷が落ちる。子どものことになるとどうしようもない軍人を横目で見たアルビダは、やれやれと言わんばかりに肩を竦めた。そして視線をイレギュラーズへと戻す。
「ま、アンタらも飲みな。あの狸爺に今夜は全部ツケていいってさ」
 アルビダが視線で指し示したのは居酒屋の簡易ステージ。人が集まってきた頃合いになると、狸爺ことポンポコ・リンがそこへ上がる。既に騒いでいた面々も静かと言うほどではないが声のトーンを落とし、話の傍ら大商人の言葉を聞いていた。
「海洋王国にとってこれ以上ない吉事。金は惜しみませんぞ。ワシも胃痛の種が1つ──」

 ズガガガガキュルルルルゴオオオオ……

 うっと腹を押さえるポンポコ。形容しがたい音はそこからだったらしい。ちなみに今日はどうしましたか。
「ま、孫にまた嫌われた……」
 ポンポコが涙ぐみながら常用している薬を取り出す。すぐさま御付きが水を差し出し、ポンポコは薬を嚥下した。いつになっても悩みが尽きぬ男であるが、詳細を聞くと音が酷くなりそうだからやめてあげよう。
 とんでもない音が収まると、ふぅと息をついたポンポコが酒場にいる面々を見渡す。怪我を負った者の中には五体満足でない者もいる。命があって良かったのか否か──などと考える場ではない。
 海洋は進まなくてはならない。そこにあるべきは涙ではなく笑顔。シケた面を見せていたら、英霊となった者たちがいつまで経っても安心して眠れなくなってしまう。それどころか、夢に出てきて一喝するかもしれない。
 ポンポコがそう告げれば、ジョッキを持った者たちが呵々と笑う。そんなことにはさせないさ、と。
(このような者たちが集う王国であれば、これからも安泰ですな)
 ポンポコの脳裏にふと浮かんだのは、イレギュラーズになるまで援助をしていた蛸髭の姿。彼は人類の敵である魔種に反転したものの、最期は絶望の青踏破のため尽力したと聞いている。
 いや、実際は踏破のためと言うより仲間のためだったのかもしれないが──その功労はねぎらって然るべきだ。
 ポンポコがジョッキを手にしたことで居酒屋は束の間静かになり、誰しもが同じようにジョッキを持つ。
 絶望の青踏破に尽力した海洋国民、奇跡を起こしたイレギュラーズ、そして今ばかりは共闘した鉄帝国民にも──。

「──乾杯!!」

GMコメント

●パートA:飲む【飲】
 おいしい! めっちゃおいしい!! を主観に置くパートです。
 より詳細に言うと、飲み比べとか食べ比べとか、純粋に飲食楽しみたい人向けです。

●パートB:話す【話】
 こうだったね、ああだったね、と独白したり会話したりするパートです。
 こちらでは会話以外の描写が薄くなりがちです。
 聞き手に回るよ! という方も勿論歓迎いたします。

●パートC:踊れや歌え【演】
 簡易ステージやどこかの一角を使い、踊ったり演奏したり歌ったりすることができます。
 楽器持ち込みOK、音楽は流すこともできます。上記に関わらずパフォーマンスに関わる事でしたらこのパートとなります。

●居酒屋『ブラオ・ジィルバー』
 首都リッツパークにある大きい居酒屋です。お手頃価格で美味しいと評判です。
 店内は広く、1階にはカウンター席とテーブル席が用意されています。2Fは完全テラス席。今回は席が足りないので外にも簡易テーブルとイスを展開して営業しています。
 飲食物は大抵のものが揃っています。ノンアルコールドリンク、ソフトドリンクも充実しています。
 本来であれば未成年者はNGですが、イレギュラーズは特別枠でOkです。

●プレイングの書き方
 1行目:行き先タグ
 2行目:自作タグ、及び同行者(フルネーム、ID在るとなお良し)
 3行目:本文

 上記書き方を守って下さい。逸脱した場合は迷子になる可能性があります。
 また、自身と同行者で2人の場合はタグではなくフルネームをお願いします。他にもいるのか否か判断がつけにくいです。

例:
【飲】
ユリーカ・ユリカ(p3n000003)
あ、ユリーカちょっと海洋まで付き合ってよ。1人で行くの気まずいし。
ノンアル隅っこで飲んでるだけでいいからさ。ね?

●NPC
・ポンポコ・リン
 オクト・クラケーン(p3p000658)さんの関係者。商人上がりの海洋貴族。絶望の青へ挑む海洋航行の出資者──パトロン、スポンサーといった立ち位置です。
 今回は居酒屋を終日貸し切りにした張本人でもあります。太っ腹。

・【ク・リトル・リトルマーメイド】アリア
 炎堂 焔 (p3p004727)さんの関係者。お友達です。
 海底遺跡を守る部族の娘であり、水中では頼もしい戦力でした。しかし人間姿ではうっかりドジっ子です。
 ノンアルを飲んで雰囲気を楽しんでいます。女の子が酔うと危ないからね。

・ゼニガタ・D・デルモンテ
 ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)さんの関係者。お父さん。
 海洋軍人であり、味方になればとても頼もしい存在。しかしとても子煩悩でワモンさんとの喧嘩と家出ショックに、此度の活躍が加わって非常に複雑な心地です。流石だ息子よ、父は誇らしい。しかしそうして離れてしまうのか……。
 めちゃくちゃ飲んでます。イカのつまみは絶対食べません。絶対だからな。

・『レッド・メーカー』アルビダ・アヴァンティ
 竜胆・シオン(p3p000103)さんの関係者です。
 女性のみで構成されたレッド・ディアナ海賊団の女船長。私掠許可を拝領しており、今回の大号令にも参加していました。酒豪です。
 部下と楽しく飲んでいます。

 その他、ざんげ以外のステータスシート在りNPCは登場する可能性があります。

●ご挨拶
 お疲れさまでした! 愁です。
 明るく楽しくいきましょう。じめじめ暗くなっていると怒られてしまうかもしれませんから!
 余談ですが私の好きなつまみはエイヒレと鳥皮ポン酢です。食べたくなってきた。
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • <大願成就>飲めや歌えや完了
  • GM名
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2020年07月05日 22時05分
  • 参加人数46/∞人
  • 相談8日
  • 参加費50RC

参加者 : 46 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(46人)

カルネ(p3n000010)
リリファ・ローレンツ(p3n000042)
永遠の0・ナイチチンゲール
リーヌシュカ(p3n000124)
セイバーマギエル
バルバロッサ(p3n000137)
赤髭王
アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
生方・創(p3p000068)
黒狐はただ住まう
エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
鳶島 津々流(p3p000141)
四季の奏者
ヴェッラ・シルネスタ・ルネライト(p3p000171)
狐目のお姉さん
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
優響の音色
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
ラズワルド(p3p000622)
流転の綿雲
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者
リトル・リリー(p3p000955)
自在の名手
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
タルト・ティラミー(p3p002298)
あま~いおもてなし
蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
青と翠の謡い手
閠(p3p006838)
真白き咎鴉
彼岸会 無量(p3p007169)
帰心人心
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
わもきち
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
竜撃
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)
Immortalizer
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い
日輪 寿(p3p007633)
日向の巫女
Meer=See=Februar(p3p007819)
おはようの祝福
リサ・ディーラング(p3p008016)
スチームメカニック
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)
異世界転移魔王
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
特異運命座標
雨紅(p3p008287)
刑天(シンティエン)
マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)
泥人形

リプレイ

●そこは灯台のように
閠の足はふらり、と居酒屋へ向かっていた。何かを話したいというよりは、誰かの話を聞きたくて。
 自分の言葉にならない思いも、同じような気持ちの者やもっと辛い者の話を聞けばどうにかなるのかもしれない。話すことが得意でなくても、この気持ちを知るためにはきっと必要な事なのだ。
(ボクにはいったい何ができたのでしょう)
 もっと上手くやれたかも。助けられたかも。間に合わなかった者は多くいたのに。
 思い返しながら閠が踏み入ったそこは、鬱々としたものなど感じさせないほどに陽気な雰囲気で満たされていた。
「お~我らローレット~混沌に輝く閃光の輝きよ~」
 マッダラーはこの戦いに挑んだ英雄を、輝き続けた者たちを、乗り越えた者たちを謳う。散って逝った者たちの輝きを思い出させんと、叙事詩へ仕立て上げ、ステージの脇で歌う。
 混沌での退屈する事ない数々の物語、そのひとつ。きっと大きく語り継がれる物語のひとつとなろう。
 そのステージの上では雨紅が武舞を魅せる。皆が笑顔で居続けるために。そして、自身の気持ちを整理するためにも。
(あんなにも大きく、恐ろしいものを経てなお……)
 この場は笑顔に包まれている。それが雨紅にとっては驚くことであった。同時に思う。
 この笑顔を奪う側にはなりたくない。笑顔にする側でいたい、と。
 その理由は──踊っていたら、分かるだろうか?
「俺達が呑んで騒がねえと、海の底までは聞こえねえぞ!」
 うおおおおお!!
 バルバロッサの言葉に周囲のテーブルから殊更大きな声と、掲げられたジョッキが伸びる。バルバロッサはイレギュラーズたちにも視線を向けると笑みを浮かべた。
「今夜は俺からも奢るぜ。ぱーっと呑め!」
「ならお言葉に甘えて……オールナイトで飲み続けるわよ!」
 どん、と用意された稲荷酒造・桃源郷。後半お目見えの予定だったが、既に出来上がっている者も多い。ここで出さずしていつ出すと言うのか!
 ──尚、イナリ本人はノンアルである。外見上は未成年なのだから、ここはらしくしておいた方が良いだろう。
「お、貰おうか」
 早速と桃源郷に手を出したのはエイヴァン。飲んでるか? と視線を向けたのはうら若き乙女、リリファである。
「もちろんです! あ、それいただきまーす!」
 バルバロッサに前にあった肉をひょいぱくり。仕方ない、飲み会とは無礼講なのだ。実質、エイヴァンの部下たちもこの場に混ざっている。
「もう飲めるんだったか?」
「こう見えても20歳です任せてください! 甘口が良いです!」
 リリファの一部がまだ未成年だと主張しているが、本人の言葉を尊重しておこうか。ね。
「僕は香りが良くて強いやつがいいなぁ」
 ラズワルドはそれおいしそう、とルーチェの持っていたワインを示す。目を瞬かせた彼女は仕方あるまいというようにもったいぶりながらも瓶をラズワルドのグラスへ傾けた。
(だいぶはしゃいでいるようだな)
 店内の──いや、今宵は店外も、か──バカ騒ぎを横目にワインを傾けていたルーチェはその唇に弧を浮かべる。
 この騒ぎも仕方ない。あの冠位魔種アルバニアが現れ、リヴァイアサンも出現し、それを封印して大願を果たしたのだから。
「飯! ガッツリいくっす!」
 テーブル席を埋めては次々空にして注文をするリサは、男顔負けのブラックホールである。その体の何処に入っていくのか。
「私、バリスタガンガンやり通して腹減りすぎてるっす! ヤバイっす!」
「僕もがんばった! ごほーびちょうらい~!」
「前線に赴いてない私がいますよ! 目出たいんだからいいんです!」
 ひたすらご飯を食べるリサに、ふわっふわのラズワルド。鮮魚をつまみにするリリファもその限界はもはや近い。
 そんな姿を横目に、エイヴァンはワモンたちの姿を見つけた。おちょくるには大変良い──わかりやすい者である。
 エイヴァンが向かったその先ではワモンとその父たるゼニガタ、そしてフランがお喋りしていた。
「とーちゃん! イカがきれてるじゃねーか、もってきたぜー!」
 そう明るく告げるワモンはフランの腕に抱えられている。どうぞとイカの皿を差し出したフランはゼニガタの驚愕の眼差しに目を瞬かせた。
 以前の依頼で面識はあるため、初対面ではないはずなのだが。何へそんなに驚いているのだろう。
「息子よ……彼女か?」
「へ?」
「ん?」
 ゼニガタの言葉に目を瞬かせる2人。揃って友人であると否定し、彼を安堵させるも束の間。
「あっでも添い寝はするねー」
「だな!」
「添い寝だと……!?」
 再び彼の心を荒らしていくワモンとフラン。ワナワナとしながら呟かれた『いかがわしい』の言葉を曲解して──。
「イカ?」
「わしのいか!」
 ゼニガタはやはりイカが食べたかったのだと納得する。否定する間もなくゼニガタの口にはイカが突っ込まれた。
「フラーン、オイラにもくれー!」
「はーい! ほらほら、おいしいイカだよー!」
 フランはワモンの口にももしゃり。幸せそうな顔をしてワモンはイカをもしゃもしゃしていく。フランは両手に花、ではなくてアザラシ状態。ぱっと見飼育員のようであった。
 賑やかな傍ら、シキに会ったリアは極限まで顔を近づけられ目を剥く。
 待って、私には心に決めた人が──!
「うん、ほんとに治ったみたいだねぇ」
「……って、あぁ……廃滅病」
 からりと笑うシキに脱力するリア。少年も頑張っていたしね? と言えばリアは申し訳なさそうにして。
「別に、リアが申し訳なく思う事じゃないでしょ。まぁ飲みなよ」
 そう告げる彼女の音色は怒っているわけではないけれど、どんな想いなのか聞こえない。リアはひとつ目を瞬かせながらもドリンクを注文した。
「たいしたことじゃないんだけどね──私、強くなるから」
 シキの口から告げられたのは決意。知人に、友人に何があっても揺らがないためのそれ。
「……そっか。
 ねぇシキ、それならあたしは貴女に誓うわ」
 神ではなく、貴女に。前で全てを切り裂く貴女を後方で支えることを。地獄に落ちようとしたら、一緒に行って担いで這い上がることを。
「だって……大切な友人、だもの」
「……ふふ。うん、私の初めての友達。これからもよろしくね」
 チン、とグラスの合わせる音が響いた。
「結構騒がしいが、大丈夫だったか?」
「偶にはええよ」
 フレイの問いに紫月はからりと笑い、グラスに次がれる赤ワインに目を細める。甘いも渋いも好きだが、炭酸はほんの少しばかり苦手。そんな好みをあらかじめ聞いてくれたフレイに感謝しつつ、グラスを小さく揺らす。
 どんな酒も酔うというほど酔うことはないけれど、やはり炭酸のない赤ワインが美味しいと思う。その他にはあっただろうか?
 少し考えた紫月はああ、と声を出して。
「そういえば、境界で飲んだ妖精酒も美味しかったねぇ」
「妖精酒か」
 境界といえば果ての迷宮に位置する異空間、そこにある本から向かえる異世界である。
 持ってこれないものだから、もしまた行けることがあれば2人で楽しむのも手だろう。
 フレイはウィスキーを注文し、手にグラスを持つ。視線は彼女と交錯させて。
「とりあえずは乾杯でもしようか」
「せやねぇ」
 まずは乾杯から。2人はグラスを軽く合わせた。
「アリアちゃん! あそこ空いたよ!」
「ええ……ではなくて。まさか、」
 グラスを手に持っていたアリアは焔をちらりと見る。先ほど乾杯したグラスをテーブルへ置いた焔は、にっこりと笑って。
「ボク、久しぶりにアリアちゃんのお歌聞きたいな!」
 だって素敵な歌声なんだもの、絶対みんな喜んでくれるはず!
 大勢の前でと恥ずかしがるアリアを説き伏せ、立ち上がった焔。その腕がひょいとアリアを持ち上げる。
「それじゃあいくよ! 一緒に歌おう!」
 アリアに教えてもらった海洋の歌を、2人で。


●ハッピーエンドの先へ
 さて、この居酒屋には2階テラス席にも簡易ステージが用意されている。ここにはMeerがとん、と立った。
(これは悲しいバッドエンドじゃない。悲しみの先にある『ハッピーエンド』)
 戦いでは傷を癒すことしかできなかった。その時は体の傷だったけれど──この場では心の傷を治してみせよう。
 だって、誰もが海上で格好良く戦って、今この時を願っていた。今を、明日を、未来を──前を見ずしてなんとする!

「さあ、謳おう!」

 歌と、そして良い匂いに。アルペストゥスはばさりと翼をはためかせてテラス席へ舞い降りる。いい匂い。それに混じって知っている匂い。
「……グ!」
「あ、アル! よかったら一緒に色々食べる?」
 久しぶりに会ったリリーは片目の色が変わっていたけれど、言葉も何だかほんのちょっと違う気がするけれど、それでもリリーだった。
 これとこれと、と即座に注文する小さな彼女の高さに顔を下ろし、グルルルと喉を鳴らす。いい匂いが近くに来た。知ってる匂いも一緒に。
「はい、あーんしてー♪」
「ガ!」
 ぱかりと開けられる口。リリーは怯えることもなく口の中まで肉を運んでいく。食べる側も、与える側も、信頼と安心感があるからこそのやり取りだ。
「……クルルルッ」
 アルペストゥスの瞳が細められ、その鼻先が近くの皿をくいくいとリリーへ押す。
 食べて食べて。君向きの大きさだから。
 食べた時の表情は──きっと、一緒。
「2人の長い航海と旅路の終わり、そして新しい冒険の始まりに!」

「「かんぱーい!!」」

 勢いよく合わせられるジョッキ。そして消えていく酒。泡でヒゲを作ったイーリンとウィズィはにししと笑いあう。
 その目の前に置かれた分厚いステーキを分けたイーリンはそのままばくり!
「いや何ちゅう顔してんだ!」
 爆笑しながらもウィズィはサラダを取り分ける。皿へ移ってくる野菜にイーリンが顔を顰めたが気にしない。必要な栄養分だもの。
「ん……ふう。いやぁほんと、ドレイクに捕まった時は貴方が私以上に冷静でびっくりしたわよ」
「あー……うん」
 ウィズィは苦笑い。だって愛する人を守るためだったから。その視線は傍らに置かれた帽子へ向けられ、その表情は僅かばかり曇った。
「ねぇウィズィ。本当なら、あの連中とも一緒に肩を組んで、飲んでも良かったと思わない?」
 酒に酔ったらしい、ふにゃりとした笑みに目を瞬かせるウィズィ。ほんの少し潤んだ視界で、それでも笑ってみせて。
 冒険って素敵でしょ、という彼女の言葉にこう返すのだ。
「本当。冒険って、素敵な出会いに満ち溢れてる」
 海の向こうにいる彼らにも見えるように、2人はジョッキを掲げた。
 お疲れ様と、ありがとう。告げ合ったポテトと蜻蛉はふっと笑みを浮かべた。
 大切な人が、自身が廃滅病に煩わされない日常。自分たちの力でつかみ取った者であると同時に、1人ではつかめなかった日常だ。
「今回は蜻蛉が戦場へ出ると聞いて驚いたけれど……大切な人の危機に黙って待っているなんてできないよな」
 私もそうだから、とポテトは手を伸ばす。頭に置かれた優しい手に、束の間蜻蛉は固まった。
「……おおきに。ポテちゃんがおってくれたおかげよ」
「勇気を出したのは蜻蛉だ」
 誇って良いのだとポテトは言う。その明るくて包み込むような言葉の優しさは、蜻蛉の弱い部分も受け止めてくれるもの。そう、知っている。
 これからも何か起こるかもしれない。いいや、起こるだろう。けれど海洋の海はきっと暫く平穏だ。
 だから今日は、語りつくせないくらいに語り合おう。
 テラス席の隅では篠笛の音が響く。宴に響く鎮魂歌は、無量から英雄たちへ贈る音楽だ。
(海に生きた者たちならば、こちらの方が宜しゅう御座いましょう)
 安らかに、迷わずに彼岸へ向かってほしい。そして過去の大号令に散った者たちへ、此度の悲願達成を笑って告げて欲しい。
 自分たちが道を繋いだのだと、胸を張って言えるように──導く音楽は静かにゆったりと響いていた。
「っというわけで──みんなお疲れ様よ☆ミ」
 タルトが妖精サイズのコップを掲げる。そして中身を一気飲みして「はぁぁぁ」と思いっきり息を吐いた。
 疲れた。疲れたのだ。か弱い妖精は戦場へ乗り込むようなタフさを兼ね備えていないのである。
「無事……というわけでもないが」
「しかし、誰も命に別状はない。わらわは皆が変わりない事を確認できただけでも重畳じゃの」
「息のつきどころが分からないくらいの連戦だったね」
 リュグナーにヴェッラ、津々流から口口に言葉が出て、この場の誰もが欠けなかったことを安堵する。
「タルト、お前さんの望み通り過ごしていても良かったんだぞ?」
「なぁに言ってんのよ。知り合いが困ってるのに」
 そんな薄情なマネしないわ、と頬を膨らませるタルト。自分だって悩み事を解決できたし、かくいう相手だって悩みの種をなんとかできたのだ。
 そんな彼女にそれは悪かった、と瞳を眇めてみせた縁は酒を呷る。喉を焼くような熱さも今は心地よい。
「それにしても、海に生きる人は大変だなって……改めて思ったや」
 陸で生きて来たから、と津々流は苦笑いする。その手には穀物からできた酒があって、彼の頬もほんのり赤い。
 船で未踏の地を目指す事。橋頭保を作った事。どれも大変で、けれど不謹慎ながら楽しくて。今度は穏やかな海へ遊びに行けたらと思う。
「皆、お酒ばかりじゃなくてお菓子も食べるのよ☆ミ」
 何処からともなく菓子をポンポン出していくタルト。その1つを有難くも頂戴しながら、リュグナーは縁へ視線を向けた。
「貴様、口が休んでいるようだが?」
「まだまだ体力が戻ってねぇモンで……ってのは、まぁ半分冗談だが」
 喉の奥で笑う縁。彼の体は元来丈夫だ。けれど今日ばかりは聞き役に回りたい、なんて。
 だって、もう生きることを諦めなくて良いのだから。
「危険な戦場に駆け付けたのだ、適当な質問に答えるくらいの対価は貰って然るべきではないか?」
「俺の昔の話なんてわざわざ聞かねぇでも、もう充分知ってるだろ」
 彼らは縁と共に、その目で見たのだ。それ以上を言う必要はないだろうと縁は肩を竦め、空のコップを見て酒瓶へ手を伸ばした。
(そういえば、ここには紫蘇酒はないかのう)
 ヴェッラはふと視線を巡らせかけ、やめる。本当は縁に──さらにリュグナーにも──飲ませたいところではあるが、今宵ばかりは無粋というものだ。
「まあ一山超えたとて、油断してはならぬ。得るべき情報はそれこそ山のように――」
 ぴしゃっ。
 酔いでも回ったか、グラスから酒を少量であるが零したリュグナー。さらには動揺でもしたのか闇市で拾ったらしきパンツでそれを拭く。ちなみに新米情報屋のもの。
「……」
 誰も何も言うまい。たとえ、そんな奴だっただろうかと思ったとしても。
 そんな雰囲気も酒と口が回れば流されて行って、気づけば良い時間になってきた。まだまだ飲むものは飲むだろうが──ヴェッラはひと足先にと席を立つ。
「では、またの機会に集まれることを楽しみにしているぞ」
 次の舞台が待っている。そこへと身を埋めるため、彼女は去っていったのだった。
 テラス席ではバカ騒ぎをする者もいれば、しっとりと過ごす者もいて。もちろん誰も彼もが大体酔っている。
 その中でひときわ酒好きな3人が1つのテーブルに集まっていた。
 かんぱい! と声が響き、各々が好きな酒を飲む。生きているから酒が上手い。素晴らしい。
「そうだわぁ伏見さん、帰ったら秘蔵の1本を飲ませてくれるんでしょう?」
「そうでございますわ! 約束は果たされるべきでしてよ!」
 にじり寄り迫るアーリアとヴァレーリヤ。彼女らに落ち着け焦るなステイと宥めるのは行人だ。
 希少酒となったそれをためらうことなく開封し、自分と2人のグラスへ次ぐ。そして用意しておいた小瓶に分けて、こちらは精霊へ、契約外の心づけとして。
 待ち遠しくしていた2人は行人の「どうぞ」と同時か数瞬はやくグラスを呷り、甘くもスパイシーな香りを舌で楽しんだ。
「……生きててよかった!」
 満面の笑みを浮かべたアーリアはじっくりと飲み、けれど──足りないと感じてしまうのは酒好き故だろう。
「ね、もうひと口だめ? ね?」
 あともうちょっとあるけれど、なくなってしまった悲しさを味わう前におねだりしておきたい。ねぇねぇと行人へ迫るアーリアの注意が酒から逸れたことに気づかないヴァレーリヤではなかった。
「隙ありっ!」
「ちょっと! 吐き出しなさいこのアルコールシスター!!」
 気づくも時遅し。ヴァレーリヤのグラスもアーリアのグラスも空っぽだ。
 吐き出させてでも飲みたいアーリアがヴァレーリヤを揺さぶり、そんな彼女にヴァレーリヤが引く中、行人の声が上がる。
「おかわりが駄目だなんて言わないから! ほらやめろ2人とも!!」
 そんな声は周りの賑やかな雰囲気に負けず、しかし飛び出すこともなく。まあつまるところ、周りも同じくらい賑やかなのだ。


●ずっとずっと賑やかに
 場所は戻って1階……の、外。
「おや、リーヌシュカ君じゃないか。それにカルネ君も」
「やあ、お疲れ様」
 マリアの声にリーヌシュカはぱっと振り返り、傍らのカルネが手を振る。がっしとマリアの手を握ったリーヌシュカは「飲むわよ!」とひときわ大きなテーブルへ彼女をご案内。
「さあさ貴女も! こんなときは、馬鹿騒ぎするものよ!」
「わわっ、セイバーマギエルさんっ!?」
 一緒に連れてこられたジルも席に着き、ユゥリアリアもステージの空き待ちにと人の集まっている場所へ。リゲルもまた一同の姿を見て瞳を輝かせた。
「皆さん、お疲れさまでした!」
「あらいらっしゃい! さあ座って、飲んで食べて! イレギュラーズのこと、沢山聞かせて頂戴!」
 酒と食事──海洋は食事が美味しいのだと言う──をじゃんじゃか頼み、皆で分け合って食べる。強さの秘訣を知りたいと言うリーヌシュカにまず口を開いたのはジルだった。
「僕のお話は、とっても勇敢な海洋の軍人さん達の話っす」
 1人の軍人が絶望の青で変異種となってしまったこと。けれどその軍人は自身らを最後まで想ってくれたこと。そして彼の仲間が彼を救おうと動いてくれたこと。
 イレギュラーズにとってはそれが頼もしくて、心強くて。だからこそ怪物を倒し、軍人を救うことが出来たのだと思う。
 逆境でも立ち上がれる仲間がいることの大切さを説いたジルに続き、リゲルが「この状況と一緒ですよ」と言う。
「海洋決戦を超えて、国なんて関係なく語らいあってる。船で共に戦えたことは嬉しかったですし」
「共闘の力……ってわけね?」
「みんな、沢山一緒に戦ってきたんだよね」
 カルネの言葉にリゲルはええ! と力強く頷く。彼も依頼で一緒になれたらよかったのだが。何せあのリヴァイアサンは驚くほど大きかった。ローレットの中でも屈指に入るであろうリゲルとて、勝利を掴めたことは仲間のおかげだと言わざるを得ない。
「あ、僕ばっかり語ってたっす! 何か飲み物いるっすか?」
「私はジュース!」
 リーヌシュカへジュースのボトルを見せて選んでもらうジル。ふとマリアが首を傾げる。
「リーヌシュカ君はラドバウで頑張ってるみたいだけど、毎日どんな感じで過ごしているんだい?」
「私? 猛特訓よ、明日からは再開ね」
 だから今は飲んで食べなきゃやってらんないわとジュースを一気飲みするリーヌシュカ。リゲルが目を付けた出し巻き卵の皿を食べなさいと押し出し、自身は新鮮な刺身を口に入れる。幸せそうな表情の彼女に、マリアは目を瞬かせた。
(こういう息抜きをすればいいのかな?)
 堅苦しい生活がイマイチ抜けないマリアだが、実のところリーヌシュカもあまり変わらなそうである。以下に息抜きを楽しめるか、なのかもしれない。
 そんな折、リーヌシュカの腕をがっしと掴む手があった。顔を赤くしたユゥリアリアだ。
「え、なに!?」
「せっかくだから1曲いかがですー? ね、歌いましょうー?」
 否を言わせぬ口調で空いたステージへ立ったユゥリアリア、とリーヌシュカ。酔っぱらいの口上が高らかに響いた。

「このステージはわたくしが乗っ取ったー! 文句があるやつは1曲勝負してみやがれー!」

 そんな彼女に向けられたのは喝采。いいぞ歌えやっちまえと盛り上がる酔っ払いにリーヌシュカもうずうずしてきて。
「いいじゃない、私も歌うわ!」
 鉄帝のセイバーマギエルが歌うと聞いて大盛り上がりの一同。その後さらに盛り上がり、酔いが回りに回って脱落者が続々と出たことはまあ道理である。
 そのなかで未だぺろぺろ、ちびちびと酒を飲む創はにっこり。海洋の酒は他よりおいしい気がする。入ってくるものが違うのかもしれない。
(ローレットの皆、海洋に鉄帝の皆さん、大号令に参加した全ての人たちありがとう)
 彼らのおかげで酒を美味しく飲めるのだ、と亡き──あるいは既に酔いつぶれた──者たちへ礼を告げる創。そして貸し切り全てツケという大変豪胆なことをしたポンポコにも一礼を。
 ああ酒が美味しい。肉も。最高!
(本当ならば、笛を携えて音を奏でることが、いつものことなのですが)
 けれど目の前に出された手を──誘いを断るのも失礼というもの。Lumiliaは小さく笑い、マルベートの手を取った。
「マルベートさん、こういった場で踊るというのは不慣れなのですが……」
「大丈夫、リードしてあげるよ」
 不安そうな瞳と、優しい色の瞳がかち合う。流れ出した穏やかなワルツに体を揺らし、慣れぬ彼女の体をあちらへこちらへと誘うマルベート。まるで2人きりの世界のようだと告げる彼女にLumiliaがくすっと笑う。
「……君が生きていてくれて、本当に嬉しく思うよ」
 その笑顔にマルベートは呟かざるを得なかった。この大号令で失われた命は決して少なくなかったと聞いたから。
 自分でも言っていた通り軽い体は、どこかへ吹き飛ばされてしまいそうで──心配になる。
 内なる思いは胸に秘めて、マルベートは「お酒でも飲むかい?」とLumiliaを誘った。
「冠位魔種アルバニアを討ち果たした英雄様の凱旋だぜFoo~~~~~!!!」
 テンション高く登場した千尋に酔い潰れていない──つまり極限まで酔っぱらった奴らである──が「ヒュー!!」と声を上げる。その後ろをちょこちょこついて行くのは寿だ。
「あっ日輪ちゃんこういう騒がしいとこ大丈夫?」
「だ、大丈夫です……! ありがとうございます!」
 気の配れる男・千尋。さりげなく椅子を用意して勧め、寿を座らせる。
 彼女に話して聞かせるのは自身の雄姿だ。
「こう、クールにチャンスを伺ってだな……シュッ! と素早く懐に潜り込んでからのドガーン! って超カッケえアッパーカット決めてやったんだよ!」
 大ぶりなジェスチャーを加える千尋に寿は真似してみるが、彼女ではいくらか弱そうに見える。けれど彼女は熱心に話を聞いていて。
「さすが伊達さんです! 出来ることなら私自身が生き証人になりたかっ……だ、伊達さん?」
 突然くの字に体を負った千尋。治り立ての傷が流石にオーバーリアクションに耐え切れなかったらしい。寿は慌ててメガ・ヒールを彼へかけた。
「酒が上手いな、ルカ。──どうだ、もう1杯」
「おぉ、サンキュー」
 ルカのジョッキに酒を注ぐベネディクト。周囲はそろそろ宴もたけなわといった雰囲気だが、2人は変わらず静かに飲み続けていた。
「……実は相談があるんだが、聞いて貰えないか?」
 そう切り出したのはベネディクトだった。
 何度も同じ夢を見る。ひたすら斬って倒して前に進み続けて──なのに、最後は大切な者すらも斬って捨てる夢。そんな夢を見るものだから、最近はまともに眠れないのが現状だった。
 ルカは少し考える素振りを見せ、似たような経験はあると告げた。
 傭兵として駆けだしの、初めて敵を殺した時。いつしか夢を見なくなったのは、きっと戦いが『そういういモノ』だと受け入れたからだろう。
「だけどお前のそれは、多分大切なモンを殺したっつー罪悪感が原因だろうから俺とは違う」
 故に、わからない。解決方法を示すことなど出来ようもない。あるとすればこうして酒で付き合うか、夢も見ないほど眠れるほど訓練に付き合うかのどちらかだ。
「……ありがとう、ルカ。お前は、頼りになる奴だよ」
 ベネディクトはふっと笑みを浮かべると、ルカの瞳を見た。

「おっと、そろそろ帰らねえとな」
 ローレンスが拗ねちまうとバルバロッサは笑う。かなり飲んでいたはずだがその足取りは酔いなど感じさせない。去った後方ではリリファとラズワルドが酔いつぶれてくぅくぅと眠っている。彼女らだけではない、どこもかしこも泥酔した者ばかりだ。
 夜も更け、朝が昇れば朝が来る。

 皆の希望を乗せた明日も、また。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました、イレギュラーズ。

 また、どこかでお会いしましょう。

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